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判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律
(平成十六年法律第百二十一号)
(目的) 第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、 司法に対する多様かつ広範な国民の要請にこたえることのできる広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検 察官が求められていることにかんがみ、判事補及び検事(司法修習生の修習を終えた者であって、その最 初に検事に任命された日から十年を経過していないものに限る。第七条第五項、第十一条第四項及び第十 二条を除き、以下同じ。)について、その経験多様化(裁判官又は検察官としての能力及び資質の向上並 びにその職務の充実に資する他の職務経験その他の多様な経験をすることをいう。次条第一項及び第四項 において同じ。)のための方策の一環として、一定期間その官を離れ、弁護士となってその職務を経験す るために必要な措置を講ずることにより、判事補及び検事が弁護士としての職務を経験することを通じて 、裁判官及び検察官としての能力及び資質の一層の向上並びにその職務の一層の充実を図ることを目的と する。 (弁護士職務経験) 第二条 最高裁判所は、判事補が経験多様化の一環として一定期間弁護士となってその職務を経験すること の必要性、これに伴う事務の支障その他の事情を勘案して、相当と認めるときは、当該判事補の同意(第 三項に規定する事項に係る同意を含む。)を得て、第七項に規定する雇用契約を締結しようとする弁護士 法人又は弁護士との間の取決めに基づき、期間を定めて、当該判事補が弁護士となってその職務を行うも のとすることができる。 2 最高裁判所は、前項の同意を得るに当たっては、あらかじめ、当該判事補に同項の取決めの内容を明示 しなければならない。 3 第一項の場合においては、最高裁判所は、当該判事補を裁判所事務官に任命するものとし、当該判事補 は、その任命の時にその官を失うものとする。 4 法務大臣は、検事が経験多様化の一環として一定期間弁護士となってその職務を経験することの必要性 、これに伴う事務の支障その他の事情を勘案して、相当と認めるときは、当該検事の同意(第六項に規定 する事項に係る同意を含む。)を得て、第七項に規定する雇用契約を締結しようとする弁護士法人又は弁 護士との間の取決めに基づき、期間を定めて、当該検事に弁護士となってその職務を行わせることができ る。 5 法務大臣は、前項の同意を得るに当たっては、あらかじめ、当該検事に同項の取決めの内容を明示しな ければならない。 6 第四項の場合においては、法務大臣は、当該検事を法務省(検察庁を除く。以下同じ。)に属する官職 に任命するものとし、当該検事は、その任命の時にその官を失うものとする。 7 第一項又は第四項の取決めにおいては、第三項又は前項の規定により裁判所事務官又は法務省に属する 官職に任命されて第一項又は第四項の規定により弁護士となってその職務を行う者(以下「弁護士職務従 事職員」という。)と弁護士職務従事職員を雇用する弁護士法人又は弁護士(以下「受入先弁護士法人等 」という。)との間の雇用契約(第四条第二項ただし書に規定する承認に係る事項の定めを含む。)の締 結、当該受入先弁護士法人等における勤務条件、第一項又は第四項の規定により弁護士となってその職務 を行う期間(以下「弁護士職務従事期間」という。)、これらの規定により弁護士となってその職務を経 験すること(以下「弁護士職務経験」という。)の終了に関する事項その他これらの規定により弁護士と なってその職務を行うものとし又は行わせるに当たって合意しておくべきものとして判事補については最 高裁判所規則で、検事については法務省令で定める事項を定めるものとする。 8 最高裁判所又は法務大臣は、第一項又は第四項の取決めの内容を変更しようとするときは、当該判事補 若しくは検事又は当該弁護士職務従事職員の同意を得なければならない。この場合においては、第二項又 は第五項の規定を準用する。 (弁護士職務従事期間) 第三条 弁護士職務従事期間は、二年を超えることができない。ただし、特に必要があると認めるときは、 最高裁判所又は法務大臣は、当該弁護士職務従事職員及び当該受入先弁護士法人等の同意を得て、当該弁 護士職務経験を開始した日から引き続き三年を超えない範囲内で、これを延長することができる。 (弁護士の業務への従事) 第四条 弁護士職務従事職員は、第二条第一項又は第四項の取決めに定められた内容に従って、受入先弁護 士法人等との間で雇用契約(次項ただし書に規定する承認に係る事項の定めを含む。)