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ADR検討会(第17回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成15年6月9日(月)13:30 ~17:25

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充座長、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉
廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係府省等
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議題

(1)ADRに関する基本的な法制の枠組み
(2)基本的事項
(3)一般的事項
(4)調停手続(法)事項
(5)特例的事項(弁護士法の特例)

5 配布資料

資料17―1 検討事項2―1~2―5
資料17―2 参考資料
・わが国のADRの分類(例)
・第三者的な行政機関による紛争解決手続の類型(例示)
・裁判外における第三者の関与による紛争の解決手続等の類型化のフロー・チャート
・ADRに関する基本的な法制の枠組み(イメージ)
・ADR主宰者に求められる能力(イメージ)

6 議事

[開会]

○青山座長 それでは、ただいまから第17回「ADR検討会」を開会いたします。
 早速、議事に入りたいと思います。今日から3巡目、いわゆる第三読会の議論でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 本日はお手元の議事次第にありますとおり、資料が5つ出ておりますので、それに従って、まず第1にADRに関する基本的な法制の枠組みという問題、2番目には、基本理念や国の責務を含む基本的事項、3番目が、ADR機関や主宰者等の義務といったような一般的事項、4番目に、調停手続に関する一般ルールの関係での調停手続法事項、最後に、ADRの促進等を図るために手続法、実体法に関する特例法を設けるかという特例的事項でございますが、そのうちの今日は弁護士法の特例について御議論いただきたいと思います。大変盛りだくさんでございますけれども、5つの資料を途中で休憩を挟みまして検討していきたいと考えております。
 最初に本日の議事の進め方について、お断り申し上げたいと思います。
 この資料でございますけれども、事務局においては、これは前にも申し上げていることですが、この夏にADRに関する基本的な法制を整備する場合に必要とされる検討事項全般につきまして、このADR検討会での議論を中心に、これまでの検討状況を踏まえて、現段階で考えられている方向性を適宜パブリック・コメントに付すということを考えております。そのパブリック・コメントには複数の選択肢をも含めた中間的な整理をしたものを付すことを予定しているということでございます。
 そういうスケジュールを考えますと、本日この事務局から提出していただいている資料は、パブリック・コメントに付する案そのものではございませんけれども、事務局の認識としては、その基礎になるものであると了解しております。
 したがいまして、この事務局資料をベースに、パブリック・コメントを行うとした場合に、次のような点をお考えいただきたいというのが今日の議論の趣旨でございます。
 まず第1に、ここにお示しした資料のような方向性を示すこととしてよいか、2番目として、この資料では1つの案しか示していない部分について、複数の案を示す必要が事項によってはあるのかどうかということ、第3といたしまして、ここに掲げられている他に論点として掲げてパブリック・コメントを求めるべき事項があるかどうかという3点について御留意いただきながら御議論いただきたいと思います。その際できる限りポイントを絞って、具体的な御意見を賜れば大変幸いだと思っている次第でございます。
 それから、今日も非常にタイトなスケジュールでございまして、時間の関係であるいは御発言できなかったということもあるかと思います。あるいは追加的に御意見を述べたいと思われる方もあるかもしれませんが、その場合には、後日、事務局まで書面等の形で御意見を頂戴できれば大変幸いだと思っております。
 それでは検討事項ごとに事務局から資料のポイントを簡単に御説明願った上で、皆様方から御意見を頂戴したいと思います。
 それでは、最初の検討事項2-1につきまして、まず事務局から御説明をお願いいたします。

[ADRに関する基本的な法制の枠組み]

○ 小林参事官 それでは検討事項2-1について御説明したいと思います。
 今、座長からお話がありましたとおり、このペーパー自体はこれから御議論いただいた上でパブリック・コメントに付す際のベースとして考えております。
 したがいまして、これまで昨年2月から長期にわたりまして議論いただいた内容をできるだけ忠実に再現したいということでとりまとめさせていただいたつもりでございます。ただ、こういった形でまとめてお示しするということになりますと、これは2巡目の議論をベースとしておりますが、それ以降掘り下げたとき、あるいは御議論を整理させていただいたところ、あるいは全体の姿を示すということであれば、若干補足が必要な事項、そういった意味では新規の事項もございますが、そういったところも取り上げられておりますので、そういう辺りを中心に補足的な説明をさせていただきたいと思います。
 検討事項2-1は基本的な法制の枠組みということで、ADRに関して何らかの法制上の措置を採っていく場合に、どういった内容が考えられるかという大きな枠組みについての議論でございます。
 1ページに「基本的考え方」がございますが、これはそもそも、ADRにつきましてどのような法的な枠組みが必要になるかということについて整理したものでございます。そもそもADRが、必ずしも今、十分活用されていないのはなぜかという問題意識から整理をいたしております。
 ①は、国のADRに対する基本的な姿勢、あるいはADRの位置付けが明確でないことが紛争解決手段として十分に理解・認識されていないということにつながっているのではないかということで、ADRに関する施策の基本を明らかにする法制の整備の必要性を謳っております。
 ②は、ADRの提供体制や手続に対する信頼が確立されていないことが、利用が必ずしも十分ではないことになっているのではないかということで、ADR機関やADRの担い手が遵守すべきルールを明らかにする法制の整備が必要ではないかということです。
 ③は、裁判と並ぶ魅力的な選択肢と称されている割には、訴訟手続に比して効果などが見劣りする、あるいは使い勝手が悪い等の制度上の問題があるのではないかという問題意識から、実体法上、手続法上の特例を設ける必要があるのではないかということでございます。
 ④につきましては、これも議論の中で再三出てまいりましたけれども、仲裁については仲裁法が現在、国会に提出されているわけでございますが、同じように調停・あっせんについても、一般的な手続ルールを設ける必要があるのではないかという問題提起でございます。
 この4点につきまして、以下、議論を進めていくということでございます。
 2ページにまいりまして、一番上の○でございますが、そもそもADRの定義につきましては、これは定訳があるわけではございませんし、また、その意味する範囲も一義的には定まっていないということでございますので、その次の○にございますように、①として、ADRの外延をどのように捉えて法制を整備することが適当か、2番目として、先ほど申し上げた問題意識を仮に基本的事項、一般的事項、特例的事項というように呼びますと、それについて、それぞれ大枠としてどのような範囲のADRを適用対象とすることが適当かという問題意識になるわけでございまして、以下、整理をしていくということでございます。
 4ページですけれども、具体的な論点としまして、基本的な法制におけるADRの範囲をどう考えるのかという問題でございます。以下、これを含めすべてに共通する事項として、法制の整備を前提にして考えているわけですが、法律上これがどう表現されるかということにつきましては、これまた法技術上いろいろ難しい問題がございますので、ここでのADRの範囲というものも、必ずしもそのままADRの定義となるかどうかというのはまた別問題でございますが、検討の前提としてADRの範囲をどう考えるかということで御理解いただきたいと思います。
 この論点1-1にある定義につきましては、基本的に2巡目で議論した範囲を踏襲いたしております。
 若干、今回整理をいたしましたのは、枠囲いの中の「なお」書きでございまして、第2巡目の議論におきましては、議論の冒頭であったということもございまして、かなり幅広くADRの範囲を考えていたわけでございますが、基本理念も含めまして、2巡目の議論を一通り終えました結果、やはり行政処分に係る紛争につきましては、異なる扱いをした方がいいのではないか。例えば当事者の主体性の尊重と言っても、なかなかそれがストレートに結び付かないのではないかという問題もございますので、これについては対象から外して考えてはどうかということでございます。
 本日はこの資料の他に参考資料をお配りしてございますが、この資料の2ページ目に「第三者的な行政機関による紛争解決手続の類型」がございまして、いわゆる行政型ADRについて整理いたしておりますが、今申し上げた行政処分に関わるものは、この左上の四角囲いの中にございます。その下の行政処分以外のものにつきましては、これは対象として考えるわけでございますが、その上のものについては、事柄の性格上、扱いを異にするのではないかという問題意識でございます。5ページにまいりまして、上の方に手続の分類を掲げてございます。これも2巡目の議論の冒頭におきましては、先ほどの参考資料の次のページになりますけれども、かなりいろいろな事態を想定してきめ細かな分類をしたわけでございますが、2巡目の議論を一通りしてみた結果、これほど細分化する必要はないのではないか。特に調停・あっせんにつきましては、これを特に別分類とする必要はないのではないか、あるいは裁定についても、①②と分ける必要はないのではないかというような問題意識で整理いたしております。
 それから、6ページにまいりまして、それぞれの事項についての適用範囲の問題でございますけれども、①として、基本的事項は、基本的にはすべてのADR及び相談手続を適用範囲とする。ただ、先ほど申しましたような行政処分に関わるようなもの、これは少し性格が異なるではないかということでございます。
 それから、②として、一般的事項につきましては、原則としては、民間部門が提供するADR及び相談手続を適用範囲とする、逆に申し上げますと、個別法令に別段の定めがあるようなものは除くということでございますけれども、更にその中で必要に応じて規定ごとに適用対象の絞り込みを検討すればいいのではないかということでございます。
 ③で、特例的事項につきましては、民間部門が提供するADR及び相談手続について規定ごとに適用範囲を検討することでいいのではないかということでございます。
 なお「趣旨」のなお書きのところにございますように、特例的事項につきましては、行政型ADRについても同様の規定の整備ということがケースによっては考えられるわけでございますが、これについては、行政型ADRを規定する個別法令の規定の見直しも必要に応じて検討されることになるという形で整理をいたしております。
 以上、基本的な法制の枠組みについての御説明でございました。

○ 青山座長 ありがとうございました。この「検討事項2-1」は、今の御説明にありましたように、基本的な法制の枠組みについて御議論いただきたいということでございまして、論点は、まずADRの範囲、それからもう一つはADRに盛り込むべき事項の性格付けと言いますか、それがどのように適用されるかという適用範囲ということで、大きく分けてこの2つの論点でございますが、これについて御意見を賜りたいと思います。どなたからでも結構でございます。

○ 髙木委員 1ページの基本的考え方ですが、②と④が、このままパブリック・コメントに出すとどう違うのかというのが必ずしも理解されるかどうか分からないのではないかと疑問に思いました。②の方は機関や担い手等が遵守すべきルールと書いてあるのですが、「等」と入っているで、もしここで広がってしまうと、④の方の手続ルールと間違えてしまうのかなと思ったので、そこを書き分けていただいた方がいいのではないかと思っています。
 それからもう一つは、6ページの各事項の適用範囲の問題で、②のところに必要に応じて規定ごとに適用対象の絞り込みを検討するということと、③で規定ごとに適用範囲を検討するということは、これはどのように使い分けてあるかということを、趣旨の最後のなお書きの文章もひっくるめて、もうちょっと説明していただけるとありがたいと思います。
 どう違って表現されているのでしょうか。「必要に応じて、行政型ADRを規定する個別法令の規定の見直しも検討されることになると思われる」というのは、併せて一度にやるという趣旨でしょうか。

○ 小林参事官 まず前半の方でございますが、書きぶりは御趣旨を踏まえて、工夫できるところは工夫してみたいと思いますが、いずれにしても、④につきましては、後ほどかなり詳細なものが出てまいりますので、そこまで併せて読んでいただければ御理解いただけると考えております。
 それから、6ページの方の②と③の書きぶりでございますが、②は基本的には事柄の性格上、一般的事項と申し上げているもので、原則としてすべての民間部門が提供するADRが対象となるわけでございますけれども、例えばアドホックなものは外れて、業として行うようなケースについてだけ考えるということがございますので、必要に応じて規定ごとに適用対象の絞り込みを検討するという書き方になっております。
 それに対しまして、③につきましては、これは前回もかなりいろいろ御議論がありました、例えば時効中断効でありますとか、あるいは執行力の付与ということでございますので、これはそもそも相当程度対象となる範囲や要件が絞られてくる可能性があるということですので、このような書き方になっているということでございます。

○ 髙木委員 例えば住宅紛争審査会というのは、行政型ADRにはならないと思いますけれども、個別法令がありますね。これなどは、下のなお書きで言うと併せて見直しも検討するというものには入らないと理解してよろしいのですか。

○ 小林参事官 ②について言うと、括弧の中に「個別法令に別段の定めがある場合を除く」となっておりますので、個別法令によって考えていただくということになると思います。

○ 青山座長 今の御質問は、全般に関わることなので、もう少し先の方に行くと具体的に出てくると思いますので、今はよろしゅうございますか。

○ 髙木委員 全般の方は言葉の表現をちょっと変えてほしいというだけの話で、「調停・あっせん手続に関する一般的な手続ルール」と書いてあるところの前に、例えば「利用者にも適用される」ということにすると、少しはわかりやすいのかなと思いますし、②の方から「等」を除くというようなことで済むかもしれませんけれども、それなりの工夫があればいいというだけの話です。

○ 原委員 2点あります。4ページの論点1-1で、①②③の要素を満たすものがADRということになると思いますが、③の書き方についての考え方の整理ですけれども、全国消費者団体連絡会の方で「私たちの考えるADRについて」ということで整理した文章の中で、これからのADRについては、両当事者が中立的な第三者と一緒に話し合うことにより主体的に紛争の解決を見つけていく方法、中立的な第三者は両当事者の主張を整理・促進する役割を果たすということにしたいということで、以前も提案を申し上げています。
 ところがこの③の書き方だと、最初に「判断の提示による紛争の終局的な解決を図ること」というのが先に来て、「又は」ということで、後ろに「その他の当事者の働きかけにより当事者間の合意形成の促進を図ることを目的として」と書いてあります。この「合意形成の促進」というところに私たちが求めるADRのニュアンスは入っていると思うのですが、私としてはこの③の書きぶりを逆にして「又はのところの前と後ろの文章を前後させていただきたいと考えています。
 というのは、これからADRを考えていくときに、全体の前置きとしては、国としてこのADRをどう考えていくかいうことで整理されているような感じがしますが、市民の側、消費者の側がもっと市民主権、消費者主権の中でこのADRを捉えていきたい、自分たち自身が主体的に解決をするというスタンスでADRを捉えたいということがありますので、そういう意味ではこの③のところの、「又は」の前後を差し替えていただけないだろうかというのが1点です。
 2点目は、5ページにあります論点1-2ですが、ここで「相談手続」と「苦情処理手続」というものをまとめて括弧の中で、「以下単に相談手続という」となさって、これがずっと後段も「相談手続」という言葉で整理されているわけですけれども、実際に消費者相談の場面では、「相談」と「苦情処理」の言葉は区別して使っています。
 「相談」という言葉は、相談や問い合わせということでグルーピングされる言葉になりますが、「苦情処理」という言い方は、これが一番適当かどうかというのはまだ議論があるところですけれども、相手方の責任を求めて、どういう解決をするのかということの結論、回答をもらう、結果をもらう、それを責任を持って伝えるというところがあって、定義というほどではないですけれども、そういうことがあります。金融問題トラブル連絡協議会でもたしかにそのように位置付けていたと思いますけれども、相談と苦情処理とを一遍に「相談手続」でくくっていいかどうかというところは、もうちょっと検討が要るかと思います。
 また、改めて提案させていただきたいと思いますけれども、補足的な意見として出させておいていただきたいと思います。

○ 青山座長 4ページの「判断の提示による紛争の終局的な解決を図ること」というのは、仲裁を念頭においているわけです。後は調停・あっせんというものですから、このようになっているだけのことでございます。
 他にどうぞ。

○ 龍井委員 後ほどADRの位置付けのところで出てくるので、後を読めばわかると言われればそれまでなのですが、ここで最初に4点が基本的事項、一般的事項等々で整理されているのですが、確かに冒頭に御説明があったように、こういう問題点があるから機能していないという評価としては、今までの議論の経過ではそうなっていますが、果たしてこの4つを羅列的に並べて問題の中身が明らかになるかなというと、必ずしもそうではないのではないかという感じがしています。
 というのは、ADRの性格付けは出てくるのですけれでも、法律そのものの性格付けはどうか。ここでは必要性ということで要因が挙げられて、いきなり各論に落とし込まれていくわけですけれども、ここで何回も議論してきましたように、当然これは①と②では矛盾する面も若干出てくるわけでして、少なくとも法律そのものが、特にパブリック・コメントを意識した場合に、そもそもADRとは何であって、どういう基準を満たすべきであってという方向の基本的な議論があってもいいのではないか。
 それから、今、原委員も指摘されたような自主解決、自立的解決を促すための、この中の検討会の言い方ではADRの促進法的なものを全面に出して、ただし、こういう条件を付ける場合、執行力などは一番典型ですが、こういう要件も満たさなくちゃいけないよというような方向が、やはり私どもとしては、自主的解決を促していくということの入口ですから、それが全面に立った法律の性格付けのようなものが何かあってもいいのかなと思います。
 そこでは多分、全面展開はされないで、最後は各論にいかなければ抽象的に言ってもしようがないわけですけれども、パブリック・コメントで意見を聴取しようとする場合は、そういうものが前面に出た方が我々の今までの議論の経過から見ても、聞きたい意見が聞けるかなと思うのです。

