【高橋座長】 それでは、第15回「司法アクセス検討会」を開催いたします。
初めに、事務局から本日の議題と配布資料についての説明をお願いいたします。
【小林参事官】 お手元の議事次第にありますように、議題の(1)、「司法の利用相談窓口・情報提供について、民事法律扶助の拡充について」に関しまして、本日は、全国知事会と全国市長会から説明資料をいただいていますので、これについて御説明を伺って、御検討いただければいかがと考えています。
議題の(2)、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」につきましては、お手元に、これまでの検討会の資料の中から、第14回検討会の資料3「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて」、第5回検討会の資料2「日本弁護士連合会説明資料」の中から、「日弁連の報酬等基準による民事通常事件の着手金・報酬金の例示」と題する資料、それから、第5回検討会の資料12「民事法律扶助事業業務規程」から、代理援助支出基準表をお配りしております。そのほかに、本日の資料3としまして、日本弁護士連合会から、弁護士報酬に関する資料を出していただいています。弁護士報酬関係は、議題(2)のときに資料の御説明をしたいと思います。
【高橋座長】 それでは、司法の利用相談窓口・情報提供についての検討に入ります。
本日は、地方自治体での法律サービスの現状や今後の課題などについてお伺いしたいということを考えましたところ、全国知事会と全国市長会から御協力をいただけることになりました。全国知事会及び全国市長会から御説明をいただくことから始めてよろしいでしょうか。
(各委員了承)
【高橋座長】 それでは、最初に、全国知事会からお願いいたします。
【全国知事会石上調査第一部長】 全国知事会調査第一部長の石上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
資料1-1と1-2という2種類の資料を提出しております。資料1-1の方から説明をさせていただきたいと思います。
資料1-1は、「都道府県における法律相談等に関する取り組み」というものでございまして、1枚めくっていただきますと、この調査の概要を書いてありますので、簡単に説明させていただきたいと思います。余り時間がありませんでしたが、47都道府県、全県に、これから説明いたしますような項目に沿って、アンケート方式で調査を行った結果、全都道府県から回答をいただきました。それを、「取り組み状況」と「国に対する意見要望」という2種類に分けて資料を作成させていただきました。あと随時出てきますけれども、この法律相談の方法と言いますか、○の2つ目にございますように、「都道府県が直接相談窓口を設けて実施するもの」と、「都道府県が間接的に相談窓口を設置し実施するもの」、つまり、弁護士会等への委託等の方法によっているものという分類を行ってございます。更にその中身として、種々雑多と言いますか、いろんな相談を受け付けるという総合的な法律相談等と、交通事故や女性の関係などといった特定の事項に限り相談を受け付けているものの2つに分けさせていただいております。これは、平成15年4月1日現在の状況をとりまとめたものでございますので、現在、こういう形で進めていると御理解いただいてよろしいかと思います。
次に、この都道府県における法律相談の取組み、その考え方でございますけれども、基本的には、どちらかというと、司法政策という側面ではなくて、地方公共団体が本来業務である住民の身体・生命・財産の安全をどう確保していくかという観点から、住民のニーズに基づいて行っていると理解しております。また、都道府県が行うという観点でございますけれども、このような業務の第一線は、基本的には、第一線であります、住民に直接接する機会の多い市町村が行うものではないかと、このような結果が出ております。したがって、都道府県は、補完的な立場、市町村を超えて市町村の行う相談の補完的な役割という観点ではないかと考えております。全体の意見の傾向としましては、自治体として都道府県と市町村が協力して、住民のニーズに対応して司法へのアクセスのサービスの拡充に努めていくという方向にあるのではないか、このことは資料には書いてありませんが、そういう感じを受けているという感想を申し上げておきます。それから、国の司法政策との関係で見ますと、住民のニーズに対応した法律相談等への取組みについては、これからも、司法界、市町村等とうまく連携を取りながら進めていく必要があるだろうと感じたところでございます。こういった総論的なことを申し上げまして、個別の調査の結果の方に進めさせていただきます。
3ページをお開きいただきたいと思います。ここに総括表としまして、47都道府県の中で法律相談等を実施している団体が43、実施していない団体が4ございます。これが、先ほど触れたような市町村の行政の補完をするという観点の表れではないかと思っております。この理由ですが、少し飛びますが、13ページを先に見ていただきますでしょうか。この法律相談を実施していない4団体の理由、4団体すべてを掲げたわけではありませんが、一応掲げさせていただきました。1つ目の○にありますように、「以前は実施していたが、市町村や弁護士会等による法律相談窓口の設置、拡充を受け、事業を終了した」というもの、「市町村に法律相談窓口が設置されており、また、県に対して設置の要望がない」というようなものがあります。勿論、「市町村や弁護士会等で法律相談が実施されており、また、県内の弁護士数が少ないため、これ以上窓口を設置することが困難である」という回答もございます。一方、「司法の側で対応すべきという観点から、自治体が窓口を設けることは考えていない」という答えも返っております。最後に、「今後の設置予定」、これら4団体に対して予定を聞きましたところ、「特段設置の予定はない」という団体もあれば、「今後検討したい」というところもございました。このような状況で、47都道府県の中では、4団体ほどが、現在そういった相談を実施していない状況でございます。
次にまいりますが、4ページでございます。「法律相談等を実施している団体の内訳(複数回答)」ということで、これは、基本的には複数回答になります。先ほど申し上げました「直接法律相談等を実施しているところ」、それから間接的に法律相談等を実施しているところ」、「直接・間接両方の相談窓口を設置しているところ」というような区分けで調査をした結果でございます。最初に、法律相談等を直接実施している団体の状況でございますが、その中で、総合的な法律相談等を実施しているのが17団体ありました。次に、特定の事項ごとに法律相談等を実施しているのが37団体あり、※印にありますように、総合・特定両方の相談窓口を設置しているのが12団体ありました。それから、都道府県が間接的に法律相談等を実施している、これは弁護士会等に委託をしているような場合ですが、この中でも、総合的な法律相談等を実施しているというのが2団体、特定の事項ごとに個別に法律相談等を実施しているというのが18団体ありました。3つ目の○にございますように、直接・間接両方の相談窓口を設けているというのが19団体でございます。そういう状況になっております。
5ページから7ページは、都道府県が直接的に法律相談等を実施している団体の中で、総合的な法律相談等を実施している17団体の主な内容でございます。5ページは、その相談内容と相談窓口の設置箇所数でございます。相談内容は、ここに掲げてございますような住民相談全般に係る法律事項ということで、勿論、幅広でございますが、交通事故、家庭問題、多重債務と言った事項についての相談が多いようです。それから、総合的法律相談窓口の設置箇所数でございますけれども、これを箇所数ごとに調査したところ、1か所というのが6団体ございまして、これは大体本庁だと思います。それから、10か所以上というのが1団体ございまして、これは、県で言うと地方事務所ごとに相談窓口を置いているということから、大体、地方事務所の数に応じた箇所と認識していただいて結構でございます。次に6ページでございますが、総合的相談窓口の開設回数と時間でございます。開設回数につきましては、回数ごとに調査しましたが、これは1か月の当該団体での開設回数の合計でございます。大体2〜4回というのが4団体ございますけれども、20回以上というのも5団体ございます。20回以上のところは、窓口を常設しておりまして、執務時間中は相談受付を常にやっていると理解していただいで結構でございます。時間で言いますと、2時間のところから5時間以上のところまでございまして、常設でございますと、1日中やっていますから、8時間ということになろうかと思います。このような状況でございます。次に7ページでございますけれども、総合的相談の窓口の体制でございます。弁護士が直接対応するという団体が15団体です。通常の場合は、窓口に1名の弁護士が必ず配置されている場合が多いということです。職員の対応でございますけれども、職員が自ら対応しているのが2団体ございます。この場合には、相談窓口は、行政の相談も含めてやっているところが多いわけでございますけれども、体制としては、5名から7名くらいの職員を配置をしているということです。この場合には、常時弁護士さんがおられる場合はいいのですが、そうではない場合、相談が来た場合には、まず職員が相談を受けて、対応できるものはその場で回答しますが、難しい問題、または法律的に判断を仰ぐという場合には、別途弁護士さんに相談して、それから直接職員が答える場合、または、相談窓口の開設日に来ていただいてお答えをするという工夫をしているところでございます。それから、法律相談の相談費用につきましては、すべて無料でございます。事業予算も調べましたが、徹底していなくて、ここで見ますと、1,000万円以下から5,000万円以上という区分に分かれておりますけれども、例えば、弁護士さんの報酬のみを書いてきたところ、さっき言った相談窓口というものを常時設けている場合においては、その職員の人件費等も含めて書いてきたところ、ばらばらでございまして、経費につきましては、さまざまな形になってしまったというこどでございます。その中で、最も多いところでも、6,449万円ということでございました。
8ページから10ページにまいらせていただきます。これは、都道府県が直接的に法律相談等を実施している団体で、特定の事項ごとに法律相談等を実施している37団体の主な内容でございます。8ページは、その相談の内容でございますけれども、ここに書いてございますように、これも複数回答になっておりますけれども、女性の関係が23団体、交通事故関係が23団体、消費者、多重債務等の相談が14団体、高齢者が8団体ございます。高齢者というのは、高齢者に係る相続の問題とか、所有している土地等の権利関係の相談ということを聞いております。そういう高齢者の関係の相談があるという状況でございます。9ページは、法律相談窓口の設置箇所数でございます。先ほども1箇所というところがございましたけれども、1箇所所が9団体ございます。これは、大体本庁と理解していただいてよろしいかと思います。10箇所以上、先ほども申し上げましたけれども、3団体ございますが、これは、地方事務所にそれぞれ設置しているという団体でございます。それから、その特定の法律相談窓口の開設回数と開設時間でございますけれども、回数につきましては、これも、1か月に当該団体で開設した回数の合計を書いてございますが、30回以上というところも10団体ございます。ただ、これも、常設のところがございますので、数としては多く出てくるようですし、箇所数も影響してくるわけです。開設時間でございますけれども、短いところは2時間未満から、8時間というところまでございます。8時間というのは、先ほど申し上げたように、常設のところだと理解しております。次に10ページ、法律相談窓口の体制でございますけれども、これはここに書いてございますように、弁護士さんか対応している場合、大体1人でございますが、多かったように思います。そのほか、隣接の法律専門職種、税理士さんとか弁理士さんが対応しているところもございます。職員対応と言うのは、先ほど少し触れましたように、常設のようなところで、職員が対応できるものは対応していくという形で対応しているということです。いずれも、相談費用は無料でございます。
次に、11ページと12ページですが、今度は、都道府県が間接的に実施している法律相談等の状況でございます。11ページは、まず、提携先ということで、どこにお願いしているかということでございますが、弁護士会等が12団体、その他が18団体でございます。その他というのは、まず、都道府県が出資している財団・事業団、それぞれの役割の中での相談が多いと思いますが、そういうところがあります。また、商工会議所や社会福祉協議会、こういったところにつきましては、例えば補助金を出して、そこでそれぞれの役割、職務に応じた相談を受け付けるという状況であると理解しております。提携の方式でございますけれども、委託と助成、補助という形に分かれています。委嘱というのは契約の方法違いで、1団体が委嘱という方法を取っているということでございます。次に12ページは、相談内容でございますが、2つ目の○にございますように、特定の事項ごとに法律相談を実施する、高齢者に関するもの、消費者に関するものという形で、それぞれ特定の事項ごとに相談窓口を区分して設置しているという団体の状況でございます。その他が25団体ございますが、下の括弧に書いてあるようなことを、それぞれの都道府県の事情によって相談に応じているということでございます。これも、いずれも、相談費用は無料でございます。
13ページは先ほど御説明いたしましたので、次は14ページです。これは、資料1-2で個別に御覧いただきたいと思いますが、「司法アクセスの拡充等に関する都道府県の意見」ということでございまして、少し列挙させていただきましたが、司法の利用相談窓口等を拡充すべきという意見が14団体、その中で、国において拡充すべきという団体が5団体、弁護士会等において拡充すべきという意見が2団体でございます。都道府県における自らの取組みの拡充ということで回答してきたものが10団体ございまして、その方法といたしましては、ホームページの活用、相談回数を増やすといった団体が6団体、もっと利用頻度を高めるという観点から、取組みの状況を周知徹底する必要があるという団体が4団体ございます。そのほかといたしましては、現在、拡充等について考えていないという団体が4団体、今、これ以上取り組むのは困難である、これは財政的な負担、人材ということを含めまして困難であり、新しい仕組みが必要だという団体が2団体ございました。 逆に、市町村の取組みが充実してきていると言いましょうか、そういったことから、都道府県の事業を縮小していこうという団体も1団体ございます。ここの例でみますと、総合的なものを縮小していくけれども、個別のものは残していくという意見でございます。
15ページは、「弁護士過疎地域等における取り組みについて」でございますけれども、これにつきましては、現在、都道府県独自に対応しているというところが11団体ございます。これが十分であるかどうかわかりませんが、地方事務所等への法律相談窓口の設置、都道府県で言いますと、やはり、住民に一番近いところと言いますと地方事務所になりますので、そういうところで対応する、また、そういうところから更に巡回相談をしていく、更に遠い箇所等については、巡回相談を実施するという団体、そういったところが11団体ございました。それから、支援・協力を行ったというところが6団体ございます。この支援・協力が、弁護士事務所、弁護士会等がその地域に事務所を設置する場合に支援をする、運営費補助、広報等を日ごろから行うという支援を行っている団体が6団体ございます。こういったことから、弁護士過疎地域に対する取組みについては、今後も必要に応じて協力していきたいというところが6団体ございます。また、都道府県で対応したいというところが2団体、今後更に検討するという団体が5団体という状況でございます。
