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司法アクセス検討会(第22回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年12月25日(木) 13:30〜16:06

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
高橋宏志座長、亀井時子、始関正光、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由起子、飛田恵理子、藤原まり子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、菊池浩企画官

4 議題
(1) 司法ネットについて
(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて
(3) その他

5 配布資料
資料1 司法ネット構想
資料2 司法ネットについて(概要)
資料3 弁護士報酬の敗訴者負担について(第22回検討会参考資料)
資料4 訴訟当事者の合意による弁護士報酬敗訴者負担制度に対する意見(平成15年12月22日 日本弁護士連合会)

6 議事(○:委員、●:事務局)

(1) 司法ネットについて

事務局から、資料1及び資料2に基いて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。

○ 資料2は方向性を示すということなので、立案に当たって留意していただきたい事項を述べたい。最近の社会では自己責任が求められる傾向があるが、司法ネットには社会のセーフティーネットとしての役割を果たしてほしい。
 資料2に業務として掲げてある5つの項目だけでなく、これらの業務が円滑にできるような手立てが必要である。例えば人材育成、情報収集と発信、研究、調査の実施、意見聴取等を行う必要があると思う。
 自治体も相談を受け付けているが、自治体の相談窓口の特色を活かすものであってほしい。全国一律ということではなく、自治体や民間の相談窓口も活用していくという方向付けも必要であると思う。
 弁護活動の独立性は結構なことであるが、第三者機関は常置にして、全国的に格差がないかどうかを監視するなどの役割も果たした方がいいのではないか。
 国民により身近なものになるように、緩やかな、弾力的な運用をしていただきたい。また、いろいろな人にとって身近に感じられるような方向付けをしていただきたい。
 資料には、サービスが有料か無料かということが書いていないが、その点はどうなるのか。

○ サービスとしていろいろなものがあり、決めきれないのではないか。

○ 実現された後の運営の問題だと思うが、1点申し上げておきたい。公的刑事弁護と犯罪被害者支援は、利害相反になる可能性がある。司法過疎地では、民事事件の当事者双方が利用する可能性がある。担当する弁護士は別でも、同じ組織に属していれば利害相反になるということも考えられなくはない。今までは、弁護士の数も少なかったので、緩やかに解されていたようだが、今後はより厳しく解されるようになるとも言われているので、どのように調整していくのか、今後工夫してもらいたい。

○ 資料2の第2の2(3)に、「契約により弁護士を確保し」とあるが、常勤弁護士との契約も含まれるのか。また、3(2)に、「契約関係にある弁護士」とあるが、常勤弁護士も含まれるのか。

● 前者の「契約により」には、常勤弁護士との契約も含まれる。また、後者の「契約関係にある弁護士」には、常勤弁護士も含まれる。

○ トラブルに遭遇した場合、まず第一歩としては、誰かに情報提供をしてもらうのではなく、それ以前に、自分が置かれている状況を判断できる材料が必要であると思う。例えば、成人の日に新成人にそのような情報を提供するようにしてはどうか。まず必要なのは、自分のトラブルがどのような性質のものなのかを理解し、どのような対処の仕方をしたらいいのかを考えることだと思う。それに役立つような情報提供が重要だと思う。頻繁に起こりそうなトラブルに対して、一人一人が自助努力を含めて司法の分野に明るくなっていくことが重要である。振り分けの交通整理だけでなく、そのような点にも力を入れてほしい。

○ 今の委員の意見に賛成する。アクセスポイント業務に、例えば、街中で講座を開くということなども含まれるのかもしれないが、そういうことも是非やってもらいたい。裁判官も弁護士も出前講座などをやっている。
 独立行政法人が基本となると、一般的にはワンマン体制になると言われている。運用上の問題かもしれないが、いくつかの中間組織を設けてほしい。ワンマン体制が良い部分もあるが、多くの弁護士を使う現場があるので、上からのトップダウンだけでなく、中間組織において下からの意見を聞く、上からの指示を下に貫徹させるということが必要になってくると思う。独立行政法人は一般に理事が少ないが、相応の人数を揃えた民主的な運営体制をつくってほしい。
 資料2に運営主体の業務として掲げられている5つはよいが、法律扶助協会は附帯業務があり、それも入れてほしい。今やっているいろいろな自主事業もできて、国民の新たな需要にも対応できるようにしてもらいたい。

