[開会]
○青山座長 ただいまから、第14回「ADR検討会」を開会いたします。
早速議事に入ります。本日はお手元の議事次第のとおり、まず、前回議論いたしました「主宰者としての専門家の活用」に関しまして、日本弁護士連合会からのヒアリングを行うことを予定しております。
その後、「ADR等に関する規律」の議論の2回目といたしまして、手続や組織運営等に関する規律について検討を進めていきたいと思っております。併せて約3時間程度を予定しております。
なお、綿引委員から、前回の調停に関する議論に関連してペーパーを提出いただいております。資料はお手元に配布してございますが、まず最初に綿引委員から何か補足がございましたら、お願いしたいと思います。
○綿引委員 前回座長の方から、民事調停等では利害関係情報の開示義務というような運用がされていないのはどういうことか調べてほしいということでしたので、1のところで、実際問題として利害関係を開示するような事態というのは生じないような運用がされているのだという御説明をさせていただいております。
第2点は、若干前回の議論で問題になったと思いますが、今、ここで議論していますADR法、あるいはADR基本法と申しましょうか、その規制が民事調停や家事調停などにも及んでくるのかどうか。特に民事調停法、家事審判法等との関係については、一度じっくり議論する必要があるのではないかという感じを持ちましたので、その点を今後、どこかで議論していただきたいということを2に書かせていただいております。
以上でございます。
[日本弁護士連合会からのヒアリング(主宰者としての専門家の活用)]
○青山座長 どうもお忙しいところありがとうございました。それでは、「主宰者としての専門家の活用」につきまして、日本弁護士連合会の御意見をお伺いしたいと思います。
本日は日本弁護士連合会から鈴木誠ADRセンター委員長に御出席いただいております。お忙しいところありがとうございました。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、日弁連の意見、考え方について、これから若干申し上げたいと思います。
ちょうど昨年の7月に、この検討会で意見を述べる機会を与えていただきまして、その折に日弁連の基本的なADRに対する考え方をお話しさせていただいたと思います。
基本的には、そのことと今日申し上げることとは同じということになるわけですけれども、前回は全般的、総論的なことを申し上げたかと思いますが、今日は与えられている課題と言いましょうか、ADR手続の主宰者についての意見ということでございます。
資料14-1をお配りしておりますけれども、日弁連の基本的な現時点における考え方はここに述べさせていただいているとおりでございます。
ただいまから与えられた時間内におきまして、これに基づきまして、御説明を申し上げたいと思っております。
日弁連といたしましては、基本的にADRを拡充・活性化して、これが裁判と並ぶ魅力的な紛争解決の手段、選択肢となれば大変結構であると考えております。
そのようなことを実現するために、日弁連として積極的にこの問題に対し関与し、また積極的にいろいろな行動を取っていきたいと考えております。
そのような過程におきまして、ADRの拡充・活性化は大変大切なことですけれども、それと並行するような形で、大変抽象的な言い方ですけれども、いわゆる悪いADRといいましょうか、世間にあっては困るようなADR、そのようなものがはびこらないように、いわゆる事件屋や示談屋というようなものが、この世の中には大変たくさんありますけれども、そういうものがADRの名を借りて国民や企業に被害を与えるということがないようにすることも大変重要な一面であると考えております。
このようなことにおきまして、ADRの手続主宰者という問題につきましても、多様性を尊重しながら、広く弁護士以外の者がこれに参画して、拡充・活性化していくということが基本的に重要であるという認識に立っているものでございます。
同時に、これを信頼性ある機関が行い、また、公正な機関によって妥当、正当な結論が出るようにということも同時に考えていくべきではないかと考えております。
次に具体的な問題につきまして、まず手続主宰者の資質や能力という点でございます。この検討会でも今日まで検討されてきていると思いますけれども、手続主宰者について、第1に法的知識という専門能力が必要である。2番目に、紛争分野についての専門能力も必要である。3番目に、紛争解決についての専門能力が必要であるということが検討されていると思いますけれども、この3つの要素があるとすれば、このうち我々は最も重要なものは第1の法的な能力という点にあるのではないかと思っております。
この法的能力と言いますのは、単に法律の規定や判例というものだけではなく、法の裏、あるいは法の下にあります公正、人権感覚、正義というものや、いわゆる法的なものの考え方、そういうことを含めた法的な能力がADRの手続主宰者としては非常に重要なものであると認識しております。
したがって、ただいま1、2、3と申し上げましたけれども、1は、必ず備えていなければならない重要な問題であると日弁連としては認識しております。
2につきましても、これも大変重要な要素でございますから、これは各専門家によって行われるということも重要であろうと考えています。それから、3につきましても、こういうものがなければ、まとまるものもまとまらないということも十分考えられますので、これについても、大変重要なものであるという認識を持っております。
それから、3番目に手続主宰者の法制をどうするか。もしADR基本法というようなものができるとすれば、これについての主宰者の規定はどうすべきかという問題でありますけれども、ここで弁護士法72条というものが1つの論点になってくるのではないかと考えております。ここで最も重要なものは、ADRの手続主宰者についても、先ほど申し上げましたような法的な専門能力、これが非常に重要であって、基本的にはまずこれを備えていることが必要であると考えていますので、これについての法の規定が必要ではないかと考えております。
なぜかと申しますと、やはりADRの手続主宰者が法的能力を持たなければならないということの背景には、ADRを利用しようとする者が、常に法はどうなっているか、もし裁判になった場合にどういう結果が得られるかということを念頭に置きながら、ADRを選択しているということが非常に多いのではないかと思います。
私どもが経験します問題につきましては、例えば簡易裁判所の調停でありますとか、家庭裁判所の家事調停でありますとか、そういうものにつきましても、法の規定あるいは判例というものが常に念頭にあって、正式な裁判になった場合にはどういう結果になるだろうか、どういう結論が得られるだろうかというようなことを念頭に置きながら、手続を主宰している、あるいは当事者に対してアドバイスをしているということが大変多いわけです。基本的にはそういう能力を手続主宰者が身に付けていなければ、公正、正当なと言いましょうか、正義を実現すると言いましょうか、そういうものが得られないのではないかと基本的に考えているわけでございます。
だからといいまして、弁護士だけがこれに参画していけばいいと考えているわけではありませんで、先ほど申し上げた日弁連の基本方針であります拡充・活性化、あるいは魅力ある選択肢ということから考えましても、弁護士以外の者が積極的にADRに参加することを考えるべきであると考えております。そのためには、72条というものを何らかの形で緩和せざるを得ないであろうということも考えております。
緩和につきましては、この後にまた申し上げたいと思いますけれども、この緩和につきましても、やはり72条の立法趣旨というものを基本として念頭に置きながら、考えていかなければいけないのではないかと思います。
次に手続主宰者についての弁護士法72条の緩和の問題について、日弁連の基本的な立場を申し上げたいと思います。本日のヒアリングにおきまして、これが一番日弁連の立場として重要なものであると認識して申し上げるものでございます。
この72条という条文をそのまま読みますと、これは大変広く規定されておりますので、仲裁や調停、あるいはそのほかの法律関連の仕事について有償で事業として行う場合には、弁護士でなければこれを行うことができないと規定されているわけです。
それがどういう意味を持っているかということは、もうこの検討会で十分いろいろ検討がなされていると思いますけれども、最高裁の判例等にもありますように、これは国民が不測の損失を得るようなことがないように、あるいは事件屋や示談屋がはびこって、法的正義というものが破綻に陥るということがないように規定されているということです。国民や国内のいろいろな企業を保護するために設けられている規定でございますから、それを念頭に置きながら考えていくべきものであると考えております。
そこで我々の考え方といたしまして、ここにも書いてありますように、弁護士でないものが手続主宰者になる場合には、弁護士の一定の関与、これは弁護士と共同又は弁護士の助言を受けて行うべきであると考えております。
弁護士と共同で手続を主宰するということを原則とすべきであると考えますけれども、例えば弁護士と共同してADRを行うということはどういうイメージかと申し上げますと、現在でも我々弁護士は、例えば日本知的財産仲裁センター、知財センターと言われているものがありますけれども、ここでは弁理士と弁護士が共同で仲裁手続を行っております。
また最近ですけれども、土地家屋調査士会の方から、日弁連あるいは単位弁護士会の方にいろいろと御相談がございまして、弁護士と共同でADRを立ち上げたいというお話もございまして、積極的に日弁連として協力していこうという体制で現在対応しております。
それから、助言についてですけれども、これは言葉の意味からはっきりとイメージが湧いて来ないということもあろうかと思いますので、若干御説明を加えたいと思いますけれども、例えば現在、簡易裁判所の調停、あるいは家庭裁判所の調停におきましては、裁判官を含めた調停委員会というものがあって、そこでは調停委員が手続主宰者となって行われているわけですけれども、調停委員は必ずしも弁護士ではないということで、大変機能しておりまして、扱われている事件数などは大変多いという現状でございます。
ここで裁判官がこの手続に関与するというのは、例えば最初に出てきて手続の説明を当事者にする、途中の段階では一切関与しないで、最後にまとまるときに調書などをチェックする、あるいは最後難航したときに、これを不調なら不調とする、そういうところに出てきて関与しているような実情ですけれども、助言ということがそういうものも1つのイメージとして出てくるかなという感じを持っております。
勿論、そういう形だけではなくて、例えば待機をしていてそこへ相談に行くとか、あるいは連絡の取れるような状態にしておいて、そこで相談を受けるということも1つの助言になろうと考えられます。
どのような場合について、どのように助言をするかということは大変難しく、ケース・バイ・ケースであろうかと思いますけれども、この助言というものは、ADR機関の信頼性とか、あるいは手続主宰者の能力の程度であるとか、そういうものと大いに関係してくると思いますので、そこに濃淡があると言いましょうか、しっかりしたADR機関によって、しっかりした手続主宰者がいる場合には、助言の濃淡において淡の方になるということもあろうかと思いますけれども、それはこれからの問題で大変難しい問題を含んでいると思いますけれども、そういうことも含めた「助言」と御理解いただければいいのではないかと思います。
次に、5番目の問題ですけれども、ADR全般についての手続主宰者の資質や能力という点については、我々日弁連としましては、やはりどういう場合におきましても、ADRというものに対しては、これを主宰するものは法的な専門能力が原則的には必要であると考えております。
ただ、それを法制と言いましょうか、どこまでも法律で規定すべきかということになりますと、少し違った考えを持っているというところでございまして、基本的には重要であるということではありますけれども、弁護士法72条の適用外と言いましょうか、これを業として行わない、報酬性がないADRに対してまで、法で規定することもなかろうと、拡充・活性化という観点からも規制をこれ以上強化するということは適当ではなかろうと思っておりますので、重要ではありますけれども、特に法制化については規定は必要ないだろうと考えております。
その他のところで、専門家の活用につきましては、大いにこれから充実させていかなければならないと考えております。現在におきましても、建築の専門家であるとか、医師であるとか、そういう個々のADRの問題については専門家に鑑定なり助言なりをお願いするということは行われているわけですけれども、これを更に活発に行っていくべきであると考えております。
それから、日弁連のADR機関に関する関与の問題ですが、この手続主宰者という問題だけではなくて、ADR機関そのものについて、これからも日弁連は積極的にこれに関与し、協力していくという姿勢は変わりません。これは運営そのものにも積極的に関与していきたいと思っております。
最後に代理の問題について触れましたけれども、代理の問題は手続主宰者の資格の問題とはまた違った問題であろうと思われますので、代理の問題については、今まで申し上げたような緩和事項というものについて、直接当てはまるものではないと我々は考えております。
以上のとおりでございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。
ただいまの鈴木ADRセンター委員長からの御説明につきまして、20分ほど質疑の時間を設けたいと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞ御質問のある方はお願いいたします。
[質疑]
○横尾委員 どうも御説明ありがとうございました。3点ほど教えていただきたいところがございます。
まず第1点ですけれども、今日は主宰者の話が中心だったわけでございますが、弁護士法72条の緩和の観点から1点お伺いいたします。司法書士法で、昨年、司法書士の皆さんも、簡裁での代理権が認められることになったということでございますが、それとの関係でどのように考えていけばよいのかという点でございます。
それから、弁護士の先生方の側面的な助言というものが必要であって、一定の自主的関与というものが重要であるというお話でございましたが、これは弁護士であればどなたでもいいということかどうか。もう少し言いますと、ADRというものは新しい分野でもございますので、一番最初にありました3点の資質・能力というものがあると思いますけれども、この観点から何か、弁護士であっても更に人材育成などに取り組んで、今日はお触れいただかなかったかと思いますけれども、そういった能力についてある一定の向上というものを求めるのかどうかという点が2点目でございます。
3点目は、既に随分と経験をお積みだと思いますけれども、ADR主宰者として、今後ADRを拡充していく上で更に必要な制度や方策というものについて何か御感想があればお伺いしたいと思います。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) まず第1点目ですけれども、司法書士法の改正によって、簡裁の代理権が与えられたということと、このADRとはどういう関係に立つと思われるかということでございますが、私どもは直接これがADRの問題として、72条の問題に関わってくるとは考えておりません。
御案内のように、司法書士法という特別法によって、司法書士の権限の拡大と言いましょうか、そういうことが立法事実や立法目的に従って行われたものと考えておりますから、このことが直接ADRに関する弁護士法の解釈の問題に影響を与えるとは考えておりませんで、ADRはADRとしてその目標、目的、あるいはいろいろ必要なことが別にございますので、その別の観点から検討した結果、今申し上げたような結論に達したというところでございます。
それから、2番目の助言の問題として、すべての弁護士、どのような弁護士でもこれについて担当していいのかという御質問でございます。
これは弁護士制度がこれからどう変わっていくかということにもあるかもしれませんけれども、少なくとも現在の弁護士は、御案内のように一定の試験を経て、修習を経て、その上で適任と認められて、特に法律的な知識、あるいは物の考え方、こういうものがあるというように国家が認定しているという前提がございますので、一応一定のレベルに達していると考えるのが妥当ではないかと思います。それとともに、現在、弁護士会では懲戒制度等がございますので、それによって日常監視されていると言いましょうか、そういう規制を受けているということも事実でございます。
