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ADR検討会(第12回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成15年2月24日(月)14:00 ~16:00

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉二、廣田尚久、三木浩一、
山本和彦、横尾賢一郎(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議題

(1)国の責務等
(2)その他

5 配布資料

資料12-1 検討事項1-4(国の責務等)
資料12-2 2巡目における検討スケジュール(案)
資料12-3 参考資料(国の責務等を規定した法律の例)(略)

6 議事

[開会]

○青山座長 それでは、時間になりましたので、第12回「ADR検討会」を始めさせていただきたいと思います。
 本日は、平山委員、原委員、綿引委員のお三方は所用で欠席、横尾委員は5分程遅れて参加するということでございます。
 議事に入る前に、事務局から前回及び前々回の資料につきまして、字句の訂正のお願い等があるということでございます。よろしくお願いします。

○小林参事官 語句の訂正をお願いしたいと思っております。
 前回及び前々回の御説明の中で、ADRの定義の一類型といたしまして、第三者を指定して事実関係の争いについて鑑定をさせ、その結論に服する旨の契約というようなものを私の説明では「鑑定仲裁」と申し上げていたかと思いますけれども、この用語につきましては、正確には「仲裁鑑定」というのが定まった用語でございますので、そのように訂正させていただきたいと思います。
 資料につきましては、具体的には、前々回の資料10-2の4ページ、前回の資料11-1の2ページにそのような文言を使用いたしておりますけれども、これについては訂正させていただきたいと思っております。
 それから議事録その他におきまして、同じように「鑑定仲裁」ということで言及した部分につきましては、すべてこれを「仲裁鑑定」と改めさせていただきたいと思っております。勿論、資料の訂正等はこちらの方でさせていただきますけれども、その旨を明らかにするとともにお詫びを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。普通の仲裁というのは、法律の紛争を解決するものですが、今ありました「仲裁鑑定」と言うのは、事実的な点についての判断をする、その結果、法律の紛争をどう解決するかは、また別の問題だというものです。
 例えば、船の値段について船価鑑定とか、火災保険で火災が発生した原因について、それが事故と言うべき火災であるかどうかということについて鑑定をする。それによって直ちに紛争が解決するわけではないのですが、その前提の大部分が解決されるという意味で、普通の仲裁と区別しまして、「仲裁鑑定」と言っております。
 ドイツ語でシーズ・グート・アハテンとか、英語では、アービトラル・アプレイザルというような用語で言っていますけれども、それが前回には日本語として逆になっていたものですから、そのように訂正させていただいたという次第でございます。
 よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○青山座長 それでは、少しさかのぼった訂正ですが、御了承いただいたということにしたいと思います。
   それでは、本日の議事に入らせていただきたいと思います。お手元の議事次第のとおり、本日はADRの拡充・活性化を図っていくために、国、地方公共団体、ADR機関、あるいはADRの主宰者、国民といった各主体がそれぞれどのような役割を果たしていくべきかということについての論点を御議論いただきたいと思っております。
 まず、事務局から資料12-1の検討事項1-4について御説明をお願いします。

[国の責務等]

