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司法アクセス検討会(第6回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時
平成14年6月27日(木)15:00〜17:15

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、西川元啓、長谷川逸子、長谷部由起子、原田晃治、飛田恵理子、藤原まり子、三輪和雄、山本克己(敬称略)

(事務局)

山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官

4 議 題

(1) 簡易裁判所の機能の充実等について(法制審議会の審議状況)
(2) 訴え提起の手数料、訴訟費用額確定手続について
(3) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて
(4) 今後の日程等

5 配布資料

資料1 簡易裁判所の事物管轄の変遷
資料2 民事訴訟法改正要綱中間試案(法制審議会民事・人事訴訟法部会)
資料3 訴え提起の手数料、訴訟費用額確定手続に関する議論の整理(案)
資料4 訴え提起その他の手数料に関する資料
資料5 平成14年6月25日最高裁判所総一第194号高等裁判所長官、地方、家庭裁判所所長あて事務総長通達「証人等の日当の支給基準について」
資料6 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについての当面の検討課題
資料7 諸外国における弁護士報酬の敗訴者負担制度

6 議 事(○:委員、●:事務局)

 (1) 簡易裁判所の機能の充実等について

事務局から、資料1及び2に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 資料2の簡易裁判所の機能の充実のところに、和解に代わる決定という制度についての記載があるが、この制度は、少額訴訟事件に限らず、簡易裁判所の事件一般を対象とするものか。

● 少額訴訟事件に限定されないものと承知している。

○ 少額審判手続では、第三者の傍聴は可能なのか。

○ 少額審判手続の具体的な内容は検討が続けられているところであり、議論をしなければならない問題である。一般的には、第三者が審判を傍聴することはできない。

○ 法制審議会では、少額訴訟の訴額の上限に関しては、具体的議論はまだされていないということだが、簡易裁判所の管轄の拡大と少額訴訟の訴額の上限の引上げの連携はどうなるのか。

○ どこかでは連携するのだろうが、司法アクセス検討会としては、簡易裁判所の管轄拡大の検討を進めることになるのだろう。

○ 簡易裁判所の管轄拡大の理念と、少額訴訟の訴額の上限引上げの理念とは異なるのか。

○ 極端な話だが、少額訴訟の訴額の上限を簡易裁判所の管轄の上限と同じにするという考えもあり得る。このような場合は、簡易裁判所の管轄拡大の理念と少額訴訟の訴額の上限の引上げの理念とは違うということになるのだろう。

 (2) 訴え提起の手数料、訴訟費用額確定手続について

事務局から、資料3から5に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 訴額が高額な訴訟のアクセシビリティを高めるため、高額訴訟の提訴手数料の引下げを検討すべきである。訴額が低額な訴訟の提訴手数料については、現在までの経済指標の動向等を考慮し、アクセスを阻害しない範囲で、引上げも検討対象となるのではないかという気がする。

○ 資料によると、提訴手数料については、訴額が1,000万円を超える部分については平成4年に改正されているが、訴額が低い部分では、昭和46年以来改正されていないところもある。

○ 少額訴訟の訴額の上限は30万円だが、その範囲内でどの部分の事件数が一番多いのか。

● 今の段階では資料がないが、ご質問にお答えできるような資料があるかどうか、調査させていただきたい。

○ 訴額が低い訴訟の中には、かなりの数の債権回収のための訴訟が含まれていると思うが、訴額が30万円までの事件のうち、どの部分の利用が多いのか気になったので質問した。

○ 消費者が抱える問題に関する数値データがあるので紹介したい。平成13年度の消費者が被害を受けた契約の契約金額総額は4,430億円、支払総額が1,100億円である。被害金額は個々のケースで違うと思うが、平均の契約金額は118万円、平均の支払金額は86万9,700円くらいである。平成9年度の平均被害金額は150万円くらいだった。どのくらいのケースが訴訟に持ち込まれたかは分からないが、参考までに紹介した。
 医療過誤訴訟や交通事故の訴訟など、訴額が高額になる訴訟があるので、そのような訴訟の手数料は下げた方がいいのではないか。訴額が低額な訴訟の手数料について、引き上げていいとは申し上げていないが、もっときめ細かく考えていかなければならないのではないかと思っている。
 先ほど、少額審判の傍聴について質問したが、公開の場でないところで裁定されるのは問題ではないか。

