裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
目次
第一章 総則(第一条—第四条)
第二章 認証紛争解決手続の業務
第一節 民間紛争解決手続の業務の認証(第五条—第十三条)
第二節 認証紛争解決事業者の業務(第十四条—第十九条)
第三節 報告等(第二十条—第二十四条)
第三章 認証紛争解決手続の利用に係る特例(第二十五条—第二十七条)
第四章 雑則(第二十八条—第三十一条)
第五章 罰則(第三十二条—第三十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらずに民事上
の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう
。以下同じ。)が、第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重
要なものとなっていることにかんがみ、 裁判外紛争解決手続についての基本理念及び国等の責務を定める
とともに、民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、併せて時効の中断等に係る特例を定めて
その利便の向上を図ること等により、紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択すること
を容易にし、もって国民の権利利益の適切な実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 民間紛争解決手続 民間事業者が、紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について、
紛争の当事者双方からの依頼を受け、当該紛争の当事者との間の契約に基づき、和解の仲介を行う裁判
外紛争解決手続をいう。ただし、法律の規定により指定を受けた者が当該法律の規定による紛争の解決の
業務として行う裁判外紛争解決手続で政令で定めるものを除く。
二 手続実施者 民間紛争解決手続において和解の仲介を実施する者をいう。
三 認証紛争解決手続 第五条の認証を受けた業務として行う民間紛争解決手続をいう。
四 認証紛争解決事業者 第五条の認証を受け、認証紛争解決手続の業務を行う者をいう。
(基本理念等)
第三条 裁判外紛争解決手続は、法による紛争の解決のための手続として、紛争の当事者の自主的な紛争解
決の努力を尊重しつつ、公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅
速な解決を図るものでなければならない。
2 裁判外紛争解決手続を行う者は、前項の基本理念にのっとり、相互に連携を図りながら協力するように
努めなければならない。
(国等の責務)
第四条 国は、裁判外紛争解決手続の利用の促進を図るため、裁判外紛争解決手続に関する内外の動向、そ
の利用の状況その他の事項についての調査及び分析並びに情報の提供その他の必要な措置を講じ、裁判外
紛争解決手続についての国民の理解を増進させるように努めなければならない。
2 地方公共団体は、裁判外紛争解決手続の普及が住民福祉の向上に寄与することにかんがみ、国との適切
な役割分担を踏まえつつ、裁判外紛争解決手続に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努
めなければならない。
第二章 認証紛争解決手続の業務
第一節 民間紛争解決手続の業務の認証
(民間紛争解決手続の業務の認証)
第五条 民間紛争解決手続を業として行う者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む
。)は、その業務について、法務大臣の認証を受けることができる。
(認証の基準)
第六条 法務大臣は、前条の認証の申請をした者(以下「申請者」という。)が行う当該申請に係る民間紛
争解決手続の業務が次に掲げる基準に適合し、かつ、申請者が当該業務を行うのに必要な知識及び能力並
びに経理的基礎を有するものであると認めるときは、当該業務について認証をするものとする。
一 その専門的な知見を活用して和解の仲介を行う紛争の範囲を定めていること。
二 前号の紛争の範囲に対応して、個々の民間紛争解決手続において和解の仲介を行うのにふさわしい者
を手続実施者として選任することができること。
三 手続実施者の選任の方法及び手続実施者が紛争の当事者と利害関係を有することその他の民間紛争解
決手続の公正な実施を妨げるおそれがある事由がある場合において、当該手続実施者を排除するための
方法を定めていること。
四 申請者の実質的支配者等(申請者の株式の所有、申請者に対する融資その他の事由を通じて申請者の
事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にあるものとして法務省令で定める者
をいう。以下この号において同じ。)又は申請者の子会社等(申請者が株式の所有その他の事由を通じ
てその事業を実質的に支配する関係にあるものとして法務省令で定める者をいう。)を紛争の当事者と
する紛争について民間紛争解決手続の業務を行うこととしている申請者にあっては、当該実質的支配者
等又は申請者が手続実施者に対して不当な影響を及ぼすことを排除するための措置が講じられているこ
と。
五 手続実施者が弁護士でない場合(司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第七号
に規定する紛争について行う民間紛争解決手続において、手続実施者が同条第二項に規定する司法書士
である場合を除く。)において、民間紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を
