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司法アクセス検討会(第17回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年7月23日(水) 13:30〜17:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
高橋宏志座長、亀井時子、始関正光、長谷川逸子、長谷部由起子、飛田恵理子、藤原まり子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、後藤健企画官
(説明者)
市川茂樹(日本弁護士連合会副会長)

4 議題
(1) 司法ネット(仮称)について
(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて
(3) 今後の日程等

5 配布資料
資料1 「司法ネット」のイメージ
資料2 日本弁護士連合会提出資料
資料3 隣接法律専門職種団体からの意見
・ 日本行政書士会連合会
・ 日本司法書士会連合会
・ 日本土地家屋調査士会連合会
・ 日本税理士会連合会
・ 全国社会保険労務士会連合会
・ 日本弁理士会
・ 社団法人不動産鑑定協会
資料4 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関する議論の概要(第16回検討会まで)
資料5 司法アクセス検討会開催予定
資料6 第13回検討会(3/10)資料4についての補足(日本弁護士連合会)

6 議事(○:委員、●:事務局、△:説明者)

(1) 司法ネット(仮称)について

 日本弁護士連合会市川茂樹副会長から、資料2に基づいて説明があった。

○ 日本弁護士連合会は努力されている。しかし、この取組みだけに任せておくのではどうかと感じる。

 事務局から、資料1に基づいて説明があった。
 その後、次のような意見交換がされた。

○ 事業内容がこれで足りているのかどうか、利用者の視点で見てどうか。サービス提供の在り方はどう考えるか。既存のアクセスポイントとの関係はどのように協力していくのか。リーガルサービスセンターの組織はどうすべきか。

○ 弁護士会の資料に新しい事業とあるが、新しい事業とは、具体的にはどのようなものか。

△ 例えば、当番弁護士はかつては新しい事業だった。今なら、犯罪被害者支援などが考えられる。新たな需要は起こってくるので、それに対応できる組織形態が望ましい。

○ 犯罪被害者支援とは、具体的に何をするのか。

△ かつては、犯罪被害者は損害賠償請求の主体と位置付けられていたが、精神面での対応を含めたトータルな対応が必要である。弁護士会では、被害者支援委員会などを作って取組みをし始めている。

○ 法律扶助は法律に縛られていて、新しい事業に対応できない。検察審査会への申立てや刑事告訴などは法律扶助の対象にはならず、法律扶助協会が自主財源で対応している。資料にある4つの事業だけに限ると発展性がなくなる。ドメスティック・バイオレンスの問題、児童虐待の問題なども、法律扶助の枠からははずれる。新しいものに対応できるものにしてもらいたい。

○ 時代とともに多様な問題が起こる。犯罪被害者支援やドメスティック・バイオレンスの問題、新しい権利の確立を支援することや高齢者問題・障害者問題への対応、内部告発者の相談への対応も考えられる。従来のものを上手く活用しつつ発展させるべきである。

○ 業務内容については、法律問題とそれに関連する問題への対応ということになるだろう。犯罪被害者支援は適切である。カウンセリングとなると、運営主体の仕事ではないという感じがする。適切なところへつなげていくべきだと思う。ドメスティック・バイオレンスの問題への対応は、業務として考えられる。他の機関との関係については、他の機関の力をそぐような方向は良くないと思う。各機関の自主的な取組みを尊重し、その間の連携をとったり、それを補助するような関係が望ましいのではないか。

○ 地方自治体は財政が厳しく、司法ネットができたら法律サービスの提供はやめたいという姿勢だと感じた。実際に、東京都は、今年の4月でサービス提供をやめている。地方自治体には今までどおりにサービス提供を続けてもらいたい。今の地方自治体の法律相談は、その先につながらないところに問題がある。つなぎを良くするためにネットワークは必要である。連携システムを作ることが大切である。それを機能させるには、統轄する組織が必要である。

○ 地方自治体は、国民に最も身近なアクセス・ポイントである。リーガルサービスセンターも全自治体単位でアクセス・ポイントを設けるのは難しいだろう。地方自治体には今ままでの取組みを続けてもらいたいし、上手く連携をしてふるい分けをし、法律問題は弁護士会へつなげるようにしたらいいと思う。