○小林参事官 それでは、資料12-1の検討事項1-4を中心に御説明させていただきたいと思っております。
 本日は、資料12-3といたしまして、いくつか基本法と呼ばれるものを中心に、御参考までにいろいろな法律の例をお配りさせていただいておりますので、適宜それも引用させていただきながら、御説明したいと考えております。
 まず、本日のテーマの「国の責務等」ということでございますが、前回の議論におきまして、ADRの拡充・活性化の基本理念ということで、活性化の意義、活性化を進める上での基本的考え方、3番目に拡充・活性化へのアプローチということで御議論をお願いしたところでございますけれども、今回は、3番目の拡充・活性化のアプローチを更にそれぞれの主体に応じまして、どのような責務が考えられるかということで御議論をお願いしたいと考えております。
 したがいまして、1ページの論点1につきましては、前回に御議論いただきました3つのアプローチ、つまり「①ADRに対する国民の理解の増進」「BADRの利便性・実効性・信頼性の向上」「③ADRを提供する体制の充実・強化」、この3点につきまして、更にややブレークダウンした形でお示しいたしております。これが、いわば責務を考えていく際の縦糸というように考えられるかと思っております。
 まず、論点1の内容でございますが、これは総体としてのアプローチでございますので、当然のことながら、以下御説明していくように、それぞれの主体がすべてこれを満たさなければいけないというものではございませんが、全体としてどういったことがなされる必要があるかということを総体としてまとめたものでございます。
 まず「①ADRに対する国民の理解の増進」につきましては、前回御議論いただいたように、法意識の涵養でありますとか、あるいはADRも含みます紛争解決に関する理念、あるいは知識の普及ということが具体的な内容として考えられるのではないかということでございます。
 「②ADRの利便性・実効性・信頼性の向上」につきましては、前回、特に実効性については、具体的な効力を念頭に置くのかという御議論もございましたけれども、具体的な内容としては、例えばADRに関するアクセスポイントの充実でありますとか、利用者の手続選択に資する情報の充実、あるいはADR機関間の相互紹介の体制整備、この辺りは利便性に含まれるものではないかと思いますけれども、更に提供される手続の充実ということで、手続の内容自体の質的向上を図るとともに、できるだけ多様なサービスが用意されることを目指していくということがあるのではないかということでございます。
 「③ADRを提供する体制の充実・強化」につきましては、1つは多様で質の高い担い手の確保・育成という問題がございますし、勿論アドホックのADRというのも考えられるわけでありますが、やはり1つの大きな柱としては、ADR機関という存在がございますので、こういったADR機関の組織・運営基盤の充実というものも内容として考えられるのではないかということでございます。
 留意事項の注にございますように、いつもと同じ内容ではございますけれども、以下の検討事項につきましては、「ADR」と書いてございますけれども、相談(苦情処理)手続につきましても、基本的には該当し得るものと考えております。
 2番目が、そういった総体としての取組を具体的にどのように実現していくのかという役割分担についてでございますが「2.国が果たすべき役割(国の関与のあり方)」についての議論を進めてございます。
 当然その際には、前回御議論いただきました2番目の論点であります、拡充・活性化を進める上での基本的考え方、具体的には、当事者の主体性の尊重でありますとか、あるいは手続・解決基準の多様性の重視、あるいは信頼性の確保ということを考えに入れていく必要があるわけでございますが、それに加えて2ページにございますように、まず、国はどのような手法を組み合わせて施策を実施していくべきか、そもそも国はどのような観点から関与することの妥当性を判断していくべきか。こういう論点を議論する必要があるのではないかと考えております。
 そのうち、①のどのような手法が考えられるかということについて、(1)でまとめてございます。
 これは、先ほどの総体がメニューとしての縦糸だとすれば、これは具体的なツールとしての横糸になるわけでございまして、そのような組み合わせの中から国として講じるべき措置が浮き彫りになるのではないかと考えております。
 その具体的な実施手法につきましては、論点2-1にまとめてございますが、勿論非常にソフトなものから、かなりハードと申しますか、厳格なものまでいろいろなものが考えられるわけでございます。
 1つは普及・啓蒙、2番目は民間などによる自主的取組の促進、3番目としては、具体的なルールの設定、4番目としては、ADR機関なり、あるいは具体的な担い手である主宰者、あるいは利用者に対する支援というものも考えられますし、5番目としては自らサービスを提供する、行政型ADRなり司法型ADRの運営ということが考えられるわけでございます。
 これらの点につきまして、若干留意事項に触れていますが、これも一般論としては、ある意味では当然のことではありますけれども、1つは自主的取組の促進につきましては、関係者などの合意が得られやすいというメリットがございますけれども、一方で、それだけで果たして社会的に望ましい水準まで拡充・活性化が図られるかどうかは保障されていないということもございますし、他方、フリーライダーが生ずる可能性があるという問題点がございます。
 また、法令上の規律を設定する場合につきましては、担保措置が強力であれば実効性は高いわけでありますが、これはものによっては遵守状況のチェックに多大なコストがかかるという問題点もございます。
 さらに、前回の基本的考え方でも御議論いただいたように、このような規律の設定をすること自体が、ADRの多様性でありますとか、あるいは当事者の主体性の尊重という考え方と若干矛盾する側面も抱えているという問題点もございます。
 それから、支援あるいは自らのサービス提供につきましては、後ほどもう少し詳しく御説明させていただきたいと思います。
 勿論、次の○にございますように、これらの手法につきましては、何か1つだけということではございませんので、幾つかの方法を組み合わせるということも考えられるわけでございます。
 次に(2)としまして、国が関与する、あるいは施策を実施していく際の妥当性を判断する観点について、論点2-2、論点2-3と2つに分けて議論をいたしております。
 まず、論点2-2につきましては、これは国と国以外の主体、ADR機関でありますとか、主宰者、国民との間の役割分担をどのように考えていくのかということでございます。
 ここも総論の域を出ないわけではございますけれども、基本的な考え方といたしましては、当然のことながら、国が何らかの措置を講じなければ、所期の効果を得ることが不可能あるいは困難な取組というのが事柄の性格上ございます。
 例えば、1巡目の議論で幾つか御議論いただいたような、ADRに対する法的効果の付与という問題につきましては、これは当然のことながら国が積極的に関与する、実際に施策を講ずる必要があるわけでございますが、他方、ADR関係者などの自主的活動を通じても、所期の効果が確保し得るようなもの。これは具体的には、アクションプランなどで議論しているわけですけれども、ADR機関間などの相互紹介体制の整備につきましては、まずはADR関係者などの自発的活動の状況を見極めた上で、国は補完的に関与するということが考えられるのではないかということでございます。
 ただ、国の関与の問題は、今申し上げたような考え方で単純に整理しきれるものというわけではおそらくないと考えられます。関係者間の自主的活動によって、相当程度の効果が確保し得るものであっても、個別の政策判断として、むしろ国の積極的な関与が要請されるというケースもあり得るのではないかということでございます。
 次に論点2-3は、ADRの中には司法型・行政型のように、いわば公的なADRと、それから民間が主体となっている私的なADRがあるわけでございますが、この役割分担をどう考え、その関係で特に私的ADRへの国への関与の在り方をどう考えていくかという問題がございます。
 まず、前提といたしまして、司法型あるいは行政型、つまり国が自らサービスを提供するという形で関与している公的ADRについての存在意義、あるいは位置付けでございますけれども、これもいろいろな考え方があろうかと思いますが、いくつかにまとめますと、①から④に挙げられているようなことがあるのではないかということでございます。
 まず、1つは国が主宰者であるADRに対する根強い国民のニーズの存在ということがございます。これは、善し悪しは別にして、現実の問題としては、やはり国が最終的には主宰者として行っているADR、あるいはその後ろ盾となっている、こういったものについてのニーズがあるのではないかということがございます。
 それから、②としましては、特に当事者間の力の格差あるいは情報の格差があるようなケースについては、行政が後見的役割を果たすことによって紛争解決を図るということへのニーズというのも、やはりあるのではないかということでございます。
 ③は、特定の行政分野につきまして、簡易・迅速に解決することの政策的ニーズがあるのではないか。④として、紛争解決コストについて受益者負担を求めることは困難なケースというものもあるのではないかということでございます。
 以上、現在、存在します公的ADRには、少なくとも現状を前提とする限り、こういったニーズというのが存在するのは事実であろうかと思いますけれども、しかし、他方、この公的ADRというものが、そういった公的制度として、要求される質を維持しつつ、前回御議論いただいたように、今後増大すると考えられるようなADRに対するすべてのニーズに対応していくことは困難であろうということを考えますと、当然私的ADRについても、その振興を図る必要があるわけでありまして、そのためには国も一定の関与をしていくべきではないかというのが2つ目の○でございます。
 ただ、具体的に個別の私的ADR機関、あるいは私的ADR機関を利用する方に対しまして、それを支援していくということにつきましては、やや慎重な検討が必要ではないかというのが、4ページ以降でございます。
 ①は、まず国が関与すること自体が何か弊害を生む恐れはないかという問題でございます。端的に申し上げますと、競争の阻害あるいは解決手続の多様化を妨げる恐れが出てくるのではないかということがございます。直接競争の阻害になることだけではなくて、支援をするからには何らかのチェックが伴わざるを得ないと考えられますので、そのこと自体の持つ問題というのも生じてくるということでございます。
 ②の問題は、これはどちらかと言うと、負担の問題になるわけでございますけれども、今までの考え方としては、民間部門により提供されるサービスについては、一般に受益者負担と考えられております。
 他方、政策的な必要性があり、また受益者負担になじまないというものにつきましては、先ほど来申し上げていますように、公的なADRというのがその役割を果たしてきたわけでありまして、その考え方の整理の中で、あえて民間型ADRについて受益者負担という考え方を修正する必要があるのかどうかということについても、考え方を整理する必要があるのではないかということでございます。
 この辺りの議論は、1巡目の議論におきましても法律扶助の関係で御議論いただいたところでございますが、全体として国の責務ということを考えていく際に、特に私的ADRとの関係では整理する必要があるのではないかと考えております。
 「(3)国が果たすべき役割」でございますが、以上のようないくつかの留意点を踏まえた上で、それでは具体的に国が果たすべき役割として、現時点でどのようなものが考えられるのかということを整理したのが論点2-4でございます。
 具体的に今の段階で、先ほどの縦糸と横糸を組み合わせた上で考えられるものとしては、以下5つほどあるのではないかと考えております。
 1つは、①にございますように、ADRに関する教育・学習の振興や広報活動の充実などによる国民の理解の増進ということでございます。
 2つ目としましては、ADR機関等に対する情報提供や、あるいは連携活動の支援等によるADR機関等の自主的取組の促進というものでございます。
 3番目としましては、ADR利用者に対する情報提供などによるADR利用者のアクセス機会あるいは選択機会の拡充ということでございます。
 4番目としましては、ADRに係る規律の設定、ADRの手続に対する法的効果の付与、あるいは裁判手続との連携の制度化などによる提供される手続の充実ということでございます。
 5番目としまして、多様で質の高い専門家が主宰者などとしてADRに参加できる制度の整備などによるADRの提供体制の充実強化ということであります。
 以上が国に関する問題でございます。
 5ページにまいりまして、次の問題としては「3.地方公共団体が果たすべき役割」ということでございます。
 先ほど申し上げました資料12-3の参考資料を御覧いただきますと、法律によって微妙にいろいろな違いがございますし、またその違いがあるところにそれぞれの思いなり、あるいは特色があるのだと思いますけれども、1つのよくある形としては、国の責務に並んで地方公共団体の責務を並べるというものが1つの様式になっているわけでありますが、1つは地方公共団体の場合はいわば国に準ずる役割、ミニ国家と言うと語弊があると思いますけれども、そういう国に準ずる役割というのが期待されているケースがございます。
 ただ、このADRにつきましては、これまでもいくつかそういった議論があったように記憶してございますが、単に国に準ずる役割ということのみならず、むしろ国民により身近な行政機関として、もう少し積極的な役割を果たすべきではないかという議論があるかと思います。
 具体的には、総論で申し上げれば、1つは先ほどの総合的な相談窓口、案内窓口というような役割について、地方公共団体が積極的な役割を果たすべきではないかという議論があったと思います。
 もう少し各論的な議論で申し上げれば、参考にございますように、特に消費者関係の問題につきまして、都道府県なり市町村の役割を議論されているという状況もございますので、単に国に準ずる役割のみならず、もう少し国民により身近な行政機関として、より積極的な役割を果たすことが期待されているのではないかということがあり得るのではないかと考えております。
 「4.ADR機関・ADR主宰者が果たすべき役割」という問題があろうかと思いますが、これも資料12-3の1ページ目を見ていただければわかりますように、それぞれいろいろな施策を講ずる際には、関係者の責務と申しますか、果たすべき役割に言及していることもよくあることでございまして、このADR機関、あるいはADR主宰者についてもこういった責務を置くということも考えられるのではないかと考えております。
 ただ、この問題につきましては、論点4の注にございますように、次回以降、ADR機関などを対象とする規律の問題、ルール作りについての問題を議論することを予定いたしております。
 その結果によっては、法律で直接いろいろな義務付けをするのは難しいにしても、むしろ責務としては置くべきではないかという議論が出てくるかと予想されますので、その場合には、もう少しこの内容が増えていくと言いますか、もう一度戻って議論していくことになろうかと思いますけれども、現時点で考えられますADR機関なりADR主宰者についての責務として、あるいは果たすべき役割として考えられるものとしては、以下の5つがあるのではないかということでございます。
 「①国民の理解を増進させるための取組」、「②利用者に対する情報の提供」、「③提供する手続の充実を図るための取組」、「④他のADR機関等との相互協力」、「⑤国等の講ずる施策への協力」、こういうものが考えられるわけでございます。
 このうち、特に⑤の国等の講ずる施策への協力というのは、国策協力のような印象があって、おやっと思われる方もおられるかもしれませんが、いくつか参考となる例を御紹介させていただきますと、資料12-3の3ページには、これは環境基本法でございますけれども、第9条第2項に「国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する」というのがございます。
 それから、29ページでございますが、第4条第1項の「事業者の責務」に、「事業者は、その供給する商品及び役務について、危害の防止、適正な計量及び表示の実施等必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する消費者の保護に関するる施策に協力する責務を有する」ということでございます。
 それぞれの背景があって策定されている法律ですから、単純にこれがADRについて当てはまるかという議論がございますが、今申し上げた例のうち、特に後者の消費者関係のところにつきましては、今回のADR機関あるいはADR主宰者とある意味では相通ずるところがあるのではないかと考えております。
 6ページでございますが、これは環境基本法では出てまいりましたが「5.国民が果たすべき役割」ということでございます。
 国民は、この制度におきましては利用者という立場に立つわけでありますが、この利用者である国民を対象として何か果たすべき役割なり、あるいは責務というものを考える必要があるかという議論でございます。
 こちらにつきましても注にございますように、次回以降、利用者である国民、国民と言いますか、むしろ利用者になると思いますけれども、利用者である国民を対象とする規律についての議論をする予定でございますので、そちらの方からまた、直接的な何らかの義務付けではなくて、むしろ責務として考えるべきではないかという議論があり得るかもしれませんけれども、とりあえず現時点として考えられるものとして、2つ挙げてございます。
 1つ目が、「自主的な紛争解決の重要性の認識」ということ、2つ目が、「自ら選択した手続に対する協力」ということでございます。
 勿論、自ら選択した手続ということでございますので、何か御仕着せの手続に対して無理やり協力しろということではございませんけれども、自ら選択した手続に対しては、それなりに誠実に対応するというようなことについても検討してみる価値はあるのではないかと考えております。
 ただ、先ほどの環境基本法のところに出てきたような、国の施策に対する協力ということについては、環境問題と本問題とは性格が違うだろうということで、そこまで責務として考える必要はないのではないかと事務局としては考えておりますので、ここではADR機関あるいはADR主宰者のところにあったような、国等の講ずる施策への協力というものは、特にお載せいたしておりません。
 以上、やや駆け足になりましたけれども、国の責務等についての説明でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。前回の基本理念と、今回の国の責務等については、いずれも非常に抽象的な問題でございますので、事務局にお願いいたしまして、具体的な法律の例を調べていただきました。大変たくさんの法律があります。基本法と書いてあるものには大体そういうことが書いてありますし、最近ではそれ以外の法律にも基本理念なり、国の責務等々書いてあります。
 そのうちから、私が6つだけ配ってほしいとお願いしたのが資料12-3でございますが、今の御説明にもありましたけれども、もう少し具体的に幾つか見ていただいた方が議論がやりやすいかと思いますので、私から申しますと、まず2ページの環境基本法です。環境基本法というのは、平成5年にできた法律ですけれども、3条、4条、5条というのが基本理念、そして6条が国の責務、7条が地方公共団体の責務、8条が事業者の責務、9条が国民の責務と、非常に簡潔的に書いてございます。
 その次が13ページをごらんいただきますと、中小企業基本法ですが、これは昭和38年にできたものでございます。少し古うございますけれども、第1条の目的を受けまして、3条に基本理念、4条に国の責務、5条が国の責務を施行する具体的な基本方針、6条が地方公共団体の責務、7条が中小企業者の努力というような形になっております。
 その次が19ページにございます、平成11年の男女共同参画社会基本法ですが、これを見ていただきますと、3条、4条、5条、6条、7条に男女共同参画社会というものの基本理念が書いてありまして、8条が国の責務、9条が地方公共団体の責務、10条が国民の責務ということになっております。
 その次は、24ページの平成14年にできました知的財産基本法を御覧いただきますと、3条、4条が基本理念、5条が国の責務、6条が地方公共団体の責務、7条が大学等の責務、8条が事業者の責務というようになっております。
 もう一つ、29ページの消費者保護基本法、これは昭和43年の法律ですが、まず、目的規定の1条を受けまして、2条が国の責務、3条が地方公共団体の責務、4条が事業者の責務、5条が消費者の役割というようになっているわけでございます。
 本日の検討事項の「国の責務等」について御議論いただく際には、このような規定に最終的にはつながるだろうということを念頭に置いて御議論いただければと思っております。
 時間配分でございますけれども、今日は4時までということでお願いしてございますので、まず、論点1、つまりADRの健全な発展を図るための全体的な取組の問題については大体15分~20分ぐらい、論点2の国が果たすべき役割、これは論点2-1から2-4までありますが、これを合わせて大体40分~50分ぐらい御議論いただきたい。最後に論点の3、4、5は、地方公共団体が果たすべき役割、ADR機関や主宰者が果たすべき役割、国民が果たすべき役割でございますが、これを合わせて15分~20分ぐらいと考えている次第でございます。
 それでは、各論点ごとに御議論をしていただきたいと思っております。
 まず、論点1でございますが、ADRの健全な発展を図るための全体的な取組という入口の問題でございますけれども、資料に即して、何か御質問なり御議論なりあればお願いしたいと思います。
 論点1では、前回の2月3日の資料の最後に出ていた、検討事項1-3の論点の3の繰り返しということになりますが、ADRに対する国民の理解の増進、それからADRの利便性・実効性・信頼性の向上、あるいはADRを提供する体制の充実強化ということを前回も挙げておりましたけれども、その具体的な内容というのは、このようなものではないだろうかということを事務局が整理して、今回また出していただいたわけでございますけれども、前回御発言された方も、あるいはそうでない方も自由に御発言いただきたいと思います。

