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ADR検討会(第15回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成15年4月28日(月)13:30 ~16:00

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、原早苗、平山善吉
廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)
日本土地家屋調査士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官
山上淳一企画官

4 議題

(1)ADR・訴訟手続(裁判所)間の連携
(2)ADRの拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プラン

5 配布資料

資料15-1検討事項1-8(ADR・訴訟手続(裁判所)間の連携)
資料15-2「ADRの拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プラン」関係資料

6 議事

[開会]

○青山座長 ただいまから第15回「ADR検討会」を開会いたします。
 本日は、龍井委員が所用のため御欠席でございます。
 早速議事に入ります。本日は、お手元の議事次第のとおり、まず、ADRと訴訟手続間の連携について検討を進めていきたいと思います。
 また、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議におきまして、関係機関等の連携強化に関するアクション・プランが取りまとめられたということでございますので、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
 本日は、その2つの議題につきまして、併せて2時間半ぐらいを予定しております。
 それでは、最初の議題であります資料15-1の検討事項1-8について議論していきたいと思います。
 まず、事務局から資料の御説明をお願いします。

[(1)ADR・訴訟手続(裁判所)間の連携]

○小林参事官 それでは、資料15-1に従いまして御説明したいと思います。
 まず、本日各論が5つ程ございますけれども、その前に若干総論的なことについて、資料の前注のところで御説明したいと思います。
 まず、前注の1と2は、適用範囲の問題でございます。
 今回のADRと訴訟手続の間の連携につきましては、前注1にございますように、仲裁と訴訟手続間の連携につきましては個別法令である仲裁法、現在国会提出中ですが、この仲裁法において別段の規定が体系的に設けられる予定でございますので、今回の検討対象からは外れております。
 それから前注2ですが、司法型ADR(民事調停・家事調停)と訴訟手続間の連携につきましては、これから御説明していきますけれども、むしろこれからの検討の1つのモデルになるようなものでございまして、そういったものが別段の規定で体系的に設けられていますので、ここでの検討の対象からは除外されるということでございます。
 それから、前注3ですが、これは第1巡目の議論の際に、総論的なところで議論になったことをまとめてございます。このADRと訴訟手続間の連携の充実を制度化することにつきましては、大きく2つの考え方があったように記憶しております。
 1つは、両手続間の連携を確保することによりまして、ADRの信頼性が向上することになるということがございますし、また、諸外国のADR振興策におきましては、1つはADRの信頼性向上ということもございますし、他方で、特に立ち上がり期にあるADRにつきましては、扱う件数を確保すると言いますか、需要創出の観点もありまして、こういった訴訟手続との連携が振興のテーマになっているということもございますので、中長期的視点から見た場合には、ADR振興策の中核として、こういう連携策を考えるべきではないかという積極的な御意見がありました。
 もう一つの考え方としては、特に連携を制度化することにつきましては、ADRの特徴の1つである柔軟性が損われるおそれがあるということで、むしろ慎重に考えるべきではないかという御意見もあったところでございます。
 これは基本的な考え方についてでございますが、こういった2つの考え方がある中で、本日は個別の論点について議論を進めていただきたいということでございます。
 先ほど申しましたように5つの論点がございますが、その第1が「(1)ADRにおける和解交渉進行中の訴訟手続の中止」という問題でございます。
 1ページの最後にありますが、現行制度におきまして、民事調停・家事調停の申立てがあった場合につきましては、裁判所は決定によって調停手続が終了するまで訴訟手続を中止することができる旨の規定が置かれているわけでございます。
 このような規定が設けられている趣旨につきましては、①として、民事に関する紛争はまず調停によって解決させるようにするのが望ましいこと、②として、当事者に二重の手間をかけさせることは、訴訟手続の進行それ自体がときとして調停の手続の円滑な進行とその成立を妨害することになることなどが挙げられてございます。
 2ページにまいりまして、「ロ 制度整備の必要性」としては、現行制度の下では、裁判所外のADRを利用して和解交渉を行おうとする場合には、2つの選択肢しかないということがございます。
 最初の○ですが、①は二重の手間を覚悟の上で、訴訟手続と和解交渉手続を並行して進める、あるいは、②の時効中断の効力が消滅する、これは代表的な例でございますが、これ以外にそれまで積み重ねてきた訴訟でのやりとり等が、いわば無に帰すことを覚悟の上で、一旦訴えを取り下げると、このいずれかを選択しなければならないということになるわけでございまして、こういった問題を解決しようとすれば、先ほど申しました民事調停と同じような扱いができる制度を設ける必要があるのではないかということでございます。
 1ページの最初の論点1-1の枠囲いにございますように、本件については、そういったことから積極的に検討することとしてはどうかということを御提案いたしております。
 その場合の考えられる制度のイメージですが、2ページの「法的効果の内容」の○にございますように、一定の要件を満たすときには、裁判所はADRの手続が終了するまで訴訟手続を中止することができるものとすることが考えられるわけでございます。
 なお、後ほど御説明しますように、要件の1つとして、この中止につきましては期間を設けるということも考えられるわけでございまして、その場合には括弧内にございますように、一定期間内に終了しないときは、その期間を経過するまでということを盛り込むことも考えられるわけでございます。
 3ページにまいりまして、こういった制度を設けることとした場合の要件ですが、裁判を受ける権利との関係、あるいは適正な審理の実現及び訴訟促進の必要性との関係から、以下のような要件が必要ではないかということでございます。
 ①と②は、いわば当然のことではありますけれども、①は訴訟手続を中止することについての当事者の同意、②はADR機関を利用して和解交渉を進めることについての当事者の合意ということでございます。
 それから③を後回しにいたしまして、④は先ほど少し触れましたように、訴訟手続の中止期間を限定する必要があるのではないかということでございます。
 先ほど御紹介した民事調停におきましては、こういった制度はないわけでございますし、それから⑤にございますように、この訴訟手続の中止及び取消しの決定を裁判所の裁量に委ねれば、あえて期間を限定する必要はないという御議論もあろうかと思いますが、いたずらに中止期間を継続することのないようにということからすると、中止期間の上限を設けることが適当ではないかとも考えられるわけでございます。
 ⑤は、現行制度との整合性の観点から、訴訟手続の中止及びその取消しの決定は専ら裁判所の自由裁量に委ねるべきではないかということでございます。
 それで、先ほど後回しにいたしました③のADR、あるいはADR機関の限定の問題でございますけれども、訴訟を中止して、いわば待つという状態になるわけですので、当然ADRでの和解交渉が実効性のある、また公正かつ迅速な手続の下で進められることが必要ではないかということが考えられるわけでございます。
 今回の制度設計におきましては、少なくとも「ADR」において和解交渉が行われるということが前提になっているわけでありまして、そうだとすれば、単なる当事者間の相対交渉ではない、何らかの付加価値がADRには求められるわけでございまして、その付加価値をどこまで要求するのかということが本件を考えるポイントになるのではないか思われます。
 先ほど私が申し上げたのは、基本的に最小限必要だと考えられる点でございますが、更に注にございますように、現在の民事調停をどう見るかということによりましては、より高いレベルのものを要求すべきではないかという考え方もあり得るのではないかと考えます。
 以上が第1点でございます。
 第2点は、4ページの「(2)ADRの審理のための裁判所による証拠調べ等」でございます。
 本件につきましては、1巡目の議論では比較的消極的な意見が多かったように記憶いたしておりますが、それを踏まえまして、ここでは枠囲いの中にありますように、少なくともADRに共通的な制度として設ける必要はないのではないかと考えております。
 5ページですが、仲裁については、現在、国会に提出されております仲裁法案におきましても、このような制度が設けられているわけでございますけれども、仲裁以外のADRにつきましては、その手続において紛争が解決される保障もありませんし、解決されたとしても、既判力もないわけでございまして、この制度がかなり厳格な制度であることを考えますと、仲裁以外のADRを対象にこの制度を設けるだけの必要性、妥当性はないのではないかと考えております。
 以上が2点目でございます。
 3点目が、6ページの論点2の「訴訟手続におけるADRを利用した和解解決の促進に関する制度整備」ということですが、それは、これまで付調停に対して「付ADR」というような言い方で議論していた論点でございます。
 ただ、1巡目の議論でもございましたように、付調停に対応するような付ADRというのは、なかなか制度としては難しいのではないかということで、ここではADRの利用についての勧告という制度で御提案をいたしております。ただ、この勧告にせよ、こういった制度を設けることにつきましては、おそらく両論があろうかと思います。
 先ほど前注の3のところで触れました総論とも関係するわけですけれども、1つの考え方としては、こういった制度整備をすることによりまして、ADRの信頼性の向上、あるいはADRの需要を確保するという効果が期待されるわけでございますけれども、他方、裁判を受ける権利との関係、あるいはADR機関側からしても、こういった制度が設けられることによって、何か訴訟の下請けになるのではないか、あるいはこれだけ勧告されるということであるからには内容についてもいろいろ注文が付くのではないかということで、ADR機関側にも若干懸念する声があるというように理解いたしております。
 そういう両論があるわけではございますけれども、1つの考え方としては、ADRの専門性を活用していくということで、これを利用していけばどうかという御意見もあろうかと思いますが、これにつきましては、訴訟自身でも専門訴訟への対応の強化が図られているという、7ページの注1のような動きもあることにも留意をする必要があるのではないかと考えております。
 また、先ほど第1のところで議論しました訴訟手続の中止が制度化された場合につきましては、こういった勧告権という形を取らなくても、裁判所が事実上ADRの利用を勧め、それに従って当事者がADRの申立てをした上で訴訟手続の中止をすれば、あえてこれを勧告という形で制度化する必要はないのではないかということも考えられるということで、7ページの中ほどにはそういったことも指摘してございます。
 いずれにしても、この点につきましては、いろいろ御意見があるのではないかと考えております。
 それから4番目が、8ページの論点3-1の「(1)調整型ADRを経た場合の調停前置主義の不適用」ということでございます。これは、調停前置に代替するものとしてADRを認めるということでございます。
 この点につきましては、1巡目の議論では比較的積極的な意見が出されたと記憶いたしておりますが、それを踏まえまして、今回、論点3-1の枠囲いの中では積極的に検討することとしてはどうかという御提案になっております。
 9ページの中ほどに「ロ 制度整備の必要性」ということで、本件につきましては、弁護士会仲裁センターからのプレゼンテーションの際にも御紹介があったかと記憶しておりますが、実務の上におきましては、かなり柔軟な運用がなされているということも伺っております。
 ただ、裁判所が事件ごとに判断することによって対応するということにつきましては、勿論柔軟性を有するというメリットはあるわけでございますが、他方、本件の性格にかんがみますと、当事者の予測可能性という点ではやや問題があるのではないかと考えられるわけでして、可能であるならば制度化を考えるべきではないかということでございます。
 ただ、本件につきましても、やはり現在、調停前置が行われている民事調停・家事調停をどのように考えるのかということによりまして、この対象となるADRについての考え方、あるいは対象となる事件についての考え方が異なってくるわけでございまして、10ページにありますように、ADRの限定ということを考える必要があるのではないかということでございます。
 その場合の要件としましては、やはり最初の論点と同じように、ADRにおいて実効性のある和解交渉が公正かつ迅速な手続の下で進められることは必要であると考えられますし、また、ADRの手続終了時において、和解成立の見込みがないことが主宰者によって見極められるような形でADRの手続が進行していることが必要ではないかということが考えられるわけでございます。
 また、対象となる事件につきましても、10ページの上の注にありますように、家事事件、とりわけ人事に関する訴訟事件につきましては、慎重に考えるべきではないかという御意見もあるところでございまして、やはりADRとしてどういったものを対象とするか、あるいはどういった事件を対象とするかということにつきましては、御議論いただく必要があるのではないかと考えております。
 最後の5番目でございますが、11ページの論点3-2の「(2)ADRによる争点・証拠整理、証拠調べの結果の訴訟手続における活用」ということでございます。
 これにつきましては、1巡目の議論ではかなり消極的な意見が多かったように記憶いたしておりますので、それを踏まえまして、ADRに共通的な制度として設ける必要はないのではないかという提案になっております。
 これにつきましては、やはり裁判を受ける権利との関係、あるいは現在の民事訴訟手続の一般原則との関係におきまして、やはりADRの内容、ここで掲げられているようなものを、いわば自動的に訴訟に引き継いでいくということについては問題が多いのではないかということでございます。
 また、11ページの最後の○にありますように、ADRにおけるこうした成果の活用については、当事者間でここに掲げられているような不起訴の合意、自白契約、仲裁鑑定契約等の契約を結ぶことができれば、現行制度の下でも、訴訟手続上活用することは可能であるわけでございますし、それに留めることになってもやむを得ないのではないかということでございます。
 以上、5点御説明を申し上げました。

