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ADR検討会(第19回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成15年6月30日(月)13:30 ~17:10

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、原早苗、廣田尚久、
三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議題

(1)特例的事項②(法的効果の付与等)[第18回検討会の続き]
(2)特例的事項③(ADRの適格性の確認方法)
(3)ADRに関する基本的な法制の枠組み[第17回検討会の続き]

5 配布資料

資料17-1(抄)検討事項2-1
資料17-2(抄)参考資料
資料18-1   検討事項2-6
資料18-2   検討事項2-7

6 議事

[開会]

○青山座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第19回「ADR検討会」を開会いたします。本日は平山委員が欠席でございますが、ほかにも途中で退席される方もございます。
 本日はお手元の議事次第のとおり、まず前回の議題のうち、残っておりますテーマ、すなわち検討事項2-6の裁判手続との連携以降の部分と、それから検討事項2-7を議論いたしますとともに、最後に持ち越してまいりました検討事項2-1のうち基本的事項、一般的事項、特例的事項の適用範囲について御議論していただきたいと思っております。
 後からも申しますけれども、次回7月14日は事務局において再度整理いたしました資料に基づきまして、これまでの検討を総括し、パブリック・コメントに付する論点事項全体を最終的に御確認いただくこととしております。
 したがいまして、本日は多少時間を延長しても、今申しました予定の範囲の議論を全部終えたいと思っております。議論を効率的に進めるという観点から、御発言はできるだけポイントを絞って簡潔にお願いしたい思います。
 なお、細部の表現ぶり等についてのコメントなど、言い尽くせない点は多々あろうかと思います。そういう点については、後からペーパーなりメールなりで事務局にお寄せいただければ事務局の方は、適宜それにしたがって資料を整えますので、そのようにお願いしたいと思います。
 それでは、最初に検討事項2-6でございますけれども、一定のADRを利用した場合の調停前置主義の不適用についてという問題、これは前回の続きでございますが、これについて御議論をいただきたいと思います。まず事務局の方からポイントの説明をお願いしたいと思います。小林参事官よろしくお願いいたします。

[特例的事項②(法的効果の付与等)[第18回検討会の続き]]

○小林参事官 資料の方は検討事項2-6の14ページでございますが、調停前置主義の不適用についての御説明をしたいと思います。
 14ページから15ページにかけましては、総論として調停前置主義の不適用について特例規定を設けるものとしてはどうか、という総論でございます。この点については、特に2巡目では御異論はなかったかと思いますので、説明は省略させていただきたいと思います。
 次に15ページの考えられる調停前置主義に関する特例のスキームについてでございますが、ここでは大きく2つの考え方を示しております。これにつきましては2巡目の議論でも両方の意見が提出されたところでございます。
 なお、この特例的事項に関する記述につきましては、前回の検討会におきまして、要件の問題と、それをどう確保するか。具体的には認定の問題などと切り分けて書いてほしいという御指摘がございましたので、それを踏まえて14日にお出しするものについては工夫をしたいと思いますが、ここで一応、前回の資料をそのまま使って御説明をしたいと思います。調停前置主義に関しましては、先ほど申しましたように2つの考え方がございまして、1つは、この前段にございますように、一定の適格性を有すると公的に認定を受けたものにつきましては、裁判所の調停に代替するというスキームを導入するという考え方でございます。もう一つの考え方は、こういった認定制度という形ではなくて、裁判所の個別判断により、調停前置主義の適用を除外し得ることが現行法でも認められているわけでございますが、事由の1つとして例示をするというスキームを採る考え方でございます。
 これら2つの考え方があるわけでございますが、注2にございますように、後の方の考え方につきましては、場合によっては現行法の解釈でも可能かもしれない問題と言えます。その点は留意する必要があるということでございます。
 具体的な内容につきましては、注1のところに特例の対象となる調停前置事件の範囲について、2巡目の議論でも見解の相違がございましたので、それを16ページに整理をいたしております。
 現行制度におきます調停前置事件は①、②、このうち②は更に3つに分かれるわけでございますが、これら4類型があるわけでございます。このうち、①と③について対象にすることは、特に異論がなかったわけでございますし、②i)については、特別な扱いが必要ではないかということであったかと思います。
 意見が分かれましたのは②ii)でございまして、離婚・離縁についての扱いでございます。これにつきましては、現行の家事調停で行われている内容を踏まえるとこの部分について代替を認めるのは適当ではないかという意見と、それから、この部分についても対象にすべきではないか、という議論が16ページの後段の方に両論として説明いたしております。実は、この部分は非常に大きなウェートを占める部分でもございますので、パブリック・コメントで意見を伺うことにしたらいかがか、ということでございます。
 17ページの適格性の問題でございますけれども、この案では時効中断と同じような考え方を採っております。ただ、この17ページ中ほどのなお書きのところにございますように、裁判所の調停の姿として、裁判官や調停員が積極的に見解を示し云々、というところがございます。こういったところを重視するという考え方を採れば、更に追加的な適格性に関する要件が必要になるという考え方も出てくるわけでございます。
 更に、家事事件につきまして、先ほど申し上げたような家事調停の特性を重視すれば、更に対象とする場合には追加的な適格性に関する要件も必要になるということもあり得るのではないかということでございます。
 認定制につきましては、この2つの考え方によりますと、前者の考え方では、恐らくこれは予見可能性を重視するということになりますので、認定制を検討する必要があるのではないかということになります。
 他方、別案と申しますか、後半の議論を踏まえると、むしろ裁判所の判断を踏まえるということになりますので、認定制を採る必要はないのではないかという整理をいたしております。
 ただ、考え方としては、仮に裁判所が判断するとしても、その前の1つ目のスクリーニングとして、こういった認定という制度が必要だと。それは裁判所の負担ということも考えれば、そういったものも必要だということも、考え方としてはあり得るとは思いますけれども、ここでは一応2つの案をお示しいたしております。もし、議論が収斂するのであれば、パブリック・コメントではもう少し絞った形で提示するということが考えられると思います。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは御議論いただきます。議論していただく点は3つあると思います。まず、16ページに書いてある2つの方法の事前認定を採るのか、裁判所の個別判断の方向でいくのかが第1点目です。第2点目は、調停前置主義を採る範囲、16ページで特に離縁・離婚を含むのか含まないのか。前回からここが中心になっていた点でございます。第3点目は事前認定を採るとすれば、どういう方向かというのが、17ページで事前認定のための要件ということになります。勿論、個別判断となれば違ってくるというのは、今の事務局の説明にあったとおりでございます。
 それでは、以上3点を中心に御議論いただきたいと思います。

○原委員 2点あります。まず、1点目は、もう少し書き方を充実していただきたいという点です。例えば、16ページですが、離婚・離縁について対象とすべき立場と対象とすべきではないという立場の両方が書かれております。対象とすべきではないという立場についてたくさん書かれていまして、対象とすべきという立場の記述が少し弱いのです。この中に、少し欠けていると思われるのは、離婚とか離縁は私人間の紛争ですから、当事者同士の離婚・離縁の場面ではどういう合意ができるかと思うのですけれども、当事者同士であれば、そういう合意が得られやすい、というADRが似つかわしい場面も存在するのではないかと思っております。そういう文言が、対象とすべきという立場の方に付け加えられておいた方がいいのではないかと思います。否定的な見解だけで作られているので、そういう積極的な意見もあるのではないかと思います。
 2点目は、17ページ真ん中辺りに、更に追加的な適格性という文言があるのですけれども、適格性についてかなり議論になると思いますので、この追加的な適格性は、具体的にはどういうことを表しているのかを書き加えておいていただけたらと思います。
 以上の2点です。

○青山座長 原委員の1点目は確かにそのとおりだと思います。2点目について事務局の方で何か考えていることがあれば言っていただけますか。

○小林委員 家事調停が果たしている役割について、これを抽出して書き加えるということになるかと思います。

○青山座長 ほかにどうぞ。

○山本委員 私も全く同感で、具体的には、協議離婚について、任意処分ができると書かれているのですが、任意処分という言葉は一般の法律に慣れていない人にとっては、具体的に何を指しているのか、あまりイメージできないと思います。
 協議離婚、協議離縁が法制上認められていて、実際に九十何%が協議離婚によって処理されているという実態があるということが、この議論の根拠になると思いますので、その点を加えていただければと思います。

○青山座長 わかりました。ほかにいかかでしょうか。

○廣田委員 前にも申し上げたのですが、ここで認定を導入するデメリットを考えますと、そもそも調停前置主義に関する特例は必要ないと思っているのです。現行法のままでいいと思っていますので、そういう意見があるということを書いていただきたいと思います。ということは、15ページの注2は、裁判所の個別判断の陰に隠れているような感じがしますけれど、要するに現行法のままということですから、調停前置主義に関する特例は、特に必要ないと思います。ですから、この注2は独立したものとして扱っていただきたいと思います。

○青山座長 注1と注2は別案のすぐ下に付いていますが、これは離れているのです。注1と注2は、上の方の第1案にもかかる形になっているので、これはよろしいですか。
 廣田委員は、現行法のとおりでよいというご意見でそれは注2の中に入っているわけですが、それをADR基本法なり何なりの中に書くことについては、どうお考えですか。

○廣田委員 私は必要ないと思っています。まるで触れなくていいという考え方です。なぜかというと、触れると認定につながりますので。

○青山座長 そうではなくて、認定に結び付けずに別案の考え方を採り、ADR基本法の中に裁判外の紛争処理手続において調停が不調に終わったという場合には調停前置主義を採らなくてもいいということを書くこと自身はどうなのでしょうか。

○廣田委員 趣旨がよくわからないのですが、調停前置主義を書く必要はないと思っていますのでそういう趣旨です。

○青山座長 わかりました。

○小林参事官 パブリック・コメントとの関係で確認させていただきたいのですが、現行法の解釈がADRの場合にも認められるかどうかについて、事務局としては自信が持てないところでございます。もし、廣田委員がおっしゃるように現行法でも読めるのでそのまま使えばいいではないか、という御趣旨であれば何らかの形で残しておかないと御趣旨とは違う結果になると思います。

○廣田委員 要するに基本法には書かないけれども、こういうやり方をすればいいということを書かなければならないということです。

○小林参事官 現行法でそのとおりになるかどうかは、必ずしも自信があるところではないので、全く触れないということになりますとどうなるのでしょうか。

○廣田委員 現行法ですとADRで十分に話合いをした後、当事者が裁判所に直接訴えを提起していいという判断をすれば、今度は受け取った裁判所が調停に回すかどうかは裁判所の判断になるわけです。あるいはそのまま裁判を続けてもいいということになっていますので、その扱いのままでもいいし、裁判所の判断で調停に回されればいずれすぐ不調になるでしょうが、それもやむを得ないという考え方です。
 ですから、パブリック・コメントでどう出されるかは別として、私は現行の運用と法律そのものをいじる必要はない、という意見です。

○小林参事官 御意見はパブリック・コメントでは調停前置主義の議論をすべて外してしまうという意見でしょうか。

○廣田委員 それはお任せします。

○青山座長 ほかに何かございますか。

○綿引委員 論点3-2は、本案と別案という形になっていて、「また」以下が別案のように書かれているのですが、これまでの議論の流れからすると完全な並列案だったように感じております。
 本案と別案という形より、調停前置について一定のADR機関での話合いを経由した場合は調停前置を適用しないという立法と、調停前置を経ないでもよいという判断をすることができるという方法の2つの考えがあるがどうか、という提案の仕方にするのがこれまでの状況に合致していると思います。

○三木委員 私も今の綿引委員の御提案に全く賛成です。注2の部分ですが、わかる人にとってはわかるかもしれませんが、別案としてという部分と注2だけを読むと、結局立法は不要という考えが大勢であると読めてしまうのです。しかし、立法を不要とする考え方が必ずしも大勢ではありませんし、現行法の解釈については必ずしも確定的な解釈があるわけではありません。例えば、ADR法で例示をするとか、要件を明確化するなど、解釈のための立法をするということがあり得るわけですから、そのようなこともわかるような公平な書き方をしていただきたいと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○髙木委員 パブリック・コメントの前提としてでしたら、今のでいいと思います。

○青山座長 対象のところは何かございますでしょうか。対象について、①と②のiii)は対象になるという考え方が大勢だったと思いますが、②のi)の方は外れると。これは非常に特殊な問題だと。しかし、②ii) は入れてもいいのではないかという考え方と、これは問題だという考え方の2つがあったと思います。

○髙木委員 山本先生おっしゃったこと、離婚等の要件では、ほとんどが協議によって解決している実態を根拠として加える点を入れていただきたいと思います。

○青山座長 わかりました。綿引委員何かございますか。

○綿引委員 家事調停の特殊性はきちっと書いていただいておりますので、それはそれで結構でございます。

○青山座長 それでは最後の17ページにある適格性の公的な認定という部分は、こういう書き方でよろしいでしょうか。他方というところが前の方のところに隠れているような感じがするので、ここをもうちょっと下から5行目の他方のところをもう少し、これは付随的なような感じがするので別に独立させるということは考えられると思いますが、いかがでしょうか。

○三木委員 私は独立させるべきだと思います。今までの検討会の議論でも、裁判所の個別判断に委ねるという意見は、1つの有力な見解であったと思いますので、そのことがわかるようにしていただきたいと思います。
 これは来週パブリック・コメントをまとめる際に問題になるのかもしれませんが、認定というの、何か所かにかかってくるわけで、場合によっては適格性という一般論の問題と認定の問題は、先ほど分けると小林参事官はおっしゃっていましたけれども、認定の問題だけを括り出して、最後とかでまとめて論ずるとした方がわかりやすいという気もいたします。

○青山座長 その点はちょっと検討させていただきます。よろしゅうございますでしょうか。

○綿引委員 17ページの「さらに」以下の真ん中辺にあるパラグラフですけれども、必要となることもあり得るという書き方になっておりますが、必要となるということであって、必要となることもあり得るで済むことではないのではないかと思います。
 特に、家事調停でも調停前置を外すという考え方を採った場合、この認定の要件はかなり中身に立ち入った、要するに、どこまで話し合いの実質を持てるかという、そこまで中身に立ち入らざるを得なくなるのだという点は強調しておく必要があるのではないかと思います。
 要は、調停前置を外すという前提に立ち、かつ、そこに家事調停も入れるということになると、そのADRについては相当中身にまで立ち入った認定が必要になってくるのだという図式が明確になるようにしておく必要があろうかと思います

○青山座長 わかりました。これは表現の問題としてよろしいでしょうか。

○綿引委員 やや内容にもかかわるかという気がします。

○青山座長 勿論、そうなのですけれど、調停前置を外すということではなくて、調停前置を外すとすれば、ADRの適格についてはきちんとした判断をしなくてはいけないということがわかる表現ぶりにしてほしいということですね。

○青山座長 山本委員何かありますか。

○山本委員 今の点は先程との関係で言えば、そういう考え方が1つあり得ることは十分よくわかるというところでありますが、先程言いましたように、協議離婚制度がそもそも制度の前提になっているということも1つありますので、そこはどの程度まで適格性が必要かについての議論は、今後もあり得るところだろうと思います。

○青山座長 わかりました。それでは、このテーマにつきましては、この辺りで終了したいと思います。これらの意見について事務局から何かございますか。

○小林参事官 確認なのですが、パッケージではあるのですけれども、大きく2つ御提示したのですが、先程私が申し上げた第3の道といいますか、認定プラス裁判所の裁量という考え方は、特になかったということでよろしいでしょうか。

