□ それでは、まず、「司法の利用相談窓口・情報提供について」の検討をお願いいたします。司法制度改革審議会の意見書では、紛争解決手続に関する総合的情報をワン・ストップで取得することができる相談窓口、アクセス・ポイントと呼んでおりますが、これが十分に用意されていないという問題提起がされているところです。今日はフリートーキングで、いろいろな立場から御意見をいただければと思っておりますが、外国の様子とか何か、知見を披露していただければありがたいと思います。
○ それでは、今の状況につきまして、私が知っていることを御説明させていただきたいと思います。
参考資料として、イングランド・ウェールズで我が国で言うところの法務省にほぼ相当する大法官府のホームページを事務局の方で用意していただきました。この一番最後に「Useful Links」というのがありまして、関係のいろいろな団体、例えば弁護士会等の相談機関、あるいは政府機関等の様々な団体にリンクが設定してあります。このリンクの中に、「Citizens Advice Bureau」というのがございます。略して「CAB」と称しておりますけれども、これをあえて訳すならば、「市民相談所」というような訳になるかと思いますが、法律相談に限らない相談業務を担っている全国組織です。このCABのホームページを見ますと、「National Association ofCitizens Advice Bureaux」というページが出てきますが、これがCABの全国組織であるNational Association of Citizens Advice Bureaux のホームページです。ここで、例えば、「Social Security」とか「Employment」とか、いろいろありますけれども、こういった社会保障、雇用の問題、あるいは差別の問題といったことについての簡単な相談ができる、まさに情報提供がなされているということになっております。例えば、「Consumer and Debt」、つまり消費者問題及び消費者債務の問題というところをクリックしますと、「Consumer& Debt」というページになりまして、例えばどのような報告書が出ているかということがここに載っており、更に情報を得たければ、こういったところをクリックすれば、自分で情報が得られるようになっております。このように、大法官府のホームページから法律相談の窓口までインターネット上で行けるようになっていて、大変手軽に情報が得られるようになっています。
これがインターネット上の相談窓口ということですが、実際にどのような相談窓口を提供しているかということを若干御紹介したいと思います。
Citizens Advice Bureauは、第二次世界大戦中に戦時下の情報提供ということが基になってできたと言われておりますが、非営利の相談機関ということになっております。全国で拠点は2,000を超えると言われておりまして、このアクセス・ポイントは、一般の市民にとってのアクセスしやすい場所になっております。裁判所、刑務所といったところ以外にも、コミュニティー・センターと呼ばれる地域の集会所とか、あるいは図書館、それから病院というようなところにも出張所を設けて、相談所も提供しているということです。年間の相談受付件数を調べましたところ、2001年から2002年の年報によりますと、1年間に570万件の新たな相談件数があったということです。その内容ですが、一番多いのは社会保障に関する問題、次いで消費者問題、それから雇用というような順番になっております。一般市民にとっての身近な法律問題は、まずここに持ち込まれるという位置付けになっております。スタッフは、約2万人のボランティアがおりまして、これが全体の職員の約80%を占めて
おります。こういった方たちも研修などを受けておりまして、無給のボランティアですが、ここで相談業務の経験を積んで、有給の相談資格者ということでほかの機関に移っていくというような人もいるということです。そういったボランティア以外に、弁護士資格を有している者も雇用されておりす。ソリシタの資格を持っている人は非常に多いので、そういった人がこのような非営利の団体に雇用されるというようなこともあります。また、法律問題が持ち込まれて開業ソリシタに回した方がいいと判断された場合には、その相談員の方からソリシタに紹介されるということも行っております。そういった意味で、法律相談に限定せずに、いろいろ身近な相談を受け付ける。だから、対人関係で悩んでいるといった非常に一般的な相談なども持ち込まれるようですが、そういった中から、法的な対応が適切なものは何かということを選び出しまして、ソリシタを紹介して訴訟手続等のルートに乗せる、そういう役割を果しております。そういった全国的なネットワークの相談業務が行われているという面において参考になるのではないかと考えております。
それから、財源の問題と関わりますが、こういった市民相談所のような非営利の相談機関に対して、国からの援助ということが行われておりまして、これが従来、リーガル・エイドと呼ばれていたものが、2000年4月からはコミュニティ・リーガル・サービスという名前に変わったのですが、これについてもホームページ等ありますので、適宜御覧になっていただければと思います。このコミュニティ・リーガル・サービスになってどこがどう変わったかということですが、従来はソリシタが提供する法律相談に限定されていたわけで、そうしますと、例えば、社会保障であるとか、移民の問題であるとか、あるいは住宅問題、公営住宅を賃借しているような貧困層の抱える法律問題などもあるわけですが、そういったものに対する対応が必ずしも十分でなかったということがございました。そういった面でのサービス拡充ということに力を入れるということで、非営利の相談機関が行っているような相談サービスに対しても、コミュニティ・リーガル・サービスの基金から補助が行く、そういうシステムになったということです。そういった意味で、国庫補助の対象になる相談というものが広がっているということが特徴して挙げられるかと思います。
以上でございます。
□ ありがとうございました。何か御質問がございましたらどうぞ。
○ 御説明をありがとうございました。Citizens Advice Bureauで年間570万件の相談を受けていらっしゃるということですが、これは、先ほどのインターネット上の相談でなくて、2,000か所に市民がアクセスできるということですね。
時間帯ですとか、相談者の負担する費用というものがあるのでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
○ 時間帯は、年間に何千時間対応しているという資料はありますが、1日に、例えば夜間も開いているかどうかということについての資料はありません。多分、拠点ごとに時間帯は違うと思います。十分なスタッフがいれば、長く開いていることができますし、スタッフ不足のところは、例えば2〜3時間ということもあり得るかと思いますが、それは拠点ごとに違うと思います。それから、費用の点ですが、これは無料相談です。
○ もう一つよろしいでしょうか。ここで持ち込まれてくる相談は大変に幅広い範囲とお伺いしておりますけれども、専門的な領域が多々ございますよね。社会保障もそうですけれども、2番目に挙げられた消費者問題でも、物やサービスも随分たくさんの種類がございますし、そういう専門的な領域に関して、この先、弁護士さんなり、より専門家に話をつないでいくような、そういう仕組みはあるのでしょうか。
○ 相談員の中には、相談業務にかなり精通していらっしゃる方がおられまして、そういう方が対応するということが考えられますし、その方の判断で、例えば、専門的なソリシタのサービスを得た方がいいという場合には、そちらに紹介をいたします。
○ 「ソリシタ」といいますと、日本語に訳しますと、どのような訳になるのでしょうか。
○ 日本語で訳す場合は、「事務弁護士」と訳すこともあります。イギリスの場合は2種類の弁護士がありまして、ソリシタとバリスタというものでございます。ソリシタは、お医者さんでいえば開業医に当たるような人で、不動産譲渡のようなことも行っておりますし、遺言書の作成とか、そういった業務も行っております。法律相談については、一般的な問題については行っているということですが、本当に専門的な領域の問題になりますと、バリスタの方に紹介が行きまして、そちらで専門的な法律相談をします。また、訴訟事件の法廷代理は、バリスタが担当するということになっております。ですから、まず市民相談所で受けて、それで必要なものがあればソリシタに回り、ソリシタが更に訴訟手続でかなり専門的な知識が必要だと判断すればバリスターに回るということになっております。恐らく、バリスタが、我が国の弁護士さんの業務と大体対応するものではないかと思っております。
○ この相談の結果、訴訟にまで行くケースというのは、何かデータはございますか。
○ データそのものはありません。実は、Citizens Advice Bureauの全国組織であるNational Association of Citizens Advice Bureauxは、ここ自体が訴えの提起をするというような活動もしております。ですから、政策形成訴訟のようなことをここが提起しているというようになっております。
○ このビューローの元に当たるところでは訴権を持っているということですね。
○ 訴えの提起ができます。
○ 訴えの提起ができるんですか。そうしますと、国から補助があったり、基金からの補助があったりということでしたけれども、訴訟費用もかからないのですか。National Association of Citizens Advice Bureauxを通じて訴訟になった場合ですが。
○ National Association of Citizens Advice Bureauxが訴えを提起した場合は、National Association of Citizens Advice Bureauxの負担ということになります。National Association of Citizens Advice Bureauxから紹介されて一般市民の方が当事者として訴えを提起する場合には、それはその人の負担になりますけれども、資力テスト、一定の基準がありまして、それ以下の方ということになりますと、これは従来のリーガル・エイドの受給者ということで、国から訴訟費用の援助を得られるということになります。
○ 法律扶助が手厚いとお伺いしておりますけれども、その方たちは、そういった援助が受けられるということですね。ありがとうございました。
○ イギリスにおいてのリーガル・エイドというのは、勝訴の見込みがなければいけないのですか。日本と同じですか。
○ 厳密に一致しているかどうかという問題はありますけれども、資力要件のほかに本案要件といいますか、勝訴要件というものも加味することになります。
□ 我が国の方でも、消費者問題に関するアクセス・ポイントについて御説明、御意見をいただければと思います。
○ 消費者問題で私どもが相談にまず行くところとして、一番代表的な、司法的な解決のアクセス・ポイントとしては、全国の消費生活センター、名前が地域によって多少異なりますけれども、消費生活センターがございます。国民生活センターが公表している資料によりますと、これが各地に475あります。都道府県立のものが165、政令指定都市のものが16、市区町立のものが294という内訳になっております。
全国消費者団体連絡会、全国の消費者団体が加入しておりますけれども、ここで消費者行政の調査を行っておりまして、実際に地域の消費者行政について調べたものがございます。それによりますと、消費者行政担当職員数の推移ですが、これは平成14年における状況ということですけれども、全国平均でマイナス5.0パーセントということです。それから、消費生活センターの職員は横ばいで、0.5パーセント増ということでございます。本課の職員の大幅減少が見られていて、消費者行政機能というのは、全体的に非常に後退気味になっております。
次に、消費者行政予算の推移ですが、マイナス17パーセントで、人口1人当たりにしますと、平均すると、昨年が70円だったものが58円という計算になるということです。それから、情報提供・啓発予算がマイナス26.3パーセント、商品テスト関係予算がマイナス51.6パーセント、消費者団体等への活動支援予算はマイナス18.2パーセントとなっており、これも大変厳しいものがございます。一般会計に占める消費者行政予算の割合は、0.016パーセントから0.014パーセントに減少しております。これは、全体的に今緊縮財政なわけですけれども、一般会計予算がマイナス6.2パーセントであるところ、消費者行政予算はマイナス17パーセントという大幅減の状況になっております。
次に、相談員の配置人数の推移ですが、先ほど御説明したように、全国合計でプラスになっておりますけれども、相談受付の件数が27パーセントも増えておりますので、増える相談にとても追い付いていないということが、この数字から明らかになっております。もちろん、スタッフの方々は誇りを持ち、消費者問題は我々がというような気概を持ってやっておられるわけですから、一概に言えることではありませんけれども、とにかく数をこなすということになるわけですので、相談解決内容が低下していないか、あっせん解決率の低下につながっていないかということが心配されているわけです。
それから、消費生活センターの設置数も、統廃合ということが各地で行われておりまして、社団法人全国消費生活相談員協会の資料によりますと、全国477か所となっておりますけれども、これは、統廃合のために、国民生活センターが475という数字を挙げている可能性がございます。これは新しいデータですが、相談員さんの方の数字と国民生活センターの数字が食い違っているわけですけれども、約2,500人の相談員が配置されております。これには非常勤の人も入っておりますし、週に何日といいますか、非常に勤務体系が様々ですので、フルタイムの相談員ということではございません。全部がフルタイムということではないということです。100%が違うという意味ではありませんですが、とにかくそういう状況で行われております。消費生活相談員協会の説明を伺ってみますと、統廃合があるということで、地域的に消費者相談を受けにくくなるところが出てくるということを懸念しているということと、それから身分が大変不安定で、1年ごとの契約であったり、そうでない場合は5年間継続したら退職してもらうというような傾向も出てまいりまして、仕事の量や仕事の内容に比べて不安定な立場に置かれて、誇りを高く持って仕事をしているけれども、厳しい状況があるということでございました。