したがって、特にどういう能力を持っている弁護士でなければ、助言又は共同する資格がないということを法定するというところまでは必要ないのではないかと考えます。
ただ、我々の実務からいきますと、家庭裁判所あるいは簡易裁判所に調停委員を弁護士会として推薦しておりますけれども、推薦基準というものがございまして、一定の弁護士経験を経た者、あるいは弁護士会等で問題のない者ということを前提に弁護士会としては推薦を申し上げている。また、裁判所の方から一定の年限というようなものも、これは法的ではないと思いますけれども、事実上の要望はあると伺っておりますし、また、我々の行っております仲裁センターにおきましても、1年生の弁護士が仲裁人になれるということはありませんで、これは5年、10年と一定の経験を経た者で、しかも弁護士会が妥当と認めたものを担当者にしているという実情がございます。
それから3番目に、更にこれからの制度についてどう考えるかということでございましたか。
日弁連の基本姿勢は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、やはりADRに関しましては、拡充・活性化というものが非常に重要である。また、現状はっきり申し上げてそれほどADRが大きく機能していないという実情がございますので、その点のきちんとした実地検分と言いましょうか、実際をよく見る必要があると思います。
ADRが裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるということが改革審の意見書で言われておりますけれども、そう言われているということは、現在、そういうものに至っていないという前提認識があるのではないかと思います。確かに我々が紛争解決の手段を選ぶ場合も、あまり頭の中に積極的にADRというのは浮かんでこないというのが実情でありまして、では、それはなぜかということを我々のADRセンターなどを中心にこれから検証、検討して、拡充・活性化のためにはどのような方策が妥当であるのか、どのような方針がいいのかということを積極的に検討しながら、先ほど申し上げておきましたように、こちらとして積極的に関与し、参画していくということを前提に発展的な提言をさせていただきたい、これからも続けていきたいと思っております。
以上でございます。
○横尾委員 どうもありがとうございました。1点だけ補足させていただきたいのですが、昨年の弁護士主宰のADRについてのヒアリングの際に「ADR機関と簡易裁判所の機能が重複する、代替性がある」という議論があったものですから、司法書士の簡裁代理権の容認も関連する事項と考え御質問いたしました。どうもありがとうございました。
○原委員 3点ですが、確認的な意味での質問をしたいと思います。
1つは、手続主宰者としての一定の関与という言葉について、もう少し丁寧に、具体的なイメージを持ちたいと思いますので、質問させていただきます。
これは1つは、ADR機関が必ず弁護士と何らかの契約を結んでいて、ADR機関に弁護士がノータッチと言いますか、まるっきり独立した形でのADR機関はあり得ないということになるのかどうか。
2つには、必ず何らかの形でADR機関が弁護士と契約関係を結んで、何かのときには助言をするということになっているとして、それは個別の一つ一つの案件について、必ずしも全部弁護士の目を通すということではなさそうなのですけれども、それはそういう私の理解でいいのかどうか。
そのときに、この案件については弁護士さんに相談をするとか、この案件はそうではないというようなことは、手続主宰者ではなくて、その組織の運営の主宰者が判断するということになると思うのですが、それでいいのかどうか。だからケース・バイ・ケースということでいいのかどうかということで、その判断は組織の主宰者がするということになるのかどうかということが、一定の関与というところでお聞きしたいのです。
2つ目は、横尾委員からも司法書士の方々の簡裁での代理権のお話がありましたけれども、このように、司法書士に限らずほかの職種であっても、本来弁護士がおやりになっていらっしゃる業務に出てきていらっしゃるということを見ますと、ここで言う弁護士手続への一定の関与というものが、弁護士に限らない、あるいは司法書士ということもあり得ると思うのですが、そのことについてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか。横尾委員も多分そこまで御質問の中には含まれていたのではないかと思いますけれども、重ねてお聞きしたいと思います。
それから3つ目は、どういう形になるのかわかりませんが、「手続への一定の関与」とか、「弁護士の助言を受けて」というような言葉が括弧書きで入っておりますけれども、これがADR法になるのかADR基本法になるのかわかりませんけれども、法律という形をとったときに、やはり条文の中に明記すべきだとお考えなのか、そこまではお考えになっていらっしゃらないのか。その3点についてお聞きしたいと思います。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) まず第一に、「弁護士の一定の関与」という言葉ですけれども、これは括弧して「共同または助言」というように書いておきましたけれども、結局その元になっているものが、先ほど申し上げております示談屋や事件屋といった、いわゆる悪いADRか出てきた場合に、どういう形でその利用者に対する被害を起こさせないで、これを守るかということが念頭にあるわけです。
したがって、その被害をなくすために、共同でやればそういう被害はほとんどなくなるであろう。それから、共同でなくても、いろいろな多彩な有能な手続主宰者にやってもらうために助言という方法もあるだろう。その助言という方法でもやはり被害を最小限に留めるという方法が考えられるということです。
私どもが念頭に置きましたのは、例えば、手続主宰者が大変優秀な方で、その優秀な能力によってまとめようとしているときに、もし、たまたまその方が法律専門の方でない場合に、例えば、労働基準法を知らないとか、あるいは消費者に関するいろいろな法規を知らないということで、その方が常識で考えて正しいと思われてADRを成立させようとした場合に、それが強行法規に違反しているような内容になった場合はどうすればいいのだろうかというときに、これで大丈夫だろうかという弁護士の助言を求めることにすればどうか。
そうなれば、これは労働基準法の強行法規に触れるからだめだよとか、あるいはこれは金利取締法規に触れるからだめだよとかというような助言が与えられることによって、そういう違法、不当なと言いましょうか、妥当でないADRを成立させないで済むというような機能があるのではないかと思います。
したがって、そういうことを念頭に置きながら、この助言ということを設けておりますので、どういう場合が助言に当たって、どういう場合が助言に当たらないということよりは、そういうものを防ぐためにどの程度弁護士が関与していけばいいのかということの観点から、先ほども濃淡があるというように申し上げましたけれども、一般的に言われるきちんとしたADRであればそれほどでもないでしょうし、そうでない場合は逆であるというように考えて、弁護士のタッチが絶対に必要かどうかという面は、そういうところからこれから検討していく問題ではないだろうかと考えています。
○原委員 私の質問の仕方が悪かったのかもしれません。ここにあるADR機関があるとすると、このADR機関は必ずどこかの弁護士さんと契約をしていなければいけないのか。何かあったときに助言を受けるとか、そういう契約関係にないといけないのか。弁護士さんとまるで切り離したところにADR機関があるという、こういう存在が考えられないでしょうかということですが、考えられないということなのですね。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) そういうことは想定していないということです。
○原委員 すべてに何らかの形での契約関係があって、ADR機関に関与しておくべきだということですね。それで、中の個別の案件についてはケース・バイ・ケースなのですね。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 手続主宰者に対して助言できるシステムと言いましょうか、助言できる体制、こういうものが整っていることが必要であるということです。
○原委員 そうすると、ここで扱う個別の案件についてもケース・バイ・ケースではなくて、一応すべて目を通すという形になるわけですか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) そうですね。問題がないかどうかということですね。
○原委員 それでケース・バイ・ケースによって助言をするとかしないといった面があるという形なのですね。具体的なイメージをつかみたかったので確認いたしました。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 2番目の質問についてですけれども、これは弁護士の関与というものの中に、司法書士という資格も含まれるのだろうかという御質問でしたか。
○原委員 ですから、この言葉そのままでいくと、弁護士が手続へ一定の関与をするということになるわけですね。この「弁護士」という主語が、「司法書士」に変わるということは想定されるかどうか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) それは、日弁連としては想定しておりません。
○原委員 それはまた別の問題だということですね。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 弁護士というものが関与すべきであると考えております。
○原委員 法律への明記までは、まだ考えていらっしゃらないのですか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) そういう制度を取る以上、法律に明記すべきであると考えます。ここでもし、ADR基本法というものができるのであれば、その中の手続主宰者に関する規定として、弁護士の関与が必要であるという趣旨の条文が設けられるべきであると考えます。
○青山座長 よろしゅうございますか。ほかにいかがでしょうか。
○安藤委員 先ほどの1ページ目に「手続主宰者に要求される資質」ということで、1番を重点に置かれるという形でお話しになりましたが、そうなりますと、2ページの72条の緩和について、そばで助言するということとは、これはどのように考えればよろしいのでしょう。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) これは矛盾はしないと考えております。緩和しても、72条の趣旨というものを没却しない限りにおいては、ADRの拡充・活性化というものに資するであろうと考えますので、72条における制約の問題と、ADRを広めるという問題と、ある面においてバッティングする、衝突する場面が出てくるかもしれませんので、そのときに当然緩和する措置というものが必要ですけれども、それがADRの拡充・活性化のために、どこまでこの72条を緩和するかという問題において、助言という形でもって緩和しても、この72条の立法趣旨というものを大きく損ねることはないだろうと考えられます。
○安藤委員 たしかに1ページの能力という形で言いますと、この1、2、3、私もこれは賛成なのです。ただ、一番大事なのが3かなと思っておりまして、あくまでも1番の専門能力、これは2ページ目で言われる助言、こういった形でいいし、2番の専門能力、これも助言という形でやっていただければいいかなと思っています。ADRに関してはこの3番が一番大事なものではないかと考えておりますときに、どうしても1番が大事ですよと言われてしまいますと、2ページ目の意味とずれるのではないかという気がします。
それから2ページ目の助言や何かと、この場合におきましても、いわゆる主宰者が報酬を目的としない場合にあっても、当然助言は行われるべきだと思いますし、逆に言いますと、弁護士が主宰者になったときに報酬を目的としないという形になれば、これはちょっとおかしくなるのではないかという気がします。
むしろ弁護士というのは、あくまでも右陪席か左陪席か、そういう形で動いていただいた方がベターではないかと考えておりますが、それについてはいかがでしょうか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 私どもの議論の中でも、この3番目のカウンセリング技術やコミュニケーション能力の重要性ということについては、いろいろな例を挙げまして、真剣に検討しております。したがって、これが重要であるということは大変認識しております。先ほどもこれが重要であると申し上げております。
ただ、これだけの能力で、仮に法的な知識能力のない方や薄い方がADRの担当者になられた場合の弊害はないだろうかという点も十分考えております。やはりそういう場合には、兼ね備えていれば問題はありませんが、1の能力、法的な能力が欠ければ、妥当、正当なADRというものが運営できないであろうと考えております。
○安藤委員 もう一ついいですか。
ADRの紛争の中では、法律を飛び越えたといいますか、法律にとらわれない解決を目指さなければいけないと思うのですね。そうなると、何も1番ではなくて、むしろどういう形で解決していけばよいかということが大事になるのではないかと思います。
それともう一つ伺いたいのですが、では、ADR機関に顧問という形で弁護士の先生に入っていただく、それが今度個々の問題解決に関わるといった場合には、報酬制度、まあなくなったわけですけれども、それとの問題はどのようになるのでしょうか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 顧問として入るのが助言になるかどうか、これは具体的にどういう形かということを考えていかないと一概には言えないと思いますが、その顧問という形が現実的に、また実質的に助言ができるということになっていれば、それはそれで問題がないのではないかと思われます。
私どもが一番心配しているのは、カウンセリング能力は大変重要ですけれども、それだけでまとまったものが、先ほども触れましたように、万が一、強行法規に触れていないだろうかとか、あるいは万が一、その方々がそれでいい、それが常識だと思うのが、世間一般から見て公序良俗に反するということがないだろうかということを危惧するわけです。したがって、そのためのチェックのようなものが必要ではないか、それが助言であると申し上げます。
○廣田委員 今のお話を伺っていると、弁護士でない人が手続主宰者になることはあり得るということを前提にしていらっしゃるわけですね。ただ、その場合でも助言が必要だということを言われたと思います。
ここで問題になるのは、個々の事件の場合に、ADRの手続主宰者が何かをやるということに関しては、これは若干裁判官の独立というものに似ていまして、外からの介入、口出しというもの、事件を知らない人が外から口出しするのをあまり好まないという性格を持っていると思うのです。現実的に言えば、例えば、我々が代理人として家裁の調停をやっているときに、調停委員とほとんどうまく話ができているのに、後から事案を知らない裁判官が出てきて、とんでもないことを言うということを経験しています。そういうことは、やはりやり方の問題が1つあると思います。
ですから、そこまで手続主宰者というものを緩和して、ある程度ADRらしくするということであれば、やり方の問題にもよると思いますが、やはり一工夫が必要ではないかと思います。そのように伺っておりますと、ただ、助言があればいいという形式論とはちょっと違うのではないか、むしろ、おっしゃっている趣旨は、実質的な意味で弊害を除こうというところに何か知恵を絞ればいいものが出てくるのではないかという気がするのですが、その辺はいかがですか。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 基本的な考え方は同じだと思いますが、要するに、実質的な弊害をなくするためにどういう手段があるかということで、この弁護士との共同又は助言ということが出てきたわけです。
