資料1−3−(3)
【司法制度改革審議会第52回会合資料より】
13.3.19 竹 下 守 夫 |
【中間報告の主な提言事項】
〇司法の中核たる裁判機能について、これを拡充し、国民にとって一層利用しやすくしていくことに格段の努力を傾注すべきことは当然であるが、これに加えて、ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充・活性化を図っていくべき。 〇各ADRそれぞれの特長を活かしつつその育成・充実を図るため、裁判所、関係省庁や関係機関が密接に連携して必要な基盤整備を推進すべき。 〇ADRの適切な担い手の確保のための基盤整備、ADRを含む司法に関する総合的な情報提供、相談体制の整備等を行うべき。 〇ADRと裁判手続との情報面での連携強化の一環としては、裁判所から判例情報や事件進行のノウハウをADRへ積極的に提供すべきであり、ADRを含む司法に関する総合的な情報提供、相談窓口を整備すべき。 〇ADRと裁判手続との人材面での連携強化の一環としては、裁判所とADRとの間あるいはADR相互間での人材の相互交流や、知識やノウハウの共有化を促進すべき。 |
(1)相談窓口(アクセス・ポイント)の整備・連携
〇裁判所、弁護士会、地方公共団体・消費生活センター等の窓口を整備し、適切な人員を配置した上で、パンフレット、FAXサービス、ホームページ等を活用した情報提供を一層充実させるべき。
〇各窓口においては、裁判所の手続、各種ADR、法律相談、法律扶助の仕組みなど、司法に関する総合的な情報をワン・ストップで提供できるよう、関係機関等が必要な連携方策を講じるべき。
(2)情報技術(IT)を活用した情報の提供・共有
〇インターネット上にADRの総合窓口サイト(ポータル・サイト)を整備し、裁判所も含む関係機関が積極的に参加(相互リンク)すべき。これにより、利用者の利便の向上はもとより、関係機関間の情報共有の促進が期待される。
(3)情報内容の一層の充実
〇提供する情報内容については、手続や機関に関する情報のみならず、担い手や解決事例等に関する情報も含め、可能なところから鋭意充実を図っていくべき。
〇その前提として、裁判所も含む公的機関において、プライバシー・秘密保持にも十分配慮しつつ、情報開示を推進すべき。民間ADRにおいても、自発的な情報開示を進めることが信頼性向上に資すると考えられる。
〇関係機関間の情報の開示・共有が定着した段階で、関係機関間で案件の振分け、紹介、移送等を円滑に行うための仕組みも視野に入れた検討を行うべき。
(参考)ADRに関し、開示・共有が望まれる情報の例 ★ 手続に関する情報 − 標準的手続、費用、審理期間の目安など ★ 機関に関する情報 − 中立性(第三者性)の度合い、処理実績など ★ 担い手に関する情報 − 担い手(候補者)、専門分野・実績など ★ 解決事例・解決基準 ★ その他(紛争処理の知識・技能、調査研究、研修情報など) |
(1)紛争解決に関する情報の共有
〇紛争解決に関する情報として、とりわけ裁判所の判例情報等の開示・提供を抜本的に充実させるべき。
〇各ADR機関においても、プライバシー・秘密保持との関係に留意しつつ、解決事例・解決基準等に関する情報の開示・共有を図るべき。
(2)担い手の確保のための連携
〇担い手(候補者)リストや、担い手の専門分野や実績等の情報の開示・共有を図るべき。
〇ADRの担い手に必要な知識・技能等に関し、調査研究の成果も含め、情報・ノウハウの共有を図った上で、担い手の資質確保・向上のため、研修の充実を検討すべき。その際、法曹養成制度、国民生活センターにおける研修、裁判所調停委員に対する研修等との有機的連携や、評価・認定の仕組みの整備なども視野に入れるべき。
〇法曹以外の専門家の活用、経験豊富な実務家の活用を進めるとともに、人材交流の促進を図るべき。
〇情報技術(IT)を活用したオンライン上のADRも、担い手の確保を容易にする一つの方法として考えられる。