それから、今申し上げましたのが数字等から見た消費生活センターの状況ですが、全国のパイオネットに入っている相談数、コンピュータのネットワークで出していただいた資料によりますと、それは約62万5,000件、窓口に訴え出ているのが現在で88万件を超えておりまして、恐らく、今年度中に100万件を超えるだろうと言われております。そのすべてがパイオネットの中に登録されているわけではないわけです。したがいまして、相談件数は鰻登りで、現在、88万件はもう超えております。
東京都消費者被害救済対策委員会について御紹介申し上げます。東京都消費者被害救済委員会は、被害が多発してきている市区町村並びに都のセンターに訴えの多いもので、これは更に被害の拡大が予測されるというようなものを取り上げて、その業者を呼んだり、被害者の方からヒアリングを行いまして、あっせん・調停を行うものです。私もこの委員会にメンバーとして入っておりまして、床下調湿剤等の契約に係る紛争案件に現在取組中でございます。年内解決を目指していますが、今までに約100件ほど苦情が上がってきております。床下に湿気がたまるといけないということで付託を受けているわけですけれども、それで被害が多発しておりまして、高額の被害者では、お年寄りが四百数十万円で床下に調湿剤をまいたり、地震の心配があるといってつっかえ棒を入れたり、換気扇を入れたり、いろいろなことを次々と持ち込んできて、そういう被害が出ております。この業者をヒアリングしましたら、割合に効果があったようでしたので、やはり救済委員会というものも必要な組織ではないかということです。ただ、全国的に見た場合、被害救済委員会とか、苦情処理委員会というのは、すべての都道府県に設けられてはいますが、設立されて以降この委員会で処理された案件があるのは19都府県で、残りの27はゼロということになっております。積極的にやっているのは東京ぐらいではないかというような、本当にお寒いかぎりだというようなお話を伺ったことがあります。
それから、アクセス・ポイントの現状として、今私が申し上げたのは、消費生活センター並びにその中にありますADR的な機能の更にプラスされたものの消費者被害救済委員会の活動でございましたけれども、この消費生活センターの体制というのが、消費者契約法制定当時は、もっと更にこれを推進しなければならないということが附帯決議で付けられていたわけですけれども、現実には、消費者行政予算の削減に遭っておりまして、そういう附帯決議とは反しまして、現在では、27パーセントも増えつつある相談に対して対応し切れていないという状況があります。ここから、PLセンターなどのように様々あるADR、あるいは公正取引協議会などの各業界団体がありますが、そういうところに振り分けられるケースもあります。内容が専門的ですとか、時間的な制約があって、なかなか消費生活センターで処理し切れない案件については、そういうところに持ち込まれるケースが増えてきているようです。私自身が全体をなかなか把握し切れていませんが、PLセンター等で、ADRの機能として心配な面もございます。そこは業界団体等が中心になって運営しておりまして、そこに調停、あっせんなどを行う委員会、あるいは処理体制のようないろいろな名称がありますけれども、そういうものは設けられておりまして、消費者が入っているケースも多いわけですけれども、実際の委員をしているメンバーから話を聞きますと、消費者が入っている委員会まで持ってあげると面倒だからということで、その前のところで処理がされているケースもかなりあるようです。公正取引協議会の方はよくわかりませんが、PLセンターなどの場合には、そういうケースがあるようです。統計的なものは、全体で見て何パーセントがどうということは言えませんが、民間のADRというのは、これから先増えてくるトラブルに対して対応していただくところとすれば、期待も持ちたいところですが、実際には、第三者的な公正性ということ、あるいは利害関係者の代表が入るということが形式的になっていて、処理解決は事務局サイドでなされるケースも多いという現状もあるようです。それから、あるPLセンターの方は、全国各地を駆けめぐっておられまして、私なども報告をよくいただきますが、お会いすると、忙しい、忙しいという言葉を連発されていて、非常に真面目にお取り組みにはなるようですが、マンパワーが不足しています。したがいまして、処理を急がざるを得ないという状況があって、やはり、紛争解決内容の低下、質の低下ということが懸念されるようなケースもあります。
一概には言えないことですが、ADR等に対する期待というのは、相談員の方たちの中にも、行政型ADR以外のADR、そういうところに対する期待というのはあるわけですが、それは処理するケースが多いということもありますし、また同時に、裁判に対して、裁判が市民的な意識を反映してもらえないとか、時間がかかり、お金がかかるというようなことなどもあって、残念なことですけれども、裁判に持っていくぐらいだったらばということをおっしゃる人もいます。したがいまして、司法アクセスを考えていく場合に、消費生活センター等の体制の強化ということがまず必要ですし、ADR等の受け皿の問題をしっかりやっていきませんと、司法的解決というのが、十分な機能を発揮し得ないということが心配される現状があります。
続きまして、特定商取引法の問題点について御照会させていただきます。国民生活センターのホームページによりますと、国民生活センターに持ち込まれている、あるいは消費生活センターに持ち込まれているけれども、指定商品制を取っている特定商取引法の問題点がありまして、パソコン教室とか、結婚相手紹介サービス、スポーツ教室、育毛サービスなどの役務について、トラブルが多発しているにもかかわらず、解決までなかなか持っていきにくい、そういう問題点が提起されて、指定品目に追加することの要望と、業界団体に対しての要望を行ったということです。現実に、司法的なアクセスをした人たちがありましても、法律が邪魔をしているというケースでございます。
それから、次に、消費者契約法の活用状況について御照会させていただきます。消費者契約法ができたことによって、確かに、消費者からの訴えによる解決へと結び付くケースもありますが、不当条項のある問題契約書の関連相談において、不当と考えられる条項について事業者等に要望している例はありますが、変更されたという例が確認されておらず、実効性確保における課題があるということで、消費者契約法の中にも、問題点が多々あるわけです。したがいまして、5年ごとの見直しということも言われているわけですけれども、現行法においては、司法的解決を図ろうと思ったときに、このようなケースがありまして、問題があるわけです。
それから、PL法に関しては、これもよく指摘されておりまして、製造物の概念の範囲が非常に狭く、不動産とか、ソフトとか、そういったものが入っていないということが問題になりますし、したがいまして、動産及び不動産、有体物、無体物と範囲を広げていくことが望まれております。また、結果及び因果関係の推定規定の導入とか、安全性に関する情報開示の問題、悪質業者に対する損害賦課金の支払い規定の新設、あるいは内部告発者の保護制度の問題、団体訴権の導入の必要性などが指摘されているところです。これもやはりPL法の問題で、現行法に問題があるために、司法アクセスの問題もありますけれども、持ち込まれてきてもなかなか司法的な解決が、現実として図れていないということがあります。
次に、警察庁の生活安全局のホームページには、警察庁が事件として処理したケースが紹介されています。これに関して警視庁にヒアリングにお伺いしてまいりましたところ、生活経済事犯の取締りのために、年に1回、消費生活センターとか各行政の関係の人たちとの連絡を持っているということでした。警察関係では、東京都の場合には、3か月に1回、各都民に配布される資料の中で、こういうケースがあったら交番に言うようにというような情報を掲載しておりまして、それで生活経済事犯の取締りに役立てたり、消費生活センターとの相互関係を持つことによって、警察が具体的解決に乗り出すというケースもあるようですが、非常に件数も少ないようです。平成13年度で立件できて取り締まられたものは1,297件ということで、お寒い状況があるわけです。警察では、ほかに指導も行っています。私がヒアリングに行った日には、その日の朝、コンピュータで被害に遭ったという4人から、スキーに申し込んだところ、情報がどう使われて漏れたのかわからないけれども、先物取引をした契約になっていて160万円を請求されたという相談があったようです。そこで、係の人がその業者に電話をかけて、こういうことをやっていると警察につかまるよというようなことを言われたそうです。つまり、司法的な解決、まだ実際に逮捕までには至っていませんけれども、警察でもそういうことをやっているわけです。そういうことで、今後、年に1回と言わず、本当はもっと連絡を密にして、私たち消費者、あるいは生活者すべてがアクセスしやすいような状況でないといけないと思います。私がヒアリングに行くのでも敷居が高い、そういうような状況があるわけです。
話が長くなって恐縮でございますが、最後に、消費者の安全の在り方と独占禁止法の問題について御照会させていただきます。まず、消費者の安全の在り方の方から話させていただきます。消費者が安全でない取引に関しては、製造物責任法とか、特定商取引に関する法律とか消費者契約法で、私たち消費者も話をするということができるようになってきています。農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律では、消費者が農林水産大臣に申し出て措置をとるべきことを求めることができるとなっておりまして、この法律を受けてといいましょうか、昨今大変不祥事が多かったものですから、表示ウォッチャー制度というものができております。そこがどう活用されていくかということが、まだ始まったばかりでこれからの課題ですが、安全性にかかわる問題についても、直接消費者が申し立てることが一応窓口はできるということにはなっておりまして、あとは法的に罰則が厳しくなったという経緯がございます。それから、消費生活用製品安全法でも、消費者の申し出ができるということになっております。
独占禁止法の問題については、差止請求が本人でないとできないという問題があります。消費者が個人で直接被害を被った場合には差止請求ができますが、団体としてはできませんし、またこれは取引上の問題であって、景品表示法関係の不当表示とか何かにまつわる損害賠償請求などは、現状では全然できません。ですから、司法による解決といっても、公正取引委員会の状況は、公正取引協議会等がつくる自主規約、公正競争規約等によるクッションを置いた形での規制にとどまっているわけです。公正取引協議会といいますのは、先ほども申し上げましたが、事業者団体でして、公正取引委員会の天下りの人が各所に配置はされておりますけれども、一定の歯止めにはなっても、問題はあります。この間も、食肉の表示の規約改正がありまして、一つ私の主張を取り入れていただきましたが、非常に甘いものを提示されてこられて、昨今のいろいろな問題が起こったものですから、私どもの要望したこともありまして、卸し加工段階まで表示を適正化させるという項目が公正競争規約に入ったわけですけれども、その改正案のところに「加工品は除く」と書いて、適用除外のただし書きが付いてきました。卸段階まで表示させることの代わりにただし書きが付いてきましたので、ただし書きがあっては、加工肉や何かが非常に多いので困るということで、公聴会で意見を述べて、やっとそれは撤回してもらいました。
とにかく、消費者が司法的な解決をしようと思った場合、まだまだADRの情報も、本一冊になるほどたくさんあるわけですけれども、私たちになかなかなじみのあるものが少ない。そして、公的なアクセス・ポイントも、電話がふさがっていたり、たくさんの案件を抱えていて、相談員の方も大変であって、弁護士さんが大変支援してくださって、弁護士さんとの連絡がたくさんある消費生活センターもあるようですが、司法へのアクセスよりも、どちらかというと民間による解決の方が、つまり司法アクセスがどうも期待できない、現実的な問題をどの程度裁判官の方が知っておられるのかというような、残念ながらそういう考え方の人も、相当相談員の方にはいまして、ADRへの期待というのは、非常に高まっております。ですから、私たちが司法アクセス検討会として、本当に司法へのアクセスをまず考えていくとすれば、消費者問題についてだけでもそういう問題があるということを是非お取り上げいただかないと、何か改革に結び付かない、我が国では一けたぐらい裁判例も少ないわけですし、法曹界におられる方皆さんも人数も少ないし、まだまだみんな意識が低いわけですので、アクセスを考える場合に、もちろん、時間帯が広げられた方がいいとか、様々な具体的な改革も必要ですが、それ以前の前提となる社会状況の出発点をよく見据えていただく必要があるのではないかと思っております。
長い時間をいただきまして、ありがとうございました。
□ 続いて、弁護士会の公設事務所等について御説明をいただけますでしょうか。
○ 若干報告をさせていただきます。
日本の場合は、法律相談事業は全部ばらばらです。例えば、今お聞きしたところでは、消費生活センターの相談が約100万件あるそうですけれども、それも単発であって、どこと結び付いているというわけではない。資金源と監督官庁によって全部ばらばらで、縦線になっていると思います。今のイギリスのお話では570万件で、それは多分、いわゆるコミニュティー・リーガル・サービスが関与して、そこから資金が出ている相談という意味だろうと思います。だから統計が取れるのだと思います。日本の場合は、法律相談をあちこちでやっているから、かなりの数にはなるとは私も思います。ところが、統計が全く取れていないということが、まず問題になります。そういう意味で、それから先がない。例えば、一般的に言えば、相談があれば訴訟への関連をどうするかということが司法アクセスにつながるわけですけれども、その関連性が断ち切られてしまっている相談が大変多いわけです。
