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ADR検討会(第17回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年6月9日(月)13:30~17:25

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、 廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)ADRに関する基本的な法制の枠組み
(2)基本的事項
(3)一般的事項
(4)調停手続(法)事項
(5)特例的事項(弁護士法の特例)

5 配布資料
資料17-1 検討事項2-1~2-5
資料17-2 参考資料 ・わが国のADRの分類(例)
・第三者的な行政機関による紛争解決手続の類型(例示)
・裁判外における第三者の関与による紛争の解決手続等の類型化のフロー・チャート
・ADRに関する基本的な法制の枠組み(イメージ)
・ADR主宰者に求められる能力(イメージ)

6 議 事

(1)ADRに関する基本的な法制の枠組み(検討事項2-1)

 ADRに関する基本的な法制の枠組みについて、事務局より、検討事項2-1に沿って説明が行われた。その後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

○ 基本的な法制の各事項の適用範囲について、一般的事項と特例的事項では書き分けているが、どう使い分けているのか。

● 一般的事項については、基本的にはすべてのADRを対象としつつ、項目によっては、例えばアドホックについては外して、業として行っているものだけを対象とするようなことが考えられるが、特例的事項については、時効中断効や執行力付与など相当程度対象は絞られると思う。

○ ADRの範囲については、消費者主権の立場から、主体的な紛争解決の促進のため、紛争の終局的な解決よりも、両当事者の合意形成促進を前面に置いた表現にすべきではないか。
 また、「相談手続・苦情処理手続」を一括りにしているが、消費者相談では、相談と苦情処理はそれぞれ区別して取り扱っており、一括りにしてよいか議論が必要ではないか。

○ 基本的考え方として、パブリックコメントの際は、自主的解決促進という性格付けをより明確にしてもよいのではないか。

○ 基本的考え方として、調停・あっせん手続に関しての一般的な手続ルールは、原則としては不要ではないか。また、行政処分について、「民事に関する紛争のうち行政処分に係る紛争は適用対象にしない」とあるが、例えばOTOなどは、政府調達協定に反している場合に是正措置の提言などを行っており、行政処分を適用対象から外すことをあえて書く必要はないのではないか。
 また、「調停・あっせん」の定義は、「合意形成の促進」という文言を加えるべきであると考える。その他の論点については事務局案に賛成である。

○ 「手続における第三者を『主宰者』と総称する」との記載があるが、主宰者というと、調停人・あっせん人が手続をリードするというイメージが強く、検討が必要ではないか。英語でも、両当事者間に介在する中立的立場にあることから、ニュートラルと言っている。

○ 事務局案に全面的に賛成である。特に、行政処分の紛争解決を外すということについては、行政訴訟は通常の民事訴訟とは違う面があり、これを外すことがADRの基本的な性格を明らかにすることができるという意味でも改めて賛成する。

□ 以上の議論をまとめると、
・【論点1-1】について、①②については議論がなかった。③については、文章の順序について意見があった。行政処分に関する紛争を除外することについては賛否両論があったので、7月14日に再度意見を伺いたい。
・調停・あっせんについての説明部分について意見があった。
・【論点1-2】について、②が相談と苦情処理を一括りにしている点について意見があったが、この点については、さらに意見をいただきたい。
・【論点2】の適用範囲については、「基本的事項」、「一般的事項」、「特例的事項」についての具体的な議論の後で議論する方がわかりやすいのではないか。

● 若干補足させていただくと、事務局案は、行政処分に関するADRについては、改善する余地がないというのではなく、そうした問題は行政不服申立て制度の在り方の検討の中などで議論すべき問題ではないかという趣旨である。また、例示されたOTOのケースは行政処分自体を争っているものではないのではないか。

(2)基本的事項(検討事項2-2)

 基本的事項について、事務局より、検討事項2-2に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

○ ADRの基本理念について、相対交渉、訴訟制度の限界を補完するとあるが、消極的な位置付けに見える。むしろ、私的自治の原則という特色を持つADRの拡充・活性化を図る観点から、紛争解決機能の基礎的な役割を担うという点を前面に出すのがよいのではないか。

○ ADRには相対交渉、訴訟を補完するという面もあるが、一方が主で一方が従ということはないはずである。事務局案は、ADRが従であると読まれやすいのではないか。

○ 相談手続において、一方の当事者が必要以上に知恵を授けられ、紛争を激化させているのではないかという声もある。相談手続も何らかの仕分けは必要ではないか。

○ 相談手続については、そのような懸念もあろうと思われるが、「健全な発展」を図るとされているので、このままパブリックコメントを行ってもよいのではないか。

○ 国の責務として、特定のADRに対する財政上の措置は問題があるとあるが、ADRに税制上の措置を採ることは考えられるのではないか。また、国民の役割については、国民に司法制度における役割を認識してもらうための規定は必要である。