○ トラブルになって、それが法的問題かどうかがわからないときに相談にいけるような敷居の低さが重要である。予防的な対応も必要である。新しい権利につながる問題については情報を収集してもらいたい。

○ 司法ネットの趣旨は、法律上のトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような総合法律支援の体制を整備するということで、トラブルが起こった後のことのようにも読めるが、それ以外にも、トラブルの予防に資するような情報の提供もお願いしたい。トラブルの未然防止の観点も重要であり、そのようなことが業務にできるのかどうか、検討が必要である。また、司法教育も重要であり、司法教育の支援も検討してもらいたい。

○ トラブルの未然防止は大切である。地方に行くと、高齢者が多く、このような方々は様々な問題を抱えているが、情報が入ってこない。予防のためには、窓口をつくって待っているのではなく、出向いていく必要がある。積極的にいろいろなところに出向いていって、支援してもらいたい。

○ 紛争の未然防止は非常に重要である。一般的調査、一般的情報の提供は必要である。ただ、何でもかんでもやるのではなく、司法に関するものに限定した方がよいだろう。法律的な問題でないものについては、行政による対応にうまく連携させるようにすればよい。

● 司法ネット、特にアクセスポイントに寄せられる期待が大きいことを感じた。具体的紛争の解決だけでなく、蓄積された情報、ノウハウ等をフィードバックすることで、紛争の未然防止につながっていくということも考えられる。運用の中でどのような工夫があり得るのか考える必要があると思っている。

○ 既存の団体も含めて、よりよいサービス提供をできる主体がやるべきである。全国統一でやった方が効率的であれば、統一でやるのがよい。トラブルに巻き込まれないための自助努力は重要であり、それができるようになるための情報提供は必要である。企業ではベスト・プラクティスは皆で共有するという考え方がある。特定の地域で上手くいったプラクティスを企業全体で共有し、ほかの地域でも活かしていくという考え方である。レベルの高いところに他の人がすぐに追いつけるような仕組みが必要である。

○ いろいろと御意見をいただいたが、司法ネットは、基本的な方向は資料2のとおりでよろしいか。

(各委員了承)

○ 司法ネットについては、現在意見募集を行っているようだが、寄せられる意見にもきちんと配慮してもらいたい。

(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて

事務局から、資料3に基いて説明がされた。
続いて、日本弁護士連合会犬飼健郎副会長から、資料4に基づいて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。

○ 消費者、生活者の立場から、敗訴者負担制度の導入に反対してきた。それは今でも変わらない。合意案について質問がある。アナウンス効果が一番心配である。日本には、約款についての総合的な規制がない。私的契約で敗訴者負担の合意がされる可能性がある。それをストップする手立ては考えているのか。

○ 資料3にもあるが、この制度を利用する旨の事前の合意はだめだとされている。アナウンス効果の点については、この制度の導入とは関係がない。この制度とは別に、訴訟外の契約で敗訴者負担を定めることを規制することは、契約自由の原則の例外を定めることになるが、今以上の規制はすべきではない。

○ 必要な情報を知らせないで契約をさせる場合もある。契約自由の原則はあっても、自由に契約していない場合がある。

○ その問題は、消費者保護法制や労働者保護法制の問題であって、訴訟外の問題であるので、しかるべき別の機関で、契約自由の原則に規制を加えることの是非を検討すべきである。

○ 今の委員の意見に同感である。不当条項と説明義務違反の話があったが、前者は消費者契約法第9条の問題であり、多くの場合は9条で対応できる。後者は消費者契約法第4条の問題である。今の法律で対応できないというなら、消費者契約法改正問題そのものである。足りない部分を明らかにして、しかるべきところで議論すべきである。

