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司法アクセス検討会(第5回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年5月28日(火) 15:00 〜17:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、竹内佐和子、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由紀子、原田晃治、飛田恵理子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(説明者)
奥村軌(日本弁護士連合会前副会長)
舘内比佐志(最高裁判所事務総局民事局参事官)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官

4 議題
(1) 簡易裁判所の民事訴訟の実情等について
(2) 弁護士報酬の実情について
   ・日本弁護士連合会からの説明
(3) 民事法律扶助制度の概要について
(4) 訴訟費用額確定手続と訴え提起の手数料について
   ・最高裁判所事務総局からの説明
(5) 訴え提起の手数料と訴訟費用額確定手続の検討課題について
(6) 今後の日程等

5 配布資料
資料 1訴え提起の手数料と訴訟費用額確定手続に関する検討課題
資料 2日本弁護士連合会説明資料
資料 3最高裁判所事務総局説明資料
資料 4簡易裁判所の民事訴訟の実情に関する資料
資料 5訴訟の目的の価額別に見た事件数に関する資料(簡易裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所)
資料 6訴え提起の手数料の改定経過
資料 7経済指標の推移(昭和46年〜平成13年)
資料 8訴訟費用の敗訴者負担の原則に関する諸外国の法制
資料 9訴訟入費償却仮規則(明治5年司法省布達第14号)
資料10訴訟費用額の確定の実例
資料11司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(平成14年法律第33号)の概要及び新旧対照条文(抄)
資料12民事法律扶助事業業務規程
資料13司法アクセス検討会開催予定(第6回以降)

6 議事
(□:座長、○:委員、△:日本弁護士連合会、▲:最高裁判所、●:事務局)

□ 最初に、本日の議題と配布資料について、事務局から御説明をお願いいたします。

● お手元に「司法アクセス検討会(第5回)次第」がございますが、この次第の1枚目の3に議題を記載してあります。(1)から(6)まで、記載したとおりを予定しております。
それから、2枚目に、別紙として配布資料を記載してあります。資料1から資料13までがございますので、御確認をお願いいたします。
 そのほかに、日本司法書士会連合会から「司法書士による初等・中等教育実施マニュアル『学校へ行こう』」という青い表紙の冊子をいただきましたので、お手元に参考資料としてお配りしております。
 議題に関しましては、お手元の次第の(1)から(6)までの順序で御検討いただきたいと考えております。
 次に、配布資料につきましては、順次御説明いたしますと、資料1、これは議題の(5)の「訴え提起の手数料と訴訟費用額確定手続の検討課題について」というところで御検討いただくものとして、事務局で、検討課題と問題の所在をまとめたものです。
 資料2は、日本弁護士連合会の説明資料でして、これは議題の(2)のところで御説明をいただく予定にしております。
 資料3は、最高裁判所事務総局作成の「訴訟費用額確定手続と訴え提起の手数料について」と題する資料でありまして、これについては、検討課題の(4)で最高裁判所の方から御説明をいただくことを考えております。
 資料4以下につきましては、議題の(1)の「簡易裁判所の民事訴訟の実情等について」というところで、これまで委員から御指摘のあった問題点等に関する統計資料等をまとめたものですので、その中で御説明をしたいと思っております。
 それから、資料12、これは「民事法律扶助事業業務規程」でして、議題の(3)の「民事法律扶助制度の概要について」のところで御説明する参考資料です。
 資料13には、第6回以降の司法アクセス検討会の開催予定が記載されております。
 以上が配布資料です。

□ 御確認をいただいたということで、それでは、盛りだくさんな議題ですが、最初の「(1)簡易裁判所の民事訴訟の実情等について」に入ります。前回も委員の諸先生の中から御指摘があった論点につきまして、更に検討を深めていただくという趣旨ですが、そのために、事務局で資料を用意してくださいました。既に先ほども御説明がありましたが、資料並びに中身の説明の方をお願いいたします。

● 資料4以降になります。資料4は、「簡易裁判所の民事訴訟の実情に関する資料」と題してある資料でございます。この資料は、最高裁判所から統計の提供を受けて事務局でまとめたものです。
 1ページ目、これが、「簡易裁判所民事通常訴訟における立替金等事件の割合」を示した統計です。クレジットとかカードローンなどの金融業者の債権回収に係る訴訟については、通常、立替金、求償金、貸金といった事件名になっているところから、これらの事件類型の全体に占める割合を示したものです。平成13年を見ていただきますと、簡易裁判所の305,711件の訴訟のうちの71.9%に当たる219,793件が、立替金、求償金、貸金といった事件で占められているということが、この表でおわかりいただけると思います。この割合は、暦年で見てみますと、過去には80%を超えている時期もありましたけれども、現在の割合は、平成元年ごろとほぼ同じ水準に落ち着いているようです。
 2ページ目は、「地方裁判所の民事通常訴訟における立替金等事件の割合」でありまして、平成13年を見ていただきますと、地方裁判所の146,115件の事件のうち、17.4%に当たる25,417件、これが立替金、求償金、貸金という事件で占められているということです。この割合は、平成元年とほぼ同じくらいで、25%を超えているような時期もあったようですが、現在は、また元の割合に戻っているということです。3ページ目、この事件の類型を訴訟の目的の価額、訴額別に見た資料はないかという御指摘がありました。最高裁判所では、そういった資料については、平成9年までしか統計がないということでしたので、平成9年の統計に基づきまして、その割合を示したものです。この当時ですと、簡易裁判所の事件の8割程度が立替金等の事件になっております。地方裁判所にまいりますと、訴額90万円までというのは、簡易裁判所で訴えてもいい事件ですので、不動産関係の訴訟が多いということから、立替金等の事件は少ないのですが、90万〜120万円の訴額で見ると、45.7%が立替金等の事件です。それから、120万円〜150万円の訴額で見ると、42.7l %が立替金等の事件になります。150万円〜200万円という訴額で見ると、39.1%が立替金等の事件になっているということになります。訴額が高くなると、立替金等の事件の割合が小さくなるという傾向がありまして、500万を超える訴額のところでは、19.9%の割合になっているという資料です。
 次のページですが、これは、簡易裁判所と地方裁判所で、民事訴訟事件がどのような形で終わっているかという資料です。簡易裁判所の事件のうちの33.3%が、被告が法廷に出頭しない、欠席のまま争わないものと認めて判決がされているということです。地方裁判所は、この割合が19.2%ということになっております。
 次に資料5ですが、これは、簡易裁判所と地方裁判所、高等裁判所、それから最高裁判所について、訴訟の目的の価額帯別に事件数を見た資料です。ちなみに、資料5の1枚目の数字を見ていただきますと、例えば、90万円を超えて200万円までという事件の割合を見ますと、地方裁判所では、この事件の割合が41,712件で25.9%を占めていますが、高等裁判所での控訴事件では、1,994件ということで11.7%、最高裁判所の上告提起事件を見ますと、246件で10.7%を占めているということで、順次、訴訟の目的の価額帯別に事件数を裁判所ごとに見た資料でございます。その内容の詳細については、それ以降の資料に統計とグラフで示しておりますので、参考にしていただきたいと思います。
 資料6ですが、これは、訴えの提起の手数料がこれまでどのように改定されてきたかということをまとめた表です。先ほど御紹介した検討課題の中でも御検討していただくことになりますが、訴え提起の手数料につきましては、資料6の表をご覧いただきましてもわかるように、訴訟の目的の価額、訴額が高額になればなるほど、手数料率というのが1%から0.5%まで順次下がっていくという仕組みになっております。したがいまして、物価や所得が上昇するという経済情勢の変動がありますと、訴訟の目的の価額が上がっていくことによって、相対的に手数料の率は低くなっていくという手数料体系です。したがいまして、これまで、この手数料の改定経過にありますように、昭和29年、46年、55年と改定が行われているわけですが、これらの改定は、訴額が低い部分の手数料水準を経済情勢の変動に対して引き上げる改正が行われてきたというのが実情です。最近を見ますと、例えば、「昭和46〜55」と書いてある資料の部分を見ていただきたいのですが、昭和46年にどのような改正をしたかと申しますと、手数料の最低額というのを、それまでの100円から500円の5倍に引き上げた、それから、手数料を引き上げる刻み、これを従来の1万円ごとから5万円ごと、1万円ごとに100円ということから5万円ごとに500円ということで、これも5倍に引き上げた、更に、手数料率が1%とされている訴額の範囲についても、それまでの10万円までが1%という割合から、30万円までを1%ということにした、したがいまして、10万円〜30万円までの部分の手数料率を引き上げたというのがこのときの改正の趣旨です。これらの事項については、実は、この表にありますように、平成4年にも法改正はされましたが、現在に至るまで、昭和46年、今から31年前の改正以来、その点に関してはそのままになっているということで、この経済情勢の変動に対する対応というのは行われていないということになっています。その下の「昭和55〜平成4」という表がありますが、この昭和55年の改正というのは、経済情勢の変動に対応するために、30万円〜100万円までの訴額の手数料率を0.7%から0.8%に引き上げた、それから、100万円〜300万円までの手数料率を0.5%から0.7%に引き上げたという改定を行ったものでございまして、これらの低い部分の訴額の手数料率の引上げというのは、今から22年前になりますが、昭和55年以降、現在までは行われていないということになるわけです。一番下の「平成4〜」の表を御覧いただきますと、平成4年には、訴額が高額となる部分の手数料率を引き下げる改正が行われたということでありまして、それまでは300万円以上は一律に0.5 %とされていたのが、100万を超えると0.4%に、1億円を超えると0.3%に、10億円を超えると0.2%にと、それぞれ引き下げる改正が行われた、これが平成4年の改正です。
 これまでのいろいろな改定を踏まえて、その後の経済指標の推移をまとめたのが資料7です。これは、手数料の最低額が500円、刻みが5万円というのが決まったのが昭和46年ですが、それ以降の経済指標をまとめたのが一番最初の2枚でありまして、それから、昭和55年の手数料改正、つまり100万円から300万円の手数料率の引上げが行われた昭和55年の改正以降の経済指標の推移をまとめたのが、その次の2枚でございまして、更に、前回御説明した簡易裁判所の事物管轄が30万円から90万円に引き上げられた昭和57年以降の経済情勢の推移をまとめたのが、次の最後の2枚の経済指標になります。経済指標を見ていただきますと、例えば、1人当たりの国民所得については、資料7の2ページを見ていただきますと、平成12年で489.38、約5倍になっている、その2枚後の昭和55年の経済指標を見ますと、1人当たりの国民所得の数値は179.23ということで約1.8倍になっている、それから、昭和57年と対比した経済指標で見ますと、一番最後のグラフで162.86というのが出てまいりますが、約1.6倍になっているというのが、その後の経済指標の動向になります。これを見ていただきますと、常用労働者の平均賃金という経済指標がありますが、そのほか、勤労者世帯当たりの実収入というものやそのほかにも統計資料がまとめてあります。ちなみに、世帯当たりの統計資料というのは、やや今の国民所得よりも低い統計の動きが出ておりますけれども、一方で、世帯当たりの人数もある程度減少しているというところも反映しているのではないかと思われます。以上が経済指標の動きです。
 資料8、これは、委員からも前回御指摘のあった「訴訟費用の敗訴者負担の原則に関する諸外国の法制」について、事務局の方でまとめたものです。基本原則としては、ここで取り上げておりますアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、韓国で、アメリカは連邦とニューヨークとカリフォルニアについても調べておりますが、いずれも、基本原則としては、訴訟費用の敗訴者負担の原則が定められております。
 資料9は、明治5年の司法省達14号というのがありまして、この資料9の3ページ目の第14号というのが、その達になりますが、ここに書いてありますように、「従来訴訟入費之儀ハ原告被告共自費」であったと、それで、「貧窮之者ニ至リ候而ハ家族活計之道ニモ差響往々難渋致候者不少不都合之次第ニ付差向今般別紙規則之通」ということで、「右入費之儀ハ原被告ヲ論セス一切曲者之一身ニ引受償辧ス可キ事」ということが定められたということになっております。そこに訴訟入費償却仮規則と書いてありまして、訴訟費用の項目が列記してありますが、「訴状其外書類認料」、これは今の書記料に当たるものとか、「証人並引合人手當」、これは今の日当に当たるもの、それから「同旅費」、「通弁料」と言って通訳料とか、「飜譯料」とか「郵便并電信料」というように、ほぼ現在の訴訟費用の項目に対応したものが明治5年に定められているということで、日本の訴訟費用の敗訴者負担が決められた一番最初の一例として御紹介をした次第です。
 それから、資料10ですが、訴訟費用額確定の実例です。以前御説明した訴訟記録の中で、訴訟費用額の確定の実際について御説明しましたが、委員の御指摘の中に、実際に支出する額と訴訟費用として相手方から償還できる額の関係はどうなっているのかという御指摘があったことから作成したものでございます。1枚目は、原告・被告それぞれについて、この訴訟を行うに当たって実際に支出しているものはどれであるのかいうことで、これは弁護士への着手金を含めて実際に訴訟のために払っている金額はどうなっているかという資料です。次の2枚目は、原告または被告が全部勝訴した場合に相手方に償還できる訴訟費用となるのはどれだけかということでありまして、先ほどの実際の支出額は、原告で25万円余り、被告が22万円余りとなっておりますが、訴訟費用として相手方に償還できるのは、実際に支出していない日当というような、旅費は実際に支出しているのもしれませんが、ある程度定額で算定されるわけですが、書記料という、必ずしも実際に支出しているとは限らない費用が、実際に支出した費用のほかに、相手方から償還ができるということになっております。試算した結果、全体として償還できるものは69,710円、これは原告が勝った場合で、被告が勝った場合には43,210円になります。ただ、勝訴しますと、1枚目の着手金のほかに、弁護士の成功報酬などが掛かりますが、それは1枚目の資料には記載してありません。3枚目は、一部勝訴をした場合に、訴訟費用額の確定がどのようになるのかということですが、若干詳細にわたりますし、訴訟費用全体については、後で最高裁判所からも御説明がありますので、具体的な事務局からの御説明は省略させていただきたいと思います。
 資料11ですが、これは、今月7日に公布された「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律」の概要とその新旧対照条文です。司法書士の制度というのは、登記供託及び訴訟等に関する手続の円滑な実施に資し、もって国民の権利の保全に寄与することを目的とする制度とされておりまして、土地家屋調査士の制度につきましては、不動産の表示に関する登記手続の円滑な実施に資し、もって不動産に関する国民の権利の明確化に寄与することを目的とする制度であるとされております。司法書士の制度に関しまして、この法改正は、簡易裁判所の訴訟代理権の付与等を規定したことが特徴となっている改正です。司法書士制度というのは、明治5年の太政官布告で司法職務定省で代書人という制度が定められて以来、代書人、その後、司法代書人とか司法書士といろいろ名前を変えてきたわけですが、明治5年以来、訴訟の円滑な運営に寄与してきたという歴史を有するものとなっております。
 今回の法改正の具体的な内容は、資料11の2に記載があります。特に司法書士に関する事項として、「簡易裁判所の訴訟代理権等の付与」とされておりまして、簡易裁判所で取り扱う少額事件について、国民の権利擁護の必要性及び司法書士の専門性の活用の観点から、司法書士に訴訟代理権等を付与するとされております。その他、1に「司法書士及び土地家屋調査士に共通する事項」として、規制改革に関わる事項として、事務所の法人化等の改正が行われております。特に、簡易裁判所の訴訟代理権等の付与に関する法改正は、来年の4月1日から施行されることとされております。
 事務局からの説明は以上です。

