第1回配布資料一覧

資料1−2−(2)

司法制度改革審議会第11回会合資料より

民事訴訟手続とADRとの比較



   民 事 訴 訟 手 続 A D R
手続を主宰する構成員裁判官に限定裁判官に限定されない
(→各分野の専門家の活用が可能)
手続の公開公開非公開
(→プライバシーや営業・技術の秘密に関わる紛争を非公開の手続により解決可能)
紛争の解決基準実体法
(→和解による解決以外は、法律上の権利義務の存否の確認、義務履行の命令に限られる)
実体法にとらわれない
(→実体法以外の条理にかなった解決基準を採用し、紛争の実情に即した解決が可能)
事実の存否に対する判断事実の存否を一義的に確定する必要
(→和解による解決以外では、心証が灰色であるときにも、証明責任によってその存否を確定)
必ずしも事実の存否を一義的に確定する必要はない(→心証の度合いに応じた柔軟な解決が可能)
利害関係人の参加(判断の対象が当事者間の権利関係に限定されるため)
和解によらない限り、当事者間のみの紛争を解決
(判断の対象が当事者の権利関係に限定されないため)
利害関係を持つ者を広く参加させることにより、紛争の全体的解決が可能
相手方の応答義務応訴の負担を負う
(→被告が応訴しない場合にも強制力を有する)
応答義務はない
(→当事者間の契約上、紛争が生じた場合にはADRによる紛争解決に応じる旨をあらかじめ定めておくことが考えられる)
解決結果の履行確保確定判決は債務名義(※1)となる
(→債務名義に基づいて強制執行が可能)
解決結果は原則として債務名義とはならない(※2)
(→債務の履行を確保するためには、解決結果に基づいて公正証書を作成しておく等の措置が考えられる)
手続に必要な費用(法律専門家による十分な主張・立証活動や専門家による鑑定が必要な場合があり)
申立費用の他に弁護士費用や鑑定費用が必要(※3)
(法律専門家に頼らずに、当事者自らの手で紛争を解決しうるため)
原則として弁護士費用や鑑定費用は不要

※1 債務名義とは、国の強制力によって執行されるべき請求権の存在及び範囲を表示し、かつ、法律により執行力を付与された公正の文書である。

※2 債務名義とは、国の強制力によって執行されるべき請求権の存在及び範囲を表示し、かつ、法律により執行力を付与された公正の文書である。民事調停手続における調停調書は、債務名義としての効力を有する。また、仲裁手続における仲裁判断についても債務名義としての効力を有するが、仲裁判断に基づいて強制執行を行うためには、その仲裁判断に基づく強制執行を許可することを宣言した執行判決を得なければならない。

※3 新民事訴訟法(平成10年施行)により新設された簡裁の少額訴訟制度では、30万円以下の少額な請求は、弁護士に頼らず、容易に当事者自らの手で訴訟を行うことができる。

(参考文献) 小島武司・伊藤眞編「裁判外紛争処理法」有斐閣