[1.ADRの拡充・活性化のための具体的取組]

○高木委員 この話を始めるに当たって、「責務」という言葉が、法律の中に出てくるのですけれども、一般的な用語としてはわかるけれども、どういう意味があるのだろうと調べたら、あまり本には書いていなくて、どういうものとして理解したらいいのかということを確認しておきたいと思ったのです。
 国や地方公共団体の責務というと、少なくとも書かれれば政治責任ぐらいはあるだろうというのは当然わかりますが、法的な責任としてどう考えればいいのかというのが少しわかりにくいのです。
 例えば、行政訴訟などのときに多少使えるところかもしれないのですが、それ以上、具体的に請求権があるというわけではないと思いますし、その辺を少し確認したいと思いました。
 それから、国の責務、地方公共団体の責務というのはいいのですけれども、それと同じように、例えば先ほど出てきました事業者や国民の責務と言ったときに、責務の意味は同じなのかどうか。同じと考えるから、もっと程度を落として国民の理解、努力とか、あるいは役割とか、いろいろそういう言葉が使われている部分もあるのかなと思うのですが、それは同じ意味なのだろうか、そのときの意味はどういう意味なのかというのを確認しておきたいのです。
 精神的な意味があるのはわかるのですけれども、それ以上だと、私も昨日引っくり返して見ておりまして、一番強い書き方をしてあるのは男女共同参画社会で、国民の責務のところに「社会の形成に寄与するよう努めなければならない」というように書いてあって、ほかのは責務を有するとか、何々するものとするという言葉だったのですけれども、そういう書き方がありましたので、その辺は少し皆さんの御理解を伺っておきたいと思いました。

○青山座長 どうぞ、これは御自由に御発言いただきたいと思います。それぞれの哲学を御披露していただいて結構でございます。
 そういう問いかけだと、なかなか難しい言い方になるのだろうと思いますが、私の方から申しますと、多分、先ほど御披露したいくつかの法律の中で書いてある国の責務という場合も、それぞれ違うのだろうと思います。事柄によりますし、国がどれだけ政策を強力に推進するかということによってもおそらく違うのだろうと思います。
 ですから、同じ責務を使っても、国の責務でさえそれだけ違うし、ましてや国民の責務などとと言っては、責務と言えるのだろうかというぐらい、努力義務のようなことがあるのが望ましいというぐらいのことで、法的にそれが権利義務や請求権というものに結び付くものではないことが多いのではないだろうかと思っております。
 今回のADRの場合にも、最終的にどのような条文にするかはともかくとして、国の責務という言葉を使う場合にも、それが具体的にどういうことを意味しているのか、あるいは国民の責務などというのが、先ほど小林参事官がADRの場合は必要かどうかということを少し言われましたけれども、仮にそんなことをつくるとしても、それは随分内容が違うものだろうと思います。
 先ほどの消費者基本法の中にも「消費者の役割」というような言葉を使っておりましたけれども、おそらく教育的な配慮以上のものにはあまりならないのではないだろうかと思います。つくる場合にも、内容はここで議論しながらつくっていきたいと思っていますが、そのようなことでよろしいでしょうか。

○高木委員 私も結局そういう精神的なものとして受け取る以上のものはないのかと、あとは責任の度合いの強さ、弱さというのがあるのかなと思いました。だとすると、そこから出てくる具体的な施策をどうするかということの方が重要なことになるのかと思います。

○青山座長 今のようなことでよろしゅうございますか。

○龍井委員 確認的に言わせていただくと、この原案では「責務」ということではなくて、あえてそこに「役割」というキーワードを使われているのは、それを意識されているという認識でよろしいのでしょうか。後ほど法文になったときには、また「責務」になるのかもしれませんけれども、「役割」というキーワードを使われているのは何がしかの意図と言うか、意識をされているのですか。

○小林参事官 事務局の気持ちとしては、「役割」の方がより広いだろうと、あるいは広いものを包含し得るだろうということでございますので、結論として「責務」の方がむしろ望ましいということであれば、その部分については「責務」ということで構わないと思っております。

○廣田委員 論点1で、やはり一番重要なところは、2ページの最後に書いてある「どのような具体的施策を策定・実施する責務を有し、また、そのために必要な法制上又は財政上の措置を講じていくべきかを検討する必要がある」というところが大変重要な意味を持っていると思うのです。
 実際に何か政策を打ち出すとしても、この問題については厚くするか、薄くするかという問題があって、実際には具体的にやってみなければわからないようなところがたくさん出てくると思います。それが今の段階で全部見えているわけではないと思うのです。
 しかし、こういう規定を置いておくと、国民だとか人々が、今おっしゃったように、規定に基づいて国に対して何かを請求するという権利が生ずるわけではないと思いますが、ただ、この規定を置いておくと、何か必要なことがあったときに、国民から見て政策を促すというようなことは出てくると思います。
 国の方もこの規定に基づいて、こういう政策を打ち出そうとか、あるいは場合によっては財政的措置をしようとか、法律をつくろうという必要が出てくるかもしれないのです。そういう意味では手かがりになる条文になるのではないかと思いますので、私は、この論点1は、全部1条に置くか3か条ぐらいにするかはともかく、うまく表現して全部置いてしまうと、それで将来にある意味の布石を打つというような感じでいいのではないかと思います。
 これは環境基本法もそうなっていて、実際これに基づいていろいろな具体的な法律ができているところもあるし、そうではないところもあるわけです。すべて網羅的にできるわけではないのですけれども、しかしそういう性格を持った条文だと思いますので、私は論点1はうまく収まればいい、表現できればいいと考えて、少し欲が深いかもしれませんけれども、全部いいのではないかと思っているのです。

