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資料3


    「新司法試験等について」
     
第1   新司法試験について
制度設計の基本的考え方
 
新司法試験は,法科大学院の教育内容を十分に踏まえた新たなものとする。
司法試験管理委員会についても,法科大学院関係者や有識者を委員に加え,役割を拡大するなど,その在り方について十分な見直しを行う。
今後の法科大学院の発展・成熟状況等に的確に対応し,随時に,適切な運用改善を行い得るような柔軟な制度設計とすることが望ましい。
     
  (1)   新司法試験の在り方   
       新司法試験は,司法制度改革審議会(以下「改革審」という。)意見の趣旨にのっとり,新たな法曹養成制度の中核を担うことが期待される法科大学院との連携を重視し,その教育内容を十分に踏まえた新たなものとする。
  (2)   司法試験管理委員会の在り方
       改革審意見において,「新司法試験と法科大学院での教育内容との関連性を確保するため,例えば,司法試験管理委員会に法科大学院関係者や外部有識者の意見を反映させるなどの適切な仕組みを設けるべきである。」(同意見書73頁)とされていることに照らし,新しい委員会(以下「委員会」という。)は,法曹三者のみならず法科大学院関係者や外部有識者を委員とするとともに,その役割についても,司法試験の実施のほか,試験制度の改革・改善に関する調査審議等の新たな職務を担わせるなど,その在り方について十分な見直しを行うことが相当であると思われる。
  (3)   柔軟な制度設計の必要性
       法科大学院が全く新しい教育制度であることを考慮すると,新司法試験については,今後の法科大学院の発展・成熟状況等に的確に対応し,随時に,適切な運用改善を行い得るような柔軟な制度設計とすることが望ましい。
       したがって,新司法試験法においては,例えば,試験科目,予備的な試験の在り方等について,そのすべてを規定し尽くしてしまうのではなく,細目について,前記のとおり新しい委員構成の下で新たな役割をも担うこととなる委員会に諮った上で決定し得るような規定を置くことも検討されるべきであると考える。   
     
試験科目等
(1)  試験範囲
ある法律分野を試験範囲とすべきかどうかについては,1法律実務家にとっての重要性,2法科大学院における科目開設状況,3法科大学院の教育課程に与える影響,4出題及び試験実施の困難性等を総合的に考慮して判断されるべきものと思われる。
     
     ある法律分野を試験範囲とすべきかどうかについては,1法律実務家にとっての重要性,2法科大学院における科目開設状況,3法科大学院の教育課程に与える影響,4出題及び試験実施の困難性等を総合的に考慮して判断されるべきものと思われる。
     例えば,基本六法のように,将来,司法修習を受ける上で最低限備えておくべき知識・能力という点で,その理解が不可欠なものについては,なお司法試験においてその理解の程度を問うべき必要性があると考えられる。
     他方,法曹倫理等の法律実務科目については,その学問としての成熟性や法科大学院における教育内容の普遍性に疑問なしとしない上,試験による能力判定に馴染まないこと(例えば,試験科目としての出題範囲の明確性や筆記試験の採点における客観性・公平性の担保が十分ではないこと)などから,新司法試験の試験範囲とはせず,法科大学院における履修にゆだねることが相当であると考えられる。
     
  (2)   新司法試験において必須とされるべき法律分野(必須科目)
 
基本六法に加え,行政法についても,法科大学院において必修科目とされるのであれば,必須とされるべき法律分野に含めることを検討すべきである。科目割りについては,例えば,公法系,民事系,刑事系とするなど,複数の法律分野にまたがる「融合問題」の出題も可能となるような仕組みにすることが考えられる。
     
     基本六法(憲法,民法,刑法,商法,民事訴訟法,刑事訴訟法)については,法科大学院において必修科目とされる方向で検討が加えられており,新たな法曹養成制度の下でも,その知識及び応用能力が不可欠であることに変わりはないため,新司法試験においてもこれを必須とされるべき法律分野に加えるのは当然であると考える。
     これに加え,行政法についても,法科大学院において必修科目とされるのであれば,新司法試験においてこれを必須とされるべき法律分野に含めることを検討すべきである。
     現行司法試験では,司法試験法が試験科目を個々の法律ごとに区分して規定しているため,個々の科目においては,当該法律の範囲に限定した出題のみが行われている。
     しかし,法科大学院においては,複数の法律分野にまたがった教育も行われるものと見込まれるため,新司法試験については,その内容を法科大学院の教育内容を十分踏まえたものとするという観点から,複数の法律分野にまたがる「融合問題」の出題も可能とすることが相当であると考える。したがって,新司法試験の科目割りについては,例えば,公法系(憲法,行政法等),民事系(民法,商法,民事訴訟法等),刑事系(刑法,刑事訴訟法等)とすることなどが考えられる。
     もっとも,どの法律分野であれ融合問題を出題できる領域は限られており,出題範囲が限定されてしまうおそれもあり,融合問題のみを出題し続けることは困難と見込まれるので,各科目を構成する個々の法律分野の範囲内にとどまる出題を組み合わせることも可能とすべきであろう。
     