○ 説明義務違反があれば、説明されていない部分についての法的効力は認められないだろう。現行法の下でも十分対処できるのではないか。

○ そもそも、契約が成立していない可能性もある。

○ 裁判を起こしたときには法律が保護してくれるが、制度導入の波及効果として、敗訴者負担制度が使えるということが広く伝わることを心配している。

○ 実体法で解決することも一つの方法ではある。しかし、手当てがされるまでには時間差が生じる。消費者契約法第9条、第10条では全部はカバーできない可能性があると思う。訴訟手続の中で解決してもらえないかと思っている。労働関係の団体からも、就業規則に入ることを懸念する意見が来ている。

○ アナウンス効果は、今でも既に生じているのではないか。また、無効と条文に書くことによって、逆にアナウンス効果が生じることもある。無効と書いても、それが全国民に周知されない限りは意味がない。

○ 合意案であれば問題はないと思って賛同したが、契約に波及するとは考えていなかった。力の格差があるような契約に次々と書き込まれるようになるのであれば問題があると思う。

○ その問題は、この制度をつくるかどうかに関係がなく、今でも存在する。しかし、消費者契約と労働契約については規制があり、多くの場合は対処できると考えている。

○ 今までは制度がなかったため、業者も気付かなかった。制度が入ることによって気付かれて、約款に入る可能性はあるだろう。

○ 今でもできるのであれば、そのような制度はなくてもよいのではないか。

○ 訴訟外の合意と訴訟手続上の合意は異なる。訴訟外の合意は消費者契約や労働契約で弱者保護のための法規制がある。訴訟手続上の合意は、弁護士等の訴訟代理人が付いた上での合意である。アナウンス効果を懸念される意見があるが、この場で議論してしまった以上、アナウンス効果は生じている。そういう前提で議論すべきではないか。

○ 格差のあるところには手当てをすべきだということなら、法律で無効にした方がいいのではないか。

○ それはどの法律で規制するかという問題で、消費者契約の分野なら消費者契約法、労働契約の分野なら労働基準法ということになるだろう。

○ 訴訟手続上の合意については規制はされないのか。

○ 訴訟手続上の合意は、当事者の双方に弁護士等の訴訟代理人が付いていることが要件になっている。弁護士等の助言により適切な判断ができるという前提なので、それ以上の規制はないということだろう。

○ 約款が規制されないと、訴訟手続内で厳格な要件を付した意味がなくなるのではないか。

○ 敗訴者負担条項が入っていて、その条項を見せずに契約した場合や、弱みにつけ込まれて契約した場合には、そのような契約は無効であろう。そもそも、企業が、双面的な敗訴者負担条項を入れるとは考えられない。

○ 条項を見せられていないならともかく、不動文字で書かれている場合は、当然には無効とはならないだろう。実体法を改正できればよいが、差し当たり、附則や附帯決議など、何らかの手当てがほしいと考えている。

○ 附則に入れるというのは困難であろう。附帯決議をしてもらえるならありがたい。ところで、事務局に質問がある。資料3の1の②の3番目に「一方的な取り決め」とあるが、これは、一方的な取り決めではなくても、事前に共同申立ての合意をしてもだめだという趣旨か。

● 委員御指摘のとおりである。

○ 理屈の上では無効でも、消費者が契約してしまって請求されることがある。

○ 現状がそうであることはわかるが、弊害が起きないようにアナウンスすることも重要である。今後は、だまされないように、司法ネットでの情報提供などの手当てがされるのではないか。

○ 現状を良しとする感覚を変えるのは難しい。しかし、現状では、ようやく勝訴しても、かかった費用を回収できなかった人がたくさんいて、泣き寝入りをしていた人もいた。両方完全というわけにはいかなくても、少しでも良くすることができるのであれば、勇気を持って、この制度の導入に踏み出すべきである。保守的になるのは容易であるが、現状で理不尽な結果を甘受させられてきた人がいることも考えるべきである。少しづつでも前進しているという感覚が必要である。

○ 今の御指摘は一面正しいと思うが、裁判になる事件は、訴えを起こす時点では勝敗の見通しがつきにくいものが多い。合意によってチャンスを与えられることは評価しているが、就業規則で敗訴者負担が定められると足枷になるという危惧があるので、何らかの措置をとってもらえないかと申し上げている。合意でやるということを否定しているわけではない。仲裁法の附則の例もあるので考えてもらいたい。