○青山座長 これは事務局に伺いたいのですけれども、論点1というのは、法律の条文に入れるつもりで書いておられるのですか、それともその前提というところでしょうか。

○小林参事官 まずは、実質の中身としてこういうようなことを実現すべきかどうかということを御議論いただくのが主眼でございますが、仮に今、御指摘のあったように、基本的にはすべてやるべきではないかということになった場合は、いくつかのやり方がございます。
 一つはいわゆる責務の中にすべて書き込んでしまうということが法技術的にはございます。もう一つのやり方としては、責務のところについてはそういうような施策を策定するなり、あるいは施策を実施するなりということにしておいて、もう少し具体的な施策については、ある程度体系化した上で、措置として具体的に法律の中に書いていくということが考えられるわけでございます。
 例えば環境基本法で言えば、6ページ以降に具体的な施策が書いてございますので、こういう形を取れば、かなり具体的な中身についても責務的なものを置くことは可能だと思います。

○青山座長 論点1に①、②、③と3つありますが、ここのレベルの問題は前回に議論していただきましたが、それより下に黒ポツでいくつか書いてあります。ここで落ちているところがあれば御指摘いただきたいと思います。あるいはこれはADRの拡充・活性化にとっては必要ないというようなことでも結構でございますが、もしあれば御指摘いただければと思います。

○三木委員 論点1で指摘すべきことか、論点2以下の話になるのか、よくわからないのですが、国際性に関する視点がどこにも出てきていないというのが気になりました。
 他の基本法で言いますと、本日お配りいただいた中では、例えば男女共同参画社会基本法の7条に国際的協調に関する規定が置かれております。勿論、男女共同参画社会基本法とADRに関する法律とは目的が違うので、同列に論ずることはできませんけれども、ADRに関しても国際的な観点あるいは国際的な協調という視点は、どこかで必要ではないかと考えております。
 言うまでもなく、現在のボーダーレス社会の下では、企業は勿論ですが、一個人であっても容易に国際性のある紛争に遭遇するおそれがありまして、その解決手段としてADRというのは常に考え得る選択肢だろうと思います。
 近年の各国のADRに関する取組を見ても、特に国際性ということには意が払われているように思いますし、UNCITRALで調停に関するモデル法がつくられた背景もそういったところにございますので、どこかの点で国際性ということを盛り込んではどうかと考えます。

○青山座長 ほかにいかがですか。

○廣田委員 今の関連で言えば、全体を通して論点のいろいろなところに出てくるのですが、「国民」という言葉でいいのかどうかという問題が一つあると思います。これは大変表現が難しい、「国民」に置き換わるいい言葉があるかということで、参考資料で大抵は「国民」と書いてあるのですが、そうではなくて「消費者」というように押さえたり、男女共同参画基本法では少し違う表現があったと思うのですけれども、その辺も念頭に置いた方がいいと思います。
 「国民」にしてしまうと、今、三木委員がおっしゃったように、少し国際的視野に欠ける部分も出てくると思うのです。また、実際に適用される範囲が限定されてくると思います。

○青山座長 ほかにいかがですか。どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 全体としてはこれでいいと思うのですが、私は注のところだけが相変わらず引っかかるのです。「ADRのみならず相談手続についても該当し得るものと考えられる」と、わざわざこのように書かれてしまうと。どうしてもADRのスタートというのは相談から入るのではないかと思いますので。

○青山座長 事務局から説明していただけますか。

○小林参事官 相談から入るケースが非常に多いということは、そのとおりだと思いますので、ですから常に注という形でそこまで入るということでお示ししているのですが、他方、ADRの定義という意味からすると、少なくとも一方当事者のみと接触されるような相談については、やはりADRという言葉に入れることはいかがかということで整理させていただいているものですから、ややまどろっこしい書き方になっているということでございます。

○安藤委員 機関という形で考えますと、消費生活センターはADR機関ではないというような線引きができるかどうかです。

○小林参事官 消費生活センターにつきましては、実態問題として、今、私が申し上げた意味でのADRに該当する行為を行っておりますし、それから権限の問題としても行い得る、ないしはより積極的に果たそうということで、今、内閣府の方で議論されているところだと思いますので、消費生活センターが、そういうADR機関の定義から外れるということはないと思います。
 いずれにしても、非常に密接に関連する部分が定義をする際にどうしても外れてしまうという問題が常にあるものですから、逆に常にくっつけて議論していただいているということですが、ただ、注という書き方がかえってぎらつくということかもしれません。

○安藤委員 書いてなければそう思えるのですが、書いてあると何か気になってしょうがないのです。

○小林参事官 ですから、注ではなくて、私どもが議論する場合には、ADRと言っても狭義のADRのみならず、相談は常に含んで議論させていただいていますということで御理解いただけるのであればそれでもいいと思います。

○青山座長 よろしゅうございますか。
 それでは、今の議論も既に論点2に関連する部分もありましたけれども、論点2の方に進ませていただきたいと思います。
 「2.国が果たすべき役割(国の関与のあり方)」ということになっておりまして、ここでは責務という言葉は直接対等には使っておりませんが、論点の2-1、2-2、2-3、2-4、これをまとめて御議論いただきたいというふうに思います。今日の中心的な問題がここでございます。
 論点2-1から2-4まではお互いに関連しますから、どこから入っていってもいいということにしましょう。 どうぞ御自由にお願いいたします。

[2.国が果たすべき役割(国の関与のあり方)]

○龍井委員 3ページの論点2-3ですけれども、国の役割を考える場合の役割分担ということは重要な論点だろうと思うのですが、役割分担ということは、比較的法律も最近の議論では意識し始めておりますので、そういうことを法律にも書かれるような念頭があるかどうか。
 それよりも重要な点は、○が2つございまして、司法型・行政型の位置付けをした上で、「しかし」ということで、すべてのニーズの対応していくことが難しいという消極的な位置付けで、いわゆる私的ADRが位置付けられているんですが、この基本法自体がどちらを軸足にということも1つの論点になっておりますけれども、司法型・行政型が主軸で、それが不十分だから私的ADRに対しても一定の関与が必要というのは少し消極的なのかなと。
 国のやる仕事ということで言うと、当然自らのサービスということとの役割分担で私的ADRのサービスという、その展開はわからないではないのですけれども、今までの議論経過から言うと、もう少し違う積極的な位置付けがあってもよいのなかというのが一点目です。
 もう一点は、これは論点のどこということではなくて、この先の話になるのかもしれないので、発言を控えていたんですが、問題提起としてお話します。
 今までの基本法あるいは先ほどお示しになった例の場合、「国の」と言った場合には、例えば所管省庁が明確だったり、当然それは現場段階であれば、出先であったり窓口であったりというところが非常に明確になってくる。
 そうすると、例えば、この中でいくつか出てきますけれども、チェックをするという場合でも、いわゆるADRの関連の省庁がやることになるのか、あるいはADR庁ではありませんけれども、そういうまたがったものも出てくる可能性もはらんでいるのか。
 あるいは逆に言うと、チェックということになってくれば、あるいは判断ということも出てまいりますけれども、それはむしろ第三者機関的なもので公平性を担保していくのか、国が別に公平性がないという意味で申し上げているのではなくて、そういう直接の利害関係ではないところがきちんと対応していくのか。
 そういう現場段階での対応を考えていくと、これは後ほどの論点だから後に譲りますけれども、やはり都道府県などとの連携も当然必要になってくるわけで、その辺のスキームとして役割、責務といったことと、具体的な体制の問題、それをどのように念頭に置いたらいいのかというのを教えていただけると議論しやすいと思います。

○青山座長 わかりました。第1点は、私的ADRにもっと軸足を強調しろということですね。

○龍井委員 そうですね、この書きぶりだと少し違うかなと思います。

○青山座長 ADR基本法のようなものをつくるとすれば、私の感じでは、ここで言うと私的ADRを中心とは言わないけれども、そこに大きなウェートをかけて考えざるを得ないと思うのです。公的な司法型や行政型というのは、もう既に法律その他でできておりますから、それについてあまり規定をすることはない。範囲としては当然取り込みますけれども、ここでこういうものをつくるとすれば、そのねらいは私的ADR、民間型ADRをもっとバックアップするためにつくるわけですから、そこに軸足を置くことは間違いないと思っております。
 初めに公的なものが出てきて、それだけでは十分ではないという書き方なものですから、そういう御印象を持っておられるかもしれませんけれども、ねらいはそういうところにあると私は理解しております。
 第2点の今後のADRの主管官庁がどこかということです。これは、多分、これから考えていかざるを得ないと思っておりますが、何か事務局の方で、何かございますでしょうか。