16ページは、市町村または弁護士会等にどういう協力をしているかということでございます。まず、市町村との協力関係につきましては、これまで相互に協力を行っている団体が13ございまして、具体的には、市町村の相談窓口についても紹介をしたり、お互いに情報の交換をし合って住民に知らしめるということをしているということです。また、今後協力していきたいという団体が7団体、今後新たに検討していきたいというところが4団体ございます。協力していきたいという7団体については、具体的には、相談窓口の紹介をしていきたいということや、情報ネットワークを活用するといったようなことがあげられています。次に、弁護士会等との協力でございますけれども、現在、相互に協力しているという団体が31団体ございます。その内容としては、弁護士さんの派遣の依頼や法律相談窓口の紹介、勿論、弁護士会等が行う場合の窓口を紹介したり、それから、法律相談事務所等の施設を設置する場合の支援、運営費の補助を行っている団体もございます。今後新たに検討していきたいという、相談・協力関係を弁護士会等としていきたいというところが9団体ございました。
17ページは、「総合的法律サービス提供仕組み」についてということで、このたびの皆様方が目指しておられる仕組みについて、内容が十分見えなかったという点もあったかと思いますが、そういう中での回答でありまして、不十分な点が多いかと思いますが、それを見ますと、そのような仕組みは必要であるというところが27団体、仕組みが明らかでないので何とも言えないというところが1団体ございました。この仕組みの構築についての意見ということで、十分な検討が必要であるというところが12団体ございました。この十分な検討というのは、都道府県がどのような役割を担うのか、また、財政負担が要るのか要らないのか、実施主体がどこであるのかという意味での検討が必要であるということでございます。それから、「情報の提供や広報等では協力できるというところが4団体、自らも法律相談窓口を拡充するとしても、都道府県の事務と無関係なものまでも対象とすることについては難しい、それは限界があるだろうというところが2団体でございます。また、既にホームページを利用して、同様の取り組みを行っているという回答もございました。そういったことから、今後の国の検討状況等を見ながら検討したいという意見もございます。
大変、簡単、雑駁な説明でございますけれども、以上でございます。なお、資料1-2に個々の団体の意見・要望がまとめてございますので、これは検討の中で見ていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
【高橋座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、全国市長会からの御説明をお願いいたします。
【全国市長会長江行政部長】 全国市長会行政部長の長江でございます。
私ども全国市長会も、全国知事会と同様、5月の初めでございましたけれども、資料2に書いてありますように、「都市における法律相談窓口の設置状況等及び司法アクセス等の拡充に関する都市の意見について」というものにつきまして、アンケート調査を実施いたしましたので、それをとりまとめました結果につきまして、御報告を申し上げます。
1ページを御覧ください。こちらには掲げてはおりませんが、日本の国民全体で都市の位置付けがどうなっているかということから申し上げたいと思います。平成14年度の住民基本台帳の人口ベースでありますが、全人口が1億2,600万余、そのうち、東京都の23区を含めまして700市区ということで、都市は700地方団体がございます。町村の方は2,500余ということになっております。全人口のうち都市に占める人口が約1億ということでございまして、国民の8割が都市、いわゆる市区にお住まいになっているという状況でございます。700市区すべてにアンケートができればよかったのですが、時間的な関係もありましたので、ここに書いておりますように、全国の30市を対象にアンケート調査を行いました。調査対象の内訳につきましては、人口段階別に、ここに掲げているような市にアンケートを行いました。この部分も少し配慮を加えたつもりでございまして、北海道から九州までの9つくらいのブロックに分けておりますが、そこに平均的にお聞きできるように、それから、選択する際にも、離島にある市、あるいは、現在人口的過疎の地域にある市、こういったところも、極力バランスよくアンケートが取れるようにという配慮は加えたつもりでございます。
まず、法律相談の実施状況でございます。法律相談窓口を設置している市が24市、窓口を設置していない市が5市ということでありまして、30市のうち29市から、この時点で回答をいただいたということです。1つ数字が少なくなっておりますが、大半が、法律相談窓口を設置しているという状況だと認識しております。それから、法律相談の主なものを掲げておりますが、これは、アンケートを取りました際の相談事項として、多い順に掲げておるつもりでございます。家事事件が一番多く、その次が金銭貸借関係であるということでありました。
2ページ、相談窓口をいつから設置しているかということをお尋ねしましたところ、昭和50年以前から設置しておりますのが14市、昭和51年以降が5市、平成元年以降が5市ということで、比較的新しい設置の市もあるわけでございますが、半分程度は、昭和50年以前から設置しているという状況にございました。設置の経緯につきましては、住民に一番身近な市町村というところの都市でございますので、市民サービスを充実させるという観点で設置をしましたというところが17市ございました。また、弁護士不足であることが設置の経緯になったということも6市から挙がっております。その他のところは、弁護士会等からの要請があったので設置をしましたというところがありました。相談窓口の開設日時等でありますが、月にどの程度窓口を開いているかということですが、月に1回以下というところが9市、月に2〜3回が8市、週1回というところが3市、週に2回以上というところが4市ということで、比較的、月に2、3回程度というところが多いのではないかという印象を持っております。時間につきましては、3時間未満が7市、3〜5時間が12市、5時間以上、ほぼ1日やっているのだと思いますが、これが5市という回答がありました。費用につきましては、先ほどの知事会の御説明と同様でありますが、全市で無料ということでありました。
3ページ、相談対応者につきましては、弁護士会から派遣をしていただいている弁護士さんに相談に対応していいただいているところが19市、市の在住弁護士に個別に来ていただいているところが1市、市の顧問弁護士が1市、その他が3市となっております。相談の件数について、平成14年度の実績をお尋ねしましたところ、年間の件数としては、200件以下というところが10市でございまして、201 〜400件が4市、401件以上が8市でありまして、②に書いてありますように、最大は1年間で1,098件、一番少ないところは29件という報告でありました。事業予算につきましてもお尋ねをしておりますが、勿論、窓口の職員の人件費は入っておりませんので、弁護士さん等への報酬等が中心ではないかと思っておりますが、100万円未満が10市、100〜300万円が8市、301〜500万円が4市、501万円以上が2市という状況でございました。
4ページですが、相談窓口が十分機能し、市民のサービスとして充足しているのかどうかということをお尋ねをしまして、十分充足、おおむね充足ということで回答があったところが20市あります。十分とはいえないという回答が4市でありました。十分といえないという4市につきましては、下に掲げております理由が付記されておりまして、弁護士の確保が困難である、あるいは、相談希望者が予定数を超えるので足りていない、相談時間が一人30分と限られているため、十分な解決方法の得られないケースもある、あるいは、相談希望は年々増加しているが、予算的な問題もあり、現状維持が精一杯といった理由が付されておりました。弁護士事務所の開設状況についてでございますが、開設されていないところが6市あります。1事務所開設が4市あります。右側の括弧内に書いておりますのは、弁護士事務所に所属をされている弁護士さんの数です。2〜10事務所開設しておりますのが5市で、弁護士は42人、11以上事務所を開設しているところが6市でございまして、合計の弁護士は286人ということでした。不明の回答のところもありました。弁護士事務所の開設状況は、当初想定したとおりでありますけれども、人口5万人未満の市が既設が4市で未設が3市ということでありまして、人口が増えていくにしたがってと言いますか、既設の事務所が多く、未設が少なくなるという状況にありました。
5ページですが、先ほど、法律相談を実施していない団体が5市あるということでありましたが、相談窓口を設置していない理由を書いております。法律専門家の確保に要する予算上の制約、あるいは、窓口を置く組織、市役所自身の組織、人員体制が未整備であるということ、それから、司法側で対応すべき内容が多いということ、県・地区の弁護士会において連携して法律相談を既に行っているためということが理由としてあげられておりました。
次に6ページ、大きく2つ目の「司法アクセス等の拡充に関する都市の意見」でございます。司法の利用相談窓口の拡充、あるいは利用拡大についてどう思うかということで、勿論、拡充等を推進すべきというところが9団体ありました。残りは検討を要する等々ありますけれども、全体としての意見を私どもの方でとりまとめたものが、この【意見の趣旨】というところに表させていただいておりますが。利用者にとりまして、情報収集できる窓口が身近に存在し、情報をより多く提供することは有益であるという意見が多いわけでありまして、取り組む場合の検討事項としては、数点が挙げられております。利用手続を簡素化してほしい、あるいは費用を低減するということ、それから、裁判所においての相談担当員を増員をしていただきたいということ、交通利便性のよい場所に設置をするとか、弱者に配慮するとか、インターネット利用の場合も、高齢者等に配慮した工夫が必要ではないかという検討事項が記されておりました。一番下に書いておりますように、既に取組みを行っている団体に記述をしておいていただいた部分を参考までに書いておりますが、裁判所等の作成した公共性の強いポスターであるとか、チラシ等、これらについては、区役所、あるいは市役所の広報紙、あるいは広聴担当課において配布をするという方法もありますし、また、市民等から問い合わせがあれば簡単な内容説明を行っているという取組みをしている市もあるようでございます。
次に7ページですが、「市の相談窓口における司法に関する総合的な情報提供について」お尋ねをしまして、こちらの方は、取り組むに当たっては検討を要するというところが6団体、現状では対応できないというところが4団体、総合的情報提供について推進すべきというところが3団体、既に取り組んでいるというところが2団体ありました。取りまとめということでもないのですが、全体の意見を集約をしたものを【意見の趣旨】として書いております。司法に関する総合的な情報提供につきましては、比較的専門性が高いということで、基本的には、裁判所、弁護士会等での情報提供の充実、拡大がお願いできれば一番いいのではないかという印象があります。市の相談窓口において、総合的な情報をどのようなレベルで提供できるかどうかというところは難しい面がありますが、市民にとっては、そこまでできれば非常に好ましい。ただし、現時点での職員等の資質でありますとか、今後の研修の必要性などがあるという意見がありました。取り組む場合の検討事項としましては、こういった情報の収集や管理、情報レベルの統一などで、関係機関の連携が大切である、人材の確保、研修制度が必要だということ等が挙がっております。既に取り組んでいるという参考例がございまして、たまたま、市の総合相談室の相談員4名の中に、地方裁判所書記官OBの方がいらっしゃるということで、司法に関する情報提供が比較的うまく行っているというところがありました。
それから、次の8ページで、消費生活センターなどの相談窓口において、司法に関する情報提供が総合的に行えないかということについてお尋ねをしました。消費生活センターは、市役所レベルの出先的な意味合いを持つというところもありますので、組織、あるいは人員体制が少数ということで整っていないという面もあるのだろうと思いますが、市の現状では対応できないという答えが7団体ありました。それから、今後、検討を必要とするというところが5団体ということでありました。こちらの方は、消費生活センターの相談員の司法に関する知識というのは十分ではないと思いますので、職員の質的な向上、先ほどと同様に研修体制の確立が望まれるということがありましたが、今、消費生活相談等をやっている上に、更に専門的な知識が要求されるのではないかというようなことで、なかなか難しいという意見が比較的多かったということです。集約的にここに書かせていただいております。
以上が、私どものアンケート調査に表れました数字、あるいは意見でございます。
なお、あくまで、もう1枚、参考資料として付けさせていただいておりますけれども、これは、先週、私が住んでおりますある都市の広報紙に、6月の相談案内というものが載っておりました。市の相談というのは、どういう事柄に取り組んでいるかということが比較的読み取れるのではないかと思いまして、御参考までに紹介させていただいております。例えば、法律相談と言いますのは、6月で言いますと、一番最初が6月3日火曜日(要予約)と書いてあります。それから、6月6日金曜日(要予約)、いずれも午後1時から4時、あるいは午後1時から5時と書いてありまして、法律相談は予約制で、週2回ペースで相談が行われている都市でございます。それ以外に、交通事故相談、家庭相談、教育相談、子育て相談、消費生活相談、虐待の相談、福祉高齢者の相談、女性相談、こういったものが、住民に身近な市民サービスの1つということで相談体制を組んで相談に乗っていて、法律相談というのは、その一部を担っているという状況にありますので、御理解を賜りたいと思います。
以上でございます。
【高橋座長】 どうもありがとうございました。それでは、意見交換をお願いいたします。どなたからでもお願いいたします。
【飛田委員】 最初に御説明いただきました全国知事会にお尋ねいたします。資料1-1の9ページ目でございますが、「ウ.特定の法律相談窓口の開設回数・時間」ですが、30回以上というところが10団体となっておりますが、これは、休みの日も相談サービスに応じているということでしょうか。
【全国知事会石上調査第一部長】 そこまでは調査しきれていませんが、先ほどちょっと触れましたけれども、職員の出勤日、1週間で5日間、ずっと開いているという団体がありまして、いわゆる常設です。地方事務所も含めてやっているということで、回数が非常に多くなっていると御理解いただいた方がいいと思います。休みというのは調査はしておりません。巡回相談などは、どのようにやっているのかということもあろうか思いますけれども、その辺は調査しておりません。
【飛田委員】 夜間などはどうでしょう。
【全国知事会石上調査第一部長】 同じ資料1-1の9ページに8時間というのがあります。これで見ますと、執務時間中ではないかと思います。