○ 地方自治がある以上、国が何かを押しつけるのはおかしい。地方自治体に何かをやってもらうのは望ましいが、あくまでも自主性を確保しつつ、いい方向へということを考えるべきである。

○ 地方自治体が司法ネットに参加して連携システムを作ることは可能だろう。

○ 地方の実情は色々である。一律にこういう連携ということではなくて、地方の実情に応じて色々な連携の在り方があってもいい。必ず連携しなければならないというものでもないだろう。

○ 弁護士会との関係はどうあるべきか。専門的なものは弁護士会でという話があったが、利用者がたらい回しにされるのは問題だと思うが。

○ たらい回しにならないような工夫をする必要があるだろう。

○ 日本弁護士連合会の資料に、極力ワンストップでサービスを提供ということが書かれている。たらい回しにされたのでは、利用者にとって不便である。各機関の既存の活動は尊重しつつ、利便性を高める方法を検討すべきである。

○ イングランドの市民相談所では、地域の弁護士が輪番で法律相談を担当している。参考になるのではないか。

○ リーガルサービスセンターができたから今まで提供していたサービスをやめるというのは良くないと思う。既存のサービスを高める方策についても考えるべきである。利用者が相応の負担をすべきだということは分かるが、無料法律相談がなくなってしまうとしたら問題である。

● アクセス・ポイントの受付は、どのような案件でも受け付けるというイメージである。この部分は無料にという考えもあり得るが、どう思うか。

○ 受付は無料にしてもらいたい。自治体がやっている相談は満員だが、身近で無料だから相談に来る。受付相談で振り分けをしてもらいたい。個人的意見だが、受付の担当は弁護士でなくてもいいと思う。沢山作って、無料で相談を受け、振り分けをするのがよい。既存の団体にも参加してもらって、そこへ回すという連携システムがあるといい。

○ 今でも相談窓口が必要なところにあるとは限らない。サプライよりもデマンドが多い。作れば作るだけニーズがついてくる状況である。そういう状況を認識した上で、いかによいサービスを提供するかを考えることも大切である。相談窓口の数も大切だが、いいサービスを提供しているところとそうでないところがあるだろう。それとともに、相談に来る側の努力も大切である。例えば、医者にかかる際に、医者に聞かれなくてもどこがどう悪いかを説明できた方がいい。自分の状況を客観的に判断できるようにするための施策は必要である。それが質の高いアドバイスにつながっていく。自己診断の部分では、離れたところからのサービス提供も可能だろう。不足している部分を補おうということばかりで終わってしまうと残念だと思う。

○ 一般の人々に法律の一般的な知識を普及させることは大切だと思う。登記簿謄本と権利証の区別が付かない人も多い。

○ 関連して申し上げると、新しい法律の内容を分かりやすく伝えるという形での情報提供も考えられる。

○ 成人した時点で一定の知識を持っていた方がよい。登記簿謄本などについては、書類の種類ごとに色を変えたり、異なる番号を付けるなどの整理をして、それに関する情報を提供するというような工夫があり得る。

○ スタッフ弁護士とのすみ分けについてはどう考えるべきか。

○ 過疎地でのサービスと法律扶助は全てスタッフで受けるというのが基本ではないか。

○ 資料1には、法律扶助のうち一部にスタッフ制を導入するというように書かれているが。法律扶助は、現在はジュディケア制だが、それでは効率性の点で問題があるので一部にスタッフ制を導入というイメージを描いていたが。

○ 全てをスタッフでという意味ではない。考えていることは、今の委員の御発言と一緒である。

○ 法律扶助協会では、自己破産事件についてスタッフ制を導入してはどうかと考えている。定型的な事件にはスタッフ制が適している。ジュディケア制を基本としつつ、スタッフ制も入れて効率的にということになるだろう。弁護士の数が少ない地方で、開業弁護士では対応できないという場合は、法律扶助事件を全てスタッフ弁護士が担当することはあり得る。