○ 国の責務について網羅的に列挙されているが、国が責任を持って乗り出してくるのが果たしてよいのかどうかと思う反面、説明の中には全く何もしないのではないかと思わせるところもある。もっとメリハリをつけてパブリックコメントに出す必要があるのではないか。

○ 国の責務、ADR役務提供者の役割について、列挙されている内容はよいが、国による規制にならないようにしなければならない。国民の役割については、何らかの規定は置くべきだろう。

○ 国の責務については、抽象的な記述にとどめた方がいのではないか。

○ 国民の役割について、規定を置く必要があるか疑念がある。仮に書くとしても、「民事に関する紛争については当事者間の合意を基礎として自主的に解決すべきもの」とすると、訴えを起すことが悪いかのようなニュアンスを与えることはないか。そのような誤解を与えないように、「自主的紛争解決の重要性を認識する」というように表現振りに工夫するべきである。

○ 国民の役割については、何らかの規定は置くべきである。ただ、「当事者間の合意」を強調すると、訴訟などの裁断型の紛争解決手続があたかも二次的な紛争解決手続であるように誤解される懸念があるので、当事者の主体性に重点を置いた表現にすべきである。そうであれば、現行訴訟法にいう処分権主義、弁論主義など当事者の主体性を尊重していることとも矛盾しないだろう。

□ 以上の議論をまとめると
・【論点1―1】①②についてはADRのもっと積極的な役割を打ち出した方がよいのではないかという意見があった。
・【論点1-2】については、特段意見がなかった。
・【論点1-3】については、相談についての仕分けの必要性について意見があったが、「健全な発展を図る」ということでよいのではないかという意見もあった。
・【論点2】については①~⑦でカバーしているということであった。より具体的に踏み込むべきという意見、抽象的な表現にとどめるべきという意見、具体的に書き加えるとしても国による規制にならないようすべきという意見があった。なお、財政上の措置については、事務局の方で趣旨の部分の書き振りを考えていただきたい。
・【論点3】【論点4】については、特段意見がなかった。
・【論点5】については、書くことについてはよいが、その表現振りについて意見があった。

○ 【論点5】については、これを法律に書くべきかどうかを含めてパブリックコメントに付してほしい。

(3)一般的事項(検討事項2-3)

 一般的事項について、事務局より、検討事項2-3に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(ADR機関・ADRの担い手の一般的な義務)

○ 「ADRの担い手」には、アドホックの場合の補助者を含めるべきと考えるが、どうか。

● 脚注にあるとおり、ここではアドホックADRもADR機関に含まれると考えており、補助者も主宰者とともにADRに関与するので、「ADR機関の役職員」に含まれる。

○ 主宰者の義務として、「その公正な運営」とあるが、UNCITRAL調停モデル法での表現に合わせて、「その公正な手続運営」とするべきである。また、一般情報の提供義務については、提供されるべき情報について具体的な例示は必要であるが、「主宰者候補者の能力」を明示するのは難しいので、客観的にわかる経歴でよいのではないか。(組織の)財政基盤についても、限定的・客観的な資料で足りるとするべきではないか。ADRの担い手の確保に関する義務については、主宰者にアドホックも入れなければならないのではないか。また、「育成」まで規定するのはやや強いのではないか。「専門的能力の習得に自主的かつ積極的に努める」という表現も強いので、まとめて「研鑽」でよいのではないか。

○ ADR機関の一般情報の提供義務について、努力義務にするのであれば例示がほしい。

○ 基本的考え方で、「基本的には、ADR機関と利用者との間又は担い手と利用者との間の合意(契約)によるべきもの」とあるが、契約を根拠に一定事実の開示義務や守秘義務などを課す必要はないのではないか。契約を前提にすると、契約を結んだ利用者も契約に拘束されることになるが、実際には離脱の自由があることを前提に利用する者も多く、そのような場合に契約解除のルールを持ち出すのは疑問である。主宰者にそれらの義務を課すというのであれば、契約ではなく法令上の義務として課すことが適当ではないか。
 また、契約時に義務が発生するとした場合、申立ての際に、受け付けた機関の窓口職員まで説明義務を負うことになるが、むしろ、そのような説明義務は主宰者に課して、期日を決め、きちんとした話し合いを行う際に説明する方がよいのではないか。
 「組織の運営主体」については、NPO・NGOがADRを行うことが考えられるので、組織の責任者を運営主体に入れてほしい。

