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司法アクセス検討会(第3回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年3月27日(水)15:00〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)高橋宏志座長、亀井時子、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由起子、原田晃治、飛田恵理子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、小林久起参事官

4 議題
  1. 実情視察の結果について
  2. 民事訴訟の手続の概要について
  3. 訴えの提起の手数料について
  4. 今後の日程等

5 配布資料
資料1 民事第一審訴訟記録(「司法研修所4訂民事訴訟第一審訴訟手続の解説 別冊記録(平成13年3月)」より引用)
資料2 訴え提起の手数料
資料3 裁判所における印紙収入額の推移(昭和55年〜平成13年)
資料4 手数料収入・予算・事件数の推移(昭和55年〜平成12年)
資料5 訴え提起の手数料の平均額(昭和55年〜平成12年)
資料6 裁判所ホームページ等における情報提供サービスについて(平成14年3月 最高裁判所)
資料7 日本弁護士連合会報酬等基準規程(略)

6 議事(○:委員、●:事務局)
(1) 第2回司法アクセス検討会の視察結果について
視察結果の基づき次のような意見交換がされた。

○ 簡易裁判所、家庭裁判所には初めて行ったが、窓口相談サービスが開かれた形で行われていることを知り、驚いた。このようなサービス提供にはかなりお金がかかっていると感じた。しかし、それだけのサービス提供をしている割には、裁判所のサービス提供に対する姿勢が国民の間にはあまり広く知られていないと思う。裁判所がこのようなサービス提供に取り組んでいることを国民に知ってもらうために、広報活動に力を入れてはどうかと感じた。
 簡易裁判所の利用は進んでいると思う。簡易裁判所の事物管轄と少額訴訟の上限については、できるだけ早期に大幅な引き上げを行うことが極めて重要である。

○ 視察は大変参考になった。裁判所の建物は近代的で、権威的でなく、民間のビルのようで入りやすかった。また、裁判所で、ビデオなど様々な方法で情報提供を行っているのはよかった。裁判所のカウンターではマンツーマンでの相談が行われ、大変な賑わいであったのにも驚いた。ああいう雰囲気なら自分の気持ちを表現しやすいと思った。
 定型書式が多く用意され、相談に応じて提供されるのは利用者の手助けになる。
 少額訴訟の法廷傍聴をしたが、ラウンドテーブルで、裁判官が法服を着ないで席に着き、権威を感じさせない形で訴訟が進められていた。このような堅苦しさのない裁判はよいと思う。
 典型的なケースでの広報活動をして、裁判をもっと身近なものにしていくのがよいと思う。

○ 裁判所の窓口が思った以上に賑わっていた。裁判所の広報活動の充実には賛成であるが、裁判所もあのような窓口での対応をするのは大変な苦労だろうと思う。方向性としては、簡易裁判所、家庭裁判所があのように開かれた形で、いつも当事者と接することができるのはいい制度だと思う。

○ 裁判所に行ってしまえばよいが、行くまでの負担が大きいように思う。情報として抽象的には伝わっているのかも知れないが、裁判所には行きづらいという意識があるのだろうか。

○ 弁護士会の窓口の賑わいにも驚いた。相談に来た人全部に対応できないくらいだと聞き、相談に応じてもらえなかった人はどうなるのかと心配になったくらいである。ただ、まず気楽に相談しようとするときに、有料法律相談コースと無料法律相談コースの区別があるのを利用者がどう感じるかという点が気になった。

○ 弁護士会としては広報予算があまり無いのが悩みの種である。整理屋などに騙されてしまうケースが多く、広報不足だと感じることがある。今、自己破産申立事件が多くなっている。弁護士会では、弁護士会館の他にも、消費者クレジット・サラ金金融相談については四谷と神田に別に法律相談窓口を設けており、この2つの窓口で年間12,000件くらいの法律相談を受けている。法律扶助に関して言うと、法務省からも補助金の額に関しては努力していただいているが、無料法律相談をさらに増やすのは難しい。東京では、無料法律相談が4割、有料法律相談が6割くらいである。

○ 法律相談の5,000円という額は利用者にとってはどう感じるのか。外国人からの法律相談はどうなっているのか。

○ 英語と中国語には通訳人を用意して対応している。弁護士会では英語のできる職員が対応しており、また、法律扶助協会の職員は英語のできる者が多いので、それほど問題はない。英語ができれば民事に関する法律相談には対応できている。
 現在、地方裁判所単位では、地方裁判所の支部所在地を含めても85%くらいの場所で法律相談を受けられる体制になっている。公設事務所は、今年中に20くらい設置する予定である。また、法律扶助に関しては、登録弁護士の事務所でも相談に対応する制度があり、現在、5、800人くらいの登録弁護士がいる。