○ 中核になる組織があった方がいいという御意見もあったが、行財政改革のときに新たに組織を作るのかという見方もあると思う。組織を作る必要性についてはどう考えるか。

○ 日本弁護士連合会の取組みで限界があるから、組織を作って対応する必要がある。経験のある法曹に協力してもらうなどして、幅広くスタッフを確保すべきである。司法教育は是非やってもらいたい。

○ 一律に自治体に法律相談をしろとは言えない。他方で、国民には裁判を受ける権利がある。国が何らかの関与をするのは当然である。サービス提供のために全国的な組織が必要になる。業務を通じて収入をあげることは期待できないので、事業運営のためには公的資金の投入が必要である。事業内容のうち、法律扶助と公的弁護は、全国一律のサービスが求められる。司法過疎対策はプロボノ活動での対応に限界があるので、公的な手当てを考えなければならない。別々の団体を作って事業運営をするということも考えられるが、管理運営業務を集約して効率化することを考えると、組織は1つにすべきである。

○ 法律扶助協会が担当するという方法は無理なのか。

○ 公益法人では無理である。法律扶助だけでも難しいが、公的弁護が入ると無理である。補助金システムでの対応に無理がある。補助金の使途が限定されているため、事業に柔軟性がない。組織としての自主性も十分とは言えない。独立行政法人を考えざるを得ない。独立行政法人にも、天下り先になっているという批判はあるし、長に適任の人を選ぶ仕組みを工夫する必要がある。韓国では、運営主体が要請をして、大臣が任命するという仕組みが採用されている。相対的には、独立行政法人が最も自主性があると思う。

○ 以前、独立行政法人ではお役所仕事にならないかという指摘をされた委員もあった。この点について、どう考えるか。

○ 確かに、独立行政法人では業務の柔軟性に欠けるのではないかという趣旨でそのように申し上げた。例えば、通常の勤務時間にしか窓口を開けないといったことになりがちである。外部評価をするなどして、既存の独立行政法人の問題点を踏襲しない工夫をする必要がある。

○ 非公務員型独立行政法人なら、利用者のニーズにあわせた職員の勤務形態にできるのではないか。むしろ独立行政法人という組織にした方がいい部分である。

○ スタッフ弁護士確保の見通しについてはどう考えるか。

○ 法曹制度検討会で裁判官、検察官の他職経験について検討していると聞いているが、他職経験の受け皿となることも考えられる。裁判官にとって、弁護士としての訴訟準備の経験ができるのは貴重だろう。裁判官、検察官に偏るのは問題だが。

○ よい考えではないか。扶助事件を経験してもらうことはいいことである。ただし、弁護士としての身分でやってもらいたい。とは言え、スタッフとなる弁護士は、できるだけ現役の弁護士からということでお願いしたい。なお、弁護士会では、最近、都市型公設事務所を設けることを決めたところがある。刑事専門の弁護士の養成などを計画している。

○ 現役の弁護士がスタッフ弁護士になってもらうのはいいことである。ただ、過疎地対策の関係で、弁護士が自主的にスタッフに来てくれるのかという問題がある。

○ 運営主体の業務については、資料1に書かれているほかに、犯罪被害者対策とドメスティック・バイオレンスへの対応、司法教育などがあるというあたりが各委員のお考えと感じた。他の機関等との連携については、あくまでも他の機関等の自主的判断に委ねられるが、連携・協力を進めるのが大切であるというあたりが各委員のお考えと感じた。また、運営主体の業務は補充的にというイメージだと感じた。運営主体の組織については、組織は必要で、公益法人で行うには限界があり、独立行政法人が最も可能性が高い選択肢である、独立行政法人であれば、柔軟で民間的な業務遂行ができるのではないかというあたりが各委員の御意見ではないかと感じた。また、スタッフ弁護士の確保に関しては、裁判官、検察官からの確保も考えられるという議論があった。

○ 一言申し上げたい。リーガルサービスセンターができても弁護士会がこれまでの取組みをやめるのではなく、今までの取組みは続ける方向で考えてもらいたい。

○ 本日の検討結果も踏まえた上で、次回は、事務局に、議論のたたき台となるような資料を提出していただきたいと思うが、どうか。

(各委員了承)