○青山座長 どうもありがとうございました。今、御説明いただきましたように、今日はこの5点について御議論いただきたいと思います。
 論点は5つありますけれども、第1は、ADRと訴訟手続が並行して進んでいる場合に、訴訟手続の方を一時中止するというような制度を設けることはどうだろうか。2番目は、ADRの審理のために裁判所で証拠調べをするというような、現在、仲裁でそういう制度がありますが、そういうことはどうだろうか。3番目は、訴訟手続の中で、ADRを利用して和解で解決するということを促進するために、ADRでやってみなさいというような勧告のような制度を設けるかどうか。4番目が、調整型のADRが済んでから訴訟に来たということになると、もはや話合いの道は尽きたというようなことを考えて、調停前置主義を取っている事件でも、調停前置主義を外すことはどうだろうか。最後の論点が、ADRで審査して、争点・証拠整理、証拠調べが終わったというような事件については、その後の訴訟手続で、そういう証拠の整理や証拠調べの結果を、一定の要件の下で利用するということはどうだろうかということで、ADRと訴訟手続との連携ということで、今日この5点を御議論いただきたいと思っているわけでございます。
 前に時効中断というようなことがありましたが、それも訴訟手続とADRとの連携の一種ですけれども、その点は次回に議論していただきますので、今日は手続的な意味での、今、5点述べましたけれども、連携について御議論いただきたいと思っております。
 最初の論点1は、ADRにおける和解交渉進行中の訴訟手続について、訴訟手続の方を中止するという制度はどうかということでございます。先ほどの事務局の案の御説明では、制度の整備に向けて積極的に検討を進めてはどうかというニュアンスで御提示をしたと思いますけれども、これにつきまして御意見を伺いたいと思います。どなたからでもどうぞ。
 どうぞ綿引委員。

[論点1-1(ADRにおける和解交渉進行中の訴訟手続の中止)]

○綿引委員 中止の制度を設ける必要性があるのかどうかというところで、当事者の予測可能性ということを事務局の方でおっしゃったのですけれども、現在実務では、双方が話合いをするからしばらく待っててくれというようなときには、では2か月後ぐらいに次の期日を入れておきましょうか、3か月後ぐらいに入れておきましょうかというような期日の入れ方で柔軟に対応しておりまして、それで概ね賄える事柄なのではないかという感触を持っております。
 この中止の制度を設けることに対する疑問といたしまして、実務的な経験からすると、当事者間で和解が進行中であるということで、こちらが放ったらかしてしまいますと、話合いをしていますと言ってはいるけれど、実は紛争が解決しないで、1年も経ってから事件がぐちゃぐちゃになって戻ってくるというようなケースが少なくございません。
 調停に付した事件でも、実はそういうことが今までなかったわけではなく、そういうことでは困るということで、最近の東京地裁では、調停に付する場合でも、この程度の期間で話し合いをやってみてください、その期間を経過したときにどんな状況かを受訴裁判所にも連絡してくださいと言っております。
 例えば、これは6か月コースでという形でお願いしまして、6か月の時点で調停部の方から御連絡をいただいております。あと1~2か月間いただければ調停ができそうですが、もう少し続けましょうかというような連絡を取りながら、話合いでやたらに時間が伸びないようにということに配慮しながら進行させておりますので、裁判外のADRとの間ではそういう連携が取りにくかろうと思いますので、そういうところで中止をしてしまった場合に、むしろいたずらに紛争解決が長引かないのだろうかという懸念を持っております。
 ただ、この中止の制度を設けるについては、事務局の方でもADRを限定しなければいけないと、要するに相対交渉ではない、きちんとした話合いができるものでなければいけないという限定は付けておられますので、しかも「中止することができる」という任意の形になっておりますので、ADRの限定がきちんとできるのであれば、中止という制度を設けてもよろしいのかなと思いますけれども、そうではなく、ADRで話合いが始まったら普通は中止になるのだというような形で、あまり広く中止の制度が設けられてしまうというのは、裁判所外、裁判所内すべてを含めた紛争の迅速な解決のために本当に資することになるのだろうかという疑問を持っております。
 ですから、この制度を設けるのであれば事務局のおっしゃっておられたADRの限定の問題、それから中止の期間に一定程度の上限を設けた方がいいのではないかというような御提案、この辺についてきちんとしたコンセンサスが得られるのであればというところを申し上げておきたいと思います。
 あともう一点、調停の場合ですと、調停が成立したとき、必ず受訴裁判所の方に調停が成立しましたという連絡が来るものですから、当然これで取下げ擬制ができますけれども、裁判所の外のADRで話合いができました、ところが放ったらかされますとなりますと、裁判所は中止したまま宙ぶらりんの事件を抱くことになってしまいかねないような気もしまして、その辺も大丈夫かなという懸念を持っております。
 幾つかの懸念を申し上げただけで、反対というわけではございません。

○青山座長 どうもありがとうございました。どうぞ、廣田委員。

○廣田委員 実務は今おっしゃったとおりだと思いますけれども、ただ、これを書いておくメリットがあるとすれば、訴訟の迅速な促進ということが言われておりますので、裁判所が一旦中止するということを正当化する根拠は、ある意味ではあった方がいいと思います。
 それで、要件の①~⑤までのところですが、基本はやはり今おっしゃったように、裁判所の自由裁量ということが一番穏当ではないかと思います。自由裁量であれば、むしろ時間制限や機関の限定というものはなくても、どこでどのようなことをやっているのですかと聞いていただいた上で、それでは中止しましょうとか、あるいは何回か聞いてどうもこれはぐちゃぐちゃになりそうだと思えば、すぐそこで続行するというように、裁判所の裁量でやっていただくというのが、私は運営としては一番いいのではないかと思っています。
 そうすると、①~⑤の中で必要なのは②と⑤だと思います。①は②の中に入れることができるのではないかと思います。むしろ当事者双方がADRを利用して和解交渉をしているという形を重視すれば、裁判官が内容を聞いていただいて中止するかどうかということを裁量で決めていただければいいのです。あるいは①の方は、一方当事者の同意がなくても中止をすすめた方がいい場合もあると思います。中止するかしないか、訴訟の進行自体が1つの攻防になっているといった場合もありますから、それも含めて自由裁量という方が私はいいと思うので、むしろ①はない方がいい、②で全部カバーする方がいいと思います。
 ③の機関の限定は、これは誰が機関を限定するかという大変難しい問題がありますので、むしろこれも自由裁量に任せてしまう方がいいと思います。例えば裁判所で行われる民事調停でも、調停委員がよくなくて、ぐちゃぐちゃになりそうなので一方が進行したいという場合も出てくると思うのです。そういうときも自由裁量にしないと、機関がよくても内容が悪ければやはり問題が出てきますので、それも含めて裁判所の自由裁量ということです。
 そうなりますと、④の中止の期間というものも柔軟性があった方がいいので、結局中止するかしないかは裁判官が訴訟の進行を決めるという問題ですから、全部そこも含めて自由裁量ということにしますと、必要なのは②と⑤かと私は考えています。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 三木委員どうぞ。

○三木委員 基本的には、今、廣田委員がおっしゃったことにほぼ賛成です。綿引委員がおっしゃったように、このような実情がある場合には、現在の実務でも適正な対応がされているということは私も理解しておりますが、廣田委員がおっしゃったように、裁判官が手続を一旦止めるというのは、現今の訴訟促進の風潮からいくと若干抵抗のある向きもありますので、根拠規定を置くということも一理あろうと思います。
 要件の点ですが、実質的には①、②あるいは④、⑤のようなものが適当だと思います。ただ、実際に規定を仕組む場合ということを考えますと、廣田委員がおっしゃったように、①は②の中に包含されるものであるかもしれないと思います。あるいはむしろ積極的に①を明示で書かない方が余計な争いを招かないために望ましいということも考えられるかと思います。
 ⑤の裁判所の裁量性は、現在の民事訴訟法の原則である職権進行主義の観点からいっても、これは必要なことだろうと思います。
 ④の中止期間の上限につきましては、実際には上限を設定する運用が望ましいと思いますが、これを法律で書くかどうかということの問題との関係で、廣田委員がおっしゃったように、⑤の裁判所の裁量に委ねて、実務の運用としてはほぼ必ず上限を設定して運用してもらうということでもいいのかなという気がいたします。
 ③のADRを運営する機関の限定の問題ですが、これは機関を限定するのではなくて、むしろ③の文章の中に書かれておりますような、実効性のある和解交渉が公正かつ迅速な手続の下で進められるということを裁判所が審査するということで、実質要件として立てればいいのではないかと思います。
 現実にこういう中止制度というものが仮に導入されますと、立派な運用を行っている実績があるADR機関に事件が係属しているということになりますと、裁判所は実質的にはほぼ審査でこれを認めるでしょうし、聞いたこともないADR機関であれば、むしろどういう機関でどういう手続で運用しているのかという資料を出してもらって、個別具体的に認定するという形になろうかと思いますが、そうした運用でよろしいのではないかと考えております。
 最後ですが、このような裁判所による手続の中止規定というものが置かれるとしますと、それは突然裁判所だけに、こういう中止の権限や、あるいは場合によっては義務というものがかかってくるわけではなくて、その背景には当事者同士において調停合意がなされ、真摯に調停がなされているときには調停の方に専念して紛争を解決するという広い意味での義務が発生するということが背景にあって、それを受けて裁判所が手続を中止して、実質的な紛争解決に委ねるという関連だろうと思います。
 そういうことで言いますと、資料の4ページに掲げられておりますUNCITRALの国際商事調停モデル法の13条の規定のようなものが、論点1-1の制度と密接にリンクしている、あるいはこのような制度の背景にあると考えられますので、論点1-1のような制度が設けられるとすると、併せてモデル法の13条のような規定が必要だろうと考えております。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ山本委員。

