(□:座長、○:委員、●:事務局)
□ それでは、所定の時間になりましたので、第8回目になりますが、司法アクセス検討会を開催いたします。
初めに、本日の議題と配布資料について、事務局から御説明をお願いいたします。
● お手元の「司法アクセス検討会(第8回)次第」を御覧いただきたいと存じます。その 3番の議題というところに掲げましたように、本日は、簡易裁判所の管轄拡大と、訴訟費用額確定手続について御検討をお願いしたいと考えております。配布資料につきましては、資料1から資料4までありますので、御確認をお願いします。
なお、第1回でお配りした裁判所データブックが年次更新されて新しいものが出ておりますので、各位のお手元に新しいものをお配りしております。以上です。
(1) 簡易裁判所の管轄拡大について
□ それでは、議事次第に従って、まず簡易裁判所の管轄拡大について、意見交換をしようと思います。しかし、その前に事務局から簡易裁判所関係の資料の紹介をお願いしようと思います。では、お願いいたします。
● お手元に資料1から 資料3まで、簡易裁判所関係の資料を用意してございます。
資料1を御覧いただきたいと存じます。資料1は、「簡易裁判所の管轄拡大についての主な検討の視点」を挙げたものです。これまで、最高裁判所、日弁連、日司連からプレゼンがございましたようなさまざまな視点の中で、司法制度改革審議会の意見書を踏まえまして、事務局の方でこのようなポイントがあるのではないかと掲げたところでありまして、本日の検討のご参考にしていただければと存じます。
1つは、簡易裁判所の管轄拡大は民事訴訟の通常訴訟の事物管轄の問題ですけれども、全体として見ますと、簡易裁判所はさまざまな機能を持った組織であるということについて検討をお願いしたいと思うわけです。それが1番目の「簡易裁判所の組織と役割」という視点です。
2番目に、「簡易裁判所の民事訴訟の特色」という問題があります。簡易裁判所については、後で申し上げますように、簡易な事件を簡易な手続によって迅速に紛争解決をするという使命があります。そのような特色を持った簡易裁判所を活かしていくという視点からの御検討をお願いしたいということです。
3番目に、「簡易裁判所の特質を活かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点」です。これにつきましては、下に参考として掲げました司法制度改革審議会の意見書を御覧いただきますと、第1の5の(3)というところで、簡易裁判所の管轄拡大について意見が述べられているところですが、その意見として、「簡易裁判所の事物管轄については経済指標の動向等を考慮し、訴額の上限を引き上げるべきである」とされた上で、その意見書の枠の外ですが、「簡易裁判所の事物管轄は訴額が90万円を超えない事件とされており、また、より簡易迅速な手続である少額訴訟手続の対象となるのは、そのうち訴額が30万円以下の金銭請求事件とされている。簡易裁判所の事物管轄を定める訴額の上限が90万円と定められたのは、昭和57年の裁判所法改正によるが、軽微な事件を簡易迅速に解決することを目的とし、国民により身近な簡易裁判所の特質を十分に活かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点から、簡易裁判所の事物管轄については経済指標の動向等を考慮しつつ、訴額の上限を引き上げるべきである」、このように意見が述べられているということから、その簡易裁判所の特質を活かし、裁判所へのアクセスを容易にするという、この意見書の観点を踏まえての御検討をお願いしたい、そういう視点で3に掲げたものです。
4番目は、この意見書の中にもあります昭和57年の裁判所法改正後の経済指標の動向等も踏まえてご検討をお願いしたいということです。
資料2以降は、その関係の資料を事務局でまとめたものでございまして、「簡易裁判所について」、これは資料2の一番最初の1ページのところですが、簡易裁判所について、設立及び管轄区域、裁判官、裁判権、簡易裁判所の民事訴訟の特色をまとめたものです。1ページに設立及び管轄区域と書かれておりますが、前にも御説明しましたように、簡易裁判所は現在全国に438庁ありまして、そのうちの253庁が地方裁判所の本庁又は支部に併設されている簡易裁判所ですが、残りの185の庁が独立簡易裁判所であるということです。
それから、裁判官ですが、簡易裁判所判事の定員は806人と定められております。簡易裁判所判事は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣でこれを任命する、これは通常の判事と同じですが、簡易裁判所の判事の任命資格は、基本的には②にありますように、判事補の職にあって 3年以上になる者、あるいは③のところにありますように、司法修習を終えた後に、例えば検察官、弁護士、裁判所調査官、裁判所事務官等の職にあって3年以上になる者といった司法修習を終えた法曹資格者のほかに、多年、司法事務に携わり、その他、簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、この要件に該当しないときでも、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て、簡易裁判所判事に任命されることができる、とされています。これが簡易裁判所判事の選考任命といわれております。そして、簡易裁判所判事の定年ですが、これもほかの下級裁判所裁判官が65歳とされているのと異なりまして、70歳とされています。
簡易裁判所では、すべての事件を一人の裁判官で取り扱うとされております。
次に、「裁判権その他の権限」ですが、民事事件と刑事事件、それから2ページにあります、その他法律により簡易裁判所又は簡易裁判所の裁判官の権限とされているもの、この3類型に分けております。
第1の民事事件ですが、これはこれまでも御説明したように、訴訟の目的の価額が90万円を超えない請求であって、行政事件を除くということです。それについての第一審の裁判権を有しております。しかしながら、訴訟の目的の価額が90万円を超えない請求に係る訴訟であっても、不動産に関する訴訟については、地方裁判所も、簡易裁判所とあわせて第一審の管轄権を有するという競合管轄になっております。また、簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟については、被告の申立てがあるときは、訴訟を地方裁判所に移送しなければいけないという規定が設けられております。それから、競合管轄が設けられている不動産に関する訴訟でなくても、簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合でも、相当と認めるときという要件で、申立て又は職権で訴訟を地方裁判所に移送することができるということになっておりまして、これは裁量移送と言われているものです。それから、地方裁判所に簡易裁判所の管轄に属する事件が提起されることもありまして、その場合どうするかということですが、地方裁判所は、簡易裁判所の管轄に属する場合でも、相当と認めるときは、申立て又は職権で訴訟を自ら審理及び裁判をすることができるということになっているわけです。
以上が民事事件ですが、刑事事件につきましては、罰金以下の刑に当たる罪、罰金刑が選択刑として定められている罪、それからそのほかに、常習賭博とか窃盗、横領、盗品譲受けの罪について、その訴訟の第一審の裁判権を有するとされております。ただし、基本的には、簡易裁判所は禁錮以上の刑を科することはできないとされていますが、一定の類型の事件について、3年以下の懲役を科することができるとされております。簡易裁判所は、その次にありますように、住居侵入、賭博、窃盗、横領、遺失物等横領、盗品譲受け、古物営業法、質屋営業法という、特定の罪にかかる事件に限って 、3年以下の懲役の刑を科することができるとされているわけです。
3番目に、その他の権限ですが、これも民事と刑事とその他のア、イ、ウに分けてありますが、民事関係では支払督促、訴え提起前の和解、それから調停、これは前から御指摘のあるところで、特定債務等の調停の促進のための特定調停に関する法律というものがありまして、この特定調停というのは極めて事件が増えているということですが、そういった特定調停もあります。そのほか、公示催告があります。
次に、刑事関係ですが、逮捕状、勾留状、捜索・差押・検証・身体検査といった令状、それから略式命令、交通事件即決裁判などの手続を担当しております。
ウのところで、その他の裁判として、戸籍の届出を怠ったときなどの過料の裁判、これは住民基本台帳法とか外国人登録法にもありますが、こういった過料の裁判も扱っております。その他、様々な事件を扱っているということが記載してあります。
簡易裁判所の民事訴訟の特色ですが、民事訴訟の特色につきましては、そこに挙げましたように、第一に手続の特色として、「簡易裁判所は簡易な手続により迅速に紛争解決するものとする」という基本原則が、民事訴訟法に掲げられています。その上で、具体的に民事訴訟法に掲げた手続から簡易裁判所の特色を拾い上げていきますと、そこに掲げたように、例えば、「簡易裁判所においてはその許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる」、これは、地方裁判所では訴訟代理人は弁護士に限られているということの特例です。それから、「民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、簡易裁判所に和解の申立てをすることができる」、これは、訴え提起前の和解の申立てができるということがありまして、さらには司法委員の関与という規定があります。「裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、また司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。」司法委員というのは法律専門家ではございませんで、一般の方から任命される方で、そういった一般常識を審理に反映させ、さらには和解を進める、簡易裁判所の手続自体がそういった一般常識の反映なり、和解を促進するという思想が、このようなところにも出ていると思われるものであります。
それから、 2番目の「訴え提起の手続の簡素化」ということで、訴えの提起については、口頭で提起することができるとか、請求の原因に代えて、紛争の要点を明らかにすれば足りるとか、様々な特例が設けられております。