【始関委員】 全国市長会の方から参考にお配りいただいた1枚紙を拝見しますと、法律相談という項目のほかに、交通事故相談であるとか、家庭相談、不動産取引相談、登記相談など、いろいろな項目が挙がっていて、法律相談も、広い意味の法律的な相談の1つだというお話でしたが、このアンケート調査で掲げられています、法律相談窓口を設置しているところ、あるいは、法律相談の件数など、その「法律相談」というときは、この資料で言いますと、「法律相談」と銘打っているものだけを指しているということですか。
【全国市長会長江行政部長】 この例で申し上げますと、6月3日、あるいは6日で、「法律相談(要予約)」と書いてあるものを指していると御理解いただければと思います。
【始関委員】 そうしますと、逆に、全国知事会の方で御説明いただいた内容ですと、総合的なものと特定法律相談の中に交通事故などが挙がっていますので、全国知事会の分類では、それぞれが「法律相談」に入ると理解した方がいいということですか。
【全国知事会石上調査第一部長】 入っていると理解した方がいいと思います。
【始関委員】 相談の対応者の関係ですが、全国市長会の資料2の3ページで、「その他3市」というものがございますが、どういう方が対応しておられるのかおわかりになりますでしょうか。
【全国市長会長江行政部長】 正確なお答えになっているかどうかわかりませんが、相談の職員が対応しているかというのは、専門的知識を要しますので無理だと思われます。多分、「その他」として分類したのは、我々の方が弁護士会、あるいは市在住の弁護士、顧問弁護士ということを例として載せまして、○を付けていただくような形を取ったものですから、そこは明確になっているのだと思いますが、その他の弁護士さん、この3つに分類されない、今、具体的に何かと言われるとちょっとわからないのですが、これ以外の弁護士、例えば、隣接の市の特定の弁護士さんというケースもあるのではないかと思います。場合によっては、近接の司法関係者という方がいらっしゃるのかもしれません。司法書士さんなどを念頭に置いて書かれているということもあるようでございます。
【飛田委員】 お二方にお尋ねしたいのですが、今回、このような形でアンケートをお取りいただいているわけですが、過去においても、このような調査を時折されておられたのでしょうか。
もう一つは、皆様方の市長会、知事会の中で、相談業務についての検討をなさったり、お互いの情報交換をなさったり、あるいは研修等をなさったことがありますでしようか。
【全国知事会石上調査第一部長】 実は、自民党にもこの取組みの部会がございまして、そこから説明を求められました。期間が大変短かったものですから、こういう調査になりましたけれども、初めてこういう調査をしました。過去は、調べておりませんけれども、このような調査をしたことはなかったと思います。
現在、こういった相談業務等の研修等を含めた取組みにつきましては、まだ、そういうことはやっていないと思います。
【全国市長会長江行政部長】 市長会の方も同様でございまして、過去こういった調査を単発、あるいは定期的に行ったことはございません。
それから、市町村職員の研修というのは、一般的な職員研修というのは通常行われておりまして、地方自治法を始め、関係の法規についての研修は勿論やっておりますが、特に法律相談的な素養を高めるためのもろもろの法律を勉強するというところまでは至っていないだろうと認識しております。
【全国知事会石上調査第一部長】 先ほどの説明の中で、相談件数の調査を忘れておりまして、掲げていませんでしたが、その後、数団体に調査いたしました。それを報告させていただきます。1か所、県庁の中でしかしない、1か所でしかしない、週に1回という県がありますけれども、そこで見ますと273件、これは平成14年度中の件数で、全体的な相談件数です。それから、先ほど申し上げたような、大変多い地方事務所などを設けている9か所とか10か所とか申し上げましたけれども、大体週に1回以上やっているところで見ますと、8,518件ございました。箇所数が非常に多くて週に2回程度で、箇所数が10か所くらいあったところでも、件数で見ると、836件というところもございました。具体的に分析しないとわかりませんが、そのような現状のようでございます。
【西川委員】 このようなアンケートについて回答される方、事実関係について回答するというのは、事実をそのままということなのでしょうが、今後の取組みをどうしますかというときに、回答に当たる方というのは、知事自身が回答されているのか、市長自身が回答されているのでしょうか。どのような決裁でもって、このようなアンケートには回答するものなのでしょうか。
【全国知事会石上調査第一部長】 わかる範囲でございますけれども、各種アンケートというのは、47都道府県ではありますけれどけも、意見集約が非常に難しいものが、非常に多くございます。そういう中で、いつも我々は、知事の意見を回答してくれと言いますが、例えば、行政委員会というもの、教育委員会だとか人事委員会などがあります。特に、教育問題などについて知事の意見を聞きたいという場合であっても、教育委員会サイドの回答になるということが多い。そういうことで、知事自身ということを言っても、本当に知事自身の考え方を回答しているかどうかというと必ずしもそうではないのではないかと思われるものも多くございます。これについて言いますと、多分、窓口の業務というのは、はっきり言って、総合的な窓口の場合には、企画調整だとか、そういったところで持っているだろうとか、多重債務の問題の場合には、商工労働部が持っているだろうというのがございまして、多分、これは聞いていませんが、当該担当部長くらいまでは最低上がっているとは理解しております。
【全国市長会長江行政部長】 市長会の方も、担当の部長までは上がってから回答が来ていると私ども思っております。冒頭で申し上げた30市を選択する際も、1つの分類として、弁護士資格を持っておられる市長さんというところも2市ほど入れて聞くということもやっておりますので、その2市については、確実に市長さんまで上がっているだろうと認識しております。
【高橋座長】 私どもの検討会から見ると、司法アクセスの拡充に関する意見というのが関心があるのですが、知事会の方では、資料1-1の17ページでも、「総合的法律サービス提供の仕組み」は必要だと、積極的にという姿勢が出ています。しかし、市長会の方では、いいんだけれども、現状では対応できないというニュアンスが出てくるのでしょうか。資料2の7ページを見てみますと、取り組む場合の検討事項として、情報の収集や管理、情報レベルの統一など、各機関の連携が大切という御意見、人材の確保、研修制度を要するという御意見、司法の側から積極的な情報提供が必要だという御意見が挙がっております。なるほどなと思ってお聞きしました。私どもの検討会で検討する材料はいろいろあるなという感じを持ちました。
【飛田委員】 この間用事がありまして、秋田に行くことがございました。そのときに、関心があったものですから、町の商業スペースと言いましょうか、中心的な観光のRP等を行っているビルの中に入りましたときに、相談のコーナーがあったものですから、何か資料があるかどうかお尋ねしましたところ、行政相談窓口ガイドというリーフレットを頂戴することができました。これは総務省がおつくりになっていて、困ったな、どこに相談すればよいかなと思ったら、ということが書いてありまして、行政相談なんですけれどけも、窓口ガイドとなっていて、国・県の行政機関等が設置している主な相談窓口を掲載したものですということでした。かなり広範に、法律問題に関する相談なども、これは弁護士会さんとも連携して、参考ということで、弁護士会がやっておられるものも掲載されています。ここで思いましたのは、これは行政相談中心ですが、国の予算でおつくりになっているのだろうと思うのですが、国と県と市との、この種の県民、市民へのサービス業務についての予算的な枠組みとか、お互いの連携、それが恐らくアンケートの中にも消極的な反応となって出てくる地域があったりするのではないかと思うのですが、相当ばらつきがあるのでしょうか。
【全国知事会石上調査第一部長】 ずはり指摘されましたが、秋田県は、その御案内にも書いてありますが、自分のところを書いていないのではないかと思います。県が相談窓口をつくっていないのです。
【飛田委員】 ここには、国と県の行政相談と書いてありますが。
【全国知事会石上調査第一部長】 通常の行政事務の窓口というのはあると思いますが、法律相談などは設けていません。それと、予算のことでございますが、先ほど申し挙げましたように、まちまちでございまして、国の補助金というのは一切ありません。この法律相談は、先ほど申し上げましたように、全く財政補填はなくて、当該団体の税で対応しているものでございます。
【全国市長会長江行政部長】 飛田委員がいらっしゃったのは、どちらかというと、県に関係している施設なのかなという感じがあります。多分、秋田市がどうやっているかという具体例を私は承知していませんが、通常、都市でありますと、市役所、あるいは支所の窓口に行きますと、市民にサービスしている部分のパンフレット等は、勿論、置いてあると思います。そこに裁判所の事柄、弁護士会の事柄まで記載されているかどうかというと、いろんなスペース、あるいは経費の関係もあって、十分なところとそうではないところは、ばらつきがあるのかなと思っております。
【全国知事会石上調査第一部長】 先ほど私が申し上げましたけれども、県と弁護士や市町村との協力関係、そういうものの一環で置いているのではないかという気もします。
【飛田委員】 協力関係が構築されているところと、そうではなくばらばらのところがあるということなのでしょうか。
【全国知事会石上調査第一部長】 そういうこともあるのかもわかりません。
【高橋座長】 いろんなところでバックアップの体制を、今後、私どもの検討会でも進めていきたいという感想です。
【西川委員】 要望を見ると、やはり県の方もそうですけれども、必要性はわかるけれどもお金は出したくない、国で予算措置を取ってほしい。ですから、県の税金をこちらの方へ多く使いたいというほどの意欲はないとお見受けするのですが、大体そういう感じですか。
【全国知事会石上調査第一部長】 現状以上にということなのかということもあろうかと思いますけれども、最初に申し上げた都道府県の役割、機能という観点での立場も一部あるのではないかと思います。ちょっと聞いた中では、市町村の相談窓口の遅れている地域に対しては、県は、積極的に、そういうところを補完して行くという回答も実はありますので、全く後退ということではないと理解していただきたいと思います。
【高橋座長】 それでは、この辺で少し休憩を入れてから2つ目の議題に入りたいと思います。全国知事会、全国市長会の方、ありがとうございました。
(休 憩)
【高橋座長】 それでは、次に、本日の議題の(2)、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて」です。まず、事務局から、資料の説明をお願いいたします。
【小林参事官】 お手元の第14回検討会資料3「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて」と題する資料を置いてあります。それから、第5回の検討会で、民事法律扶助の関係について検討したときの資料から、日本弁護士連合会説明資料、第5回検討会の資料2の中の、「日弁連報酬等基準による民事通常事件の着手金・報酬金の例示」と題する表を御参考までに置いてあります。そのほかに、第5回検討会の資料12の「民事法律扶助事業業務規程」の中から、別表2の「代理援助支出基準表」を置いてあります。
民事法律扶助事業業務規程について若干補足いたします。民事法律扶助法第2条では、「民事裁判等手続の準備及び追行のため代理人に支払うべき報酬の立て替えをすること」が扶助事業となっており、同法第7条第1項では、指定法人、つまり法律扶助協会は、民事法律扶助事業の実施に関する規定、これを「業務規程」と言いますが、業務規程を定めて法務大臣の認可を受けなければならないことになっています。法律扶助協会は、これらの規定に基づき、民事法律扶助事業業務規程を定め、この業務規程について法務大臣の認可を受けています。また、民事法律扶助法第7条第2項に、「業務規程には、第2条に規定する立替えに係る報酬の基準に関する事項を記載しなければならない。」となっていることから、民事法律扶助事業業務規程では、第24条と別表2で、民事法律扶助事業の立替えに係る報酬等の基準が定められています。
具体的には、民事法律事業業務規程の第24条に、「報酬及び実費の立替基準」が定められており、第24条第1項で、「協会は、民事法律扶助事業の立替えに係る報酬及び実費の基準について、日本弁護士連合会の定める報酬等基準規程の範囲内で、次の各号に掲げる事項を踏まえて定めるものとする」とされています。「次の各号に掲げる事項」とは、(1)として、「被援助者に著しい負担になるようなものでないこと」、(2)として、「適正な法律事務の提供を確保することが困難となるようなものでないこと」、(3)として、「援助案件の特性や難易を考慮したものであること」、このように定められております。そして、第24条第2項に、「前項に基づく立替基準は、別表2に定めるところによる」と定められております。
この別表2は、「代理援助支出基準表」となっており、(1)金銭事件、(2)不動産・動産事件、(3)家事事件など、事件ごとに基準が定められております。例えば、(1)の金銭事件については、「交通事故その他損害賠償請求、金銭請求事件」と「手形訴訟」に区分されています。「交通事故その他損害賠償請求、金銭請求事件」の着手金については、訴額が基準となっており、訴額50万円未満が着手金6万円、50万円以上100万円未満が9万円、100万円以上200万円未満が12万円、200万円以上300万円未満が15万円、300万円以上500万円未満が17万円、500万円以上1,000万円未満が20万円、1,000万円以上が22万円となっております。また、事件の性質上、特に処理の困難なものについては、35万円まで支出することができるとされています。なお、「手形訴訟」の着手金は、この2分の1となっています。また、報酬金、いわゆる成功報酬、つまり勝訴した場合の報酬金ですが、これは、金銭事件については、現実に入手した金額を基準に、その金額が1,000万円まではその10パーセントを基準とし、1,000万円を超え3,000万円まではその超える部分の6パーセントを加算し、3,000万円を超え5,000万円まではその超える部分の5パーセントを加算し、5,000万円を超える部分についてはその超える部分の4パーセントを加算するとなっています。なお、この報酬金については、当面取立てができない事件は6万円から12万円とし、標準額を8万円とすると定められています。
(2)の不動産・動産事件は、報酬金額につきましては、受けた利益を基準として、先ほどの金銭事件の場合と同じような報酬基準が定められております。着手金についても、金銭事件と同じような基準となっていますが、境界事件につきましては、15万円から20万円で、標準額は18万円とするいうことで、別の類型になっています。
(3)の家事事件になりますと、離婚・認知等については、着手金は、公示送達事件が8万円、金銭請求を伴わないものが18万円から23万円で標準額を21万円とし、金銭請求を伴うものは金銭請求と同様とするが、21万円を下回らないものとするとなっています。報酬金は、金銭給付のない事件が6万円から12万円で標準額を8万円とし、公示送達事件は6万円から8万円、金銭給付のある事件は、先ほどの金銭事件と同じように、例えば、現実に入手した金銭が1,000万円まではその10パーセントを基準とするというような、現実に入手した金銭を基準とする報酬金の定めがされています。