それ以外に、同じような効果を達成できるような方法、手段があれば、それはそれでいいかと思いますけれども、今おっしゃったような、家裁の調停においてたまたま裁判官がおかしなことを言ったというようなことがあったとしても、だからその制度を廃止すべきだというようなところまでは、先生も考えておられないと思いますが、やはり制度の問題ですから、百に一つ、万に一つぐらい、何かそういう弊害的なものが出てくるとしても、90%あるいはそれ以上のものにおいて、有効な手段であるということであれば、それを採用すべきではないかと私は思っております。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
○龍井委員 先ほどの横尾委員の2番目の質問と重なることになりますが質問いたします。
こういうシステムでまさに活性化していったときに、活性化というのは全体の紛争解決システムが活性化していくものと私はイメージしているものですから、その場合におそらく、裁判官の方もそうかもしれないけれども、弁護士の方も、②、③、特に③の能力について、先ほど重視とおっしゃったことが、システムとして完全分業するのではなくて、まさにそういうところにもあるのではないか。
つまり、白黒決着型のことは完全にプロの話として、実際は案件もそっちへ行くと思うのです。そうではないところが、我々労働が関与しているところでもむしろ多いわけで、それは裁判制度が時間がかかって金もかかるということだけではない、やはり向かないとか、まさに趣旨である自主的に、自主解決として何とかしたいという面もある。
だから、最終審としての決着の問題と、またそこに必ず行くのだけれども、途中で終わるのではなくて、多分、解決の方向は合っているけれども、道が違うのだと思うのですね。誤ったら必ず戻るという場合に、弁護士さんの方々もおそらくさっきおっしゃった③のようなことによって、どのように変わっていかれるのか。横尾委員は研修という言葉を使われたのですが、私もこれを要件としての資格にはしたくないのですけれども、そちらに振り向けていくような、全体がそういう能力を同時に付けていく、そちらの方向ももう一つ見えたら助かると思っています。
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長) 基本的に手続主宰者の資格、要件というものが、私どももただ弁護士であればいいということを考えているわけではなくて、当然、②や③に書かれております別の能力について、特に③の能力については、研修のようなものによって十分身に付けたものが担当すべきであると考えております。
確かに、法律を知っているというだけで、紛争解決をうまくまとめる能力があるということに結び付くわけではありませんので、そのことは十分認識しながら、このカウンセリング能力ということをどのように我々は習得していったらいいかということも同時に現在検討しております。
○青山座長 まだ質問のある方もいらっしゃるかと思いますけれども、予定の時間でございますので、質疑を打ち切らせていただいてよろしゅうございますか。
それでは、鈴木委員長にはお忙しい中を御出席いただきまして、どうもありがとうございました。全員を代表して御礼申し上げます。
今日いただいた御意見あるいは質疑を参考にいたしまして、3巡目の議論で更に詰めたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(鈴木委員長退室)
[ADR等に係る規律③(手続・組織運営等に関する規律)]
○青山座長 それでは、次に、検討事項1-7という資料がお手元に配られていると思いますが、これにつきまして事務局から御説明をお願いいたします。小林参事官お願いいたします。
○小林参事官 それでは、資料14-2に基づきまして御説明していきたいと思います。
テーマは「手続・組織運営等に関する規律」でございますが、中心はADR機関に関する共通ルールでございまして、「等」のところで一部分、前回扱いました主宰者以外ということで、利用者なり一般国民というものが含まれております。非常に多岐の項目にわたっておりますので、説明は若干駆け足になるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。
それから、各論の説明に入る前に、若干、総論的なことを申し上げておきますと、前注の2にございますように、今回の議論は、あくまでも一般のADRを対象としたものでございまして、法的効果等を付与するという、これ以降議論が予定されておりますが、その場合の要件、問題はまた別であると考えております。
それから、冒頭、綿引委員の方から御指摘のあった、ほかの法律との関係についてでございますけれども、確かに、ほかの法律との関係はきちんとしていかなければいけないと考えております。前回の議事録を未定稿でお配りしておりますが、13ページをお開けいただきたいと思いますけれども、共通ルールについての御説明をした際に、冒頭、私の方からもお話しをさせていただいております。
14ページ中ほどでございますが、「正直申しまして、民事調停、行政型あるいはアドホックで行われるようなADRについてまで、これを適用すべきかどうかについては、やや詰めが十分でない形になっております。したがいまして、基本的には民間型のADRを中心として議論しているということを、前提として申し上げておきたいと思います。最終的には、そこも含めて議論すべきだと思いますが、いきなりそこまで行きますと、そもそも規律として置くべきか否かというところでまとまらないおそれがありますので、とりあえずは民間型を中心に議論させていただいております。」ということで、今日の御説明もそういう前提でお聞きいただければと思います。
ただ、先ほど綿引委員からの御指摘もございましたように、いつかのタイミングでそこはきちんと議論しなければならないと考えております。
それでは各論に入ります。
まず1番目は「ADR機関の情報提供義務」でございます。これにつきましては、総論の最初の○にございますように、利用者の選択に資するという観点から、そういった情報が一般に入手可能な方法で提供されることが望ましいという問題意識から、こういったような義務を考えるべきではないかということでございます。
具体的な内容としましては、2ページの上段の方にございますが、「情報の内容・提供方法」ということで、取り扱う紛争分野、利用できるADRの種類・手続、あるいは機関の運営主体、財政基盤等の組織運営情報、あるいは主宰者候補者の専門性などの主宰者情報などが考えられるということでございます。また、提供方法としては、窓口における閲覧のほか、インターネットの利用等も想定されるということでございます。
結論からしますと、努力義務ということで設けてはいかがかということでございます。勿論、努力義務にとどめずに、更に違反などがあった場合には、機関名を公表するというようなことも考えられないわけではございませんし、実は、その参考法令に挙げてございますような家庭用品品質表示法、あるいは3ページにございますが、農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律においては、品質表示ではありますけれども、こういった表示がされてない場合には、指示、機関名の公表、あるいは命令をしても従わなければ罰則というところまで用意されているわけでございますけれども、ADR機関の場合には非常に多様な実態にございますので、提供すべき情報の内容あるいは提供方法等を、それほど具体的に定めるわけにもいかないということがございますので、そういった一律の基準が設けられないということであれば、努力義務に留めるというのも1つの考え方ではないかと考えております。
口コミ型で広がるというものもございますので、そういうことから考えると、あまり一律なサンクションのあるような義務付けというのは難しいのではないかと考えておりますし、また、次に御説明しますように、利用者の便宜ということで考えれば、利用者に対する事前説明というところできちんと押さえればいいのではないかという考え方もございます。
続きまして4ページにまいりますが、「ADR機関の規則等の事前説明義務」ということでございます。この趣旨につきましては、先ほど申し上げたような利用者の二次的被害の発生の防止という観点から、十分にその利用に当たっては内容を理解する機会が与えられるべきだという考え方でございます。
具体的な説明の内容としましては、5ページ上段の括弧の中ですけれども、機関が規則を定めていれば、機関の定める規則、組織運営に関する規則、手続に関する規則、主宰者に関する規則、あるいは規則化されていなくても事実上そういった運用されているような内容、あるいは関係する法令といったものについて説明するということを義務付ければどうかということでございます。
この場合の義務付けの性格でございますが、これにつきましては、単なる努力義務ではなくて、次の「規律の性格」の最初の○にございますように、少なくとも義務違反の場合には、損害賠償責任が発生するものとして位置付けることが適当ではないかということでございます。
類例としましては、参考法令の2つ目の旅行業法がございます。注にあるような細かな内容も含めて旅行者に説明をしなければならないという義務付けがされております。なお、その上の消費者契約法につきましては、これは努力義務ということでございます。
続きまして3番目の項目として6ページの「ADR機関の規則制定義務」ということが考えられるかと思います。
この規則制定義務については、先ほども少し触れましたが、注にございますように、具体的には手続に関する規則でありますとか、あるいは主宰者に関する規則、あるいは組織運営に関する規則というものをADR機関である以上は定めなければならないということを義務付けるということが考えられるわけでございます。
ただ、この規則の義務付けについては、若干考慮しなければならない点があろうかと思います。それが、留意事項の2つ目の○でございますけれども、通常、法律上こういった規則制定を義務付ける場合は、勿論、業務運営の適正化ということが大きな主眼になっておりまして、通例は、許可制なり認可制なりが前提となって、その許可、あるいは認可を与える前提として規則を定めさせ、その規則の内容についてチェックする仕組みになっているわけです。
当然、その規則内容が適正であれば、許可なり認可をするということでございますし、現実の運用が、規則どおりに行われていない場合には、むしろ規則どおりに運用するように業務改善命令などをかけ、それに従わない場合には、許可、認可の取り消し、あるいは場合によっては罰則がかかるというようなスキームになっているわけでございます。
翻って、今回のADRに関する規律ということを考えますと、これはまだ結論が出ているわけではありませんが、これまでの議論の流れから言っても、およそ一般のADRについてそのような厳しい規律をかけるということは想定できないわけでございまして、そういう観点からすると、規則制定義務をかける意味があるのかどうかということを考えていかなければならないのではないかと思います。
他方、今回規則制定を義務付けるとすれば、おそらく、制定された規則について広く明らかにする、あるいは利用者に説明することによって利用者の選択の便宜に資するということが1つの目的になり得るかと思いますが、先ほど申しましたように、もし、そのことが目的であるのであれば、むしろ規則制定義務ということではなくて、先ほど2番目に申し上げました事前の説明義務ということでカバーできるのではないかということでございます。
最後の○にございますように、手続を規則化しないということを一つの売りといいますか、特色として持つようなADR機関というものも想定されることを考えますと、すべての機関に対してこういった規則制定を義務付けるということについては慎重であるべきではないかと考えております。
以上の3つが利用者の選択の便宜に資するような内容の関連のものでございます。
続きまして7ページでございますが、「手続の円滑な進行の確保に関する規律」でございます。
まず最初が、論点3-1の「調整型ADRの過程で得られた情報の利用制限」についてでございます。この情報の利用制限の問題につきましては、1巡目の議論、といってももうかなり前になりますが、昨年7月と10月の2回にわたって、かなり突っ込んだ議論がされております。その際には、これについて制限をするということをかなり積極的に考えられる方と、むしろそれについては裁判官の判断に委ねてもいいのではないかという御意見と、大きく2つの御意見があったかと思います。
そもそも議論の発端としては、9ページの参考法令にございますように、UNCITRALの国際商事調停モデル法では、この情報の利用制限についてかなり精緻な規定が設けられているということがございまして、これが1つのきっかけになっているわけでございます。
この9ページのモデル法を見ていただくとわかりますように、その際にも議論になりました制限される情報の内容でありますとか、あるいはその制限が解除されるケースについては、かなり丁寧に規定が置かれておりますので、そういう意味では、このとおりにしても問題は少ないのではないかと考えられる面もあるわけでございますが、他方、前回の議論でも御指摘があったように、こういうような制度の仕組み方が果たして今の民事訴訟法の体系になじむのかどうかということも御議論があったところでございます。
その際、三木委員の方から、このUNCITRALのモデル法については、証拠制限契約があったものと推定するようなデフォルト・ルールとして考えるような読み方もあるのではないかという御示唆をいただいたわけでございまして、それを踏まえて1つの考え方をこの論点の中で提示をさせていただいております。この中身はやや複雑になっておりますが、背景はそういったことでございます。
ただ、前回も議論になりましたように、この情報の利用制限について、証拠制限契約があるというように推定するという仕組み方につきましては、この留意事項、7ページの最後の○に書いてございますような幾つかの反対意見というのがあり得るわけでございます。
1つは、①にございますように、そもそもデフォルト・ルールとして情報の利用を制限する方を原則として考えていいのかどうかという問題がございます。一般のADRを利用されようとする方が、ADRの主張などについては裁判では利用できないのだということを当然と考えておられるかどうか、この辺りについては議論があるかと思います。
ただ、他方、不制限ということを原則とすることについては、UNCITRALのモデル法との関係で、問題がやはりあるのではないかという感じがいたします。
それから、2番目としまして、これも前回の御議論の中で出たわけでございますが、証拠価値等につきましては、裁判官の判断に委ねるということで、あえてデフォルト・ルールを設ける必要はないのではないかという考え方もあろうかと思います。
また、③にございますように、制限するにしろ制限しないにせよ、これはいわば当事者が決めればいい話であるので、これについてはむしろ当事者間で十分な協議を行うように、ADR機関あるいは主宰者の方から当事者にその旨を詳しく教示すればいいのではないかという考え方もあろうかと思います。
8ページには若干、今申し上げたような推定規定についての御説明がありますが、ちょっと複雑になりますので、ここは省略させていただきたいと思います。
続きまして9ページでございますが、調停型手続と裁断型手続、わかりやすく言えば、調停人とあっせん人を同一の事件について同一の人がなれるかどうかという問題でございます。これについても10ページの参考法令にございますように、UNCITRALの国際商事調停モデル法では同一人はできないということになっております。
また、9ページの留意事項の最初の○にございますように、調停人と仲裁人が同一人ということになりますと、主宰者等に打ち明けた秘密などが、自己に不利に働く可能性を恐れて、調停の段階で積極的な譲歩あるいは和解の提案などを行うことが困難になるという問題も考えられるわけで、この点から峻別すべきだという御意見は学説の中にもかなりあるという状況でございます。
ただ、10ページの上から2つ目の○にございますように、調停から仲裁に移行する際に、もし仮に仲裁人を選任することを望まないというケースにつきましては、仲裁契約を締結しないということで目的を達するということも言えますので、このような規定を設ける実益に乏しいのではないかという意見もあります。
あるいは、我が国の場合には執行力を得るという目的もあると伺っておりますが、調停人を仲裁人として選任して仲裁手続に移行するということがかなり行われているとも伺っておりますので、こういった我が国の実態からすると、必ずしも合わないのではないかという御議論もあると伺っております。
