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司法アクセス検討会(第4回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年4月23日(火)13:30〜15:30

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者

(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、竹内佐和子、西川元啓、長谷川逸子、原田晃治、飛田恵理子、藤原まり子、三輪和雄、山本克己(敬称略)

(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官

4 議 題

(1) 訴え提起の手数料について
(2) 簡易裁判所と地方裁判所の機能と役割分担について
(3) 簡易裁判所における少額訴訟手続について
(4) 訴訟費用と訴訟費用額確定手続について
(5) 今後の日程等

5 配布資料

資料1 諸外国における訴え提起の手数料
資料2 手数料額の比較
資料3 簡易裁判所と地方裁判所の機能と役割分担等に関する資料(最高裁判所事務総局作成)
資料4 第一審訴訟事件における訴訟の目的の価額別新受件数の推移(簡易裁判所、昭和55年〜平成13年)
資料5 第一審訴訟事件における訴訟の目的の価額別新受件数の推移(地方裁判所、昭和55年〜平成13年)
資料6 少額訴訟手続とは(最高裁判所事務総局作成「ご存じですか?簡易裁判所の少額訴訟」より引用)
資料7 少額訴訟に関する特則等についての検討項目案(法制審議会民事・人事訴訟法部会資料6)
資料8 訴訟費用の負担の裁判と訴訟費用額の確定手続について
資料9 訴訟費用一覧
資料10  訴訟費用額計算書(民事第一審訴訟記録(第3回資料1)に基づく試算)
資料11  訴訟費用額確定申立件数(平成3年〜平成13年)

6 議 事(○:委員、●:事務局)

(1) 訴え提起の手数料(外国の制度)について

事務局から、資料1及び2に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 日本では、訴訟費用保険があまりないのではないか。外国では訴訟費用保険が発達していると聞いているが、その点はどうなっているのか。我が国と同様にスライド制を採用しているドイツでは、お金が返ってくる制度があるというような話を聞いたことがあるが、素人なので詳しいことが分からない。訴訟に必要な費用全体という点から見ると、訴え提起の手数料はごく僅かであることは承知しているが、司法へのアクセスという点からは、一つのハードルである。

● 訴訟費用保険に関しては、第1回司法アクセス検討会で配布した資料5の34ページ以下に記載があるので参考にしていただきたい。

○ 手数料なども保険でカバーされるのか。セーフティー・ネットがある場合とない場合とでは、手数料に対する考え方も違ってくると思う。

○ 日本でも、訴訟費用保険がないわけではない。日本弁護士連合会と保険会社3社で訴訟費用保険を作っている。交通事故以外の損害賠償をカバーする保険であるが、まだまだ範囲が狭いし、実際に使われた事例も少ない。
 法律扶助制度研究会でドイツに行ったとき、ドイツでは訴訟費用保険が普及していると感じた。ドイツでは、離婚事件以外の全ての事件が訴訟費用保険の対象とされているようである。離婚事件に関しては数が多く、商売にならないので対象とされていないようだ。もっとも、ドイツでは弁護士報酬が法定されているので、保険を設計しやすいという面があると思う。日本では、弁護士報酬が複雑で、難しい面がある。

○ ハードルはできるだけ低くする必要があると考えている。本日、国民生活白書等から取ったデータをもとに作成した資料を事務局にコピーしてもらいお手元に配ってもらった。近時、高齢の女性の単独世帯が増えているが、平均年収は193万円あまりである。法律扶助の対象となる所得水準ではあるが、深刻な状況である。収入は減る傾向にあり、自己破産も増えている。この資料は、検討の際に有益だと思う。
 現実には、訴える時点では、訴訟に勝つか負けるか分からない場合が少なくないのではないか。手数料があまり高いと、請求を一部にとどめてしまう。それでは、我々の目指す方向にそぐわない。スライド制のもとでも、段階的に料金設定をするといったことなども検討しなければならないのではないか。

