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司法アクセス検討会(第8回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年9月10日(火)13:30〜15:45

2 場所
司法制度改革推進本部第2会議室

3 出席者
(委 員)
高橋宏志座長、亀井時子、西川元啓、長谷部由起子、原田晃治、飛田恵理子、三輪和雄、山本克己(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、小林久起参事官

4 議題
 (1) 簡易裁判所の管轄拡大について
 (2) 訴訟費用額確定手続について
 (3) 今後の日程等

5 配布資料
資料 1 簡易裁判所の管轄拡大についての主な検討の視点
資料 2 簡易裁判所に関する資料
資料 3 経済指標の推移(昭和57年以降)に関する資料
資料 4 訴訟費用額確定手続の簡素化の考え方(案)

6 議事 (○:委員、●:事務局)

(1) 簡易裁判所の管轄拡大について

事務局から資料1ないし3に基づいて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。

○ 少額訴訟手続の利用は年に10回までとされているが、このような制限を設けた趣旨は何か。

○ 民事訴訟法改正のときに、取立て業者が少額訴訟手続を利用することをどう評価するかという議論があった。アメリカでは、取立て業者の利用を許している州と許していない州とがあるが、利用を許している州では、少額訴訟手続の利用者のほとんどは金融業者ということになってしまい、少額訴訟手続は金融業者による取立て手続になっているというイメージを市民がもつようになってしまったということだった。当時、裁判所が金融業者の取立て代行というイメージで見られるのはよくないという議論があり、利用回数制限がされたと理解している。

○ 簡易裁判所判事選考委員会の委員構成はどうなっているか。

(最高裁判所) 最高裁判所判事3名、東京高等裁判所長官、次長検事、弁護士2名、学識経験者2名の合計9名で構成されている。

○ 選考任命された簡易裁判所判事の比率は分かるか。法曹資格を有しない簡易裁判所判事の比率が知りたい。

(最高裁判所) 平成14年4月現在で、簡易裁判所判事は760名であり、そのうち、法曹資格を有する者は約230名で、残りが、選考任命されたいわゆる特任判事である。

○ 法曹資格を有する簡易裁判所判事とは、具体的にはどのような人か。イメージとしては、地方裁判所の裁判官のOBが簡易裁判所判事になる例を想起するが。

(最高裁判所) 裁判官のOBと判事補である。

○ アメリカの少額訴訟手続の利用上限額はどのくらいか。

○ 10年くらい前のデータで1,000米ドル程度だった。金銭請求以外の請求でも少額訴訟手続を利用できる州もあったと思う。

● 記憶で申し上げると、民事訴訟法改正を議論していた当時、世界的に見て、少額訴訟手続の上限は30万円程度が多かったと思う。

○ 相当と認めるときに簡易裁判所から地方裁判所に事件が移送できるということだが、簡易裁判所が忙しいという場合も、相当と認めるときに該当するのか。

● 事件が複雑であり、簡易裁判所で審理するよりも地方裁判所で審理するのが適当である場合に移送を認める趣旨であると理解している。

○ そういう事件を簡易裁判所で審理すると、審理に時間がかかり、簡易裁判所の特質である迅速な解決に反することになるから移送するということなのか、簡易裁判所判事の能力を超えるから移送ということなのか、どちらなのか。

○ 学者としては、忙しいから移送というのは相当でないという意見である。不動産訴訟で、被告の申立てがあれば必ず地方裁判所に移送することになっているが、その趣旨は、事実認定が複雑である、あるいは、法律問題が複雑であるので、地方裁判所でということであろう。裁判官の能力というよりも、簡易裁判所は、軽微な事件を簡易迅速に解決する裁判所だからということなのだろう。地方では不動産の評価額が低いために、かなり広大な不動産に関する事件でも簡易裁判所の事物管轄に入ってしまうことがある。やはり、複雑困難な事件を地方裁判所で審理するための制度だろう。

○ 実務的な感覚としては、簡易裁判所から移送されてくる事件はそう多くはない。基本的に、事件の性質により、地方裁判所での審理を相当と認めるときに移送がされていると感じている。

