○ 配布資料を見ていただくとお分かりのように、司法の利用相談窓口・情報提供の問題と民事法律扶助の拡充の問題は密接に関連する。一体として御協議いただくことでよいか。
(各委員了承)
事務局から、資料1に基づいて説明がされた。
● 司法の利用相談窓口(アクセス・ポイント)に関して積極的に取り組んでいる韓国、フランス、イギリスの例を見てみると、民事と刑事が一体として運営されているということ、アクセス・ポイント的な機能と法律扶助、つまり裁判になった場合の支援とそれ以前の相談的な支援あるいは裁判外の紛争解決を含めた支援、さらにはそれ以前の情報提供、情報のネットワーク化といったものも含めて業務の提供が考えられているということ、業務提供の方式としては、必ずしも、開業している弁護士の方のみを活用するジュディケア制ではなく、スタッフとしての弁護士を活用する方法や弁護士等と契約を締結するという形での対応も考えられているということ、このような点で参考になると思われる。
続いて、事務局から、資料2ないし9に基づいて説明がされた。
続いて、財団法人民事法律扶助協会から、資料10に基づいて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。
○ 事務局から海外の民事法律扶助制度の紹介があり、フランスでは裁判所扶助局が法律扶助の運営主体だと紹介されていたが、裁判所が中心というわけではないのではないか。フランスの裁判扶助は訴訟救助の延長と理解している。裁判所は扶助の決定をするというところで関与するのではないか。
● 御指摘のとおりである。
○ 公的弁護に関する資料8について聞きたいことがある。資料8−4では、司法制度改革審議会意見が、運営主体の事務と運営主体の組織の2つに分けられて分析されている。資料の運営主体の事務のところで、「上記機関」という言葉が出てくるが、これは、「運営主体」であるという理解でいいのかどうか、確認したい。もう1点、弁護人の選任・解任以外の運営に関する事務は上記機関が担うとされているが、素直に読めば、弁護人の選任・解任は裁判所、それ以外の運営に関する事務は運営主体が担うという理解でいいのかどうか、確認したい。
● 第1点については、委員が御指摘になったとおりの理解をしている。第2点については、貴重な御意見をいただいたので、御指摘の点を公的弁護制度検討会でも活かしていきたいと考えている。
○ 国民が司法と関わる接点をどうすべきかが問題だと思う。これまでの説明を聞くと、民事・刑事一体でのグランド・デザインを司法アクセス検討会で検討してはどうかという提案のように聞こえたが、そういう理解でいいのか。
● 公的弁護制度の検討は公的弁護制度検討会で進めていただく。アクセス・ポイント等の問題については司法アクセス検討会で検討を進めていただくことになる。諸外国では、大きな視点から法律扶助を考えているところがある。アクセス・ポイントの問題についても、民事のみでなく、刑事についてもという視点もあり得る。この検討会の検討課題としては、アクセス・ポイント、民事法律扶助、公的弁護制度の運営主体との関係となるが、大きな視点で御検討いただければと思う。
○ 大きな視点で知恵を出せるところは出したいと思う。刑事の関係ではややトーンが下がるが。
○ いわゆるリーガル・サービス・センター構想に興味がある。民事・刑事一体とすることで、事務費等の合理化も図ることができるだろう。ジュディケア制ではなくスタッフ制とすれば、今よりも安いコストでサービスを提供できると思うが、現時点で、スタッフ制を採用していない理由は何か。また、紹介のあった韓国の制度は非常に参考になると思うが、韓国の公益法務官と公団所属弁護士の役割分担はどうなっているのか。
△ 民事法律扶助事業の実施に関しては、業務規程を設けて法務大臣の認可を受けなければならない。業務規程で、代理援助等に対する報酬が1件いくらという形で決められている。自己破産を例にとると、債権者の数にもよるが、着手金は12万円というように決まっている。これを勝手に増減額することはできない。業務規程ではスタッフ制を認めていない。もっとも、東京では、スタッフ制が必要だということで、非常勤ではあるが嘱託弁護士という制度を試験的に発足させ、6人の弁護士に月45万円の報酬で事件を担当してもらっている。この45万円は給与という形では出せないので、月に自己破産事件を2件担当してもらい、その他に調査事件を担当してもらうなどして、報酬の形で支払っている。全てをスタッフ制度という趣旨ではないが、効率化を図るため、事務所を設けて、そこで弁護士を雇ってということも必要だろう。先ほどの話ではないが、例えば年俸800万円で弁護士を雇って、自己破産事件を年に100件担当してもらえば、事務費を除いて考えると、現在の100件分の報酬等の額1,610万円の半額で済む。このような、スタッフ制が有利な点を検討していかなければならないと思う。この他、まだ2つの事務所との間だけであるが、事務所とコントラクトを結び、業務規程で定められている報酬額の2割を法律扶助協会に納付金として戻してもらい、それを民事法律扶助事業費に回すという工夫もしている。専門的な事件については、それに対応できる事務所とフランチャイズ契約をし、ある程度まとまった規模で事件を担当してもらうということも必要になってくるだろう。
