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ADR検討会(第12回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年2月24日(月)14:00~16:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉ニ、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎(敬称略)
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議 題
(1) 国の責務等
(2) その他

5 配布資料
資料12-1  検討事項1-4(国の責務等)
資料12-2  2巡目における検討スケジュール(案)
資料12-3  参考資料(国の責務等を規定した法律の例)(略)

6 議 事

(1) 国の責務等(検討事項1-4)

 ADRの拡充・活性化を図っていくためのアプローチとして、国の責務等について、事務局より、資料12-1に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(□:座長、○:委員、●:事務局)

(1.ADRの拡充・活性化のための具体的取組み)

○ 議論するにあたり、「責務」という言葉は一般的な用語としては理解できるが、どういうものとして理解すればよいのか。国や地方自治体の責務であれば、政治責任はあるだろうが、法的責任はどのように考えればよいのか。
 また、事業者の責務、国民の責務についても同じ意味になるのか。精神的な意味のほか、法的にはどのような意味があるのか。

□ 他の法律においても、「国の責務」は、事柄や政策、国の推進の度合いなどによってそれぞれ異なるものと考えられることから、国民の責務と言った場合、責務とも言えないような努力義務、あることが望ましいといったものまで規定され、法的な権利・義務、請求権に結びつかないものも多いのではないか。内容については議論しながら決めてまいりたい。

○ そうだとすれば、具体的な施策をどうするかという方が重要であると考える。

○ ここで「役割」という言葉を使っているのは、そういったことを意識しているのか。

● 「役割」の方が広い意味を包含するという意図で用いている。「責務」という方が望ましいというケースについては、条文においては「責務」としたい。

○ 最も重要なのは、どのような具体的施策を策定・実施する責務を有し、また、そのために必要な法制上又は財政上の責務を講じて行くべきかを検討する必要があるという部分である。何か政策を打ち出すとしてもやってみないと分からないことが多く、現段階では内容が見えないが、一方で、このような規定を置いておけば、何か必要なことがあった場合に国民の側から政策を促すことができるので、論点1については、うまく表現してすべて条文に置くべき性格のものである。環境基本法でも、そのような国の責務の規定に基づいて、様々な法律ができている。

□ 事務局では、論点1をすべて条文に入れるつもりで書いているのか。

● ここでは、実質の中身として、このようなことを実現することでどうかということが主眼である。仮にすべてやるべきであるということであれば、「責務」の中にすべて書き込むという方法や、「責務」としてはそのような施策を策定する、実施するということにして、具体的な内容は体系化して法律の中に書き込むという方法もある。

□ ここで落ちている点、若しくは必要ないと思われる点はないだろうか。

○ 国際性に関する視点がどこにも出てきていないのが気になる。例えば、男女共同参画社会基本法では第7条で出てきており、ADRに関しても、国際的協調という視点はどこかで必要ではないか。現在のボーダレス社会の下では、企業だけでなく一個人であっても国際性のある紛争に遭遇するおそれはあり、その解決手段としてADRは常に考え得る選択肢だと思われる。各国の取組においても、国際性ということに意が払われており、UNCITRALの国際商事調停モデル法制定にもそういった背景がある。

○ 関連して、全体をとおして、「国民」という言葉が用いられているが、これでよいのか。消費者など他に表現することも視野に置いておかなければならないのではないか。

○ 全体としてはこれでよいが、(注)に「ADRのみならず、相談(苦情処理)手続についても該当しうる」とあるが、ADRのスタートは相談であり、違和感がある。例えば、相談を行っている消費生活センターは、ADRに含まれないということか。

● 相談から入るケースが多いことから、注意書きとしている。狭義のADRの定義から言えば、一方当事者とのみ接触するのは該当しないと考えられるので、このような表現になっているが、いろいろ注意書きは不要ということで合意がなされれば、検討会の場ではこのような注意書きは書かないことにもできる。消費生活センターは、実態としてもADRとしての機能を行っており、この定義から言ってもADRから外れるものではない。

(2.国が果たすべき役割(国の関与のあり方)

○ 論点2-3の2つ目の○で、私的ADRが消極的な位置付けに見える。公的ADRが主軸で、それでは不十分だから私的ADRに対しても一定の関与を行うというのは、消極的すぎるのではないか。
 問題提起として、「国」といった場合、所管省庁、現場の出先機関はどのようなものになるのか。また、チェックする場合に、所管省庁が出てくるのか、第三者が評価することにより公平性を担保するのか、都道府県との連携はどのようにするのか。そういった体制をどのように考えるかにより、責務も異なるのではないか。

