事務局から、資料3から5に基づいて説明がされた。
これに基づいて、次のような意見交換がされた。
○ 訴額が高額な訴訟のアクセシビリティを高めるため、高額訴訟の提訴手数料の引下げを検討すべきである。訴額が低額な訴訟の提訴手数料については、現在までの経済指標の動向等を考慮し、アクセスを阻害しない範囲で、引上げも検討対象となるのではないかという気がする。
○ 資料によると、提訴手数料については、訴額が1,000万円を超える部分については平成4年に改正されているが、訴額が低い部分では、昭和46年以来改正されていないところもある。
○ 少額訴訟の訴額の上限は30万円だが、その範囲内でどの部分の事件数が一番多いのか。
● 今の段階では資料がないが、ご質問にお答えできるような資料があるかどうか、調査させていただきたい。
○ 訴額が低い訴訟の中には、かなりの数の債権回収のための訴訟が含まれていると思うが、訴額が30万円までの事件のうち、どの部分の利用が多いのか気になったので質問した。
○ 消費者が抱える問題に関する数値データがあるので紹介したい。平成13年度の消費者が被害を受けた契約の契約金額総額は4,430億円、支払総額が1,100億円である。被害金額は個々のケースで違うと思うが、平均の契約金額は118万円、平均の支払金額は86万9,700円くらいである。平成9年度の平均被害金額は150万円くらいだった。どのくらいのケースが訴訟に持ち込まれたかは分からないが、参考までに紹介した。
医療過誤訴訟や交通事故の訴訟など、訴額が高額になる訴訟があるので、そのような訴訟の手数料は下げた方がいいのではないか。訴額が低額な訴訟の手数料について、引き上げていいとは申し上げていないが、もっときめ細かく考えていかなければならないのではないかと思っている。
先ほど、少額審判の傍聴について質問したが、公開の場でないところで裁定されるのは問題ではないか。
○ 訴え提起の手数料が高すぎるために訴訟を利用できずに泣き寝入りになるという事態はあってはならないと思う。他方、訴訟利用者に応分の負担をしてもらうのも当然のことで、どのあたりに調和点を求めるのかが問題だと思う。訴額が100万円の場合の手数料は8,600円、訴額が150万円の場合の手数料は1万2,100円、訴額が200万円の場合の手数料は1万5,600円である。今の経済情勢からいえば、一般的には、この程度の額の手数料であれば、手数料が高いために訴え提起をためらうということはないのが実情ではないか。訴額が低い部分の提訴手数料を引き上げるかどうかはさておいて、この部分の提訴手数料が高すぎるために訴えの提起をためらうということは一般的にはないのではないか。むしろ、問題は、訴額が5万円上がる毎に手数料が上がるという点で、計算が煩わしく、手数料額を分かりにくくしているところにあるのではないか。低額部分の引上げの問題をまず解消して、その中で、全体として落着きのいい手数料水準を定めるという進め方がいいのではないか。
○ 庶民的な部分を安くするのがいいのではないか。手数料は、もともとは濫訴防止のために設けられたと思うが、司法へのアクセスを拡充するために、少しでも安くできればと思う。
また、例えば大気汚染の問題など、多数で訴訟を起こす場合の問題もあるのではないか。人数分の手数料となると膨大な額になり、原告の数を絞らなければならない場合がある。
○ 定額の手数料については、どう考えるか。300円、600円といった額になっているものがあり、昭和55年に定められたままになっているのだと思うが。
○ 現在、法制審議会で、差押禁止財産の上限額の引上げが検討されている。上限額は昭和55年に定められたままになっているが、経済指標の動向等を考慮して引上げをしないと、最低限度の生活が保障できないという面がある。手数料も、経済指標の動向と全く無縁であるとは言えないのだろう。20年以上も改訂されていないということだと、利用者と非利用者との負担の公平という点から問題がある。現在までの経済指標の変動等を考慮すれば、例えば、提訴手数料で、訴額が30万円までという仕切りは、制度改正当時の経済指標を反映したものと思われるが、低額な部分が細かくなりすぎてはいないかという問題があるので、見直していく必要があるのではないか。定額制の手数料についても、一般的な感覚として、300円、600円という額は、実態に合わなくなってきているのではないか。