〇ADRに関して関係省庁等が一同に会して検討する機会を持ったことは画期的であり、今後とも情報交換・連携していくことは重要。
〇ADRを行う主体(公的機関、民間等)や態様(相談・あっせん、調停、仲裁等)は様々なものがあるが、多様なADR機関が利用者ニーズに対応して切磋琢磨すると同時に、適切な連携を図っていくことは重要。
〇「金融トラブル連絡調整協議会」のような分野毎の連携も有意義。
〇裁判所の民事調停・家事調停も視野に入れるべき。
〇国境を越える電子商取引の拡大など社会経済のグローバル化・情報化、これに対応した競争的環境の下での諸外国における民間ビジネス型ADRの発展など新たな動向も十分踏まえるべき。
〇政策的重要性の高い場合、あるいは中立公平性を特に重視すべき場合等においては、ADR機関の財政的基盤についての検討も必要。
【中間報告の主な提言事項】
〇ADRに時効中断(又は停止)効を付与したり、ADRの結果に基づき強制執行の申立てをなし得ることをも検討すべきであるが、この場合そのADR手続における適正手続保障の程度、要件の定め方等について十分に検討すべき。 〇ADRを法律扶助の対象とすることの是非をも検討すべき。 〇ADRと裁判手続との手続面での連携強化の一環としては、事案によっては、ADRから裁判手続への円滑な移行、あるいはその逆の移行が相当な場合があると考えられることから、国民の裁判を受ける権利を実質的に損なわない範囲で、そのための手続整備を図っていくべき。 〇ADRの適切な担い手の確保のための基盤整備、仲裁法制などADRに関する法制の早期整備等を行うべき。 〇国際商事仲裁の拡充・活性化を図るべき。 |
(1)ADRの利用促進に資する制度整備
〇時効中断・停止効の付与、執行力の付与、法律扶助の対象化を可能とする制度整備を具体化するため、要件などの専門技術的検討を行うべき。
〇その際、特定の効力付与の対象となるADRを仕分ける手法として、担い手に着目する方法、手続に着目する方法、機関に着目する方法等が考えられるが、それぞれのメリット・デメリットを更に検討すべき。
(2)ADRと裁判所との手続的連携に関する制度整備
〇ADRと裁判所との手続的連携を促進するために必要な措置を講じるべき。
〇ADRの全部又は一部を裁判へ移行する場合の手続については、例えば独立証拠調べが導入された場合にこれを活用することが考えられるが、これ以外にも、個別分野・機関毎に、実情を踏まえ改善の余地があるか検討すべき。
〇裁判の全部又は一部をADRへ移行する場合の手続については、例えば特許の判定制度や公害事件の原因裁定嘱託など専門的事件についての制度が存在するが、これらの制度の活用も含め更に検討すべき。
(3)ADRに関する基本法制の整備
〇国内仲裁法制、国際仲裁法制の整備については、UNCITRAL等の国際的動向も踏まえ、可能な限り早期に着手すべき。
〇さらに、仲裁のみならず調停・和解等も含むADRの拡充・活性化のため、個別問題への対応との関係・仕分けも考慮しつつ、上記(1)(2)も含めたADRに関する基本的な枠組みを規定する「ADR基本法」のような法律の制定を視野に入れた検討を行うべき。
(1)隣接法律専門職種など専門家の活用/弁護士法72条見直し
〇隣接法律専門職種など法曹以外の専門家のADRを含む訴訟手続外の法律事務への関与については、弁護士法第72条の見直しの一環として、職種毎に実態を踏まえて判断すべき。その際、当該法律事務の性質と実情、各職種の業務内容・専門性やその実情、その固有の職務と法律事務との関連性等を踏まえ、その在り方を個別的に検討すべき。
〇弁護士法72条の見直しについては、少なくとも、同条の規制対象となる範囲・態様に関する利用者等の予測可能性を確保するため、但書きも含め、何らかの形で明確化すべき。
(2)その他
〇弁護士を始めとするADRの担い手の権限と責任、行為規範の在り方等についての検討も必要。