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資料3

平成18年度新司法試験に関するアンケート調査の結果について(報告)

平成18年9月30日

法科大学院協会司法試験等検討委員会

1. まえおき
法科大学院協会司法試験等検討委員会は、本年5月に行われた第1回の新司法試験について、74すべての法科大学院を対象としてアンケート調査を行い、法科大学院教員の立場からの評価を求めた。調査の形式は、昨年のプレテストに関するものをほぼ踏襲した。当初の締め切りを7月10日としていたが、2度の督促を経て、最終的に64校から回答を得た。ご協力いただいた会員校の責任者・担当者の方々には厚く御礼申し上げたい。回答結果は、昨年と同様、土井真一委員(京都大学)に取りまとめていただき、末尾の自由記述も整理していただいた(別添ファイル参照)。この報告書は、その取りまとめに基づき、主任において、試験全体について概括的評価を記した後、短答式各分野及び論文式各科目についてそれぞれの委員に評価をお願いし、その全体を全委員に回覧した上で作成したものである。
法曹養成が望ましい形で行われるためには、法科大学院教育と司法試験とが適切に連携することが不可欠の前提であり、この調査が連携のあり方の検討に些かでも寄与することを期待している。このような調査は、継続して行われることに意義があるので、会員校には今後もご協力をお願いしたい。また、調査の内容・方法などについて、ご意見をお寄せいただければ幸いである。

2. 試験全体について
問題の水準については、回答59校(無回答5校)のうち44校(74.6パーセント)が「適当である」と評価しており、「やや難しすぎる」とするものが15校(25.4パーセント)である。回答(59校)が「適当である」(31校)と「難しすぎる」「やや難しすぎる」(併せて28校)にほぼ二分されたプレテストと比べると、問題の水準がより適切なものになったと見られているといってよいであろう。問題の量についても、「適当である」とする回答が最も多く37校(62.7パーセント)であり、「やや多すぎる」19校(32.2パーセント)、「多すぎる」3校(5.1パーセント)である。プレテストでは、「やや多すぎる」とする回答が最も多く(59校中34校)、「多すぎる」(6校)と併せると7割に近かったので、この点でも大きな改善と受け止められているようである。問題の傾向については(この項のみ、無回答が1増の6校)、「適当である」とする回答が45校(77.6パーセント)であり、「やや実務的すぎる」10校(17.2パーセント)、「やや理論的すぎる」3校(5.2パーセント)である。ここでも、「適当である」とする回答が顕著に増加し(プレテストでは58校中39校67.2パーセント)、8割近くを占めていることになる。試験内容が法科大学院の授業に与える影響については、「多少の変更を要する」32校(54.2パーセント)、「変更を要しない」27校(45.8パーセント)と、回答がほぼ2分されている。プレテスト時と比べると、「大きな変更を要する」とする回答がなくなり、「変更を要しない」とする法科大学院(プレテストでは59校中21校35.6パーセント)がかなり増加したことになる。
以上のように、全国の法科大学院は、新司法試験が、プレテストと比べると、全体として大きく改善されたと評価していると言ってよい。自由記述による回答においては、このことについての試験委員の苦心・努力に対する謝意を記すものがあった。他方、自由記述では、試験日程が過酷で、受験者の身体的・精神的負担が大きすぎることを指摘するものが複数あり、この点は今後の大きな検討課題だと思われる。また、経験・年齢が一層多様な未修者が受験する来年度についての配慮を求める意見も見られた。

3. 短答式試験について
短答式試験については、今年は、分野ごとに回答を求めたので、個別の評価は後掲のところを参照されたいが、自由記述の回答には、受験者の負担やいわゆる足切りがなされることを理由として、論文式試験と分けて実施されるべきであるとする意見、問題文が長すぎ、処理の効率性を求めることに傾いているとする意見、設問の形式は簡潔なものであるべきだとする意見、などがあった。

(1) 公法系
  1問題の水準については、やや難しすぎるが24校(回答59校)40.7パーセント、適当であるが34校57.6パーセント、2問題の量については、多すぎるとやや多すぎるが併せて25校42.4パーセント、適当であるが33校55.9パーセントという回答になっており、概ね、やや難しく・多いという判断と適当という判断に二分されている。以上の評価が公法を専門とする教員によるものであるという点を踏まえると、多くの受験者にとっては、難しい出題であると感じられたのではないかと推察される。なお、3問題の傾向については、49校83.1パーセントが適当であるとしている。
憲法分野の出題については、出題領域が総論、統治機構及び基本的人権の全般にわたっていることについて、これを評価する意見が示されているが、個別の問題については、細かな知識を要求しすぎているとの批判や、選択肢の中に、文意が明確でなかったり、正誤の判断が明確にできなかったりするものが含まれているとの指摘もあった。
問題の水準と量は相互に関連付けて調整すべきであり、短い解答時間で微妙な言葉のニュアンスや行間を判断させる必要のある出題は望ましくない。特に、最高裁判所の判決の理由付けの細部や表現について問うことが適当か否かについては、法科大学院が3年の課程であり、法律基本科目の総単位数が概ね60単位程度に抑えられていることから、すべての判決を授業において詳細に検討する時間はないということを踏まえて、検討されるべきではないかと思われる。やはり、短答式試験は、特定の分野を専門とする者ではなく、すべての法律家にとって基礎となるべき知識を問う試験であることを、徹底する必要があろう。