○ 韓国の公益法務官と所属弁護士の役割分担について紹介させていただく。韓国では兵役の義務があるが、司法修習修了段階で兵役の義務を負えていない人がいる。そういう人達が、兵役の義務を果たすかわりに公益法務官になる。任期は2年である。公益法務官は120人くらいいるが、そのうち半数くらいが過疎地に行く。兵役のかわりなので、兵役に行った場合とほぼ同じ程度の給料である。公団所属弁護士というのは公団がスタッフとして募集した弁護士で、20〜30人くらいいる。これだけの人数で民事・刑事双方を担当するので、大変忙しいそうである。
○ 自己破産について聞きたい。自己破産事件を担当した場合の弁護士の事務量はどの程度なのか。報酬等の合計額は16万1,000円と聞いたが。
△ 自己破産事件は急増しており、平成13年は16万件を突破した。平成14年は22万件くらいになるのではないかとも聞いている。昔は、裁判官が債務者の面接を行っていたが、事件が急増したため、東京地方裁判所では、弁護士が代理している事件については本人は裁判所に来なくてもいいという扱いをしている。弁護士が事前にチェックしているということで手続が簡素化されている。個人が自己破産を申し立てる場合は、債務を免責してもらわなければならず、その際には債務者の面接がある。こうした一連の手続を終えるには3〜4か月かかる。弁護士が事件を受任すると、債権者に受任の通知をする。自己破産の申立てをする人は、自分がいくら借りたかの資料を持っていないことが多いので、債権者に過去の取引履歴の開示を求め、利息制限法で認められている範囲内の債務の額はどのくらいかを調べ、本人の負債額を明らかにする。その際に債権者との交渉が必要になることもあり、これが結構大変である。債務者本人にとっては、弁護士が受任すると債務者への督促が止まるので、弁護士の代理は重要である。このような、破産申立て前の事務が結構大変である。申立てまで行けば、弁護士がチェックしているということと、特に法律扶助協会の事件の場合は、法律扶助協会でも審査しているということもあって、裁判所はすぐに破産宣告をしてくれる。もっとも、地方の裁判所では、債務者の面接もするし、資料の提出を求められるということもあり、結構大変である。
○ アクセス・ポイントの議論は司法アクセス検討会でということだが、抽象的な議論でいいのか。私達は、いわゆるリーガル・サービス・センター構想のことは、新聞報道を通してしか知らない。新聞によっては、かなり具体的な情報を報道しているところもあるが、こうした新聞報道をもとに議論するのか、新聞報道を離れて抽象的に議論するのか。
● 新聞報道のことは承知しているが、事務局が新聞で報道されているような具体的な事項について方針を決めたという事実はない。司法アクセス検討会、公的弁護制度検討会をはじめとして、関連する検討会で様々な可能性について議論していただきたいと考えている。報道されている民事・刑事一体のサービス提供、スタッフ制の採用による効率化、裁判前の情報提供や裁判外の紛争解決等の多様なサービス、弁護士の地域偏在問題の解消、各地での地方公共団体との連携といった事項については、今後検討会で多様な可能性について議論していただければと考えている。本日、財団法人法律扶助協会から問題点についても御意見をいただいたが、そういう問題点がいい方向で解決されればと考えている。