なお、その下に参考として法制審での裁判官の場合の議論が挙げてございますが、結論から申しますと、今回の人事訴訟手続法の見直しに関する法制審の検討におきましては、家事調停に家事審判官として関与した裁判官が人事訴訟に関与するということについて、これは議論がされたわけでございますが、少なくとも制度上一律に排除するということについては、慎重な検討を要するということで関与に関する特則は設けられていないということでございます。
次にまいります。11ページでございます。
今申し上げた調停の段階における情報の利用制限の問題、それから調停人と仲裁人の兼務の問題もその1つではあるわけでございますが、それ以外に、調整型ADRの手続進行の原則を定める規定を設定すべきかどうかという問題がございます。勿論デフォルト・ルールとして設定するわけでありますけれども、この論点3-3の3行目に括弧で書いてありますような体系的な、言わば調停手続一般法というようなものを規定すべき必要があるかどうかという問題でございます。
具体的には、留意事項の最初の○にありますように、主宰者の数・選任方法、あるいは主宰者と当事者との連絡、あるいは手続の公開・非公開などというようなものが考えられるわけでありますが、こういった手続の通則的なルールを定める、デフォルト・ルールにしても定めることの意義としては、留意事項の2つ目の○にありますように、3つほどのことが指摘されております。
1つはデフォルト・ルールとして設けられるわけですから、当事者間で手続について合意ができないことが原因となって、手続がデッド・ロックに乗り上げるということが防止されるというのが第1点でございます。
それから2点目としては、いわば入口から出口まで、1つの手続の形が示されるわけですから、手続についての具体的内容がイメージできるようになりますし、また、ADR機関にとっては自らの規則を定める際の参考になるという面がございます。
また、3点目としては、もう少し積極的に国としてより望ましい手続の方法を、デフォルト・ルールとはいえ示すことによって、その望ましい方向に誘導していくということが考えられるわけでございます。まだほかにもあると思いますけれども、3点がこういったデフォルト・ルールを設ける意義として挙げられているわけですが、それぞれにつきまして、反対論といいますか、留意しなければならない点がございます。
まず1つは、手続がデッド・ロックに乗り上げることを防止するということにつきましては、仲裁の場合については訴権が放棄されていますので、手続上の理由でデッド・ロックに乗り上げるということは避けなければならないわけですけれども、調整型ADRの場合については、ここで手続が進行できなくなっても訴訟を提起すれば足りるということでございますので、その必要性は仲裁などに比べれば低いと考えられるのではないか。
それから、先ほどの2番目と3番目のような、1つのモデルあるいは望ましい姿を示すということについて言うと、それは必ずしもADRの多様性ということを考えると、現実にも難しいし、あるいは望ましいことでもないのではないかという議論があり得るのではないかということでございます。
したがいまして、ここでは当事者の意思に委ねることとしてはどうかというような御提案になっております。
次が「当事者の手続進行への協力義務」でございますが、これは、前々回には国民の責務、あるいは利用者の責務というところで少し関連の議論をしたわけでございますけれども、ADRを利用して紛争の解決を図ることに合意した当事者は、信義に従い誠実にADRの手続を進めなければならないものとする、というような規定を設ける必要があるかどうかということでございます。
前々回の議論のときには、積極的な御意見もあったと記憶してございますが、もともとこの規定につきましては、特段の規定がなくても民法上の信義則は当然妥当するものと考えられるわけでございます。
また、12ページにございますように、仮にこのような規定を置くような場合には、その義務違反がどのような効果を持つのかということについてやはり検討が必要ではないかということでございます。ADRの場合については、やはり私的自治の問題ということを考えますと、この規定についてはやや消極の感を持っております。
次が「ADR機関の人材育成義務」でございます。論点4につきましては、人材の育成が非常に重要だということは先ほど来からも御議論されているところでございますが、13ページにございますように、努力義務として規定することが相当ではないかと考えております。
その次が、13ページの論点5は、「義務履行の確保義務」ということでございます。これは、当事者間に合意が成立した後の問題でございますが、執行力の議論は別の機会といたしまして、この強制力に基づかず、しかし相手方がその義務を履行しなかった場合について、ADR機関の方から義務者に対してその義務を履行するように勧告をする、あるいはその前提として履行の状況を調査するというようなことについて義務を課すということが考えられないかどうかという問題でございます。
参考になる例としては、14ページの参考法令にありますが、公害紛争処理法におきまして、義務の履行に関する勧告を、これは「することができる」という規定でございますが、そういう法律例がございます。ただこれも、勿論そのこと自体きちんとアフターケアもしますということを売りにするADR機関が出てくること、これ自体は別に否定すべきものでもありませんし、そうしたADR機関が出てくるということも当然考えられるわけでありますが、およそADR全般についてこういった義務を課す必要はないのではないか、あるいは、逆に望ましくないのではないかという考え方をここでは取っております。
それから14ページにまいりますが、「その他の規律」ということで、1つは「ADR機関の相互協力義務」でございます。基本理念のところで御議論いただきましたように、1つのキーワード、「ADRの健全な発展は、連携と競争」ということからすると、このADR機関の相互協力義務というものを努力義務として置くということが考えられるのではないかと考えております。
勿論、論点6-1の注にございますように、国としても、こういうADR機関間の連携の強化に必要な施策を講ずるということを規定することも考えられるわけでございますが、それはそれとしてADR機関間相互の協力の努力義務というものも置く意味はあるのではないかということでございます。
参考になる例は15ページの上段にございます。
それからその次の論点6-2でございますが、これは「ADR機関の国の施策への協力義務」ということで、言葉はややおどろおどろしいのですけれども、趣旨としては、国が施策を講じていくとしても、各ADR機関の協力が得られなければ、所期の目的を達し得ないという問題があるのではないかということでございます。
ただ、この問題につきましては、基本的にはADRの拡充・活性化の基本理念のところでうたうような内容であって、努力義務にせよこういった義務をADR機関に課すというのは適当ではないのではないかと考えております。
参考法令として、15ページには環境基本法を挙げてございますが、事柄の性格上、環境問題とは性格が違うのではないかと考えております。
それから、最後の15ページの下でございますが、「国民の義務」あるいは役割ということになるかもしれませんが、国民は民事紛争について当事者間で自主的な解決を図ることの重要性を認識し、その実現に努めなければならない旨の規定ということでございます。
これも前々回、国民の役割というようなところで関連の御議論があった部分でございますが、こういった自主的な解決を図ることの重要性を認識することについて積極的な御意見があったように記憶いたしておりますが、他方、更に進んで自主的解決に努めなければならないというような義務なり責務なりを課すかということにつきましては、これはむしろ消極に考えるべきではないかと考えております。むしろ国の責務として、民事紛争解決の在り方に関する基本的考え方について国民の理解を深めるような施策を講ずべきということであって、国民の方に自主的解決を図れというのはいかがかということでございます。
参考法令としては、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律で、自主的な解決を図るように努めなければならないという規定はございますが、これは労使問題の特殊性というように考えておりまして、これと同一視はできないのではないかと考えております。
その次に「その他」ということで、今、非常に多岐にわたった項目を申し上げましたが、それ以外に考えられるもの、項目として3つ挙げてございます。
1つは、機関の役職員の守秘義務でございますが、これにつきましては、前回御議論いただきました主宰者の守秘義務、これを見ての議論と考えております。主宰者に関する守秘義務を課すということになるのであれば、その延長として機関の役職員の守秘義務も当然考えなければならないということではないかと思います。
それから、その次の当事者の守秘義務でございますが、これにつきましては、先ほど中ほどに出てまいりました証拠制限の議論を見極める必要があるのではないかと考えております。
証拠制限についてもなかなか難しいということになるのであれば、いわんやその当事者が一切しゃべってはいけないというのはより重いわけでございまして、証拠制限の方が消極ということになれば、この当事者の守秘義務も当然難しいだろうということでございます。
それから3番目、ADR機関の適格性、公正・中立性、あるいは機関の役員の欠格事由ということでございますが、これは結論から申し上げて一律な規制というのは難しいだろうと考えておりますし、また、ADRの多様性から考えてそういうことは望ましくもないと思っております。
ただ、説明の冒頭に申し上げましたように、一定の法律効果の付与を議論する際には、当然その対象となる機関の要件については議論をする必要があるだろうと考えております。以上、3点は項目として考えられるのではないかということでございます。
最後に、7の「相談手続への適用」でございますが、これはADR本体についての議論が方向性が見えてまいりました場合には、それを相談にどこまで適用するかということについて次に議論しなければならないということでございます。
非常に駆け足になりましたが、以上でございます。
[論点1(ADR機関の情報提供義務)、論点2-1(ADR機関の規則等の事前説明義務)、論点2-2(ADR機関の規則制定義務)]
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、今日は論点が大変多くございますので、幾つかの論点を大くくりにまとめて議論させていただきたいと思っております。
まず最初の固まりは、論点1と論点2-1、2-2まで、資料でいきますと1ページから6ページまでをまとめて御議論いただきたいと思います。論点1は御説明のありましたように、機関の利用者に対する情報提供義務、論点2-1はその利用に当たっての規則等の事前説明義務、論点2-2はその前提としての規則を各機関として制定しなければならない義務という3つの問題を提起しておりますけれども、これについてどうかということにつきまして御議論いただければと思います。
どなたからでもどうぞお願いいたします。山本委員、どうぞ。
○山本委員 利用者に対する情報の開示の問題は、この検討会で私も何度か意見を申し上げたかと思いますけれども、基本的にはADRに対する規律の在り方、そして私自身は、直接法律で国家が規律するよりも、なるべく市場によって不適格なADR機関が淘汰されるような基盤を整備するという形で規律がなされるような形で規律がされることが望ましいのではないかということを申し上げてきました。そういう意味では、情報を開示して、利用者が適切にADR機関を選択できる機会を保障するというこの規律は非常に重要な意味を持っていると私は思っております。
そういう観点から御提案を見ると、全体的な方向性は私は相当なものではないかと思っております。一般的な情報開示の規定を置いて、それとともに具体的な場面での説明義務と、いわば2段階で構成されていて、一般的な情報提供義務については努力義務という形になるわけで、具体的な説明義務については、もう少し強い法律上の義務、実質的な義務として構成されるということは相当ではないかと思っております。
その規則の制定につきましては、ここに書かれていることはもっともだと思いまして、論点2-1の方の事前説明義務の中に吸収されていくということであってもいいのではないかと思います。
そういう意味で、原案の方向性に基本的に賛成でありますが、1点だけ付加的に更に御検討いただきたいのは、開示されるべき情報の項目の問題であります。論点1は、ADRが紛争解決に適しているかどうかを判断するために必要となる情報ということで書かれておりまして、論点2-1の方は、「機関規則その他の重要な事項」という書きぶりになっているわけですが、ここは最終的にどういう形になるかわかりませんけれども、もう少し具体的な形で書いていただいた方がいいのではないかということであります。
論点1の方は、これは努力義務でありますので、そんなにぎちぎち書いても仕方がないところはあるわけですけれども、一定の例示的な列挙、これこれこういう項目その他の必要な情報というような形で、もう少しその情報の内容を明らかにしていただいてもいいのではないか。具体的には2ページの2つ目の○の情報の内容・提供方法のところに一定の情報が記載されていますが、こういうものを例示として挙げていただいてもいいのではないかという気がします。
論点2-1の方は、これは具体的な私法上の義務を発生させる項目、規律でありますので、重要な事項というのではやや足りないといいますか、これでは何を説明すればいいのかということがややはっきりしないのではないかという感じがいたしまして、これも5ページの一番上の行にある程度書かれておりますが、もう少し具体的なこういう項目について、一番下に挙がっている旅行業法の国土交通省令のような、ここまで詳しいものは要らないのだろうと思いますけれども、もう少しこういう典型的な項目を挙げて、その他重要な事項というような形で規定していただいた方がいいのではないか。この点が、利用者の選択可能性を保障するという意味での利用者の自己責任を問う根拠となるという点からすれば、最低限こういう情報が付与されるべきであるということが明らかになっていた方がいいのではないかと思います。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか、髙木委員。
○髙木委員 そんなに違ってはいないのですが、論点中の情報提供義務を努力義務とすることに賛成です。
それから、情報提供がいかなる情報を提供すべきかということに関しては、やはり当事者選択に資するためには相当に比較対照して選択するということが必要になるわけですから、共通の物差しがないと比較できないので、この提供すべき情報の内容については、例示で結構ですから法律の中に入れてほしいのです。大体こんなものを出すのが普通ですよという程度でいいのだと思いますけれども、やはりADR機関が勝手に出すのではなく同じものが出ていないと比較できないのではないかと思いました。
それから、もう少し積極的に言うと、悪意で虚偽の情報開示をしたときに何かできないかなと考えたのですけれども、努力義務のままではなかなか難しそうだから、そこはもし考えられればと思いました。
それから論点2-1の規則の説明義務ですけれども、これは絶対反対というわけではないのですが、義務として入れますと、どの段階でのものなのかということがわかりにくいわけです。例えば、申立人の候補者に対して行うなら、申立前のことだとすると、これは情報提供義務の中で対処していいと思いますし、申立てをした後に、例えば、第1回で双方当事者がそろったときに規則説明義務を課すというのであると、それは義務にするまでもないかという感じもあって悩んでおります。
実務は、それは説明しないとうまく行かないのですけれども、こうやって義務として書かれてしまうと、すごく手続が固くなってしまうような気がして、外してもらいたいという気持ちが半分ぐらいあります。
そうしますと、論点2-1と2-2をセットで事務局は考えられていて、2-2はなしにして2-1の方で対処しようと思われたようですけれども、2-2も要らないかなと思っています。
以上です。
○原委員 幾つかあります。1つは、重要事項を情報開示させて、それで損害賠償請求できるということを柱にしていきたい。国家の規律ではなくて、そちらを取ろうという方向性はそれでいいかなと思うのですが、それに付け加えて2点あります。