○ 訴え提起の手数料が高すぎるために訴訟を利用できずに泣き寝入りになるという事態はあってはならないと思う。他方、訴訟利用者に応分の負担をしてもらうのも当然のことで、どのあたりに調和点を求めるのかが問題だと思う。訴額が100万円の場合の手数料は8,600円、訴額が150万円の場合の手数料は1万2,100円、訴額が200万円の場合の手数料は1万5,600円である。今の経済情勢からいえば、一般的には、この程度の額の手数料であれば、手数料が高いために訴え提起をためらうということはないのが実情ではないか。訴額が低い部分の提訴手数料を引き上げるかどうかはさておいて、この部分の提訴手数料が高すぎるために訴えの提起をためらうということは一般的にはないのではないか。むしろ、問題は、訴額が5万円上がる毎に手数料が上がるという点で、計算が煩わしく、手数料額を分かりにくくしているところにあるのではないか。低額部分の引上げの問題をまず解消して、その中で、全体として落着きのいい手数料水準を定めるという進め方がいいのではないか。

○ 庶民的な部分を安くするのがいいのではないか。手数料は、もともとは濫訴防止のために設けられたと思うが、司法へのアクセスを拡充するために、少しでも安くできればと思う。
 また、例えば大気汚染の問題など、多数で訴訟を起こす場合の問題もあるのではないか。人数分の手数料となると膨大な額になり、原告の数を絞らなければならない場合がある。

○ 定額の手数料については、どう考えるか。300円、600円といった額になっているものがあり、昭和55年に定められたままになっているのだと思うが。

○ 現在、法制審議会で、差押禁止財産の上限額の引上げが検討されている。上限額は昭和55年に定められたままになっているが、経済指標の動向等を考慮して引上げをしないと、最低限度の生活が保障できないという面がある。手数料も、経済指標の動向と全く無縁であるとは言えないのだろう。20年以上も改訂されていないということだと、利用者と非利用者との負担の公平という点から問題がある。現在までの経済指標の変動等を考慮すれば、例えば、提訴手数料で、訴額が30万円までという仕切りは、制度改正当時の経済指標を反映したものと思われるが、低額な部分が細かくなりすぎてはいないかという問題があるので、見直していく必要があるのではないか。定額制の手数料についても、一般的な感覚として、300円、600円という額は、実態に合わなくなってきているのではないか。

○ 定額の手数料のうち、破産申立てについては考慮してほしい点がある。自己破産の申立ての場合、手数料は600円であるが、それ以外に予納金の納付が必要になる。東京地裁の場合、予納金の額は、同時廃止事件で1万4,100円、少額管財事件になるとプラス20万円である。600円が高いとは思わないが、引上げはしないでほしい。もう一つ、家事調停の申立ての場合、申立てをする人のほとんどが経済力のない女性なので、引上げはしないでほしい。

○ 大会社が破産しても自己破産の申立てが600円というのはどうか。債権者申立ての破産の場合、申立て手数料は1万円だが。

○ 会社の破産の場合は、手数料はともかく、予納金の額がかなり高くなるのではないか。

○ 確かに、会社の破産の場合は管財人が付くので予納金が高くなるが、予納金は国庫に入るお金ではない。管財人報酬などに充てられるお金である。

○ それはそうだが、負担する側として見れば、全体としてかなりの額になるのではないか。

○ 予納金の分割納付を認めるべきだという話にもなるのだろう。

○ 先ほど、アクセスを阻害しないようにという話があったが、アクセスを阻害しているかどうかをどのように測るのかが問題である。訴えを提起する場合、提訴手数料だけでなく、いろいろな要因が絡んでいると思う。提訴手数料が上がった場合、それがどの程度アクセスに影響を与えるかは分からない。一つの資料にしかならないかもしれないが、過去に手数料を改定したときにどの程度訴訟事件数が変わったかを資料として出してもらって検討したらどうか。