必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。
六 民間紛争解決手続の実施に際して行う通知について相当な方法を定めていること。
七 民間紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行について定めていること。
八 紛争の当事者が申請者に対し民間紛争解決手続の実施の依頼をする場合の要件及び方式を定めている
こと。
九 申請者が紛争の一方の当事者から前号の依頼を受けた場合において、紛争の他方の当事者に対し、速
やかにその旨を通知するとともに、当該紛争の他方の当事者がこれに応じて民間紛争解決手続の実施を
依頼するか否かを確認するための手続を定めていること。
十 民間紛争解決手続において提出された資料の保管、返還その他の取扱いの方法を定めていること。
十一 民間紛争解決手続において陳述される意見又は提出され、若しくは提示される資料に含まれる紛争
の当事者又は第三者の秘密について 、当該秘密の性質に応じてこれを適切に保持するための取扱いの方
法を定めていること。第十六条に規定する手続実施記録に記載されているこれらの秘密についても、同
様とする。
十二 紛争の当事者が民間紛争解決手続を終了させるための要件及び方式を定めていること。
十三 手続実施者が民間紛争解決手続によっては紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないと判断し
たときは、速やかに当該民間紛争解決手続を終了し、その旨を紛争の当事者に通知することを定めてい
ること。
十四 申請者(法人にあってはその役員、法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあって
はその代表者又は管理人)、その代理人、使用人その他の従業者及び手続実施者について、これらの者
が民間紛争解決手続の業務に関し知り得た秘密を確実に保持するための措置を定めていること。
十五 申請者(手続実施者を含む。)が支払を受ける報酬又は費用がある場合には、その額又は算定方法、
支払方法その他必要な事項を定めており、これが著しく不当なものでないこと。
十六 申請者が行う民間紛争解決手続の業務に関する苦情の取扱いについて定めていること。
(欠格事由)
第七条 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、第五条の認証を受けることができ
ない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 民間紛争解決手続の業務に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
三 破産者で復権を得ないもの
四 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から五
年を経過しない者
五 この法律又は弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その
執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
六 第二十三条第一項又は第二項の規定により認証を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない
者
七 認証紛争解決事業者で法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。第九号、
次条第二項第一号、第十三条第一項第三号及び第十七条第三項において同じ。)であるものが第二十三
条第一項又は第二項の規定により認証を取り消された場合において、その取消しの日前六十日以内にそ
の役員(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあっては、その代表者又は管理人。第
九号において同じ。)であった者でその取消しの日から五年を経過しないもの
八 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定す
る暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過
しない者(以下「暴力団員等」という。)
九 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに前各号のいずれかに該当する者のあるもの
十 個人でその政令で定める使用人のうちに第一号から第八号までのいずれかに該当する者のあるもの
十一 暴力団員等をその民間紛争解決手続の業務に従事させ、又は当該業務の補助者として使用するおそ
れのある者
十二 暴力団員等がその事業活動を支配する者
(認証の申請)
第八条 第五条の認証の申請は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を法務
大臣に提出してしなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者(法人でない団体で代表者又は管理人の定め
のあるものにあっては、その代表者又は管理人)の氏名
二 民間紛争解決手続の業務を行う事務所の所在地
三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 法人にあっては、定款、寄付行為その他の基本約款を記載した書類
二 その申請に係る民間紛争解決手続の業務の内容及びその実施方法を記載した書類
三 その申請に係る民間紛争解決手続の業務に関する事業報告書又は事業計画書