○小林参事官 まず、今回の議論との関係で申し上げれば、一応「国」というとでくくらせていただいておりますので、これはまさに「国」でございます。
 ただ、実際には「国」と書いてあるけれども誰がやるのかという問題があるわけでして、当然法文化する際には、具体的に誰がどのようにやるのかという裏付けがあって初めてそういった条文も置けるということでございますから、そこは整理せざるを得ないと思っております。
 ADRの問題は非常に多種多様でございますし、特に公的ADRにつきましても既にそれぞれ役割分担がされていますので、いずれにしても、それを前提にして考えていくことになるわけでありますが、ただ、今おっしゃったような、例えば評価について横断的な組織を設けるのかとか、あるいは制度について横断的に責任を持つ部署を何か設けるのかどうかということについては、これはおそらく「国」ということの中に潜り込ませるにはやや重い問題ですので、そういう議論になれば、それは何らかの形で所管大臣なり、あるいは特定の組織というものをきちんと位置付けなければならないということになると思いますが、これは委員がおっしゃったように、どういう制度を組み立てるのかということによって変わってくると思いますので、今の段階で何か具体的なことを申し上げることはできないということでございます。

○龍井委員 段取りとして、基本法というものがまとまる段階、案文がつくられる段階というのは、そういう体制の問題というのは、この場ではなくても自ずからどこかで、整備されていくという前提で考えてよろしいのでしょうか。

○小林参事官 まず、そこは基本法の中にどういう仕組みを盛り込むかによって変わってくると思うのです。ここで挙げてあるような責務でありますと、これはそれぞれの国の中の分掌に応じて、それぞれが責任を有するということで、ある意味では済む問題かなと思いますけれども、おっしゃったような何らかの新しい仕組みをつくって、そこが何かチェックをするとか、あるいは何らかの役割を果たすということになりますと、これはやはりこの法律の中で、それについてもきちんと位置付けなければいけないということになりますから、それはむしろ盛り込む内容によって変わってくるのではないかと思います。

○青山座長 それでもう尽きているのですが、法律をつくった場合には、その法律をつくる官庁が、普通はその後所管していくわけです。今度は、司法制度改革推進本部というのが主体として、内閣の中でそういうものをつくっていくわけですが、この本部は3年の限時的な組織ですから、その後は、できた法律がそれぞれの所管に分かれていくのではないだろうかと思うのです。
 いずれにしても、法律のフォローアップという問題がありますから、共管ということもありますけれども、どこかの官庁がその後責任を持ってということになるだろう。それはいずれ法律ができるまでの間に、どういう内容を盛り込むかによって、所管の官庁が1つなり、2つなり、3つなり決まってくるのではないだろうかというのが、私の感じでございます。

○廣田委員 私的ADRにウェートを置く場合は特にそうなのですけれども、監督官庁というものの存在と、紛争解決というものは少しなじまないところがあるのです。裁判所が独立しているというのはそういう意味なので、紛争解決というのは、実際にその事件を扱っている当事者なり手続主宰者がやっている仕事が主なので、これを行政庁が監督するというのはもともとなじまないことです。そういう意味では、監督官庁が仮にあったとしても後ろに控えている、あるいは支援するというような性格の問題だと思うのです。
 そういう意味でADRというものを考えた場合に、論点2-3では、私はあえてこの役割分担を2つに振り分けていろいろなことを決めて、何かを書き込んでも、ADRというのはどんどん生まれてきているようなことがあったり、それからまだ成熟していないところもあって、ここから先が読めないと思いますので、また、私的ADRと公的ADRのクロスしてくるところもありますので、そうだとすれば、私はあえて論点2-3は書く必要がないのではないかと思います。
 先ほどの論点1は欲張って全部書くべきだと言いましたけれども、論点2-3は要らないのではないか。もし必要だとすれば、論点2-3の一番最後の○の「支援のうち法律扶助の対象化」です。これは具体的に決めればいいわけですから、私的ADRについても法律扶助の対象化にした方が利便性が高いことは確かですので、これはこれで別途協議すればいいので、これを裏で支えていれば、論点2-3は要らないのではないかという気がいたします。
 もう一つ、論点2-1ですが、③に書いてある規律設定も非常に書きにくいので要らないと私は思うのです。あとはいいのではないかと思います。
 論点2-2は、各々のところで具体的なもので必要であるかどうか、先ほどの論点1に関連してくると思うので、そういったものの中で一緒に論じてもいいと思います。
 論点2-4ですが、これは先ほど小林参事官の方からお話がありましたように、多分論点1の中で具体的に表現するときに論点2-4に持ってくるというものが必要であれば、論点2-4と論点1とを振り分けて、より抽象的あるいは広い概念のときは冒頭の方に持ってくる。それから、具体化されたような条文を置きたいときには、論点2-4に持ってくるというような形で、論点1と論点2-4は1つにして、具体的なものとそうではないものと振り分けて条文化するという方がいいと思います。

○青山座長 どうぞ。

○三木委員 論点2-1の「③規律設定」というところですが、先ほど廣田委員がおっしゃったこととも関連しますが、確認を兼ねて一言申したいと思います。
 この「規律設定」ということの意味ですが、その下の留意事項の1つ目の○の黒ポツの2つ目を見ますと、「法令上の規律の設定については」ということで始まっていまして、「担保措置が強力であれば」とか、その後に「遵守状況のチェックに」というような言葉が出てきまして、こういう文言を見ますと、ここで言う法令上の規律というのは、取締法規とか、少なくとも強行法規を念頭に置いて書かれているようにも思われます。
 廣田委員が③は要らないのではないかとおっしゃった趣旨は、これは想像ですが、これを取締法規と読んだ上で、そういう御意見を述べられたのかなという気がいたします。
 そこで質問ですけれども、一般論として、法令上の規律には、取締法規や強行法規のほかに、任意法規であるとか、あるいはデフォルトルールの設定ということもあります。ここでは、どういう意味で規律設定というのをお書きになったのか伺いたいと思います。

○小林参事官 結論から申し上げれば、幅を持って両方を含むということではありますけれども、この留意事項にありますように、そういった取締法規的なものも含めてということでございます。

○三木委員 そうですと、取締法規のようなものが必要か必要でないかというのは、今後の議論に委ねるべきだと思いますので、この場で軽々に判断することはできませんが、他方で、任意法規やデフォルトルールというものが必要であるということも含んでいるという趣旨であれば、明示的にわかるようにお書きいただければという気がいたします。
 ADRに関する近年の立法の動きを見ますと、主としてデフォルトルールの設定という意味を持った法律の制定というのが中心ではないかと思います。もともとADRは当事者の自治の要素が高い紛争解決ですから、強行法規になじむ部分もあるでしょうけれども、多くの場合、任意法規あるいはデフォルトルールになじむことが多いだろうと思います。
 それらの任意法規やデフォルトルールというのは、当事者の合意によって変更できるわけですけれども、それではそのような規定が不要かと言いますと、当事者はなかなか自らそういったルールを細かく定めるということはしないことも多いですし、ADR機関の中にも規則を持っていないところは我が国でも非常にたくさんあるわけで、むしろ私個人としましては、任意法規、デフォルトルールの設定というのは、国の責務として非常に大きな意味を持っていると考えております。
 したがって、この規律設定というところに含めて、説明として任意法規が含まれていることがわかるように書くというやり方もありましょうし、あるいはそれを切り出して、別項目として立てるだけの価値も私はあろうかと思っております。

○青山座長 任意法規という言葉とデフォルトルールというのは違う意味でお使いですか。

○三木委員 同じ意味です。

○青山座長 はい、わかりました。どうぞ。

○高木委員 私も確認と意見とを2つ申し上げたいのですけれども、論点2-1に書いてあるものや、その他もそうですけれども、それがそのまま例えば国のADRに関する具体的施策として出てくるという意味で書かれているわけではないと思っているのですが、それはそれでよろしいのでしょうかというのが一つです。
 つまり、規律設定なんていうのは、具体的施策として書かれるより、今、三木先生がおっしゃったように、それ自体として入れるとしたら手続ルールとして入れていくというようなことになるのだろうと思いますし、④のところも、多分促進法の規定のような形で出てきたことは国として行った施策ということになると思いますし、⑤はおそらくどこかに具体的施策として入れるよりは自ら行っていく、条文的な形としてはもっと抽象的なものが書かれるだけというような感じになるのではないかと思っているのです。
 もう一つ、規律を入れるべきかどうかということに関してなんですが、三木先生と半分ぐらい同じようなところもあって、中身は少し違うところもあるのですけれども、例えば皆さんがここでよくおっしゃっているように、ADRはいろいろ多様でもありますし、自主的に行わせることが非常に望ましいというような意見の中にあることだと思うのですけれども、やはり自主的に行わせるために、ある程度のルールというのはどうしても必要なもので、最低限守るべきルールとか、例えばここから先はやってはいけない事項を定める禁止のルールを決め、だけどそれ以外は自由ですという世界をつくってあげなければ、おそらくやっていけないことだろうと思うのです。
 ですから、留意事項の説明の中で、主体性、多様性と矛盾する問題を抱える面があるとおっしゃったのですけれども、そういう面もあるかもしれないけれども、それと矛盾なく、やはり必要性もあるのではないかということを考えております。