資料の説明は以上ですが、日弁連の会則で定める弁護士報酬等基準規程は、現在、国会に提出されております「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案」におきまして、日本弁護士連合会の会則の記載事項から除くことを提案しておりますので、この改正法が成立し、施行されますと、報酬等基準規程がなくなります。そういうことから、今回、日本弁護士連合会の方で、弁護士報酬の実情について御説明していただければと思いまして、資料3という形で、弁護士報酬についてのアンケート調査等をされた結果等の資料をいただいておりますので、これについてあらかじめ御説明をいただいてから、本日の御検討をいただければと思っています。
(各委員了承)
【高橋座長】 それでは、日本弁護士連合会から犬飼副会長においでいただいておりますので、資料3の御説明をお願いいたします。
【日本弁護士連合会犬飼副会長】 日本弁護士連合会で弁護士報酬敗訴者負担問題を担当しております副会長の犬飼健郎です。敗訴者負担問題を検討するに当たって、報酬の実態を把握する必要があるということで説明を求められ、このような機会を与えていただきました。ありがとうございます。
弁護士の報酬については、昨年の5月28日、既にこの検討会で、日弁連の当時の副会長の奥村が説明しております。それは、弁護士報酬標準の説明、言わば規定の説明でありました。今、御説明がありましたように、このたび法律が改正されるようになったということで、改めて説明を求められたものと思います。
弁護士報酬敗訴者負担制度の日弁連の基本的な考え方につきましては、本年3月10日に、この検討会で、津川前副会長がプレゼンテーションをしたとおりであります。司法制度改革審議会の意見書というのは、司法アクセスの観点からこの制度の導入を検討するということでありますので、日弁連もその趣旨を尊重していきたいと思っております。今回、このアンケートを説明いたしますけれども、考えてみますと、このアンケート自体が既に標準のあったときに取ったアンケートでありますので、敗訴者負担問題を考える上でどれだけ役に立つのかということ、心もとなくなっていますが、可能な限りで説明をさせていただきたいと思っております。併せて、弁護士報酬の今後の方向についてもお話をさせていただきたいと思っております。
資料3-2のアンケート調査は、これは日弁連の弁護士制度改革実現本部の第3部会、弁護士報酬問題検討会で実施したものです。この部会では、司法制度改革審議会の意見書に言われている、個々の弁護士の報酬の情報の開示だとか、提供の強化、更には報酬契約書の作成義務化、報酬説明義務化の徹底をするようにということについて、消費者、経済界、労働界、言論界の代表者にも参加していただいて検討をしていたわけですが、その過程で、この部会を中心にしたアンケート調査をいたしました。資料を見ていただきますとわかりますけれども、金銭消費貸借等、20余りの具体的な裁判類型に従って、設例を設けて、そして、報酬について回答を求めたものです。回答は、昨年11月30日現在のものです。回答数等については、資料に書いてあるとおりです。中身については、後ほど説明をしたいと思っております。
このアンケートの御理解に供するために、この調査を行った経過について説明いたします。現行の弁護士法第33条第2項第8号は、各弁護士会は、会則で、「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」を設けなければならないと定められております。しかし、一昨年になりますが、3月30日閣議決定された規制改革推進3か年計画で、弁護士の報酬規定を会則事項から削除するとされました。これを受けて、司法制度改革審議会の意見書で、報酬規定を会則事項から削除することについて適切な対応がされるべきであるとされたわけです。このように、会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法律で定められていないという場合においては、標準額や目標額等、会員の収受する報酬について共通の目安となるような基準を設けるということは、独占禁止法上大いに疑義があるということになったわけです。一方において、需要者、会員等に対して、過去の報酬に関する情報を提供するために、会員から報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、報酬の高低の分布だとか、あるいは動向を正しく示して、かつ、個々の会員の報酬を明示することなく、概括的に需要者にそれを提供するということについては、これは独占禁止法上問題とならないとされているわけです。このたび、弁護士法が改正され、第33条第2項第8号で各単位会の会則事項とされていた「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」の部分が、弁護士法から削除されることになったわけですので、そうなれば、報酬の標準を各単位会で定めることができなくなるわけです。なお、この弁護士法の改正法案は、今月27日、衆議院を通過し、参議院に送付されております。しかし、従来の報酬の標準がなくなった場合に、それでは市民にとって弁護士に依頼するときに、弁護士にかかる費用がどれほどか全くわからなくなる。そういう点では、市民に非常に不便である。特に日本では、これは裁判というのが全く一般化していないわけです。多くの市民にとっては、弁護士に依頼したり、裁判沙汰という言葉も使うわけですが、裁判をしたりするというのは一生に一度あるかないかということであって、弁護士費用が幾らであるかということは、大体市民の方は無関心な方が多いわけで、したがって、市民の方が弁護士に依頼するという場合に費用が幾らかかるかというときに、それを考える資料とするために、独占禁止法に抵触しない範囲で、今申し上げた報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に提供する必要があり、資料を客観的に統計処理して、高低の分布、動向を見る目的でこういったアンケート調査をしたというものであります。したがって、このアンケートは、あくまでも事実の調査結果という性格であって、個々の弁護士報酬とは一致しないものです。
日弁連は、この現行法制下で行ったアンケート調査結果を、今年3月18日に、法曹制度検討会でも説明をいたしました。その際、検討会の委員から、同じ単位弁護士会に所属している弁護士であっても、例えばA、B、Cそれぞれが違った報酬基準を出すことがあり得るのかという質問を受けまして、これはあり得ますと答えております。更には、法曹制度検討会の委員から、同じように、このアンケート調査結果を目安という言葉で述べるのもおかしいのではないかという意見も出されました。これは統計的処理の結果出てきたものであって、そこには価値判断は入っていないというところに意味があるのであって、目安ではなく、統計処理の結果出てきた報酬概要、報酬イメージという言葉にしなければいけない、目安という言葉が一人歩きしてしまうと元どおりになってしまうという意見が出されております。日弁連は、このアンケートは、もともと個々の弁護士をこの結果で拘束するといったような目的ではないという大前提で行ったものでありますが、法曹検討会で述べられたような御意見というのも、今後参考にして、表現等については考えていきたいと思っております。ここで更に強く御指摘しておきたいと思いますのは、このアンケートは、あくまでも弁護士報酬標準が存在していた時点、現行の時点における調査だということです。弁護士法が改正された後は、弁護士報酬の標準は、全く個々の弁護士が自由に交渉して、その基準を自分でつくって、事件ごとに依頼者と個別具体的に契約を締結するというものでありまして、制度の改正による報酬契約の内容は、弁護士によって、あるいは依頼者によっても大きく変わってくるであろうと思います。その契約の内容というのは、単に金額だけではなく、タイムチャージ制の場合もあり得るでしょうし、あるいは、完全報酬制といった場合もあるでしょう。今までのような着手金、報酬金といったものもあるし、混合型といったようなものも出てくると思います。今や、この報酬基準自体がなくなってしまうという制度的な変わり目にあるというだけではなく、実は、法科大学院が設置されて法曹人口が大幅に増加するといったようなことに象徴されるように、司法制度全体が大きく変わっていこうとしているわけです。したがって、新しい司法制度と新しい報酬制度の下での報酬の実態は、先ほど述べた額のみならず、いろいろな対応も含めてですが、それがどのようになるかというのは、今後、新しい制度の下でこのようなアンケート調査を継続して行うことによって明らかになってくるのだろうと思っております。公正取引委員会からも、このような調査というのは、アップ・ツー・デートなものにすべきであって、次にまたアンケートを取るのが5年先だとか、10年先というのではなく、できるだけ新しいものを実勢に応じてやってほしいと要望されておりまして、制度改革に伴う弁護士報酬の実態が、大きく、かつ急激に変わるであろうということが、そもそも想定されております。日弁連も、正直申し上げて、現在、制度改正後の弁護士報酬の実態がどのように変わっていくのか的確に予測できないというのが率直なところであります。したがって、今回のアンケート結果は、新しい司法制度の下で実施されることが検討されている弁護士報酬敗訴者負担制度の具体的な金額を決めるに当たって、あくまでも1つの参考にとどまるものであって、それ以上のものではないということを残念ながら申し上げざせるを得ないわけです。
司法制度改革審議会の意見書では、敗訴者に負担させる金額について、「一部に相当し、かつ当事者に予測可能な合理的な金額」としておりますが、今申し上げまたように、報酬の実額がわからなくなるという状況下においては、その負担額が実額の一部なのか、あるいは合理的な金額なのかということを検討するということはなかなか難しい、困難ではないかと思います。特に一部を負担させる場合に、一部負担をどの程度にするのかということを検討するのが重要になると思いますが、その検討要素は、その負担の程度、額がどのような影響を及ぼすか、裁判を起こそうとする人にどのような影響を及ぼすかにあると思います。しかし、報酬実額、その分布、範囲の予測さえ困難な新しい報酬制度の下では、その負担額が報酬実額との関係でどの程度の負担感、あるいは回収によってどのような満足感を与えるかということを、今、これを具体的に検討するということは難しいのではないかと思います。例えば、訴額に対する一定割合、5%、10%といったようなものを敗訴者負担とすることを検討するとして、その負担額が報酬実額の大体どれくらいの割合になるであろうかということは今わからないわけですから、そのような基準による負担によって、司法アクセス促進効果があるのかどうかということは、なかなか予測できないと思います。とは申しましても、以上のことを一応お断りしながら、今回、2002年11月のアンケート結果に基づいて、幾つかの例を取り上げて具体的に検討してみました。その検討結果は、資料3-4のとおりです。これによれば、総括的に言えば、経済的に弱いものほど、敗訴したときに負担すべき金額の負担感が大きいと言えると言えます。弁護士の依頼もできずに本人訴訟をする当事者というのは、本人訴訟は日本では結構多いわけですけれども、そういう人にとって、負けた場合に相手方の弁護士報酬まで負担するということは、経済的に困難であって、本人訴訟の遂行すら萎縮させるのではないかという心配をしているところです。
最後ですけれども、タイムチャージ制の場合については、弁護士報酬の見通しが立てにくいため、訴訟提起抑制につながると言われております。しかしながら、タイムチャージ制を取っていない国でも、弁護士報酬敗訴者負担制度が司法アクセスを阻害する作用を果たしているという日弁連の海外調査結果は、3月10日のプレゼンテーションの資料で提出しておりますので、御覧いただければと思います。その中で1つだけ、ドイツは弁護士報酬が法定されているわけですけれども、ドイツの弁護士事務所から聞いたところでは、敗訴者負担の機能に訴訟抑制の効果を挙げておりました。また、消費者団体が消費者に代わって裁判を提起する団体訴権が導入されておりますけれども、消費者団体からは、敗訴者負担のリスクで訴訟が抑制されているといった話も聞いております。ドイツ司法省でも、権利保護保険に加入して敗訴者負担のリスクを回避しているといったような話も聞いているところであります。なお、アメリカは各自負担が原則なわけですけれども、これも3月10日のプレゼンテーションの資料の脚注に引用しておりましたので、詳しくは読んでいただきたいと思いますが、簡単に述べれば、合衆国最高裁では、1967年に両面的敗訴者負担を取らない理由として、訴訟抑制効果を挙げております。敗訴の制裁に相手方当事者の弁護士報酬まで含めるものであれば、貧困にあえぐ者は、自らの権利を擁護するため訴訟を開始することを不当に思いとどまらせることになるという判示であります。
あとは資料を見ていただきたいと思いますが、念のため申し上げます。フィンランド政府が国連人権規約委員会で述べた主張を引用しておりますけれども、基本的には、敗訴者負担というのは訴訟を抑制するためのものであると述べられております。
私の方からは以上ですが、以下、資料3-2の弁護士報酬についてのアンケート調査結果と、それを分析した資料3-3について、鈴木裕美弁護士の方から説明させていただきます。
【鈴木弁護士】 説明補助者の弁護士の鈴木裕美でございます。よろしくお願いいたします。資料3-2の、ただ今御紹介したアンケートの見方、読み方と、これに基づき若干検討を加えました資料3-4について説明させていただきます。
資料3-4は、先ほど犬飼副会長より説明させていただいた弁護士報酬に関するアンケートの事例と回答結果の幾つかを例に取って、具体的事例における弁護士費用とその事例で敗訴者負担になったとしたらどの程度の金額になるかを幾つかの基準を用いて想定し、訴訟当事者の意思形成に与えるであろう影響の有無、程度の比較検討を試みたものです。ただし、犬飼副会長の説明にもありましたように、このアンケートは、弁護士報酬に関する標準の定めが存在した時期の実情を示すものなのであり、将来における弁護士費用を予測する資料とはなり得ないものであること、その意味で限定的な参考資料であることを申し添えます。
まず、資料3-2の内容についてですが、2ページを開けていただきますと、「はじめに」というところで、まず、弁護士費用の種類が説明されています。大きく分けて、「弁護士報酬」と「実費」、弁護士報酬の中に「着手金」、「報酬金」、「手数料」などの種類があるということが記載されています。事件処理の方法としては、示談交渉、調停など、訴訟以外の方法がありますが、現状では、いずれの場合も、引き受ける際の着手金と事件終了後の報酬金という形で分けて受領している場合がほとんどだということが実情と予想されることから、このアンケートでも、各設例について着手金、報酬金と分けて、その設例の事件であれば、自分であればどのくらいの着手金、報酬金になるかということを、金額の設例1〜4という選択肢を設けて選択するという形でアンケートを取ったものです。アンケート結果の集計状況は3ページに記載されているように、回答総計2,269名、回答率が11.9%ということになっています。