四 申請者の財産目録、貸借対照表、収支計算書又は損益計算書その他の当該申請に係る民間紛争解決手
続の業務を行うのに必要な経理的基礎を有することを明らかにする書類であって法務省令で定めるもの
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める書類
3 第五条の認証の申請をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(認証に関する意見聴取)
第九条 法務大臣は、第五条の認証の申請に対する処分をしようとする場合又は当該申請に対する処分につ
いての異議申立てに対する決定をしようとする場合には、あらかじめ、申請者が法律により直接に設立さ
れた法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であるときはこれらの法人を所管
する大臣に、申請者が設立に関し許可又は認可を受けている法人であるときはその許可又は認可をした大
臣又は国家公安委員会に、それぞれ協議しなければならない。
2 法務大臣は、第五条の認証をしようとするときは、第七条第八号から第十二号までに該当する事由(同
条第九号及び第十号に該当する事由にあっては、同条第八号に係るものに限る。)の有無について、警察
庁長官の意見を聴かなければならない。
3 法務大臣は、第一項に規定する処分又は決定をしようとする場合には、法務省令で定めるところにより
、次条第一項に規定する認証審査参与員の意見を聴かなければならない。
(認証審査参与員)
第十条 法務省に、第五条の認証の申請及び当該申請に対する処分についての異議申立て、第十二条第一項
の変更の認証の申請及び当該申請に対する処分についての異議申立て並びに第二十三条第二項の規定によ
る認証の取消し及び当該取消しについての異議申立てに関し、法務大臣に対し、専門的な知識経験に基づ
く意見を述べさせるため、認証審査参与員若干人を置く。
2 認証審査参与員は、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十八条において準用する同法
第二十五条第一項ただし書の規定による異議申立人又は参加人の意見の陳述に係る手続に立ち会い、及び
これらの者に直接問いを発することができる。
3 認証審査参与員は、民間紛争解決手続に関する専門的な知識経験を有する者のうちから、法務大臣が任
命する。
4 認証審査参与員の任期は、二年とする。ただし、再任を妨げない。
5 認証審査参与員は、非常勤とする。
(認証の公示等)
第十一条 法務大臣は、第五条の認証をしたときは、認証紛争解決事業者の氏名又は名称及び住所を官報で
公示しなければならない。
2 認証紛争解決事業者は、認証紛争解決手続を利用し、又は利用しようとする者に適正な情報を提供する
ため、法務省令で定めるところにより、認証紛争解決事業者である旨並びにその認証紛争解決手続の業務
の内容及びその実施方法に係る事項であって法務省令で定めるものを、認証紛争解決手続の業務を行う事
務所において見やすいように掲示しなければならない。
3 認証紛争解決事業者でない者は、その名称中に認証紛争解決事業者であると誤認されるおそれのある文
字を用い、又はその業務に関し、認証紛争解決事業者であると誤認されるおそれのある表示をしてはなら
ない。
(変更の認証)
第十二条 認証紛争解決事業者は、その認証紛争解決手続の業務の内容又はその実施方法を変更しようとす
るときは、法務大臣の変更の認証を受けなければならない。ただし、法務省令で定める軽微な変更につい
ては、この限りでない。
2 前項の変更の認証を受けようとする者は、法務省令で定めるところにより、変更に係る事項を記載した
申請書を法務大臣に提出しなければならない。
3 前項の申請書には、変更後の業務の内容及びその実施方法を記載した書類その他法務省令で定める書類
を添付しなければならない。
4 第六条、第八条第三項及び前条第一項の規定は第一項の変更の認証について、第九条第一項及び第三項
の規定は第一項の変更の認証の申請に対する処分をしようとする場合及び当該処分についての異議申立て
に対する決定をしようとする場合について、それぞれ準用する。
(変更の届出)
第十三条 認証紛争解決事業者は、次に掲げる変更があったときは、法務省令で定めるところにより、遅滞
なく、その旨を法務大臣に届け出なければならない。
一 氏名若しくは名称又は住所の変更
二 認証紛争解決手続の業務の内容又はその実施方法についての前条第一項ただし書の法務省令で定める
軽微な変更
三 法人にあっては、定款、寄付行為その他の基本約款(前二号に掲げる変更に係るものを除く。)の変
更
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項の変更
2 法務大臣は、前項第一号に掲げる変更について同項の規定による届出があったときは、その旨を官報で
公示しなければならない。
第二節 認証紛争解決事業者の業務
(説明義務)
第十四条 認証紛争解決事業者は、認証紛争解決手続を実施する契約の締結に先立ち、紛争の当事者に対し
、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項について、これを記載した書面を交付し、又はこれを
記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で
作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を提供して説明をしな
ければならない。
一 手続実施者の選任に関する事項
二 紛争の当事者が支払う報酬又は費用に関する事項
