首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会ADR検討会

ADR検討会(第19回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年6月30日(月)13:30~17:10

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、原早苗、廣田尚久、三木浩一、 山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)特例的事項②(法的効果の付与等)[第18回検討会の続き]
(2)特例的事項③(ADRの適格性の確認方法)
(3)ADRに関する基本的な法制の枠組み[第17回検討会の続き]

5 配布資料
資料17-1(抄)検討事項2-1
資料17-2(抄)参考資料
資料18-1   検討事項2-6
資料18-2   検討事項2-7

6 議 事

(1)特例的事項②(法的効果の付与等)(検討事項2-6)

 前回検討会に引き続き、特例的事項②(法的効果の付与等)について、事務局より、検討事項2-6に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(調停前置主義の不適用)

○ 離婚・離縁を調停前置の対象とするかどうかについて両説記載されているが、肯定説の記述が弱い上、離婚・離縁の紛争はADRにふさわしいものであるから、それらの点も、肯定説の記述に付加しておく方がよいのではないか。
 また、「追加的な適格性」という文言の具体的意味について書き加えた方がよいのではないか。

○ 離縁・離婚については、任意処分という記述では分かりにくいため、協議上の離婚・離縁が法律上認められ、実際には大半が協議上の離婚・離縁によって処理されているということが議論の根拠となること指摘しておく方がよいのではないか。

○ 認定制度の導入に伴う利害を考えると、調停前置主義についての特例は不要であり、パブリック・コメント案には、当該特例は不要であるとする意見を記載すべきである。
 別案については、要するに、調停前置主義の特例は不要であることを意味するものであり、むしろ、これを独立した意見として掲記して欲しい。
 裁判所の調停を経ずに訴えが提起された場合には、付調停とするかどうかは裁判所の判断によるとする現行法の取扱いのままでよい。調停前置主義の特例については、認定制度に連なる可能性があり、そもそも論点として触れる必要がないと考える。

● 現行法の解釈として、ADRを経たことが調停前置の例外として認められるかどうかは、必ずしも明確ではなく、現行法でも例外となりうるということであれば、パブリック・コメントにおいては、むしろ、その点を記述する必要があるものと認識している。

○ 事務局案では、資料には主案と別案とあるが、これまでの議論の経緯からすれば、両案を併記していずれがよいかを問うものとすべきではないか。

○ 別案の記載については、立法を不要とする趣旨に理解されるおそれがあるが、現行法の解釈としても確立しているとはいえない上、仮に確立しているとしても、規定を置いて解釈を明確化させることも考えられるから、その趣旨が表れるような記載とすべきではないか。
 一定の適格性・公的な認定について、裁判所の個別判断に委ねるべきとの意見が、これまでの議論でも有力であったから、それが分かるように独立した記載とすべきではないか。
 また、認定は、数か所に出てくるが、認定は認定で独立させて記載した方がよいのではないか。

○ 家事事件に関して、更に追加的な適格性に関する要件が、「必要となることもあり得る。」とあるが、調停前置の例外を設け、例外対象に家事事件も含める考え方によった場合には、話合いの実質の有無という内容に立ち入った認定が必要となることを強調する必要があるのではないか。

○ 協議離婚等の制度があることを考えると、どの程度の適格性を必要とするかは、今後議論はあり得るところと思う。

□ 調停前提主義の例外についての議論について、次のように整理したい。
 まず、公的認定を要するとする考え方と裁判所の個別認定とする考え方の両論併記とし、調停前置主義に関する特例の対象となる範囲については両論に係るように記載し、別案についてはより分かりやすい記載とする。
 さらに、公的認定か裁判所の個別認定等は、意見を踏まえて書きぶりを改める。

(訴訟手続の中止)

○ 事務局案は、全体として認定をする考え方が主案となっているが、これまでの議論がそうであったかは疑問である。本項でも、当事者の同意と裁判所の裁量という要件を必要とすれば、事前認定制は不要ではないか。

○ 裁判所の自由裁量に委ねられることが貫徹されるのであれば、事前認定は不要とも思われるから、その点を折衷案的に記載してはどうか。

○ 別案が補足的に書かれているが、議論の経過からすると別案の意見が強かったと思われるので、記載を改めるべきである。また、回答に当たっての判断を可能にするため、考え方の根拠を記載すべきではないか。