3番目に、審理手続及び判決についても簡素化がされております。「口頭弁論は、書面で準備することを要しない」とされておりますし、「裁判所が相当と認めるときは尋問に代えて書面の提出をさせることができる」ともされております。さらに、これは判決書の書き方ですが、判決の記載についても、「簡易裁判所については、請求の趣旨及び原因の要旨等を表示すれば足りる」ということで、簡素化が図られております。
さらに、少額訴訟ですが、少額訴訟についてどのような特色があるかということについて、 4番目にまとめました。少額訴訟については、その請求の範囲が一般の通常訴訟とは異なっておりまして、訴訟の目的の価額が30万円以下に限られているということと、金銭の支払いの請求に限られるということです。また、同一の簡易裁判所においては、同一の年に10回を超えて少額訴訟による裁判を求めることはできないということになっております。この少額訴訟と通常訴訟との関係はどうなるかということですが、それが(2) で、被告の方は訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすれば、訴訟は被告がその申述をしたときに、当然に通常の訴訟手続に移行するということになっております。他方で、少額訴訟で判決がされたときはどうなるかといいますと、その判決をした簡易裁判所に異議を申し立てることはできますが、上級裁判所、地方裁判所に控訴することはできません。したがって、異議のあったときには、少額訴訟の手続は適法な異議があったことによって、口頭弁論終結前の程度に復して、通常の手続に戻って審理及び裁判をする。そして、異議後に判決がされますと、さらにそれに対して控訴することはできないということで、簡易裁判所限りで確定するということになっております。
少額訴訟の特色は、一期日審理の原則、一回の期日で審理する原則がとられているということが特色でございまして、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において審理を完了しなければならないとされておりまして、他方で、当事者は最初にすべき口頭弁論の期日前、又はその期日においてすべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができるという限定をつけて、一回の期日で審理が終わるように、原則的な手続が仕組まれているということです。また、判決の内容についても柔軟な方法がとられておりまして、判決による支払いの猶予という(4) に掲げましたような特例があります。裁判所は、請求を認容する場合において、被告の資力その他の事情を考慮して、特に必要があると認めるときは、金銭の支払いについて、その時期の定め、又は分割払いの定めをすることができるということで、判決の内容も一律ではなくて、被告の事情に応じた対応が可能になっているという、柔軟な解決ができるシステムをとっているということです。
簡易裁判所の組織と手続の特色については以上のとおりですが、その後、統計資料を掲げてあります。5ページ、「簡易裁判所に係属する事件」ですが、平成13年の事件につきまして、民事と刑事に分けて掲げてあります。大きなところを取り上げますと、通常訴訟について30万件、それから少額訴訟が 1万3,500件、支払督促が56万件くらいありまして、そのほかに過料が6万件、民事調停が36万件、その中でも特に特定調停が29万件あるということになっております。刑事関係につきましては、通常訴訟は1万6,000件程度ですが、略式事件になりますと89万件、それから令状事件になりますと33万5,000件という規模の事件を担当しているということです。
6ページは、東京都内の各簡易裁判所について、それを具体的に見てみようということです。 6ページと 7ページは、同じく東京都内の簡易裁判所の裁判官数、 6ページの方は平成13年の事件数ですが、東京簡易裁判所は実際に視察をしていただいたところですが、東京の地方裁判所の管内にある簡易裁判所としては、八丈島、伊豆大島、新島、八王子、立川、武蔵野、青梅、町田ということで、非常に都市的なところから離島から少し地方にわたる部分まで、多様な裁判所が、東京の管内だけでもあろうかと思いまして、これを見てみようということです。この事件数の分布状況、それから7ページは、そこに勤務する裁判官がどういうふうに仕事をしているかという配置状況と扱っている事件の状況ということでございまして、御覧いただいた東京簡裁は大規模庁ですので、民事を担当する裁判官、刑事を担当する裁判官がはっきり分かれているのですが、それ以外の簡易裁判所については、ここに掲げましたような人数、1人、2人それから4人というような人数で、民事も刑事も兼ねて担当しているというのが実際であるということが、この表の意味するところです。
それから、8ページですが、簡易裁判所に立替金、貸金というような事件がかなり多数提起されているのではないかという御指摘がありました。これは前にも事務局から提出した資料ですが、事件数の合計が書いていなかったので、訴額別の事件数の合計を加えまして、改めてお示ししたものです。ちなみに、簡易裁判所は上の方ですが、30万円以下の事件が13万8,000件、これは平成9年しか事件の統計がなくてこうなっているのですが、大方の動きは、その後も変わっていないと思います。30万円から90万円の事件になると11万件、それから90万円を超えても、契約書等で簡易裁判所の管轄にするという約束がされている場合については簡易裁判所に訴えを提起できることになっておりますので、そういった関係で簡易裁判所に訴えられる事件が2万3,000件あるわけでございまして、これらの裁判は、ほとんどが立替金、求償金又は貸金で、7割〜8割、9割近くまで占められているところもありますが、ほぼ8割前後はこういった事件で占められているというのが、簡易裁判所の実情です。ところが、下の地方裁判所にまいりますと、90万円以下でも、不動産の関係の事件を中心として、複雑な事件で地方裁判所に訴えて受理されている事例がありますので、90万円以下でも1万4,000件の事件があります。ところが、90万円から120万円の事件ですと、その訴額の事件というのは、1万4,000件程度にとどまっているということです。その訴訟の内訳についても、これは最高裁判所の前回のプレゼンテーションの中でも御指摘があったように、かなり多様な類型に分かれておりまして、立替金とか貸金の割合は45%にとどまっています。120万〜150万円の事件というのも9,753件とか、150万円〜200万円の事件でも1万3,000件ということになっています。ですから、裁判所の利用のされ方、あるいはその背景にある経済の活動というものを推し量ってみますと、簡易裁判所で90万円までの枠の中での事件数は何十万件も、20件とかそういうレベルであるというのに比べますと、90万円を超える事件というのは、事件数も少なくなっておりまして、そこの背景にある経済活動の内容が多少違っているのではないかということ、その中で、裁判所へ来ている事件の内容も多様なものがあるのではないかという特質が、この統計からうかがえるのではないかと思われます。
それから、9ページは裁量移送の状況ですが、簡易裁判所に訴えた事件でも、複雑と考えられて、地方裁判所の方に移送することができるということになっておりまして、全体で裁量移送がされているのが1,000件くらいになるということです。そして、その中でも、土地、建物を目的とする訴え、あるいはその他の訴え、金銭以外の訴えになりますと、裁量移送の割合がかなり高くなってくるということです。
次に、先ほど検討の視点の中でも4番のところにありました「経済指標の動向等」です。それは資料3に挙げました。資料3の「経済指標の推移(昭和57年以降)」ですが、これは国内総支出、GDP統計と一人当たりの個人消費支出、それから土地価格指数以外は、これまでに検討会に提出した統計と同じです。国内総支出、GDP統計については、最近算出方法が変わりまして、新しく算出し直されましたので、その新しい統計の数値に直したということ、それから、消費統計が世帯当たりの統計、しかも勤労者世帯当たりの統計に限られておりましたので、GDPの関係の統計の方から一人当たりの個人消費支出の統計を加えたということ、それから、資産価格の統計がなかったものですから、土地価格指数の全国市街地全用途平均の数値を加えたということです。これら10種の経済指標、一番大きいのは国内総支出の184.7という数値になっておりますが、一方で、一人当たりの個人消費支出は174.8、それから、公務員の平均給与が164.9となっておりますし、一人当たりの国民所得は162.9という数字が出てまいります。さらに、勤労者世帯当たりの実収入は140.2、それから、勤労者世帯当たりの可処分所得が138.5、常用労働者の平均賃金が137.6、勤労者世帯当たりの消費支出は125.9、それから、消費者物価指数が122.4、土地価格指数が113.8、このような経済指標の動きです。これらの数値を全体として平均しますと146.6となるというのが、参考までに付記したところです。その後は、それの基礎データです。
事務局からの説明は以上でございます。
□ それでは、ただいま御紹介いただきました簡易裁判所の特色を踏まえて、簡易裁判所の事物管轄について御検討いただくわけですが、今日はかなり徹底して御議論いただきたいと思っております。どなたからでも、どの観点からでも結構ですので、御意見を賜ればと思います。
○ 質問、よろしいですか。少額訴訟の10回原則ということの立法趣旨は何なんですか。
○ 私もたまたまその委員会に関与していましたが、そのときの議論では、ちょっと言葉を選ばなければいけないのかもしれませんが、取立業者というのでしょうか、そういう人たちが大挙して少額訴訟を使うということに対する評価−−両方の評価があるわけですが、モデルになったアメリカでは、取立業者が使うことを許している州と許していない州があるわけですね。許している州は、ほとんど取立業者の事件ばかりといっていいような感じになりまして、そういたしますと、州民から見れば、少額訴訟というのは取立業務の代行事務をやるところだというイメージがつくられてしまっている。しかし、もちろん、取立業者だってちゃんと権利があるわけですから、それはそれでいいんですが、新しく少額訴訟を日本でつくるときには、やはり市民間の訴訟というのでしょうか、取立業者というよりも、むしろ原告に一般市民がなるようにする−−とまでは言えなくても、取立業者の代行機関が裁判所だというイメージをつくってはいけない。その立法技術といたしまして、普通の人なら年に10回もやることはないだろうと。10回がいいか、5回がいいか、3回がいいかはともかく、回数制限をすれば、業者が大量に利用するということはあり得ないだろう、こういうことが私の理解しているところです。公式の文書その他ではちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、そういうふうに理解しております。
