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司法アクセス検討会(第3回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年3月27日(水) 15:00 〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由紀子、原田晃治、飛田恵理子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、小林久起参事官

4 議題
(1) 実情視察の結果について
(2) 民事訴訟の手続の概要について
(3) 訴えの提起の手数料について
(4) 今後の日程等

5 配布資料
資料1民事第一審訴訟記録(「司法研修所4訂民事訴訟第一審訴訟手続の解説 別冊記録(平成13年3月)」より引用)
資料2訴え提起の手数料
資料3裁判所における印紙収入額の推移(昭和55年〜平成13年)
資料4手数料収入・予算・事件数の推移(昭和55年〜平成12年)
資料5訴え提起の手数料の平均額(昭和55年〜平成12年)
資料6裁判所ホームページ等における情報提供サービスについて(平成14年3月 最高裁判所)

6 議事
(□:座長、○:委員、●:事務局)

□ これより、第3回「司法アクセス検討会」を開催いたします。
 初めに、配布資料の確認をお願いしたいと思いますが、事務局から御説明をお願いします。

● お手元にお配りした配布資料について御説明いたします。
 お手元右側にお配りしてありますのが、資料1で、「民事第一審訴訟記録」という厚い冊子になっておりますが、司法研修所で研修教材として使われているもので、裁判所の裁判のモデル記録でございます。
 資料2は、「訴え提起の手数料」という表でございます。
 資料3は、裁判所における印紙収入額の推移の統計表でございます。
 資料4は、手数料収入の推移、予算、事件数の推移、これらの統計表でございます。
 資料5は、訴え提起の手数料の平均額、その推移に関する統計表でございます。
 資料6は、最高裁判所事務総局で作成されました資料で、裁判所のホームページ等における情報提供サービスに関する説明資料でございます。中を見ていただきますと、5枚目のところに、「裁判所ホームページによる手続案内」とか、「電話・FAX案内サービスや書式情報」、「裁判所ホームページによる判決情報の公開」、このようなことが記載されている資料でございます。
 これらの配布資料のほかに、先ほどの訴訟記録の下に、1枚だけ、実はこの説明を理解していただくために、時系列表を作っております。
 そのほかに、皆さんの左側のお手元に、司法制度改革の推進計画、最高裁と日弁連のものと、閣議決定された政府のもの、それからその三者の計画を一覧にまとめて事務局で作成した横組みの「参考資料」、その四つが配布されております。
 その前の方には、カラーのパンフレットが幾つかございまして、これらは、裁判所の受付窓口で配布するためのパンフレットとして最高裁判所事務総局で作成されているもので、「初めて簡易裁判所を利用される方のために」というものと、「御存じですか? 簡易裁判所民事手続案内サービス」、「御存じですか? 簡易裁判所の民事訴訟」、「ご存じですか? 簡易裁判所の少額訴訟」、「ご存じですか? 簡易裁判所の支払督促」、「ご存じですか? 簡易裁判所の民事調停」、それから「特定調停の申立てをされる方のために」、その次も同じ「特定調停の申立てをされる方のために」というものですが、「事業を行っている方のために」と書いてある緑色のものです。それから「強制執行の申立てをされる方のために」、以上のパンフレットがございます。
 本日お手元にお配りしているものは以上でございます。御確認をお願いします。

(1) 実情視察の結果について

□ それでは、議事の方に入ります。
 前回、第2回ですが、東京簡易裁判所、東京家庭裁判所、日本弁護士連合会、東京の三弁護士会、法律扶助協会に御協力をいただきまして、司法のアクセスの窓口の視察、あるいは少額訴訟の法廷傍聴をいたしました。その視察を通じて、司法その他の現場を見ていただいたわけですが、本日は、前回の視察の感想、あるいは実際の現場を見て、各委員の御意見などを伺えたらと思っております。そういう感想、意見交換を、第2回に引き続きまして今日もしたいと思いますが、いかがでしょうか。どこからでも、どんな御意見でも、御感想でも結構です。

○ 私も、簡易裁判所でありますとか、家庭裁判所でありますとか、裁判施設と言いますか、行ったことがなかったものですから、初めてということですけれども、家庭裁判所、簡易裁判所の窓口における相談サービスというのは、ああいうふうに開かれた感じでなされているいうのは、正直知りませんで、びっくりいたしました。かなりの人件費でありますとか、建物もあれだけ使っているわけですから、減価償却等を、企業の概念で考えると、かなりのコストを使ってあの辺のサービスをやっているのだと思ったのですが、それだけのことを国民に対して提供している割には、今このパンフレットを拝見させていただきましたけれども、あまり御覧になっている人がいないのではないかということで、こういう窓口サービスをやって、国民のサービスに努めている裁判所の姿勢を、何らかの形で広報を、ホームページだけではなく、せっかくお金を使っているわけですから、その辺が効果的になるように、広報戦略に努められたらいいのではないかと思いました。
 一方では、あれだけの相談態勢の中で、簡易裁判所の利用というのは非常に進んでいくだろう、特に少額訴訟などについてそう思うものですから、まさに司法アクセスの検討会の検討課題でもあります簡易裁判所の事物管轄の拡大、また、この検討会ではないのかもしれませんけれども、少額訴訟の30万円の上限を上げるとかいうのは、できるだけ早く大幅な額でも上げるということが極めて重要ではないか、それが国民のストレスの早期の解消に役立つのではないかなという印象を受けたということを申し上げさせていただきます。

□ おっしゃるとおりだと思うのですが、見ていただいた少額訴訟の事件の結果はわかりますか。

● 見ていただいたのは、18万円の敷金返還の事件でした。あの後話し合いの手続が進められまして、その日のうちに、皆さんが視察を進めている間に、16万円を支払うということで和解が成立して、裁判は終了しております。

○ 先日あのような機会を設けていただきまして、初めて見学させていただきまして、大変参考になりました。
 まず、建物が大変近代的なビルの中ということで、比較的都心にはたくさんと言いましょうか、と申しますのは、権威を感じないで、普通の民間のビルのような感覚で入りやすいのではないか。床もフラットで、長谷川先生がいらっしゃいますので、私がそんなことを申し上げるは大変おこがましいので、先生にまたお話をお伺いしたいと思いますけれども、恐らく地域によってはなかなか近寄り難かったり、アプローチまでの距離が大変長くて入りにくいにようなところもあるのではないかという気がいたしましたが、先日拝見したところは、その点ではよかったと思いました。
 中に入りましたところ、大変オープンな感じで、いろいろな情報提供サービスが行われて、例えば参考になるようなビデオがずっと放映されておりましたり、カウンターでマン・ツー・マンみたいな形で、それも、例えば普通のところで言いますと、旅行代理店のカウンターのような雰囲気もある明るいところで相談ができるということがあり、大変にぎわっていることにもびっくりいたしましたけれども、ああいう雰囲気であれば、やって来る人の気持ちも穏やかにと言いましょうか、自分の気持ちを表現しやすいのではないかという印象がございました。
 また、いい点を挙げれば、訴状の関係の書類も、私たちはそこで実際に試しませんでしたから、目にはしておりませんが、御説明の中で、定型タイプのものがたくさん用意されていて、相談に応じてそれが提供されるという、それが大変手助けになることだろうと思います。そのような形で、できる限りやりやすいような方法を取っていただくということはすばらしいのではないかという気がいたしました。
 それから、少額訴訟、先ほど16万という結果をお伺いいたしましたが、傍聴させていただきまして、ラウンド・テーブルで、皆さんが権威を感じないと言いましょうか、普通のスーツをお召しになっておられて、傍聴者がいるということは、あの場にいらっしゃる当事者の方たちにとっては緊張を強いられたり、また、そういう場で、ここで一回ということでしたので、それが勝負ということになるわけですので、緊張されたのでしょうけれども、雰囲気としては、通常の法廷のような堅苦しさがなくて、少額訴訟の場合にはよろしいのではないかということを感じました。
 それから、裁判官の方のほかに、もう一人、専門家の方がおられましたね。

□ 司法委員の方です。

○ そういう相談相手の方がいらっしゃるということは、その方がおられることによって、記憶違いがもし裁判官にあったり、あるいは書類がすぐに出てこなかったりなどのときのサポートもできますし、一つの助けになるのではないかという感じを持ちました。
 原告の方があの場に臨まれたということは、大変な決意があっただろうと思いまして、結果的には大変いい結果が得られたわけですが、あの例というのは、大変多い事例じゃないかと思いまして、そういう意味では、簡易裁判所が私たちにとってもっと身近なものになるためには、典型的なケースについての広報活動というのが必要ではないかという気がいたしました。そういうものを日ごろから目にしていれば、そういえば、自分の今突き当たってといる問題はこのケースではないかというように、アクセスする一つの支えになるかもしれません。裁判の事例というのが、極めて個人的なケースの場合もあるでしょうけれども、あの方が訴えたことは、恐らく、これはその人一人の問題ではなくて、みんなに聞いてもらいたい、多分正当性があるだろう、社会的に共通のテーマとなり得るだろうという判断があったと思われます。私が後で考えますと、あの場に臨まれたということには、お金の問題も、今まで払ってきたのになぜという悔しさがおありになったのでしょうけれども、裁判には社会的な側面というのが多分あると思いますので、そういう意味でも、広報活動を充実していただければということを、傍聴させていただいて感じました。
 ただ、あのときに、被告の人が写真を用意されていなくて、裁判官が写真があるといいですけれどもということをおっしゃっておられましたので、そういうことがもしできれば、被告であっても、両方が了解する上でも、審理を進める上でも、助けになるものであれば、事前に情報提供があった方がよかったのかなという印象もありました。
 以上です。また、気がついたところで話させていただきます。簡易裁判所のところだけでよろしいですか。