○ 仲裁法は、仲裁契約の効力を定める法律であるので法制上可能であったと理解している。今回の制度は、訴訟費用額確定手続を通じた請求の場面を対象としている。しかし、訴訟外で敗訴者負担の契約をした場合の効力ということになると、私法上の請求権を対象とすることになり、手続法で対処することは難しいのではないか。仲裁法が附則という形にしたのも、本来は消費者契約法等で定めるべきだという考えがあったものと理解している。

○ パブリックコメントは全部見たが、心配の声が多かった。これを無視してはいけない。片面的敗訴者負担制度に関する意見も多い。片面的敗訴者負担制度についても、その功罪、必要性について議論する必要がある。これからの課題として忘れないでほしい。

○ この制度があると困るという人は合意しなくていいという形で、パブリックコメントの結果を取り込んでいる。その点は日弁連の意見でも評価していただいたものと理解している。パブリックコメントの結果を踏まえて合意案になったと理解している。

○ 私は、この案で妥協させていただいた。消費者、労働者の立場を考えて、オプションを認めることも提案したが、なぜ、その案ですら反対されるのかわからない。訴訟類型的な議論も出てくるので、全ての訴訟で当事者の合意を要件とするという形にすべきである。

○ 負担額については、訴額10億円で300万円程度をキャップにするのがよいのではないか。負担額の合意については認めなくてもよいと思う。法定額の方が使いやすいだろう。

○ 審議会の意見書にも「国民の理解」とある。パブリックコメントは、世論を反映したものとして受け止めてもらいたい。合意案をだめだと言っているわけではない。弱い立場の人たちが、訴訟外の合意で敗訴者負担を強制されるようになることは避けてもらいたいということである。

○ 負担額については、訴額が低いところは法律扶助の着手金程度が適当ではないか。また、先ほどの訴額10億円で300万円程度を上限にするという委員の意見に賛成する。制度はできるだけ単純な方がいいと思うので、負担額の合意については認めない方がよい。

○ 負担額について、一部ということなら、訴額が低いところは法律扶助の着手金よりもう少し低くてもよいのではないか。最低5万円くらいでもよいのではないか。訴額1億円で30万円ないし40万円くらいにしてはどうか。訴えの提起の手数料と同じように、訴額に応じて逓減させる方式がよいと思う。上限は設けた方がいいと思う。負担額の合意は認めるべきではないと思う。

○ 誰が敗訴者負担制度を求めているのか、まだ釈然としない。疑問は残るが、弱い立場の人が不利にならない方向で考えてほしい。

○ 資料3に書かれているような案、つまり、各自負担を原則とするが、当事者双方に訴訟代理人が選任されているときに、訴えの提起後に当事者双方による共同の申立てによって訴訟代理人の報酬の一部が訴訟費用と同様に扱われる。そして、敗訴者の負担となる額については、訴額を基準に法律で額を定める。具体的な金額についてはいろいろな意見が出たが、一定の上限を設けるという意見が強かった。負担額の合意を認めるべきであるという意見はなかったので、法律で定める額とする。
 このような御意見がこの検討会では大勢であった。ただ、そもそも、敗訴者負担という制度そのものについて疑問を表明される委員もおられた。また、合意案についても、訴訟上の合意そのものについては強い異論はなかったと思うが、それが私法上の契約にどのように波及していくかについて懸念を表明される委員が複数おられた。
 以上が、この検討会で各委員に検討いただいた結果ではないかと思う。このような検討会での検討を参考にしていただき、具体的な立案作業を事務局にお願いすることとしたいが、よろしいか。

(各委員了承)

(3) その他

● 委員の皆様方には、御多忙の中、2年近い間検討会に御参加いただき、様々な視点から貴重な御意見をお寄せいただいた。心より御礼を申し上げる。本日は、司法ネットと弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて検討していただいた。この検討会での御検討の結果を尊重し、立案作業に取り組んで参りたい
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