○ 廣田委員 今の龍井委員の意見に私も賛成です。冒頭に、最も一番大事なことをきちっと書いて、それから何が基本かという幾つかの幹から出てくる大きな枝を書くという方法がいいのではないかと思います。それが1点。
 それから、1ページの④ですが、調停・あっせん手続に関する一般的な手続ルールを定める法制の整備、これは後で具体的な内容が出てきてからのことだと思いますけれども、これは原則としては、必要ではないのではないか。必要最小限度でいいのではないかと思っております。
 それから4ページでは、行政処分に関する紛争は適用対象にしないということですが、実は市場開放問題苦情処理体制(OTO)であるとか、政府調達苦情検討委員会というものがありまして、これは処分に対してなされているかどうかということでは限界ぎりぎりのところだと思いますが、改善措置を採ったり、誤解の解消をするとか、政府調達協定等に定める措置に違反している場合には是正措置の提案を行うというようなADRがあるのです。現実にそういうものがあるし、もう一つ、将来をにらんだところでは、行政処分に対しても一定のADRが必要になってくる、これは将来の話かもしれないですが、そういうものもできるかもしれない。さらにもう一つ、行政訴訟に対する考え方も、行政訴訟というのは本来民事訴訟に近いものだ、あるいは同じだという意見を持っている人もいるのです。そうだとすれば、ここであえて行政処分を外すということを書く必要があるかどうかという問題があります。私はこれは書かなくてもいいのではないかと思っております。それが1つです。
 もう一つは、先ほど原委員のおっしゃったことに全く賛成ですが、だとすれば、5ページの上の②の調整型手続の「i)調停・あっせん」のところに、「和解形成を促進するために判断の提示その他の働きかけを行う手続」ということのほかに、先ほど原委員から御指摘がありましたとおり、「合意形成の促進」という言葉を加えたいということです。ここに入っていないと、先ほど原委員がおっしゃった趣旨は生きてこないと思います。

○ 青山座長 今おっしゃったのは、どこに加えるということですか。「和解形成を促進する」というところの前ですか。

○ 廣田委員 「和解形成を促進するための合意形成の促進、また、判断の提示その他の働きかけ」ということです。その他については基本的にこの事務局案で私は賛成いたします。

○ 青山座長 わかりました。それに対する別の意見もお聞きします。どうぞ横尾委員。

○ 横尾委員 重複する意見ですので、確認だけいたしますと、行政処分に関わる紛争を外すということについては考え直していただきたいということです。
 それから、原委員から最初にありました御意見には、私も全く同感でございまして、その意見は同じだということを申し上げます。

○ 三木委員 言葉だけの問題かと思いますが、5ページの「第三者を『主宰者』と総称する」というところですが、この「主宰者」というと、どうしても調停人やあっせん人が手続をリードしていくというイメージが強くて、この言葉がそのまま法律用語になるところまで想定しているわけではないと思いますが、しかし、パブリック・コメント等でこのような言葉が広く使われますと、なかなか後でその言葉を変えることが難しくなるかもしれないということを危惧いたします。
 例えば英語の表現等を見ましても、手続を主宰するというニュアンスは、私が知る限り使われる例はあまりないようでして、例えばあっせん人や調停人を総称して「ニュートラル」という言い方をしますが、それは4ページにあります論点1-1の3つの要素のうちの①や②を意味する表現だろうと思います。すなわち、第三者、両当事者の間に介在する、しかも、一方の代理人ではなくて、両方から中立的な地位にあるという、①と②がまさに言おうとしているところを的確に表している言葉だろうと思います。
 ところが、「主宰者」という言葉を使うと、せっかく論点1-1で適切に整理されておられる要素を超えたニュアンスが入ってくることを危惧いたしますので、熟した言葉ではありませんが、例えば仲に立つということで「仲立人」という言葉とか、もっと適切な表現があろうかと思いますけれども、工夫の余地があるのではないかと考えます。
 もう一点、これは既に原委員や廣田委員や、あるいは横尾委員がおっしゃったことと同じでありますが、論点1-1の③で「第三者が、判断の提示による紛争の終局的な解決を図ること」、これは主として仲裁をイメージしているのだろうと思います。それから「解決案や評価の提示」というのは、調停案やあっせん案を提示する形での調停やあっせんが主としてイメージされていると思います。
 それ以外に、それ以外と言うよりも、よりADRでは中心にあるべき調停・あっせんのイメージとして、当事者が主体的に紛争解決の話し合いを行う、それを調停人・あっせん人が側面から援助するという形があろうかと思います。
 したがいまして、例示を挙げるのは結構だと思いますが、私は、第1の判断の提示による紛争の終局的な解決を図ること、第2は、解決案や評価の提示によって合意形成の促進をすること、第3として、当事者間の合意形成の努力を援助するということを3つ挙げて、それを例示として、更にそれを含むその他の手続というような形でまとめるべきかと思います。
 今申し上げたのは、その順番で書けという意味ではなくて、3つの要素を、順番はいろいろ御意見があると思いますけれども、例示すべきではないかという意見です。
 以上です。

○ 青山座長 他にいかがでしょうか。

○ 綿引委員 事務局の提案に私は全面的に賛成です。多分、この行政処分に係る紛争を外すという部分は、私が大分申し上げたところを入れていただいたのだと思いますが、2巡目のときにも申し上げましたけれども、やはり行政処分の紛争解決というのは、通常の民事事件とは違う部分があるかと思うので、ここは外しておくのが、このADR法の基本的な性格を明らかにする意味でもよろしいのではないかと思います。
 先ほど反対の意見がありましたので、私はこの部分に賛成だという意見を申し上げておきたいと思います。

○ 青山座長 他にいかかでしょうか。

○ 三木委員 ④につきましては、廣田委員から否定的な御意見がありましたが、これは当該問題を議論するときに、その反対意見を述べたいと思います。

○ 青山座長 他によろしゅうございますか。よろしければ、今まで伺った意見を私なりにこのように理解しているということを申し上げたいと思いますが。
 パブリック・コメントは論点を中心に出すわけでございますので、論点1-1、1-2、論点2が中心になって、ほかのところはそれを説明するという形になるだろうと思っています。説明の部分は、今おっしゃったようなところにいろいろ付加することができると思いますが、論点の方を中心にして、今の意見をとりまとめさせていただきます。論点1-1については、①②については特に御異論はなかったと思いますが、③については、こういう2つの例示、特に最初に仲裁のことを出してくることについては、もうちょっと別の考え方があるではないか、例示として3つ出すとか、順序を変えるということは考えられないかという御意見を伺いました。
 なお以下の、行政処分に関する紛争をここでは外すということが適当でないかと書きましたが、これに賛成する意見と、それから、これを外すということは、何も書かないということだろうと思いますが、ぼやかしておくことはどうかという2つの意見がありました。
 事務局の今までの御意見をとりまとめた感じですと、先ほどの図でも示しましたけれども、行政庁がやる行政型ADRの中には、非常に職権主義的なものもあるし、それから普通の民間でやっても一向に構わないようなADRとが混在しておりまして、行政処分の方に関しては、このADRの法制の中に形だけ取り込んでも、適用除外のものばかり出てくるのではないだろうかということから、こういう考え方が出てきているわけですが、それでもいいからなお以下を取ってしまえと言っておられるのだろうと思います。
 この点はここで結論を出すには至りませんので、今日いただいた御意見を更に事務局の方で検討した上で、7月14日にもう一度案をお示しして、また、御意見を伺いたいと思います。これはほかの点もそうです。
 それから、5ページ目の点線で囲ってある点も、これは調停やあっせんについて、このように書いてあるのですが、これについてもう少し説明を加えるということもあり得ると思っております。
 論点1-2は、相談手続・苦情処理手続を「以下単に相談手続という」とまとめた方がいいかどうかということについて御意見をいただきましたので、これは今まではこういうものと思って議論してきたものですから、今日初めてそういう区別を伺ったような感じもいたします。

○ 原委員 この点は追加で事務局の方に意見を提出したいと思います。

○ 青山座長 書面でお出しいただければ大変ありがたいと思っております。
 それから、論点2の方は、このように4つの事項が入るということですが、そもそもパブリック・コメントにこれがいきなり出ても非常にわかりにくいと思うのです。基本的事項は全部適用があるとか、一般的事項はこれこれに適用があると言ってもわからないと思います。これはひょっとしたら順序を逆にして、基本的事項、一般的事項、特例的事項を検討して、内容がわかってから、それではその適用範囲はどうかと考える方がいいのかもしれないと私自身は思っています。
 いずれにしても、内容を議論していないうちに、その適用範囲だけここで議論していただきたいと思っても、ここでもかなり御意見があるのではないだろうかと思っているところでございます。これは後の方でまたここに戻って議論させていただきたいということでよろしゅうございますでしょうか。

○ 小林参事官 幾つか指摘いただいていますので、補足させていただきたいと思います、
 1つは、まず行政処分の扱いにつきましては、これは全く念のための発言になりますけれども、決して今の行政処分に関わるADRについて改善の必要がないとか、議論すべきでないということを申し上げているわけではなくて、それはむしろ行政不服申立制度のような在り方を検討する場でむしろ検討すべき話ではないかということでございます。OTOについては、むしろ行政処分そのものを争っているとは私どもとしては理解しておりません。
 それから、龍井委員から御指摘のありました、1枚目をもう少し格調高くといいますか、イメージをはっきりとしてはどうかということですが、少なくとも今までの議論においては、これ以上は最初にこういうイメージありきという議論はまだ集約されていないのではないか。むしろ私どもとしてはこういういろいろな要素がある中で、今回パブリック・コメントで御意見をいただくことも含めて、どの部分に重点を置いて考えていくべきかということは、今後の議論ではないかということで考えておりまして、冒頭の整理としては、ここまでが精一杯ではないかと考えております。
 以上でございます。

○ 青山座長 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、続きまして検討事項2-2、基本的事項、国の基本理念などの部分でございますが、これについて事務局から御説明をお願いいたします。

[基本的事項]

○ 小林参事官 2-2の1ページに基本的考え方ということで書いてございますが、まず真ん中の○検討事項にございますように、私的自治というのがやはり基本的事項を考えていく上では大きなキーポイントではないか、そういう意味ではこの考え方を中心にして考えているわけでございます。
 2ページの具体的な論点に移ります。ADRに関する基本理念につきましては、これは基本的に2巡目で御議論いただいたものを踏襲いたしております。若干おさらいになりますが、①は相対交渉の限界の補完、②は、訴訟制度の限界の補完ということで、相対交渉、訴訟制度と並ぶ第3の道としてのADRを位置付けているわけでございます。③の社会における紛争解決機能の基礎的な役割を担うということにつきましては、2巡目の議論のときに入口論議というのがございまして、原案の場合入口という書きぶりをしていたわけですが、それは適当ではなかろうということで基礎的な役割ということで整理をさせていただいております。あとは基本的には2巡目の議論を踏襲いたしております。
 それから3ページにまいりまして、この基本理念を示す際の留意点及び具体的なアプローチにつきましては、やや丸めてはございますけれども、2巡目の議論を踏襲いたしております。おさらいになりますけれども、留意点については、手続等の選択や手続の進行過程における当事者の主体性の尊重、手続解決基準等の多様性の重視、それから信頼性の確保という3点を旨とすべきではないかということです。
 具体的なアプローチとしては、ADRに対する国民の理解の増進、ADRの利便性、実行性、信頼性の向上、それからADRを提供する体制の充実強化という3つのアプローチを考えていくべきではないか、これを有機的に組み合わせるべきではないかという考え方でございます。
 それから、4ページの論点1-3ですが、これは相談の位置付けでございます。相談につきましては、先ほど苦情処理と相談の扱いについて意見がございまして、これは原委員の御意見も伺いながら次回までに整理をしたいと思っておりますが、いずれにしても、相談というものも、ADRの健全な発展を図る上で重要な意義を有するのではないかということで、相談についても念頭に置くものとしてはどうかということでございます。これも2巡目の議論を踏襲したものでございます。
 5ページ目にまいりまして、具体的な国の責務及び国が講ずべき基本的施策でございますが、枠囲いの論点2の中にございますのは、2巡目を踏襲いたしております。その下の「趣旨」のところでございますが、これは国の役割として補完的な役割、あるいは民間を支援していくというような役割を述べるとともに、6ページで②にありますように公的なADRについても、引き続き一定の社会的要請が存在することから、民間のADRとも連携をしつつ、適切な運営に努めていくということで整理をいたしております。
 ③でございますが、ここでは国が財政上の措置等の形で一部のADR機関等に対して直接的に支援することは、機関間の適切な競争を阻害する、あるいはADRの多様化を妨げる恐れがあるので、個別の政策判断として、例えばこういった政策分野では必要だということがあれば別でございますけれども、基本的施策として行うことには問題があるのではないかということでございます。この辺りは基本的には2巡目の議論を踏まえたものでございます。
 ③では、一部のADRに対する直接的な支援については否定的な考え方を述べているわけでございますが、法律扶助の問題につきましては、これは一部ないし直接的というのには当たりませんので、次回御議論いただく中で整理をさせていただきたいということでございまして、ここでそこまで否定しているわけではございません。
 それから論点3の「地方公共団体の責務」、これにつきましては、具体的な内容を今後掘り下げる必要があろうかと思いますが、基本的には2巡目の議論を踏襲いたしております。国に準ずる役割のほか、国民により身近な行政機関としての役割が期待されているという整理でございます。
 論点4でございますが、ADRの役務提供者、これは機関や担い手を含むわけでございますが、これにつきましては、それぞれの立場からADRの発展に寄与するための取組を行っていくことが求められるという考え方に基づいて役割を整理していくものとしてはどうかということでございます。これも2巡目の議論を踏襲いたしております。
 最後に7ページは、「5.国民の役割」でございますが、ここでは「民事に関する紛争については当事者間の合意を基礎として自主的に解決していくべきものであるという基本認識を深めることを求めることについて、どう考えるか」ということとしております。
 ほかのところについては、基本的に「していくものとしてはどうか」という問いかけになっているわけでございますが、ここについては、「どう考えるのか」という形になっております。これは2巡目の議論では両論があったかと記憶いたしております。1つは、そういう国民の意識があって初めてADRが訴訟と並ぶ紛争解決手段として社会に根付き、ADRの自立的な発展が図られていく土壌ができるという意味で積極的に評価する考え方もあろうかと思いますが、他方、国民の役割というものをこういう問題で位置付ける必要があるのかどうか、あるいはADR法にこういうことを書くと、訴訟との関係で訴訟に行かずしてまず自分たちで解決しろというインプリケーションを与える可能性もあるということで、ここはやや控え目に、むしろ御意見を伺いたいという形での表現ぶりになっております。
 以上です。

○ 青山座長 ありがとうございました。この資料は、論点1-1が基本理念、1-2がADRの健全な発展を図るための留意点とその具体的なアプローチ、1-3が相談手続との関係、そこまでがひとかたまりで、論点2、3、4、5は、国の責務、地方公共団体の責務、ADR機関や担い手の責務、それから一番最後に御説明があった国民の役割ということになっております。まず論点1-1、1-2、1-3につきまして、お気づきの点を御指摘いただきたいと思います。勿論、その前に書いてある前書きの部分でも結構でございます。

○ 龍井委員 まず2ページの論点1-1の書きぶりですが、これも整理すればこうなるかなというのはよくわかるわけですけれども、先ほど来強調させていただいているようなADRそのものが自主的に、私的自治という原則で活性化していく方に行くという、まさに基本の場合に、相対交渉の限界、それから訴訟の限界を補完するという、いわば外延的、消極的に読み取れる書きぶりになっているので、ではどうすればいいかというのはなかなか対案が難しいのですけれども、③のことをむしろ逆にして前面に出る、それが結果的にそれなりに補完するのだということにすればどうでしょうか。
 ですから、3ページの③の説明でも、前書きで言われていたような考え方からすれば、位置付けとしてこの説明では不十分かなという気がするので、ここは書きぶりの問題なのか、もうちょっと違う枠組みになる問題なのかわかりませんが、問題の指摘だけさせていただこうと思います。

○ 青山座長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

○ 横尾委員 論点1-3の相談手続ですが、今更のように申し上げると、認識不足と言われるかもしれませんが、相談手続というものが紛争解決に貢献するということは私も理解をしておりますが、かえって紛争を激化させるような面もあるのではないか。つまり、相談手続にも仕分けが必要ではないかと最近思い始めておりまして、何かこの点について、御意見があれがお聞かせいただきたいと思います。
 つまり、一般論として、一方の被害を受けた方が相談をすることによって、必要以上に知恵を授けるということで、かえって解決から遠ざかってしまうことがあるのではないかということを懸念する意見があります。既存のものを念頭に置くわけではありません。

○ 三木委員 論点1-1につきましては、龍井委員がおっしゃったのと同じ印象を私も受けております。
 ADRが相対交渉や訴訟の限界を補完するという面もありますが、他方で、相対交渉やADRの限界を訴訟が補完するという面もありますし、あるいは訴訟の限界を相対交渉が補完するという面もありますので、一方が主で一方が従という関係にはないことは明らかだろうと思いますので、この書きぶりですと、どうしてもADRが従というように読まれやすいというところを懸念いたします。

○ 青山座長 わかりました。他にいかがですか。

○ 原委員 2ページの論点1-1の①②のところで、「限界を補完し」というものが頭に出てきていることがADRが従のような印象につながりますので、もっと工夫がほしいという点では龍井委員や三木委員と同意見です。
 それから、横尾委員が論点1-3のところで相談手続の話をされたのですが、確かに現場ではそのようなこともあるのではないかと思いますけれども、ただ、ここの書き方は、「相談手続の健全な発展を図ること」と書かれているので、私としては特段問題がなく、この「健全な発展を図る」ということに横尾委員の懸念なども入ってくるのではないかと思いますので、これでパブリック・コメントをされても差し支えないのではないかと思います。