(2) 民事系
問題の1水準、2分量、3傾向とも、約65パーセント以上が適当だとしている。もっとも、1問題の水準については、適当だとする48校(回答62校)76.2パーセントに対し、やや難しすぎるという意見が14校22.2パーセントあり、2問題の量については、適当だとする41校65.1パーセントに対し、多すぎる、やや多すぎるという意見が併せて22校34.9パーセントある。これに対し、3傾向については、53校84.1パーセントが適当だとしている。
出題の傾向としては、条文や判例に関する知識を問う問題が多く、そのなかには、細部にわたる知識を要求するものもある。法令集や判例集を参照すれば容易に解答できる問題でも、記憶を頼りにするとなれば時間がかかり、設問の表現にとらわれて正答ができない可能性もないとはいえない。今後も資料の参照を認めないという前提であれば、問題のレベルをいっそう基本的なものとすることも、考慮に値するように思われる。
自由記述による回答においては、問題が細かい(2校)、やや細かい(2校)ので基本的な問題にすべきだとの意見があるが、これに対しては、細かいが競争試験の面があるので仕方ない(1校)、細かい知識を聞く面が減った点でプレテストより改善されているという意見(1校)、やや難しすぎる、量がやや多すぎるという意見(1校)と、難易度と傾向は基本的に適切だという意見(1校)がある。
今までの短答式よりかなり簡単になったとの意見(1校)、これからも素直な問題を望むとの意見(1校)、条文を中心に幅広い基礎知識を試す短答式試験に適切な問題である(1校)、あるいは、条文の正確な理解で解ける適切な問題だとの意見(1校)がある。
「判例の趣旨に照らし」という問題について、判例知識の記憶に流れるおそれを指摘する意見がある(2校)が、商法と民事訴訟法について、問われている判例は基本的なものだとの意見がある(2校)。要件事実・主張立証責任に関する問題については、暗記に走ることを危惧する意見(1校)と、使用頻度が高く重要な条文に限られているので適切だとの意見(1校)とがある。
以上の他には、五肢択一にこだわらなくてよいという意見(1校)、配点の比重が問題の難易度・分量に対応していないとの意見(1校)がある。
プレテストの問題に対しては、判例の知識を問う問題が多すぎる(10校)、分量が多すぎて時間が足りない(8校)、基本的な知識・理解を問う問題にすべきである(9校)、難しすぎる(4校)という意見、条文等の知識問に対する疑問(3校)、供託や民事執行法・民事保全法・人事訴訟法からの出題に対する疑問(3校)、家族法の問題が易しすぎるという意見(1校)が多かったが、今回の試験では、大きく改善されたと評価されている。
商法分野については、プレテストにおいて、問う内容が細かすぎる出題があるとの問題があったが、今回の出題内容は概ね基本的なものとなっており、水準・量とも適切なものであったと考えられる。
民事訴訟法分野については、全体としては基本的な知識を確認するものであったと考えられる。出題範囲は民事訴訟法全般のほか、民事保全法(1問)や人事訴訟法(1問)にも及んでいるが、特に専門的な内容ではない。もっとも、自由記述においては、限られた時間内で解答するには分量がやや多いことを指摘する意見もあった。

(3) 刑事系
問題の水準については、回答59校のうち49校(83.1パーセント)が「適当である」と評価しており、「やや難しすぎる」とするものが9校(15.3パーセント)、「難しすぎる」とするものが1校(1.7パーセント)である。問題の量については、「適当である」とする回答が最も多く30校(50.8パーセント)であり、「やや多すぎる」が23校(39.0パーセント)、「多すぎる」が6校(10.2パーセント)である。問題の傾向については、「適当である」とする回答が49校(83.1パーセント)であり、「やや実務的過ぎる」6校(10.2パーセント)、「やや理論的すぎる」3校(5.1パーセント)、「理論的すぎる」1校(1.7パーセント)を大きく引き離して、積極的な評価がなされている。以上のとおり、問題の水準及び傾向については、おおむね「適当である」と考えられているが、問題の量については、適当と見る評価と分量過多ととらえる評価が相半ばしている。
自由記述欄においては、全体として質・量ともに適切であるとする意見が相当数述べられている。また、出題内容としても、法曹としての基礎的知識の幅広い習得を要求していること、条文を示して意味を問う出題があること、複数の学説による解決を問う出題があることなど、種々の観点から積極的な評価がなされている。
一方、出題の形式として、技巧的で解答に時間を要するものが見られる点、設問が複雑でわかりにくい点、依然としてパズル的作業が必要となる出題がある点などから、基本的な事項をシンプルに問うべきだとする意見が複数見られた。問題の量とも関係し、今後更に改善されることが望まれているといえよう。また、問題の内容としては、全体として基本的な事項を問うものという評価がなされている反面、いくつかの設問を具体的に指摘して、細かな知識を求めすぎていると批判する意見も見られた。
自由記述欄に記載された意見のうち、刑事訴訟法分野に関するものは、すべて、基本的に適切な出題であるとするものであった。問題の水準・傾向はこれを維持すべきであるとする意見、基本的な条文に関する知識を問うもので、複雑な論理操作を要しない適切な出題であるとする意見、判例の取り上げ方が基本的なものに限定され、知識の確かさと推論の適切さを問う適切なものであるとする意見、基本的かつ重要な事項について日ごろからバランスのとれた学習を求める適切な出題であるとする意見などがあった。