○ 資料2によると、裁量移送の率は、土地関係事件で5〜6%くらい、金銭請求事件では1%に満たないが、これを高率と見るか低率と見るか。

○ 平成13年の新受事件数を見ていると、督促事件が55万件あまりになっているが、督促手続のIT化の状況はどうなっているか。

(最高裁判所) コンピューターを利用した、OCR用紙という用紙で申立てをしてもらうシステムを東京簡裁と大阪簡裁で導入している。その用紙を利用して迅速に支払督促の書式を作成し、それを裁判所書記官がチェックして、支払督促を出している。今、件数のデータが手許にないが、記憶で申し上げると、東京で5万件くらい、大阪で4万件くらいだと思う。他の裁判所でも、支払督促の書式をコンピューターを利用して作成するなどしている。

○ そのような用紙を利用して支払督促を申し立てるのは、主に業者だろう。

○ 司法アクセス検討会の検討テーマは民事司法制度の充実だが、行政事件訴訟を簡易裁判所で裁判できるようにするとか、刑事事件での簡易裁判所の管轄を拡大するといった検討は、別の検討会で行われているのか。

● 司法制度改革審議会意見では、そのような提言はされなかった。

○ 簡易裁判所で行政訴訟事件を審理したり、刑事事件でも管轄が拡大されるということになると、簡易裁判所のキャパシティーの問題があるので、質問した。

○ 督促事件の中にみなし弁済の事例が含まれていると思うが、その状況を教えてもらいたい。

(最高裁判所) 今、手許に資料がないが、必要であれば資料を準備したい。

○ 督促事件に関する質問が続いているが、支払督促は、申立ての額が500万円でも1,000万円でも簡易裁判所に申立てがされる。現在の検討テーマは簡易裁判所の民事訴訟事件の事物管轄を90万円からどのくらい拡大するのかということだが、支払督促と事物管轄は何か関係があると考えているのか。関係がないように思うが。

○ 特に関係があるとは思っていないが、実情が知りたかったので質問した。

○ 前回配布された資料で、昭和57年に事物管轄が拡大された以降の地方裁判所と簡易裁判所との事件数比率を見ると、一時的に地方裁判所の事件数比率が上がっている時期がある。その原因は何か。簡易裁判所の統廃合と何か関係があるのか。

(最高裁判所) 事件数比率で見て、地方裁判所の比率が増加したのは昭和59年から平成2年ころのことだと思うが、原因としては、いわゆるバブル経済により訴額自体が高額化したことや、貸金業法の施行に伴い貸金事件が減ったために簡易裁判所の事件数が減ったということが考えられる。簡易裁判所の統廃合は昭和62年、支部の統廃合は平成元年である。簡易裁判所の統廃合とは無関係である。

○ 資料2によると、地理的に身近だという意味での身近さでは、簡易裁判所と地方裁判所との差は、独立簡易裁判所の数である185である。簡易裁判所の数を増やすというのは、昨今の情勢から考えて無理だと思う。手続的な身近さとして、簡易裁判所では簡易書式が準備されていたり、手続自体が国民に親しみやすいものになっているという点を挙げることができると思う。これは維持する必要があるのか、そんなに重視しないでいいのか。
 まず、簡易裁判所の数を増やした方がいいという意見はあるのか。予算状況、公務員の定員等から考えて無理だと思うが、どうか。

○ 裁判所の配置の見直しも、司法制度改革審議会意見で言われていることである。統廃合は、かつての裁判所の配置が前提で、統廃合により数を減らしただけである。人口や経済状況を考慮して、全国的に配置の見直しを考え、国民にとって便利になるようにする必要があるのではないか。

○ 配置の見直しと増設は違う話だと思う。

○ 増設がベターなのだと思うが、他の要因もあるので何とも言えない。国民にとって便利にという視点からは、地方裁判所又は地方裁判所支部に併設されている簡易裁判所よりも、独立簡易裁判所がいいのではないかと思う。ところが、独立簡易裁判所は現在でも不便なところにあるため、裁判官が常駐していることがあまりない。そのために不便を強いている面がある。配置の見直しについて考えるというのは、一つの視点だろうと思う。

○ 資料によると、八丈島簡易裁判所などの事件数は非常に少ない。しかし、こういうところは、事件数が少なくても簡易裁判所を設置しておかなければならない面があるだろう。