○山本委員 私も廣田委員と三木委員の御意見に基本的に賛成です。必要性については付け加えるところもありませんが、やはり現在の民事訴訟法改正の中で計画審理というものが重視され、それから訴訟迅速化法ということもあるわけでありますので、今後の民事訴訟を考えた場合に、裁判所の裁量で訴訟手続を事実上中止するという運用が、今後ともなお維持されるのかどうかは必ずしもはっきりしたところではないような感じがし、またそれが望ましいということも必ずしも言えないようにも思われますので、法律で明文の根拠規定を設けておく方が望ましいのではないかというところです。
 要件については、これもまた三木委員、廣田委員と基本的には同じで、私も①~⑤までの事務局の御提案に係る要件には基本的には賛成であります。
 中止期間の限定については、今、裁判所の裁量に含めてもいいのではないかという御意見もありましたが、私もそういう感じもするわけですが、ただ綿引委員の御懸念もありますし、裁判所が一定の期間を定めておいて、場合によっては延長もできると考えれば、とりあえず一定の期間を定め、そこまでに両当事者とADR機関が合意に向けて努力して、一応そこで合意ができなかった場合でも裁判所が一定のチェックをして、更に話を続ければ合意できる見込みがあると裁判所が判断すればその中止期間を延長すると、そうでなければ中止を打ち切るということでいいのかなと、そういう意味では中止期間を定めるということでもいいのかなと思いました。
 それから③のADR機関の限定という点でありますけれども、勿論一定の限定が必要であるということは間違いないところであろうかと思いますが、この注に書かれてある趣旨、考え方は、民事調停に匹敵するものでなければいけないとも読めるわけでありますけれども、私はそこまでの必要はないのではないかと思います。
 この要件のところに書かれている、①、②、④というような要件を付すことを前提にすれば、言うまでもなく調停については①や②や④という要件はないわけでありまして、当事者の同意がなくても中止の対象になるわけですし、期間制限もないわけです。その意味では、調停の場合には、まさに当事者の裁判を受ける権利と、ある意味正面から衝突し得る制度構成をしているわけでありますが、それを制度化するのは勿論調停手続の厳格な適格性にあるのだろうと思うわけですが、この制度では、当事者の同意や、あるいは期間の限定というものが付くのであれば、そこには既に厳格な要件が別に課されているわけでありますから、必ずしも調停に匹敵するものであるというところまでの必然性はないのではないかということであります。
 勿論、単なる和解交渉と同じではいけないわけでありまして、ここに書かれているような、実効性のある交渉が公正かつ迅速な手続の下で進められるという点は必要だろうと思いますけれども、その限度でよろしいのではないかと思います。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
 どうぞ、原委員。

○原委員 お三方から一応事務局提案でいいのではないかという御意見が出たところですし、私も基本的には、ADR機関の限定ですとか、期間をあらかじめ定めるということは、非常に困難であろうと思いますから、裁判所の自由裁量というところでいいのではないかと思いますが、その際、2点ですが確認させていただきたいと思います。
 1つは裁判所の自由裁量に委ねるということで、不服申立ても許さないものとすべきということで、これは現行の民訴法と同様ということではありますけれども、このADR機関を利用して和解交渉を進めるということが、当事者同士が合意をして、私たちでやりますというように自分たちから申し立てる場合と、それから付ADRについてはまた後段に議論がありますけれども、裁判所の方でどうかと言う場合とでは、ADRの利用の仕方が違うように考えられて、全く不服申立てを許さないということでいいのかどうかというところがわかりにくいというのが1つです。

○青山座長 両当事者が合意した上で、裁判所が中止決定をするわけですね。今の御質問は、それに対する不服申立てについてということですか。

○原委員 そうです、その途中段階で、例えば2か月ぐらい経ったところで、裁判所はそう言ったけれどもというように、不服を申し立てることは全くできないということが、ちょっとわかりにくいということです。
 それから、ここでは裁判所の裁量性が非常に優位にあるのですけれども、4ページのUNCITRALの国際商事調停モデル法を見ると、第13条の3行目に、「仲裁廷又は裁判所は、その合意が遵守されている間はこれに従わなければならない」ということになっていて、こうなるとこちらは調停やADRの方が優位にあるように見えますけれども、それをどのように整理して考えればいいのかということの2点を、質問という形でお聞きしたいと思います。

○小林参事官 まず、前半の方でございますが、細かい制度設計まで御提示していないので、ある意味でミスリーディングだったと思いますが、少なくとも訴訟の中止自体については、両当事者の合意を前提としておりますし、おそらく機関も両当事者が合意された機関を前提とすることになると思いますので、それについてそもそも不服が出るということは想定しておりません。
 もし、問題があるとすれば、中止を取り消したり、あるいは一方当事者が途中でADRに不満があって、訴訟に戻りたいというときのことではないかと思いますが、それについてはその意向が尊重されるような制度設計になっていくのだと思います。そこにあえて何か当事者の意向を無視した制度設計ということは、なかなか考えにくいのではないかと思いますが、そこはどう仕組むかによりますので、まだここでははっきりと出ておりません。
 2番目の問題については、もし誤解があれば三木委員に御指摘いただきたいのですが、13条の方は、既に調停合意をした場合の問題でございますので、本件で議論しているのは、むしろ訴訟が先行したケースということで御理解いただければ、正面から矛盾しているということではないのではないかと思います。

○青山座長 よろしゅうございますか。その上でもし御意見があれば原委員、引き続きお願いします。

○原委員 訴訟が先行している場合ですと、そのように理解できるのですが、実際に当事者になったときに、訴訟とADRを両方同時に利用するということはないのでしょうか。

○青山座長 それはあり得ると思います。

○綿引委員 そのときに、同時並行は大変なのでどうしようかというところが論点ですね。

○原委員 わかりました。

○青山座長 どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 3ページの要件ですけれども、全体としては私はこのとおりでいいかなと思っております。それで5番の裁判所の裁量性というところにあまり持っていきますと、何かADRの信頼というものが欠けてしまうのではないかという気がします。ですから、やはり①、③、④ということが要件の中にしっかりあることによって、ADRの信頼性というものがあるのかなと思います。
 それから、裁判にかかっても、いろいろな事案に関して裁判官以上の専門家は大勢いると思うのです。そうすると、むしろそっちへ委ねた方がいいというような形でADRの方へ振られてくるという窓口がしっかりないと、ADR機関の裁判所と違った特異性というものも認められないのではないかと思いますので、一応要件の①~⑤は、そのままあっていいのではないのかという感じがいたします。

○青山座長 それでは、こういうまとめ方でよろしいでしょうか。ADRが一方で進んでいる場合に訴訟も係属している、その場合にADRで合意ができそうだというときに、訴訟手続を中止する制度を設けるかどうかという問題につきましては、要件をどうするかということについてはいろいろな御意見が対立しましたけれども、制度そのものはつくってもいいのではないだろうかというのが大方の御意見ではなかったかと思いますが、3巡目で更にその具体的な制度設計と言いますか、要件を詰めるということで、今日はよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

[論点1-2(ADRの審理のための裁判所による証拠調べ等)]

○青山座長 ありがとうございました。それでは論点の2番目でございます。ADRの審理のために、裁判所が証拠調べをして、その結果をADRの方で利用するということが仲裁手続ではありますが、そういうものについてどうかということでございます。
 先ほどの事務局の説明では、共通的な制度としてはどちらかと言うと不要ではないだろうかと、そういうニュアンスの御説明であったと思いますが、これについて、むしろ逆に、ADRを強化するためには証拠調べは裁判所でやってもらおうということが必要だという方向での御意見があれば、特に最初に伺って、それから後に一般的な御意見を伺いたいと思いますが、これはいかがでしょうか。
 どうぞ横尾委員。

○横尾委員 意見を申し上げる前に、1つ質問させていただきたいのですが、資料の5ページの中ほどの注書きに、今国会に提出されている民事訴訟法の一部を改正する法律案の中身についての御説明があるわけでございますが、後段のところ、下から3行目ですが、「ADRが不調であった場合の訴訟による解決も真摯に考えている者も少なくないであろうことを踏まえると、そのような当事者がADRを利用することと並行して訴え提起前における証拠収集の処分等の制度を利用することも可能である」となっております。
 これは、ADRを利用することと並行して、提訴前の証拠収集の処分というものを利用して、それで収集した証拠をADRで使うという意味でございましょうか。ここのつながりがよくわからないのです。

○小林参事官 この注はやや微妙なところがございまして、全体が消極なトーンであったものですから、ほかにいわば代替的な手段はないだろうかということで御紹介しているわけではございますけれども、あくまでも訴訟を提起するということを考えている場合の話でありまして、ADRも勿論利用するわけではありますけれども、当然それが不調になった場合には、訴訟でも争うというようなケースを想定しております。ADRでの利用につきましては否定はできないものと考えております。

○青山座長 横尾委員からの御質問の件は、法制審議会の民事訴訟・人事訴訟部会で案をつくりまして今国会に提出したのですが、それは提訴予告通知というものを当事者間に通知して、そして事前の訴え提起前に証拠調べをするという制度を設けたのです。そこでは、後から訴訟が追随してくるということを前提として、勿論事前に証拠調べの申立てをしてみたら、これならば訴えを提起するまでもないとか、そこで和解が整うというようなことはありますけれども、提訴予告をした上で利用するわけですから、後から訴訟が出てくるというのが本筋の解決です。
 それがしかし、場合によって、当事者が証拠収集をした結果、ADRを使って解決するということを全く否定するということではない。ADRを視野に入れて議論をしたという、そういう記録もありませんけれども、使われ方としては、提訴予告通知をして、証拠収集したと、その結果、裁判所に行かないでADRによって解決されるということが結果としてあり得るということは否定できないところだというのが、今の事務局の御説明だと思います。
 どうぞ。

○横尾委員 了解いたしました。実は、仮にこのようなことがあったとしても、なかなか否定はしづらいと思ったのですが、これがこのような書面になってしまったことによりまして、濫用も気になるところでもございまして、なかなかどのように理解していくのかというところがポイントでございました。
 そこで、論点1についての考え方を申し上げたいと思いますが、確かに1巡目におきましては、消極的な意見が強かったということだと思いますが、なお、現在におきましても賛否をはっきりとはできないのですが、非常に困っているケースがあってニーズがあるということは申し上げたいと思います。
 例えば、事業者が主宰するようなADR機関というものが、例えば消防署に消防調書の開示を求めたり、あるいは自分たちが持っているノウハウというものがなかなか十分ではないために第三者にお願いする場合に、これが事業者対消費者という場合におきまして、消費者側からむしろ公的な第三者機関を使ってくれという要望があった場合においても、事業者の主宰する民間ADRからの要請についてはなかなか協力をしてもらえないということがあるようでございます。
 したがいまして、こういったものの対応を考えるという意味において、こういった制度も必要ではないかと思うのですが、一方で解決に既判力のないADRの紛争解決というものまで、こういった共通の制度として裁判所の証拠調べを認めるということは、これはこれでまた疑問もございますので、今日のところは意見を留保させていただきたいのですが、全く今日の段階で落としてしまうということではなく、まだなお検討していただきたい思いますので、よろしくお願いいたします。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○原委員 消費者側からすると、横尾委員と逆の立場にいながら、でも同様な見解も持っております。
 今おっしゃられたような、家電製品の発火による火災事故などがあった場合の消防署のデータですとか、自動車でもアクセルを踏み間違えたのか、それとも製品の欠陥だったのかということで、第三者的に分析してほしいというようなことや、現場検証をした警察のデータなど、いろいろ欲しいと思っても、やはり消費者側から見ても出にくいと思うような場面があります。それをこの法律の中に入れるのかどうかというところまでは、私としても横尾委員同様、すぐにこうという意見は言いにくいのですけれども、金融トラブル連絡調整協議会のモデルの中では、調査協力義務といったデータについては出していくというような、尊重義務のようなものを設けておりますので、それが個別の立法の方に行くのか、こちらの本体の法律の中に若干でもそういった協力義務的なものを入れるのかというところは全く議論にもならなかったということではなくて、考慮していただきたいとは思っております。

