■令和2年度司法試験合格発表に寄せて
鹿児島大学司法政策教育研究センター センター長
元・鹿児島大学司法政策研究科（法科大学院）研究科長
米田 憲市
令和２年度司法試験の合格発表があり、鹿児島大学法科大学院の修了生から1名、また、他の法科大学院を経て当センターの法務学修生として勉強している1名が合格しました。
さらに本学法文学部を卒業し、他の法科大学院を経て受験し合格した人がいます。
合格したみなさん、おめでとうございます。
鹿児島大学法科大学院の修了生で合格された方は、鹿児島大学法科大学院の最後の入学者のひとりであり、最後の年の修了生です。社会人を経て鹿大の法科大学院に入学し、その直後に募集停止が公表されました。なくなることが決まっている教育課程で３年間学び、修了と同時に法科大学院が廃止されました。その後、当センターで鹿大出身の先輩弁護士のチューター指導などを継続的に活用しながら受験勉強に力を注いで、合格の日を迎えました。
他の法科大学院を経て当センターの法務学修生として合格した方は、都市部の法科大学院を修了して帰郷し、当センターの「法務学修生制度」の最初の利用者として、本学の大学院の授業や施設等を活用して勉強してきました。今年の試験後に「鹿児島に戻って受験勉強をする中で、同じことをしている人がいることを知ることができてよかった」と話してくれました。地方で司法試験を目指すことの難しさを実感しながら、それに打ち勝ちました。
法文学部から他の法科大学院を経て合格した方は、後進にとって大変心強い存在です。本年４月から始まった新しい法曹養成制度のもとで、鹿児島大学法文学部では、文部科学大臣の認可を受けた「法曹養成連携プログラム」により、他大学の法科大学院と連携して学部教育から法曹を目指すプログラムを展開しています。鹿大で学ぶ学生にとって、法曹への夢を現実にできる証です。
今年は新型コロナウィルスの影響で試験日程が変更されました。大学や図書館などの学修場所も閉め出され、学修環境も大きな変化を強いられました。試験会場でも行列を作っての体温検査があり、マスク着用での受験を強いられるという感染の不安の中での受験でした。比較的感染者の少ない鹿児島から都市圏の福岡会場に受験に行かねばならないということも一層の負担であり、大都市での受験準備も不安であったと思います。
本当にさまざまな出来事を乗り越えての合格を讃えたいと思います。そして、さらに研鑽を積み、切り開いた道がますます輝くものになるものと信じています。
司法政策教育研究センターは、法科大学院で蓄積した教育資産の継承による法学研究や教育の充実、専門職リカレントプログラムやセミナー事業の展開、デジタル・トランスフォーメーションの時代に応える法情報インフラの提供、そして、法曹志願者への支援などの社会貢献に取り組んでいます。
当センターとしては、法曹を目指すみなさんへの支援は活動の柱であり、鹿児島大学の学部・大学院の法学教育、連携先の法科大学院等との協力、そして法務学修生制度という多層的な構えの下で、南九州において予備試験を含む法曹への道の機会の確保とサポートをしたいと考えています。
法曹を目指して努力されている方は、是非、様々な機会を捉えてこのセンターを活用していただきたいと思います。
また、鹿児島大学法科大学院修了生、法務学修生であったみなさんで、司法試験からは離れながら、異なる形で法に関わる実務に就いたり、関心をお持ちの方がおられると思います。当センターでは、様々な法律実務に関わるリカレント教育（専門職能の高度化や学び直し）にも取り組んでいます。ホームページやフェイスブック、ツイッターで情報を発信していますので、是非、今後もつながりを維持してもらえればと思います。
新型コロナウィルスの影響が続いており、様々に不自由な状況が続いています。当センターでは、長年培ってきたリモート技術の活用や新しい関係形成のノウハウを動員して、法曹志願者一人ひとりと向き合い、また、法を学ぼうとするみなさんにできる限りのサポートをしたいと考えています。お役に立つことがあれば、是非連絡をいただければと思います。
みなさまにおかれましては、今後とも鹿児島大学の法学分野における教育研究へのご理解とご支援をいただければ、ありがたく存じます。よろしくお願いいたします。
以上
令和3年1月20日（水）