     (3)   新司法試験において選択科目とされるべき法律分野
 
実務的に重要であり,社会におけるニーズが高まっている法律分野を中心に選択科目を設けるのが相当と思われる。
     
     法曹を志す者に幅広い法律分野についての履修を促すとともに,それぞれが専門分野を持つよう積極的に誘導するとの観点から,新司法試験においては,必須科目のほか選択科目も設けることが相当であると思われる。
     選択科目の対象については,実務的に重要であり,社会におけるニーズが高まっている法律分野(例えば,知的財産権法,倒産法,労働法等に関する法律分野など)を中心に検討されるべきものと思われる。
     また,今後の法科大学院における科目開設状況に柔軟に対応できるよう,新司法試験法において,選択科目の対象となる法律分野について,そのすべてを規定し尽くすのではなく,委員会に諮った上で決定し得るような規定を置くことなども検討に値する。
     
試験方法(短答式,論文式,口述式のいずれの方法によるか)
  (1)   論文式試験の必要性
 
新司法試験においては,論文式試験を中心とすべきである。
     
     法曹になろうとする者に必要な学識及び応用能力を問うためには,論文式試験を中心とすべきであると思われる。
     論文式試験を行うにしても,現行司法試験におけるそれとは異なり,法科大学院における教育内容に的確に対応できるようなものとするため,今後,新司法試験法の趣旨を踏まえ,考査委員において具体的な出題の在り方についての見直しが行われるものと期待される(注)。
  (注) 例えば,改革審意見が例示するような出題(同意見書72頁・73頁参照)も考えられようし,また,法律的には意味のない事実や事情をも含んだ,より長文の事例問題を積極的に出題し,現行司法試験以上に事例解析・問題点の抽出,整理能力や,それらに基づいた答案全体の構成力をも問うような内容とすることも考えられる。また,単に知識量の多寡を問う試験となることを避けるため,例えば,法曹になろうとする者が当然知っておくべき基本的なものは別として,関連判例・条文・資料等を問題文に引用ないし添付するような出題方法も考えられる。これらのような出題を行うのであれば,試験時間についても現行司法試験のように1問当たり1時間ではなく,相当長時間とすることが適当と思われる。
     なお,受験者の受験準備に支障を来さないように,今後,出題の在り方について,その具体的なイメージを早期に示す方策を検討することとしたい。
     
  (2)   短答式試験について
 
新司法試験の一部として,短答式試験を必ず実施しなければならないとするまでの必要はないが,情勢いかんにより,実施することができる余地も残しておくべきであると思われる。
       
    我が国は成文法の国であり,法曹には,基本六法を中心とした実定法についての基本的知識・体系的理解が必要不可欠であるところ,短答式試験は,このような基本的知識の有無を幅広くかつ客観的に問うには最も適した試験ということができる。
    法科大学院においては,厳格な成績評価や修了認定が行われることにより,修了までの間に質及び量の双方の観点で学生の十分な選抜が行われることが期待されるから,短答式試験は,現行司法試験のように必ず実施しなければならないとするまでの必要はないと考えられる。
       しかしながら,法科大学院修了者数が増加するなどして新司法試験の受験者が多数に上り,審査期間・考査委員の確保等,答案審査のための態勢の整備に意を尽くしてもなお適正な答案審査に支障を来す事態に至ることも想定し得なくはない。したがって,新司法試験の一部として短答式試験を実施することができる余地も残しておくべきであると思われる(注)。
    (注) 現在,論文式試験の受験者数はおおむね6,000人であるが,答案審査期間は,実施から合格発表まで,考査委員による採点作業に充てられる夏期休暇期間をはさんで約3か月を要しているところ,受験者が増加した上に,前記のとおり,より長文の出題について長時間かけて解答させるような試験方法を採ることになれば,更に審査作業の負担が増加することとなろう。
     