□ 以上、御説明いただきましたが、手数料と訴訟費用に関しましては、後ほどの資料に基づいて検討するということですので、この段階で、簡易裁判所の民事訴訟の実情について意見交換をしておきたいと思います。
 ただ今の事務局の御説明に関しまして、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。

○ 資料4を見ますと、従来、民事訴訟法の研究者の間では、簡易裁判所は、いわゆる業者からの取立訴訟が多く、かつ、そういうものは大体欠席で終わるのだという常識がありましたが、そういう常識にそんなに違わない結果が出てきているということになりますね。

○ この資料を見ても、75%が貸金請求の事件ですね。57年の改正のときの理由が、実際には、最高裁の発言などによると、当時、ちょうどクレサラ事件が増えてきた段階で、クレサラ事件を地裁から簡裁に移行させたいという要望があったようです。実際上、サラ金というのは50万円以下なんです。ですから、多分、サラ金事件のほぼ全部が簡裁に移行したのだろうと思います。そのために、32万件という大変多い事件数になったのだろうと思います。ちなみに、昭和57年の簡裁事件というのは12万件なんです。ですから、2倍以上に今は増えたんだと思います。ですから、当時、地裁事件が大変多くて、地裁が苦労していて、簡裁に移行させたいという当時の要望は、これで大体貫徹したんではないかと思うんです。今、私たちが心配しているのは、今度は100 万円以上にすると、いわゆる商工ローンというのが簡裁に参入するだろうと思うんです。それで私たちが困るのは、原告側、業者側は全部代理許可という形で、いわゆる社員が原告側に出てきているわけです。弁護士は全く出てきていません。全部、業者の使用人が、代理許可という形でやっています。それで、今の簡裁は、50万円以下の場合は、債務者本人が被告なんです。ところが、今度商工ローンになると、連帯保証人を5人も10人も取っている例がたくさんありまして、今度は、連帯保証人が被告になるわけですね。その場合に、簡裁の代理許可で業者の原告、そして、連帯保証の場合には、やはりいろいろと抗弁したいこともあるだろうと思うんです。それを簡裁で全部やることに、金額によってはなってしまうと思うんです。今度は、クレサラプラス商工ローンまで簡裁に移行されるということは、市民のための裁判所というよりは、金融業者が取り立てやすい裁判所という形になってしまうのではないかと思っています。ですから、当初の民衆のための、気楽に裁判ができるという制度よりもほど遠くどんどんなってきてしまうような気がしますので、やはり、そういう意味から言っても、簡裁の事物管轄は、そんなに大きなものであってはいけないんだろうと、私は思っています。

○ 私も、御説明をお伺いしながら、大変社会の病理現象と言ったらいいでしょうか、現状について再認識させられた次第です。私たちにとって身近な裁判所というものを考えていく場合に、欠席裁判が多いということなども含めてでございますが、簡易裁判所においてどのような裁判が行われているかということを、最高裁等で、あるいは簡易裁判所が独自でなさるのがよろしいかと思いますが、情報提供を一般に広くしていただく。これは、社会の病理現象がこのような形となって表れているわけで、その背景には、社会的な、例えば、サラ金業者の在り方の問題、あるいは、その背後にある銀行がお金を貸さなくなったということがサラ金業者を、サラ金業者を攻撃するばかりでは仕方がないんでしょうけれども、ここまで社会の中で大きな位置を占めさせるようになり、メディアもそれを助長して、そういうふうなことが大変大きな社会問題化しているにもかかわらず、実態が余り明らかになっていないということを痛切に感じております。したがいまして、脱線してしまうといけないんですけれども、私どもとして、この簡易裁判所の在り方を考える場合、先ほど委員のお話がございましたけれども、サラ金業者の取立てを主に支援するような体制であってはならないと思いますので、それをどういうふうにしていったらいいのか。勿論、利用者側の責任も多大なものがあると思います。借りたものは返さなければいけないわけですし、そういう意味でのモラルの問題もございますけれども、業者の取立ての舞台となっているということを、大いに社会に明らかにしていって、多方面から多角的に、それこそ教育の問題もあるでしょうし、銀行の在り方の問題にも関わってくるでしょうし、こういう問題を避けて通りますと、恐らく、今のいろいろな社会で起こっている問題、よく社会面を賑わしている問題なども、サラ金の取立てに間に合うように犯罪を起こしたとか、さまざまなことがございますので、裁判所の事物管轄の在り方なども考える場合、より社会的には間口が広がった方がいいように、一般的には考えられるわけなんですが、業者が大半を占めるようであれば、何らかの区分けをするとか、方法を講じなければ、安易に事物管轄の範囲を拡大するということは、先ほど委員がおっしゃるような商工ローン等、次なる大きな事業者の活躍の舞台となるということになりますと、司法制度そのものが歪んでくるんじゃないかと思いまして、雑駁な感想ですが、述べさせていただきました。

○ 今の委員のお話でちょっとわからないところがあるんですけれども、商工ローンが取立てを公明な裁判手続でするということについて、何か、裏で解決した方がいいとは決しておっしゃいませんですね。裁判手続に乗っかってやるということが、何かおかしいことだというのはどこから来るのか、ちょっと理解できなかったんですけれども。

○ 商工ローンの事業者すべてが問題があるということを申し上げているつもりはないんですが、先ごろも、かなり商工ローンの悪質な事業者の問題が、社会面を賑わしておりました。そういう意味では、身近なバンクでもないでしょうが、そういうふうなことで利用される方のことを考えますと、否定はできないんですけれども、裁判所が,事業者の高利な金利で営業している事業者の取立てに手を貸すということになりますと、公的機関がやるべき役割ではないような、率直に申しましてですね。勿論、借りたものは返さなければいけないというモラルの問題もあるんですが、社会の病理の問題を扱うのが裁判所であるならば、一面、それが役割を演じているとも言えるでしょうけれども、取立てを行うな、闇で更に過激な取立てを行えと言っていることではない。そういうことではございません。つまり、貸金業の在り方はどうあるべきかという根本的なところに、金融機関の在り方はどうあるべきかというところにまで立ち至って物事を考えていきませんと、やはり、病理現象をそのまま持続していくということになるんではないかなということです。事物管轄の問題を考えるに当たって、商工ローンが、悪徳の商工ローン、その上に付きますけれども、通常の営業をされている方について申し上げるつもりはありませんが、弱味に突け込むような人たちか高額納税者となって登場してくるような事態を避けなければならないということを申し上げているつもりです。

○ 今、商工ローンはほぼ90万以上ですから、地裁を使っているわけです。そうすると、業者の使用人が代理許可をもらえないので、やる場合には、全部弁護士が出てくる。弁護士が付けば、被告側も弁護士が付くという形で、裁判所も、厳格な証拠調べをやった上で地裁は進行するわけです。ところが、簡易裁判所というのは、少額軽微な事件を迅速に処理するという建前ですから、そのためにも、裁判官も簡易な資格でもいいという形になっているわけです。基本的には、余り証拠調べはやらないという形で進みます。ですから、そういう簡易裁判所にはふさわしくないということを言っているわけで、地裁をお使いになったらよろしいかと私は思います。