(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて

 次のような意見交換がされた。

○ これまでに、敗訴者負担制度を導入しない範囲について議論し、行政訴訟、労働訴訟、人事訴訟、人身損害に関する訴訟、消費者関係訴訟といった訴訟について御意見をいただいた。これ以外の訴訟について御意見があればいただきたい。

○ 少額訴訟については、弁護士報酬の敗訴者負担の対象外とすべきだと考える。少額訴訟手続は、本来弁護士の関与が予定されていない手続だからである。

○ 少額訴訟は、今回の法改正で、利用可能な上限額が30万円から60万円までに引き上げられた。外国では少額訴訟手続に弁護士が関与することを禁じているところもあるが、少額訴訟手続についてはどのように考えるべきか。

○ 少額の訴訟でも敗訴者負担をということも考えられなくはないが、敗訴者負担の対象外にしてもらいたい。本人訴訟の領域は残しておくべきである。以前にアメリカの少額訴訟について紹介したが、訴訟をためらう1番の理由はコストだった。

○ 少額訴訟を弁護士報酬の敗訴者負担の対象外にという場合に、それは、実際に少額訴訟手続で終わった事案のみを指すのか、少額訴訟が利用できる額の請求全てを意味するのか。少額訴訟は、被告のイニシアティブで通常訴訟手続に移行できる。通常訴訟に移行した場合はどう考えるのか。また、司法書士が代理等の形で関与した場合の報酬も敗訴者負担の対象になると考えるべきなのか。本人訴訟をした場合でもそれだけの労力はかかるが、それを敗訴者から取れるようにすべきか。

○ 通常移行した場合は話は別だろう。他に敗訴者負担の対象外とされる訴訟類型に該当するかどうかで決まることになるだろう。通常訴訟に移行したら差別化の理由はない。通常訴訟の場合は、請求額が少額であるほどコスト回収のニーズが高いのが普通である。本人訴訟の場合については、訴訟追行に必要な経費と考えるなら、相手方からの回収を認めるのが論理的ではないか。介護費に関しては、介護士にお金を払って介護した場合も、本人が介護した場合も、相手方から取れるというのが最高裁判所の判例である。もっとも、このようなことが法制的に認められるかどうかは別の話である。

○ 少額訴訟はもちろん、個人間の訴訟は、敗訴者負担の対象外とすべきである。訴訟の勝敗の見通しがつきにくく、萎縮的効果がある。

○ 少額訴訟については、個人対個人だからとか訴訟の勝敗の見通しよりも、弁護士を付けることを予定していない手続であるという理由の方がいいのではないか。弁護士への報酬が必要経費とは認められないというのが理由だろう。本人訴訟の問題はあるが、今後は、必要な事件には弁護士が付くという方向に向かうだろう。本人訴訟をした場合の機会費用の問題は検討に値する。

○ 訴訟の現状を見ると、本人訴訟率は高い。弁護士報酬を敗訴者の負担とする基礎がない。

○ 日本では弁護士強制になっていない。弁護士過疎地域では、弁護士に頼みたくても本人訴訟をする場合もあるだろう。このような色々な問題を考えると、弁護士報酬を敗訴者の負担にするのは良くない。

○ ある程度規模の大きな企業は、敗訴者負担制度の導入を望んでいる場合もあるだろう。敗訴者負担制度を導入すべき訴訟類型を検討してはどうか。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入は時期尚早であると言われることがあるが、どういう点で時期尚早なのか。

○ 弁護士報酬の負担の在り方については、理念的には2通りの考え方があり得る。これまでは、弁護士強制制度はなかったし、実際に本人訴訟も多かった。いつから敗訴者負担制度を導入するかは政策的な判断になるだろう。今はその土壌になっていないと思う。日本では、これから、気軽に裁判を利用できるようにする時期である。今はアクセスの拡充を考える時期である。

○ 時期の問題ではなく、どちらにしたらアクセスしやすいのかという問題で、それを分野ごとに考えていくということではないのか。

○ 企業間の訴訟でも、敗訴者負担の導入は時期尚早と考えるか。

○ 企業と言ってもピンからキリまである。日栄の裁判の例もある。日栄の裁判の例では、債務者は企業が多いが、負けたら日栄の弁護士の報酬を負担するということだと裁判をしにくい。