○ 広報が重要であるのはそのとおりだが、お金のかかる話であり、限界があると思う。紛争になった場合にどういう形での司法へのアクセスがあるのかを、義務教育の過程でどのように教えていくかという視点も忘れてはならない。
 テレビなどにより、裁判というと刑事裁判というイメージが固まっているが、実際にはそうではなく、裁判所は、市民間のもめ事を解決する場でもある。教育を通じて、全体の意識の底上げを図っていくべきである。

○ 東京地方裁判所では広報活動に取り組んでいる。裁判官が出張して学校で講義をしたり、裁判所見学ツアーを開催している。かなり依頼があり、概ね好評である。裁判所ではこのような活動をしているが、教育全体への影響を与えるまでには至っておらず、司法教育が重要であるという意見には賛成である。

○ 広報活動、司法教育は重要だが、悩み事を抱えている人は、まず身近な自治体の窓口に行く。そこで司法アクセスに関する情報を入手することができるようにし、それに関してPRすることも大切だと思う。

○ 東京都だと、区役所には法律相談のパンフレットなどを置いてもらっているし、弁護士が相談を受けている。しかし、相談に来た人の事件を弁護士が直ちに受任するという形になっていないという問題がある。
 警察の困り事相談など、公的な無料相談は数多くあるが、相談だけで終わってしまう。こうした相談窓口と弁護士会の法律相談をつなぐことによって、かなりの人が救済できると思う。法律扶助協会とのネットワーク作りも必要である。

○ 高齢者が悪徳商法に引っかかる例が増えている。高齢者への情報提供も大切である。窓口に行かない人、行きたくてもいけない人への広報活動も考えるべきで、例えば、介護サービスと提携するなどの方法を考える必要がある。成年後見制度のパンフレットを見たことがあるが、大きな活字で書かれており、高齢者の視点に立った作り方だと思って感心した。

○ 裁判所へ行くまでの段階の対策として広報活動に関する議論がされているが、裁判は、郵便のように、国民誰もが日常的に利用するという制度ではないし、広報活動に予算的限界があるので、広く国民に対する情報提供が可能になるインターネットの活用が有効だと思う。裁判制度の利用を考えている国民に対しての情報提供が、先ほどから議論されている相談窓口の話だろうと思う。
 裁判所の窓口の対応はよかったと思う。弁護士会の相談窓口について、対応に限界があるのは理解できるが、相談に対応できる人数に限りがあるため、相談に来た人の一部が相談を受けられずに帰るというのは、サービス業として見たときにはいかがなものかと思う。相談の予約制を採用しているのなら教えてほしい。
司法へのアクセス障害という問題を考えるとき、制度の改善だけではなく、運用の改善で解決できる問題も多いと思う。準少額訴訟などは、制度を変えなくても運用で解決できたよい例である。
(最高裁判所)
 裁判所のインターネットを活用した情報提供に対する取組みについて、説明をさせていただきたい。
 資料6として配布していただいているとおり、最近、ホームページを新しくした。各地の裁判所のホームページを新規に作成して公開している。ホームページで民事事件、簡易裁判所の事件などについての手続を分かりやすく説明している。書式例もアップロードしてある。電話、ファックスによる手続案内サービスも紹介している。各地の裁判所のホームページでは、各地域の裁判所へのアクセス情報なども掲載している。判例情報については、高等裁判所、地方裁判所の判例の紹介も始めた。
(日本弁護士連合会)
 近時、相談件数の約3分の1を占めている家事事件のみを受け付ける窓口を外に新設した。家事事件に限らず、弁護士会館の外に法律相談窓口を設けることについても検討している。
 法律相談は予約制が多い。飛び込みで来る人は少ない。東京の場合、全て予約制である。

○ 相談窓口に来てお帰り頂いているのは、扶助事件の窓口に来られた人であろう。予算が少ないので、事件数を絞らざるを得ない。法律相談援助に関して言うと、平成14年の予算で2億5,000万円であり、例外的に法務省予算を増やしていただいているが、市民の法律相談の需要に追いついていない。弁護士はやる意欲があるので、予算がほしいというのが切実な願いである。

事務局から司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)、司法制度改革推進計画要綱(平成14年3月20日最高裁判所)、日本弁護士連合会司法制度改革推進計画(2002年3月19日日本弁護士連合会)について説明がされた。
 これに対して、次のような質疑応答がされた。