○ 青山座長 他にいかがでしょうか。それでは、論点2の国の責務、論点3の地方公共団体の責務、論点4の役務提供者、これはADRの機関と担い手の役割ですが、それから国民の役割という論点2から5までの点について御意見はございますでしょうか。

○ 横尾委員 論点2の国の責務ですけれども、③のところで、6ページになりますが、国が財政上の措置等の形で一部のADR機関を支援することはどうかという書きぶりでございますけれども、例えば一部ではないのですが、ADR機関全般にわたっての税制上の措置を採るということは考えられるのではないかと思います。
 当然ADR機関がNPOということで別途税制上の措置を採ることも考えられますけれども、ADRというものを育成するという考え方に立てば、税制上の措置で対応できるのではないかと思います。
 もう一点、論点5の国民の役割ですが、これは前にも申し上げたのですが、国民の役割というものをどこかに書いておく必要があるのではないかと思います。
 国民の役割につきましては、司法制度改革の3本柱の1つとなっておりますが、司法制度改革審議会の報告書では、国民の司法参加についてあまり触れられておりません。国民の司法参加と言いながら、そのための国の役割が記してあると私は読んでおります。そうではなくて、国民自身が主役であるということを呼びかける必要があると思います。これは改革審の報告書の前文にもそういうことが書いてあるわけでございまして、具体的に国民が動かなければ、ADRというものも機能しないのではないかということを是非書いていただきたいと思います。
 ちなみに、前々回の顧問会議で今井顧問から、高等学校辺りから自治の精神の涵養が必要であるということが指摘されております。与えられた自治の精神は命題矛盾でありますので、是非そういったことを司法教育の充実と併せて、国民の役割というものを認識してもらうという措置を採っていただきたいと思います。

○ 原委員 論点2の国の責務ですけれども、①から⑦まで大変網羅的に書かれていて、私としては全体を読んだときの感想としては2つありました。
 1つは、国の責務でくくられているので、かなり国が責任を持って乗り出してくるということになると、果たしてそれがいいのかどうかというように見える部分と、それから趣旨に書かれているところを見ると、意外に国は何もしないのかもしれないというように、両方に見えてしまうようなところがあって、みんな大事なことではありますけれども、もっとメリハリが効いた形で提案していただかないと、どのようにパブリック・コメントに回答しようかと迷ってしまうというところがあります。
 国の責務と書かれた場合、例えば個人情報保護法などでは、監督官庁のようなものが出てきてしまったわけですけれども、そういうことなのか。何かもうちょっと整理された形で国の責務を提案なさった方がいいのではないかと思います。ここに挙げられているのはみんな大事な項目ではありますけれども。

○ 廣田委員 原委員の御意見とかなり似ていると思いますが、私は①から⑦までは内容的には大変いいと思っています。ただ、表現を具体的にどう書けばいいのかわかりませんが、ともすれば何か規制がかかるのではないかと受け取られないような表現が必要なのではないかと思います。それは論点4も同じです。役務提供者の役割を整理していくということが、規制が行われるような誤解につながるかもしれないので、それは避けたいという気持がいたします。それが1点です。
 それからもう一つは、6ページの③の国の財政上の措置ですが、なるほどこのとおりかもわかりませんが、将来何があるがわからないので、私はわざわざ書く必要はないのではないかと思います。具体的にすることはして、しないことはしなければいいわけで、ここは書く必要がないのではないかという考えを持っております。
 それから、論点5は、先ほど横尾委員がおっしゃったことに私は賛成で、これはなかなか表現が難しいのですけれども、きちんと書いておきたいという気持がします。

○ 青山座長 わかりました。他にいかがでしょうか。

○ 龍井委員 論点2のところは、どこかでおそらく具体的に書くということが法律のスキームの中では出てくると思うのですが、ここのところでは、下の趣旨にございますような抽象的なレベルに留めた方がふさわしいのではないかということだけ申し上げておきます。

○ 山本委員 論点5ですけれども、今、横尾委員、廣田委員からこういうことを書くべきだという御意見がありました。私自身は書く必要があるのかどうかは、やや疑念を持っておりますが、もし書くのだとしても、今の表現は、先ほど事務局の御説明であったように「自主的に解決していくべきもの」と書いてしまうと、いかにも訴えを起こすのは何か悪いことのようなインプリケーションを与えかねない。
 おそらくADR法制に対して反対されるお立場の人たちの最も懸念されるところはそこにあるし、そのこと自体は日本のADRの歴史と言いますか、いろいろな評価はあると思いますが、調停制度が成立してきた経緯等にかんがみると、それなりの理由はあることであると私は思っておりまして、このADR法は勿論、そういうことを考えているわけではないわけですから、そういう誤解を与えかねないような表現は避けていただく必要があると思います。ですから、「自主的に解決していくべきもの」というのは、下の方に「自主的紛争解決の重要性を認識する」というのは、そうかなという感じもしますので、廣田委員もそういう御指摘だったかと思いますけれども、もし書くとしても表現ぶりを工夫していただきたいということです。

○ 三木委員 論点5に関して今まで御発言になった委員の方々の御意見に近いことをしゃべろうと思っておりました。何らかの形で国民の役割ということに関する規定は置いた方がいいのでないかというのは、横尾委員、廣田委員と同意見でございます。ただ、内容ですが、今、山本委員がおっしゃったように、この「当事者の合意を基礎として」という部分は、やや誤解を招くのかなという気がします。
 厳密な言葉づかいは別としまして、私の印象では趣旨としては、当事者が紛争解決の主体であるということに重点を置いた表現にすべきではないかという気がします。合意と言いますと、先ほど山本委員がおっしゃったように裁断型の紛争解決、その典型は訴訟ですけれども、それが二次的な紛争解決であるかのように誤解されると。
 他方、当事者の主体性、紛争解決の主体は当事者であるという点を強調する分には、これは訴訟制度とも矛盾はしないだろうと思います。言うまでもなく我が国の訴訟制度は処分権主義や弁論主義を通じて当事者の主体性というものを尊重しているわけですから、そちらとは矛盾しないということですので、そういう趣旨の表現を御工夫いただければと思っております。

○ 青山座長 他になければ、今までの議論をまとめさせていただきますが、よろしゅうございますか。
 それでは、たくさんの御意見をいただきましたけれども、論点1に関しましては、論点1-1の①②の書きぶりが、相対交渉の限界を補完する、訴訟制度の限界を補完するとありますが、これについてはADRの役割をもっと積極的な形で出すべきである。どちらが主でどちらが従だというようなことではなくて、積極的な役割をここに打ち出した方がいいのではないかという点では、複数の方の御意見がございました。この点は事務局の方で今後工夫させていただきたいと思います。
 論点1-2にいては、特には御意見がございませんでした。論点1-3については、相談手続について若干どうかという御意見もございましたけれどけも、その手続の健全な発展を図ることが望ましいという点では、これはいいのではないかという御意見もあったと思います。
 それから、論点2、3、4、5でございますけれども、国の責務に関する論点2につきましては両様の意見がございまして、もう少し具体的な形を踏み込んで書いた方がいいという考えと、抽象的な表現に留めるべきだという御意見があったと思います。もう少し書き加えるにしても、それが規制になるということではない書きぶりを工夫してはどうかということであったと思います。①から⑦まで並んでいるものについては、大体カバーしているという御意見であったと私は承りました。
 これは論点そのものではなくて、説明の部分でございますけれども、6ページの財政上の措置というところについては、ADRについては、国が税法上の措置を出すということも考えられるという御意見もありました。しかし、この③自体を外してしまえという御意見もあって、これについては事務局の方でどういう形で説明を加えるかということは検討させていただきたいと思います。
 地方公共団体の責務については、特に御意見がございませんでした。論点4についても同じでございます。
 国民の役割という論点5につきましては、表現ぶりについてたくさんの注文が付きました。ここでは「自主的に解決していくべきもの」という言い方がちょっと強過ぎるのではないか。国民の自主性を尊重するということを書くべきだということについては大方の御意見があったと思いますが、国民が主体となって紛争の解決に当たるということをもう少し別の表現で書くべきではないかという御意見に収斂できるのではないかと私は受け止めましたけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。
 事務局の方、何かありますか。

○ 小林参事官 論点2の規制的という御指摘がありましたが、ここには規制の内容はございませんので、そこは御理解いただきたいと思っております。

○ 青山座長 これはもっと書いていったときに、規制にならないようにということでなかったでしょうか。

○ 廣田委員 そのように受け取られないようにということです。

○ 小林参事官 論点5は、書く前提であれば、当然できるだけ抵抗の少ないような内容を工夫したいと思いますが、そもそも書くべきだという御意見と承ってよろしいでしょうか。あるいは私どもはむしろニュートラルにパブリック・コメントでお伺いしようかとも思っていたわけですけれども、いかがでしょうか。

○ 青山座長 横尾委員は強くこれを入れるべきだという意見をおっしゃって、ほかの方もこれを外せということではなくて、ただ、表現がいかにも強いということだったと私は理解していたのですが、どうでしょうか。こういうものはもう要らないという御意見はありますか。

○ 安藤委員 ちょっと趣旨が違うのですが、論点5に関しては、4ページの論点1-3のADRの健全な発展を図る上での相談手続というものを含めてうまくうたえないかなという感じを持っています。

○ 青山座長 具体的な御提言を後日いただくことできますでしょうか。

○ 安藤委員 頭の中の整理もできていないのですが、ADRを地に足の着いたものにするためには、相談手続が一番肝心かなと思っていますので、これがこの論点5のところに何か、考えてみますけれども、それを含めた上の表現ができないかなと思っています。

○ 青山座長 それは論点5の方で論点1-3を含めたような表現をしてほしいという意味ですか。

○ 安藤委員 国民の役割の中にこういったADRの知識をしっかり持って欲しいという形です。

○ 青山座長 わかりました。

○ 山本委員 私自身はこの時点でこれを確定的に書くということを前提にパブリック・コメントを求めるというよりは、書くかどうかということも含めてパブリック・コメントに付した方が、国民の役割ということですから、まさに国民に聞くべきではないかと思います。

○ 青山座長 わかりました。この表現については、どう考えるかということで聞こうということですから、そのような趣旨でよろしゅうございますか。

[一般的事項]

○ 青山座長 それでは、次は検討事項2-3でございます。まず事務局からポイントの説明をお願いしたいと思います。

○ 小林参事官 それでは、一般的事項でございますが、1ページに基本的考え方を整理いたしております。ADRの具体的な手続等については、合意を基本とするということになるわけでありますけれども、先ほど冒頭の説明で申し上げましたように、この手続の公正性、信頼性の確保というのが1つの課題ではないかという問題意識からすると、1ページの中ほどの○にありますように、最低限のルールを法令という形で、あるいはガイドラインという形で国として明らかにする必要があるのでないかという意見も出されているという整理でございます。この一般的事項については、そもそも非常に重視される方と、極力こういうものは少ない方がいいというお立場の方がおられると思いますが、そういう前提で各論を議論していきたいということでございます。
 2ページにまいりまして、具体的な論点でございますが。1つは、先ほど言葉遣いに対する御意見がございましたが、とりあえず本日のところは「主宰者」ということで進めさせていただきたいと思いますが、「主宰者による公正な手続運営の確保義務」ということでございます。
 「手続の全過程を通じて、その公正な運営が確保されるように努めなければならないものとしてはどうか」ということで、これは努力義務ということでございます。2巡目の議論を踏襲いたしておりますが、2巡目の議論におきましては、解決結果が適正なものとなるように努める義務というものをこの後に加えておりましたが、これにつきましては、ADRは非常に多様な形態がありますので、そこまで求めるのはいかがかという御意見が多かったと記憶いたしておりますので、その部分は外してございます。
 3ページですけれども、論点1-2ですが、「ADR機関に関する一般情報の提供義務」でございます。「ADR機関は、ADRを利用しようとする者が適切、円滑にADRを選択できるように、そのADR機関に関する一定の情報を提供するよう努めなければならないものとしてはどうか」ということでございます。これも努力義務ということでございますが、相談機関についても同じような努力義務を課すべきではないかという提案になっております。具体的に提供されるべき情報につきましては、4ページの中ほど上のところに幾つか例示を掲げてございます。
 5ページにまいりますが、論点1-3は「質の高いADRの担い手の確保に関する義務」ということでADR機関、それから主宰者自身について挙げてございます。
 「ADR機関は、ADRの担い手の養成、育成に自主的かつ積極的に努めなければならないものとしてはどうか。」それから、②は、「主宰者は、紛争解決に係る専門的能力の習得に自主的かつ積極的に努めなければならないものとしてはどうか」ということです。ここについては業として、業としてという意味は下の注にございますように、反復継続して行うということで、特に有償・無償は問わないわけでございますが、一回限りの方にこういう義務を課すというのもいかがかということで、ここでは業として行う人を念頭に考えております。
 ③として、相談機関及び相談員についても、①②に準じた努力義務を課すということでどうかということでございます。
 以上が努力義務として位置付けられているものでございますので、そういう意味では特段の法的効果はないということでございます。
 6ページにまいりまして、「サービス提供に関する重要事項の説明義務」でございますけれども、これにつきましては、「ADR機関は、利用希望者からの利用申込みがあったときは、その者に対し、一定のADRに係るサービスの利用条件に関する重要事項を説明しなければならないものとしてはどうか」ということで、相談機関もこれに準ずるということでございます。
 これにつきましては、法律上の義務として課すべきではないかという考え方でございまして、これは2巡目を踏襲いたしております。
 具体的な説明されるべき重要事項については、7ページの上の方に具体例を挙げてございます。必要があればこれも法令上明らかにするということになろうかと思います。
 その場合の法律上の効果ですけれども、私どもの提案としましては、2段目にありますように、行政上の制裁、あるいはサービス提供に関わる契約の無効、無過失責任の発生など、特別の効果を与えるということは考えておりませんが、不法行為に基づく損害賠償責任の立証が容易になるのではないかということでございます。
 それから、若干付言いたしますと、7ページの注10にございますように、本来こういった規定がなくても、契約上の義務として考えられるケースも多々あるわけでございまして、したがって、これを努力義務ということにいたしますと、かえって本来負うべき義務を軽減することになってしまうおそれがあるということもありまして、やはり法律上の義務として置くべきではないかという考え方を取っております。
 それから、注の11にございますように、民法の他の規定、あるいは消費者契約法上、これは消費者のケースでございますけれども、こういったものの適用を排除するものではございません。
 8ページにまいりまして「主宰者の有する一定の事実の開示義務」ということでございます。これは自己の公正性、又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実は全部開示しなければならないということでございます。
 趣旨の中ほどにございますように、こういった考え方につきましても、契約締結に関しての信義則上の説明義務、委任契約、あるいは準委任契約と考えられるわけですが、この善管注意義務から導き出されるというケースも多いかとは思いますけれども、これを明確化するということで、法律上の義務とするという考え方でどうかということでございます。
 具体的な開示されるべき事実ですが、これはなかなか難しくて、9ページの中ほど上のところに幾つか例を挙げてございますが、これを法令上の義務として規定することとなった場合に、具体的な例示を盛り込めるかどうかということについては、他法などを見るとなかなか難しい面があるということを付言いたしております。
 それから、法律上の効果につきましては、10ページの上でございますが、やはり不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任の立証が容易になる可能性があるということでございます。
 なお、利用者がそれを認識した上で主宰者となることに同意するのであれば、主宰者に就任することが妨げられるものではないということでございます。 これに関連しまして、2巡目の議論においては、忌避などの制度についても御検討いただいたわけでございますが、特段設ける必要はないだろうということで、このペーパーにおきましては、省略いたしております。
 論点2-3でありますけれども、秘密の保持義務、守秘義務ということで、「ADRの担い手は、業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないものとしてはどうか」ということでございます。相談もこれに準ずるということであります。
 これにつきましても、趣旨の第2パラグラフにございますように、委任契約あるいは準委任契約における善管注意義務から導き出すことが可能なケースも多いわけでございますが、明確化を図るために規定を置いたということでございます。
 その場合の法律上の効果につきましては、11ページの最後なりますが、債務不履行、場合によっては不法行為ということになると思いますが、それに基づく損害賠償責任の立証が容易になるということでございます。
 以上が一般的事項についてでございます。冒頭申し上げましたように、一般的事項をどう評価するかということについては、いろいろな御意見があろうかと思いますが、仮にこういった内容を検討するとすれば、こういう内容が考えられるのではないかということでございます。
 以上です。

○ 青山座長 ありがとうございました。この検討事項2-3の一般的事項ということの意味は、今御説明がありましたように、要するにADRの公正性、信頼性の確保のためにADR機関やその担い手が遵守すべきルールのようなものがあるとすれば、こういうことかなということで整理してございます。この中には大きく2つに分けられまして、まず、ADR機関あるいは担い手の負うべき一般的義務としまして、公正な手続運営の確保義務、一般的な情報提供義務、それから質の高いADRの担い手を確保する義務という、いずれも訓示努力義務だということでございますが、そういう3つのものが掲げてございます。それから、後半の方になりまして、論点2-1、2-2、2-3は、いずれも具体的な利用者が出てきた場合のADR機関あるいは担い手が負うべき法的義務でありまして、まず第1が重要事項の説明義務、2番目が、公正の疑いが生ずるような事項があるとすればそれを開示する義務、3番目が秘密保持義務というものをここに並べてあるわけでございます。
 前半と後半に分けていただきまして、論点1-1、1-2、1-3の一般的義務についてまず御議論いただきたいと思います。どなたからでもどうぞお願いいたします。