現在、訴訟との関連を最初から見込んで相談をやっているのは、弁護士会の相談センターと法律扶助協会の相談制度だけだろうと思います。それは、数としては、実際にはそんなには多くないわけです。弁護士会の有料相談が何件あるのか、今統計を見ましても、合計が出ていないのでよくわかりませんが、10万件ぐらいではないかと思います。法律扶助協会が、予算の関係で年間6万件です。ということは、16万件ぐらいが、訴訟への提携を見込んだ相談ということになるわけです。あとは、それがどこへつながるのかということをあまり見込んでいない相談です。消費生活センターが大体100万件、警察の相談が約60万件と言われています。それから、社会福祉協議会の相談も、10万件ぐらいあるのではないかと思いますが、はっきりしません。これは民生委員が相談を行っている制度ですが、そこのふれあい事業というのは、資金がかなり逼迫していて、どんどんこの数は減っているだろうと思います。あと、一番多いのは、自治体相談です。これも、結局、どこかが統括してやっているということではなくて、本当に市町村が独自に単独で行政サービスとしてやっているわけですから、やっているところとやっていないところのばらつきがあるわけです。この統計も全くありません。ただ、平成5年に日本弁護士連合会の有志が3,386の自治体にアンケート調査をやりまして、2,200ぐらいから回答が来ました。その68パーセントの自治体から、無料相談をやっているという回答が来ています。多分、やっていないところは回答していないと思いますので、そうしますと、1,500自治体ぐらいが無料相談を行っているのではないかと思います。自治体も今、資金的に厳しい状況ですから、その後それほど増えているとも思えませんので、今も1,500自治体ぐらいと推測されます。これらの自治体が、みんな無料相談をやっているわけです。問題なのは、自治体相談をやっても、ほとんどのところは、弁護士の直受けが認められていません。関西では若干認められているようですが、全国レベルでは、ほとんど認められていないわけです。そこで、自治体相談、例えば市の相談に行っても、そこでおしまいになってしまいます。では弁護士会へ行きなさいと言っても、多分ここから行くのは敷居が高くてなかなか行かれないということで、裁判にならないというケースが多いのではないかと推測されます。そういう意味から言えば、やはり、今ある有料相談もそうですけれども、無料相談も、どこかで訴訟へ結び付くような連携の制度をきちんとつくっていかないと、相談だけで終わってしまう、尻切れトンボの形になっていることが多いのだろうと思います。この辺りを何とかしていただけないかという感じがしています。そういう意味では、先日朝日新聞に書いてあったことに私も興味を持っていて、どのような展開があるのかと思っています。
日本弁護士連合会の有料の法律相談センターについて御紹介させていただきます。資料3として一覧表がありますが、これが、現状の相談センターの数になります。日本弁護士連合会としても、相談センターの事業に本格的に着手したのは平成になってからです。古くは、昭和39年の臨時司法制度調査会のときにも指摘されていましたが、その後あまり発展がなく、平成年代の司法改革の波の中でやはり外圧があって、自らというのもありますけれども、相談センターをつくって市民にアクセスしやすくするということで、これだけ多くのものをつくってきました。平成5年には、77の地裁支部で弁護士がゼロか1ということで、ゼロワン支部という言葉がはやりましたけれども、弁護士が全然いないか1人というところが77あったわけです。それが、現在はほとんど解消されていると思います。今、全国に地裁本庁及び支部が253ありますけれども、そこではほぼ解消されていると思います。更に簡裁の所在地にということになると、まだまだできていないところが多いので、やはり、弁護士偏在が今でもあるということは、間違いない事実だとは思います。ただ、平成14年に開設されたところを見ていただくと、かなり厳しいところに開設されているということがおわかりかと思います。資料3の最後のページを見ていただきますと、例えば、308番の高知の佐川相談所というところは、すごく厳しいところだと思います。また、同じページの根室や北見は、来年早々にできます。このように厳しいところにも、今どんどん開設しつつあるというのが実態です。前のページを見ると、浦河というところにも相談センターができています。それから、全国で一番事件数が少ない隠岐島にある西郷支部にも、昨年法律相談センターができております。173番を見ますと、隠岐法律相談センターができております。ここは、弁護士が月に1回か2回派遣されて、1日相談に当たるということになっております。弁護士会がやっている相談は、大体直受けが原則ということになっていますので、そういう意味では、あぶれることなく、現実に訴訟へ結び付く可能性が大変強いということが言えるだろうと思います。
日本弁護士連合会としては、更に、この相談センターを開設しにくいところでは、いわゆる公設事務所を設置しています。現在は20か所ぐらいが見込まれていまして、来年度中には40か所にはなるのではないかと考えられています。この相談センター、それから公設事務所については、日本弁護士連合会で、会員全員から特別会費を取って運営をしてきております。経済的には大変厳しい中で自主運営をしてきています。司法制度改革審議会の意見書には、このような法律相談所について一定の財政的負担等を検討するということが書いてありましたので、私どもとしては、それを視野に入れて検討をお願いしたいとに思っているところです。
□ ありがとうございました。何か御質問、御意見がございましたらどうぞ。
○ 自治体や消費生活センター等の様々なところが行っている相談は、なかなか訴訟に結び付かないのではないかというお話でしたけれども、日本弁護士連合会の法律相談とその他の法律相談との連携は、どうなっているのですか。
○ きちんとした提携関係がありません。ネットワークがありません。例えば、東京で言いますと、統計的に、東京の相談センターに来た事件の25パーセントぐらいが事件になっているわけです。ところが、では区役所に来た相談はどこに消えたのかというと、はっきりしていないわけです。もちろん、そこから弁護士会の相談センターに行ってくださいとか、法律扶助協会に行ってくださいということで、紹介がされるのだろうと思います。しかし、例えば品川区の区役所で相談を受けて、そこから霞が関の弁護士会の相談センターにたどり着くのが一仕事で、また抵抗感も物すごくあるのだろうと思います。だから、そこのネットワークをどう構築したらいいのかということは、やはり訴訟の増加というか、市民が司法へアクセスする一つの形をどうつくるかということは、今後の課題だろうと思います。
○ コンピュータの時代に、日本弁護士連合会が頑張れば、ネットワーク化とかはできるように思うのですが。
○ 警察に相談しても、自治体に相談しても無料です。それが、弁護士会を紹介して事件になれば有料ですよというのは、大変言いにくい要素があると思います。法律扶助協会を紹介するのならば、割と紹介しやすいのです。無料だからあそこへ行ってやってもらいなさいと。離婚事件などはたどり着きやすいです。ところが、普通の土地の事件などは、どうも区役所でも、これは法律扶助の資力要件には当たらないなということになると、有料のところを紹介するというのは、まだまだ難しいという問題があるのではないかと思います。
○ 日本の場合は、様々な相談機関があって、それぞれがばらばらで、そもそもどういうものがあるかということも把握していないというような状況であるということですが、イングランドでは、法律相談所的なものは、CAB一つしかないのですか。
○ CABは、非営利の相談所の一つということです。ほかにも、ロー・センターというものがありまして、弁護士がボランティアでやっている組織で、規模は大分小さいですけれども、そういった機関がございます。それ以外にも、有料の相談機関がございます。これらの連携は、概ねうまくいっているようです。
□ 資料1に、「ADRの拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プラン(仮称)」構成案というものがあります。途中ですが、これについての説明をいただくことにしたいと思います。
それでは、事務局からお願いいたします。
● 私は、ADRと隣接法律専門職種の活用、それから企業法務の関係を担当させていただいております。ほとんどの委員の方には初めてお目にかかりますが、よろしくお願いいたします。
それでは、資料1につきまして御説明をさせていただきますが、まず、ADRの拡充・活性化が司法制度改革審議会の意見書で提起されました背景、それからADRに関する検討の全体の今の状況について、簡単に御説明したいと思います。
資料が前後して恐縮ですが、資料5を御覧いただきたいと思います。ADRにつきましては、ここでは、一応「裁判外の紛争解決手段」とさせていただきましたが、必ずしも定まった訳はありません。「Alternative Dispute Resolution」ですので、直訳すれば、「代替的紛争解決」ということになるかと思いますが、「代替的」というのを嫌いまして、「ADR」と呼ばれることもありますし、時々「紛争処理」という言葉を使いますが、これも、何か右から左に流して処理をしていくというイメージがあって、「紛争解決」という方がむしろ望ましいのではないかということが言われております。日本の場合には、若干意訳ということになると思いますが、「裁判外の紛争解決手段」ということで、とりあえず進めさせていただいております。
今後、広い意味での司法の役割が大きくなっていくということになりますと、もちろん、裁判機能の充実を図るということは当然のことだろうと思いますが、それと並んで、国民にとっては、紛争解決の手段として、裁判と並ぶような魅力的な選択肢として、ADRを拡充・活性化していく必要があるのではないかというのが、司法制度改革審議会の意見書の提言です。そのために必要なこととして、具体的に、意見書の中で、言わば私どもの宿題としていただいていることが2点ございまして、1つは、先ほど来いろいろ御指摘もあるように感じましたが、日本の場合、ADRと称されるものがたくさんあるわけですが、一部を除いては、必ずしも有効に利用されていないのではないか、また、その間の連携も必ずしも十分に図られていないのではないかという指摘がありまして、まずは、関係機関間の連携を強化する必要があるのではないかということです。それから、2点目としましては、裁判と並ぶ魅力的な選択肢といっても、それに必要な制度的な基盤が必ずしも整備されていないのではないか、もちろん、ADRはいろいろな特色がありますから、必ずしも裁判と同じような構造にする必要はないわけですが、それにしても、裁判と比べてみた場合に、幾つか制度的な面で欠けている部分があるのではないかということで、共通的な制度基盤の整備をする必要があるのではないかということです。
意見書では、かなり具体的に検討テーマが挙げられておりまして、それをまとめたものが資料5の右側の方です。連携の強化の中では、利用者への情報提供面での連携が1つ、それからもう1つは、担い手の確保面での連携ということです。それから、共通的な制度基盤の整備につきましては、わかりやすく言えば、法制の整備ということになりますが、1つは仲裁法制の早期整備ということで、これは、仲裁検討会の方で検討を進めています。2つ目が、仲裁も含めましてADR全般にわたる総合的制度基盤の整備ということで、いわゆるADR基本法、何がADR基本法かというのは、まさにこれからの議論であるわけですが、そういったものの制定を視野に入れて、具体的な措置についての検討をするようにということで、例えば、時効中断効でありますとか、執行力を付与したり、あるいは法律扶助の対象にしたり、あるいは裁判所との手続的な連携を図ったらどうかということ、あるいは法曹のみならず隣接法律専門職種を含めましたいろいろな専門家の方を活用できるような制度を整備すべきではないか、こういった議論についての検討をするということになっています。
現在の検討の体制ですが、制度基盤の整備につきましては、1つは仲裁検討会がありますが、もう1つは、法制度の関係でADR検討会を進めさせていただいています。他方、関係機関の連携の強化につきましては、これも意見書の中で設置をするようにということで御指摘をいただいていますように、1つはADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議、これは政府機関、裁判所も含みますが、いわゆる行政庁と裁判所からなる連絡会議を今年の6月に設置しております。もう1つは、そういった行政庁も含めることになると思いますが、いわゆる民間のADR機関も含めて、関係機関の連絡協議会を設置するようにということになっています。ただ、こちらにつきましては、民間の機関の方に入っていただくということですから、行政庁がこの指止まれと言って集めるような性格のものではないということで、私どもとしては、設立に向けたお手伝いをさせていただきたいということで、現在のところはまだスタートしていません。このように、一方で、制度的な基盤の整備の検討を進めているわけですが、他方、法整備を待たずして連携を図れることについては、とりあえず、まず関係省庁の間で意見交換をし、それを更に輪を広げていこうということで、現在検討を進めています。
これでやっと資料1の方に入るわけですが、資料1の前文のところを御覧いただきたいと思いますが、ここで「ADRの拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プラン」の位置付けについて記載してあります。まず、アクション・プランそのものにつきましては、先ほど申し上げましたように、別途制度整備を検討しているわけですけれども、それを待たずして、連携を強化することによって改善が図れるような実態上、運用上の問題について検討を進めていこうということで、今年度中を目途に、アクション・プランというものを作成したいと考えています。そのアクション・プランに先立ちまして、このアクション・プラン構成案というものをつくった趣旨ですが、このページの下の方から次のページにかけてですが、このアクション・プラン自身は、あくまでも関係省庁間の申し合わせということで、行政庁としてこういうことをやっていきたいということではあるわけですが、ADRにはたくさん種類がありまして、司法型ADR、それから各種委員会のいろいろな行政型ADRがありますけれども、他方、民間型のADRというものもありますし、その振興を図るというのも今回の大きな目的でありますので、こういった各種ADR機関の方の御意見、あるいは消費者の方も含めて利用者の方の御意見も幅広く伺わないと、このアクション・プランというものも実効的なものにならないのではないかということで、とりあえず、幅広く御意見を伺うための中間的なたたき台として、この構成案をまとめさせていただいたということです。もう1つ、2枚目のところに書いてありますが、今回私がこの検討会に出席したことでもおわかりいただけますように、このADRの拡充・活性化の中のこの連携を強化する部分につきましては、実は、意見書の中での司法アクセスの部分と非常に密接な関連がありますので、是非こちらの方面からの御意見を、取り入れられるものについては取り入れさせていただきということです。これにつきましては、あくまでも中間的なたたき台ですので、ADR検討会、あるいは司法アクセス検討会、更には説明会なども開催しまして、幅広い御意見を伺いながら、更に内容の充実を図り、本年度末を目途にして取りまとめるということになっています。