○ タクシー料金と手数料を一緒にしてはいけないのかもしれないが、タクシー料金の値上げがあると、一時的には利用が減るが、すぐに元どおりの利用実績に回復する。

○ 提訴手数料の低額化に関して、20年以上変わっていない部分もあり、その辺は少し考えてはどうか。ターゲットを絞って考えてはどうか。低い方の部分と、委員からご指摘のあった刻みの問題、つまり5万円ごとに500円という定め方でいいのかという問題もある。物価水準も、それが決定的基準とは言えないが、一つの基準であるというあたりが各委員からのご意見だということで、事務当局に検討してもらってはどうか。

(各委員了承)

○ 少額訴訟の提訴手数料については、司法制度改革審議会意見では定額制も含めて検討とされているが、いろいろな問題点があるようなので、事務局においても検討会においても引き続き検討するということでよいか。

(各委員了承)

○ 提訴手数料の納付方法について、印紙以外の納付方法について、具体的に検討に入ってもらうということでよいか。裁判実務との関係でできないことはあるが。

○ 従来の印紙による納付方法は廃止しないでほしい。いちいち郵便局で振り込んで、領収証をもらわなければならないということになると面倒である。

● 印紙による納付を廃止するということではなく、印紙による納付の他に納付方法を設けてはどうかという意味である。

○ 事務局から説明のあったとおりの意味であり、そういうことでよいか。

(各委員了承)

○ 送達費用の手数料化について、引き続き検討するということでどうか。

(各委員了承)

○ 訴訟費用の範囲の見直しについて、理論的にはかなり大きな問題に関する法改正になると思われるので、事務局でもう少し理由を考えてもらって、検討会の場で議論するということでよいか。

(各委員了承)

○ 当事者等の旅費等の計算方法について、結論を急がずに検討させてもらうことでよいか。訴訟費用額確定手続の簡素化について、相手方への催告の要否などもう少し検討するということでよいか。

(各委員了承)

○ 手続の簡素化については、ユニバーサル・デザインの発想で、多くの人が使いやすいようにということを視野に入れてもらって検討してもらいたい。

 (3) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて

事務局から、資料6及び7に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担について、司法アクセス検討会での検討はどのあたりまでか。民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟など様々な訴訟があるが、どの範囲になるのか。

● 民事訴訟を念頭に御検討いただきたい。行政訴訟については、民事訴訟の一般原則によるとされているので、行政訴訟にも影響があることも念頭に検討いただきたい。刑事訴訟は範囲外である。民事か行政かで論点を絞り込むことは考えていない。

○ 建築の仕事をしている立場から意見がある。公共建築にあっては、発注者は行政だが、利用者は市民である。市民の生活を豊かにするために作るのであって、地域の文化、歴史を反映したものがよく、そういうことを知らない東京から来た建築家が何かするのはどうかと思う。私の経験では、住民の意見で公園にゴミ箱を設置しないことにし、住民の管理に任せたら、奇麗な状態を保っているという例もある。市民の知恵を集めて建築物を造っている。司法も同じではないか。司法も、当事者が議論を戦わせ、裁判官が判断するという構造が、建築でのコラボレーションと同じである気がする。そういうところに勝った負けたというのは違和感がある。勝ち負けで決着しない問題もあるのではないか。
 シックハウス病の例では、裁判で負けた例が積み重なって、ホルムアルデヒドの測定義務というものができた。問題が司法の場に出ることによって政策ができていく面がある。私の関係する分野では、相手方は行政や企業であり、負けた場合に相手方の弁護士費用を負担するというのは考えられない。問題提起をする場合は、最初は個人対行政・企業である。
 アメリカには片面的敗訴者負担の制度がある。一律に敗訴者負担ということになるのかどうか、私には分からないが、いろいろな負担の在り方があってもいいのではないか。