○青山座長 それでは今までの議論の整理といたしましては、調停前置主義に関する特例につきましては、公的な認定制度を設けて調停前置を外すという考え方と、もう一つは、別案という形で書いてありますけれども、裁判所の個別判断に委ねるという考え方を両論併記の形で書き、注1、注2はその両方にかかるということがわかるようにするということ。それから、注2については、廣田委員の御指摘でもう少しわかりやすく書くということにさせていただくこと。さらに、調停前置を外す対象は、従来のように①と②のiii)については外す対象に入れるけれども、協議離婚、協議離縁については、両論あって、その書き方についても、離婚・離縁はもともと協議で自由にできるものであるということをこの理由をきちんと書き込んだ上で、この2つの考え方があるということを示すとということ。それから、認定か、個別的な判断かという説明については、対象をどこまで含めるかによって要件が少し違ってくるという書きぶりを少し改め、個別認定でいく場合の、他方以下の扱いは両論併記という形がはっきりするような形で少し書き直すということ。
 以上ででよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」という声あり。)

 それでは、次に訴訟手続の中止、一定のADRの手続開示があった場合に、訴訟手続を中止するということについての御意見を承りたいと思います。これについても御説明をお願いいたします。

○小林参事官 資料は18ページからでございます。18ページはこういった制度を設ける必要性についてまとめたところでございますので、ここは特に御議論はなかったと思いますので説明は省略をいたします。
 19ページでございまして、ここは具体的な方法についての記述でございます。先ほど来の議論にございましたように、二案ございましたが、この二案については並列的な位置づけがわかるように修正をしたいと思います。
 それから、認定制を採るか採らないかについては、要件の問題と切り離した形で記述をすることを予定したいとしておりますので、パブリック・コメントの段階では少し手直しをしたいと思っておりますが、とりあえずこれに則って説明をしたいと思います。
 大きく2つの考え方がございまして、1つは、一定の適格性を有することについての公的な認定を受けているものであり、かつ、①にございますように、訴訟手続を中止することについて当事者双方の同意があるものについて一定期間を定めて訴訟手続を中止することができるという方法を採ったらどうかというのが前半でございます。後半の方はこのうちの②の要件につきましては、個別事件ごとに裁判所の審査に委ねるという考え方でございます。
 具体的な内容でございますが、19ページの「訴訟係属とADR手続の先後関係」でございますが、これまでの説明では訴訟が係属後にADRを考える場合を想定して議論したわけでございますが、理論的にはADRの手続中に訴訟に係属したという場合を排除するわけではないという確認でございます。
 それから、20ページにまいりまして、ADRの合意は必要ではないかということでございます。
 次の訴訟手続の中止の期間の上限につきましては、いたずらに中止期間が継続することは適当ではないということで、期間は限定した方がいいのではないかということを御提案しております。ただ、その趣旨から言って、期間を限って中止期間の延長を認めるということについても検討する必要があるのではないかということでございます。
 その次が訴訟手続の中止に関する当事者の同意ということでございます。その次が適格性の問題でございますが、この最初の枠囲いの中では、時効中断と同じような基準を最低限のものとして掲げてございますが、ここもなお書きで裁判所の調停の特性を重視すれば、更に内容に踏み込んだ要件が必要になるのではないかという考え方について言及をいたしております。
 それから、認定制につきましては、この場合の認定制についての要請は比較的低いのではないかということを記述いたしておりますが、他方、裁判所が個々の事件において適格性を審査する負担をどう考えるのかということにも言及をいたしております。
 その次が中止決定における裁判所の裁量性ということでございまして、基本的には裁判所の裁量に委ねるという考え方を採っております。したがって、先ほどの調停前置とは異なりまして、仮に認定制を導入したとしても、認定をもって自動的に中止するという考え方は採っていないということでございます。
 その他の部分でございますが、これは訴訟が中止している間にADRで和解が成立した場合でも、自動的に訴訟手続の方が終局したり、あるいは訴えの取下げという扱いになるわけではありませんので、その辺りがきちんと連絡がされるような仕組みをつくっていく必要があるということについて言及をいたしております。
 以上です。

○青山座長 それでは、18ページから御議論をいただきたいのですが、18ページの基本的な考え方については、大方の一致がありましたから、特にこのままでいいのかと思います。 19ページから幾つか論点が出てまいりして、まず、論点4-2で2つの案が書かれておりますが、要件①と②について、②の方を事前認定をするというのが1つの案で、別案と書いてありますのは、②の要件は事前認定制度ではなくて、個別事件ごとに裁判所の審査に委ねるという考え方であり、これは大きく2つの考え方に対立していると思います。
 19ページの下の方の訴訟継続とADRの手続の先後は、どちらが先でもよろしいということで確認しておいていただきたいのです。
 それから、要件の中でADRを利用する合意は必要であるということについては大方の一致があったと思います。手続の中止期間については、一定の期間中止する、上限を画するということのほかに、期間を定めて延長するということについても認められるだろうかというのが原案になっております。
 それから、要件として訴訟手続の中止をするということについては、両当事者の同意が必要であることについては今まで議論がなかったかと思います。
 それから、事前認定をするということになると、追加的に適格性に関する要件が必要となるかどうか、これはさっきの調停前置の場合とは少し異なっており、こちらは手続を一定期間中止するだけですから、そこまで必要かどうかは問題ですけれども、一応そういうことが必要になることもあり得るという形で書いてあります。
 それから、別案の考え方を採って、個別事件について裁判所の認定ということになると裁判所の負担も考えなくてはいけないということを21ページに書いたところで、中止決定をするかどうかは裁判所が裁量を持つのが前提だということで案をつくっております。
 ADRで何らかの和解が成立したということになれば、それは必ず裁判所に連絡をしてもらうということが注意的に書いてありまして、この点は大きな対立があるのは、最初に事前認定をするか、あるいは個別的な判断にするかというところであり、後はそう大きな対立点はなかったところではないかと私は理解しております。
 今までのところで御意見を賜ればと思います。

○三木委員 この論点に限らないのですけれども、今回のペーパーは私の印象では突然認定というものが表に出てきて、それが主案になって、裁判所の個別審査が別案ということで統一されているのですが、本当にそういう議論であったかどうか甚だ疑わしいという印象を持っております。
 特に、この論点4-2に関しては、私の記憶ははっきりしませんが、裁判所の認定が特に必要だという議論はそれほどあったような気がいたしません。私の個人的な意見としましても、要件として当事者間の同意が必要で、しかも、裁判所に完全な裁量権が与えられているという点については大方の意見が一致していたわけですから、当事者が同意し、かつ、裁判所が完全な裁量権を持つ場合に、どうして事前認定が必要かという議論自体が出てくるのかややわからないところであります。
 したがって、委員の皆さんの御意見を伺いたいと思いますけれども、場合によっては事前認定という案自体不要ではないかという気もいたしております。

○髙木委員 21ページの「中止決定における裁判所の裁量性」というところで、裁判所の自由裁量に委ねられるものとされると書いてあって、もし自由裁量が貫かれるのであったら認定は不要という案がここにないので、ここで並列的に並べたらいがかかなと思います。折衷案みたいなことを申しますけれどもちょっと考えました。

○原委員 私も三木委員と髙木委員と同様な印象を持っておりまして、論点4-2の書き方がまた別案としてというので、たった2行だけで考え方もあるという、「も」で出されていて、こちらの方が非常に補足的な意見だったという書きぶりになっていますけれども、議論の経過の中では両論は同じようにあった、むしろ後者の方が強かったような気がしておりますので、別案としのて書き方も少し考えていただけたらと思います。やはり、こういう考え方を採り得るという根拠を書いていただかないと判断がつかないのです。ですから、たった2行ではなくて是非根拠を入れていただきたいと思います。
 21ページに裁判所の裁量性の話が出てくるのですけれども、ここでは当事者の不服申立てが許されないものとされているとなっているのですが、どうして許されないのかがわからないのです。不服申立てが許されないということについて理由づけが書かれていないと一般の人からすると判断がしにくいということになると思います。
 以上です。

○廣田委員 先ほどの三木委員と髙木委員の意見に賛成なのですが、私の認識でも、認定の議論はほとんどされていないと思います。まして、認定の中身、どういうことをやるのか、どういう機関がやるのかということも議論されていないと思います。そこで認定と言われても、我々としては議論していないところであるという認識があって、そこにずれがあるというのは問題があると思うのです。
 もう一つは、21ページの「事前認定制度を採用する必要性は他の特例に比較すると小さいと考えられるが」と書いてありますが、小さいのではなくてむしろ必要がないという意見がある、としていただきたいのです。そういう前提で私は言っていたつもりなのです。

○青山座長 わかりました。そういう御意見が強いのですが、ほかに認定制を支持される方がおられましたらどうぞ。

○安藤委員 私の印象は全く別だったのです。事前認定が主流であって、個別事件ごとに認定すると裁判所は大変だという認識で今までずっと来てしまったような気がするのです。事前認定が主流という考え方でいたのですが。

○青山座長 この論点についてそうでしたでしょうか。例えば、強制執行などはまさにそうですし、時効中断効のところもそうだったと思いますが、中止するかどうかというところも同じでしたでしょうか。私は違う考え方を持っているのですが。

○安藤委員 私の認識では、事前認定がそのまま流れてきて、個別に裁判所が審査すると、裁判所としてはそこまで一々やるのが大変だと流れで来てしまったような気がするのです。
 ですから、パブリック・コメントのためだけに事前認定と並列するのは話がちょっと変わってきたのかなという気がするのです。

○青山座長 事柄の性質によって、一番強いのは執行力を与えるという場面ですが、何かきちんと事前認定をしなければならないということですけれども、裁判所はこれがあろうとなかろうと中止という措置を採ることはできるわけです。
 今でも追って指定という形で、両当事者間にADRを利用するという合意と、訴訟手続を中止することに合意がある場合、どういうADR機関でやるのかについてまで裁判所が立ち入って審査する必要があるかどうかというのがほかの方々の御意見だと思うのです。

○綿引委員 私も認定について議論した記憶が全くなかったため、本案と別案という書き方は唐突な感じがいたしております。そこは三木委員が言われたとおりだと思います。

○青山座長 先程の訴訟手続の中止についての不服申立てについて、何か言うことありますか。

○小林参事官 前回のときにもちょっと議論になったかと思いますが、元々同意を前提としていますので御心配されているようなケースは実際にはほとんどないのではないかと思います。

○青山座長 要するに、裁判所が一方的にADRに付しなさいということになると、裁判を受ける権利という点から当事者に不服申立ての期間を与えなくてはいけないということになります。訴訟手続は中止するということにつき両当事者が合意し、ADRを利用する合意しているわけです。その上で訴訟手続を中止をしたからといって、不服申立てをするのは論理的にはおかしいのではないでしょうか。
 取消しは裁判に引き戻すわけですから、それは裁判所が本来やるべきことをやるのであり、それに対して不服申立てということはないだろう、どちらについても不服申立てはないということでできているのです。

○山本委員 中止決定の方は私も異論はないのですが、取消決定についてはなお議論はあり得るのかなと思います。つまり、もう訴訟へ戻してほしいという当事者があった場合に、裁判所はなおも中止決定の効力を維持するという場合も論理的にはあり得ないことではなくて、民事訴訟法の現在の解釈論でも、裁判所の事由による中止は当然中止でそれについての不服申立ての余地はないと思いますが、当事者の事由を根拠とする中止については解釈論としても不服申立てを認める見解もあると承知しております。そこは明文としては書かないと思いますが、解釈論としては残るかもれしれないと私自身は思っています。

○小林参事官 いずれにしても、現行制度の御説明をした上で、今回の制度は特にそれを踏襲するということを触れていますので、もし現行制度に異論があればそれも含めて議論になることと思います。認定制につきましては、これはまさに後でまとめて出てくるところでもあり、横断的に議論していますのでここでも御提示をしたということであります。仮に、ここは裁判所による個別の裁量の方が圧倒的多数の意見であったということであれば、それを踏まえたパブリック・コメント案にしたいと思います。

○山本委員 私もそれで特に異論はないのですが、ただ、ほかのところで認定制度が入り、認定されたADR機関ががもしできるとすれば、それについて裁判所は要件を具体的に認定することなく中止の決定の対象にすることができるという制度にすることも可能ではないかと思っております。つまり、ほかのところで認定がなされた認定ADR機関は、実質的に同じような適格性が既に認定されているということですから、それについては裁判所は個別に判断する必要はなく中止の対象にするということもできるのではないかとは思います。

○三木委員 私は今の山本委員の御意見にはやや異論を持っております。認定制度がそもそも入るかどうか自体相当に疑わしいのですが、仮に入るとした場合でも、問題となる法的効果によって認定要件の厳格さや中身が違ってくるわけで、一律に認定されるということはあり得ないと思います。執行力の付与に関する認定と、例えば裁判所が裁量権を持っている中止に関する認定が同じ要件というのは普通考えにくいわけですから、認定制度がすべて横断的にあるという前提で議論をしていいかどうか自体まさに議論になろうかと思います。
 もう一点、中止に関しては、委員のほとんど全員の意見は裁判所の自由な裁量権を認めるとしているわけですから、認定制度をここに置くということは行政機関が自由裁量権の一部を制約するということになるわけです。それはまた別な問題を生みますから、そういった点もこの論点に関しては論議しなければいけないということがあります。

○山本委員 ここで書かれている前提は、考えられる適格性に関する基準が、ここでは論点1-2の①、つまり時効中断効のところとパラレルで、調停前置もパラレルであるという前提を採ればということであって、もし適格性が異なるのであれば執行力のところには流用できないということは三木委員のおっしゃるとおりと思います。

○青山座長 わかりました。こういうふうに整理させていただきます。
 論点4-2は、事前認定の案が先に出てきていますが、順序を後にして別案として書いてある方を上に出すことにする。事前認定は入れる必要はないという意見もありましたけれども、順序を逆にして入れ替える、その場合根拠をはっきりと分かるように書くということでどうかと思いますが、いかがでしょうか。

○廣田委員 山本委員がおっしゃったようにほかのところで認定されれば、ここでも使えるのではないかということは別として、この問題として議論する場合に、むしろ問題の立て方は中止という規定を置くか置かないか、というだけのことだったのではないかと思います。それは、中止という規定を置けば裁判所が中止をするときの論拠となるだろう。しかし、中止という規定も要らないという可能性もある。それだけが論点だったと思うのです。
 この問題について、認定が必要だと思っている方がいらっしゃるのかどうか、もし、それが必要でないと思うのだったら、認定は外してしまって、むしろ中止ができるということを念のために置くか置かないかをパブリック・コメントにかければいいのではないかと思うのですが。

○青山座長 中止について置くか置かないかは論点4-1で置くということで御異論はないと思うのです。論点4-2では、そのための要件をどうするかということであり、1つは当事者双方の同意があるとか、中止期間を限定するとか、そういう要件を書いてあるわけです。それらの要件の中に、ADRの適格性の判断を要件に加えるかどうかということであり、落とすとすれば、②の公的な認定を受けているものであることに絞られてくると思うのです。

○山本委員 ②は適格性を有するということと、認定を受けているということ両方を書いているわけですが、勿論、ここでは適格性が必要であるということは異論はないと了解してよろしいのでしょうか。

○三木委員 その点は両論あると思うのです。つまり、認定を別にした適格性が必要だという議論はあり得ると思います。他方で、当事者が合意して、かつ、裁判所は完全な自由裁量を持っているわけですから、そういった要件は要らないという議論も十分あると思います。ですから、そこは両方をお書きになって結構だと思います。ただ、認定に関しては委員が誰一人としてそういうことを言っていないということであれば、載せる必要はないと思います。