○ 地方裁判所支部では、隠岐にある西郷支部がもっとも事件数が少ない。しかし、こういうケースでは、支部を設置しておかなければならないと思う。事件数ばかりで言えない部分があるのはそのとおりであるが、交通の便が変わってきている面もあるので、場所のことは考えるべきだと思う。

○ ところで、簡易裁判所の事物管轄についてはどう考えるか。

○ 昭和57年までは、経済指標の数値は右肩上がりだった。ところが、その後はあまり上がっていない。今、簡易裁判所の事物管轄を決めたとしたら、今後10年くらいは変更はないだろう。そう考えると、大幅に拡大するという情勢にはないように思える。

○ 管轄拡大のメリットがあるとしたら、それは何か。法律で簡易裁判所判事や職員の定員が決められているそうだが、これが増員になるという見込みはあるのか。そういう手当をしないで簡易裁判所の管轄を大きく拡大するのはどうかと思う。

○ 身近な場所にある裁判所で事件を解決できるという点、簡易な手続が利用できるという点を管轄拡大のメリットとして挙げることができる。近い場所ですぐに解決できるということになるので、これらのメリットは、最終的には、紛争解決に必要なコストの減少となって現れる。利用者にとってのこのようなメリットだけを考慮すれば、簡易裁判所の管轄は、大幅に拡大すべきだという方向になる。しかし、簡易裁判所での手続にそぐわない事件が簡易裁判所の管轄に入ってくると、今の簡易裁判所の実績を維持することができなくなる可能性がある。また、現在の簡易裁判所の特質を前提として司法制度が形づくられているため、司法制度全般にも影響を与えることになりかねない。簡易裁判所の位置付け自体を変えようというのなら別だが、そこまで我々の検討会で見直そうということではないと思う。そうすると、簡易裁判所の管轄拡大をするとして、経済指標に沿ったものとするのが妥当ではないか。

○ 地理的に近いという点については、注意が必要である。当事者がお互いに離れて住んでいるような場合は、一方の当事者にとっては地理的に近くても、もう一方の当事者にとっては、地理的に遠くて便利でないというケースもあり得る。したがって、地理的に近いという面を強調しすぎるのは問題だと思う。また、人的資源の適正配分という視点で考える必要もある。少額訴訟の上限が引き上げられることを考慮に入れると、人的資源の適正配分の視点からは、簡易裁判所の事物管轄を大幅に引き上げて難易度の高い事件を呼び込むのは適切ではないと思う。難易度の高い事件は移送すればよいという考えもあるが、難易度の高い事件が簡易裁判所に来る率が増えて、それに伴って移送の率も増えるということになると、国民の不信感を高めることになり、何のための管轄拡大だったのかということになると思う。さしあたりは、あまり大幅な拡大はせず、経済動向等を見ながら考えていくべき問題ではないか。

○ 簡易裁判所の判事数をどこまで増やすことができるのかという点は考慮しなければならないと思う。最高裁判所にお尋ねするが、簡易裁判所判事の増員計画はあるのか。

(最高裁判所) 増員については、事務量に応じてというのが基本的な考え方である。その意味で、事件数の動向は一つの要素である。しかし、事件数が増えるのに従って事務量も増えるとは必ずしも言えない。手続の見直し、訴訟運営の見直し等を総合的に勘案しながら検討する必要がある。過去10年間の増員について申し上げると、判事及び判事補の増員をお願いしてきた。地方裁判所の民事訴訟事件、執行事件、破産事件の迅速解決を視野に入れて増員をお願いしてきた。過去5年間で、200人の増員を認めていただいた。簡易裁判所に関しては、確かに事件数は増えているが、多くは定型的な事件である。事件の多くはクレジット、サラ金等の事件であり、争点が少なく、事実関係にあまり争いのない場合がほとんどである。そのため、事件数の割には、事務量をそれほど増大させるものではなく、過去10年間は、簡易裁判所判事の増員はお願いしていない。今後の増員に関して、簡易裁判所の事件数の動向や管轄拡大の影響は考えていかなければならないが、現在考えている増員の方向は、地方裁判所の訴訟事件の審理期間半減のため、今後10年間で判事500人の増員をお願いしていきたいと考えている。審理期間の短縮については、小泉総理大臣からもご指摘があったが、その方向性とも一致するものと考えている。