○ 今の意見に共感するところがある。近年目覚しい変化をとげた分野では、司法も立法も変化に追いついていない。我が国は諸外国に比べて訴訟が多くないのではないか。その原因の一つとして、司法が世の中の動きに適合してこなかったということが考えられる。我が国の発展のためにも、司法へのアクセスのハードルは低くしてほしい。
 司法制度の抜本的見直しは時期に適ったものである。敗訴者負担制度は、いろいろな立場の人の意見を聴いて慎重に検討しないと決められない問題である。私は、他の店が原価を割るような値段で商品を売るため、経営が苦しくなっている中小企業の人の話を聞いたことがある。独占禁止法上の差止請求をしようと思っても、多額の担保提供が必要となるる。資料を集めようと思っても、企業秘密ということでできない。裁判を起そうにもお金がない。儲けている人を困らせようと思って差止請求などをするという場合は問題だが、そういう意図が無くて生活に関わる問題を抱えている。お金も情報もなく、その上相手の弁護士報酬の一部の負担まではとてもとてもという話である。法秩序を形成するための裁判を萎縮させるのは社会の発展には良くないと思う。いろいろな人の意見を聴くためにヒアリングをしてはどうか。

○ 資料6にある検討課題のうち、弁護士報酬の一部をプロセスに必要不可欠な費用と認めるかどうかが十分に議論がされないまま先に進むのはどうか。今、資源が乏しい中で訴訟を提起し、それが最終的には社会的なプラスに転じたという例を提示していただいたが、まず、弁護士報酬の一部をどう位置付けるかが問題である。敗訴者が負担するのは弁護士報酬の一部とされている点も重要である。そして、敗訴者負担制度を導入しない範囲の検討も重要である。資料として配布された諸外国の制度を見ると、様々な考え方があると思う。始めから訴訟を促進するとか、抑制するとか、チャンスをそぐといった議論に行く前に、弁護士報酬の位置付けを考えるべきである。弁護士という社会的資源を両当事者が平等に活用する権利があり、チャンスがある。弁護士という資源へのアクセスを最初から制約して裁判に臨むよりは、むしろ、利用可能な資源をなるべく有効に両者が使いつつ、ことを進めるのが有益ではないかという気がする。その上で、敗者も勝者も、どこまでを自分の責任で負担できるのかという議論が必要なのではないか。裁判というプロセスに勝敗の概念を持ち込むことに違和感を覚えるという委員のご意見は理解できる。しかしながら、裁判に投入できる資源にはどのようなものがあって、その資源を活用することにどれだけのメリットがあるのか、それを全部判断してもらって、判決の時点で遡ってそのプロセスの中でかかった費用、この費用は本当にかかった費用の一部になると思うが、その費用を考えるべきではないか。その費用が大きいか小さいかという問題はあり、裁判官が個々のケースごとに判断するという方向になるのかもしれないが。