○青山座長 誰一人ということはなかったのはないでしょうか。

○三木委員 山本委員の議論は別ですけれども、それ以外では私は誰も言っていないと思うのです。

○青山座長 安藤委員のように、これは認定が必要であるとおっしゃっている方もいました。

○三木委員 さっき座長おっしゃったように、安藤委員がおっしゃったのは一般論であって、この論点に関してはおっしゃっている人はいないと私は認識しています。

○青山座長 そこは受け取り方が少し違うのかもしれません。

○髙木委員 私は選択肢としては、法的な事前認定を入れてもいいとは思っています。中止をしてもいいと言った場合に、やはり、適格性(要件)が問題になってくるわけで、いろいろな要件を裁判所が判断するのですけれども、判断しやすいようにしておく仕組みとして認定があってもいいのではないかという意見があることも十分予測されるわけです。ですから、選択肢として残すということでいいのではないかないかと思います。

○廣田委員 パブリック・コメントの仕方ですが、この部分は合意点に達している部分が相当多いと思うのです。合意点に達しているところを並べて、なおも意見が違うところだけ、すなわち、適格性に関して何らかの要件を置く必要があるかどうか、必要があるという場合でも、認定制度を設けるかどうか、という整理をするということだけでいいのではないかと思うのです。その後の議論は、その後の議論としてすればいいわけですから。

○青山座長 わかりました。一致している要件は、両当事者がADRを利用するということについて合意をしているということ、手続の中止をしてほしいということを両当事者が合意しているということ、それら2つの要件が必要であるということについては、御異論がないと思います。さらに、一定の適格性を備えているということを要件として加えるかについては両論があり、更に、適格性について事前認定をするかどうかについては、事前認定が必要だという方は少数で、大部分が事前認定は必要でないという意見の分布であったということでよろしゅうございますでしょうか。

○三木委員 1点確認だけさせてください。認定を要件として入れる場合、どういう認定なのかを明らかにしなければいけないと思います。先ほど山本委員が例示的におっしゃったように、認定している機関については、裁判所はそれ以上の審理をすべきではないという意味があって、認定制度を入れるということであれば、それは1つの考え方だと思います。けれども、それは裁判所の自由裁量権の一部制約されるわけですから、裁判所が自由裁量権を有するという要件とは別のものになると思うのです。

○山本委員 私はそういう趣旨で申し上げたのではありません。認定を受けていれば、当然に中止の対象になるということで、裁判所が中止を認めるかどうかということについての裁判所の自由裁量権は別途残るという趣旨で申し上げました。

○三木委員 そうすると、そもそも適格性の要件が要らないという議論もあるわけで、それとは別案になるわけですね。ですから、その辺が明らかになるように、認定制度を入れるということは、何かの制度を否定することになるので何と対立する議論なのかということを明らかにしていただきたいと思います。つまり、それは付加的な要件ではなくて、今まで議論された要件のどれかと矛盾する要件になると思います。

○青山座長 裁判所が個別的に判断する裁量を働かせる際、ADRがどういう機関であるかということに立ち入って審査しなくても済むという程度の認定だと思うのです。そのようにしたところで裁判所の裁量が否定されるわけではないと思うのです。

○安藤委員 ADRがいかに利用されるかは、一つ後ろ盾がなくてはいけないと思うのです。そのためには、当然のこととして、公的な認定が一番バックアップになるはずなので、これはすべてにおいて入っていることが必要ではないかと思うのです。

○青山座長 それに対しては、ADRの多様性ということと反するのではないかという議論もあります。必要な部分に限って強制執行力を与える場合には、こういうADRでなければいけないという事前認定が必要だという意見はかなり説得力がありますけれど、ADRを利用しようという場合に、何らかの形のお墨付きがあったADRでなければ利用しないというのではなくて、利用したい人は自由に利用してほしいというのが、ADRの多様性の趣旨であり、そのような趣旨からこの議論が始まっているのではないかと私は理解しているのです。

○安藤委員 裁判にかけないでお互いに話し合おうという場合には、そこに何らかのバックアップがないと裁判に持って行かざるを得ないと思うのですが。

○廣田委員 安藤委員と私の意見が違うところは、ADR基本法をつくろう、国もADRを促進、拡充しようではないかということ自体が即バックアップになるのですから、個々について、一つずつお墨付きは入らないのではないかという考え方もあるわけです。私はその前提で話をしているわけです。ADRの促進法についてこうやって集まって議論していること自体がADRをバックアップしている姿勢にあると理解して、私は発言しているつもりなのです。
 それ以上のバックアップは必要はないが、後で出てくるような法律扶助などの実質的な面でのバックアップが特に必要となる場面ではこういう考え方もあるのだということを認識していただきたいと思います。

○安藤委員 私はADRの中にはA、B、C、Dというランク分けがあっていいのではないかと思います。そのうちAはこういった公的な認定を与え、それ以外のものには何にも与える必要はない、自由にやってください、というふうに考えています。こういったものになっているADRについてはとある程度括る場合は、公的に認定した方がADRの促進に役立つのではないかと考えているのです。

○青山座長 その基本問題はまた後で特に認定のところで出てきますので、そちらに譲らせていただいてよろしゅうございますか。
 それでは、ここまでの議論はこういうふうにさせていただきます。論点4-1で訴訟手続の中止に関して民事訴訟制度に特例を設けることについては大方の一致がありました。そこで要件についてここに書いてあることを入れ替えまして、要件は、両当事者がADRを利用するという合意があり、かつ、裁判所に中止してほしいという合意があるという場合に、裁判所は自由裁量で中止することもあるし、中止しないこともある。
 そのほかの要件としては、一定の適格性を備えているADRということにするかどうか。
 更に加えて、その適格性を事前に認定することが必要かどうか、という意見があり、そ多数意見と少数意見に分かれているということがわかるような形で整理するということでよろしゅうございますか。

○髙木委員 細かいことですが、20ページの中止の期間の上限のところで、延長とまで書いてあるのですけれども、もしここまで書くのであったら、中止の回数はどうなるのでしょうか。1回に限るのか、再度の中止の場合はどうするか、が気になったものですから、漠然とでもいいので検討する必要があると考えられるというところに書いた方がよいのではないでしょうか。

○青山座長 今の御指摘は延長ではなく、一度中止して、その中止を解消して、また別に中止した場合ということでしょうか。やや細かいことなので工夫させていただけますでしょうか。どこまでパブリック・コメントに付すのがいいかどうかということも含めて考えさせていただきたいと思います。
 それでは、「裁判所による一定のADRを利用した和解交渉の勧奨等」と、論点5-2の裁判手続との連携に関するその他の論点に入りたいと思います。論点5-1と論点5-2について、事務局から御説明をお願いいたします。

○小林参事官 論点5-1でございますが、これは元々は付ADRということで、提示がされ、その後、勧告という形で御議論いただいたわけですが、「勧告」というと拘束力があるようなきらいがあるということで、今回は「勧奨」という言葉を使っております。いずれにしましても、裁判所が裁判所外のADRによる解決を図ることが適当であると認めた場合にそれを勧めることを明確化するかどうか、という議論でございます。
 これにつきましては、特に中長期的な視点からは、ADRの利用促進という観点から積極的に検討すべきではないかという御議論と、実態問題としてそのようなADR機関はなかなか存在しないのではないかという御議論、あるいは先ほどの中止が認められれば、運用上そういった形で利用も勧めることができるため、敢えて制度化する必要はないのではないか、という議論と両論ございました。ここでは両論あることを示した上で御意見を伺うという形で提示をしたらどうかということでございます。
 それから、23ページにまいりまして、論点5-2につきましては、裁判所によるADRのための証拠調べ等の制度の整備、ADRにおける争点証拠整理などの裁判における活用ということでございます。これらにつきましては、一定の要請やニーズがあることから検討したわけでございますけれども、2巡目の議論でもかなり否定的な議論が強かったということで、議論があった旨と否定的な議論が強かった理由を提示した上で御意見を伺うということにしてはどうかと考えております。
 以上です。

○青山座長 論点5-1は、付ADRについては、以前「勧告」と言っていたのですが、「勧告」というのはどうかという御意見がありましたため、本文の下から3行目、利用を勧めることができる旨を明確化してはどうかという考え方もあるということで、これは今までの議論でも反対意見がだいぶありましたものですから、こういう形で趣旨を説明し、パブリック・コメントにかけて御意見を聞いてみようということであります。
 それから、証拠調べを相互に利用できるという論点5-2につきましても、仲裁と違ってこちらでは難しいのではないかという御意見がありました。つまり、裁判所に証拠調べをしてもらうのも難しいし、ADRで証拠として出てきたものをそのまま裁判所に利用してもらうということ、どちらも難しいのではないかという意見が大勢であったのではないかと思います。それらの点も含めて、こういうことを検討しましたという報告的なことを書いて、パブリック・コメントに付したらどうかというのが原案でございます。
 論点5-1と論点5-2について、続けて御意見を聞かせていただければと思います。

○横尾委員 私は論点5-2につきまして、私の意見がここに反映されているようなことだとすれば、ちょっと趣旨が違うのではないかと思っております。①でございますけれども、私はこの部分に関連して、消防署等の第三者機関のお話をしたと思います。そのときに裁判所ではなかったということで、座長のご判断で、第三者機関のようなことですというおまとめがあったように思っております。
 したがって、もし、ここで取り上げていただけるのであれば、裁判所の後に等を付け加えて裁判所等ということにして頂けないかと思います。
 つまり、ADRの審理のための裁判所による証拠調べに、裁判所等ということではないかなと思います。
 ただ、この論点は、裁判所との関係で述べられているのであって、私が申し上げたようなことをここで扱うことが適切ではないということであれば、そのご判断はお任せします。
 ②でございますけれども、これについてはむしろ否定的な意見が強かったと考えておりますし、私自身もそれについては賛成ではございません。ただ、何かの前提がありまして、当事者の合意などあった場合に、これは使えるということでございますので、そういう意味で、②の上から3行目から4行目にかけまして、それらを訴訟手続において活用するための制度ということではなくて、活用できるとか、あるいは活用を選択できる制度をとしていただければと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○山本委員 論点5-1の趣旨のところで、これは純粋に書きぶりの話なのですが、賛成論と反対論の論拠が提示されているのですが、反対意見・消極意見の論拠として、適切なADR機関が現在は存在しないのではないかという点に対して、賛成論の方は中長期的な観点の問題である、という議論が確かにされていたと思うのです。それともう一つ反対論の方で、あえて整備をしなくても、運用上利用を勧めることで十分ではないかという理由が提示されておりますが、これに賛成する考え方の方からは裁判迅速化法とか、計画審理という話が出て、こういう法制的な根拠がないと、裁判官の方はシュリンクして、実際の運用上、利用を勧めるこは期待できないのではないかという御意見が出ていたと思います。その点もここに加えていただければと思います。

○原委員 この23ページと24ページの前半ですが、ちょっとわかりにくいという印象があります。実際には、例えば消費者側がトラブルを持ち込む場合、証拠調べとか、そうしたところが一番のポイントになるわけで、そこを活用したいという気持ちもあって、共通的に法律の中に入れるのが妥当かというところでは、いろいろな意見があると思っておりまして、括弧の中にはそのような提起の仕方でいいかと思うのです。その趣旨以降、1ページ分くらいで、何が問題になるのかということを書いていただきたいと思います。
 特に、24ページの「他方」というところから入っていて、「当事者間で不起訴の合意、自白契約、仲裁鑑定契約等の契約を結ぶことによって」と書かれていると具体的に何を指しているのか、特に不起訴の合意と書かれている部分が非常に私としても何を言っているのか、不起訴の合意自体はわかるのですが、それと証拠調べとがうまく自分の中で整理ができなかったというところがあって、もうちょっと丁寧な書き方をお願いしたいと思います。

○青山座長 私もよく事務局に文句を言っているのですが、肺活量が大きい人が書くとちゃんと読めるのですけれども、私みたいに結核などをやると、肺活量も少なくなってまいりまして、最後まで見ようとする窒息してしまうと冗談みたいに言っているのですけれども、もう少し噛み砕いたわかりやすい表現になるよう工夫させていただこうと思います。

○原委員 パブリック・コメントをするとなったときに、執行力の付与の話とこの証拠調べの辺りが、相当に具体的に大きな問題になってくるような感じがしております。

○青山座長 先程の横尾委員の御発言の中の、23ページの裁判所等による証拠調べという等に関して、具体的にどんな機関を考えておられるのですか。

○横尾委員 第三者機関、つまり中立的な公共機関、消防署とか研究所とか、そういうようなところを想定しております。事業者が主宰しているADR機関による調査では不十分であるという場合で、中立性を持ったと言われている機関で見てほしいという要請があった場合に、そこの協力を得たいということでございます。

○青山座長 わかりました。ほかに何か御注意いただくことはございますでしょうか。

○小林参事官 横尾委員の御発言に関連して、2巡目でも同趣旨の御発言があったことは記憶しているのですが、調査対象としての第三者機関ということではなかったかと理解していたのです。要するに、そういう照会があったときに協力をしてほしいということで、第三者機関自身が何か証拠調べ等をするということではないということではないでしょうか。

○横尾委員 私は今申し上げたとおりの趣旨でお話をしたつもりでおります。もし、そのような受け取り方をされたのであれば、申し上げた趣旨と違うということになると思います。議事録を確認していただきたければと思います。

○小林参事官 確認したいのは、修文の関係で裁判所等というふうにしてほしいということだったのですが、横尾委員の御趣旨は、裁判所のようにその機関が証拠調べをするということではなくて、そういう照会があったときに、そういう機関にも協力をしてほしいということだったのではないかと理解しております。御趣旨はわかったのですが、修文を裁判所等とするのはむしろどうかと思うのですが。

○青山座長 そのような照会があった場合には、資料を提出してほしいとか、そういう意味ですね、わかりました。

○綿引委員 訴訟手続との連携という問題点で、横尾委員と原委員の方から第三者機関がもう少しいろんな資料を出してくれれば、ADR機関でももう少しいろんなことができるのではないか、という御指摘なのですが、ここの論点とはやや違うのでその辺は工夫していただくということになるのでしょうか。

○小林参事官 せっかくの御指摘ですので入れるようにします。

○横尾委員 私がここで申し上げたことが、ここに反映されているというような御説明をいただいたものですから、そうではないのではないかということでございます。綿引委員から御発言がありましたように、ここで取り上げるかどうかについて引き続いて御検討いただければと思います。

○青山座長 この枠の中に入れるのはやや難しいかと思います。要するに、裁判所との連携という大きな枠の中に入っているものですから、この枠の中に入れるのは難しくても、下の方の説明として、裁判所以外の機関もADR機関が両当事者に和解をあっせんしているときに、正確な資料があればもっと和解が進むという場合に、その正確な資料なり、何なりについて、第三者機関に協力が求められないかということをどこかに文章として書くということでよろしゅうございますか。

○小林参事官 工夫してみます。

○青山座長 それでは、この点は今の点も含めてよろしゅうございますでしょうか。今のような御趣旨を含めて修文をさせていただくということにいたします。
 次は、法律扶助の対象化という難しい問題ですが、これについて御意見を賜りたいと思います。まず事務局から御説明をお願いいたします。