○ 証拠調べをしないんですか。

○ 基本的にはできないです。今の簡裁の実情を見ていると、証人を呼んで、何人も呼んでということはできません。もう一つは、結局、許可代理の業者の使用人ですから、本人訴訟なんです。ですから、簡裁の一般の事件を見ていると、裁判官の負担がものすごいです。結局、本人訴訟と同じですから、裁判官が証拠調べも全部主宰してやるわけですから、かなり絞らなければ、今の体制ではできないと思います。

○ そこに、司法書士に代理権が与えられるということが、どう影響していくかということになるんでしょうね。

○ 事物管轄の問題は、別途検討したいと思うんですが、簡裁の実情について、簡裁が証拠調べしないというのは若干誤解を受ける向きがあると思うので、一言述べさせていただきます。欠席判決が多いというのは、私たちの理解から言うと、一つは、事実がそのとおりだからあえて争わないという人がかなり多いと思うんです。それが大部分だと思います。あと、もしあるとすれば、本当は言い分があるんだけれども、額が小さいから問題にしたくないんだという人もいるかもしれません。これもある意味では、民事訴訟法の建前から言えば、処分権主義、弁論主義ですので、法律的にはそれはやむを得ないところなんです。ただ、そういう人たちが、本来ならちゃんと言い分を述べて裁判所の結論に反映させるようなシステムというのは用意しなければいけない、そういうシステムを用意した上で、なお言い分はあるけれども言わないというのは個人の自由ですから、その人の判断に任せればいいことだろうと思います。簡裁が確かにたくさんの事件を抱えて大変だというのはそのとおりだろうと思いますけれども、決して、言い分のある当事者に言い分を言うなとか、あるいは、当事者にもう来ないでくれと言っているわけではありませんで、勿論、そんなことがあるはずがありません。簡裁では、本人訴訟がほとんどで、本人ですから、非常にわかりにくい発言をすることも多いんですが、その中から何を言いたいのかということをしっかり聞き分けた上で、それにふさわしい解決をやっています。そのところは誤解をいただかないようにお願いしたいと思います。

○ よくわかります。簡裁の事件を傍聴していると、裁判官の負担がものすごい大変です。この前の少額訴訟で大体1時間、午前中に2件しか入らないですね。それが一般の簡裁の事件は、午前中に30件くらい入れていますから、裁判官は一生懸命やっていても、どうしても落ちるのがあるだろうと思っています。傍聴席で見ていても、あれを聞いてくれればいいのにとか、時効じゃないかという疑いがあったり、利息制限法からするとおかしいんじゃないかとか、みなし弁済の問題とか、いろいろ問題があるのを私どもは経験していますので、今の体制で、このまま商工ローンの事件まで全部簡裁に行くというのは、ますます負担が多くなって大変だろうと、私ども思っています。
 この前、最高裁の「データブック」というのをいただきまして、簡裁を数えてみたら438なんです。簡易判事の定員が806人と書いてある。これは、昭和57年当時570くらい簡裁があったから、簡裁自体はかなり統廃合されて減ってきているわけです。だけれども、裁判官の数は、当時で750人くらいが今は806人ですから、そんなに変わっていないんです。これでよく30万件の事件をやれるなと、私ども思っています。そういう意味では、一生懸命やっていても、やはり、賄い切れない部分というのは現実にはあるだろうと考えざるを得ないんです。

□ とりあえず、今日の御説明についてはよろしいですか。
 それでは、今日は議題が幾つかございますが、次は、弁護士報酬の実情についてです。これは日弁連ですか。資料2です。

△ 昨年度、日本弁護士連合会の副会長を務めておりまして、その関係で、この検討会の日本弁護士連合会におけるバックアップのチームの責任者をさせていただいております、私の方から御説明をさせていただきます。
 資料2のほかに、席上配布で資料を配布させていただきました。少し具体的な数字があった方がわかりやすいかと思って、これは、私が昨日作ってまいりました。まず最初に、報酬規程というものについて、少し御説明をさせていただきます。
 弁護士法33条2項には、弁護士の報酬に関する標準を示す規定を、各弁護士会の会則に記載しなければならないという規定がございます。同じ弁護士法の46条2項には、日本弁護士連合会に関しても同様の規定がございます。この規定を受けて、各弁護士会は、それぞれ、弁護士報酬標準規程、以下、報酬規程と申しますけれども、それを定めておりまして、日本弁護士連合会は、報酬等基準規程というものを定めております。日本弁護士連合会の報酬等基準規程は、弁護士会が定めます報酬規程の基準を定めるものとして規定されておりまして、また、各弁護士会の報酬規程の制定変更には日弁連の承認を要するとされております。このために、各弁護士会の報酬規程は若干の違いはございますけれども、ほとんど日弁連の報酬等基準規程と同様の内容でございますので、これに基づいて御説明をさせていただきます。ただし、日本弁護士連合会の報酬等基準規程は、各弁護士会が定める報酬規程に関する規定の標準でございまして、そのもの自体は、依頼者はもとより弁護士をも直接拘束するものではありませんので、報酬規程として直接意味を持つのは、各弁護士会の報酬規程ということになります。ちょっとわかりにくいかもわかりませんが、具体的な内容は、それぞれそんなに大きな違いはございませんので、統一体である日本弁護士連合会の報酬規程に従って御説明をさせていただきます。
 日本弁護士連合会の報酬規程そのものについては、この検討会の第1回目に配布資料として配られておりますので、本当は今日再度お配りをしてもよろしかったんですが、もしお持ちでしたら、御覧いただきたいと思っております。
 次に、報酬規程の性格でございますけれども、各弁護士会の定める報酬規程は、先ほど、報酬標準規程と申しましたように、あくまでも標準でございまして、報酬契約は、依頼者と弁護士との自由な意思に基づいて締結されるものでございます。もっとも、報酬規程は、弁護士法の言う会則の一部でございますので、基本的には、弁護士はこれを守っていく義務を負っているということになります。しかし、現実には、依頼者から、後で御説明をいたしますが、標準額で着手金、報酬金を受領している弁護士は極めて少なくて、少し古い調査で、昭和63年ごろの調査でございますが、東京でも、後で御説明申し上げます規定の下限寄りとするものが51.9%、下限以下というのが27.3%という数字になっておりまして、大半が、下限ないし下限以下という実情にあると思います。東京でそうですから、地方へ行きますと、その比率は更に高くなっておるものと思っております。このような実態からしても、現行の報酬規程は固定的な機能を果たしているものではなく、弁護士が依頼者に報酬請求をする際の一つの目安の役割を果たしていると言えるのではないかと思っております。
 次に、具体的な御説明を申し上げますが、資料2の3枚目を御覧いただけますでしょうか。これは、日本弁護士連合会のホームページに載っているものだと思いますけれども、弁護士の報酬には、ここに記載されたようなものがございます。着手金、報酬金、実費、日当、手数料、法律相談料、顧問料、おおまかなものはこんなものになるのではないかと思っております。資料2の最初に戻っていただきまして、これは日本弁護士連合会の事務局で作ったものでございますが、今日の御趣旨が、通常の民事訴訟における弁護士報酬ということが中心的なテーマという位置付けで作ったようでございますので、そういう内容になっております。通常の民事訴訟における弁護士報酬は、ここに記載されておりますように、大きく言いまして、着手金と報酬金という二本立てになっております。まず、1の着手金でございますが、これは、そこに書いてありますように、「委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その結果いかんにかかわらず受任時に受ける委任事務処理の対価をいう」、こういう内容になっております。「1件(各審級)ごとに定める(規定5条)」と書いてありますが、そうすると、着手金は何遍ももらえるのか、審級ごとにもらえるのかということになりますが、それは、同一弁護士が同じ審級を継続するときには、そのことを考慮して決めなさいということになっておりますから、何度も何度も着手金をもらうわけではありません。
 算定の基準でございますが、「事件等の対象の経済的利益の額を基準として算定」をいたします。これは、報酬金についても同様でございますが、経済的利益というもの、これは、金銭債権等につきましては非常にはっきりしておりますし、これはその総額ということになります。所有権については、対象たるものの時価ということになろうかと思いますけれども、具体的には、経済的利益をどう見るかということは、常に画一的に決められない部分がございます。そうした場合は、どうしても算定できないときには算定不能という前提での着手金になってまいります。
 着手金の具体的な額でございますが、これは、今申し上げた経済的利益の額に一定額を乗じた額になっておりまして、ここには2〜8%という額が書いてございます。実は、この2〜8%というのも、正確に申し上げると、このとおりということではなくて、若干の御説明を申し上げないといけないんですが、それを御説明申し上げると、非常に難しくなるわけであります。具体的に申し上げると、300万以下の部分は着手金は8%、300万を超えて3,000万以下の部分は5%、3,000万円を超えて3億円以下の部分は3%、3億円を超える部分は2%、こういうのが具体的な規定の内容でございます。 こんなことを言っておりますと、全然わからなくなってしますので、私が書いてきました1枚ペーパーの方へいっていただくわけでございます。これは、今区分けをいたしましたような区分けにしたがって、例示的に、幾つかのパターンで説明をさせていただいたものでございます。一番上が300万以下のときでございますが、これは、着手金は経済的利益に8%を掛けるということになっております。ただし、最低額は10万円となっております。それもただし書きが付きまして、経済的利益の額が125万未満の事件の着手金は、事情により10万円以下に減額することができるとなっております。この場合につきましては、ここでは具体的にその上限、300万円の場合幾らかということでございますが、先ほどの資料2の1枚目「着手金の額」というところですが、「2〜8%を乗じた額」の下に「30%の増減」ができる。事案の内容にしたがって、30%の増減ができるということになっておりますので、その増減額をも併せて表示をしたわけでございますが、標準額が着手金24万円、30%の増減をいたしました減の方が16万8,000円、増の方が31万2,000円という金額になります。それから、2の300万を超して3,000万以下のとき、先ほど申し上げたような説明になるんですが、具体的に申し上げると、「(A)×5%+9万円」ということで、具体的な数字が出てまいります。したがって、500万の場合は標準額が34万円、減の方が23万8,000円、増の方が44万円となります。以下、1,000万円、3,000万円、5,000万円、1億円というところまで、例示的に書かせていただきました。1億円の場合で369万円が標準額で、増減の幅が258万3,000円ということになっております。着手金は、今申し上げた性質上、事件の依頼を受けたときに受領することが基本になっております。
 次に報酬金でございますが、ほとんど今と同じものでございまして、ただし、基本的な性格が、「委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価をいう」ということになっております。したがって、成功しなかった場合は、報酬金を受け取ることはできません。しかし、成功というのは100%の成功から一部成功もございますので、その成功の度合に応じて経済的な利益の額をはじいて、それに基づいて報酬金を決めるという体系になっております。
 次に、「支払時期」は、事件が終了したときということでございまして、同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときは、原則として最終審のみ報酬を受領する。つまり、報酬をダブって受領することはできないということになっております。報酬金の額は、先ほど申し上げたペーパーの方の標準額、増減額を御覧いただければ、大体の数字がおわかりいただけると思っております。ただし、先ほど申し上げたように、この標準額で着手金ないし報酬金を受領している弁護士は、私の認識では、まずほとんどいないであろうと思います。多くの弁護士が、この減の方、例えば、300万の場合は16万8,000円により近い数字、先ほどの統計で言いますと、下限額寄りとするものが51.9%、下限以下が27.3%という統計等もございまして、それもお考えをいただきたいと思います。その下限以下というのは何かというと、資料2の着手金の額という欄の3行目に書いてございますように、依頼者の経済的事情等による減免規定というのを適用して、下限以下の金額で着手金、報酬金をもらっているということになります。
 資料2の2枚目に書いてございますが、これは新しい報酬体系でございますが、今申し上げたのは着手金、報酬金という報酬体系でございますが、報酬規程の39条の1項に、依頼者との協議により、着手金・報酬金方式によらないで、1時間当たりの適正妥当な委任事務処理単価に、その処理に要した時間を乗じた額を弁護士報酬とすることができるという定めがございまして、その額は、1時間ごとに1万円以上と定められております。こういう時間制報酬については、大企業等を中心に、徐々にこういう報酬体系も取り入れられてきているのが実情だろうと思っております。
 最後に、日本弁護士連合会の報酬規程についてでございますが、実は、実物はこれだけあるわけでございまして、大変に読みにくい内容になっております。先ほどの着手金、報酬金でも、こういう表であれば非常によくわかると思うんですが、さっき申し上げたような内容になっておりまして、市民の方々にはわかりにくいという面がございまして、この点は、司法制度改革審議会の最終意見でも、弁護士報酬の透明化、合理化ということがうたわれておりまして、日本弁護士連合会では、最終意見の出される前、昨年の3月に報酬規程改正検討ワーキング・グループというのを設置をいたしまして、検討を開始しまして、本年3月、弁護士制度改革推進本部というものを設けましてからは、その本部の中の弁護士報酬問題検討部会というのに改組をいたしまして、弁護士以外の委員4名、具体的に申し上げると、主婦連、経団連、共同通信、連合からの委員を含む委員で、わかりやすく合理的な報酬規程の策定を目指して検討中でございます。そのことも御理解いただければと思っております。今日、傍聴席の方に、今申し上げた検討部会の委員をしていただいている方もおりますので、興味を持って傍聴していただいて、ありがたかったと思っております。 以上で、とりあえず、私の説明は終わらさせていただきます。ありがとうございます。