○青山座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 今のお二方の御意見は、裁判所に証拠調べをしてもらうというよりも、ほかの機関で、その証拠を持っている、あるいは判定ができる機関にその資料を出してほしい、ADRにも協力してほしいということですか。

○原委員 それで済むかもしれないですし、やはりもう少し強権的となって裁判所に証拠調べというところもどうかということにもなります。
 私もちょっと即断はできないですけれども、やはり出にくいデータというのは確かにあります。

○青山座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ安藤委員。

○安藤委員 私は、証拠調べ等に関しては考え方が固まっていないのですが、ADR自体というのは、双方が解決を望んでいて初めてADRだと思うのです。ですから、解決したくないというのだったらそのまま裁判に行くしかないという考えから言いますと、証拠に関して困難だからできないと、だったら裁判という形で考えてしまうと、こういうものが制度化される必要は毛頭ない。あくまでも両当事者が解決を望んでADRに持ち込まれるのだという前提しかないのかなと思っていますので、この証拠調べは共通的な制度としては一切要らないと考えます。

○青山座長 では、山本委員どうぞ。

○山本委員 私も安藤委員がおっしゃったことは、まさにそうだと思いまして、やはり当事者間では、この制度はあまり必要がなくて、おそらく先ほど横尾委員から言われたように、第三者に対して資料の提出を求めるということなのかなと、それを元に話合いをするということなのかなと思うわけです。
 一番必要なところは、結局第三者が提出しないで、強制的に提出させるというところで、それを裁判所を使ってという話になるのかと思うのですが、その点については、この資料に書かれておりますように、ADRにおいては必ずしも話合いがつくということが制度上保障されているわけではないし、解決されたとしても、執行力については議論があるのかもしれませんが、既判力は少なくともなくて、もう一度裁判で争えるかもしれないということに対して、第三者を強制的に、場合によっては科料や刑罰を科してまで強制するということは制度上なかなか難しいのではなかろうかという感じがします。
 今の話は、まさにPLセンターや金融関係のADRというものではわかるわけですが、この法律ができて、ADRに対する社会的な認知や、あるいは信頼性が高まっていけば、そういう問題はある程度公的機関が事実上協力していただけるということが、だんだん期待できるのではないかという気がいたしまして、そういう方向で解決を図っていくべき問題かと思います。

○原委員 補足ですが、私も共通的制度として設ける必要はないと思っております。それから裁判所が強権的に既判力を持って出てくるというところも否定的です。そういう考えを取るものではありません。
 ただ、どういう形であれば第三者的な証拠が出やすいかという工夫が何らかの形で盛り込めないかと思っているということです。

○青山座長 廣田委員どうぞ。

○廣田委員 今の山本委員の御意見と同じですが、ここで問題になるのは、この人の証言さえ得られれば事実が解明されるのに、それが得られないために何らかの強制力をもって、その証言を取るかどうかという問題が一番のポイントだと思います。問題は、そういうことができないならば、そういうことが起こったときに、それをあきらめるかどうかの問題です。
 では、あきらめてはいけないのかというと、必ずしもそうではなくて、ものは調停ですから、当事者は主張として、非常に真剣に言うことになるわけです。証言は出てこないけれども、非常に真剣に言っているとか、あるいは間接的な証拠というものは出てくるでしょうから、そういうものを調査委員が総合的に見極めながら調停を進めるということでいいのではないかと思います。
 あきらめると言うと何かよくない感じがするのですが、現段階のところはそういう程度でいいのではないかということで、それほど無理をして規定を置かなくてもいいと考えております。

○青山座長 ほかに、どうぞ横尾委員。

○横尾委員 現在ここで検討しているのは、ADR法若しくはADR基本法というものの論点ということでありますけれども、ただいまの点は非常に重要な点でもございますので、制度の設計とは別に、こういった点について留意したということを記録にとどめていただきたいと思います。
 もし、廣田委員のような対応をしていただけるのであれば、それはそれで結構でございますけれども、そのことが話し合われたということを将来において記録にとどめていただきたいと思います。

○青山座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。

○綿引委員 今、山本委員、廣田委員が言われたことで何も付け加えることがないと言ってもいいと思いますが、裁判所の立場ということで申し上げておきます。 裁判所での証拠調べというのは、やはり既判力を持って事実を確定するという目的のために行われるものなので、そのようなことまでADRでの話合いでどうしても必要になってくるのであれば、そのときは裁判所においでくださいということでよろしいのではないかと思っております。

○青山座長 大体御意見を伺いました。こういうことではなかったかと思います。
 この論点につきましては、原案がそのように出していると思いますが、共通的な制度として裁判所への証拠調べの協力を求めるということを一般的につくることについては、慎重な意見が多かったと思います。
 ただ、ADRの中で必要な証拠調べについて第三者に協力を求めるというような制度が、将来的にそういうことも必要になるかもしれないという御発言があったということも事実でございますが、とりまとめとしては、今申しましたように、共通的な制度として設けることについては、消極的な意見が大勢であったということでとりまとめさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

[論点2(訴訟手続におけるADRを利用した和解解決の促進に関する制度整備)]

○青山座長 それでは、次に論点2でございますが、これは裁判所の方から、これについてはADRを利用して解決してみてはどうかという勧告制度について御議論いただきたいと思います。
 これについての事務局案では、訴訟手続の過程でADRの利用が考慮されることについては問題がないとしても、それを制度として仕組むことが必要かどうかという点では、これは両論があるという、非常に微妙な、積極的に勧めるということでもなく、これは無理だということでもなく、両論を書いてございますので、少し時間をかけてこの論点について御議論いただきたいと思っております。
 「勧告」という言葉は少し強過ぎるかもしれませんので、その点はそういう言葉を使わなくても結構ですが、訴訟手続の中で付ADRに行くというようなことが考えられるか、そういう制度をつくるかどうかということでございます。

○綿引委員 強制的に付ADRができないというのは、裁判を受ける権利の関係で当然だというところは、1巡目で完全に了解ができているところだと思います。
 今度は、裁判所がこのADRに行きなさいと勧告するという制度をつくるかどうかということだろうと思いますが、ADRでの話合いというのは、当事者が選択して、ここで話し合いましょうと言って話し合うのが本来の姿ではないかと考えております。
 先ほども、専門家の意見が必要な紛争等で裁判所以外での紛争解決の方がふさわしい紛争類型もあるのではないかというお話がありましたが、そういうものがあることは私も全く否定しないのですけれども、今の現状のADRを前提としますと、私があそこのADRに行って話し合って来なさいなどと言うのは、とても恐ろしくてできないというのが正直なところです。
 もし、こういう制度ができるとするならば、どういうADRがあり、そこではどういうことがされているという情報の開示と、それからその情報に対する裏付け、ここではこういう解決がきちんと図られますという担保がなければ、勧告の制度というものが紙の上に書かれても、とても裁判所はそれを使うことにはならないだろうということだけは申し上げられるような気がします。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 どうぞ原委員。

○原委員 私も綿引委員がおっしゃられたことと同じような感想を持ちまして、具体的にこのような勧告の仕組みが入ったとしても、裁判所は一体どのADRに行けと言うのかなと考えました。そうすると、ある程度ADR機関の限定というような話が出てくると、やはりそれも大変難しいと思っておりまして、将来的にはそういった方向性とか、やり方というものも出てくるかもしれませんけれども、今、来年の国会にかけるような法律の中に入れ込むことは、まだ時期尚早ではないかという感じがいたしております。
 アメリカなどでは、実際に上がってきた案件によっては、かなり専門的なADRもあって、そちらの方が妥当ではないかというような裁判所からの方向性の出し方もあるようですけれども、やはり日本の現状は、まだようやくポータル・サイトをつくってというようなところですので、実際に書かれたとしても難しい、そうすると、今の段階で条文として書き込む必要は特にはないのではないかという感じを持っております。
 ただ、先ほど「勧告」という言葉がいいのかどうかというお話がありましたけれども、では裁判所に行ったものをADRでやってはどうかとまったく言えないかというと、そういうことではなくて、勧告ではなくてアドバイス的な助言のようなことで、よほど裁判官の方でここがいいとか、こういうやり方があると思われるのであれば、それは特に止める必要はないとは思っていますけれども、条文の中に入れるということでは時期尚早という感想を持っております。

○青山座長 どうぞ髙木委員。

○髙木委員 消極意見が続きましたが、私は反対に積極的な方向でお話をしたいと思います。
 裁判所に解決を求めてきた人に対してまでADRに行けというようなことは、当事者の合意があっても多分言いにくいだろうし、綿引委員がお勧めするようなADR機関がないとおっしゃるのも、多分今の現状から考えるとそのとおりだろうと思います。
 ただ、全く必要がないとも必ずしも思っていなくて、利用者というのは、裁判所を選択して裁判所に行っているわけですけれども、必ずしもその選択が適切ではないこともあることで、どうしても裁判を行いたいと言っている人たちの中にも、そうではない、問題の性格から言うと話合いの方がいいと、第三者から見て思う事案もありますし、ここに書いているような専門的な分野で、専門家のADRのようなものが立ち上げられるとすれば、行った方がいいというケースも多分あるのだと思います。
 ですから、1巡目の議論で、確か山本先生から、ADRの拡充・活性化を考えるときに、中長期的な視点を考えればこの問題が非常に重要だとおっしゃったのではないかと思いますが、来年法律化する法律には不要だという意見もわからないではないのですけれども、実を言うと見直しを超える話なのではないかと思うのです。
 一旦できてしまった後に、例えば3年、5年で見直しましょうといったところで、これは裁判所と民間や行政のADR機関との関係ですから、枠組みを超える話が見直しで入るとはちょっと私は考えられないので、やはりそれは今のうちに入れておくべきだと、道筋は付けておいた方が将来の活性化のためには役に立つ、そういう意味で積極的に入れてほしいと思います。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 どうぞ廣田委員。