○小林参事官 24ページ以降になります。この問題は意見書でも提示されている議論でございますが、この枠囲いのなお書きにございますように、現在も民事裁判等に先立つ和解の交渉で、特に必要と認められるものにおける代理人費用という形でADRの場合も対象になり得るということでございます。
 これを踏まえて更にどうするか、ということが議論になるわけでございますが、基本的には、このパブリック・コメントにおいて御意見を伺うという形をとったらどうだろうかということでございます。
 ただ、25ページの趣旨のところに留意事項等として触れさせていただいております。まずは、現行制度の下においても、訴訟との関わりという観点から、既に制度の対象になっているということを示した上で、更にこのADR自体を独立して対象にするという議論につきましては、同制度を巡ります最近の状況、財政状況、あるいは今後の制度自体の見直しの議論を踏まえるとともに、これは御議論をしていただいたところでもございますけれども、自主的な紛争解決手段としては相対交渉とADRの2つあるわけでございますから、このうちでADRのみを対象とすることについて、どう整理するのかという問題がございます。
 それから、ADRに限りましても、司法型ADR、それから国の政策上かなり迅速な権利救済が必要とされる分野につきましては既に行政型ADRが設置されていて、それなりの国家資源の投入が行われているということに加え、民間型ADR全般をこういった制度の対象にすることについてどう考えたらいいのかという問題について、十分整理する必要があるのではないかということに言及いたしております。
 それらを踏まえますと、現時点で直ちに法制上の措置を講ずる必要は乏しいのではないかという意見もございます。
 他方、せっかくこのADRに対する基本的な法制の整備をするということであれば、現行制度の枠組みにとらわれない検討を行う必要もあるのではないか、という御議論ございます。これらを含めまして、御意見を求めるという形を取ってはどうかということでございます。

○青山座長 やや微妙な書き方をしておりまして、「したがって」というところからの3行は、現時点では更に法制上の措置を講ずる必要は乏しいのではないかとも考えられます。
 しかし、「他方」というところからは、現行法の枠組みにとらわれずもう少し広く検討を行うということが必要だという意見もありましたので、そのことを反映させてここに書いているのですが、こういう書きぶりでいいのかどうかについて、御意見を賜りたいと思います。

○三木委員 書きぶりの問題ですが、25ページの「したがって」というところと「他方」とでは、両論がどうしてぶつかっているのかが必ずしもはっきりしないように思います。「したがって」というところで、国民の裁判を受ける権利を保障するというのが現行の民事法律扶助制度の意義と書いているのに対して、「他方」という部分で書くとすれば、裁判を受ける権利を保障するだけでは足りず、むしろ裁判を含めて多様な紛争解決手段の中で最も適切な紛争解決手段を受ける権利を保障しなければいけないのだという論旨がこういう議論の前提になっているのだろうと思います。したがって、そのことがわかるような書きぶりにした方がいいと思います。

○山本委員 全く三木委員の御意見に賛成です。私も民事法律扶助法の制定過程に関与しましたけれども、当時、司法制度改革審議会の議論がまだ始まる前の頃にはADRの国の中での位置付けがはっきりしていなかったわけです。
 ところが、我々の議論の前提として、ADRは国民の権利保護の多様性として、また、裁判と並ぶ選択肢として位置づけられているわけですから、その当時理解されていた裁判を受ける権利は現在においてはもう少し広がって、裁判を含む多様な選択肢の中で、当事者の権利利益が保護されるために最も適切な選択肢があることが保障されるという利益を実現するものとして法律扶助が位置付けられなければならないのではないかと思います。そして、現行の民事法律扶助法の枠組みを根本的に変える、あるいはそれにとらわれないというものではなくて、むしろ当然に延長線上にあるものとして理解しています。
 事務局がおっしゃる予算上の制約は十分理解できることであり、現時点において予算が十分でないときに、どこに重点的に予算を投入すべきかという問題設定が1つあり得ます。その場合、訴訟を中心に予算を投入すべきであるということについては特に異論はありません。しかし、将来的に、長い目で法律扶助制度を見た場合、この機会に、少なくとも法制上の根拠として、仲裁を含めてADRに対して予算を投入することができる根拠を与えておくべきではないかと思っております。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○廣田委員 私も三木委員と山本委員の意見に全く賛成です。これはどこまで議論するかの問題ですけれども、法律扶助の対象とする範囲をどこまで見るかということに、ADR独自の難しさがありまして、現在の法律扶助制度は、弁護士費用にウェートを置いていると思うのです。
 ただ、ADRの場合、ADR機関に払う手数料がありますので、その扶助ということになれば、ちょっと違う要素も出てくる可能性があります。そこまでパブリック・コメントで意見を聞くかは別問題として、いずれどこかで決めておかなければいけないと思うのです。手数料の扶助がADRを促進するという要素がかなりありますが、これは訴訟における訴訟救助に相当するものです。
 ここは十分に議論していないので、パブリック・コメント以後でもいいかと思います。

○青山座長 わかりました。それは今までの代理人報酬を中心に考えて、資料もそれを参考につくっておりますので、この問題はパブリック・コメント以降にさせていただいくとうことでよろしゅうございますか。

(「はい」という声あり。)

○青山座長 それでは「他方」以下の書き方について、三木委員のおっしゃった対立軸がはっきり見えるような形で書くということと、財政的な点について中長期的には現行法の規定にとらわれることなく、ADRや仲裁も含めて国民が最もふさわしいと思う紛争解決をするための法律扶助、ADRの利用促進に必要な費用として法律扶助をということを少し打ち出す形で書くということでよろしゅうございますか。
 これは私どもの検討会と違う、司法アクセス検討会というところで、法律扶助の問題をやっております。私どもがあまり積極的ではないけれども考え方を示して、それについて意見を聞くという形が望ましいのではないかと思っております。今のような書き方にするということで、事務局はよろしいですか。

○小林参事官 はい。一点確認したいのですが、先ほど山本委員からございました財政的な問題については触れた方がいいということでしょうか。

○綿引委員 あまり夢のようなことばかり言っていてもいかがかという気もしますけれども。これは国の予算の配分の問題と切り離せない問題であるということを念頭に置いた上で、議論していかなければいけない問題であると思います。

○小林参事官 私どもといたしましては、既に4行目の「同制度を巡る最近の状況を十分に踏まえ」というところに入れたつもりであったのですが。

○青山座長 それはお任せいただいてよろしゅうございますか。

○綿引委員 あまりバラ色の夢だけではいけないかなと思っただけです。

○髙木委員 その問題は確かにあるのですけれども、考え方は逆であって、法的に根拠がなければ財政上の裏付けは取れないはずなので、入れることで財政的に裏付けることになるということではないかと思いますので、格調高く、裁判を受ける権利の中身として触れて入れていただいた方がいいと思います。

○青山座長 わかりました。御二方の意見は十分わかりましたので、それらを踏まえて、パブリック・コメントの原案をつくって、次回にまた議論をいただきたいと思います。
 それでは、次に検討事項2-7の「ADRの適格性の確認方法」について、御説明をいただきたいと思います。

[特例的事項③(ADRの適格性の確認方法)]

○小林参事官 先程来、何度か議論になっております、適格性の確認方法について検討事項2-7に基づいて、御説明をしていきたいと思います。
 パブリック・コメントの段階では、先程の議論を踏まえまして、少し前の方を整理する関係で、こちらの方の書き方も変わってくるかと思いますけれども、とりあえず現在の資料を前提に御説明していきたいと思います。
 これまでの特例的な内容につきましては、一定の適格性が必要ということで、それについてどう担保していくのかということにつきまして、1つの考え方として公的な認定について、それを想定した議論をしてきたわけでございますが、ここで総論的、横断的にもう一度議論を整理しようということでございます。
 まず、認定方式を採り入れることについて、慎重論を私どもなりに整理をさせていただいております。①につきましては、手続解決基準の多様性の重視が、ADRの健全な発展を図るための基本理念に関連して掲げられているわけでございますが、たとえ特例の適用対象を画するためとはいえども、こういう公的な認定制度を設けることについては、こうした理念に矛盾するのではないか、むしろ実質的にADRを格付けするものと受け取られるのではないか、ということが1つの問題でございます。
 それから、2番目の問題としまして、認定制度を導入いたしますと、当然認定したまま放置するということになると、制度として完結していないわけでございまして、その要件を満たさない場合、認定の取消しが必要になってくるわけでございます。そうなりますと、その程度はともかくとして、認定後も公的な機関による継続的チェックが、少なくとも、観念的には必要になるわけでございます。しかし、そういうことはADR機関の自主性を損ねるおそれがあるのではないか、というのが2番目の議論でございます。
 3番目の問題としまして、やや理念的な問題かもしれませんけれども、元々、司法制度改革が事前規制型社会から事後チェック型社会への転換を図ることを目的として行われているにもかかわらず、その足元で事前認定方式を採り入れるのはおかしいではないか、という議論も当然あり得ると思います。
 私どもも、決して認定制度先にありきと考えているわけではございませんし、これらの慎重論には十分耳を傾けるべき指摘が含まれていると考えております。仮に、認定制をどうしても導入せざるを得ないということであっても、当然これらの指摘で懸念されている弊害が、できるだけ小さくなるような形の制度設計を考えていく必要があると思います。
 それはそれとして、認定制の導入を検討する必要があるのではないかというような論拠を次に掲げてございます。
 1つは、多様性との関係でございますけれども、確かに全体として多様性の確保は重要であると考えておりますが、その多様性を確保するためにこそ、ある意味では訴訟との競争も可能となるような法的効果を付与するという途も開いておくべきではないかということがございます。
 勿論、A、B、C、Dというランク付けの議論もありましたが、これは決して価値判断を含むものではございませんで、そういう法的効果が与えられるADR機関が優れているとか、あるいは一級であるとか、ほかに比べて優良な機関であるということではなくて、それぞれのADR機関としてどういう活動をしていくのか、ということの方向の違いから、法的効果の付与のないADRがでてくるかと思います。さらに、それは要件がない場合もあるでしょうし、要件を満たしているにもかかわらず、いわゆる手を挙げないというADRもあるかと思いますが、そういうようなADRについても、それぞれの特色を生かしつつ、国民の多様なニーズに応えていくことは十分可能であるわけでございます。むしろ、それぞれの特色を生かしつつ、国民の多様なニーズに応えていくことが期待されているのではないか、ということがまず第一点でございます。
 2点目の問題としましては、これも各論の中で何回か触れさせていただいておりますが、まず法的効果の付与の対象となるADRにつきましては、その効果の重みに鑑みますと、一定の適格性を満たすものに限定する必要があると考えられております。ここについては、それぞれの各論でも、かなり意見の一致が見られていると思うのですが、問題はその次でございまして、適格性をどう担保するか、あるいは、予見可能性をどのように担保していくか、ということでございます。今後、各種措置を講ずることによって、ますます多種多様なADRが生まれることになると思いますけれども、現状であっても、特別の法律に基づくことなく設立されるADR機関ではそれぞれの規則、あるいは当事者間の合意によって設定される手続、解決基準にしたがって提供されている状況にあるわけでございます。勿論、今回の検討の中で、最低限のルールについて検討したわけでございますが、これはほんの一部分にしか過ぎないわけでございまして、基本的には規則や当事者間の合意に委ねられているということでございます。
 こういう状況の中で、この特例を与える適格性を満たしているかどうかについての判断を一義的に当事者、最終的には裁判所ということになるのかもしれませんけれども、これに委ねるということにつきましては、当事者の予見可能性を確保するという観点から見て現実的ではない面があるのではないか、かえって二次的な紛争の原因になりかねないことも多いのではないかということが、認定制を検討する必要があるのではないかという1つの問題意識としてあるところでございます。
 次の○にございますように、それは勿論、それぞれの項目によって色合い、必要性の強さというのは変わってくるのではないか、ということでございまして、これまでの議論とも一部重複するわけでございますが、まず時効中断につきましては、非常に影響も大きいわけでございます。予見可能性を確保する必要性も高いということになるということからすれば、やはり認定制について検討する必要があるのではないかということでございます。
 ②の執行力につきましては元々、非常に強い法的効果でございますので、慎重の上にも慎重を期する必要があるのではないか、あるいは、当事者の主張・立証に委ねるべきものではないのではないか、という議論があったわけでございます。
 それらに比しますと、次の調停前置主義、あるいは訴訟手続の中止につきましては、若干必要性は変わってくるのではないか、ということでございます。本日議論いただいたわけでございますが、例えば、先ほどの訴訟手続の中止はむしろ認定制が必要だという議論の方が少数であったと受け止めておりますし、それは私どもの整理においても、この部分についての認定制の必要性は相対的に落ちるのではないかと考えております。
 調停前置につきましても、調停前置であるから予見可能性が必要だという議論と、この部分については、それほど必要ではないのではないかという議論が両論ございました。したがって、認定制についても、先ほどのように両論という形になったと理解いたしております。
 3ページでございますけれども、専門家の活用につきましては、これも前回御議論いただいたところではございますけれども、やはり弁護士法72条が刑罰法規であるということ、それが不明確ではないかという御指摘を受けて、検討が行われているという背景からすれば、できる限り解釈の余地が残らないような形の規定整備が必要ではないかということでございまして、やはり認定制ということについて議論する必要があるのではないかと考えております。
 1つ飛びまして、1つの考え方として、これも何度か御議論が出ていたかと思いますけれども、認定方式と併せまして、一歩進めて、当事者立証方式を基本としつつ、事前認定方式も補完的に採用するという考え方もあり得るのではないかと考えております。
 前回、時効のところでそういう御議論があったかと思いますけれども、これも十分あり得る考え方ではないかと考えております。ただし、問題点としては、この方式を採った場合、事前認定がある場合でも、事前認定による推定が覆るというケースが出てくることになりはしないだろうかということがあり得るわけでございます。この点については、そういうデメリットがあることにも留意する必要があるのではないかということをお示しいただいております。
 4ページにまいりまして「事前認定方式」でございますが、結論から申しますと、この部分について御意見を伺うという形を取っております。この辺りの提示の仕方については、先ほど来の議論を踏まえて、両論がわかるような形でお示しをしたいと思っておりますが、御意見を伺うという形を採りたいと思っております。
 なお、注のところでございますけれども、仮に公的機関が事前認定をするという方式を採った場合、具体的にどこがそれに当たるのかということにつきましては、例えば国の行政機関とするということは考えられるわけでございますが、更に具体的にどのような行政機関かということにつきましては、これは基本的部分、あるいは一般的部分を含めまして、この後に議論いただきます法律の適用範囲の議論と絡んだ法制の枠組みとも関連してくる問題でございますので、現時点で具体的に示すことは難しいということを触れております。
 それから、5ページの方でございますが、これは「事前認定方式の基本的な仕組み」として1つの御提案でございますけれども、これも事前認定方式に絡みます嫌味を少しでも払拭するという意味で機関ごとの認定ではなくて、手続ごとに認定をするという方法が考えられないかという提案をしているのが1つでございます。
 それから、これも本日御議論になったと思いますが、基本的には特例ごとに基準を設定するというのが理論的な整理だと思いますけれども、他方、利用者、あるいはADR機関側の現実的なニーズを踏まえますと、結果的に多数の認定が並立することは、かえって混乱を招くだろうということで、できる限り共通化できるものについては共通化したいという考え方を示しております。
 そういうこともありまして、これまで御提示している案につきましては、比較的、共通的に時効中断効の認定の要件をベースに、それにどういうものを付加していくか、あるいは付加する必要があるかどうかという形で御提示しているわけですが、その背景となっているのは可能であれば、できるだけ認定については共通化を図りたいという考え方でございます。
 以上でございます。

○青山座長 それではここで3時25分まで休憩させていただきたいと思います。

(休  憩)