  (3)   口述試験について
 
口述試験を実施するか否かについては,新司法試験の論文式試験の合格者が多数に上ることなどを考慮して,慎重に検討されるべきである。
     
     口述試験については,受験者の口頭表現能力等を問い得るなどの長所が認められるものの,新司法試験との関係では次のような問題点が存する。
      (問題点)
  1   法科大学院において,双方向的な教育が実施され,厳格な成績評価等も行われることに加え,司法修習過程においても不適格者をチェックすることが可能であるから,口述試験まで実施する必要性があるのか,との疑問が生じ得る。
  2   新司法試験においては,現行司法試験よりも論文式試験合格者が多数に上ることが見込まれることから,口述試験を実施するためには,試験科目の削減や試験時間の短縮が不可避となるが,その場合,試験としての選抜機能に疑問が生じ,受験者間に不公平感が醸成されるなどの事態に至るおそれがある(注1)。
  3   現行司法試験よりも多数に上ると見込まれる論文式試験合格者に対し更に口述試験を行えば,それだけ最終合格者の決定に期間を要することになる(現在でも,論文式試験合格発表から最終合格発表まで約1か月間を要している。)(注2)。
    (注1) 仮に口述試験の受験者数が3,300人(最終合格者を3,000人,合格率を現行試験と同じ約91パーセントと想定)となった場合,現在の試験実施日数(5日間・平成14年度予定)・試験時間(1科目15分程度)・考査委員数(130名)の下で実施すれば,実施可能科目数は1.9科目程度となる。また,同様の試験実施日数,考査委員数及び現在の実施科目数(5科目)の下で実施すると,受験生1人に対する1科目当たりの試験時間は,現在15分のものをおおむね6分程度に短縮せざるを得ない。
    (注2) 仮に口述試験の受験者数が3,300人(最終合格者を3,000人,合格率を現行試験と同じ約91パーセントと想定)となった場合,試験時間,試験科目及び考査委員数を上記現状のままで実施すれば,試験実施日数は,約12日間という長期間にわたるものとなり,論文式試験の合格発表から最終合格の発表までの期間も,それに応じて,現状よりも相当程度長期に及ぶこととならざるを得ない。
     
対象者(受験資格)
 
適格認定を受けた法科大学院の修了者のほか,予備的な試験に合格した者が受験できるものとすべきである。
       
     改革審意見は,「適格認定を受けた法科大学院の修了者には,新司法試験の受験資格が認められることとすべきである。」(同意見書72頁),「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも,法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。」(同意見書72頁・73頁)とし,「例えば,幅広い法分野について基礎的な知識・理解を問うような予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めるなどの方策を講じることが考えられる」(同意見書73頁)としており,同意見が例示するような予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めることとするのが相当である。
     
受験回数等の制限
(1)   制限の内容
司法制度改革審議会意見のとおり3回程度の受験回数制限を課す場合,具体的制限内容としては,法科大学院での教育効果をいかに適切に反映させるかという観点を考慮して検討するのが妥当と思われる。
     
    改革審意見のとおり3回程度の受験回数制限を課す場合,具体的制限内容としては,1通算3回の受験を可能とする,2初回受験の年から3年間の受験を可能とする,3法科大学院修了年(又は予備的な試験に合格した年)から3年間の受験を可能とするなどの案が考えられる。
       この受験回数制限の具体的内容については,法科大学院での教育効果をいかに適切に反映させるかという観点を考慮して検討するのが妥当と思われる。
       例えば,1案については,受験生の便宜への配慮に傾きすぎており制度設計として不合理な感が否めず,2案については,3回程度の受験回数制限という趣旨には沿うものの,いわゆる受験控えを許すこととなって法科大学院での教育効果が薄れた時点での受験も可能になるとの問題がある。他方,3案については,法科大学院修了後の受験の機会を制限する程度が最も大きいものになると考えられる。
    以上と同様の配慮から,予備的な試験に合格して司法試験(本試験)を受験する者についても,法科大学院修了者と実質的に同等な受験回数制限を設けるのが妥当と思われる(なお,予備的な試験自体には,回数制限を設ける必要はないと考える。)。
     