前置きが長くなりましたが、資料1の1ページ以降、内容に入りたいと思います。このアクション・プラン構成案は、大きく3つの部分から成っております。1つ目が、1ページの「ADR機関等へのアクセスの向上」ということです。恐らく、この部分が、非常に司法アクセスと関係が深いところではないかと思います。2つ目が、7ページの一番下にありますが、「担い手の確保・育成」についての連携強化、3番目が、10ページになりますが、「その他」ということで、例えば広報、あるいは教育の問題というものを取り上げています。
まず、1番目の「ADR機関等へのアクセスの向上」の部分ですが、これも大きく3つの部分から成っております。1つは、「訴訟、ADRを含む紛争解決手段へのアクセス・ポイントの整備の促進」ということで、これは、いわゆるポータル・サイトも含めたワンストップ・サービスを念頭に置いたものです。それから、4ページの(2)ですが、これは、アクセス・ポイントを決めても、アクセス・ポイントにそもそもどうやってたどり着くかという問題があります。それから、ADR機関は多種多様なものがありますから、たまたまある機関に行った場合に、より適切な機関に運ばれていくといいますか、御紹介いただけるようなシステム、こういったものを考える必要があるのではないかということが2番目です。5ページの(3)、アクセスというのは、単に物理的にそういうアクセス・ポイントがあるということではなくて、利用者の側で選択をするための情報が提供されることが必要ではないかということもありますので、3番目としては、「ADR機関による情報開示の促進」ということを挙げております。
以下、順を追って御説明していきますが、まず、アクセス・ポイントの整備の促進につきましては、まず第1点は、ポータル・サイトの整備ということを考えております。こういう時代ですので、インターネットを通じて手軽に情報にアクセスできる、ポータル・サイトに行けるというのは、非常に重要な課題になると思っていますが、資料1の1ページの(注)にありますように、この整備の方法が幾つか考えられると思います。1つは、国が何らかの形でポータル・サイトを作成・運営するということも、もちろん1つの選択肢としては考えられるわけですが、実は、現在、民間機関の作成・運営するポータル・サイトが幾つか立ち上がりつつある状況にあります。今日配布されている参考資料の中に、ポータル・サイトの画面をプリントアウトしたものがあるかと思いますが、これも1つの例です。これは、日本弁護士連合会も参加されている運営主体によるもので「ADR Japan」と言われているものですが、こういったものもありまして、既に、民間機関の運営のものが立ち上がりつつあるということです。また、利用者の立場からしても、何か1つのものがあって、その1つに行かなければわからないということよりは、むしろ、利用者のニーズに応えながら多種多様なものが複数存在して、その間でまたネットワークが取れているという方が便利ではないのだろうかということも考えまして、このアクション・プランでは、こういった民間機関の活動の充実に向けた環境整備に焦点を当てた施策を中心にしたいと考えています。具体的には何をしていくかということですが、次の下の○にありますように、ポータル・サイトの関係者からなる意見交換の場を設置したいと考えています。ポータル・サイトの運営者は非常に御苦労されているというのは、私どもも拝見させていただいているところですが、他方、利用者の声、あるいはADR機関の声というのは必ずしも十分反映できない、そう言うと語弊がありますが、なかなかそこまでの余裕がないという面もあろうかと思いますので、是非、こういう運営者、利用者、それからADR機関そのものからなる意見交換の場を設けまして、利用者のニーズに合った、また、ADR機関にとっても便利となるポータル・サイトの在り方について、検討を進めていきたいということを考えています。ポータル・サイトの方に一方的に注文を付けるだけでは、これはまた問題になりますので、他方、各ADR機関からポータル・サイトに対しまして、十分な情報が的確なタイミングで提供されるような仕組みも、併せて検討していきたいと考えています。やや事務的な話になりますけれども、提供すべきフォーマットというようなものを決めて、タイミングよく送っていくとか、そういうようなことが考えられるのではないかと思っています。それから、資料1の2ページに参りまして、ポータル・サイトの運営者に対しましては、恐らく、ADR機関に対する評価の動向も寄せられるのではないかということが考えられますので、そういった評価がADR機関に的確に伝わるような、そういう面での連携も図っていきたいと思っています。また、ポータル・サイトそのものの知名度を上げていくということで、各省庁、あるいは行政型ADR機関、裁判所も含めまして、協力していきたいと考えております。以上がポータル・サイトの関係です。
それから、2番目がBですが、これは、もう少し物理的な総合的相談窓口を充実するということです。ここは、まさに司法アクセス検討会での議論とも相当重なる部分があろうかと思いますが、私どもとしては、ADRの拡充・活性化という観点から、資料1の3ページにありますように、相談機能というものもいろいろなレベルが考えられると思いますけれども、とりあえずミニマムな機能として、各種ADR機関等が一覧で紹介されたパンフレットを備えること、あるいは、各種紛争解決手段に関する総合的な情報を利用者が収集することが可能となる環境を整備していきたいと考えています。もちろん、これがどんどんレベルが上がっていけば、最終的には、例えば、受付の代行のようなことができるということまでも考えられるわけですが、これは、現在のADRの状況を考えると現実的ではないと思いますので、とりあえずは、ミニマムのこういった機能を整備していきたいと考えています。その際の具体的な担い手ですが、ここでは、裁判所、各省庁の消費者窓口、それから国民生活センター、こういったところは、私どもの連絡会議のメンバーですので、こういったところを整備をしていきたいと思います。それから、メンバーではありませんが、このような機能ということを考えると、そうした措置を講じていただくことを期待する機関として、地方公共団体、警察も含めてですけれども、更に弁護士会の方にも、是非こういった機能の強化をお願いしたいと思っています。これもまた、そういう機能を備えるようにということだけでは、現実には人の問題もありますし、お金の問題もあります。したがって、できるだけ負担をかけない形で、私どもとして何かお手伝いすることはないかということで、1つは、まず、それぞれの機関の相談担当者の方あるいは事務局の方に、ほかのADR機関がどういうことをやっているのかということについての情報を提供していただきたいということで、説明会や研修等の実施ということを積極的に行っていきたいと考えています。また、恐らく、これは相談機関はどこでも同じことだと思いますけれども、現実にこういう相談機能を果たしていこうとすれば、それぞれの個別の案件の処理などについては、相当いろいろ悩むことが出てくると思いますので、そういうところについては、お互いに更に情報を交換して、どういった形が考えられるのかということについての研究会なども開催していきたいと思います。
3番目、これは、それぞれの個別のADR機関においてアクセス方法の改善を図るということで、資料1の4ページに行きますが、例えば、ITの活用ということが考えられるかと思います。関係機関間の相互紹介の体制整備ですが、これは、先ほど申し上げましたように、ここでいきますと、点線で囲った中ですが、例えば、相談機関で受け付けた案件について、相談のみならず、あっせん・調停などが必要となった場合には、それにふさわしい紛争解決機関へ引き継ぐこと、あるいは、たまたま利用者の方が行かれたADR機関で扱った案件が、その機関では扱えない、対象外であった場合に、適切な他のADR機関へ引き継ぐこと、あるいは、幅広い一般的な紛争の受付をしているADR機関からより専門性の高いADR機関へ引き継ぐ、このようにいろいろな引継ぎのケースが考えられるわけでありまして、これを可能とするような実務上の連携システムを充実していきたいと考えています。ただ、これは、口で言うのは簡単ですけれども、現実には、それぞれの相談機関が自分たちの自らの案件を抱えていますし、そもそも紹介をしたのはいいが、実は不適切な機関だったということでは、むしろ混乱の元になりますので、基本的には、引き継ぐADR機関と引き継がれるADR機関の間でかなり高度の信頼関係がないと難しいということになろうかと思います。また、引継ぎの場合の引継ぎ方法でありますとか、費用負担をどうするのか、あるいは、引き継いだ後のフォローアップをどうするのかということについては、かなり事務的な調整・連絡が必要であろうかと思いますので、この問題についても、やはり、関心を有する関係機関からなる意見交換の場を設置しまして、その中で、モデルケースとなるような引継ぎのシステムを検討していきたいと考えています。
それから、資料1の5ページ、3番目のADR機関による情報開示の促進ですけれども、これにつきましては、実は、実務面での問題であると同時に、場合によっては法制面の問題になるかもしれないということです。いわゆるADR基本法の検討項目として意見書で掲げられているのは、先ほど申し上げたように、どちらかというとメリットを与えるということが中心になっているわけですが、実は、ADRの利用を促進するために、ADRの信頼性を確保する必要がある、そのためには、むしろ、規制とまでは申し上げませんけれども、通則的なルールが必要ではないかという議論がADR検討会の中でも行われておりまして、その1つの項目として、情報開示のルールというものも取り上げられています。したがって、ADR検討会における一般的な開示ルール、あるいは開示の責務の議論というものを踏まえる必要があるわけですが、しかし、それぞれの機関の性格などに応じて、組織・手続・主宰者、あるいは紛争解決結果に関する情報を開示していただくということは、基本的には望ましいと考えられますので、これについても更に検討を進めていくということで、このアクション・プランの中では記載させていただいております。
以上です。
□ せっかくの機会ですから、何か御意見、御質問がありましたらどうぞ。
○ 資料1の中に記載されているのかもしれないのですが、例えば、行政型のADRといいましょうか、国民生活センターのホームページを見ますと、暮らしの判例集というものが入っておりまして、かなり詳細に、関係のあるものを掲載されていますが、ADRの拡充を図っていかれる場合に、基となるしっかりした判例があって、それに基づいて、それを一定の基礎として、各ADRが課題の解決に当たっていただかなければならないと思いますが、そういうことに関しての討議というのはなされていらっしゃるのでしょうか。
● 関連する議論は行われております。ただ、実は、今委員がおっしゃったような考え方も1つではありますが、他方、ADRの場合には、むしろそういうことにとらわれないで、当事者が主体的に解決を図っていくということも大事ではないかという議論もあって、そこは、必ずしもどの方向でということには、今のところなっていません。拡充・活性化を図っていくADR像みたいなものについて、若干委員の間でも違いがありまして、判例が確定している定型的処理になじむようなものを中心にして考えていくべきだという考え方と、それよりは当事者の主体的な解決ということを重視するという考え方と両方あるということです。
○ そういう意味では、私も、先ほど行政型のADR関係の方の御発言の中からくみ取れる、率直に申しまして、ある種裁判に対する期待外れ感のような意見もあることは伺っておりますので、実際に消費者問題に限らず、生活関連の問題というのは多様化して、専門性も高度化しておりますから、それに対応していくということは、判例が実際に適用するもの、対応するものがあればいいのですが、そうでない場合もあるでしょうし、また、判例自体が市民感覚からずれた内容のものがもしあるとすれば、ADRの方たちが優れた解決を図ってくださればいいのですが、心配しますのは、失礼な言い方をすれば、いわゆる示談屋が増えてくるのではないかということです。仲裁法も併せてですが、事態の解決を安く、早く、お手軽にということで、確かに、今のこの改革の中で行われる必要があると思っておりますが、言葉遣いが非常に難しい、法律の文言や何かというのが大きな障害になっていることは確かなので、私たちが近寄り難いという面が、実際に裁判にはあるわけですね。ADRを求めておられる方は、普通の自分の表現で物事を訴えて、そして早く、安く解決を得る、しかも、上から押し付けられた回答ではなくて、自分も解決に加わっていくという御趣旨の方が多いと思います。ちょうど、病院でカルテの開示をしてもらって、治療していただくわけですが、ともに自分も参加して治していくというようなことにも該当するのかもしれませんが、そういう意味での主体性を持って解決に臨みたいという声と、ADRの期待されているものというのが、多分そこで合致するのではないだろうかということを思うわけですが、とても心配な点が残ります。先ほど、私は省略しましたので、誤解を招くところが多々あったかもしれませんが、長く消費者問題に関わってきている過程の中で、やはり、営利事業を営んでいる方たちの、人間は皆、常として自分の所属しているところをよく言いたいし、カバーしたい、利害に反することは否定したいという心理が働くものですから、事業者団体の方とかそれに類するような組織、公正取引協議会等であっても、出されてくる規約案などを見ますと、御都合主義といったら何ですが、我々から見ますと、生活者の視点からずれているときがあるわけです。ですので、情報公開性と客観性、それから法律があるということをしっかり認識していただきませんと、今の裁判の不足分を補っていただくような優れたADRが出てきていただければ、それは、私たちも、大いにそういうところは期待して、お世話になるかと思いますが、一つ違うと、大変暗い方向に行ってしまう。と申しますのは、今、コンプライアンスという言葉がまたはやってきてしまったように、輸入せざるを得なくなったような感じの、昔から日本には社訓というものがあったわけですが、モラルの崩壊によりまして、新聞紙上を連日のようにいろいろな不祥事がにぎわすわけですね。そういうような中で、処理の在り方というものを、誰が見ても公平であり、正しいというものに持っていくかということは、とても難しい問題だろうと思います。それは、ADRだけに求められることではないと思いますけれども、そういう不祥事などが相次いでいて、情報公開もあまり十分でないし、団体訴権はないし、クラスアクション制度もないしというような状況の中で、今こそ早く、迅速に、手軽にやりましょうという形で進められてきますと、率直に申しまして、しっかりとやっていただかないと、問題が拡大するような隠蔽をしたり、試験の内容なんかも改ざんするなど、モラル崩壊、モラルハザードの問題というのが実際あるわけですから、そういう中での運営というのは、よほど中立性、第三者性というものを確保していただかないと心配です。そういう意味で、やはり、法を拠りどころにしていただかないと、物わかりのいい人や話の非常に上手な方が仲裁に入っていくというような感じで物事が処理されますと、例えば、事業者側からの情報だけに頼っていますと、これは消費者の不注意による事故ですということがよく言われてきますけれども、消費者の不注意というのが度重なっていって、それをよく見ると、商品の構造上の欠陥だったりする場合が実際にあるわけです。ですから、そういうことを是非おくみ取りいただきたいと思います。消費者もいろいろおりますから、幅広いですから、そういう意味では、幅広い消費者の声や生活者の声、ADRは別に消費者問題に限らないと思いますから、多様な意見を反映していただけるような配慮、ビジネスとしてのADR、あるいは仲裁が横行するようになるということは、どうも今の現状では、もっと先にやるべきことがあると私などは思うものですから、失礼ですが、一言申し上げさせていただきます。