○ 定額の手数料のうち、破産申立てについては考慮してほしい点がある。自己破産の申立ての場合、手数料は600円であるが、それ以外に予納金の納付が必要になる。東京地裁の場合、予納金の額は、同時廃止事件で1万4,100円、少額管財事件になるとプラス20万円である。600円が高いとは思わないが、引上げはしないでほしい。もう一つ、家事調停の申立ての場合、申立てをする人のほとんどが経済力のない女性なので、引上げはしないでほしい。
○ 大会社が破産しても自己破産の申立てが600円というのはどうか。債権者申立ての破産の場合、申立て手数料は1万円だが。
○ 会社の破産の場合は、手数料はともかく、予納金の額がかなり高くなるのではないか。
○ 確かに、会社の破産の場合は管財人が付くので予納金が高くなるが、予納金は国庫に入るお金ではない。管財人報酬などに充てられるお金である。
○ それはそうだが、負担する側として見れば、全体としてかなりの額になるのではないか。
○ 予納金の分割納付を認めるべきだという話にもなるのだろう。
○ 先ほど、アクセスを阻害しないようにという話があったが、アクセスを阻害しているかどうかをどのように測るのかが問題である。訴えを提起する場合、提訴手数料だけでなく、いろいろな要因が絡んでいると思う。提訴手数料が上がった場合、それがどの程度アクセスに影響を与えるかは分からない。一つの資料にしかならないかもしれないが、過去に手数料を改定したときにどの程度訴訟事件数が変わったかを資料として出してもらって検討したらどうか。
○ タクシー料金と手数料を一緒にしてはいけないのかもしれないが、タクシー料金の値上げがあると、一時的には利用が減るが、すぐに元どおりの利用実績に回復する。
○ 提訴手数料の低額化に関して、20年以上変わっていない部分もあり、その辺は少し考えてはどうか。ターゲットを絞って考えてはどうか。低い方の部分と、委員からご指摘のあった刻みの問題、つまり5万円ごとに500円という定め方でいいのかという問題もある。物価水準も、それが決定的基準とは言えないが、一つの基準であるというあたりが各委員からのご意見だということで、事務当局に検討してもらってはどうか。
(各委員了承)
○ 少額訴訟の提訴手数料については、司法制度改革審議会意見では定額制も含めて検討とされているが、いろいろな問題点があるようなので、事務局においても検討会においても引き続き検討するということでよいか。
(各委員了承)
○ 提訴手数料の納付方法について、印紙以外の納付方法について、具体的に検討に入ってもらうということでよいか。裁判実務との関係でできないことはあるが。
○ 従来の印紙による納付方法は廃止しないでほしい。いちいち郵便局で振り込んで、領収証をもらわなければならないということになると面倒である。
● 印紙による納付を廃止するということではなく、印紙による納付の他に納付方法を設けてはどうかという意味である。
○ 事務局から説明のあったとおりの意味であり、そういうことでよいか。
(各委員了承)
○ 送達費用の手数料化について、引き続き検討するということでどうか。
(各委員了承)
○ 訴訟費用の範囲の見直しについて、理論的にはかなり大きな問題に関する法改正になると思われるので、事務局でもう少し理由を考えてもらって、検討会の場で議論するということでよいか。
(各委員了承)
○ 当事者等の旅費等の計算方法について、結論を急がずに検討させてもらうことでよいか。訴訟費用額確定手続の簡素化について、相手方への催告の要否などもう少し検討するということでよいか。
(各委員了承)
○ 手続の簡素化については、ユニバーサル・デザインの発想で、多くの人が使いやすいようにということを視野に入れてもらって検討してもらいたい。