法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(中間まとめ) はじめに

  1. 法科大学院特別委員会においては、法科大学院の修了者の質が十分ではないとの指摘が一部でなされ、法科大学院の教育のあり方についても問われるなかで、各法科大学院に対する実態調査、関係機関の見解等の検討や法曹関係者からのヒアリングなどを行い、現状の正確な把握に努め、以下のような認識に至った。
     (1)新しい法科大学院制度を総体としてみれば、司法制度改革で期待されている役割を果たすため、多くの法科大学院において理論と実務を架橋する教育課程の整備が着実に進み、法科大学院を修了した司法修習生の素質・能力も司法修習生の指導に携わる関係者からは、全般的に従来に比べて遜色はないばかりか、以下のような優れた点が見られるとの評価がなされている。
    1. 自発的・積極的な学習意欲が高いこと
    2. 学習のための方法論を身に付け、判例や文献等の法情報調査能力が高いこと
    3. コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力に優れていること
    4. 法曹倫理の学修等を通じて法曹の果たすべき社会的使命についての確かな理解を得るに至っていること
    5. 法律基本科目だけでなく、実務に有用な知的財産法、経済法など多様な分野についての学識を有していること
     (2)しかしながら、法科大学院についての認証評価の結果や司法修習生考試の結果などを踏まえると、法科大学院における教育の実施状況や法科大学院修了者の一部について、以下のような問題点が認められ、これらの速やかな改善が必要とされている。
    1. 法律基本科目をはじめ基本的な知識・理解が不十分な修了者が一部に見られること
    2. 論理的表現能力の不十分な修了者が一部に見られること
    3. 各法科大学院における法律実務基礎教育の内容にバラツキがあること
  2. このため、本特別委員会においては、法科大学院における教育の質の一層の向上を図るため、法科大学院における教育の質の保証の在り方について、法曹関係者を含めた幅広い関係者の参画を得て、ワーキンググループを設置し、集中的に審議を進め、以下のような改善の方向をとりまとめた。
    • 第1 入学者の質と多様性の確保
      1. 競争性の確保
      2. 適性試験の改善
      3. 多様な人材の確保
    • 第2 修了者の質の保証
      1. 共通的な到達目標の設定と達成度評価方法
      2. 教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底
      3. 司法試験との関係
    • 第3 教育体制の充実
      1. 質の高い教員の確保
      2. 入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進
      3. 教員養成体制の構築
      4. 教員の教育能力の向上
    • 第4 質を重視した評価システムの構築
      1. 教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価
      2. 積極的な情報公開の促進
      3. フォローアップ体制の構築
  3. 本特別委員会としても、今後、関係者からの御意見をいただきつつ、今年度末までに、さらに審議を進めて、改善方策をより具体化していきたいと考えているが、法科大学院関係者においては、この改善の方向を真摯に受け止め、法科大学院における教育の質の一層の向上に、ただちに取り組むことを強く要望したい。
  4. 文部科学省においては、法務省をはじめ関係機関と連携を図りながら、この改善の方向を踏まえて、各法科大学院の現状と今後の改善計画について把握し、必要な改善を推進していくことが望まれる。

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