○廣田委員 お勧めするは恐ろしいというお話だったのですが。

○綿引委員 現段階ではですが。

○廣田委員 実は、お勧めいただいたADRもあるのです。それを御紹介しておきますと、裁判所で行われている破産手続の中で、債権の有無や債権額を確定する必要が生ずるときがありますが、そういうときに、仲裁を勧めていただくということで、裁判所から勧めていただいて、東京の弁護士会の仲裁センターで仲裁判断を出したケースがあります。
 これは新聞報道がありましたので申し上げてよいと思いますが、なぜ勧めていただいたかと言うと、そのケースでは、実際の中身はあまりないけれども何百億という債権額になりますので、印紙代がむしろ裁判所の方が高いのです。それともう一つは、弁護士会に来てくださると、ほかの仲裁機関でもそうですけれども、仲裁人を指定できますから、そういうことを御存知の裁判官であれば、弁護士会の仲裁センターを勧めていただけるわけです。
 ですから、ニーズがないことはないので、今、髙木委員がおっしゃったように、何か将来的な課題として書くかどうかという問題がここにあり得る話だと思います。それともう一つ、裁判外のADRをやっております我々としてみれば、気持ちとしては入れてほしいというものは実はあります。
 しかし、綿引委員がおっしゃったように、前もってやらなければならないことは、裁判所が安心できるような制度整備の方が本当は先ではないかと思います。今、私が先ほど言ったような印紙代等の費用の事例は例外的なことでして、通常はADR機関の費用の方が高いですね。行政機関では無料でやっているところがありますけれども、通常は高いので、制度化して現実にやろうとすれば、いろいろなところを調整していかないといけないので、そういうところが熟すまでは、やはり綿引委員のおっしゃることはもっともだろうと、残念ながらそのように聞かざるを得ないということです。
 ですから、ここでは、今、髙木委員がおっしゃったような頭出しをするという意味で、将来の構想的なものを書くかどうかという辺りがポイントになるのかなと私は考えております。

○青山座長 どうぞ山本委員。

○山本委員 現状認識は各委員がおっしゃられたことと全く私も同じ意見を持っておりまして、仮にこのような制度をつくったからといって、次の日から裁判所が多数の事件を次から次へとADRに回すというようなことは到底考えられないと思っております。
 フランスなどでは、1995年の法律でこのような制度を入れたわけですけれども、2001年の10月にフランスでは実態調査をやっておりますけれども、やはりそれほど多くの件数が回されているわけではありません。ただ、全くないわけではなくて、それなりの件数は回されているわけであります。
 前にも申し上げたとおり、私自身は、特に日本においては、いわゆるお上意識、裁判所や国に対する信頼性が非常に強い国で、民間型のADRを拡充・活性化していくためには、こういう形での裁判所との連携というものが極めて重要であると認識しております。髙木委員がおっしゃったように、中長期的に極めて重要だと思っているわけであります。
 今ここで、ADR法の中に入れるかどうかというのは、皆さん御指摘のとおり政策判断の問題ではありますけれども、私自身はこの段階で国のADRに対する一定の姿勢というものを示して、ADRに対する信頼性を高めるという観点から是非積極的な方向で御検討いただきたいと思います。
 具体的な制度のイメージとしては、おそらくこのような制度をつくった場合に、裁判官が個々の具体的な事件で思いつきで当事者に勧告するというようなことはあまり考えにくくて、裁判所とADR機関の間で一定の情報交換なり、協定と言うと言い過ぎかもしれませんが、一定の話合いが事前にあって、それである程度システマティックな形で勧告が行われるということが想定されるかと思います。
 そうだとすれば、事実上の措置に委ねるということでは、やはりなかなか難しいのではないか、根拠規定がないと裁判所の側も躊躇されるのではないかとも思います。
 勿論、ADR機関の側も、先ほど事務局の御指摘にありましたように、勝手に送られてきては困る、裁判所の下請けになるのはたまらないと考えられるADR機関も当然あるのだろうと思いますが、そういうことを考えると、勧告という制度を入れる場合には、ADR機関の同意のようなものを要件にしてもよいのではないか、フランス法ではADR機関の受託というものを要件にしているわけですが、それでもいいのではないかと思われます。
 制度の具体的な組み方はいろいろあり得るのだろうと思いますけれども、先ほど申し上げたような理由で、中長期的な視点で国の一定の姿勢を示すという観点から、この点は是非積極的な方向で御検討いただきたいというのが私の意見です。

○青山座長 どうぞ三木委員。

○三木委員 各委員がおっしゃられたように、現状でこのような制度を法制化することの困難な問題というものが多々あるということは確かだろうと思います。
 他方で、廣田委員や山本委員、あるいは髙木委員がおっしゃったように、将来に対する一定の芽を植えておく、残しておくことがどのぐらい必要かという観点から考えるべき問題かと思います。
 その関係で申しますと、諸外国では、確かに一種の付ADRや、あるいは「勧告」という言葉に近いような制度ないし運用があると聞いていますが、我が国の現状を考えますと、私のイメージでは、勧告というよりも紹介というイメージに近いのかなと思っております。
 当事者が裁判所に訴えを起こしたときに、それが適切な選択であったならば、裁判所がわざわざADRを勧告するということは余計なお世話に近い部分もあると思いますが、問題になるケースというのは、裁判よりも適切なADRというものが存在し、それを利用すればどうなるかということを当事者が知らない場合に、それを教えてあげるルートというものがあってもいいのではないかと思います。そうすると、一種の紹介、あるいは情報提供といったイメージで捉えることも考えていいのではないかという気がします。
 現実のニーズが、現状ではそんなに高くないのは確かですが、1つ考えられるのは、先ほど廣田委員が、ごくまれな例ではありますが、仲裁の利用を裁判所が勧めた例を挙げられました。
 私はこの論点2のような検討課題を3巡目まで維持するとすれば、現在の論点2では、ADRを利用した和解解決を促進するためという表現で、和解型のADRに絞ったような表現になっておりますけれども、紹介や情報提供という観点で捉え直すとすると、仲裁型のものも視野に入れた制度も検討対象になるかと思います。
 特に利用の可能性が考えられるのは、提起された訴えが訴訟要件を満たした適正な訴えである場合には、裁判所はおそらく自らその事件を最後まで処理すると思いますが、例えば訴えの利益がないとなると、適切な例かどうかわかりませんが、例えばスポーツ仲裁というものが最近新聞等で報道されていますが、そのスポーツ仲裁に関わる事件の中には、法律上の争訟とは言いがたいものもあろうと思います。そうしたものは裁判所としては訴えを却下することになりますが、現状のままでは黙って却下するということになろうかと思います。
 そのときに、裁判は無理ですけれどもこういうADR機関がありますよ。そちらを利用すればどうですかというような形での紹介ということがあるかもしれません。あるいは、仲裁が利用される一番大きな領域として、国際商事の分野がありますが、国際商事紛争に関しては、非常に定評のある、歴史もある仲裁機関というものが諸外国を含めてありまして、裁判も結構ですが、こういう仲裁機関を利用する方がいいというような紹介の仕方もあるかもしれません。
 いずれにしましても、3巡目まで論点2のような制度の可能性を残しておいて、引き続き検討した方がいいのではないかというのが第1点。第2点としては、これを勧告というイメージで捉えるのか、より広く紹介や情報提供というイメージで捉えるのかというのが第2点。第3点としましては、仮に紹介のようなイメージで捉える場合には、広く仲裁型のものも視野に入れてはどうかということでございます。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 どうぞ原委員。

○原委員 私の意見ですけれども、私自身は裁判所からこちらのADRを利用すればどうかといった、付ADRについて否定をしているわけではなくて、やはり将来的にはADRの活性化を考えると、是非その方向に向かうべきだと思っておりまして、考え方として、髙木委員がおっしゃったように、政策的に来年の国会での法案に入れておくのか、法律の枠組みの根幹的なものなので、見直しというところで入るものではないから最初から入れておいた方がいいのか、それとも将来にするのかというところの判断だろうと思っております。
 それで確認ですけれども、「勧告」という言葉が使われていますけれども、私は先ほど「助言」と言いましたが、三木委員の方からは「情報提供」とか「紹介」という言葉が出ましたけれども、「勧告」は強制力がない言葉なのですね。何か「勧告」という言葉を聞くと強く感じてしまうのですけれども、強制力はないということでよいのか確認したいと思います。

○青山座長 法律用語としては、いろいろの意味がありうると思いますが、ここでは勧告を受けたからといって、それに従うかどうかは受けた方の自由という意味です。

○原委員 それが多分、一般的に普通の人々が考える「勧告」というのは、かなり強いイメージを持っていますので、そこの誤解がないようにという感じがしております。
 もう一つは、コスト負担の話がまだ出ていないのですけれども、事務局がレジュメで用意なさったところでは、7ページの真ん中の段の注書きに、「当事者に新たな費用負担がほぼ必然的に生じうる」と紹介されているわけですけれども、例えばフランスなどでは、こういった問題はどのように諸外国では整備されているのかを教えていただきたいと思います。

○青山座長 山本委員、もしお答えいただけるのであればお願いします。

○山本委員 私の知っている限りですが、フランスでは、1995年の法整備をする際に最大の問題となったのがこの費用負担の点でありまして、それまでの実務の運用では、必ずしも当事者の同意を得ないで、裁判官が調停を付するという運用がかなりパリの裁判所では一般的に行われたようでありますけれども、ただ調停については一般に新たな費用負担が当事者に生じるので問題ではないかという指摘が国会で非常に強くなされて、したがって最終的には当事者の同意を必ず必要とするという形で法律が規定されました。
 それは、フランスでは裁判は無償の原則ということになっていまして、裁判所は一切お金を取らない制度になっているのですが、そこに来たのに、当事者の同意もなしに費用がいるところに送るというのはやはり問題だろうということで、必ず同意を得なければならないという制度にしたという経緯があります。

○青山座長 よろしゅうございますか。
 それでは、訴訟手続中の付ADRと言いますか、それを勧告、助言、あるいは紹介と言いますか、言葉はともかくとして、こういう制度を設けるかどうかについては、一方では裁判を受ける権利という観点から消極的な意見があり、他方ではかなり積極的な意見がありました。しかし、その基礎にある現状認識については非常に一致するところがある。ですから、こういう制度を設けるとしても、設ければすぐ使われるということではなくて、中長期的に設けておく方がいいのではないかと、積極論もそういうことであったのではないかと思います。
 両論ありますので、これをすぐここでやめるということではなくて、さらに議論すべきという御意見もありましたので、パブリックコメントをいずれ実施することになりますので、パブリックコメントで御意見を聞いてみて、更にもう少し具体的なイメージの下で議論させていただくということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

[論点3-1(調整型ADRを経た場合の調停前置主義の不適用)]

○青山座長 それではそのようにさせていただきます。
 次の論点は、調停前置主義の不適用についてでございます。事務局の案では、制度整備に向けて積極的に検討を進めてみてはどうかというような説明であったかと思いますが、これについて皆様の御意見を伺いたいと思います。
 どうぞ山本委員。

○山本委員 質問ですが、10ページの法的効果の内容の注に書かれている、離婚・離縁というものを含めるかどうかということですが、調停前置の現実の大半は離婚関係の事件ではなかろうかと思いまして、これを外すとなると、借地借家の地代、家賃の請求等も若干ありますけれども、かなり現実の意味は違ってくるのではなかろうかと思うわけです。 23条審判の話はわかるところもありますが、注には、「離婚・離縁については、裁判所外のADRによっては、直ちに離婚・離縁の効果が生ずることはあり得ず、家事調停に比して実効性のある解決が図られないものである」と書かれておりまして、ここの趣旨がもう一つよくわからないところがあります。事務局の方から敷衍して御説明いただきたいと思います。