を締結し、弁護士 法(昭和二十四年法律第二百五号)の定めるところにより弁護士登録(同法第八条に規定する登録をいう。 第七条第四項及び第五項において同じ。)を受け、その弁護士職務従事期間中、当該雇用契約に基づいて 弁護士の業務に従事するものとする。 2 弁護士職務従事職員は、前項の規定により従事する弁護士の業務のうち当事者その他関係人から依頼を 受けて行う事務については、当該受入先弁護士法人等が弁護士法人である場合にあっては当該弁護士法人 が当事者その他関係人から委託を受けた事務を行い、当該受入先弁護士法人等が弁護士である場合にあっ ては当該弁護士と共同して当事者その他関係人から依頼を受けてその事務を行うものとする。ただし、当 該受入先弁護士法人等が個別に承認した事務については、前項の雇用契約に基づいて、単独で当事者その 他関係人から依頼を受けてその事務を行うことができる。 (弁護士職務従事職員の職務及び給与) 第五条 弁護士職務従事職員は、その弁護士職務従事期間中、裁判所事務官又は法務省職員(法務省に属す る官職を占める者をいう。以下同じ。)としての身分を保有するが、その職務に従事しない。 2 弁護士職務従事職員には、その弁護士職務従事期間中、給与を支給しない。 3 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号。裁判所職員臨時措置法(昭和二十六 年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。第十条において同じ。)の規定は、弁護士職務従 事職員には、その弁護士職務従事期間中、適用しない。 (弁護士職務従事職員の服務等) 第六条 弁護士職務従事職員は、第四条の規定により弁護士の業務を行うに当たっては、裁判所事務官若し くは法務省職員たる地位を利用し、又はその弁護士職務経験の前において判事補若しくは検事であったこ とによる影響力を利用してはならない。 2 弁護士職務従事職員の第四条の規定による弁護士の業務への従事に関しては、国家公務員法(昭和二十 二年法律第百二十号)第百四条(裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)の規定は、適用 しない。 3 最高裁判所又は法務大臣は、必要があると認めるときは、当該弁護士職務従事職員に対し、当該受入先 弁護士法人等における勤務条件及び第四条の規定による弁護士の業務への従事の状況(弁護士法第二十三 条に規定する職務上知り得た秘密に該当する事項を除く。)について、報告を求めることができる。 4 弁護士職務従事職員に関する国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号。裁判所職員臨時措置法 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、当該弁護士職務従 事職員(第二条第三項又は第六項の規定により裁判所事務官又は法務省に属する官職に任命された日の前 日において裁判官の報酬等に関する法律(昭和二十三年法律第七十五号)別表判事補の項九号の報酬月額 以上の報酬又は検察官の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第七十六号)別表検事の項十七号の俸給 月額以上の俸給を受けていた者に限る。)は、国家公務員倫理法第二条第二項に規定する本省課長補佐級 以上の職員とみなす。 5 弁護士職務従事職員に関する国家公務員法第八十二条(裁判所職員臨時措置法において準用する場合を 含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、同条第一項第一号中「若しくは国家公務員 倫理法」とあるのは、「、国家公務員倫理法(判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律(平成十六 年法律第百二十一号)第六条第四項の規定によりみなして適用される場合を含む。)若しくは判事補及び 検事の弁護士職務経験に関する法律」とする。 (弁護士職務経験の終了等) 第七条 弁護士職務従事期間が満了したときは、当該弁護士職務経験は終了するものとする。 2 最高裁判所は、裁判所事務官である弁護士職務従事職員が当該受入先弁護士法人等との間の第四条第一 項の雇用契約上の地位を失った場合その他の最高裁判所規則で定める場合であって、その弁護士職務経験 を継続することができないか又は適当でないと認めるときは、速やかに、当該弁護士職務経験を終了する ものとしなければならない。 3 法務大臣は、法務省職員である弁護士職務従事職員が当該受入先弁護士法人等との間の第四条第一項の 雇用契約上の地位を失った場合その他の法務省令で定める場合であって、その弁護士職務経験を継続する ことができないか又は適当でないと認めるときは、速やかに、当該弁護士職務経験を終了するものとしな ければならない。 