  (2)   再受験の許容
 
受験回数制限を行うとしても,相当期間経過後には再受験を可能とするような仕組みを検討すべきであると思われる。
     
     受験回数制限を行うとしても,いったんは受験を断念したものの司法試験に再挑戦したいという者等に対し,将来にわたって一切法曹への道を閉ざすことになるのは適切ではないと考える。したがって,受験資格を改めて取得(法科大学院の再履修又は予備的な試験の合格)することにより,相当期間経過後には再受験を認めるべきであると思われる。
     
実施時期
法科大学院の修了との関係における新司法試験の実施時期については,受験資格,在学生の進路決定の在り方,司法修習の開始時期や実施態勢の構築等にもかかわるので,十分な検討を要する。
     
     新司法試験の実施時期を,1法科大学院の履修課程修了前(修了見込みで受験可),2全課程修了後(修了者のみ受験可)のいずれにするかという点については,法科大学院での履修に専念させるとの観点からは2が望ましいが,この問題は,受験資格,在学生の進路決定の在り方,司法修習の開始時期や実施態勢の構築等にもかかわるものであり,十分な検討を要する。
     なお,考査委員は,本業を抱えて多忙であり,夏期休暇を利用して集中的に論文式試験の採点を行っているものの,論文式試験実施から合格発表まで約3か月を要している実情にある。したがって,夏期に採点を行えるような時期に実施しないとなると,司法試験の実施態勢の構築が極めて困難となる。
     
第2   予備的な試験について
基本的性格
予備的な試験は,1法科大学院を経由しない者にも法曹への途を確保しつつ,2法科大学院において幅広く学習を行った者と同一の本試験を受けるのにふ   さわしい学識・教養の有無を問うものとするのが相当と思われる。
     
     予備的な試験は,1法科大学院を経由しない者にも法曹への途を確保しつつ,2法科大学院において幅広く学習を行った者と同一の本試験を受けるのにふさわしい学識・教養の有無を問うものと捉え,改革審意見が例示するように「幅広い法分野についての基礎的な知識・理解を問う」試験とすることが相当である(注)。また,このような目的からすれば,予備的な試験に合格すれば,前記の本試験の受験回数制限にかからない限り,毎年の予備的な試験を受験することなく本試験を受験できるとするのが相当であると考える。
  (注) この場合の「基礎的な知識・理解」とは,法科大学院入学レベルよりは相当程度高いものであるべきであろう。
     
受験資格
予備的な試験の受験資格を制限することは相当ではない。
     
  (1)   受験資格の問題点
     改革審意見は,「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも,法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。・・・(この場合には,実社会での経験等により,法科大学院における教育に対置しうる資質・能力が備わっているかを適切に審査するような機会を設けることについても検討する必要がある。)。」(同意見書73頁)としている。
     法科大学院を経由しなかった理由は人によって様々であり,当該個々人にとっては,いずれも「やむを得ない事由」により法科大学院を経由しなかったということになりかねず,また,実際問題としても,出願を受けた際,それらの事情について個別的な認定を客観的に行うことは極めて困難であることなども考慮すれば,予備的な試験の受験資格を制限することは相当ではない。
     予備的な試験が,法科大学院を経由しない者にも法曹への道を確保するために設けられる試験である以上,現行の司法試験と同様に誰でも受験できる開かれた試験として位置付けるべきである。したがって,仮に改革審意見が提言するように「資質・能力についての適切な審査」を行う場合でも受験資格という受験前の審査ではなく,試験を受けさせた上で試験の中で問うのが相当であると考える。
     なお,この場合でも,予備的な試験自体についての試験範囲等を工夫すること,本試験における論文式試験を暗記中心の受験技術優先の勉強では対応できないような法科大学院の教育に沿ったものとすること,前記のとおり予備的な試験からの受験者についても法科大学院修了者と同様の受験回数制限を課すことなどにより,法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねるような事態の発生を防止することが可能である。
     