□ ありましたら、また、後でお願いします。

○ 私も、実は具体的に見たのは初めてだったのですが、なかなかいい感じでよかったです。思ったよりにぎわっていまして、簡裁の方の受付ブースも増設したけれども、まだ大勢待っていたという状況で、非常に需要が多いということを痛感しました。先ほどお二人の委員が広報活動と言われて、誠にそのとおりだと思いますが、広報活動を充実させて、もっと、こういう窓口があるということを知らせるのは大事なことですし、いいことなのですが、それに対する対応というのもなかなか大変だなという感じはいたしました。方向性としては、簡裁、家裁というのが、開かれた感じで、いつも窓口を用意して当事者と接することができるということは本当にいい体制だと、いいシステムをつくってあったと感じました。
 以上です。

○ 何か意を決して裁判所のドアをたたけば、あとは非常に、カウンターなどがありますし、行くまでの決断でしょうか。情報として抽象的にはわかっているんでしょうけれども、裁判所と税務署は行きたくないころだということでしょうか。

○ ああいう窓口があるんだ。こういう状態だということを一般的に知っていただくといいんでしょうね。

○ 先ほどの写真の件は、私の理解だと、借家人が出た後すぐに写真を撮っておかないので、それが今更、後からはできない。逆に、写真まで撮っている人は因業な大家さんだということで、なかなかそこが。

○ 手続としては、連絡があれば一回で終わるのが原則ですから、証拠関係の書類は持ってきてくださいという連絡はしてあるわけで、それがなかったからか、あるいは忘れてきたか、あるいは、連絡が全くなくて突然、期日に被告が現れたという場合なのではないかと思います。

○ 裁判所の方としても、原告だけではなくて、被告にも手続の教示はしているということですね。

○ あの場合、弁護士さんもどなたもいらっしゃらないわけですね。

○ どうなんでしょうか。大家さんの方は大家さんの協会みたいなところから情報は流れるんでしょうけれども。賃借人の方も、そういう協会はあります。全部が入っているわけじゃないでしょうけれども。

□ 弁護士会の方の話に移りたいんですが、弁護士会の窓口というのはどうでしたか。

○ あそこまでにぎわっているのには驚きました。全部受け付けられなくて、お帰りいただくことになるということを聞きまして、その人たちはどうなるのだろかとちょっと心配になったというくらいで、大変活気を呈しているので驚きました。
 一つ気になったのは、無料と有料の使い分けというのが、その人の資産収入状況でというのが、これはやむを得ないというか、当然だという見方も大いにできると思うんですけれども、まず、気楽に相談するときに、有料コースと無料コースがあるということについて、当事者がどういう反応を示すのかというのが少し気になりました。

○ 弁護士会の広報活動では、無料はありますというのはよく言われているんですね。地下鉄を下りたところにすぐありますね。

○ 地下鉄のところにあるのは有料相談です。弁護士会も、法律扶助協会も、広報予算がないもので、それが一番厳しいところです。ですから、ときどきテレビ、新聞でいろんな司法記事が出ると、次の日に相談者が増えるという実情にあります。今はやはり自己破産がものすごく多いです。ですから、どうしても全部賄いきれないというのがあります。
 それから、消費者、クレ・サラ金融相談については、四ッ谷と神田に別に設けています。それが1年間に大体1万2,000件くらいで、法律扶助協会の方は、自己破産もあそこで全部やっています。
 それから、振り分けなんですけれども、私どもももう少し国の予算があれば、中間層の方は無料相談で賄いたいと思っているんですけれども、国の法律相談予算が大変少ないんです。ですから、東京の場合はそれでも少し多くしているんですが、単身者で20万以下というのが基準です。2人家族で27万円以下というのが基準になっています。東京の場合は統一窓口ですので、全部表になって置いてありますので、自分で選択するんです。大体6:4の割合で有料が6、無料が4で、ほとんど自主申告でやっています。東京だからうまくいくんで、大阪では全部無料に丸を付ける話が出たこともあります。東京は6:4で、これは始めてからほとんど変わらないです。6が有料になります。

○ 5,000円という金額に対して利用者はどうですかね。外国人に対してもというのは、裁判所では、今そこまでやっていなくて、弁護士会の方にお願いしているということですね。

○ 弁護士会の方は、英語と中国語の通訳を配置しています。ただ、外国人相談員の弁護士のほとんどが英語の会話ができる人がやっているので、あまり問題はないです。
 扶助協会の方は、職員がほとんどみんな英語ができるので、職員が立ち会って、この前見たとき外国人が扶助協会の審査のときにいましたね。しゃべっていたのは、弁護士じゃなくて職員なんです。職員のほとんどが英語ができるので、それで対応していますので、扶助協会の方では通訳はあまり使っていません。

○ 刑事事件ですと、英語以外の外国語で大変裁判所は苦労されているということですか。大体英語で何とかなるのですか。

○ 相談窓口は、大体英語で大丈夫です。刑事の方は、珍しいタガログ語とか、イラン・イラクの方というのが以外に多いです。当番弁護士でも大変なんですけれども、民事の場合は、英語ができる方が多いか、または誰か連れてくるという人も多いので、大体何とか対応はできています。これは東京の場合ですから、全国レベルでそうかと言われると、やはり難しいところがあるようです。
 弁護士会の方も、弁護士会法律相談センターを推進してきてから大体10年になるんです。今は全国の弁護士会の本庁だけではなくて、地裁の支部が全部で253ありますので、253か所の大体85%くらいまで相談センター、支部もできて対応しています。いわゆる公設事務所も、今年中にももう20か所できると思いますので、かなりその意味では、市民のためにということで努力をしてきているつもりです。

□ 学者の方も一般的、抽象的な発言をお願いします。やはり待たされるんですかね。1日仕事になってしまうんですかね。随分人がいたようですから。

○ そうですね。もう一つ今、法律扶助協会でやっているのは、相談登録弁護士制度です。事務所で対応をします。支部の相談員だけではなくて、それが全国で大体5,800 人が登録しています。地方の場合は、近くの法律事務所に行って対応するという方が多いようでございます。東京の場合は、交通の便がいいので、支部の窓口へ行ってもいいんですけれども、東京だけでも、相談登録弁護士が約1,500人いますので、アクセス窓口というのは、今急激に増えています。

○ 神田と四ッ谷にこういうものがありますよというのは、いろいろな方法で宣伝しているのですか。

○ 宣伝しているんですけれども、私どもは整理屋退治、そういうのを随分やっているんですけれども、二次被害というのに引っ掛かる方はたくさんいるんですね。神田のクレ・サラ相談センターの前に公衆電話ボックスがあるんです。そこはガラスのボックスなんですけれども、壁から天井から全部ヤミ金融のチラシが貼ってあります。携帯電話で、利息も書いていない。全部救済しますというようなチラシで、何でああいうところに引っ掛かるのかと思いつつ、広報予算がないもので、あまり宣伝できないので、対応不足を実感しているところはあります。

○ 一般の人から見てどうなんですかね。行くまでなんですね。行った後は、非常に我々も見てみて、スムーズにいくんですね。行くまでの決断。しかし、これは御本人の決断だし。

○ 前回所用で失礼いたしました。抽象的な話でもいいからという話だったんですが、広報はやはり限界があるんだろうと思うんです。メディアをそれほど使えるほど、司法の部門は予算が潤沢ではないというのが明白なので、そうなると、本当に司法改革を進めていく上では、義務教育の過程でどのように司法教育をしていくのか、法律教育をしていくのかという視点も忘れてはならないだろうと思うんてす。テレビで裁判所が出てくるのは全部刑事事件ですから、刑事事件のイメージで皆さん固まっているわけです。訴追されたと、出ていくのは、お白洲に引き出されるというイメージでしか裁判所を見ておられない方が多いだろうと思うんです。実際はそうじゃない。そういう面もあるけれども、市民間のもめごとを裁判所が間に入って中立の立場から解決していく重要な役割を持ってきたんで、その場合には、両方の言い分を聞くことが必要ですから、ちょっと時間が掛かるのはやむを得ないんだと。そこまで含めて、裁判のイメージをもう少し、教育を通じて、とりわけ中学校教育が大事だと思うんですけれども、その辺りで、もう少し全体の底上げと言いますか、意識の底上げを教育を通して図っていくという視点もあっていいのではないかなという気がしています。