○ 裁判官も忙しいが、裁判所書記官や裁判所事務官も大変だと思う。簡易裁判所の裁判所書記官、裁判所事務官の増員については、どう考えているのか。

(最高裁判所) 簡易裁判所の裁判所書記官は、事前準備等のため、かなり繁忙な状況にある。そういう意味で、これまで、増員という形ではないにせよ、裁判所事務官から裁判所書記官への振りかえということも併せてお願いしてきたところである。データが手許にないので詳しいことは申し上げられないが、これまでに相応の手当をしている。

○ 簡易裁判所判事の給源は、裁判所書記官、裁判所事務官が多いと感じている。最近、裁判所書記官、裁判所事務官から簡易裁判所判事への志願者がそう多くはないのではないかと感じている。仮に増員を考えた場合、今後、裁判所書記官、裁判所事務官からの志願者が増える見込みはあるのか。

(最高裁判所) 手許に志願者数のデータがないが、簡易裁判所判事の選考に当たっては、法律科目の試験を実施しており、一定の学識を有する者でなければ選考されないということになっている。昨年、一昨年は、新たに簡易裁判所判事になった人数は増えており、年に50名ないし60名が簡易裁判所判事に任命された。他方で、簡易裁判所判事の定年退職者の数も増えており、採用数を増やしているところである。志願者数が増える傾向にあるのかどうかという点に関しては、手許にデータがないので正確なことは申し上げることができないが、かなりの志望者がある中で、優秀な人を採用している。なお、法律試験の科目は、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法である。

○ 司法研修所で簡易裁判所判事の研修を担当したことがあり、若い簡易裁判所判事と話をする機会があったが、能力の高い人が任命されているという印象である。志願者の数が全体として増えているのか減っているのかは知らないが、かなりの倍率の試験を勝ち抜いてきた人達が簡易裁判所判事に任命されており、相当能力の高い人が任命されていると理解していただいて構わないと思う。仮に、志望をためらうような状況があるとすれば、独立簡易裁判所への転勤などが要因として考えられるのではないか。裁判官は、どこにいても良質な司法サービスを提供しなければいけないという使命感に燃えて裁判官になるが、家庭の事情等で、転勤があるということがためらう要素になることはあり、全く影響していないということはないと思う。

○ 簡易裁判所判事と話をする機会があるが、私も、質的な問題はないと感じている。やや気になるのは、管轄の拡大に伴って人的な手当ができるのかどうかであり、給源の問題があるとすれば、判事補が簡易裁判所の事件を担当するということにもなり得るので、事実確認のため質問をした。転勤の問題に関しては、確かにそういう話を聞いたことがある。

○ 地方裁判所に関しては、人的な拡充ができるという方向が見えている。そういう中で、簡易裁判所に大幅に人的手当ができるのかどうか、現実的には難しい問題であると思う。そういう面では、管轄の大幅な拡大は、現実的ではないという印象を受ける。
 ところで、司法書士に訴訟代理権が認められることになったが、その影響をどう考えるか。

○ 司法書士が適切に代理することにより、事件は増えても裁判所の負担はそれほどではないということも考えられる。もっとも、適切に代理が行われるかどうかは、制度が動き出すまで、蓋を開けてみなければ分からないという面がある。加えて、当事者双方に代理人が付くのかどうかという問題は残る。原告に代理人が付くことは多いと思われるが、被告側はどうなるか。双方に代理人が付けば、裁判所の負担も多少軽くなるだろうが、一方だけに代理人が付いているということでは、裁判所の負担もあまり変わらないだろう。

○ 簡易裁判所の事物管轄を大幅に拡大するとすれば、簡易裁判所の性質が変わってしまうのではないか。軽微な事件を簡易迅速に、常識的判断でというのが簡易裁判所の特質である。もともとは、本人ができる範囲の事件ということだったのだろうが、事件が難しくなってきているので、司法書士がサポートするというのはいいことである。しかし、簡易裁判所の特色は残すというのが前提だろう。管轄の上限額は、そんなに上げない方がいいと思う。