○青山座長 どうぞ、廣田委員。

○廣田委員 私はさっき言い落としたのですけれども、誤解のないように申し上げますが、ここにある規律設定というのは、ここで言わなくてもいいということなので、全くルールがなくてもいいと言ったつもりではないのです。
 もう一つは、三木委員のデフォルトルールで行こうというのは、多分UNCITRALのモデル調停法を頭に置いてお話になっていらっしゃると思うのです。あのモデル法とそっくりのデフォルトルールを張り付けるかどうかというのが今後の問題ではあると思うのですが、私はUNCITRALのモデル調停法で言えば、今のルールに関しては、必要なものはADR基本法に書き込んでしまうと、だから施策として打ち出さなくてもいいと考えているのです。
 UNCITRALのモデル調停法で言えば、やはり手続の公平処遇義務はやはり必要だと思うのです。一番基本的なルールですから。そういう意味では、高木委員にも三木委員にも私は賛成するので、ああいうものは法律をつくるならここに打ち込んでおきたいと思います。そしてここでは言わないという趣旨にしておいた方がいいのではないかと思っているのです。

○青山座長 どうぞ。

○山本委員 もうかなり皆さん条文をイメージして御議論しておられるようですが、私はまだそこまで必ずしもついていけていないので、実態的な側面で国が果たすべき役割について、私自身が考えていることを述べさせていただきます。
 最初に龍井委員が言われた第1の点は、全くそのとおりだと思います。私もこの資料を読んで、そこは若干の違和感を覚えた点でありまして、私自身はここでも繰り返し述べているところですが、ADRの発展に関する施策については、基本的には国の役割は補完的なものであるべきであって、第一次的には民間による自主的な取組があって、それを背後から支援、ないし促進する黒子としての役割が基本になるのではないかと思っています。
 したがって、論点2-1に即して言えば、①から③のようなものは当然国の責務としてあり得るのだろうと思うわけですが、④、⑤というのは、いろいろな分野あるいはいろいろなADRごとによって変わってくるし、仮に④や⑤を国の責務としてやるとしても、そのやり方についても、やはり民間の自主性をなるべく尊重するような方向で行われるべきであると思っています。
 具体的に言えば、私自身は、まず第一次的には利用者に対する支援というものが可能であればそれを考えるべきであって、それがどうしても不十分だということであれば、ADR機関に対する支援というのは考えられるのではないかと。それでも不十分な場合の、いわば最後の手段として国が自分で出ていって、自らサービスを提供する公的ADRという施策が取られるべきではないかという印象を持っております。
 現実から出発するという点では、先ほどの参事官の御説明のとおりだろうと思いますが、現実は、おそらく世界的に言えば、日本の公的ADRというのは非常に肥大していると評価してもいいのではないかと思われるところで、今後のADRの整備の仕方、国の関与の仕方としては、私はそのように考えていくべきではないかと思っております。
 具体的な類型としては、非常におおざっぱですが、BtoBのADRについては、これは一般的にはマーケットに委ねておけば足りるのではないか、そこの需要供給のバランスの問題ではないか。そういう意味では、国の役割というのは、まさに①から③のような背景的あるいは制度的なものにとどまって、裁判等とのイコールフッティングを確保するような施策に基本的にはとどまることでいいのではないかと思っております。
 それに対して、BtoCのADRについては、市場原理に委ねればうまくいくということでは必ずしもない、多くの場合ペイしない可能性が高いけれども、社会的にはADRを整備する必要があるという部分が大きい印象を持っておりまして、そうだとすれば、国が積極的に関与する必要があるのではないか。
 ただ、国の関与の仕方については、先ほど申し上げたようなことを思っておりまして、私の認識ではどうしても国が出ていかなければならない、自らがサービスを提供しなければいけない場面として、行政庁が有している非常に強力な権限行使を背景にしないと、なかなか交渉がうまくいかないような場面というのはあるのだろうと思います。
 現在の消費生活センターなどが多く扱っておられる、例えば悪徳商法を巡るような紛争などについては、やはり行政庁が自らADRを設営しなければ交渉がうまくいかない場面というのが多いような気がしております。他の分野にもそういうことがあると思いますが、必要性があるとすれば、国が自らADRを提供するということが考えられていいのだろうと思います。
 ただ、基本的には私は、直接的な国の支援ということではなくて、間接的な支援が第一次的に考えられていいのではないか。先ほどお話ししたように、基本的には利用者の支援というものが一次的に考えられていいのではないか。
 そういう面からすれば、廣田委員が先ほどおっしゃったように、私自身も、完全に法律扶助のスキームに乗るかどうかということはありますが、法律扶助的な、利用者に対して支援を行うという方策は十分検討に値するのではないかと思っております。
 現在、BtoCのADRについては、業界型ADRが無償のサービスを提供している場面、これは金融についてもPLについてもそうですが、そういう場面が多くあるわけですが、しかしそれが現在、かなりの程度限界に来つつあるという認識が一般的になってきているのではないかと思います。
 将来、例えばNPOとかが、こういう場面でのADRに参画するということを促進するとすれば、私はこの法律扶助の問題というのは非常に重要になってくるのではないかと思います。
 理念的には、資料に書かれておりますように、確かに直接に裁判を受ける権利の保障に資するという側面ということではないわけですが、ただ広い意味では法の支配を社会に行き渡らせるという点は、このADRに対する法律扶助にあるわけでありまして、それは今回の司法制度改革の趣旨にも沿うものであると思っておりますし、また諸外国の法律扶助制度において、ADRを制度の適用対象にするに当たって、そのような形で法律扶助の制度趣旨を再定義しているという例もあると認識しております。
 特に日本のように、裁判による紛争処理、紛争解決の比率が低い社会において、貧困者の実効的な権利保護を図るという観点からは、ADRに対する扶助が積極的に位置付けられてよいように思いますし、実際に法律扶助の需要があるとされている、例えば多重債務問題でありますとか、家庭問題、あるいは借地借家紛争、クレジットカウンセリングなどを含めて、そのようなところについては、ADRが最も機能し得る領域ではないかというようにも思うわけであります。
 勿論、法律扶助については、現実に予算面の限界というものがあるわけでありまして、現実には御承知のとおり、裁判扶助においても必ずしも現在の予算は十分であるとは思われないところであります。
 そういう意味では予算の割り振りという観点からすれば、まず裁判扶助を充実させるということは当然のことであろうと思うわけでありますが、しかし制度的には将来の可能性というものを見据えるとすれば、少なくともADRを制度の適用対象にする可能性を認めておくということが現段階では非常に重要ではないかという認識を持っております。
 長くなりましたが、以上です。

○青山座長 私が最初に法律の条文を具体的に挙げましたものですが、その後の議論が少し法律の条文に即したような議論になってきたかもしれませんが、私の意図は、最終的な着地点みたいなものをそこで考えておいていただければ、いたずらに抽象的な議論には陥らないで済むのではないだろうかということです。しかし、今日議論していただくのは、今、山本委員がおっしゃったような、実質について御意見をいただきたいということでございますので、どうぞ自由にお願いします。
 三木委員どうぞ。

○三木委員 山本委員も随分踏み込んだことをおっしゃいましたので、若干それについて思うところを申したいと思います。
 基本的には、今おっしゃった趣旨に賛成でして、民間のADRというものを中心に据えて、国が一歩後ろに黒子として引くべきだという点は、私も同意見であります。そのような趣旨がこのペーパーにも今後の議論にも現れていくようにすべきではないかと考えております。
 他方、若干山本委員の御発言の細かいところに踏み込むようで恐縮なんですが、2~3意見を異にするところもございます。
 山本委員は、我が国のADRでは、行政型・司法型を含めた公的なADRが肥大化していて、民間型のADRは十分に発達していないという現状を踏まえるべきだということをおっしゃいました。その点は、そのとおりだろうと思います。ただ、公的なADRが相対的に肥大しているということは、必ずしも現在の公的ADRが十分であるということは意味しないだろうと思います。
 我が国の政策関連型のADRを見てみますと、そのほとんどがかなり古い時代につくられたものが多くて、現在のさまざまな問題に十分対応する公的ADRが諸外国と比べて適宜つくられてきているかというと、そうではない面もあるように思います。
 したがいまして、民間あるいは私的なADRを中心に据えるべきだということを踏まえつつも、国の責務あるいは施策として、政策目的を持ったADRがこれで十分かというチェックと、不十分であれば積極的に新たな公的ADRの設立ということも考えていかなければいけないということがどこかで盛り込まれるべきではないかと考えております。
 それから、これもあまりにも各論に踏み込んだ話で恐縮ですが、先ほどBtoBについては市場原理に任せておけばいいとおっしゃっいましたが、BtoBであっても、諸外国を見ますと、特に大企業と中小企業の間の紛争、あるいはフランチャイズ契約におけるフランチャイザーとフランチャイジーの間の紛争などでは、中小企業の側、あるいはフランチャイジーの側が一方的に弱い立場に置かれているということで、そちらの側を支援するような形での公的なADRというものがつくられている例もございます。
 また、そうしたADRは、その国の中小企業政策や競争政策と密接に結び付いた形で運営されているという例もございます。
 したがって、単純にBtoBであれば市場原理に委ねてよいと、BtoCであれば公的な支援が要るという言い方もできないだろうと考えております。