○ 我が国の法律相談業務は、諸外国に比べても割とやっている方だと思うが、前回の検討会で申し上げたとおり、縦割りでバラバラに行われている。法律相談は、本来はリーガル・サービスの範疇で始まったものだと思う。ところが、我が国では扶助事業が弱体であったため、行政機関が相談を受け付けるという制度が発達し、定着した。本来司法に結びつくべきものが結びつかないままに中途半端に終わっているところが問題だと思う。まとめる組織が必要がある。まとめる組織が扶助、リーガル・サービスの提供を担当すればいいと思う。その組織が自治体や各種の行政機関、弁護士会などとと連携してネットワークを構築し、司法へと結びつける必要がある。その組織が相談を受け付けて振分け機能を果たし、相談に来た人を適切なところにつないでいくべきである。これまでは、このような組織の果すべき役割の部分が抜けていたので、司法に結びつけることができず、中途半端なサービスで終わっていたのだと思う。統轄する組織があって、そこが相談を受け付けて振り分ける。振り分けなので、全てが法律相談というわけではないが、法律相談に進んだ方がいいかどうかを判断する。そういう役割から考えていくと、統轄する組織で相談を受けるのは、私個人の意見で言えば、弁護士でも司法書士でもいいと思っている。こういうアクセス・ポイントを作って、振り分けをして、ネットワークの核へつなげていく。司法に行くべきものは司法に結びつける。そういう作業をしていくべきである。その意味で、いわゆるリーガル・サービス・センターがどういう組織になるのかに関心がある。こういう組織を作ることについては問題点もあるだろうが、ある程度問題点が解消されれば、いわゆるリーガル・サービス・センターという構想で統括組織を考えてもいいのだろうと思う。
○ 法律扶助協会にお聞きしたいが、事務方の人数はどの程度いるのか。事務方が何人くらいいて、どのように働いているのかも重要だと思う。各支部で専任の職員がどのくらいいて、どのように働いているのか、御紹介いただければと思う。
△ 法律扶助協会の支部は50あるが、専任の職員がいるのは東京とその他2つの支部くらいである。東京の本部に20名くらいの職員がおり、予算の作成、報告書の作成などをしている。東京支部には40名くらいの職員がいる。正職員と契約職員とがいる。大阪支部には10名くらいの職員がいるが、専任、つまり法律扶助協会が雇用している職員は1名である。それ以外の大半の支部では、弁護士会の職員に委任して仕事をしてもらい、法律扶助協会からは、国からいただいている補助金の中から弁護士会に委託謝金を支払っている。支部で法律扶助協会の仕事をしている職員は2名程度であり、全国では200名程度であると思われる。事件数が多いので、事務方への負担も加重になっている。
○ 報道されているようなリーガル・サービス・センター構想が実現した場合、業務の効率化は進むと考えるのか、かえって管理費がかかると考えるのか。事業が大きくなれば、現状のように、弁護士会に事務を委任してということは難しくなり、専任スタッフを抱えなければならなくなると思うが、そうなると管理費が今以上にかかるようになる。そうなると、コスト・パフォーマンスは悪くなるようにも考えられるので、お聞きしたい。
△ 仮に各支部に10名くらいの職員を配置するとしたら500名必要になる。職員の数を増やせばそれだけ費用もかかるようになる。今の予算は見直さなければならなくなるだろう。他方で、事件1件当たりのコスト・パフォーマンスは改善できると考えられる。予算規模としては現在よりも大きくなるだろうが、サービスの拡充につながることであり、1件当たりの単価で見ればよくなるのではないかと思う。
○ 説明者が書かれた意見には賛同できる部分がある。ADRもカバーするという話があるが、具体的にどこをと考えているのか。
△ これは法律扶助協会として決めたというわけではなく、私個人の意見だが、今の扶助制度は、代理人をつけて、その代理人の報酬を、法律扶助協会が国からいただいた補助金の中から支払うという方式である。しかし、紛争は多様であり、代理人を付けて裁判できちんと白黒をつけるのに適した紛争もあれば、中立な第三者が間に入って、当事者双方から言い分を聴いて解決するのに適した紛争もある。法律扶助協会がADR機関を設置して、その機関がADR手続を主宰するというやり方があってもいいと考えている。利用者に資力がなければ無料でADR手続を利用してもらうということがあってもいいと思う。紛争の両当事者が扶助を受けているとした場合、2人の代理人の報酬を扶助でカバーすることになるが、法律扶助協会が仲裁人を紹介して、紛争を解決してもらう方式にすれば、仲裁人への報酬が必要になるとしても1人分で済み、コストダウンにつながる。
○ どのような事件が今お話しいただいたような紛争解決方法になじむと考えているのか。
△ 少額の損害賠償などになじむのではないかと思う。マンションやアパートなどの敷金返還請求にもなじむと思う。
○ コスト負担にあまりに関心が偏りすぎるのは問題だろう。最初に必要なのはカウンセリング的役割を果たすところである。アクセス・ポイントとしては、相談を受け付けて、裁判での解決がいいのか、それ以外の方法がいいのか、振り分ける機能が重要である。道に迷っている人が気軽に相談できる制度が必要である。組織形態として独立行政法人がいいのかどうかということも重要であるが、アメリカでは共同募金によるサポートも行われているようであり、制度を国民のものにしていくためには、予算の拡大も必要だろうが、全てを公的資金に頼っているようでは駄目である。自分で拠出金を出せば制度への関心も高まり、制度が国民のものとなっていくだろう。
○ 議論を聞いていると、ポイントは3つあるように思われる。民事と刑事を一緒にするのか、分けるのかという議論もあるようだが、一緒でも構わないだろう。まず第1のポイントは、アクセス・ポイントとしての機関が振り分けに徹するのか、自ら紛争解決もするのかという点である。韓国やフランスではアクセス・ポイントとしての機関が調停や和解までしているようだが、イギリスではしていないようである。第2のポイントは、限られた予算をどうすれば効率的に使えるのかという点である。民事と刑事は一体としてやった方が効率的だという議論はこのポイントに関係するだろう。第3のポイントは、運営主体の問題である。公的弁護制度検討会では独立行政法人についても相当検討されているようであり、財団法人法律扶助協会からも独立行政法人についての話があったが、独立行政法人がいいのかどうかという問題がある。批判的見解としては、独立行政法人になって効率性が追求される結果、償還金のアップにつながるという意見もあろう。まずは第1のポイント、第2のポイントについて話を進め、その先に第3のポイントの話に進むのかと思うが、今日はそのあたりでよいか。
事務局から、資料11ないし13に基づいて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。
○ 司法制度改革審議会意見は尊重したい。司法制度改革審議会意見では、「訴訟を利用しやすくする見地」とあるので、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入は、そういう理由で採用されたのだろう。訴訟を利用しやすくするという観点を基本に考えていくべきだと思う。当事者の経済力の差や、証拠の偏在といった事情も考慮されるべきだし、法律扶助、訴訟費用保険等の関連する制度も考えるべきだろう。
○ 司法へのアクセスを推進するための制度でなければならない。司法制度改革推進本部に届けられている要望の中には、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入を求める意見はない。逆に、導入反対の意見が多数である。弁護士への報酬を自分で負担しなければならないという理由で訴訟を回避せざるを得なかったという人がいるのか。
○ 法律扶助は諸外国並みにすべきだろう。個人が尊重される社会というのが目指すべき方向だと思う。司法制度改革審議会意見にもそういう趣旨のことが書かれているのではないか。弁護士報酬の敗訴者負担の在り方は大きな問題だと思う。
○ 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関しては、何回か議論を重ねてきた。司法制度改革審議会意見が我々に課した検討課題の検討に進んではどうか。司法制度改革審議会意見の読み方にはいろいろあると思うが、修飾語を省略すると、「弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させる制度を導入すべきである。ただし、不当に訴えを提起させないように、これを一律に導入してはいけない。導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方及び敗訴者に負担させる金額の定め方について検討すべきである。」とされている。私の理解では、弁護士報酬の敗訴者負担制度がいいのか悪いのかという議論は既にされている。重大な事実誤認に基づくとか、裁判で言えば再審事由に当たるような事由があれば別だが、そうでない限り、我々はこれを前提として、哲学の部分は司法制度改革審議会意見に乗って、その上で、一律に導入すべきでないと言われる範囲はどういうものであるのか、一律でないと言うのはどういう考え方に基づくのか、どのような割合を負担させるのかという各論的な部分に進みたいと思うが、いかがか。
○ 今の提案に賛成である。この検討会でも、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に対する消極論が有力に主張されている。しかし、消極論が、弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入すると不都合があると指摘している訴訟は、民事訴訟全般ではない。私自身、消極論の方と会って話をしたことがあるが、そういう場で問題にされている訴訟が民事訴訟全般であるとは思えない。一定のパターンの訴訟について萎縮的効果があるという御意見ではないかと理解している。萎縮的効果がありそうな訴訟はどのようなパターンの訴訟なのか、そういうパターンの訴訟に敗訴者負担制度を導入しないことについてどのような理屈が立てられるのかを検討していくべきではないか。こういう各論の検討をした結果、やはり制度の導入は全面的に駄目だという結論になることもあり得るが、そのような可能性があることを留保した上で、各論の議論をしてみてはどうか。時間も人的資源も限られているので、効率的な議論をしてはどうか。
○ 今のお話は分かるが、外国の例では、当事者双方に敗訴者負担制度が適用される場合と、当事者一方にのみ敗訴者負担制度が適用される場合とがある。実際にこういう制度がどう機能しているのか調べるのもいいと思う。その辺はどうか。
○ 双面的負担か片面的負担かは、いくら負担すべきかの議論に包摂されるのではないか。外国の制度については、我々が海外に行くのは難しいだろうが、資料は出るだろうし、平成9年の民訴費用制度等研究会の報告書でも触れられている。
○ 弁護士への報酬が負担になって訴訟を回避したという人はどのくらいいるのか。訴訟を回避したのだから数字には表れないのだが、そのあたりをどう判断するのか。弁護士から話を聞くと、裁判で勝っても相手にお金がないから無駄だという理由で裁判を諦めるケースが圧倒的に多いと言う。法律扶助は、勝つ見込みのある人に訴訟費用の立替えをするという制度だが、制度としておかしいと思う。裁判は勝つか負けるかは分からない。明白な事実なら、争いにならないのではないか。白、黒、灰色とあって、灰色の部分が多いのではないか。白なのにお金のことで諦めたという人がどのくらいいるのか。
○ 裁判実務の経験で申し上げる。本人訴訟をしている人と話すと、弁護士に払うお金がないから弁護士を頼まず、裁判に負けるかもしれないが本人訴訟をしているという話をよく耳にする。ちゃんと根拠があって弁護士費用も取れるんですよということになれば、また違ってくるのではないか。議事の進め方については、先に進むべき時期に来ている。各論に入るべきだろう。根強い反対論があることは承知している。反対論に相当な根拠があることも知っている。制度を導入するとどういう問題があるのかをよく議論して、やはり問題があるのだということになったら、全体的な考え方も修正しなければならないということになるかもしれないが、議論としてはこの先に進むべきだと考える。
○ 議論を進めることは構わない。制度導入の理由は訴訟促進になるかどうかだと思うので、訴訟促進になるかどうか、萎縮的効果があるかどうかが1つのメルクマールになると思う。そこを基本に考えたい。弁護士としての経験で申し上げると、弁護士報酬について各自負担だから裁判をやめるという人はいない。勝ったときは取れるんですかという質問はある。裁判を始めるときには不安を感じる人が多い。そういう時に、負けたら2人分の弁護士報酬を負担しなければならなくなるという話をしたら、裁判を諦めてしまうだろう。本日の資料14は、日本弁護士連合会が行ったアンケート調査の結果を学者に分析してもらった論文である。消費者生活相談センターの専門相談員のところに来た人と弁護士会の法律相談センターに来た人を対象にアンケート調査をした結果である。完全に勝訴又はほぼ勝訴という事案で、弁護士報酬の各自負担を理由に訴訟を回避するかどうかという質問に対して、回避するという回答は10人に1人くらいだった。
○ 議事の進め方としては、各論に入っていくということでよいか。制度を導入しない範囲をどうするかという問題と負担額の問題がある。相互に関連する問題であろう。次回以降はこれらの問題の検討に入っていきたい。
○ 各論の検討に入ることに賛成である。司法制度改革審議会意見で言われていることを独自に解釈して、実現を遅らせようとするのはよくないという大勢の意見の中で、日本弁護士連合会が、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いの問題については、それをもとにして司法制度改革審議会意見を否定するがごとき決議をしていることに対して不満を感じる。司法制度改革審議会意見の実現が我々の使命である。制度の導入に伴う弊害もあると指摘されているので、弊害について研究していくべきである。訴訟の類型で分ける考え方と、当事者の属性で分ける考え方、例えば商人間の訴訟であるとか、私人間の訴訟であるとか、行政を相手とする訴訟であるとか、商人と私人との間の訴訟であるとか、そういうことも1つの考え方となるのかどうか。そういう議論は、民訴費用制度等研究会では行われてきたのか。