□ 弁護士会の報酬規程について、何か御意見ございますか。

○ 素人でわからないんですけれども、この資料8では、訴訟費用と弁護士費用というのとは区分されていますが、弁護士費用というものは、訴訟費用のように、敗訴者負担というのはあるんですか。

△ いえ、それは、今は基本的にはないものですから、司法制度改革審議会の意見書で敗訴者負担について議論され、一定の提言がなされておる。そのことが、この検討会の検討テーマになっているという認識をしております。

○ 諸外国ではあるわけですか。

△ 諸外国で、あるところもございます。しかし、弁護士費用については,その資料8にありますような、諸外国がおしなべて敗訴者負担であるということではありません。そこに書いてあるのは,弁護士費用を除いた実費の部分でございます。

○ 長谷川委員 報酬金みたいなものは、国によっては、敗訴者負担は、それぞれいろいろな事情もあるわけですか。

△ そうですね。実際上は、例えば、交通事故あるいは犯罪といったような損害賠償事件につきましては、この弁護士報酬を原告の請求として出します。自分の方にこれだけお金が掛かった、これは相手方が払うべきものだという請求を出した場合には、裁判所がそれについて一定の範囲でその判決文の中に反映させるということは行われておりますが、制度としての敗訴者負担にはなっておりません。その敗訴者負担の制度は、私自身はそんなに詳しくございませんので、適切にお話しできるかどうかわかりませんが、訴訟費用保険、弁護士保険、そういうものの制度の充実とか、あるいは民事法律扶助制度の充実とか、そういう制度の充実度合いとの関連もあるようでございまして、そういう制度の充実しているところについては、敗訴者負担ということは、弁護士報酬についても行われておるというふうに認識をしておりますが、そういう制度が伴わないときには、訴訟費用額と同等には難しいかなと思っておりますが、これは私の役目ではありませんので。

□ 今、話が出ましだか、それが今日の議題の(3)にあります。概要についての説明の方に移ってよろしゅうございましょうか。

○ 質問よろしいでしょうか。先ほどの司法書士法の改正の中では、配られた資料によりますと、報酬に関する事項は削除することになっています。一方、弁護士法については、そもそも, こういう弁護士会で、言ってみれば報酬のカルテルをするということについての動きは、削除しようとすることに動いているんでしょうか。それとも、利用者のために、こういうものがあった方がいいなということになっているんでしょうか。

△ 副会長の職を離れてしばらく経っておりますので、正確に申し上げられるかどうかわかりませんが、平成12年12月に、規制改革委員会は、会則上から報酬規定を外すべきだという提言をいたしまして、平成13年3月の規制改革3か年計画の中には、その旨の文章がございます。しかし、弁護士報酬については、当時、司法制度改革審議会で審議中でございましたので、規制改革3か年計画では、たしか、審議会の審議経過をも踏まえ、削除する方向で検討するとか、削除するとかいう内容になっておったかと思います。他方、平成13年6月に出ました司法制度改革審議会の最終意見書では、これまた、規制改革委員会が削除すると述べていることも踏まえ、その在り方について検討する。お互いにもたれ合いのような形で提言がなされておりまして、まだ、これは今後どうなるのか、私自身、ここで申し上げるだけの十分な認識を持っておりませんが、日弁連としては、この問題は、弁護士の利用ということが、普通の市民にとって、例えば洋服屋さんで洋服を買うとか、魚屋さんで魚を買うといったような日常茶飯事的なことではなくして、一生の間に1回か2回あるかないかということで、何も報酬規程のようなものがない、目安すらないという状態の中で、市民のためになるだろうかという観点で見たときには、一定の目安はあった方がいいという形の理解を得ていただきたいと。会則上に残して、事情を知らない市民から多額の報酬を取ってしまうということは避けるという制度を維持したいという方向で議論されておると認識をしております。

○ もう一点ですけれども、アメリカなどで消費者訴訟をするときに、成功報酬でやるのが多いですね。成功したら3分の1くらい弁護士費用を取る。負けた場合には一銭も要らない。これは、日弁連としては、そういうことをやってくる弁護士が増えてきたとしても、これは弁護士倫理に反するとか、そういうことではなくて、まさに顧客と弁護士との自由な契約の下で、日弁連としてはそれについて非難もしなければ指導もしないということなんでしょうか。

△ 今は報酬規程が現にございますので、そういう報酬の決め方自身ができません。

○ 報酬規程に準拠する義務を負っているということですか。

△ はい。

○ 先ほど、30%の下限を下回る人もあるというお話でしたけれども、これは、規定違反もしているわけですか。

○ それは、依頼者の経済事情等を考慮して、更に減額することができるという規定がございます。

○ ゼロにすることも。

○ 発想が違うんです。今の委員の御発想だと、着手金をもらわずに、全部報酬で勝負をすると。成功したら半分もらうよとか、3分の1もらうよ、こういう考え方自身は、今の報酬規程の考え方と根本的に相入れませんので、そういうことをやったとすれば、今の段階では、弁護士法違反になると思います。

□ 弁護士報酬の敗訴者負担の問題は、また次回以降、十分審議の時間がございます。

○ 質問なんですけれども、お話ありがとうございました。ただいまの御説明の中で、今、わかりやすい制度について会議を持っておられるというお話でしたけれども、その結論はいつごろ出されるのでしょうか。それから、お願いと言ったら何でございますけれども、現状の中では随分幅がございまして、実際がどうなのか、自分がお願いする場合に、門をたたいていいかどうか判断のしようがない体系ではないかと思うんです。したがいまして、その辺のところは、恐らく御検討になられていると思いますが、わかりやすい形で、しかも、早目に見直しを行っていただければと思います。

△ 1点目につきましては、まさに先ほども委員から御指摘のございました、報酬規程を会則上のものにしておくのかどうかというところが1つの論点でございまして、本当は、そこが決まりませんと、報酬規程を見直すにしても、どういうものにするのか決まってまいりません。その問題は、法曹制度検討会の方で議論をされることになっておりますので、その議論結果をも横にらみしながら検討していくということなんで、時期的には、私から申し上げるのはなかなか難しいかと思います。改正の方向性については、委員のおっしゃるとおりです。ぱっと見て、ぱっとわかる方向性で検討がされていると認識しております。

