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資料4

教育体制の充実について(法科大学院特別委員会の審議を踏まえた論点整理)

1.質の高い教員の確保(ダブルカウントの見直し)

  • (1)法律基本科目をはじめとして主要な科目には、年齢構成にも配慮しながら、適切に専任教員を配置すべきである。
  • (2)十分な教育体制を構築するためにも、平成25年度まで認められている学部等との教員数のダブルカウントの暫定措置については、延長しないこととするとともに、各法科大学院においては、可能な限り早いうちに自主的にこれを解消することが望まれる。
  • (3)認証機関による評価においては、教員審査に重点を置き、教員の教育実績や教育能力に関する評価を厳格に行うことが期待される。
  • 多くの法科大学院において、法律基本科目(特に民事訴訟法、刑事訴訟法、民法、行政法など)や展開・先端科目(特に司法試験の選択科目である知的財産法、環境法、経済法など)の専任教員の確保が困難となりつつある。
  • 多くの法科大学院においては、専任教員数のダブルカウントが行われており、将来的な解消にあたっては、学部や博士課程との連携や法科大学院の教育体制の維持について、関係者の間で懸念が生じている。
  • 教員の年齢構成に偏りがある法科大学院が見られ、認証評価においても改善が指摘されている。

2.入学定員の見直しと共同設置(統合)の促進

  • (1)法科大学院の設置については、司法制度改革審議会意見書を踏まえ、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとなっている。
  • (2)このため、法科大学院教育の質の一層の向上のため、例えば、以下のような状況が見られる法科大学院については、自ら主体的に入学定員の見直しを個別に検討する必要がある。
    • 1入学定員の規模に比して質の高い教員の数を確保することが困難
    • 2志願者が減少し競争率が低いため質の高い入学者を確保することが困難
  • (3)特に小規模の法科大学院や地方の法科大学院において、今後、単独では、質の高い教員が十分確保できず、充実した法律基本科目や幅広い先端・展開科目の提供が困難となるなど、教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合には、他の法科大学院との間で教員組織の統合も含めた共同設置や緊密な連携を図ることを積極的に検討する必要がある。
  • (4)このような各法科大学院における共同設置(統合)が促進されるよう、教育体制の整備のための必要な支援が望まれる。
  • (5)これらの取り組みによって法科大学院全体の入学定員が縮小され、法科大学院修了者が相当の割合で法曹資格を取得できるようになれば、優秀な法曹志望者の法科大学院への入学を促進することにつながることが期待される。
  • 志願倍率が、3倍を割っている大学が13校に達しており、一部の法科大学院においては、適性試験の成績が満点の半分にも達しない学生を入学させているケースも見られる。
  • 法科大学院の約8割近くが、法律基本科目の専任教員の確保が困難であると考えている。
  • 入学定員が50人以下の比較的小規模な法科大学院は36校で、全体の約半数近くとなっている。
  • 文部科学省において制度改正が行われ、平成22年度より、国公私立の大学間で法科大学院を共同で設置することが可能となる。

3.教員養成体制の構築

  • (1)ダブルカウントの暫定措置終了後も、法科大学院の教員が後期博士課程における研究指導に携わることにより、教員を育成していくことができるような配慮について検討が必要である。
  • (2)中核的な法科大学院を軸とした、複数の法科大学院による連携型の教員養成システムを構築することも考えられる。
  • (3)法科大学院のカリキュラムにおいても、法科大学院の教員を志す学生のために、外国法や研究論文の作成などの選択的な学習ができるような科目配置を行うよう配慮することも考えられる。
  • (4)法科大学院修了者がさらに後期博士課程に進学することは、経済的な負担が大きいため、授業料免除や奨学金の充実など経済的支援の充実をも図るべきである。
  • 法科大学院修了者のほとんどは法曹の道に進むため、特に博士後期課程への進学を希望する者が減少してきており、将来的な法科大学院教員の養成に懸念が生じている。
  • 教員を目指そうとする法科大学院修了者等については、経済的な負担が大きいが、奨学金など経済的な支援が十分でない。
  • 法科大学院のカリキュラムにおいては、研究論文の作成や外国法といった研究者養成に必要な基礎的な教育が十分なされる体制になっていないとの指摘がある。

4.教員の教育能力の向上

  • (1)教員の教育能力の向上を図るため、各法科大学院におけるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を充実させるとともに、その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を構築する必要がある。
  • (2)教員の教育能力についても厳格な評価を行い、その結果が改善に反映されるような仕組みを検討する必要がある。
  • ほぼすべての法科大学院においてFDのための組織が設置され、主に学生による授業評価や教員相互の授業参観などが実施されているが、これらの取組みの成果についての検証や教育内容・方法の改善への結びつけは、十分行われているとはいえない。
  • 特に、学生による授業評価については、すべての法科大学院で実施され、その結果は授業を担当する教員にフィードバックされているが、学生はじめ学内外に公表されている例は限られており、十分活用されているとは言いがたい状況にある。

5.教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価

  • (1)現在、1回目の認証評価が行われている途上であり、平成20年度にはピークを迎え、44校が受審することとなっており、これらの状況を踏まえながら、本委員会においても検討を継続していく必要がある。
  • (2)2回目の認証評価においては、法科大学院教育の質の保証の観点から、例えば、入学者の適性試験の状況、共通的な到達目標の達成状況、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の業績・能力などについて、重点的に評価を行っていくことが期待される。
  • (3)認証評価における不適格認定の内容・方法については、各認証評価機関の間でバラツキが見られるので、各認証評価機関それぞれの特色・独自性を損なわないよう配慮しながら、調整を図っていくことが望まれる。
  • 認証評価は、平成19年度までにすでに26校について実施され、5校が不適格の認定を受けた。平成20年度には、44校が受審することになっている。
  • 現行の認証評価については、3つの認証評価機関の間で評価の方法・内容にばらばらつきがあり、形式的な評価に止まっている、などの問題点が一部で指摘されている。

6.積極的な情報公開の促進

 今後、実態調査などを実施しながら、各法科大学院による情報公開の現状を把握し、より一層積極的な情報提供の推進のための具体的方策について検討を継続していく。

  • 現在、各法科大学院においては、入学者選抜の状況、教育内容・方法や修了生の進路などについて、社会に対して一定の情報提供がなされているが、なお十分ではないとの指摘もなされている。

7.フォローアップ体制の構築

  • (1)今後、各法科大学院において改善が適切に進められているかについて、本委員会の中にフォローアップを行う組織を設置し、継続的に実態を把握しながら、必要な改善を各法科大学院に対して求めていく仕組みを構築する必要がある。
  • (2)各法科大学院における改善の進捗状況を踏まえながら、必要に応じて、学校教育法に基づく措置等の適切な対応が取られることが望まれる。