□ おっしゃるとおりですね。

○ 東京地裁の例なんですけれども、ボランティアで活動しているアクセス推進委員会というのが設けられていまして、いろんなPR活動をやっているわけです。例えば、模擬裁判を開いてそれを見ていただくというのもありますし、裁判官が小学校・中学校・高校等に出張講義に行ったりもしています。法服を持っていって、実際に小学生・中学生に着てもらい、裁判官はこれを着て裁判をやるんだという説明をすると大変喜んでくれます。また、裁判というのはどういうものか、例えば、第1回期日で被告は欠席して、何も言い分を出さない場合、原告の言っていることが本当がどうか裁判所にはわかりませんけれども、さあ、裁判所はどうしたらいいでしょうかと尋ねてみます。すると、事実がわからない以上、裁判所は証拠を集めなくちゃいけないという答えが返ってきます。そこで、裁判官が、残念でしたね、民事訴訟には弁論主義という原則があって、通常は、被告が欠席すると原告が勝ってしまうんですよと言うと、一様に驚くんです。そんなような取っ掛かりをつくりながら、民事裁判の手続の流れについて裁判官が出張して講義をしたりしています。割と需要が多くて、相当件数依頼がありまして、比較的好評を博しています。礼状なども来るんですけれども、大変よくわかったし、面白かった、裁判官のイメージが変わったとか、裁判所のイメージが変わったという内容のものがほとんどです。そういう好意的な反響が多いです。
 ほかにも、何人かのグループで集まっていただいて、裁判所に来てもらって、法廷を実際に裁判官が案内して、法廷傍聴を実際にしていただく。それが終わった後、その内容について、手続面が中心になるんですが、説明をしたり、質問を受けたりという形で積極的に、広報活動をやっているところです。
 もっとも、以上のような取組が、教育全体についての影響力というほどには至っていないと思うんです。確かに先生方、小学校・中学校・高校の先生方にももう少し理解していただいて、民事裁判の実情ということを紹介していただけたらありがたいなというのは、実感としてあります。

○ 修学旅行で最高裁に行くよりは、第一審に行った方がいいと思いますけれどもね。

○ 私も広報の問題というのは非常に重要だと思うんですが、今二人の委員が御指摘になられたのは、義務教育の段階からの司法教育というのは重要だと思うのですけれども、もう一つ、何か悩み事を抱えた人、例えば、身近な自治体の相談窓口に行くというようなことがありますけれども、そういったところで、法律扶助制度としてこういうものがありますとか、裁判所の制度はこのように利用しやすいよという何かPR活動というのが、全国的に行われればよいなと思います。その辺りの実態はいかがかなと思うんです。

○ 私は東京の場合しかわかりませんが、区役所に法律相談センターがあります。そこに法律扶助協会のチラシ、弁護士会の相談センターのチラシは全部置いてもらっています。いずれにしても、自治体相談も全部弁護士がやっていますので、ああいうところというのは、直受けしないので、相談しかしませんね。特に大阪などは直受けで、事件受任も全部自治体相談はやっているんですが、自治体が何か問題が起きたときに責任問題が起きるのでいやがるところもあって、東京はそれが難しいんです。そうすると、それをどこかに回さなければいけないというところで、自治体相談はものすごく数が多いと思いますけれども、それから、警察の困り事相談というのがあって、これも全国で30万件くらいあると思います。
 あと、社会福祉協議会の心配事相談、あれも半分公だと思うんですが、公的な無料相談がいっぱいあります。自治体相談も含めて、それがほとんど相談だけで終わっているのが、ちょっと厳しいところなんです。これが弁護士受任のところとネットワークを組めれば大変ありがたいというと思っているんですけれども、それがなかなか難しい。例えば区役所の法律相談へ行って、これはもう事件であるから弁護士会に行きなさいと行っても、なかなか行きにくくて、そのまま終わってしまう。被告事件でも欠席で終わってしまうというのがあるんじゃないかと思うんです。
 うまくそういう公の無料相談と弁護士会の有料相談とのネットワーク化、それから、法律扶助協会とのネットワーク化というのがうまくできれば、かなりの人が救済できると思うんですが、それがなかなか難しくて、守備範囲を抱え込んで、なかなか回しずらいというのがあるので、そこを今どうするかというのが弁護士会としてこれからの検討課題だと思います。

○ 教育、それからインフォメーションの仕方ということで、これから先高齢化が進んでまいりますので、東京都の被害救済委員会などにも、高齢者が悪徳商法に引っ掛かっているというケースが上がってきておりまして、そういう意味では、高齢者に対する情報提供の在り方というのもこれからの大きな課題ではないかと思われます。そういう意味では、今日お配りいただいている資料などは、東京都のセントラルプラザというのがありまして、窓口のほとんどにはこれが置いてあるんですけれども、こういう資料も、センターに来た人は、すべてではなかったですけれども、大部分手にすることはできるんですが、そこまで出向かない方たち、高齢であまり外の方との接触が多くないような高齢者だけの世帯など、そういう方たちに、今、介護サービスとかその他の福祉サービスなどでのつながりも、多少別のところでの情報提供の公共窓口というのがありますので、そういうところも提携していく必要があるのではないかという気がしております。
 こういう事業の中で、法務省が出されている後見人制度についてのパンフレットを拝見しますと、大変大きな字で見やすいです。高齢者の方に見ていただくためには、そういう意味では、活字の大きさも配慮していただく必要がありますし、配布場所やルートも御研究いただかないと、また、消費者の窓口なども、消費者被害として上がってくる場合も結構ありますから、活用することは可能だと思うんです。情報提供をしたいというふうにおっしゃっていただければ、置いておくということを言われる機関がいっぱいあるんじゃないかと思います。

○ 司法へのアクセスということで、今、いろいろお話を伺っていると、恐らく裁判所に到達するまでに、幾つかのステップがあると思うんです。その第1段階のアクセスが、一般的なPRの話で、先ほどから出ている。ただ、これは難しいなと思うのは、全く一般的なPRなんですが、例えば、同じ国がやっている事業でも、郵便みたいに日常だれでも使うような、しょっちゅう関係するような部署と違って、我々は法務省で登記をやっていますけれども、普段はあまり縁がないです。裁判などは、一生に一遍裁判所に行くかどうかという感じですから、これも、今言ったように、一般的な教育の場面で、もちろん底上げをするということは必要かもしれませんが、このPRには予算的な限界もありますし、流したからと言って、それがどのくらい効果があるかということもあるんで、この点は、先ほど机の上に配布されたのを見ましたけれども、やはり今の時代、インターネットとか、お年寄りの方には考えないといけないでしょうけれども、非常にアクセスしやすい形で情報が提供されるという形が一つ有効かなと思いました。前回見学したときには、その部分がはっきりわからなかったので、今日はよくわかりました。
 それから、ステップの第2というのが、恐らく、現実に自分が本当に裁判所に行かないといけないかなという意識になったときに、さあ、どうしようかという話で、これは、利用者の個別的な要望をどうやって把握して、これに対応する手続をうまく紹介してあげるかという話で、これが先ほどからの相談の話だろうと思います。この相談の関係でいくと、私、今回見学させていただいて、私はもともと裁判所の出身ですが、非常によく裁判所は対応をされていたなと、私もそう思います。
 先ほども出ましたが、弁護士会の方の相談ですが、スペースの問題、それから事務的な手当の問題、いずれもそこでは限界にありますし、やはり、当日の相談件数に限界があるために、その日に相談に応じられないという事態は、早急に改善しないといけないと思います。これも一種のサービス業ですから、民間のサービス業で、窓口に訪れた人に、今日はだめですとお断りするということではちょっと困ると思います。厳しいかもしれませんが、もちろん、手段はいろいろ限られていると思いますけれども、何とか対応しないといけない。この点でちょっと聞き忘れたんですが、相談の予約制みたいなものがあったかどうかというのを教えていただきたいと思うんです。
 今回、総体的に私の方が受けた印象としましては、司法へのアクセス、いろんな阻害要因があると思われるんですけれども、制度的な問題と運用の問題というのがあって、恐らく、運用でかなりの部分が改善される。運用で改善されるということは、これまでの阻害要因は、恐らく、制度を運用する人の意識が一番問題だったんだろうという気がするんです。今回見ましたら、制度を運用する方の意識というのはものすごく変わっている。とにかく、サービスをいかに、的確に提供しようかなという意識がされていたと思います。例えば、少額訴訟の話もそうですが、制度的にああいうものをつくりました。今回、私が一番感銘を受けたのは、準少額訴訟です。要するに、少額訴訟というのは一回で終わるんですが、それの範疇に入らない、つまり、金銭的な問題でも上のもの、これはほとんど一回で終わるという実態があるということで、つまり、制度を変えなくても、運用で相当に改善できるという対応が可能だというのは、非常に今回こういう司法へのアクセスを検討する際にも、そちらの方面に相当に力を入れる必要があるということを考えなきゃいけないかなと思いました。