○ さらに、当事者の不服申立てが許されないことについては、一般にはその理由が分からないから、それを記載すべきではないか。

□ 中止についての不服申立ては、当事者がADR利用について合意している以上、これを認める必要は認められず、中止の取消しについては、本来の裁判に戻すものであるから、不服申立てを認めるべきではないと考えられる。

○ 中止の取消決定については、民事訴訟法の議論においても、当事者の事由による場合は不服申立てを認める解釈もあるのではないか。

○ 「事前認定制度を採用する必要性は、他の特例に比較すると小さいと考えられる」とあるが、むしろ必要性はないことになるのではないか。

○ 自分は事前認定を念頭にしているという認識であった。個別判断とすると裁判所の負担が大きいのではないか。

● 本項目について裁判所の裁量に委ねる意見が大勢であれば、その点を配慮した記述としたい。

○ 本項目で独自に認定制を採らないとしても、時効中断や調停前置の例外などについて、本項目における適格性とパラレルな基準による認定制が採られるのであれば、いわば認定の流用として、認定された機関については、裁判所は当該機関は個別に判断することなく中止の対象とすることができるという仕組みは可能と思われる。

○ 認定制度をすべてに共通する横断的なものとしてよいかは問題である。また、認定制度をここで当てはめると、裁判所の自由裁量権を侵害するおそれがある。

□ 主案と別案の記載順序を入れ替え、根拠を明示することとしたい。

○ これまでの論点の立て方は、中止の規定を置くかどうかということであったと認識している。認定制を支持する意見がなければ、はずすべきではないか。

○ 選択肢として認定制を挙げておいてもよいと思う。中止するについては、適格性は必要であり、認定制はその判断を容易にするものと考えられる。

○ ADRの利用を促進するには、当事者のための後ろ盾が必要であり、認定制度はそれに最も資するものと考える。ADRに関する規律にもレベルがある。法的効果を付与するについて区分けをする意味では公的認定による方がよいと考えられる。

○ 中止の期間の上限のほかに、中止の回数についても問題となることを記載してはどうか。

□ 次のように整理したい。
 まず、訴訟手続の中止についての特例を設けることについては、意見の一致があった。
 次に、要件について、ADR利用及び訴訟手続の中止についての当事者の合意を必要とすること、裁判所が自由裁量で決することについては委員の意見の一致があった。
 しかし、ADRの適格性を要件とするかどうかは両論あり、適格性を要件とする場合に事前認定とする意見は少数であった。

(和解交渉の勧奨等)

○ 従前、消防署、研究所等の第三者機関の調査結果等を利用できるようにならないかという議論があったが、このような第三者機関を含む整理とするのであれば、①の「裁判所による…」とあるのを「裁判所等による…」として欲しい。ただし、①の論点が裁判所によるものに限定する趣旨であれば、別である。
 また、②は、「それらを訴訟手続において活用するための制度」とあるが、「活用することができる制度」とか「活用を選択できる制度」として欲しい。

● 従前の意見の趣旨は、調査の協力対象としての第三者機関という位置づけの議論であったと記憶している。ここでは、裁判所の証拠調べについての問題であり、「裁判所等」とするのは困難であるが、意見の趣旨について配慮した記載を考えたい。

○ 積極論の論拠として、裁判迅速化法や計画審理といった動きもあり、裁判官としては法制上の根拠がないと、勧奨に躊躇し、運用だけでは規定できないのではないかといった意見が考えられるので、これを加えて欲しい。

○ 執行力の付与と並んで、消費者の最も関心も高いところであるが、記載が分かりにくいため、具体的に記載して欲しい。特に、不起訴の合意と証拠調べとの関係がどうなのかが理解しにくい。

(民事法律扶助の対象化等)

○ 事務局案の書きぶりでは、対立点がはっきりしない。積極的に検討すべきとの立場からは、裁判を受ける権利を保障するだけでなく、裁判を含めた多様は紛争解決手段の中で最も適切な解決方法を受ける権利を保障しなければならないということが議論の前提となっており、付記されるべきではないか。

○ 現在の法律扶助制度は制定時にはADRを前提とはしていなかったが、国民の権利保護の多様性の観点からADRは裁判と並ぶものと位置付けられていることを踏まえると、法律扶助制度も、裁判を含む多様な選択肢の中で当事者の権利・利益を保護するために最も適切な選択肢を保障するものとして位置付けるべきであり、ADRにおける扶助は現行制度の当然の延長線上にあると考える。国の予算上の制約はあるだろうが、中長期的に考えると、法制上の根拠として、仲裁を含めたADRに対して予算を投入できる根拠を置くべきである。