○ 今の指摘について、契約という文言は残してもよいのではないか。契約の解除は自由であるし、契約であるからといって離脱の自由がなくなるわけではない。ただ、契約といっても、ADR機関と利用者の契約は少なく、調停人・仲裁人と利用者との契約になるのではないかと考えられるので、機関ということを主体として打ち出すことには疑問である。
 また、ADR機関に関する一般情報の提供義務について、提供されるべき情報としては、「財政基盤」の情報提供は、外国にも例はなく、過大な要求ではないか。「紛争解決状況」は、それを秘密にすることを特色としているところもあり、提供情報の例示としては、過大ではないか。
 ADRの担い手の確保に関する義務についても、海外では、仲裁人・調停人の能力の育成は仲裁人協会や調停人協会が担当し、ADR機関はやらないことが多い。その方が全国一律の能力の担い手を育成できるし、機関が育成した場合には機関寄りの仲裁人・調停人が養成されるおそれもあるので、ニュートラルな協会で育成された者の派遣を受けた方がよいという見方もある。ただ、ADR機関の義務として、担い手の能力確保という点はあると思われる。

○ 契約であるからといって離脱の自由がアプリオリに制限されるということはないのではないか。また、実際にもPLセンター、弁護士会仲裁センターなどでは、機関と契約しているということになるはずであり、事務局案でよいのではないか。
 ADRの担い手の確保に関する義務について、育成方法は一定の連携を図って能力養成のシステムを機関間連携で作るなどいろいろあるのではないか。ADRの質は主宰者に拠るところが大きいため、主宰者の能力修得の確保については、事務局案程度の努力義務を課せばよいのではないか。

○ パブリックコメントでは、主宰者による公正な手続運営の確保義務に加えて、結果の適正についても議論があったことを含めてもよいのではないか。

○ 契約かどうかという点については、無名契約であって、主宰者との契約か機関との契約かは場合によって異なってくるのではないか。一方で、機関と調停人の間の契約ということも考えられる。

○ 契約の主体が機関であるとすると、弁護士会は弁護士ではないため弁護士法72条違反になる。従来からの仲裁であれば、主宰者との間に契約が成立するのであろう。確かに、何らかの合意があるということは分かるが、実態としてはっきりしないのではないか。

(ADR機関・担い手の個別利用者に対する義務)

□ サービス提供に関する説明義務で、説明されるべき重要事項として、「サービス提供者の名称」とあるが、担当者名は出さないのではなかったか。

○ ADR機関が重要事項についてすべての説明義務を負うこととなると、少しでも説明が漏れると瑕疵となってしまい、実務的には耐えられないのではないか。誰が、誰との間で、どういう義務を負うかについて検討が必要ではないか。

□ 誰がどのような義務を負うかにつき、それぞれを細かく書き分けることはできないのではないか。

○ サービス提供に関する重要事項の説明義務について、「サービス提供者の名称」とは、例えば、弁護士会仲裁センターで足りるかどうかという程度でよいと思うが、重要事項の例示はしていただきたい。主宰者の有する事実開示義務について、どこまで開示すればよいかということの判断は大変難しいので、むしろ抽象的な文言にとどめ、本人の常識に任せるべきではないか。守秘義務について、まず、事務職員まで含むかどうかということがある。また、事例紹介や研究目的で必要な場合に、本人の了解がある場合は例外を認めることはできないか。さらに、仮に時効中断効を認める場合、そのためには申立て日などの最小限の情報を開示する必要はあるのではないか。

● 守秘義務の対象となるADRの担い手については、事務職員も含めて考えている。

○ 相談のレベルまで説明義務が課せられるのはどうかと思う。また、守秘義務が課せられると、全国で同じ被害が生じている場合、発生を防止するよう周知することができなくなり、これまでのやり方となじまない。

○ 守秘義務の主体は個人しかあり得ないのではないか。弁護士法では、弁護士法人については、業務として知り得たことを漏洩することは考えられないことから、弁護士法23条を準用していない。