4 第一項又は第二項の規定により裁判所事務官である弁護士職務従事職員の弁護士職務経験が終了すると きは、当該弁護士職務従事職員は、弁護士法の定めるところによりその弁護士登録の取消しを受けるもの とし、最高裁判所は、当該弁護士職務従事職員について判事補又は判事への任命に関し必要な手続をとら なければならない。ただし、その任命を不相当と認めるべき事由があるときは、この限りでない。 5 第一項又は第三項の規定により法務省職員である弁護士職務従事職員の弁護士職務経験が終了するとき は、当該弁護士職務従事職員は、弁護士法の定めるところによりその弁護士登録の取消しを受けるものと し、法務大臣は、当該弁護士職務従事職員について検事への任命に関し必要な措置をとらなければならな い。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 (国家公務員共済組合法の特例) 第八条 国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第四十一条第二項の規定及び同法の短期 給付に関する規定(同法第六十八条の二第一項ただし書、第二項及び第三項並びに第六十八条の三の規定 を除く。以下この項において同じ。)は、弁護士職務従事職員には、適用しない。この場合において、同 法の短期給付に関する規定の適用を受ける職員(同法第二条第一項第一号に規定する職員をいう。以下こ の項において同じ。)が弁護士職務従事職員となったときは、同法の短期給付に関する規定の適用につい ては、そのなった日の前日に退職(同法第二条第一項第四号に規定する退職をいう。)をしたものとみな し、弁護士職務従事職員が同法の短期給付に関する規定の適用を受ける職員となったときは、同法の短期 給付に関する規定の適用については、そのなった日に職員となったものとみなす。 2 弁護士職務従事職員に関する国家公務員共済組合法の長期給付に関する規定の適用については、第四条 第一項に規定する弁護士の業務を公務とみなす。 3 弁護士職務従事職員は、国家公務員共済組合法第九十八条第一項各号に掲げる福祉事業を利用すること ができない。 4 弁護士職務従事職員に関する国家公務員共済組合法の規定の適用については、同法第二条第一項第五号 及び第六号中「準ずる給与として政令で定めるもの」とあるのは「相当するものとして次条第一項に規定 する組合の運営規則で定めるもの」と、同法第九十九条第二項中「次の各号」とあるのは「次の各号(第 一号、第一号の二及び第四号を除く。)」と、「及び国又は公社の負担金」とあるのは「、判事補及び検 事の弁護士職務経験に関する法律第二条第七項に規定する受入先弁護士法人等(以下「受入先弁護士法人 等」という。)の負担金及び国の負担金」と、同項第二号及び第三号中「国又は公社の負担金」とあるの は「受入先弁護士法人等の負担金」と、同項第五号中「国又は公社の負担金」とあるのは「国の負担金」 と、同法第百二条第一項中「各省各庁の長(環境大臣を含む。)、特定独立行政法人、公社又は職員団体 」とあり、及び「国、特定独立行政法人、公社又は職員団体」とあるのは「受入先弁護士法人等」と、「 第九十九条第二項(同条第五項から第七項までの規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とある のは「第九十九条第二項」と、同条第四項中「、特定独立行政法人、公社又は職員団体」とあるのは「又 は受入先弁護士法人等」とする。 (児童手当法の特例) 第九条 弁護士職務従事職員に関する児童手当法(昭和四十六年法律第七十三号)の規定の適用については 、受入先弁護士法人等を同法第二十条第一項第四号に規定する団体とみなす。 (一般職の職員の給与に関する法律の特例) 第十条 弁護士職務従事職員であった者に関する一般職の職員の給与に関する法律第二十三条第一項及び附 則第七項の規定の適用については、第四条第一項に規定する弁護士の業務(当該弁護士の業務に係る労働 者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第二項に規定する通勤を含む。)を公務とみなす。 2 弁護士職務従事職員であった者に関する一般職の職員の給与に関する法律第十一条の七第三項、第十二 条第四項、第十二条の二第三項及び第十三条の三第二項の規定の適用については、弁護士職務従事職員は 、同法第十一条の七第三項に規定する給与特例法適用職員等とみなす。 (国家公務員退職手当法の特例) 第十一条 弁護士職務従事職員又は弁護士職務従事職員であった者が退職した場合における国家公務員退職 手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定の適用については、第四条第一項に規定する弁護士の業 務に係る業務上の傷病又は死亡は同法第四条第二項、第五条第一項及び第七条第四項に規定する公務上の 傷病又は死亡と、当該弁護士の業務に係る労働者災害補償保険法第七条第二項に規定する通勤による傷病 は国家公務員退職手当法第四条第二項、第五条第二項及び第七条第四項に規定する通勤による傷病とみな す。 2 国家公務員退職手当法第七条第四項の規定は、弁護士職務従事期間については、適用しない。 3 前項の規定は、弁護士職務従事職員又は弁護士職務従事職員であった者が当該受入先弁護士法人等から 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第三十条第一項に規定する退職手当等(同法第三十一条の規定に より退職手当等とみなされるものを含む。)の支払を受けた場合には、適用しない。 4 弁護士職務従事職員がその弁護士職務従事期間中に退職した場合に支給する国家公務員退職手当法の規 定による退職手当の算定の基礎となる俸給若しくは扶養手当又はこれらに対する調整手当(以下この項に おいて「俸給等」という。)の月額については、当該弁護士職務従事職員が第二条第三項又は第六項の規 定により裁判所事務官又は法務省に属する官職に任命された日の前日において受けていた俸給等の月額を もって、当該弁護士職務従事職員の俸給等の月額とする。ただし、必要があると認められるときは、他の 判事補若しくは判事又は検事との均衡を考慮し、必要な措置を講ずることができる。 (判事補等又は検事への復帰時における処遇) 第十二条 裁判所事務官である弁護士職務従事職員がその弁護士職務経験の終了後に判事補又は判事に任命 された場合及び法務省職員である弁護士職務従事職員がその弁護士職務経験の終了後に検事に任命された 場合における処遇については、他の判事補若しくは判事又は検事との権衡上必要と認められる範囲内にお いて、適切な配慮が加えられなければならない。 (最高裁判所及び法務大臣の責務) 第十三条 最高裁判所及び法務大臣は、この法律の運用に当たっては、裁判官、検察官及び弁護士のそれぞ れの職務の性質に配慮しつつ、その適正な運用の確保に努めなければならない。 (最高裁判所規則及び法務省令への委任) 第十四条 この法律に定めるもののほか、判事補に係るこの法律の実施に関し必要な事項は、最高裁判所規 則で定める。 2 この法律に定めるもののほか、検事に係るこの法律の実施に関し必要な事項は、法務省令で定める。 3 法務大臣は、第二条第七項又は第七条第三項の法務省令を制定し、又は改廃しようとするときは、人事 院の意見を聴かなければならない。前項の法務省令であって人事院の所掌に係る事項を定めるものを制定 し、又は改廃しようとするときも、同様とする。 附 則 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただ し、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。 一 附則第三項の規定 公布の日 二 次項の規定 公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日 (準備行為) 2 最高裁判所又は法務大臣は、この法律の施行の日前においても、第二条第七項に規定する雇用契約を締 結しようとする弁護士法人又は弁護士との間で同条第一項又は第四項の取決めをし、判事補又は検事から これらの規定の同意を得、その他この法律の実施のために必要な準備行為をすることができる。 3 法務大臣は、第二条第七項、第七条第三項又は第十四条第三項後段の法務省令を制定しようとするとき は、この法律の施行の日前においても、人事院の意見を聴くことができる。 (健康増進法による国家公務員共済組合法の一部改正に伴う経過措置) 4 この法律の施行の日が健康増進法(平成十四年法律第百三号)附則第十条の規定の施行の日前である場 合には、同条の規定の施行の日の前日までの間における第八条第三項の規定の適用については、同項中「 第九十八条第一項各号」とあるのは、「第九十八条各号」とする。 (国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律による国家公務員共済組合法の一部改正に伴う経過措置 ) 5 この法律の施行の日が国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百三十号)第 二条の規定の施行の日前である場合には、同条の規定の施行の日の前日までの間における第八条第一項及 び第四項の規定の適用については、同条第一項中「第六十八条の二第一項ただし書、第二項及び第三項並 びに」とあるのは「第六十八条の二第一項ただし書及び」と、同条第四項中「特定独立行政法人」とある のは「独立行政法人、国立大学法人等」とする。 |