○ 少額多数被害者救済の実効化について、内閣府、公正取引委員会、経済産業省の担当となっているが、内閣府は、司法制度改革推進本部が設置されたということで遠慮しているように感じる。内閣府と司法制度改革推進本部がお互いに遠慮しあって検討がされないのは困る。きちんと実効が図られるためには、司法制度改革推進本部において何らかの方向付けをすることが必要ではないか。

●  司法制度改革推進計画に従って関係府省でまず検討していただくことになるが、司法制度改革推進本部は司法制度改革を推進する上での調整業務も行っており、情報交換、意見調整を行っていきたい。

○ 団体訴権は、司法制度改革審議会意見では割としっかりしたことが書かれているのに、司法制度改革推進本部のどの検討会でも検討しないということでは問題である。内閣府等での検討結果について、この検討会の場で報告してもらい、意見を述べる機会を与えてもらいたい。

○ アメリカのクラス・アクションは個別法ではなく民事訴訟法で定められている。

○ 少額多数被害への対応については、司法制度改革審議会意見において、個別の実体法において検討されるべきであるとされたのであり、司法制度改革推進本部で検討されるべき課題ではない。
 クラス・アクションに関しては、司法制度改革審議会意見において、今後の検討課題とされているので、司法制度改革推進本部において検討されるべき課題ではないと理解している。

○ 事務局作成の司法制度改革に関する措置・取組一覧では、日本弁護士連合会の司法制度改革推進計画では空欄にされているところがあるが、日本弁護士連合会では、空欄とされている事項についても推進計画に記載しているので、その点付け加えたい。

●  事務局作成の司法制度改革に関する措置・取組一覧で、日本弁護士連合会の推進計画を記載する際に、必要な取組を行うとされた事項を整理した。三者の計画を並べる上で統一をとるため、所管事項のみを掲げた。詳細については、配布の司法制度改革推進計画(司法制度改革推進本部)、司法制度改革推進計画要綱(最高裁判所)、日本弁護士連合会司法制度改革推進計画(日本弁護士連合会)をご覧頂きたい。

(2) 民事訴訟の手続の概要について
事務局から、資料1、民事第一審訴訟記録(「司法研修所4訂民事訴訟第一審訴訟手続の解説別冊記録(平成13年3月)」より引用)に基づいて民事訴訟の手続の概要の説明がされた。

(3) 訴えの提起の手数料について
事務局から、訴え提起の手数料について説明がされ、次のような意見交換がされた。

○ 請求の一部認容判決に対して、第一審の原告と被告が双方ともに控訴した場合、控訴の手数料は双方ともに支払わなければならないのか。
●  双方ともに支払わなければならない。

○ 請求の一部認容の場合、控訴の手数料算出のもとになる訴額は、何か。

● 不服の範囲を基準として手数料を算出することとなる。

○ 平成4年に高額請求訴訟の提訴手数料を引き下げたそうだが、それによって訴訟の件数は増えたのか。

● 事件数の伸び率よりも手数料収入の伸び率が上回っており、比較的に高額の請求をする訴訟が増えていると分析できる。
 最高裁判所とも相談の上、訴額別の事件数の推移がわかるような資料を用意したい。

○ 庶民から見て、訴え提起の手数料は高いという気がする。利用度の高い少額の訴訟の手数料率が高いのは問題であり、また、高額の被害を受けた人がスライド制のもとで高い手数料を払わなければならないのも問題である。
 諸外国と比べて、日本の手数料は高いのではないかという印象を持っている。弁護士費用の問題もあるが、手数料も負担になっているのではないか。

○ 裁判所の予算の伸び率は国民所得の伸び率と同じくらいなのに比べると、手数料収入の伸び率はものすごく高い。これなら、手数料は下げてもいいという気がする。

○ 訴え提起の手数料について、司法制度改革審議会意見ではスライド制を維持することを明言しており、スライド制の是非は議論できない状況になっている。スライド制の下で、どういう料率が適正かを議論すべきである。提訴手数料については、高速道路の利用料金と同じで、納税者の負担にするのがいいのか、利用者の負担にするのがいいのか、司法へのアクセスとの関係を考えながら、何が一番よい配分かが議論されるべきであり、一方的に提訴手数料を引き下げて納税者に負担させるという議論にはならないのだろうと思う。

○ 少額部分の手数料率が高いという意見があったが、訴訟救助という制度もあるので、事務局から説明してほしい。

(4) 今後の日程等
・ 次回は、訴訟費用及び訴訟費用額確定手続について検討するとともに、簡易裁判所と地方裁判所の機能と役割分担について検討することとされた。
・ 次回の検討会は、次の日時に開催することとされた。
  4月23日(火) 13:30〜15:30

(以上)