○ 三木委員 内容に入る前に言葉遣いの問題ですが、これがパブリック・コメントの段階でどのように使われるのかにもよりますが、「ADRの担い手」という言葉があります。注2に定義が書いてありまして、「主宰者及びADR機関の役職員」と書いてありまして、これ自体は別に構わないと思いますが、アドホックのADRの場合に、アドホックの仲裁にしても調停にしても、補助者を付けてやるケースがあると思うのです。
 そのときには、主宰者でもないし、機関の役職員でもないので、そういう人たちのことは意図的に外してあるのか、それとも入れるべきだと考えるのか、伺いたいと思います。

○ 山上企画官 1ページの下の注1にございますように、アドホックという場合には、むしろ主宰者であると同時に、その方自身がADR機関にも該当してくるという2つの立場を持っているという形で考えておりました。したがって、意図的に何かを排除するということは考えておりません。その上で、ADR機関の役職員には、ADR機関の立場に立ったアドホックADRの主宰者の履行補助者という方が入ってくるという認識でございます。

○ 三木委員 趣旨としてはわかりましたし、それで結構かと思いますが、個人としてのアドホックのADRの実施者、仲裁人や調停人の補助者を「役職員」というので読むというのは、一読すると理解しにくいところがありますので、何か他の表現が可能であればお願いしたいと思います。

○ 青山座長 他にどうぞ。

○ 廣田委員 私も用語の問題ですが、5ページの論点1-3の②は、「ADRの主宰を業として行うものに限る」となっていますが、この「業として」というのは、下に注が付いていますけれども、これに限定しないでアドホックも入れたい、あるいは入れなければいけないのではないかという感じがします。表現の仕方は非常に難しいと思いますけれども。
 それから、やはり細かい言葉の問題ですが、2ページの論点1-1の枠内で、「公正な運営が確保されるよう」ということは、これは「公平な手続運営」というように「手続」を厳格に入れた方がいいと思います。そうすると、前の方の「手続の全過程を通じて」をどう表現するかという問題がありますが、やはりここは「手続運営」ということをしっかりUNCITRALに合わせて表現したいという気持ちがあります。
 それから、5ページは、これも表現の問題ですが、論点1-3の①の「ADRの担い手の養成」はもとかく、「育成」というのはちょっと強いのかなという感じがします。それから、②の終わりの方に「専門的能力の習得」、この「専門的」は要らないのではないかという感じがしています。
 もう一つ、「習得に自主的かつ積極的」というのは、これはかなり強い表現で、こういう表現になると相当のことをやらなければいけないということになって、これが義務付けになるとどこまでやれるかという問題がありますので、私はむしろ全部まとめて「研鑽」くらいの方が品がよいのではないか、という感じがします。
 それから、4ページの「提供されるべき情報」ですが、これは現実問題として、具体的にどういうものを提供するかというのは、本当は具体的に例示する必要があると思うのですけれども、この中の「主宰者候補者の能力」を情報提供するというのは非常に難しいと思いますので、むしろ客観的にわかる経歴くらいでいいのではないかと思います。
 それから、財政基盤あるいは紛争解決状況というのも、現実問題としてどの程度のことを言わなければいけないかということは、ADR機関としては大変悩ましい問題ですので、もう少し限定的に客観的なものでいいという感じがします。

○ 原委員 今、廣田委員がおっしゃった3ページの論点1-2ですけれども、これは一般情報の提供義務ということで、なぜ一般情報を提供するかというと、適切なADR機関を選択できるようにということなのですけれども、「努めなければならない」という努力義務規定になっていて、提供されるべき情報というものが、これを「努めなければならない」となったときに、この中からピックアップで済むというように思われると、利用者側、消費者側からの選択に資するとは考えられないので、もしこれを「努めなければならない」という努力義務にするのであれば、はっきりした例示という形で、これだけは最低限必要なのだというような形での提案にしておいていただきたいと思います。それでないと、努力義務規定で例示にすぎないとなると、かなりでこぼこが出てきてしまうのではないかと思います。

○ 髙木委員 1ページの基本的考え方の最初の○で、努力義務と法律上の義務との分け方や項目については異論はないのですけれども、義務を説明するのに、ADR機関と利用者との間の契約概念を持ってきているところが引っかかっていまして、ここは何らかの合意があることは間違いないのですけれども、合意があると直ちに契約となってしまうところには異論があるので、契約は外していただけないかと思っています。

○ 青山座長 合意の後に「契約」と入っている、これを外せとおっしゃるわけですか。

○ 髙木委員 はい。それとこの下の注のところも、できれば全部外していただけないかと思っているくらいです。

○ 青山座長 その理由をおっしゃっていただけますか。

○ 髙木委員 前半は努力義務ですからそんなに大して問題にはなりませんけれども、後半はそのまま私法上の契約として、契約上の義務に行くわけですね。私自身は義務にすること自体はやむを得ないし、そのくらいのことは必要だろうと思いますけれども、契約を根拠にする必要がどこにあるのかということです。
 もう一つ、後半の3つの義務がありますが、説明義務と利害関係の情報提供義務と守秘義務とあるのですが、そのうちの最初の説明義務の主体は、機関ではなく主宰者にすべきではなかろうかと思っているのです。
 結局、契約と考えることが何となく変だと思うのは、実態を見て考えると、なかなかそうは捉え難いところがあって、必ずしも当事者の意思が契約であるとは全部は説明できないのではないかと思うのです。
 後で出てきますけれども、調停手続法をつくるかどうかという議論があって、それはどちらかというと、このトーンでは先に延ばすということであるのですが、それにも関係することであるし、ここで契約と決めてしまうことによって、将来の手続法に影響を与えないかというのが私の考え方にあります。
 契約にするとなぜ面倒なのかというと、主宰者側の義務を説明して、主宰者も拘束されるかもしれないけれども、利用者も拘束されるわけです。そうすると、そんなつもりは申立人側にはないのだろうと思うのです。離脱の自由の中で、嫌ならやめたいと思いつつ話をしに来ていて、そこで例えばやめたいというときに、解除の理由などを持ち出していいのかという感じもありますので、主宰者にきちんとしたサービス提供をさせるということだけが目的であれば、法令上の義務で説明できないのかなと思っています。
 先ほど義務の主体を機関ではなく主宰者にすべきだと言ったのは、最初の説明義務ですけれども、なぜそういう説明義務を課したかというと、申立てをして、その機関においてサービスの提供を受けるかどうかという、申立てをするかしないかの選択判断に必要な限りにおいて説明をするという趣旨と思われます。申立てに際してということが書いてありますけれども、現実問題として、申立てをどのようにするかと言うと、申立書を持って窓口に出すと、では誰が説明するのかというと、機関では職員が説明することになるのですが、これに結構過大な負担を与えることになります。
 きちんとした資格がある人が機関に必ず常駐しているわけではありませんし、申立人の中には、紛争の当事者ですから、なかなか普通でない人たちもいらっしゃって、それに応じた説明などができるとは思えないのです。例示として挙がっているものも、よく見ると情報開示義務で済むのではないかと思われるところもあって、職員のレベルでは一般的なものしか出せないのではないでしょうか。
 例えば、第1回期日を開いて、主宰者がきちんとやるときに、説明義務のようなものを、利害関係情報と合わせて出すというようなことの方がいいと思うのです。そうでないと、その任務を尽くしたか尽くさないかというところで紛争がまた発生しますし、紛争が発生しないように重要事項説明書のようなものを取ることも考えられると書いてありますけれども、実務から言うと、本当に職員が窓口でそれを取るだけに専念するようなことでは全く意味がないと思ったものですから、そういうことを考えました。
 もう一つ4ページの、一般的な情報開示義務ですが、提供されるべき情報の内容として組織の運営主体というものが書いてあって、この運営主体というのはどういうところがやっているかというだけのことだと思いますが、民間部門で提供される組織にはNPOも含むし、任意の団体も含むわけですから、組織の責任者のようなものも入れていただけないかと思います。最近、匿名性の社会といいますか、誰がやっているかわからないようなものがとても多いので、それを入れてほしいと思いました。

○ 青山座長 他にございますでしょうか。

○ 三木委員 3点ほど申し上げたいと思います。
 1点目は、今、髙木委員がおっしゃったこととも関係するのですが、1ページの最初の○ですが、私は髙木委員がおっしゃったのとは違って、これは契約と見てもいいのではないかと思っております。先ほど髙木委員は利用者の離脱の自由が制約されるとおっしゃいましたけれども、それは契約の種類や性質いかんによるわけで、ここでは準委任という言葉を使っていますけれども、解除が基本的に自由ですから、あるいは典型契約ではなくて無名契約なのかもしれませんので、契約だから離脱の自由がなくなるということには直結しないだろうと思います。
 ただ、私が気になるのは、仮に契約や合意とした場合に、誰と誰の間のものかということですけれども、ここでは「ADR機関と利用者との間又は担い手と利用者との間」と書いてありますけれども、「又は」の前半と後半との関係にもよりますが、ADR機関と利用者の契約というのは、皆無かどうかは知りませんが、少ないのではないかという気がいたします。基本的には調停人や仲裁人と利用者との契約なのではないかと思います。弁護士会の仲裁などがどういう理解なのか、もしおわかりでしたら廣田委員や髙木委員に教えていただきたいと思いますけれども、あれも別に弁護士会が契約の当事者になっているのではないと私は考えておりました。

○ 髙木委員 私は逆だと思っていました。

○ 三木委員 いずれにしても、機関というものを、このように打ち出していいのかどうかというのは、ちょっと疑問があるということです。
 2点目ですが、廣田委員がおっしゃったことと関係しますが、4ページの「提供されるべき情報」として挙げている中で、財政基盤というのは過大な要求かという気がします。海外のADR機関などを見ても、財政基盤まで公開しているところというのは、私自身はあまり知らないので、努力義務とは言っても、これを公開しろというのはちょっと厳しい、過大な感じがいたします。それから、紛争解決状況というところですが、これは言葉の意味にもよりますが、ADRによっては紛争解決の状況のようなものを秘密にしておくことが売り物だということで、高い秘密性を持つことによって当事者に訴訟や行政型ADRにはないサービスを提供するということもあり得るので、これも例示としては過大なような気もいたします。
 3点目は、5ページの論点1-3ですが、このうち②の主宰者が専門的な能力の習得に努めなければいけないというのは、言葉づかいの細かい点がいいかどうかを別にすればそのとおりだと思いますけれども、①のADR機関が担い手の養成、育成に努めなければならないというのは、やや疑問がないわけではありません。と申しますのは、諸外国の中には、仲裁人や調停人の能力の育成は仲裁人協会や調停人協会が専ら担当し、機関は担当しないというところもございます。その方が望ましいという面がありまして、1つは、機関ごとに育成しますとバラバラになってしまうので、むしろ調停人や仲裁人の能力というのは、全国一律のレベルに保つべきではないかという議論があります。
 また、機関が育成の主体ということになると、どうしても機関寄りの調停人や仲裁人がつくられる可能性があるので、むしろニュートラルに調停人や仲裁人の団体、協会等が育成し、そこから派遣してもらうということがあります。勿論、ADR機関は高い能力を持った者のみを受け入れるべきであって、質の低い者は受け入れてはならないという努力義務はあってもいいかと思いますけれども、自ら育成する義務があるというものを法律に書いていいかどうかはちょっと疑問を持っております。
 以上です。

○ 青山座長 他にいかがでしょうか。

○ 山本委員 1ページの最初の○ですが、私も三木委員の御発言に賛成でして、確かに契約というと非常に強い印象を与えるということはよく理解できて、当事者は必ずしもそういうつもりでないということもよく理解できるのですが、例えば病院で診療を受けるというのも、普通は契約だと思っている人はあまりいないのではないかと思いますけれども、法律的には診療契約というものが成立しているわけです。それと同じような意味で、離脱の問題についても三木委員が言われたのと同じようなことで、契約だから離脱の自由がア・プリオリに制約されるというものではない。それは契約の内容に関わることであろうと思いますので、後段、髙木委員がおっしゃったことはともかくとして、この部分について法的な成立決定としては、契約という理解で私自身はそれほどおかしくはないのではないかという感じがします。
 契約当事者がADR機関か担い手かというのは、これは個々の機関の性質によると思いますけれども、私自身は現状認識としては、仲裁については、かなりの程度三木委員の言われたような性質を持っていることが多いのかもしれないと思いますが、調停的なもの、例えば金融関係のADR機関でありますとか、PLセンターのようなもの、弁護士会の仲裁センターもそうではないかと思いますけれども、それはやはり個々の主宰者と契約しているというよりは、その機関と契約しているということになるのではないかと思いますので、私自身はこの事務局の整理で基本的にはよろしいのではないかという認識を持っております。
 それから、個別の点ですが、5ページの論点1-3のところで、①は、三木委員の御指摘はなるほどそうかと思いました。三木委員が言われたように、養成、育成ということに必ずしも直接に関わらずに、ADRの担い手の能力を十分に確保することに努めるというような努力義務を課せば、確かにそれで足りるのかなと、仲裁のみならず調停などでも、各機関が個別に能力を養成するというよりは、一定の連携を図って、何らかの能力の養成システムを機関間連携でつくることも十分考えられると思いますので、そこはいろいろなやり方があるということがよろしいのではないかという感じがします。
 ②については、廣田委員はもう少し緩やかなものでも構わないのではないかという御意見だったかと思いますが、私自身はこの程度のもの、ADRの質というのは最終的には主宰者によって決まってくる部分が多いわけでありますから、そういう意味からすれば、主宰者の能力向上は非常に重要な点ではなかろうかと思っておりますので、努力義務であり、しかも、主宰を業として行うものを念頭に置いたものであるということにかんがみれば、この事務局提案の程度の努力義務を課してもいいのでないかと思っております。

○ 龍井委員 2ページの論点1-1ですけれども、先ほどの冒頭の御説明で、結果については一応外したという点は、私も結論的にはそれでいいかなと思っているのですが、論点として浮かび上がらせる場合には、この書きぶりであれば、問題なく当たり前に受け止められるのではないかという気がします。
 前回の執行力の議論のときに、いわゆる公序良俗の問題が出されたわけですけれども、勿論、仲裁法でもそうなっていますから、その中で規定されるのはいいのでしょうけれども、結果というものについて、第三者が関与したことによって、書かないから全くフリーというわけではないことは勿論承知はしておりますけれども、なにがしかの、同じ努力義務の方向で、こういうものがあってはまずいよねということが論点としてはあっていいのじゃないかと思います。書きぶりとしては、最後はこういうことで落ち着くのだろうということはわかるわけですけれども、特にパブリック・コメントの段階であれば、議論してきたのがわかる方がいいかなという気がしています。そんなに固執はしていません。
 それから、5ページの論点1-3の②ですけれども、これは質問ですが、紛争解決に関わる専門性というのは、紛争の分野、領域の専門性なのか、解決に関わる専門性なのかというところは、いわばADR主宰者ならではの能力というところに、両方の意味があるとすれば、両方の意味を書いた方がいいのではないかと思います。

○ 青山座長 後の方です。

○ 龍井委員 わかりました。では、結構です。

○ 青山座長 最初の方の御意見は、今まで妥当な結果を招くようにということで議論して、それを外したという経過がありましたね。それを議論の過程がわかるような工夫をしろとおっしゃるわけですね。わかりました。

○ 廣田委員 契約のことですが、髙木委員がおっしゃっているような意味は私も理解できるのですが、契約であるかないかと言われると、やはり契約でなければいけないということではないかと思います。
 ただ、髙木委員がおっしゃったような意味を含めて、そういうこと自体が契約であるということで、何か典型契約に当てはめようと思うと無理があるので、三木委員がおっしゃるように、無名契約であって、しかも機関との契約か主宰者との契約かというのは、ものによって重畳的に出てくるといいますか、あるいは仕分けされて出てくるといいますか、そういうような複雑な内容を一体として契約というということで私はいいのではないかと思っております。

○ 髙木委員 そこが非常に難しいと思うのです。

○ 廣田委員 もう一つ、機関と調停人との間は、また1つの契約という関係も出てくると思います。そういうような複雑な関係のある契約であるということだと思います。

○ 髙木委員 申立人はやはり機関の信用性、信頼性に期待して、機関に来るのだと思うのです。機関との間に何らかの契約が成立し、そこで委任契約のようなものが成立していて、紛争処理をお願いするということが成立するという考え方も当然あるわけですけれども、そうすると申立人と機関との間の契約ということになって、その後で履行補助者として主宰者が出てくるということもあるかもしれないのですが、まず、72条などで言うと、最初から違法になってしまうのです。弁護士会は弁護士ではないわけですから。
 または、別の考え方として、弁護士会は弁護士を紹介して、主宰者との間に成立するという考え方も成り立つ。古典的な仲裁などから類推していくとそうなるのかなと思ったりもしますし、その方がいいのかなということもあるのですけれども、その辺が実態としては、意思がはっきりしないものを決めてしまうことがいいのかなとも思っているのです。それは何からの合意であることは間違いないのですが。将来の宿題に残してはどうかと思います。

○ 青山座長 それでは、論点1-3までは御議論いただいたことにいたしまして、利用者が表れた後の機関及び担い手の個別的な義務としまして、説明義務、それから開示義務、守秘義務という3つの問題が出ているわけですが、これについて御意見を賜りたいと思います。6ページ以下です。
 私の方から1点質問します。7ページの上から3行目に、説明されるべき重要事項として、「サービス提供者の名称」とありますが、これは前のところでは、主宰者の名前は出さないと書いてありますけれども、このサービス提供者の名称というのは、何を考えているのですか。

