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参考3

併行実施期間中の新旧司法試験合格者数について



平成17年2月28日
司法試験委員会

 合格者数についての基本的な考え方
司法試験は,法曹となろうとする者に必要な学識及び応用能力の有無を判定することを目的とする国家試験である。したがって,その合否は,受験者が法曹となろうとする者に必要な学識及び応用能力を有しているかどうかに基づき判定されるのであって,実際の試験結果に基づかずに,あらかじめ合格者の予定数を確定的な数値として示すことはできない。
しかしながら,この度,司法試験の基本的制度が改められ,平成18年から5年間は,試験内容及び実施時期の異なる新旧の司法試験が併行実施されることとなった。そのため,それぞれの司法試験を受験しようとする者に対し,自らの進路を選択する上での手掛かりとすることができるよう,各試験における合格者について一応の目安となる概括的な数値(以下「概数」という。)を示しておく必要がある。また,各年において併存する新旧司法試験の合否判定が別個に行われることになるため,司法試験委員会が各試験における合格者の概数を示しておくことは,新旧司法試験を円滑に実施するための指針ともなり得る。もっとも,ここで示す数値は,資格試験である司法試験の上記目的にかんがみ,実際の試験結果に基づき,当然変動し得る性質のものである。
当委員会では,今後法曹となろうとする者は新しい法曹養成制度の中核的役割を果たす法科大学院へ進学することが期待されていることを十分に念頭に置いた上で,関係各方面からのヒヤリングを実施するとともに,当委員会に寄せられた各方面の意見等も参考に,年度内を目途として,新旧司法試験の合格者について,その概数を示すことができるよう検討を進めてきた。

 対象期間
現時点においては,法科大学院自体,まだ開設されて1年も経たない段階にあり,法科大学院の教育水準を担保する第三者機関による認証評価がまだ実施されておらず,その教育成果を確認できる十分な客観的資料を得るまでには至っていないことから,新司法試験の合格者の予定数を一定の数値で長期的に示すことは困難である。そこで,ここでは,とりあえず平成18年及び同19年の2年間について,合格者についての概数を示すに止めることとする。その上で,同20年以降については,今後の法科大学院における教育の実績,受験者の動向等を見定めながら,更に検討することが適切である。
一方,旧司法試験の合格者数については,同試験の併行実施が新制度への切替えに至る移行措置として位置づけられていることから,新旧司法試験併行実施期間全般にわたる一応の方向性を示すこととする。

 合格者数を考える上での考慮事項
 
(1)  全般的事項
司法制度改革審議会意見(以下「改革審意見」という。)及びこれを受けて閣議決定された司法制度改革推進計画により,司法試験の合格者数については,政府の方針として,平成14年に1,200人程度,同16年に1,500人程度に増加させた上,同22年ころには,法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら,3,000人程度とすることを目指すとされている。ここで重要なことは,改革審意見では,合格者数の増加のみではなく,21世紀の司法を担うにふさわしい法曹としての質の確保が併せ求められていることである。
(2)  新司法試験関係
新司法試験の受験資格は,法科大学院の課程を修了した者に与えられるところ,その実際の受験者数の動向については,改革審意見が強く求めている「厳格な成績評価及び修了認定」の具体化に大きく左右されることとなる。当委員会としては,法科大学院の良識を信頼して修了者の判定が厳正に実施されることを期待したいが,その数をどの程度と見込むかを数値化して示すことは困難である。
このような実情を前提として,とりあえず入学者数を基本にして新司法試験の受験者数の動向を想定すると,平成18年は,同16年に入学した2年コースの学生約2,300人のうち,「厳格な成績評価及び修了認定」を経た者(当然のことながら,現行司法試験に合格した者は除かれる。)がその受験者数のベースとなり,同19年以降は,毎年新たに約6,000人程度の学生のうち「厳格な成績評価及び修了認定」を経た者がそのベースに加わっていき,受験機会が3回であることを勘案すると,同21年以降,受験者数がおおむね平準化していくものと予測される。
なお,新司法試験については不確定要素があまりにも多いため,現時点で将来の受験者数を予測して的確な見通しを立てることは困難であり,制度の移行期において,各年の受験者間の合格率にある程度の高低が生じるのはやむを得ない。しかし,一般論としては,試験制度としての公平性・安定性は重要な要素であり,各年の受験者間の合格率の公平にはある程度留意する必要がある。
(3)  旧司法試験関係
旧司法試験については,現行司法試験の受験者に不当な不利益を与えないように実施されるものであるところ,上記の政府方針に従い,従前は1,000人程度の合格者数であったのに対し,平成14年及び同15年にはそれぞれ約1,200人が合格し,法科大学院への学生受け入れが開始されたのちも,同16年には約1,500人が合格するところとなり,同17年にもほぼ同数の約1,500人の合格が見込まれている。
なお,司法制度改革推進本部に設置された法曹養成検討会では,「平成18年度以降の現行司法試験(旧司法試験)の合格者数については,年間数百名程度とし,毎年漸減させることとしても,現在の受験者に不当な不利益を与えることにはならない」旨の意見の整理が行われている。

 平成18年と同19年における合格者数
 
(1)  新司法試験
新司法試験については,前述のとおり不確定要素によるところが大きいことから,その合格者の予定数は相当程度幅のある数字にならざるを得ないが,法科大学院への誘導効果や法科大学院制度を社会的に定着させることの重要性を特に勘案して,平成18年の合格者の概数は,900人ないし1,100人程度を一応の目安とするのが適当と考える。また,同19年については,同18年の試験結果等とも関連して更に不確定要素が増えるが,受験者数の激増が予想されることに配意して,同18年の合格者についての上記概数の2倍程度の人数を一応の目安とするのが適当と考える。
(2)  旧司法試験
旧司法試験の合格者の概数については,法曹養成検討会における意見の整理を尊重して,平成18年は500人ないし600人程度を,同19年は300人程度をそれぞれ一応の目安とするのが適当と考える。さらに,旧司法試験が新制度導入に伴う移行措置として実施されることを考慮すれば,同20年以降の合格者数は,同19年の合格者数から更に減少させたとしても,受験者に不当な不利益を与えるものではない。

 法科大学院に期待するもの
法科大学院は,その第一期校が平成16年4月に創設されたばかりであり,新しい法曹養成制度の理念を実現するため,現在,各校において様々な努力と工夫が積み重ねられているものと承知している。当委員会としては,法科大学院が,21世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすことのできる優れた資質と能力を備えた法曹を育成する責務を担うものであると理解しており,そのためには,改革審意見が指摘しているとおり,法科大学院において,厳格な成績評価と修了認定が実施されることが不可欠の前提であり,質の高いプロセスとしての法曹教育が適切に実施される必要がある。
当委員会としては,各法科大学院が,改革審意見に示された理念に従って,質の高い法曹を養成されることを強く期待するとともに,司法試験の実施においても,プロセスによる法曹養成制度の健全な発展の一翼を担っていく考えである。



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