ここからサイトの主なメニューです
|
新司法試験考査委員に対するヒアリング概要
- 本資料は、平成19年9月12日及び平成19年10月3日に開催された司法試験委員会にて行われた「新司法試験考査委員ヒアリングの概要」(法務省HP掲載)を抜粋したものである。
○民事系科目
民法担当:
- 他人に呼んでもらう文章を書くという,試験以前の常識に欠けている答案が少なくない。
- 法科大学院で勉強する際に,一般的・抽象的に説かれる理論を具体的事例に適用しながら理解するという姿勢を持ちつつ指導を受けるという基本姿勢に欠けるところがある。
- 法科大学院に求めるものは,境界領域や発展的な問題の理解も大事ではあるが,それよりも,事案の分析力を磨き,基本的な理解を確実に得させることに重点を置くべき。
民事訴訟法担当:
- 全体的な答案の水準については,意見が分かれていたが,全体的に非常に優れた答案が多いわけではないということでは意見の一致がある。
- 法科大学院においては,一般的な理論を具体的な事例に即して展開・応用する能力を涵養する教育が望まれるという意見が多数あり。それとともに,基礎的知識の不正確さが目立ったが,法科大学院教育でこれが改善できるのかといった,法科大学院教育に対する悲観的意見が昨年より目立った。
商法担当:
- 法科大学院における商法科目の教育効果が上がっているという意見がある一方で,抽象的な法的命題はそこそこ書けるとしても,具体的な事実関係にそれらを当てはめる際に,事実関係の特質を踏まえた検討が十分にされているかについては,民法や民事訴訟法と同様に改善の余地があり,法科大学院において教育の改善が必要であろうという意見が多い。
質疑応答:
- 実感として,出来は去年より少し悪いという実感を持っている。
- 数はそれほど多くはないものの,現に,事実への当てはめの部分についてきちんと書いてある答案もあるので,法科大学院教育の成果が出つつあるのではないかと思う。
- 高い水準にまでは届いていないが、全く成果がないわけではなく,事例に即して自分で考えて答えを出さなければならないという意識は,十分できつつあると思う。
○公法系科目
憲法担当:
- 基礎的な論点を落としているのは予想以上であり、もう少し基礎的な理解と論述の重要性について再認識してもらう必要がある。ただ全体としてみれば基本的な論点については,関連した論述をする程度の能力は備わっているのではないか。
- 判例の理解については,法律と条令の関係について理解がきちんとできていた答案は1,2割程度といった印象。
- 答案の内容が薄く,制度自体にも問題。新司法試験科目の多さによって法科大学院での授業で多くのメニューを提供しなければならなくなり,基本的・基礎的な科目に十分な時間が使えなくなっており,試験の科目数について再考の余地あり。
行政法担当:
- 自分の見解はこうだと決断する能力を養ってほしい。事案への当てはめがない答案があり,具体的な事案を念頭に置いた勉強を心がけるように適切な指導をして欲しい。
- 憲法同様,基礎的なレベルを疑うような答案があった。これでよく論文まで来たなというのがあって,法科大学院の修了認定について厳格さを求めたい。
質疑応答:
- 法科大学院のカリキュラムの単位数が基幹科目について不足している。展開先端科目の充実ということが本当に機能しているかどうか。
- 試験にでそうな範囲だけを意識して指導するといったことが起こってはならない。
○刑事系科目
刑法:
- 考査委員間で意見交換を行っており,個人的な印象・意見となる部分がある。
- 刑法の具体的な知識,基本的な理解がなお十分でない答案が目に付いた。
- 基本的な事項をしっかりと理解することが重要。
- 法科大学院に対しては,刑法の解釈論の正確な理解と具体的な運用能力のかん養に一層努められることを期待。法科大学院における教育により,一定の成果は上がっているというように考えられるので,更に充実した教育の実践をお願いしたい。
刑事訴訟法:
- 問題文中の事実をただ書き写しているかのような解答が多かった。
- 奇妙な答案が多数生じた原因は,法科大学院が法律実務の技術的知識や事実の認定に傾斜した教育を行う場であって,法の論理や解釈理論は重要ではないかのような根本的な誤解があるのかもしれないと危ぐされる。
- 結論部分のみを覚えこめばよいという誤った教育がある疑いも否定できない。
- 断片的な知識の覚えこみではなく,基本的な判例の判断枠組みを支えている論理,理由,趣旨,目的等の解釈の一番基礎になる部分の深い学習と習得が不可欠。
- 法解釈の基礎的な理解,あるいは理論的枠組みの習得が不十分。
- 事実の分析もできているという答案も,それなりに認められた。
|
|
Copyright (C) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology