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司法アクセス検討会(第12回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成15年1月29日(水) 13:30〜16:45

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由起子、飛田恵理子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(説明者)
藤井範弘(財団法人法律扶助協会専務理事)
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、落合義和参事官

4 議題
(1) 司法の利用相談窓口・情報提供について
(2) 民事法律扶助の拡充について
  ・ 財団法人法律扶助協会からの説明 
(3) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて
(4) 今後の日程

5 配布資料
資料 1司法の利用相談窓口(アクセス・ポイント)に関する諸外国の例
資料 2諸外国の民事法律扶助制度の概要
資料 3法律扶助協会の財源・事業支出
資料 4事業費等の推移
資料 5代理援助事件内訳等
資料 6民事に関する法律扶助決定件数の推移
資料 7民事に関する法律扶助事業の推移
資料 8公的弁護制度検討会関係説明資料
資料 9行政改革大綱(平成12年2月1日閣議決定)(抄)
資料 10財団法人法律扶助協会説明資料
資料 11弁護士報酬の敗訴者負担をめぐる従来からの積極論・消極論それぞれの論拠の整理(平成9年1月31日民訴費用制度等研究会報告書26〜28頁による)
資料 12負担させる弁護士報酬の一部の額の決定方式(平成9年1月31日民訴費用制度等研究会報告書29〜32頁による)
資料 13弁護士報酬の一部負担に関する問題について立法技術上、検討すべき事項(平成9年1月31日民訴費用制度等研究会報告書32、33頁による)
資料 14日本弁護士連合会提出資料
(14-1)司法アクセスを疎外する弁護士報酬の敗訴者負担に反対する決議(2002年10月11日 日本弁護士連合会)
(14-2)弁護士報酬の敗訴者負担!?Q&A(2002年11月 日本弁護士連合会)
(14-3)日本弁護士連合会主催の下記集会における裁判当事者の発言要旨
(14-4)太田勝造、藤田政博「弁護士報酬敗訴者負担制度の社会的影響 − 予備的実態調査の結果報告」(自由と正義54号(2003年1月号)20頁以下)
資料 15司法アクセス検討会開催予定

6 議事

【座長】
 まず開始に先立ちまして、御承知かと存じますが、私どものこの検討会の同僚の委員であった原田晃治さんが、1月25日午前0時52分、急逝されました。ここに慎んで哀悼の意を表する次第であります。皆さんの御賛同をいただきましたら、黙祷を捧げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(起立 黙祷)

 ありがとうございました。今日お通夜で、明日、告別式ということでございます。
 それでは、第12回の司法アクセス検討会を開催いたします。まず、議事に先立ちまして、かねて委員の一部の方から御意見がありました、議事録の顕名の問題を議論してみてはどうかと思います。恐縮ですが、議事の公開方法に関する点ですので、結論が出るまで議事を非公開にしたいと思います。報道機関の関係の方がいらっしゃいましたら、一時席を外していただきます。

(報道関係者退室)

協議の結果、今回の検討会のこの後の議論から、議事録に発言者名を記載することとなった。

(報道関係者入室)

【高橋座長】 それでは、今日の議題と配布資料の説明を事務局からお願いいたします。

【小林参事官】 本日の議題としては、まず「司法の利用相談窓口・情報提供について」、次に「民事法律扶助の拡充について」、それから3番目に「弁護士報酬の敗訴者負担等の取扱いについて」、以上のように考えています。「民事法律扶助の拡充について」、これにつきましては、財団法人法律扶助協会から御説明をいただけるということで、本日御出席いただいています。配布資料につきましては、それぞれの議題のときに御説明をさせていただきます。

(1) 司法の利用相談窓口・情報提供について
(2) 民事法律扶助の拡充について
  ・ 財団法人法律扶助協会からの説明

【高橋座長】 よろしいでしょうか。議事次第に従いますと、議題(1)として「司法の利用相談窓口・情報提供について」、議題(2)として「民事法律扶助の拡充について」となっております。しかし、これらは密接に関連しますので、一緒に議論するということでよろしいでしょうか。

(各委員了承)

 それでは、事務局から説明をお願いします。

【小林参事官】 本日の配布資料中資料1〜9については、司法の利用相談窓口と法律扶助関係の資料です。前回、私どもの方で司法の利用相談窓口・情報提供、いわゆるアクセス・ポイントについて諸外国でどのような機能を果たしているかということについて調査して報告をしたいということにしていました。その御報告と併せて法律扶助の関係について、資料2以下にまとめてあります。
 資料1がアクセス・ポイントの資料です。司法の利用相談窓口、いわゆるアクセス・ポイントについて積極的に取り組んでいる国として、韓国、フランス、イギリスの例を調査してまとめたものです。
 まず、韓国について御説明しますと、韓国では、大韓法律救助公団という、法務部、これは日本の法務省に相当しますが、法務部所管の特殊法人によって組織及びスタッフ等の構成がされているということです。この公団に所属する弁護士等がアクセス・ポイントとしての活動と法律扶助の事業を一体として行っています。特殊法人ということで、公益法人で行っている日本よりはやや国の責任体制が強くなっていると思われます。また、組織及びスタッフですが、スタッフ弁護士ということになりまして、これは後ほども御説明しますし、法律扶助協会からも詳しく御説明があると思いますが、日本と違い、民事と刑事が同じ主体で行われていますし、開業弁護士に依頼するという形ではなく、公団のスタッフとして雇用されている弁護士による法律サービスの提供が行われています。法律扶助は、日本では民事法律扶助ということで民事に特化した形で行っており、しかも、裁判のための弁護士費用等を援助するということで、かなり特化した事業が行われているわけですが、韓国では、民事も刑事も同じ主体で行っています。また、司法の情報提供であるとか、相談窓口的なアクセス・ポイント的な機能とを一体として行っています。このように、韓国の例を取ってみても、アクセス・ポイントについて御説明しようとして資料をつくりますと、結局、法律扶助の話も一体となってくるということです。このほか、刑事のサポートということで、公団は、国選弁護人の担い手としての弁護士の不足を補充する機能も果たしています。司法アクセス・ポイントの機能として、韓国の制度で特徴的なことを申し上げますと、韓国というのは、日本よりもかなり弁護士が少なかったようで、裁判所の管内に弁護士のいない地域を、公益法務官というスタッフを派遣することによって解消したと言われています。そういう意味で、弁護士の地域偏在を解消する役割も果たしているということのようです。それから、スタッフの弁護士が指揮監督する形で、法律相談や和解等の裁判になる以前の紛争解決、相談活動もしていると承知しています。
 フランスでは、裁判扶助局というところが裁判に関する扶助の運営主体となっています。裁判扶助局は、日本の地方裁判所に相当する大審裁判所に設置されています。このほかに、法へのアクセス県評議会というものがあり、法律扶助に近い業務とアクセス・ポイント的機能を果たしています。法律扶助事業については、やはり民事と刑事を一体として行っていますが、スタッフ制ということでは必ずしもなくて、開業している弁護士によるジュディケア制を取っているようです。ジュディケア制というのは、これは多分メディケア、医療保険のやり方を参考にしているのではないかと思いますが、開業している人を使うのか、それとも公立病院をつくってそこで医療を提供するのか、それと同じような発想でジュディケアと言われるのかと思いますが、開業している弁護士による法律扶助が、民事・刑事一体で行われているようです。フランスの場合は、司法アクセス・ポイントの機能につきましては、先ほど申し上げた法へのアクセス県評議会が、市町村、弁護士会等と協定を締結して、法へのアクセス実現のための活動を支援しているようです。そういう意味で、フランスの特色というのは、地方団体との連携をするための組織をつくっているということが言えるかと思います。そのアクセス・ポイントでどういう活動をしているかということになりますと、法律相談や調停や和解、それから法律扶助への取次ぎ、法的文書作成の援助ということで、やはり、裁判になる以前のところでのサポートということも、活動として行われているようです。
 続きまして、イギリスは、法律扶助の関係でもアクセス・ポイントの関係でも、かねてから非常に充実しているということで著名なところとして例をあげています。イギリスでは、大法官省所管の非政府法人で法律サービス委員会というところが行っているということで、やはり公的な団体で行われています。イギリスの場合は、スタッフ弁護士である公設弁護人のほか、法律サービス委員会とフランチャイズ契約を締結した契約弁護士等が行うという形で、ある程度多くの事件を集中して扱うという形を取っている例もあるということです。イギリスの場合も、やはり法律扶助は、民事と刑事が一体として行われています。民事関係の場合は、契約弁護士又は契約非営利団体を活用して、ジュディケア制による法律扶助事業が行われているようです。刑事弁護については、契約弁護士によるジュディケア制と公設弁護人によるスタッフ制とを混合した形態をとっているようです。司法アクセス・ポイントとしてどのような役割を果たしているかということになりますと、法律サービス委員会が、各地の資金提供者、地方自治体とともに、地域社会法律サービスパートナーシップを構成して、弁護士、市民法律相談所、地方自治体等のネットワークを各地域ごとに組織しているということで、地方自治体とも連携しているということと、それからこの検討会で前回検討していただきました法律情報のネットワーク化、そういった機能も果たしているという意味では、このイギリスの制度というのが注目されるのではないかと思われるところです。
 以上のように諸外国の制度を見てみますと、民事と刑事が一体として運営されているということ、アクセス・ポイント的な機能と法律扶助、つまり裁判になった場合の支援とそれ以前の支援、相談的な、あるいは裁判外の紛争解決を含めた支援、さらにはそれ以前の情報提供、情報のネットワーク化といったものも含めて業務の提供が考えられているということ、業務提供の方式としては、必ずしも、開業している弁護士の方のみを活用するジュディケア制ではなく、特に刑事に関して多いようですが、スタッフとしての弁護士を活用する方法や契約を締結して集中的に法律扶助事件を解決していただく方々との連携を深めるという形での対応も考えられているということ、こういった点で参考になると思われます。
 その次に資料2というのがありまして、これは諸外国の民事法律扶助制度をまとめたものです。この諸外国の比較資料をつくった趣旨を御理解いただくために、意見書でどのような意見が出されているかということを御参考までに申し上げますと、民事法律扶助の拡充につきましては、「対象事件、対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的、体系的な検討を加えた上で一層充実すべきである」ということを言われておりまして、「民事法律扶助の制度の拡充については、民事法律扶助法が、平成12年10月1日に施行されたことにより、法律上の根拠が与えられ、また、国の責務としてその適正な運営を確保し、その健全な発展を図るべきものとされた。しかし、欧米諸国と比べれば、民事法律扶助事業の対象事件の範囲、対象者の範囲等は、限定的であり、予算規模も小さく、憲法第32条の裁判を受ける権利の実質的保障という観点からは、なお、不十分と考えられる。また、刑事司法における被疑者、被告人の公的弁護制度の在り方との関連をも踏まえて、運営主体等についても総合的に検討する必要がある」。このように言われているわけです。そういった視点から、今回、資料2を作成して、諸外国との比較をしてみたものです。内容について、詳細については、御説明を省略をさせていただきたいと思います。
 次に資料3、「法律扶助協会の財源・事業支出」という資料ですが、法律扶助協会の主な財源と、その事業支出の内訳をグラフ統計にしたものです。
 資料4は、事業費等の推移です。民事法律扶助法の施行によって、援助決定件数や事業費に対する補助金等が増えているということを、統計とグラフにしたものです。
 それから、「代理援助事件内訳等」ということで、資料5があります。これは、後ほど法律扶助協会から詳しく御説明いただくだろうと思っていますので、詳しくは御説明しませんが、特に自己破産事件が急増しているという状況です。
 資料6、資料7を見ていただきますと、民事法律扶助制度の歴史の中で、特に近年、扶助決定件数、事業費、国庫補助金というものがかなり急激に伸びているということがグラフからもおわかりいただけるのではないかと思っています。この法律扶助事業の運営主体に関する問題として、法律扶助は、後ほど法律扶助協会からもお話があると思いますが、公益法人という形で運営をしています。しかも、公益法人に対して、先ほどのグラフにありますような形で、国庫補助金を支出して事業を運営しているという形になります。その点で、行政改革との関係が非常に問題になるわけでして、その関係で、資料9として、平成12年12月1日に閣議決定がされた行政改革大綱を抜粋してあります。「行政の組織・制度の抜本改革」という項目の中に「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革」というところがあります。その中の(2)というところで、「財政負担の縮減、合理化」ということがうたわれておりまして、「ア 基本的な考え方」というところで、「国からの公益法人への補助金・委託費等については、上記(1)の業務の見直しの内容も踏まえつつ、官民の役割分担の観点、限られた財政資金の効率的使用の観点、及び行政の説明責任の確保と透明性の向上の観点から厳しく見直し、その縮減・合理化を進めることとする」とされているところです。「イ 公益法人に対する補助金等の支出の適正化」という項目におきましては、「公益法人に対する補助金等の支出の適正化について、委託等、推薦等に係る事務・事業の見直しと併せて検討を進めることとし、独立行政法人の事務移管、その他、必要な措置を以下のように講ずる」とされています。(ア)のところで、「国が公益法人に対して交付する補助金等で、当該法人が更に他の公益法人やその他の法人等の第三者に分配・交付するものについては、当該補助金等を整理・統合した上で、国自ら又は独立行政法人が分配・交付することとする」、これ自体は扶助協会とは関連はしないと思いますが、(イ)のところ、「国からの補助金等により公益法人が行う事務・事業であって、当該法人の総収入に対して、その補助金等が大部分を占める場合は、その必要性等について厳しく精査を行い、当該事務・事業を整理・統合した上で国自らが行い又は独立行政法人に行わせることとし、これを適用することが困難な公益法人については別途検討する」とされています。これが公益法人に対して補助金を支出して事業を行うという場合における国の行政改革における対応です。こういった独立行政法人は何かとか、運営主体等の関係も含めて、公的弁護の検討会の方でも検討が進められておるようでありますので、公的弁護制度の担当参事官から御説明をいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【高橋座長】 よろしければ、私もそういうことはよくわかっておりませんので、御説明をお願いいたします。

【落合参事官】 公的弁護制度の担当をしております事務局参事官の落合でございます。よろしくお願いいたします。
 司法制度改革審議会の意見書におきまして、民事法律扶助につきましては、公的弁護制度の運営主体の検討を踏まえて、更に検討することとなっておりますことから、公的弁護制度における現在の検討状況につきまして御説明します。その関係で資料8の各枝番を付けているものに即して御説明します。
 まず、資料8 - 1ですが、司法制度改革審議会意見の公的弁護制度に関する部分の抜粋です。本資料のとおり、司法制度改革審議会は、被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保し、また、充実し、かつ迅速な刑事裁判の実現を可能にするには、刑事弁護体制の整備が重要になるとの観点から、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階を通じ、一貫した弁護体制を整備すべきであるとし、公正中立な機関が公的弁護制度の運営主体となり、全国的に充実した弁護活動を提供し得る体制を整備することなどを提言されたところです。本意見を受けまして、公的弁護制度検討会は、公的弁護制度の具体的な制度設計について検討を行っております。司法制度改革審議会意見のうち、運営主体に関するものにつきまして、後ほど運営主体について検討した検討会の議論を御説明する際に合わせて御説明申し上げます。
 公的弁護制度の整備に関する法案は、資料8 - 2「司法制度改革推進計画(抜粋)」の「2 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備」の(1)に記載されておりますとおり、平成16年通常国会に提出する予定です。
 資料8 - 4は、平成14年中の公的弁護制度検討会のスケジュールでありまして、14年中に大きな骨組みに関するものと思われる論点について一通り議論を行いまして、運営主体につきましては、第5回の昨年10月29日に議論を行いました。その第5回の検討会では、公的弁護制度の運営主体に関しまして、運営主体の事務及び組織という2つの論点に分けて検討が行われました。その論点につきましては、資料8 - 4にあります。まず、運営主体の事務ですが、資料8 - 4の1つ目の○に記載されておりますとおり、司法制度改革審議会意見書は、弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるとしております。このことから、司法制度改革審議会が提言した公的弁護制度は、弁護人の選任の仕組みとして、被疑者・被告人が弁護人を選任し、公的資金でその費用を立て替えるという、いわゆる扶助型を否定し、現行の国選弁護制度と同じ国選型を採用しておりますので、この点に御留意いただきたいと存じます。そして、2つ目の○におきまして、意見書は、運営主体が制度運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべきである。殊に、訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備することが緊要であると述べております。これは、新たな国民参加の制度、すなわち国民が裁判官とともに刑事訴訟手続に関与する、いわゆる裁判員制度の導入に当たり、集中審議に対応し得る弁護体制が必要であることなどを踏まえ、運営主体が全国的に充実した弁護活動を提供し得る態勢を整備することを求めたものです。そして、括弧内に記載しておりますとおり、意見書は、弁護態勢の整備の具体的な方向としまして、常勤弁護士の配置や、個々の弁護士又は弁護士法人との契約を行うことを例示しているところです。このように、運営主体が弁護態勢の整備を行うことは意見書に明記されておりますので、第5回の公的弁護制度検討会における運営主体の事務に関する議論におきましては、それ以外に運営主体が行うべき事務として何が考えられるかにつき、検討が行われました。ここでは、その議論の内容については、説明を割愛させていただきます。
 次に、運営主体の組織に関する意見書の記載ですが、資料8 - 4の運営主体の組織の欄に引用しております。そのとおり、意見書では、「公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関とし、適切な仕組みによりその運営のために公的資金を導入すべきである。」、「上記機関の組織構成、運営方法、同機関に対する監督等の在り方の検討に当たっては、公的資金を投入するにふさわしいものとするため、透明性、説明責任の確保等の要請を十分に踏まえるべきである。」、「公的弁護制度の下でも、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性が損なわれてはならず、制度の整備・運営に当たってはこのことを十分に配慮すべきである。」とされています。このように、意見書は、運営主体の在り方につきまして、公正・中立性、透明性、説明責任の確保等を求めるとともに、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性への配慮を求めていますが、具体的な組織形態につきましては、特に触れておりません。この点について、司法制度改革審議会の議論を見ますと、直接国が運営する場合のほか、特殊法人、認可法人、指定法人などの公的性格を持った法人が運営に当たる場合が挙げられておりますものの、具体的な組織形態については後の検討に委ねられたということがわかります。したがいまして、公的弁護制度検討会におきましては、運営主体の担当すべき事務の内容を踏まえ、そのような事務を担当し、かつ意見書の要請を満たす運営主体としてどのような組織形態がふさわしいかについて御議論いただきました。その際、資料8 - 5を御覧いただきたいと思いますが、資料8 - 5は、用語の定義等についてと題する資料ですが、その資料をお配りしまして、幾つかの組織形態に関し、それぞれの定義、具体例、留意点を説明しております。特殊法人につきましては、留意点としまして、行政改革大綱、特殊法人等改革基本法、特殊法人整理合理化計画につきまして御留意いただくところですし、認可法人も同様です。指定法人につきましては、先ほど小林参事官から説明がありましたとおり、行政改革大綱との関係がありますし、また、「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」という閣議決定がありますので、この点についても留意が必要かと考えております。また、独立行政法人につきましては、第4のところでその定義について述べておりますし、留意点につきまして、やはり、特殊法人等整理合理化計画という点について御留意いただきたいということです。そのほかに3条委員会ですとか、審議会ということも定義として御説明申し上げたところです。この資料を基に御議論をいただいたわけですが、どういう御意見が出たかということにつきましては、資料8 - 6の第5回検討会の議事概要の4ページ以下に記載されております。資料に載っていることではございますが、簡単に御紹介いたしますと、日弁連では、刑事弁護センターにおいて、検察審査会と同様、国法上の裁判所に独立機関を付設する裁判所付設型と各省庁から独立した権限を行使する独立行政委員会型の2つを考え、また、財団法人法律扶助協会がこれらの運営主体から指定を受けて、指定法人として具体的事務を行うなどの意見があるというもの、特殊法人、認可法人、指定法人は、行政改革大綱やその後の法律や閣議決定の状況を見ると、現実的には不可能ではないかと思われ、その他の案についても問題があり、国法上の裁判所が運営主体になるという選択肢も十分合理性があるとの意見、公正中立な立場でなければならないという裁判所の役割からすると、弁護人を裁判所が確保するのはいかがかとの意見、司法制度改革審議会意見は、新たな組織を設けることを前提としているとも読めると思うので、独立行政法人のようなものを作って運営主体の業務を担わせるというのが最も方向性としてはいいのではないかとの意見、これまで民事に関する扶助の実績のある法律扶助協会を運営主体とすることが考えられるとの意見、裁判所の指定法人という例はないが、司法修習生について、最高裁が弁護士会等に修習を委託している例があり、裁判所において司法行政事務の一部を外出しすることも不可能ではないかもしれないとの意見、常勤弁護士や契約弁護士については独立行政法人が担うが、個々の弁護士が弁護人となる場合の報酬等に関する事務は裁判所に担ってもらうことも考えておかないといけないのではないかとの意見などが述べられたところであります。いずれにしましても、公的弁護制度の検討会におきましては、昨年中に、第1ラウンドとしまして、一通りの議論を大きな論点について行ったということでございまして、議事概要を御覧いただいてもおわかりいただけますとおり、公的弁護制度検討会において何からの方向性が決まったというわけではございません。今後更に議論を深めてまいりたいと考えております。先ほど小林参事官からも御指摘があり、意見書にも書いているところでありますけれども、民事法律扶助の運営主体と公的弁護制度の運営主体との関連性も指摘されておりますので、司法アクセス検討会の検討状況も踏まえて、検討を進めてまいりたいと考えております。
 御参考までに、資料8 - 7として、公的弁護制度検討会の本年のスケジュールをお配りしておりますので、御参考にしていただければと思います。
 私からの説明は以上でございます。

【高橋座長】 それでは、続けて資料がありますので、法律扶助協会関係の御説明に移りたいと思いますが、法律扶助協会の方、前に出てきていただいて御説明をお願いします。

【藤井専務理事】 財団法人法律扶助協会の専務理事をさせていただいております藤井範弘と申します。本日は、貴重な時間を割いていただきまして、ありがとうございます。 資料としましては、資料10 - 1から幾つかありますけれども、当協会が用意させていただいた資料です。それと、最後の方に「扶助だより」という当協会本部の機関誌ですけれど、「扶助だより79号」が配られていると思います。それと、平成13年度の事業報告書も参考にお配りさせていただきました。
 資料10 - 1に即して、民事法律扶助事業の現状とどういう問題があるのか、課題について私の方から説明させていただきます。この10 - 1が今日のレジュメということであります。先ほどもお話がありましたけれども、平成12年4月に民事法律扶助法が成立して同年の10月から施行されました。民事法律扶助法の制定というのは扶助関係者の長年の悲願であった、やっと法律ができたということで、当時関係者は、これで大幅な資金が確保できるということで喜んだわけであります。しかし、残念ながら、これから御説明しますけれども、確かに資金、国の補助金は伸びましたが、まだまだ問題があるということが言えるかと思います。この法律の意義ですけれども、端的に3条1項にその意義が記載されているのだろうと理解しております。それまでは、民事法律扶助というのは、確かに昭和33年から国から補助金をいただきましたけれども、法律の根拠のない事業でありました。これが初めて法律の根拠のある、法律に基づく事業と認定されたわけです。3条1項は、「国は、民事法律扶助事業の適正な運営を確保し、その健全な発展を図るため、必要な措置を講ずる」というように国の責務を初めて認めました。この必要な措置というのは、その中心になるのは、補助金の交付ということになるかと思いますが、初めて国の責務が法律によって認められた、この意義は大変大きいものがあると理解しております。
 民事法律扶助事業の概要ですけれども、指定事業としては、大きく分けると3つ記載されております。ここに書いたように、代理援助と書類作成援助、それから法律相談援助、4番目に、附帯事業というのがありますけれども、この3つであります。代理援助というのは、現在は弁護士が事件の代理人となって法律扶助協会の方が、国からいただいた補助金ですけれども、その費用と報酬を立て替えるという制度であります。本年4月からは、御承知のとおり、司法書士の簡裁代理権が認められましたので、本年4月からは司法書士にも代理援助をしていただくという予定になっております。書類作成援助、これは裁判所に提出する書類の作成代行をするということですが、弁護士、司法書士、どちらも担当できることになっておりますけれども、実際にはほとんどが司法書士の書類作成援助、しかも、9割以上が自己破産の申立書の作成になっております。法律相談援助というのは、これも現在は弁護士だけですけれども、今年4月からは、司法書士にも法律相談援助を行ってもらうということになっております。
 ここ数年の事件の推移ですけれども、1ページの下の方に一覧表を書きました。平成11年のときにやっと1万件を超えたということで1万2,000件強、これが2万件になり、平成13年には3万件になり、平成14年は、現在、まだ年度途中でありますけれども、補正予算が付くだろうということで、当初は3万600件の設定でありましたけれども、戻ってくる償還金の伸び率がいいということと、補正予算が付くということで、3万7,000件に代理援助をさせていただいております。書類作成援助も、平成11年はまだ法律ができていませんでしたのでありませんけれども、新法の下で書類作成援助という新しい援助のスタイルが認められました。初めは163件ということで非常に少なかったわけですけれども、平成13年は1,000件を超えました。平成14年は1,800件程度にいくであろうと思われます。ちなみに、平成15年度予算はこれから審議が始まるわけですけれども、代理援助で4万2,600件、書類作戦援助では3,000 件と予定しております。
 2ページ目になりますが、先ほども資料の説明がありましたけれども、国の補助金の推移が一体どのようになっているかということですが、平成11年、これは法律ができる前、このとき初めて補正予算で追加の補助金をいただきましたけれども、年度当初では5億8,000万円強の補助金でありました。平成12年度に至りますと、これが法律ができたということで、一番下に合計欄がありますが、約21億6,000万円という補助金をいただくことができました。前年度の年度当初に比較しますと、補正を入れない5億8,000円という数字と比較しますと、約4倍近くの伸び率を示したということであります。平成13年度も一番下に書いてありますが、補正予算2億8,000万円の補正を認めてもらいましたので、合計すると28億5,000万円という数字であります。ただ、年度当初の予算としては、21億円と事務費を合計しますと出てきますすが、25億7,494万円ということで、前年度比で比べると、約4億円弱伸びたということであります。平成14年度も、補正予算が今審議されていると思いますけれども、3億円強の補正予算が認められるという前提で計算しますと、33億円くらいの数字になる、年度当初で計算しますと約29億9,845万円ということで、30億円弱の予算ということになっております。平成15年度は、国会審議はこれからですけれども、合計で35億円の予算が認められているということであります。確かに、法律が制定される前に比べますと、関係者の努力によって、飛躍的に、国の補助金が増額されたという評価はできると思います。しかしながら、それをはるかに上回る勢いで事件数の増加というのがあります。
 必ずしも事業が円滑に遂行されていないという幾つかの問題点があげられると思います。平成14年度は、年度当初で約30億円くらいの予算でありました。これに償還金という、既に事件決定をして援助をして毎月毎月分割で返してもらうわけですけれども、その償還金が年度当初で30億円くらい予定したわげでありますが、事件数、特に自己破産事件が中心になりますけれども、非常に全国で増加しているということで、従来の事業の遂行が不可能になるということが予測されました。したがって、平成14年度は、当協会始まって以来の事業実施の方法でありますけれども、2つの実施方針を立てました。1点目は、代理援助に限定されますが、各支部は四半期ごと、3か月ごとの計画を立てて、事件の決定件数を各支部に割り当てるというやり方をしました。これで1年間の事業を何とか実施していこうという計画を立てたわけであります。2点目は、これも自己破産ですけれども、自己破産にもいろいろ種類があり、利用者の方々の中にいろいろな類型が考えられるので、優先順位を各支部において決めてもらいたい、そしてその優先順位に従って自己破産の援助決定をしてほしいという指令を、平成14年4月4日付けで、本部から全国50支部に指示させていただきました。その結果、支部はどういうことをやったかということですが、資料10-4、これは昨年の11月29日付けですけれども、各支部の現在の自己破産に関する取扱い状況について本部からアンケートをいたしました。残念ながら事件数に見合った予算が確保できないということで、各支部では様々な工夫をいたしまして、まず一番左の方ですけれども、生活保護受給者に限定しようということで、栃木を始め大阪などもそうですけれども、全国13支部が、自己破産の援助は生活保護受給者に限定するという取扱いで、平成14年の事業を実施しております。要件を前年度に比べて厳格化しようと、これは扶助の縮小を意味することになるわけですけれども、予算管理をしなければいけないということで、29の支部が厳格化しております。4支部だけ御説明いたします。まず東京は、前年度の資力要件、一定の経済的な収入要件というものがあるわけですけれども、それ以下でなければいけないという経済的弱者に対する援助ということで資力要件があるわけですが、東京都支部は前年度の80%、つまり収入を落としたということであります。家賃等を従来は考えていたわけですけれども、家賃の支払いを考慮しない、あるいは、いろいろ調査をしなければいけないということで、少額管財事件というのが事件の類型としてあるわけですけれども、残念ながら、少額管財事件については援助しないという取扱いをしました。それから、一旦は援助をするわけですけれども、4万円は直ちに返してもらうという取扱いをして事件管理をしたわけであります。山形も同じように、資力は前年度の80%にいたしました。即時8万円償還、約16万円が現状の金額ですから、半額を返していただくという取扱いをしました。それでも件数の枠がないということで、最後は抽選にするという取扱いを決めております。札幌に至っては、会員に対して、これ以上援助はできないということで、持込みの自粛を依頼しました。香川については、優先順位を決めるということで、どういう原因で借入れを起こしてしまったのか、あるいは病気、障害者、就労不能者、母子家庭、こういうものを優先して援助決定したということであります。11月29日のアンケートデータですけれども、その当時、既に申込みは限界である、早ければ昨年12月の上旬に1年間の枠を使い切ってしまうという支部も出てきました。最終的には1月上旬ごろに援助ができなくなる、援助ができないということは、窓口を閉鎖するということを意味するわけですけれども、こういう支部が、アンケートの結果、窓口閉鎖を余儀なくされるという支部が、この時点では出てくるということが予想されました。現在では、幸いに補正予算をいただける、あるいは償還金も6億円くらい伸びるということで、何とか3月末まで実施していけるだろうということを考えております。しかし、大変厳しい事業の執行を現場は強いられているということを指摘できるのではないかと思います。平成15年度も、確かに大変な努力によって、先ほどお話がありましたけれども、公益法人の補助金は見直しでむしろ減額されている方向ですが、当協会は、指定法人ということで増額されました。しかしながら、それを上回る事件数が予想されるということで、大変厳しい事業の執行を強いられるであろうと思っております。
 平成14年度の問題点を4点書かせていただきました。1点目として、十分な援助が実施できない、窓口でお断りするという件数が出てきております。その結果、件数を管理するということは、要件を絞っていくか、あるいは弁護士の単価を下げるという2つの方法しか現時点ではないわけですけれども、援助要件を年度途中で変えなければいけないという事態も生じております。これが2点目です。単身者で18万円だったら援助できたのが、15万円になりましたというのを年度途中で、数か月後には変えてしまうということで、これは、いろいろパンフレットも印刷しておりますので、非常に関係者に戸惑いがあるということが言えます。弁護士の方にも、援助できると思って申請したら、それは先月までの要件で今月は援助できませんということを窓口で説明しなければいけないという事態も生じております。その結果、もういい、扶助には頼らないと公言する弁護士も出てきております。利用者の扶助離れというのが少しずつ始まっている。大変危惧しておりますけれども、こういう問題も生じています。これが3点目です。弁護士がボランティアでやる、司法書士がボランティアでやるということも、一部ではありますけれども、事態として出てきております。4点目として、事務局体制の強化ができません。確かに法律ができて、管理費、人件費が一部補助金として出るようになりました。法律ができる前は、管理費というのは全く出ていなかったわけですけれども、出てきてはおりますが残念ながら一部ということで、支部の強化、人員の増強ができないということであります。事件数は増加するけれども、事務職員体制は前年度、あるいは前々年度と同じであるということで、大変事務局の負担が過重になるという現象が出てきております。各支部から増員してくれという要請があるわけですけれども、残念ながら、我慢してくれと回答しております。
 では、どうしてこういう問題があるのだろうか、あるいは、民事法律扶助法にはそういうような問題はないのだろうかということで検討いたしました。私の方からは、4点御指摘させていただきたいと思っております。まずは指定法人、先ほども事務局の御説明がありましたけれども、指定法人というのは一体どういう法的性格で、どういう問題点があるのだろうかということであります。配られたペーパーの中に、先ほど用語の説明ということで指定法人の説明がありましたけれども、そこにも記載されておりますが、指定法人には、行政事務代行型、国がやるべき事務を代わって担うという形と、民間が本来やるべきだけれども公益性が高い、公共性が高いということで国がバックアップする民間活動活用型と大きく分けて2つあると説明されております。先ほど配られたペーパーの中でも、民事法律扶助法に基づく指定法人は、民間活動活用型であるという御説明になっておりました。法律を読めば一義的にわかるわけではないけれども、少なくとも、国は民間活動活用型と理解しているようであります。したがって、本来、事業費というのは、もちろん公益性があるから援助するけれども、民間団体だから、管理費、組織は自前で用意しろということで、残念ながら管理費は潤沢には出ません。一部補助していただいていますけれども、管理費が制約されるという結果になっているのではないかと思っております。2点目は、補助金事業の限界です。補助金ということで私どもはいただいているわけですが、先ほども御説明ありましたけれども、公益法人に対する補助金は、今、減額される方向に行政改革が行われています。当協会は、指定法人ということで増額されておりますけれども、この議論と無縁ではないのだと思います。これらが大幅な予算の増額を制約しているというように私は理解しております。3点目は、先ほど事務局の御説明にもありましたけれども、我が国の民事法律扶助法というのは、裁判手続に特化しているということが言えると思います。一部、和解等、ADR等もできますけれども、正面からはできません。したがって、その結果、対象事件、対象者の範囲が限定されてしまうという問題があります。そこで、当協会は、自主事業として、その余については財源を確保して、指定事業以外の事業を実施しているというのが実情であります。どういう形になるかは別として、我が国の民事法律扶助事業の発展というのを制約しているのではないかと思っております。4点目は、実施方法の限定です。これは先ほども御説明がありましたけれども、我が国もジュディケアということで、開業している弁護士さんに一件一件お願いする、要件があったらそれを援助決定するということであります。したがって、予算管理が非常に難しい。要件を満たせば援助をしなければいけないということで、予算管理をするためには、年度途中に要件を厳しくしたり、件数を制約したりということをしなければいけない、極めて予算管理が難しい構造になっております。これらを改革しなければいけないのではないかというのが私の考えであります。
 改革課題ですが、これは司法制度改革推進計画に4点記載されておりますので、4つ分類して書かせていただきました。1点目は、対象事件、対象者の範囲の拡大の問題であります。民事法律扶助というのは、社会的な紛争の予防と、迅速かつ適切な紛争解決の総合システムとして位置付けるべきである。裁判手続に限定するだけではなくて、国民の利便性、利用者の利便性を高めるという総合的なシステムとして位置付ける必要があるだろう。その見地から言うならば、行政手続、ADRの手続、更にはその他の法律相談や法律情報の提供ということも扶助事業が担っていかなければいけないのではないかと思っております。アクセス・ポイントの改善に関しましても、扶助という形で制度構想をすべきではないかと思います。2点目は、利用者の負担の問題ですけれども、これも、現在は償還制ということで、立替制度であります。金利はもちろんいただいておりませんけれども、場合によっては、返すのが大変難しい、困難であるという方に関しましては、免除をいたします。そういう免除制度も用意されておりますけれども、原則は立替えということで返していただいております。銀行からお金を借りても、銀行に返すということで、最終的には全部自分が払ったということと同じになりますので、利用者の利用を阻害しているのではないか。確かに財源の問題がありますから、直ちに全面的な給付制がいいかどうかというのは更に議論が必要だと思いますけれども、何らかの工夫ができないだろうかと思っております。例えば、金銭の交付が当てにできる事件については立替制を取るけれども、当てにできない事件については、それぞれの利用者の資力に応じて一部負担金を課して回収するという制度の工夫ができないだろうか、制度の改革ができないだろうかと思っております。3点目は、運営主体の在り方についても、司法制度改革推進計画の中でうたわれております。先ほど申しましたけれども、支部の強化、当協会は民事法律扶助法において、全国均質の事業の遂行を義務付けられております。しかしながら、支部の強化が残念ながら資金不足でできない。結果、均質なサービスも必ずしも十分にいかないというジレンマに陥っております。管理費を含めて大幅な資金の増額が必要であろうと思っております。現在の指定法人、補助金行政の中でこれがなかなか難しいということであれば、組織の見直しも含めて検討しなければいけないというのが3番目の問題であります。4番目は、実施方法であります。これもジュディケアに限定すると、なかなか予算管理ができない、効率的な運営ができない。事業というのは、効率、効果的な運営というのも1つの重要な柱だと思いますが、これがなかなか現在はできません。スタッフ制、あるいはフランチャイズ制、契約制、こういうものを導入すべきである。先ほど御説明がありましたけれども、諸外国で導入されている制度を補充的に導入すべきであると思っております。1つ例を挙げさせていただきます。自己破産事件は、100件やると1,610万円の補助金がかかります。1件16万1,000円ということで、1,610万円がかかる。管理費を仮に100万円といたします。そうすると、100件の自己破産事件をやるためには、1,710万円かかる。大半が国のお金であります。国民の税金であります。これを何とか効率的にできないだろうか。例えば、弁護士3年目くらいの弁護士をスタッフとして雇う。800万円で雇う。そして年間100件やっていただく。東京の場合は非常に迅速化されましたので、年間100年というのは決して難しい数字ではないと思いますけれども、100件やる。そうすると800万円でできる。管理費が仮に400万円かかると仮定した場合には1,200万円ということになります。510万円が節約できます。この節約したお金でさらに事業を拡大していく。こういうような工夫も必要であろうと思っています。今の制度では残念ながらこういう制度を予定しておりませんので、十分な工夫ができない。こういうところも改革する必要があるのだというように思っております。更には、スタッフ制と関連しますけれども、公設事務所、これは刑事、民事も含めて考えておりますけれども、公設事務所の中でスタッフが十分に活躍していただくというような制度も考えるべきである。あるいは、簡易・迅速・低廉な紛争解決である仲裁制度、あるいは調停制度なども扶助事業として位置付けて構築していく必要があるのではないか、このように思っております。
 1月3日の朝日新聞と読売新聞に、リーガル・サービス・センター構想というものが報道されました。多分、リーガル・サービス・センターというのは一部の方々はあるいは御存じだったかもしれませんけれども、全国の扶助の現場を担っている弁護士あるいは司法書士の先生方には、1月3日の新聞で初めて報道に接したのではないかというように思っております。報道では、アクセス機能の充実、あるいは民事法律扶助、公的弁護、消費者問題等の相談業務、こういうものを実施して全国数百か所に拠点をつくるんだということでした。独立行政法人として組織を新たにつくる、国の事業の一部を切り離して独立行政法人をつくるという構想でありました。現在、全国では戸惑いと混乱があり、まだまだ輪郭が見えませんけれども、基本的な姿勢としては正しい方向に向いているのではないかというように個人的には思っております。しかしながら、このリーガル・サービス・センター構想というのは、当協会が現在自主事業として行っている犯罪被害者の援助、あるいは外国人に対する援助、その他もろもろの自主事業もいろいろ検討の上、本来事業として構想すべきではないのだろうか。先ほど申しましたけれども、仲裁機能やあるいは公設事務所の設置運営というようなことも検討すべきである。最後は、国民への法律情報の提供というような事業も担う幅広い事業を実施する団体として構想すべきであるというように思っております。まだまだこれからの議論だと思いますけれども、正しくこれが制度設計され、実現するということになれば、国民の民事、刑事を含めた司法アクセスというのは大幅に改善するというように思っております。問題点もあります。10点問題点を挙げさせていただきましたが、実は、「法律扶助だより 79号」という、一昨日でき上がったばかりのものがあります。その8ページに私のつたない原稿でありますけれども、「法律扶助制度改革の現状について」ということで、これはあくまでも個人的なペーパーで、何ら当協会で組織決定されているわけではありませんが、この独立行政法人構想について議論をさせていただきました。9ページの5の「リーガル・サービス・センターの問題点」に10点記載しておりますので、後で御覧いただければと思っております。様々な留意点、問題点がこの構想にはあると思っております。しかし、十分な関係者の議論を積み重ねて、速かに制度設計を提示するということが必要なのではないかと思っております。
 当協会の方でも、実は、この報道を受けて議論を始めました。正式に資料を用意して議論をしたのは、1月22日であります。つい数日前ということでありますけれども、理事会で議論をし、全国の50支部の支部長と関係者が集まる70人ぐらいの会議ですけれども、支部長会議、事業運営会議と申しますが、この会議でも初めて正式にこの問題を取り上げ、議論いたしました。その議論の内容を若干御説明したいと思っております。まず、理事会の方ですけれども、当協会の理事というのは25名おります。弁護士の理事が12名、弁護士以外の理事が13名、過半数は弁護士以外の理事で構成されております。司法書士会からも理事の派遣をいただいております。理事会の議論を何点か紹介しますと、司法制度改革審議会の意見書を読むと、公的弁護というのは1つの運営団体が行うということであるので、この構想は民事も含まれた構想であるけれども、自然な流れなのではないか、扶助を拡充すべきであるし、構想自体は自然な流れであるという積極的な評価がありました。国民の権利性の向上という観点から言えば、構想は否定すべきではない、当協会がこの構想の中に積極的に参加し、発展的に解消するというような気持ちがあってもおかしくない、協会のノウハウを投入すべきであるという意見もありました。国の側が、当協会がこれまでやってきた苦労をきちっと理解する、その上で現在の50の支部、当協会が行ってきた事業、あるいは弁護士会の協力、この重要性、あるいは苦労というのを十分理解した上でこの構想に協力すべきではないかという意見がありました。一方で、慎重な意見も出ました。扶助の拡充ということについてはもちろん異論はないけれども、独立行政法人が今まで当協会や弁護士会がやっているのを全部やるんだと、これは報道自体が若干フライングもありますし、正確でない部分もあるのかもしれませんけれども、そういう構想だということであれば、弁護士会の空洞化が生まれるのでないかというような意見も出されました。当協会としては、現時点で態度表明ができるわけではありませんけれども、慎重に検討していこうということになっております。全国50支部、扶助を現場で支えている支部長が集まった会議でありますけれども、この会議で出た議論を若干御説明させていただきます。一体どうしてこんな構想が出たのか、司法制度改革審議会の意見書に正面から書いていないではないか、なぜこういう構想が出てきたのか、その脈絡というのを十分協会としては検討していくべきではないか、そういう意見が出ました。いきなり独立行政法人構想ができたからそれに乗るということではいけない、現在指定法人ということでわずか数年しか経っていないわけですけれども、指定法人で一体どこまでできるのか、何ができないのか、独立行政法人であれば何ができるのか、その点をしっかり見極めた上で考えていくべきであるという意見が出ました。独立行政法人だったら、今までの問題が一気に解決するのだとはとても思えない、事業費の確保、あるいは管理費の確保の問題1つ取っても、一気に解決するとは思えない、独立行政法人だったらすべてがラッキーだということになるのかというような御意見もありました。この構想というのは危険なにおいがする、危険な心配があるという意見も出されました。弁護士の紹介、過疎対策あるいは公的弁護、法律扶助、今まで弁護士会や法律扶助協会が担ってきた事業ばかりではないか、これを独立行政法人がやる、国家機関がやるということは、何か別の思惑があるのではないか、こういう意見も出されました。構想自体の狙いがわからない、これでは、地方に持ち帰って、現場に持ち帰って、扶助を担当しているたくさんの方々がいるわけですけれども、議論ができない、情報が全く足りない、そういう御意見もありました。すべて限られた情報の中で輪郭すら現在見えておりませんので、それはやむを得ないのだろうというように思っております。当協会の今後ですけれども、当協会も、協会の側として、積極的にこの構想についての問題点、あるいはどういう制度設計が必要なのか、これからですけれども、検討していき、全国にその議論を深めていって、今後、協会の方針を、いつになるかわかりませんけれども、方向性を決めていきたいと、そのように思っております。
 最後ですけれども、司法制度改革推進本部というのは来年の11月30日で解散するという予定が立っています。抜本的な改革というのは、あるいは改革の議論というのは今しかきっとできないのだろう、来年の12月になれば、実はこういう問題もあったという議論はしても、大きな議論にはきっとなっていかない、そういう不安があります。まだまだこの構想についてもわからない点がありますけれども、もし、国民の利便性が今まで以上にはるかによくなる、大幅に改善されるということであれば、当協会は組織の見直しも含めて議論しなければいけないんだ、そのように思っております。
 以上です。

【高橋座長】 どうも、御説明ありがとうございました。それでは、討論に入ります。大体3時25分ぐらいで休憩を取りたいと思いますが、何か資料に関する質問がございますか。

【三輪委員】 幾つか質問というか確認したい点があります。説明いただいた順で、まず小林参事官が説明された諸外国の法律扶助制度の場合、フランスですが、ただ今の説明、資料1と2ですが、これによると、裁判扶助局という大審裁判所に設置された機関が当たるという説明がされています。私のこれまでの理解によりますと、フランスの法律扶助制度というのは、訴訟救助の制度を延長したようなものであったように理解していたわけですけれども、実際、裁判所が担当するのは何かというと、法律扶助を決定するという段階での関与だったように思われるわけです。この資料1の下の方を見ますと、フランスのところですけれども、司法省が予算を弁護士会に配分して、弁護士会を通じて弁護報酬を払うというようなことが記載されていることからもわかるように、法律扶助全体の組織というか運営ということは、名称の問題だけではありませんけれども、必ずしも裁判所が独占しているというわけではどうもなさそうで、この資料1に書いてある裁判扶助の運営主体、運営組織が裁判所だということについて異論を申し上げるわけではありませんけれども、制度自体のイメージとしては若干違うような気がするわけです。そういう理解でよかったでしょうか。

【小林参事官】 それはそういうことだと思います。今御指摘のとおりではないかと思います。

【高橋座長】 私もそう理解しています。

【三輪委員】 続けてもよろしいですか。次は公的弁護の方で説明いただいたところでちょっと説明がわかりにくかった、あるいは聞き落としていたのかもしれませんので、1、2点確認させてください。資料で言いますと資料8になりますが、特に私がわからなかったのは、資料8 - 4の公的弁護制度の運営主体について説明していただいた部分ですが、公的弁護制度検討会でいろいろ議論されているのは大変良いことだと思いますし、これから良い議論を続けていただきたいと思いますが、司法制度改革審議会意見の読み方をどうするかという部分についてちょっと気になりました。というのは、この資料8 - 4を見ますと、運営主体の事務というのと運営主体の組織というのを分けて審議会意見を分析されておりますが、順番が資料8 - 1などにあります審議会意見と比較してみると、適当に組合せを変えておられた結果、ちょっとわかりにくくなっているような気がします。その1つは、資料8 - 4の運営主体の最初に書いてある審議会意見ですけれども、弁護人の選任・解任は、国選弁護の場合と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。この上記機関というのは、「運営主体の組織」の項の下に出ている「公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関として適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである」という、その機関だろうと思われますね。これは間違いないと思いますが、そうすると、この上記機関というのは、「公的資金を導入すべきような公正中立な機関」であると、あるいはその次に出ています「運営だとか監督等の在り方については十分検討しておかなければいけない」という意見が出されておりますけれども、要するに、監督を受けるような機関だということになるわけで、そういう理解でよろしいだろうと思いますけれども、その点確認させていただきたいと思います。
 次にもう一点、最後の1点ですけれども、弁護人の選任・解任は裁判所が行うのが適切で、それ以外の運営に関する任務はその上記機関、公正中立な機関が行うべきだというように書いてあるのを素直に読むと、弁護人の選任・解任は裁判所、それ以外は別の機関がやるのだというように読むのが一番素直だろうと思います。解釈にはいろいろ幅があっていいとは思いますが、先ほどの説明だと、それ以外の運営に関する事務について、上記機関が担うものということについてどんな説明をされたのか、ちょっと聞こえなかったような気がいたしますし、その点の理解についての議論も、何か錯綜していたように思われます。そういった観点から、これを素直に読むというか、それ以外に読みようがないようにも思われますが、弁護人の選任・解任は裁判所、それ以外の運営に関しては公正中立な機関という形で、その事務分担を分けているのだと、その仕事の内容においても、裁判所が弁護人の選任・解任をやるというのは極めて適切だと思いますが、それ以外の運営の実態の事務というのは、どちらかといえば行政作用に属するもので、裁判所がやるということにはならないのではないかというように読めますが、先ほどの説明はそういうように理解してよかったのでしょうか、その点をお尋ねしたいと思います。
 以上です。

【落合参事官】 第1点目でございますけれども、委員御指摘のとおり、私も読んでおります。第2点でございますけれども、貴重な御意見をいただきましたので、御指摘の点を我々の検討会でも活かしていきたいと思っております。
 以上です。

【飛田委員】 ただ今の説明をお伺いしておりまして、最初の御説明と両方加味して考えていきますと、私たち司法アクセス検討会として、利用相談窓口、それから法律扶助を含めて、これから国民がと言いましょうか、我々が司法と関わる接点の仕組みをどのようにするべきか、民事・刑事を含めての全体のグランド・デザインをここの検討会で検討するという必要性があるのではないかという御提案にも受け止められたのですけれども、その辺の受け止め方、認識はこれでよろしいのでしょうか。

【小林参事官】 刑事の公的弁護制度の検討は公的弁護制度検討会で検討を進めていき、アクセス・ポイント的なところ、民事法律扶助の拡充と刑事との関係でその運営主体についてはこの検討会で検討を進めていくということになりますが、先ほど来、藤井専務理事からも御指摘があったように、単に法律扶助は法律扶助というだけではなく、諸外国ではもう少し大きな視点で考えられているのではないか、それから、アクセス・ポイントと言っても、単に民事だけのアクセス・ポイントではなくて、刑事の問題についても解決しようではないかという視点で考えられているのではないかということで、そういった大きな視点を念頭に置きながら、御検討いただく必要があろうかと思います。

【高橋座長】 我々もいい意見を出せれば出したいと思います。

【西川委員】 今、藤井専務理事から御説明があったリーガル・サービス・センター構想というのは、非常に興味がある構想だと思いまして、特に民事と刑事の両方を扱う機関として設計することによって、事務費等の合理化等を図ることができるでしょうし、いい制度だと思いますが、その中で法律扶助協会に1 点質問があるのですけれども、ジュディケアではなく、そもそもスタッフ制にすれば、今よりももっと低コストでサービスができるのだろうと思いますが、現時点において、弁護士をスタッフとして雇うということをしていない理由は何なのかをお伺いしたい。それから、小林参事官にお伺いしたいのは、韓国の制度というのは非常に参考になるだろうと思いますが、この公益法務官というのは、法曹資格を持っている人だろうと思いますが、その辺り、公益法務官と職務弁護士との役割分担と言いますか、この辺りがどうなっているのか、人数部分の配置も随分違う気がするのですが、何か理由があるだろうと思います。以上2点、質問いたします。

【藤井専務理事】 それでは、まず、私の方から御説明させていただきます。民事法律扶助法の下では、事業をどういうふうに実施するかという、業務規程と言いますけれども、業務規程というものを協会が作成し、法務大臣の認可を受けるという取扱いになっております。つまり、業務の仕方というのも、法務省の監督の下におかれています。この業務規程の中で、事件の代理援助の決定というのは、ある事件があって、要件を満たした場合には、1件辺り幾らと決まっております。例えば自己破産を例に取りますと、債権者の数で若干違ってきますけれども、10者未満程度であると、実費が現在では3万5,000円、それから着手金が12万円、これに消費税がつきますので、合計すると、16万1,000円です。これを勝手に、あなたの場合は5万円にしましょう、あなたの場合は10万円にしましょう、あるいはこれを30万円にしましょうということができない仕組みになっています。スタッフ制というのは、もともと給料を毎月幾ら、あるいは年俸幾らと決めます。忙しいときにはたくさんやってもらう、若干余裕があれば、別のことをやってもらうということですが、これを正面から業務規程の中では認めていないんです。

【西川委員】 法律上認められていないということですか。

【藤井専務理事】 業務の仕方自体でですね。ただ、東京都支部だけですが、こういうシステムが必要だということで、試験的ですけれども、嘱託弁護士というのを6名雇っています。毎月45万円の給料を払って、常勤ではありませんけれども、いろいろ事件をやっていただくということで効率化を図っています。この45万円の出し方ですが、給料で出すというのはできませんので、自己破産を月に2件やってもらうわけです。そうすると、16万1,000円になりますので、そこで32万円ちょっとが出てくるわけです。でも、45万円だからまだ足りないので、あとは調査事件をやっていいただくとか、法律相談をやっていただくということで、いろいろジュディケアの中で単価を積算しまして、45万円強になって毎月払うというような工夫をしているわけです。私が先ほど説明させていただいたのは、ジュディケアに代わってスタッフ制をやるという趣旨ではなくて、全国の弁護士が基本的に担う。これが利用者の側からとっても、利便性からいってもそれが必要だと思います。ただ、それだけでは効率化も図れないし、過疎問題の解消もできないということで、公設事務所をつくって、スタッフを雇って、しかも効率的な、先ほど弁護士3年目で800万円と言いましたけれども、これは極めてリーズナブルな、当業界の中ではですね。高い安いは若干御議論があるかもしれませんが、仮に800万円としても、事務費を入れなければ1,610万円、つまり半額で100件の事件に対するサービスの提供ができる。これは非常に粗い設定ですけれども、細かい議論はしなければいけないけれども、こういうスタッフ制の有利な点も検討しなければいけないだろうと思っています。それと、実はコントラクトというのも、東京都支部ですけれども、弁護士会がつくった公設事務所とは契約をしています。これも事業費を何とか節約しようということで、今、言いました1件当たりの単価というのは業務規程で決まっていますので、自己破産を例に取ると16万1,000円払いますが、2割を法律扶助協会の方に納付金ということで戻してもらうということで、この戻ってきたお金で更にサービスの提供をする、事業費に当てる。こんなやりくりを現在、公設事務所2つとしか提携しておりませんけれども、こういうコントラクトということも必要だろう。更には、フランチャイズはやっておりませんけれども、専門事件については専門認定をした上で、ある程度多様な事件を事務所と契約をして、その事務所にお願いする、こんな事業執行の工夫というのが必要ではないか。このように思っております。

【小林参事官】 2点目の御質問につきましては、多分、亀井委員の方が詳しいのではないかと思います。

【亀井委員】 公益法務官というのは、韓国では兵役があるので、修習生になって卒業するときに、まだ兵役の義務を負担していない人たちがいるので、そういう人たちに兵役の代わりに公益法務官に就職してもらいます。それが全体で大体120人くらいです。3年の任期で、大体半分の五十数人が過疎地へ派遣されるという形で、給料制です。給料は、たしか兵役の代わりに行くので、兵役に近いような給料をもらっていると聞いたことがあります。修習を終えて3年間ですから、大変若い人たちです。公団所属弁護士というのは、別に公団がスタッフとして募集した人、20〜30人です。この資金は昔の金額ではないかと思うのですが、2月にもう一回調査してきますが。当時は18億円だったんですが、今はどうも記録を見ると、もっと多いのではないかと思うのですが、いずれにしても、25、26名のスタッフ弁護士と、120人くらいの公益法務官だけで扶助事業を全部やっている。刑事も民事もですから、大変忙しくて、なり手が余りいないと聞いています。

【飛田委員】 お尋ねしたかったのは、自己破産の単価の問題でございますが、16万1,000円ということをお伺いしましたけれども、具体的にはどの程度の仕事の量なんでしょうか。

【藤井専務理事】 弁護士の業務内容ということですか。最近は自己破産の事件が急増しておりますので、平成13年度で一般事件を初めて突破して、16万件強。平成14年は多分、21万件とか、22万件、24万件という数字がもう出ているんですけれども、そのくらいで急増している背景があります。いろんな経済事情がありますけれども、事件としては急増している。そこで、東京地裁を中心にですが、今、非常に簡素化しております。昔は1件1件、30分くらい、審尋、面接をやって、もちろん、弁護士も同行するわけですけれども、そういう形で1件1件対応していったんですけれども、事件数の増加ということで、東京地方裁判所の方で改革をして、弁護士が代理している事件については本人は来なくていいということで、弁護士が事前にチェックしておりますので、非常に簡素化された。最終的に個人の場合は責任を免除してもらわなければいけないわけで、その面接審尋と申しまして、面接があるんですが、これも集団化されたり、あるいはかなり大量に行われるということで、裁判所に申立てをしてから終わるまでの期間というのは、3か月ないし4か月くらいで終わってしまうということがあります。
 弁護士の場合は、まず受任をして、受任通知を出します。債権者が10者、あるいは20者ということが想定されるわけですけれども、その中で債権者との交渉をする。それから、こういう方々というのは、一体自分が幾ら借りて、幾ら返したかというデータを持っておりません。したがって、業者の方に過去の取引履歴の開示を求める。これは最近は比較的スムーズに出てくるようになりましたけれども、その中で利息制限法に基づいた本来の残元金は幾らかという計算をします。こういうような資料を集めて、現在の本人の負債額を確定し、申立てをする。この作業が、結構業者との交渉もあったりしますので、なかなか大変である。更には、最近はヤミ金という、10日で3割、4割という、背景に暴力団があるかもしれませんけれども、こういう事件も急増しております。10万円借りても、ぶっ殺すというような脅しが毎日のように入る。こういう対応も弁護士、比較的弁護士が入ると、自分たちも出資法違反の犯罪をやっているということを知ってやっていますので、弁護士が入ると比較的静かになるという傾向がありますけれども、こんな対応をする。申立て前の対応が、どういうふうに評価するのかわからないけれども、結構大変である。こういう方々は、ほとんど資料を自分で持っていないということなので、弁護士の側がある程度いろいろ資料の準備をするということになります。その作業が、弁護士、司法書士は、受託通知というのを出しているようですけれども、これによって本人への取立てが止まるものですから、これが非常に大きいんです。したがって、弁護士代理がどうしても必要だということになるわけですけれども、その準備作業が結構重要で、手間暇かかるかという気がします。その結果、弁護士が一旦チェックをしている。特に法律扶助協会は審査もしますので、マルフ事件と言って、東京地裁の場合は簡単にOKという形で破産決定を出していただいているわけですけれども、法律扶助協会の事件というのは、法律扶助協会も審査委員という方々が別に審査して援助決定しますので、それと弁護士の準備ということで二重のチェックがあるので、裁判所も、東京地裁では非常に簡易に行っていただいている。裁判所に乗ってしまえば、あとはそんなに手間暇は東京地裁の場合はかからない。ただ、全国でこれが行われているわけではないので、地方によって、私もやりましたけれども、横浜地裁はまだ30分の面接があります。事情を説明し、記録をチェックし、追加資料を出して、これも裁判所が統一されていないわけですけれども、結構、膨大な資料を要求される裁判所もあります。ですから、支部によって、若干作業内容が違ってくるんです。準備は大変かなと私は思います。ただ、昔に比べると、裁判所以降の手続は非常に簡素化された。非常に簡便になったということは間違いないです。特に大都市の裁判所においてはそう言えると思います。

【亀井委員】 アクセス・ポイントはここでやるということですけれども、これについても抽象的な議論でいいのか。例えば、私どもは新聞報道でしかリーガル・サービス・センターというのはよくわからないのですが、新聞によるとかなり詳しく、金額まで書いてあるんです。それを前提にして、このアクセス・ポイントを語るのか、または、全然それを離れて言えばいいのかと。その辺どうなんでしょうか。今日、私は、リーガル・サービス・センターの大枠の説明があるのかと思ったのですが、それはもう全然離れて抽象的に議論するということになるのでしょうか。

【小林参事官】 新聞でリーガル・サービス・センターについて政府が検討しているというような報道がありまして、私ども、まだ、具体的にそういう方向性で検討を進めているというわけではなくて、この司法アクセス検討会、それから、公的弁護制度検討会を通じて、さまざまな可能性について検討していきたいと思っているわけです。前回の検討会での御意見も踏まえ、それから諸外国の制度も検討してみた結果、新聞報道にいろいろある中で、民事・刑事を一体として運営をしていったり、あるいはスタッフ制も採用して、効率化を図りながらサービスも多様に提供していくとか、あるいは裁判の前の多様な情報提供から、裁判外の紛争解決も含めてサービスを提供していったらどうかとか、そういう様々な可能性についても、事務局でも検討しておりますし、この検討会でもそういった御検討をしていただきたいという趣旨で、先ほど来、外国の制度等も御紹介して、更にそういうところを検討していただきたいと思っております。あるいは地域の偏在を解消するためにも、こういうものを役立てていくということも可能性があるのではないかとか、あるいは地方団体との連携も可能性があるのではないかとか、そういうような課題というのは、藤井専務理事からの御指摘の中にも、かなり入っていると思います。そもそも、そういった方向性が、諸外国を考えながら、あるいは民事法律扶助の仕組み、法律扶助協会という指定法人の仕組み、そういったものを考えて、そういったものを解決する方向性として望ましいのかどうか。そういったところを、まず、今日、藤井専務理事からも、問題点はいろいろあるけれども、いい方向で解消されるというか、進むということであれば、もっと法律扶助の発展ということも考えたいという御指摘がありまして、まず、そういう大きい視点として方向性が望ましいかどうか、その方向性に進むに当たってどういう問題があるのかという点を議論する必要があるのではないか。例えば何百箇所とか、あるいはそういう具体的な話をここで検討していくとか、予算を幾らにすればいいのかとか、そういう話から始まるのは、事務局としてそういう具体的な構想まであるわけではありませんし、そこから話を始めるのは適切ではなくて、今ある問題点を解消していく、あるいは諸外国においてできているサービスが日本ではまだできていないところがある、あるいは国の責任をもっと位置づけていく必要があるかどうか、そういった大きな視点を検討会で検討いただければ、まず、そこが重要ではないかと思っています。

【亀井委員】 では、意見を申し上げますが、私もこのアクセス・ポイント、法律相談というか、相談業務も、日本でも外国に比べてかなりやっている方だと思います。ところが、縦割でばらばらであるということを前回指摘しましたけれども、この外国の今の一覧表を見てもわかりますように、本来はリーガル・エイドの範疇で相談業務というのは多分始まってきたんだと思うんです。ところが、日本は扶助事業が弱体であったので、行政サービスの方が先行してしまったんです。多分、各種行政サービスとしての相談業務がかなり数多く定着してきている。それが司法に本来結び付くべきものが司法的機能に結び付かないで中途半端に終わっているというところが多分問題になっているのだろうと思います。こういうばらばらな各種行政サービスが悪いというわけではなく、これはこのまま既存で成長していけばいいのですけれども、それをどこかがまとめる組織が必要なのだろうと思います。それは本来、リーガル・エイド組織がやるのが一番いい線なのだろうと思います。その1つが、リーガル・サービス・センターなのかどうか、それはまだ、私もいいのか悪いのかはっきりわかりませんけれども、いずれにしても、そういう統括した組織があって、そこに各自治体とかいろんな行政サービス、例えば弁護士会の相談業務もそこに全部登録をして、そこでネットワークを組んで、振り分け作業をして、それを司法に結び付けるという作業が改めて必要なのだろうと思います。今まではその部分が抜けていたので、サービスはいっぱいあっても、司法へちっとも結び付かないし、そのために司法へのアクセスというのは大変弱くて、中途半端なサービスで終わっていた部分が大変多かったのだろうと思います。そういう意味では、何らかの統括する組織が情報提供をして、そこが振り分け相談みたいなことをする。振り分け相談ですから、ある程度法律相談か否かを振り分ける人でいいだろうと思います。その意味では、弁護士であってもいいし、司法書士であってもいいしというように私個人としては思っています。そういう振り分けの相談窓口、こういうアクセス・ポイントというものをつくって、それでネットワークの集合体の方へ事件を配転する。そして、司法へ行くべきものは司法に結び付けるという作業をしていくべきであろうと思っています。その意味としては、リーガル・サービス・センターがどういう組織になるのかなというのは、私もかなり興味は持っております。その意味では、藤井専務理事が文書の中に問題点として指摘していることがたくさんありますけれども、ある程度それが解消されれば、リーガル・サービス・センターという構想で統括機関を考えてもいいであろうと思っています。

【山本委員】 藤井専務理事のプレゼンテーション、非常に賛同できるところが多かったのですが、現状の点で1点だけ御確認させていただきたい。先ほど、具体的にサービスを、弁護士をどういう形で使うかという議論はあるのですが、先ほどの組織の場合、事務方がどの程度の人員で、どういう形で働いておられるかということも重要なポイントだと思いますので、本部と各支部の選任の事務スタッフがどのくらいいて、どういう形で働いておられるか、ちょっと御紹介いただければありがたいのですが。

【藤井専務理事】 法律扶助協会の組織というのは、全国に50の支部、これは都道府県ごとに一つの支部が置かれています。専任職員がいるのは、東京と、あと2つの支部くらいです。東京には本部があり、これは正確には1、2名のずれがあると思いますが、現在、本部に20名くらいいて、予算原案を作成したり、こういう報告書を作成したり、いろいろやっております。東京都支部、これは当協会で一番大きい支部ですけれども、40名くらいです。正職員と契約職員というように分かれますけれども、それくらいでやっています。大阪が2番目に大きい支部と言えるかもしれませんけれども、10名くらいです。ただ、協会が雇った職員は1名程度です。その余の支部は1、2名の専任というところもありますけれども、大半は弁護士会に委託をしまして、弁護士会が採用した職員の方が扶助を行っております。したがって、当協会は、これも国からいただくスタッフ謝金という管理費ですけれども、これを全国50支部に分配する。弁護士会に委託謝金という形で費用をお支払いするというやり方で、小さい支部は1名というところがありますし、大体2名前後、あるいはちょっと大きくて3名、4名、こんな形で全国で200名くらいで今やっていて、非常に事件数が多いものですから、事務方に対する負担が過重になっている。これが現状かなと思います。

【山本委員】 仮に巷間言われているようなアクセス・ポイントの構想、大々的なものになった場合において、やはり効率化が進むとお考えなのか。そこでは、多分今のような弁護士会、単位会にかなり依存したような運営の仕方というのはなかなか難しくなる可能性もありますので、事業が膨らんでまいりますと、そうすると、専任スタッフをどこかで調達しなければいけない。そういうことによって、コストがむしろ低減するのか、それともかえって管理費用がかかって、コスト・パフォーマンスが悪くなるのか、これは仮説の話なので、余りこういうことを云々していいのかどうかわかりませんが、藤井専務理事の御感触だけをお伺いできればと思います。

【藤井専務理事】 事務局の大幅な拡充というのは必要になると思います。今200人くらいという話をさせていただきましたが、少なくとも1,000人とかいうレベルに、何百か所が正しいかどうか、計画が実現するかどうかは別にして、もし、そういうことであれば、少なくとも200人でできるわけではないので、1支部10人で計算しても500人という数字になります。大きい支部はもっと必要になるので、1,000人とか、そういう体制になるだろうと思います。その費用は、当然コストとしてはかかると思います。だから、大幅な増額が必要ですし、今の予算を抜本的に変えなければいけないと思っています。ただ、いろんな工夫をしていくと、事件の1件当たりの単価というのは、コストパフォーマンスとしてはよくなるのではないかと思っております。したがって、管理費を入れると、総額では、今よりもはるかに大きな予算規模になると思いますけれども、拡充するという観点で、今の制度よりも1件当たりの単価というか、いろんな工夫をすればよくなるのではないかと思っております。

【長谷部委員】 リーガル・サービス・センターの構想の中の特徴としまして、ADRとか、あるいは情報提供とか、そういったところの幅広いものをカバーするということがうたわれておりまして、藤井専務理事の御報告の中でも、そういうところは割合賛同できるというニュアンスであったかと思います。藤井専務理事のお話の中でも、行政手続や各種のADR、その他法律相談、法律情報の提供などにも広げていくべきだということにしても、もう少し具体的に、これはADR検討会ですることなのかもしれませんが、例えば、裁判手続よりもこういうADRにもっと扶助の対象を広げた方が、紛争解決として適切に行われるのではないかと。そういう経験がもしありましたら、具体的に教えていただければと思います。

【藤井専務理事】 これは法律扶助協会、組織で考えたということではなくて、私などが日頃思っていることをペーパーにまとめたりしているものですから、個人的な意見という域を出ないのですが、私、日頃こう考えているんです。今はジュディケアということで代理人を付けて、その費用を法律扶助協会が国のお金をいただいてお支払いするというやり方です。ところが、紛争というのはいろんな形があって、代理人を付けて、きちっと裁判で白黒を付けるという紛争もあれば、当事者を呼んで、中立な方が入って事情を聞いて適切な解決をするというような紛争解決の仕方もあると思うんです。法律扶助協会が、例えばある程度費用があれば、ADRの機関を法律扶助協会の中に設置して、適切な仲裁人なり調停人を選んで、当事者から事情を聞いて、適切な判断をしてあげる。それは経済的資力がなければ、無料で提供する。仲裁人の費用というのはかかるかもしれませんけれども、それぞれに事件として援助決定をして、代理援助をして、両方に扶助要件があるということを前提にすれば、弁護士なら弁護士を付けて代理人として活動してもらうという事件類型もあるかもしれませんけれども、その場合には、2つの費用がかかってしまうわけです。それを端的に仲裁人を選任させていただいて、仲裁人が法律扶助協会の中に設置されたADR機関で適切な簡易・迅速・低廉な処理をするということになれば、紛争の1つの解決ですから、もともと紛争というのは解決を求めているわけですから、その紛争の解決ということではADRを十分利用すべきであるし、そのADRを法律扶助協会の中につくるということであれば、先ほども出ましたけれども、代理人を付けて争うというよりも、紛争の解決に要するコストというのは、非常に低額に抑えることができる。このように思っているんです。

【長谷部委員】 例えば、どういう事件を想定しておられるのですか。

【藤井専務理事】 簡単な損害賠償請求事件ですとか、結構あるんです。そのために少額訴訟という制度も設けられたと思いますし、あれが非常に繁盛しているというか、人気がいいと伺っていますけれども、そういう事件などは、場合によってはADRに親しむ、少額で、割と事情を聞くことによって解決する事件などはそうなんではないんでしょうか。実は、今日も、午前中に現場に立ち合ってきましたが、マンションなりアパートを借りて、敷金を返してくれないという事件が結構あります。敷金は大体2か月分、3か月分だから、50万円以内なんです。それが一部損害を与えたということであれば精算されますけれども、大家さんの方が精算してくれないので、少額訴訟をやるということをよく聞きますけれども、こんなものだって、きちっとした仲裁人が入って、大家さんが負担すべき部分と借家人が負担すべき部分を適切に仕分けして処理すれば、ADRには親しむのではないかと思っています。

【飛田委員】 お話をお伺いしておりまして、この問題を考えていく場合、利用させていただく際の合理的な料金というのは考えていく必要があると思うのですが、そのコストの負担ということに余りにも関心が偏り過ぎることもまた問題だろうという気もいたします。一般的に考えていった場合、暮らしの中で問題に遭遇したときに、私もそういうお話を伺っていて、ある時感じたことがあるのですが、一人の方がまず最初に必要なのは、カウンセリングのようなものが必要な場合が多いような気がするんです。大変混乱してきてしまって、一人の方がもともとの原因がどこかにあるにせよ、2つも3つも複雑な問題を抱えているケースも実際ありまして、一つを片づけてから、もう一つの根っこの問題に行った方がいい場合とか、抽象的な話ですと分かりにくいかと思いますが、まず、カウンセリング的な役割を果たすところがあって、これがリーガル・サポート・センター的な法律によって問題を解決していく、裁判によって解決していくべき問題なのか、そうではないのかということなどを振り分ける仕組みが非常に重要ではないか、アクセスポイントとしては重要ではないかと思っております。社会のこれからの展望としては、今、仲裁には仲裁の、消費者問題などにつきましては、国民生活審議会で少し取り上げていただかなければならない訴権を奪うというような問題点もありましたりいたしますので、個々の何が適切かということについて、また、どうあるべきかということについては、議論を深めていく必要があるのだろうとは思うのですが、全体の在り方としては、よりこれから先、法律をよりよいものにしていく、裁判をよりよいものにしていくということが求められていると思いますのて、そのためには、裁判によって解決するべき問題は裁判に、そうではない問題は今、私ども消費者団体でも一生懸命ADRを2002年から検討しておりまして、幅広い方々と一緒に方向性を探ったりしておりますけれども、そういう動きなどもありますが、とにかく、解決の方法を、道に迷っている方々が自殺に追い込まれたり、生活破綻に追い込まれる前に、どうすべきかということを気軽に相談できる態勢が必要なんだろうと思っております。例えば、組織が独立行政法人がいいのか、そうではない形がいいのかということも大きなテーマであるかと思いますが、私、そのお話をお伺いしながら、みんなの制度ということを考えていく場合には、一つは、アメリカでは随分協同募金的なものが、サポート体制を取っているということもお伺いしますので、もちろん、行政がもっともっと予算を取って、日本の法律扶助の制度というのは大変貧困ですから、そういう意味では返すべきものと、返さなくていいものというのももう一回見直していく必要があると思いますし、予算全体を大きく膨らませていく必要があるのだろうと思いますが、制度自体をどういうふうに国民のものにしていくかということを考えた場合、すべて公的な資金に頼るのがいいのか、あるいは社会を変えるという意味では、自分たちが拠出すれば、自分たちの制度であるという認識も高まる面があるのではないかということも感じております。これは私が別に今の時点では、もっともっといろいろな方々のお話をお伺いして、勉強していかなければどっちがいいとか、こうすべきだというところまで熟したものではないのですが、いろいろな側面から検討する必要があるのではないかと考えております。

【高橋座長】 今日、かなり内容のある資料をいただきまして、まだ、読みこなしておりませんが、実はこう考えたときに、3つくらいポイントがあるのかなと思います。
 従来我々は、司法へのアクセスということで、どこに行けば紛争が解決されるか、あるいは裁判所を使うときにどういうことをすればいいのか、どこをどうたたけばいいかという角度から検討してきたわけです。これが法律扶助とか刑事弁護などに結び付く議論が今日出てきたわけですが、それが本当にどこまでが妥当なのか、そのこと自体として、ざっと考えますと、民事と刑事で分けるのがいいのか、これは分けない方がいいのかというのは、一緒でもいいような気がしますが、他の問題、例えば、先ほど出ましたそういう機関が自分自身で仲裁をするのか、それとも自分自身では和解・仲裁をしないで、消費者団体のところに回すとか、そのようにするのかとか、これはぱっと今日の資料を見ましたら、韓国、フランスは仲裁・和解までするようですが、イギリスはしていないようですね。その辺り、つまり、その事柄自体としてどことどこが結び付くのかという点が一点、そのこと自体としてですね。
 2番目が、この問題、どうしても避けて通れないのが、予算というか、お金がないから困ってくるわけで、十分とは言えないお金をどうすれば効率的に一番よく使えるのか。例えばの話であって結論を出しているわけではありませんが、例えば、民事と刑事は事柄自体としてはばらばらにやった方がいいけれども、予算の効率的配分という意味から一緒にした方がいいのかとか、そのようなことが表と裏で出てきているのではないかと。やはり予算面から、今後日本が十分な予算をこの面に投入できるわけではなさそうだという議論が一つあります。
 3つ目は、少し先走っているのですが、リーガル・サービス・センターの構想が新聞には出ていますから、既にどこかでもう決めていて、それがぱっと出たというフライングなのか、まだ決めていないけれども、どこかで出したというアドバルーンなのかは、どちらかわかりませんが、先ほどの小林参事官のお話ですと、少なくとも、この検討会は、アドバルーン的なものだろうと思って検討しているということですから、そうしますと、独立行政法人、先ほど公的弁護の方ではそこまで議論が進んでいるようですが、先ほど藤井専務理事からもお話がありましたけれども、独立行政法人にするのがいいのか悪いのかという問題があります。独立行政法人にすると、例えば、悪く言う人は、そこは効率性が強調されて、例えば償還金の率をアップしろとか、そんなふうに働くのかどうかという、そういう問題もあるかなと。3番目の独立行政法人がいいのか、指定法人のままでいいのか、あるいは別の名称ですと、リーガル・サービス・センターというのがどうなっているのかというのは、事柄としては次のステップでしょうね。まず最初の2つくらいを中心に、もう少し議論を詰めてみて、しかし、我々は夢を描いているわけではありませんから、実現可能性という意味では、独立行政法人がいいかどうかというのも念頭に置いて議論する。大体こんな辺りではないかと思います。私個人は、もう少し資料をよく読んで、勉強しなければいけないなと思いましたが、今日で決まるわけではもちろんありません。まだ出だしだけですから。
 では、ここで休憩を10分程度取ります。後半は弁護士費用の敗訴者負担の取扱いについてです。

(休     憩)

(3) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて

【高橋座長】 今日の議題の(3)になりますけれども、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」、これにつきまして、今日の資料と言いますか、説明をまず事務局からお願いいたします。

【小林参事官】 事務局の方で用意いたしました資料は、資料11から資料13までです。それとの関係で、お手元に、民訴費用制度等研究会の報告書の関係部分を抜き刷りしたものと、第6回の検討会で配布した検討課題と司法制度改革審議会の意見書の写しを配布しております。それから、資料14は、日本弁護士連合会から、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い関係での資料の御提出がありましたので、それをお配りしております。事務局の方で用意しました資料11から13まで、これらは、いずれも、お手元にお配りした民訴費用制度等研究会のときの検討結果をそのとおりまとめたものです。
 資料11につきましては、弁護士報酬の敗訴者負担をめぐる従来からの積極論・消極論それぞれの論拠の整理という形で民訴費用制度等研究会の報告書に記載されており、それぞれにaからfまで整理されていましたので、それを、左側に「積極論の論拠」、右側に「消極論の論拠」としまして記載してあります。簡単に御説明しますと、積極論の論拠として第1点のaということで「弁護士費用が敗訴当事者から回収されないとすれば、実体法の与えている権利の内容が、訴訟をすることによって(弁護士費用を自ら負担することによって)減殺される結果となり、不公正・不正義である」ということが言われておりますが、対しまして、右側の消極論の論拠として、aのところで、「敗訴の場合における相手方の弁護士費用の負担の危険があるため、訴訟提起、上訴提起が控えられる危険がある。特に勝訴か敗訴かの見込みの立たない事件について、その危険性が顕著である。現実の事件の多くは、証拠調べをして初めて実体的真実が解明されるのであって、当初から勝訴か敗訴かの見込みが容易に立つものではない」、このような整理がされております。それから、bのところで、積極論の論拠としては、「弁護士費用は、現在の民事訴訟においては必要的費用に当たるというべきであり、訴訟に要する費用のうち最も大きな部分を占めるにもかかわらず、勝訴しても自ら負担しなければならないというのは不合理である。また、国民は、弁護士費用も敗訴当事者から回収できると認識しているのが通例であり、弁護士費用の敗訴者負担は国民感情に適合する」。これに対して、消極論の論拠bでは、「訴訟費用は、紛争解決のための共益的費用であって、当事者の各自負担とするのが合理的であるし、本来、弁護士とその依頼者との自由な契約で決定されるべき相手方の弁護士費用について、これを、敗訴という一種の結果責任に基づいて、一方的に敗訴者に負担させるのは、過度な制裁というべきであって合理性がない」、このようにされています。 cのところですが、積極論の論拠では、「弁護士費用を敗訴当事者に対して請求できないとなると、訴訟以外の方法によって法的紛争を解決する弊に陥りやすく、その結果国民を裁判制度から遠ざけることになって、真の権利保護ができない」というのに対して、消極論の論拠としては、「敗訴した場合に相手方の弁護士費用を負担させられることになるのをおそれて、裁判以外の安易な解決方法に走る危険があり、それは、国民の裁判を受ける権利に対する障害となるおそれがある。また、濫訴・濫上訴の防止というのも、その意義が一義的でない上に、実際に濫訴・濫上訴は少ないはずであって、そのような例外的な病理的現象を基に論ずることは当を得ないものである。不本意な和解が強いられるおそれもなしとしない」。dの積極論の論拠には、「敗訴した場合には、相手方の弁護士費用を負担する危険があるため、訴訟提起に先立って勝訴の見込みに関する検討が慎重になされる傾向が進む結果、訴訟前の準備が充実するとともに、濫訴・濫上訴を防止することができる。また、訴訟中においても無用・不当な抗争が避けられ、訴訟の引き延ばしが行われなくなるから審理も促進され、更にコスト面を考慮した合理的な和解による解決も増加する」とされております。一方、消極論の論拠dでは、「一般に勝訴率が低いとされる判例変更を求める訴訟、製造物責任訴訟、国家賠償訴訟、住民訴訟、いわゆる政策形成型の訴訟(例えば、議員定数不均衡是正訴訟、嫌煙権訴訟、法廷メモ訴訟)等については、相手方の弁護士費用を負担させられることをおそれて、その提起が不当に抑制されることとなる。また、社会的・経済的弱者は、ますます不利益を被るおそれがある。これらを救済すべき我が国の法律扶助制度や訴訟救助はいまだ十全とはいえない」とされております。他方、戻りまして、積極論の論拠eでは、「我が国の民事訴訟法、民事訴訟費用法(明治23年法律第64号)が弁護士費用を訴訟費用化しなかったのは、立法当時の弁護士(代言人)が質・量ともに不足していたためであるが、当時と比較すれば、弁護士数が増加し、今後も法曹養成制度等の改革に伴い、大幅な増加が図られるのであるから、訴訟費用化の時期が熟している」とされております。それから、消極論の論拠eは、「本人訴訟率が依然として高く、地域によって弁護士選任の割合が大きく異なる我が国の民事訴訟の現状からすると、全国一律の立法は適さず、弁護士の大都市集中という現状を前提とする限り、本人訴訟率の高い地域の人を不当に不利に扱うという不公平がある」とされております。続いて、積極論の論拠fでは、「訴訟における最大の負担費目である弁護士費用が敗訴者から回収されることとなれば、国民の弁護士に対する訴訟の依頼が増大することが見込まれ、裁判を受ける権利の保護がより厚くなる。また、その副次的な効果として、訴訟事件の増加によって弁護士の業務分野も拡大することが期待される」とされている一方、消極論の論拠fでは、「敗訴者に負担させるべき弁護士費用の額を裁判所が決定することとなれば、本来自由に決定されるべき弁護士費用が事実上公定化ないし定額化されることにつながり、やがて全般的な低額化に陥るおそれがある。これは、弁護士費用の自由契約性にもとるものである。また、訴訟費用となるべき弁護士費用を裁判所が決定することは、ひいては弁護士をして裁判所に従属させる結果となり、弁護士の職務の独立性に対する妨げとなる危険がある」、このように整理されております。(注)のところに記載してあることも、この民訴費用制度等研究会の報告書に記載されていることですが、「なお、弁護士費用(の一部)を訴訟費用とするためには弁護士強制主義及び弁護士報酬の法定化が必要である旨が説かれることがあるが、弁護士費用(の一部)の訴訟費用化は、これらの制度と論理必然の関係に立つものではなく、諸外国においても、例えば、イギリスにおいては弁護士強制主義及び弁護士報酬の法定化が行われていないにもかかわらず少額事件以外では弁護士費用を訴訟費用として扱っているし、ドイツにおいても区裁判所においては弁護士強制主義を採用していないにもかかわらず弁護士費用を訴訟費用としているほか、訴訟費用となる弁護士費用が法定されているものの、当事者間ではこれを超える報酬契約も許容されている」、このように整理されております。これまでの議論の中にも、こういったような指摘が様々ありまして、平成9年の民訴費用制度等研究会でもこのような論拠の整理がかなりされておりますので、御参考までにまとめたものです。
 それから、資料12、これは、負担させる弁護士費用の一部の額の決定方式についても、この当時検討されておりますので、それについて御紹介する趣旨でまとめたものです。AからIまで、多様な方式を当時検討されたようです。Aが「裁判所が敗訴者に負担させるべき金額を裁判所の裁量により査定して決定する方式」という方式で、「外国にはこのような立法例があり、我が国でも民事訴訟費用等に関する法律第2条第11号において、裁判所の付添命令に基づいて選任された弁護士の報酬及び費用は裁判所が相当と認める額とする旨規定されており、実定法の体系にも適合し、判例の蓄積によって基準が明確化されることも十分期待できるという意見があった。もっとも、民事訴訟費用等に関する法律第2条第11号が定めるのは限定された場合であり、かつ、その性質上報酬・費用の全額を定めるものであって(その算定は、最判昭和37・2・1民集16巻2号157頁にあるように諸般の事情を考慮しなければならない。)、一部を負担させる趣旨ではない。また、この方式には消極論の論拠fが懸念する問題があり、更に裁判所の決定に不服がある場合に新たな副次的紛争を醸成するおそれもあるとの反論もあった。研究会では、積極的な支持を得るには至らなかった」、ここまで書かれております。②が「上限の金額を法律等で定め、その範囲内で裁判所が決定するという方式」ですが、これについては、民訴費用制度等研究会では、「負担額についての予測可能性があり、学者委員の一部に賛成があった。しかし、この方式は消極論の論拠fが懸念する問題(特に低額化のおそれ)を、より強く顕在化するものであるとの反論があった」とされております。③として、「弁護士費用のうち着手金部分を敗訴者に負担させる方式」というものも検討されております。「この方式は弁護士費用の自主契約性を尊重するという利点を有し、日本弁護士連合会の報酬等基準規程があることから、ある程度予測可能性もある。しかし、現実に支払われた着手金の額を正確に把握することは実際問題として困難であるし(報酬契約書の作成が慣行化されるまでには熟していない。)、報酬等基準規程の定めも、弁護士報酬の性質上、幅のあるものとなっているため、負担額の予測可能性も必ずしも高いものではないとする反論が弁護士委員を中心に主張された」とされています。④として、「現実に支払われた着手金ではなく、日本弁護士連合会の報酬等基準規程に定められた「あるべき着手金」の額を敗訴者に負担させる方式」が検討されております。この括弧内には「(この金額としては報酬等基準規程第17条第2項が30%の範囲内での減額を認めていることから、30%の減額をした金額で決定する方式を含み、さらに、日本弁護士連合会において、報酬等基準規程とは別途に敗訴者負担となる弁護士費用となる弁護士費用の基準を定める方式を含む。)」とされた上で、その検討結果ですが、「現実に支払われた着手金がそれよりも少なかった場合(あるいはタイム・チャージで弁護士報酬額を定めた場合)にも右の方式で相手方に負担させてよいか、日本弁護士連合会の報酬等基準規程が改正される都度これに連動させることが可能ないし適当であるか、さらに、着手金の基礎となる経済的利益を算定できない場合に報酬等基準規程第16条によって800万円としてよいか(民事訴訟法及び民事訴訟費用等に関する法律上は、訴額算定が不能又は極めて困難な場合には訴額は95万円とみなされていることと整合しないという問題も生じる。)、その場合に額の増減を裁判所が行うのが適当か等の問題があると指摘され、弁護士委員の一部からは直ちに賛成できないとの意見があった」とされています。⑤として、「日本弁護士連合会の報酬等基準規程に依拠せず、独自に率を算定する方式」とされております。これは、「訴額は、受訴裁判所が判断するものであるから、訴額に一定の率を掛ける方式は予測可能である。訴額に段階を設け、掛ける率を異にするスライド制もこの方式の範疇となる。訴額算定が不能又は極めて困難な事件については、民事訴訟法及び民事訴訟費用等に関する法律では訴額が95万円とみなされるが、それに弁護士費用の一部負担を連動させることは適当でないとの反論があった」とされています。 ⑥として、「例えば、経済的利益ないし訴額が300万までは20万円、300万円から1,000万円までは40万円というように定額で敗訴者負担額を定める方式」というのも検討されています。これについては、「弁護士報酬の算定方式が経済的利益に対するスライド制であることと整合しないという反論があった」とされています。⑦として、「ドイツのように、敗訴者が負担すべき弁護士費用を弁論、証拠調べ等の手続ごとに法律で細かく規定する方式」も検討されております。これについては、「ドイツと異なり一部負担であるのに、わざわざ詳細な規定を設けることは、立法コスト上問題があり、また、弁護士報酬の算定方法がこのような方式になっていないにもかわらず敗訴者負担とされる額だけにこの方式を導入することには違和感が残る。また、この方式は、消極論の論拠fが懸念する問題を多く抱えるものであるとの反論があった。研究会では積極的な支持はなかった」とされております。Hとして、「CないしGの方式によりつつ、敗訴者負担額に上限を設けること」、例えば、日本弁護士連合会の報酬等基準規程の着手金を参考にしながら決めたり、訴額に一定の率をかけたりする方法を採用した上で上限を設けることの検討ですが、これについては、「消極論の論拠aが指摘する提訴萎縮効果を緩和させることを慮ったものである。消極論の論拠fの指摘(特に低額化のおそれ)との調整が必要であるとの意見があった」とされております。⑨として、「請求認容額に一定率を掛ける方式」も検討されております。訴額というのは訴えたときの訴額ですが、判決で認められた請求認容額に一定率を掛ける方式で、これについては、判例の傾向、不法行為の判例ですが、その傾向に添うということで、「判例の傾向に添うという利点があり穏便な変更となるだろうが、もとも請求認容額のない勝訴被告側の弁護士費用の取扱いが困難となるという問題があり、原告・被告とで区別しないという研究会の方針にも合致せず、さらに、確認訴訟、形成訴訟の場合に基準として対応できないという問題点が指摘された」、このようになっております。
 次に、資料の13です。これは、「弁護士報酬の一部負担に関する問題について立法技術上、検討すべき事項」として、論点が整理されているものです。1ページ目は、左側に「問題」とあるところに、「特定の審級に限って導入することとすべきか」ということで、上告審、最高裁判所の事件に限定するか、あるいは控訴審又は高等裁判所以上の事件とするか、地方裁判所以上の事件とするかといった論点が取り上げられたようです。これに対して、◎のところでその検討結果が記載してありますが、「新民訴法で導入された少額訴訟には導入するべきではないとする点では意見が一致した」とされております。それから、2つ目の◎ですが、他の簡易裁判所、つまり、少額訴訟以外の簡易裁判所の事件について導入すべきかついては、意見が分かれたとされているところです。3つ目の◎で、「控訴審以上の事件又は上告審のみの事件に限定すべきであるという意見はなかった」とされております。次に、「上訴された場合をどのように規律するのか」、「訴訟代理人が複数選任された場合をどうするか」、「共同訴訟において当事者本人が複数の場合をどうするか」ということも検討されたようです。これらについては、論点の指摘がいろいろありまして、審級ごとに敗訴者負担額を上乗せするのか、あるいは同一弁護士が上訴審をも担当した場合は減額するのか、訴訟代理人が複数選任された場合に、ドイツのように負担額は1人分に限るか、共同訴訟で複数当事者が同一の訴訟代理人を選任したときは、1人分とするか、複数人分とするかといった論点が検討されたようです。これらについては、◎のところで検討結果として、「立法政策の問題ではあるが、公平の観点から考える必要があろう」との指摘がされておりました。それから、「訴訟費用の枠内で考えるかどうか」、つまり、これは民事訴訟費用法に言う訴訟費用等との関係をどうするかという論点も検討されたようです。それにつきましては、敗訴者が負担する訴訟費用の中に弁護士費用の額を組み入れる方式、つまり、弁護士費用を含めた訴訟費用全体について裁判所が負担割合を定めることを意味する方式、それと、訴訟費用負担の定めとは別に弁護士費用の敗訴者負担額を考える方式、つまり、その他の訴訟費用の負担割合とは別の割合を弁護士費用について定める方式、この2つの可能性について検討されております。その検討結果について、◎で「前者で「弁護士費用につき9対1、その他の訴訟費用につき7対3」という定め方が適法と解されるならば、差異は解消されることになる」。2つ目の◎として、「仮に弁護士費用の敗訴者負担額を裁判所の裁量に委ねる方式を採用するのであれば、一度裁量で定められた額につき再度負担割合を乗ずることは裁判所の裁量が2度にわたって行われることになる。したがって、裁判所の裁量に委ねる方式は、他の訴訟費用の外で考える方式になじむものであろうという意見があった」とされております。2ページ目は、審議会の意見書でも問題にされております「訴訟の提起を萎縮させないための方策」として、どのような議論が行われたかを整理したものです。その検討結果について、研究会での検討状況等は右側に記載してありますが、第1として、「裁判所が政策形成型の訴訟と認めるときは敗訴者負担を免除するという方式」、第2として、「労働事件、行政事件等のように類型を設定して、敗訴者負担を排除する方式」、第3として、「政策形成型の訴訟の提起は、法律扶助ないし公的機関等の援助のもとに行われるべきものであるとの意見」、このような意見が述べられたようです。続きまして、◎で書いてありますが、「必ずしも立法技術上の問題ではないが、いわゆる政策形成型の訴訟、すなわち、ある程度敗訴を覚悟した上で一定の政策ないし世論形成を目指す訴訟に対する影響を考えるべきであるという意見が一部の委員から有力に述べられた」。次の◎で、第1の方式、つまり、「裁判所が政策形成型の訴訟と認めるときには敗訴者負担を免除するという方式」に対しては、「裁判所の裁量の委ねることにつき、消極論の論拠(弁護士費用が公定化ないし定額化され、やがて全般的な低額化につながるおそれがある。弁護士を裁判所に従属させ、弁護士の職務の独立性に対する妨げとなる危険性がある。)が妥当し、また、原告敗訴でありながら敗訴者負担を免除することは裁判所に対して困難な判断を迫ることになることが指摘された」とされております。次の◎で、第2の方式、つまり、「労働事件、行政事件等のように類型を設定して、敗訴者負担を排除する方式」に対しては、「ドイツやフランスのように特別裁判所が設けられているところでは困難がないものの、全ての事件を通じて裁判所が取り扱う我が国の制度になじむかという点が指摘された」とされています。第3の方式、つまり、「政策形成型の訴訟の提起は、法律扶助ないし公的機関等の援助のもとに行われるべきものであるという意見」については、「法律扶助等の援助を行うとしても、扶助の要件として「勝訴の見込み」が必要である以上、いわゆる政策形成型の訴訟であってもその要件を充足する必要があり、そのような訴訟であるからというだけで要件を緩和することが適当かという問題点が指摘された」とされております。最後の◎ですが、「一般の訴訟についても資力に乏しい原告に対する影響という問題がある。例えば、訴訟救助を受けた原告が予測に反して敗訴した場合、弁護士費用を負担させないという制度も考えられなくはない。しかし、勝訴した被告から納得を得ることは困難であろう。そうすると、訴訟救助に関する勝訴見込みの判断が厳格となる可能性が高いという反論が説得力を持つことになるであろうとの意見があった」とされています。一番下の「弁護士の偏在」という問題に対する検討状況ですが、「弁護士の偏在を考慮して、直ちに全国一律で施行するのではなく、例えば、弁護士の数が多く本人訴訟率も比較的低い政令指定都市に限定してまず施行するとの考えに対しては、司法の根幹に関わる制度を全国一律に適用しないことは問題であり、研究会ではこれを支持する意見はなかった」とされています。
 前回御紹介した裁判所、法務省、日弁連の各意見の中に、民事訴訟費用制度等研究会の検討結果等が参照されていましたので、今回はその検討結果、かなり様々な論点を検討していたようですので、整理して御報告した次第です。

【高橋座長】 ありがとうございました。それを受けて今日の御議論にということですが、どうぞ亀井委員。

【亀井委員】 前回基本的なことを申し上げていないので、基本的なことを述べさせていただきます。
 今、民訴費用制度等研究会の積極説、消極説というのもいただきまして、それもあるのは間違いないことですけれども、結局、それらを前提にした上で、今回の司法制度改革審議会の意見書がこういう形でまとめられたのだろうと思います。私としては、審議会の意見書は基本的には尊重していきたいと思います。ただ、この審議会の意見書が、民訴費用制度等研究会の理由を租借した上で多分こういう形、この意見書の四角の中を見ると、訴訟を利用しやすくする見地からというのが目的になっているのは間違いないことだと思います。しかも、項目のところに、「7. 裁判所へのアクセスの拡充」という項目の中にこれが入っているわけです。ですから、民訴費用制度等研究会のときの様々な理由、それを前提とした上で、積極説は、敗訴者負担というのは、裁判所へのアクセス拡充につながるならば採用するという前提だろうと思います。そういう意味から言えば、そのほかの理由というのは審議会の意見書では採用されていないと考えるのが筋ではないかと思っています。いずれにしても、今回の意見書の基本が裁判所へのアクセス拡充のために何を改革していこうかということですから、結果的には、訴訟を利用しやすくする見地から考えていくというのが本来の目的であろうと思います。この目的に沿って考えていくということになると、1つは、司法アクセスを拡充するという目的に沿って、敗訴者負担を導入する範囲、そして、導入してはいけない範囲というのを検討していかなければならないと思います。その1つの基準としては、経済力の差とか、公益性の云々、証拠の偏在の問題なども考慮の対象にしなければならないと思います。更に、長谷川委員が前回おっしゃっていたドイツの裏側の制度の検討、法律扶助や訴訟費用保険の問題があります。更に、証拠の偏在の是正などがあるかと思います。こういうことを一緒に検討して、そういう中で、何が、どの範囲が導入する範囲だとか、導入してはいけない範囲なのかということを具体的に検討していかなければならないと思っています。基本的な考えとして申し上げておきます。

【飛田委員】 今、亀井委員から御発言がございましたけれども、ここで私たちは、やや繰り返しになるかもしれませんが、司法アクセスを推進するための制度を検討するという、その基本的な方向性というものを考えていきたいということでございます。前回から今回までの間に、私は司法制度改革推進本部に寄せられている要望書の中に、アクセスを推進するためにこの制度を導入した方がいいという御意見がないかということが気になりましたものですから、2回事務局にお伺いしまして、要望の内容の中にそういうものがあるかどうかを事務局の御協力を得てチェックさせていただきました。そういたしましたところ、これが残念ながら皆無でございまして、こういうことでこの制度を導入してほしいという意見が全くない半面、敗訴者負担制度の導入は多様な弊害があるので是非控えるべきであるという意見が圧倒的多数を占めておりましたことを大変私は重い現実として受け止めるべきだと思っております。ですから、あくまでもこの司法制度改革審議会で話し合われた内容にある、今まで回避せざるを得なかった当事者というのがどういう存在であるのかということも明らかにしていく必要性と、今ここで敗訴者負担制度導入ということで言われておりますのは、これはよく言われる片面的とか両面的という用語で言えば、両面的な敗訴者負担制度の導入ということだろうと思うのですが、諸外国には片面的な導入ということも実際に取られているようでございますし、そういったことなども含めて、言葉もしっかりと区別してここでも、これからの審議の過程では取り上げていく必要があるのではないかと思っております。

【長谷川委員】 休憩の前の座長の最後の言葉の中の法律扶助の問題を伺います。今、いただいたものだと、イングランドとかアメリカとかフランスとかドイツの何百億とかいうのに対して、日本は30億円とか、件数にしてももともと低いわけですけれども、伸びないと決めて話をしていくような感じでしたけれども、どうしてそういうことになるのですか。伸びないのですか。どうすれば伸びるのですか。

【高橋座長】 それはもちろん考えなければいけませんが、打ち出の小槌があるわけではありません。国家財政を見ればと。

【長谷川委員】 諸外国並みにしていくことは、この国にはないのですか。

【高橋座長】 現実には、諸外国との比較は難しいんです。いろんなものが入りますから、刑事事件を含めてとか、民事だけでもとか。もちろん、私も伸びなくていいと言っているわけではなくて、伸びた方がいいと思いますが、それは関係者が今まで随分努力されてきたわけで、あくまで私の個人の感想では、これが急に100倍、1,000倍になることはないだろうということを言ったわけですが、それは見通しがおかしいということであれば、修正するにやぶさかではありません。逆に長谷川委員の方で、ここをこうすれば伸びるはずだというのがあれば、是非お願いします。

【長谷川委員】 この司法アクセス検討会として、何か諸外国並みの支援というものがあって始めて先に進めるんだということを強く打ち出していくというのはあるのではないかと思うんです。現状を認めてしまうのではなくて、その先に行くためには、こうした扶助制度とかをもっと発展させて、アクセスをしやすくしていくのがいいというふうに。

【高橋座長】 アクセスの問題ですが、先ほど私が申しましたのは、打ち出の小槌があるわけではないから、つまり物すごく伸びるわけではないだろうから、予算執行の効率性という観点が強く入ってくるだろうと。その点が第2の論点になるだろうと言ったわけで、その前提の予算の伸びが非常によくなるのであれば話は別になるでしょう。しかし、だから湯水のごとく使っていい、無駄遣いしていいということではありません。全般的にそういう点は国家予算は潤沢ではないと思っております。個人的なことになるかもしれませんが、同じ司法制度改革審議会が法科大学院をつくる、そこには財政的な援助もせよと書いてあるのに、私が知っている限り財政的援助はほとんどない。お金はない。定員は付けない。だけれども、理想的な教育はせよと言われて、我々はどうしたらいいんだというのが現状です。しかし、法律扶助だけはたくさんくれるのかと。

【長谷川委員】 いやいや、そんなことはなくて、今、構造改革とかやっていて、必要なものに出して、必要でないものは減らしていくということをやろうとしているわけですから。大いに提案してほしい。

【高橋座長】 その議論を排除するつもりはありません。こういうところを押せば、予算は増えるだろう。増えた予算はどういうふうに効率的に、適切に執行していくかという観点からの議論も必要だとなります。

【長谷川委員】 私がこの敗訴者負担について素人ながら思っていることは、最初にいただいた司法制度改革審議会意見書というものの5ページには、前からお話しているようなことがきちっと書かれているなと思うわけです。「法の下ではいかなる者も」ということから始まって、「ただ一人の声であっても、真摯に語られる正義の言葉には、真剣に耳が傾けられなければならず、そのことは、我々国民一人ひとりにとって、かけがえのない人生を懸命に生きる一個の人間としての尊厳と誇りに関わる問題であるという、憲法の最も基礎的原理である個人の尊重原理に直接つらなるものである」。こうした基本的な法律に関わるようなところで法というのはあって、その6ページにあるように、弱い人たちの立場とか、不当な不利益を受けることのないように弱い人たちを支援していく、透明でなければならないというときに、先ほど皆さんがおっしゃっているように、まさにアクセスを促進させるということからすると、一人の人間としての問題に関わるのではないか。大きな力に動かされていくのではなくて、大きな物語が優先するのではなくて、個人というものが尊重される社会というものを支援していけるような法でなければならないということがここでしっかり書かれているのではないかなと。私はそのことを主張したいなと前から思っています。

【高橋座長】 それは理解しておりますが、これから弁護士費用の敗訴者負担の問題にそれを当てはめていくと、長谷川委員としては、どういう方向になるのでしょうか。

【長谷川委員】 一人ひとりというものがアクセスしやすいような状況というものをつくっていく。両面的敗訴者負担の在り方というのが、個人にあっては大きな問題があるように私は感じているということです。

【高橋座長】 わかりました。敗訴者負担の問題、もう何回か議論を重ねてまいりましたが、この辺りで一歩前へ進めてはどうかと考えます。それは司法制度改革審議会の意見書、これは内閣の決定にもなったことですが、そこが我々に課したものを中心的に議論していってはどうかという提案となります。第6回の配布資料の資料6の2枚目、これが司法制度改革審議会の意見書であり、これが内閣の決定になっているわけです。そうではない見方も一部にはあるようですが、私の日本語の読み方からいたしますと、修飾語を取りますと、「弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させるという制度は導入すべきである。ただし、不当に訴えの提起を萎縮させないようにこれを一律に導入することはしてはいけない。また、導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方及び敗訴者に負担させる金額の定め方について検討すべきである」。ここから出てくるのは、弁護士報酬の敗訴者負担一般がいいか悪いかという議論は既にここでなされている。もちろん、それが重大な事実誤認に基づくとか、裁判で言えば再審事由に当たるようなことがあれば別ですが、そうでもない限りは、我々としてはこれを前提にして議論すべきではないか。哲学の部分は司法制度改革審議会の意見書のところにのって、その上でこの検討会は設置されたわけですから、我々としては、一律に導入すべきでないと言われる範囲がどういうものなのか、あるいは一律でないとはどういう考え方に従って一律でないというところになるのか。それと実際には議論は裏表になってしまいますが、幾ら、あるいはどのような割合を負担させるのかという、言ってみれば各論的な議論に次からは、今日はとてもできませんが、次回以降は進めてみたいと思いますが、いかがでしょうか。

【山本委員】 今の座長の御提案に賛成です。と言いますのは、この検討会において消極論というのは相当有力ですが、そこで前提にされている訴訟が民事訴訟全般であるとは、必ずしも私の感触では思えないということ。それから、私も反対意見の方とプライベートにお会いしたりしたこともございますが、そこでも、必ずしも民事訴訟全般についておっしゃっているという感じではない。一定の訴訟のパターンにおいて萎縮効果があり得るのではないかという御意見だと私は理解しております。 そういう意味で、そういう萎縮効果がありそうな訴訟というのはどういう訴訟のパターンなのか、それについて双面的な敗訴者負担を導入しないことにどういう理由が立てられるのかということをこれから検討していく方が、最初の哲学論をこれ以上繰り返しても、いわゆる神々の争いになってしまいますので、そろそろ本格的にそういう各論を踏まえて、もし、各論をやった上でも、なお全面的にだめだというともあり得るのだろうということは留保した上で、まず各論をやってみてはどうか、我々の与えらた時間もヒューマン・リソースも限られておりますので、そろそろ効率的な審議に向けて検討を始めてはどうかと思います。

【飛田委員】 今の山本委員の御意見や座長のおっしゃっておられるお話の趣旨はよくわかりますが、先ほど私は、要望書が来ていないということを問題にするべきではないかと申し上げました。そのことにも関係があるわけですが、それから両面的な負担制度と片面的な負担制度と両方、世界の状況を見たときにある以上は、それがどういうときにどのように機能しているかという世界の状況の把握ということも必要ではないかと実は思っておりますが、その辺のところ、いかがでしょうか。

【高橋座長】 私の理解では、双面的にするか、片面的にするかは、幾ら負担すべきかという議論の中に包摂されているのだろうと思います。前回までの数回の議論でもそれに触れた意見はあったと思いますけれども、今度は改めてそういう観点からと。それから、我々はどうも調査団を派遣できる検討会ではないようですから、我々自身が世界に行くということはないようですが、調べられる範囲では資料は出てまいりますし、平成9年ですから、6年前でしょうか、先ほど来お話になっている民訴費用制度等研究会の報告書、これには出ていまして、そこにも多少載っておりまして、その辺りからひも解いていけばある程度のことはわかりますが、世界がこうだから我々もこうだと私自身は考えません。参考にはなります。そういうところは適宜事務局が出すなり、専門家の先生もいらっしゃいますし、委員各自が勉強してもということでもあります。

【飛田委員】 それから、今まで訴訟を回避せざるを得なかったという、モデルケースと言ったらよろしいでしょうか、事例というのが過去の民事訴訟の中でどれくらいの、それは訴訟にならなかったんだから、数字にはならないでしょうが、推定した場合、どういうふうに御判断になっていらっしゃるのか。それはよくわからないでしょうね。

【高橋座長】 司法制度改革審議会の委員の方でどう判断されたんでしょうね。何かの資料は持っていらしたようですけれども、私自身はそこまで持っていませんので。

【飛田委員】 実際に私が目にしたものなどを拝見しておりますと、例えば、弁護士さんがおっしゃっておられたものですと、相手側にお金がないから、こんな訴訟を起こしても紙っぺら1枚では相手から何も得るところがないからやめるというような訴訟回避というのが圧倒的に多いという御意見もあるんです。実務をやっていらっしゃる方はそういう判断をしておられまして、先ほどの法律扶助制度に勝つ見込みのある者だけに貸し出すというのは、私は率直に申しまして、先ほどは申し上げなかったんですが、大変おかしい制度だと思うんです。裁判は、勝てるかどうかわからないと思うんです。そんなに明々白々な事実というのは、むしろ争いにならないじゃないかという判断も一方ではございまして、勝つ見込みのある者にしか貸せないという憲法的な判断というのは、お金が少ないからしようがないんで、削って削って、だめなんだ、それでもやるというやり方の制度だなと判断を実はするわけなんですけれども、白黒灰色という色分けをした場合、灰色のものが非常に多いんじゃないでしょうか。白だと思ったのにやめた方がどのくらいいらっしゃるかという、それが心配なわけなんですね。

【三輪委員】 参考になるかどうか、1例を挙げてみます。裁判の中で、本人訴訟が割と多いんです。本人訴訟の人といろいろ話しをしている中で、よくあるのは、本当は弁護士さんを頼みたいんだけれども費用がかかるんだと。費用がかかってそれを払うくらいなら、負けもいいから自分でやるんだということ、それに近いようなことを言う方がたくさんいらっしゃって、弁護士費用も一定額まではちゃんと取れるんですよということになると、これはまた違った対応がとられることになると思います。逆から言えば、自分が委任する弁護士の費用負担を思って訴訟をためらう人がいるということが言えると思います。
 この議事の進め方ですけれども、山本委員が言われたように、我々としては先に進むべき時期に来ていると思いますので、各論の議論に入るべきだと思います。根強い反対論があるというのは承知しておりますし、それに相当な根拠があるというのも了解しておりますので、その各論の議論をする中で、では、そういう制度を導入するとどういう問題があるのかということをよく意見を出していただいて検討して、やはり問題があるんだということになったら修正していけばいいと思いますので、議論としてはこの先に進めるべきだと考えております。
 以上です。

【亀井委員】 議論を進めるのは、私も意見書を基本的に尊重していますから構わないんですけれども、ただ、私自身は、この敗訴者負担を導入する目的は、訴訟促進になるかどうか、裁判を萎縮させるかどうかというのが一つのメルクマールであると思っていますので、そこを基本にしたいと思います。
 もう一つ、飛田委員の疑問についてですが、三輪委員はそうおっしゃっていますが、私も三十数年弁護士をやっていて、最初に聞いたときに、各自負担ならば裁判をやめますという人はまずいないんです。判決をもらって勝ったときは取れるんですかという質問はあります。ただ、裁判の始めには皆さん不安があるので、相手方の弁護士費用を負担するかどうかとか言ったら、多分やめますと。2人分払うんですかということになるのではないかと。これは現場からの感覚です。
 もう一つは、審議会で大規模なアンケート調査でもやってもらえればありがたいんですけれども、それがどうも難しそうなので、日弁連で、ある程度の範囲に絞ってアンケート調査をやった結果が、今日の資料の「自由と正義」に出ています。これは、日本弁護士連合会が主催してアンケート調査をやったものを分析してもらった論文です。これは細かく見ていただければ、難しい論文なので一気に私も覚えられないんですが、簡単に言えば、これは消費者生活相談センターの専門相談員の方と、あとは弁護士会の法律相談センターに問題を抱えて相談に訪れた人、両方に分けてアンケートを取っています。相談に訪れた方で言えば、完全に勝訴又はほぼ勝訴というような事案で、各自負担を理由に訴訟を回避するかどうかという質問に対しては、回避するというのは10人に1人くらいの割合で答えています。というのは、市民が訴訟を回避したということは現実には余り考えられないのではないかという気がしています。これは難しい論文なので後で御覧いただきたいと思います。一応紹介しておきます。

【高橋座長】 いかがでしょうか。今日は中身に入りませんが、議事の進め方としては、いわゆる各論の方に話を進めてみる。総論としてどっちがいいかというのはなかなか難しいので、除外する範囲をどうするか。幾らなら除外するかという各論ですね。金額も100円、1,000円の単位なら別に効果はないわけで、しかし、全額ではないというのも司法制度改革審議会の意見書に出ていますから、その辺の議論とどちらが先か、一緒に議論するか、そういうことを事務局の方に御検討をお願いしますが、大きな課題は2つある。除外する範囲をどうするかと、負担させるべき金額が幾らかという問題がある。相互に関連する問題でしょう。次回以降はこれらの問題の検討に入りたい。よろしいでしょうか。

【西川委員】 各論の議論を始めるというのも大事なんですが、司法制度改革審議会の意見書を、悪い言い方をするとねじ曲げて、実現を遅らせようとするのはけしからんじゃないかという大勢の意見の中で、日本弁護士連合会が、本件についてのみ、司法制度改革審議会の意見書を否定するがごとき決議をしているのは非常に不満に思うところでありまして、これも司法制度改革審議会意見の出ている中で、これをいかに実現していくかということが我々の使命なわけですから、どういう弊害があるかも研究しようということなら、それを研究していくべきだというのは私は入るべきだと思うのですが、訴訟の類型で分けるという考え方と、訴訟の当事者の属性で分ける、商人間訴訟であるとか、私人間訴訟であるとか、行政との訴訟とか、私人と商人であるとか、そういうようなことというのも一つの考えとして入るのかどうか。そういう議論が今まで民訴費用制度等研究会の方で行われたようなことはあるのでしょうか。政策形成訴訟と一般的に言われるわけですれども、当事者の性格によっての議論というのがあり得るのかどうかですけれども、今後の議論で、事務局に検討してもらうために、そういうことがポイントとしてあり得るのかどうか。

【高橋座長】 民訴費用制度等研究会は私も入っていましたが、少しはいたしましたが、途中から法律案をつくるわけではということになりましたので、そのような立法技術上の詰めは本格的にはしていません。例えば、法制局と協議したということはありません。したがって、事務局の意見はまた違うのかなと思いますが、立法の細かい技術的なところは、本格的には議論しなくていいのだろうと思っています。しかし、やはり片方では、それを意識したときにどこまでできるのかも念頭に置いて議論すべきでしょう。政策形成型訴訟というのは、恐らく条文的には定義不可能でしょうから、そういう形での議論はここでもすべきではないのだろうと思っておりますが、私人対企業とか、こういうことになりましたときにどうでしょうか。私の経験でも、民事訴訟法改正のときに、日本は、形の上では企業だけれども、八百屋さんがいいのか魚屋さんがいいのかわかりませんが、みんな株式会社になっているわけで、企業という条文化はこれもなかなか難しいという議論もありました。それは合意管轄を認めるかどうかのところですけれども、当時の法務省の立法担当者はかなり練ったようですが、最終的には断念しました。我々がここで検討して、それがすぐに立法技術的に法文に反映するかどうか私は保障はできないと思いますが、我々としてはそれを意識しつつ議論し、しかし、余り細かい法律的な議論ばかりしていてもよくない、期待されているわけでもないだろうと思っております。どういう議論になるか、やってみなければわかりませんね。

【亀井委員】 今、西川委員から、「ねじ曲げて」とか、それは言い過ぎだと思います。

【西川委員】 失礼いたしました。

【亀井委員】 司法制度改革審議会の意見書を見ても、いろんな読み方ができるんでしょうね。それから、審議会の議事録と合わせてみれば、やはり、かなり難しい議論をして、微妙な調整があってできているので、それに対して意見を言うことが、「ねじ曲げて」というのは言い過ぎであろうと思います。それが一つ。それから、日本弁護士連合会の決議は今日資料で出ていますけれども、一般的な敗訴者負担制度について反対しているわけです。しかもその理由として、司法へのアクセスを抑制する恐れがあるということ、それから、裁判の人権保障機能と法創造的機能を損うという理由を言っているわけで、ねじ曲げで反対決議としているわけではありませんので、よく御覧いただきたいと思います。

【高橋座長】 いろいろ御意見はおありですけれども、飛田委員、どうぞ。

【飛田委員】 西川委員の御意見をお伺いしまして、言葉を返すようでございますけれども、先ほど大勢が望んでいるとおっしゃいましたね。

【西川委員】 司法制度改革審議会意見がそうなっているんです。

【飛田委員】 司法制度改革審議会の大勢がですか。審議会の方がですか。私、ちょっと言葉を聞き違えたんですか。

【西川委員】 司法制度改革審議会の意見書を実現しようということに、政府としては決まっている。

【飛田委員】 西川委員の周囲で皆さんがそれを、皆様のお仲間はそういうふうに思っていらっしゃるということではないんですか。

【高橋座長】 日本弁護士連合会だって、司法制度改革審議会意見を実現しろと言っていますね。ところが、その一部だけ外しているということでしょう。

【西川委員】 そういうことを言っているわけです。

【飛田委員】 私が先ほど申しましたのは、この司法制度改革審議会の意見書に従うという意味でも、相手方から回収できないために訴訟を回避ざせるを得なかった当事者というか、その存在が余り明らかになってこないんです。

【高橋座長】 そこに余りこだわれるのはどうなんでしょうか。

【山本委員】 経済現象であって、ないものから取り上げるというのは、その人が持っているお金以外のこと、これは私有財産制、市場経済制の下では当然の前提で、あらゆる法制度が組み立てられているわけです。それだけ済まないからいろんな公的な保障制度も若干入っておりますけれども、基本的には、民事の世界というのはそういう世界なので、民事の問題ですから、そうならざるを得ない。この問題とは全くそれは別の問題として存在しているわけです。ですから、そこについて何らかの手当てをすべきだという意見はあるんですが、それと弁護士報酬の敗訴者負担問題というのは全く別個な問題ですから、それと連動して議論するのは混乱するだけだと思いますので、それはそれで、そういう提案を法律扶助の問題としてとらえるというのは1つの考え方だとは思いますが、それ以上のものではない。弁護士報酬との関係では、論点が相当隔たったところにある論点だと思います。

【飛田委員】 私は、総論の話というのをまず慎重に行うべきだろうと思ったものですから。各論の具体的な論議が必要なことを否定するものではございませんけれども、例えば、その前に西川委員は、お金を返してくれない人がいるということをおっしゃっておられました。でも、弁護士さんのお金をかけても、お金が返ってくれば訴訟を起こす方も大勢いらっしゃるわけですね。弁護士報酬がかかるから訴訟を起こさないということにはならないケースだっていっぱいあると思うんです。ですから、おっしゃっておられる背景に、例えば、料金体系の在り方をもっと明朗化してほしいとか、何かそういう意図がおありになるのか、その辺わかりませんが。あと外国の例など、ちょっと資料を拝見したりしていますと、これは医療過誤ですから、そういう結論になったのかもしれませんが、フロリダの医療過誤の問題で、一度は敗訴者負担制度を導入したけれども、最終的にはいろんな問題があるということで、フロリダの医療協会の方がそれにストップをかけて、また元のように戻したというケースがあるということも伺っております。イギリスのものを拝見しましたら、経済的に優位にある者が訴訟にお金をかけるために、相手方が、万一敗訴したときに膨大な額を支払わなければならないという心理的圧迫感を感じるので不利な条件で和解するというようなケースもあるとか、訴訟費用をどちらが負担するかを決めるためだけに、敗訴者負担制度、お金を取ろうということに意識を転化して、そのためにどっちが負担するかの上訴がなされるというケースもあるようです。また、勝訴の可能性がかなりあると思いながら、一般に言われる訴訟を差し控えるようなケースというのは、実際に勝てるかどうかわからないという不安感の下で起こっているというのも、私が拝見していた資料の中にもありました。世界のいろんな国で、アメリカの場合にはアメリカンルールというのがあるようで、基本的には導入されていないようでございますけれども、その国、その国で、フランスとかドイツとか導入していても、弊害があるのでそれを緩和するような方策を随分取っておられるということです。日本の場合には、これからそれを考えるというわけですから、十分弊害とか、先ほど私が申しました片面的とか、そういった世界の動向なども理解した上で、慎重にやっていかないと、日本の法律扶助の状況は非常お粗末な限りですし、訴訟費用保険制度というのもないに等しい状況です。まず第一に、国民のための司法アクセスであるならば、私ども多くの者が、裁判所というのは一体どういうところだろうかという感じの人が、何かとても敷居が高いようなところで、大変だという意識を持っている人が多いのが現状でございますから、よく熟知された西川委員のような方が、熟知した専門家集団の方が訴訟を起こすことを、それを推進することが今回の目的ではないと思うんです。国民のための司法制度改革ですので、今までも訴訟当事者となり得るケースも多かったし、プロフェッショナルな立場にいらっしゃる方たちのための使い勝手のよい制度ということにならないだろうと私は思いますので、どういう審議の経過をたどるにしても、使い勝手のいいプロフェッショナルな方のための、あるいは経済的に非常に優位にある方のための制度にならないような検討の仕方、ですから、回避せざるを得なかった方が、国民の一般の方でないとすれば、それは司法制度改革審議会の答申ももう一回よく読んでいかなければいけないなという気もしますし、まず、回避せざるを得なかったケースからスタートするというのが私は筋じゃないかなということを実は思っております。審議を妨害しようとは思っておりませんので、段階を経てということです。

【高橋座長】 司法制度改革審議会意見が根拠があるかないかということは、もうそろそろ打ち止めにしたいと思っているのです。回避せざるを得なかった人が日本国民の中に何%いるかとか、そういう議論は余りしたくないというのは、私が先ほど提言したことを別の言い方をしますとそうなります。司法制度改革審議会は、訴えの提起を不当に萎縮させないようにという観点を出しております。これに限定されるわけではないのでしょうが、そういう角度からこれを中心にして、さっき西川委員が言われたように、どういう事件をどういう角度で排除をしていくかという議論をしていって、その中で飛田委員の基本的な考え方がその中に反映されることは当然だと思いますが、訴訟を回避せざるを得なかった人が何人いたか、「自由と正義」の論文にはこう書いてあるという議論は、もうそろそろやめたらどうかということなんです。

【飛田委員】 「自由と正義」ではなくて、司法制度改革審議会の意見書を拝見して申し上げております。

【長谷部委員】 慎重に議論すべきであるということは、私もそうだと思いますが、司法アクセス検討会である以上、司法アクセスをどうやって拡充していったらいいかということが主要な目的であるということはコンセンサスがあるわけで、ただ、弁護士費用をどういうように負担させるのが一体司法アクセスを拡充することにつながるかということは実はよくわからないところもあるわけです。飛田委員が御指摘になりましたように、外国においてもいろんな、例えば、どういう司法制度を取っているかとか、弁護士がどういう訴訟活動をしているかとか、それによっても弁護士費用をどう負担させるかということによって、訴えの提起を阻害するかどうかというは大分変わってくるというところがありまして、我が国においてどうなのかとうことは、もうちょっと具体的な事例に即して、当事者という御指摘もありましたけれども、ひょっとしたら当事者の属性ということも関わっていくかもしれないのですが、そういったところに踏み込んで考えてみないと、一般化はできない話だと思います。そういったところをもう少し具体的に検討していったらあるのではないかと。こういう問題があるとすれば、ほかに解決方法はないだろうかということも考えられると思いますし、まず、その検討をやってみようということではいかがでしようか。

【亀井委員】 さっき座長は、「自由と正義」にどう書いてあろうととおっしゃいましたけれども、どう書いてあるかということではなくて、最後のところで国民の理解を求めるとありますので、国民の理解を求めるのにどうしたらいいかという1つの手法として、日本弁護士連合会として調査を行ったわけです。その調査の結果がこういうことであると。大体回避するのは10人に1人かなという程度だったという前提を置いておいていただければいいと。

【高橋座長】 日本弁護士連合会の調査によればそうであったということは、当然、この検討会での前提に置きます。しかし、そうですね、あくまで一般論ですが、世論調査等は、出てきたデータの評価に難しいところがありますね。例えば、アメリカで言えば、共和党に近いシンクタンクが行った調査、民主党に近いシンクタンクが行った調査、それぞれ読み方は微妙なところがあるのでしょう。

【亀井委員】 理解は各人別でもかまわないと思っております。

【高橋座長】 そういう趣旨です。それでは、各論の中で更に御意見を承ることとして、次回は各論の検討に入りたいと思います。

(4) 今後の日程について

【高橋座長】  では、次回以降の日程について事務局から説明をお願いします。

【小林参事官】 次回以降も、本日と同じような3つの論点について、そのときそのときの準備状況等によって濃淡はあるかと思いますが、御審議をお願いしたいと思っております。それから、次回以降、4月以降の日程について調整いただきましたが、その結果を今回配布してありますので、資料15を御参照ください。次回は、3月10日に予定しております。

【高橋座長】 それでは、ちょっと時間を延長いたしましたが、今日はどうもありがとうございました。