○高木委員 私は、山本先生の御意見は今の三木先生のようには受け取らなくて、BtoCとおっしゃったけれども、例えば3ページの②にあるような当事者間に力の格差があるものについては公的ADRでという趣旨でおっしゃったと思いました。
 私が申し上げたいことは、国が補充的に最後に出ていくのが公的ADRだという理解は、お二方に賛成ですけれども、留意事項に書いてあるもののうち、③は多分少額紛争といったものだと思いますが、②、③については是非公的ADRの責任がはっきりするような形でやっていただきたいと思っております。

○青山座長 今、問題の核心に入っておりますが、3ページの留意事項に○が3つありまして、4ページに○が1つあります。ここは若干最初の○と2番目の○の関係が、これでいいのかというような御議論もありましたし、それから最後の○の法律扶助の点は、少し腰が引け過ぎではないかというような御意見もありました。そういう点について、もう少し御議論をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○高木委員 法律扶助の点で、事務局が用意されたペーパーは一般的によく言われることで、そのとおりだと思いますけれども、つまり民間によるサービスの利用が、一般的に受益者負担とされているところで、なぜそこを修正すべきか、なぜ財政援助を必要とするかということについて、例えば先ほど山本先生がおっしゃったような、法の支配を行き渡らせるとか、そういった程度ではダメなのでしょうか。どの程度の理由があれば認められやすいのでしょうか。それによっては一生懸命探しますということで、事務局にお尋ねしたいと思っているのです。

○青山座長 そこまで具体的に考えているわけではないので、むしろ裁判を受ける権利を保障するというだけではダメなのだけれども、ほかの哲学はどうかということで、今、法の支配ということが出てきておりますので、それは今後更に議論していけばいいことではないかと思います。
 どうぞ、横尾委員。

○横尾委員 3ページの公的ADRと私的ADRとの役割分担のところなんですけれども、留意事項の①から④というのは、一般論としては確かにそうではないかと思うのですけれども、例えば当事者間の力の格差であるとか、政策的ニーズの存在というものは、おそらく具体的な政策とセットで議論されるべきことでありまして、例えば一般的に消費者の問題、先ほどのBtoCでは、前提として消費者の方が弱いであるとか、そういうことになりますと、全くここに私的なADRの介在の余地がなくなってくると思いますので、そうではないということを是非留意していただきたいと思います。

○青山座長 どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 私も国があくまでも補完という形では納得がいったのです。最初にパッと見たときに、国の責務だ何だかんだというので、国がわっと全面に出てきたような感じがして、何で私的自治かなと思ったのですが、この中で先ほど言われた、公的ADRと私的ADRですが、このときに私的ADRの方に、例えば執行力の付与だとか、時効の中断効付与といったものを与えた場合に、私的ADRが充実さえしていれば、公的ADRというのは自然消滅と言うとおかしいですけれども、なくす方向に向かっていってはいけないのですか。

○青山座長 これはかなり難しい問題ですが、安藤委員は、なくす方向に向かうべきだという御主張ですね。

○安藤委員 そうです。

○青山座長 はい。そうなるかどうかということと、それが望ましいかどうかということはちょっと別な問題かもしれませんけれども、何かこれについて御見解がある方はおっしゃっていただければと思います。

○龍井委員 なくなった方が望ましいという意味でおっしゃっているのか、機能的になくなるのではないかという、どちらのスタンスですか。

○安藤委員 私は考え方から言うと、なくすべきではないかなと、あくまでもADRとして一本にまとめるためには、公的、私的というようなものがあるべきではないと。そうなってはじめて裁判と並ぶという形ができるのではないかと思います。

○青山座長 今日は、綿引委員がいらっしゃっていませんけれども、綿引委員は、民事調停や家事調停はあれだけきちんとしているということを多分おっしゃって、今の安藤委員の御意見には多分別のお考えをお持ちではないだろうかと思っています。
 これは、ここで方向性を決める必要もない議論でございますので、よろしゅうございますか。

○安藤委員 私の考え方としては、啓蒙・普及がうまくいきさえすれば必ずそうなると思っているのです。まず相談から入ってという形ですから。

○廣田委員 私も安藤委員の御意見に賛成でして、ADRというものを理念的に考えると、そういうものだと思うのです。それから理想的に言えば、そうなりたいと思うのですけれども、現実的に言えば、なかなかそうはならないだろうというところもあると思うのです。
 そうすると、ではADR基本法とか、今、議論されているものはどういうことかと言うと、おっしゃったようなことを睨んで、そういう方向に行くことに対して邪魔にならないものにしなければいけない、こういうことが基本だと思います。そういうスタンスで私はものを考えたいと思っているのです。御趣旨は全く大賛成です。

○青山座長 ほかの点はいかがでしょうか。
 それでは、論点2については、今、3ページの論点2-3の留意事項というところで、事務局の考え方はある程度出ておりますが、これと違う考え方もいろいろ御指摘いただきましたので、今日は議論としてお預かりし、事務局で3巡目に向けて整理し、その中で今日の御議論を更に検討させていただくということにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

[3.地方公共団体が果たすべき役割]
[4.ADR機関・ADR主宰者が果たすべき役割]
[5.国民が果たすべき役割]

○青山座長 それでは、そのようにさせていただきます。それでは、あとは論点の3、4、5という点をまとめて御議論いただきたいと思います。
 なお、5ページ目の論点4の枠の中に注がございまして、ADR機関等を対象とする規律の設定については、次回と次々回で議論を予定するということになっておりますので、そこのところだけ御留意いただいた上で「3.地方公共団体が果たすべき役割」「4.ADR機関・ADR主宰者が果たすべき役割」「5.国民が果たすべき役割」という論点の3、4、5について、今日は総論的な御議論をいただければと思います。
 どなたからでも、どうぞ自由におっしゃっていただきたいと思います。

○三木委員 論点3の留意事項の中で「単に国に準ずる役割というのみならず」という言葉が入っているのは、今まで国について論じてきた論点2-1から2-4までは、当然地方公共団体にも被るという前提でお書きなのか、それとも違う趣旨なのか確認したいと思います。

○小林参事官 「準ずる」ということでございますので、必ずしもそのまま被るというわけではないと思っております。
 特にADRに関して言うと、かなり制度設計の部分がございますので、そういう部分は地方公共団体に求めるというのは難しいと思っていますので、言葉は「準ずる」になっておりますが、かなりの程度のものが事柄の性格上落ちることはあり得るのではないかと思っております。
 ただ、ここで書いたのは、これまでの例としてそういうものがいくつかあるということと、むしろ主眼は、それのみならず後段もあるのではないかということを申し上げたかったということです。

○龍井委員 関連してよろしいですか。

○青山座長 はい。

○龍井委員 先ほどの質問で、別に所管省庁のことを聞きたかったのではなくて、出先と言うか、窓口と言うか、まさにここに書かれている国民に身近な存在となったときのものが、一つは地方公共団体があれば、では国のところは何なのかなというイメージが湧かなかったものでお聞きしたのですが、あえて現場段階で身近な具体的なトラブルがあって、今でもやっているように都道府県でもいろいろな相談があるという体制の中で、これができたことによってその体制がこのように変わっていくのだという、積極的な役割と先ほどおっしゃったことは私も全く大賛成なのですが、もう少しブレイクダウンの議論をしたいのです。
 イメージがもうひとつ湧かないのですが、例えばどういうようなケースが想定されるのですか。

○小林参事官 まさにこれからの御議論ですから、余り結論先取りというわけにはいかないと思うのですけれども、一つはまさに、より身近な行政機関であるということからスタートして、先ほども少し触れましたように、まさに入口というか、総合窓口機能としての役割を果たしていただくということは考えられるのではないかというのがございます。
 もう一つは、これはやや議論を要すると思いますが、身近であるがゆえに、小さな紛争というと語弊があるかもしれませんが、そういう機関になじむような紛争がもしあれば、そういう役割を果たしていただくということはあるのかもしれないと。
 しかし、身近な紛争だから簡単だとか、身近な紛争だから身近なところで解決しろということでも必ずしもないと思いますので、後者の方はなかなか難しいのかもしれませんけれども、視点としてはそういう面があり得るのではないかと思います。

○廣田委員 地方公共団体の役割のところで、私は現状として認識しておく必要があるのは、論点2-1の⑤に「自らのサービス提供」というものがありますが、これが現実にはかなりあるということです。
 例えば、建設工事紛争審査会ですが、これは都道府県にありますね。それから、労働関係の個別労働紛争は、地方公共団体でやっていると言っているのか出先機関がやっているのかというと、都道府県の労働局がやっているということです。
 そのほかに建設関係では、東京都にはマンションだとか大きな建物ができるときに建築紛争調停委員会がありまして、これも多分東京都だけではないと思うのです。それからここに引用されている消費生活センターの苦情処理委員会ですとか、そういうことになると、大小いろいろあって、しかも中央建設工事紛争審査会に対応する都道府県のものは、非常に盛んに使われているところもあるし、非常にケースが少ないのもあるのです。その管轄を少し流動化するかということは、現実に議論されているのです。
 そういうことを踏まえて言えば、準ずるというよりもむしろ、言ってみれば地方分権的な思想もここに入れて、そういうことをもう一押し積極面を加えるかどうかということが、表現の仕方とか、政策の打ち出し方として、やはり議論の対象になるのではないかと思うのです。これはなかなか難しい問題で、しかもケースによってばらつきがありますので、ちょっと私自身見通しはよくわからないのですけれども、一つの方法としてはあり得ると思います。