三 第六条第七号に規定する認証紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
(暴力団員等の使用の禁止)
第十五条 認証紛争解決事業者は、暴力団員等を業務に従事させ、又は業務の補助者として使用してはなら
ない。
(手続実施記録の作成及び保存)
第十六条 認証紛争解決事業者は、法務省令で定めるところにより、その実施した認証紛争解決手続に関し
、次に掲げる事項を記載した手続実施記録を作成し、保存しなければならない。
一 紛争の当事者との間で認証紛争解決手続を実施する契約を締結した年月日
二 紛争の当事者及びその代理人の氏名又は名称
三 手続実施者の氏名
四 認証紛争解決手続の実施の経緯
五 認証紛争解決手続の結果(認証紛争解決手続の終了の理由及びその年月日を含む。)
六 前各号に掲げるもののほか、実施した認証紛争解決手続の内容を明らかにするため必要な事項であっ
て法務省令で定める もの
(合併の届出等)
第十七条 認証紛争解決事業者は、次に掲げる行為をしようとするときは、法務省令で定めるところにより
、あらかじめ、その旨を法務大臣に届け出なければならない。
一 当該認証紛争解決事業者が消滅することとなる合併(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあ
るものにあっては、合併に相当する行為。第三項において同じ。)
二 認証紛争解決手続の業務に係る営業又は事業の全部又は一部の譲渡
三 当該認証紛争解決事業者を分割をする法人とする分割でその認証紛争解決手続の業務に係る営業又は
事業の全部又は一部を承継させるもの
四 認証紛争解決手続の業務の廃止
2 法務大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。
3 第一項各号に掲げる行為をした者(同項第一号に掲げる行為にあっては、合併後存続する法人又は合併
により設立される法人)は、その行為をした日に認証紛争解決手続が実施されていたときは、当該行為を
した日から二週間以内に、当該認証紛争解決手続の当事者に対し、当該行為をした旨及び第十九条の規定
により認証がその効力を失った旨を通知しなければならない。
(解散の届出等)
第十八条 認証紛争解決事業者が破産及び合併以外の理由により解散(法人でない団体で代表者又は管理人
の定めのあるものにあっては、解散に相当する行為。以下同じ。)をした場合には、その清算人(法人で
ない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあっては、その代表者又は管理人であった者。次項にお
いて同じ。)は、当該解散の日から一月以内に、その旨を法務大臣に届け出なければならない。
2 前項の清算人は、当該解散の日に認証紛争解決手続が実施されていたときは、その日から二週間以内に
、当該認証紛争解決手続の当事者に対し、当該解散をした旨及び次条の規定により認証がその効力を失っ
た旨を通知しなければならない。
3 前条第二項の規定は、第一項の規定による届出があった場合について準用する。
(認証の失効)
第十九条 次に掲げる場合においては、第五条の認証は、その効力を失う。
一 認証紛争解決事業者が第十七条第一項各号に掲げる行為をしたとき。
二 認証紛争解決事業者が前条第一項の解散をしたとき。
三 認証紛争解決事業者が死亡したとき。
第三節 報告等
(事業報告書等の提出)
第二十条 認証紛争解決事業者は、その認証紛争解決手続の業務に関し、毎事業年度の経過後三月以内に、
法務省令で定めるところにより、その事業年度の事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書又は
損益計算書を作成し、これを法務大臣に提出しなければならない。
(報告及び検査)
第二十一条 法務大臣は、認証紛争解決事業者について、第二十三条第一項各号又は第二項各号のいずれか
に該当する事由があると疑うに足りる相当な理由がある場合には、その認証紛争解決手続の業務の適正な
運営を確保するために必要な限度において、法務省令で定めるところにより、認証紛争解決事業者に対し
、当該業務の実施の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該認証紛争解決事業者の事務所に
立ち入り、当該業務の実施の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問さ
せることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったとき
は、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(勧告等)
第二十二条 法務大臣は、認証紛争解決事業者について、次条第二項各号のいずれかに該当する事由がある
と疑うに足りる相当な理由がある場合において、その認証紛争解決手続の業務の適正な運営を確保するた
めに必要があると認めるときは、当該認証紛争解決事業者に対し、期限を定めて、当該業務に関し必要な
措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
2 法務大臣は、前項の勧告を受けた認証紛争解決事業者が、正当な理由がなく、その勧告に係る措置をと
らなかったときは、当該認証紛争解決事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることが
できる。
(認証の取消し)
第二十三条 法務大臣は、認証紛争解決事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その認証を取り消
さなければならない。