□ それでは、法律扶助制度、議題の(3)に移りますが、御説明お願いいたします。

● それでは、法律扶助制度の概要などにつきまして、御説明をさせていただきたいと思います。  訴訟費用に関しまして、その支出が困難な方に対して訴訟救助という制度があることを、前回までの検討会の場で、既に御紹介申し上げているところです。弁護士報酬につきましては、原則として訴訟費用にはならないということになっています。ただ、弁護士報酬が支出できない、または支出することが非常に困難であるという方を援助する制度として、民事法律扶助制度というものがあります。民事法律扶助事業に関しましては、平成12年に民事法律扶助法という法律が成立しています。民事法律扶助法については、既に第1回検討会の資料としてお配りしておりますので、詳しい内容は、そちらを御参照いただければと思います。この場で、簡単に、この民事法律扶助法の概要を御紹介させていただきますと、おおむね3つの話を掲げることができるではないかと思われます。
 1つは、この法律によって、民事法律扶助事業の基本的な枠組みが明らかにされるとともに、事業に関する国・弁護士会等の責務が明らかにされたという部分があるということがあります。2つ目の柱といたしまして、民事法律扶助事業を行うのにふさわしい法人としての要件が法律で定められており、法務大臣がその要件を満たす法人を指定することができる。これを指定法人制度と呼んでおりますけれども、この指定法人制度を採用している。そして、指定法人の行う民事法律扶助事業における業務、会計、及び人事について国の監督権限等が法律で定められていると、これが第2の柱として挙げられています。最後、3つ目の柱といたしましては、指定法人の行う民事法律扶助事業に要する費用について、国が補助する根拠、これが法律に置かれた、これが第3の柱ということになると思います。
 現在、財団法人法律扶助協会が、民事法律扶助法の指定法人とされております。民事法律扶助事業に関しましては、民事法律扶助法第2条に定義が規定されています。第2条によりますと、民事法律扶助の対象となるのは、裁判所における民事事件、家事事件、行政事件に関する手続というふうにされています。また、援助を受けることができるのは、民事裁判等手続において、自己の権利を実現するための準備、及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民等、その支払いにより生活に著しい支障を生ずる国民等とされています。ここで国民等とされていますのは、国民のみではなくて、我が国に住所を有し、適法に在留する方を含むという意味とされています。
 民事法律扶助法第2条が規定している民事法律扶助事業というのは、おおむね4つ特徴を挙げることができると思います。1つは、民事裁判等手続の準備及び追行のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人の行う事務の処理に必要な実費の立替え、これが1つ目です。もう一つは、民事裁判等手続に必要な書類の作成を依頼し、または嘱託して支払うべき法律及びその作成な実費な立替えをすること。もう一つが、法律相談を実施すること。最後が、以上の業務に附帯する業務を行うこととされています。今、嘱託と申し上げましたけれどけも、司法書士法の改正で若干変わった部分がありますので、嘱託というのは正確ではないと思います。
 民事法律扶助事業を行う指定法人は、民事法律扶助事業の実施に関する規定を定め、法務大臣の認可を受けなければならないということになっておりまして、この規定を変更する場合も、法務大臣の認可を受けなければならないとなっています。民事法律扶助法の第7条1項に、そのような規定があります。民事法律扶助法第7条2項には、この業務規定に関しまして、業務規定には、民事法律扶助事業の実施に係る援助の申し込み、及びその審査の方法に関する事項、その他、法務省令で定める事項を記載しなければならない。この場合において、当該報酬は、民事法律扶助事業が同条に規定する国民等を広く援助することを考慮した相当な額でなければならないと規定しています。この法律の規定を受けまして、法律扶助協会では、民事法律扶助事業業務規程というものを定めています。資料12としてお配りしてありますけれども、この業務規程の21条、それから27条によって、代理援助、書類作成援助、法律相談援助の対象者の資力基準が定められており、この規定によりますと、業務規程の後ろの方に別表1というのがあります。本日の資料でいきますと、資料12の25ページでございますが、そこに援助を受ける視力基準というものがあります。この業務規程別表1によりますと、資力基準は、賞与を含む手取りの月額が、単身者は月18万2,000円以下、2人家族の場合は25万1,000円以下、3人家族の場合は27万2,000円以下、4人家族の場合は29万9,000円以下とされておりまして、以下、家族が1名増加するごとに、この基準額に3万円を加算するという形で定められています。
 次に、援助開始が決定された案件について、法律扶助協会が立て替える費用の内容については、若干御説明させていただきますが、これにつきましては、業務規程の23条に規定があります。この業務規程の23条によりますと、代理援助、または書類作成援助に係る報酬、代理援助、または書類作成援助に係る実費、補償金、その他附帯援助に要する費用、これが法律扶助協会が立て替える費用の内容であるとされています。代理援助に係る報酬については、着手金と報酬金、先ほど弁護士さんの場合の着手金と報酬金というのがございました。これをその内容とするものというふうな規定が置かれております。
 法律扶助協会が立て替える報酬に関しましては、業務規定24条に具体的な規定があります。この業務規程24条1項によりますと、援助案件を弁護士が受任または受託した場合には、日本弁護士連合会の定める報酬等基準規程の範囲内で司法書士が受託をしたときには、各司法書士会の定める司法書士報酬額基準の範囲内で、被援助者に著しい負担になるものでないこと。適正な法律の事務の提供を確保することが困難となるものでないこと。援助案件の特性や難易を考慮したものであることというような事項を踏まえて定めるものであるというふにされております。そして、業務規程24条2項で、24条1項に基づく立替基準は別表2に定めるところによると定められております。 この別表2が、今日お配りした資料12の26ページ以下にございますので、御参照いただければと思います。
 時間の関係もございますので、余り詳しい説明は差し控えさせていただきたいと思いますが、例えば、普通の一般の金銭請求事件の場合ですと、26ページの別表2の一番上の方にありますけれども、例えば100万円の金銭請求事件の場合は、代理援助の支出基準額は着手金が12万円、報酬金が10万円となっております。それから、27ページの下の方を見ていただきたいと思いますが、最近増えております自己破産の申立ての場合、代理援助で自己破産の申立てをするという場合は、債権者の数で若干変わってきますけれども、着手金が12万円から17万円という形に定められております。それから、書類作成援助の場合、これは代理援助と異なりまして、代理人として援助をするわけではなく、裁判所に提出する書類などの作成を司法書士さん、弁護士さんにお願いする際に生じる費用を法律扶助の対象とするという制度でございますが、これに関しましても、代理援助の場合と同様に、別表があります。これは資料12の一番最後、28ページに一覧表がありますので、御覧いただければと思います。これも時間の関係で簡単に紹介させていただくにとどめたいと思いますけれども、1番目、通常訴訟手続の場合、例えば、訴状とか答弁書、こういったものを書類作成援助で行うという場合ですが、報酬額の方は初回報酬が2万5,000円、追加で書類を作成する場合というのが、1回につき2万円から2万5,000 円と規定されています。自己破産の場合、6番ということで、真ん中よりちょっと下に一覧表がございますが、債権者の数で若干額が異なっておりますが、8万円から9万円というふうに規定されています。
 最後、法律相談援助の報酬に関しましても、これは業務規程37条で別に定める法律相談援助を、費用支出基準による法律相談費を支払うと規定されております。これにつきましては、業務規程に、具体的には、支出基準に関する定めというのはございません。法律扶助協会の内部で規定をつくっておられると承知しています。
 簡単ではございますが、以上で御紹介を終わらせていただきたいと思います。

□ どうもありがとうございました。
 それでは、引き続き、議題の4の訴訟費用が確定されるとの手数料、(4)と(5)は連動しておりますが、手数料と訴訟費用額確定手続でよろしいでしょうか。
 それでは、議題にありますように、最高裁判所事務総局からの御説明をお願いします。資料は3です。