○ よろしいでしょうか。簡易裁判所の裁判官の任命資格に関連しましてちょっと質問させていただきたいのですが。多年、司法事務に携わり、簡易裁判所の判事の職務に必要な学識経験のある者も任命されるということですけれども、この場合の簡易裁判所判事選考委員会の構成員というのはどのようになっているのか教えていただければと思います。
□ 最高裁の方からお願いします。
(最高裁判所)
簡易裁判所判事選考委員会の構成員は、最高裁判所判事が3名、東京高等裁判所長官、最高検次長検事、弁護士2名、学識経験者2名の合計9名でございます。
○ どうもありがとうございました。
○ 関連なんですけれども、この1番から4番、その他学識経験、この比率は大体どれくらいということでしょうか。大体のイメージでいいんですけれども。特に、法曹資格を持っておられない方の比率くらいがわかれば。
(最高裁判所)
むしろ法曹資格を持っていないのが原則でございまして、簡易裁判所判事の現在員が平成14年4月現在で760名でございます。そのうち、法曹有資格者が約230 名であり、残りが、選考任命されたいわゆる特任判事で、法曹有資格者以外の者であります。
○ わかりました。ありがとうございました。
○ 法曹有資格者というのは、私のイメージですと、裁判官の定年が65歳で、70歳まで簡易裁判所判事になれますから、裁判官の定年を終えられた方が多いということですか。
(最高裁判所)
判事OBの場合と、判事補が簡易裁判所判事を兼務しているという場合の両方ございます。
○ 先ほどお話のありました少額訴訟のアメリカのケースでございますが、金額的にはどれくらいなんでしょうか。
○ いろいろ調べて、何となく1,000ドル程度というのが10年くらい前の常識ですね。最近はもう少し上がっているかもしれません。州によってバラバラですね。金銭請求以外も少額でできるとしているところがあったりします。金額的には、1,000ドルから1,500、2,000ドルくらいまでいっているところがあるでしょうか。ちょっと不正確かもしれませんが、特に近年のことはよくわかりません。
● 私も民事訴訟法の改正に携わっておりましたけれども、記憶ですが、少額訴訟の上限が今30万となっていますが、50万という意見もないわけではなかったのです。世界の傾向を調べたときに、大体30万前後が多いといういきさつもありまして、最初から一気に上に行くのはいかがなものかというようないろいろな配慮があったと記憶はしております。不正確ではございますけれども。
○ それは何年くらいの御検討でしょうか。
● 大体、 平成8年です。ただ、世界ですから、アメリカだけの問題ではないですね。その平均が大体30万円くらいだったという記憶です。
○ 簡易裁判所から地方裁判所への移送なんですけれども、「相当と認めるとき」というのは、事件が立て込んできて忙しいから地方裁判所に回そうとか、そういうことも「相当」になるんですか。自分の判断能力を超えるからということのみになるんですか。
● なるべく複雑困難な事件は地方裁判所でという趣旨で入れられた制度でございますので。
○ それを審理するには時間がかかるから、簡易裁判所の迅速性ということが阻害されるから地方裁判所でゆっくりやってもらおうということなのか、判事としての能力面が問題だからということなのか。どちらでそういう移送ということになるんですか。
○ 民事訴訟法学者の常識としては、「俺は今忙しいから回す」というのは、「相当」とは普通は考えないですね。特に、不動産関係のもので、簡易裁判所に出して、被告の方から「地裁でやってくれ」というときなどは必ず行くという、そこの趣旨は、やはり法律問題あるいは事実認定も難しい事件だから、一方の当事者が言えば必ず地方裁判所でやるべきだということですね。ですから、裁判官の能力というよりも、簡易裁判所の趣旨は簡易な事件を迅速にやると。それと、またこれもあまり大きな声で言えないかもしれませんけれども、地方などでは、不動産はかなり広大でも評価上は低くなってしまうんですね、90万円以下になってしまう。それは実際とは合わないということもあります。民事訴訟法学者が普通に学生相手の講義でやっている程度でいえば、複雑困難な事件を地方裁判所に回すということですね。
○ 地方裁判所の実務を日頃担当している者の実感からしまして、簡易裁判所から移送されてくる事件というのは、そんなに多くないんです。必ずしもそう多くはありません。それが自分の手に負えないから送るというケースが絶対ないとは言いませんけれども、基本的にはそうではなくて、事件の性質を選んで送ってきていただいているように思います。
○ 資料 2の一番最後が裁量移送ですね。先ほど、私、ちょっと「必要的」と言いましたが、裁量移送の状況を見ますと、土地を目的とする訴えで5%とか6%とか、年によって違いますが、これを多いと言うか、少ないと言うかですね。金銭を目的とする訴えですと1%未満ということですね。
○ お伺いしたいんですが、資料2の5ページ、平成13年の新受事件の中で支払督促が55万9,240件と大変多いわけなんですが、支払督促にコンピュータ等の導入がなされていると伺うんですが、どのような状況なんでしょうか。
(最高裁判所)
支払督促についてコンピュータを利用いたしまして、OCRの用紙で申立てをしてもらうシステムを東京簡裁と大阪簡裁に導入しております。これによりまして、申立てがあった後、その用紙を利用して迅速に支払督促の書式を作成し、それを裁判所書記官がチェックして、支払督促を発出するということを行っております。件数的には、ちょっと手元に統計を持ってきておりませんが、大ざっぱな記憶で申し上げますと、東京が多分5万件くらい、大阪が4万件くらいではなかったかと思っております。それ以外の裁判所でも、支払督促の書式をパソコンを利用して作成するなどしております。
○ そういう様式にのっとって支払督促の申立てをしてくるということは、ほぼ業者の方ですね。そうですか、わかりました。
○ この検討会の対象というのは、あくまでも民事司法制度の充実ということであって、簡裁の事物管轄の問題は、例えば、行政事件も一部簡易裁判所に持っていこうとか、刑事裁判についてももうちょっと犯罪の類型を増やしてみようとか、それは別の検討会の方でされているということなんでしょうか。この検討会は、とにかく民事事件だけやろうということですね。
● その他の問題について、簡易裁判所における機能を拡充するということは、必ずしも司法制度改革審議会の意見には上がっていないということです。
○ はい、わかりました。
● ただ、前回、最高裁判所からは、簡易裁判所の機能の充実について、この検討会でも幅広い視点から御検討いただきたいというようなプレゼンテーションがございましたので、ご参考までに。
○ 簡易裁判所自身の事物管轄をもって、民事事件の場合にはこの程度の容量になるんだろうという測定ができるんでしょうけれども、行政事件とか刑事事件も加わってくるというと、そもそもキャパシティがどうなるんだということになるだろうと思うので、一応は民事事件だけを考えて、全体としてもそうだということですね。わかりました。
○ お尋ねしたいんですが、支払督促の中にみなし弁済といわれるようなものも含まれてきているのではないかと推測するんですが、そのあたりについて状況がよくわからないものですから教えていただけたらと思うんですが。
(最高裁判所)
今、資料を持っておりませんので、後でまた必要であれば、事務局の方から御指示いただいて、準備するようにいたしたいと思います。
○ お願いします。
○ 委員に確認させていただきたいんですが、支払督促の問題が先ほどから出ておりますが、支払督促は簡易裁判所がやるということになっていて、金額の制限はないんですね。500万円でも1,000万円でも支払督促は簡易裁判所ですから。そうしますと、今、事物管轄を90万円から動かそうか、動かさないかということを議論している。支払督促そのものは影響しない、関係ないというのが私の頭なんですが。
○ はい。事物管轄の問題と直接には関係ないかもしれません、すみません。状況として、みなし弁済というのも広くあると伺うものですから、どういうような形でこの簡易裁判所で扱われているかということなど教えていただければと思っております。
○ ちょっと質問なんですが、前回、最高裁判所からいただいた資料8の16ページの簡易裁判所と地方裁判所の事件比率を見ると、ちょうど昭和57年の事物管轄拡大で簡易裁判所が一時増えて、また昭和62、3年ごろから5〜6年間すごく減りますね。これは何か事情があったんでしょうか。バブルで訴額が上がってきたのか、もしかしたら、簡易裁判所が統廃合された時期かとも思うんですが、よく私も記憶がなくて。
(最高裁判所)
前回の資料8の18ページを御覧いただきますと、簡易裁判所の訴訟事件数が載っております。これを御覧いただきますと、昭和59年ごろから平成2年ごろにかけまして、簡易裁判所の事件が減っている状況がございます。これは、恐らく、一つは経済状況の影響で、バブル期になって訴訟事件が減ったということと、それからもう一つ、前回申し上げましたような貸金業法の施行によりまして、貸金事件が減少したということがございますので、この辺の影響ではないだろうかというように思われます。
○ 統廃合は、平成何年ごろですか。
(最高裁判所)
統廃合は、簡易裁判所が昭和62年、支部が平成元年でございます。統廃合は、事物管轄を変えたわけでもありませんので、無関係ではないかと思われます。