一 第七条各号(第六号を除く。)のいずれかに該当するに至ったとき。
二 偽りその他不正の手段により第五条の認証又は第十二条第一項の変更の認証を受けたとき。
三 正当な理由がなく、前条第二項の規定による命令に従わないとき。
2 法務大臣は、認証紛争解決事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その認証を取り消すことが
できる。
一 その行う認証紛争解決手続の業務の内容及びその実施方法が第六条各号に掲げる基準のいずれかに
合しなくなったとき。
二 認証紛争解決手続の業務を行うのに必要な知識若しくは能力又は経理的基礎を有するものでなくな
たとき。
三 この法律の規定に違反したとき。
3 法務大臣は、前二項の規定による認証の取消しをしようとするときは、第七条第八号から第十二号まで
に該当する事由(同条第九号及び第十号に該当する事由にあっては、同条第八号に係るものに限る。)又
は第十五条の規定に違反する事実の有無について、警察庁長官の意見を聴くことができる。
4 法務大臣は、第一項又は第二項の規定により認証を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければ
ならない。
5 第一項又は第二項の規定により認証の取消しの処分を受けた者は、当該処分の日から二週間以内に、当
該処分の日に認証紛争解決手続が実施されていた紛争の当事者に対し、当該処分があった旨を通知しなけ
ればならない。
6 第九条第一項及び第三項の規定は、第二項の規定により認証の取消しの処分をしようとする場合及び当
該処分についての異議申立てに対する決定をしようとする場合について準用する。
(民間紛争解決手続の業務の特性への配慮)
第二十四条 法務大臣は、第二十一条第一項の規定により報告を求め、若しくはその職員に検査若しくは質
問をさせ、又は第二十二条の規定により勧告をし、若しくは命令をするに当たっては、民間紛争解決手続
が紛争の当事者と民間紛争解決手続の業務を行う者との間の信頼関係に基づいて成り立つものであり、か
つ、紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力が尊重されるべきものであることその他の民間紛争解決手続
の業務の特性に配慮しなければならない。
第三章 認証紛争解決手続の利用に係る特例
(時効の中断)
第二十五条 認証紛争解決手続によっては紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないことを理由に手続
実施者が当該認証紛争解決手続を終了した場合において、当該認証紛争解決手続の実施の依頼をした当該
紛争の当事者がその旨の通知を受けた日から一月以内に当該認証紛争解決手続の目的となった請求につい
て訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、当該認証紛争解決手続における請求の時に、訴えの提
起があったものとみなす。
2 第十九条の規定により第五条の認証がその効力を失い、かつ、当該認証がその効力を失った日に認証紛
争解決手続が実施されていた紛争がある場合において、当該認証紛争解決手続の実施の依頼をした当該紛
争の当事者が第十七条第三項若しくは第十八条第二項の規定による通知を受けた日又は第十九条各号に規
定する事由があったことを知った日のいずれか早い日(認証紛争解決事業者の死亡により第五条の認証が
その効力を失った場合にあっては、その死亡の事実を知った日)から一月以内に当該認証紛争解決手続の
目的となった請求について訴えを提起したときも、前項と同様とする。
3 第五条の認証が第二十三条第一項又は第二項の規定により取り消され、かつ、その取消しの処分の日に
認証紛争解決手続が実施されていた紛争がある場合において、当該認証紛争解決手続の実施の依頼をした
当該紛争の当事者が同条第五項の規定による通知を受けた日又は当該処分を知った日のいずれか早い日か
ら一月以内に当該認証紛争解決手続の目的となった請求について訴えを提起したときも、第一項と同様と
する。
(訴訟手続の中止)
第二十六条 紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について当該紛争の当事者間に訴訟が係
属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、当該紛争の当事者の共同の申立て
があるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
一 当該紛争について、当該紛争の当事者間において認証紛争解決手続が実施されていること。
二 前号に規定する場合のほか、当該紛争の当事者間に認証紛争解決手続によって当該紛争の解決を図る
旨の合意があること。
2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を
申し立てることができない。
(調停の前置に関する特則)
第二十七条 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第二十四条の二第一項の事件又は家事審判法
(昭和二十二年法律第百五十二号)第十八条第一項の事件(同法第二十三条の事件を除く。)について訴
えを提起した当事者が当該訴えの提起前に当該事件について認証紛争解決手続の実施の依頼をし、かつ、
当該依頼に基づいて実施された認証紛争解決手続によっては当事者間に和解が成立する見込みがないこと
を理由に当該認証紛争解決手続が終了した場合においては、民事調停法第二十四条の二又は家事審判法第
十八条の規定は、適用しない。この場合において、受訴裁判所は、適当であると認めるときは、職権で、
事件を調停に付することができる。