▲ 最高裁判所事務総局民事局の参事官をしております。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料の3に沿って、少し説明させていただきます。内容につきましては、ここにあるとおり、訴訟費用額確定手続と訴え提起の手数料、訴え提起の手数料につきましては、その中の「送達費用の手数料への組入れ」ということにつきましてでございます。
 まず、資料3の2枚目、別紙1をお配りしておりますので、訴訟費用額確定手続の運用状況や、手続上の主な問題点について御説明したいと思います。まず、この別紙1ですが、これは、地方裁判所と簡易裁判所、それぞれの訴訟費用額確定の申立てを年度ごとに表したものであります。一番下の平成13年を御覧いただきますと、左の地方裁判所が459件、右の簡易裁判所法は368件、合計すると、全国で827件にすぎないということがおわかりかと思います。過去11年並べてみましたけれども、地方裁判所でおおねね300から400件、簡易裁判所では微増傾向にあるようですけれども、それでも400件に達していない。これは、確定手続が煩瑣で使いにくい部分があるためではないかと思われるところでございます。
 次の別紙2「訴訟費用額確定手続の流れ」で、おおまかなイメージを御説明したいと思います。まず、申立てをしようと思われる方にとりましては、非常に法律、法規の構造が複雑で難解である、何が費用として認められているのか、算定基準はどのようなものなのか、裏付け資料として何が必要か、また、幾らの費用が回収できるのか、こういった疑問があろうかと思います。そこで、申立てを希望される方の多くが、申立て前に裁判所に相談に訪れるわけですけれども、ここでは、裁判所の書記官も、申立て希望者のサポートを努めております。これが、一番上の赤い矢印のサポートということでございます。ここででき上がりました申立書、これは裁判所に提出していただくことになりますけれども、これが、緑の部分の申立書となっております。これは、同時に、申立人には、費用の請求をする相手方、これが申立書の下に黄色い枠で書いてありますけれども、申立書を相手方に直送していただくということになっております。また、相手方に対しては、裁判所からも、申立書に関して意見があれば意見書を提出するように促す催告の書面が送られることになっております。相手方としましては、費用額の確定処分がされる前に、申立書に対して意見を述べることができる、相手方としましては、自分が知らないうちに費用額が確定されるということはないことになっておりますし、裁判所としても、相手方の意見を聴いた上で、正確に費用額の確定を行うという手続ができているわけです。申立書の直送と意見の催告は、こういった重要な役割を果たしているということを御理解いただければと思います。費用額確定手続が現行法のように複雑な構造を取っている限りは、直送と催告の手続を省略するということは適当ではないのでないかと考えております。以上、この手続を経て、裁判所が審査に入るわけですけれども、これは今から御説明するようないろいろな手続、チェックがございます。
 なお、別紙2の一番下のところに右側に向けた矢印のところに、「通常数か月程度」と書いてありますけれども、申立ての準備を始めてから確定処分がなされるまでの期間、これは統計は特にないんですけれども、この程度かかることが多いようだと思われます。一方、記録上明らかなもの、そういった項目だけが申立てをされた場合には、比較的短期間で確定処分をされているようです。
 かつて、民訴費用制度等の在り方に関する調査研究を行うことを目的として、法務省の下に設置された民訴費用制度等の研究会、これが平成9年に報告を出したんですけれども、ここでも、現行手続は非常に煩瑣である、手続の簡素化を図るべきではないかという報告がされているところです。
 それでは、次の別紙3−1、手続上の主な問題点ということについて御説明したいと思います。これは、各費用項目に多数のチェックポイントがあるということを示しているところです。まず一番上、「書記料」を御覧いただければ、一番上に、「民事訴訟の資料とされたと認めるべき書類はどれか?」と書いてあります。書記料と申しますのは、現行法上1枚150円とされているところなんですけれども、まず、「民事訴訟の資料」とされたということが必要なわけです。この資料に該当するかどうか、これを決めるため、例えば準備書面ですと、訴訟手続中で使用されたかどうかについて、記録を確認するということが必要になってきます。申立人は、記録を閲覧しまして、「民事訴訟の資料」に当たる書類が何枚あるか、これを数えて書記料の額を計算した上で、申立てを行う、裁判所書記官も、記録を総合的に検討する。相手方の意見を参考にして、書記料の対象となる書類を特定して、これを一枚一枚数えて書記料を算定するという手続になります。また、図面の場合は金額が変わってきますので、書類中に図面が幾つあるかということも、数えることになります。次に、下の水色の部分、「書類提出費用」についてですけれども、この欄の一番上に、「提出時の郵便料金はいくらか?」というポイントがあります。これは、現行法上、この書類提出費用につきましては、提出された当時の郵便料金が記述されるということになっているわけです。現在の郵便料金では、1回当たり500円とされているところなんですけれども、どの書類が同時に提出されたどうか、こういったこともチェックする必要があります。これは、現行法が提出回数を基準に提出費用を算定するという構造になっているためです。更に、次に、緑色のところの「当事者本人・代理人の旅費・日当等」という欄につきましてですけれども、これにつきましては、さまざまなチェック項目が並んでいると思います。この一番上、「出頭の当時、当事者の居住地から裁判所へ出頭するのに、どの交通手段、経路を利用するのが経済的であったか?」というポイントがあります。現行法の旅費関係規定は、極めて難解になっております。まず、居住地から裁判所まで移動するのに、どの交通手段、経路を利用するのが経済的か、これを調べる必要があります。これも、現行法の出頭当時とされているのが1つのポイントになります。ですから、いつ当事者等が出頭したのか、その当時、鉄道、バス、そのほかの路線はどうなっていたのかということを、逐一チェックする必要があるわけです。その上で、当時の移動の仕方として、例えば、電車を利用するのが経済的だということになると、現実の鉄道賃を基準に旅費を算定するということになります。この鉄道賃も勿論、出頭当時のものによるわけです。
 次の別紙3−2、3−3、これもいずれも、前回事務局の方から費用額算定の概要を説明するのに当たって使われた資料を加工したものです。例えば3−2を見ますと、「原告勝訴の場合」、「計算書(原告分)」と書いてありますけれども、左側の大きな四角の方で囲まれた部分の数字は、前回の資料と同じになっております。右側のこれより小さい矢印の右側ですけれども、この小さい縦長の長方形で囲まれた部分、これが手続の簡素化、これが仮に実現した場合、回収できる金額がどのくらいになるか、これをシミュレートしたものです。今、言いましたとおり、この別紙3−2が原告勝訴の場合で、別紙3−3が被告勝訴の場合となっております。カラフルに色を分けてあるんですけれども、オレンジ色が、先ほど言いました別紙3−1でありました書記料で、水色が書類提出費用、緑色が当事者本人・代理人の旅費・日当等、こんなような形で色分けが共通しておりますので、見るときには参考にしていただければと存じます。別紙3−3、最後のページになりますけれども、被告勝訴の場合というところで見ますと、別紙の一番下の緑色の枠囲み、「※本件では、旅費については便宜上路程賃の計上を省略している(旅費=鉄道賃+路程賃である)」となっております。現行法上は、鉄道賃と路程賃が合算されて旅費が出されると。この路程賃というのは、鉄道の便のない区間の陸路旅行、こういったものについて計上されるもので、1キロメートルについて37円以内と定められています。前回の事務局の資料では、この路程賃の方は省略されていましたが、現実には、緑色の部分の下から2行目にある「37円×5Km」という数式のように算定されるということになります。こういった金額を計算するためには、当事者の居住地から最寄りの駅まで、また、この電車の場合ですと、その後、駅を降りてから裁判所までの各距離、これを確認する必要があります。また、訴訟の途中に、例えば転居されてしまうということがございます。そういう場合には、その出頭当時どこに居住していたかということをチェックする必要もあるということになっております。このほかに、いろいろと難しいところがありますが、時間の関係もありまして、いろいろとあるということを御理解いただければと思います。日当や宿泊費、これも、同様の煩瑣な手続が必要だということですが、これも割愛したいと思います。
 こういった確定手続が非常に込み入っているという理由は御理解いただけたのではないかと思いますけれども、この確定手続の簡素化を図るという観点から、どういったアイデアがあるか、提案させていただきたいと思います。
 まず、費用の範囲の見直しを図るということが考えられます。具体的には、先ほど言いました書記料や書類提出費用などについて、費用項目から外してしまう、削減するということが考えられるのではないか。既に申し上げたとおり、これらの計算には、当事者も裁判所も、特に当事者の極めて煩瑣な手続、これが強いられるということになっております。思うに、書記料が項目として挙げられたのは、現在のようにコピーが普及していなかった時代でありまして、その当時は、主として筆記の労力に対する対価として書記料を費用として認めるというような考えであったと思われます。しかし、これだけコピーが普及して、コンビニエンスストアに行けば1枚10円で簡単にコピーができるという時代になりますと、現行のように1枚150円という基準自体も、そもそも通用しないんじゃないか。また、請求される相手方から見ましても、余分なものを費用として請求されていると感じるのではないかと思われます。別紙3−2の下の右下の方に、「書記料」、「提出費用」というのがオレンジと水色で書いてあります。これが合計額が書いてあります。書記料については、合計43枚で6,450円となっていますけれども、仮にコピーだとすると430円ということで、他の費用項目と比べて、まことにわずかな金額のために、多大に労力を掛けるということにならないか。また、書類提出費用についても、一回当たり500円もの提出費用を認めているわけですけれども、これはFAXでも書類提出が認められていることから照らせば、書記料の場合と同様なことが当てはまるのではないかと考えられるわけです。これらの費用項目を削除したことで請求できなくなる費用額というのは、これは右下の書記料の上のところに「▲8,450 ±α」と書いてありますが、これも全体から見れば、そう多くはないといえますし、先ほど述べたとおり、実費レベルの費用と比べると、もっと幅が小さくなると思われます。
 次に、当事者等の旅費、日当につきましてですけれども、これは、やはり一層の簡素化を図る必要、これも、実に煩瑣な手続が必要だということがおわかりになったと思いますが、鉄道が通っている地域の場合には、実際には、例えば高速道路を利用して自動車で出頭して、鉄道運賃よりはるかに超える金額を出したとしても、鉄道運賃相当しか費用として認められないということになります。現行では、実費弁償ということはしていないわけです。にもかかわらず、現行法は、運賃額や距離数に、そこだけ厳密に依拠している。だから、煩瑣になるということになります。例えば、全国を幾つかのブロックに分けて、その範囲内の移動については定額の旅費とするといった基準や、例えば、裁判所からの距離に基づく距離基準を作って、出頭日時や交通手段、経路、これを考慮せずに旅費を算定できるような簡素な基準、これを作ってみてはどうか、こういうことは考えられると思います。この点、先に申しました民訴費用制度等研究会におきましても、当事者等の旅費・日当や書記料など、訴訟記録上明らかでない、直ちに判明しないものについても、定額に簡素化する案や、固定額化する案、こういったものが議論され、報告書でも訴訟費用額確定手続をより簡素化すべきとの結論も出されているところです。
 先ほど見ましたように、裁判所としましては、こういったものに対して、懇切に窓口対応は行っておりまして、費用額確定申立ての希望者のサポートは十分努めているつもりですが、事件動向や当事者のニーズ、こういったものを踏まえ、更に利用者のアクセスを拡充させるための方策を検討していきたいと思っております。いずれにしても、申し上げましたとおりの現状を踏まえて、委員の方々に、この費用額確定手続簡素化についての必要性につきまして、御理解いただければと思っております。
 送達費用の問題に入りたいと思います。資料3の第2の「訴え提起の手数料関係」の中に「送達費用の手数料での組み入れ」とあります。現在、裁判を提起するためには、申立手数料としての収入印紙のほかに、訴状や判決書などを送達するための費用として、各裁判所で定められた金額及び組合わせの郵便切手、これを納めていただくというふうになっております。しかし、このような仕組みにつきましては、当事者にとって繁雑であってわかりにくいという感じになっているんじゃないかと思われるところで、また、裁判の提起時に納付していただく郵便切手の合計額につきましては、相手方が不在などで送達をやり直さなければならないということもありますし、審理の途中で裁判所から連絡文書を送付する場合もあります。更に、送付する書類の重量、これもまちまちでありますから、あらかじめ予測しておくということができないということがあって、不確定な要素がある。こういったことを考慮に入れて、やや多目に設定するということにせざるを得ないという事情があります。それでも不足してしまう場合につきましては、郵便切手の追加納付、これをしてもらわないといけない。当事者にとっては、いつ追加納付を求められるか、予測がつかないという不都合もあります。他方におきまして、相手方に代理人が付く場合などが、代理人の事務員が直接受け取りにくるということもありますし、いずれにしても、送達が順調にいく場合もあります。この場合には、納付された金額を使い切らずに、郵便切手を返還するということになるわけであります。時には、納付してもらった高額の額面の郵便切手を返還することになるわけですけれども、日常生活の中ではなかなか使い切れなかったり、両替するにも手間が掛かるということから、使い切りをするような場合もあると思われます。それでは、あらかじめ定められた額の郵便切手を納付するという方法ではなくて、必要な都度、郵便切手を納付するというふうにしてはどうかと。この場合に、利用者にとっては、その都度郵便切手を裁判所に持参したり送付したりしなければならない。相当な手間が掛かるとともに、裁判が遅延するという原因にもなろうかと思います。そこで、送達費用に関しては、訴訟事件や執行事件、そういった事件類型とか、当事者の数など、いろんな要素に応じて、通常掛かるであろう費用を元に設定した額で送達費用を手数料化すると。それで提訴手数料に組み入れるということは考えられるんじゃないかと思うんです。この場合には、訴訟提起時に裁判所に納付する費用、これは明確になるわけですし、収入印紙に一本化されることになって、簡便となる。また、申立手数料の定額に伴って、裁判所に納付する費用も低くなるといったメリットがあるんじゃないかと思うわけです。このように、送達費用の手数料化につきましては、裁判所へのアクセス拡充になると考えられますので、この検討会で、是非御議論いただければと思います。
 以上、訴訟費用額確定手続、これは非常に煩瑣だというのをこれだけ早口でしゃべってしまいましたので、わかりにくいかと思うんですが、そのくらい煩瑣であるということでありまして、訴え提起の手数料については、送達費用の手数料への組入れということで、その煩瑣な部分を解消できるんじゃないかということについて御説明いたしました。どうもありがとうございました。

□ 引き続き、事務局が用意してくださいました資料1「訴え提起の手数料と訴訟費用額確定手続に関する検討課題」、関連しておりますので、こちらの説明をお願いします。

● 資料1を御覧いただきたいと思います。それから、訴えの提起の手数料については、資料6でまとめてありますので、それを参考にしていただくのと、それから、今、最高裁判所から御説明のあった資料3、これが訴訟費用額確定手続に関する資料になっていますので、これも御参照いただきたいと思います。
 「第1 訴え提起の手数料関係」の「1 手数料制度の趣旨」につきまして、問題の所在のところでは、手数料制度の趣旨は、裁判制度を利用する者に当該制度の運営費用の一部を負担させることにより、当該制度を利用しない者との対比における負担の公平を図り、副次的に、濫訴の防止を図るものであるとされております。手数料低額化には、このような手数料制度の趣旨に対して適切な配慮をする必要があると考えられるわけです。
 「2 低額化の必要な範囲」につきましては、問題の所在に書きましたように、司法制度改革推進計画で、「訴訟の目的の価額に応じて順次加算して算出するいわゆるスライド性を維持しつつ、必要な範囲でその低額化を行う」こととされている。低額化の「必要な範囲」については、どのような検討をすることが適当かという問題があります。
 「3 低額化の必要性の考え方」ですが、これは先ほど資料6の説明のところでも御説明いたしましたが、問題の所在にありますように、手数料の低額化は一般国民の負担増につながるので、その必要性は、手数料水準、時間の損失を含む他の負担と相対的にみた手数料負担の重さ、段階的に定率となるスライド制又は定額性を採用しているために経済変動で相対的に低額化している実情、訴訟の利用実態など、諸般の事情を総合的に考慮する必要があるのではないかということでございます。
 「4 少額訴訟への定額性の導入等」でございますが、現行法では、少額訴訟は30万円以下とされていまして、その手数料は500円〜3,000円ということになりますが、その少額訴訟の手数料については、司法制度改革推進計画で、「定額制導入を含め検討」することとされております。具体的に、現在500円〜3,000円という手数料の水準、それから調停など他の手続との役割分担、手数料水準のバランス、対象事件の訴額の上限の引上げが検討されているということ、それから、通常訴訟との間で手数料に差が生じてしまう、その差をどういうふうに取り扱えばいいのかという検討が必要になるということでございます。
 2ページ目にまいりますと、「5 送達費用の手数料への組入れ」で、これは、最高裁判所から御説明のあったとおりです。
 「第2 訴訟費用額確定手続関係」の「6 費用の範囲」、「7 費用の額」、この点については、いずれも、最高裁から御説明のあったとおりです。
 「8 確定手続の簡素化」につきましても、先ほど最高裁から御説明のあったような、確定手続における当事者の行うべき事務、あるいは、裁判所が陳述書等の提出を相手方に催告するという手続になっているわけですが、その辺の手続の簡素化を図るというのができないだろうかということを、問題点として挙げたものです。
 以上です。