○ そういう議論はされたが、立法技術上の詰めはしていない。例えば、政策形成型訴訟というのは条文上は定義不可能だろうと思う。検討課題についての議論はここですることになろう。当事者の属性という話があったが、個人企業でも株式会社、有限会社になっている場合があり、難しい問題である。
○ 司法制度改革審議会意見は、司法制度改革審議会の議事録を見れば分かるが、かなり微妙な調整の上にできたものだと思う。それに対して意見を述べることはあっていいはずで、ねじ曲げているわけではない。また、日本弁護士連合会の決議は一般的な導入に反対しているのであり、理由の中にも、司法へのアクセスを抑制するおそれがある、裁判の人権保障機能、法創造機能を損なうということが書かれている。
○ 大勢が弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に賛成しているという意見があったが。
○ 司法制度改革審議会意見を実現していこうという中で、一部だけ駄目だというのはどうかという趣旨である。
○ 相手方から弁護士報酬を回収できないために訴訟を回避せざるを得なかった当事者というのが現れてこない。
○ そこにこだわるのはいかがなものか。
○ 相手方に資力がないために裁判を諦めたのが問題という趣旨なら、それは私有財産制を基本とする民事の世界ではしかたのないことで、弁護士報酬の敗訴者負担の問題とは別の問題であると思う。連動して議論するのは混乱を招くだけである。
○ 私は、総論の話を慎重に進めてはどうかという意見である。各論の議論に入ることに反対しているのではない。外国の制度の話を聞いても、医療過誤という特殊な分野だからかもしれないが、フロリダでは、1度敗訴者負担制度が導入されたものの、問題があるということで制度を廃止したという話もあるようであり、イギリスでは、敗訴者負担制度があるために、経済的に優位にある者が有利に和解を進めるという問題もあるようである。どちらが弁護士報酬を負担するかで紛争になり、上訴になるケースもあると聞く。勝てるかどうか分からない状態で訴訟を起こしているという事情もあるようである。フランスやドイツでは敗訴者負担制度が導入されているものの、弊害を緩和する措置があると聞く。弊害や片面的敗訴者負担制度などの世界の動向にも目を配って、慎重にやっていかないといけない。今回の目的は、国民一般の司法へのアクセスを推進することであって、法律の専門的知識を持っている人だけのアクセスを推進するということではないはずである。国民一般に使い勝手のいい制度になるような検討のしかたが必要である。まずは、訴訟を回避せざるを得なかったというところからスタートすべきだと考えている。
○ 訴訟を回避せざるを得なかった当事者という部分にこだわっておられるようで、日本弁護士連合会の資料もそれに関連するようだが、司法制度改革審議会意見が根拠のあるものかどうかという議論はそろそろ打ち止めにしたいと思う。司法制度改革審議会意見では、不当に訴えの提起を萎縮させないようにと言っている。制度を導入しない範囲を議論する中で御意見をいただきたいと思う。
○ 司法アクセス検討会なので、司法へのアクセスを拡充するための検討をするという点ではコンセンサスができていると思う。問題は、弁護士報酬の負担の在り方について、どういう制度にしたら司法へのアクセスが拡充されるかである。これはなかなか難しい問題で、諸外国にはいろいろな制度があるが、どういう司法制度なのかとか、弁護士がどういう訴訟活動をしているのかといった要素によっても影響を受ける。我が国においてどうなのかを具体的事例に則して、一歩踏み込んで考えないといけない。一般化して議論できる問題ではないと思う。不都合な点があったら、それをどう解決するかを議論するということも考えられる。
○ 司法制度改革審議会意見に「国民の理解」とあるので、日本弁護士連合会でアンケート調査を行った。
○ 日本弁護士連合会が行った調査ではということで理解する。アメリカの世論調査では、共和党に近いシンクタンクの行った調査と、民主党に近いシンクタンクが行った調査とで結論が全く違うことがある。分析された方は、御存じのとおり、弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対の立場である。日本弁護士連合会も敗訴者負担制度の導入に反対している。反対の立場の方が反対の立場の学者に書いてもらったものであるという留保をした上での調査の結果である。
○ 評価は各自でしていただくことになるが、1つの調査結果である。
○ それでは、次回は各論の検討に入りたいと思う。