4ページ目の目次を御覧いただきたいと思います。この目次に記載してあるような事例が、ここで取り上げられています。市民が比較的に頼むことが多いであろうという事例を選んでアンケート項目に加えております。ただ、この設例の中を見ていただくとわかりますが、この設例は、相談や示談交渉等の例もあります。ただ、敗訴者負担制度との関係で問題になりますのは、訴訟事件の場合となりますので、その事例として見ていただくとすると、例えば、設例2、8ページの金銭消費貸借の事例で訴訟を依頼したという事例がこの設例となります。この事例で弁護士の方に幾らくらいもらっていますかというようなアンケート調査に対し、この結果という欄に記載があるように、着手金としては10万円前後と答えた人が259名、11.7%。20万円前後と回答した人が916名、41.3%です。このように、このアンケート結果を読むということになります。概括的な内容、まとめについては、下の方のコメントに書いてありますように、このような設例で、着手金は20万円前後が41%ほど、続いて15万円前後が21%ほど、25万円前後が15%ほどであり、10万円前後から25万円前後が目安となっているという記載になっています。目安という表現が不適切だというのは、検討会でも指摘されているところですが、一応そのような表現になっております。
9ページも同様に御覧いただきますと、設例3、これも事例としては、示談交渉のみで解決した場合と、訴訟で解決した場合というのと2つ事例があります。(2)の訴訟の解決事例という方を見ていただくと、着手金はそれぞれ30万円前後が53.5%、報酬金が30万円前後が37.3%、50万円前後が38.7%という回答率が高いということが読み取れるわけです。アンケートの結果は、そのように、事例ごとにどの範囲の着手金、報酬金の回答が多いかということをパーセンテージで挙げ、コメントの部分にどこからどこまでの範囲が回答が多いというようなことでまとめております。
さて、この資料3-2に基づきまして検討を加えました資料3-4の説明に移りたいと思います。資料3-4を御覧いただきますと、これには例1から例5ということで5つの事例が取り上げてあります。いずれも、ただ今御紹介しました弁護士報酬のアンケートの事例をそのまま用いております。1ページ、例1を御覧ください。これは、個人対個人の間の300万円の貸金請求事件の例です。事例の囲みの下の「弁護士費用と敗訴者負担額のシミュレーション」というところを御覧いただきますと、先ほどのアンケートで、着手金が15万円前後から25万円前後の回答が多いということ、報酬金でも回答が多い額ということから、この事例で原告の負担する着手金を20万円、報酬金を30万円というように想定して、以下を考えていくということになっております。他の事例も同様に、アンケートの回答率の高い額、回答にばらつきがある場合は、比較的回答率の高い額の平均値を用いて、各事例の検討の前提となる着手金、報酬金の額を計算して想定しております。また、被告側の着手金、報酬金は、必ずしも原告の場合と同様と言えない場合もあるのですが、アンケートに被告の事例がある場合はそれを用い、ないものは原告のそれと同額ということで考えています。
そこで、例1の記載に戻りますが、例1の着手金、報酬金の下の囲みのところを御覧ください。原告勝訴、被告敗訴、原則敗訴、被告勝訴というように書いてあるところです。1行目を御覧いただくと、この事例で、例えば原告が勝訴した場合、自分が依頼した弁護士の着手金20万円、先ほどのアンケート結果から想定した着手金です。それと報酬金30万円を負担することになるが、例えば、これについて敗訴者負担が導入されますと、敗訴者負担によって回収できるX円が全体の負担額からマイナスになるという構図になると思います。 逆に、敗訴被告側を見ますと、2行目の記載のように、自分の依頼した弁護士の着手金20万円に加えて、敗訴者負担額X円を追加負担するという構図になると思います。敗訴者負担の金額として、X円と記載しました想定する金額ですが、本検討の前提としては、4つの考え方に基づいて算出して考えています。すなわち、その後のイ)、ロ)、ハ)、ニ)と記載してある、あるいは1ページの注書きのとおりですが、イ)として、実際の着手金と同額という程度という考え方、ロ)、ハ)、ニ)は、目的者の価額の一定割合という考え方ということで設定しております。ロ)、ハ)、ニ)は、それぞれ目的物の価額の10%、5%、3%という想定で、一応の数字を算出してみたものです。なお、注意的に申しますが、目的物の価額というのは、一般には訴状に貼る印紙額計算の基となる額でして、定義としては、勝訴によって原告の受ける利益を基準とするということになっています。金銭請求の場合はその額ということになりますが、不動産の場合は、固定資産税評価の額、ただ、平成6年から当分の間はその2分の1ということにされているのですけれども、本件アンケート設例では、時価ということでしか設定されていませんので、その時価の額を基に、目的物の価額を計算しているということをお断りしておきます。本文に戻りますが、目的物の価額300 万円の例1では、2ページに記載してあるように、イ)、ロ)、ハ)、ニ)というような数字にこのシミュレーション上、敗訴者負担額が出てくることになります。このような敗訴者負担額が一応計算される場合に、訴訟当事者がどのような影響を受けるかの検討、考察を行ってみたのが2ページの「考察」という部分になります。敗訴者負担額を着手金程度ないし目的物の価額の10%とするイ)又はロ)の場合、原告は、勝訴した場合に負担する着手金、報酬金の合計額、これは表を見ていただくと50万円になります。この50万円のうち、20万円ないし30万円は回収できる一方、逆に敗訴したら、当初着手金20万円に加えて、20万円ないし30万円を負担することになります。つまり、敗訴すると、弁護士費用が倍額かそれ以上かかるというようなことになります。
ところで、同じ20〜30万円でも、弁護士費用の一部回収として受け取る30万円と、敗訴した上支払うことになる30万円では、どちらが提訴等の意思に与える影響が大きいかというと、これを想像していただきたいのですが、普通の人間の感覚としては、負けた上で払う方がインバクトが強いのではないでしょうか。参考までに、厚生労働省の賃金センサスや、総務省の家計調査年報等によれば、平成12年度統計資料で、日本の賃金労働者の平均給与額は500万円台です。勤労者世帯の可処分所得金額も47万円程度にしかなりません。このような平均的勤労者世帯にとって、30万円は、上記勤労者世帯の1か月の平均可処分所得の63%をも占めるのであり、一般市民にとって、敗訴した上で更に出捐することになるイ)又はロ)のような金額は、負担感が大きいと言わざるを得ないのではないかと思われます。負担の割合を低くしたハ)やニ)という場合、パーセンテージを下げた場合、敗訴者負担額は9ないし15万円となります。月収20〜30万円程度の個人にとっては、10万円程度でも負担感は大きいのではないかということが検討課題になると思います。つまり、資力の乏しい人ほど負担感が大きいということです。その反面、勝訴した場合、負担する費用の合計50万円のうち、もし勝てば9万円ないし15万円の回収ができるということになる場合に、それが回収できることによって、以前より訴訟をしやすく感じる効果がどれほどあるかということも問題にされる必要があると思います。
続きまして、例3を御覧ください。4ページです。これは境界確定の事件です。境界確定訴訟の事例で、この場合には、その対象不動産の価額が訴訟物の価額になりますので、30万円となるというのが一応理屈です。ですから、ロ)又はニ)の訴訟物、目的物の価額に対し一定割合の基準を用いると、弁護士報酬実額とはかなりかけ離れたものになってしまうということが、この例でおわかりいただけるのではないかと思います。境界確定事件は、現在でも、訴訟物の価額とは関係なく事件処理に実際にかかる労力や時間が膨大になることが多い訴訟類型です。今後の報酬の決め方として、タイムチャージ等、いろいろなパターンが考えられるだろうと思います。
更に例4、同じく4ページの下の方ですが、保証否認、夫が勝手に妻を保証人にしたという事例を挙げています。これは、事業者原告対個人被告の例です。アンケート調査結果によれば、着手金は30万円程度、報酬金は40万円程度というのが回答として多いので、そのような形で想定しましたが、同じ額でも、事業活動として訴訟を提起する原告と、個人被告の負担感は、金額が同じでも全く異なるであろうことがおわかりいただけると思います。
5ページの例5は、医療過誤の損害賠償請求事件です。この訴訟は、当事者間に証拠の遍在や専門知識や情報の量的・質的格差など実質的不平等があり、被害を受けた個人の側からの捜査の見通しの予見が難しい事件であります。また、請求額も、この事例でも1,000万円ですが、多額となることが多いため、敗訴者負担は、個人原告にとって極めて負担感が大きいものとなります。その種の訴訟は、従来から、原告勝訴の場合、損害賠償として弁護士報酬の支払いが命じられていた類型であり、敗訴者負担になることにより、訴訟提起の萎縮効果が生ずることが予想されます。
金額の程度や上限を定めるというような考え方について一言述べますと、重要なのは、誰の負担能力を基準に額や上限を定めるかということがあると思います。先に述べたように、我が国の平均的勤労者世帯の可処分所得額が47万円程度であることが、その制度の下での国民の負担を検討する上で十分考慮される必要があると考えます。
最後になりましたが、資料3-4の6ページを見ていただきたいと思います。ここの(4)に記載してありますのは、訴訟物の価額に対する一定の割合を基準とする場合に、例えば、原告が請求の一部だけ勝訴した場合にどうなるのか、一部勝訴の場合には、勝訴原告が相手方の弁護士報酬を逆に負担することになる場合が出てくるという問題があることをここで御説明しています。非常にわかりやすい例が、ごく最近のニュースで出てきました。警視庁に採用された男性が無断でHIVの検査をされ、母親の前で告知された上で辞職を迫られたという事件で、損害賠償請求事件があり、先般、東京地裁が原告勝訴の判決を出しました。新聞などで大々的に報道されていたので御存じだと思います。実は、この事件では、原告の請求額は2,350万円、認容額は440万円でした。認容率は、簡単に言うと5分の1弱、20%弱です。ただ、事件としては、原告側は大勝利という認識で、報道もそのように扱いましたし、社会的にも同様の評価を受けてしかるべき事件ですが、訴額との関係では、請求額の80%負けています。この6ページの(4)のような計算方法を取るということになりますと、このような事例で、原告が被告に対し、6割の弁護士報酬を負担しなければならないという計算になりかねません。訴訟物に対する一定割合という定め方は、訴訟当事者の感覚には全く反することになるような場合があるという問題点を最後に指摘させていただいて、資料の説明を終えたいと思います。
【高橋座長】 どうもありがとうございました。御意見、御質問がございましたらどうぞ。
【西川委員】 先ほどの法律扶助ですが、被告が代理援助を頼んだときはどのようになっているのでしょうか。法律扶助というのは、被告にも与えるのですか。
【亀井委員】 全く同じです。被告にも扶助が適用されます。特に、裁判になって訴状を持って被告が窓口に来ると、大体裁判しなければという発想が働くので、被告事件についても扶助するようになっています。
【西川委員】 報酬金額は、現実に入手した金銭となっていますが。
【亀井委員】 報酬は裁判が終わったときですから、例えば1,000 万の請求をされて、被告側が勝ったということになれば、それを基準にすることになります。
【西川委員】 現実に入手した金銭と読み替えるわけですね。わかりました。
弁護士会の御説明のところですが、今後の報酬がどうなるのかわからないような時点でもって一部と言っても、何が一部なのかわからないから議論が尚早ではないか的な御示唆があったように思うのですけれども、今、弁護士会の調査でもありますとおり、今の状況においても、弁護士報酬というのは、こんなにも多くばらついているのだなという印象を受けました。今後とも、弁護士報酬というのは、1つに集約してくるということは絶対ないのであって、1時間10万円取る弁護士もいれば、1時間1,000円でやろうという弁護士も出てくる。これは、将来にわたって、弁護士報酬なるものが一定程度に集約していくるということは考えられないのではないかと思うものですから、一応の割切りを置いて検討を進めなければいけないのではないかと思う次第です。質問というよりも意見です。
【高橋座長】 ほかにいかがでしようか。
【飛田委員】 日弁連の調査、これは記名の調査でしょうか、無記名でしょうか。
【日本弁護士連合会犬飼副会長】 これは記名です。
【山本委員】 このアンケート内容が原告側の報酬を中心にしているような気もするのですが、これは、大体対象的に、被告側の受任された方も同じような報酬を取っているはずだろうということなのでしょうか。
【日本弁護士連合会犬飼副会長】 基本的には同じと考えてもらって結構だと思います。
【西川委員】 一部勝訴の場合ですが、これは三輪委員にお伺いした方がいいのかもしれませんが、100を請求して10認められたというときに、訴訟費用の配分というのは、100 分の10とされるのが通常なのでしょうか。
【三輪委員】 現行の裁判では弁護士費用は訴訟費用に入っていないという前提でお答えしますが、大体そのような傾向にあるといってよいと思います。実際問題として、以前、訴訟費用の制度を簡素化して、利用しやすい制度をつくろうということで議論したときに出てきましたように、これまでは、訴訟費用の負担について実際に取立てをする例はあまりありませんでした。そういうこともありまして、裁判所は、請求額と認容額の割合に従って訴訟費用の負担割合を定めるという場合が比較的多かったといえると思います。しかし、訴訟費用の負担については、事案に応じた柔軟な対応が取れるようなシステムになっておりますので、場合によっては、実質的な勝訴、敗訴といった観点から負担割合を定めることも可能です。例えば、請求額に比べて認容額が5割を切ったとしても、その事案に応じて被告に全部を負担させるということもあり得ますし、現にそういう例もあります。
弁護士費用が実質的に訴訟費用と同視できるとして、これを敗訴者に負担させるという制度が導入されたときに、一部勝訴の場合の定め方をどうするかというのは、これからじっくり検討しなければいけないのではないでしょうか。
【長谷部委員】 資料3-4の2ページ目のところで、敗訴者負担の割合を低くしたハ)やニ)の場合をシミュレーションして、月収20万円から30万円程度の個人にとっては10万円程度でも負担感が大きいから、負担部分を少額にしても、それほど萎縮効果の点では変わりないだろうという分析をされています。このような人というのは、資力が非常に乏しいわけで、扶助の適用が仮にあるとしますと、扶助の基準ですと、着手金が17万円で、恐らく現実に入手した金額が1,000万円までということですから10%で、ちょうど30万円くらいになりまして、報酬金の金額も大体同じような感じになるかと思います。現行の扶助は貸与ですから、結局、償還していかなければいけないわけで、全額返さなければいけない人にとって、勝訴すれば、10万円でも相手方から払ってもらえるかもしれないというのは、それなりに大きいものではないかという感じがしますが、いかがでしょうか。