□ 資料2、3、せっかくつくっていただいて、いろいろなことがここから読めると思うんですが、例えば、資料2の1ページからいきますと、「国民により身近な簡易裁判所の特質」という言葉が司法制度改革審議会意見書でも出てきますが、「国民により身近」というのが場所的な、空間的な身近さだとすると、438のうち253は地裁と同じ場所、同じ建物の中にある、あるいは支部も含めてですね。185が本当に簡裁だけがある。これは先ほど統廃合という話が出ましたが、減らされてこうなったわけで、これを増やすということはそもそも我々の管轄権限の中かどうかわかりませんが、仮にそうだとしても、それは昨今の情勢から無理であろうということですね。そこのあたりどうなんでしょうか。空間的により身近だと。しかし、東京の23区内にいる人は霞が関の地方裁判所に行くのと簡易裁判所に行くのと、すぐ近くで3分もかからない程度ですね。大都市であれば一般的にそうですね。大阪にしろ、福岡にしろ、札幌にしろ。しかし、いわゆる郡部といわれるところですと、簡易裁判所の方が近いかもしれないということですかね。あと、「国民により身近な」というのは、手続的な短さですかね。口頭で訴えの提起ができるというのは条文だけの話で、実際にはそうそう簡単にはできないんですが、しかし、訴訟法から見ますと、地方裁判所よりははるかに簡単なことになっていますが、一般の人から見ればやっぱり難しいかもしれませんけれども、簡易書式などがありますから、行きやすい。そして、建物自体も、一般には、簡易裁判所の方が威圧感は少ないですね。最高裁判所の建物とは全然違いますから。そういう手続的な親しみやすさ、親しみやすいとまでは言いませんが、威圧感はないという意味での国民からより身近なという、2つの要素があるんでしょうが、これは維持するのに値するのか、そんなに重視する必要はないのかという議論になっていくんでしょうか。私が先取りしたようなことがありますが、独立簡易裁判所と言われる、簡易裁判所の建物だけが独立にある、地方裁判所の本庁や支部とは別だという、これを増やせというのは、昨今の予算上、公務員の定員状況から考えて無理だと。そこはよろしいでしょうか。
○ 今、探したんですがわからなかったんですけど、「裁判所の設置の見直し」というのが意見書にどこかありましたね。これは、ここの分野かどうかはっきり覚えていませんけれども、そういう意味からいえば、随分昔から支部の場所とか簡易裁判所の場所が置いたままで、そのままで統廃合されてきていますね。だから、人口動態とか経済状況から見て、それをもう一度具体的に見直してみる、場所について見直すという作業も必要なのかなという気もしますね。便利さという点で、先ほど東京を見たら、島部がものすごく事件が少ない。相談場所も少ないからと言われると、こちらも痛いところはあるんですけれども、もう一度全国的に見直して、国民の便利な独立簡易裁判所の場所というのも考える必要はあるんじゃないかという気はしますね。
○ 見直しは、しかし拡大とは直結しないということなんでしょうね。
○ 拡大がやっぱりベターなんだと思いますが、ほかの要素もあるので何とも言えませんけれど、国民に便利という意味では、地方裁判所又は支部に設置した簡裁よりも、独立簡易裁判所の需要の方が多いはずですね。ところが、独立簡易裁判所が大体は不便なところに今でもあるから、裁判官の常駐もあまりないということで、不便を強いているような状況があるんでしょうけれども、そういう意味では、独立簡易裁判所を増やせるかどうか、もう一度、場所について見直したらどうかというのも一つの視点だろうと思います。
○ 今、委員御指摘の資料2の6ページ、7ページを見ますと、事件数でいいますと、八丈島その他は簡易裁判所がありますけれども、事件数は非常に少ない。7ページを見ますと、新島簡易裁判所だけは伊豆大島簡易裁判所から填補で人間は融通しているのでしょうが、八丈島、伊豆大島は、少なくても、とにかく置いておかなければいかんということですね。
○ それが島郡の厳しさでしょうね。たしか、地方裁判所支部で事件数が一番少ないのが隠岐にある西郷支部ですね。そうかといって、あそこもある以上はもちろん削れないでしょうし、だから事件数ばかりは言えない部分ももちろんありますけれども、もう少し場所について、交通の便も変わってきているので、場所も一応考える必要はあるのかなと思いますね。
□ 場所の見直しをどこかでやっていただくとして、さて、それで事物管轄の方はどうしましょうかということになったときには、どう考えるんでしょうか。少し大きな事件も身近でやってもらえるという方向にいくのか、大きな事件はやっぱり地方裁判所でやっていただくということになるのか、あるいは、前回、委員から御提案があったように、競合管轄の拡大という形でいくのか。
○ 資料3の経済指標、それから前回、最高裁判所が出された経済指標の動向、これはほぼ同じで、追加になったんだろうと思いますけれども、これを見ても、昭和57年までは大体全部右肩上がりなんですね。これ、最高裁判所の表を見ると一番わかりやすいんですが、ほとんど上がっていないという状況になりますね。しかも、今日の資料3を見ると、大体、公務員給与を除いて下がり気味になっているということですね。公務員給与も今風前の灯火なんでしょうし。そういう意味からいうと、経済指標の動向から見て、しかも、今決めると少なくとも10年くらいはこのままという、今回20年ぶりでしょうか、ということになると、そんなにこれは増やすというような経済情勢ではないような気がします。
○ 実際に、簡易裁判所で扱われている事件の訴額から言いましても、今、管轄をうんと拡大する必要があるかどうかというような数字が見られると思うんですね。拡大することによって得られるメリットがあるとしたらどういうことなのかということなんですが、この前、ちょっと心配で申し上げたんですが、今日の資料にもございますけれども、人数が決められていて、裁判所法第32条によって、それから裁判所職員定員法等によって定員が806人と定められているという御説明をいただいたんですが、この人数が拡大される約束があれば、また少し範囲を広げることも考えられると思うんですが、今、随分、皆さん、お忙しそうな印象を受けておりますので、そういうことから考えましても、あと、先ほどの訴額の点から言いましても、今、委員がおっしゃったようなことが言えるのではないか。私も、あまり上げていくという必要があるのかどうかという気もいたしますが。
□ 今、委員が言われた、事物管轄を上げることによって、一般国民といいますか、利用者にとってどういうメリットがあるのかと。
○ 今、お二人から意見が出たので、先ほど座長からも御指摘のあったとおりで、事物管轄を変えることによってどういうメリットがあるかという話だと思うんですが、これらの表を見ますと、司法へのアクセスという観点から見ると、一つは、簡易裁判所が近くにある場合がありますから、非常にそこに行きやすいという面。それから、そこで行われる手続も非常に簡易であって、先ほど御指摘があったように、一回審理の原則というのがございます。そうしますと、近くにあってしかも1回だけで済むということになりますと、利用者の立場からみると、恐らくコストが安くて済むというメリットがあるだろうと思うんですね。利用者のそういう面だけを非常に強調しますと、これは事物管轄を思い切り上げてしまえという議論も本当はあり得るのかもしれません。ただ、増やせばいいかというと、先ほどから御指摘のあるとおり、簡易裁判所の手続にそぐわないような事件までが入ってくる可能性が一つやはり心配される。そうなってしまうと、結局、今の簡易裁判所で一定の実績を上げている、その実績を維持できなくなる可能性がある。あまり上げ過ぎるとですね。それから、もっと言うと、今は地方裁判所、簡易裁判所ということで、それぞれ一つの体制、制度ができ上がっていますから、今の制度の枠組みを壊しかねない。根本から見直してしまうということであれば、それはまたあり得るのかもしれませんが、少なくともそこまで今我々の検討会で見直そうということではないと思いますから、そうしますと、上げるにしても、当然、この経済指標等が恐らく基準になると思いますが、その限度で抑制的にやるという、お二人の意見と同じだと思いますが、そういう感じになるのではないかと思います。
○ 今、三方のおっしゃるとおりと同じような意見を述べましたんですが、場所、空間的な近接性についても、やはりもう一つ考えなければいけない要素があると思うわけです。というのは、2人の当事者がいるということですね。1人の当事者が1人で行って手続が済むのであれば、その方の住居所に近いところの簡易裁判所が使えるというのが非常に大きなメリットなんですが、2人の当事者がいる。それで、2人が遠く離れて住んでいる場合には、片方にとっては便利でも、片方にとっては便利でないと。むしろ、都市部の本庁所在地でやっていただいた方がずっと便利だということもあり得るわけで、空間的なアクセスの便利さというのは、それほど私は強調していいものではないと思うわけです。例えば、先ほど離島の簡易裁判所の話が出ましたが、同じ離島内に原告、被告とも住んでいる場合、これは非常にお二人にとってありがたい話ですが、片方は23区内に住んでいて、片方は離島だというときに、どちらに行くかというのは大変な問題になってくるわけですので、そういうことを考えると、必ずしも空間的な近接性というのは、強調すべきでは、してもいいんですが、それにあまり重きを置く必要はないんだろうと思います。あとは人的資源の適正配分の問題になってきますが、現状を考えると、少額訴訟の上限額を上げるということも司法制度改革審議会の意見で出ているということを考えますと、人的資源の適正配分の観点からも、いきなり簡裁の上限を上げて、難易度の高い事件を呼び込むということは、あまり適切ではないのではないか。こういう議論をしますと、「難易度の高い事件は裁量移送をすればいいじゃないですか」という反論があり得るところなんですが、裁量移送の比率が増えてくると、何のために簡易裁判所の事物管轄を上げたのかということで、かえって国民の不信を招く恐れもありますので、いずれまた10年たてば見直すということになろうかと思いますが、差し当たりは大きく上げずに、その間の日本の経済動向等を見ながら、また考えていくべき問題だろうと考えております。
○ 人的資源の問題なのですけれども、先ほど簡易裁判所の判事が760名ということでしたが、これをどこまで拡大することが現実に可能なのか。仮に拡大するとした場合、そのあたりでどのような改革が必要になってくるのか、そういったことも考慮しなければいけないかと思うんですが。
(最高裁判所)
現在の裁判所の増員の考え方でございますが、事務量に応じた増員ということになろうかと思います。その意味では、事件数の動向等が一番大きな要素でございます。ただ、一方、事件数が増えればそれに比例して事務量が増えるかと申しますと、それと同時に手続の見直し、あるいは訴訟運営のやり方の見直しといった問題もございます。こうした点を総合勘案しながら検討していくということになってまいります。