○青山座長 審議を再開させていただきます。先ほど検討事項2-7のADRの適格性の確認方法につきまして、事務局の方から既に御説明をいただいておりますので、御議論をお願いしたいと思います。
 議論していただく事項は、まず1ページにADRについて事前認定をすることについてのデメリット、メリットをそれぞれ3点ぐらいずつ書き連ねてございます。そして、事前認定をするとすれば、対象となる事項は2ページに時効中断、執行力、調停前置主義の不適用、それから訴訟手続の中止、弁護士法72条、という5つぐらいの事項があるのではないかということが説明してございます。
 それから、3ページに行って、事前認定方式以外にも、当事者立証方式と個別的に立証方式と、それから事前認定方式を補完的に採用するという考え方もないわけではないという前提で、そして、具体的に4ページから論点1で、認定は各機関が自己申請をして、そして、公的機関が認定するという方式を考えているがどうだろうか、しかし、どの機関がやるというようなことについて方向付けをすることは困難であろう、と書いてございます。
 そして、その基本的な仕組みが5ページに書いてありまして、機関を丸ごと認定するのではなくて、1つの機関でもその手続について認定するという方式はどうかということが書いてあり、「また」以下で1つの認定をしても、それが先程の①から⑤までのすべてについて共通する基準ということで、基準を設定するのか、それとも時効中断の場合の適格認定、執行力の適格認定と、訴訟中断や訴訟中止の適格認定はそれぞれ違うので、別の認定にするのか、要件も認定も別にするのかということが問題になるのではないか、というのが、ここでの検討事項2-7でございます。
 どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。

○三木委員 どの論点との関係で伺えばいいのかわからないので、最初に伺うのですけれども、パブリック・コメントとの関係で言いますと、認定制度を導入するのが妥当かどうかを抽象的に聞かれても答えようがないのではないかと思います。
 認定制度はその内容いかんによって相当異なった性格の制度になるわけで、多少なりともそのイメージが湧くように出しておかないと答える方も答えられないし、また、仮に答えが返ってきても、その答えが果たして正確に問題点を認識した上での答えなのかどうかがわからないということになり、結局、パブリック・コメントをやったけれども意味がなかったということにもなりかねないと思います。
 そこで、現時点でお答えいただける範囲ということにはなろうかと思いますが、少なくとも3点程、ある程度明らかにしないと議論のしようがないといった点についてお答えがいただけるのであればいただきたいと思います。
 第一に、どのような機関または団体が認定するのかということ。第二に、どのような基準で認定をするのか。第三に、認定を取り消す場合の仕組みがどういうイメージで考えればいいのかということ。これらについてイメージが多少なりとも湧くようなお答えがいただけるのであればいただきたいということです。

○髙木委員 一部重複しますが、認定制度といっても確かにわかりにくいなと思うのです。それで、例えば、現行法にある類似の制度、こういうものがあって、それとの関係で物事を考えればいいようなものがあるならば例を挙げていただけないかとちょっと思いました。それから、どのような機関が行うかについては、先ほどの事務局の説明では、あまり具体的に挙げることは難しいとありましたけれども、それはどういう理由なのかを知りたい、併せて、具体的には挙げなくても候補として考えられ得るものみたいな形で挙げることはできないかということです。
 さらに、機関か手続かということが最後に出てきますけれども、それもそのままではイメージとして掴みにくいので、例えば、手続を認定したら、今あるどういうものに似ているかとか、例示できるのであればしていただきたいという希望がございます。

○原委員 関連する質問なのでよろしくお願いしたいと思います。どのような機関が認定をするのか、どのような認定基準なのか、取消しの基準なのかは、私も同様にポイントだと思っております。それが具体化されないと判断がしにくいと、そして、どのような機関がというところで、一応、国、行政、第三者機関という言葉も使われているのですが、第三者機関という言葉が入っていると、一瞬、独立したところがやるというふうなイメージを持ちますが、例えば、個人情報保護法では第三者機関の設置について議論があったのですが結局は入らなかったわけです。できるだけ行政にかかるコストを削減しようという中では入ってこないので、全くさっきの法律扶助ではありませんけれども、かなり可能性の低いものだけれどもこのまま入れておいても大丈夫かと懸念いたしております。
 それから、どのような基準かという点も、例えば、NPO法のように、ある程度の要件があって、それに拠った形で届出をすればほとんどOKというものにするか、取消しと組ませる、今確か取消し件数は3件ぐらいあるかと思いますけれども、NPO法的なイメージを考えていらっしゃるのか。それとも、例えば、貸金業は東京都が登録制を採っていますけれども、かなり登録業者が問題を起こしているというところもあるわけですから、どの辺りのレベルを考えていらっしゃるのかによって判断が違ってくるというふうに思います。
 そういう意味から言うと、2ページのところに、最初の段落の終わりのところで、「かえって二次的な紛争の原因になりかねないことも多いのではないか」と書かれていて、こういう事前認定のメリットがあるという書かれ方をしているのですが、事前認定をしていても、私は二次的な紛争というのは起こり得る可能性があって、そこに国、行政も関わって巻き込まれてしまうというデメリットも考えられるのではないかというふうに思います。
 それから、髙木委員がおっしゃったところでは、私もそのように思ったのですが、一番最後のところで機関だけではなくて、手続で分けるという考え方なのですが、論点2の囲みの中の5行目から6行目にかけて、「認定の基準を満たす形で提供されなければならない手続とそれ以外の手続」と書かれていて、かなり明確にはっきり分けますと書かれてあると、基準を満たす形で提供されなければならない手続は、はっきり明示していただかないと判断ができないと思いますので、ここの線の引き方というのはどの辺りに置かれているのかというところが質問です。
 それから、もう一つ、こういうADRに関する事前認定、特に国がかかわるものが諸外国にもあるのかどうかということです。これから国境を越えた形のADRが出てくることがと考えられるところからすると、その辺りどのように整理をされたのかをお聞きしたいと思います。

○小林参事官 まず、どのような機関が認定をするのかということにつきましては、資料では国の行政機関とお示ししておりますが、更に具体的なイメージということでありますと、それは、例えば、○○大臣というようなことになるのではないかというふうに考えております。
 それから、基準についてですけれども、これはまさに個別の各論で議論されたことを踏まえていくことになると思いますけれども、時効を例に取れば、資料の5ページのところに掲げてあるような基準が1つ考えられるわけであります。ただ、これは各論のところで議論したように、比較的、外形的な基準になっているわけですけれども、更に、実質的な基準が必要だということになればこれに加わっていくことになっていくわけで、これはまさにそれぞれのところで議論していくことになろうかと思います。
 それから、その基準がNPO法的なのか、あるいは貸金業者の登録制のようなものかということでございますが、それぞれの特例の対象になる場合に必要な基準でありますので、業務そのものは別に認定を受けなくても可能で、その業務に際して、ここで議論されているような効果を付与してほしいということであれば認定を受けることになるというのが、1つの方法ということになります。それ以外に個別の立証を認めるか認めないかは、それぞれ議論があったところでもあり、いろいろな考え方があると思いますが、通常の業務自体は、ここでいう認定を受けなくても可能ということになります。
 それから、要するに、どの程度基準を満たしていれば、認定されるのかどうかというご指摘かと思いますが、基本的には、基準を満たしていれば、それ以上特段の裁量なくしても認められるべきものであろうと思います。ただし、その基準自体が、比較的、形式的なものになるのか、あるいは実質まで踏み込むことになるのかということは、それぞれの要件について議論すべきことではないかと思います。
 それから、3番目の取消しの仕組みにつきましては、これは基準を満たしていることを確認して、認定をし、かつ法的効果を付与するわけでありますから、その前提となる要件が満たされなくなった場合、取り消す仕組みを設ける必要があるのではないかというふうに考えております。勿論、取り消しされた場合の効果については、若干複雑な面が出てくるかもしれませんけれども、取消し制度は必要であろうというふうに考えております。
 それから、第三者機関は、この資料の中でも第三者機関が認定をするということは考えにくいのではないかという記述をいたしております。ただ、仮に国の行政機関が認定をする際に、そういう第三者機関的なものを使うことも考えられるのではないかという記述をいたしております。
 それから、具体的なイメージとして近いものがあるかどうかということですが、これはなかなか今すぐ適当なものがあるわけでもありません、お示しする用意があるわけではありませんが、例えば、電子署名の認証業務について、効力については事実上の推定にとどまりますけれども、認定の方式を採っている例がございます。それから、弁護士法72条の関係で言えば、サービサー法においては許可という形で、許可がないと業務ができないことになっていますけれども、行政庁が関与するというものの例としてございます。
 それから、対象手続と非対象手続、手続ごとに認定するという場合、対象手続と非対象手続の区別が難しいのではないかということであります。それは御指摘のとおりだと思いまして、その点については十分意を用いなければいけないと思いますが、例えば、時効中断効が非常に気になる利用者の場合と、そういった問題を考えなくていい利用者がいる場合もあり、すべての利用者に時効中断効を考えなければいけないというような、若干、重たい手続まで要求する必要はないかもしれません。そういうケースについては、同じ機関の中でも手続を分けて、言わばメニューを多様化しておくということも考えられるのではないかということでございます。
 それから、行政庁が関与するが故に二次的被害が更に出る場合もあり得るのではないかということでございます。これは、今簡単にそれを否定するだけの論拠もあるわけではございませんが、少なくとも、認定を受けたものについては扱いが明確になるのではないかと考えております。
 それから、諸外国の例ですが、これも今、きちんとした形ですぐにお示しできませんけれども、元々、こういった法的効果の効力を与えているケースについて、ぴったりした例がないということもございますが、幾つか認定なり認証というか、あるいは指定というか、機関を限定してこういうメリットを与えている例は、確かドイツにあったのではないかというふうに思います。

○原委員 1点だけ確認でお願いしたいのですが、取消しの場合の基準なのですけれども、この取消しとはは、行政が継続してチェックをする仕組みを持った上で取消しをするのか、それとも、利用者側から不満を受ける窓口を用意しておいて判断するという形を採るのか、特にどちらかについて考えているのでしょうか。

○小林参事官 許可、認可あるいは認定制度、共通する問題として、まず、基本的には認定をしたときの状態が維持されていないということになった場合には、これらの取消しをするわけでして、御指摘は、それをどうやって知るのかということだと思います。
 これは、偶発的にそういう声が寄せらることによって、そういう事態が明らかになるというケースもあるとは思いますけれども、何かそういう仕組みを用意するというよりも、何らかの報告をお願いするとか、あるいは、そういったことを特に必要とせずに判断していくとか、両方の考え方があり得ると思います、どちらかに限定して考えているわけではございません。

○青山座長 さっきの質問で、三木委員、髙木委員、それから原委員と御三方からの質問に対しては、事務局は一応答えたつもりでいますけれども、ほかに何かございますでしょうか。

○三木委員 今の御説明でわからない点を確認させていただければと思います。
 認定の基準の点ですが、この資料の18-1、検討事項2-6の5ページのI、II,IIIというのは1つのイメージだという御説明でしたが、恐らく、この認定制度を受ける側のADR機関にとって一番関心が高いのは、過去の実績というものが認定の際に基準になるのかどうかということだろうと思います。ほかにも勿論あるかもしれませんが、特に私が思いつくのがその点が1つ大きなポイントだと思います。その点は、どのようなイメージで考えればいいのか、もしお示しいただければいただきたいと思います。

○小林参事官 過去の実績については、これは勿論、考え方としては両方があろうかと思いますが、言わば参入障壁になってはいけないということからすると、必ずしも絶対の条件として求めるのは適当ではないのではないかというふうに考えております。
 それでは、実際やってみてひどい状況になったらどうなのかいう議論はあると思いますが、それは、むしろ取消しなりで対処すべき問題ではないかと思います。

○三木委員 若干質問が抽象的でお答えしにくかったと思いますので、1つ例を挙げさせていただければ、あるADR機関が、建築紛争を専門に扱っていること、そして、調停人には専門家を揃えているため適切な調停案を提示しますと謳っているが、実際には専門家は全くおらず、調停案も全く提示していないという評判が、認定をする際に認定機関に寄せられているとか、そういう調査結果が既にあるという場合であっても、先ほどの御説明ですと、認定されると考えてよろしいのでしょうか。

○小林参事官 認定の基準によると思いますが、ごく形式的に要件が整っていれば認定するというのは適当でないと思われますので、過去の実績があるケースもないケースも同じだと思いますが、そのような業務運営が行えると判断できるかどうかということについて判断することになると思います。もし、それが期待できないということであれば、認定は受けられないということになると思います。

○三木委員 今のような事情は認定の基準になるという御説明だったと思いますが、そうすると、個々の事件処理に立ち入って調査をしないと、実際にもそういうでたらめな調停が行われているかどうかは、それが一個一個事件ごとに行われるわけですから幾つか抜き取って調べるとかしないといけないわけですが、そのようなことは果たして可能なのかということは、いかがでしょうか。

○小林参事官 それは先ほど申しましたように、判断の中身まで踏み込むかどうかという基準の内容の問題だと思いますが。

○三木委員 運営そのものもADRの秘密性というのがありますから、そういった記録を残しているかどうかもわかりませんし、また、残していても、それを行政が調べられるかどうかは大変な問題だと思いますので、その点を伺おうということです。

○小林参事官 そういう意味で言えば個々の取り扱いについても対象になり得ると思います。

○三木委員 事件処理そのものも調査の対象になり得るということでしょうか。

○小林参事官 はい。

○青山座長 個々の事件処理についてということではなくて、将来に向かって、そのADR機関がどういうふうに事件処理するだろうかという点についての認定だと思うのですね。その中で、疎明資料みたいな形でこういうふうにやっていますということがあればということだと思います。ですから、個々の事件をピックアップして調べるとか、そんなことは全然考えてもいないし、できないことではないかと私は判断していますが。

○三木委員 個々の事件を見る以外で、でたらめな調停が行われたかどうかについては、何で判断するのでしょうか。

○青山座長 これは、元々、ADR機関が時効中断なり、執行力を付与されたいという場合、自己申請してくるわけですが、その自己申請の際に、必要とされる要件については当方は満たしていると言ってくるわけです。それについて、そういう要件が備わっているかどうかということを審査する、その過程で従来はどういうふうにやっていたかということについてのも出てくるでしょう。しかし、それがそのとおり行われているかを調べるために、一々個別的にピックアップして調査するということは不可能ではないでしょうか。

○三木委員 私はまさに可能か不可能を確認しているのであって、不可能であれば認定という制度自体の現実性が低くなるということなので、確認申し上げているのです。

○青山座長 それは、国の機関が個々のADR機関の運営や手続の中に踏み込んでいくことはADR機関の自主性を損うのではないかと思います。認定も一定の基準、こういう要件で当方はやっているのだということについて、なるほど、それらしいということが判断できればそれでいいと満足せざるを得ないのではないでしょうか。
 ですから、先程のNPOや貸金業の例が挙げられましたが、NPO法人の認可は、簡単なものでは勿論ないと思いますが、厳格なものとの中間ぐらいではないかと私は考えていますが。

○三木委員 もう少し、私の真意というか質問の趣旨を申しますと、私は何も行政が個々のADR機関の運営や手続の中に踏み込んで、調査をすべきだということを言っているのではなくて、こういうケースでは一体どうなるかということがわからないと、認定制度に賛成していいか反対していいかわからない、あるいは本当に導入できるような制度かどうかわからないということを申し上げたかったのです。
 先ほどの例で言うと、勿論、ADR機関が自ら認定の申請をするときに、自己に都合の悪い資料を出してくることは、普通は考えにくいわけでして、後で整えた資料が出てくると思うのです。その段階で、例えば、認定機関に対していろいろな苦情が寄せられてきて、この機関を認定しないでほしい、自分はこういう被害に遭ったことがある、という苦情が寄せられた場合、それがライバルに当たるADR機関によるただの妨害工作かどうかもわかりませんから、そういう苦情の真偽を調査するのかしないのか、調査するとしたら提出資料だけ見てもわかりませんから何か踏み込んだ調査しなければいけないのですけれども、何を調査するのか、そして、それが可能なのかという点を確認したいということなのです。

○青山座長 今まで調査のやり方とか調査の内容については、ほとんど議論をしてこなかったわけです。認定のために、具体的にはどういう資料を用いて、どのような調査をするかについて、私が御回答するのが適当かどうかはわかりません。今まで、そこまで議論をしてこなかったという前提で、この点についてはパブリック・コメントにかけざるを得ないのではないでしょうか。