○ 山上企画官 例えば窓口としては、「何々相談所」というところで受けたかもしれませんが、実際に調停を実施するのは、「ADR機関何々」であるというような場合には、「ADR機関何々」という名称を説明するという趣旨でございます。

○ 青山座長 窓口というのはADR機関そのものですね。そこに行くわけでしょう。それがサービス提供者の名称として、また機関の名前を出すということですか。これはよくわからなかったのですが、個々の担当者の氏名は出さないということですか。4ページに、個々の主宰者候補者の能力・経験ということは書いてありますが、そこでは名前は出さないという前提ですね。

○ 山上企画官 個々の主宰者の氏名までは開示しないという趣旨です。

○ 青山座長 それで、7ページの3行目のサービス提供者というのは両方ありますね。これは定義から見て機関と担い手の両方ですね。

○ 小林参事官 これは先ほど髙木委員がおっしゃったように機関の主体が誰かを明らかにするということです。

○ 髙木委員 ここはほとんど一般的な情報開示義務と重複していると思うのです。ここに書かれているサービス提供者の名称というのは、多分、機関の名前だと思ったのです。提供されるサービスの内容というのは、あっせん、調停、仲裁などの3種類くらいあってどれを選ぶのかということを言うのだと思います。
 それから、お金をどう払うか、手続進行や主宰者選任に関する規則等というのも、これは機関にある規則をそのまま説明することになるのですけれども、民事訴訟を全部説明しなければいけないというような話になるのかなという感じもするし、あるいは規則集を渡して、判子を取るというようなイメージにしかならないのですけれども、それであればあまり意味がないような気もするし、最初に主宰者にきちんと説明させるということの方がいいのかなと思ったのです。
 それでやはり努力義務とすると、下に注10が書いてるように、法律効果も軽減することになるから、法律上の義務にしたというのはわかるのですけれども、注11にいろいろと排除するものではないと書いてあって、では、ここに書いてあることは、執行拒絶事由も排除されないという意味で書いてあるのだと思いますから、その程度のことで執行拒絶事由になってしまうというのは、実務的にも耐え難いところがあるなと思います。機関の義務とするのは、ちょっとどうかなと思っています。

○ 青山座長 今の説明はちょっと理解できなかったところがありますが、執行拒絶事由と言われたのはどこですか。

○ 髙木委員 注11に「意思表示の取消しに関する規定等の適用を排除するものではない」と書いてあったので、それと同じように執行拒絶事由も排除されないということになるのかなということです。ここで説明しなければ、執行拒絶事由になるということですね。

○ 小林参事官 それはまさにいろいろ議論がありましたから。

○ 髙木委員 そこもちょっときついかなと思ったのです。つまり、誰の義務と構成するかというところは、こういう義務を課すとしたら、主宰者にしていただきたいなと思っています。

○ 青山座長 わかりました。

○ 三木委員 先ほどの座長の御質問に対する事務局の答えを確認したいのですけれども、4ページの一般的な情報提供義務のところに書いてあります主宰者の能力や経験というところでは、主宰者の個人名は出さないという趣旨だとお答えになったような気がします。私はそのことの是非についてはいろいろな御意見があるでしょうけれども、このペーパーの趣旨は、経験や能力を出す以上は、個人は特定しないと出せないので、当然主宰者候補者の個人の特定と同時にこういう情報を出すという趣旨かと理解しておりましたので、その点を確認したいと思います。
 併せて、仮にそこでは個人名を出さないとした場合に、次に、特定の利用者が現れた後の重要事項の説明ですが、そこでは主宰者個人の名前などの情報を出すということを想定しておられるのかどうか。つまり、特定の利用者が現れたと後と前との間で、何か変わってくるのかどうかという点を御説明いただきたいと思います。

○ 小林参事官 まず大前提として、座長から先ほどお話がありましたように、趣旨以下の説明については、必ずしも定見があるわけではなくて、できるだけわかりやすくという趣旨で書いているので、そうでなければいけないというつもりは全くありませんが、まず前段の方について言えば、勿論、個人名を出すという考え方もあろうかと思いますけれども、これはプライバシーの問題その他、いろいろ配慮する要素はあると思いますので、せめて名前は特定しないにせよ、どういう人たちが実際の業務に当たるのかということについては、できるだけ明らかにしてもらった方がいいのではないかということでありまして、ストレートに名前を出すことを当然の前提として考えていたわけではありません。ただ、御意見はいろいろあると思いますけれども、この資料の前提としてはそこまで考えていたわけではありません。

○ 山上企画官 サービス提供者の名称については、契約の主体がADR機関なのか主宰者なのかということにも勿論拠るわけですが、どちらかと言えば、ここで念頭に置いておりますのはADR機関側ですが、主宰者が契約当事者ということであれば、この場合には、その利用者との間では、主宰者の名称を重要事項として説明するということになってまいります。ただ、万人に対して、例えばインターネットなどで網羅的にその機関において調停人などとなるであろう主宰者の方の名前を開示をするというのと、ここにおける当事者との間のみで主宰者を特定するという目的で説明をするというのは、自から目的が違うのではないかということで掲げております。

○ 青山座長 それでよろしゅうございますか。

○ 三木委員 後者の方の特定の利用者が現れた場合には、主宰者が契約当事者となった場合は開示するということでしたが、機関が契約当事者である場合にはどういう御説明でしたか。

○ 山上企画官 その場合はADR機関ということになってまいりましょうが、ただ、例えばADR機関が契約当事者である場合には、ADR機関の名称だけでなければならないかとか、そういったことについては、むしろパブリック・コメント等で御意見を賜った方が、場合によってはよろしいのかなと考えます。

○ 三木委員 先ほどの座長の御質問と重複しますけれども、7ページのサービス提供者というのは、これは主宰者の意味ではないということですね。説明されるべき重要事項として、「サービス提供者の名称」というのが具体的に挙がっていますけれども、これは主宰者の意味ではないということですね。

○ 山上企画官 そういう場合もあり得ると申し上げました。契約当事者が主宰者である場合には、サービス提供者は主宰者になります。

○ 三木委員 「説明されるべき重要事項」の例示として挙がっているのは、契約の内容いかんによっては例示になったりならなかったりするという趣旨の例示ですか。

○ 山上企画官 サービス提供者というのは、契約関係がADR機関と利用者との間の契約における場合はADR機関となり、主宰者と利用者、それからADR機関と利用者という2つの契約が並列するような場合にはその両方になるということを申し上げたつもりです。

○ 三木委員 契約の当事者が誰であるかと、サービス提供者が誰であるかは必ずしも一致しないという理解ですけれども、事務局の方はそれは一致するという理解でお作りになっているわけですね。

○ 髙木委員 お尋ねしたいのですけれども、例えば機関が契約当事者になって説明するというときには、申立人の方は最初の段階で説明できますけれども、相手方になる人がいますね。その人に対する説明というのは、いつ、どの時期に説明することを想定しておられるのでしょうか。
 例えば、申立てが出ますと、相手方に期日を決めて書類を送りますね。その相手方がその機関に出てきて、最初から調停合意がないという場合を想定しているのですけれども、その場合は、どの段階で、誰がどのように説明するということを期待しておられるのでしょうか。

○ 山上企画官 必ずしもその場面を想定しているようには書いてございませんが、その場合には、他方の当事者がそのADR機関において、要請に応じて紛争解決を試みようということを回答してきて、そのADR機関での調停やあっせんを両者が合意して開始しましょうという時点で、もう一方の当事者に対しても、同じような形での説明がなされるべきであると考えております。

○ 青山座長 具体的には随分違うと思いますが、とにかく相手方からこういう申立てがありましたということを電話で連絡する。そのときも説明はするだろうし、実際に来ていただいたときには、もっと詳しく説明するだろうし、その説明をする人がADR機関の職員である場合もありますし、主宰者が説明する場合もあるだろうし、それはいろいろな場合があるので、それぞれを細かくは書き分けられないということは御理解いただきたいと思います。

○ 髙木委員 それはわかっているつもりです。

○ 廣田委員 サービス提供者の名称というのは、例えば弁護士会であれば、第一東京弁護士会仲裁センターという程度で足りるかどうかという問題だと思いますが、私はとりあえず重要事項としてはその程度で、最初の段階ではいいのかなという感じがあるのですが、論点2-1だとすれば、これは義務になりますので、これとこれというように具体的に明示したいと思っています。それが1点です。
 もう一つは、論点2-2です。「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない」というのは、どこまで開示するのかというのが非常に難しくて、例えば弁護士倫理などよりは多分広いのではないかと思います。
 例えば大きな事務所の場合で、自分はこの会社とは関係がないけれども、この事務所の誰かが受任したことがありますということまで開示するかどうかという細かいことまで言い出すときりがないので、そういうことから言うと、本当はマニュアルが欲しいところですが、そのマニュアルをつくろうと思えばまた大変な作業になります。これは確か新仲裁法にも同じ規定がありますが、そこにもマニュアルも何も書いていないので、この程度で後は機関の常識に任せるということで、大体クリアーできると思います。表現としては、抽象的な表現でやむを得ないと考えております。
 それから、論点2-3、10ページの①ですが、囲みの中に担い手とありますが、守秘義務に関して大変難しい問題は、事務局員まで含むかどうかということは検討に値する問題ではないかと思います。

○ 青山座長 今の御意見は外せという意味ですか。これは入っているのですね。

○ 小林参事官 これは全部入れているという趣旨です。

○ 青山座長 定義上、担い手には入っていますね。

○ 廣田委員 注21のところで、「履行補助者とされるケース」とありますが、履行補助者の中に、これは当然に事務局も入っているという趣旨ですか。

○ 青山座長 1ページに定義がありまして、担い手という言葉の中には、それが入っているという定義なのです。

○ 廣田委員 ごめんなさい。それは見落としていました。

○ 青山座長 1ページの注2です。

○ 廣田委員 これは機関の役職員ですね。職員という意味で、役職というのは、委員会の委員及び事務職員もということですか。

○ 青山座長 そうですね。

○ 廣田委員 そういう意味ですね。わかりました。その辺は確認です。
 もう一つは、守秘義務に関して言えば、私は例外を設けたい。まるっきり例外がないというのはやりにくいので、考えられるのは当事者の同意がある場合はいいという例外はほしいのです。特に研究目的、例えば法科大学院でADRをやるようなこともあると思いますが、そういうときに同意があればいいということにしていただかないと、できなくなるというおそれがあります。
 もう一点は、時効中断のためには、最小限度のことは必要ではないか。もし時効中断を設ければ、どういう設け方をするにしても、何月何日に申立てがありましたという程度のことは言わなければいけないので、それは守秘義務の例外としたいのです。
 もう一つ、これは私も結論が出ない難題ですが、研究目的や事例を挙げるときに、特定性を排除して、ある程度を守秘義務の例外として設けることができるかどうかというのは、私も正直なところ、今日のところでは結論を持っていませんけれども、検討に値するのではないかと思います。

○ 青山座長 どうもありがとうございました。原委員どうぞ。

○ 原委員 6ページと10ページの相談機関についての意見です。
 6ページの論点2-1の②で、「相談機関等についても、①に準じた義務を負う」となっていて、「準じた」というところの重みがどれくらいかということがよくわからないのですが、7ページの「その他」のところに、利用申込み時に一定の重要事項の説明を求める趣旨で、相談機関を対象とする義務を設けると書かれていますが、これが私が冒頭申し上げた相談手続ということでくくられていて、中身に相談と苦情処理の両方が入っている場合は、普通は消費者相談などで使っている相談まで、この7ページに書いてある利用申込み時にかなり厳しい義務規定まで入ることは、一般的な今までのやり方にはなじまないので、どうかなと思っております。
 それから、10ページの論点2-3の②で、「相談の担い手についても、①に準じた守秘義務を設ける」となっていて、これは11ページのところで、保持されるべき事実として、「秘密とされるべきもののすべてとすること」と書かれていて、これが秘密とされるべきもののすべてというのは一体どこで、誰が判断をするのか、どこまでの範囲になるのかということがよくわかりにくいということです。
 これも守秘義務というとかなり厳しくなって、私も先ほど廣田委員が御発言になったのと同じような懸念を持っておりまして、相談のレベルまで守秘義務がかかってくると、先ほど廣田委員から研究目的というお話がありましたけれども、同じような被害が多発しないようにということで、相談事例をいろいろな消費者政策に利用する、活用するということも考えられますし、そういう意味ではプライバシーには勿論配慮しなければいけませんけれども、案件自体は守秘義務をかけずに活用したいということがありますので、やはり本人の同意があれば了解できるとか、もう少しいろいろなやり方を組み合わせておいていただいた方がいいのではないかと思います。
 以上の2点です。

○ 青山座長 わかりました。髙木委員どうぞ。

○ 髙木委員 守秘義務ですけれども、10ページのところで、主宰者も役職員も全部守秘義務を負うという結論はいいのですけれども、この構成の仕方として、守秘義務は主宰者を軸に構成して、その主宰者の守秘義務を担保するために役職員に同じ法定義務を課すという方法を取るべきではないかと思いますけれども、注21には、義務の主体はADR機関となると、これも先ほどの契約から来ているような感じがしていてしようがありませんが、守秘義務というのは個人以外にはあり得ないと思うのです。
 実を言うと、弁護士法人をつくったときに、弁護士法人に弁護士と同じ守秘義務をかけるということをしようとしたのですけれども、法人が業務として職務上知り得た秘密を漏洩するということは想定できないと言われて、弁護士法人には弁護士法23条をの準用しなかったのです。解説もそうなっていますけれども、ですから、この義務の主体がADR機関になるというのはおかしいのではないかと思います。他の法令を調べていただいたのですけれども、みんな個人にかかっていて、法人に守秘義務がかかっているということはなかったように覚えています。

○ 山本委員 今の論点ですが、私もよくわからないのですが、通常は守秘義務を定める規定は、基本的には刑事罰と連動しているのだと思いますが、この規定は刑事罰の問題ではなくて、契約上の責任の根拠となる、先ほど来の議論で言えば無名契約についてのデフォルトルールを定めるにすぎないものでありますので、そうであるとすれは、むしろ契約当事者を主体にする方が、そういう説明には適合的なのかなという感じがします。勿論、刑事罰でも法人処罰の問題もあるのかもしれませんけれども、そういう意味では通常の守秘義務の規定とは性質が相当程度違う規定だと思いますので、従来の規定例に拘束されるものかどうかということは、これは法制的なマターだと思います。 それから、通常の守秘義務の規定は、おそらくすべて「正当な理由のない限り」というようなことが入っているのだろうと思うわけで、先ほどの廣田委員の御指摘はまさにそのとおりだと思います。だから、これも法律にする場合には、「正当な理由がない限り」というような除外事由が当然付くのだろうと思いますし、勿論、裁判所で証人尋問を受けた場合には、証言して守秘義務違反になるということはあり得ないだろうと思いますので、当然そういうものが入ってくるのだろうと思います。
 義務の主体の点については、先ほど来の契約から導く説明でいけば、基本的にはADR機関が負うということが本来であって、先ほど原委員の御指摘でも、相談についても、これはやはり相談機関が義務の主体になるのではないかと思います。契約のないケースですが、相談の個々の担い手あるいは役職員にまで義務付けるかどうか、義務付けた場合の意味については、論点2-1や2-2では、不法行為との一定の関係が指摘されておりますが、ここでの不法行為というのは、いわゆる契約締結上の過失の問題だと思うのです。
 契約はその後に成立するのだけれども、ここでの説明義務や開示義務は契約締結前の行為であるので、債務不履行の問題ではなくて、不法行為の問題として整理されるという議論、それで不法行為が出てくると思うのですが、役職員に直接義務を課すというのは、髙木先生は法定の義務と言われましたが、契約関係がないものに、純粋に不法行為の根拠となるのかどうか知りませんが、そういう義務を課すというのは、私にはちょっとピンと来ない感じがしまして、この場合には、ADR機関に義務を課して、その債務不履行責任を問うということで十分ではないかという印象を持っております。

○ 三木委員 8ページの論点2-2の開示義務ですが、ここに挙がっているような義務は仲裁法にもありますし、UNCITRALの調停モデル法にもあるのですけれども、いずれにしましても、これはかなり個別特定的な、かなり具体的な義務でして、手続との関係がきちんとわかる場合でないと、なかなか置きにくい規定だと私は理解しております。
 そういう意味では、一般的な事項時効として置くことが妥当な規定かどうかは、やや疑問です。具体的に申しますと、②の義務で言いますと、手続の進行中に生じた事実について開示義務を負うというからには、手続の終期がはっきりしていないといけないわけです。つまり、手続の終了後にその事実が発生しても、それはこの義務の対象にならないということですから、手続の終期というものの手掛かりがあるような手続でないとならない。 仲裁の場合には、終期ははっきりしておりますし、調停の場合にも、後に議論されるように、調停手続の規定として終期の規定を置けば、それが手掛かりになりますけれども、ADR一般になますと、終期がはっきりしないADRというのはいろいろあります。
 例えば評価型のADRの場合に、評価がなされた後の和解交渉にADR機関がからむのかからまないのかというのは、手続がよくわからないのがたくさんあるのです。ですから、終期がわからないのに、手続中の義務として定めるというのは、しかも努力義務ではないとなると、これはかなり創設的な義務でして、一般には現在行われている調停やあっせんの場合、こういう義務があるという認識はあまりないと思うのです。そういう意味では、新たに義務が課されるのに近いところがありまして、そういうときに手続一般に終期がはっきり法律で規定が置かれていないものも含めて置いていいのかどうかという気がいたします。
 ①の方にいたしましても、例えば独立性に疑いのある事実という言葉が入っていますが、これは仲裁や調停では確かに必要な事項ですけれども、例えばミニトライアルを考えた場合には、本来の性格として独立性のないものが主宰者に入るということが定義的に想定されている。そういったものは、勿論、これから外れるべきですけれども、そういったことは手続ごとに一個一個かなり個性が決まっておりまして、この種の義務というのは、そういう意味からも手続ごとに定めていくべきものであって、一般義務として定めるのは大変危険であるし、我々が立法する場合に予測がつかない波及効果を懸念しますので、調停手続の義務として、仲裁には既に入っておりますから要らないわけで、調停手続の義務として入れるという分には賛成ですけれども、一般義務としては、かなり問題があると思っております。

