(4)教員組織等
- 教員は,高度の教育上の指導能力があると認められる者を必要数置く。
- 最低限必要な専任教員数は12人。
- 専任教員1人当たりの学生の収容定員は15人以下。
- このほか,各大学院毎に開設授業科目に応じた必要な担当教員を置く。
- 法科大学院の専任教員(必要数分)は,他の学部等において必要とされる専任教員の数に算入しないものとする。(ただし,10年以内を目途に解消されることを前提に,当面,その3分の1を超えない限度で,他の学部等の専任教員の必要数に算入できるものとする。)
- 専任教員(必要数分)のうち,相当数を実務家教員とする。
(・相当数は概ね2割程度以上。)
教員資格
法科大学院は,法曹養成に特化した実践的な教育を行う新しい大学院であり,また研究指導を修了要件とはしないものとするなど従来の大学院とは異なるものである。このような法科大学院の理念を実現するためには,教員資格に関する基準についても,法科大学院独自の観点からのものが必要となる。具体的には,教育実績や教育能力,実務家としての能力・経験を大幅に加味したものとするとともに,その資格の審査に当たっては,現行の大学院設置審査基準における研究指導教員(いわゆる「合」)と研究指導補助教員(いわゆる「合」)の区別は設けないこととすることが適当である。なお,このような教員資格の内容を踏まえると,資格審査手続においては,法曹関係者など実務に精通した者の参加が必要である。
その際,後出の実務家教員については教育に係る研修を行ったり,それ以外の教員については実務に接する機会を設けるなどの工夫をすることが適切である。
専任教員数等(参考資料1)
必要専任教員数等の算定に当たっては,次のとおりとすることが適当である。
- a 最低限必要な専任教員数は12人とする。
これは,法科大学院に最低限必要な授業科目を勘案したものである。
- b 学生の収容定員は,入学定員に3(標準修業年限が3年を超える場合には,当該標準修業年限の数)を乗じて算出するものとする。(各年度毎に入学定員が異なる場合は直近3か年分の総和。)
これは、
- ア 法科大学院の標準修業年限は3年であり,3年の課程の教育を実施するものであること,
- イ 現実にどの程度の数が2年で修了するかはあらかじめ確定し難いこと,
等を勘案したものである。
- c 専任教員1人当たりの学生の収容定員は15人以下とする。
これは,法科大学院は,従来の専門大学院と同様に高度専門職業人養成を行うが,研究指導を修了要件とはしないことから,専門大学院に必要とされている比率(教員1人当たり10人の学生)と同じ比率である必要はないこと,及び,米国の主要ロースクールの例等を勘案したものである。
実務家教員(参考資料1)
法科大学院は,法曹養成に特化して法学教育を高度化し,理論的教育と実務的教育との架橋を図るものであるから,狭義の法曹や専攻分野における実務の経験を有する教員(「実務家教員」)の参加が不可欠である。このため,専任教員のうち相当数は,実務家教員とすることが必要である。
実務家教員の具体的範囲は,担当する授業科目等との関係において判断されるべきものであるが,実務家として認められる具体的な職種や実務を離れてからの期間を一律に定めることは技術的に困難であるばかりでなく,一律に定めることが逆に法科大学院における多様性の排除につながることも考えられることから,少なくとも当面は個別に判断することとし,その判断の積み重ねを待つことが望ましい。
実務家教員の数については,法科大学院は,法曹養成の「プロセス」の一環として,その修了後に(新司法試験を経て)行われる新司法修習との間で適切な役割分担が期待されており,高度専門職業人として直ちに活動を開始するために必要な知識・技能のすべてを教育するものではないことなどを踏まえ,専任教員(必要数分)のうち概ね2割程度以上とすることが適当であると考えられる。
実務家教員としては,5年以上の実務経験を求めることとし,必要とされる専任の実務家教員のうち,少なくとも3分の1程度は常勤とするが,その余は,年間6単位以上の授業を担当し,かつ,実務基礎教育を中心に法科大学院のカリキュラム編成等の運営に責任を持つ者とすることで足りるものとする。ただし,この措置は,将来的に法曹資格を持つ担当教員が増えるなどにより実務家教員とそれ以外の教員の区別が相対化していくのに応じて,適宜見直すことが適当である。
なお、法科大学院は,法曹養成に特化した教育を行うことから,そこにおける教育も法曹経験を有する実務家が,法曹三者のバランスを保ちつつ,教員として関与することが望ましい。弁護士の兼職制限については,これを緩和する方向で立法措置を講ずる旨が閣議決定されているが,現行制度の下では,現職の裁判官・検察官等の教員派遣が極めて困難であることから,これを可能とするための所要の措置を講ずる必要がある。
教員の質の確保等
大学は,当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実施に努めなければならない(大学設置基準第25条の2)こととされている。
法科大学院は,法曹に求められる高度の専門的知識の習得など実践的な教育を行うことから,その教育水準を確保する上で,直接の教育活動を行う教員の質を確保することが重要であるため,法科大学院については,ファカルティ・ディベロップメント(教育内容等の改善のための教員の組織的な研修等)を義務として位置付けることが必要である。例えば,学生による授業評価や教員相互の評価(ピアレビュー)などを通して,それぞれの教員が切磋琢磨して互いに授業内容・方法の向上を図ったり,実務家教員とそれ以外の教員が協力して,教材の選定・作成を行ったり,法曹関係者・大学関係者が協力して,教育能力を高めるための研修や実務研修などを継続的に行うことなどが重要である。
なお,これらについては,法科大学院制度の創設に向けてより早期から実施することが必要であり,関係者等における具体的な検討が急務である。