【飛田委員】 少額訴訟につきましては、例えば、本人訴訟ということも、簡易裁判所でもいろいろな手立てを講じておられるようですし、それを実行する人も多いと思われます。この間資料を見ておりましたら、「訴訟動員と司法参加」という京大大学院の棚瀬先生の御著書ですが、裁判利用行動の分析というところでアメリカの事例を挙げておられまして、ためらいを感じる人は少ないのですが、少額裁判所においてですが、訴訟を起こした人の4人に1人にすぎないのです。裁判制度がいかに根付いているかということを指摘されておられるのですが、にもかかわらず、訴訟経験の中でためらいを感じている原因を探ってみたということです。そうしましたところ、ためらいの原因としては、少額裁判所においては、47%がコストであるという回答が出ているようです。それほど根付いているところであっても、少額裁判においては、コストがためらいを生じせしめているという1つの事例ではないかというように考えておりまして、少額訴訟ということと、特に敗訴者負担の問題というのは、これは両面が考えられることだろうと思うんです。細かい金額だからこそ、お金の目減りする分にこだわるという場合もあり得るかもしれませんけれども、実際に本人訴訟が我が国においては可能なわけですので、こういった少額裁判所の事例などは、参考になるのではないかというように、私は考えた次第です。
【亀井委員】 長谷部委員の御質問ですが、長谷部委員がおっしゃるように勝った場合は、結論からみれば多分そうだろうと思います。取れればいいと。私どもも、相談を受けたときも、勝った場合のことだけを考えればそういうことになるわけですが。裁判を起こすときには、勝敗の予測というのもほとんどつかないわけです。自己破産のほかに、扶助で多いのが、年間約4,000件の離婚訴訟です。その場合は、慰謝料請求も付けますけれども、その見通しというのは全くつきません。勝ったとしても、取れるかどうかわからないというのが一番多いわけです。ですから、扶助事件でも、自分の分も17万円払わなければならない。仮に負ければ、更にプラスして相手の分のお金を払うわけですから、扶助該当者には、それは非常に大きい訴訟抑制になるというのが、私どもが考えているところです。
【西川委員】 扶助というのは、勝訴の見込みがあるときではないですか。
【亀井委員】 今の基準は、勝訴の見込みということをものすごく柔らかく、諸外国全部そうですが、勝訴の見込みがないわけではないということで、かなり含みを持たせた要件になっています。ですから、敗訴者負担が入ると、敗訴者分を負担せざるを得ないということを考えると、勝訴要件をかなり厳しくしなければならない。確実に勝つ事件でないと扶助できないというように変更しかねないと思っています。
【高橋座長】 委員間の意見の交換になっておりますが、日弁連の説明に対する質問はもうよろしいですか。
【飛田委員】 資料3-5についてお尋ねしたいのですが、ここで指摘されていることというのは、訴訟件数が非常に多い欧州などでは、濫訴排除の必要性があり、濫訴防止を狙った訴訟費用の敗訴者負担原則ということを結論付けておられるということのようですが、そのように読んでよろしいわけですか。
【日本弁護士連合会犬飼副会長】 ここで主として読んでいただきたいのは、1ページ目の人権規約委員会でフィンランド政府がどういうことを言ったかということです。フィンランド政府は、この敗訴者負担制度というのはどこにでもある、オーストリア、ドイツ、ノルウェー、スウェーデンなど、多くの国で取っている、それはなぜかというと、不必要な法的な手続の遅延を避けるための手段として、むしろ訴訟を抑制するためにこれは使っているということを言っているんです。ここだけ読めば不必要な法的手段とか遅延を避けるためということになっているわけですけれども、いずれにしても、社会的な背景としては、訴訟がすごく多いと、多いのを前提にして、そういう訴訟を抑制するということでこういう制度を取っているんですということを、フィランド政府が自分の国の主張として言っているというところを御理解いただきたいということなんです。この人権規約委員会では、フィンランド政府の裁判所の敗訴者負担の決定を取り消したということです。
【高橋座長】 それでは、日弁連からの御説明を伺いましたので、それに引き続きまして、私ども検討会委員相互による議論の方に移りたいと思います。前回から、そろそろ各論に入ってはいかかでしょうかと申し上げておりますので、今日もその辺りを中心にお願いします。前回も問題になりましたが、敗訴者に負担させるべき金額と敗訴者負担を導入しない範囲と2つの問題点がありますが、どちらから入っても、また、元に戻ってくるということですが、今日全部決めることは勿論できませんが、前回申しましたように、負担すべき金額の定め方の方から入ってはいかがかと思います。
民訴費用制度等研究会でも、いろいろな考え方がないわけではないということですが、大きく分けますと、今日もお配りいただきましたが、第14回検討会資料3の2ですね。①が、上限の金額を定め、その範囲内で裁判所が決定する方式、②が、訴訟の目的の価額を基礎として定める一定の割合とする方式、③が、請求認容額を基礎として定める一定の割合とする方式、となっております。この議論に拘束されるわけではありませんが、こういうものを参考にしながら、御議論をお願いできればと思います。
【飛田委員】 「民訴費用制度等研究会報告書より」ということですが、これは、平成9年1月31日の報告書のことでしょうか。
【高橋座長】 そうだったと思います。
【飛田委員】 その報告書を拝見しますと、弁護士人口の増加が進み、法律扶助制度の充実など、関連諸制度の整備や、新民訴法施行による弁護士業務の変化がある程度収束した段階において、弁護士費用の一部に関する敗訴者負担制度について本格的検討が行われるべきであるという、ある意味ではインフラについての文言がここに書かれているのですが、この必要なインフラというのが整ったという認識に立ってよろしいのでしょうか。私は、この現状は全然変わっていないということを感じるものですから、そういう意味では、この前に、実は法による支配ということで、また一般論だとおしかりを受けるかもしれませんが、申し上げたことがございますけれども、現状というのは一体何なんだろうかということをよく踏まえて、この各論に入るべきだろうと思っているのです。
1つ、司法アクセスによる法の支配ということを考えていった場合に、法に明文化されたと言いますか、明記された権利というのを、それが暮らしに根付いて、権利の内容を知って、例えば侵害を受けたときや被害を受けたときに、それを行使する。裁判にアクセスしていくということ、何か起こったとき、裁判所は私たちの強い見方としていつでも門戸を開いていてくれるという非常に強い親近感を抱いているような状況であれば、これは法秩序の維持と言いましようか、根付いた、親しみを持った司法へのアクセスがしやすい状況ということが言えるのではないかと思いますが、現実は全くそうではなくて、残念ながら、裁判所に対して親近感を持って、国民にとっていつでも身近な存在であるというような意識を持っている人は少ないわけですね。
更にもう1つ、法の支配ということを考えていった場合、より成熟した権利の主体としての、我々がなさねばならないことというのは、発生した権利の侵害とか被害の実態というものの内容をよく分析して、新たな法解釈を求めていくという意味では、法改正とか、制度の欠陥などを司法アクセスによって、新たな法解釈を導き出してもらうことによって、法の支配と言いましょうか、新しい法秩序を構築していくという未来指向型のものと、大雑把に言いますと、2つあるのではないかと思います。未来指向でない、現状の、まだ使いこなせるかどうかという時点でも、大半の人はそうではなくて、ごく一部の人が未来指向で裁判を起こしても、前例にならいますというような判決が多いし、大変後ろ向きなケースが、残念ながら今まで多くて、なかなか創造するということが難しかったというのが現状ではないかと思うのです。現状分析は、いろいろなお考えがあると思いますから、今、するべきではないかもしれませんけれども、法律そのものにしても、法の在り方というものを考えた場合、昨今では、コンプライアンスの必要性とか、ガバナンスの必要性ということが言われています。というのは、やはりモラルが非常に低下しておりまして、現状が大変混乱してきているという社会的な事象もあるわけですが、それは法制が追い付いていない。つまり、大変甘い罰金であって、誰でもポケットマネーで出せるような罰金であったがために、法の抜け道をかいくぐるような非常に情けない事態があちこちで生じてしまったような現状もあるわけです。我が国にとって、法の支配の実現にとっては、現状で使いこなす法の秩序形成ということともに、未来に向けての新しい法解釈を求めていくという権利主体としての自覚を持って関わっていく、アクセスしていくような主体これらの両方を育てていく必要があるのだろうと思いますけれども、今、そのために、インフラの整備を各方面で、司法制度改革推進本部の検討会でなさっておられるのだと思うのです。私たちの司法アクセス検討会の役割というのは、その中でどういう役割を持つべきかというと、前回2割司法という言葉を引用させていただきましたが、そういう状況から脱していくための条件整備が求められているのではないかという気がします。特に、規制緩和の中で、先ほどのようなモラルの低下が蔓延してまいりますと、安全性が低下してまいりますから、まさに、今、裁判が、非常にこれから役割を発揮していく必要性が、産業界の在り方を見ても必要な時期でございますから、そういうことを考えますと、諸外国と我が国を比べたときの裁判の件数やら、法律扶助の貧しさとか、いろんな問題がございますけれども、まず、私たちにとって親しみを持って司法というものが余りとらえられていないということを踏まえていく必要があるということを痛感しております。平成9年の民訴費用制度等研究会のインフラの問題が解決がついていないのであれば、よほど慎重にこの問題に関わっていかないと、これは大変ではないかと思うのです。
私は、ある保険会社に聞いてみましたけれども、聞いてみたら、普通の人がすぐに利用できるような弁護士保険、権利保護保険になっていないんです。損害保険に付随して付けることはできますということで、追加で申し込むことができますかと言っても、そういうことは今のところはできませんと言われますし、保険1つ取っても無い。そういう現状というものを、やや回りくどい言い方になって恐縮でございますけれども、考えていかないと、とても机上の空論で話を進めていくようなことになりはしないかということを恐れております。
【高橋座長】 御意見はよくわかりました。
金額の合理的な定め方、予測可能で合理的な額は、どのような方法を取ればその理想に近付けるかという点について、御議論をお願いいたします。
【三輪委員】 日弁連の問題意識や飛田委員が言われた問題点は肝に命じて、これから先も考えていきたいと思います。ただ、議事を進める上での意見を述べさせていただきます。
第14回検討会資料3に3つの負担方式が掲げられていますが、まず、そのうちの①の「上限の金額を定めて、その範囲内で裁判所が決定する方式」というのは、司法制度改革審議会意見書の「当事者の予測可能な合理的な金額」ということには一番遠いのではないかと思われます。当事者にとっても予測が非常にしにくいですし、以前から問題提起がされているように、裁判所がどのような基準で決めるかということについても、明確で合理的な基準というのは、恐らく決めにくいでしょうから、裁判所の裁量に全部任せるということになりがちで、そうなると、ますます当事者の予測可能性は妨げられるという感じがします。それを前提とすると、ほかにも方法があるかもしれませんが、ここに書かれているものとしては、②か③かという選択になるのだろうと思います。そこで、最初に事務局が説明された第5回検討会資料12の中の法律扶助協会の着手金の定め方、この程度の金額がいいかどうかというのは全然別の問題ですけれども、定め方の在り方としては、非常になじみやすいのではないかという印象を受けました。司法制度改革審議会の意見書が狙っている方向性の1つの回答としては、法律扶助協会が定める着手金の金額の定め方が非常に参考になるという感想を受けました。
次に、金額の問題ですが、今日の日弁連の説明にあったように、例えば報酬金を入れるのがいいのか、着手金にしても、全国的なアンケートの平均的な水準を基にするのかというイメージは、ほかの委員の方はどのようなお考えかわかりませんが、私のイメージはちょっと違っていまして、むしろ、控え目な金額を設定すべきだという前提で考えています。その点でも、法律扶助協会から出されている着手金の定め方というのは、大いに参考になるのではないかという気がいたします。
【長谷部委員】 ただ今三輪委員のおっしゃった、①の裁判所が決定する方式に問題があるというのは、私もそう思います。日弁連の方で3月10日にプレゼンをされたときに欧州でも訴訟抑止効が出ていると言われたイングランドの例でも、裁判所が裁量で決定する方式が取られているということが予測可能性を減ずる1つの要因であるとされております。そういった意味でも、裁判所の裁量ではなく、訴額を基準とするのが、予測可能性が非常に高いと考えます。
【西川委員】 私も賛成でありまして、訴額に準拠するべきであると考えます。そのときに、三輪委員のおっしゃられた法律扶助の基準、これがそのまま適用されるとして、金銭事件の着手金額の22万円が一番上だというのでアクセスが増すかどうかということになると、恐らく、勝ったときに弁護士さんに払うお金というのは、もうちょっと払うということでしょうから、22万円が打ち止めになるのがいいのかどうかということについては、もう少し議論が必要ではないかという感じはしております。いずれにしましても、民事法律扶助法に従って基準があり、敗訴者についても同じルールがあるということですと、こういうものを1つの基準にして考える。そのときに、着手金だけにするのか、報酬金的な一部の考え方を、それよりもモデレートな形でセットし直すのか、そういうことで検討を進めていただければどうかと思います。
【飛田委員】 今の御議論というのは、確かに、今日御用意いただいているこのペーパーの中の各論ということで、お話はよくわかりますが、敗訴者負担を考えていくとすれば、今考えなければいけないのは、行政訴訟などの片面的な敗訴者負担制度ではないかと考えております。
【高橋座長】 何を除外するかは次に議論しますので、金額の決め方、何が予測可能で合理的な金額になるか、そちらに絞っていただければと思います。
【飛田委員】 確かに、合理的な決め方というのがテーマになるのがわからなくはないのですけれども、合理的に決めるということは、先ほどの日弁連さんのお話や、制度改正の途上にあって、独禁法の関係もあって、全く未知数であるというようなお話を伺ったばかりでございます。そうしますと、着手金とか、法律扶助協会の基準も白紙になるということではないですか。これは残るのですか。
【高橋座長】 法律扶助の基準は残ります。
【飛田委員】 この根拠というのは、やはり弁護士さんの報酬が根拠になっているのではないですか。
【小林参事官】 法律扶助の支出基準は、民事法律扶助法に基づいて法務大臣が認可したものですから、「日本弁護士連合会の報酬等基準規程の範囲内」ということは書いてありますが、それ自体を基準にしているということではありませんので、支出基準自体がなくなるということは、今回の法改正の対象にもなっておりませんし、予定はされておりません。
【飛田委員】 報酬を基礎にはしているわけですね。
【小林参事官】 先ほど申し上げたように、この民事法律扶助事業業務規程はどのようなことを考えて定めているかと申しますと、業務規程の第24条で、被援助者の著しい負担になるようなものではないこと、適正な法律事務の提供を確保することが困難となるようなものではないこと、援助案件の特性や難易を考慮したものであること、この3つの観点を考慮して、法律扶助協会の方で定めて法務大臣の認可を受ける、法律の規定上そのようになっておりますので、法律の規定と今の業務規程の趣旨に沿って、「代理援助支出基準表」が定められているということです。