□ 一点目については、ADR基本法を作るのであれば、公的ADRについては既に法律もできており範囲としては取り込むが、私的ADRに大きなウエイトを置いて考えざるを得ないと考える。

● 二点目については、今回の議論では「国」で括っているが、法文化を行う前提として、誰がどういうことを行うのかを明確にする必要があり、整理しなければならないだろう。
 既に公的ADRは役割分担がなされており、それを前提に行うことになるが、評価を省庁横断的に行うとか、第三者に行わせるとか、ということで制度を作るのであれば、さらに検討が必要である。いずれにしても、今後の議論により、どのような制度を組立てるのかによるのではないか。

□ 推進本部がなくなれば、どこかの官庁が責任を持ってフォローアップを行っていくことになるだろう。所管官庁などは、法律にどのような内容を盛り込むかによって決まっていくのではないか。

○ 私的ADRにウエイトをおくのであれば、紛争解決に行政庁の監督はなじまないのではないか。監督官庁があるとしても、後ろに控えるあるいは支援するという性格の立場のはずである。したがって、論点2-3は、ADRが未成熟であったり、公的ADRと私的ADRがクロスしたりして形態が変わっていくものなので、書く必要はないのではないか。法律扶助の対象化は、私的ADRでも利便性は高いので、別途協議すればよいが、法律扶助があれば論点2-3の内容は不要ではないか。
 論点2-1の「③規律設定」も、規定しにくいので要らないのではないか。
 論点2-2は、各々の場面で具体的に必要なものについて論点1と一緒に論ずればよいのではないか。
 論点2-4は、論点1を具体化するときに、抽象的なものは論点1にもってくる、具体的なものは論点2-4にもってくるということで、一緒に検討していけばよいのではないか。

○ 論点2-1の「③規律設定」というのは、取締法規、強硬法規を念頭に置いて書かれているように見える。一般論として、任意法規、デフォルトルールの設定も考えられるが、留意事項ではどういう意味で「法令上の規律の設定」と書いているのか。

● 幅を持って両方を含む意味である。

○ 取締法規が必要かどうかは今後の議論によるべきであるが、もし、任意法規、デフォルトルールを含むのであれば明示的に記載していただきたい。ADRに関する近年の立法の動きを見れば、主としてデフォルトルールの設定という法律の制定が中心ではないか。もともとADRは当事者自治の意味合いの高い紛争解決であり、任意法規、デフォルトルールになじむ場合の方が多い。任意法規は当事者の合意で変更できるが、当事者はルールを細かく定めないことも多いし、ADR機関には規則をもっていないところも多いので、任意法規の設定は国の責務として大きな意味をもっていると考える。ここに任意法規が含まれることを書くことや、任意規定について切り出して別項目を立てる価値もあるのではないか。

○ 論点2-1は、国の施策としてそのまま条文に書かれることはないと理解しているが、それでよいか。規律設定というのは、具体的施策として書くより、それ自体として書くことになるのではないか。
 規律を入れるべきかどうかについて、例えば、ADRを自主的に行わせるためには、ある程度のルールは必要であり、最低限のルールは作らなければならないのではないか。規律設定についての事務局の説明の中で、主体性・多様性と矛盾する問題を抱える面があるということであったが、そういった面があるとしても必要性があるのではないか。

○ 規律設定についての私の先ほどの意見というのは、ここで言わなくてもよいという意見であって、ルールがなくてよいといっているわけではない。
 UNCITRAL国際商事調停モデル法のデフォルトルールをそのまま貼り付ける必要はなく、手続の公平などの基本的なルールだけを、ADR基本法に盛り込んでおくのがよいのではないか。