□ ADRの光と影があるのはそのとおりだろうと思います。
配布資料として、裁判所からも資料を出していただいています。ADRは今御説明いただきましたが、我々は司法アクセスということで、裁判所のことは無視できませんので、裁判所の方から、資料の説明等をお願いいたします。
(最高裁判所)
最高裁判所事務総局の方から御説明をさせていただきたいと思います。
国民の司法に対するアクセスを充実させるためには、その前提として、国民が司法に関する情報にアクセスできる環境を整備することが極めて重要だと考えております。現在、民事紛争に利用できる解決手段として、既に準備されているものといたしまして、訴訟、あるいは調停、あるいは支払督促、あるいは少額訴訟といった手続がございます。これに加えまして、ADRが充実してまいりますと、ADR、あるいは仲裁といった多種多様な紛争解決手段が設けられてくるところであります。紛争当事者がそれぞれの内容を正確に把握して、いずれの解決手段が自己の関わる紛争の解決に適しているかを自ら的確に判断することで、より適切な紛争解決につながることが期待されるところでございます。こうした観点から、裁判所からの情報発信に努めているところでございます。
まず、裁判所の情報発信の前提としましては、裁判所の窓口における情報提供を充実させるということが基本になってまいります。この検討会におきましても、第2回の検討会で東京家庭裁判所、東京簡易裁判所を見学いただいたところでありますが、特に当事者本人が申立てをなさることが多い簡易裁判所、家庭裁判所においては、裁判所の窓口における対応が重要であると考えます。そこで、簡易裁判所、あるいは家庭裁判所におきましては、相談者が紛争解決に最もふさわしい手続を自ら選択できるように、受付窓口に経験豊富な職員を配置するなどしまして、各種手続の流れ、あるいは申立書の書き方、手続費用、添付書類等についてわかりやすく説明を行うようにするほか、定型用紙を備え付けて利用者の便宜を図っているところでございます。また、見学の際に御覧いただきましたとおり、受付窓口、あるいは待合室におきまして各種のリーフレットを備え置いたり、あるいは手続案内ビデオを放映するなどして、情報の提供を図っているところでございます。
本日は、資料に沿いまして、そのほかの情報発信について簡単に御説明してまいりたいと思います。資料2を御覧いただきたいと思います。まず最初に、インターネット、ホームページによる情報提供です。資料2−1に主な内容が書いてあります。最初はアクセス情報でありまして、裁判所の場所的なアクセス手段についての情報、あるいは裁判手続の内容の紹介として、裁判手続の案内、あるいは各種申立書の書式、ADR機関の案内などを提供しております。更に裁判の内容に関わるものといたしまして、判決の情報、あるいは司法統計の情報を提供しております。そのほか、裁判所における取組みなど、お知らせコーナーでその他の情報を提供しているところであります。1枚めくっていただきますと、裁判所のホームページの紹介をしております。平成9年5月に開設いたしました裁判所のホームページですが、平成14年3月に各地の裁判所ホームページを設けたところでありまして、その後利用が急激に増えており、現時点では300万件を超えるアクセスを得ているところであります。1枚めくっていただきまして、次が最高裁判所のホームページです。最高裁判所のホームページにおきましては、例えば、最高裁判所の裁判官はどのような裁判官が務めているのかという人柄を紹介するページですとか、あるいは裁判所に提出する書式例ですとか、あるいは重要な裁判例、あるいは司法統計、そういった情報を提供しているところがございます。次のページは、各地の裁判所のホームページです。こちらの方では、各地の裁判所におけるローカルルールを含めた手続案内ですとか、あるいは書式例を紹介しまして、具体的な書式をダウンロードしていただいて、書類を作成していただけるようにしております。その他、ADRの案内のページも設けておりまして、弁護士会の仲裁センターなどの紹介をしております。その次に、1枚めくっていただきますと、最高裁ホームページにおける手続案内を紹介しております。これは御覧いただいたとおりでありまして、最高裁のホームページは標準的な手続を、各地の裁判所のホームページではこれに加えまして各地でのローカルルールについての紹介を行っているところであります。次に、電話・FAX案内サービスや書式情報についての紹介を行っております。電話・FAX案内サービスについては、後ほどもう少し申し上げさせていただきます。次のページは、ホームページで紹介している書式の例でありまして、最高裁ホームページ、それから各地の裁判所のホームページで、ここに書いているようなものを御覧いただけるようにしておりますし、中身はダウンロードして、そこに書き込みをして作成をしていただくことができるようにしているものがございます。次に、裁判所のホームページにおける判決情報の公開の状況を紹介しております。最高裁判所の判例集に登載された判例約7,700件を紹介しておりますが、全国の高裁、地裁の裁判例につきましても、新しく公開を始めたところでありまして、各地の下級裁判所の判決の後、国民の興味を集めるものをそこで紹介しているところであります。次が、ホームページに対するアクセス数の推移でございます。内容が充実するにつれ、徐々にアクセス件数も増えてきているところでありまして、今年度、下級裁判所のホームページを設けて以降は、急激にアクセス数が伸びてきているところであります。以上がインターネット・ホームページによる情報提供であります。
次に、電話・FAXによる手続案内サービスについてであります。全国で現在34の庁に、電話・FAXによる手続案内サービスを導入しております。案内している情報といたしましては、資料2−2に書いてありますとおり、裁判所へのアクセス案内、あるいは各種手続の一般的な案内、各種手続の具体的な案内、書式例の案内などを紹介しております。これは、特定の電話番号に電話をかけていただきまして、音声案内、あるいはFAX情報サービスを選択していただいた上でコード番号を入力していただくと、必要な情報を取り出していただけるようにしているものでございます。これにつきましても、平成13年におきましては、全国で約19万件のアクセスがあったところでございます。
次は、パンフレット、リーフレットの提供であります。資料2−3に書いてありますようなパンフレットを、お手元にもその一部をお配りしておりますが、簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所のそれぞれのパンフレットを、各種手続につきまして作成をしているところであります。例えば、お手元のパンフレットの中に、「初めて簡易裁判所を利用される方のために」というものがございますが、このパンフレットを御覧いただきますと、調停、支払督促、訴訟、少額訴訟、こういった手続につきまして、どういった紛争の手続がなじむのかといったところを紹介しております。この上で手続について選択していただいた上で、それぞれの手続についての紹介を、そのほかのパンフレットで行っているというようにしております。こうしたパンフレットを、裁判所の窓口、待合室のほか、資料2−3に書いてありますが、裁判所以外のいろいろな場所に設置をお願いしておりまして、そうしたところで手続についての情報を得ていただくようにしているところであります。
次が、資料2−4の「広報用ビデオテープについて」と書いたページでございますが、これにつきましても、各種のビデオテープを作成いたしまして、裁判所の中でロビーなどで流しておりますほか、御希望がございましたら貸出しを行って、裁判所外でも御覧いただけるようにしているところでございます。
次に、広報テーマでありますが、これも、資料2−5に書いてありますとおり、各種の手続について毎月特定のテーマを選びまして、裁判所の方で原稿を作成し、ホームページで紹介するほか、政府の広報、あるいは自治体の広報で紹介していただけるようにお願いしているところであります。
最後に、資料2−6で模擬裁判・模擬調停、それから資料2−7で裁判官による出前講義などの実施例というものを紹介しております。これは、参考資料の中に具体的な新聞記事がありますので、中身につきましては、その記事、それからこの資料2−6の中で簡単に紹介しているものを御覧いただければと思いますが、現在、裁判所に見学においでいただいた小中学生、あるいは高校生に、裁判所で準備しましたシナリオなどを利用していただいて、実際の法廷、あるいは調停室で模擬裁判を行っていただいたり、あるいは裁判所から出張して模擬法廷を行うというようなことも行っているところであります。また、裁判官が中学校、あるいは高校に出張いたしまして、授業の中で講義を行う機会というものも設けてきております。これについても、この資料2−6、2−7に書いてありますとおり、参加者からは非常に好評な感想をいただいているところでございます。こうした取り組みにつきましては、特に東京地裁において、かなり充実した取組みを行っているところであります。今、御覧いただいております新聞記事の後に、東京地裁のアクセス推進委員会というところが行っている取組みについても紹介をしているところであります。具体的には、手続の説明会を頻繁に行っておりまして、訴訟以外にいろいろな個別の手続、民事再生手続ですとか、あるいは会社更生手続、そのほか、訴訟におきましても専門的な分野の訴訟、民事交通裁判、知的財産権訴訟、医療訴訟、そうした手続についての説明会を実施しております。そのほか、講師派遣についても、多数回の派遣をしているところでありまして、そうした状況については、この資料を御覧いただければと思います。
以上でございます。
□ どうもありがとうございました。ADRの関係と裁判所の関係で、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。
○ 裁判所の資料、大変よくわかりまして、これを見ると、裁判所の情報発信はよくわかりますが、多分、窓口に来た方が、ではどこへ相談に行ったらいいんでしょうかということについての資料がないんです。私も、先日、東京簡裁の受付相談を見学をさせていただきましたけれども、結局、手続的なことを説明するということでした。あの隣辺りに、弁護士の相談でも置いていただけたらありがたいと思いました。前から申入れはしています。有料でまずければ、民事法律扶助協会から派遣するのも一つの方法ではないかと思いますので、御検討いただけたらと思います。ここ何年か申し上げているところです。
もう一つ、私も、家庭裁判所の書式はわからないので、このFAXは役に立っております。更に、受付の窓口のところに、弁護士会のチラシがいろいろとありますので、それを置かせていただけるよう、いつもお願いをしていますが、有料相談のチラシは、全国レベルでどこでも無理です。そう言われると、弁護士会と裁判所の連携がなかなかやりにくいので、敵対するわけではありませんので、弁護士会の有料相談のチラシも置かせていただければ、裁判所もかえって楽なのではないかと思います。あそこへ行ってくださいというのは、チラシを出した方がやりいいのではないかと思いまして、有料相談のチラシなども置かせていただければ大変ありがたいと思いますので、御検討いただきたいと思います。
○ 最高裁の方と先ほどのADRと両方に関わることだと思いますが、私は、最高裁のホームページは、割合よくアクセスしているつもりだったのですが、ADRに関する情報も載っているということは初めて聞きました。各地の裁判所のホームページも、例えば、ADRの案内も載せている場合もあるということですが、このADRの案内は、ホームページの最初のところに出していただいて、裁判外の紛争解決という、例えばいろいろなところのホームページにリンクできるような仕組みにしていただくわけにはいかないのでしょうか。先ほどのポータル・サイトとの関係もありますが。
(最高裁判所)
今後検討したいと思います。例えば、地方のホームページで紹介しているものといたしましては、今、手元に名古屋の例があります。名古屋ですと、名古屋弁護士会のあっせん仲裁センター、それから日本知的財産仲裁センター名古屋支部、それから愛知労働局総合労働相談コーナー、財団法人交通事故紛争処理センターなどの紹介をしているようであります。今、委員から御指摘がありました点についても、検討してまいりたいと思います。