□ 重要な問題ですので、今日、できるだけ御意見をいただきたいと思いますが、場合によりましては、5時をちょっと過ぎかもしれませんが、御了承ください。
 まず、この点、最高裁の説明、事務局の説明、御意見があればどうぞ。

○ 今御説明いただいた内容と直接関わらないところでございますが、以前、日弁連さんが、この手数料に関して、素案を出されていたのを拝見したことがございますけれども、それについて、こちらに御出席の方で情報をいただけたらと思うんですが。改革の案のようなものです。

○ 日弁連ではなくて、単位弁護士会かもしれません。

○ 拝見させていただいたことがあったように思いまして、2000年の6月に出された日弁連の、国民が利用しやすい司法の実現及び国民の期待に応える民事司法の在り方についてというレポートがございまして、こちらで拝見しますと、試案を出されておられるんですね。私はこの間、前回のときに、いろいろな経済的な指標、国民の消費支出の変遷などの資料を、私、利用者としては一つの目安ではないか、あるいは、破産宣告などの昨今の状況の中では目安ではないかということで多少説明させていただいたんですが、こちらで拝見いたしますと、2案出されているんです。第1点としては、訴訟者の価格の0.1%として上限を100万円とするという案と、第2案として、1円から100万円未満は1,000円、100万〜500万円未満は5,000円、500万〜1,000万未満が1万円、1,000万〜1億円未満が5万円、1億円以上は10万円の5段階に画一化するという案という、スライド制に関してはそのようなことを御提案になられていて、もう一つは、例えば、原告が複数の訴訟においても、この場合には航空機騒音の差止め請求が例として挙がっているんですが、利益が共通のものは1個と考えるべきではないかということとか、その他、特許訴訟等についても御提案があるんですが。

□ 今日は用意がないので、また改めてということですね。

○ 実際に1億円の、例えば、昨今では医療過誤の問題などもたくさん起こっているということで、仮に1億円の訴訟を起こした場合に、現状では41万余り印紙代が掛かるということがございますので、それは相当高額に当たっておりますので、やはり、今までも見直しが行われてきておりますけれども、これから先、高額訴訟というのが暮らしに関わる場面も考えられるように思いますので、高い部分で、余り高くならないような配慮が必要ではないかと考えております。

□ 少し絞らせていただきますが、資料3の最高裁の御説明があって、そこへの御感触を伺いたいんですが、書記料、提出費用などを簡素化する。なくしてしまうのが一番簡単ですが、あるいは旅費等々もこれは簡素化する。このような方向性自体は、いかがなものなんでしょうか。私も民事訴訟法の研究者ですので、多少は知っているんですが、細かいところでは、いろんな制度の調整を図らなければいけませんので、そこまで技術的な話はとてもできませんが、大きな方向性としては、こういうことでよろしいでしょうか。

(各委員了承)

 次に、「送達費用の手数料への組入れ」、今は切手、実物で渡しているものをお金で払うという、そこに組み入れてしまう。これも技術的にはいろいろと問題があるわけですけれども、方向性としてはいかがなものなんですか。

○ ちょっと質問していいですか。定額にしてしまうんですか、それとも、今と同じように、何組とかいう形で、裁判ごとにみんな違うんですか。固定してしまうんですか。

▲ 事件類型とか、例えば、相手方の数などでは分ける必要があるだろうと思うんです。

○ それは今と同じですね。

▲ はい。分けてランクを付け、例えば、相手方の数も類型も同じ事件については同額の送達費用と見積もった上で、それを提訴手数料の方に組み入れてはどうか、こういう発想です。

○ 印紙で払うということになるわけですね。

▲ はい、一遍にですね。

○ 今は、終わったときに、裁判所も大変繁雑だろうと思うんです。計算して80円を1枚とか、送付費用を使いましたとか言いながら返して、確かに繁雑だと思うんですが、もう戻さないという、出し切りになってしまうわけですね。

▲ そうですね。足りる場合、足りない場合というのは、多少いろいろあるとは思うんですけれども、標準的な場合では、大体こういうことになるんじゃないかと考えて、手数料に含ませることになると思われます。

○ この訴訟費用という項目と手数料という項目と、それから弁護士費用の3種類あって、おっしゃっているように簡素化という軸でとらえられるのが、いわゆる訴訟費用の部分、これは一体何に対応しているのか。その合わせるポイントが、簡素化というのは、要するに使いやすくなればいいわけで、コストとの見合いというのは関係ないわけだから、おっしゃるように、コピー代とかそういうようなもので考えるのか、それとも、単純にすればいいのかという問題をきちっと言わないといけないと思うんですよ。いわゆる取らなければいけない費用は何なのかということですね。あるいは、お払いしなきゃいけない費用は何かということの基準がわからないんです。何が高くて何が安いかということ。そこの数の簡素化ということと、費用負担額というのはいっしょにした方がいいと思うんです。あと、印紙という支払い方法も、必ずしも簡便なものでもないんじゃないか。自治体などを見ていますと、印紙はいろいろ不人気であるということもわかっていますし、どういう形が最も使いやすいいかということも考えないといけない。訴訟費用やなんかは、私の想像の範囲を超えるんですけれども、裁判所のサービスを受けるときに支払う訴訟費用、これは誰ががお払いになるんですか。

▲ 幾つか分けないといけないんですけれども、訴訟費用といったときに、費用といった部分については、基本的には、裁判の判決の後で、例えば、相手方の被告の負担とするとなった場合に、相手方から取るわけです。そのとき何を取るべきかというときに、取りたいのに、取るときに細かすぎて見合わないと。だったら、例えば、書記料とか、筆記の対価みたいだったんですけれども、それは今の時代ではもう要らないんじゃないかと。そうなると、そこの部分はなくしてしまった上で、ある程度まとまった金額が取れるものがありますね。例えば、旅費などはかなり掛かる可能性があります。それについては、一定の割合で、簡単に計算できるものを取り返すということができる。これは当事者同士のやりとりの問題です。

○ それは、さっきおっしゃったような基準でということですか。

▲ 先ほどのような形で考えてはどうかというのが一つの考え方、アイデアです。

○ グルーピングすると、何が取れると考えているんですかね、請求する者としては。交通費ですか。

▲  交通費とか、証人とか鑑定に要した費用です。これは何十万と掛かる可能性があります。それを全面勝訴して相手方が全部負担となれば全部取れるということはあると思う。このような費用も回収できなくなるというのは問題ではないかと思います。

○  要するに、被告側が、社会的ペナルティーコストとして、その分を上乗せしてということですか。

○ ペナルティーと言うかどうか。

○ 根拠がわからないんです。

○ 訴訟費用というのは、原則として、原告なら原告、被告なら被告が自分で立て替えて支出しているんです。納める先が裁判所であったり、あるいは自分が使ったりしてしているのを、事件が終わったときに、原告と被告がどういう分担で精算するかというその問題なんです。その手続を簡素化しようという問題と、訴訟費用にはどんなものを入れるべきかとという問題だろうと思うんです。実際問題として、訴訟費用として大きいのは、訴え提起の手数料と鑑定費用で、あとは、証人や当事者等が遠くに居住しているときの旅費・日当等です。

○ 訴え提起の手数料は、今、簡素化の対象になっていないわけですよね。これは従来どおりですよね。

○ これは、資料1の方の関係です。

○ 例えば、別紙3−3の一番下にあるような、路程賃などという計算を、今後も続けるかと言われれば、多くの人は、ここまでやって4,476円、大きな金額ではありますけれども、こういうことは、もっと丸い数字でいいのではないかというのが、最高裁から出ています。
 今、郵便切手を買って持っていくんですが、組合わせが決まっているんですね。私も詳しく知りませんが、80円切手が何枚とか。それが噂によりますと、裁判所ごとによって違うんだという話がありまして、もちろん、実情によって違うんだと思うんですよね。裁判所によって違う理由はあるんですが、しかし、そういうのはどうか。そして、先ほど委員から話もありましたけれども、使わなかった場合、裁判所から返ってくるんですけれども、80円切手1枚を取りにこいというのもどうか、そういうことをどう考えるかということですね。この点に関しては、国によっては、手数料に組み入れているところもあるようだということですから、アイデア自体としては、別におかしないものではない。ただ、それを日本が採用すべきかどうかということです。

○ 今は書記官の処分で費用額の確定手続をやっていますが、昔は裁判官の決定手続でやっていました。これは本当に大変なんです。本当に大変でして、従前の件数だから処理ができているんですけれども、これが相当増えたら、本来の裁判事務にも影響するようなそういう実情なんです。ですから、そこはよく考えていただきたいんです。もう一点、1円の単位まで、かかった費用は相手から取り立てたいというのが、裁判所を利用する国民の望んでいるところかというと、多分そこは違うんじゃないか、大枠でとらえる必要があるんだけれども、余り細かいところは考えなくていいんじゃないかと思うんです。

○ 考えなくていいと思うんですけど、そういう人もいるかもしれない。そこを一々制度的に組み込んでしまうと、ねばならないというか、話し合いをしなきゃならないということになるかもしれないから、そこを何か柔軟にやった方がいい。誰が考えてもつまらない計算をするのは、これから司法サービスを使いたい方から見るとばかばかしくて、おかしいようなものはやめればいいじゃないかと思うんです。
 大体、こういうところで議論しなきゃ変えられないということはおかしい。

○ おっしゃるとおりだと思います。やはり、従前の訴訟費用額確定手続などを見ますと、非常に緻密に構成されているんですけれども、余り理屈を追って地道に制度を構築しても、おっしゃるとおりで、使われないような制度はないのと同じですから、そこは思い切って変えていただくということで、裁判所の方から説明があった合理化の一つの方向性が示されましたれども、一応、説明自体も合理的な説明になっていると思いますし、これによった場合の結果もそれほど不都合ではないという気がしますので、是非そういう方向で検討していただきたい。なるべく使われるということなんですが、一つだけ、資料3の地方裁判所における申立件数が非常に少ないんですが、ちょっと気になるのは、今、こちらで御紹介があったような簡素化をやったときに、本当に件数が増えるかどうかという辺りはよくわからなくて、これは、直接弁護士の先生に、どんな印象を持っておられるか、ちょっと聞いておきたいなという気はしていまして、もし、よろしければ。

○ 私は、更に資料までお願いしたいと思うので、訴訟費用を請求するときに判決で終わった事件ですね。16万件全部が対象になるわけではないので、判決がどのくらいなのか、和解ではどのくらいなのかという、結論だけでもいいんですが、地裁と簡裁のがわかればある程度見当がつくのかなというのが一つです。もう一つは、私ども、一般的には、判決をもらうときには、取れない事件が多いと思っています。だから、本来の請求も取れないのに、訴訟費用どころじゃないという発想が多く、それで増えないということもあるんですけれども、判決と和解の数を教えていただければありがたいと思います。