4. 論文式試験について
(1) 公法系
  1問題の水準については、難しすぎるとやや難しすぎるが併せて30校(回答59校)50.9パーセント、適当であるが29校49.2パーセント、2問題の量については、多すぎるとやや多すぎるが併せて33校56.0パーセント、適当であるが26校44.1パーセントという回答になっており、論文試験についても、全体としては、やや難しく・多いという判断と適当という判断に2分されている。3問題の傾向については、適当であるが37校63.8パーセントを占めているが、4授業内容への影響について、26校44.8パーセントが多少の変更を要すると回答している点が注目される。
憲法分野については、表現の自由や経済的自由に関する基本的な論点に救済の問題を結びつけた出題で、概ね適当との評価が示されている。ただ、各当事者の立場から立論させる点については、出題の趣旨が明確になったとして評価する意見と、解答に重複が生じるために整理がしにくい、あるいは時間がかかるなどといった問題点も指摘されている。この点については、このような出題形式をとった場合に、各小問をどの程度厳密に分離して採点するのかなど、共通の了解を作っていく必要があろう。
行政法分野についても、サンプル問題及びプレテストを踏まえて、様々な評価・検証の作業がなされてきたこともあって、今回の出題に対する評価はおおむね良好である。
しかし、「多種多様で複合的な事実関係に基づく、比較的長文の具体的な事例を出題し、十分な時間をかけて解答させることは望ましいが、受験生にとっては長すぎたのではないか」という指摘は重要である。受験者が公法系全体(4時間)で行政法に割ける時間は、標凖で2時間である。すると、与えられた情報をインプットし、事案を大まかに解析できる時間はそのうち30分程度であろう。この観点からは、「今回の出題における情報量は過多であったのではないか」、との意見が多く見受けられた。
特に、設問1については、その下敷きになったと思われる「御所町2項道路事件」最高裁判決(最判平成14年1月17日)を踏まえて、処分不存在確認訴訟について言及することを求めるのは、現段階では3〜4単位程度しか割り振られていない法科大学院における行政法教育では難しい。また、一括指定に処分性を認めること自体にも、議論の余地はあり、最高裁判決を前提とはせずに、自由に議論させた方がよかったとも思われる。次に、処分性を認めた以上、1処分の無効確認訴訟か、2処分の無効を前提とする当事者訴訟へと進んでいくことになるだろうが、当事者訴訟の可否については種々議論があるところであり、特に行政事件訴訟法の改正後、議論は更に錯綜している状況で、全国の法科大学院での教育がそこまでフォローできているかどうかは疑問であろう。
これは、全分野に共通することであるが、一人で7科目を受験する受験者に対し、全科目について高い到達点を求めることは酷に過ぎる。問題文及び資料の量、解答すべき論点の数、期待される解答の水準及び解答方法については、限られた解答時間であることを前提に、特定の分野を専門とする者ではなく、法科大学院教育を修了した標準的な者を基準として設定されることが望まれる。