○ 青山座長 時間の関係もありますので、ここで中間的なまとめをさせていただきと思います。よろしゅうございますか。

○ 綿引委員 1点だけよろしいでしょうか。従前の議論と今日とでは、議論がちょっと違うと思っていたのですけれども、従前の提案は特段の事情がない限りという留保があったのです。今回、そこがスポッと抜けているので、パブリック・コメントに付すときも、特段の事情や正当な事由という、2巡目で出されたような提案の仕方にしていただきたいと思いました。

○ 青山座長 どうもありがとうございました。それでは、検討事項2-3についていただいた御議論ですが、まず、アドホックについては、きちんとそれもカバーするようにすべきという御意見がございました。
 それから、ここで利用者とADR機関、あるいは主宰者との間の関係を契約関係として捉えるのか、あるいは先ほど髙木委員が言われたように、法令上の義務という形で受けられるのかということについては、賛否両論がありまして、契約上の義務、契約という言葉がどうなのかわかりませんけれども、そういう考え方の方がどちらかというと多数説ではなかったかと思います。
 それでは、誰が当事者になるかということについても、原案は機関が契約の当事者になるという場合を主として考えておりますけれども、むしろ担い手である主宰者が契約の当事者になるという考え方もあるという見解がありました。
 論点1-1については、公正な運営というだけではなくて、手続運営とはっきり書いた方がいいという御意見がございました。
 一般情報の提供義務についても幾つかの御意見をいただきましたが、特に4ページの提供すべき情報につきましては、能力や組織の運営主体や財政基盤、紛争解決状況というような細かなところまでどうだろうか。これが努力義務ということであれば、その中からピックアップされた情報開示では困るので、むしろ最低限を決めて、それだけは一括して情報開示するようなことを考えてはどうかという御意見もいただきました。
 それから、ADRの担い手の確保に関する義務についても、各ADR機関が担い手を養成、育成というところまで書くのはどうだろうか。それはむしろ確保さえすればいいので、育成までは各機関の責任ではないという考え方もあるのではないかという御意見がありました。
 それから、各自が自分の能力アップに努めるための義務については、もっとやわらかな表現で、自己研さん程度でいいという考え方と、ADR機関の信頼性を上げて、担い手の能力にかかっているのだから、このくらいのことをきちんと書くべきだという考え方があったと思います。
 それから、業として行う者に限るというのも、これは一回限りでやる人も当然能力アップしなければいけないということがわかるような書き方をすべきという御意見もございました。
 個別的な義務につきましては、6ページ以下でございますけれども、まず相談機関と、それに準じた義務というのは具体的にどうなのかということについて、特に7ページの一番下のその他のところに、こういう一般的な書き方でいいのか、あまり詳しい義務付けはふさわしくないのではないかという御意見がございました。
 それから、サービス提供者の名称につきましても、事務局の説明と、この検討会に参加している委員の間に幾つかの議論、見解の応酬がございました。
 8ページの論点2-2につきましては、①の「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部」というものが、一般的にはこのような書き方を仲裁法案などでやっているわけですが、これが広過ぎるかどうか。抽象的にはこういうものとして仕方ないにしても、特に弁護士が共同事務所などにいる場合に、同僚の誰かが関係しているということもここに入るかどうかという細かな問題があり得るという御指摘がございました。
 ②については、「ADRの進行中」という言葉について、終期がはっきりしない手続があるので、そういう場合に卒然と「進行中」ということでいいのか、むしろもう少し考えるべきではないだろうかという御指摘があったところです。
 10ページの守秘義務の点についても、幾つかの御意見がございまして、守秘義務の主体が誰かという問題、法人が守秘義務を負うのかどうか自然人なのかという議論、それは両方あるという議論もありましたし、また、守秘義務が一般的にかかってきているようであるけれども、むしろ幾つかの例外があるべきではないか。時効中断の場合や当事者の同意があればいいとか、研究上の必要というような例外的な事項を個別的に書くのか、あるいは正当な事由とか特段の事由というようなことで書くのか、何かそういうことを考えるべきだという御意見がありました。
 11ページの秘密とされるべき事実についても、秘密とされるべきもののすべてとなっているけれども、これについても例外があるのではないかという御意見をいただいたところでございます。よろしゅうございますでしょうか。

○ 小林参事官 個別の御指摘については、それぞれ工夫をしたいと思いますが、特にこの一般法について言えば、何回も申し上げているように、そもそも規定を設けるべきか否かということについて御議論があり得ると思います。ただ、これはADR法をつくっていくと、最初に基本理念があり、最後に特例規定について議論していくわけですが、果たしてそれだけでいいのかという議論は当然出てくるわけで、その場合には基本理念は理念を書いてあるだけだし、特例のところは特例できっちりと要件を押さえているのだから問題はないというのも1つ考え方だと思いますけれども、それだけで足りるのかどうか。そういう一般的なルールは必要ないのかということについての御議論は相当予想されるところでありますし、現にこれまであったということを踏まえて、今回の資料を作成しました。
 そういう観点からすると、今、お伺いした中で、まず相談についてここまで義務を課すのは、むしろ反対であるということ、それから、一定の事実の開示義務については、少なくとも反対という御議論はあったかと思いますが、それ以外の部分について、そもそもこういう規定を設けない方がいいということなのか、あるいは、設ける前提ではあるけれども内容について意見があるという御趣旨なのか、必ずしも截然としないところもあったので、もし何か御意見があれば次回につなげるために是非承っておきたいと思います。

○ 青山座長 御意見を賜りたいと思います。

○ 安藤委員 相談の担い手、これはあくまでも国民が安心して相談できる場所でないといけないわけですね。それに関しては、当然のこととして、守秘義務や重要事項の説明義務は課すべきだと思います。それがなければ安心して相談できないわけですから。

○ 青山座長 ほかの相談以外の点についてはいかがでしょうか。

○ 髙木委員 私も一般的な規定を置くことには賛成です。
 それから、こういう形で義務を2つに分けて、訓示規定等、法律上の義務にすることもいいと思っています。ただ、義務の根拠の説明の仕方がどうかということと、誰が義務の主体になるのかという点について問題があるという指摘をしたいと思います。

○ 青山座長 わかりました。他に一般的事項を法制の中に盛り込むことにについて、そういうことは要らないというお考えがあれば、おっしゃっていただきたいということですが、よろしゅうございますか。私の理解では、それは入れた方がいいということを前提として皆さん御発言いただいたと受け止めていたのですけれども、それでよろしゅうございますか。
 それでは、ここで10分間の休憩を入れたいと思います。

(休  憩)

[調停手続(法)事項]

○ 青山座長 それでは、議事を再開させていただきます。
 休憩前に引き続きまして、検討事項2-4と検討事項2-5を検討させていただきます。
 それでは、資料の説明をお願いいたします。

○ 小林参事官 それでは、検討事項2-4の調停手続(法)事項でございます。
 この内容は、仲裁法に相当するような調停法をつくるべきではないかという議論でございますけれども、1ページの一番最後の○にありますように、大きく3つの考え方が示されているわけでございます。
 ①は、国際ルールとの整合性も踏まえて、調停手続法を制定すべきではないか。②は、そのような法令化をする必要性は低いのでないか、逆に、ADRの多様性を阻害するデメリットがあるのではないかという慎重な考え方、③は、そのような内容の中で、和解による紛争解決の促進に貢献するような内容について、具体的には情報遮断のような問題でございますが、そういったものについては法令化をすべきではないかということでございます。
 これまでの御意見を伺ってきたところ、積極的に①という御意見は少なかったように理解してございますが、これはその作業の必要性自体を否定しているということではなくて、むしろ今回のADRに関する基本的な法制の検討の一貫としてそれを行うということについての御意見であったわけで、必ずしもその必要性を否定したものではないと理解いたしております。
 以上が総論でございます。
 したがって、具体的に取り上げ得るべきテーマについて、それぞれ各論で議論いたしておりますが、まず1つは、調整型手続の過程で得られた情報の利用制限の問題でございます。これにつきましては、これまでの議論はかなり分かれておりますので、それを反映したまとめといたしております。
 そういったルールを設ける必要があるかどうかということについて、①でございますが、その必要がある場合には法律でその旨を規定してしまうというのが一つの考え方でございますが、もう一つはなお書きのところでございますが、先ほど来議論になりましたサービス提供に関する重要事項の説明義務の内容として、こういった調整型手続情報の取扱いに関する事項をきちんと説明することで対応するという案も考えられるのではないかということでございます。
 5ページは、2つ目のテーマとしまして、調停人と仲裁人の兼務の問題でございます。これにつきましても、議論は分かれていたかと思いますので、いわば三論を併記した形になっております。
 ①としましては、そもそもそういう必要があるかないか、なければそれでおしまいになるわけですけれども、仮に必要だとした場合には、②にまいりまして、同じように法律でその旨を直接規定するというやり方と、サービス提供に関する重要事項の説明義務の一環として、そういった移行後の選任に関する事項も説明していただくことで対応するという案も考えられるのではないかということでございます。
 6ページでございますが、その余の点について、調停手続一般法の制定の必要性があるかないかということでございます。私どもの理解では、この場でそれを検討するのはなかなか難しいのではないかと考えておりますが、そういったものについて別途検討する必要があるかないかということについては、むしろパブリック・コメントで御意見を伺った方がいいのではないかということで問題提起となっております。
 以上でございます。

○ 青山座長 私の方から特に御説明することはありませんので、すぐ御議論いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 三木委員 調停手続一般法を置くかどうかについては、パブリック・コメントに委ねるということで結構だと思います。その際に、説明として、UNCITRALでは調停モデル法を置いたということ。諸外国の中でも調停法一般法を置く例が増えてきているということの背景ですけれども、それはこれがないと喫緊の問題として非常に困ったことがあるというわけではなくて、調停を含めたADR一般の活性化ということが立法動機であるということ。すなわち、ここにいらっしゃるような専門家の方々にとっては、調停というのはよくわかりますけれども、一般の方にとってはわからないことが多いので、法律をつくって、こういう手続ですといえる。しかも、法律に根拠がありますということによって、安心して利用していただけるということで、手続の利用促進を図るという目的があるのだということを明らかにしていただきたいと思います。
 今般、司法制度改革審議会もADR一般の活性化ということを謳っておりますけれども、その中でも調停というのは非常に大きな位置を占めると思いますので、私が調停一般法が必要ではないかという趣旨も、主としては、手続がデッドロックに乗り上げた場合の解消という具体的な効果もありますが、むしろ具体的に効果を期待しているというよりも、調停一般の活性化の政策として、調停の一般法をつくることが望ましいと多くの国で考えられているのは最近の潮流であるという背景を御説明いただいて、パブリック・コメントに付していただいて、その上でまだ必要ではないということであれば、勿論、それで結構ですし、意見を聞いていただければと思っております。

○ 青山座長 わかりました。

○ 廣田委員 まず、論点1-1ですが、パブリック・コメントで両論があるということをおっしゃっていただくのは、それはそれで結構ですけれども、私はこれは必要ないと考えております。本音を言うことや、不利なことを言うこと、あるいは自白をすることは、本質的に危険なことですので、本音を言っても自白をしても、後から不利な扱いはしませんから大丈夫ですよ、証拠制限をしますよと言われても、それを聞いてしまえば心証に影響するわけです。ですから、ほかの理由で、あるいはそれに違反してそれを言われてしまうと、そういう制限があるのに相手方がそんなこと言ったじゃないか、自白をしたじゃないかということを、違反を承知で言われてしまうと、それを聞いた裁判官は、それを理由にしないで、あるいは他の証拠で不利な扱いをするということは可能なのです。そうしますと、本音を言ったり自白をしたりして、大丈夫ですよという規定を置くこと自体が無意味であるばかりでなくて、当事者にとってかえって、この規定があるためにはめられてしまうという危険性が出てくるわけです。
 ですから、そういったこともあるのだ、自白をすることは危険だという状態にしておく方がいいので、それでも当事者はあえて調停の席で危険を冒して本音を言ったり自白をしたりすることがあります。そのこと自体、調停で言うことの意味があるわけで、調停を成立させるエネルギーになりますし、また、これが崩れてしまえば、後で撤回されることは、相手方は想像ができるわけです。
 ですから、そういうこと一切合財を含めて、私は裁判官の自由心証でいいと思っています。全体を裁判官に見ていただくという方がいいのではないかと考えていますから、私はここで自由心証主義という訴訟制度の根幹を変えてしまう必要はないのではないかと思っていますから、論点1-1は必要ないと思います。論点1-2についても、私は規定を置く必要はないと考えています。裁判上の和解でもそのようにやっていますし、私どもも調停から仲裁に移行しましょうかという場合に、私でいいのですかということを口頭で聞いています。口頭で聞くことが一番円滑に行くわけで、その程度のことで十分なので、あえて規則として設ける必要はないと考えています。
 したがって、論点2も、この手続規則は、今回の法律に関しては必要ないというのが私の結論です。ですから、両論あるということを言っていただくのは結構ですけれども、結論を言えばそういうことになります。

○ 青山座長 ほかの委員は、いかがでしょうか。

○ 綿引委員 私が論点1-1について反対の意見を持っていることは従前から何度も申し上げているところですので、今日は繰り返しません。今回、パブリック・コメントに付するのでこういう形でよいかという観点から言えば、これはこういう形で付していただいていいかと思います。
 ただ、今、三木委員が言われたように、これが国際的な潮流だということを説明に付加するとするならば、論点1-1の部分は、今、廣田委員が言われたように、自由心証主義、それから民事訴訟法の基本構造とどういう関係を持つものであるというところを、同じく問題提起として出さないといけないのではないかと思っております。
 以上です。

○ 青山座長 どうもありがとうございました。他にいかがでしょうか。

○ 山本委員 私は論点1-1及び1-2について積極的な意見を持っているということは、これまで述べたところでありますので、ここでは繰り返しません。今の綿引委員の御指摘は誠にもっともで、日本の法制上はそういう点が民事訴訟法との調整問題になるということは、御指摘のとおりだと思います。
 ただ、論点1-1などは、フランス法などでは明文で既に民事訴訟法の中に定めが置かれておりますし、アメリカの統一調停法などにもこういう規定が設けられている。おそらくそれらの国々については自由心証主義というものは採用されているのだろう、少なくとも法定証拠主義を採用しているとは承知しておりませんので、基本的には自由心証主義の世界なのだろうと思うわけですが、そういう国でもそこはクリアーされているというな点があるということも併せて、パブリック・コメントに付するのであれば付加していただきたいと思います。

○ 三木委員 論点1-1と1-2の関係ですが、UNCITRALの議論の中で、これが自由心証主義との関係で問題だという国は、コモンローの国、シビルローの国を合わせて長い審理期間があっても一度も出なかったということは是非申し上げておかなければいけません。
 それから、これは日本政府の方としても、日本の民事訴訟法との整合性は検討した上で臨んだわけですけれども、少なくとも部内の検討において現在の法制と抵触するという意見は出なかったことを前提にUNCITRALの会議に私も臨んでおりますし、日本政府もモデル法としてこのような規定を置くこと、この論点1-1、1-2を合わせて置くことには反対していないということは誤解のないように、パブリック・コメントに公平に書いていただきたいと思います。

○ 廣田委員 私は前にも言いましたけれども、日本の調停制度というのは世界標準より大分進んでいるのです。ですから、もしUNCITRALで議論されたとするのだったら、日本の調停制度は極めて進んでいるということも付加してほしいと思います。

○ 原委員 論点1-1も1-2も、趣旨は「必要性を確認するとともに」という表現になっているのですが、これまでの議論、それから今の議論もありますけれども、もう少し背景を盛り込んでいただかないと、なかなかパブリック・コメントの意見も出しにくいと思いますので、もう少し充実をさせていただきたいと思います。

○ 青山座長 わかりました。どうもありがとうございます。
 よろしゅうございますか。結論についての意見が2つに分かれているということは、従来から御存知のとおりです。今日の御意見は、綿引委員がおっしゃったように、これをパブリック・コメントに付すということについて、これでよろしいかという問いかけなのです。それについては皆さん結構であると。ただ、付し方について、もうちょっと背景を書くべきだとか、丁寧に書くべきだということについていろいろな御意見があったということでよろしゅうございますでしょうか。
 それとも、これはもう聞く必要はないという強い意見があれば、表現等を工夫しないといけないのですが、廣田委員も両論あるということは結構であるという言い方ですね。