ここ10年間の増員で申し上げますと、これまで判事補ないし判事の増員をお願いしてきたところでございまして、地方裁判所の民事訴訟事件、破産事件、それから執行事件の迅速処理を視野に置いて増員をお願いしてきたところでございます。過去5年間で申し上げましても、約200人の増員を認めていただいてきているわけでありまして、相当規模の増員を図っていただいていると思っております。
簡易裁判所につきましては、確かに事件数が非常に増えてきているところでありますが、一方で、これまでの簡易裁判所の事件というのは、ほとんどが類型的な事件であります。例えば、訴訟事件を取り上げましても、そのほとんどが先ほど事務局から御説明がございましたとおり、クレジットあるいはサラ金の事件でございまして、事件数の割には争点が少なく、事実関係に争いがあまりないものがほとんどでございますので、事件数の割には事務量がそれほど増えなかったということでございまして、これまで裁判官については、ここ10年間は簡易裁判所判事の増員はお願いしてきておりません。むしろ、その分は地方裁判所への増員をお願いしてきているということでございます。
今後でありますが、もちろん簡易裁判所の事件数の動向ということも考えて、さらにこうした事物管轄の拡大の影響ということも十分考えていかなければいけないわけでありますが、現在考えております増員の方向としましては、現在の地方裁判所の訴訟事件の審理期間を半減するということを目標にいたしまして、現在の事件数を前提にしても、この10年間で判事約500人の増員をお願いしていきたいと考えているところであります。さらに事件の動向によって、これに上乗せした増員をお願いしなければいけない場合もあろうかと思います。現在の重点としましては、地方裁判所の訴訟事件の審理期間の半減を大きな目標にして増員をお願いしていきたいと考えているところでございます。これは、先日、小泉総理から、判決を2年以内にするように、それを目標に整備すべきであるという御発言をいただいたところでございますが、その方向性とも一致するものと考えております。以上でございます。
□ 実態を横から見ただけですが、裁判官も大変ですが、裁判所書記官、裁判所事務官の方はもっと大変だという感じがしますが、簡易裁判所の裁判所事務官、裁判所書記官はいかがですか。
(最高裁判所)
御指摘のとおりでございまして、簡易裁判所の裁判所書記官は、事前準備等でかなり繁忙な状況に至っております。そういう意味では、これまで増員という形ではないにしても、裁判所事務官から裁判所書記官への振替えというものもあわせてお願いしてきているところでありまして、実際の配置としましては、簡易裁判所の方にもかなり手当てをしてきているところでございます。手元に実際の人数等は持ち合わせておりませんが、相当程度の配置をしてきているという状況ではございます。
○ 簡易裁判所判事の給源の問題について若干お伺いしたいんですが、私が理解しているところでは、かなりの割合を、裁判所事務官ないし裁判所書記官の中から志願する人が簡易裁判所判事になっておられると理解しているんですが、私、京都地方裁判所管内の推薦委員会の委員でもありますので、若干、その話を京都地方裁判所の所長や家庭裁判所の所長とお話ししたことがあるんですが、志願者がそう多くはない状況になってきているのではないのかなという印象を持っていると。これは最高裁判所で見られるのと、地方裁判所の管内だけの問題ではかなり印象が違うのかもしれませんが、仮に増員などを考えた場合、そちらの給源が今後伸びていく見込みはあるものなんでしょうか。
(最高裁判所)
簡易裁判所判事の選考に当たりましては、法律科目の試験等を実施しておりまして、やはり一定の能力を備えた者でなければ、選考委員会で選考されないということであります。これまでのところ、昨年、一昨年はかなり新しく採用した人の数が増えておりまして、約50名ないし60名の簡易裁判所判事を採用してきているところであります。簡易裁判所判事は、定年に達する方も最近増えておりまして、一つの大量退職時代というものがあって、最近、採用数を増やしているところであります。今手元に数字を持ち合わせておりませんので、志望者が増えている傾向にあるのか、あるいは減少傾向にあるのか正確に申し上げられませんが、かなりの志望者はある中で、きちんとした選考で優秀な人を採用してきているということであり、急に増やすということは難しいわけであります。なお、選考の科目でございますが、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法についての試験を実施しております。
○ 付け加えさせていただきますと、私は、司法研修所におりましたときに簡易裁判所判事の研修などをやっておりまして、簡易裁判所判事さんと身近に接する機会が多かったわけですが、大変優秀な人が選ばれてきている、本当に頼りになるなという感じは実感として持っております。簡易裁判所判事の志望が全体として増えているのか増えていないのかは承知しておりませんけれども、かなりの倍率を勝ち抜いてきて選ばれてきた人たちですので、質的にも相当レベルが高いと理解していただいていいと思います。今、委員が言われた、志望がもし減っているというような状況があるとすれば、簡易裁判所は先ほどのアクセスの逆で、独立簡易裁判所などは、僻地とまではいいませんけれども、かなり辺鄙なところもありまして、そこに転勤するということについてのためらいというのは要素としてあるのではないか。裁判官は、どこへ行っても、良質な司法サービスを提供しなければいけないという使命感に燃えて裁判官になるわけですけれども、ただ家族のこととか子弟の教育とかいうと、やはりそれはためらう要素になりまして、こういう時代ですから、そういった要素が全く影響していないということはないと思います。以上です。
○ 私が被資格者の特任判事の給源の話をしましたのは、別に質に問題があるという話ではなくて、私も何人か推薦の決議に立ち会ったことがあるのですが、それは推薦できる、していいなと思う方は本当にすばらしい方ばかりですので、その点については全く問題があるという趣旨で発言したのではありません。給源が確保できるかどうかというのは重大な問題でありまして、そうでないと、結局、判事補をこちらの方に回してくるという形で、人的な資源の配分という点でやや疑問が残るのかという点で事実確認をしたかったということだけでございます。それと1点、今の委員がおっしゃった「独立簡易裁判所に行くのがやはりいろいろと」というのは、どうも京都の簡易裁判所判事推薦委員会でも同様のことを耳にしたことがございます。
□ 今までの議論の印象的まとめですが、裁判所全体としては、今後はますます地方裁判所の拡充、特に人的に、裁判官を地方裁判所に持っていく必要があるだろう。総理大臣が民事事件は2年以内に終われと言っているそうですから、そうなっていく。それはある程度見える方向だと。その中で、簡易裁判所に大幅に裁判官、裁判所書記官、裁判所事務官を動かすということは、現実性からいくとそれほど期待できることでもない。そうだとすると、事物管轄を大幅に上げて、事件が簡易裁判所にたくさん来るというのは必ずしも現実的な選択ではないということに、そんな印象を受けてお聞きしたんです。
あともう一つ、いろいろ改革がありますから、簡易裁判所は司法書士に訴訟代理権が認められましたね。そうすると、弁護士さんにお願いしなくてもできる。少額訴訟は自分でできるわけですが、上の方の事件は司法書士を使えばということで、その意味では、アクセスは増大し得る余地があるわけですね。この辺は一応御議論はしておいていただきたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
○ スペキュレーションが入るので、幾つかのシナリオがあり得るのだろうと思いますけれども、一つのシナリオは、事件数が増えるというのもあり得るでしょうし、そのために簡易裁判所が忙しくなるというシナリオもありますが、ただ司法書士さんが適切に代理されることによって、事件は増えたけれども、裁判官は事務量が楽になって、増えた割に前とは変わらない忙しさで済むというシナリオもあり得るところで、その辺はどれだけ司法書士さんの代理というものが実効性を持って出されるかということにかなり依存していまして、そのあたりは蓋を開けてみないとわからない。できれば、後者のシナリオであることが一番望ましいわけですが、まだ現状ではわかりませんし、それに、双方ともつくかどうかというのはかなり問題が残ると思いますね。原告は、代理人がつく割合が今よりは増えるのだろうということはかなり予測がつくのですが、被告側がどうなのかというところが、私はちょっとよくわからないなと思っておりまして、双方つきますと、これはかなり理想的な状態で事件処理が進むのだろうと思いますが、片方だけだと、裁判官にとってはかなり手間のかかる事件になってくるのだろうというような気がいたします。
○ そこを上げると、簡易裁判所の機能というか、特質が変わってしまうだろうと思うんですね。もともと、先ほど皆さんがおっしゃったように、軽微な事件を常識的な判断をするというのが本来の特質で、そのために、より市民に近い判事というような発想だったのだと思います。ですから、当事者側も、本来本人でやれる範囲というのが本来の目的だったんです。それに、さらに最近、少しずつ法律が難しくなってきているから、司法書士さんがお手伝いができるということは大変いいことだと思いますが、やはりそれにしても簡易裁判所の機能の特色は残したというのが前提だと思いますので、訴額はそんなに上げない方がというふうに思います。