(2) 民事系
問題の1水準、2分量、3傾向とも、60パーセント以上が適当だとしている。しかし、1問題の水準については、24校(回答63校)38.1パーセントがやや難しいとしており、易しすぎるが0パーセントであることと比較すると、難しいとの評価に傾いている。ただ、プレテストのときと比べると、難しすぎるとの評価が数パーセント減っている。2問題の分量についても、多すぎる2校3.2パーセント、やや多すぎる16校25.4パーセントが、やや少なすぎるとする0パーセントとの対比で、多すぎるとの評価に傾いている。しかし、プレテストのときと比べると、多すぎるとの評価が10数パーセント減っている。3問題の傾向は、適当である38校60.3パーセント、やや実務的すぎる23校36.5パーセントが大きな比重を占め、実務的すぎるとの評価がわずかに勝っている−−赤字にした部分は、このままでよろしいでしょうか?(理論的すぎるは0パーセント、実務的すぎるは0パーセント)。プレテストのときと比べると、実務的すぎるとの評価が10数パーセント増えている。以上に対し、4授業内容への影響については、多少の変更を要する30校(回答62校)48.4パーセントと、変更を要しない32校51.6パーセントにほぼ2分される。この比率は、プレテストの場合とあまり変わらない。変更を要するが48.4パーセントに及んだのは、自由記載からみて、第2問が影響したものではないかと推測される。
第1問(商法)については、多量の情報から必要な点を抽出させる出題を求める意見もある(1校)が、判例と学説の確実な理解を求める点で適切である、問題文も短く、シンプルで解きやすい、良問であるとの肯定的な評価が多い(6校)。プレテストでは、商法プロパーな出題ではなく、商法の能力を判断するのに適切かという疑問があったが、今回の出題は商法プロパーのものとなっており、適切なものといえる。商法については、今回のようにプロパーとして出題する形式が支持されているのではないかと推測される。なお、問題文中の記号が特定の教材を推測させるとの指摘があった。
第2問のうち民法の問題(設問1及び設問3)については、一般的には肯定的評価が多い。「問題発見、要件事実、理論的展開能力、問題解決能力についてバランスよく配分されている」、論点中心の勉強では対応できない、その場で基本から考えさせる点で、良い問題という評価が多い(7校)。しかし、いくつかの問題点が指摘され、あるいは、意見が分かれている。
  1要件事実論の出題に対し、「記憶よりも理解を試す適切な問題である」という意見がある(2校)一方で、「要件事実・主張立証責任の基礎を試す出題を望む」という意見がある(1校)。
  2動産・債権譲渡登記という特別法が関連することについては、意外性や、学生の負担・不安を指摘する意見があり(4校)、最重要でない、マイナーな分野からの出題であるとか(2校)、平成11年、平成13年の判例の知識を要求するのかという疑問がある。
  3実務的にすぎる、やや実務的にすぎるという意見も多いが(4校)、これは、1要件事実論の比重が小さくないことや、2特別法が関連していることに対する評価と重なるものであろう。
以上の123の点は、出題の趣旨が十分には理解されていないことによることも考えられる。採点基準の公表を望む意見がある(1校)が、詳しい採点のポイントの公表が必要なのかも知れない。その他にも、問題量がやや多く、時間が足りないとの意見がある(5校)。
第2問のうち民事訴訟法の問題(設問2及び設問4)についても、問題の水準および内容を肯定的に評価する意見が多い。どちらの設問も、重要な論点について、どこまで深く正確な理解をしているかを試す内容となっており、設問の形式もよく考えられているように思われる。たとえば、設問2では、前半部分(1の質問)で、手続原則についての基礎的な知識を問い、後半部分(2の質問)で、具体的な事案に適用する際に生ずる問題を指摘させている。理論と実務のバランスに配慮した設問といえる。設問4は、関連する基本判例を理解していることを前提としつつ、事案へのあてはめにおいては多様な考え方が成り立ちうることを指摘させるものである。論理的な思考力や応用力を問うものといえよう。自由記述欄の記載を見ても、設問2の2に対する部分は具体的な応用力を試す良問であるとの意見(1校)、設問4が異なる立場からの立論を求めていることについての肯定的評価(2校)があった。
これらの問題について、一定の水準に達した答案を2時間以内に作成するには、基本書の内容を正確に理解しているだけでは足りない。論点を多角的に分析して解決策を発見する能力や異なる見解からの反論を想定しつつ、説得力ある議論を展開する能力が必要である。自由記述欄においては、問題の水準・内容とも適切であるとの評価が一般的ではあるものの、第2問については問題の量が多く、制限時間内に答案を書き上げることがむずかしいとする意見も、少なくなかった。このことは、第2問が民法に関する部分も含めて、暗記にたよるのではなく、考えて書かなければならない問題であるという評価を示すものであろう。受験生に求められている能力は、法科大学院の授業で、教師との質疑や学生相互間の議論を経験することによって、鍛えられていくものである。規定時間内に合格答案を書き上げる学生を育てることは容易ではないとする意見(1校)もあったが、法科大学院の教育の理念にそった適切な出題であったように思われる。
なお、自由記載欄には、これまでに紹介した意見のほか、設問4について、オーソドックスな良問であると評価しつつ、1行問題に近く、設例の事実関係が生かされていない、訴訟実務とも関連する出題を望むとする意見がある(1校)。

