事務局から、資料8ないし11に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。
○ 日本では、訴訟費用は敗訴者負担が原則ということであるが、例外的に、各自負担となることもあるのか。
● 訴訟費用は原則として敗訴の当事者が負担するものとされており、例外は限られていて、当事者が不必要な訴訟行為をした場合や、訴訟を遅延させた場合である。
○ それは、どこの国でも同じなのか。敗訴者負担というのは、訴えにくいような感じがする。
● 諸外国でも、訴訟費用は原則として敗訴者が負担する制度になっていると承知している。
○ 書記料は時代に合っていない気がする。
○ 当事者が訴訟手続の中で実際に支出しなければならない費用としては、どのようなものがあるのか。書記料は、自分で書類を作成するなら実際には発生しないので、実際に支出する費用が何かが問題だと思う。
● 郵送料、送達費用、証人の旅費・日当などがある。当事者の出頭日当は、時間のロスに対する補償であり、当事者が出頭した際に支出するものではない。
○ 訴訟費用確定手続の際に裁判所書記官に提出する計算書は、既定書式のようなものはあるのか。
○ 標準的なものはあるが、こういう書式でなければならないというものはない。
訴訟費用額確定手続はほとんど利用されていない。その理由としては、当事者にとっても、裁判所にとっても、手続が煩わしいということがあると思う。また、勝訴した当事者が、訴訟費用まで取り立てるのは忍びないと感じている面もあるのではないかと推測するが、実際のところはどうだろうか。
○ 手続が面倒だからというのが一番の理由だろう。書記料のために紙の枚数を数えるのは煩わしい。昔のように1枚1枚手で書いていた時代には重要であったが、今はパソコンやワープロで書類を作成するのだから、書記料というのは実際的でない。しかも、訴訟費用のうち一部だけを請求することができず、請求する場合は全ての訴訟費用について計算しなければならないのも問題である。
○ せめて、訴え提起の手数料だけでも回収するというような手続はできないのか。
○ 提訴手数料や鑑定費用など、金額の大きなものだけ請求できるようならいいが、それらを請求する以上、書記料や提出費用を計算しなければならないというのが問題だろう。
○ 全ての訴訟費用について計算し、確定手続を利用する以外に方法がない。一部勝訴の場合は、訴訟費用のうちの一部が勝訴した当事者の負担となり、勝訴した当事者の負担部分と敗訴した当事者の負担部分が相殺されることになっているが、訴訟費用の一部のみの請求だと、相殺ができなくなる。
○ ならば、全面勝訴の場合には、勝訴した当事者に、訴訟費用の一部を請求することを認めてはどうか。全面勝訴になっているケースは少なくないと思われる。
○ 全面勝訴の場合は、いくつかのアイテムに限っては、面倒な手続をせずに、自動的に訴訟費用が戻ってくるという仕組みもあり得るのではないか。
○ 資料11の事件数は、金銭請求事件だけなのか。
● 金銭請求事件だけではなく、民事事件全般である。
○ 食肉の表示問題に関して、一般消費者が、偽物の肉を知らずに食べてしまったかもしれないという理由で訴えを起こしても、本当に偽物の肉を食べたのかどうかの立証ができないので、訴訟に勝つのは難しいと思う。しかし、こういう被害にあっている消費者は多数いるはずで、消費者がこういう訴えを起こして、敗訴したからといって、相手方の訴訟費用を負担させられるのは理不尽である。狂牛病問題についても同様で、農林水産省が肉骨粉の使用を禁止しなかったから、狂牛病にかかった牛の肉を食べてしまったかもしれないと言って行政訴訟を起こしても、実際に狂牛病の牛の肉を食べたかどうかは明らかではないし、狂牛病にかかった牛の肉を食べたのかどうかの立証ができないので、訴訟には勝てないだろう。そういう場合に、訴訟費用を負担させられるのは理不尽ではないか。敗訴者が負担するのが正しいとは言えないのではないか。
○ 私も、全ての訴訟費用が敗訴者の負担になるという点について、疑問を感じる。負担の仕方は、もう少しいろいろなケースがあってもいいのではないかと思った。諸外国のケースを調べてほしい。
・ 委員から、補足して、次のような説明等がされた。
○ 若干説明をさせてもらいたい。少額訴訟に関する資料をお配りしたが、訴えを起こされていきなり訴訟の場に呼び出され、基本的に手続がわからない人が多いと思われる被告に対して、東京簡裁では、このような書類を配って、手続を理解していただけるようにしている。被告の言い分を裁判所に伝えやすいように、答弁書の書式も用意している。また、事情説明書や、被告が提出する証拠としてどのようなものを用意したらよいかがわかる書面も用意している。
東京地方裁判所には、アクセス推進委員会というものがあり、様々な取組をしている。民事裁判説明会、裁判官の講師派遣、裁判所ガイド・ツアーやジュニア・ツアーなどを実施している。