○小林参事官 家事事件につきましては、注の冒頭にありますように、身分関係の形成という問題でありますので、1つの考え方としては、合意とはいえ、裁判所が形成された合意の適正さをチェックする必要があるのではないかということが基本的な考え方としてあり得るということです。
 そういうことから考えると、審判のみならず離婚・離縁につきましても、裁判所外のADRによっては家事調停と同じように考えるわけにはいかないのではないかという考え方があり得るということで御紹介しているわけでございまして、そのように考えて調停前置の対象から外すなり、調停前置の制度として他のものと同じように扱うのは避けるべきではないかという考え方があり得るということを御紹介しているということです。

○綿引委員 今のところで若干補足させていただいてよろしいでしょうか。

○青山座長 どうぞ。

○綿引委員 ここの文章の趣旨について私が理解しているところを申し述べさせていただきますと、この文章は、おそらく家事調停というのは、家裁調査官や調停委員を入れまして、子どもの福祉や養育環境ですとか、かなり深いところまで突っ込んで環境調整を図った上で円満な解決を図ろうという、普通の調停では置き換えられない要素が多いということを、指摘しているのだろうと思います。
 そのような子どもの環境調整などのためには、やはり家裁調査官のような専門的な知識を持った人が面接調査などをして初めていい解決ができる場合が多いということです。そういう真剣な話合いや調停、環境調整等を含まない、少なくとも現状ではそのようなところまでやっているADRはなかなか考えにくいということで、状況の下で簡単に家事調停についても調停前置を外せるという考えに走るのには若干慎重になるべきではないかということだろうと理解しております。その辺の家事調停の実情というものをもう少し皆さんにも理解していただきたいということだと思います。
 実際、人事訴訟の審理を担当していますと、調停を早く打ち切れと言って、十分に話合いをしないで訴訟手続に進んでしまっているケースも少なくないのです。家裁の裁判官の意見などを聞きますと、調停はいいから早く人訴をやってくれと言われるのだけれども、やはり子どもの福祉などを考えた場合、もう少しじっくりとやりたい。それが調停前置が外されてしまうということになると、ADRで1回相手方が不出頭しただけで不調というようなことで、それだけでもう調停前置がクリアしましたという形で人訴に進むというような、調停前置の空洞化が進む危険があるのではないかということを、私の友人の家裁の裁判官は心配しておりました。
 その辺のところを考えますと、私は1巡目の議論で、調停前置については、ADRで十分な話合いがされているのであれば、調停前置をクリアしたといえるという制度をつくることはいいのではないかと、むしろ民事調停の方を念頭に置いて発言したのですが、家事調停について言いますと、現在、家事調停が果たしている本当の役割ということをもう一度十分に考えた上で、調停前置を外していいかどうかという議論をすべきなのかなという感じを持っております。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 どうぞ廣田委員。

○廣田委員 これは、運用の仕方によってはかなりいい制度になるかもしれません。しかしこの問題こそ、機関の限定という発想につながるのではないかと思いまして、これをやろうと思えば、当然機関を限定しようという意見が強く出てくると思うのです。
 そうしますと、ADRらしさがなくなるということと、誰が機関を限定するのかという難問題にまたぶつかりますので、そういうことを対比して秤にかけると、今の段階ではそれほど無理して調停前置にする必要はないのではないかというのが私の意見です。
 それが結論ですが、実情は、調停前置でなされていることを現在のADR機関でどこがやっているかと言いますと、弁護士会の仲裁センターぐらいのものです。ほかには、私の知っている限り、賃料の増減額にしても、離婚調停にしても、事実上やっているところは知りませんので、大変大雑把な言い方をしますと、本当にとことん調停をやって、仮に家裁の調停に行っても結局形だけで内容的には先にいかないだろうと、訴訟の方がいいだろうというときには、弁護士会の仲裁センターでは、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めてもらう趣旨で、当事者に訴えを出せということを勧めてもいいのではないかと思います。
 あとは、多分、裁判所の方はそのように認めてくださると思いますので、その運用で当面の間は事が運ばれるのではないかと思います。ですから、機関の限定にまでいくようなことであるのなら、無理をしない方がいいだろうと考えております。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 髙木委員どうぞ。

○髙木委員 私は、積極的に検討することとしてはどうかという事務局案の方に賛成です。多分、綿引委員がおっしゃったような、当事者が早く調停を打ち切って訴訟に持っていってくださいという例が非常に多いというのは、やはり調停の方に問題があるのではないかと思っています。調停が適切に機能していない、ときどきありますけれども漂流型調停のようになっていて、調停委員もどうしていいかわからないけれども期日を重ねているということがありますので、代理人として付いていた場合には、こんなのさっさと止めて訴訟に行ってほしいと言いたくなるのが当たり前ではないかという調停にもお目にかかりますから、それがいいというわけではないのですが、それと比較をするというところがどうしても頭に入ってきて、弁護士会の仲裁センターのようなところでやる合意でも、それと同じ程度以上には話合いはなされているので、そういう意味では入れてほしいと思っています。
 10ページの要件に「和解成立の見込みがないことが主宰者によって見極められるような形」とあって、これがどういう意味が含まれているのかよくわからないのですが、例えば不出頭で来なかったというだけでは足りずに、出て来て実質的に話合いをしたけれどもだめだったということが表現されているのならば特段問題はないのですが、併せて教えていただきたいと思います。

○小林参事官 この部分については、おっしゃったように形式的な扱い、処理ではなくて、先ほど綿引委員からも御紹介があったように、勿論御指摘のようなケースもあるのだと思いますが、家事調停なりでそういう努力がなされて、それでもまとまらなかったと判断できるだけの実質を備えたものであってほしいという気持ちが出ているところであります。
 ただ、これをまたどうやって判断するのかということになりますと、廣田委員がおっしゃったように、ある程度定型的にそういう体制ができているかどうかを判断する必要が出てくるかもしれませんし、本件の場合は、やはり予見可能性が重要だと思いますので、そういう意味で言うと、ある程度定型的にそういう体制なり手続を判断することにはなると思いますが、ここで念頭に置いていたのは、真摯な調整過程が図られているということでございます。

○青山座長 補足いたしますと、ここで「和解成立の見込みがないことが主宰者によって見極められるような形でADRの手続が進行されている」と書いてあるのは、要するに調停前置を外すわけですから、それは前の手続でも、和解の見込みがないということがはっきりしたということが前提になって、もう一度裁判所に行っても、二度手間で調停をさせるまでもないから、訴訟でいきなりやりましょうという連関があるわけです。
 ですから、前のADRでは、そこまで見極められるようなところでやってこなければ調停前置は外せませんということを言うために、そのようなきちんとした手続でやってみてだめだったということを言おうとしているということです。

○綿引委員 今の髙木委員の御発言についてよろしいでしょうか。

○青山座長 どうぞ。

○綿引委員 先ほど髙木委員が述べられたように、調停を早く打ち切りたがる理由には、勿論漂流型というものもあるのだろうと思いますけれども、実際に私が自分でやった事件でも、1回相手方が不出頭だったときに、申立人の方からどうしても打ち切ってくれと強く言われて家裁の調停を打ち切ってしまって訴えが提起されたというケースもあったのです。家裁の調停ですらそうなのですから、きちんとした調停をやろうという姿勢がある機関でないところでそういう事態が当然あるというようなことになると、本当に調停の空洞化が生ずることもあり得るだろうということを考えないといけないと思います。
 特に家事調停については、調停がきちんとされなければいけないということだけは了解事項としておいて、もし調停前置を外すということだとすれば、調停の空洞化を招かないようなところに十分な配慮をしなければいけないということです。
 そのためには、先ほど髙木委員は、弁護士会でも家裁と同じかそれ以上の話合いをしているとおっしゃったけれども、本当にそう見極められるADR機関は何なのかという議論をしなければいけないだろうと思いますので、一言加えさせていただきます。

○青山座長 どうぞ山本委員。

○山本委員 今の綿引委員の御発言は全くもっともなお話だと思います。ただ、綿引委員のお話も、調停前置主義にADRが代わる場合を認めることに反対という御趣旨ではないと承ります。代わるべきADR機関について、十分な検討が必要であるというお話だったかと思います。そこは私は全くもっともで、先ほどの手続の中止の場合とは違って、ここはまさに調停に代わるわけですから、やはり調停と同等のADRでなければならないと思います。
 ただ、調停の評価について、今、綿引委員と髙木委員の間で若干の齟齬があったように、これはいろいろな御意見があり得べきところではなかろうかと思うわけでありますが、理念としては、やはり調停に同等な真摯な話合いの場を提供できるような機関でなければならないというのはそのとおりだろうと思います。
 ただ、それが民間で提供できないかと言うと、それは必ずしもそうではなくて、例えばフランスなどでは民間のADRの提供しているものの大半は家事関係のメディエーションの手続でありまして、実際にいろいろ専門知識を持っている人が集まって一定の団体を構成して、そこでADRを提供している。それが社会的にも高く評価されているという例はあるわけでありまして、日本でも将来的にはそういうADRが誕生してくる可能性は否定できないと思いますので、私は、家事関係について綿引委員がおっしゃったような特別な観点というのは勿論あり得るのだろうと思うわけですが、そうだからといって一律に外すということは適当ではないと思いまして、ADR機関の適切性という観点を検討するということを前提に原案どおり積極的な御検討をいただきたいと思います。

○青山座長 どうぞ三木委員。

○三木委員 人事事件を含めて、こういう制度の可能性を検討した方がいいという点では山本委員の御発言に賛成します。ただ、そのためには機関の限定が必要だという点については異なる意見を持っております。
 要は、どの機関が離婚等について調停をやったかではなくて、実際に当事者同士で第三者を交えて離婚等の話合いが実質的に中身をもって行われたかどうかということが問題であって、いずれの機関が実施するかということは問題ではないと思います。
 結局、訴えが提起された場合に、事後的に裁判所が調停前置の趣旨を満たしたような調停が民間のADR機関で行われたかどうかを判断すればいいのであって、事前の予測可能性というものを、この局面でさほど重視して、劇薬である機関の認定のような制度を入れる必要はないと考えます。
 当事者の立場に立ってみても、民間のADRを使って裁判所の家事調停を回避しようという意図で行うということはまず考えにくくて、結果として最初に、例えば弁護士会で離婚の話合いがかなり長い時間をかけて行われたと、それが終わったのに、しかも話合いでもけりがつかないことが明らかになっているのに、また裁判所の調停を無駄に繰り返さなければいけないのかというところが問題になるわけで、事後的に調停前置の趣旨が満たされている場合には、それを回避できる制度の仕組み方でいいのではないかと考えます。
 以上です。

○青山座長 どうぞ廣田委員。

○廣田委員 今の三木委員の御意見は、家事審判法などの規定に、訴えをいきなり出した場合に、裁判所が調停を付すことが適当でないと認めたときは付調停にしなくてもよいと書いてありますから、むしろこの条項の解釈規定といいますか、1つの解釈の中に入れてしまうということが可能になるのではないでしょうか。そういうことであれば、私は三木委員の意見に賛成です。