○ 司法書士さんも代理に加わっていただけるということは、一般の素人にしましては、とても心強いことだろうと思うんですけれども、ただ現実には、本人の訴訟が大変多いですね、特に少額訴訟の場合などには。それは、実際に非常に困った状況で訴えられる側が、サラ金、クレジットなどを借りている人たちというのは、追い詰められた状況にあるということもさることながら、弁護士さんにしても、司法書士さんにしても、私どもなどにしてみますと、身近でありそうで身近ではないんですね。そういういろいろな事態に直面してお願いするケースというのもあるわけですが、不動産の関係などで司法書士さんのお世話になるとかいうようなことは多くの人が経験することなのかもしれませんけれども、いずれにしましても、日常的に料金体系、どれくらいでどういうことをやっていただけるかというサービス業としての情報が大変少ないんですね。あえて言わせていただくならば、大変単純な書類をつくっていただくだけで、すぐにお金が大分かかるというような、司法書士さんの場合ですが、例えば不動産関係などでもあるわけですね。それは批判することになってしまいますけれども、つまりリーズナブルな金額で、情報も多くあれば、弁護士さんにしても高いというイメージはぬぐいきれませんし、料金体系の表示、情報提供、そして適切なるサービスということをお願いしたいと思っております。そういうようなことをしていただけるということは、しかし事物管轄の問題と絡めて考えますと、果たしてどうなのか。専門家にお願いすることによって、簡易裁判所の皆さんが仕事が楽になってきて、もっと許容量が増えるということにつながるのかもしれませんが、現実的に、まず条件整備の方が先ではないかと思われるんですね。そういうことも同時進行でやっていただけるならば、ということが言えますが、ただ、今日御用意いただいたグラフも、先を見ますとみんな下がってきそうな気配なんですね。昨年度と今年の経済の推移を見ましても、デフレが進んできておりますし、失業率は高いし、経済成長率もマイナス1%でしたか、それくらいのところにというデータがありまして、長いスパンで考えていかなければいけないとは思うんですけれども、やはり材料としては、あまり増やすにふさわしいような情報というのはないような気がいたしております。
□ 司法書士の訴訟代理権が認められたことは、一般利用者からのアクセスの面でプラスだとは思いますが、まだできたばかりで、どういうふうに展開するか、必ずしもよくわかっているわけではない。特に、委員から御指摘があったように、被告側につくかどうか、まだまだ不透明だと。そうだとしますと、プラス要因にはなるわけですが、それをテコにして大幅に引き上げるというにはまだちょっと時期尚早だと。こういうのが大体の御意見でしょうか。
そうすると、大体、皆さん、経済指標は考えましょうという御意見が強いようですが、現在の90万円がいいか悪いかというのは、これは、昔、弁護士会は非常に批判していたんですね。民事訴訟法学者の考えですが、最高裁判所の負担軽減という面も考慮して簡易裁判所の管轄を決めたというのが、表立った文章にはないかもしれませんが、実際はそうだろうというふうに学者側としては思っているわけで、今回、そういう要素はないんですね。90万円のときはちょっとそういう、あるいは30万円、90万円と上がっていったときに、多少そういう要素はありましたけれども、現在の90万円を基本にするのはもちろんなんですが、90万円自身も、出発点は出発点なんですが、多少、クエスチョンマークつきの出発点だということにもなるんでしょうか。
それから、前後して申しわけございません。前回、御指摘いただいた競合管轄を増やすというアイデアがございましたね。これは、私はアイデアとして大変すばらしいものだと思っているんですが、ただ、今日も御指摘ございましたが、今日の資料を見ましても、必ずしもうまく使える制度かどうか、確信を持って言えるわけでもない。また、逆に裁量移送がどんどん行われるようになってしまうと、何のために事物管轄を上げたのかという批判にもなりかねない。両刃の剣的なところもあるということですので、有力な、おもしろい貴重なアイデアだということではあったんですが、必ずしも皆さんの多数意見とまでは言えないという了解でよろしいでしょうか。
○ 地方裁判所からの移送ですが、経験したことがあります。すごい時間がかかるんですね。優に半年かかりまして、申立書を出して、反論を出して、再反論を出して。結局、半年かかりました。移送は理由が要るんですね。裁判所も判断しなければならないということで、当事者の負担もあるし、裁判所の負担もあり、時間もかかるということで、例外的な制度というのはあまりつくるべきではないんだなという感じがしました。ですから、座長がおっしゃるように、移送が頻発するような制度は無理な制度設計だと思いますし、競合というのは、簡易裁判所の特質を阻害してしまうような感じもするので、今はまだやらない方がいいのではないかと思います。
□ 経済指標の資料3の最初を見ますと、184から113.8まであるんですが、何かご意見がございましたらどうぞ。事務局としては、次回あたり、たたき台を出していただけるようになりますか。もうちょっと何か御議論いただけますか。
● 基本的な考え方の方向性は出ていますので、そういうところを次回にまとめて出したいと思います。
○ 今、現状をざっくばらんに、簡易裁判所の判事と地方裁判所の判事と、どっちが忙しいという感覚なんですか。
○ どっちも忙しいですね。
○ 全く同じですか。
○ 大分違うと思うんですね。地方裁判所は大体極めて忙しい。簡易裁判所は独立簡易裁判所などで非常に暇なところもありますから、平均というのはちょっと出しにくいと思うんですが、どうやって比べていいのかちょっとわかりませんけれども、どっちも「忙しい、忙しい」と言っていますね。ただ、全くお互い余力がないかといえば、審理の方法を工夫するなり、改善の方法はいくらでもありますので、多少の余力はお互い持ちながら、大変な思いをしているということでは同じじゃないでしょうか。
○ そういう中で簡易裁判所の判事の給料が安いというのは、やはり能力が低いから安いと、こうなっているわけですか。簡単なものを処理するから安いということなんですか。
○ もともと簡易裁判所は、複雑でない事件を迅速にということですからね。ただ、簡易裁判所判事から見れば、刑事の令状事件もあるし、刑事事件もありますし、調停もありますし。調停は、調停委員の方がかなり協力してくださるわけですけれども、特定調停、要するにクレサラ破産、破産までいっていないわけですが、これはどんどん増えてきていますし、またどんどん今後も増えるでしょうしね。東京簡易裁判所は分業ですけれども、多くの簡易裁判所は何でもかんでもやらなければいけないということで、そういう意味では頭の切り換えが大変なんでしょうね。
○ 小さい簡易裁判所で定員の少ないところは、夜中、いつ起こされるかわからないですから、令状事件で。やはりそういう負担というのも、東京簡易裁判所は事件処理で負担が重いんでしょうけれども、令状を一人でやらなければいけないところはいつ起こされるかわかりませんから、そういうことも含めて非常に忙しいところはあるんじゃないでしょうか。まあ、事件数は少ないですから、その分、遠いところへ行って、不便をしのんでやっておられるわけですが、それを非難するのもどうかと思いますし、全般的にはやはりお忙しいんだということではないかと思います。
○ 簡単な事件だというのは、訴額に関係なく、簡単な事件は簡単な事件だと。そうすると、発想を変えて、ここで書いてある立替金、求償金、貸金、こういうものは1億であろうが、10億であろうが、全部簡易裁判所だという考え方もあるわけですね。簡易裁判所だから、デュープロセスが図れないということは全くないですね。小さな事件だからいい加減にやろうということは全くないわけですから、簡単な事件というのは別に訴額とは関係ないのであって、こちらに立替金云々と整理されていますけれども、そういうものは全部簡易裁判所の専属にするのだと。
○ 立替金というのは、そういう傾向は間違いなくありまして、あと私たちが実際に仕事をしている実感としても、今の90万、100万前後というのが一応の基準になって、これ、絶妙の棲み分けだという感じはしますね。
○ 立替金といっても、個人が相手の立替金の場合と、非常に金額の大きい、会社が絡むような話になると、その決裁手続からいろいろな複雑な経過をたどるということはままあるんだろうと思うんです。だから、その金額が複雑さをある程度あらわしているというのは、今、委員がおっしゃったように、相当に正しい面があるだろうという気はします。
○ 前にちょっとお話し申し上げたことがあるんですが、消費者のトラブルの場合、平均で86万だったですか、80万円台なんですね。もちろん、高いものもいっぱい、変額保険ですとか、その他多額の被害に遭っている方もいまして、億を超える方もいます。そういう意味では、まことに金額というのは難しいものですけれども、全体的に考えていく場合、ある程度、平均の数値を意識して、そしてどのあたりで分布しているかということを考えていくしかないのかなという気がいたしますので、そういう意味では、現在の数字というのはある程度理にかなっている、現状にも合っているのではないかという印象を持っております。
□ あと少額訴訟が絡むんですが、それは別のところで議論されているんですね。今、30万円を上げるか、あるいは上げないか。しかし、それはあまり管轄一般を議論する我々のときには考えなくていいんでしょうね。一番極端の話、少額裁判は500万円まで認める、我々の簡易裁判所の管轄は100万、例えば90万円どまりだという議論になってしまうと変な話になるんですが、そういうことは、学者は議論しますけれども、実際にはそう起きないでしょうから。また、多少、本末転倒な気がしますね。少額裁判のことを考えて簡易裁判所の管轄を考えるというのは本末転倒のような気もしますので、そこはあまり大きなファクターとしては考えない。そうだといたしますと、司法制度改革審議会の意見書にもありますように、「国民により身近な簡易裁判所の特質を十分に活かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点から、簡易裁判所の事物管轄について経済指標の動向等を考慮しつつ」考えてくれというのが我々に付託されたものですが、簡易裁判所の特質というものをやはり見失ってはいけないという議論が強い。しかし、経済指標の動向というのは、これは考慮せざるを得ないというのが、今日の多数の方々の方向だという理解でよろしいでしょうか。
(各委員異論なし)
□ では、そういうのが大体の検討会の判断だとして、ある程度煮詰まりましたから、次回あたり、より具体的なたたき台を事務局の方でつくっていただいて、金額の話は、上げますか上げませんかという話はあまり生産的ではありませんが、しかし、ある程度の数字は次回あたり議論していただければと思います。
(各委員了承)
□ ありがとうございました。それでは、もう一つの訴訟費用額確定手続の方、これも資料がございますので、事務局から説明をお願いいたします。
(2) 訴訟費用額確定手続について
● 資料4、1枚の資料ですが、御確認いただけますでしょうか。