(3) 刑事系
問題の水準については、回答60校のうち53校(88.3パーセント)が「適当である」と評価しており、「やや難しすぎる」とするものが5校(8.3パーセント)、「やや易しすぎる」とするものが2校(3.3パーセント)である。プレテストでは、「適当である」とするもの69パーセント以外に、「やや難しすぎる」とするものが23パーセントにのぼるなどしていたが、それらが大幅に減少し、問題の水準について大勢は「適当である」と評価している。問題の量については、「適当である」とする回答が最も多く48校(80.0パーセント)であり、「やや多すぎる」が11校(18.3パーセント)、「多すぎる」が1校(1.7パーセント)である。プレテストにおいては、これらの比率は順にほぼ5割、4割、1割であり、半数の回答が「やや多すぎる」と「多すぎる」に分布していた。これと比較すると、改善ありとする評価がかなり見られているといってよい。問題の傾向については、「適当である」とする回答が50校(83.3パーセント)であり、「やや実務的過ぎる」8校(13.3パーセント)、「やや理論的すぎる」2校(3.3パーセント)を大きく引き離して、積極的な評価がなされている。プレテストにおいて見られた「やや理論的すぎる」5パーセント、「やや実務的すぎる」16パーセント、「実務的すぎる」3パーセントなどの評価が減少し、問題の傾向は一層適切なものとなったととらえられている。授業内容への影響の点では(回答58校)、「変更を要しない」とするもの44校(75.9パーセント)に対して、「多少の変更を要する」とするもの14校(24.1パーセント)であり、これらがほぼ2分されていたプレテストと比較すると、好意的に受け止められているといえよう。
自由記述欄を見ると、全般的な指摘として、標準的な学生の能力によく配慮された問題であること、プレテストに比べて問題の難易度が改善されたこと、少し時間が不足するかもしれないが良問であること、法曹としての実践力を試す出題であること、などの観点から、積極的な評価を下す意見が相当数見られた。問題の形式、内容の点からは、長文の事例から問題点を発見させて、それを解決するために適切な事実を抽出させることを主眼としている点で妥当なものであるとする意見があった。もっとも、個別には、刑法と刑事訴訟との融合問題を求める意見、もっと実務上の視点を反映した問題を作成すべきだとする意見、その一方では、設問との関係で問題文が長すぎるとする意見、事実認定に重きが置かれすぎているとする意見など多様な意見が見られた。
刑法については、基本的知識が問われ、問い方についても実力を測定するにふさわしい形になっているとの意見の一方、事実関係が複雑であり、かなり高度な事案分析能力が必要とされ、質・量の両面でやや難しい問題であるといった意見も見られた。
刑事訴訟法分野についても、全般的には、肯定的に評価する意見が目立った。すなわち、基本的知識を正確に理解しているかを問うものであること、問題の水準・傾向・分量ともに適切であること、与えられた事実関係から重要な事実を抽出し、法的問題を論じさせるという出題の形式・水準が適切であること、学生の能力を判定するのに適切な良問であることなどの観点から、おおむね適切・妥当との評価がなされているといえる。もっとも、一部ではあるが、取り上げるべき論点が多すぎ、解答時間との関係で時間不足・論述不足に陥ってしまうし、取り上げて検討すべき事項にも、難しすぎる論点が見受けられると指摘する意見や、従来の事例問題と変わるところがなく、立場の違いによる複眼的思考を試す問題になっていなかったことを指摘する意見も見られた。

(4) 知的財産法
知的財産法の問題の水準に関するアンケート結果は,難しすぎるが3校5.9パーセント,やや難しすぎるが22校43.1パーセント,適当であるが25校49.0パーセント,やや易しすぎるが1校2.0パーセント,易しすぎるはなしである(回答51校)。無回答(13校)の割合が多いことを斟酌すると,他の科目に比べてやや難しかったという評価となろうか。
他方で,問題の量に関しては,多すぎるが0パーセント,やや多すぎるが12校23.5パーセント,やや少なすぎるが3校5.9パーセントと,他の科目に比してとくに多すぎるという評価が目立つわけではない。
両者を総合すると,問題の量ではなく,問題の質が難しく感じさせる原因であったことが分かる。自由記述欄の記載をも考慮すると,その原因は,おそらく,特許法(第一問),著作権法(第二問)ともに,各種論点を組み合わせた出題であったことにあるのだろう。民法等の基本科目に比べれば,選択科目である知的財産法に関しては,法科大学院の講義も,単位数次第では,事例式の解き方にまで意を尽くした授業をできない場合があり,それが本問を難しい評価させる原因となったかと思われる。
自由記述欄には,第一問の特許法に関して,実務的な問題であることを評価する意見が多勢を占めている。
もっとも,若干ながら,均等論に関連して技術的な論点に関する設問を危惧する意見もあった。純粋に法律的な論点だけを尋ねるべきであるという趣旨である。たしかに,実務では,技術的な事項に関して,裁判官は調査官や専門委員から,弁護士は弁理士や依頼者から技術担当者の説明を受けることができる。しかし、そうはいっても,技術的事項に関する法的な論点について知識がなければ,当該技術的事項の法的な意義を理解できない。しかも,設問は,技術的な事項に立ち入るものではなく,均等論に関する基本的な要件論に関する知識を問うに過ぎない。
この点に関連して,法律論中心の授業では対応が困難だとの意見も出されている。たしかに具体的な事案に立ち入らず,講義中心の授業のみを受講している受験生にとっては,対応が困難であった可能性はある。ただ,本問は,そのように実務でまごつかないための知識を取得できる授業を法科大学院に要求するものであり,積極的な評価もありうるかと思われる。
このほか,特に特許法に関する第一問が,特定の裁判例(大阪高判平成13年4月19日[ペン型注射器事件])をモディファイしたものであったことに対して,この裁判例の知識がある者に有利ではないかとの指摘もある。設問は,当該判決の知識がなくとも十分に解答できるように配慮されてはいるが,たしかに,当該判決を知っていれば,均等論に関して本質的部分の把握の仕方が尋ねられていることを見誤ることはないであろう。その意味で,知識のある者が有利となる可能性は否めないと思われる。
問題はこれをどのように評価するかである。出題者の意図は,むしろ,この程度の有名な裁判例の知識を要求しているのかもしれない。しかし,この判決は,判例百選にも掲載されているが,最高裁判決ではなく,知的財産法を勉強した者が必ず読んでいなければならないというほどの判決でもないのかもしれない。かりにそうだとすると,演習等でたまたまこの裁判例を扱った受験生が有利になる事態に対する疑問は,あながち的外れともいえないのかもしれない。技術的な事項について,ここまで具体の事件に似せて出題する必要はなかったのであるから,今後,裁判例を題材にする場合には,工夫を要するところなのかもしれない。
第二問の著作権法に関して,自由記述欄でほとんど言及がないのは,第一問の特許法に比べると,慮外に思う者が少なかったということであろう。設問は,技術的な事項や,著作物の評価などに立ち入るものではなく,事案も特定の事件を想起させるようなものではない。その意味で,第二問はオーソドックスな出題であると受け止められたのであろう。