○ 今の意見に対してお聞きしたい。訴え提起の手数料の引き下げは、消費者サイドからの意見が多いのではないか。事務局の資料によると、100万円の訴訟の場合、訴え提起の手数料は1万円弱、1,000万円の訴訟で手数料は6万円弱、1億円の訴訟で40万円程度となっている。具体的にどの辺りを問題視されているのか、訴訟の目的の価額がどのくらいの部分の手数料を、どの程度引き下げればいいと考えているのか。

○ 具体的にどこを下げればいいと考えているのかと聞かれても、それは難しい問題である。訴訟制度の維持は国のサービスだから、訴え提起の手数料の額がある程度に達したら、プライス・キャップがあってもいいのではないか。

(2) 簡易裁判所と地方裁判所の機能と役割分担について
事務局から、資料3ないし5に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 資料5を見ると、訴訟の目的の価額別の事件数のデータの取り方が、100万円の次は200万円までとなっているが、こういう区切り方では、微妙なところがわからない。もう少し細かく区切った資料はないのか。
 また、各地方裁判所の本庁、支部ごとの統計、各簡易裁判所ごとの統計はないのか。簡易裁判所の事物管轄の検討というと、とかく東京簡易裁判所のような大規模な簡易裁判所を基準に議論しがちだが、それは問題があるのではないか。各裁判所ごとに、何人の裁判官がいて、週に何回くらい開廷しているのかという面も見て検討する必要がある。理念だけで簡裁重視と言っても、受け皿がなければ、かえって国民にとって迷惑な制度を作る結果になりかねない。

○ やみくもに簡易裁判所の事物管轄を拡大することは問題ではないかという意見が出されたので、補足して述べたい。資料3の(資料3)の結果から言えるのは、従来は、簡易裁判所の事件比率が減っている中で簡易裁判所の事物管轄が拡大されてきたと理解できるが、今回は、簡易裁判所の事件比率が増えているのに事物管轄を拡大するという点で、従来の改正とは全く異なるということである。従来は、簡裁に余力があり、地裁の負担を簡裁に移すことによって、両方が適正な役割を果たしてきた。今、簡易裁判所の負担はどんどん増えている。訴訟事件だけでなく、調停事件もここ数年で爆発的に増加していることにも注意すべきである。近時、調停事件の数が伸びているのは、債務整理のための特定調停が増えていることの反映であろう。
 今、簡裁はかなり負担が大きいと推測される。マン・パワーに関する適切な措置が必要になるだろうし、そういう点も含めて議論しないと、司法制度改革審議会が考えていたのとは異なり、かえって利用者に不便な制度になりかねない。慎重に検討する必要があるのではないか。
 簡易裁判所の金銭請求事件は、サラ金業者やクレジット会社の事件がかなり多いと思うが、簡易裁判所の事物管轄を拡大すると、現在以上に業者事件が大量に簡易裁判所に来ることになるという面がある。それがいいのか悪いのかは別問題だが、そういう面があることは考えなければならない。他方で、業者事件は欠席裁判が多く、裁判所にとっての負担はそれほどではないという面もある。このように、簡易裁判所の事物管轄の拡大に当たっては、いろいろな事情を検討しなければならないと考える。資料として、業者事件の内数を出していただきたいと思う。

○ 確かに、以前の統計には、業者事件の内数があった。今の統計では、以前の統計からはわかったいろいろな事情が見えてこない。

・ 訴え提起の手数料について、次のような意見交換がされた。

○ 資料5によると、訴えの目的の価額が500万円までの事件が全体の60パーセントくらいを占めている。このあたりが市民的な事件だろうと思う。訴えの目的の価額が100万円以上500万円以下のあたりの訴え提起の手数料の引下げを検討するのが筋ではないか。また、スライド制をある程度維持するとしても、キャップ制を採用し、訴え提起の手数料については上限を設けた方がいいと思う。億を超えるものも、若干の減額が必要だと思う。