資料4は、前回お示しした資料5がありまして、そこで訴訟費用額確定手続の簡素化に関してさまざまな検討事項を事務局なりに整理したものがありました。それらの検討結果を踏まえまして、事務局の方でこういった方向性、それから具体的な方向性が考えられるのではないかというところがある程度まとまりましたので、これについて御検討をお願いしたいということです。具体的には、資料4にありますように、訴訟費用額確定手続の簡素化について、次のような考え方を基本として見直しをすることはどうかということで、第1として「見直しの方向性」、第2として「見直しの具体的な方法」を掲げてございます。
第1の見直しの方向性につきましては、 2つの観点を挙げておりまして、その1番の観点は、訴訟費用額確定手続の申立ては訴訟の完結後に行われるという特質を踏まえ、訴訟費用については、可能な限り、記録上明らかな事実関係に基づき算定することができ、費用の疎明資料を提出する必要がないように改めるというものです。それから、2番としまして、訴訟費用を一方当事者のみが負担する場合において、確定を求める費用の額が記録上明らかなときは、相手方の陳述を求める手続を省略できるように改める、この2点です。すなわち、訴訟費用額確定手続というのは、訴訟手続で当事者がそれなりにかなりの負担をして、やっと訴訟手続が終わったと、その段階において、改めて訴訟に必要な費用を相手方に請求しようというときに、さらにそれまでの資料をもう一回調べたりとか、そういう手続負担をなるべく課さないようにする、それが第1のポイントでありまして、第2のポイントとしては、さらにその確定手続がなるべく簡素に、早く確定が得られるように、そういった方向性で改正するのが、訴訟費用額確定手続というものが訴訟の付随的な手続であるという特質を踏まえれば、適切なのではないかと考えた次第です。
第1の方では、なるべく記録上明らかな事実関係に基づき算定するようにしまして、当事者の方では資料を出さなくていいわけですので、第2の手続と相まちまして、申立てをすれば裁判所の方ですぐに処分がもらえるという手続を基本的な目標としているわけです。具体的な方法として、今、どこがネックになって、それをどう改正しようかというところですが、それが第2の見直しの具体的な方法です。これまでにも御検討いただきましたように、当事者等の旅費、日当及び宿泊料の額の算定ですが、これについては、証人の例により算定とすることとなっているのが現状ですが、証人の場合は、これから証人として呼ぼうというときに、その場で裁判所が算定して支払うということですが、訴訟の場合については、訴訟手続が場合によっては最高裁判所までいって確定して、それから第何回の弁論のときの旅費は幾らだったのかなというようなことになってしまうわけでして、しかもそれについて当事者の方で疎明資料を出さなければいけないということになると、極めて負担が重くなってしまうのではないか。実際にかかった旅費について、当事者がきちんと証明できる場合はそれでやっていただければよろしいのかと思いますが、そのような証明ができないような場合でも、それではなしというのではなくて、ある程度、旅行する距離に見合った定額を定めて、それによって算定することができるということにして、当事者にとってはその方法も選べるようにしてはどうかということです。この額は、どちらかというと実費でかかる額よりは多少安くなるかもしれませんが、交通の手段というのは、自動車交通等も利用されることになりますと、それなりに当事者の方にも選択の余地があると思われますので、利用に必要なガソリン代というような意味での、ある程度の距離に応じた定額というものをあらかじめ定めておいて、当事者には裁判所の方から、おたくの住所ですとこうなりますよというのが示されて、それではちょっと安過ぎるので実費を証明してきますといえば、またその方法も選べると、このような方法をとってはいかがかと考えている次第です。具体的な方法としてどういう距離をということになると、当事者の住所からの距離をいちいち調べるというのはかなり困難になると思われますので、予測可能な距離を出そうと思いますと、裁判所と裁判所の間の距離を目安にして算定することが、一番可能性としては、当事者の予測可能性という意味で考えられるのではないかと思っております。
次に、日当と宿泊料についても、実は、証人の場合については、具体的な場合に応じて裁判所の方で算定することになっていますけれども、当事者の場合は、原告になる立場、被告になる立場、それについて具体的な場合において変えるというのは逆に公平を害するということになりますので、それについては、一定の額であらかじめ定めておくということが適切ではないだろうか。そのことによって、当事者の方も、あらかじめ決まった額になるということですので、裁判所で個別に確定を求めるというような必要がなくなる、裁判所で個別に算定するという必要がなくなるということになろうかと思います。
第2の書類の書記料につきましては、これは、現在1枚150円というような算定方法をとっておりますし、書類の作成費用については、例えば、ファクスで送っても1回500円という提出費用が認められるということで、実際の訴訟手続における当事者の負担の実情であるとか、書類の作成提出の当事者の実際のコスト、そういったものと必ずしも今の算定方法自体がそぐわなくなっている。それから、書類の書記という形式的な手間暇をそれだけを評価するということではなくて、今、書類の作成というのは、技術の進歩で、文章をつくってからプリントアウトし、ファクスで送るというのがほぼ一体化しているということもできる状況にあること等を考慮して、書類の作成と提出は一体の評価ができるのではないか、しかも、その方法も多様化しているということからすると、当事者の公平等も考慮して、事件単位で一定額を定めておくことによって、例えば、訴訟に必要な書類だったのかどうかということを1枚ごとに相手方の意見を聞いて確定していくというような迂遠な手続をとらなくても済むようになるのではないか。そのことが書類作成費用、実際にかかった費用といってもかなり観念的な費用の場合が今では多いだろうと思いますので、そういった負担を事件単位の定額で評価してはどうか、これは事件単位といいましても、事件には多様な終わり方、多様な進行過程がございますので、そうしますと、評価できるのは最もシンプルに訴訟手続が進行した場合に最低限必要になる金額、評価できる金額を基礎として定額で評価してはいかがかと、このように考えている次第です。
□ それでは、資料4に即して御議論をお願いいたします。どこからでも、どなたからでもどうぞ。
○ 第1の1ですが、基本的な方向については私も賛成なんですが、「訴訟記録上明らかな事実関係」というときに、現状の訴訟記録のあり方を前提とするのか、あるいは、裁判所の方でもう少し訴訟記録のあり方について工夫していただくということが前提なのか、このあたりについて裁判所の方のお見通しなど、これは裁判所書記官の事務負担とも直結する問題ですので、何かお考えがあればお聞かせいただければと思うんですが。
□ 例えば、どのあたりですか。
○ 例えば、交通費ですと、出頭したときにタクシーの領収書を出すであるとか、そういうことを受け付けてくるのかどうかというあたりですね。
(最高裁判所)
証人の出頭の際の費用をその場で受け付けているかどうかということですか。
○ 当事者が出頭する際に、どこかの交通社の領収書でも何でもいいんですが、出してきたときにそれを訴訟記録に添付してくれて、後で争いになるということを避けるようなことまでお考えいただけるのかどうか。交通費の定額化についてはかなり反発もあり得るので、仮にそういうことができるのであれば、比較的すんなり受け入れてもらえるのかという気もするんですが、それは当然事務負担の問題との兼ね合いがありますので、それだけやって、やることに価値がある手続かどうかということも、あまり確定が求められないのであればやっても意味がないですし、そのあたりについてもしお見通しがあればということですが。
(最高裁判所)
今、即答はしかねますが、後で訴訟費用額確定の申立てがあることを前提にして、あらかじめ持っておくというのはどうかなとは思いますが、それは後でまた検討させていただきたいと思います。
○ 今のイメージでいいますと、負担が増えそうな気がします。できるだけ定額化という方向で何とかまとまるといいと思うんですが。
○ 定額化そのものが最終目標ではなくて、簡単に証明できて、すぐに金額が出てくるということが最終目標なんですね。まあ、この領収書が本当のタクシーの領収書かという争いはあまりないとは思いますが。きのう乗った別の料金ではないかと。もっとも、タクシー代をそのまま当事者の出頭費用として認めていいかどうかというのはまた問題があるんでしょうけれども。
● 今の点については、新たにそういった手続を設けるということまではこの案の中では考えてはおりませんが、定額も算定することができるということで、実費ももちろんできるということになりますが、実費の場合にはきちんと証明していただくということ、そこら辺も明らかにしていきたいと思うわけです。そうした場合に、裁判所が記録として保全するかどうかはともかくとして、この確定手続を今回明確化することによって、当事者はこういうものを残してくださいということを裁判所の手続の中で明確化するということが、利用者にとっては、仮に裁判所がそれを記録として受け付けるかどうかは別として、最終的に確定を求めるときにはこういうような資料が必要になりますということを明確にするという、そういった手続案内をすることは必要になってくるのではないかと思っております。
○ この1の「記録上明らかな事実関係」というのは、具体的な何か例示をすることになるんですか。
● 1と2からして、記録上明らかになると考えておりまして、通常必要になる費用というのは、まず訴え提起の手数料、これは記録上明らかですし、この1の旅費日当等は、出頭した回数さえわかれば、当事者の住所等も記録上明らかですので、それによって算定することができるようになるという前提で、訴えを提起して、手数料を払い、それから出頭し、書面を書いて提出したと。この範囲の手数料については、疎明資料が必要なくなると考えている次第です。
○ 具体的な方法などについては、これから先、例えば本人訴訟でなくて代理の方、弁護士さんとか司法書士さんにお願いしたような場合でも、私たち個人の場合でもそうですけれども、あまり複雑でないような、しかも人によって判断が狂わないようなフォームみたいなものが、どちらか選べる形で、あるとよろしいと思うんですね。それをコンピュータ処理などをすることも視野に入れた上での合理的な対策、対応が必要ではないかと考えております。