□ 今までのお話に出たこともありますし、御質問もありましたが、最高裁や日弁連の方も、何か補足していただくものがありましたらどうぞ。

(最高裁)
 最高裁判所事務総局総務局です。裁判所ホームページにおける情報提供サービスにつきまして、資料6に基づいて簡単に御説明させていただきます。
 前回の見学の際に、インターネットによる情報提供を行っているのかという御質問がございまして、東京簡裁では、行っていないという回答をいたしましたが、裁判所全体としては、御覧いただいているような形で実施をしております。
 1枚めくっていただきますと、裁判所のホームページのトップページが出ておりますが、3月20日でございますが、従来は最高裁のホームページだけだったのですが、今度は各地の裁判所というページをつくりまして、これの公開を始めたところでございます。
 それぞれの内容でありますが、1枚めくっていただきまして、「最高裁判所ホームページ」がございます。これは平成9年5月に開設したものでございますが、これまでに約215万件を超えるようなアクセス件数になっております。
 司法アクセス検討会の関連で申し上げますと、この中に裁判手続の紹介をしております。民事事件、刑事事件、家事事件、少年事件、簡裁の事件、それから裁判所に提出する書式例集、新しい手続のお知らせがございます。
 もう1枚めくっていただきまして、「各地の裁判所ホームページ」でございますが、そちらの方では、各裁判所へのアクセス情報、交通関係の情報でございますとか、あるいは、各地で準備しました手続案内、あるいは、それぞれの書式例、あるいは、傍聴券の交付情報、こうしたものを紹介しております。
 具体的には、「裁判所ホームページによる手続案内」であります。まず、最高裁のホームページでは、標準的な手続の紹介をいたしております。これに対しまして、各地の裁判所のホームページは、ある程度ローカル・ルールみたいなものがございまして、手続とか、ここで御覧いただいています大阪家裁ですと、手続相談の時間などを紹介しているところであります。
 次に、「電話・FAX案内サービスや書式情報」でありますが、電話番号等はこうしたページでの紹介をしているところでございます。また、書式例集につきましても、裁判所が、また標準的な書式を紹介しております。それに対しまして、各地の裁判所では、工夫いたました書式を紹介しております。いずれも、このページからダウンロードして印刷していただけるような形にしております。具体的な書式の例が、1枚めくっていただいたものでございます。
 最後になりますが、特に裁判所のホームページの中で利用の多い部分としましては、判決情報の公開のところがございます。この最高裁判所のホームページをつくりました一番最初には、最高裁の判決だけを速報版として紹介しておりました。その後、当時、産業界を中心にして、知財関係の判決を早く知りたいという御要望がございまして、知財の判決速報というものを開設し、更にデータベースとして、最高裁の判例集、知財の判例集、労働の判例集、こうしたデータベースを新しく設けるようにいたしました。更に加えまして、3月20日、各地の裁判所のホームページをつくる際に、全国の各高裁、地裁の、新しく言い渡された裁判例を速報版で紹介するページを出したところであります。右側に主要判決速報とございますが、これは東京地裁の例でございまして、少し前から準備をしておりまして、何か月か前から重要と思われる判決の紹介をしております。
 こうしたことで、インターネットによる情報提供についても、務めてまいっているところでございます。
 以上でございます。

(日本弁護士連合会)
 御覧いただきました弁護士会館の3階の相談センター、確かに御覧いただいたときには、ほとんどいっぱいという状態でしたけれども、この18日に、家事事件だけを専門とする相談所を立ち上げまして、これは大体会館でやっている3分の1の相談が家事事件で、それを外に出しました。ということで、今、キャパシティーはあるという状態です。
 今、検討されているのは、いずれにしても、あそこではこれ以上はできないということは目に見えていますので、いっそのこと一部を残してほとんど外に出そうという用意をしております。
 もう一点、予約という話があったと思いますけれども、東京で外へ出している相談センターは、すべて予約でございます。クレジット・サラ金問題と、今度出しました家事事件についての相談につきましては、全国的に見ますと、ほとんどの相談センターが予約制を取っていると思いますので、飛び込みでというのはほとんど少数です。ただ、予約制だけを取りますと、キャンセルの問題がありますと落ちるということがありますので、その組み合わせを工夫して考えていければと思います。
 以上です。

○ 法律扶助のことですが、先日、満杯でお帰りいただいたのは、ほとんど法律扶助の方なんです。法律扶助の方は、いずれにしても、予算の枠で1日何件ということが予算が決まっているので、どうしてもその枠を外れると難しくなるわけです。
 法律相談予算は、ここのところ法務省の努力でかなり増やしてもらっていただいているんですけれども、でも、まだ足りないんです。平成13年が1億7,000万円、平成14年が2億5,000万円の予算です。ですから、今の予算体系の中では、大変増やしていただいている例外的なところなんで、法務省の御努力はあるんですけれども、それでもまだ市民の要求の方が強いんです。ですから、大勢の方が法律相談に押し掛けるので、まだまだ足りなくて、枠から外れてしまうと、お帰りいただく。代理事件、援助事件の方はもう予算がなくなったので、3月は一切決定していないんです。4月に来てくださいということで、そういう意味では、予算の枠というので、法律扶助相談も、事件の方も、かなり限界があるということなんです。ですから、弁護士の方はまだまだやる意欲はあるんですけれども、国の予算が欲しいというのが切実なお願いになっております。

□ ありがとうございました。それでは、前回の視察を踏まえての意見交換はこれまでにいたしまして、続きまして、司法制度改革推進計画の関係、これは事務局から御説明をお願いいたします。