○ 司法書士に代理人になってもらえるというのは、一般人にとっては心強い。しかし、現実には、本人訴訟が多いように思う。弁護士にしても司法書士にしても、身近なようで身近でない。どのくらいの料金でどういう内容のサービスが受けられるのかが、利用者に分からない。簡単な書類を作ってもらうだけでも、かなりの額の報酬が必要になる場合もある。リーズナブルな料金でのサービス提供が必要で、また、情報提供も充実すべきだと思う。司法書士に頼むことで、簡易裁判所の負担が軽くなる面はあるのだろうが、現実問題としては、まず先に述べたような観点からの基盤整備が必要である。全般的方向としては、経済指標は今後も下落すると思われるので、簡易裁判所の事物管轄をあまり大きく拡大する材料はないように思う。

○ 司法書士の代理権の話があった。司法へのアクセスという面ではプラスになる話だと思うが、現時点では実績がないので、どうなるかは分からない。先ほど、委員から指摘があったが、被告に代理人が付くのかどうかという問題もある。司法書士の代理権は、管轄拡大にはプラスになるのだと思うが、司法書士の代理権をテコにして大幅に管轄を拡大するというのは時期尚早という意見が多いように思う。簡易裁判所の事物管轄は、現在は90万円とされているが、この額自体、民事訴訟法学者は、最高裁判所の負担軽減という面も考慮されて決められた面もあるのだと考えている。競合管轄にしてはどうかという意見があり、それ自体、すばらしいアイデアだと思うが、競合管轄にしても、簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送がどんどん使われると、何のために上げたのかということになる。

○ 事件が移送になった経験があるが、半年くらい遅れてしまった。競合管轄は、いいようで悪い面もある。やはり、移送は例外的な制度と位置付けるべきだろう。移送が頻発するような制度は無理があり、簡易裁判所の特質を壊してしまうのではないか。

○ 現状として、簡易裁判所判事と地方裁判所の判事とではどちらが忙しいのか。

○ 独立簡易裁判所もあるので一概には言えないのだろうが、簡易裁判所は簡易裁判所で忙しいのだろう。同じ様な忙しさではないか。

○ 簡易裁判所判事の給料は比較的に安いようだが、忙しさが同じようなものだとすると、簡易裁判所判事の給料が安いのは、簡易裁判所判事の能力に着目してそうしているということなのか、それとも、事件の性質が軽微だからということなのか。

○ 扱う事件の性質によるものなのだろう。

○ 独立簡易裁判所といえども、令状事件にも対応しなければならず、夜中にいつ起されるか分からないという面もあり、全般的には忙しいのだろう。

○ 訴額に関係なく、簡単な事件は簡易裁判所で解決するという考え方はできないか。例えば、貸金事件、立替金事件は訴額に関係なく簡裁で解決するというのはどうか。

○ 実務の感覚では、現在の管轄で、概ね貸金事件、立替金事件は簡易裁判所、それ以外は地方裁判所という区分けができていると感じている。

○ 貸金事件、立替金事件といっても、個人が相手の事件と会社が相手で金額の大きな事件とではやや異なる面があるので、やはり訴額で区切るしかないのではないか。

○ 消費者トラブルの平均額は80万円台である。どのあたりにどういう事件が分布しているのかということを考えながら、訴額で区切るしかないだろう。現在の管轄は、そういう意味では現状にあっていると思う。

○ 簡易裁判所の事物管轄を考えるに当たって、少額訴訟の上限を引き上げるということは、考慮に入れなくていいように思う。少額訴訟の上限を考慮して事物管轄を決めるというのは本末転倒のような気もする。司法制度改革審議会意見では、「簡易裁判所の特質を十分に活かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点から、簡易裁判所の事物管轄については、経済指標の動向等を考慮しつつ、その訴額の上限を引き上げるべきである。」とされている。簡易裁判所の特質を見失ってはいけないという意見が強く、経済指標の動向は考慮せざるを得ないというのが、今日の多数の委員の方向だということでよいか。

(各委員異論なし)

○ では、そういうのが大体の検討会の判断だとして、より具体的なたたき台を事務局で作ってもらい、次回に議論することとしたい。

(各委員了承)