○三木委員 私は、元々、認定制度に反対ですから、その仕組みに意見があるわけではないのですが、ADR機関がパブリック・コメントに答える場合、こういったところを調査されるのかされないのか、支援制度のときの調査も大事ですけれども、もっと大事なのは支援制度調査をされるとすれば、取消しの際も、勿論同じ基準で調査されるわけです、 定期的に、あるいは申立てに応じてかもしれませんけれども、行政がどこまで踏み込んで調査するのかが非常に大きな問題になろうと思います。この点を抜きにして、認定制度に賛成か反対かは言いにくいとおっしゃる方も多いだろうと思います。

○青山座長 おっしゃる意味は非常によくわかります。

○原委員 おっしゃられたようなこと、例えば、今あるADR機関の中で私ども消費者が不満に思っているADR機関があるのですけれども、もしそういうところが認定された場合、私どもが担当の行政に申し出れば、行政の方で何らかの調査をしていただけるのかという疑問があるのですが。

○三木委員 一々全部挙げていくつもりはございませんけれども、もう一点だけ違う観点から例を挙げますと、例えば、あるADRがこういう値段で受け付けていますとか、非常に安い値段で受け付けています、あるいは無料ですというようなことを言っているが、実際に利用してみると、何かいろいろな名目を付けていろいろな費用を取られたという苦情があった場合、もしこれを認定の基準、若しくは取消しの基準にすると、ADR機関の財務内容を調査できるということになるわけです。そのような調査を想定した認定になるのかかどうかも、ADR機関にとっては非常に大きな問題だろうと思います。

○青山座長 おっしゃることは非常によく分かるのですが、我々の議論はそこまでやってこなかったのです。認定要件のところまでを議論してきたということであり、調査の点についてパブリック・コメントに考え方を示せる段階にはない思うのです。それでは認定制度に賛成か反対か答えられないと言われると困るわけですが、今おっしゃるような問題があるということぐらいは書けますが、より具体的に財政基盤について調査をするとか、しないとか、そういうところまではパブリック・コメントには書けないと思います。現段階では問題があるということを指摘するだけに、とどめざるを得ないということだろうと思いますがいかがでしょうか。

○三木委員 もし書けないということでしたら、委員の意見として、こうした問題があって、これについて適切に答えられない状況にある以上、認定制度を否定する根拠になる、つまり、こういうのが答えられないのであれば認定制度を置くべきではない、という意見があることは載せていただきたいと思います。

○青山座長 その問題に答えられないから、あるいは、まだ検討がされていないからという理由で、認定制度を採るべきではないということになるかどうか。

○三木委員 しかし、答えられないのであれば採るべきではないということもいえるのではないかと思います。

○青山座長 それは今後検討して、認定制度については、賛成するという考え方と、反対するという考え方の2つに割れている状況ですので、公平に両方の考え方を出して、さらに、仮に認定制度を採るとすればこの点とこの点はさらに詰めていかなければ制度として成り立たないということを指摘することまではできると思うのです。

○山本委員 出し方の問題として、私も三木委員が御指摘された問題は非常に重要なところだろうと思っています。個々の論点の結論として、こちらを採るのであれば認定には賛成で、あちらを採るのであれば反対だということはきっとあるだろうと思います。
 ですから、個々の論点をわかる限り明らかにして、パブリック・コメントに答える方々には、個々の論点について、こういう認定制度であれば反対、こういう認定制度であれば賛成ということを、できるだけ明らかにしていただくような形でお答えいただければ、今後の審議にとって非常に参考になるのではないかと思います・

○廣田委員 私は認定制度は全く念頭に置いていないのです。ですから、ADR基本法に認定は考えられないとこれまでに言っておりますし、ペーパーにも書いております。私の発言は悉くそのような頭で話していると思っていただいていいのです。そういう考え方で物を言っていたということを並行的に並べていただきたいと思います。
 ですから、どのようにパブリック・コメントしていただきたいか、これから具体的に言いますけれども、一言で言えば、認定をするかしないかということについて両論あるということを公平に書いていただきたいのです。今、座長がおっしゃったように、公平に併記していただきたいと思います。
 具体的にどうやってパブリック・コメントしていただきたいかということなのですが、まず、冒頭の1行目に、時効中断等に関する特例を設ける場合というのがあるのですが、時効中断に私は認定は必要ないと思っています。もし、例を引くのであれば1ページの一番上に「時効中断等」というところは「執行力等」と直していただきたい。それから上から4行目に「要件の一つとして設定している」とありますが、要件の一つとして設定している人と、設定していない人がいると書いていただきたいのですが、そういうふうに書くと紛れやすいので「設定することが考えられる」ぐらいに書いていただきたいのです。このように断定的に書いていただきたくないと思います。
 それから最初の○に慎重論がいろいろ挙がっていますが、①から③は甚だ言い足りないと思うのです。それで、是非付け加えてほしいことが3、4点あります。
 第1点目は、認定は自主性の芽を摘み、ADRの拡充・活性化を阻害するおそれがあるという意見をまず冒頭に入れていただきたいと思います。認定をすると、先ず自主性はなくなるだろうと思います。今、三木委員の発言がありましたように、いろいろなものまで調べなくてはいけないことになりますが、これは自主性がなくなってしまうということです。
 それから第2点目は、今、何のために認定するかというと、特例として何らかの法的効果を認めるために認定の話をしているのですが、これは私はまだ発言したことはないのですが、今、議論されていることは、ADRの本来の仕事から見れば、周辺のこと、例外的なことが多いのです。必ず起こってくることではありません。ですから、周辺のことばかりを議論しているという印象が私から見ると強いのです。このような周辺的なことに法的効果を付与するために、やかましい認定がADR機関がかけられしまう。ADR機関が、そこに多大なエネルギーを払わなければいけないということになると、俗な言葉で言えば、たまったものではないということになると私は思っているのです。
 第3点目は、デマが飛んだときにどうするかということについてですが、ADR機関ですから満足する人もいれば不満に思う人も必ず出てきます。100 %満足されることはあり得ないわけです。そのために、いろいろな動きが出てくるということがあります。つまり第3点として、はっきり書いていただきたいのは、認定制度はメリットより、デメリットの方が多いということを慎重論の中に加えていただきたいと思います。
 第4点目は、2ページ、「より具体的には云々」と書いてありますけれども、①からずっとありますけれども、まず①がこういうふうになると、要するに、いろいろ議論したけれども、時効中断効でこうだとまとめられてしまうような印象があるのです。ですから、私はこれについては一つ一つ反対意見があったということを具体的に出していただきたいので、①については証明力によって解決するという考え方もあるということを入れていただきたいのです。認定制度を必要としないという意見の中には、証明力で解決するという意見があるということを入れていただきたい。②は慎重論について、慎重に書いてあるからか、私の考え方とはそう違わないのですが、事前認定によるか、法律によって定めるかという辺りで違う意見があることを一応併記していただきたいと思います。③については、調停前置主義の不適用云々ですが、これだと結局必要な方向になってしまうので、これに対しては、不要として認定しないという意見があるということを一つ付記していただきたいと思います。④についても同じです。これは不要なものとして認定制度は必要ないという意見があるということを付記しておいていただきたいと思います。それから、⑤の非弁護士云々については、認定制度とちょっと異なる問題だと思うのでイメージがつかめないでわからないところです。私もよくわからないのですが、弁護士法72条の問題は、現存する規制を外すという問題であるから、適用除外を明確にしておけばそれで足りるという意見があるとしていただきたいのです。
 認定制度についての私の意見といいますのは、②で認定と言うかどうかは言葉の問題になりますので②については特定する必要があると思うのですが、②以外は全部、認定制度は要らないという意見でありますので、それが明確に冒頭の意見との関連で、具体的にどうなっているかということを明示するような形で出していただきたいと思います。
 3ページの最初の○ですが、「利用者からも的確に判断できる要件が設定されるのであれば当事者立証方式としてもよいが」と言って、私の意見を取り上げてくださっているのですが、それがまた否定するような形になっており、結局、意見としては1つにまとめられた形になっています。しかし、これは両論併記にしていただきたいと思います。当事者立証方式としてもよいという意見がある、と明確に書いてほしいと思います。
 4ページはただいま盛んに議論があったところなのですが、「具体的な方向性を示すことは困難である」という囲みの中の下から3行目ですが、これは私の意見なのですが、より具体的な方向性を示すことは困難であるということなので、だからこそ認定は必要ないと私は言いたいのです。方向性を示すことが困難のであれば、法律をつくるのに法律として完結しないのなら、検討会における検討が完結しないのではないかということを意見として加えたいと思います。
 5ページに行きますけれども、論点2については、私の意見のように、認定が必要ないということであれば、ここの部分はもう論ずる必要がなくなってきますので、その旨申し上げたいと思います。それをはっきり言わないと、パブリック・コメントのときに、明確にどちらがいいかという意見が出てこないと思うのです。ですから、それだけは是非お願いしたいと思います。
 以上です。

○青山座長 ちょっと私の方からの質問ですが、4ページの検討会の作業として完結しないというのでは困難であるという言いっ放しでは駄目だという趣旨ですね。

○廣田委員 この後にいろいろな議論が出てくると思うのです。今言ったように、どこまで具体的な基準が必要かと三木委員の方から質問が出てきたのですが、結局、完結しないではないかというのが私の見通しです。

○青山座長 わかりました。パブリック・コメントで御仕舞いになるわけではなくて、パブリック・コメントを受けて作業を継続することを前提としても、作業は完結しないと言うのでしょうか。

○廣田委員 そうです。

○青山座長 完結しないと確かに困るとは思いますが。

○三木委員 先ほど1つの例を出し、3点につき明らかにすべき点があると申しました。それぞれについて、少なくともこの点は検討しなければいけない、あるいは問題になり得るという点を挙げていきたいと思います。思い付くままですので網羅しておりません。
 まず第一に、どのような機関が行うかという点ですが、先ほどの事務局のお答えですと、1つの基本的なイメージとして行政機関、例えば○○大臣が行うとか、そういうイメージが1つのイメージあるということで、それが唯一の選択肢でないことはわかっておりますが、そのようなイメージがあることを前提にしますと、既存のADRは複数の官庁の所管に跨っておりますが、複数の官庁が認定するのか、どこかが一元的に管理を行うのかという点が第一です。
 第二に、株式会社組織のADRについてはどういう機関が認定するのか。また、有志の集まりで結成した法人格なき社団のようなADR機関の場合はどうなるのか。また、外国のADRの出先機関、あるいは外国のADR機関そのものはどうなるのか。
 第三に、ややセンシティブな問題を含むかとは思いますが、既存のADRを前提に認定制度をイメージすると、最も活躍しているADR機関の1つである弁護士会と認定の関係をイメージせざるを得ないのではないかと思います。所管官庁を持たない弁護士会の仲裁センターなどについてはどういうイメージを持てばいいのか、ということであります。
 それから、3点目の取消しの仕組みとの関係ですが、先ほど述べたことと若干重複いたしますが、また、原委員の御質問と重複しますが、行政が自主的に追加的な審査をしていくのか、それとも申立てがあった場合にそれに応じて審査をするのか。
 それから、取り消すかどうかの判定の際に、具体的な事件処理の内容をどの程度調べるのかというADRの秘密性との関係で、どの程度の調査が可能か。行政機関にADRの事件処理の審査能力はあるか、具体的な事件処理の状況を調べないとする場合、では一体何を調べて取消しの判断をするのか。
 第四に、認定の基準ですが過去の実績を審査対象に加える場合に、これから新たに設立されるADR機関については何を基準として審査するのか
 以上を取り敢えず挙げてみたいと思います。

○山本委員 まず御質問ですが、先ほど今の三木委員の一番最初の御質問とも関係するのですが、参事官のお答えで、認定機関は○○大臣というようなイメージを持っておられるということでしたが、これは、1人の大臣、あるいは1つの省庁が統一的に認定するということを念頭に置かれているというふうに理解してよいかどうか御質問いたします。

○小林参事官 そこは、まだいろいろな考え方があり得ると思っております。○○大臣と申し上げたのは、単数だということを決めて申し上げたわけではありません。

○山本委員 私も3点ほど意見を申し上げたいと思います。
 まず、第1点は3ページの下から2つ目の○のところに、併用方式について書かれていますが、「ただし」以下に書かれている前提がアプリオリに妥当ことについては若干疑問を持っております。つまり、当事者立証方式を併用すると、事前認定を受けることの効果が法律上、または事実上の推定効にとどまるという命題についてでありますけれども、私自身は、必ずしもアプリオリにこういうふうに考えなくてもいいのではないか、と思っております。
 と言いますのは、認定方式を要件連続的なものとしてとらえると、こういう考え方になりやすいかという感じがしますけれども、認定を得ることで当該ADRが、例えば、一定の行政型ADRあるいは司法型ADRとパラレルな地位を有することができるようになる制度ととらえるのであれば、それは勿論、別のADR機関が認定を得ないで、個々の効果についてその要件を個別的に満たしていき、一定の効果が付与されるということは別にあってもいいと思うのですが、それとは切り離されたものとしてとらえられる余地はあるのではないかと思うのです。
 やや抽象的に申しましたが、具体的に時効中断の問題として考えると、現在でも一定の行政型ADRについては、時効中断の効果がアプリオリに認められていると承知しておりますが、仮に我々の検討している法律において当事者立証方式の要件を書いたとしても、おそらく行政型ADRについては法律上の推定にとどまるとか、そういう話にはならないで、現在認められているのと同じように、アプリオリに時効中断の効果が認められるのではないかと想像いたしております。そうであるとすれば、結局、認定によってそういう行政型ADRと等価のものとして効果を付与していくという選択肢も可能ではないか。
 そういうことが可能であれば、ここに書かれてあるデメリットといいますか、予測可能性が十分でなくなるということはなくなり、個別の事件で要件を満たさないような事態が発生しても、なおも時効中断効が認められるという余地が、現在の行政型ADRと同じように、認定ADRについても認められるということも制度論としてはあり得る話ではなかろうかと思っております。したがって、結論的にはここはやや断定的に書かれいて、ただし、とどまるものとなるという他に選択肢がない書き方になっておりますけれども、ここはもう少し別の考え方があり得るということを明らかにしていただきたいということです。
 第2点ですが、論点1は全体にかかわることですが、先ほどの事務局のお答えとの関係、三木委員の御質問との関係で、単数になるのか複数になるのかは、非常に重要な問題であるというふうに思っております。私自身は、事前認定方式に対して委員の方々から示されれていた懸念、特に公的機関が過剰な介入をすることによって、ADRの自発的な発展が阻害されるのではないかという懸念は現実的なものとして十分あり得るだろうというふうに思っております。そのため、それを防止するような枠組みが必要ではないかと強く思っているわけです。
 そういう意味で、現在、各ADR機関について一定の監督官庁が存在するのだろうと思うわけですが、そういう監督官庁がそのままこのADRの認定についても担当するということは、私は非常に問題があると思っております。つまり、ADR機関に対する官庁の関与があまりに直接的なものとなり、場合によっては人事、予算、その他に対してADR機関の自立性を阻害する要素になり得るのではないかと思うのです。私自身は、個人的には、そういう制度になるのであれば、つまり、認定制度を採らなければ法的効果は付与できないというのであれば法的効果は断念してもやむを得ないのではないかというふうにすら思っております。そういう意味では、ここは私個人の中では非常に重要なポイントであるというふうに思っておりまして、三木委員が言われたように、そこは複数の可能性があるのであれば複数の可能性があるということであり、それらを前提にして、賛成するのか反対するのかということを決めていただくということを明らかにしていただきたいと思います。
 それから第3点、最後ですが、指定する機関の問題はありますけれども、それとともに指定取消の前提となる調査というものが問題になると思います。これもまた三木委員が御指摘になったとおりだと思います。
 先ほどイメージとして電子署名法を事務局が挙げられたかと思いますが、電子署名法の中でも、認定のための審査に当たっては、申請にかかわる業務に実施にかかわる体制について、実地の調査を行うものとするという条文があるわけでありまして、私自身はやはり少なくとも、当該機関がその認定の要件を継続的に満たしているかどうかということをチェックする際、一定の実地の調査がどうしても必要になってくるのではないかという認識を持っております。ただ、それがADRの運営に過剰な介入となってADRの自主性を害することにならないように、できるだけ工夫すべきではないかというのが、私の認識であります。 そういう観点からすると、1つは要件の問題としてその認定要件をできるだけ外形的なものにとどめるということが必要ではないかと、できるだけ書面で審査できるようなものにすべきということでありますし、また、現実に調査をするとしても、実際の事件処理の内容に踏み込むような調査をするということは相当でないと思っております。
 もし、そこまで調査しなければ要件が認定できないということであれば、もはや認定制度は採るべきではなかろうと思っておるわけで、要件はできるだけ外形的なものにとどめるという形で組めるようなシステムを構築する必要があると思っております。
 それから、第三者機関については、第三者的な機関は論点1の中で記載されておりますが、こういう形で指定機関の介入の間接化を図るということも重要な工夫ではなかろうと思っています。
 いずれにしても、ほかにも公的機関の直接的な介入を回避するための様々な工夫があり得るのではなかろうかと思っておりまして、この問題は何とか乗り越えられないかというふうに思っておるわけであります。懸念は恐らく廣田委員がおっしゃったことと同じだと思いますが、ここは英知を結集すべきところだと思っておりますので、是非、パブリック・コメントの中で考え得るような、何かそういうような懸念を防止できるような方途を是非、公募といいますか、皆さんパブリック・コメントに答えていただく方々から意見をお寄せいただけるような形でパブリック・コメントをしていただきたいと思います。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうこざいました。
 この中では、認定制度ということに対して、ネガティブな意見と、やはり認定は必要であるということを強く御主張される意見がありました。綿引委員などは認定制度は必要だと御主張されている御一人でございますけれども、ほかにも認定制度が必要だとおっしゃる安藤委員などは認定制度は必要だとおっしゃていますけれども、今のような問題点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