● 今、御指摘の点については、特に旅費の定額化につきましては、当事者が実費を使った場合については、その実費の証明あるいはどのルートだと幾らかかるということの証明をしていただくことになりまして、定額の場合は、通常、実費でかかるよりは少し安い程度の金額というのを予定しております。その安い程度の金額というのは、例えば、裁判所間の距離、当事者の住んでいるところの近くの裁判所と出頭した裁判所の間の距離などが考えられますが、それは事前に裁判所の方で確認できるようにしておきまして、窓口の裁判所書記官のところでパソコンですぐに検索して、幾らになりますということが御教示できる、そういった体制を目指しております。
○ 事務処理がしやすくなるとよろしいのではないかと思います。
● 当事者にも必ず明らかになる、つまり予測可能性も大事ですので、実際にどのくらい出るのかということは、最初から聞けばわかるという体制をつくっていきたいと考えております。
□ 今日、我々で考えなければいけないのは第2の1ですね。当事者の旅費その他は証人の場合と別の考え方を一本入れる。今までは証人と同じ扱いだったんですが、証人というのは出てきたときにすぐ計算できるけれども、当事者は先ほどの御説明のように、事件が終わってから何回だったかという計算をしますから、3年前にその運賃が幾らだったかというのは厄介きわまりないので、定額化の道も認めるということなんですが、ともあれ、証人と当事者を分けるという、この考え方は基本的にはよろしいですか。そして、今のように定まった額が嫌なら、実費の請求の道も用意はしておくということでよろしいですか。
第2の2が書記料、提出費用の統合等ということで、「書類の作成及び提出の費用」なんですが、これは今一番厄介なんですね。A4が1枚幾らで、何行書いてあるのが基準とか何かあるんですか。
● そこまではないです。
□ 昔はあったようですが、それの計算が弁護士がやる仕事かと弁護士も考えるようなそういうことだったようですが、そういうあたりをどこまで合理化できるのか。そもそも書記料、提出費用は要らないという議論も一時出たことがあるのですが、なくしてしまうというのも行き過ぎだということで、こういうふうに合理化するということなんですが、合理化の方向は結構なんですが、事件単位で定額化となると、どうでしょうか。これは簡易裁判所の事件に限りませんから、100億円争って、30回くらい口頭弁論の期日を開いて、書類もロッカーの棚4つ、5つというような事件と、極端なことを言えば、被告欠席で1回で終わった事件も同じということになるのかどうか。基本的な考え方は同じということもあり得ていいのかどうか、その辺ですね。
○ 今の点の前に、当事者と証人を別に扱うかという話ですが、ここの考え方というのは、完全に別ということではなくて、要するに実費でできると。ただそれは大変な場合には証明しなくてもいいですよという話ですから、ここを合理的に説明すれば、別の取り扱いをしても問題はないだろうという感じはいたします。
もう一つの書記料と提出費用の方は、先ほどから説明があるとおりで、これを個別にやるということは非常に不合理であることは間違いないし、ただ今座長がおっしゃいましたように、大規模訴訟、公害訴訟とか、そういうものをどう考えるかということはあることはあるんだと思うんですね。そのために特則を置くとすると、また非常に複雑な、何か合理的な説明ができる特則を置けるかということもありますし、そういうことになると、また今度は、ここでこう言うのがいいのかどうかわかりませんが、弁護士報酬の方にある程度それが含まれて、それがさらに訴訟費用として認められていくという方向性も一つあるのだろうと思いますので、ここは特則も置かず、定額でということで割り切るのが一番いいのだろうと思います。
□ 私もその方がいいとは思うんですが、ただ、現在やろうと思えばとれる額よりも、事件によって大幅に減る可能性があるわけですね。そこをどう説明するか。これも実費証明は認めておくとか何かやるとこれまた大変なことになりますし、事件単位に、例えば当事者が増えれば一定倍数を掛けるとか、そんなものもそれ自身合理性がどこまであるのかということにもなるのでしょうが、ただ、現在よりも低くなることを、少しくらいならいいんでしょうけれども、事件によってはかなり出るかもしれませんね。もう少しきめの細かい何かができるか。これは審級くらいは別に考えてもいいのかな。
● はい。
□ 審級くらいはいいでしょうね。もともとそう大した金額にはならないということかもしれませんが、一回出してもらったことがありましたね。第4回の資料10ですね。事件記録のサンプルをいただいて、その事件に即して計算していただいたのがこれですが、原告側でいっても、高いと言えば高いし、高くないと言えば高くないんですが、2の訴状副本書記料3枚で900円とか、4の委任状書記料150円とか、準備書面もあるので、幾らくらいなるんでしょうか、数千円にはなるんですかね。被告側もあります。準備書面も水増しでだらだら書けばたくさんもらえるというのも変だと。これはある程度割り切りですから、今日別にここは結論を出すつもりはありませんが。
では、予定した時刻を過ぎましたので、第1の見直しの方向性の1は、委員から御指摘のような点がございますので、その辺あたりは少し留保いたしますが、疎明資料を新たに提出する必要性をできるだけ減らすという、その方向は皆さんよろしいですか。
(各委員異論なし)
□ 第1の2はちょっと細かいことですね。完全に一方だけが負担する場合には、相手方の陳述を求める手続を省略できるように。原告全面勝訴で、訴訟費用も全部被告負担というようなときにはすぐに出るということですね。これも大体よろしいですか。
(各委員異論なし)
□ そうしますと、第2の1は、これは先ほど委員御指摘のように、証人と当事者を分けるというのはちょっと言い過ぎで、同じでもいいんだけれども、定まった額の定額化のルートも用意するということですので、これも大きな方向性はよろしいですか。
(各委員異論なし)
□ 第2の2の書記料について、これも方向性は定まった額というか、あまり計算しなくて済むように、すぐに出るようにしようということでいいんですが、ただ事件単位ということでいいのか。最後は委員からそれで割り切っていいのではないかという御意見もありましたが、もともと、普通の事件を考えますと、そんなに巨額になるわけではないんですが、ちょっとお考えいただくというあたりでよろしいでしょうか。
(各委員異論なし)
□ それでは、予定の3時半を過ぎておりますので、事務局から、今後の予定の御説明をお願いいたします。
(3) 今後の予定
● 9月30日と10月15日の予定につきましては、前回お示ししたとおり、平成15年の通常国会に法案提出を予定している各種課題について御検討をお願いしたいと思います。今日は御提出しておりませんが、手数料の問題と、今日御議論いただいた事物管轄の問題についてさらに詰めた方向性をお示しして御検討いただけるように準備したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
□ ちょっと日程が込んでおりますが、次回は9月30日ですね。
○ 時間を超過して恐縮なんですけれども、事物管轄の点でもう一点よろしいですか。
事物管轄をあげると商工ローン等、今の地方裁判所の事件が簡易裁判所の事件になってくるという御意見がございましたけれども、そもそも、普通、そういうものは、管轄合意を必ずやっていますね。それが上がることによって、商工ローンというものは、今まで東京地方裁判所を一審の専属管轄するとしていたのを、東京簡易裁判所に変えていくだろうということなんですか。今でも、簡易裁判所にしようが、90万円にかかわらず、全く関係なくやれるわけですね。例えば、1億円でも東京簡易裁判所でやろうといったら、それの方が上位概念になるわけですね。移送されるわけではないですね。
□ ええ、両当事者の合意があれば。
○ 金額が上がると、それによって定型的な貸付の問題が変わるというようなことが本当にあるのかなと思いましてね。両当事者として、消費者契約法でどうなっているかちょっとわかりませんけれども、恐らく、一方的な仲裁条項はどうかという議論がおありでしょうけれども、東京簡易裁判所にするか東京地方裁判所にするか、とにかく定型契約に書いてあったときに、東京簡易裁判所だからこれは無効だということにはならないだろうと思うんですね。ということになると、事物管轄を上げることに伴って、かなりの部分というのは何も変化が生じないのではないかという、商工ローン的なものは何も変わらないのではないかという気もしまして、そのあたり実態がどうなっているのかなと。
□ どうなっているかとか、どう動くかですね。
● 御指摘の点は、今日事務局で用意した資料ですと、資料2の8ページの統計で一応御説明をしたという趣旨です。商工ローンについてどうなるかということは、事務局としては、具体的な統計はありませんので、確実な御説明はできませんが、90万円を超える事件でも簡易裁判所で2万3,620件既に扱っておりまして、その中に立替金、求償金、それから貸金というのが入っておりまして、それが88.5%を占めている。事務局から御説明した趣旨は、90万円から120万円のところ、あるいは120万円から150万円というところ、こうしたところの地方裁判所の事件を見ますと、既に立替金とか貸金という事件は4割程度になっておりますので、そういった管轄合意等も活用されているのではないかという感じもしますが、ここら辺の事件になると、簡易裁判所の方にいっている事件の割合等は、既に全体として類型の多様性では違いが出てきます。ここが移っても商工ローンとか管轄合意を活用するような事件は変わらないのではないかと、おっしゃるところはそうなのではないかなと思いますが、商工ローンが問題だとか、そういう趣旨ではなくて、それ以外に多様な事件が地方裁判所の、この簡易裁判所の管轄を超えたところになると既に来ているのではなかろうかと。事物管轄を変えれば、そういった事件をそれなりに簡易裁判所の方で扱っていくということは予定しなければいけない問題だと、そういう趣旨で御説明した範囲にとどまっております。
○ はい、わかりました。いや、今の商工ローンの関係でとかいう議論はちょっとあったような気がしましたので。
□ では、次回は9月30日ですが、月曜日1時半ですね。今日ははどうもありがとうございました。