【飛田委員】 法律扶助に関しても、大幅な見直しをしなければならないという課題があるのではないかと思いますけれども、ここに引用されているのは、既存の秩序と言いましょうか、既存の制度をそのまま踏襲していって、新たな法律扶助制度の構築というのは行わないということになるのですか。これを利用するということは。
【松川次長】 法律扶助の基準を今後の敗訴者負担の議論の基準にしてはどうかという御意見ではないと思います。予測可能な合理的な基準の決め方の考え方、フレームワークとして、法律扶助協会の業務規程で考えられているような区分けの仕方や計算の仕方というのが参考になるのではないかという御意見ですから、それは、今後検討会で議論していただいて、どのような決め方が一番いいのか、あり得るのかどうかも含めて議論していただければいいと思います。
それから、法律扶助の在り方が別途議論されていることは確かですし、今後、アクセス拡大の観点から十分見直しをしていかなければいけないと思っておりますが、少なくとも、法律扶助をする際の支出の基準というのは決めておかなければいけないということは、今後も変わりようもないと思っておりますので、恐らくは、大きな枠組み、基本的な枠組みは変わらないだろうと思います。具体的な金額などは、見直しの過程の中で変わり得る可能性はあると思いますが、大きな枠組みは変わらないのではないかということです。
【亀井委員】 導入する部分もあると考えますので、一応抽象的ですが、考えているところを申し上げますと、やはり、上限は設けてほしいと思います。今朝の朝日新聞に司法改革特集があって、これを見たら、知的財産の裁判で約15億円の判決が出ていました。これだと1%としても、1,500万円くらいになります。幾ら事業家対事業家でも、これはちょっと高過ぎるであろうとは思います。常識的な線で、上限をまず決めてほしい。私は、上限が法律扶助の基準くらいではないかと思います。
【西川委員】 今は22万円ということですね。
【亀井委員】 はい。その辺りが上限くらいで、最初は慎重に、おずおずとということになると、その辺りから始める。
もう1つは、裁判官の裁量の問題ですが、フランスのように、全部裁判官の裁量と言うつもりはありませんが、一定程度の裁判官の裁量というのは必要であろうと思います。額についてと、負担を命じるかどうかについて、両方について必要であろうと思います。フィンランドの例を見ても、裁量のない規定が国連の人権規約委員会が違反だと言ったようで。同志社大学の先生が紹介してくださいましたが、このような例もあるようですから、やはり裁判官の裁量は入れておいてほしいと思います。
あとは、どういう基準なのか、ちょっと考えあぐねているところがありますが、自分で言いながら変かもしれませんが、法律扶助の基準くらいを一番の上限にしてしまうと、訴訟を回避せざるを得なかった当事者に利益になるのかどうか、何のためにこれを入れるのかという気もしないではないので、いずれにしても、敗訴者負担というのは偏頗な制度ではないかと、私としては結論ぜざるを得ないんです。
【高橋座長】 今日はいろいろと御議論いただければと思います。2番目の導入しない範囲、それは司法制度改革審議会の意見書の中でも我々に託されているわけですが、どんなものが導入しない範囲になりそうか、御意見を賜ればと思います
【山本委員】 私は、「政策形成型訴訟」というくくりで導入するしないを決めるのは、余りよくないと思っております。政策形成型訴訟を認定するのが誰なのかということから見ますと、裁判所から見れば、認容したときには政策形成型訴訟だと思いますが、棄却したときには普通思わないわけです。そういうことは、裁判所の判断にそもそもなじまない。しかし、かと言って、第三者的な機関が裁判所に指示するというのは、これは現行の憲法上、非常に疑義があると思います。それと、政策形成型訴訟も、主観的に政策形成型訴訟だと思って起こすものと、本人としては普通の民事訴訟を起こしているのに、期せずして政策形成にしてしまったという場合もありまして、これを基準とするのは、私は適当ではないと思っております。前回も申しましたように、1つのメルクマールとしては、定形的に力の格差がある当事者間の事件と、例えば少額訴訟が典型だと思いますが、そもそも弁護士というものを余り想定していない訴訟であるなどという形で、幾つかの法的に比較的基準が明確に立てやすいものを拾い上げていくという手法が、最も適切ではないかと考えております。
【亀井委員】 確かに、「政策形成型訴訟」というと、定義はどうするのかという問題はあるので、日弁連としては、3月にプレゼンをしたときに、そういう名前では呼ばないように努力して、いろいろ細かく問題提起をしたつもりです。これに沿って、入れない部分を考えていただけければありがたいと思います。1つは行政訴訟、あとは労働関係訴訟、個人の権利・利益侵害に対する訴訟、それから人事訴訟などですね。片面的敗訴者負担についても、そのときに述べたいと思います。
【西川委員】 個人の権利・利益侵害に対する訴訟というのは、どういう類型でしたか。
【亀井委員】 3月10日の第13回検討会の資料4-1に日弁連の意見書があります。ここで類型について書いてあります。消費者契約に関する訴訟も、一般民事も、そういう事案については入れないでほしいと書いてあります。第13回検討会資料4-1の19ページです。細かくは19ページ以下に書いてありますが、大前提としては、13ページから書いてあります。
【高橋座長】 第13回検討会資料4-1の20ページのCに、「公害・環境・薬害、その他事業者活動による個人の権利・利益侵害に対する訴訟」とあります。公害・環境・薬害訴訟と言ってもいいのですか。
【始関委員】 今、亀井委員がおっしゃられたように、類型別に議論していかないと、議論すると、余り皆さんの言うことは違わないのではないかという気がしないでもないので、せっかくたたき台として日弁連からお出しいただいたものがあるわけですので、適宜座長の方で、行政事件訴訟とか、消費者契約というように分けていただいて議論をしてはどうでしょうか。
【高橋座長】 御提言を受けまして、私もそうさせていただきたいと思います。今、行政事件訴訟と言われましたが、これを除外したいという御意見はわかりますが、なぜ除外するのかという理屈の方についても、御議論をいただければと思います。
【飛田委員】 例えば、近年の動きを見ても、ある意味では明らかではないかという印象を持っていることが実はあるのですが、昨今、政策評価ですとか、パブリック・コメントというものが導入されてきております。しかし、まだそれは、本当に導入されたばかりで、生まれたてみたいな制度でして、例えばパブリック・コメントなども、私も調べてみましたが、パブリック・コメントとこれで呼べるのだろうかというような、結果が出ましたということが各省のホームページに載っているわけですが、その中に、現実に、1週間とか8日間しか意見の募集期間がないものがあります。それについては、インターネットを通じてなされているわけですが、インターネットを使いこなせる人と、使いこなせない人とのデジタル・ディバイドという問題も勿論ありますし、日数も問題外です。確かに、行政相談というのを、都道府県や市町村などの窓口などで行っておられたり、国でもそのような制度は設けてはおられますが、そのやり方1つを見ても、大変まだまだ未熟なんです。たまたま、アメリカの政府の高官の方の話を聞く機会が昨年と今年とありましたけれども、アメリカの場合、重要な安全に関わるような案件については、政府が提案して、60日間は猶予を置くとおっしゃっていました。そこでいろいろな質問が出てきたら、更に60日間、意見が出てきたものを集約して、それぞれに回答するということをおっしゃっておられました。それを2人の方から伺っていまして、現実にアメリカの国内では行われています。国が、行政として、国民に情報を開示して、意見を吸い上げていく、そして、その内容を浸透させていくということを大事にしているからだということをおっしゃっておられました。日本の場合には、先ほどのように論外のものも現実にあります。10日間のものもあります。更に、情報開示という点については、特定の組織にだけ話を持っていって、一応説明したということにしてしまったり、そこから先に十分情報が伝わっているかいないかを問わず、懇意のところに情報提供するようなことも、行政によってはあります。
【高橋座長】 それはわかりますが、それが行政訴訟とどうつながるのでしょうか。
【飛田委員】 現実を見ましても、行政の施策についての国民への情報開示が不十分だし、情報を収集する、意見を聴取するということか不十分だということです。ですから、行政訴訟が起こる種を制度的に秘めているということになると思うのです。やはり情報開示をして、そういう中で国民も参加していくということが、司法への参加も同様ですが、今、望まれていることだろうと思います。
【高橋座長】 私と前提がずれるのかもしれませんが、行政訴訟を考えるときには、行政のある政策をするのがいいか悪いかとか、それも入るのもしれませんが、具体的な行政処分があって、個人が不利益を受けたから取り消せとか、そのようなことを法律家は普通考えてしまいます。ですから、これから出そうと思っていたのですが、大銀行が税金をたくさんかけられ過ぎたという理由で税務署に対して処分取消訴訟を起こす、これが私の頭だと行政訴訟になります。この間も大銀行が国税庁に勝ったという珍しい例が出たそうで、ためにする議論を今申し上げているのですが、これは、提訴萎縮効果はないと思います。弁護士報酬を敗訴者負担にしたことによる提訴萎縮効果はないだろうと思いますが、しかし、先ほど山本委員から言われましたように、個別を見ればいろいろあるけれども、定形的に見たときにどうかという、こういう議論をここではすべきではないでしょうか。
【飛田委員】 国家賠償とか、いろいろな形の判例がたくさんございますね。その中には、多様な権利の侵害があるわけです。高度経済成長期頃から、省庁ごとの規制法が各産業を育成するような形でたくさんありますね。国会議員による立法というのは、大変日本は少ないですから、そこで行政が法律をおつくりになっていかれるわけですので、どうしても産業育成の側の法律になりがちであって、昨今のBSEなどの発生について見てもそうです。
【三輪委員】 行政訴訟の中には、国家賠償を入れない前提で考えていただいた方がいいと思います。行政訴訟は、損害賠償請求ではなくて、例えば、火力発電所施設を建設する設置許可処分が不当だから取り消せとか、あるいは、運転免許の取消処分を受けたので、それが不当だと主張して、その処分を取り消しなさいというようなものが基本になります。その偏った立法をしたことによって国民が損害を受けたから、それについて賠償してくださいというのは、今の話題とは少しずれているのではないかと思います。
【飛田委員】 すみません。多少ずれたことを申し上げました。それプラス、話が長引いて恐縮でございますが、実際に、例えば原発の問題にしてもそうですが、制度的に、法律がいろいろつくられていて、そこで認可措置が取られたりいろいろしているわけですけれども、対応が十分でなかったがために、実際に原発の事故などでも、問題があるのではないかと言われているにもかかわらず、調査が徹底されていなかったり、あるいは、検査制度が未熟だったために、問題が生じたということがあったと思います。そういう意味では、立法・行政を全体的に、私の願いとしては、司法が十分コントロールしていっていただきたい。足りないところは指摘していただきたいという期待感があるわけです。現実にはそうではないので、先ほど例が悪かったようですが、新しい取組みですら、次の問題を生みかねないような、それでもう話をしてありますよ、あなた方何で知らないんですかと言われれば、知りませんでしたからということで裁判が起こせるのかどうか。情報の不開示と言いましょうか、情報の不徹底の問題などでは、いちいち裁判が起きておりませんが、情報格差ということが、非常に大きな、本来であれば、BSEの問題などにしても、多様な問題が背後にありましたから、私たちが行政に対する訴訟を起こす手立てがほしかったわけですが、それもなかったということなので、行政訴訟などは、片面的な敗訴者負担制度ということにしていかないと、社会を活性化したり、新しくつくり変えていくという活力が生まれないと思います。既にこう決まったものですから、まあまあというような、こういうことが地方では現実によく行われていますので、どうぞ皆さん御理解くださいよという形で、実際には、背後にいろいろな意味での政官業の癒着があったり、所与の条件の中での既得権の獲得によるいろいろな問題が起こっていても、それが見逃されたり、訴訟にまで至らないようなケースが多々あったと思うのです。ですから、処分の撤回などの訴訟を起こすということは、ものすごく勇気の要ることで、皆さんお金も要るし、それに立ち上がる方というのは、むしろ社会的貢献者として、行政訴訟の支援をするべきような場合だってあると思うのです。裁判で負けたようなケースなどがあっても、そういう意味では、未来指向でない場合の、前例にならってというような結果が出る場合が多いものですから、そのことだけ、どうぞお含みいただければと思っております。
【高橋座長】 今日はまだそこまで踏み込む必要はありませんが、除外した方がいい範囲については、やはり理由を少し付けたいと思います。
【三輪委員】 今の飛田委員のお話も含めてですけれども、2つくらい考えられると思います。1つは、抗告訴訟を念頭に置くわけですが、被告は、現行システムを前提とすると、指定代理人が訴訟行為をすることが多いわけです。弁護士を頼んだ場合と弁護士を頼まないで指定代理人でやっている場合とで差をつけるのがいいかどうかというと、そこは若干問題かなということが1つです。もう1つは、飛田委員が言われたことですが、公権力の行使をチェックする、それを取り消して効力を消滅させるのは裁判所だけの権限ですので、公権力の行使を争うための方法として、国民に残された唯一、最大の手段としての裁判という制度を気楽に利用していただく、負けたとしても、弁護士費用までは負担していただかなくても結構ですという政策的な配慮があるかどうかという、その2点ではないかと思います。
【高橋座長】 先ほど出た中に、労働事件などがありました。労働訴訟には指定代理人の問題はありませんし、公権力の行使の問題もありませんので、全く別な範疇ですが、いかがでしょうか。
【始関委員】 議論するときに、行政訴訟や労働訴訟というと、訴訟関係の法律家の人はすぐにわかりますが、そうではない委員の方は、事件のイメージがわからないと思いますので、もう少し具体的に、具体例を挙げた方がいいと思います。
例えば、先ほどの行政訴訟というと、課税処分の取消訴訟が典型だと思います。労働訴訟でも3つの場合があります。使用者と労働者個人の間の訴訟、賃金を払ってくれないので払ってくれというものが一番典型です。もう1つは、労働組合と使用者との間の訴訟、これは不当労働行為で、取消訴訟になると行政訴訟になってしまいますが、不当労働行為で損害賠償を請求するというものがあります。3つ目が、労働組合同士の訴訟があります。最近は多いのでしょうか。
【亀井委員】 最近は余りないでしょう。
【始関委員】 以前は、組合分裂に伴う財産の分割請求などがありました。
【長谷川委員】 セクシュアル・ハラスメントも入りますか。
【始関委員】 セクシュアル・ハラスメントは、労働訴訟とは普通言いいません。損害賠償請求訴訟でしょうね。
【長谷川委員】 今は多いでしょう。
【高橋座長】 今言われたような事件類型で、労働組合は別にして、個人と企業の場合はどうでしょうか。最終的には、それをまたどう定義するか、我々はもう少し詰めなければいけませんが、今日は、今、始関委員が言われた中で、労組対労組を抜かしてお考えいただければと思います。