○ 守秘義務については、契約上の責任は契約当事者を義務の主体にする方が適合的であり、機関が義務の主体になるのではないか。また、守秘義務を課す場合には、通常、法律上「正当な理由がない限り」といった文言が置かれるはずなので、事例紹介などは問題ないのではないか。
 個々の役職員についてまで守秘義務を課すのか。
 契約締結上の過失としての不法行為を問題とするのであれば、契約の直接の当事者ではない役職員に直接義務を課すことは難しいのではないか。機関に義務を課して、その債務不履行責任を問うということになるのではないか。

○ 開示義務は、個別具体的に手続との関係が分からなければ規定しにくいのではないか。例えば、「手続進行中の事実」とするのであれば、手続終了後にその事実が発生しても義務違反とはならないので、終期のわかる手続でなければならないが、手続の終期についての手掛かりがないADRも多いのではないか。また、独立性についても、ミニトライアルなど独立性がない者が間に入ることが予定されているADRもある。手続一つ一つに個性があるため、一般的な義務として定めるのではなく、手続ごとに定める必要があるのではないか。

○ これまでの議論では、守秘義務は証言拒絶権にはつながらないということであったはずだが、今回その部分が抜けているのではないか。

□ とりまとめをすると、
・主宰者については、アドホックもカバーするようにという意見があった。また、契約上の義務とする意見と、法令上の義務とする意見があった。当事者となる者については、機関であるとする意見と、実際の主宰者・担い手であるという意見もあった
・【論点1-1】について、「公正な手続運営」とすべきではないかという意見があった。
・【論点1-2】では、提供するべき情報は努力義務ということであれば、必要最低限の内容を例示すべきではないかという意見があった。
・【論点1-3】では、担い手確保に関する義務については、各機関は能力確保まですればよく養成・育成までする必要はないという意見、柔らかに自己研鑽でよいという意見、養成・育成まで必要とであるという意見があった。また、業として行うものに限るという意見と、アドホックも含むとする意見もあった。
・【論点2-1】では、相談についても一般的な私法上の義務として説明義務を課してよいのかという意見があったほか、サービスの提供者の名称についても意見が分かれた。
・【論点2-2】では、「自己の公正性又は独立性」とするのは広すぎるのではないかという意見、「進行中」とすると手続の終期がはっきりするようにしなければならないのではないかという意見があった。
・【論点2-3】では、守秘義務の主体について、機関であるとする意見と、自然人であるとする意見、その両方であるとする意見があった。また、守秘義務にも例外があるのではないかとする意見があった。相談機関にも課すかどうかについても意見があった。

(4)調停手続(法)事項

 調停手続(法)事項について、事務局より、検討事項2-4に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(検討事項2-4)調停手続(法)事項

○ 調停手続一般法の制定の要否については、パブリックコメントに委ねるということでよいと思う。UNCITRALの調停モデル法で規定を設けた理由は、それらがADRの活性化につながるということが立法動機であったということを併せて説明した上で、調停手続に関する一般法の要否につき、意見聴取していただきたい。

○ 情報の利用制限については、違反を承知で用いられれば結果的に裁判官の心証が害されることはあり得るので、規定を置くのは無意味である。裁判官の自由心証主義という訴訟制度の根幹を変える必要はない。また、調整型手続の主宰者の仲裁人選任の制限については、口頭説明で足り、規定は不要であると考える。日本の調停は世界的に見ても進んでおり、調停手続一般法は不要である。

○ 情報の利用制限について、パブリックコメントを行うに当たっては、自由心証主義、民事訴訟法の基本構造とどういう関係にあるかについて、正しく問題提起をしなければならないのではないか。

○ 外国では調停手続一般法を制定している国もあり、自由心証主義の問題はクリアできているはずである。

□ これまでの議論の取りまとめを行うと、結論についての意見は二つに分かれている。事務局案のような形でパブリックコメントに付すということについては、異論がない。ただし、その背景について説明を加えてほしいという意見があった。

(5)特例的事項(弁護士法の特例)

 調停手続(法)事項について、事務局より、検討事項2-5に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(ADR主宰業務に関する弁護士法第72条の適用除外)

○ 資料に、専門的知見という言葉が随所に出てくるが、どういうイメージで考えるとよいのか。72条は刑罰法規であるから、可能な限り明確性が要求されるところであり、専門性について高いハードルを設けてしまうと、専門家の参入の幅が狭くなってしまうのではないか。専門という言葉のイメージをもう少し明らかにするべきではないか。例えば、米国で2週間の研修を受ければ、交渉能力に関する専門的知見があると言えるのか。

● むしろ専門性を客観的に評価することは難しいとの前提で、弁護士の関与と助言を条件とすることなどにより、問題が生じないような仕組みを設けられないかを考えたものである。