○ 司法制度改革審議会の意見書では、弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきであるとされている。審議会の意見を実現するために検討を進めるべきであって、それに反する議論をすべきではないという意見を述べてきた。弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関しては、審議会の意見には、これを一律に導入することなくという一文が入っているが、この点に関しては、私は審議会の意見とは違う意見である。もっとも、審議会の意見に反する議論はできないのであって、審議会の意見に沿う議論をすることになるが、先ほどから出ている、政策の形成に役立つ訴訟ができなくなるという点に関しては、敗訴者負担の問題ではなく、別の訴訟補助措置などを本来検討すべきなのだろう。ただ、このような検討には時間がかかるので、敗訴者負担の中で検討していかなければならないと思うが、敗訴者負担制度導入の根拠は、訴訟で勝った者が権利を実現するために生じた費用を負けた者から回収することができるようにするという、フェアーな原則そのものであって、当たり前のことではないか。消費者の立場に立っても、例えば、20万円の裁判を起こしたいが弁護士報酬がかかるので裁判を諦めて泣き寝入りするという場合でも、勝訴する確率が51%以上あれば、勝訴すれば相手方から弁護士報酬を回収できるのだからということになって、訴訟へのアクセシビリティを増す効果がある。これが1,000億円の訴訟となれば、弁護士費用がいくらかかろうとも弁護士に頼んで訴訟をしなければならないということになると思うので、アクセスという面からはあまり影響がないのかもしれないが、比較的に少額の請求では、勝ったときは弁護士費用を相手方から取れるということによって、訴訟が容易になる効果があるのではないかと思う。負ける確率の方が高いが将来の役に立つことを考えて訴訟をするべきだという類型の訴訟としてどのような訴訟があるのか、考えていかなければならないが、この場で議論できるのか、個別の実体法で考えていくべきなのか、難しい問題である。法律扶助とも密接に関連するのだろう。

○ いわゆる政策形成訴訟に関して意見がある。政策の形成に役立つ訴訟では、原告だけが政策形成に役に立っているわけではない点に留意する必要がある。原告が訴訟の場で理屈を立て、被告の側も専門家である弁護士を雇って理屈を立て、それらを訴訟の場で闘わせることによって、あるべき規律の在り方というものが浮かび上がってくる。そして、それが法制定に結びつく場合もある。被告側も、反論する中で政策形成に役立っている。被告の役割、特に、被告が依頼した弁護士の役割を正当に評価すべきである。この点に留意して議論を進めていただければと思う。また、司法制度改革審議会意見では、弁護士報酬という言葉が使われているが、有償の訴訟代理は弁護士以外にも広がっており、弁護士に限定して議論するのか、広く有償の訴訟代理人一般に広げて議論をするのかも検討すべきだと思う。

○ 政策形成訴訟では、原告に提訴をためらわせることが一番の問題である。原告に提訴を促す活動が重要である。相手の弁護士の費用も負担する可能性があると説明して、原告を提訴に導くことは不可能である。そういう意味で、政策形成訴訟における被告の弁護士の役割を評価すべきだという委員の視点には疑問がある。また、弁護士報酬敗訴者負担制度を導入する範囲と導入しない範囲は、同時に議論すべきではないか。それと、司法制度改革審議会意見には、提訴を促進する場合と萎縮する場合について理念的には書かれているが、具体的な事案を念頭に議論すべきではないか。訴訟保険の検討も重要になろう。敗訴者負担制度についての国民の理解に関連して、幅広く意見を集めてもらいたい。

○ 片面的敗訴者負担制度は合理性がない。先ほど述べたとおり、被告の弁護士の役割は重要であり、敗訴者負担制度の導入か、現在のままかのどちらかになる。原告に資力がない場合は、法律扶助の問題だろう。弁護士報酬を訴訟に必要な費用と認めて当事者間で負担するという問題は、対立当事者間の利害調整の問題である。そういう場面に、公益性という理由を持ち出して良いのか疑問である。敗訴者負担制度を前提とすると、本来、勝訴者は敗訴者から弁護士報酬を回収できるのに、公益的訴訟であるという理由で回収ができないのは説明がつかない。勝訴者に、公益のためにあなたは犠牲になりなさいと言っているのと同じである。本来は外部財源の問題と位置付けるべきであって、当事者の利害調整の問題の中で解決するのはかなり難しい。公益だからという理由で、勝訴当事者の権利が奪われるのは、理由説明が難しい。

○ 当事者が対等とは言えないことを考慮すべきである。萎縮するのは困窮者である。資力のある者、国、地方公共団体には、萎縮的効果は考えられないだろう。イギリスでは、公益的訴訟の費用を公共財で負担する制度があると理解している。アメリカは、法律扶助が貧弱なので、片面的敗訴者負担という負担制度を設けたのだろう。