情報開示をさせて、そして損害賠償請求で担保していくというやり方をとったときに、この情報開示は、非常に揺れるというとおかしいですけれども、かっちりした規定にはならずに、どういう情報をどの程度開示して、それは利用者に理解をされているのかということ、それから、損害賠償請求ができるとしても、そのときには利用者が証明責任を負うことになるわけですけれども、一方の利用者、例えば消費者や個人のような場合に、本当に賠償請求をやれるかどうかという証明負担の話もあって、この情報開示は、損害賠償請求を柱にしてもいいと思いますけれども、その辺りをもう少し詰めてみる必要があると思います。
山本先生も重要事項と言われましたが、典型的な項目は例示した方がいいのではないかというお話がありましたけれども、確かに金融商品販売法でも重要事項という言葉が法律の中に入っているのですが、それについてはリスクに関わる重要事項というような、ある程度規定を入れて、何が当たるのかという考え方を示しておりますので、もう少し踏み込んだ形で書かれるべきではないかということが1つです。
それに関連して論点2-2のところで挙げられている部分ですが、髙木委員は、これは不要ではないかというようなお話があったのですが、私も留意事項に書かれている①から③、こういう具体的な項目まで書く必要はないと思いますけれども、一定の事項に関する規則制定を規定すべきであるということが、要るのかもしれない。まだここは少し意見を保留させておいていただけないかと思います。
ただ、その場合でも、この6ページの留意事項の注にある①から③というものが、法律の中に入るということではなく、今、法律の話だけでしておりますけれども、ガイドライン的なもの、それから政省令もありますから、そういったところも含めてもう少しこの辺りは考えさせていただきたいということが1つです。
それから2つ目は、論点1のところに書かれている部分で、2ページから3ページに参考法令として家庭用品品質表示法ですとか、それからJAS法ですね、農林物資の規格化の法律の話がありますが、これは消費者とも非常に関わりのある法律ですけれども、確かに指示や罰則規定まで入っているのですが、なぜこれができているかというと、実際に違反をしていることが行政の側でチェックができるものについてだけなのですね。
ですから、指示や罰則まで強めの規定となると、行政が関与してチェックできるような仕組みまで整えていないととても無理ではあろうということがあって、ここまでは私も求めると非常に重くなるかと思って、求める気はないのですが、ただ、ADRの情報提供義務に関しては、今、内閣府で21世紀の消費者政策の議論をしていますけれども、ここでも大きな柱になっています。今後の消費者政策の中で、この情報提供義務をどう整理していくかということは、大きな論点になっていますので、今挙げられているのは既存の法律から持ってきていらっしゃいますけれども、内閣府の議論との整合性も考慮していただきたいと思います。
消費者契約法も5年後の見直しがかかってきますので、消費者契約法の見直しの中でもこの情報提供義務が入れられないかという議論にもなってくると考えますので、将来的な方向性も入れて、議論をしていただきたいと思います。
髙木委員のおっしゃった悪意や虚偽の話も、消費者取引の部分についてであれば、消費者契約法がかかってきて、あまりにもひどい場合は取消しをすることができるとか、無効ということが言えるかなと考えております。
以上です。
○三木委員 今、原委員が触れられた点ですが、事務局に質問させていただきたいと思います。論点2-1の関係で、5ページですが、一定の法律効果を付与するということの中身として、「少なくとも、私法上の効力として損害賠償責任が発生するものと位置付けることが適当ではないか。」と書かれておりますが、これがどういう意味かという質問です。
これは民法の不法行為なりの規定によって損害賠償責任が発生するという以上の意味があるのかどうか。例えば、証明責任の転換であるとか、立証負担の軽減であるとかというような意味を含んでいるのかいないのか。仮にいないとした場合に、法的効果を付与するということは意味があるのか伺いたいと思います。
○小林参事官 結論から言いますと、もう少し検討させていただかないと、今すぐお答えできる状況にはございません。ほかの例も参考にしていきたいと思います。
○三木委員 この御提案に対してどういう意見を述べるかは、この意味にもよるわけですが、私はこの3つの論点に関する意見としては、先ほど髙木委員がおっしゃった意見にほぼ賛成であります。
まず論点1の情報提供の努力義務に関しては、これはいわば基本法に置かれるような規定だと思いますが、そういった形での努力義務というものはあってもいいのではないかと思います。
論点2-1ですが、これが努力義務ではなくて、法的効果を伴う義務だということになりますと、やはりその法的効果の内容を吟味しないと賛否の意見は言い難いということになろうかと思います。
仮にこれが通常の民法の不法行為や、債務不履行等の規定を超えて、証明責任なり立証負担なりで特則を置くということになりますと、当然にそれに伴う副作用というものを慎重に吟味しないといけないわけですから、その内容いかんではなかろうかと思います。逆に、これが特殊な意味がないということになりますと、あえて規定を置くことの意味というものが、逆に疑問になって来ようかと思います。
それから、論点2-2ですが、これに関しては、6ページの2つ目の○に書かれてありますように、仮にこういう規定を置くとすれば、漠然と規則制定義務を課すのか、それとも一定の内容を示してこういう内容の規則を置くべきという規定にするのかという、一歩先に進んだ問題が生じてきます。
仮に後者の方で、内容を示して規則を置くべきということになりますと、これはADR機関の多様性を奪うことにならないか、あるいは適切な内容が示せるのかという問題があろうかと思います。
したがいまして、先ほど留保した点を別にすれば、論点1には賛成ですが、2-1と2-2には慎重であるべきだと考えております。
○小林参事官 若干今の点で補足させていただきます。髙木委員の御質問にも関連しますが、法的効果の問題についてやや歯切れが悪いのは、そもそもADR機関と当事者との関係をどのように構成すべきかということについては、これは実態もかなり多様なものですから、必ずしもADR機関と当事者間に何らかの契約関係があるとか、そういうような構成ができるのかどうか、それも含めてもう少し内容を見なければいけないということです。
髙木委員の、いつ義務が発生するかという問題も、非常にわかりやすく旅行業法のようにすれば、「契約を締結しようとするときは」ということになるわけですが、現実には明確な契約と構成していいのかどうかという実態もあるので、そこがややあいまいになっているという面がございます。当然、ここで義務付けていくということになれば、そこのところはきちんと整理しなければいけないということになります。
○髙木委員 前提の質問ですが、ADR機関としてこういう機能を考えていくときに、機関でないアドホックは同じように並ぶという前提で考えるのでしょうか。そこが少し気になっております。
○小林参事官 アドホックについては、事柄の性格上、はまらないものもありますし、それから、総論として申し上げれば、先ほど前回の議事録を申し上げたときに、アドホックについてどこまで及ぶのかというのは、必ずしもすべてについて明らかにしているわけではないということです。
○青山座長 それでは、廣田委員。
○廣田委員 先ほどの三木委員の御意見とほぼ同じだと思いますけれども、もう少し具体的なところを言いますと、論点1は私は必要ではないかと思うのです。その場合に例示があった方がいいかということですが、それはあった方がいいと思います。
それから、論点2-1はなくてもいいのではないかと思いますけれども、書くとすればせいぜい努力義務ということではないかと思います。
論点2-2は、私はこれは必要でないと思います。必要でないけれども実際にはやっておりまして、なぜやるかというと、当事者が調停を申し立てるときには、その機関の規則に基づいて調停するという約束を取り付ける機関がほとんどなのです。ですから、現実には、そのとおりにやっております。これはアドホックの場合でもできればそこのルールというものはあった方がいいと思います。ですから、そういう意味も含めて、現実には実施すると思いますから、私はむしろあえて規則として書いておく必要はないし、書くと非常に厳格になる。特にこれは内容にかかってきますから、ここの機関でやりますというときに、多様性というものについて阻害するような形になるので、私はむしろ書かない方がいいという気持ちです。
それから、先ほどのように、立証責任や損害賠償云々という話がありますが、私はADRに関して消費者契約法に言ういわゆる悪徳業者をチェックするような見方はしない方がいいと思っております。そういうことになるとチェックばかり考えて、いかにもADRが悪いという印象を与える法律になってしまいますから、それは私は避けたいと思っております。
ですから、それに関して言えば、そこで損害賠償を請求する場合に、立証責任で過重な負担をかけないように、例えば、弁護士会の仲裁センターでは大抵保険をかけています。そういうような形で解決すればよいので、この辺は、ADR機関に任せていいのではないかと思います。
それからもう一つ、そういう意味も含めて言えば、悪意や虚偽というものについて排除するようなことを書き出すとキリがなくなりますので、これはむしろ書かない方がいい。むしろ積極的な面を見るというように私は考えております。
○安藤委員 この規律に関しては、できるだけなくしてしまった方がいい。通常、これを利用する方は、スタートは相談から入る方だと思うのです。いきなりADRの上の方に来られる方というのは相当な知識を持って来られるわけです。
ですから、逆に言うと、利用者が必要とする情報は出しなさいという程度で十分かと思います。それを開示してくれなければ、ほかのADRへ行けばいいだけのことですから、今、廣田先生のおっしゃったように、政府登録番号何番なんてあるから、みんなだまされてしまうので、なまじそういうものを書きなさいということがかえってレベルの低い人をだますことになると思うのです。
ですから、こういったものはできるだけ努力義務程度にしておいて、書かないことによって用心させるということも必要だと思うのです。
○原委員 情報提供義務は必要だけれども、その後の事前説明義務ですとか規則制定義務には否定的な御意見を各委員が共通的におっしゃったのですが、私からすると、情報提供は当然おやりにならなければいけないのですけれども、事前説明も私は当然必要だと思っていて、ただ、その構成の仕方が、このように義務規定にして損害賠償にするのかどうかということについては、まだいろいろな議論があるかと思いますけれども、やはりこの手続に入るときには説明はあるべきですし、それは情報提供の文言だけで変わるとは到底思えないと考えております。
ただ、内容的なものがこれでいいのかどうかということについては、勿論、議論はいろいろあるかと思っておりますけれども、また追加の意見として申し上げておきたいです。
○安藤委員 その件について一言だけいいですか。
私は16ページの7番、相談手続への適用、ここでしっかり知らない人たちに説明すればいいと思っているのです。ADRにいきなり来る方というのは予備知識は絶対にあるはずです。
○原委員 補足で申し上げたいのですけれども、先ほど髙木委員がどの段階での情報、項目かというお話がありましたけれども、実際に相談などに入ってきて、では、このADRを利用しますかということになったときに、当事者としては、これからの議論になるかと思いますけれども、ADRの場で出した情報といったものが、例えば、訴訟で利用されるのか、利用できないということになるのかといった、いろいろ知りたいものはたくさん出てくるわけですね。
当然、それは説明をしていただきたいと考えておりますので、相談の入口でもそうかもしれませんけれども、相談から紛争処理、ADRに行く場面においても、利用者として得たい情報というのは必ず存在しているので、それは私としては情報提供にとどまるのではなくて事前説明だと感じています。
○廣田委員 事前説明は必ずやっていますよ。それは必ずやらないと申立てしませんから。
ただ、私が言いたいのは、努力義務として書いてもいいと思いますけれども、法的義務として書くと、ADRの動機付けが稀薄になるということです。一生懸命自分はやるつもりでやっているのに、あれやれこれやれと言われたら、動機付けが稀薄になります。心理的には、子どもが何かをするときも同じですよね。それを法律に書いて、義務付けをして、ADRがよくなるかというと決してよくならない。規則制定だって、それがないと利用されませんから、むしろ動機付けをきちんとすれば必ずやるという前提で、法的な義務付けをする必要はないということを私は言っているわけです。
○山本委員 基本的には廣田委員と全く同じ考えで、しかしだからこそ、その基盤として、この情報提供のところは非常に重要であると思っているわけでして、まさに利用者が選択できる基盤を形成するわけですから、ここについては私はある程度ぎりぎりやるということも考えられるのではないかと思っております。
○綿引委員 今の議論で私も皆さんの意見に賛成ですが、この事前説明の部分が、新たな不法行為法上の義務とはまた別の義務をつくるというようなことであれば反対だということだけ1つ申し上げておきます。
○青山座長 少しまとめさせていただきたいと思います。
3つ論点をまとめたいのですが、最初の一般的な意味の情報提供義務については、これは努力義務として規定することについて強い反対はなかったと思います。どの程度これを詳しく書くかということは今後の問題だと思います。
それから、2番目の事前説明義務につきましては、意見が少し割れました。事前説明義務は非常に大事だという人と、書かなくてもこれは当然必ずやっているという認識がまず違いまして、そして、書くとした場合にこれを努力義務として書くのか、何らかの法的なものとして書くのか、ここでは損害賠償義務が発生するとありますが、そういうことにつきましては、意見が少し分かれたように思います。
法的な義務として書く場合に、一体、その法的義務というのはいかなるものであるかということについては、事務局の説明された原案でもまだ詰められていないので、法的義務を書くとすれば、立証責任の軽減その他のところを詰めなければいけない状態かというのが現在の議論状況ではないかと思います。勿論、そうなりますともっと具体的なことを書かなけばいけませんし、いつその義務が発生するかということについても、議論をこれから詰めていかなければならない段階ではないかと思います。
それから3番目の各機関に規則制定を義務付けるかということについては、これはどちらかというと、そこまでやらなくてもいい、機関の多様性というものをむしろ生かすべきだ、それから、これを言わなくてもどこの機関でも必ずつくるであろうという認識はほぼ一致しているのではないかというのが、現在の私の取りまとめでございますが、これでよろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
[論点3-1(調整型ADRの手続課程で得られた情報の利用制限)、論点3-2(調整型手続と裁断型手続における主宰者の兼任禁止)]
○青山座長 それでは、次は論点3-1と3-2をまとめて議論させていただきたいと思います。
3-1は7ページから9ページまでありますけれども、これは得られた情報を訴訟手続等で利用することを制限するのかどうかという論点です。
それから、3-2の方は、調停人又はあっせん人となった者が、後から仲裁人になることができないことにするかどうかという、この2つの論点でございますが、これも前の情報が後でどのように使われるかということに関連しますので、一緒に議論させていただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。
○横尾委員 原案の利用制限を原則とするデフォルト・ルールとすることを支持したいと思います。
例えば事業者対個人、あるいは、消費者と言ってもいいのですが、この両者間の紛争におきましては、裁判になれば当然立証を求めるようなポイントや因果関係というものにつきまして、早期解決が双方にとってメリットとなるということを事業者側が判断した場合に、あえて相手方の言い分を認めるということがままある聞いております。そうした場合に、利用制限を原則としない場合には、こういったメリットが失われるのではないかと考えます。当然、両者の合意があれば利用することも認めていいと思います。
制限の方法、効果につきましては、調整型のADRにより紛争を解決することに合意したという事実をもって、②にありますように証拠制限契約を締結する意思表示をしたものと推定する方がどちらかというとよいように思います。