○安藤委員 裁判に持っていかずに何とかADRで解決しようというところで、法的効果を与えるという特例的なことを今話しているわけなのです。ですから、ADR全体についてではなくて、がちがちに固める部分について、何でこんなにパブリック・コメントで全部さらけ出してやらなければいけないのか、ということを非常に疑問に感じていたのです。
 私が基本的に考えているのは、あくまでもその当事者といいますか、法律を知らない人たちにどうやって手を差し伸べていくかという相談から始まる段階から、一番最後に法的効果をやる部分だけです。一番最初に皆さんでいろいろ話していたときは、なかなか漠然として、イメージが湧かなかったため、もう少し具体的な話に持っていこうというのが、また、いわゆる司法型、行政型と近い部分で話し合おうと言っていたのが、ここの話だと思うのです。
 ですから、ここの部分の話が、ある程度固まった時点ではじめて、ADR基本法というもっともっと自由なものを皆で作り上げていかなければいけないので、その部分においてはどうしても、何かの資格といいますか、そういった信頼できるものをどのようにして作り上げようかということがこの認定の問題だと思うのです。
 ですから、こうやって公に認定されたもの、極端に言いますと、それこそ弁護士のADR、司法書士のADR、税理士のADR、いわゆる士業で、ある程度認定を受けたものに関しては、こういうガチガチな制限をいくら加えたっていいと思うのです。ただし、個人に対してではありません。これらは一般の人も認めている機関なのです。
 そうやって作り上げたADR機関は当然、あまり話を突っ走ってしまうといけませんけれども、ADRの連絡協議会が1つメインとしてできて、そこが認定を全部与えて、その中には、そういった士業で括られるガチガチのADRもあるし、フリーで動いているADRもあるし、そこへ参加したくないというADRだって出てくると思うのです。
 それで、緩やかなものというのはあくまでも手続です。これは相談の段階から入っていくと、こういう手続でこういうふうにするという点についてのディスクロージャーがベースになりますけれども、今、話しているものというのは、もっと全然次元が違うところのADRになってしまう。
 ですから、その辺でここがあまり強く強調されるのは辛いなという気はするのですが、裁判に持って行かずにどこへ持っていこうかというときに、信頼のあるADRを一つ作り上げる必要があるのではないか、それが法的効果を与えられるADRではないかと考えています。

○青山座長 同じ認定という言葉でも、安藤委員の考えている認定と資料にある認定とは全く違うものだという印象があるのですが。

○原委員 なぜ事前認定の話が出てきたのかというと、やはり執行力の付与、法的効果を付与するということをどう考えていったらいいかという議論から話が出てきたわけですから、1ページの基本的考えの一番最初の○のところをもう少し充実させて、なぜこの議論をしているかということをもうちょっと明確にしていただきたいというふうに思います。
 それで、法的効果の付与の話から事前認定の話が出てきたのですが、事前認定に公が、行政がかかわるという形で出てくると、もう一つの側面として、今、安藤委員が申し上げられたところも重なるのだろうと思いますが、信頼性の確保、ADR機関の信頼性の確保ということも、これで担保をするのかな、あるいは、できるのかなという、もう一つの側面が表れて、それら両方の話が入ってきているように考えます。
 ですから、そういう意味では、先ほど山本委員がおっしゃられたように、事前認定がいいかどうかという択一ですが、ここは是非論で聞いていますけれども、法的効果を付与するとしたら、どういう方法が考えられるのか、もう一方で、信頼性を確保するということを考えたときに、公がかかわるということで何かできる、何かやるというふうにするのか、そして、やるとしたら何が考えられるのかということについて広く意見を求める形にした方がいいと思うのです。
 特に、後段の信頼性の確保の部分については、あまり公が関わってということではなくて、やはり市場の競争、市場の淘汰の中に任せようということで、前段の議論は進んできておりましたから、やはりそこのところも市場の競争の活用に委ねるのか、それとも信頼性の確保のところで、こういった事前認定という形を使うのかどうかというところと、両方あるような感じがいたして、是非論ではなくて、多様な意見を求める形でパブリック・コメントに付していただけたらと思います。

○三木委員 山本委員がおっしゃったことを私が正確に理解していれば、賛同する部分がございます1点、若干の意見を重ねて申し上げたいと思います。
 山本委員の御発言の恐らく前提だと思いますが、このADRに法的効果を付与すべきだという議論は、ADR振興ということで、国民にとって使いやすく、実効性のある制度に育て上げていくと手段として、これまで論じられているわけで、始めに法的効果の付与ありきではないだろうと思います。ましてや、始めに適格性の付与ありきということではないだろうと思います。
 したがいまして、私も、法的効果の付与には積極的な方の立場だと思っておりますが、仮に適格性というものの弊害が大きいのであれば、むしろその点に関しては、その法的効果の付与を断念する方がむしろ望ましいということもあり得るということで、その点は、パブリック・コメントに、どういう表現を使うかは事務局に当然お任せいたしますが、少なくとも委員の一部が、そういった認識を示しているということはお書きいただければと思います。
 私個人の意見としましては、仮に認定制度がなければ法的効果は付与できないというものがあるとすれば、それはせいぜい執行力の付与だけだと思っておりまして、それ以外については、認定制度は必要ないだろうと思っております。原委員がちょっとおっしゃったことと関係するのですけれども、私の認識では、このような認定制度がかなり正面に据えられてADRの振興策が議論されるというのは、国際的に見ても比較法的に見ても、割と異例な展開ではないかと思っております。ただ、私も国際的なことをよく知っているわけではありませんので、原委員がこの会の冒頭でおっしゃった、外国がどうなっているのかという点は是非お調べいただいて、資料として添付していただければと思います。
 特に、近年ではITの手段などを用いて、国境を越えたADRというものが真面目に議論されています。日本の行政機関が認定するADRの仕組みが、どの程度そうした国際化の時代に適合的なのかという点を、比較法を踏まえて資料として提示する必要があろうかと考えております。
 それから、行政機関ではなくて、第三者機関を認定の主体にすることによって、なるべく弊害を少なくするべきだという議論は1つの考え方だと思いますけれども、そういう案を考える場合、第三者機関が常に存在する常置の機関なのかどうかという点を考える必要があろうかと思います。普通、委員会のようなものというのは常置ではないことが多いわけですが、そうすると、認定の取消しに関する苦情とか申立てのようなものを常時どこが受け付けるのかという問題が別に出てきますし、また、そうした認定取消しの申し立てに機敏に対応できるのかという点がありますので、第三者機関という案が本当に実務的にとり得る案なのかどうかというのは、そういった観点からも検討を加えておく必要があろうかと思います。
 その関係で言いますと、しばしば電子認証に関する仕組みが1つの参考例として挙げられますけれども、電子認証に関して認定の取消しを申立てられるケースというのは、実際には少ないだろうと思いますけれども、ADRに関しましては、先ほど廣田委員がおっしゃいましたように、紛争当事者がその手続を利用するわけですから、不満を持つことによって、ADR機関の不当性を申し立ててくるというケースは、想像ですけれども、電子認証の場合とは比べものにならないのではないかと思います。
 それから、ここから先は質問ですけれども、2点ほど伺いたいと思います。
 第1は、アドホックのADRと認定制度の関係というのはやはり整理しておかなければいけないと思いますが、それをどう考えるのかという点が第1です。
 第2としましては、本質的な疑問ですけれども、仲裁については認定制度がなくても一定の法的効果が付与されているわけで、どうして調停だと認定制度が要るのか、どちらも民間の機関が行うわけですから、その違いはどこから来るのかということをちょっとお教えいただきたい、この2点です。

○青山座長 今の2つの問題は、特に今まで議論があったわけではございませんので、そういう論点の指摘があったということにとどめさせていただきたいと思います。
 この問題、非常に大きな問題ですので、その認定について、髙木委員と横尾委員にも御意見を伺わせていただきたいと思います。

○髙木委員 事前認定賛成の方はいらっしゃいますかと言われたとき申し上げようかと思ったのですが、私はやむを得ない選択として事前認定があってもいいと思っています。
 確かに皆さんが懸念される事項も理解できますから、そこは、パブリック・コメントに付してみて、こんなに固いのなら法的効果は要らないという選択をするならば、そういう選択もあってもいいと思います。だから、認定が好ましくないというだけではなくて、認定制度を採ったときに、何がどういうイメージで審査され調査がされるのかということを出していただく必要があると思っているのです。
 認定という言葉は、弁護士会にとっては初めての言葉ですけれども、弁護士会は1つ洗礼を受けていて、国土交通省の大臣による住宅紛争処理機関の指定というのがありまして、それは指定の取消しもあるのです。補助金ではありませんけれども、とは言え、制度立上げ直後の今は国の予算ですが、いずれ国の予算ではないものを制度の費用として交付を受けることになっていますので、財政的な部分にも立ち入って判断を受けるような仕組みでもあるのです。ただ、そのときの前提としては、事件には立ち入らない、具体的な事件について審査しないのが前提であるという議論でスタートしています。まだ、指定の取消しのような話にはなっていない、事件が9件ぐらい起こったばかりですから、クレーム・苦情みたいなものもないんですけれども、住宅の場合と比較してどの程度同じか違うかを書くことができれば書いていただくと、判断しやすいのかなというふうに思っています。
 最初から国のお墨付きをもらって育つのがADRにとってどうかというと、確かに三木委員がおっしゃるようなこともわからないではないのですが、ここは日本ですから。主婦連の会長になられた吉岡さんが、「自己決定権はまだ早い」というようなことをおっしゃっているのを見ていると、やはり、国が、ある程度信頼できる仕組みを用意してあげるということもADRが育つまでの間はやむを得ないのではないかという感じも抱いています。

○横尾委員 重複になりますが、私はやはり適格性の確認方法という、この基本的考えのところが、我々が議論してきた流れを踏まえていない印象を持っています。これは原委員からも御指摘がありましたように、一般的にADRの信頼性そのものの問題とすりかえられて理解されてしまうのではないかと思います。それについては、ロースクールでも取り上げられているような第三者機関のようなところが評価をするということがあってもいいのではないか、と思っております。これは法律効果の付与とはまた別の話でございます。
 私は廣田委員に共鳴するところがたくさんありまして、やはり法律効果を付与する議論の中で、適格性の確認の方法が出てきたというふうに認識しております。特に、執行力の問題だったかと思います。執行力の付与については既存の制度というものを活用すべきだという考え方に立っておりますけれども、どうしても付与しなくてはならないようなものがあるとすれば、それは事前の認定もやむを得ないものとして考えるべきではないだろうかということでございます。法律効果の付与についてのある種の逃げ道といいますか、事前の認定についてはそれほど議論はしていなかったのですが、不本意であるけれども、どうもそこに逃げ道があるのではないかということで議論を進めてきた方が多数いらっしゃったのではないかと考えております。
 その結果として、2つの方法があるのかなと思いました。
 1つ目は、非常に固い制度として、執行力の付与については事前にきちっと認定をしていく、今、髙木先生が御披露されたような例もあるのではないかと思っております。
 2つ目は、非常にスマートな考え方だと思ったのですが、山本委員のおっしゃったような、1つの「みなし」ですが、中身はどうかわからないが、外形的に条件を満たしておればそういうものと見直してしまおうではないかという見方もあるかなと思いました。
 したがって、結論は、基本的な考え方のところで、これまでの議論の流れの中からこうなってきたのだということを取り上げるべきでありますし、多数決ではありませんけれども、やはり慎重論というか、否定論が多かったということを一番最初に書くべきではないかというふうに思いました。

○山本委員 私の発言が、若干誤解されたかもしれないのですが、私自身は、前回も申し上げましたように、やはり利用者の予測可能性というもの、特に利用者の便宜ということがやはり最も重要であるというふうに思っているわけであります。それから、弁護士法72条の関係ではADR主宰者の予測可能性という問題もありますが、そういうことを担保する重要性に鑑みれば、事前認定の方式も必要な場面があるという認識はあくまでも前提としております。しかし、それを前提にして、そこに至る道にどういう道があるのか、私から言えば、認定をするために一種、範を越えるのであればもう諦めてしまうといことも最後の選択肢として、そういう可能性もあり得るということを申し上げたわけであります。
 そういう意味で、私自身、三木委員の先ほどの御発言とは若干認識は異なっているかもしれませんが、認定方式を諦めれば、失うものは非常に多いといいますか、法的効果はほとんど、私は無意味になるという認識を持っております。執行力は勿論駄目だと思いますし、時効中断とか調停前置主義は認定がなければ予測可能性がなくなりますので、ほとんど意味はなくなるだろうというふうに認識しておりますし、72条違反かどうかがわからなくなるわけですから、72条の関係で認定方式を採らないというのは非常に危険であり簡単な要件を書くことは難しいと思っておりますので、そういう意味で法的効果の部分がほとんどなくなって、この法律から消えてしまうだろうという認識を持っております。
 ですから、そこはこの認定方式がなければ結局どういう姿になるのか、という認識はどうもやはり、この検討会内部で意見の一致はないようでありますけれども、そこはいろいろな意見があるということ、どの程度パブリック・コメントをかけるのかわかりませんが、それを踏まえて事務局の方で工夫をしていただければと思います。