○ 少し感想的なことですが、これは大変わかりやすくできていますが、第一印象を申し上げますと、これは裁判所の説明をしているということですけれども、要するに、使い手の方からいうと、最高裁判所に行くまでに様々なことがあって、多くの方は、最高裁判所の情報に行き着くまでに紛争を解決することができるわけですけれども、同じ情報を、編集者を交えて、入口と出口を反対の形の編集方法というのもできればいいかなと思いました。すなわち、問題を抱えた人が1番に聞きたいこと、あるいは、自分にどういう可能性があるのか、その可能性があるかどうかはわからないけれども、まず、あなたは問題を抱えているのでしょうかというようなところから編集をし直すと、同じ情報でも、随分使い方が変わってくるかなと思います。そうすると、学校でいろいろやっていらっしゃるような教育の教材とも多分連携できる、あるいは、教材として活用することができるでしょうし、言わばバーチャルに、自分がその問題を抱えた人になったつもりで、そこからずっと入っていけると、すごく教育的にも、情報発信も、情報提供も、それからアクセスをしやすくするための消費者サイドの教育にもなるのではないかという気がします。ですから、貴重な、大変整理された情報なので、組み立て方をもう一つ、メニューA、メニューBとか幾つかあるといいかなと思います。そうすると、先ほどからありました地方自治体ですとか、そういうところへ相談にいらした方が、自治体の方も、この入口を通じて見ていくと、あなたはこういうことが可能ですよと。その方が家に帰ってウェブページを見なさいというのも一つだと思いますけれども、うまく操作できない方もいらっしゃると思いますので、その場でアドバイスするのに、この情報をなぞっていけるということがあれば、行政窓口も、先ほどのお話ですと、おおよそ日本中にある自治体の半分よりちょっと下、40パーセントぐらいの自治体がそういう窓口を設けていらっしゃるようだということでしたが、そういう自治体の方にも助けになるのではないかなと思います。
○ 資料1の2ページを見ていくと、②では、訴訟とADRを含む総合的窓口をつくるということが、方向性としては出ています。これは、どこに最初にアクセスしても、大体同じ情報が入るということですね。むしろ、そういう発想ですか。
● まさに今、御指摘があったとおりです。
○ 先ほどの委員と全く同じ感想を持っております。何がお困りですかという質問に対し、交通事故に遭った、もしくはお金を貸したけれども戻ってこないということでクリックする。では、どういう解決を望まれますか、話合いで解決したいんですか、仲裁ですか、訴訟ですか、調停とはこういうものですよ、仲裁とはこういうものですので、それを見たい方はクリックしてくださいと出る。今度、では調停だということを選んだら、調停というのは簡裁にもある、あなたはどこにお住まいですか、相手は誰ですかと出てくる。更にクリックしていけばいろいろ出てくる。交通事故といったら、ADRの中でも交通事故と調停というところ、ないしは仲裁というところが出てくる。最後に、調停の申立てであれ、仲裁であれ、裁判であれ、クリックしていった後に書式が出てきて、あとこれに入れれば訴状等ができ上がる。ただし、御心配な向きには弁護士に相談されたらいいでしょうということで、自分の住んでいる地域の弁護士が出てくる。その中で、今までこういう弁護士はここで活躍されて、何勝何敗の成績で、大体料金はこういう感じになりますというのが出てくる。それで自分の好きな弁護士を選んでいくというような、これを最高裁がやるのは大変なのかもしれませんが、民間でやるとできるだろうと思うわけです。寄付を募って、基金でもやればいいのだろうと思いますが、そういう利用者サイドに立ったポータル・サイトというのは、非常にほしいと思います。
○ それは、問題を抱える前に、擬似的に、こういうことが起こったら、自分はこういう解決法があるとか、あるいは、加害者になった場合は、こういう解決法に委ねて、自分もそれだけの代償を払わなければいけないとか、一旦でき上がると、すごく教育的な効果もあります。そもそも自分が何をしていいのかわからない大人もたくさんおります。ですから、学校教育だけではなくて、社会人教育的なものにもなります。それから、今までは、そんなことは自分に起こるとも思っていなかった、一生の中で裁判所に出向く回数が少ない方がいいと思っている方の方が多いと思いますが、そういう方々にも情報提供ができます。そういう場合には、今までだと、夫がいたり、子どもがいたりということで、家族の人に委ねたような人たちとか、比較的ほかの人に解決を委ねていたような方が実際にやらなければいけなくなったときや、高齢者だとか、そういう方たちの対応策にもなるという気がします。
よいしょと言って3か月でやることもできないこともないのでしょうが、それにはあまりにお金と人力がかかり過ぎるとすれば、何かグラウンド・デザインを決めて、ワンセクションずつ、少しずつ完成させていけばいいのではないでしょうか。そのためには、初めのプランニングにきちっと時間をかけて、ロジックをきちんと組み立てておくと、部品をつくっていけば全体が完成するとか、グラウンド・デザインができていると、民間で独自にやろうとしたときに、どこに今度はつなげておけばいいとか、どこにジャンプできるようにしておけばいいということになると思います。ロジックの部分を比較的しっかりやっておく、設計部門をきちんとしておくというのは、案外、時間の無駄、それから重複を防ぐということにも効果的ではないかという気はします。
○ お願いしたいことがございます。ホームページ等の活用というのも、これからは大変情報量も多くなりますし、時代の流れに沿ったものとして大変適切かと思いますが、高齢化が進んできておりまして、ITと関係なく暮らしていていろいろな被害に遭ったり、あるいはいろいろなトラブルに巻き込まれる方が大変増えてきておりますので、そういう意味では、先ほどの新聞記事で出前授業というのを拝見いたしましたけれども、いかに多くの方に、様々なトラブルを抱えそうな人がどこにいるか、どういう状況かということをイメージしていただいて、是非IT以外の従来型のPR方法も並行して行っていただきたいと思いますので、これはADRに関してもお願いしたいのですが、裁判所の皆さんにも、是非そういう意味で情報提供をお願いできればと思っております。
□ 法律相談なんかをやっていらっしゃる方、相談に来られた方の方が誤解しているということもあり得るわけですね。建築瑕疵なんかですと、瑕疵だ瑕疵だと言っておられても、必ずしもそれは瑕疵ではないということもときどき耳にしますが、そういう方はどうなんでしょうか。弁護士会の無料相談に行って、どうも法律的にはあなたの思うようにはならないようですよということを言って、納得して帰ってもらえるのか、そういう人は、あの弁護士がけしからんと言って怒るのか、その辺りはいかがですか。
○ 東京の場合、今、クレサラ相談センターと一般相談とを別に弁護士会はやっています。クレサラセンターの方は、受任率は高いわけです。皆、せっぱ詰まって行きますから、大体6、7割は、事件として直受けをしています。一般相談の場合は、大体25%程度です。事件にならないということで断るとか、結局受任できないような事件の方が実際は多いのです。それでも、かなりの方は、それで納得して、理解して帰っていきますが、やはり少数の方は、懲戒申立てまでしてくる場合もあります。ただ、それは相談センターの宿命でしょうから、仕方がありません。
民事法律扶助協会の方が、そういう意味では、もっと難しいタイプの方が来ます。今、私は、民事法律扶助協会の東京都支部で審査委員会の審査委員長をやっていますが、そこに異議申立てがいっぱい来ます。これは事件にならないという断り方が一番多いです。結局、言葉としては勝訴要件がないということになるわけですけれども、そうすると、そんなことはないのではないかということで、かなり異議申立て、更に本部の方にも異議申立てができますから、そういう数がどんどん増えていきます。民事法律扶助協会の場合は、塀の中、病院の中からの相談もかなりありますので、難しい問題が多々あります。
相談センターをやるのには、どこの弁護士会もそうですけれども、そういう難しい事件をどうさばくかということがいつも課題でして、それはやむを得ないことなのだろうとは思っています。
□ 自分がどういう問題に直面しているかの理解というのは、意外に難しいのですね。
○ ただ、ある程度それもないと、今、25パーセントとおっしゃいましたが、それが更に司法アクセスを自分もと思って相談にいらっしゃる方が、その可能性がまた10パーセントとか5パーセントに下がっていくというのは、むしろ私は、国民のレベルが上がったとは決して言えなくて、自己診断といいますか、自分で自分の状況を把握するという力というのは当然必要なわけで、それを養うために、裁判官が教育機関にいらしていろいろお話をしてくださったりというのもあると思います。だから、教育といった場合にはすごく範囲が広くて、人間は、今まで起こったことがないことに直面すると、幾ら優秀であっても、それから優秀な学業を修めた方でも、そのときの判断というのは、自分一人で考えていても堂々めぐりだったりするわけです。そういう場合に、ほかにどういうアドバイスが得られるのか、ほかの方がどういう考えを持っていらっしゃるのかというのを聞けるだけでもいい、それが、何か一つのケースのようなところの情報であれば、それで時間もエネルギーも、そして悩みも、随分軽減される方がいらっしゃるのではないかという気はします。
□ アクセス・ポイントの点は、また引き続き事務局で整理していただいて、検討できるものであれば検討したいと思います。
ちょっと長くなりましたけれども、休憩を取らせていただければと思います。10分ぐらい休憩いたします。
(休 憩)
□ それでは、再開いたしましょう。後半は、議題2の弁護士報酬の敗訴者負担についてですが、まず、資料の説明を事務局からお願いいたします。
● 資料4と参考資料(議題(2)関係)がありますので、御参照いただきたいと思います。
資料4について御説明いたします。これは、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い関する司法制度改革審議会に提出された法務省、裁判所、日本弁護士連合会の意見を抜粋したものです。まず、1ページ目の上の方は法務省の意見で、○がありまして、「合理的範囲内の弁護士費用を敗訴者負担とする具体的方策(例外的扱いを認めるべき訴訟類型、負担させるべき弁護士費用の定め方)」という項目があります。「問題点」としまして、「弁護士費用の敗訴者負担制度を導入することの当否についてどのように考えるか。導入するとした場合に、すべての場合に敗訴者負担とするのが相当か。また、負担させるべき弁護士費用の額をどのように定めるか。」という指摘がされています。「検討」と題する項目におきましては、「弁護士費用の敗訴者負担制度については、民訴費用制度等研究会においても、国民の権利・法的地位を実質的に保障するという観点から将来的に導入することが望ましいとする意見が多数を占めたところであり、司法制度改革審議会において、本格的な検討がなされることを期待する。ところで、この制度を導入する場合には、弁護士費用を負担させることが酷である場合やこれにより過度の萎縮的効果が生ずるおそれがある場合など、一定の場合について、弁護士費用を敗訴者に負担させないものとすることも検討される必要があろう。ただし、一定の訴訟類型について敗訴者に弁護士費用を負担させないことについては、当該類型につきそのような取扱いをする合理的理由があるか、そのような場合を明確に類型化することが可能かなどの点について、慎重な検討が必要である。負担させるべき弁護士費用額の定め方については、裁判所の裁量により査定して決定する方式、日弁連の報酬等基準規程などの基準に基づいて負担額を定める方式などが考えられるところであり、民訴費用制度等研究会における検討結果等も踏まえて、合理的な方法が検討されるべきである。」とされています。この民訴費用制度等研究会における報告というのは、第1回の検討会で資料として配布したもので、本日の参考資料の中に関係部分の写しを入れております。
次に、その下が裁判所の意見で、その中に、「国民からいくらかかるのか分からないとの不安が指摘されている弁護士費用についても、利用者である国民の視点に立ち、その透明化、合理化について検討する必要がある。その上で、訴訟に勝った側で弁護士費用をすべて負担するのは不合理であるから、例えば、平成9年1月31日に出された民訴費用制度等研究会の報告書で比較的難点が少ないと指摘されている方式(日本弁護士連合会の報酬等基準規程に定められた「あるべき着手金」の額を敗訴者に負担させる方式)等を参考としながら、弁護士費用を部分的にでも敗訴者に負担させる現実的な方法を検討すべきである。さらに、弁護士費用の敗訴者負担が何らかの形で制度化されたときには、弁護士強制制度の導入も検討対象となってくると考えられる。」、このような意見が述べられています。
続いて2ページは、日本弁護士連合会の意見です。○として、「弁護士費用の敗訴者負担制度について」という項目があります。1として「意義」という項目がありまして、「弁護士費用敗訴者負担制度は、訴訟提起を支援する作用を果たす側面がある。勝訴の見込みが高いが、弁護士費用を自己負担してまで訴訟提起をすることをためらっていたケースにおいて、この制度は訴訟提起を促進する役割を果たすであろう。また理念的には、たとえば、行政訴訟などは、行政の違法を是正し適正な行政作用を実現するという公益的側面があり、これに要する弁護士費用を被告行政側に負担させることには意義がある。同様のことは独禁法違反訴訟、消費者訴訟、公害訴訟などについても言える。」とされております。
2として「問題点」という項目がありまして、そこでは、(1)として、「しかし、わが国における民事紛争の実情をみると、当事者にとって実体的権利の有無、勝訴の見込みが訴訟提起時に必ずしも自明とはいえないときが少なくない。その原因は様々であるが、ひとつには、わが国における紛争の特質として指摘される書証の少なさやその反面としての立証活動における人証への依存度の高さが挙げられよう。このような事件においては、提訴時に勝訴の確信を持つことは容易でなく、したがって、敗訴した場合の相手方弁護士費用を負担させられるおそれを考えて訴訟提起を思いとどまらせることになりかねない。また、いわゆる現代型紛争と呼ばれる消費者訴訟や公害・薬害訴訟などにおいては証拠の偏在が著しく、証拠開示制度が不十分であることに起因する当事者の証拠収集権能の弱さと相まって、上記と同様な意味で敗訴者負担制度は訴訟を抑制する機能を果たすことになる。」、(2)として、「現代の民事裁判の中には、たとえば政策形成訴訟と呼ばれるような勝訴の見込みが必ずしも高くないものの訴訟を通じて世論を喚起し、新たな法の形成を目指す類型の訴訟も少なからず存在する。一般の民事事件においても、既存の判例がない争点を含む訴訟を提起せざるをえないこともある。このような場合に弁護士費用を負担することを恐れる当事者が訴訟提起を控えることになると、結果として法の発展を阻害することになりかねない。」、(3)として、「敗訴者負担制度によって負担させられるおそれのある弁護士費用の持つ意味合いが当事者の経済的実力によって異なることにも留意すべきである。たとえば、同じ100万円の弁護士費用でも大企業と中小・零細企業あるいは個人とではその持つ意味合いが異なる。したがって、敗訴者負担制度は、結果として訴訟を経済的実力のある者に有利な制度にしてしまうおそれがあり、負担額等につき配慮が必要である。」、(4)としまして、「わが国の民事司法の改革は、国民の裁判を受ける権利を積極的に位置づけ、裁判の利用を促進し、支援するという方向をもってこれを進めるべきであり、弁護士費用負担制度もこのような方向に適合するように制度設計されるべきである。」とされています。