(5) 労働法
アンケート結果は、無回答を除き回答校48校を母数とすると、水準について39校81.3パーセント、量について38校79.2パーセント、傾向についても36校75.0パーセントが、「適当である」と回答しており、概ね、適当な内容であったと受け止められている。授業内容への影響については、「変更を要しない」が37校77.1パーセントである。プレテストのアンケートでは「多少の変更を要する」が40パーセントあったが、今回は22.9パーセントに減少した。
自由記述欄では、「法理論と実務的要素とを適度にとりいれた適切な問題」、「プレテストに比べて改善が見られ、良問」といった肯定的意見が多かった。また、個別法・集団法から各1問の出題についても適切とする意見が複数あった。他方、問題点を指摘するものとしては、第1問で具体的な退職金額の計算を求めるのは実務的技術論に走りすぎであるとする意見があった。その他、事実関係の記載が少ないことを問題視する意見がある一方で、事例問題の出題以外に、「なになにについて論ぜよ」といういわゆる一行問題の出題を促す意見が見られた。なお、受験生は「どこまで解答することが求められているかに迷った可能性が高い」として、模範解答および詳しい採点基準の公表を求める意見があった。

(6) 租税法
問題の水準については、回答42校中30校71.4パーセントが適当とし、11校26.2パーセントがやや難しいとしている。問題の量については、9割を超える38校が適当と回答している。問題の傾向については、28校(この項のみ、回答41校)68.3パーセントが適当としているが、やや実務的すぎるとする回答も10校24.4パーセントある。授業への影響についての回答は、変更を要しない26校61.9パーセント、多少の変更を要する14校33.3パーセントであり、大きな変更を要するとするのは2校4.8パーセントのみである。
問題1は、租税法の分野ではよく知られた、租税法を学んだ者なら当然知っているはずの所得税法上の2つの判決が出題の基礎となっている。その意味で、この出題には、「租税法上の基本判決の学習が必要である」ということを示唆するメッセージがこめられている。もっとも、それぞれの判決における議論の内容を完全に理解するためには、かなりの程度の租税法に対する知識と理解力が必要とされる。したがって、出題者がどこまでの解答を求めているのかによって、問題の難易度やそこで要求されるレベルには大きな差異が生じることは否定できない(一部では、基礎となる判決自体の評価が定まっていないとの批判も見られる)。ただし、設問を見る限りでは、判決の内容を詳細にわたって知ることまでも要求しているとは思えない。実際、アンケート結果を読んでも、大方の向きはこの出題が良問であり、「現在の授業や学生のレベルを考えると、適切な問題である」、と評価している。
次に問題2も、過去の裁判例が問題作成のヒントとなっている。出題者の意図は、判決についての知識を求めるよりは、具体的な事例に直面したときに、自己の租税法の知識や理解に基づきそれに対応する議論を如何に提示するか(あるいは、事実関係をどのように評価し、課税要件事実を如何に認定するか)、という問題分析能力や対応能力を確認することにあったと思われる。法人の寄附金と絡めて役員賞与としての認定の是非が問われるなど、やや実務的な色彩が強いことは否定できないが、法人税法についての基本的な知識があるならば、解答をするのにそれほどの困難さを感じなかったであろう。したがって、アンケート結果でも多くの見解がこの問題も「良問」と評価している。ただ、教科書的な勉強を主にしてきた多くの受験生にとっては、問題1と比べて問題2の方が難しく感じられたのではあるまいか。さらに、法的論点が不足していると感じる意見や、範囲の広範さと共に、法人税に関してここまで踏み込んだ問題が出るとは「予想外である」とする見解も表明されている。
なお、全体を通じて、判決を読む際には、判旨や結論部分だけでなく、1どのような事実関係の下で、租税法上のいかなる論点がどういう形で提示されているのか、また、2当事者のどういう議論に基づいて裁判所の判断が下されているのか、という視点から、事案の具体的内容に即して判決を丁寧に読み込むことの必要性を認識させるような出題内容となっている。サンプル問題やプレテスト問題と出題形式は同様であり、先に公表された新司法試験の出題方針にそった問題であるといえよう。