第四章 雑則
(報酬)
第二十八条 認証紛争解決事業者(認証紛争解決手続における手続実施者を含む。)は、紛争の当事者又は
紛争の当事者以外の者との契約で定めるところにより、認証紛争解決手続の業務を行うことに関し、報酬
を受けることができる。
(協力依頼)
第二十九条 法務大臣は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に
照会し、又は協力を求めることができる。
(法務大臣への意見)
第三十条 警察庁長官は、認証紛争解決事業者について、第七条第八号から第十二号までに該当する事由(
同条第九号及び第十号に該当する事由にあっては、同条第八号に係るものに限る。)又は第十五条の規定
に違反する事実があると疑うに足りる相当な理由があるため、法務大臣が当該認証紛争解決事業者に対し
て適当な措置をとることが必要であると認める場合には、法務大臣に対し、その旨の意見を述べることが
できる。
(認証紛争解決手続の業務に関する情報の公表)
第三十一条 法務大臣は、認証紛争解決手続の業務に関する情報を広く国民に提供するため、法務省令で定
めるところにより、認証紛争解決事業者の氏名又は名称及び住所、当該業務を行う事務所の所在地並びに
当該業務の内容及びその実施方法に係る事項であって法務省令で定めるものについて、インターネットの
利用その他の方法により公表することができる。
第五章 罰則
第三十二条 偽りその他不正の手段により第五条の認証又は第十二条第一項の変更の認証を受けた者は、二
年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 第十五条の規定に違反して暴力団員等をその認証紛争解決手続の業務に従事させ、又は当該業務の補助
者として使用した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項の申請書若しくは同条第二項各号に掲げる書類又は第十二条第二項の申請書若しくは
条第三項の書類に虚偽の記載をして提出した者
二 第十一条第三項の規定に違反した者
第三十三条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ
。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の
業務に関して、前条各項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当
該各項の罰金刑を科する。
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為に
つき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定
を準用する。
第三十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の過料に処する。
一 第十一条第二項の規定による掲示をせず、又は虚偽の掲示をした者
二 第十三条第一項、第十七条第一項又は第十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をし
た者
三 第十六条の規定に違反して手続実施記録を作成せず、若しくは虚偽の手続実施記録を作成し、又は手
続実施記録を保存しなかった者
四 第十七条第三項、第十八条第二項又は第二十三条第五項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知を
した者
五 第二十条の規定に違反して事業報告書、財産目録、貸借対照表若しくは収支計算書若しくは損益計算
書を提出せず、又はこれらの書類に虚偽の記載をして提出した者
六 第二十一条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
七 第二十二条第二項の規定による命令に違反した者
2 認証紛争解決事業者(法人にあってはその代表者、法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるも
のにあってはその代表者又は管理人)、その代理人、使用人その他の従業者が第二十一条第一項の規定に
よる検査を拒み、妨げ、又は忌避したときは、五十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行す
る。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加
え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(総合法律支援法の一部改正)
第三条 総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
第七条中「裁判外における法による紛争の解決」を「裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用
の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第一条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。第三
十条第一項第六号及び第三十二条第三項において同じ。)」に改める。
第三十条第一項第六号及び第三十二条第三項中「裁判外における法による紛争の解決」を「裁判外紛争
解決手続」に改める。
(法務省設置法の一部改正)
第四条 法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)の規定に
よる民間紛争解決手続の業務の認証に関すること。
|