○ 事業者であっても萎縮するということか。どういう場合に萎縮するのか。よく2人分の弁護士報酬を負担することになると言われるが、これは正確ではない。また、弁護士報酬の敗訴者負担制度が採用されているイングランドでは、コンティンジェント・フィー(条件付き成功報酬制度)が導入され、負けても相手方の弁護士報酬を負担するだけでよく、自分の弁護士への報酬は払わなくていい。1人分の弁護士報酬で済む。敗訴者負担制度を導入したら必ず2人分ということにはならない。それと、負けたら若干負担が増えるが、勝てば負担が軽くなると説明して、それでも敗訴者負担は嫌だという人がどのくらいいるのか。私にはその辺はよく分からないが。

○ 日本では、着手金をもらってやるという慣行が定着している。

○ 実務はそうだろうが、法律で着手金を受け取ることになっているわけではない。弁護士報酬規定もなくなるし、これまでにも成功報酬で契約した例はあるのではないか。

○ 普通のやり方は着手金である。アメリカのように成功報酬になるということはすぐにはないのではないか。

○ コンティンジェント・フィーという制度は、アクセス拡充のために弁護士が考えたものである。それに関して、アメリカでは弁護士倫理上の規制がなかったということである。イギリスでもそのようだが。事件の種類に応じて、弁護士が、いかにしてアクセスを容易にするかを考えて、このような制度の導入も含めて議論すべきではないか。着手金を前提に議論するのはおかしいのではないか。アメリカでは、交通事故などは成功報酬でやっている。コンティンジェント・フィーを排除して議論をする理由が分からない。

○ アメリカで成功報酬制になっている場合の弁護士報酬の額はかなり高額である。そのようなことができるかと言うと、請求できる額には自ずと限度があるだろう。いきなり成功報酬に変わるということはないだろう。将来の課題としてはあるのかもしれないが。

○ 弁護士報酬の在り方は考えるべき課題である。ところで、敗訴者負担の問題については、アクセスの推進が基本である。弁護士の敷居が高い、裁判所は近寄りがたいなど、司法に近付きがたい現状が問題である。市民の起こす訴訟は、敗訴者負担の例外にしてもらいたい。また、アクセスの推進のために、片面的敗訴者負担制度も検討してもらいたい。

○ アクセス障害の原因としては、弁護士が身近にいないことの方が主要な問題ではないか。それに比べれば、訴訟費用の負担の問題や弁護士報酬の負担の問題はそれほど大きなものではないという気がする。これから、弁護士が身近な存在になるようにという方向で制度を構築することになろう。弁護士に依頼するといことが原則形態だと考えるならば、弁護士に払った費用の一部は訴訟費用の一部だと考えて敗訴者の負担とする方が、理念的には、アクセスの拡充につながる面が大きいという気がする。提訴萎縮的効果が生じる場合はあるということは分かるが、普通の事件では、萎縮的効果はそれほど大きくはないのではないか。負担額の定め方にもよるが、敗訴者負担になったから訴訟をやめるという事件はそれほど多くはないのではないか。

○ 個人間の貸金の場合は、借用書や領収書を残していないことも多く、弁護士にとっても勝敗の予測が難しい。

○ 弁護士への報酬が必要不可欠な費用として受け入れられないということなのか。訴額にかかわらず、たとえ民事法律扶助の着手金の支出基準による上限額程度の額の負担でも、影響が大きいと考えるのか。

○ そう考える。弁護士の着手金は30万円くらいであることが多い。それに加えて、負けたら更に22万円というのは大きいだろう。

○ その気持ちは分かるが、勝つか負けるか分からないのに訴えを起こしたという場合の被告の立場はどう考えるのか。また、裁判は、大半は、勝つべき人が勝っているのではないか。弁護士も、ある程度勝敗の見通しを立てて事件を引き受けているのではないか。