①とした場合には、証拠制限契約の締結の不成立を主張する側が、証拠の利用を制限しない合意があること、あるいは証拠の利用を制限することにつき異議を述べていたこと、また、証拠の利用制限に関して、何らかの虚偽が生まれなかったことを主張・立証する必要がありますので、これに対応するために、ADRの開始に当たって利用制限について協議することが前提となるのではないかということを恐れます。したがいまして、②を支持したいと思います。
それから、前回も検討されたわけでありますけれども、証言拒絶権というものの関連でその扱いが非常に困難であるということが議論されたと記憶しております。この関連で7ページの上から3つ目の○の②として、「裁判官としては、そのようなものとしての位置付けの下に、証拠価値等を評価することとなるので、あえてデォルト・ルールを設けて利用を制限する必要はないのではないか」とありますけれども、その趣旨をいまひとつ理解できていないのかもしれませんが、デフォルト・ルールとして置いておくことによりまして、趣旨がすっきりすると思います。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。
○髙木委員 論点3-1は、さんざん迷ってどうしていいかわからないのですけれども、結論から言うと、時期尚早かなという感じがしております。確かに調停や和解交渉の間で出たものを裁判に行っては使わないという、要するに裁判に行ったときには一からやり直しますというのは、当事者間において暗黙の了解としてあるのだと思います。ですから、デフォルト・ルールの形のようなものが実態として存在しているかどうかについて、先ほどの反対意見の中にありました、制限、不制限のいずれを原則とするかにつき検討を要するのではないかという部分については、検討を要するというまでもなくプロの間ではそれは了解事項になっていると私は思っています。
ただ、だからと言って、それを認めるとどうなのかというと、現在の実務に合わないような気がしていまして、少なくとも弁護士会の仲裁センターなどでは、そこまでは考えられていないと思います。
もう一つ、デフォルト・ルールだとすると、別に合意すると排除できるということになるわけですけれども、そのことをまた先ほどの事前説明義務と併せて当事者の皆さんに説明することになるのですね。これがまた結構大変なことで、何が制限され、何が制限されないのかなかなか簡単に理解してもらえるような感じがしないわけで、開始前の手続が極めて硬くて困難なものになるのではないかという感じがします。
入れた方がADRの活性化のためになるという考え方も確かにありますから、これを入れようかなということも考えますけれども、裁判実務が一方でどうかなという感じがして、不適法で却下と書いてありますけれども、却下しなかったら裁判に瑕疵があるのかといろいろ考えていくと、入れるのは早過ぎるのかという結論になりました。
論点3-2は、これもなかなか実務には合わない。理想的にはこうかもしれないですけれども、仲裁センターの運営などでは、人がいないということではないとは思いますけれども、そこで執行力を得るために仲裁に切り換えるという場合もあり得ますし、それから、承諾を得ないで和解を進めるということはそもそもないから、大体承諾を得るだろうということです。もう一つは、原則として調停人と仲裁人を分けてしまうと、また仲裁人が変わることの経済合理性といいますか、当事者に一から説明させるなど大きな負担を負うことになって大変になるのかと思いまして、これも反対です。
○青山座長 どうもありがとうございました。
○綿引委員 裁判実務を聞いていただいたので、論点3-1で、このデフォルト・ルールを置くという考え方だと、ADRの過程で出てきた証拠が訴訟の場に出てきたら、それは証拠能力がないものとして却下せよという話につながっていくのだと思いますが、こういう議論が出てきたので、今回に先立ちまして、そういうことをした例というのが裁判実務上あるのかなということを若干調べてみたのですが、どうもいまだ実務上、民事訴訟で証拠能力なしで証拠を却下した例はないように思います。ですから、このADR法というところで、いきなりそこまで進むような形の条文ができるのはいかがかというのが実務家としての率直な意見です。
それから、ADRの過程でのいろいろな交渉の経過が訴訟で主張されたとした場合に、それが攻撃・防御としても却下しなければいけないということになってくると、これは裁判実務としては非常に手を縛られ過ぎてやっていられないというのが率直なところです。 第3点としまして、ADRの過程で専門家の意見がいろいろ開陳されることがあります。現在の民事調停でもそうですが、そこで専門家が開陳した意見というのは、いろいろな形で訴訟の場に登場してきます。勿論それを題材にしながら、双方が攻撃・防御し合うわけですけれども、これは非常に訴訟資料として有効な役割を果たしているというのが訴訟の実情です。
ですから、UNCITRALの規定のように、仲裁人が述べた見解というものも、一切訴訟の場に出していけないということになると、これは訴訟経済上も合理性はあるのだろうかという感じを持っております。
そういう意味で論点3-1については、先ど時期尚早と髙木委員は言われたのですが、そこのところは全く同感であります。
それから、調停人と仲裁人との兼務という論点3-2の部分ですけれども、こちらについては確たる考えを持っておりませんが、私どもも裁判をやっている途中で自庁調停に付して、自らが調停委員となって手続を進める、それがだめだったら裁判手続をもう一回進めるということはやっているで、これは裁判官というプロだからできることなのだと言われてしまえばそうなのかもしれないのですが、前から申し上げているADR法がどこまで規制がかぶるのかということとの関連でもありますが、今、我々がやっているそういうようなやり方もこれによって禁止されることになると困るというところは留意して議論していただきたいと思っております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。原委員どうぞ。
○原委員 私も論点3-1については髙木委員と綿引委員がおっしゃった御意見に近いものがあります。この論点3-1の書きぶりですけれども、こういった調整型ADRにより紛争を解決することに合意したという事実だけをもって①の証拠制限契約を締結したという事実を推定するとか、意思表示をしたと推定するというのは、国民が調整型ADRを利用するときに、やはり一般の利用者は、とてもこういう認識には至っていないです。ですから、普通はいろいろと出したものは、それは訴訟の場に持っていっても利用できると考えるのが今のところの皆さんの常識的なところではないかと思います。
特に9ページにUNCITRALモデル法の第10条で書かれている1から6までというのは、かなりいろいろ具体的に、そこで出されたほとんどになるのではないかと思いますが、精緻に書かれているということで、これがそっくりそのままデフォルト・ルールの中に入ってくるとなると、髙木委員は時期尚早と言われた部分でもありますし、綿引委員の方でも訴訟の実務上も考えにくいとおっしゃられたところではないかと思っておりまして、特に明文的な規定で置く必要はないのではないかと考えております。
論点3-2については、これも実務の段階では確かに調停人、あっせん人がその手続においても仲裁人となるというような、同一の人がやる場合が実際上は多いという形ですが、これも確かに現状を見ておりますと、そのとおりであって、ここについては消費者側としては両論あるかなという感じがしております。
確かにコストパフォーマンス的に見ると、おっしゃるとおりのところもあるのですが、実際には調停やあっせんでうまくいなかったから、少し別な解決の仕方を試みたいというものがあるわけで、また同じ人が出てくることがどうかなというところもあって、利用者側には両論があるかなという感じで、結論的にはまだ意見は申し上げられません。
○三木委員 結論的には先ほど横尾委員がおっしゃったことにほぼ賛成です。まず論点3-1ですが、これはペーパーですとなかなか難しい書きぶりになっていまして、法律を知らない人にはわかりにくい内容ですが、要するに言っていることは、調停、あっせん等で出された発言等は秘密が守られますよということで、そのこと自体は誠に常識的な内容で、その秘密の確保を担保するための規定が論点3-1であり、更には論点3-2であるということです。
したがって、7ページの一番下に①②③と否定的な論拠のようなものが書いてありますが、いずれもやや理解し難いところがございます。
まず①について、いずれがデフォルトになるか、「なお検討を要する」とお書きですが、これについては先ほど髙木委員がプロの間では秘密が保持されるという方が常識だとおっしゃいましたが、おそらくそうだろうと思います。プロの間でなくてもそうだと思いまして、基本的に調停で不利なことを言っても、後でお前はああ言ったじゃないかと揚げ足を取られることはないというのが一般の認識だろうと思います。したがって、細かい内容を別にすれば、制限する方がデフォルトだというのは明らかではないかと思います。
②の点ですが、これは私も横尾委員のおっしゃったように、書いていることの意味がやや理解し難いところがありますので、十分な批判になっているかどうかわかりませんが、現在の民事訴訟法の下でも当事者が証拠制限契約を結ぶことは許されておりまして、何もこれによって新しいルールを付加するものではない。当事者の意思が、どちらが原則かということを推定しただけですので、特異なことではないと思います。
先ほど綿引委員が、我が国の民事訴訟においては証拠能力がないとして証拠を却下した例はないのではないかとおっしゃいましたが、これはごく最近の裁判例でも何件かございます。
それから3番目は、事前教示のようなもので十分ではないかということですが、なかなかこういうことについて当事者が積極的に合意を結ぶということは現実には考えにくいので、むしろデフォルト・ルールがいるのではないかという議論ではないかと思います。
髙木委員が、こういうものを置くと手続の冒頭に調停人等が説明するのがかなり厄介になるのではないかということをおっしゃましたが、ここに書かれているような内容を説明すれば確かに厄介ですけれども、これは普通の人が聞いてもわからない専門家向けの議論でして、要はこの手続ではあなたは自由に発言してもいいですよ、不利なことを言っても、それが後に裁判などで揚げ足を取られることにはなりませんということを言っておけば、意味としては十分だろうと思います。
それから、論点3-2の方ですが、これが現在の弁護士会の仲裁センター等の実務との関係で合わないのではないかという御意見もありましたが、私はむしろ実務に合っているのではないかと思います。確かに現在の我が国の仲裁センター等では、最初に調停をやっていて、その同じ調停人が後に仲裁人になるということがまま行われておりますけれども、そのときに当事者の一方が反対しても、強引に調停人が仲裁人になるということはやっていないはずですし、またやれないはずです。
ここに書いてありますのはデフォルト・ルールで、当事者間に別段の合意があれば調停人が仲裁人になれるという規定ですから、当然我が国の実務においても、調停人が後に役割の違う仲裁人になるときには、当事者に十分説明して、例えば、執行力付与のために仲裁人に役割を変えますがそれでよろしいですかということを十分に言って、当事者の合意を取った上で移る。そういう実務が行われていると思いますし、また、そうあるべきですから、これは別段の合意がされているということだろうと思います。
逆にそういう明示的な合意がなければ、デフォルトとしてはやはり調停人が、つまり調整者が判断者に何の断りもなく代わるということがあってはならないということがこの規定の趣旨だろうと思います。
論点3-1と3-2の両方に共通することですが、こういう規定を置くことの一番の眼目は、調停・あっせんなどの調整型の手続においては、自由に意見を述べていいのですよということを、法律の規定の形で利用者にわかりやすく示すという意味があって、安心してADRを使えるようにするという趣旨でありまして、現実にこれに近い運用が行われているのだと思いますが、そのことを法律化することによって利用を高めるということがこの規定の趣旨ではないかと思います。
UNCITRALにおける議論でも、特に論点3-1は、調停・あっせんに関する法律をつくるとすれば、この規定が一番大事だと。逆に言うと、この規定を置かないくらいだったら、法律をつくる意味はあまりないのではないかという議論がむしろ行われたくらいで、非常に重要な規定だろうと思いますし、日本の法制度との関係でも、この規定については、証拠能力の制限という仕組み方をするのか、あるいは証拠制限契約の推定という仕組み方をするのか、いろいろ理解があり得ますけれども、こういう仕組みそれ自体は大陸法の国も英米法の国も特に反対した国はないというのが実態でございます。
○廣田委員 三木委員と意見が異なるのですけれども、今最後におっしゃったような、私は仮にデフォルト・ルールにしても、こういう手続規定をADR法あるいはADR基本法に置く必要があるのかどうかということが、もともと二つの論点とも大きな問題だと思います。
私はむしろ髙木委員と綿引委員の意見に賛成で、大体おっしゃった理由はそのまま賛成なのですが、別の理由を言いますと、自白をどう見るかということが大きな問題なのです。通常、調停がまとまらないと思うときには、大体自白というのはしないものなのです。調停の席で後で引っくり返って、また裁判になったときにどうかというと、聞く方も撤回の可能性がある自白だというように理解して聞いているわけです。
そうすると、どういう力学が働くかというと、調停で相手がようやく自白したとなると、後から撤回される可能性があるのだったら、今のうちに調停をまとめてしまおうという気持ちが働いて、それで結局その自白を契機にして調停がまとまるということがあります。
ということは、逆に言えばそういうときにしか自白をしないということですから、万一後で撤回ができなければ大変なことになる。その過程で大変な裏切り行為なり、予想外の展開になるわけです。それが訴訟になったときの問題なのであって、それでも自白が訴訟に出されるのならこれはしようがないということにして、あとは裁判官の自由心証に任せるという形にしたい。その方が紛争の実態に合っていると思います。
ちょっと難しい理屈ですが、御理解いただきたいと思います。つまり、自白が調停成立を促すということですから、こういうデフォルト・ルールがなくても、ADRの利用阻害になるということにはならないと思います。それが1点です。
もう一つ、裁判上の和解や人事訴訟の改正の動きとの間の整合性が必要だと思います。裁判上の和解における自白については、やはり自由心証に任せるという形になると思うので、片やそちらの方は自由心証に任せておきながら、ADRの自白は任せないということになると、これはADRの方が厳格なルールを持つということになりますから、それはやはりADRの在り方というのは、髙木委員の言葉を使えば時期尚早であるということになるのではないかと思います。それが私の理由です。
もう一つ、論点3-2ですけれども、これも三木委員が指摘されたように、大抵は別段の合意を取り付けて、調停から仲裁に変わるということですが、私はこれも法律で書くまでもないことであって、こうやらなければいけないというと、また、いろいろな多様な事態が出てくるときに対応ができなくなる。つまり、ADRの多様性を損なうようなことになりますので、私はこれはむしろない方がいい。積極的に言うと、あると大変困ると思うのです。
実務では同意を取り付けながら、しかも、同意があるないというようないろいろな要素を含ませて、柔軟に対応するようになっております。しかし、この規定を置けば、後からあのときに同意があったなかったということが論争の的になって、先ほど綿引委員が言われたように新たな不法行為の原因になりかねない。そういうものは大変よくないことであると思いますので、論点3-2は是非やらないようにということを意見として申し上げたいと思います。
○山本委員 まず論点3-1につきましては、私自身は7ページの下から2行目に書かれている③の解決方法というのは非常に1つの魅力的な解決方法だと思っています。この問題は、先ほど三木委員が言われましたように、そこで情報を出した場合に、それが訴訟で使われるかどうかというところで、先ほど来の議論で依然としてやや認識の相違があるような気がするのですが、おそらくこの規律の発想というのは、自分がADRの過程で出した主張や証拠が訴訟になると出せなくなるということは何ら含意していなくて、基本的には相手方が自分の主張に対して認めたではないかとか、和解案を一旦はのんだではないかということを言うことを禁止する。つまり、相手方の主張なり自白なり、あるいは態度を訴訟手続の中で証拠等として使えなくなるという趣旨に限定された話だと思っております。