● お手元に、閣議決定された司法制度改革推進計画と、最高裁の司法制度改革推進計画要綱、日本弁護士連合会の日本弁護士連合会司法制度改革推進計画というものをお配りしております。閣議決定は3月19日にされたばかりでございますので、若干御報告をしたいと思います。事務局の方で用意しました「司法制度改革に関する措置・取組一覧(参考資料)」という資料を基に御説明をしたいと思います。
 この検討会に関連する事項といたしましては、3ページ以降になります。下から2段目、「簡易裁判所の管轄拡大」の項目につきまして、「簡易裁判所の事物管轄について、経済指標の動向等を考慮して、対象事件の訴訟目的の価額の上限を引き上げることとし、所要の法案を提出する(平成15年通常国会を予定)。(本部)」と記載されております。括弧内の記載は、法案の立案を担当する府省を示しているわけでございます。その真ん中の段にありますのが、最高裁の計画の欄で、右側が日弁連の計画でございまして、最高裁の計画要綱におきましては、「簡易裁判所の事物管轄について、経済指標の動向等を考慮して、訴額の上限を引き上げるための法律の施行に伴い、所要の措置を講ずる」とされております。
 次に、4ページにいきまして、「7 裁判所へのアクセスの拡充」という項目におきまして、「(1) 利用者の費用負担の軽減」「ア 訴え提起の手数料」という項目で、「訴え提起の手数料について訴訟の目的の価額に応じて順次加算して算出する、いわゆるスライド制を維持しつつ、必要な範囲でその低額化を行うこととし、所要の法案を提出する(平成15年通常国会を予定)。(本部)」とされております。最高裁の要綱におきましては、「提訴手数料の低額化のための法律の施行に伴い、所要の措置を講ずる」とされております。
 次に、簡易裁判所の少額訴訟事件訴え提起の手数料については、「定額制の導入を含め検討し、平成15年3月までに、所要の措置を講ずる」とされておりまして、最高裁の要綱では、「簡易裁判所の少額訴訟事件の提訴手数料について、政府が措置を講ずることに伴い、所要の措置を講じる」とされております。
 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いにつきましては、その下のイの項目でして、「弁護士報酬の敗訴者負担制度について、不当に訴えの提起を萎縮させないよう、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等制度設計について検討した上で、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入することとし、所要の法案を提出する(遅くとも平成16年通常国会を予定。)(本部)」と定められております。その右側の最高裁の要綱でございますが、「一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入するための法律の施行に伴い、所要の措置を講ずる」とされております。
 次に、訴訟費用額確定手続につきましては、ウの項目で、閣議決定では、「訴訟費用額確定手続を簡素化することとし、平成15年3月までに、所要の措置を講ずる」とされておりまして、最高裁の要綱においては、「訴訟費用額確定手続の簡素化について、政府が措置を講ずることに伴い、所要の措置を講ずる」とされております。
 そのすぐ下の項目で、日弁連の計画で、「訴訟費用保険の開発・普及に協力するとこととし、必要な検討を経た上、逐次所要の取組を行う」、このように定められております。
 次に、「民事法律扶助の拡充」につきましては、5ページになりまして、左側の閣議決定におきましては、「民事法律扶助制度について、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営機関の在り方等につき更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実することとし、本部設置期限までに、所要の措置を講ずる」とされ、担当が、「(本部及び法務省)」とこの項目についてはなっております。それから、日弁連の計画におきましては、その右側の2で、「民事法律扶助の一層の充実・発展を図るため、逐次所要の取組を行う」と定められております。
 次に、「裁判所の利便性の向上」として、アの「司法の利用相談窓口・情報提供」についてですが、これにつきましては、「司法の利用相談窓口を裁判所、弁護士会、地方公共団体等において充実させ、インターネット上のホームページを活用したネットワーク化の促進により、ADR、法律相談、法律扶助制度を含め司法に関する総合的な情報提供を強化するための方策を検討し、逐次所要の措置を講ずる」とされておりまして、これにつきましては、担当が本部及び関係府省となっております。最高裁の要綱におきましては、「ホームページ等を活用してネットワーク化の促進により、ADR、法律相談、法律扶助制度を含む総合的な情報提供を強化するなど、司法の利用相談窓口を充実させるための方策について、関係機関と連携を図りつつ、検討し、所要の措置を講ずる」とされておりまして、更にその右側に日弁連の計画にも盛り込まれておりまして、「司法の利用相談窓口(アクセス・ポイント)を弁護士会において充実させ、ホームページ等を活用したネットワーク化の促進により、各種のADR、法律、法律扶助制度を含む司法に関する総合的な情報提供を強化するため、逐次所要の取組を行う」とされております。
 その下、裁判所の情報通信技術、それから夜間休日サービスに関しましては、最高裁の要綱において定められております。「裁判所の訴訟手続、事務処理、情報提供などの各側面での情報通信技術(IT)の積極的な導入を推進する計画を策定・公表するための所要の措置を講ずる」。 更に、「現在、既に実施している裁判所の夜間サービスについて、国民へ周知した上、夜間サービスの拡大及び休日サービスの導入に関する検討を行う」とされております。
 次に、裁判所の配置につきましては、閣議決定におきましては、「裁判所の配置について、人口、交通事情、事件数等を考慮し、見直しに関する検討を行う」とされておりまして、最高裁の要綱におきましては、「裁判所の配置について、人口、交通事情、事件数等を考慮し、関係機関と連携を図りつつ、見直しに関する検討を行う」と定められております。
 「被害救済の実効化」に関しましては、いずれも、担当府省については本部ではございません。「損害賠償額の認定」につきましては、アの項目で、「損害賠償の額の認定に関する制度について検討する」とされておりまして、この担当は法務省とされております。それから、最高裁の要綱におきましては、「損害賠償額の認定に関する制度について、関係機関と連携を図りつつ、検討を行う」とされております。また、「少額多数被害への対応」は、イの項目で、「いわゆる団体訴権の導入、導入する場合の適格団体の決め方等について、法分野ごとに、個別の実体法において、その法律の目的やその法律が保護しようとしている権利、利益等に考慮した検討を行う」とされておりまして、担当が内閣府、公正取引委員会、経済産業省とされております。最高裁の要綱におきましては、「団体訴権の導入等について、関係機関の検討状況を踏まえつつ、必要な検討を行う」とされております。
 関係する部分は、以上でございます。

□ 以上の御説明につきまして、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。

○ こちらの中で、最後のところで御説明いただいた被害救済の実効化の部分ですが、例えば、少額多数被害への対応というところでは、内閣府、公正取引委員会及び経済産業省が具体的にというように書かれておりますけれども、被害救済の実効化ということは、消費者側からしますと、ちょっと側面を変えますと、アクセスすることによって被害救済は実行に移されるということになるんです。したがいまして、例えば内閣府で消費者契約法等についてお取り扱いになると思うんですけれども、そこで具体的に進めていただければいいんですが、先日消費者契約法と団体訴権の扱いについてお尋ねしますと、司法制度改革推進本部ができているということで、何か遠慮されているんじゃないかなという感じもしたんです。ゴーサインが出ないと動けないと言ったらいいでしょうか。それぞれが遠慮し合って、谷間に落ちこ込むようなことがありますと問題ではないか。これは消費者からの司法へのアクセスということと非常に関わりが深い分野ですので、きちっとそれが実効化が図られるために何からの方向付けというのは必要ないんでしょうか。ちょっと心配なんですが、その辺はいかがでしょうか。

● この点につきましては、閣議決定に定められているように、まず検討を行うということになっておりますので、その関係府省の方でまず検討をしていただくということですが、おっしゃるとおり、本部があるがゆえに、そういうことにならないように、むしろ本部は、そういう検討を推進するための調整をする機関でございますので、そういったことにならないような情報公開、意見の調整をしていく努力をしていきたいと思います。

○ 被害救済の実効化を図るということと、アクセスをしていくということとは、それが表裏一体の関係を成してるものてすから、本検討会で団体訴権の方向付けみたいなことは必要ではないでしょうか。公取委の方の私訴制度につきましても、私たちからアクセスするということは、実はあの制度ができたときは、私は自分のところの機関紙には紹介をしたんですけれども、消費者にとってはまだよくわからなくて、消費者契約法にも消費者は期待を持っているんですが、それでは実際に少額多数被害などの問題が起こったときに、どういうふうにしたらいいのかというのが現状では手掛かりが余りないという面があるんです。その辺がどういうふうになるかというところが双方で譲り合いの精神を発揮してしまうといけないんじゃないかという気がしております。

○ それは御指摘のとおりですね。消費者契約法は、内閣府ですか、あそこが精力的に旗を振ってくださればいいわけですけれども、これを見ますと、推進本部は抜けているんですね。まずは内閣府ですから、名前も一番上でしょうから、あの辺りで、継続的には検討はしていたんですね。私も、何か消費者契約法を遠いところで関与はしておりますので、そういうことを勉強していたことは知っております。

○ 多分、資料を集められたりはしていると思うんです。ただ、団体の決め方はどうするかということなどは、具体的な中身ではなくて、先ほど申しましたようなアクセスの側面が非常に大きい面があると思いまして、ちょっと気がかりなんです。

□ 向こうの方でも、先ほどおっしゃいましたけれども、実効化ということで、取り組むはずですね。御指摘のように、消極的抵触があってはいけませんから、いろんなところで声を上げていただければと思います。

○ それに連れてなんですけれども、私も、この団体訴権のところが、審議会の意見書ではかなりきちんと書いてあるのに、ここではやらないというのでびっくりしたんですが、他の検討会でやるのかなと思ったらば、内閣府等のところだというんで、そうすると、団体訴権というのは、かなり今まで要請があったので、それが司法関係のところで抜けてしまうのはどうも問題ではないかなという、ここをやるのを反対するわけではないんですが、例えばこの内閣府等のところで検討しているならば、随時報告していただいて、また、何か意見を言う機会があればそれをお願いしたいと思うんですが。

○ 先日伺ったんですけれども、アメリカのクラス・アクションというのは、個別法ではなくて、ちゃんと民事訴訟になっているために、建築のいろいろなアスベストでしたか、そういう問題なども公になっていて、訴訟の応対になっているというように伺ったんですが、日本ではそうしたことは民事訴訟ではなくて、もっと個別法で行われるというように今おっしゃっていることですが、私よくわからないので。

○ 団体訴権の導入の問題については、一番最初の会議のときに、私は確認の意味で発言させていたたいたんですけれども、司法制度改革審議会の意見書において、まさにこういうふうに導入する場合の適格団体等の決め方等については個別実体法においてやる。一般的な手続法でやるんではないということですから、司法制度改革推進本部において検討されるべき課題ではないと決められた。一方、クラス・アクションの問題は、民事訴訟制度全般の問題なんでしょうけれども、司法制度改革審議会意見書においては、今後の検討課題であって、今回の検討課題ではないということを審議会の場で押し切られているわけですから、今、ここで議論すべきだという立場にはないんだということだと理解しているんです。

□ いろいろ御意見はおありになるわけですが、一応、この司法アクセス検討会のマターではないと、残念ながらそういう仕切りがあるということですね。しかし、いろんな機会を見つけて発言することはもちろん、各委員がいろいろな場で御発言いただくということだろうと思うんです。
 では、少し先に進むということで。

○ もう一つすみません。申し訳ないんですが、事務局でまとめられた閣議決定と最高裁と日弁連というのがあるんですが、日弁連のは、空欄のところは意見を言っていないから空欄かなと思ったら、今見たら意見を言っているので、抜けているのは、無視していると思われるとまずいので、日弁連の方も、裁判所の夜間サービスの問題とか、団体訴権のこともみんな骨組みの中に入れていますので、書いていただけるとありがたいのですが。