【西川委員】 雇われている人が雇っている人を訴える訴訟ということですか。
【山本委員】 「使用者対被用者」というのは、私は、除くべき典型的な場合であると考えています。それは、力の格差が圧倒的にあるということですし、従来ですと、被用者の方も、組合の援助等によって、それなりの経済的にも精神的にも援助を受けていたようなこともあったようですが、最近は組織されていないという方も非常に多いので、組合の存在というのは、ここでは余り考えるべきではないと思います。それに対して、「組合対使用者」という場合は、組合として組織されて、それなりのバーゲニング・パワーを持つべきだ、あるいは持っているという前提で労働関係調整法はできているわけなので、そういう点からいきますと、私は、団体労働訴訟については、敗訴者負担の例外とする必要性は、必ずしもないのではないかと思っております。
【亀井委員】 それはやはり問題で、不当労働行為の事件というのは、大体は少数組合、今や、大多数の労働組合ではそんなにない時代になってしまって、少数組合が大変多いときで、多数の人たちでやれるという形ではないわけですから、これも排除すべき中に入れてほしいと思います。
【高橋座長】 提訴萎縮効果があるということですか。
【亀井委員】 はい、そうです。
【山本委員】 今は損害賠償くらいですね。つまり、行政訴訟が、抗告訴訟が残るとなると、労働委員会の処分に対する抗告訴訟ということはありますね。
【飛田委員】 先ほど亀井委員の言われた範疇の中に入るのかもしれませんが、男女共同参画に反するような問題が生じたときの裁判がありますね。
【三輪委員】 賃金格差を是正してくれというのが典型ですね。
【飛田委員】 人数の問題ですとか、例えば、最近で言えば、一般コースと総合職コースというような問題がありましたり、新たな問題が出てきているようですが、そういう問題とか、あるいは人数の配分、性別による人数配置の問題ですとか、チャンスが得られるか得らないかという範囲の問題もあります。
【藤原委員】 それも、基本的には雇用主と被用者のケースですから、当然含まれてくるのだと、私は思います。
【三輪委員】 今の議論の流れを止めるつもりはありませんが、最近多いのは、この不景気を反映して、未払賃金や未払退職金の請求が多くて、労働者の皆さんは勝訴率がすごく高いんです。このような事件は労働事件ですが、中身から見ると、勝った労働者に、自分の給料を目減りさせるような形で弁護士費用を払わせるのはお気の毒で、むしろ敗訴者負担を導入してもいいのではないかという気もしないではないです。しかし、そうではなくて、政策的に、労働訴訟一般でどちらを重視するか、どのようなものを典型に考えるかということですかね。
【亀井委員】 本当は片面的敗訴者負担でやれるかと思います。
【三輪委員】 片面的敗訴者負担の議論は、また後にしましょう。
【高橋座長】 片面的敗訴者負担の議論は前回もありましたが、先の議論ですね。
【山本委員】 未払賃金の支払いも、地位確認と併合される場合と、端的に未払賃金を払えという、雇用関係があるかないかということとは関係なしに、雇用関係があることを争うわけではないけれども未払いだという場合で、明確に区別をするのは難しいので、私は、個別労働訴訟は個別労働訴訟ということで、ひとくくりにした方がいいのではないかと思います。
【高橋座長】 三輪委員も、だから外せとおっしゃったわけではないのであって、そういうものもあるということです。
もう1つ、人事訴訟も先ほど出ましたね。人事訴訟は、説明するまでもなく、夫婦の離婚とか、親子関係があるとかないとか、養子縁組がどうかという事件ですが、まずそれ自身で考えましょうか。これは一生の問題だから、弁護士報酬がどっちに行こうが、起こす人は起こすという議論になるのでしょうか。それとも、負けたら弁護士報酬を負担させられるから、離婚訴訟を控えようとなるのかどうか。
【亀井委員】 それはあると思います。人事訴訟では、離婚が飛び抜けて多く、ほかはそれほど数が多くありません。今、離婚訴訟自体がどんどん破綻主義になってきつつあるところで、勝ったとか負けたとかという度合ではなくなってきているというのが1つです。破綻主義ではありますが、裁判官の世界観によってかなり変わってくるということで、勝訴の見込みが読めないことが多いのです。それで離婚をして、相手の弁護士報酬もと言ったら、躊躇して、10年でも別居してみますみたいになる人も出てくると思います。今でも、勝つか負けるかわからないというと、では、別居を10年してから裁判を起こしますという人もいるくらいです。ですから、離婚訴訟は、やはり外すべきだと思います。ドイツでも、人事訴訟は除外例になっていますし、フランスでも、離婚者訴訟は、ほとんど敗訴者負担にしないというのが実態のようでした。
【藤原委員】 亀井委員からは、どちからかに著しくリソース、資源が偏ったようなケースを想定していろいろお話がありましたが、私は、基本的には、個人対個人の間で、そもそもリソースの遍在が初めからはなかった関係から生じているようなものに関しては、除外すべきではないような気もします。そして、結果としてそうなってしまったというとき、それに至るまでには様々なチャンスがあって、使用者と被用者のように、明日からもう来なくていいと突如言われるようなケースは、反対にはなり得ないわけです。だけれども、親子関係は別ですが、離婚のようなケースは、そもそも、様々な局面で、リネゴシエートするチャンスも、お互いが当事者として持ち得る、だから、容易に外すべきではないということと、それから、外す根拠をどこに求めるかということをきっちり言っておかないと、結果としてそうなった場合と、初めから著しく両者が有している権限及び資源が非対象であるという場合と、どのように考えるのかということなんです。労働問題にしても、労働組合と企業との関係は、理想形は、労働組合はそのために、言わば集団でネゴシエートできるための組織として成立しているわけですが、しかし、実態としてその能力を持ち得ないという場合に、更に泣き寝入りをしなくてはいけないということになり得るわけですけれども、それもどう考えるべきかというのは、プリンシプルで言うのか、先ほどおっしゃったように、このごろの労働訴訟はどちらかというと、こういうケースが多いですとおっしゃいましたけれども、それは実績主義ですね。実績主義を取ってしまうと、ほとんど収拾がつかないのではないかという気がしますので、まずはプリンシプルから入っていって、実態はこうだけれども、しかし、プリンシプルはここにあるということをまず示して、順序としてはその方がいいかなという気はしています。
【亀井委員】 実態を外して裁判があるわけではないので、法律だけ形式的に見て、そこで切るというのは、大変難しいと思います。
【藤原委員】 そうではなくて、まず、実態としてはこういう分け方がありますねというのではなくて、プリンシプルとしては、まずこう分けましょう。分けて右に行ったもの、左に行ったもの、分けたものを、もう一度細かく見るという作業をステップ・バイ・ステップでやるべきであるということです。そうでないと、あたかも、実態をベースにした議論が行われたような誤解を招きます。この会議で我々が行っていることは、いろいろな情報をお持ちの方が、それぞれにその情報をお教えいただくのは大変重要ですが、それと同時に、どのような議論がなされたかというプロセスも大変重要だと、私は思います。
【亀井委員】 言っていることはよくわかります。ただ、私などは、現場で生きていますので、現場の話がまず頭にくるんです。離婚は年間26万件くらいあるわけです。だけれども、調停もまだまだ少ない。訴訟に至っては、何千件という件数くらいでしょうか。すごく少ないわけです。その中で、きちんとした取決めをしないままに、あっという間に離婚届を出して終わったというのは、いい状態ではないと思います。だから、やはり第三者の目を通した、今度人事訴訟は全部家裁になりますが、そういうところで、弱い者がきちんと公平な立場を確認できるような訴訟を利用するということ、この人事訴訟の部分については、特に司法アクセスを言っていかなければいけないところだと思います。そのときに、安心して裁判を起こせるという、先ほど三輪委員はいいことをおっしゃっていただきましたが、敗訴者負担というのは、課さない方がいいと思います。
【藤原委員】 亀井委員がおっしゃっていることはよくわかりますが、特に離婚に関してのお話が出ましたので、私が感じることを申し上げます。離婚をした当事者たちが、その関係が破綻した時点で、一生顔を会わせなくてもいいというケースもあるし、そうではないケースもありますね。私は、恐れずに訴訟を起こすことができるというのも重要だと思いますけれども、当事者が最も納得できる形で収めるというのも、その間に子どもだとか、両親だとか、1対1で結婚はしたものの、離婚に至るまでには様々なしがらみというか、人間関係をそこで構築しているわけですから、特に何でもかんでもとは申しませんけれども、裁判で第三者が入ってと言ったときに、それを必要とする人とそうではない人を想定すべきで、より多くの人がそれを利用するのが社会的に望まれた形であるとは、そもそも結婚するときには誰も裁判所に行かないのに、離婚するときに裁判所に申立てをするわけです。そもそも破綻主義で多くの片がつくのだと思いますが、世の中、では裁判で決まったら、明日から笑顔でもう一度相対することができるか、フェアな関係に戻れるかというと、そうでもない気もしますので、ケース・バイ・ケースで、勿論それは判断されることですけれども、特に離婚に関しては、私は、必ずしも、今、亀井委員がおっしゃったような、想定していらっしゃるケースと、私が想定しているケースが違うのだと思いますが、しかしながら、より第三者が入った形でというのが、よいとばかりは言えないのではないかという気がしています。
【亀井委員】 よいとばかりは言えないのですが、日本の場合には、余りにも少な過ぎるんです。やはり、裁判に躊躇してしまう。裁判は怖いし、知り合いの弁護士もいないしということで、訴訟、調停にまでたどり着けない人が多過ぎるのが、今、問題なんです。だから、司法アクセスをよくして、気楽に裁判所に駆け込めるようにしましょうということで、政府も考えているわけですから、今のところは、アメリカ的な訴訟を予定しているわけではなくて、自分の権利を守るために、裁判所に気楽に行きましょうというのが、スタンスだと思います。
【高橋座長】 離婚だと調停前置ですね。そこのところが、どっちに転ぶか私もよくわかりません。議論していただく必要がありますね。調停の段階では、弁護士報酬の負担などということはありませんから。
【長谷部委員】 私は、まさに座長が御指摘になったところを指摘しようと思っていたのです。先ほど、フランスは人事訴訟を除いているとおっしゃいましたが、我が国の場合は協議離婚があるとか、調停前置だとか、裁判外で離婚ができるという前提がありますので、同じに論じられないところがありまして、なかなかこの問題は難しいと思います。藤原委員が先ほど来御指摘になられているのは、バーゲニング・パワーに格差があるような労働訴訟などとは違った理由で除かなければならないだろうと思います。そこのところがなかなか難しくて、私も言い難いところがありますし、今日で議論が終わりというわけでは全然ありませんので、別に急ぐ必要はないと思いますが、感覚的な物言いで恐縮ではありますが、損害賠償請求や貸金請求で、相手が応じてくれなかったから訴えを提起せざるを得なくなって、それで勝訴したという場合と、離婚のように、婚姻が破綻していて、どちらの当事者が訴えを提起してもいずれは離婚の認容判決にならざるを得ないような場合とが同じに扱えるのだろうかという気がします。
【始関委員】 私も同じような感じですが、私は、基本的には、藤原委員がおっしゃるプリンシプルをまずしっかり立てて、それで当てはめてみたときに、不合理なところが出ればその例外を設けるというのが、合理的な検討の仕方だと思います。そういう意味のプリンシプルの1つとして、バーゲニング・バワーの差というのが、大きなプリンシプルになるのだろうと私も思っています。ですから、先ほどの労働事件の企業対労働者個人というのは、バーゲニング・パワーが違いますから、除外しなければいけませんねということがそこで出てくると思います。では、人事訴訟はどうかというと、長谷部委員や藤原委員がおっしゃられたように、バーゲニング・パワーは、ほぼ対等だと考えるべきだろうと思います。だから、私も迷ってはいますが、今、実際の離婚訴訟というのは、基本的には裁判所は破綻主義ですから、話し合ってもだめ、調停してもだめで訴訟に来たのだから、婚姻を継続し難い重大な事由があるに決まっているのです。それでも何で訴訟までいくかというと、例えば、子どもの取り合いとか、慰藉料とか、そういうところが訴訟の実際の争点になっているものが多い。このような場合に、例えば、どちらが子どもを取るかというのは、言わば親だけの問題ではなく、もう少し広かりがある問題のような感じもして、そういう観点から、除くとすれば除くのかなというところです。除いた方がいいのかどうかということ自体、余りよく自分の気持ちが決められませんが、除くとすれば、例えば、訴訟手続に検察官が入る場合があるとか、職権主義訴訟構造が採用されているとか、そのような点でも、公益性のようなもの、どちらかというと、子の利益のための離婚訴訟という感じのところもあると思いますので、単なる当事者だけの問題ではない部分があるという、それは行政訴訟などもそういう面があるのかもしれないと思いますが、そういう観点から、除くということは考えられるのかもしれないと思います。
【飛田委員】 ドメスティック・バイオレンスなどの問題も、最近大分取り上げられていて、実際のところ、身の上相談などの情報にはそういったものも多いようですから、そういう事例もあります。先ほどお挙げいただいていた中に、医療のお話が出ていましたが、薬害なども、ちょっと医療と違った次元であると思います。
【高橋座長】 ドメスティック・バイオレンスは、どちらということでしょうか。
【飛田委員】 その場合、離婚に至る場合というのも多いでしょうし、また、それが怖くて離婚を申立てられない人もいるわけですね。そういうのはストーカーの問題などとも関係があるのかもしれないですけれども、傷害、むしろ刑法にも関わってくるような事例についても、しっかり見分けていかなければいけないと思いますが、とにかく、離婚原因の中に多様なものがあると思いますので。
【西川委員】 ドメスティック・バイオレンスの場合だと、敗訴者負担を入れた方がいいということになりますね。
【高橋座長】 その種の議論はこれから詰めていきますし、この検討会は法案そのものをつくるわけではありませんから、余り細かい議論をしないつもりで事務局にお願いしていますが、先ほど始関委員が言われましたように、人事訴訟と言っても、実際は一緒に付いている損害賠償とか、そういったものの方がメインであったり、離婚ではなく子どもの問題がメインだったりというような問題もありますので、もう少し幅広く見なければいけませんので、そういった点は、また今後御議論をお願いいたします。
今日はもう時間を超過いたしました。今日は第1回の粗ごなしですし、結論は全然出ていないと私は認識しております。まだまだ今後議論していただきますし、詰めた議論をしなければいけません。金額の決め方についても、多少のバランスはあったかもしれません。まだまだ何も決まっていないという前提で、次回以降もお願いします。今、訴訟類型ごとの話が進んでおりますが、今日出たものですと、薬害、公害などの問題であるとか、消費者問題であるとか、まだ残っています。またよく議論をして、何度も詰めていって、どこまでというのを詰めていきたいと思います。