○ 実体的な側面で、国の果たすべき役割について述べると、まず、ADRの発展に関するための施策については、まず第一義的には民間による自主的な取組みがあって、国は支援・促進のための黒子としての役割を果たすべきである。そういう意味で、論点2-4の留意事項にある①から③は国の責任として考えられるが、④⑤は分野によって異なるものであって、国の責務として行うとしてもなるべく民間の自主性を尊重する方向で行われるべきである。
 具体的に言えば、まず利用者に対する支援が可能であれば利用者に対する支援を考えるべきであり、それが不十分ならADRに対する支援を考え、それでも不十分なら国が自ら出ていってサービスを提供すべきであろう。国際的に見て、日本の公的ADRは肥大化していると評価されており、今後のADRの整備の仕方、国の関与の仕方を考えるにあたっては、そのように考えるべきではないか。
 具体的な類型としては、大雑把に言えば、BtoBのADRは一般的にはマーケットに委ねておけば足りるのではないか。そういう意味では、国の役割は①から③のような背景的あるいは制度的なものにとどまり、裁判とのイコールフッティングを確保する施策を行えばよいのではないか。一方、BtoCのADRについては、市場原理に委ねてもうまくいくものではなく、多くの場合ペイしない可能性が高いが社会的にはADRを整備する必要があるものであるから、国が積極的に関与していく必要があるのではないか。国によるサービス提供は、行政が有する強力な権限を背景にしなければ交渉がうまくいかないような場面(例えば、消費生活センターの扱っている悪徳商法)に限るべきではないか。
 そういう面では、法律扶助のような利用者に対する支援は検討するに値すると考えられる。BtoCのADRでは、業界型ADRに無償のサービスを提供している場面が多くあるが(金融やPLなど)、現在限界が近づいていると一般的に認識されているところであり、将来NPOなどがこういった場面でのADRに参画することを促進するためには法律扶助が重要となってくる。
 理念的には、直接的に裁判を受ける権利を保障することに資するという側面はないが、広い意味では法の支配を社会に行き渡らせるという点がADRに対する法律扶助にはあり、これは司法制度改革の趣旨に沿うものである。諸外国でも制度化するにあたって、法律扶助の制度趣旨を再定義している例もある。
 特に、日本のように裁判による紛争解決の比率が低い制度では、権利保護の観点から、ADRに対する扶助が積極的に位置付けられてよいのではないか。実際に法律扶助の需要があるとされている、多重債務問題、家庭問題、借地借家紛争といった領域は、ADRが最も機能しうるのではないか。
 現実には、法律扶助の予算面の限界があり、現在は裁判扶助も十分でなく、予算の割り振りという観点からは裁判扶助をまずは充実させるべきであるが、制度的には、将来の可能性を見据え、少なくともADRを予算の対象としておくことが重要ではないかと考えている。

○ 今の意見の趣旨に基本的には賛成で、民間を主軸とし、国は黒子であるべきであると考える。しかし、我が国の公的ADRは肥大化しており、私的ADRは発達していないということを踏まえるべきということであったが、そのことは公的ADRが十分であるということを意味するものではない。政策関連型ADRのほとんどは古い時代に作られたものであり、諸外国に比べると、十分ではない。したがって、国の責務として、政策目的をもったADRが十分かというチェックと、不十分であれば積極的に公的ADRの設立を考えていかなければならないことが盛り込まれなければならない。
 また、BtoBは市場原理に任せていればよいということであったが、大企業と中小企業、フランチャイザーとフランチャイジーの紛争などでは、一方が弱い立場に置かれていることから、一方を支援する形で公的ADRが作られている例もある。そうしたADRは、その国の中小企業政策や競争政策などを反映しているものもあるので、必ずしもBtoB、BtoCということで割り切れるものではないだろう。

○ 先ほどの御意見は、当事者間の力の格差がある場合は公的ADRでという趣旨ということであると理解していた。国が補充的というのが公的ADRであるという考えには賛成だが、論点2-3の留意事項②③については公的ADRの責任がはっきりするような形でやっていただきたい。

□ 今核心的な部分を議論いただいているが、論点2-3の4つの○について、1つ目と2つ目の関係がこれでよいのか、4つ目の○の法律扶助は腰が引けているのではないかという意見があったが、こういった意見があればもうちょっと頂きたい。

○ 法律扶助については、事務局の資料は一般的に言われているもので、その通りだと思うが、民間によるサービスの利用が一般的に受益者負担とされているのをなぜ修正すべきかというのは、法の支配を行き渡らせるという程度の理由では足りないのか。どの程度の理由があれば認められるのか。

□ そこまで具体的に考えているわけではなく、裁判を受ける権利を保障するだけでは足りないが、他の哲学ではどうなのか、ということを今後議論していけばよいのではないか。

○ 論点2-3の役割分担の①から④は一般的にはそのとおりだが、当事者の力の格差や政策的ニーズの存在は、具体的な施策とセットに議論されるべきものである。

○ 国があくまでも補完という形であれば納得がいくが、この中で公的ADRと私的ADRといった場合に、私的ADRに執行力の付与、時効中断効を付与した場合に、私的ADRが充実すれば公的ADRはなくす方向に向かっていってはいけないのか。