● 今の点は、一覧表の1ページ目の冒頭をご覧いただきたいんですが、なお書きのところがございます。この資料は事務局の方で整理したもので、資料整理の元になりましたのは、最高裁と日弁連のそれぞれの計画ということになるわけですけれども、日弁連の計画につきましては、多岐にわたる記載がございまして、その中で、必要な取組を行うという体裁で記載されたものについて整理をさせていただいております。つまり、いわゆる所管事項についての記載の部分と、それ以外の運動の方針のような部分、いろいろな記載がございますので、その辺り、三者の計画を並べる際には統一を取るという観点で、所管事項に限るという形で整理しておりますので、抜けている部分がございます。
 ただ、このなお書きにも記載いたしましたように、これが日弁連の計画すべてではございません。これ以外の詳細な内容については、それぞれの計画を参照されたいと書いてありますので、ひとつ誤解のないようにお願いいたします。

□ 真ん中の最高裁にもまっ白なところがあるようですが、そういう趣旨のものだということですね。
 それでは、次の、今は司法制度改革全体のお話を伺いしましたが、我々の民事手続の方に特化いたしますと、民事訴訟の手続の概要というものを頭に入れておこうということで、事務局から、資料並びにその中身の説明をお願いいたします。

(2) 民事訴訟の手続の概要について

● お手元の資料1「民事第一審訴訟記録」と、その下に「民事第一審訴訟記録に表れた紛争経過」、それから裁判の審理経過の時系列表を一枚の紙を用意いたしましたので、御参照いただきたいと思います。
 それから、第1回目に配布した資料、皆さんの右側の足元にそれぞれあるかと思いますが、今後は、この検討会で配布した資料を順次これに綴って毎回用意しておこうかと思っております。その中で、「What is 『裁判所』?」という資料が入っているのではないかと思いますが、このパンフレットを参照していただきますと、2枚めくった3ページの右側に、「民事裁判の手続図」という流れ図がございます。これが民事裁判第一審の手続の流れ、紛争の発生から判決言い渡しまでを一つの流れとして書いてありまして、時系列に沿っておりますので、これを見ていただくと、大体の流れがおわかりいただけるのではないかと思います。
 今回、「民事第一審訴訟記録」というものを資料1としてお配りいたしました趣旨は、今後、訴え提起の手数料、それから訴訟費用というものを考えるに当たって、あるいは弁護士報酬というものを考えるに当たって、具体的な事例に即して事務局の方でも説明し、試算をしてみるという形でお示しした方が御理解いただきやすいのではないかということで、今後の説明に当たっては、この記録に表れたような事件、この事件を素材にして、まず基礎として御説明をしようかと思っているわけでございます。
 この第一審訴訟記録、それから時系列表を見ていただきますと、まず、訴えの提起ということになるわけでございます。民事訴訟というのは何かということになりますと、大体、民事裁判は、関係者の間で過去の事実についてお互いの認識が違っていたり、契約や法律の意味の理解がお互いで違うというような場合、そういった原因で起こることもあれば、ただ単に、約束はわかっているんだけれども、約束を履行する意思や能力がないとか、お金がなくて支払えないとか、それだけのことであっても、それを強制するためには裁判で訴えて強制執行しなければいけないということで、そういった約束を果たしたり、法律で定められているような義務を履行したりするようなことを裁判所に命令を出してもらったり、権利義務関係の確認を求めるということになるわけでして、その後で、最終的には、裁判所の命令が国家権力によって強制されるということにつながる仕組みになります。
 資料1の訴訟記録はどういう事例かというと、紛争経過にまとめてありますように、この事例では、誰がお金を借りて返すという約束をしたのかということ、そういう過去の事実に関する争いがある事例です。ですから、ここの紛争経過でまとめたのは、お互いの主張から要約したわけでして、本当に何が起こった事実なのかということは、わかるわけではありません。一応の記録から概要をまとめたものであります。
 最終的には、裁判をするには、口頭弁論で当事者の主張を確認して、裁判所が事実を確定して判決をするということになります。
 民事裁判で最初の手続は、訴えの提起になるわけですが、資料の1だと、9ページに訴状が付いています。訴えの提起は、裁判所に訴状という書面を提出しなければいけないのが原則になっておりまして、資料の9ページでは、平成13年1月15日に、竹中利彦さんという原告が、大谷浩一さんという被告に対して訴えを起こしたということになっています。何を請求したかということは、10ページの一番上の請求の趣旨で、被告の大谷浩一さんは、原告の竹内利彦に対して450万円を支払えという命令を出してもらう判決を裁判所に求めたということになります。この訴えの理由として主張されている事実というのは、10ページに「第2 請求の原因」というところの1にありますように、要するに、この訴えを起こした原告は、訴えられた被告に対して450万円を貸したけれども、返してくれないから返せという訴えになります。この場合に、どこに訴えを起こすかということですが、9ページの訴状の宛先を見ていただきますと、○○地方裁判所御中となっております。90万円を超えない請求が簡易裁判所の管轄とされておりますので、この場合は、訴訟の目的の価額というのは450万円となりますから、地方裁判所に訴えが起こされております。
 訴えを提起する場合、手数料を納付しなければならないわけですが、手数料は、この訴状に収入印紙を貼って納付することになっております。9ページの訴状の左上のところに「収入印紙3万0600円」と記載されているのは、450万円の訴訟の目的の価額に対する手数料が3万600円になるからです。収入印紙というのは、郵便局などで売っている普通の収入印紙ですから、収入印紙の売上げによる収入は、印紙収入として、登記や登録のときの収入印紙で収める登録免許税とか、印紙税法で契約書や約束手形に貼る収入印紙と同じ国の一般会計の歳入に印紙収入として計上される歳入でございます。
 訴えが提起されますと、裁判所は、第1回の口頭弁論期日を指定することになりまして、これは記録の表紙の裏側を見ますと、訴えの提起の2日後の1月17日に、裁判官が、口頭弁論期日を2月15日午前10時と指定しております。そして、口頭弁論期日には、被告を呼び出すことになります。被告の呼出状は、75ページに「郵便送達報告書」というものがございまして、この郵便送達報告書によりますと、1月19日に、被告の大谷浩一さんの同居者である大谷圭子さんに、この口頭弁論期日の呼出状、訴状、それから答弁書を出してくださいという答弁書催告状が届いたということになっています。
 先ほど委員の方からも御説明があったように、被告が呼出状を裁判所から送られたのに、この期日に出頭しないで、しかも答弁書も出さないと、原告の主張している事実を認めたとみなされて、その事実を前提に、通常であれば、原告の請求を認めるという欠席判決がされることになるわけです。
 この後の手続経過ですが、呼出しを受けた大谷浩一さんは、2月8日、これは記録の12ページになりますが、訴訟代理人として弁護士を選任して、答弁書を裁判所に提出しております。更に、9ページで、原告は、訴訟代理人として弁護士を選任して、訴状を提出しておりますし、14ページでは、第一準備書面ということで、原告の主張を記載した書面を裁判所に提出しております。
 こうした書面の提出があった後に、第1回の口頭弁論期日、これが1ページの第1回の口頭弁論期日の調書があるわけですが、第1回の口頭弁論が2月15日に開かれまして、弁論の要領という下の方に書いてあるように、原告は訴状と第1準備書面に基づいて、被告は答弁書と準備書面第1に基づいて、それぞれの主張をして、裁判所は、この事件を弁論準備手続に付しているわけです。そのときに提出されている証拠というのは、書証目録というのが25ページにあります。第1回の弁論では、金銭借用証書、領収書、印鑑登録証明書、こういった書証が提出されています。書証の内容は30ページ以下に写しがあります。
 「What is 『裁判所』?」の流れ図を見ていただきますと、黄色いところで原告の請求内容、主張の陳述(訴状)と書いてあり、 被告の答弁・主張の陳述(答弁書)と書いてありますが、裁判所は、そういった主張がされた後で、争点と証拠の整理を行うということになっておりまして、それがこの事件ですと、弁論準備手続になります。裁判所が弁論準備手続に事件を付したというのは、争点と証拠の整理手続を行うということになったことを意味するわけです。その内容が、2ページの第1回の弁論準備手続調書になりまして、ここでは、証拠が当事者から提出されたということになっております。その証拠の内容は、25ページ以下の書証目録、それからその書証の写しがその後にありますが、そういった証拠が裁判所に提出されてきます。更に、このときには、弁論準備手続を続行するということになっておりまして、その続行した期日が、3ページの第2回弁論準備手続調書になります。この調書の当事者の陳述等を見ていただきますと、原告の方が第2準備書面という書面に基づいて主張し、被告の方が準備書面(第2)という書面に基づいて主張し、更に「証拠関係別紙のとおり」という記載があります。これは、先ほどの書証目録、証人等目録の方に戻るわけですが、特にここで注意していただきたいのは、28ページの証人等目録にあるように、証人として大谷明子さん、実際にお金を受け取ったとされる人、それから、訴えを起こした原告の本人、それから、訴えられている被告の本人、この3人を証人尋問、それから本人尋問という形で裁判所で尋問することがその日に決まっております。そして、その尋問期日として5月17日が指定されまして、裁判所の方は、争点と証拠の整理手続は終わったということで、弁論準備手続を終結しております。
 その次の4ページの第2回口頭弁論調書にありますように、5月17日の口頭弁論期日で、先ほどの証人尋問と原告と被告の本人尋問をした上で、裁判所は、口頭弁論終結の決定をしております。尋問の内容につきましては、この訴訟記録ですと、44ページ以下の証人調書などに記載されております。
 裁判所は、弁論が終結した後で和解を勧告しておりますので、和解期日が開かれまして、それが調書、5ページになりますが、5月29日に和解期日を開いていますが、和解が成立する見込みがないということで、裁判官が和解勧告を打ち切って、先に指定した6月14日、これが6ページになりますが、判決を言い渡しています。判決書は、記録上は省略してありますが、判決が言い渡され、8ページにありますように、その判決を当事者に送達することによって、第一審の裁判手続が終わるという流れになっております。
 以上が、この記録に基づく第一審手続の流れということになります。