○ 専門的知見という概念で括らず、「あっせん、調停、仲裁を公正かつ的確に行うことができる機関において選任された者が行う業務に対しては、弁護士法72条が適用されない」という案をこれまでの議論の中で提案してきたところであり、パブリックコメントにも反映していただきたい。なお、弁護士の関与については、実際には機関において必要に応じて関与を受けており、法律に書く必要はないのではないか。

○ 事務局案では、相当程度以上の法的知識を有するものと認められる専門家については弁護士の関与を得ることなくADR主宰業務を行うことができることとしてはどうかとの提案があるが、検討会の場では議論はあまりなされていなかったのではないか。

○ 「相当程度以上の法的知識を有するものと認められる専門家」という形で抽象的な問題提起をしているが、具体的なイメージをどう持つかによって結論が異なってくるのではないか。

□ 例えば、裁判官OBなどが該当することは間違いないと思われるが、これに限定する必要はないと考えられる。

○ 想定される専門家のニュアンスが伝わらないと、答えにくいのではないか。また、説明文書の中に「公的に確認する仕組みを取り入れることも検討する必要がある」と書かれているが、他の特例的事項も含め、枠囲いの中に明記する必要はないか。

● 公的に確認する仕組みの必要性については、パブリックコメントの際にはきちんと議論できる形で提示したい。

○ 弊害防止措置については、欠格事由を設けることなど具体的に考えられる措置を説明しないと理解できないのではないか。

○ パブリックコメントでは、「専門的知見」という概念を用いる案に加えて、「公正かつ的確なADR機関」という表現に置き換えるべきとする意見もあったこと、また、ADR主宰業務を認める範囲について、専門的知見の程度の高い低いで分けるかどうかという案に加えて、弁護士の関与・助言の程度だけで分けるべきとする意見もあったことを記載すべきである。さらに、弁護士の関与・助言の必要性については意見の一致をみたが、これを法律に明記することには異論があった旨を記載すべきである。

□ 専門的知見には、紛争分野の専門的知見と紛争解決の専門的知見とがあるので、もう少し分かりやすく説明すべきという考え方もあるのではないか。

○ 専門的知見を活かしうるADRとの記載があるが、これはADR手続のことと理解してよいのか。アドホックも含めた議論としてよいか。

● 機関を想定しているが、個人で行っているということであれば個人ということになる。

(ADR代理業務に関する弁護士法第72条の適用除外)
(法律相談に関する弁護士法第72条の適用除外)

○ ADR代理業務については、個別法令に規定することをADR法に書いておいた方がよいと考える。専門家の活用が必要であることは意見書にも述べられているところであり、個別法に確実に規定が置かれなければ意味が無いのであるから、具体的に個別法の改正の段取りまでつけておかなければ、ADRの活性化につながらないのではないか。

○ 相対交渉の代理権限は、司法書士・弁理士の代理権の範囲をイメージしているのか。ADRの代理権を認めると、その前後の相対交渉も付随業務として自動的に入ってくるという理解なのか。

● 当然に相対交渉まで入ってくるということではないが、むしろ、相対交渉まで視野に入れなければADR代理業務の議論ができないのではないかということである。

○ 当然に入ってくるものではないとの発言があったが、それでは、「その範囲内の紛争」とは何に着目したものか。ADR代理業務に付随して入るものはあると思うが、それ以外のADRとは関係のない一般的な業務も認めるという趣旨か。

● ADR代理業務と関連する業務であっても、例えば受任前の相対交渉を含めるかどうかも、必ずしも当然に含まれるとはいえないということである。

○ 法律相談業務について、「専門的知見を活かしうる分野において法律相談業務を行う」とは、例えば、医者であれば法律をまったく知らなくとも医療に関する法律相談を行うことができるということであろうか。紛争解決能力についても、コミュニケーション能力の研修を受けただけで、法律相談の業務を行うことができることになるのか。他方、仮に法的な相談ではないのであれば、弁護士法第72条の問題ではないはず。この点を整理する必要があるのではないか。

○ 消費生活センターなどの相談員が法律相談を受けたときに、これに応じることができることをイメージしていたが、そうであれば積極的に考えてよいのではないか。

○ 「法律相談」は、代理のあとに記載されているが、パブリックコメントでは、この論点を記載する位置については工夫すべきではないか。

(6)その他

 次回は6月23日の午後1時半から開催し、弁護士法第72条に関する事項の続きを行った上で、3巡目の議論の第2回目の検討を行うことになった。

(以上)