○ 今の意見は、弱い者が訴訟に勝ったときは相手方から費用を取れるが、弱い者が訴訟に負けたときには相手方に費用を払わないという理屈になるのか。

○ 片面的敗訴者負担というのは、そういう理屈である。実際の制度にはいろいろと条件があるが、基本的にはそういう理屈である。

○ 有償の訴訟代理人の報酬という意見があったが、とりあえず、弁護士がその代表ということで、弁護士報酬という言葉を使って話を進めさせてもらうが、司法制度改革審議会意見にある、弁護士の報酬を訴訟に必要な費用と認めるという点について、どう考えるのか。かつては、必ずしも必要とは言えないということだったのだろうが、現在では必要だという気がする。この点について争いがあると、ここから議論していかなければならないと思うが、現在では、弁護士への報酬は訴訟に必要な費用だという認識に対して、異論はあるか。

(各委員異論なし)

○ では、弁護士の報酬は訴訟に必要な費用という共通認識から出発して、制度を設計し、先ほどから議論になっている、例外をどうするかという手順で議論を進めてはどうか。司法制度改革審議会意見も、例外を検討すべきとしている。
 ところで、ヒアリングをしてはどうかという意見があった。ヒアリングを提唱した委員に伺いたいが、具体的に、誰からヒアリングをしたらいいと思うか。一部の人に限られてはいけない。広くいろいろな階層からの意見をいただくべきだということになろうかと思うが。

○ 委員を通じて国民の意見を検討会に伝えるという方法もあるが、不正確に伝えてはいけないし、面識のある方の範囲にも限界があるので、ヒアリングをしてはどうかと提案した。社会保障の問題で意見のある方、医療過誤訴訟に関係した人、環境問題に取り組んでいる方、消費者など多様な方が考えられる。もちろん、裁判を起す前に、お金がかかるということでやめてしまった方もいるだろう。特定のこの方というイメージはない。

○ 主として敗訴者負担の例外を考えるに当たって、そういう方々が関心があるということだろうか。この検討会の席上にいろいろな意見が配布されている場合があり、今でもそういう形で直接的に意見をいただいている。間接的に意見を承るよりはヒアリングの方がいいということであれば、文書で直接的に意見をいただくことは可能だが。

○ ヒアリングについて、もう少し具体的なイメージを固めたい。

○ ヒアリングの話に関連して、参考までに申し上げたい。法務省の審議会では、利害関係者に審議会に入っていただいている。そういう方々に入っていただいて、パイプ役になっていただいている。倒産法、会社法など、利害関係者がはっきりしている法律の場合は利害関係者に入っていただいて意見を聴きやすいが、利用者が特定の方に限られず、国民全体が潜在的利用者である民事訴訟について法改正をする場合、特定の方をピックアップして意見をいただくという方法はとりにくい。この検討会の委員は、様々な分野で活躍されている方々であり、各自の分野からの意見を検討会の場につなげるパイプ役になっていただくという方法がよいのではないか。

○ 和解する場合は、費用も各自負担ということがあると聞いている。司法のことはよく分からないが、当事者が対等ではなく、環境とか個人の生命に関わりそうな事件の場合は、一律に敗訴者の負担ではなくて各自の負担とするというような制度はないのか。そもそも、各自負担では不都合な理由は何か。

○ 弁護士への報酬は、訴訟に一般的に必要な費用だからということだろう。フランスでは、弁護士報酬の一部は訴訟費用として敗訴者が負担し、謝礼の部分の負担をどうするかを裁判官の判断に委ねている。裁判官の判断によっては、謝礼の部分は各自負担ということもあり得る。外国の制度がこうだから日本でも同じ制度を入れるべきだということにはならないが。

 (4) 今後の日程等

● 次回(7月17日(水)15:00〜17:00)は、最高裁判所、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会から、簡易裁判所の管轄の拡大という問題も含めて、簡易裁判所の機能の充実という視点からご意見をいただき、御検討をお願いしたいと考えている。

○ そのような進め方でよいか。

(各委員了承)