○ 印紙収入の額が国の予算全体に占める割合は低く、予算の中であまり重要ではないので、国は印紙収入をあてにしていないのではないか。訴え提起の手数料は、単純なスライド制ではなく、物価動向などに左右されにくいようなものも考えるべきだろう。

● 国の財政事情は厳しく、訴え提起の手数料収入をあてにしていないと断ずるのはどうかと思う。手数料収入が裁判所の収入となるわけではないが、概算で言うと、裁判所の予算が年間3,000億円くらいであるのに対して、手数料収入は年間200億円くらいである。

○ 訴え提起の手数料を下げて、利用者が増えれば問題はないのではないか。

○ 資料5を見ると、訴えの目的の価額が500万円から5,000万円の部分も多いのではないか。欠陥住宅をめぐる争いとなると、このくらいの価額帯に入ると思うが、そういう訴訟の手数料が20万円くらいならいいと思う。

○ 5,000万円の訴訟の場合、現在の制度では、訴え提起の手数料は20万円程度である。

○ イギリスでは、サッチャー政権のもとで、裁判所で生じる費用は裁判所で調達すべきであるという政策が採用された。日本では、そういう考え方は採用されていないが、こういう考え方もないわけではない。

○ 先ほど、高齢世帯の収入が少ないという話があったが、月々の収入だけで経済状況を判断するのは危険である。高齢者の資産の中心は不動産で、金銭収入は少ない。高齢者が所有していて相続される不動産の額は、平均3,000万円から4,000万円になると聞いている。仕事を辞めれば収入がなくなるのは当然で、収入だけを見るのは妥当でない。生活の基盤となるものを基礎に判断するという考え方が必要である。高額訴訟については、それだけの経済力があることの現れでもあり、一概にキャップ制の採用がいいとは言えない。また、少額の部分を下げると、先ほど話に出た業者の訴訟が問題となる可能性がある。金額だけ変えればいい問題もあり、金額だけを変えるだけでは済まない問題もあると思う。

(3) 簡易裁判所における少額訴訟手続について
事務局から、資料6及び7に基づいて説明がされた。

(4) 訴訟費用と訴訟費用額確定手続について

事務局から、資料8ないし11に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 日本では、訴訟費用は敗訴者負担が原則ということであるが、例外的に、各自負担となることもあるのか。

● 訴訟費用は原則として敗訴の当事者が負担するものとされており、例外は限られていて、当事者が不必要な訴訟行為をした場合や、訴訟を遅延させた場合である。

○ それは、どこの国でも同じなのか。敗訴者負担というのは、訴えにくいような感じがする。

● 諸外国でも、訴訟費用は原則として敗訴者が負担する制度になっていると承知している。

○ 書記料は時代に合っていない気がする。

○ 当事者が訴訟手続の中で実際に支出しなければならない費用としては、どのようなものがあるのか。書記料は、自分で書類を作成するなら実際には発生しないので、実際に支出する費用が何かが問題だと思う。

● 郵送料、送達費用、証人の旅費・日当などがある。当事者の出頭日当は、時間のロスに対する補償であり、当事者が出頭した際に支出するものではない。

○ 訴訟費用確定手続の際に裁判所書記官に提出する計算書は、既定書式のようなものはあるのか。

○ 標準的なものはあるが、こういう書式でなければならないというものはない。
 訴訟費用額確定手続はほとんど利用されていない。その理由としては、当事者にとっても、裁判所にとっても、手続が煩わしいということがあると思う。また、勝訴した当事者が、訴訟費用まで取り立てるのは忍びないと感じている面もあるのではないかと推測するが、実際のところはどうだろうか。

○ 手続が面倒だからというのが一番の理由だろう。書記料のために紙の枚数を数えるのは煩わしい。昔のように1枚1枚手で書いていた時代には重要であったが、今はパソコンやワープロで書類を作成するのだから、書記料というのは実際的でない。しかも、訴訟費用のうち一部だけを請求することができず、請求する場合は全ての訴訟費用について計算しなければならないのも問題である。