○ 扶助の対象とする範囲をどこまで認めるかという問題がある。これまで代理人費用の扶助について議論してきたが、ADR機関に支払う手数料の扶助ということもある。これまで扶助の対象の範囲について議論をしていないので、いずれ整理する必要があるだろう。

□ 指摘のあった国民の最もふさわしい解決方法の選択肢を保障するという点は事務局案に加えることとしたい。ただ、法律扶助制度は司法アクセス検討会でも検討を行っている問題であり、また財政事情も絡む問題なので、パブリック・コメントでは考え方を示すまでにとどめることとし、具体的記載は事務局にまかせたい。

(2)特例的事項③(ADRの適格性の確認方法)(検討事項2-7)

 特例的事項③(ADRの適格性の確認方法)について、事務局より、検討事項2-7に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

○ ADRの適格性を確認する方法として国による事前認定制度を採用することについてパブリック・コメントを求めるのであれば、①認定主体、②認定基準、③認定後の監督等について、多少なりとも具体的なイメージを示す必要があるのではないか。

○ 同様の観点から、④認定の対象(ADR機関なのかADR機関の中の業務なのか)についても、明確に示すべきではないか。認定主体等について、例えば、住宅品質確保法における紛争処理機関の指定といった既存制度との対比で、相違点を示すことによって、ある程度、具体的イメージをもって意見を出すことができるようになるのではないか。

○ 適格性が満たされていることの確認を第一次的に当事者が行うこととなると二次的紛争が発生するおそれがあるという見解も示されているが、たとえ認定制度を採用しても、認定を受けた業務が適確に行われずに二次的紛争が発生することはあり得るのではないか。

● 認定制度の詳細について方向性を示せる段階にはないが、①認定主体としては○○大臣(国の行政機関)が考えられる。②認定基準については、各々の法的効果等の論点に掲げてある適格性が基準となるものと考えられる。基本的に、裁量性はないものと考えている。③認定取消事由としては、認定基準を満たさなくなったこと等が考えられる。また、④認定の対象については、ADR機関ではなく機関の中における業務を単位として認定制度を設けることによって、同じADR機関の中でも、手続のメニューを多様化することが可能であると考えている。

○ パブリック・コメントを提出するADR機関や利用者側も、認定制度の具体的な仕組み如何で賛否が分かれることが十分に想定されるので、パブリック・コメントをできる限り意義あるものとするために、可能な範囲で具体的な仕組みを示すべき。

□ 適格性の確認方法として事前認定制度を採用するか否かという論点については、必ずしも十分な検討が行われてきたとはいい難い面がある一方、これからパブリック・コメントまでに制度の仕組みを固めることも困難であろう。したがって、事前認定制度を採用する場合には更に検討を要するべき点をきちんと明示した上で、この論点についてパブリック・コメントを求めるというのが現実的な対応ではないかと考える。

○ 更に詰めるべき点をいくつか指摘しておきたい。 第一は、認定主体に関して、複数の所管大臣が共同して行うこととなるのか、一元的にいずれかの大臣が行うこととなるのかという点である。第二は、認定基準に関して、過去におけるADR業務の実績が基準に含まれるか否かという点である。過去の実績、特に、個々の紛争解決結果の適正性といったものが含まれることとなれば、ADRの自主性を大きく損なうおそれがあるので問題ではないか。第三は、認定制度の下で、どの程度、どのような形でADR業務に国が関与することとなるかという点である。認定制度の実効性を担保し、必要に応じて認定取消し等の処分を行うために、行政機関は継続的に報告を求めたりする形でADR業務を監督することとなるのか、その際、個別の手続の秘密保護の要請と調整を図ることが可能なのかという問題がある。

○ 事前認定制度を採用する場合、認定制度の実効性を確保するために実地調査を含めた十分な確認作業が必要となるという要請とADRの自主性が阻害されないようにすることが必要となるという要請を両立させる必要がある。そのために、例えば、できる限り外形的に判断可能な認定基準を設定するとともに、確認作業を第三者機関に委ねて行政機関による介入の間接化を図るといった工夫を検討する必要があるのではないか。また、どのような工夫があり得るかといったこと自体を論点とし、パブリック・コメントを求めることも考えていいのではないか。