□ 実際の事件のやり方に従った書類が出ているということですが、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。論理的に配置されているんですが、慣れないとかえってわかりにくいかもしれません。では、これはまた適宜お読みいただくことといたします。
 続きまして、「訴えの提起の手数料」の説明を、事務局からお願いいたします。

(3) 訴えの提起の手数料について

● 「訴えの提起の手数料」については、資料2以下の御説明をさせていただきます。
 先ほど申し上げように、民事訴訟の訴えの提起の手数料は、収入印紙を訴状に貼るという方法で納付されておりまして、印紙収入が国の一般会計の歳入とされているわけですが、その根拠となる民事訴訟費用等に関する法律は、この資料の2に書いてありますように、昭和46年に制定された法律で、昭和46年7月1日から施行されています。その後は、訴えの提起の手数料に関しては、この資料の2の表、特に右側の「最終改正」というところを見ていただきますと、そこに記載されておりますように、昭和55年と平成4年に改正がされておりまして、それぞれ昭和55年10月1日、それから平成4年10月1日から改正法が施行されております。
 現行の訴え提起の手数料は、この表の左側、「現行」と書いてあるところに記載されているとおりでございまして、訴訟の目的の価額、つまり先ほど言った訴えで請求している価額、450万円の請求であれば450万円ということになりますが、その訴訟の目的の価額が増えるごとに一定の手数料額を増額するというスライド制によって定められています。
 訴え提起の手数料の最低額は、現行制度では、5万円までの場合に500円と定められております。
 それから、訴訟の目的の価額が幾ら増額すると手数料が幾ら増額するかという比率を「手数料率」としてこの表では記載しておりますが、その手数料率については、その欄に記載したパーセンテージのとおりになっておりまして、訴訟の目的の価額が上昇するにしたがって、手数料の上昇する割合、手数料率が1%から0.2%まで,順次低下するようになっております。それから、いくら訴訟の目的の価額が上がったら手数料が上がるかという、訴訟の目的の価額の幅ですが、その幅については、この表を見ていただきますと、30万円までの場合は5万円ごとに上がるということになっておりますが、下の方にまいりますと、10億円を超えるときは500万円ごとに手数料を上げるという形になっておりまして、手数料を算定する基準となる訴訟の目的の価額の幅というのは、訴訟の目的の価額が上がるにしたがって幅が広くなっていくという仕組みになっております。
 この現行規定、どういう改正が行われて現行の規定になっているかというところを見ますと、右側の「最終改正」という項目を見ていただければおわかりいただけると思いますが、昭和46年に立法する前にも、民事訴訟用印紙法ということで、やはり収入印紙で手数料を納めるという同じような仕組みになっておりました。そして、昭和46年の法改正、立法した当時に、それまでの旧法では、手数料の最低額が1万円まで100円であったのを、昭和46年に、5万円までは500円ということに引き上げておりますが、この点については、その後、昭和46年から現在まで改正がされていないということになります。
 それから、手数料率が1%とされる範囲については、昭和46年に、それまでの旧法では、訴訟の目的の価額が10万円までが1%の手数料率でありましたのが、30万円に引き上げられまして、30万円までの場合、手数料率が1%というように引き上げられておりますが、これも、昭和46年以来改正はないということになります。
 訴訟の目的の価額がいくら上がったら手数料をいくら引き上げるかという幅ですが、これも、昭和46年に、一番下の場合、それまでは1万円ごとに手数料を変えていたのを、5万円ごとに手数料を変える、そういう仕組みに変えておりまして、これも、その後、改定はされておりません。
 次に、その後の改正について御説明しますと、昭和55年の改正では、訴訟の目的の価額が30万円を超えて300万円までという範囲について手数料を引き上げた、これが昭和55年の改正でございます。見ていただきますと、「最終改正」の「昭和55年」というところを見ていただきますと、30万円から100万円までの範囲の手数料率については、0.7%であったものを0.8%に引き上げて、100万円から300万円までの手数料率を0.5%から0.7%に引き上げた、これが昭和55年の改正でございます。
 逆に、平成4年の改正は、訴訟の目的の価額が1,000万円を超える範囲について、手数料率を引き下げた改正でございます。表の「最終改正」の「平成4年」というところを見ていただきますと、平成4年の改正前は、300万円を超える場合は一律に0.5%の手数料率とされていたのを、平成4年の改正において、1,000万円を超えて1億円までは0.4%に、1億円を超えて10億円までは0.3%に、10億円を超えるところは0.2%に、それぞれ引き下げた、これが平成4年の手数料改正でございます。
 訴訟の目的の価額と手数料額を簡単に対比した表をつくりましたのが、資料2の下の方の一覧表でございます。
 次に、もう少しマクロの数字で手数料収入額、その推移、これを統計にしましたのが、資料3以下でございます。
 資料3は、裁判所における印紙収入額を、昭和55年から平成13年まで統計としたものでございます。訴えの提起の手数料というのはどこを見るかといいますと、例えば、この資料3の2ページの平成13年の項目で見ていただきますと、訴えの提起ですから、第一審を見ますと、平成13年のところでは、117億9,933万円というのが第一審の訴訟の提起による手数料の収入額ということになっております。一番下の方で、裁判所の民事調停等も含めた手数料収入全部でいくらになるかといいますと、平成13年のところでは、214億2,576万円という数字になっております。
 資料4は、手数料収入を裁判所の予算、事件数との対比で統計としたものでございます。その中に参考として、一人当たりの国民所得を経済指標として記載しております。それから、括弧書きの中で、昭和55年を100とした指数を記載していますが、資料4の2ページの一番右側を見ていただきますと、手数料改正が昭和55年と平成4年の年度途中で行われておりますので、手数料改正が1年分すべてに及ぶ年、昭和56年と平成5年との対比で平成12年の手数料収入の伸び、経済指標、事件数、予算の伸び、それを見ていただく数字を、資料4の一番右側の欄に括弧書きで記載してございます。裁判所の予算額を見ていただきますと、平成12年の裁判所の予算の項目、当初予算で3,186億5,589万という形になっておりまして、これを手数料の伸びとの対比で指数を見ますと、昭和56年と対比した数字で見ていただきますと、第一審の手数料収入、民事訴訟用印紙の第一審というところの一番右側の数字で見ていただきますと、第一審の手数料収入の伸びは、昭和56年と対比した場合には、289.5%の伸びとなっておりまして、裁判所の予算の伸びを見てみますと、これは裁判所の予算の項目の一番右側の括弧書きの方の上の段の方になりますが、169.4%の伸びになっております。それから、地裁と簡裁を合わせた第一審の事件数の伸びを見ますと、「地・簡裁第1審事件数」という項目、真ん中のちょっと下くらいにありますが、一番右の方に行って、その括弧書きの上の段を見ていただきますと、事件数の伸びは、206.7%の伸びになっております。ちなみに、1人当たりの国民所得の伸びを見てみますと、真ん中のところの項目の一番右にいきますと、昭和56年と対比して、平成12年は170%の伸びになっているわけでございます。
 資料5ですが、「訴え提起の手数料の平均額」、つまり訴訟1件当たりの手数料はいくらになるかというものを、地方裁判所と簡易裁判所で推移をまとめた統計表でございます。これも同じように、昭和55年を100とした指数と、一番末尾に、参考までに昭和56年と平成5年とを対比した平成12年の指数を掲載してございます。平成12年で見ますと、地裁の1件当たりの手数料は6万7,523円、簡易裁判所の1件当たりの手数料は3,623円となっておりまして、これを昭和56年と対比してみますと、地方裁判所の手数料は、1件当たり225%の伸びになっております。それから、平成5年と対比しますと、平成4年に高額な手数料を引き下げているわけですが、それと対比しましても、118%伸びている、高くなっているということになります。つまり、訴訟の目的の価額が比較的高額の訴訟の割合が相対的に増加しているから、1件当たりの手数料は高くなっている、割合を引き下げているのに高くなっているということだと思います。
 以上が本日の説明の内容でございます。