□ なくす方向に向かうべきという趣旨であろうが、そうなるかということと、そうなることが望ましいということとは別問題だと思うが。

○ ADRを一本にまとめる公的ADRと私的ADRの区別をなくしてはじめて、裁判に並ぶということになるのではないか。

□ 本日は委員も全員揃っておらず、別の意見の委員もいらっしゃるだろうから、ここで結論を出さなくてもよいのではないか。

○ 理念的にADRを考えればそうであると思うが、現実的には難しいだろう。ADR基本法は、そういった方向に行くのに邪魔にならないものにすればよいのではないか。

□ 論点2-3の留意事項について、事務局と違う意見も御指摘いただいたので、今日の議論は議論としてお預かりして、3巡目に向けて事務局で整理し、更に検討してもらうこととしたいが、それでよいか。

(論点3から5)

□ 論点4、5については、次回以降議論する機会もあるので、総論的な御議論を頂きたい。

○ 論点3の地方公共団体の役割について、留意事項に「国に準じる役割のみならず」とあるが、今まで国について論じてきた論点については、当然に地方公共団体に被るという趣旨か。

● 準じるいうことなので、必ずしもすべてが被るものではないと考える。ADRの制度設計の部分などは地方公共団体に期待することは難しいので、かなりの程度のものが事柄の性格上落ちるのではないかと考えている。ここでは、むしろ後段(国に準じる役割以外のもの)もあるということを申し上げたかったのである。

○ 国民により身近な存在として、どのような役割が考えられるか。

● より身近な行政機関であることから、総合窓口機能としての役割を果たしてもらうことや、御議論があるかもしれないが、小さな紛争としてなじむものがあればそういう紛争を解決していくことになるというような視点もあるのではないか。

○ 地方公共団体のところで、論点2-1の留意事項⑤に自らのサービスの提供というものがあるが、現在も例えば、都道府県の建設工事紛争審査会や、労働局、東京都のマンションなどの建築紛争調整委員会、消費者苦情処理委員会など、大小いろいろな組織があり、準じるというより、地方分権的思想から、積極面を加えるかどうかということを政策の打ち出し方として議論する必要があるのではないか。

○ 論点3の地方公共団体の整理については、国に準ずるという点では、論点2-1①②④⑤などは地方公共団体でも同様に妥当すると思われる。③も条例というものであれば妥当すると考えられ、地方公共団体の扱いが小さすぎる気がする。
 現在のADRの動きについて、米国では地域のコミュニティの隣人紛争を中心としたADRが各地に作られたことが経緯になっている。我が国と米国でのコミュニティは違うし、国民意識も異なるが、ADRにおいては歴史的に海外の例を見ても地方公共団体の役割は大きいので、大きな扱いをするべきではないか。

○ ADRはまず相談という段階があって、相談の段階で地方公共団体は大きな役割を果たしており、ADRの法制上大きく位置付けられるべきである。

○ 私の立場から言えば、地方公共団体も「お上」であり、地域のADRの健全な発展として、補完的な意味で動いてもらいたい。

□ 国民の果たすべき役割という点はどうか。

○ ここで書かれているのは、国民一般ということではなくて利用者について書かれているので、紛争当事者になった国民に一定の役割・責務というのが考えられてもおかしくないのではないか。
 内容としては、留意事項の①②のほかに、紛争当事者の信義に従い、誠実な追行という責務も上げられるのではないか。民事訴訟法の中にも一般規定で同種の規定がある。

○ 選択の自由だけでなく、離脱の自由もあるが、自ら選択したものへの協力を重視する立場から言えば、離脱の自由は協力義務違反になるのか、という議論もある。

● 利用者の役割は、離脱の自由も考えれば、先ほどの意見よりも少しソフトなものであるべきかと考えている。

□ 潜在的利用者としての国民一般の役割というものはないか。

○ 国民としてのADRに対する理解、という意味での精神的なものは入れてもらった方がよい。

○ ADRから呼び出されたときに誠実に対応する責務という程度のものは書いておきたい。
 ここで国民という用語がよいのか。外国人もいるので国民に限定できないはず。

● いろいろな意見を出たが、次回及び次々回では、今回の意見を踏まえて、主宰者、手続、機関の組織運営等に関する規律を御議論いただくことにしたい。

(2) 2巡目における検討スケジュール(案)

 2巡目の議論の検討スケジュールについて、事務局より、資料12-2に沿って説明がなされ、第19回(7月14日)までに、パブリックコメントを念頭に置きながら中間的な整理を行いたい。委員からいただいた議論をフィードバックしながら議論するため、第16回(5月26日)までに第2巡目の議論を終えることとなった。

7 今後の予定

 次回は3月10日(月)に開催され、主宰者としての専門家の関与を含め、主宰者に関する規律について検討を行うこととなった。

(以上)