3の「検討すべき制度」というところですが、「上記のような問題点に鑑み、弁護士費用敗訴者負担制度を導入する場合、以下のような点に留意されるべきである。」とされています。(1)は、「片面的敗訴者負担制度」です。ここでは、「片面的敗訴者負担制度は、原告勝訴の場合のみ原告の弁護士費用を敗訴被告に負担させる制度であり、アメリカにおいては特別法により広い範囲で認められている。これは、ある種の分野における訴訟の提起を促進し、弁護士費用の敗訴者負担制度が訴訟を抑制することがないようにするとの政策目的に基づくものである。わが国においても、たとえば、以下のような類型の訴訟では上記制度の導入が図られるべきである。」として、「独禁法違反行為による損害賠償請求訴訟、著作権・特許権侵害による損害賠償請求訴訟」、「消費者が消費者契約法・金融サービス法など各種規制法違反などを理由として業者を相手として提起する損害賠償請求訴訟など各種訴訟、労働者が雇用者を相手方として起こす各種訴訟や医療過誤訴訟・公害訴訟・薬害訴訟など当事者間の立場の互換性がない事件」、「行政訴訟、国賠訴訟なども上記の理由から片面的敗訴者負担制度の対象とすべきである。」があげられています。(2)は、「負担する弁護士費用の範囲」です。ここでは、「弁護士報酬が定額の手数料制をとっておらず、基本的には報酬規程の範囲内で依頼者と受任弁護士との契約により定められているわが国の実績に鑑みれば、負担させる弁護士費用を個別委任契約により定められた弁護士費用の全額に及ぶとするのは、当事者間の不公平を招くことにもなる。負担させる弁護士費用の範囲は実額によらず、何らかの基準に基づき算定される弁護士費用の一部とされるべきである。その基準は、当事者の予測可能性という観点から見るとできる限り明確なものであることが望ましく、一律に裁判官の裁量に委ねる制度は望ましくない。たとえば、以下のような算定基準が考えられる。日弁連報酬基準の「経済的利益」の算定手続を準用し、それに対し、敗訴者負担制度独自の段階的な定額または定率を定める。その場合に算定対象となる経済的利益は、当事者の請求内容ではなく、裁判所の判決における認定内容を基準とする。」とされています。(3)は、「当事者の証拠収集権能の強化」です。ここでは、「弁護士費用敗訴者負担制度がわが国の法曹界において実現しなかった原因のひとつに前記のような当事者の証拠収集権能の弱さに由来する訴訟の見通しの困難性があった。弁護士費用を負担させられるかもしれないというおそれが訴訟提起を阻害する大きな要因になりかねないからである。したがって、この制度を国民の裁判を受ける権利を実質化し、司法による国民の権利と法的正義の実現を推進するものとして機能させるためには、訴訟提起前証拠開示制度を強化することや訴訟提起前の鑑定制度の創設などが是非とも必要である。これらにより訴訟提起前において訴訟の帰趨についての当事者の予測可能性を高めることが弁護士費用敗訴者負担制度を正当化する前提となることに留意すべきである。」とされています。
以上が日本弁護士連合会の意見でした。前回の検討結果の内容とも関連して参考になると思われましたので、まとめて御紹介させていただきました。
以上です。
□ 今日もまだフリートーキングでよろしいと思いますが、参考資料の3枚目に司法制度改革審議会意見書がありますが、我々に託されたものはこの四角の中に掲げられているものだということです。それを前提にして、御議論をお願いいたします。
○ ここしばらくドイツにおりまして、大学3校に関わって仕事をしていたのですが、その間にベルリンでパーティーがあったときに、法学部の先生がいましたので、ドイツの敗訴者負担制度について少し伺いました。あまり英語がうまくないので突っ込んでは聞くことができませんけれども、ドイツなどの敗訴者負担の背景には、様々な制度が充実しているように聞こえたということが第一印象でした。もちろん、団体訴訟なども認められておりますし、法律扶助というのも、日本は小さいと聞きましたが、相当な金額と件数がドイツではあるということとか、今、片面的敗訴者負担制度という話がありましたけれども、行政訴訟などはそういうものであるというようなこと。法に関わるということは、ホームページのアクセスで、教科書のようにどのようにアプローチしたらいいかというようなことはできるけれども、一つずつの事件は全くいろいろ複雑な諸条件を持っている出来事になっているわけです。ですから、きめ細かに対応できるような、扶助などのバックを備えないと、敗訴者負担にすることによって起こる問題というのも相当出てくるのではないかというように話してくれました。私も前からそう思っておりました。こうしたことというのは、実際関わる人たち、弁護士、裁判官そして市民がお互いに共同作業などをして、どのような問題があるかということを明快にしていくことです。片方の大きな力、企業や行政そしてアカデミックな人たちの考えでは完全に解決はできない。ハンセン訴訟とか、いろいろと病気のこととか、大気汚染のこと、いろいろな裁判がテレビで報じられておりますけれども、そうしたものを見ておりましても、敗訴者負担というようなことがあったらできなかっただろうなという事件がたくさんあると思います。日本的状況をよくとらえて、もう少しきめ細かな、敗訴者負担にすべくいろいろな条件が整うのを待って実行しなければならないのではないかなというように、ベルリンでの会話で、自分では感じました。
○ 以前に、いろいろな関係者の方のヒアリングを是非お願いしたいということを申し上げたのですが、まだそのことの御判断については回答をいただいていないわけですけれども、弁護士報酬の敗訴者負担制度というのをもし導入されてしまったらどうなるだろうかということを、この前の審議会でも、一律には導入するということはストップ、ブレーキがかけられているという内容になっているわけです。私は、いろいろな方のお話を、この間にもお伺いする機会がございました。それで、結論から申しますと、これは我が国の場合には、法律扶助制度も誠に残念ながら十分に機能するに至っていない、勿論関係者の方は一生懸命やっておられるわけですが、大変金額も少なくて、扶助の希望者が殺到しているために年度末までとてもお金がもたない状況だということをお伺いしておりますし、そしてまた、法曹界におられる方の数、それから訴訟の件数なども一けた違うわけですね。そういう意味では、我が国の中では、法の支配の下に物事がコントロールされるということがどうもおざなりにされてきた経緯があるような気がいたしてならないわけです。そういうことから考えますと、私は、一番初めに憲法の32条のことなどをこの専門家の方がおられる前で誠に恥ずかしかったんですが、何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないということを申し上げたんですけれども、どうも国際人権規約というものにも関係あるような条項があるようで、裁判の前の平等でしょうか、市民的、政治的権利に関する国際規約の中で、経済的格差により裁判ができなくなることを防ぐというような条項が14条にあるというふうにお伺いしております。そうしますと、日本の場合ですと、今、濫訴でいろいろな人がむちゃくちゃに裁判を起こして、何とかブレーキをかけなければならないというような状況とは全く異なりますから、裁判に関する、司法アクセスに関する訴訟関係の保険が十分にあるわけでもないし、そういう状況の中でこの制度を導入するということは、大きな社会的な弊害を生むような気がしてなりません。
この間に、いろいろな方のお話をお伺いして、消費者問題についてはもちろんのことなんですけれども、これについてはもう一つ、裁判が十分に消費者の期待に応えていないというような大きな問題点もあるわけです。少額訴訟を起こす方にも、PL訴訟の方にも、それから融資型の変額保険の被害に遭った方、資産形成でなくて相続で、こんなことをしていたらあなたは大変な相続税を払わされますよという形で銀行と生保の方がセットになってアプローチしてこられて被害に遭っている方があるわけですけれども、そういうケースとか、医療過誤の方、薬害で訴訟を起こされている方、消費者問題ではクレジット、サラ金、商工ローンということもありますし、ドメスティック・バイオレンスの被害に遭っている方や、高齢者の居住権に関するような、高齢で立ち退きを迫られたりしているような方、住民訴訟や環境訴訟、シックハウス症候群の苦しみとか、労働者、男女平等にかかわるような労働訴訟の方とか、労働災害の裁判などにかかわる方、一票の格差の不当性を訴える方、その他様々な行政の不行き届きな面についてオンブズマンのような方々が訴訟を起こされてきているわけです。また、更に言うならば、中国残留孤児の方々は生活を保障されていないような苦しみの中にありますし、原爆の被災者認定の問題や戦争処理の問題、これは外国の方にも関わる問題があるわけですけれども、実にいろいろな方々の裁判を起こされたり、起こそうとしている方のお話を伺いますと、自分たちがたまたま裁判に直接関わることがなかったということで、十分理解していなかった社会の断面というのがいっぱい見えてまいりました。今ここで討議していく場合に、同じ社会の中で生きていく過程においていろいろな問題に直面して、しかも経済的にも大変厳しい状況に立たされて、健康も脅かされている方、あるいは正義感に燃えて社会制度をただそうとしている方とか、いろいろな方の思いや苦しみというものが私には背負い切れないぐらい、実は荷物として感じております。やはり声が聞こえると言ったらいいでしょうか、社会の中で訴訟を起こす、生きるために問題に直面して課題を解決せざるを得ない立場の方もいらっしゃいますし、そういう声を上げられた方はまだいいのかもしれませんが、声を上げられている方も、敗訴者負担制度が導入されたらどうなるかわからないとほとんどの方が悲鳴を上げられているんですね。この問題を考えていく場合には、多くの方の痛みというものを実際に感じていかなければいけないのではないかという気がしております。理論的な問題だけでなくて、制度的な扶助の行きわたらない問題や団体訴権がない問題とか、後手後手に回っている法的な不備の問題とか、いろいろな問題を考えますと、これから日本がどういう方向に発展していくべきなのか、裁判を通じてよりよい判決を得て、司法アクセスを多くの人が可能になり、アクセスによる利益といいましょうか、権利の保障がなされるような社会になっていくのかどうかということをいま一度考えていかなければいけないのではないかと思われるわけです。
諸外国で、確かに敗訴者負担制度を導入している場合があるということは伺っておりますけれども、実際に最近弁護士さんが調査に行かれていらっしゃる模様ですし、諸外国の現状がどうなっているかということも、私が前に申し上げた生の声の中に是非入れていただいて、むしろ専門家でいらっしゃるので、そういう方の意見はまず率先して、諸外国の現状がどうなっているかということもお聞きしてみたいところです。この問題を、しっかりとそういったいろいろな声を聞くことによって、まさに司法制度改革推進本部が立ち上がって、皆さんが望んでいる方向に持っていけるかどうか、問題の方向性を見失わないための討議をしなければいけないのではないかということを、この間お会いする方々との対話を通じて、また耳を傾けさせていただいたことによって痛切に感じております。
昨日も私のところにある証券会社から広告のチラシが送られてまいりました。その証券会社では、保険会社と組んで新しい商品を売ろうとされているわけですけれども、表に大きく何々証券よりお知らせとなっているんですね。ところが、中をよくよく読んでいくと、この保険会社の保険の給付に関しては当証券会社は責任を負いません。それはひとえに生保会社が負うものだというような広告が来るわけです。個別の恨みはありませんけれども、いろいろな問題が起こっているにもかかわらず、表は証券会社からのお知らせで、それだけを見ましたら活字も大きいわけです。裏を読んでいくと、保険金を支払うことは当証券会社は約束しておりませんという小さい1行があるわけです。そういう宣伝が行われている現実が、消費者問題でも今日でもいろいろ起こって、私は引っかかりませんでしたけれども、これを見たら引っかかる人がいるだろうなと思って見た次第です。