(7) 倒産法
問題の水準については、回答52校(無回答12校)のうち43校(82.7パーセント)が「適当である」としている。「難しすぎる」「やや難しすぎる」とする回答はあわせて6校(11.5パーセント)である。プレテストで「適当である」と回答したのは、47校中26校(55.3パーセント)であり、「難しすぎる」「やや難しすぎる」とする回答はあわせて20校(42.6パーセント)であったことに比べると、大幅に改善されたと評価されているようである。
問題の量については、41校(78.8パーセント)が「適当である」と回答し、「多すぎる」「やや多すぎる」とする回答はあわせて9校(17.3パーセント)である。この項目についても、「多すぎる」「やや多すぎる」があわせて33.3パーセント(回答48校中16校)であったプレテストに比べて、大きな改善があったと見られているように思われる。問題の傾向については、45校(86.5パーセント)が「適当である」と回答し、残りは「やや理論的すぎる」とする3校(5.8パーセント)と「やや実務的すぎる」とする4校(7.7パーセント)に分かれる。なお、プレテストでは、「適当である」とする回答が72.9パーセント(48校中35校)であった。
授業内容への影響については、37校(71.2パーセント)が「変更を要しない」と回答し、「大きな変更を要する」または「多少の変更を要する」と回答したのは15校(28.8パーセント)である。プレテストでは、「変更を要しない」とする22校(46.8パーセント)を上回る25校(53.2パーセント)が「大きな変更を要する」または「多少の変更を要する」と回答していた。
以上のアンケートの結果にもあらわれているように、倒産法の問題は、難易度、分量とも適当であり、理論と実務のバランスにも配慮されているように思われる。自由記載による回答の中に、第2問が狭い範囲の出題であることを指摘するものがあったが、全体としては、基本的な事項を正確に理解できているかどうかを確認する内容といえよう。

(8) 経済法
経済法については、受験者がいなかった大学があったことによるのか、いずれの質問項目についても3割以上の無回答があった。回答を得た法科大学院43校についてみると、問題の水準では、「難しすぎる」が2校約5パーセント、「やや難しい」が7校約16パーセント、「適当である」が31校約72パーセント、「やや易しすぎる」が3校7パーセントとなっている。問題の量については、「適当である」が37校86パーセント、「やや多すぎる」が4校約9パーセント、「やや少なすぎる」が2校約5パーセントである。問題の傾向についても「適当である」が31校約72パーセント、「やや理論的すぎるは」は3校7パーセント、「やや実務的すぎる」が9校約21パーセントである。授業への影響(この項のみ、回答42校)については、「変更を要しない」が29校69パーセント、「多少の変更を要する」が13校31パーセントである。
総評として、いずれの問題とも、法的事実抽出能力と法令適用能力の双方が問われており、非常に工夫された良問である。ただし、サンプル問題・プレテスト・本試験問題とでそれぞれ出題傾向が変わっており、一貫性にやや疑問が残る。また出題内容にやや実務的傾向がみられる。
第1問については、結論として「独禁法違反行為のいずれにも当たらない」と答えることは容易かもしれないが、もちろんそれだけでは解答にならないのであって、いずれかの条項に触れつつその要件該当性を論証することが求められるため、当該事案に最も関係しそうな条項が何かを析出できる能力を涵養しておく必要がある。これは、個々の条項の実際上の適用場面の知識を前提とすることから、結局独禁法の全般について、現実の法運用を含めての理解が求められているといえよう。その意味では、本問題は決して平易な問題ではないと思われる。
第2問についても、同じことが言え、生産設備の買取というやや難易度の高い問題を含んでおり、試験を通した受験者への要求水準は高いと思われる。

(9) 国際関係法(公法系)
アンケート結果によれば、問題の水準については、回答校46校のうち過半の27校58.7パーセントが適当としているが、難しすぎる・やや難しすぎるを併せると18校39.1パーセントに上っている。これに対して、問題の量については、39校84.8パーセントが適当とし、やや多すぎる6校13パーセント、やや少なすぎる1校2.2パーセントである。問題の傾向については、ほぼ7割の32校が適当としており、理論的すぎる・やや理論的すぎるが併せて7校15.2パーセントである。授業への影響は、過半の25校が変更を要しないとしているが、多少の変更を要する19校42.2パーセント、大きな変更を要する1校2.2パーセントであり、評価が分かれている。
二問とも分量的には適当である。昨年のプレテストにみられた,第1問と第2問の分量的アンバランスも解消されている。
難易度も適当なレベルにあり,その意味で良問といえる。ただ,第1問は条約法にかかわる設問であり,第2問は慣習法の形成にかかわる問題であって,ともに国際法の法源の分野の問題である。受験生の力量の正確な評価という観点からすれば,出題領域のバランスに配慮されることが期待される。