○ 事前認定方式と当事者立証方式の組み合わせに関して、事務局資料は、事前認定を受けたADRについて自動的に法的効果の発生を認めつつ、主張立証による法的効果の発生も認めるという方法には否定的であるが、必ずしも否定されないのではないか。事前認定は、そのADRにつき司法型・行政型ADRと同列の地位を付与するという効果を有し、その効果から(間接的に)時効中断効等の法的効果の付与が導かれるものと観念すればよいのではないか。

○ 事前認定の目的・意義として、ADRの信頼性・公正性の確保を含めて考えられないか。

● ADRの信頼性・公正性の確保については、一般的事項として議論したような手段によるべきであって、事前認定制度は、あくまでも、法的効果が発生する要件の一つである適格性の基準をあらかじめ確認するという意味にとどまるものと考えている。

○ 事前認定制度という論点を持ち出すこと自体に唐突な感を否めない。事前認定制度はADRの自主性を損なうばかりでなく、認定制度導入に伴う労力・コストは多大であって、制度導入のメリットよりもデメリットの方が大きい。パブリック・コメントに際しては、事前認定制度というものに、強い反対意見・慎重論があることを明確に示してもらいたい。

○ 適格性の確認方法として事前認定制度を採用せざるを得ず、その制度を採用することによる弊害が大きいのであれば、法的効果の付与等そのものを断念する方がよいという認識があることも明確に示してもらいたい。

○ 積極的に事前認定制度が望ましいとは思えないが、やむを得ない選択肢ではないか。紛争処理機関の「指定」というスキームを採用した住宅品質確保法においては、認定の審査や監督において個別の事件処理の内容には関与しないという前提がとられており、参考となるのではないか。

○ 利用者あるいは主宰者の予測可能性を確保することの重要性にかんがみると、事前認定制度の必要性を肯定的に捉えることも必要である。また、事前認定制度を採用できないということとなれば、これまで議論してきた法的効果等のほとんどについて、創設を断念せざるを得ない結果となるものと考える。このように、事前認定制度の採用の可否は、法的効果等創設の可否に直接にリンクし得るという点を踏まえて、この問題を議論すべきである。

□ パブリック・コメントに際しては、
 ①事前認定制度を議論する必要性(理由)を分かりやすく示すこと
 ②事前認定制度を採用する場合に、更なる検討が必要となる点を掲げること
 ③事前認定制度に対しては、強い反対論・慎重論もあることを示すこと
 を基本として、事務局で再度整理願うこととする。
 その上で、パブリック・コメントの結果を踏まえて、秋以降更に議論を深めていくこととしたい。

(3)ADRに関する基本的な法制の枠組み

 ADRに関する基本的な法制の枠組み(ADRに関する基本的な法制の各事項の適用範囲)について、事務局より、検討事項2-1に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

○ 事務局案では、特例的事項について、民間部門のみを対象としているが、行政型ADR機関の中には法的根拠が複雑なものもあり、個別法令ですべて対応するのは困難である。項目によってはADR法で根拠を記載するものもあるのではないか。

● 行政型ADRを特例の対象とすること自体を否定するところではない。

○ 消費者トラブルでは、相談のほかに、苦情処理、あっせんなどの文言が法令的に用いられていることに留意する必要があるのではないか。また、事務局は、行政型ADRを規定する個別法令の見直しについてどのように考えているのか。

● ここでの整理では、相談手続に該当するものとあっせんに該当するものが含まれると考えられるので、用語について混乱を来さないよう注記をしたい。個別法令の見直しについては、パブリック・コメントに付すのに併せて、当該機関・関係省庁から意見を聞きたい。

□ 個別法令の規定の見直しについては、関係省庁との調整はまだまったく行われておらず、現段階では事務局としてもすべて見直すとは言えないが、パブリック・コメント後に内容を詰めていく段階で、各制度とのすり合わせが行われるものと期待している。事務局等の記載はあくまでも現時点での認識を示したものと理解している。

○ 対象を限定しすぎると、自由な議論がなされないのではないかということを懸念している。

○ 個別法令に別段の定めがある場合を除くとあるが、例えば仲裁法で何も書いていない守秘義務や重要事項説明義務については、適用されないということか。仲裁について、仲裁法以外の法律において規定されていることになると、仲裁法の一覧性から望ましくないのではないか。

● 個別に判断することになるので、最終的には疑義がないように整理をしたい。

(4)その他

 次回は7月14日(月)の午後1時半から開催することになった。

(以上)