社会の病理現象が今顕著で、クレサラ問題でも、簡易裁判所はほとんどがそういう問題で占められており、自殺者も多いし、私たちが方向を見誤ってはいけないのではないかということを、一生活者として大変痛切に感じておりますので、まずは現状がどうなっているかということのヒアリングを、特に諸外国の例なども是非行っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○ 私も消費者の一人でございますので、消費者が一様にこの弁護士報酬の敗訴者負担の導入について反対しているのかというと、私も消費者の立場で申し上げますと、例えば、100万円を貸したということでちゃんと証拠があるけれども返してくれない、どうしても訴訟を起こすしかないというときに、勝つのが決まっているが、その自分の頼む弁護士の費用を考えたりすると、面倒くさいな、自分の弁護士の費用も要るし、お金も取り戻さなければいけないというようなことで、この司法制度改革審議会の意見でもあるように、訴訟を回避してしまおうという方もたくさんおられるというのも事実だろうと思います。逆に言いますと、あるところから急に、お金を貸したから返してくれというような文書が来るというようなときに、私はそんなことはないんだということで債務の不存在確認というのをやりたいというときに、それが2、30万円の問題であれば、それを訴訟をしてやることを考えれば、自分の弁護士費用を払うことを考えるとあきらめてしまおうということで、泣き寝入りしている人があるのも事実でございますので、本件の問題というのは、何が正義か、何がフェアかということからすると、やはり正々堂々と闘って勝った者は、自分がそれに要した費用を相手から取るということが筋だろう。一方では、それによる弊害もあるだろう。では、具体的な弊害は何かということを、抽象的理論ではなくて、こういうことで弊害があったんだということの議論を深めていくべきだろう。委員のおっしゃったように、いろいろなケースがあると思いますけれども、そのうちに公害訴訟で、例えば原告の方が勝ってきて、そのときに公害訴訟でありますから、不法行為の一環として、弁護士費用も被告から取っているわけですけれども、それ以外の案件で取れないということがあったとしたら、よりよかったのではないか、弁護士報酬の敗訴者負担制度があったゆえに、訴訟をしていてよりよかったというケースも多々あったであろうと思うのです。だから、具体的にこういう訴訟において負けてしまった、相手の弁護士費用を払う羽目になったというようなケースを、個別具体的にこれこれとこれについてはこういうことがいけなかったねというのを、具体的にこの検討会の場で、お互いに議論を深めて、みんなで共感を持つようなことにしていった方がいいのではないか。一律に敗訴者負担なんていうのはそもそも論外だということになると議論が進まないのであって、両方意見があるのも承知しておりますし、消費者、国民の間でもいろいろな意見が来ておりますけれども、弁護士サイドからすると、これによって訴訟件数が減るのではないかということで、正義の問題もあるのでしょうけれども、主義主張があるのでこういうことをされていますけれども、逆に、敗訴者負担制度がないがゆえに訴訟を提起できなかったんだという人は、あまりこういう意見書を書かないものですから、見えてはきませんけれども、両方の立場がある中で、司法制度改革審議会では、原則論、例外論ということで一応議論をまとめた中で、個別具体論を展開していくべき時期なのかなとは思っています。
○ 質問があります。この敗訴者負担に反対する方の中に、いまだ時期尚早というか、今はその段階ではないという御意見の方が随分私のところにもおいでになって、お話を伺いましたが、そうすると、どの段階になればこれがいいのかということと、では、そのときに、そもそも敗訴者がやはり勝訴者の最後のある部分の費用は敗訴した段階で払うのが正当であるという議論は、そうなるといつの時期かはそれが正しくなって、今はそうではないというそのリーズニングが、どうしても私はわからなかったんです。こういう場合にはこういうデメリットがあります、こういう場合にはこういうケースがなかなか成熟してこないとか、議論が成熟しないとか、スローダウンするというお話がずっとあるんです。そこで、将来のある時点で、すべての条件が満たされることはないにしても、より成熟した時点で、敗訴者に弁護士費用の負担を全額ではないにしろするということが妥当であるという議論にほぼ180度方針が変わるような印象も受けたものですから、その辺が連続性がない説明が常に行われていて、どちらの立場をベースにした議論が深まるべきなのかというのは、私は、敗訴者負担に反対ですという方がおいでになったときの議論を聞くにつれ、明確ではなくなった気がするんですね。ですから、まず、何が合理的な範囲で敗訴者に負担させるべきなのかということと、それを段階的にやるとしたらどうこうという話とか、それと、こうだから反対ですという意見とは分離してディスカッションしていただかないと、どうも議論がかみ合わない気がするんですね。だから、その辺りの整理も必要だと思います。
それから先ほど委員がおっしゃった例で、証券会社と保険会社ですが、商品としては合法的であって、保険会社は保険金を払うビジネスをやっていて、証券会社は保険会社になり代わって保険をイシューするビジネスではないわけですから、いろいろな例として挙げられるものがすごく原始的で、間違えやすいけれども、明らかに一つの商品のカテゴリーとしては存在し得るものと、初めから消費者をだましているようなものと、いろいろ段階があると思うんですね。だから、そこで例として提出する例示も、私は、随分慎重に議論しなければいけないのではないかなという気がしていて、反対であるという議論と、敗訴者負担を原則認めるとしたら何を担保していかなければいけないか、どういうケースを担保していかなければいけないかというのは、できるだけ線を引いて議論して、そして、両方を吟味するのか、あるいは、我々には頭から100%反対であるという議論の余地はないような審議会の提示のようにも私は思っておりますので、そうだとすれば、なるべく懸念されるケースが発生しないように担保する方式を、どう数多く議論するべきかなという気がしているんです。そこの辺り、私も混乱しているわけです。
○ 先ほどの証券会社の件は、まだいっぱい説明しなければならないことなんです。広告のテクニックとか、いろいろな問題がありますので、その問題ではなくて、私は多くの方のお話を伺ったので、非常に苦しい人生の過程で問題を抱えて裁判を起こしておられる方や、起こそうとされている方が大勢いらっしゃるので、私たちは耳を傾けていかないといけないのではないかということなんですね。先ほどの証券会社の件はちょっとお忘れいただきたいと思うんです。それは新たな被害が起こったときに、恐らく、ここに書いてありますよ、これに気をつけなければいけないのにあなたは見落としているからという判決が出る可能性が現状ではあるわけです。そういう一つの例として申し上げたんですが、それよりも、過去にいろいろな方々が、現在もそういう意味ではこんな敗訴者負担制度が導入されたらえらいことですからといって、苦しみの中から訴えておられるということを、私は自分がここに関わらせていただいたということで、やはり役割として自分の知り得ない世界というものを知るべきである。それは、むしろ喜ばれるのはサラ金の業者さんたちで、あなた方は貸したお金を返さないんだから負けるのは当たり前で、今度敗訴者負担制度が導入されてどうするんですか、これでも訴えるんですかと言えば、まず借りている人は訴えないでしょうというような喜びそうな人に、私が伺った中であまり今までお会いしないわけです。最初から色をつけて物を見るというよりも、お会いする方、お会いする方、大変なんですよとおっしゃるものですから。今日は本当にレアケースで委員からそういうお話を伺っているんですね。ですから、そういうことで申し上げた次第です。
広告や何かの消費者被害の問題については、まず現物も今ないわけですし、申し訳ございません。ちょっと言葉が足りませんでしたけれども、やや心配されたケースだったので、私は自分の問題を申し上げるということをほとんど控えておりますが、ちらっと申し上げたので申し訳ございません。言葉足らずでした。
○ この問題は、情報の流れが非対称なんですね。つまり、一定のカテゴリーの人はオルガナイズされた集団に属していますので、そちらの方は敗訴者負担制度が導入されると困ったことになるということをオルガナイズされやすい。ところが、敗訴者負担制度があったら起こしたのにという人は、オルガナイズするところがどこにもないものですから情報が流れてこないということは、はっきり認識しておくべきであって、オルガナイズされた声があるからといって、それだけに耳を傾けるのは、私は不当だと思います。先ほどの委員の意見が唯一の例外ではなくて、恐らくたくさんおられるんだろうと思います。特に企業間取引の訴訟ということを考えれば、これは公平負担というのは当然のことだという議論もあり得るわけです。だから、その辺りを特定のパーティーの意見だけで議論するのはおかしい、一般論として展開するのはおかしいというのは、まさに先ほど委員がおっしゃったとおりですので、もう少し間合いをあけてきっちり議論しないと、生産的な議論はできないのではないかと思います。
○ オルガナイズされたとおっしゃられましたけれども、私が先ほどお会いした方々の中でオルガナイズされている方は一部はありますよね。公害裁判なんかは大勢で組織化されておりますけれども、実情はそうではないと思います。
○ オルガナイズという言葉が強過ぎただけで、そういうふうに団体として組織されているとか、そこまで強い意味で申し上げたのではないので、それは誤解なさらないでください。
○ 様々な出会いというようにとらえていただきたいと思います。その中には、そういう公害のような大規模な団体の意見としておっしゃった方もありますけれども。
○ 誤解していただきたくないのは、そういう意見は不当だと言っているわけではなくて、情報の流れが不均等だから、いろいろな場合を分けて考えないとだめだということを申しただけで、オルガナイズされていることが不当だとも何も申し上げていません。賛成派の意見というのは、必ずしも明確な形で出すのが非常に難しいだということだけは理解しておく必要があるということを申し上げたわけでございます。
○ ここで大分前に話したことがあったんですけれども、裁判というのは、とても多くの場合、私人一人がとても大きな動きの中に対峙しなければいけないようなことが多い。今日、そういう問題がたくさん起こっている。それは、生命とか人権に関することというような、何か生きていくための基本的な問題提起をしていくようなことと関わる。それも、私という個人が体験したり、感じて、初めて起こることで、大勢で感じることではないわけで、その個人というものがきちっと法的に訴えることができるという場というのが裁判だと思うんですね。それを裁判官と共同作業して、自分の感じていることや体験したことはどうかということをやるというような場面が展開する。国民一人ずつの私というものを大切にしていく中で、団体訴権とか、行政訴訟というものができて、個人というものがアクセスしやすいという状況ができていなければならないのではないか、それが基本なのではないかなと前にもお話ししました。1人でも人間として生きるベースと関わって司法というのはあるんだというところから考えると、敗訴者負担というのが合わないことではないかと、前から私は感じています。オルガナイズされたわけでもありません。自分の建築をつくる仕事を通していて公共のものをやっていても、そこでも個人的な私の感性というものが大事だということを体験してきてお話をしているのです。、そういう勝った負けたというようなことが、どうも似合わないことがたくさんあるのではないかという感想を持って、私は発言をしているのです。
○ いろいろな御意見を伺いましたが、諸外国で敗訴者負担制度がどうなっているかというような御指摘がありましたので、若干その点も踏まえて申し上げさせていただきたいと思います。
確かに、ヨーロッパ諸国は敗訴者負担原則を取っております。それが公平だという理念に基づいてしているわけですが、いかなる事件についても敗訴者負担でうまくいっているかというと、それは確かに問題は指摘されています。大規模な被害であって原因究明が難しいような、薬害であるとか、公害訴訟であるとか、そういったものについて敗訴者負担にする場合、また代表訴訟のような形にした場合、代表だけに負担させるのが適当なのかどうか、そういったような議論まで含めて、政策形成訴訟についての費用負担を誰にさせるか、そういうレベルでの議論はいろいろあります。そういう意味で、敗訴者負担ではなかなかうまくいかない点について、例えば訴訟費用保険を設けるとか、法律扶助制度を優先的に回すとか、そういった議論もありまして、敗訴者負担なのか、それとも各自負担のままなのか、そういった割り切りで解決できる問題ではないという感じがいたします。議論をする場合に、恐らく、そういった政策形成訴訟などを考えた場合も敗訴者負担で押し切っていいということにはきっとならないと思いますが、片や、委員から御指摘があったような、ごく普通の身近な紛争であって、例えば被告側になったような場合、勝訴しても何も経済的利益が得られないような場合に、訴えられたために自分で弁護士費用を負担しなければならない、それは不公平だという感じが出てくるだろうというように思われるわけでして、事件類型によって、誰にどの程度の費用を負担させるのが妥当なのかというのは、状況が違うと思います。それを、すべての事件について一緒のような感じで議論しますと、どちらかがよい悪いという話になってしまいがちですので、これも今まで出ている御意見と同じですけれども、どういう事件類型について議論するのかということを、少し具体的にしていただかないと、生産的な議論ができにくくなるような気がいたします。
○ 敗訴者負担問題というのは、アクセスの問題とも絡みますが、アクセスの問題だけではないということを、今、委員が御指摘になったわけですね。つまり、被告の立場、訳のわからない訴訟を起こされて、弁護士に頼んでやっても何も得るものがない、お金が出て徒労感だけが残る。それがいいのかという問題も、もう一つの問題としてあるわけです。私事になりますけれども、うちの近所で、生活排水をめぐるトラブルで現在訴訟が起こされていまして、生活排水の最下流の方が上流の方を2軒訴えていて、私のところも最上流なので、もう少ししたら訴えられるかもしれないのですが、訴状を見ましたけれども、全然話にならない。でも、被告の方は負けては困るから弁護士を頼んでおられる。そういう人たちに、そのまま訴えられ損でいいのかというのは、もう一つ公平の問題としてあるというのも、やはり大事な視点だろうと思います。先ほど、オルガナイズされた云々と言ったのは、実は、原告集団になりやすいパターンの事件というものがあるということを申し上げたわけです。医療過誤にしても、横のネットワークを今どんどんつくっていますし、労働訴訟だって、もともと組合がありますという話をしていたのです。そういう人の声と、必ずしも、今のような生活排水訴訟で訴えられる人のネットワークというのはあり得ないわけです。ほぼ考えられない。そういう声なき声というものがあるのだということも意識すべきだということを、先ほど申し上げたつもりです。
□ もう予定の時間を過ぎておりますが、あまり初めから議論を制限したくはなかったのでこのようにいたしましたが、我々に付託されているのは、一応絞り込まれたもの、委員御指摘のとおりです。弁護士報酬の敗訴者負担を一律に導入することはしてはいけないという前提の下に、では、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させる額の決め方などなど、こういうものが我々に付託された問題ですが、かといって、初めからこれに絞り込むのも、私自身ははあまり好きではありませんので、いろいろ言いたいことがおありでしょうから言っていただくということにいたしました。今日は実質的には第1回目ですので、以上のようなフリーディスカッションでよろしかったと思います。次回以降どうするかはまた考えさせていただきますが、とりあえず、次回以降の予定をお願いいたします。