○ せめて、訴え提起の手数料だけでも回収するというような手続はできないのか。

○ 提訴手数料や鑑定費用など、金額の大きなものだけ請求できるようならいいが、それらを請求する以上、書記料や提出費用を計算しなければならないというのが問題だろう。

○ 全ての訴訟費用について計算し、確定手続を利用する以外に方法がない。一部勝訴の場合は、訴訟費用のうちの一部が勝訴した当事者の負担となり、勝訴した当事者の負担部分と敗訴した当事者の負担部分が相殺されることになっているが、訴訟費用の一部のみの請求だと、相殺ができなくなる。

○ ならば、全面勝訴の場合には、勝訴した当事者に、訴訟費用の一部を請求することを認めてはどうか。全面勝訴になっているケースは少なくないと思われる。

○ 全面勝訴の場合は、いくつかのアイテムに限っては、面倒な手続をせずに、自動的に訴訟費用が戻ってくるという仕組みもあり得るのではないか。

○ 資料11の事件数は、金銭請求事件だけなのか。

● 金銭請求事件だけではなく、民事事件全般である。

○ 食肉の表示問題に関して、一般消費者が、偽物の肉を知らずに食べてしまったかもしれないという理由で訴えを起こしても、本当に偽物の肉を食べたのかどうかの立証ができないので、訴訟に勝つのは難しいと思う。しかし、こういう被害にあっている消費者は多数いるはずで、消費者がこういう訴えを起こして、敗訴したからといって、相手方の訴訟費用を負担させられるのは理不尽である。狂牛病問題についても同様で、農林水産省が肉骨粉の使用を禁止しなかったから、狂牛病にかかった牛の肉を食べてしまったかもしれないと言って行政訴訟を起こしても、実際に狂牛病の牛の肉を食べたかどうかは明らかではないし、狂牛病にかかった牛の肉を食べたのかどうかの立証ができないので、訴訟には勝てないだろう。そういう場合に、訴訟費用を負担させられるのは理不尽ではないか。敗訴者が負担するのが正しいとは言えないのではないか。

○ 私も、全ての訴訟費用が敗訴者の負担になるという点について、疑問を感じる。負担の仕方は、もう少しいろいろなケースがあってもいいのではないかと思った。諸外国のケースを調べてほしい。

・ 委員から、補足して、次のような説明等がされた。

○ 若干説明をさせてもらいたい。少額訴訟に関する資料をお配りしたが、訴えを起こされていきなり訴訟の場に呼び出され、基本的に手続がわからない人が多いと思われる被告に対して、東京簡裁では、このような書類を配って、手続を理解していただけるようにしている。被告の言い分を裁判所に伝えやすいように、答弁書の書式も用意している。また、事情説明書や、被告が提出する証拠としてどのようなものを用意したらよいかがわかる書面も用意している。
 東京地方裁判所には、アクセス推進委員会というものがあり、様々な取組をしている。民事裁判説明会、裁判官の講師派遣、裁判所ガイド・ツアーやジュニア・ツアーなどを実施している。

(5) 今後の日程等

● 訴え提起の手数料、訴訟費用額確定手続については、次回に事務局から論点提示をして、方向性について検討いただくことを予定している。また、弁護士報酬の敗訴者負担と法律扶助についても、基礎的な説明ができればと考えている。

○ 簡易裁判所の事物管轄の引上げについては、過去の引上げ時とは状況が違う。検討会は、機械的にできる作業を期待されてわけではない。簡易裁判所はどういう役割を果たすべきかというフィロソフィーを示すことが、検討会に期待されている。簡易裁判所がどうあるべきかを、集中的に議論すべきである。

次回の検討会は、次の日時に開催することとされた。
平成14年5月28日(水)15:00〜17:00

(以上)