そういう意味では結局、ADRの過程でこういう情報を出すと、それが訴訟で相手方に使われてしまうかどうかということをわかってこの情報を出すかどうかを決める機会を与えるということは重要ではないか。言い換えれば、訴訟には出ないと思っていたのに出されてしまうという事態があると、これは非常に問題であるという趣旨の事柄であろうと思っております。
そういう意味では、この③のように事前の開示義務なり説明義務の中で、ADRで出したものが訴訟で将来使われる可能性があるのかどうかということがわかってADRを選べる機会が付与されればいいという考え方は取れるのではないかと思っています。
ただ、先ほど来、開示義務についてはやや否定的な御議論も強くあるわけですし、またその法的効果についてはなお不透明なところもあるというお話ですので、そういう規律が取れないとすれば、やはり私は、どちらかと言えば②のような考え方になるのではないかと思いますけれども、何らかの形でデフォルト・ルールを設けるべきではないかと思っています。
少なくともADRの過程でした対応というものが、その人の意に反して訴訟手続の過程で利用されるということは、利用者の立場から見れば問題ではないか。確かにADR機関の側から見れば、できるだけ手続の柔軟性を確保したいという気持、あるいは裁判所の側から見れば、基本的にはできるだけ自由心証で判断したいという気持は理解できますけれども、利用者の立場からすれば、私自身はそこはルールが必要ではないか。少なくとも利用者が自分でも判断する機会というものが必要ではないかと思っております。
それから、論点3-2につきましては、これは三木委員がおっしゃったことに基本的には賛成でありまして、1点だけ申し上げますと、資料に書かれていることですが、私は仲裁法との関係というものが重要ではないかと思っておりまして、仲裁法は、これはまだ法案ですが、成立いたしますと、仲裁人が自ら和解をするについては、必ず当事者双方の承諾を用意しているわけでありまして、そこに流れている発想というのは、裁定型の判断をする人間が調整型の手続を行う際には、必ず当事者の同意を得なければいけないということだろうと思います。
そうだとすると、調整型の手続を行っていた人間が、今度は裁定型の手続の主宰者に移るということになれば、やはりそれは当事者の同意が必要であるというのが理論的な帰結ではないかと思っているからです。
綿引委員がおっしゃった裁判所は別の問題だろうと思います。論点3-2には仲裁のことしか書かれていないと思いますが、裁判官は基本的にはいつでも和解かできる。その場合には当事者の同意を要しないというのが民事訴訟法の規律でありますから、前提は仲裁の場合とは全然違うわけでありますので、この論点3-2が裁判所にかぶるということはおよそ考えられない。したがって、ここに書かれている人事訴訟手続法の話や除斥事由の話というのは、私はここでの論点とは関係しないと思っておりまして、基本的にはこういう規律を置くことが必要ではないかと思っております。
以上です。
○三木委員 今、山本委員が適切に補足していただいたのですが、論点3-1の中身についてもし誤解があるとすれば、そもそも議論の前提が違ってくるので、9ページのUNCITRALモデル法の10条の1号から6号に即して、ごく簡単にどういうことを言っているかだけ確認をしておきたいと思います。
1号では、相手方が後で裁判になったときに、あなたは調停をやろうと言ったじゃないか。それは裁判になれば負ける可能性があるから調停をやろうと言ったのでしょうというように、調停の申出の事実を使われるのは困るという趣旨です。
2号は、和解案というのは往々にして両方が譲歩し合って出すわけですけれども、あなたは和解案を受け入れると言ったじゃないか。譲歩するというのは弱味があったからでしょうというように使われては困るということです。
3号は、これも同じような意味ですけれども、当事者は裁判だったら徹底的に争うけれども、調停であれば自分が正しくても、円満にまとめたいがために不利な陳述をしたり、自白することもあるわけです。仮に真実と合ってなくてもそういうことをやることがあるわけです。それを後で使われては困るということです。
4号は、調停人が行った提案が、あなたにも弱味があるからこういう提案をしますと言ったときに、それは調停人の意見であって、裁判官から見ると弱味はないかもしれないわけです。それを使われては困るということです。
それから5号も、和解案というのは双方の弱味を勘案して、譲歩し合うような形で和解案が出され、それを受諾するといったときに、実は弱味があったのだと言われては困るということです。
6号は、そういう弱味を示したような書面、調停をやるから譲り合うという前提で出した書面が後で裁判に使われては困るということですので、山本委員から御指摘いただいたように、自分の方に有利な証拠が裁判で出せなくなるという趣旨ではなくて、調停の中で譲った部分を、自己に不利な事実があるから譲ったのだというような利用のされ方をして、それが裁判官の心証に多少なりとも影響を与えるのは困るということです。日本の裁判官は優秀ですから影響を与えないのかもしれませんけれども、しかし、その影響を恐れて一般人が調停を利用しなくなるのは困るという趣旨です。
○廣田委員 今おっしゃったような例で言う場合に、私はいちいち裁判所に反論を出して、弱味があったわけじゃなく、実はこういう事情があって、相手のことを理解したから和解を申し立てたのだと言えばいいのであって、そこから先は裁判官の心証に任せればいいということです。
もう一つ、ADRというものが発展すれば、この程度のことによって利用ができるかできないかという勝負が決まるものではない。もっと大きな問題で利用促進を図ればいいというのが私の意見なのです。こういうことは特に配慮しなくても、促進を図る方法というのはもっといっぱいあるわけです。これを配慮すれば全部促進が図られるかというと、決してそうではないので、もっと大きな観点に立つ方がいいというのが私の意見です。
○青山座長 ここでまとめさせていただきたいと思います。論点3-1につきましては、ADRで得られた情報を訴訟手続等で利用できないということについて規定を置くべきだという積極論が一方にはございました。しかし、それに反対する方もかなりおられました。
これについては、例えば事前の説明義務というところでカバーできるということもあるかもしれないという、そういう意味での両論もあったと思います。
規定を置く必要はないという方は、少し時期尚早ではないだろうかということ。積極論の方は、これが国際的な大勢であるということでしょうか。UNCITRALの国際商事調停モデル法はそういうことになっているということが強い理由ではないかというように受け取りました。
もし、この規定を置くとすれば、その規定の趣旨をどうするかということ、証拠制限契約というような非常に技巧的なもので成り立つかどうかということについては、なお詰めなければいけない問題があると思います。
いずれにしても、論点3-1はまだ方向性が十分見い出されていませんので、更に事務局で次回までにもう少し議論を詰めて、再度議論するということにさせていただくのが一番いいのではないかと思います。
それから、調停人又はあっせん人となった者が後から仲裁人になれないということについてのデフォルト・ルールを置くかどうかということについては、これは置く必要がないという説と、民事調停とか司法型調停には当然かぶらないという前提で、置く必要があるのではないかという意見がちょうど半数に分かれておりまして、ただ、これは原委員のようにまだ態度が決まらない、両論あるという意見もありました。これについても更に事務局で詰める必要があるのではないかと思います。
私の個人的な考えで言いますと、アメリカやヨーロッパのシンポジウムなどで調停の問題を議論すると、一番食い違うのはこの問題なのです。調停と仲裁は全然別だというのが彼らの考え方であって、そういうことに賛成するとすれば、論点3-1や3-2については、何らかの規定を設けるべきだという方向にいきますし、日本のように、調停は彼らよりもずっと伝統が古い、裁判所が昔からやっているというようなことを重視すれば、そこまで一挙に踏み切るのはどうなのかという両方の考え方が、今回も非常に鮮明に意見として出てきたように、対立している状況だと思いますので、少し事務局の方に預からせていただきまして、更に3巡目の議論につなげさせていただくということで、今日はよろしゅうございますでしょうか。
○安藤委員 多数決ではないと思いますが、私は論点3-1も3-2も不要だと思っています。
○青山座長 規定を置く必要はないということですね。
○安藤委員 そうです。
[論点3-3(調整型ADRの手続進行の原則を定める規定の設定)]
○青山座長 次は、資料11ページの論点3-3に進みたいと思います。これは手続の進行についての体系的な手続、モデル規則のようなものをこの中に取り込むかどうかという点でございますが、この資料はそこまで必要ないのではないかということがにじみ出るような書き方になってはおりますけれども、やはりそういう体系的なものをきちんとつくった方がいいという考え方もあると思いますので、御意見を賜りたいと思います。
○三木委員 私は過去に申しましたように、こういったルールが法律で定められていることが望ましいという意見を持っております。2つ目の○に、設けることが望ましい場合の論拠として3つ挙げておられますが、私はこれとどこが重なり、又は重ならないのかわかりませんが、細かく言うと6つくらいあるのではないかと思っております。
第1に、調停の進行、手続の進め方に関して当事者間に常に事前の合意があるとは限りませんから、事前合意がない場合、あるいは事前合意が抜けている部分について、その空白を埋めるという役割が1つあります。
2番目としまして、当事者間で手続運営について意見が対立してデッド・ロックに乗り上げたときに、それを解消するという意味があります。
3つ目としまして、常設の調停機関を利用することが多いと思いますが、常設の機関の規則に空白があることが少なくないわけで、それを補うという意味があります。
4番目としまして、我が国の常設のADR機関では、以前に行った調査にも表れておりますように、そもそも規則を持っていない機関もかなりの程度ございます。そうした機関の中には、これからADRの議論の高まりに応じて規則をつくっていく機関も増えてくると思いますが、そうした機関が規則をつくる際の1つのモデルを提供するという意味があろうかと思います。
5番目としまして、ADR基本法なりADR法に調停、あっせんと書いても、それがどういう手続なのかということが、言葉だけでは一般の利用者にはなかなかわからないだろうと思います。そういうときに、手続の進行に関するデフォルト・ルールをつくっておくことによって、その内容が一般国民にわかるという意味があろうかと思います。
6番目としまして、デフォルト・ルールを国家がつくることによって、それが1つの調停なりあっせんに関する手続振興のスタンダードを示すという意味もあろうかと思います。国家がADR、中でもその中心は調停・あっせんだと思いますが、その振興を図っていくというときに、スタンダードを示さずに振興を図るというのも、やや無責任な感じがしないでもありません。
要するに、調停と名乗れば何でもいいのかと。勿論、ADRは自由ですから、その機関なり当事者が合意すれば公序良俗に反さなければ何でもいいのかもしれませんが、しかし1つのスタンダードのモデルというのはやはりあろうかと思います。
そうした意味でこのペーパーを見てみますと、3つ目の○で、2つ目の○に対する反論のようなものが書かれているのですけれども、いずれも、やや異論を感じるところであります。
まず、①の点ですが、デフォルト・ルールがなくて手続ができなければ、ADRをやめてしまえばいいのではないかというかなり乱暴な議論ですが、当事者にしてみれば、訴訟はしたくなくて、あくまでADRで解決したいという点については認識の一致がある。ただ、手続の進め方については意見が一致しないために、両当事者が望まない訴訟にどうしても行かなければいけないというのはあまり望ましい話ではないのではないかと思います。
それから、「幅広いADRに適用されるものとして規定することは、ADRの多様性を阻害する」という書き方をしておりますけれどけも、これはやや前提が私の認識と違っておりまして、私はADR全般に関するデフオルト・ルールが要るとは思っておりませんで、調停に関する手続法が必要ではないかと思っております。
ADRは確かに多様ですが、そのほとんどは仲裁と調停、ここいう調停にはあっせんも含むかもしれまんが、仲裁と調停であります。なかんずく調停の方が日本ではより利用度が高いという意味では、最も中心にあるADRというのは調停だろうと思います。
その調停に関して一般法がないというのは望ましいことではないのではないかと思います。他方の柱である仲裁に関しては、今国会に提出されておりますように、完結した形で精緻な仲裁法があるわけで、もう一つの柱である調停についても、調停法というものが設けられるべきではないかと考えております。
以上です。
○安藤委員 手続をするときというのは、費用は考えないでいいということですか。当事者の方から、こういう手続でこのぐらいかかりますよということが付いて回らないのですか。
○青山座長 機関を利用する場合には、当然その手続は幾らくらいかかりますという説明が事前説明義務としてあってこそ初めて利用できると思います。
○安藤委員 その説明をするということは、個々のケースでいろいろ出てくるし、当事者の方でこっちを選択しますという場合も出てくるということではないですか。そういうところから言うと、あまりデフォルト・ルールということではなくて、モデルケースのような説明だけで十分かなと思います。
○青山座長 法律に規定は置かなくてもよいという御意見ですね。
○原委員 確認的な質問で恐縮ですが、ADR法になるのかADR基本法になるのかわかりませんけれども、そういう法律ができたときに、私はその法律の中にこういった体系的な手続進行に関するルールというのが入るのかなというような感じがしていたのですけれども、これをよく読むと、括弧書きの中に「体系的な調停手続一般法」ということになっているので、やはり仲裁法と並列する形で三木委員がおっしゃったように、仲裁法、調停法ということで、別建ての法律、そうすると、ADR法とかADR基本法は、もちろん総合的な全体的な法律としてありますけれども、その中として仲裁法と調停法とがあって、それにかからない形でのADRというものがあるという形をここで提案をしていらっしゃるということになるのですね。
そのことを確認して、それだとすると、この論点3-3のような、とても細かな細目で決めることではなくて、全体の体系の話になるのではないかと思うのですが。
○小林参事官 お答えいたします。論点3-3の3行目の括弧書きが「体系的な調停手続一般法」という書き方になっているので、今のような御疑問が出たのだと思いますが、私どもの気持ちとしては、基本的にはADR法なりADR基本法の中にそのような体系的なものをつくるべきかどうかという議論として御提示したわけでございます。
ただ最終的に、もし仮にこれを設けることになったときに、それがADR基本法なりADR法というものの中に収まるものなのか、あるいは形式的に、やはりそういうものはきちんと別にすべきということで別建てになることはあり得るわけですけれども、そういう意味では、法形式について結論を先取りするわけにはいきませんが、気持ちとしては、このADR法ないしはADR基本法を制定するという目的のために、こういう手続一般法のようなものを盛り込む必要があるかどうかという御提案です。
○三木委員 先ほど申し上げた点を少し誤解のないように申し上げておきたいと思いますが、私個人は、ADR基本法が仮に作られるとした場合に、ADR基本法にこういう規定を置けという趣旨ではございません。あるいは、ADR法になった場合に、そのADR法というものがどういう中身になるのかまだ全然決まっておりませんので、その中身いかんですが、ADRの一般的な包括的な法律だということになった場合に、そこにこういう規定を置けという趣旨では必ずしもございません。
私は、先ほど申しましたように、最も中心的なADRである調停について、調停法が存在しないということが大きな問題だと思っておりますので、調停法のようなものがこの際必要ではないかという趣旨で、それがこの検討会の守備範囲ではないと、私はないと思ってはいませんけれども、守備範囲でないということになるのであれば、それを強く主張するつもりはないという趣旨です。
○青山座長 守備範囲に入っているかと思いますけれども、今日の議論の中では、我々の考えている原案はそういうものとしては考えていないということは御理解いただきたいと思います。