○三木委員 私も論点3の地方公共団体の果たすべき役割について、どのように整理すべきかやや悩んでいるのですけれども、基本的には廣田委員が今おっしゃったような感じを持っております。
 国に準ずるという点に関しましても、例えば国の責務の方の論点の2-1の①~⑤を見ますと、①の普及・啓蒙、②の民間等による自主的取組の促進あるいは④の支援、先ほど廣田委員もおっしゃった⑤の自らのサービス提供、これらは、地方公共団体でも同様に妥当するのではないかと思います。
 ③の規律設定につきましては、これが法律ということであれば勿論国の役割になりますし、条例のレベルで何かがあり得るのかどうかよくわかりませんが、多くの点は地方公共団体にも同様に妥当する。そういう意味では、地方公共団体の扱いがやや小さいような気もいたします。
 もう少し理念的なことを申しますと、現在のADRムーブメントの一つの大きな発端はアメリカでありますけれども、アメリカで今日のような大きなうねりができてきた一番最初というのは、地域のコミュニティーの隣人紛争等を中心とした紛争解決のADRが各地につくられて、それが大きな基盤になったという経緯があります。
 勿論、アメリカのコミュニティーと我が国の地方公共団体というのは同じではないですし、またそうしたものは、その国の仕組みとか国民意識とかにも関わってきますので、単純に右へ倣えということにはならないと思いますが、ADRにおいては、歴史を見ても、海外の例を見ても、地方公共団体の役割というのは非常に大きいものがありますので、ある程度大きな扱いがなされるべきではないかと漠然と考えております。

○山本委員 私も全く同じ意見を持っております。これは安藤委員が繰り返しおっしゃっているとおり、ADRは基本的にはまず相談というのがあってADRに入っていくんだろうと思うのですが、現在、法律相談等一般的な相談の分野で地方公共団体が果たしている役割というのは非常に大きなものがあるのだろうと思っておりますので、その延長線上でADRについても地方公共団体が大きな役割を果たすということは、当然考えられていいだろうと思います。
 また、例えばここに書かれている法律で、消費者保護基本法の中にも地方公共団体の役割というのが大きく位置付けられていると思いますし、あるいは民事法律扶助法の中においても、地方公共団体に一定の役割を認める条文が正面から置かれているというようなことも考えると、この地方公共団体の役割というものをADRに関する法制の中できっちりと位置付けていくというのは、非常に重要なことだろうと思います。

○青山座長 どうもありがとうございました。その点はよろしゅうございますか。

○安藤委員 私は、ちょっと反対なのですけれども、我々の観念から言いますと、地方公共団体もお上です。
 ですから、あくまでもそこを窓口にするというのは、ちょっとやりたくないと考えていますので、地方公共団体についてもというのであれば、地域のADRの健全な発展と、「国」が決まれば頭に「地域」だけ付けていただいて、あくまでも補完的な意味で動いてもらいたいと、そのように考えております。

○青山座長 ADRの機関、主宰者については、次回辺りでまた議論をいただきますが、国民の果たす役割ということについてはいかがでしょうか、何かお考えがあれば。

○三木委員 難しい問題で、深く考えているわけではありませんが、ここで書かれているのは国民一般ということではなくて、ADRを利用する国民ということで書かれておるわけですから、紛争当事者になった国民ということについては、広い意味での役割とか責務というものが考えられても私はおかしくないと考えます。
 中身の点ですが、留意事項の中で、①、②というのが挙げられておりまして、私はどちらも妥当だと思いますが、もう一つ③ということになるのかどうかわかりませんが、紛争当事者の信義に従った誠実な紛争解決の責務のようなものも、これと並列になるのかどうかは自信がありませんが、挙げられるのではないかと考えます。
 言うまでもなく、民事訴訟法の中にも一般規定として同種の規定がありますし、それはADRにおいても妥当するのではないかと考えます。

○高木委員 質問ですけれども、留意事項の②ですけれども、説明のときに誠実に対応する努力義務のようなものだとおっしゃったように思いますけれども、例えば何か法令の中にサンプルがありましたら教えてください。
 もう一つ紹介したかったのは、自ら選択した手続に対する協力というのは、多分自主的な紛争解決をよしとする人たちから言うと、選択の自由もあるかもしれないけれども、離脱の自由もあるんではないかという議論もあって、そのことから言うと、これは一体協力義務違反になるのだろうかという議論がありましたので、紹介しておきます。
 これは法令に何かありましたか。

○小林参事官 むしろ、三木委員がおっしゃったものをヒントとして考えたものですが、気持ちとしてはどちらかと言うと、三木委員がおっしゃったものよりは少しソフトなものであるべきかと、離脱の自由も含めてソフトであるべきかということで、やや引けた書きぶりになっているということであります。

○青山座長 資料のつくり方が、ここはもう「利用者である国民」と言ってしまっているものですから、具体的なものが出てくるのですが、潜在的利用者としての国民という意味では何かあるのでしょうか。
 当事者になれば、今のような具体的なものは出てくると、しかし、当事者かどうかわからない一般的な場合はどうか。今までの法令で書いてあるのは、ADRというような手続ではありませんから、国民一般として書かれているわけです。今回のADRというようなものについて基本法をつくる場合に、国民一般として何かあるのかというと、非常に私は難しいという気がするのですけれども、何かこういう点があるというものがあればどうぞ。

○高木委員 多分、国民としてのADRに対する理解ということで、今までの裁判に劣るという形の理解や認識を改めてもらう意味での精神的なものは入れていただいた方がいいかと思います。

○青山座長 わかりました。どうぞ。

○廣田委員 皆さんが既におっしゃったことと同じですが、やはり、ADRの方から呼び出しを受けたときに、勝手にしなさいと言って横になってしまうとか、そんなことがないようにしたいということで、それをどう表現するかということだと思います。ですから、誠実に対応する責務というか、対応しなければいけないですよというような程度のことは書いておきたいと思うのです。
 もう一つは、先ほども言いましたけれども、ここで「国民」という用語がいいのかどうか。これは国民には限定できないと思うのです。当然外国人もいますし、外国との争いというのがあるわけですから、ですからそれをどう表現するかということは、一考を要するのではないかと思うのです。

○青山座長 わかりました。ほかに何かございますでしょうか。
 いろいろ御意見をいただきましたけれども、今日のところでは、この資料について一通りの御議論をいただきましたので、次回及び次々回で、それを踏まえて更に主宰者、手続、機関の組織・運営というところの規律について御議論をいただきたいということにしたいと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

[その他]

○青山座長 それでは時間でございますので、先に進めさせていただきます。
 前回の検討会で高木委員から、今やっている2巡目の検討スケジュールをもう少し先まで示してほしいという御意見が出たと思います。
 そこで、今日は事務局の方から資料12-2といたしまして、夏までの検討スケジュール案が提示されております。これを御説明いただけますでしょうか。

○小林参事官 基本的には夏前に第19回の予定としてお示ししておりますような、中間的な整理、これをどの程度整理するかというのは十分御相談させていただきたいと思いますが、いずれにしてもパブリックコメントも念頭に置きながら議論の整理をさせていただきたいと思っております。
 他方、今回の議論もそうだったと思いますけれども、かなりたくさんの御意見をいただいておりますので、それを十分咀嚼して、出てきたものが委員の方が御議論いただいたものとあまりイメージが違うということになってもまた問題だと思いますので、何回かフィードバックしたいと考えております。
 そうなりますと、そのための再議論の時間を17回、18回に予定するということになりますと、それ以前の5月26日の第16回までの間に2巡目の議論を一通り終わらせたいと考えております。
 そのために、それぞれの会のテーマを割り振っておりますので、それぞれ非常に重い内容ではございますけれども、こういったスケジュールで進めさせていただきたいと考えております。

○青山座長 このスケジュール案につきまして、何か御意見、あるいは御質問はございますでしょうか。
 私は、まだ大分時間があると思っていたのですけれども、このようにスケジュール案を示されますと、7月14日にパブリックコメントに付するべき中間整理をするというのがデッドラインとしてありますことを考えますと、かなりタイトなスケジュールではないだろうかと考えております。
 そこで注の1に「進捗状況により予備日における開催も検討」としてございますので、今、具体的にいつということではございませんけれども、ひょっとすると最後の方に1回あるいは2回ぐらい入れていただくこともあるべしということで、夏休み前の日程を立てさせていただいたわけでございますが、是非この日程で御協力をお願いしたいと思っております。
 それでは最後に、もうここに示されておりますが、次回の日程を確認しておきたいと思います。
 今日は2時からでございましたけれども、次回は3月10日月曜日午後1時半からです。内容は、先ほどの資料12-2にございましたように、主宰者に関する規律について、主宰者としての専門家の関与の在り方を含めまして、議論を行うことを予定しております。 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。検討会は、これにて終了させていただきます。