○ 以前、簡易裁判所の管轄拡大について検討した際に、管轄を拡大すると商工ローンの事件が簡易裁判所の管轄に入ってくるが、これらの事件は事案がやや複雑で、争われることも多いので問題だという趣旨の意見があった。しかし、管轄の合意があれば、事物管轄とは関係なく簡易裁判所や地方裁判所で裁判を受けることができる。商工ローンの事件の当事者が管轄の合意という制度を利用することも考えられるので、商工ローンの事件が事物管轄の観点からは簡易裁判所の事物管轄に入ってくることになっても、実質的には管轄の合意の制度を利用することにより、簡易裁判所に来る事件の性質に大きな変化はないのではないか。

● 商工ローンの事件という特定されたデータは持ちあわせていない。ご指摘の点に関連する問題は、資料2の8ページで説明したが、その趣旨は、訴額が高い事件を見ると、貸金以外の定型的でない事件が増えてくるという事実を統計資料から読み取ることができる。そういう事件が簡易裁判所にくるようになると問題が生じるのではないかということである。商工ローンが問題だという趣旨ではない。

(2) 訴訟費用額確定手続について

事務局から資料4に基づいて説明がされた。
その後、次のような意見交換がされた。

○ 事務局の資料にある方向性に、基本的に賛成である。1つ質問があるが、記録上明らかというときの「記録」は、現状の記録を前提とするのか。例えば、出頭の際にタクシーを使ったからということで、タクシーの領収証を裁判所書記官に提出したら、それを記録に添付してもらえるのかどうかという点について聞きたい。ある程度裁判所の方で当事者に負担にならないよう面倒を見るつもりはあるのか。また、定額化により、費用と認められる額が今よりも低くなるとすると反発があり得ると思うが、面倒を見るというのなら受け入れてもらえるという面もあるので質問した。

● 新たに手続を設けるということは考えていない。また、費用と認められる額が低くなるという点に対しては、証明すれば実費請求も可能にするという道を残してある。確定手続を明確化することによって、当事者に残してもらう資料を示すなどの手続案内は必要になってくるのだろうと思う。

○ 記録上明らかな費用とは、どのようなものがあるのか。

● 訴え提起の手数料がある。また、お示ししている見直し案を前提とすると、当事者等の旅費、日当や書類の作成提出の費用なども記録上明らかな費用となるものと考えている。

○ 訴訟費用額確定手続は訴訟代理人にとっても使いやすい制度にしてもらいたい。コンピューター処理も考慮したものにするべきだろう。

● 旅費については、実費を請求する場合は、実費の額やこのルートではこれだけの旅費がかかるという証明をしてもらおうと考えている。定額の場合は、実費よりも少し安い額の金額を予定している。定額の場合は、当事者等の住所地等を管轄する簡易裁判所と出頭した場所を管轄する簡易裁判所との間の距離をもとに算定することを考えているが、簡易裁判所間の距離はコンピューター処理ですぐに算出できるようにし、窓口で裁判所書記官が利用者にお知らせできるようにしたいと考えている。

○ 旅費等については、当事者等と証人とで異なる扱いをすることになるが、その点について異論はあるか。確かに、証人と異なり、当事者は出頭してから相当年月が経ってから旅費を計算する点で異なるが。証明をすれば、実費請求は可能ということだが。また、書記料、提出費用を一本化して定額化することについてはどう考えるか。書記料と提出費用は要らないという議論もあったが、なくすというのもどうかということで、こういう案が出ているが。事件単位で定額化という点をどう考えるか。

○ 証人と異なる扱いをするというよりも、むしろ、旅費の疎明が大変な場合に効率的に旅費を算定する方法を用意するということではないか。問題はないと思う。書記料等については、大きな事件で書類が多く作成提出される場合の問題はあるが、いろいろと例外を設けて分かりにくい制度にするよりは、割り切って定額化した方がいいと思う。

○ 私もその方がいいと思うが、事件によっては、現在訴訟費用となる書記料の額よりも大幅に低額化される場合がある。それをどう説明するか。実費証明を認めるとすると大変になりそうだ。方向性は、資料4にあるような考え方でいいか。資料4の第2の1について、大きな方向性はこれでいいか。第2の2について、簡易にするという方向性はいいか。最終的には事件単位ということになるのかもしれないが、事件単位という点についてはもう少し考えていくということでいいか。

(各委員異論なし)

(3) 今後の日程について

次回については、引き続き、平成15年通常国会に法案提出を予定している課題について検討を続けることとなった。

(次回:平成14年9月30日 13:30〜)