○ 廣田委員 両論あるということは結構であるけれども、しかし、議論する必要はないというニュアンスが非常に強いということを私としては言いたいです。こういうことを書かれると実に調停はやりにくくなります。日本の調停がなぜ進んでいるかというと、やはり二元論や対立構造からもう一歩進んだ一元論的な思想的なものもありますから、これを議論し出すと大議論になりますけれども、そういう日本の調停制度の特徴というものを踏まえてほしいと思っているので、どうしてもと言われれば付してもいいけれども、私はこういうものを議論に出して言うことも必要ない、実務をやっていればそういうことではないかと理解しています。

○ 青山座長 両論あるとは言いながら、今までの議論もありますのでパブリック・コメントにはこれを出させていただいて、ただ設ける必要があると考えるかどうかという出し方でございますのから、答え方によってはいろいろな意見が出てくるので、そこでまた御議論いただくという形でよろしゅうございますでしょうか。
 どういう形で出すかというのは、7月14日にもう一度御審議いただきますので、事務局としては、今日いただいたような御議論を踏まえてパブリック・コメントに出す原案を考えたいということでよろしゅうございますでしょうか。それでは、そのようにさせていただきまして、引き続き最後の検討事項2-5の説明をお願いいたします。

[特例的事項(弁護士法の特例)]

○ 小林参事官 それでは検討事項2-5の説明をしたいと思います。
 特例的事項ではございますけれども、一般的事項とも関連が深いということで、本日併せて議題とさせていただいたところでございます。
 まず、この問題の所在については、これまでも御議論いただいたところでございますけれども、1ページの3番目にありますように、専門家の活用がADRの1つの特徴と言われている中で、現在、弁護士法72条によれば無償でなければ業として行うことができないという制約がございますので、これについてどう考えていくのかを検討する必要があるということでございます。
 ただ、72条の趣旨そのものは依然として重要なものがあるということも御議論いただいているところでございます。
 2ページはその旨を改めて書いているところでございますので、4ページまで飛ばさせていただきます。「具体的な論点」ですが、まず主宰の問題についてですが、基本的な考え方のところにございますように、主宰につきましては、ADRに関する基本的な法制を整備する際に、72条の適用除外を認める特例を設けることとしてはどうかということでございます。
 具体的な方法につきましては、6ページになりますけれども、「紛争分野又は紛争解決に関する専門的知見を有するものと認められる者は、その者の有する専門的知見を適確に活用し得るものと認められるADRにおいて、弁護士の関与・助言を得て、ADR主宰業務を行うことができるものとしてはどうか」ということでございます。
 主宰につきましては、非常に幅広い専門家の方が関与することが想定されるわけですので、こういった形で特例規定を設けてはどうかということでございます。
 この中で、弁護士の関与・助言ということがございますが、7ページにまいりまして、これをどのような条件で考えるのかということは幾つかの考え方があり得るということでございます。
 1つは、i)にございますように、専門家の手続進行を弁護士が常時チェックするという考え方でして、これは具体的には、パネル方式を取ったときにはパネルに参加されるということになるわけでございます。これがある意味では一番きつい関与の仕方ではないかと思います。
 2番目が、ややその対局にあるわけでございますが、72条の趣旨を損うような状況があれば直ちに是正できるよう、組織管理に弁護士が参画していることを求める考え方でございます。
 3番目としまして、この中間的なものとして、手続の進行過程を通じて、随時適切に、助言が与えられる体制が採られているという考え方でございます。
 ここでは大きく3つに分けておりますが、バリエーションは幾らかございまして、3番目の「随時適切」というものを非常に厳格に考えれば、例えば全件を弁護士がチェックするということも考えられるわけでございまして、そうなると、i)にかなり近くなっていくということでございます。ここは幾つかの考え方があるということを御説明しているわけでございます。
 その下の「対象となるADR」でございますが、それでは、弁護士が何らかの形で関与・助言をしていれば、72条の特例を認めてもいいのかということになりますと、やはり専門家の方を適材適所に配置するということが大前提になるわけでございますので、そういうことがきちんと行えるADR機関かどうかについても確保する必要があるのではないかということを述べております。
 そういった点と、それから弁護士法72条が刑罰法規であるということを考えますと、やはり明確性を担保する必要があるという考え方が出てくるわけでございまして、その場合には、こういう判断能力、あるいは弁護士の関与の仕方についての組織的基礎について、公的に確認する仕組みも検討する必要があるではないかという問題提起でございます。 次の8ページですが、それでは、弁護士の関与・助言を得るもの以外には考えられないかということでございますが、ここでは1つの考え方として、相当程度以上の法的知識を有すると認められる場合には、勿論、専門的知見を適確に活用し得るということが大前提になるわけでございますが、弁護士の関与・助言を得ることなく、主宰業務を行うことができるという考え方もあり得るのではないかという御提案でございます。
 その場合の相当程度以上の法的知識ということにつきましては、やはり8ページ中ほどですが、基本的には既存の公的資格制度によって専門家の範囲を判断するということが必要になるのではないか。そういったきちんとした担保が必要ではないかという考え方を述べてございます。
 9ページにまいりまして、やり方としては以上の2つが考えられるわけですが、いずれにしても、弁護士法72条のコアの部分としては、言葉が適当かどうかわかりませんが、示談屋的なものは排除する必要があるわけでございまして、弁護士法72条の特例を設ける際にも、こういった不適格者をきちんと排除できる仕組みは設ける必要があるのではないかということでございます。
 10ページは、以上申し上げたところは主宰に関する問題ですが、2番目としまして、代理に関する問題がございます。代理についての問題意識ですが、主宰と2つ違う点があるのではないかということでございます。
 1つは、代理の場合には、当事者本人の権利義務を処分することができるということになるわけでございますし、当然その後の訴訟も見据える必要があるということからしますと、やはり主宰に比べてという言い方が適当かどうか、やや御議論はあるとは思いますけれども、やはり法律分野についてはそれなりの専門能力を有することが必要ではないかということが1点ございます。
 もう一点としましては、これはADRの特色論になるわけですが、ADRの場合には、基本的には当事者が主体的に参画して問題解決に当たっていただくという側面が強いのではないかと考えられますので、そうであるとすれば、ADRについて業として代理を行うということのニーズは、主宰に比べれば高くないのではないかという問題意識がございます。
 そういった2点からしまして、このADRの代理については、論点2-1にございますように、法律分野についても高度の専門能力を有する者と評価できる専門職種を対象に、個別的な検討を行った上で、必要に応じてADR代理業務を各職種の業務として行うことができるよう、むしろ個別法令上に規定を設けることとしてはどうかということでございます。以上が代理の問題でございます。
 12ページにまいりまして、このADRの代理を認めるとした場合について考えなければならないもう一つの問題として、相対交渉における和解についてどう考えるのかということでございます。これは相対交渉自体の代理権を議論するというよりも、あくまでも仮にADRの代理を認めた場合に、視野に入れなければいけない問題として御提示をしているわけでございますが、論点2-2にございますように、「72条の特例として、個別的にADR代理業務を行うことを認める場合には、合わせて、その範囲内の紛争に関し、相対交渉における和解について代理権も認めるものとしてはどうか」ということでございます。
 勿論、ADR代理を認める場合には、一定のADR機関の傘の下で業務を行うから認められるのだ。したがって、それ以外の和解交渉について代理権を認める必要はないという考え方も当然あり得るとは思いますれども、少なくともADRの代理を念頭に置いて代理権をお願いするという場合において、実際にADRに申立てをしないと代理ができないというのも、やや現実問題としてはいかがかという問題もございます。したがって、その範囲内の紛争には幾つかのフェーズがあるかとは思いますけれども、その範囲内については、相対交渉における和解も認める必要が出てくるということも視野に入れた上で、ADR和解の問題を考える必要があるのではないかということでございます。
 それから、3の法律相談業務に関する適用除外の問題ですが、これは相談業務をどう考えるのかということと関連してくる問題でして、これまでの議論では、相談業務はADRを支える重要な問題であるということでしたし、現実問題としても、かなりADRと相談というのは、必ずしも截然と分かれない形で行われてきているということがございます。そうだとすれば、やはりADR主宰業務について72条の例外を考えるのであれば、同じような趣旨から相談業務についてもその必要性を検討する必要があるのではないかということでございます。
 ここは相談ということでADR代理の後に来ているわけでございますが、今申し上げた趣旨からすると、むしろ主宰に準じて議論すべきではないかと考えております。
 したがって、13ページの最後の論点3-2にありますように、仮に相談業務について72条の例外を考えるのであれば、先ほど主宰について申し上げたような論点1-2、1-3のような枠組みに準じた形で議論をしていく必要があるのではないかという御提案になっております。

○ 青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、まず主宰業務について御議論いただきたいと思います。その主宰業務につきましては、最後におっしゃったように相談も含めて主宰業務ということで議論していただき、その次にADRの代理業務ということで議論していただき、それとの関連で相対交渉における和解の代理に入っていきたいと思います。
 まず、ADRの主宰業務の中での弁護士法72条の適用除外という問題については、いかがでしょうか。
 論点1-2は、法律的知見はないけれども、それ以外の専門的知見がある場合、1-3は、法律的にも高度の専門的知識を持っている場合には、弁護士の関与なしにできるかどうかということ、それから、1-4がその濫用・弊害防止、最後は、相談業務についてですが、自由に御議論いただきたいと思います。

○ 三木委員 あちらこちらに専門的知見という言葉が出てくるのですが、おそらくこういう文言を使って書く場合には、この専門的知見というものがどのようなレベルを要求されるのかというのが皆さん最も関心事だと思います。これは刑罰を伴う法律になり得るわけですから、可能な限り構成要件の明確性というのも要求されるわけです。専門という言葉の語感は非常に高いハードルですので、これがあまり高いと実質的には弁護士以外の参入はほとんど不可能になることもあり得るので、専門という言葉をパブリック・コメント等に付されるときにどう定義されるのか、定義は難しいとすれば、どういうイメージで捉えるといいのかということをもう少し敷衍して御説明いただきたいと思います。

○ 青山座長 例えば建築関係の紛争の場合には、紛争分野についての専門的知見というと、例えば平山委員のような、建築に関する専門的知見を持っている方を考えています。
 それから、紛争解決に関する専門的知見ということについては、心理学や交渉技術というものについて専門的知見を持っている人という意味で使われています。今までの資料はすべてそうでございます。
 ですから、パブリック・コメントに付す場合にも、おそらくそういう説明は必要になるだろうと思っています。

○ 三木委員 具体的に説明するというのは難しいかもしれませんが、例えば紛争解決に関する講座を2週間受講した場合はどうでしょうか。座長がおっしゃるように、紛争分野の専門的知見というのはまだわかりやすいかもしれませんけれども、紛争解決に関する専門的知見の方がわかりにくいと思います。これは弁護士といえども必ずしもそういう専門的知見を持っているとは限らないという意味では、非常に日本では未発達な分野ですか、例えばアメリカのADR教育団体が主催する講座に、2週間くらいの講座がありますけれども、それを受講したというのは、勿論ここで確定的なお答えを出すのは難しいかもしれませんが、イメージとしてはどちらに入ると思えばよろしいでしょうか。

○ 青山座長 講座の講師になり得るような人は間違いないと思いますけれども、2週間の受講をしたから、入るかどうかは、ちょっと軽減できるとかできないとか、はっきり言えないんじゃないでしょうか。

○ 三木委員 確定的にはお答えしにくいとは思いますけれども、何かイメージが湧かないと議論しにくいところがあるということもまた確かです。

○ 青山座長 これは難しいですね。

○ 小林参事官 三木委員がおっしゃる趣旨は重々わかっているつもりではありますが、1つは、資料の中で触れておりますが、別途の資格制度を設けるというのは、勿論理屈としてはあり得ると思いますが、現実問題としては難しいということがございます。
 そうなりますと、専門性、客観性の確保についてはなかなか難しいということを前提にした上で、それでも問題が生じないようなやり方として、どういったことが考えられるのかをむしろ考えていくべきではないかと思っておりまして、したがって、ここでの御提案について言えば、弁護士の関与と助言を条件付けるという形で担保いたしますと、もう一つの方法については、法律的な専門知識については、客観的に評価できる資格を基準にして考えていくということを1つの担保としているわけです。
 それ以外の専門的能力については、そういう意味ではやや截然としないところがあるわけでございますけれども、しかし、考え方としては、72条の例外を設けるからには、それにふさわしいような専門性を有している人たちを念頭に置いて議論していくべきだろうということで、この御提案の中ではむしろそういう人たちを適材適所に配置できるADR機関の体制というのも併せて見た方がいいのではないかというものになっております。

○ 原委員 同じような観点で、少しわかりにくいのが、7ページの「対象となるADR」の②について、最後の段落で「その際」と書かれていて、「公的に確認する仕組みを取り入れることも検討する」とありますが、これもちょっとイメージがわかないのです。

○ 小林参事官 これも御議論はいろいろあると思いますけれども、1つのやり方としては、国が公的にADR機関というものを認証するということが、スタイルとしては考えられるのではないかということでございます。

○ 原委員 そうすると、今日は議論にはなっていませんけれども、執行力の付与や時効中断効と合わせて、同じようなものとして公的チェックをするということですか。

○ 小林参事官 同じかどうかについては、それぞれ各論で議論すべきことだと思いますけれども、この問題の場合には刑罰法規だということもありまして、明確性の要請は高いのではないかと考えております。

○ 廣田委員 私は今のような議論が出るということが念頭にあって、しかも専門的知見を有する者とは何かという議論が出ることを想定した上で、このことに関しては、そういう概念でくくらないで、あっせん、調停、仲裁を公正かつ適確に行うことができると認められる機関において選任されたあっせん人、調停人、仲裁人が行う業務に対しては、弁護士法第72条本文を適用しない、という案を前に申し上げたのです。
 その案ですと、この議論はしなくて済むわけですから、私としては、そういう案を言ったつもりなのですが、今度のパブリック・コメント案には出ていないので、そういう案もあったということをパブリック・コメントに出していただければありがたいと思います。
 要するに、これは現状の追認なのです。つまり、機関の方で認める人がやっている。それはもう現状では72条は適用していないのです。ですから、その現状の確認という意味で、それだけを決めれば、今の議論はしなくて済みます。専門的知見云々ということは横に置いた上で、それだけを決めればいいと思っていますが、そこのところが抜けているのです。
 そうすると、では、それを一体どうやって担保するかという問題が出てきますので、そこで今の弁護士の関与・助言という問題が絡んでくると思うのです。この関与を得るということと、関与を得ないということの区別ですが、私自身はこれを法文に書く必要は率直に言ってないと思っています。なぜかというと、実際にはそれを行っていまして、どの機関でも弁護士が必要であれば、その必要の限度において関与・助言を得ているわけです。 私は、弁護士の関与・助言は必要に応じて適宜しなければいけないと思っています。それは大切なことだと思っているのですが、法文に書く必要はない考えています。しかし、法文に書くかどうかは別にして、関与・助言を得てやるということをもし書くのだとすれば、それを実質上どのようにやるのかというところは、機関に委ねればいいわけですし、やっている仕事の内容によって、これは非常に幅があることです。
 ですから、この論点1-2と1-3はひとくくりにして、もし書くのであれば、全部ひとつにくるめて書く。しかも、これは後の代理業務の方にも関係してくると思いますけれども、そういう観点で、実質上、担保がどうしても必要だと言えば、書く書かないにかかわらずその手当てをどうするかということだけを考えておけばいい問題ではないかと思うし、現状はそうやっています。
 そうすると、いわゆる資格の問題や専門的知見の範囲、専門家の範囲という問題は全部クリアーできると考えています。
 そのような意見もあったということを、この関連で言っておいていただければ、それがどうなるかということは次の議論という形にしてもいいと思います。

○ 青山座長 廣田委員の意見は事務局の方にも十分わかっていただいた上で、こういう資料をつくらせていただいたわけです。

○ 髙木委員 論点1-3ですけれども、「相当程度以上の法的知識を有するものと認められる専門家は、その者の有する専門的知見を適確に活用し得るものと認められるADR」とあって、ここで1つ制限がかかってはいるのですが、この議論はあまりここでした記憶がないのです。
 確かに、いろいろな能力についての議論がここへつながると言えば、つながらないとも言えないような気もしますが、この「弁護士の関与・助言を得ることなく、ADR主宰業務を行うことができるものとしてはどうか」というのは、割合と積極的に書いてあると読めるのですが、そういう雰囲気だったかなというのが気になっております。パブリック・コメントですから、付すこと自体はやむを得ないかなとも思いますが、ここでこのような結論が出たかどうかはあまり記憶がないのですけれども、こんな雰囲気でしたでしょうか。

○ 小林参事官 専門家の活用につきましては、かなりいろいろなオプションをお示しして、御議論いただいたと思っております。結論から申しますと、ここを「できるものとしてはどうか」とするか、「できることについて、どう考えるのか」とするかというのは、むしろ今回の御議論を踏まえて調整するものとさせていただくということでよろしいかと思っております。ただ、弁護士の関与・助言がないケースについて、どういうことが考えられるのかとすれば、私どもしては、最低限こういうことは必要ではないかと思っております。