試験範囲・方法
具体的な試験範囲及び方法については,予備的な試験の開始時点での法科大学院の発展・成熟状況等を踏まえて決定されるべきものと考える。
     
     試験範囲は,例えば本試験の試験範囲とされる法律分野のほか,法科大学院の必修ないし必修選択科目とされ,かつ,試験にも馴染む法律分野も含むとすることが考えられる。また,法科大学院の入学者選抜において,適性試験や学部での法律科目以外の履修状況の審査が実施されると見込まれることに照らせば,予備的な試験においても,一般教養科目をも試験科目とすべきであろう(注)。
  (注) 予備的な試験を行うのであれば,もはや現行の第一次試験は不要であって廃止されるべきである。
     なお,更に具体的な試験範囲及び方法(短答式,論文式,口述式のいずれによるか)については,予備的な試験が,平成23年ころ以降において実施される試験であって,その在り方については,その時点での法科大学院の発展・成熟状況等を踏まえて決定されるべきものであることから,現時点においてそのすべてを確定してしまうのではなく,適当な時期に委員会に諮った上で決定することとするなどの方策も考えられる。
     
第3   その他
新司法試験と現行司法試験との関係等
新司法試験実施後も5年間は現行司法試験を実施すべきである。
移行措置期間中に法科大学院経由者(在学生及び修了者)が現行司法試験を受験することを認めるか否かについては,現行司法試験が受験資格を制限していないことにも留意しつつ,法科大学院生がプロセスとしての教育に専念しやすい環境を確保するなど法科大学院の理念を損なわないようにするとの観点から十分な検討を要する。
法科大学院経由者による現行司法試験の受験について何らかの制限を課す場合であっても,法科大学院経由者であることを現行司法試験受験の欠格事由として規定する方法は相当でない。
     
        新司法試験実施後も5年間は現行司法試験を実施すべきである。
     法科大学院が平成16年に開校し,新司法試験につき,全課程修了後に実施するとの案によれば,
     1平成17年まで現行司法試験のみ実施
     2平成18年から平成22年まで現行司法試験及び新司法試験の並行実施
     3平成23年以降予備的な試験及び新司法試験の実施
  というスケジュールになる(注)。
  (注) 平成22年実施の現行司法試験において,口述試験に不合格となった者に対し,平成23年に口述試験を実施するかどうかについても検討する必要がある。
     
  (1)   法科大学院経由者による現行司法試験の受験の可否
       移行措置期間中においては,1法科大学院在学生が現行司法試験を受験することを認めるべきか否か,2法科大学院修了者が現行司法試験を受験することを認めるべきか否か,3新司法試験の回数制限にかかった者が現行司法試験を受験することを認めるべきか否かなどの問題が生じる。
       これらの問題については,現行司法試験が受験資格を制限していないことにも留意しつつ,法科大学院生がプロセスとしての教育に専念しやすい環境を確保し,法科大学院の理念を損なわないようにするとの観点から十分な検討を要する。
  (2)   制限策を検討する際の留意点
       現行司法試験は全く受験資格制限のないものであるところ,この現行司法試験を新司法試験実施後も5年間は継続することとする以上,法科大学院経由者は現行司法試験を一切受験できないとする制限を新たに設けるのは過度の制限であると考えられる。また,出願者が法科大学院経由者でないと確認することは事実上不可能であり,この点からも,法科大学院経由者であることを現行司法試験受験の欠格事由として規定する方法は相当でない。
       そこで,新司法試験を現に受験した者に対し,現行司法試験との「掛け持ち受験」を実質的に認めない(例えば,現行司法試験と新司法試験とを合計した受験回数の制限を設ける。)などの方策で対処すべきものと思われる(注)。
    (注) 何らかの制限を課す場合でも,「法科大学院修了者であっても,同一年度に受験できるのは新・現行司法試験のうちの一方のみとすること」や「新司法試験を実施する平成18年以降は,新・現行司法試験のうちどちらかを問わず3回(3年)の受験回数制限を課すること(ただし,現行司法試験のみを受験する場合を除く。)」の方が実際的であると思われる。
     
合格枠制(いわゆる丙案)の廃止
司法試験管理委員会は,平成13年11月9日,「平成16年度以降に行われる司法試験第二次試験の論文式による試験の決定方法は,司法試験法第8条第2項に規定する方法である,いわゆる合格枠制によらないものとする。」との決定を行っている。
     
     改革審意見が「現行司法試験の合格枠制(丙案)は,現行試験合格者数が1,500人に達すると見込まれる平成16(2004)年度から廃止すべきである。」(同意見書72頁・74頁)と提言したことを受けて,司法試験管理委員会は,既に,平成13年11月9日,「平成16年度以降に行われる司法試験第二次試験の論文式による試験の決定方法は,司法試験法第8条第2項に規定する方法である,いわゆる合格枠制によらないものとする。」との決定を行っている。


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