○三木委員 いずれにしてもこの議論をするときに、抽象的にデフォルト・ルールを設けるべきかどうかという議論をしても、それは建設的な議論にならなくて、中身としてどういう規定を置くのかという、デフォルト・ルールを一個一個見ていって、この規定は必要だとかこの規定は要らないということになるのではないかと思います。
先ほど議論しました論点3-1にしても3-2にしても、これもデフォルト・ルールを置くかどうかという議論ですから、これを取り出したのと同じように、ほかのデフォルト・ルールも取り出して議論するということでないと、そこで言うデフォルト・ルールというものが何をイメージしているのか人によって違うということでは、やや議論が建設的にならないというように感じます。
○青山座長 ほかの人の発言も伺いたいと思います。
○廣田委員 調停法のことは横に置きまして、ADR基本法にこれを書くかどうかという問題に絞っていきますと、大ざっぱな言い方になるかもわかりませんが、こういう手続を書きますと、仮にデフォルト・ルールだとしても、やはり調停手続というものがマニュアル化するのではないかということを私は恐れます。
座長が言われたように、日本の調停というものは大変進んでおります。これは、座長は先ほど伝統と言われましたけれども、伝統というよりも、私の個人的な感覚では、例えばアメリカと比較しますと、アメリカは多人種、多民族の中でやはり手続に制約がかかってきますので、その手続に制約がかかるということをどうするかという大きなテーマがあると思うのです。
日本はそういうところがありませんので、三木委員が言われるようなこともあるかもしれませんが、実際に調停となったときに大切なことは、おっしゃったこととは違う別のところでもっと先に進めていくことが大事であると思います。つまり、もっとミクロな話の言葉のやり取りをどう捉えるか、調停人がそれをどう聞くのか、そういう事実ないし能力をどうするかという問題が大事で、そこを発達させるということが必要なので、おっしゃったようなところはもう卒業している部分だと思います。ですから、私はむしろそういうところに気を使うよりも、あるいはマニュアル化することよりも、とにかくそういうものは置かないで、もう少し中身に突っ込んでいくということで、デフォルト・ルールにせよ、やはりそういうルールは置かない方がいいと思います。
その方がADRの将来、また調停というものの発展から見れば、やはりここまでの実績、伝統というのかどうかわかりませんが、実績を踏まえて先に進むと、欧米が気にしているようなところは、幸いにして気にしないで済んでいるわけですから、少なくとも国内調停に関する限りは、そこを捨てていく方がいいという考えを持っております。
ですから、結論を言えば、論点3-3は必要ないという結論になります。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
○髙木委員 入れた方が調停のイメージの形成につながるとか、機関におけるモデルになるとか、そういう積極的な効果というのは評価できると思いますけれども、一方で何となく押しつけがましいというか、日本の場合は何かあるとそれ一色になってしまうという傾向が往々にしてありまして、自由で自主的な運営が阻害されるような気がして、なくてもいいのかなと思っています。
○青山座長 原委員の御意見はいかがでしょうか。
○原委員 私も廣田委員と髙木委員がおっしゃったように、法律の中に入れるというイメージが湧かないのですね。それで、三木委員がおっしゃったように、別建てで調停についての手続法は検討の余地はあるのかなと思いますが、全体の法律の体系がまだしっかりしていないところもあるからだと思いますが、イメージ的なものが浮んでこないという感じがして、あえてと考えているわけではないです。
○青山座長 ここでまとめさせていただいて、それで大きく違えばまた御議論いただきたいと思います。
今、御発言いただいた中では、こういう規定をADR法なりADR基本法に入れる必要はないのではないかという方が多数であったと思います。これに対して、こういう規定を入れるべきであると、そしてそれはむしろ調停法という形でこういう規定を入れることがいろいろな点でメリットがあるのだという御主張があったという状況かと思います。それで今の段階では、すぐにこの規定を落としてしまう、こういう規定はもう置かないということではなくて、更に7月のパブリック・コメントまでありますので、もう少し議論させていただくということでよろしゅうございますでしょうか。
(「はい」と声あり)
[論点3-4(当事者の手続進行への協力義務)、論点4(ADR機関の人材育成義務)、論点5(義務履行の確保義務)、論点6-1(ADR機関の相互協力義務)、論点6-2(ADR機関の国の施策への協力義務)、論点6-3(国民の義務)]
○青山座長 次は、少しまとめまして、論点3-4から論点6-3まで、11ページから14まで一緒に議論させていただきたいと思います。
先ほど御説明はありましたけれども、まず論点3-4は、当事者に手続への協力をしていただく、信義誠実義務というものをこの規定の中に入れるかどうかということについては、この資料はやや消極的な書き方をしております。
その次の12ページの論点4は、ADR機関に人材育成義務というものを課すことについては、機関としてはそういうことをした方がよいのではないか、そして、それを努力義務としてであれ、書くことはどうだろうかと、これは資料のつくり方としては積極的になっているかと思います。
その次の論点5は、ADRの結果について履行をしない場合に、ADR機関に対して履行しろという勧告をするようなことを義務として課すかどうか、これは努力義務でしょうか、これについては、ここではそういう必要はないのではないかという書きぶりになっているかと思います。
それから、論点6-1で、機関相互の協力義務については、これはどちらかというとそういうことも機関としては必要ではないだろうかという書きぶりになっているかと思います。
それから、最後の論点6-2と6-3、ADR機関の国の施策への協力義務、先ほどおどろおどろしいというように小林参事官は説明されましたけれども、それと国民の義務として、国民はこういうことをしなければいけないというのは、これはどちらもこういう規定は設けなくてもいいのではないかという書きぶりです。これは積極的なものも消極的なものも今までの議論から出てきたものは全部ここへ拾い上げて皆さんに議論していただこうということですので、書きぶりはそうなっておりますけれども、御自由に議論していただきたいという趣旨でございます。
○髙木委員 すべての論点について事務局の書きぶりで結構だと思います。
2つだけ申し上げたいのですが、論点5の「義務履行の確保義務」、これは私は絶対に反対です。努力義務であっても、多分これを誰がやるのかということになると、ADR機関の担当者レベルで行うようなことになりかねないと思いますが、そうであるとするとそれを受けた当事者が強制力があるかのような印象を抱くのではないかと思うのです。
今、二弁の実務では、仲裁人自らが義務を履行していない場合に電話をかけたり何かしているようですけれども、それは直接パネルにおいて当事者と何回も話をしたりして、信頼関係もあるし、それなりの関係があるので、電話をかけたり何かしてもそんなに危険な運用になるとは思えないのですけれとも、そうでない者が行うとなると運用の危険性があるかなと思いました。
それからもう一つは、あえて言うことはないのですが、論点6-3の関係で、責務の規定を議論したときに私が国民の理解を求めるというものがあるかもしれないと言ったので、こういうことが書かれたと思うのですが、私の趣旨としても、ここまで国民の義務という感じで考えていたのではなくて、国民の役割として自主的な解決を図ることの有用性や重要性の理解を深めてもらうという趣旨だったので、あえて書くこともないと思っています。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかの方いかがでしょうか。
○綿引委員 私も事務局の御提案のとおりで結構だと思います。特に履行確保義務のところは、今、髙木委員が言われたことは全く正鵠を得ていると思います。
○青山座長 ほかにいかがですか。
○三木委員 2、3点だけ取り上げて申し上げたいと思います。
論点4に関してですが、ADR機関の中には、既に他で育成されたADRを担う人材を利用するという形のADR機関もありますので、常に自らが育成すべきだというような書きぶりになるとすれば、ややこの表現を考慮していただきたいという気がいたします。
それから、論点5に関しては、先ほどから出ているように、私もこういう規定を置くことには反対です。
もう一点、論点6-1ですが、これも書きぶりにもよると思いますけれども、ADR機関の中には、秘密の確保を非常に重要視して売り物にするというところもあろうかと思いますので、他機関との相互協力、あるいは情報提供ということの意味が、そうしたものが漏れる恐れがあるようなニュアンスで取られるような場合には、若干気をつける必要があろうかと思います。
○青山座長 わかりました。横尾委員どうぞ。
○横尾委員 論点6-3以外は事務局の意見に賛成でございます。
補足いたしますと、論点6-1のADR機関の相互協力義務ですけれども、これはそのような形で努力義務のようなものがあってもよいと思いますけれども、ただ、ADR機関間の機能というものにかなりの格差があって、最終的に一番充実しているところにすべてを持ってこられるような形だけは避けていただきたいと思います。
それから、論点6-3ですけれども、これは全くの個人的な意見でありまして、特に企業であるとか、事業者がそういった意見に賛成だということではないのですけれども、押しなべて司法制度改革というものについては、国民の司法参加という意識を言っている一方で、具体的なものは何もなく、常に上からの片務的な便宜の供与ということが言われるものが多いと考えております。どこかで国民の責任というものを求めるようなことがあってもよいのではないかと思います。
この規定がいいのかどうかわかりませんが、国民の責任というもの、義務というものを求めるようなことを是非していただきたいと思っております。
○青山座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
○安藤委員 私も全部賛成です。私は逆に、論点6-1が一番大事かなと思っています。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
○原委員 私も事務局のまとめ方でいいかと思いますが、論点6-3の国民の義務について横尾委員の方から御意見が出たので、利用者側、国民もやはり意識を持つべきというところでは反対するものではないのですが、やはり義務や責務という言葉で括られるのではなくて、今、内閣府で21世紀の消費者政策の議論をしているのですが、事業者と行政は「責務」という言葉で括り、消費者は「役割」という言葉で括ろうということになっていて、同じような責務や義務ということではないと考えております。
後は、事務局のまとめ方で結構だと思います。
○青山座長 わかりました。それでは、たくさんの論点をまとめて議論していただきましたけれども、大体先ほど私が御説明したような形でいいのではないかという御意見が多数であったと思います。そのうちで、特に論点5の履行確保についての勧告義務のようなものは、絶対に規定は要らないという意見が強くございました。
また、国民の義務につきましては、こういう形の国民の義務というものは要らないのではないかという考え方と別に、国民としての責務なり役割なりというものについて、別の規定の仕方があるかどうか工夫せよという御意見があったと思います。この中では、積極的に規定すべきものとしては、機関相互の協力義務が一番大事だと言われる意見もございましたし、機関の人材養成義務も必要だけれども、しかし、これについてはこういう書きぶりでいいかどうか注意せよという御意見があったかと思います。
そのようなまとめ方でよろしゅうございますでしょうか。
(「はい」と声あり)
[論点6-4(その他)、論点7(相談手続への適用)]
○青山座長 それでは、最後に、論点6-4と論点7について、まとめて御議論いただきたいと思います。
論点6-4は、今まで議論したほかに何か規律すべきことがあるかどうかということですし、論点7は、今まで議論した論点が相談あるいは苦情処理という手続にどの程度適用があるかどうかという点でございます。特にこの論点7は非常に重要な論点でございますが、問題になるのは、例えば、今まで議論してきたところでは、論点1の情報提供義務というものが相談の場合にも適用になるか、あるいは事前説明義務はどうなのか、あるいは規則制定義務というようなもの、これは先ほどADRそのものでも要らないのではないかという議論だったと思いますが、そういうこと、それから兼任禁止はどうかと、あるいは人材育成義務は相談機関の場合どうなのか、あるいは相互協力義務が相談段階ではどのように働くかというような論点が、論点7に関係してくると思いますが、これについてはいかがでしょうか。
安藤委員、もしお考えがあればまず最初にお聞かせいただきたいと思います。
○安藤委員 私はこの相談、苦情処理手続、これが一番いわゆる消費者といいますか、一般の人が入ってくるところであって、消費者センターですとか、私どもの商工会議所にしても同じだろうと思います。
それからあと、先生方の事務所のところへも相談に来るという形で、先生方の事務所ですと、そういった思いで来られますけれども、東商辺りに来るというのも、相談という形から来ますから、ここで守秘義務ですとか手続の方法ですとか、そういうものをしっかりと教えてあげて、それから始めて、いわゆる情報開示という問題、これはその場所ではできるだけするべきだと考えております。
ですから、ここで言う論点1と論点2、ここまでは少なくとも絶対に必要だと思います。
後ろの方は、そこまでの必要はないかと考えています。といいますのは、ある程度の1つの団体としてきちっとできている場所ですから、論点1、2がしっかりできればそれで十分ではないかと考えています。
○青山座長 相互協力義務はどうでしょうか。
○安藤委員 これは自然発生的に出るもので、規制をしなくとも。
○原委員 消費者相談の現場でも、論点7のところは非常に大事だと思っているのですが、整理した方がいいかなと思いますのは、ADR法やADR基本法で、論点7に関わることをどういう形で、どこまでを盛り込むのかというところが重要だと思っていまして、一方で、ADR法やADR基本法から相談の現場に乗り出してくるものと、それから相談の現場からADRの方向に目指すときもあるわけですから、実際には、この相談の在り方について規定をしている法律なり、法律とは言わず条例でもですけれども、そちらの規定ぶりとの整合性のようなことも必要で、何もかもADR法ではやはり賄えないと思っていて、こちら側の相談の現場を規定をする法律との関連性も整理する必要があるかと思います。
消費者相談については、消費者保護基本法の見直し作業が今年スタートして、来年の年明けには国会に上程の予定ですので、特に消費者保護基本法では、この苦情相談や紛争処理についての規定が今まで弱かったものですから、ここを充実させる方向で検討が進められていますので、そちらとの整合性も見ながら、何らかの形で入れていただきたいと思っています。
○青山座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
これは今、原委員のおっしゃったように、我々の作業は今内容を詰めていく作業をしておりまして、形をまだ十分議論していないのです。
基本法なのかADR法なのかということは議論していないので、とにかく内容を議論しましょうということで来たものですが、今、原委員の御発言に出ておりますように、そろそろ形を決めないと、議論が先に進まない段階まで来たのかなとも思っておりますので、今日は論点7もこれ以上は詰めませんで、前回と今回でかなりいろいろな議論をいただきましたので、次回ぐらいに、だんだんどういうゴールを我々は目指すのかということも含めて、更に議論させていただくということで、今日はよろしゅうございますでしょうか。
では、そういうことにさせていただきまして、それでは、次に次回の日程を確認しておきたいと思います。
次回は、4月28日月曜日の午後1時半から、内容は、裁判手続との制度的連携について議論を行うことを予定しております。4月28日というのは、ゴールデンウィークの谷間ですが、よろしくお願いしたいと思います。
今日は、どうもありがとうございました。