○ そういう面はあるだろうが、日栄の事件のような例はある。最高裁の判断が出る前は連戦連敗だったということもある。裁判所の判断が変わってきているという面がある。勝つか負けるか分からないが挑戦するという権利はあるのだろう。自分の弁護士費用の負担だけだからやれるという事件は多いのだろうと思う。

○ 普通の事件で、勝つか負けるか分からないかというと、必ずしもそうではないだろう。一部の事件をもとに全体を論じるのはどうかという気がする。

○ 裁判官が判断に悩む事件は、実際には極めて少ない。弁護士の勝敗予測とは大きくは違わないのではないかと思う。法解釈で意見が分かれる場合が皆無とは言わないが。

○ 昔は、金融機関の裁判では金融機関が必ず勝つと思われていたが、今は必ずしもそうではない。時代とともに裁判所の判断も変わってきている。以前よりも勝敗の見通しが立てにくくなったと感じている。

○ 勝敗の見通しも重要だが、司法判断が果たす機能に注目すべきではないか。勝ち負けをはっきりさせたいのではなく、裁判所の判断を国民は求めているだけなのではないか。

○ ところで、以前に委員から御指摘のあった国家賠償請求訴訟についてはどう考えるべきか。

○ 広い意味では行政訴訟であり、行政訴訟と同様に考えるべきである。公益という点では共通である。

○ 敗訴者負担を導入すべき訴訟類型を検討すべきという御意見があったが、御意見はあるか。

○ 資本金5億円以上の大会社間の訴訟が考えられる。当事者が反対しなければいいと思う。

○ 司法での解決が根付くということは、時間の面でも、お金の面でも、司法での解決のために当てる部分が増えることを意味する。家計の上でも、これに割り当てられる部分が増えるということになる。現在の家計を前提に議論してよいのか。この点を考えつつ、中立性を保って考えていく必要がある。

○ 私にとっては、ただ今の御発言は企業人的な発想に感じられる。この場での議論は、どちらかというと法律の専門家の議論であり、一般国民との間には溝があるように感じる。

○ 今は、トラブル解決の費用は必要だという意識に移りつつある時期である。負けたら相手の費用まで負担させられるというところまでにはいっていないと思う。

○ 敗訴者負担制度は万能ではない。しかし、悪いところばかりではなく良いところもある。例えば、環境破壊を理由として差止請求訴訟を起こして勝ったとしても、損害賠償請求を併合していないと、何の利益も得られない。自分が依頼した弁護士への報酬を負担しなければならない。訴額が比較的低い事件では、弁護士に報酬を払ったらあまり残らないという場合もある。これまで弁護士報酬が各自負担だったのは、アクセスを拡充するためというわけではない。弁護士費用が必要経費だという考えがなかっただけである。弁護士報酬が必要経費であるにもかかわらず、それを相手方から回収できないことによって、勝訴してもあまり利益を得られないという人もいる。これは酷な話ではないか。

○ 差止請求は、原告が勝つケースが少ない。勝てば弁護士報酬を取りたいと思うのは事実である。しかし、裁判を起こす時点では違うのではないか。司法制度改革審議会の意見では、気楽に裁判をという方向が示されている。

○ 気楽にというのはいかがなものか。裁判は、色々と考えた末に起こすものではないのか。前にも述べたが、私は、何でもかんでも裁判に持ち込んで解決するのが必ずしも良い社会だとは思わない。

○ 今の日本では裁判が少なすぎる。アメリカのようになるのがいいとは思わないが、日本の現状はアメリカとは違う。確かに、不当な訴訟があることは分かる。その標的の多くは弁護士や裁判官である。しかし、裁判を起こすべきなのに起こしていない例が多い。

○ 世の中のどのくらいの人が弁護士報酬が必要経費だと思っているのかが分かるデータはない。しかし、少なくとも、事務局には、そのような意見の投書は来ていないのではないか。

○ 本日の資料4は、これまでの議論の概要が網羅されているが、一覧性に欠けていてわかりにくいところがある。事務局には、議論をする際にしやすいように工夫していただき、次回は、もっと一覧性のある資料を出してほしい。

(3) 今後の日程等について

 次回については、引き続き、司法ネット(仮称)、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて検討を進めることとなった。

(次回:平成15年9月19日 13:30〜)