○ 龍井委員 その場合に、8ページの「内容」の第2パラグラフに、「基本的には、既存の公的資格制度」云々とあって、もう少し具体的に羅列することは難しいのでしょうけれども、どういうイメージを出すかで、私自身としても、一般論で書く場合とはどういうものをイメージするかで変わってくるのだと思うのです。もしそうだとすれば、この辺をもうちょっと工夫していただく、具体的にどうしろとは言えなくて申し訳ないのですが、抽象的な問題提起で行くのでは、私も今までの論議経過からすると、こういう聞き方でいいかなというところは、髙木委員と同じ感想を持っていますので、もし書くならばそういう工夫をもう少ししてもらった方がいいかなという感じを持っています。

○ 青山座長 例えば裁判官を辞められて、弁護士登録はしていない方で、しかし、ADR機関で実際に働いておられる方というのは結構おられると思うのです。そういうようなことを考えると、相当以上の法律的知識を持っている専門家が入ってくれば、そこに弁護士が助言・関与をする必要はないというイメージです。そういう現実を考えているものですから、常に論点1-2のような関与と助言が必要かというと、それプラスこういう場合もあるのではないだろうかというのが論点1-3の考え方です。

○ 原委員 そうすると、非常にレアケースのようなイメージで聞こえてしまうのですが、具体的な職種を挙げて恐縮ですけれども、例えば司法書士、弁理士、行政書士など、去年の9月に10団体からヒアリングをいたしましたけれども、そういったところも含むというような、私はこれを読んだときにはそういう積極的な意味でとらえたのですが。

○ 青山座長 私は、非常に極端な場合として、これはほとんど間違いないということを言っただけで、それだけに限定する趣旨ではありません。

○ 綿引委員 確かに今、原委員が言われたようなニュアンスで私もここは受け取っておりましたので、座長が言われたようなごく限られたものを考えての御提案なのか、そうでないのかというニュアンスが伝わらないと回答しにくいだろうと思います。
 もう一点、原委員が最初に御質問になった機関の公的確認の部分ですけれども、その部分は、別途時効中断や執行力という関係で、この部分についても、そういう制度を設けることの是非というような形でパブリック・コメントに付すのでしょうか。
 それとも、今回のように、この説明の中に紛れ込ませたまま済んでしまうのでしょうか。その辺はどんなお考えでいらっしゃいますでしょうか。

○ 髙木委員 論点1-2には入っていますが、論点1-3には公的確認の仕組みは入っていないのです。それは例えば8ページでいうと、対象となる専門家というものがおそらくそれぞれの個別の法律があるということを前提にすると、そこで確認されるということの中に含まれていると読むことになるのでしょうか。

○ 綿引委員 論点1-3については、例えば士業法の中でそういう規定を置くのだという趣旨でお書きになっているのだろうと思いますが、論点1-2については、それだけの適確性のあるADRを対象とするということで、それには公的確認の制度を入れるということが説明の部分には書かれているのですが、質問の部分には書かれていなくて、今後、そこのところをどうするのかということをパブリック・コメントではどのように取り扱われる予定かという質問であります。

○ 小林参事官 パブリック・コメントではその部分はきちんと議論できるような形で提示をしたいと考えております。
 ただ、それぞれの部分において、必要性がある部分とない部分については示す必要があると思いますので、この部分については必要があるのではないかということは示した、ということです。

○ 青山座長 パブリック・コメントにかける以上は、明快に答えられるような形で、正々堂々と議論をしまして、反対なら反対で結構ですから、広く皆さんの意見をお聞きしたいと思っております。

○ 小林参事官 そういう意味で申し上げれば、先ほど公的資格については、御議論になったようなことは視野に入れてありますけれども、そもそもそういった考え方がいいのかどうかというところからスタートするのだと思いますので、そこはステップ・バイ・ステップだと思っています。

○ 綿引委員 そういう形での切り込みで、別の問題点として取り上げるという趣旨で伺っておけばよろしいでしょうか。たしかこの検討会でも公的認定の制度について、劇薬という表現をしておられる方もおられたと思うので、その辺りは慎重な取扱いの仕方を考えていただく必要があるかと思います。

○ 髙木委員 もう一つ、論点1-4は、もう少し説明しないと、これだけで出したのではわからないような感じがします。以前はあった不適格事由というものを入れるかどうかという話ですね。弊害防止措置の必要性というのはいいのですが、一定の不適格者を特例の対象から排除する仕組みを設けるというところをもうちょっとはっきりと説明の中に書いていただいた方がよろしいかと思います。

○ 廣田委員 パブリック・コメントのやり方の問題ですが、論点1-1について、専門的知見を有するものという概念を用いるかどうかということに関して、そういう概念を用いるということが皆さんの意見なのかどうかわかりませんが、もしそうだとしても、それを専門的知見と言うのではなくて、公正かつ適確なADR機関というものに置き換えようという意見があったということが1つあります。
 それから論点1-2と1-3では、専門的知見を有するものと認められるものについて、ADR主宰業務を行うことができるということは意見の一致があったとすれば、専門的知見の程度が比較的低いのが論点1-2、非常に高いのが論点1-3ということになると思うのです。そのように分ける方法がいいのかどうか、私は分けなくて、担保する方法として弁護士の関与・助言さえあればいいということです。論点1-2は関与・助言が割合高い方で、論点1-3は、私はゼロでいいということはないと思うので、ゼロに限りなく近いことと分けられているのですが、私はそれは分ける必要はなくて、もし弁護士の関与・助言が必要だという皆さんの意見が一致していれば、「弁護士の関与・助言は必要であるというところでは一致を見た」と書いていただいて、ただし、私は法律に明記する必要があるかどうかということでは消極説ですから、明記する必要があるかどうかについては、積極・消極の両面があったというような書き方にした方が整理がしやすいのではないかと思います。
 そうでないと、専門的知見をどこで誰が判定するかとか、確認が必要かということも議論されたというコメントを付けてもいいのかもわかりませんが、整理しにくいのではないかと思います。

○ 青山座長 今のような組替えをしますと、全体の組替えをしなくてはいけないですね。他方、専門的知見というのは、司法制度改革審議会の意見書以来使っている言葉なのです。専門的知見を活用すべきということは、訴訟でもADRでもそうなのです。ただ、ADRについては、いきなりこれが出てくると、それは確かにわかりにくいということなので、紛争分野についての専門的知見を有するものというのはどういうものか。紛争解決に関する専門的知見を有するものとはどういうものかということが、もうちょっと具体的にわかるような形で説明を付すということも、事務局はそういう方向で考えているというのが今までのところなのです。
 今の組替え案という廣田委員の考え方もそれから十分考えさせていただいて、説明の中にそういう考え方が別案としてあり得るということができれば提示したいと思っていますが、どこまでできるかということは、お約束はなかなかできないという状態でございます。

○ 三木委員 主宰業務の確認ですが、いつしか「専門的知見を生かし得るADR」と書いていますけれども、これはADR手続と理解してよろしいのでしょうか。

○ 小林参事官 手続のケースもありますが、機関を念頭に置いています。

○ 三木委員 そうしますと、この72条の議論としては、代理人以外ではアドホックも想定するわけですね。廣田委員は機関に限るという独自の説明をされますけれども、一般にはアドホックのADRも含めた議論と理解してよろしいのですか。

○ 小林参事官 ただ、業としてというものはかかります。

○ 三木委員 アドホックで業としてというものはあり得ます。機関を使わずに、個人が業としてやることは勿論あるわけですから。こういうようなときに、ADRというのは、手続として読んだのですが、それでよろしいですかということです。

○ 青山座長 これは例えば建設工事紛争審査会というADR機関であれば、それは建築の専門家がその専門的知見を活用できるADR機関だという趣旨ですね。著作権の紛争処理だったら、そういう意味ですね。

○ 三木委員 今座長がおっしゃったのも、機関に着目している話なのか、あるいは建築紛争を専門に扱う手続というように、手続に着目したものか、どちらで考えればよろしいのでしょうか。

○ 小林参事官 ここでは機関を想定しておりますが、個人で業として行う場合について、欠けていればそこは工夫をします。

○ 三木委員 これを外せという議論は今までなかったと思います。

○ 青山座長 わかりました。御注意いただきましてありがとうございました。
 次は、代理業務の方につきまして御議論いただきたいと思います。相対交渉の代理も含めて御議論いただけますでしょうか。
 この論点2-1は、もしそういうことになるとしても、個別法令に規定を設けるということで、ここでは一般的な規定を置くという趣旨ではないだろうということを言おうとしているわけです。

○ 廣田委員 個別法令で置くということ自体を基本法で決めていく必要があるかどうかという問題があると思います。まるっきり触れないで、放っておいていいのかどうかという問題があると思いますので、私はできるならそれは書いておいた方がいいと思っております。
 もう一つ、個別法令で置くとしても、現実に個別法令でその旨の規定が置かれなければそのままになってしまいます。やはりここで意味があることは、いわゆる専門職種の方々がADRに参画することが重要なので、意見書でもそれが拡充・活性化につながるという趣旨になっていると思います。個別法令に置くのだったら、具体的に個別法令の改正の見通しなり段取りをきちんとこの機会につくらなければ、活性化につながらないと思うのです。そういう道筋をきちんと決めていただきたいと思います。

○ 青山座長 他に代理のところはいかがでしょうか。

○ 龍井委員 12ページの相対交渉ですが、その趣旨のところで、なお書きの方がこの論拠としては重視されているのかという印象を受けたのですけれども、それは司法書士や弁理士については、訴訟代理権の過程から見れば当然出てくる帰結の1つだという書きぶりになっているのですが、そういうことだけでいいのかどうか。
 そもそもこれをどこまで広げるかというところのイメージで、意見の言い方も変わってくるわけなので、これを司法書士、弁理士のような範囲でイメージして、そのくらいの隣接職種で考えておられるのか。もっと専門性というのは幅広いということになれば、またちょっと違ってくるわけなので、その辺をどういう書きぶりにすればいいか、私も提案がなくて恐縮ですが、ちょっと意見を求めにくいかなという印象を持っています。

○ 小林参事官 認める範囲については、当然ADR代理が認められたものでありますので、先ほど申し上げたように、そこをどう判断するかということにかかってくるわけであります。

○ 龍井委員 というのは、逆にそちらが認められればこちらもほぼ自動的ですよという流れで考えるのかどうか。きちんと第三者が関与するものとしての代理の話と、相対交渉とは質的に全然違う。これは個別のケースによって違っていますけれども、全然土俵が違うものだってあり得るわけなので、そのように考えると、論理立てはわかるのです。ただ、併せて考えるということで論点2-1を考えるのか、論点2-1と2-2は違う論点がありますということも含めてなのかで、パブリック・コメントの出し方も違ってくるかなと思っています。

○ 小林参事官 それは当然ということではないと考えております。勿論、当然の部分は若干はあると思いますけれども、当然というわけではないということだと思います。それも視野に入れなければ、逆にADR代理の方の議論ができないのではないかということです。

○髙木委員 今の点ですけれども、当然というわけではないということは、別の意味があるように思うのです。個別的にADR代理が認められたときに、その範囲の紛争に関して相対交渉の和解ができるというところの、その範囲の紛争というのは、紛争自体に着目して客観的に決まるものをADRと無関係にやるということなのでしょうか。
 つまり、ADRで個別的に代理をしている、それを進行する過程でADR外で話をするとか、あるいはADRで代理する権限を認められているけれども、いきなりADRに来るのではなくて、当然にADRも視野に入れて、あるいは訴訟も視野に入れた上で相対交渉をするというものとがあると思います。もしそうだとするとADRの代理権を認めれば、その事前であるとか、その途中であるかというのは、付随業務のようなものとして当然入ると思いますけれども、当然というものではないと言われると、正に一般、つまりADRと関係がない代理を認めるというように読めるのですが、そこはどうなのでしょうか。
 つまり、客観的にその範囲の紛争であれば、ADRと関係なくやれると読むのであれば、そこまで書くのはどうかと思っています。

○ 小林参事官 まず、現実にADRの代理を受任されている場合に、その受任した事件について手続中などに和解交渉をするということは当然の範囲に入ってくるのだと思います。髙木委員がおっしゃったように、そういうことを念頭に置いて、その前段階で和解交渉を行うということについては、これは受任前であれば当然だという考え方もあるとは思いますけれども、必ずしも当然とは言い切れないのではないかということで、当然ということで申し上げたわけではありませんということを申し上げたわけであります。そもそも当然というのも、やや解釈がある問題ですが、言いたかったことはそういうことです。

○ 髙木委員 意味はわかりました。

○ 青山座長 他に御指摘いただくことはございますでしょうか。

○ 山本委員 論点3は議論されずに入ったことに気がつかなかったのですが、論点3-1、3-2のところで、紛争分野や紛争解決に関する専門的知見を有するものが法律相談業務を行うというのはもう一つピンと来ないところがあります。
 紛争分野に関して専門的知識を有している医者が、その専門的知識を活かし得る分野である医療過誤などについて、何の法律的な訓練を受けていないのに法律相談業務を行う。勿論、弁護士の相談・助言というものがあるのでしょうけれども、あるいは、紛争解決に関してコミュニケーション技術やカウンセリング技術を学んだ人があまり法的な解決を念頭に置かないで、調整的に当事者間の紛争を解決していくということは十分あり得ることだろうと思いますが、そういう人が法律相談の業務を行うことができるというのは、何かもう1つピンと来ないような感じがするのです。この御趣旨はいかがでしょうか。

○ 小林参事官 法律相談という言葉がややきついのかもしれませんが、相談業務についてADRを支えるものとして重要だということは御議論があったわけなので、その相談業務について、やはり72条の特例を考えてみる必要はあるのではないかというのが、そもそもの発想であります。
 確かに、医者の例を挙げられましたが、もし、それに問題があるのだとすれば、主宰について認める場合についても同じ問題は生ずるわけです。

○ 山本委員 主宰については、以前に主宰者の能力イメージのところで議論されていたと思いますが、当事者主導の調整的解決や自立的な規範による場合には、法的なものは非常に極小的になっていって、そこは弁護士が外部から一定程度補充すれば満たされるという前提で、能力が確保されるということであったように思います。今おっしゃった相談というのが、法的な相談ではなくて、あまり法的ではない相談というのもよくわからないのですが、一般的な相談ということであればわかるような気がしますけれども、そうであるとすれば、弁護士法72条の問題でもないという気もいたしまして、そこは何か整理をしていただく必要があるような感じがします。

○ 廣田委員 私はこの読み方は、消費生活センターの相談員が相談を受けたときに、相談業務に応ずることができる、弁護士法72条は適用しないという読み方をしたのですが、それならばむしろいいのではないかと思います。積極説でいいと思います。そこのところをどう整理するかの問題だと思います。

○ 原委員 補足的に、私もこの法律の意味は、消費者センターなどでやっている相談業務で、民法と消費者契約法と特定商取引法と、幾つかの消費者トラブルで使う法律があるのですが、そういった事例をイメージしたということです。おっしゃったように、医療過誤のようなところもありますから、もうちょっと丁寧に見られた方がいいかもしれません。

○ 髙木委員 これまでは、言葉としては単なる「相談」で出てきているのです。ここで初めて「法律相談」と出てきているのです。法律相談を出さないと72条の適用除外にならないから、出るのはしようがないのですが、これはADR主宰業務に準じてと書いてあるので、先ほどの説明で相談が主宰の方に近いものとして取られていられるということはわかったのですが、そうすると、このパブリック・コメントの場所を検討いただくこともできるのでしょうか。
 つまり、相談というのは、いろいろな場面で問題になるのですけれども、代理につながる相談もあるし、主宰のところでの相談もあると思います。そこが代理の後にくっついているものですから、士業などに代理権が認められると、更に相談にも広がっていくというイメージで解釈してしまうのです。「ADR主宰業務に準じ」と書いてあるので、場所を考えていただけないかと思いまして、その意味をはっきりさせることと併せてお願いしたいと思います。

○ 青山座長 わかりました。他に特に御発言はありますでしょうか。

○ 三木委員 パブリック・コメントまでにもう一回やりますでしょうか。

○ 青山座長 わかりました。今日はこれ以上はできませんので、今日の議論はこの辺りで終了したいと思いますが、今日の議論で足りないところはたくさんあると思います。特に言いたかったことがあると思いますので、それにつきましては、文書、メール、何でも結構ですから、事務局にお出しいただきたいと思います。
 それから、次回の日程ですが、6月23日月曜日の午後1時半からということになっておりまして、そこでは特例的事項の残る部分、つまり時効の中断や執行力、あるいは裁判所とのリンケージだとか、いろいろな問題がありますが、そういうことをやるつもりでおりますが、今日の弁護士法72条の問題については時間が足りないと思いますので、次回の冒頭にこの部分について更に御意見を伺いたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、次回は3巡目の議論の2回目でございますけれども、その後の日程をお諮りいたします。今のところ7月14日が正規の検討会として入っていると思います。その他に皆様方の手帳には6月30日と7月7日が予備日として確保していただいていると思います。多分、今日までの進捗を踏まえますと、この2日ある予備日のうちの1日は解除していいのではないかと思います。どちらを解除するかというと、差し当たり7月7日の方は解除させていただきます。ですから、次回は23日、23日で議論が足りなければ30日の予備日を使わせていただく。その上で7月14日にパブリック・コメントの案をお出しして、そこで更に夏休み前の最後の議論をさせていただきまして、夏休みにはそれをパブリック・コメントに付すということにさせていただくというスケジュールでございますが、どうぞ御承認いただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、本日は大変お忙しい中を時間を大幅に超過いたしまして、大変恐縮でございました。どうもありがとうございました。