□ 資料2から5までのただ今の説明に対しまして、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。

○ 細かなことですみませんけれども、控訴するというのは、両者が控訴する場合には、手数料は、両方から取ることになるのですか。

● そういうことになります。

○ 最初100億で原告が請求して、判決が10億で出た。被告がその10億が不満だと言って控訴するときは、10億に対する手数料になるんですか。100 億に対する手数料になるんですか。

● 不服を言っている範囲が基準になります。

○ その不満を言っている額になるわけですね。わかりました。

○ お尋ねしたいんですけれども、今、御説明いただきました数字、すっきり飲み込めているわけでもないんですが、平成4年の手数料料率の改正があって、高額のものについての手数料率の引き下げが行われてから伸びているという判断でよろしいでしょうか。前にいただいた資料の中にそのような記載があったような気がするんです。

● 今の御指摘に対しては、資料4を見ていただくのがよろしいのではないかと思うんですが、資料4の2ページ、第一審の民事訴訟用印紙の伸びというのは、平成5年と比較した場合には129.8という、上から2段目の第一審というところの一番右の欄の平成5年という括弧を見ていただきますと、129.8となっています。事件数の伸びを見ますと、下の方の地・簡裁第一審事件数というのが真ん中のちょっと下にあると思いますが、それをずっと右にいきますと、121.3というのが平成5年比で出てまいります。したがいまして、事件数の伸びよりも手数料収入の方が伸びているということです。

○ 高額の訴えが、手数料率が下がったために、訴えの額が大型化してきたということですか。そういうことじゃないですか。

● 理由はわかりませんが、これは、実はまだ資料をつくっていないんですが、今、検討しておりますのは、おっしゃるとおり、訴えの事件の規模に応じて事件数がどう推移しているのかという、客観的な数字をまず統計としてつくる必要があるのではないかと。今回、まだ準備しておりませんが、その点について、次回までに裁判所とも相談しながら、御指摘にお答えできるような資料をつくりたいと思っております。

○ 資料2で、具体的な手数料率ですとか、手数料額があるわけでございますが、いろいろ上の方に行くにしたがって、料率の低減というのがあるけれども、原則的には段階的なスライド制ということですね。
 この訴えられている内容にもよると思うんですが、まず訴えられるケースで、例えば、火災で何もかもなくなってしまうとか、原因に関する訴えが起こっているような場合、そういうケースもあるでしょうし、騙されてしまったとか、さまざまな大変な事態が起こっていることによって、それが善意の訴えということだとしますと、スライド制というのは、ある意味ではわからなくもないんですけれども、酷なケースというのが多いんじゃないかと思うんです。被害額というか、訴え額が多くなるにしたがって手数料も増えていくという、被害額が多くなっている上に手数料もたくさん払わなきゃならないということ、今日のたくさんの数表からそのように理解していいのか、ちょっと不安があるんですが。例えば、公共料金の場合ですと、プライスキャップ制という、上限を抑えるというシステムがあるんですね。それがすべてにおいてというわけではないですが。そ裁判に関しましては、どんどんスライド制で上がっていくということで、以前に手数料率が下がったことが、どう影響しているか、今後資料をいただけるということなんですが、庶民の生活感覚から言いますと、大変手数料が高いんじゃないか。ケースによると思いますが、少なくとも、少額のものが1パーセントの手数料率であるということですね。それから、100万までが0.8パーセントというような利用度の多い、低い訴額の手数料率が高い。他方で大変な被害を被っている人も、スライド制で多額の手数料を払わなきゃならないし、日常的な苦しみから訴えている人も、手数料率が高いという状況ではないかというような気もするんですが。
 諸外国の中で我が国は、資料を拝見しておりますと、高い方に、必ずしもすべての国の中で日本がという言い方ができるのか、今データがないんですけれども、高い方ではないかという印象がございまして、そういう意味では、訴えたいと思っても、まず、他の弁護士さんたちの手数料というんでしょうか、それもありますけれども、印紙代も相当な負担になっているんじゃないかというふうに感じております。したがいまして、大変これは難しい、こういう制度になる背景には、やたらに訴えが増えても困るとか、さまざまな配慮があったことだと思うんですが、制度的な面でアクセスを容易にするということを考えますと、やはり検討していくテーマ、手数料率の低減ということはテーマではないかなという気がいたしました。また、御説明をいただきたいと思います。

○ これで見ると、印紙代が裁判所予算に行くわけではないんですが、印紙の伸び率がものすごい。裁判所予算というのは3,000億円程度で、伸び率がかなり低いし、国民所得が大体当たっているんですが、これで見ると印紙代の伸び率がすごいんですね。印紙代を下げてもいいですよという感じが、それでいくとしますね。

□ そういう御評価もあるかと思います。

○ スライド制そのものをどうするかというのは、審議会の報告書で、スライド制を維持するとなっているわけですから、そこの議論はもうできない状況になっている、そういう中でどういう料率が正しいかを決めなくちゃいけない。一方、高速道路の利用と同じであって、一般的にタックス・ペイヤーに負担させるのか、訴訟を利用する人に負担させるのか。それがアクセスとの関係を考えながら、何が一番いい配分なのかという議論でしょうから、一方的にこれを低くして、タックス・ペイヤーに全部持たせるべきであるという議論にはならないんだろうと思うんです。そこが妥当な額であるのかという議論だろうと思います。

□ 数字がたくさん並んでおりますので、これもいろいろな読み方が可能かと思いますが、これらの資料を基にいたしまして、次回以降どういうふうにこの検討会を行っていくか。事務局の方の腹案をお願いいたします。

● 委員から、印紙代というのが負担になるのではないかという話もありましたが、一方では、訴訟費用の負担ということで、敗訴者から訴訟費用として本来は回収できるという制度もあるということもありますので、今日は手数料収入というところまでですが、先ほどの記録に基づいて、どういう訴訟費用が当事者にかかるのかということについて、次回は御説明をした上で、できればそういった御説明を踏まえた上で、今日は時間があまりないものですから、更に手数料の問題と訴訟費用の問題について、意見交換をしていただく時間を取っていただければと思います。
 次回は、当面訴訟費用の概要について御説明し、確定手続の方の問題点についても併せて御説明するところまでは事務局としてはした上で、更に意見交換をお願いしたいと思います。

□ この分厚い資料1を見ながらということですね。

● これを事例としてです。

□ この辺でこういうふうに金がかかり、ここでいくらかかるということですか。

● 事務局で試算表をつくってみようかと思っています。

□ 先ほどの「司法制度改革に関する措置・取組一覧(参考資料)」の4ページの真ん中よりちょっと上の「ア 訴え提起の手数料」と、ウの「訴訟費用額確定手続」です。これを次回やるということですね。
 先ほど委員から御指摘も出ましたが、スライド制を維持しつつ、必要な範囲で低減化を行う。これが閣議決定です。
 簡易裁判所の少額訴訟事件については、定額制、定まった額の導入を含めて検討する。

● 少額訴訟事件は今回説明しておりませんので、その点についても、次回補充したいと思います。

□ そして、ウの訴訟費用額の確定手続については、簡素化をすると。これは、私いまだになかなか頭に入らないんですが、噂では相当厄介な手続だと弁護士さんは言うということですが、そこの実態は次回に説明していただくとしまして、今日の話の中にも出ましたが、簡易裁判所のことは見ましたし、話は出てくるんですが、さて、第一審は簡裁と地裁があるわけですが、その役割分担みたいなものは、十分話に出ていませんので、これも、できれば次回、事務局の方で説明をしていただければと思います。抽象的に言えば、簡易裁判所の機能と地方裁判所との役割ということになりますか。

● 今日は手続の方を説明しましたので、組織的な今の役割分担の現状についての概要は、次回にはしたいと思います。

□ 所定の時間が迫っていますが、今日の全体を振り返って、何か御発言がございましたらどうぞ。また、次回、手数料と訴訟費用の確定手続を中心ということですが、この点につきましても、何かありましたらどうぞ。

○ この前の見学のときに、少額訴訟の種類の内訳とか、東京簡裁の資料というのをいただいたんですが、全国的な資料はあるんですか。

● それは裁判所と相談して、次回用意できるかどうか検討します。少額訴訟の手数料とか、少額訴訟も一応検討項目の中に入っているわけですので、少額訴訟とは何かということを説明できる資料も、次回用意したいと思います。

○ 先ほど委員の御指摘になられたところで、少額の事件について手数料率が高いということなんですが、その問題については、訴訟救助の話もあわせて御説明いただければと思います。

□ だんだんテクニカルになってきましたが、訴訟救助、御指摘のとおりですね。よろしいですか。
 それでは、次回について確認をさせていただきます。既に予定しております4月23日の火曜日午後1時半から、場所は、この事務局の会議室だそうです。今日と時間が違いますので、私も気をつけますが、委員各位におかれましても、御注意をお願いいたします。
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。