○三木委員 実質において、廣田委員のお考えになっていることと、私の考えていることが大きく違うとは思いませんが、先ほど廣田委員は、例えば弁護士会の調停で離婚の話合いがされた場合には、弁護士ないし弁護士会としては、いきなり訴えを提起しろということを言うのではないかとおっしゃいましたが、そういうことを法律の規定なく正面から言いますと、家事審判法18条は、まず調停の申立てをしなければならないと書いてあるわけで、この法律に反するような実務の運用を他の法律の明文の規定もなく、定型的に弁護士ないし弁護士会が行うということにもなりかねないので、根拠規定として、ADRを経た場合には調停前置の趣旨を満たす場合があるということを、どこかに規定を置く必要があるのではないかと考えております。

○綿引委員 私は、廣田委員が言われる方向であれば、全く異論はないのです。要は適当ではないと裁判所が認めたときに、調停前置を外すという形であれば、それに引っかけるような形でADR基本法に何か書くということぐらいであればいいと思うのですけれども、むしろ調停前置を満たしてきたよと言って訴えが提起されたときに、いやこれではだめだ、これでは調停前置の要請を満たしていないということが言える時に初めて調停に付すことができるというように、いわば原則と例外が逆になるようでは困るのではないかという感じを持っています。
 勿論、「調停前置を要しない」という言い方なので、別に原則と例外を引っくり返していないと事務局はおっしゃるかもしれませんけれども、やはり「調停に付することを要しない」という規定があって、ADRを経てきたから「要しない」ものとして訴えを提起したと言われたときに、これはとても満たしていないからと言って改めて調停に付するというのは、今度は調停に付する側には非常な負担になるので、きちんとした話合いをしてきた場合には、調停に付することは適当でないと認めて、調停に付さないことができるというようなぐらいの、廣田委員が言われるようなところに抑えておくのが、現状では特に家事調停も含めて、この規定を何か考えるとすれば適当なのではないかという感じがしております。

○青山座長 ほかに御意見はございますでしょうか、どうぞ。

○山本委員 先ほどの三木委員の御発言ですが、私は事務局のおっしゃったとおり、やはりここは当事者の予見可能性というものが重要な局面であると思います。
 当事者が調停に代わるものとしてADRを利用して真摯に話し合って、その結果として話合いがつかなかったという場合に、裁判所に行ったら裁判所の何らかの裁量で、これは真摯な話合いを満たしていない手続であったので、もう一回調停にしますということでは、それは当事者の意思、利用者の利便というものを損うことは明らかではないかと思っておりますので、私は何らかの形で、その担保の仕方はいろいろな方法があると思いますけれども、何らかの方法で予見可能性を担保するような措置を講ずるべきであると思っております。

○青山座長 十分意見を戦わせていただいたと思います。これは、このような制度を仮につくっても、それを受ける受け皿があるかどうかという現状の問題については、ほとんど共通の理解があると思います。その上で、将来のものとしてこういうものをつくるかということですが、そのつくり方も、現在、家事審判法の18条2項のただし書がありますから、その運用の範囲、あるいはそれに引っかけたと言いますか、これに着目して、この範囲内で制度をつくるということについては、特に反対はなかったと思います。裁判所の立場からもそれならば反対はしないという御意見がありました。
 しかし、それでは十分ではない、予見可能性の点から見ると、二度手間にならないためには、そういう機関があるかどうかは別にして、裁判所外の調停をきちんとやってきたならば、原則として調停は外されるということが打ち立てられるような制度をつくるべきだという考え方もありました。どちらが多数説、少数説だと言えない状況であったように思います。
 この点についても、もう少し具体的な制度設計をした上で議論をしないと、18条2項のただし書もそれだという考え方と、それからきちんと制度つくるべきというものも、具体的なイメージを前提としないと、かなり形が違うことになりますので、今日のところはそのくらいにしていただきまして、パブリックコメントを経た上で、更に議論するということでよろしゅうございますでしょうか。それまでに更にこの点はお考えいただくということにさせていただきたいと思います。
 どうぞ。

○原委員 パブリックコメントに付されるということなので、是非お願いしたいと思いますけれども、事務局が大変御苦労なさって書かれているのだと思いますが、具体的にわかりやすい形での提示をお願いしたいと思います。

○小林参事官 わかりました。

[論点3-2(ADRによる争点・証拠整理、証拠調べの結果の訴訟手続における活用)]

○青山座長 それでは、最後の論点ですが、ADRによる争点、証拠整理、あるいは証拠調べの結果を訴訟手続で利用するという可能性につきまして、何らかの制度的な裏付けを置くかどうかということについてはいかがでしょうか。
 共通の制度として設ける必要性はないものと考えてよいかという、やや消極的な考え方で事務局は案を出しておりますけれども、これにつきまして、何かこのような規定を置くべきだという積極的な考え方があれば、あるいは消極論でも結構でございますので、どうぞ。

○綿引委員 これは設ける必要はないと考えております。あとは、当事者が訴訟に上程したいというときに上程していただければと思います。ただ、上程できるのかどうかという、そちらの議論の方がおそらく重要な問題になってくるのかと思っております。

○青山座長 どうぞ三木委員。

○三木委員 私も消極論を補強する発言をしたいと思います。どちらにしろ消極で固まるとすれば必要のない議論かもしれませんが、このペーパーの説明というのは、専ら裁判所の立場からこういうものは必要ないということを書いていますけれども、ADRの方の立場から考えても、先ほど綿引委員がおっしゃったように、ADRにおける証拠調べの結果等をそもそも出していいのかという方がより問題でありまして、ADRの観点からいっても、原則としてはこういうものは出さない方が望ましいと考えておりますので、そちらの方からも消極の根拠を書いていただきたいと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ安藤委員。

○安藤委員 私も賛成です。基本的に当事者の間で解決を目的として話し合う、そこへ出てきた証拠ですから、法廷に出すということは少しずれる可能性もありますので、それは設ける必要は全くないかなと思います。
 それ以外については、ちょっと綿引ショックがきつくて、ADRの受け皿がないと言われてから、考えがこんなになってしまって。

○青山座長 よろしゅうございますか、この点はそのようなお考えだということで承っておきたいと思います。
 それでは今日の2つ目の議題でございますが、ADRの拡充・活性化のアクション・プランに移りたいと思います。
 事務局から資料15-2のアクション・プランが出されておりますので、それについて御説明を願った上で、御質問等がございましたらお伺いしたいと思います。
 では、事務局から説明をお願いいたします。

[(2)ADRの拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プラン]

○小林参事官 それでは、資料15-2に従いまして、御説明したいと思います。
 本件につきましては、このアクション・プランのもとになります構成案の段階、それからそれに基づきまして、関係機関に対する説明会あるいは資料送付をした上での各関係者からいただいた御意見の紹介ということで、二度にわたって御紹介をしてきておりますが、4月10日に連絡会議として取りまとめがされましたので御報告したいと思います。資料そのものは、確定後すぐお送りしたかと思いますが、検討会での御説明は今回が初めてになりますので、ざっとおさらいをしたいと思います。
 資料は、アクション・プラン本体と、それから2枚紙を簡単な概要としてお付けしてございますが、本体の方の最初の2枚をざっとまず御説明したいと思います。
 まず、本アクション・プランの趣旨につきましては、これも何度か御説明したかと思いますが、私どもが改革審議会の意見でいただいている宿題が2つございまして、1つがこちらで御検討いただいております共通的な制度基盤の整備ですが、もう一つが関係機関等の連携強化の促進ということでございます。
 これにつきましては、まずは国側の体制整備ということで、昨年6月に関係省庁等連絡会議が設置されまして、その場におきまして、とりあえず横断的、縦断的に取り組むべきと考えられる施策をとりまとめたということでございます。
 2枚目を見ていただきます。このアクション・プラン自身は今申し上げたような経緯でございますので、いわば主語は国、具体的には関係省庁と裁判所になっているわけでございますが、この検討会でもよく御指摘いただいていますように、実際にADRの健全な発展を図っていくためには、それ以外にも地方公共団体、あるいは民間のADR機関、その他関係機関の御協力を仰ぐ必要があるわけでございます。
 このアクション・プランにおきましては、そういった関係機関につきましては、これらの趣旨を踏まえ、積極的な取組が講じられることを期待するとともに、これら各団体機関との連携強化を図っていくこととしたいということにしております。
 先ほど触れましたように、関係機関につきましては、説明会あるいは意見募集という形で御意見をいただいたところでございますが、これから各論の施策につきましては、後ほど御紹介するように、いろいろな議論の場を設けまして、協力して連携を進めていきたいと考えております。
 4番目の今後の予定ですが、第1パラグラフにありますように、今、まさにこの検討会において共通的な制度基盤の整備についての議論が進んでいるところでございますし、また、ADRの拡充・活性化に関連しまして、司法制度改革の一貫として、全国のどの街でもあまねく市民が法的救済を受けられるようにするための司法ネット、これは仮称でございますが、この整備を目指した具体的仕組みの検討も進められているということでございます。
 したがいまして、今回まとめたアクション・プランについても、これらの検討状況も踏まえまして、必要に応じて見直しをしていきたいと考えております。
 それから、なお書きでございますが、改革審の意見書では、関係機関間の連携を促進するための具体的方策として、国の機関のみならず、民間の機関も含めました関係諸機関による連絡協議会の体制整備が指摘されているわけでございます。
 この関係諸機関による連絡協議会の体制整備につきましては、これから御説明をする幾つかの意見交換の場、これは官民共同のものになるわけですけれども、こういった意見交換の場が発展することによりまして、更に大きな連絡協議の場である関係諸機関等連絡協議会が整備されることにつながっていくことを期待するとともに、そのために必要な支援を行っていくこととしたいというようにしております。
 行政主導でこの指止まれ方式で各機関に御参集いただいても、その場合には、得てしてあるように、組織はできたけれども何をやっていいのかわからないということにもなりかねないということで、まずは関心と意欲を共有する官民のグループから具体的な検討をスタートさせていきたいと考えております。
 具体的な中身につきましては、2枚紙の方の1枚目が骨子になっておりますので、これを踏まえて御説明していきたいと思います。
 まず、柱は大きく3つございまして、1つは「ADRに対する国民の理解の促進」、2つ目が「ADR機関等へのアクセスの向上」、3番目が「担い手の確保・育成等」ということでございます。
 最初の「ADRに対する国民の理解の促進」でございますが、これは広報活動・普及啓発活動、あるいは司法教育との連携という項目でございます。
 具体的には、本体の方の1ページ以下がその内容になるわけでございますが、「法の日」の行事の一環としての普及啓発活動など、具体的な内容を盛り込んでおります。
 2番目が「ADR機関等へのアクセスの向上」でございますが、これは大きく3つに分かれます。1つは「アクセス・ポイントの整備の促進」ということで、更にその内容は「ポータル・サイトの機能充実」、「総合的相談窓口の充実」、「個別ADR機関へのアクセス方法の改善」でございます。
 まず、最初の「ポータル・サイトの機能充実」につきましては、これも何回か御紹介したかと思いますが、現在、民間機関におきまして、幾つかポータル・サイトが立ち上がりつつあるという状況にございますので、これを更に利便性を高めるための方策につきまして、ポータル・サイト運営者、ADR機関などの利用者、それからADR機関そのものからなります意見交換の場を設置しまして、具体的な検討を始めたいと考えております。
 具体的な検討項目としては、2ページの意見交換の場における検討項目にありますように、情報提供の仕組みでありますとか、あるいはポータル・サイトの検索方法その他を含めた利便性の向上策についての検討をしていきたいと考えております。
 3ページにまいりまして「(2)総合的相談窓口の充実」につきましては、これは既存の各相談窓口、あるいはADR機関の総合的相談窓口機能を充実していくということを中心に考えてございます。
 具体的な候補としては、3ページの一番下のアにありますように、まず、各府省の消費者窓口、それから国民生活センターなどにつきましては、総合的相談窓口としての機能を強化するための具体的方策を検討し、所要の措置を講ずることにいたしております。
 また、4ページにまいりまして、裁判所におきましても、中立・公平性を損わないように配慮しつつということではございますが、やはり具体的な方策の検討と措置の実施を考えております。
 また、更にその他の候補としましては、ウにございますように、地方公共団体、消費生活センター、県民相談窓口、警察の相談窓口、それから弁護士会などにおきまして、こうした総合的相談窓口の機能が充実されるように具体的な御相談をさせていただきたいと考えております。
 このための具体的な施策としては、エにございますように、a)の各種ADR機関等が一覧で紹介されたリーフレットの作成でありますとか、あるいはb)にございますように、情報提供の担当部署を明らかにする、あるいは、カにございますように、ADR機関等の相談担当者あるいは事務局職員を対象とした各種ADR機関等に関する研修会の開催などを実施したいと考えております。
 5ページにまいります。「個別ADR機関へのアクセスの改善」は省略しまして、「2 相談機関・ADR機関間等の相互紹介の体制整備の促進」でございますが、これにつきましては、具体的な相互紹介体制を整備するというのは、相互の間の信頼関係がかなり強くないと難しいということですので、これにつきましては、6ページにございますように、やはり相談機関・ADR機関等からなる意見交換の場を設置しまして、事案引継ぎシステムの在り方について検討していきたいと考えております。
 具体的な検討項目としては、6ページのアの例に挙げてございますような、引継ぎの具体的な方法、フォローアップの方法、費用負担といった問題について意見交換をするとともに、この場において具体的な引継ぎが可能となるような機関が出てきましたら、その間で話を進めていただいて、他の機関のモデルとなるような引継ぎの方法を固めていただくということを考えております。
 それから6ページの「3 ADR機関による利用者に対する情報提供の促進」につきましては、7ページになりますけれども、少なくとも行政型ADR機関、あるいは裁判所におきましては、アにあるような情報提供コーナーを設置するなどの措置を講じたいと考えておりますし、また、情報提供の在り方につきましては、前回当検討会において御議論いただいたところでございますが、こうした法令上のルールの是非はともかく、それも踏まえながら情報提供の在り方についてのガイドラインのようなものを引き続き連絡会議において検討していきたいと考えております。
 それから、9ページ以降の「第3 担い手の確保・育成等」の問題でございます。
 これも関係機関の御意見を伺いますと、総論としては賛成であるけれども、具体的な協力というのはなかなか難しいという御意見もいただいているところでございますが、やはり人材が鍵であることには変わりがないわけでございまして、これもできるところから始めていきたいと考えております。
 具体的には、やはり関係機関からなる意見交換の場を設置しまして、具体的な人材交流の方法、あるいは研修の充実についての意見交換をしていきたいと考えております。その過程において、データベース化のような問題についても引き続き検討していきたいと考えております。
 若干駆け足になりましたけれども、概要は以上のとおりでございます。