□ では、資料3から資料1の方に移りまして、こちらは、また非常に大きな提案がございます。順番にさせていただきますと、第1の1はこのとおりですが、2ですが、「低額化の必要な範囲」。これ司法制度改革推進計画の方でスライド制を維持しつつという大きな枠を向こうが設定し、その中で必要な範囲で低額化を行う。その必要な範囲というのはどの辺りかというのを、今日いただいたいろんな資料の中から考えていかなければいけいなのですが、そして、それが同じページの3に必要性の考え方、問題の所在ですね。平成4年、昭和57年と過去の改正のときと比べて物価水準がどうなのかとか、いろんなことを考えるというところですが、まず、この3の辺りで、低い方にするということ。どの辺りを低くするのか。何百億円という高額な訴訟を低くするのか、それとも100万とか200〜300万辺り、個人として請求するのは、損害賠償などは1億円くらいいってしまうんですが、その辺りのことをターゲットにするのか。少額訴訟は後にしますが、その辺りの御感触は。

○ いろいろ議論自体がそうなんですが、こういう形で低額化の必要の範囲をいきなり聞かれても、なかなか細かなところまで、一人ひとりが十分に検討して考えているわけではなくて、もともと、ここでは大きな方向性を示したいということがありますし、先ほど委員の方からも、大きな方針としては高額なところを少し抑えてほしいという話もございましたが、そういう議論はここでできると思うんですけれども、それから先の話になりますと、恐らく、かなり技術的な考慮も必要でしょうし、いろんな資料にも当たらなきゃいけないでしょうし、相当に時間的にも集中してやらなきゃいけないとなってきますと、ここで低額の必要な範囲をいきなり抽象的にと言われてもなかなか答えにくくて、大きな方向性を示していただいたら、事務局の方で一度具体的な案を示していただいて、我々に、こういうことで考えましたと説明していただいたら、それを基に議論するという方向ではどうでしょうか。

□ 時間も迫ってまいりましたから、そういうことで今日は認めていただければありがたいんですが、さっき費用の資料が出てきましたけれども、今は500円ごとに上がるんですね。

○ これは、誰が決めたんですか。

□ 法律で決まっているんです。そして、今、二人の委員から話が出ましたが、その辺の刻み方なども含めて、負担感のありそうなところをターゲットにして、どんなものが考えられるのかを事務局に検討してほしいということですので、それでよろしいでしょうか。事務局としては、言われたら引き受ける覚悟はあるということでしょうから。

(各委員了承)

● 努力します。

□ 次に、資料1の1枚目の一番下の「少額訴訟の定額制の導入等」、ここは技術的には相当難しいことがありそうですが、委員も言われましたように、技術的なところはともかくとして、方向性としてはどうなのか。現在では30万円以下の金銭請求ですが、それすらスライドで上げていくわけですね。そこを定まった額にするということ、ここは御感触はどうでしょうか。一応30万円という現行法で考えましょうか。そこ自体が動く可能性があるんですが、一応30万円とする。5万円を請求するのと、30万円を請求するのと、今は申立ての手数料は違うんですが、5万円と30万円で、定まった額といっても2種類くらいにしていいんですが、極端なことを言うと、5万円も30万円も同じ手数料、それは国民の感覚として、それくらいはいいのか。幾らになるかにもよりますけれどもね。

○ 同じ金額というのは、何が同じ金額なんですか。

○ 印紙代が上がってくるわけです。それを30万以下の訴訟なら全部、幾らでもいいんですが、1,000円とか1,500円とか決めてしまう。

○ 一律に決めてしまうということですか。

○ そうです。

○ 今は、徐々に上がっていくんですか。

○ 例えば、5万円だと500円なんです。30万だと3,000円なんです。その間が5万ずつくらい区切りがあって、1,000円、500円という細かいのがあるんです。

○ わからないのは、基準は何かということなんです。つまり、同じ労力が掛かっているのに、何か訴訟の規模が小さいから大きいからと言って、それによって、そういった金額を変えているけれども、実際の手続上の問題は同じように掛かってくるわけですよね。そうしたら、同じように高めに取って、払えない人の場合にどうするかという考え方はどうかなと思うんです。

○ スライド制を取るということは、司法制度改革推進計画でも決まっていますから、それは、やはり、金額によって裁判所側が出すいろんな意味のコストは上がっていくだろうという前提を、これは実証されていないんですが、そういう規定を置いたということです。ただ、少額訴訟は、どんな金額のものでも一回でやると決まっていますから、一回でやると決まっている以上は、そこで裁判所が支出するいろんな意味のコストは同じだろうと見ても、理屈の面ではおかしくはないんですが、しかし、それは、スライドしていくのが今までの日本のやり方でしたから、そこにちょっと異質なものを入れるという、そこに行く方が利用者から見てアクセスに便利なのか、それとも、自分は8万円を請求したから幾らだと一々計算して、間違えると、裁判所の人たちはそう言いませんが、ちょっと怒られるような感じがしたりとか、払い過ぎたときにどうなるのか、返してくれるのかとか、その辺り、少額訴訟なら、一定の金額としてしまえば、そういうことはない。しかし、例えば、5万円と30万円と同じでいいかと言われたらどうかと。  これも、先ほど委員から提案がありましたように、事務局にいろんな長短を考えてくれということでどうでしょうか。

○ 先に材料出してもらって、それを検討するという方がいいですね。

(各委員了承)

□ 時間延長のために事務局の負担が増えるということもありますが、今日の議題の4番、5番、訴え提起の手数料と訴訟費用の確定手続の検討、いろんな問題を一緒に議論いたしましたが、もう時間も超過しておりますけれども、何か御意見や、事務局にこういうこともやってくれという御要望がありましたらどうぞ。

○ これは確認なんですけれども、先ほども訴訟費用額の確定の場合に、簡素化することは時代の流れに沿っていると思うんですけれども、お示しいただいた資料3の別紙2ですが、これを見ますと、通常数か月程度と書かれているんです。これは、簡素化することによって、この期間も短縮されるんでしょうか。

▲ そのようになると思っております。ただ、今言ったように、旅費の一つを取っても、古い時刻表を集めてきたりとか、非常に時間が掛かりますので、そういった意味では短縮化されるだろうとは考えています。

○ わかりました。

○ 後で記録を見ればすぐできる。簡素化していればそうです。そこまで日本ですぐいくかどうかですが。

○ 先ほど委員からお話がございました印紙の点ですが、現金で払えるように是非していただきたい。この前も、ある訴訟で、2億円貼用印紙を貼らなくちゃいけないということがありました。印紙は10万円までしかない。それを貼るのに、買いに行ったら、それを売っていない。事務の者が半日くらい掛かってぺたぺた貼らなくちゃいけない。一体何のためにこういうことをやっているのかとなります。その辺りも検討していただければと思います。

▲ いろいろ検討したいと思いますが、現金納付の手間とか、高額の場合は危険ということもありますので、こういったものを含めて考えていかなければいけないと思いますので、将来的には、例えば、オンライン納付なども可能じゃないかと思いますけれども、そういったことも含めて検討していきたいと思います。

○ 先ほどの少額訴訟の定額化の問題と、もう一つのスライド制のもの、これはどういう考え方で決まっているのかということ、要するに、スライド制の方というのは、成功報酬ではないけれども、幾ら最終的に取れたというところに連動して、率で決まっていくという考え方は何なのかということです。つまり、こういうものは、金額ベースで取引がされているんだから、金額に応じて一部を払えという考え方なら、その取引ベースで決めるというのも一つの考え方とは思うんですけれども。それとも、あるいは可処分所得とか、払う方が幾らくらいなら払えるという一つの生活水準のレベルに合わせてものを考えるのか、ここがきちっとしないという、考え方がわかりにくい。
 少額の方は、これは言わばインフラみたいなもので、余り一々やるよりは、簡便にサービスを買っているというか、国民の方がトラブルに巻き込まれちゃったので、何とか早く解決してほしいという意味でのサービス料という形にすれば、一律でもおかしくないと思います。そこは、どこまでがインフラで、勿論、一律にするのも変と言えば変で、そこも何を基準に決めるかということが、議論として難しい。組み合わせはいいと思うんです。こういう裁判所のサービスというのを、国民の方から見て、利用するんであれば、サービス料を払うべきなんです。だって、裁判所の方の労力を使っているわけだから、ある程度、どちらにしても。それは、一つ重要なポイントになると思うんです。そういう部分と、成功報酬じゃないけれども、うまくいったらという部分と連動している部分がありますよね。そこの組み合わせのところがうまく組み立てられるのかなと思います。

○ 今のお話をお伺いしながら気がついたことですが、お金を取り戻すというような裁判、例えば、損をしてしまった件というのは、そういう考え方が成り立つんではないかと思うんですが、例えば、制度の欠陥ですとか、自分自らが利益を得ることを目的としていない訴えというのもございますね。そういうものに関しては、むしろ、社会的な提案にもなるわけですので、手数料を免除してもいいんじゃないかという発想も必要じゃないかと思われるんです。濫訴が現状においてはどうなのかという状況がよくわからないので、濫訴は余りないんじゃないか、裁判自体の利用度も余り高くないし、ないんじゃないかと思うんですが、そのための歯止めとしての印紙代という考え方があります。それからまた全く違う、現実の自らの利害関係に絡んでの裁判、そういう場合の印紙代とそうではない場合の差止請求ですとか、社会的な利益を追及するための提案的なものに関する、個人にはお金が入ってこないようなものは、別個に体系をつくるべきではないかという気もするんです。

○ 個人にお金が入ってこない例の典型的なものは、株主代表訴訟であるとか、住民訴訟ですね。

○ ソーシャルなものですね。

○ 社会的な問題と、お金は会社に入って自分に入ってこないもの。これは8,200円になっている。それ以外に委員のおっしゃったのは、本当にこれは社会的だと本人が思っていても、ほかの人からすると、反社会的なことを請求していると、それを決めてくれるわけですから、これが社会的だから、これが反社会的だからという考え方は難しいのかもしれませんね。やはり、自分の利得ということで判断をしていかないと。

○ 自分の目標とする価値観の追求という、強いていうならそういうことになるかもしれませんが、そういうことによって初めて問題点が明らかになる場合もあると思いますので、一概にお話、そのとおりの面もあるかと思いますけれども、同意しかねる面もあるんです。

□ ほかに、次回までにいろいろ委員各位もお考えいただきますが、事務局の方でここを検討しておけというのがございますか。
 では、次回以降のことについての説明の方に入りましょうか。資料13です。

● 次回以降の日程については、資料13で開催予定をお伝えしてございますけれども、第6回の6月27日なんですが、弁護士報酬の敗訴者負担の問題点の取扱いについて御検討いただけるように、ある程度事務局の方でこれまでの議論に基づいて論点を示して、御検討いただけないだろうか。今日、大きな方向性でということがありましたので、手数料と訴訟費用額確定手続に関しては、事務局で今後取り組みたいと思う大きな方向性を示して、中間的なとりまとめ的なものをお願いできればと思います。
 第7回の7月17日の検討会におきましては、事物管轄の問題もこれから議論の対象になるということから、簡易裁判所の在り方等につきまして、裁判所や弁護士会、それから日本司法書士会連合会から御意見をいただいて、そういった御意見を踏まえて、御検討をお願いできればと思っています。
 以上が、今のところの予定です。

□ 盛りだくさんですね。費用関係、敗訴者負担の関係、管轄の関係があります。
 では、今日は時間を超過いたしましたが、どうもいろいろな御意見ありがとうございました。今日はこれで閉会といたします。