(10) 国際関係法(私法系)
アンケート結果では、水準、量につき適当とする意見の割合はプレテストと略変わらないが(それぞれ29校(回答46校)63.0パーセント、33校71.7パーセント)、やや難しすぎるとの回答、やや多過ぎるとの回答が大幅に増えている(水準は8パーセントから12校26.1パーセント、量は3パーセントから10校21.7パーセント)。自由回答には、難易度の高さ(1校)、設問量の多さ(2校)への言及があり、プレテストに比べ今回の問題が若干難しく、量が多いと感じられたことが窺える。ただし、プレテストに対しては、基本的で相対的に簡単な問題だとの自由回答が少なくなかったので、今回の試験問題の水準・量はそれに応えた結果だと言うことができよう。傾向については、適当とする割合が前回を上回っており(44パーセントから37校(回答44校)84.1パーセント、なお、やや理論的だとする割合は、9.5パーセントから7校15.9パーセントに増加)、家族法分野と財産法分野で各一問、国際裁判管轄・準拠法選択・外国判決承認という国際私法の基本分野を網羅したバランスの取れた出題がプレテスト同様今回も肯定的に評価されたことが見て取れる。授業内容への影響については、「多少の変更を要する」との回答割合が大きく増加した(13パーセントから19校(回答46校)41.3パーセント)。その理由は各校様々であろうが、自由回答からは、理由の一端が国際取引法への対応にあることが窺える。
自由回答(12校)は、国際取引法関連の問題と、個々の設問の適切さに関する。国際取引法に関しては、プレテストにおいても国際取引法の問題を増やすべきか否かで意見が分かれていたが、今回も、第2問設問2につき、全体に占める分量の少ないとの指摘と共に(1校)、その内容に関し、国際取引法ではなく民商法の問題だとの批判がある(3校)。そして、この出題傾向が続くのであれば、「国際取引法部分の司法試験準備としては、民法、商行為法、国際海上物品運送法、インコタームズ及び信用状決済を中心に勉強しておけば十分」であるとか、今回の問題には国際取引法が「試験問題にはなじみにくいということが反映」されているので、「国際関係法(私法系)に国際取引法を範囲とすることの見直しも視野に入れ」た検討が必要だとの意見がある。今後に残された課題であろう。
個々の問題の適切さに関する意見をみると、第1問設問1については、扶養料ないし養育費請求事件の国際裁判管轄は特殊な論点だとして、その適切さを疑問視する意見(1校)、受験生を惑わせる無関係な記述は意地が悪いとの指摘(2校)がある。設問2については、扶養義務の準拠法に関する法律4条の知識を問う「知識偏重の問題」であり、「重箱の隅をつつくタイプの問題」であって「基本知識を問う新司法試験の趣旨から」外れるのでないかとの指摘がある(4校)。設問3については、「多くの受験生にとって簡単すぎる問題」との意見もある(1校)。第2問については、設問2に関する既述の国際取引法関連の意見を除くと、特に批判的な意見はなく、寧ろ、設問3については、輸入盗難車の所有権に関する最高裁判決の基本的理解を試す良問だとの指摘がある(1校)。なお、第2問全体につき実務的観点からの不自然さが指摘された(1校)。

(11) 環境法
アンケートに対する回答数は37校で多くないが、問題の水準については、24校64.9パーセントが適当とし、12校32.4パーセントがやや難しすぎる、1校2.7パーセントがやや易しすぎると答えている。問題の量については、30校81.1パーセントが適当、4校10.8パーセントがやや少なすぎる、多すぎる・やや多すぎるを併せて3校8.1パーセントである。問題の傾向は、28校75.7パーセントが適当とし、7校18.9パーセントがやや理論的すぎると回答しており、やや実務的すぎる・実務的すぎるとするものは各1校である。授業への影響については、22校59.5パーセントが変更を要しないとしているが、15校40.5パーセントが多少の変更を要すると答えている。
まず問題水準について述べると、第1問は不法投棄に関する法規制及び排出者責任の原則の理解を法制度の変化の背景とともに問うものであり、適当と思われる。
第2問についても、自然保護と開発との対立という事例を通して、設問1が訴訟の提起にあたり「当事者適格」について判例の動向を述べさせている。また設問2は、環境法の重要な理念である「環境権」について考えさせるものである。いずれの設問も、環境法の基本問題であるので、水準としても問題なく、良問である。今後も、これ以上難化しないことが望まれる。
次に出題の形式であるが、第1問は法の改正前についての規定を資料として提示し、設問形式も許可者が「不法投棄した場合を念頭において論ぜよ」あるいは、「改正にいたる背景に触れつつ論ぜよ」と指示しているのは、論点を絞るために適切である。第2問については、設問2の「法政策的仕組み」という用語について「意味内容が定着した表現で」又は、「個別法制と切り離して『法政策的仕組み』として何を論じるべきか」、環境法の理念を軸に論じさせることになるのか、さらには「設問が多少抽象的であり論述すべき内容がやや多い」という意見も見られる。
なお最後に、前回のプレテストの折にも指摘したところであるが、環境法の出題に当たっては、特に民法や行政法との切り分け・棲み分けを適切に行うことが重要であろう。

以上

司法試験等検討委員会委員(50音順)
荒木 尚志(東京大学)   石川 敏行(中央大学)   小林 量(名古屋大学)
杉原 高嶺(近畿大学) 瀬川 信久(北海道大学) 土井 真一(京都大学)
長沼 範良(上智大学) 中森 喜彦(京都大学、主任)
長谷部 由起子(学習院大学) 山中 敬一(関西大学)

ご回答いただいた会員校(64)
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回答が得られなかった会員校(10)
愛知学院大学、香川大学・愛媛大学、慶應義塾大学、信州大学、西南学院大学、中京大学、東洋大学、新潟大学、姫路獨協大学、立教大学



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