[質疑]

○青山座長 それでは、ただいま事務局の方からアクション・プランについて御説明いただきましたけれども、これにつきまして御質問がありましたらお伺いしたいと思います。

○原委員 3点あります。
 こちらのアクション・プランが並行して進んでいるというのは存じ上げているのですけれども、例えば司法ネットができてくるとか、関係諸機関による連絡協議会の体制整備などが検討されるということになってきて、徐々にやらなければならない具体的な話がどんどん出てきているわけですけれども、これは具体的にはどこが担い手になってやっていかれるのか。例えば推進本部がありますけれども、推進本部も一応期間限定的な組織ですから、未来永劫ずっと続くわけではないので、行政がやるのかどうかということも1つの議論だと思いますし、行政がやらなければそのままということですけれども、例えば、ここまで具体的になると行政の関与というのも相当あるように思われて、そうするとタイムリミットでやっている組織で、どこが担い手となっていくのかというような議論はされているのかどうかということです。
 2つ目は、4ページに総合的相談窓口を備え置くように、各種ADR機関等が一覧で紹介されたリーフレットを作成するということになっていますが、ここに掲載されるADR機関というのは、これまでこのアクション・プラン策定のために、既存のADRに呼びかけて、80団体ぐらいですか説明会にお見えになったりしていますけれども、自己申告によって、申し出ていらっしゃった方を全部リーフレットに載せるということを考えていらっしゃるのか、何かまた違う仕組みを組まれているのかということが2つ目です。
 3つ目は、10ページにあります担い手の話ですけれども、大事だというところについては、世の中に出しても誰からも異存はないところですが、この具体的施策のところでADRを担う人材の育成の具体的な在り方について、調停人養成プログラムを平成15年度中に措置するということが書かれていて、経済産業省でおやりになるということですが、これを経済産業省単独でおやりになるということの意味と、もう少し内容的なものも御紹介いただきたいと思います。
 以上、3点です。

○青山座長 わかりました。最初の問題は、非常に大きな問題ですけれども、どこがADRの今後を担当するかという問題についていかがでしょうか。

○小林参事官 まず、このアクション・プランについて言えば、先ほど申しましたように、主語は各省庁になりますので、各省庁にこの検討なり措置を実施していただくことになりますが、さはさりながら官民合同でいろいろやっていくということもありますし、各省庁にいろいろな温度差もないわけではありませんので、そういうものを束ねていく機能というのは、やはりどこかが果たしていくべきではないかとは思っております。
 それにつきましては、少なくともこれが軌道に乗るまでは私どもの組織がありますので、その間はできるだけうまく船出ができるようにしていきたいと考えていますが、その後、こういうとりまとめ役的なところがどこか必要なのかどうか、必要であるとすればどこが担うことが適当であるのかということについては、これは法律の所管とも関連するかもしれませんけれども、いずれにしてもこの連絡会議としても議論をしていくということになろうかと思います。
 結論としては、今の時点では特段具体的な案があるわけではありません。
 2番目のリーフレットでございますが、これは御指摘いただいたように難しい問題があって、特に民間の機関のことも考えますと、漏れがあっては問題があるのではないかという面がある一方で、他方、何でもかんでも入れていいのかという問題もございます。
 勿論、物理的なスペース的な制約もあるわけでございまして、これにつきましては、よく工夫をして、今、2つ申し上げた問題点ができるだけ少ないような形でつくっていきたいと考えております。そうした問題があるのは承知しておりますが、問題があるからといって手をつけないわけにはいかないと思っていますので、そこはうまく工夫をしたいと思っております。
 3番目の10ページの具体的施策に、経産省の調停人養成プログラムが出ているけれども、これはどういうことかということですが、私どもとしては、いろいろな意見交換の場の設置のみならず、もう少し具体的なものも入れていきたいということで、これは各省庁に御意見を伺ったのですが、その中でこれは非常に重要な課題なので、経産省としてもこういう取組をしていくということでありましたので、御紹介したということでございます。これは何も経産省の専管だとか、ほかの省庁は全く何もやるつもりはないということではございませんで、あくまでも現時点で比較的先行しているものとして取り上げているということでございます。
 具体的な中身でございますが、外に出せる資料であるのであれば後ほどお渡ししたいと思いますが、経産省ではこの問題に限らず、省内だけではなくて、いろいろ官民の方に個人として参加していただいて、ITを適宜活用しながら政策を形成していくという、やや実験的な面もあると思いますけれども、そういう試みを幾つかのテーマでやっておりまして、そのテーマの1つとして、この調停人養成プログラムというものもやっていきたいということでスタートしているようでございます。
 ここに書いてあるように、いわゆる調整型手続を対象としまして、どういった内容のものが必要になってくるのかということについて、取りまとめをしていきたいということのようでございます。
 この検討会なり、あるいは通常の省庁の審議会のような、硬いオフィシャルな形というよりは、むしろ今申し上げたようなソフトな形でつくり上げていくというイメージではないかと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○原委員 ちょっと補足的ですけれども、2番目に質問したリーフレットにどこを掲載するかという部分ですが、既存のADRはある程度こちらもイメージできていますけれども、NPOでおやりになっていらっしゃるところがあって、そういったところをできるだけ網羅して差し上げたいとも思いますし、ただ、どういう形のものか見えない部分もあるというところで、事務局がおっしゃられたとおりだと思っておりますので、何らかの工夫を是非お願いしたいと思います。

○青山座長 わかりました。この検討会の第1回目に私が申しましたが、法律をつくるという方は割合短期間に目に見える形でできるわけですが、日本にあるいろいろなADRを連合させて、そしてより活性化させるということは非常に難しい、しかも長期的な仕事だろうと思うのです。
 それで、今後の見通しと言いますか、こういう形でとりあえずアクション・プランができたと、これを今後あまり長期的ではなくて、この検討会が続いている間に、次はどんな節目でこちらに御報告いただけるかという見通しはどうでしょうか。

○小林参事官 1つは、フォローアップという形で適当なタイミングで実施状況を調査したいと考えていますが、もう1つは、幾つかの意見交換の場を設置することになっていますので、その場での検討状況につきましては、幾つかございますけれども、まとまってきた段階で御紹介したいと考えております。
 時期的な目途はなかなか今の段階から申し上げにくいのですけれども、検討会での検討がされている途中にと考えております。

○青山座長 わかりました。何かほかに御質問、あるいは御意見でも結構ですが、ございますでしょうか。
 どうぞ。

○廣田委員 これは、いろいろな事項が入っていると思うのです。ですから、具体的に何かを進めるときには、これが多岐にわたっていくでしょうし、枝葉が付いていくと思います。
 それと同時に、これが深くどんどん進んでいくところと、なかなかできないところが出てくるでしょうが、その辺は、やはりこれが多分基本になると思いますので、その進行状況を含めて全体的に掌握するということも、どこかでやることを考えていらっしゃるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。

○小林参事官 先ほども申しましたように、私どもの存続期間中は私どもで責任を持ってやりたいと思っておりますし、存続期間中にその後どうするかということについては、関係省庁も含めて合意ができるように努力をしていきたいと思っております。

○青山座長 おそらく今の段階でそれ以上のことは多分言えないと思うのです。ちょうど今、折り返し地点になったところでございますので、更にこれから我々の審議も進み、それから連絡会議の方ももう少し活発に動き出すと、それでは今後どうするかというような問題が出てくるのではないかと思いますので、今日のところはよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

[(3)その他]

○青山座長 それでは、今日はこれで終了させていただきますが、次回の日程を確認しておきたいと思います。
 次回は、5月26日月曜日の午後1時半から、議題は時効中断効、執行力の付与という非常に難しい問題の2巡目を御議論していただきたいと思います。資料も十分間に合うようにお送りさせていただきますので、よろしく御準備いただきたいと思います。
 本日は、ゴールデンウィークの谷間であるにもかかわらず、御出席いただきまして大変ありがとうございました。本日の検討会は、これにて終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。