○青山座長 今日まだもう一つ大きな議論をしなければいけないところがありますので、ここはこういうふうにまとめさせていただきたいのです。
 このパブリック・コメントをする際に、まず事前の認定制度がポンと出てきて、それが非常にわかりくく、なぜこのことが議論になっているのかというと、法的効果を与えるにはただ与えられるのではなく、特に執行力のような大きな法的効果の場合、どのようなADRで出来た和解であっても、執行力が与えられるためには一定の要件を備えたADRであることが必要であるということであり、事前に認定をしておかなければ、当事者の期待を裏切ることになるし、実際に執行しようと思っても執行できないというところから出てきている、ということをまずはっきりと書くということ。
 その上で、それでは執行力だけでいいのかというと、執行力以外にも時効の中断はどうかとか、今の72条との関係はどうか、という問題が連続して出てくる。その場合、それぞれの法的効果によって、どのような適格を持っているADRであることが必要かという要件は自ずから違ってくるだろうと思います。さらに、認定といっても、それぞれの法的効果によって、認定の程度が違うだろうし、一つ一つの効果との関係でも違ってくるだろうというふうに思います。そこのところを書いた上で、仮に、認定制度を採るとした場合、まだ詰めなければならない問題がたくさんある、それは先ほど三木委員もおっしゃいましたけれども、こういう点は更にまだ十分に議論していないから事前認定を採るとすれば議論をしなければならない点がたくさんある、ということを書くということ。
 他方、この検討会の中でも、認定制度が是非必要だという御意見もあります。それから、理想論は理想論として、髙木委員の先ほどの御発言のように、国がバックアップしなければ、ADRの機関の健全な成長は望めないから、国は当分の間、バックアップしようという考えもございました。そういう幅広い考えがあるということを、どこまで書けるかわかりませんけれども、書いた上で、論点1や論点2につきまして、先ほど廣田委員から非常に詳しいコメントがありましたが、そういう2つの考え方がそれぞれ対立しているという状況がはっきりわかるようにして、パブリック・コメントで出して、回答をいただいた上で、更に我々はこの点については、今までの議論も十分でなかったということが本日の議論で非常によくわかったと思うのですが、その点については夏休み以降、更に検討するということ。
 その結果、それならばそういう法的効果を与えない方がいいのではないか、という考え方になるかもしれないけれども、認定制度は別にして、法的効果は与えられる方法があればその方がいいということになりますし、それは夏休み以降の議論に委ねざるを得ないのではないだろうかと思いますけれども、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

○廣田委員 今の座長の説明で、大体いいのですけれども、もう少し慎重論についても詳しく、先程言った1ページの①と③を書いていただいた上で、私が申し上げた3つの理由付けをきちんと書いていただきたいと思うのです。
 それからもう一つ、法的効果の付与を諦めるかどうかというのは、これから先の議論なのですが、そういう法的効果の認定をするぐらいなら諦めてしまえという議論があるかもわかりませんけれども、その間に、まだいろいろ議論があると思いますので、私の意見はむしろ、時効中断効については証明力で解決する方法があると言っているわけですから、そういったほかの議論も将来議論するという前提で置いていただきたいのです。

○青山座長 諦めるというのはここに書くわけではなくて、これから夏休み以降の議論でどうなるかわからないということで、私も事前の認定が駄目だからということで、先ほど山本委員が大体崩れるというお考えを言われましたけれどもそうなるのかどうか。私はまだ執行力は無理かもしらぬけれども、時効その他の効力は事前認定がなくても、工夫の余地があるかもしれないというふうには思っております。

○山本委員 私は別に工夫の余地を否定しているわけではなくて、実際上の意味がなくなるだろうという見通しを申し上げただけです。

○青山座長 わかりました。よろしいですか。それでは事務局は御苦労ですけれども、ここのところは全面的に書き変えるくらいな気持ちでパブリック・コメントの原案を考えていただきたいと思います。
 残されている時間で是非これだけは検討しないと、今日は延長してでも、検討事項2-1の論点2について議論してほしいと言われております。論点2は今まで議論をしないで積み残してきた点でございますのでこの点をお願いしたいと思います。事務局から資料の指摘も含めて御説明をお願いしたいと思います。

[ADRに関する基本的な法制の枠組み[第17回検討会の続き]

○小林参事官 資料は2-1の6ページでございます。前々回に御議論はいただいておりますが、座長の方から全部終わった後にまとめてというお話もありましたので再度御説明をしたいと思います。
 この法制をどう考えるのかというのは、先ほど来、議論にもありましたように、元々白地から始めているわけなので、それぞれイメージはあろうかと思いますが、おおむね基本的事項、一般的事項、特例的事項ということで議論を進めてきたわけでございます。その適用範囲、あるいは他法との関係についてどう考えるのかということを、とりあえず整理したものが論点2でございます。
 まず基本的事項につきましては、基本的事項ということでございますので、すべてのADR、それから相談手続は適宜準用するということになると思いますけれども、適用範囲として考えていいのではないかということでございます。
 それから、一般的事項につきましては、これは共通的なルール、特に信頼性を確保するための共通的なルールとして議論をしてきたわけでございます。先ほど原委員の御説明の中で認定制が信頼性の確保のための一手段として考えているのかというようなお話がありましたが、元々の経緯からして、認定制をもって信頼性確保の手段として御提示したことはなく、これはあくまでも法的効果の要件の確認をどうするかということでありまして、信頼性確保については、基本的にはこの一般的事項で議論をさせていただいたつもりでおります。
 こちらにつきましては、基本的には民間部門が提供するADR及び相談手続を対象とすべきではないかというふうに考えておりますが、必要に応じて規定ごとに適用対象の絞り込みを検討するという部分につきましては、これも前々回御質問があったかと思いますけれども、例えば業としているものだけにかけるか、あるいはアドホックと言いますか、1回限りのものについてまで適用するかどうかという辺りについて議論をする必要があるのではないかということでございます。
 それから、個別法令に別段の定めがあるケース、これは行政型のケースもありますでしょう。一部民間型もあり得ると思いますし、また、仲裁法制にもあると思いますけれども、これらに別段の定めがある場合については、そちらを優先すべきではないかということでございます。
 それから、3番目としまして、特例的事項につきましては、これは規定ごとに適用範囲を検討すべきではないかということでございます。その範囲については今まで御議論のあったとおりでございまして、なかなか難しい問題は多々あるわけでございますが、基本的にはそれぞれの法的効果に応じて議論していくべきかということでございます。
 ただ、ここで申し上げたかったことは、いわゆる行政型ADRについても、こうした特例的事項を考える必要があるわけでございますが、これらについては、それぞれの法律の目的、あるいはそれに応じた手続規定が置かれているわけでございますので、もし今回の民間型についての考え方を踏まえて、見直しの必要があれば見直しがなされることになると思いますが、この段階で行政型も併せて議論をするというのはなかなか難しいのではないかということでございます。
 4番目は、調停手続法を制定するかどうかということについては、最終的にはパブリック・コメントにかけることにいたしておりますが、その場合の調停手続というものについては、調停あるいはあっせんを適当範囲とするということでございます。従来、調停とあっせんを区別する分類も当初は作ったわけですけれども、そこまで区別する実益はないだろうということで、あそこで言っていた分類の調停とあっせんを併せたものを適用範囲として考えたらどうかということを記述いたしております。
 以上です。

○青山座長 基本的事項、一般的事項、特例的事項というのは、前に既に御議論いただきましたけれども、このペーパーで言いますと、2ページ辺りにその基本的事項、一般的事項、特例的事項というのが出ておりますが、そういうものの適用範囲について、この論点の2で、こういうパブリック・コメントをしたらどうかということでございますけれども、これにつきまして、御意見をいただければと思います。
 私の感じでは、この点については、適用範囲の問題として、これでいいのではないかというおおまかなアテンダントがあったのではないかと思いますが、さらに何か御注意いただくことがあれば承りたいと思っております。

○廣田委員 「特例的事項は、民間部門が提供するADR」となっておりますけれども、行政型ADRに関しては、各個別法令でということなのでしょうけれども、行政型ADRも、行政機関が持っているADRというのがありますので、そのADR、例えば中央建設工事紛争審査会とか、これは非常にたくさんありますので、しかも、法的根拠がどこにあるかというのは、かなり複雑だと思います。都道府県で持っているのもありますから、これを個別法令で全部対応しろと言われても大変だと思いますので、項目によっては、例えば、時効中断なら時効中断は個別法令に持っていかなくても、基本法なら基本法、あるいはほかの一般的な法律にきちんと書き込めばそれで済んでしまうというのがあると思うので、この範囲は少し限定し過ぎではないかと思うのです。

○小林参事官 御趣旨はよくわかりますが、それを否定したというわけではありませんで、それは必要に応じて同じような考え方で行うということはあり得ると思いますが、端的に申し上げれば、認定制が入るか入らないとかを含めて、こちらの方も固まっているわけではありませんので、最初からすべてを一緒に行うということは今の段階ではなかなか難しいのではないか、この部分につきましては、そこも含めてパブリック・コメントという形で関係機関の御意見を伺いたいと考えております。

○原委員 これはどういうふうに言ったらいいかわからないのですが、前々回、私がちょっと申し上げたところで、また事務局ともやりとりをして整理をしていただいたので、このとおりで出されていいように思うのですけれども、ただ、2点ございまして、消費者トラブルの場面では苦情処理、仲裁によるあっせんという言葉が法令的にも使われたりしていて、それらの言葉が、ADRと相談手続という2つに括られると文言自体が見えなくなってしまうので、そこを注記みたいなものは必要ではないかということが1つ目です。
 それから2つ目は、趣旨のところの一番最後の行のところですけれども、「ADRを規定する個別法令の規定の見直しも検討されることになるものと思われる」という、この表現はどういうふうに考えたらいいのか。確かにそうだろうとは思うのですけれども、検討しなさいと言っているのか、客観的に検討が進められるようなこともあるであろうと突き離して、客観的に記述しているのかという点がちょうど中間的で、何かとても読み取りにくいのです。趣旨というか狙いは何なのか、というのをお聞かせいただきたいと思います。

○小林参事官 まず、前者の相談と苦情処理手続につきましては、従来、相談手続・苦情処理手続としていたわけですけれども、これは元々の整理からしてかえって混乱を招くのではないかということで、相談手続に一本化したいと思っております。
 現在使われている苦情処理手続の中には、私どのもの整理で言えば、相談手続に該当するものと、あっせんに該当するものが入ってくると思いますし、そもそも用いる用語が混乱しているのも適当ではないと思いますので、そこはきちんと注記をしたいと考えます。これは全体に及ぶ話なのでパブリック・コメントのときには注意をしたいと思います。
 2点目の問題ですけれどけも、中立的なというふうにおっしゃったとおりでございまして、1つの考え方としては、すべて引っくるめてやってしまおうという考え方もあるでしょう。もう一つの考え方としては、全く外の世界の話だという考え方もあり得ると思いますが、これは先ほど来の議論でどういった内容になるか、あるいはそれがどういう方法で認められるかということにも絡んでくる問題ですので、パブリック・コメントに付すのに合わせて、当該機関、あるいは関係省庁からの意見をむしろお聞きしたいということでございます。

○原委員 だから、法律ができた後の風景を写実しているということでいいのでしょうか。必ず、新しくできた法律に則って、皆さんに見直してくださいということを命令しているわけではないのですね。

○小林参事官 それはそうだと思います。

○青山座長 法律ができたときの予想ではなくて、現在進行形と私は理解しているのです。これから進行していくと、廣田委員の先程の御質問とも絡んでいますけれども、他省庁との折衝は全然できていない段階でこちらの方に合わせて直すようにとは言えない段階なのです。これから夏休み後の議論までにパブリック・コメントが返ってくれば、もっと具体的に詰めていく段階で、国土交通省の中央建設工事紛争審査会とはどうすり合せるかと言うことが多分出てくるだろうと思います。私は積極的に期待しておりまして、法律ができた後は自由にしてくれということでは、必ずしもないと御理解していただければと思います。これは個人的な考え方でございます。

○廣田委員 私が心配しているのは、こういうふうに限定してしまうと狭くなり過ぎで、後の議論につながらないのではないかということを心配しているのです。ですから、もう少しなお書きみたいに、適用範囲をどのようにするかとかが必要です。あるいは項目によっても違うと思います。守秘義務などというのは事実問題としてはいろんなところに掛かってくると思いますので、適用範囲をどうするかとか、項目によってどのように具体化していくかについては、なお議論があるということを1行でも加えていただいて、後の議論につなげていただきたいと思うのです。これは案外、実務の上では大事なところだと思います。

○小林参事官 趣旨の範囲内であれば、枠囲いに書いて構わないと思います。

○山本委員 前に御質問をして、前に御回答をいただいているような気がしているので、重複になったら大変恐縮なのですが、論点2の②の(個別法令に別段の定めがある場合を除く)という話で仲裁法が例に挙がっているのですが、別段定めがある場合という趣旨として、仲裁法が別のことを書いているという場合に、それが除かれるというのはよくわかるのですが、仲裁法が何も書いていないような守秘義務とか、重要事項説明義務のようなものは確か仲裁法は特に書いていなかったのではないかと記憶していますけれども、そういうものについては、仲裁手続に適用がないという御趣旨と理解していいのか、あるいは別段に定めかないので、その場合にも仲裁手続も適用があると理解してよいのか、ちょっとそこをお伺いしたかったのです。

○小林参事官 これは個別に判断をすることになると思いますので、むしろそこは疑義がないように、整理をするということだと思います。

○山本委員 整理をするというのは、何かこのパブリック・コメントのところで書くのではなくて、最終的に整理をするとということでしょうか。

○小林参事官 最終的に整理をします。

○青山座長 山本委員は、そういう場合には広く及んでいくというのがよろしいというお考えですか。

○山本委員 定見はありません。これはどういう趣旨なのかというだけのことです。

○青山座長 わかりました。その点についての考え方としてはどうでしょうか。

○三木委員 前に何度か申し上げたと思いますが、仲裁法の場合には、モデル法との一致性という非常に高い要請がありまして、そのモデル法と可能な限り合わせたわけですから、仲裁法以外の法律が、実は仲裁法に書いていないことを記述しているのだということになると、外国人が日本の仲裁法を読んで不意打ちを受けるということになります。いわゆる仲裁法の一覧性の問題がありますので、書いていないことは他の法律がカバーするのは、基本的には望ましくないと考えております。

○青山座長 それも1つの意見としてあり得ると思います。仲裁法以外の法律というのもありますので、個別的に検討するということになるのでしょうか。
 ほかによろしゅうございますでしょうか。事務局の方からこの点何かございますか。

○小林参事官 今、三木委員の御趣旨よく理解できるところでありまして、それを踏まえて先ほど個別と申し上げたわけです。

○青山座長 それでは、この論点は、今のようなことでまとめさせていただきたいと思います。
 以上で本日予定しておりました議題はすべて終了いたしました。大変お忙しいところは今日は予備日ということでございましたが、予備日の検討会に御参加いただきましてありがとうございました。今月は6月9日、23日、30日と、1月のうちに3回連続して検討会を開かせていただきまして、これで一応3巡目の議論を終わったということになります。そこで事務局の方にこれから御苦労をお願いいたしまして、今日までの3回の議論を踏まえたパブリック・コメントの原案のようなものを用意していただきまして、7月14日の月曜日に検討会を開かせていただきたいと思います。それが夏休み前の最後の検討会でございますが、そこで今日の議論も含めた最後の議論をさせていただきたいと思います。
 これでよろしゅうございますか。事務局から何かございますか。

○小林参事官 今日の議事につきましては、これで予定していたものはすべて終了したわけでございますが、私ども事務局でこれまでADRを担当しておりました平中隆司参事官補佐が明日付けで農林水産省の方へ戻ることになりました。お時間迫っている中、申し訳ございませんが、一言だけ平中の方から皆様に御挨拶をさせていただく御時間を頂戴できればと思います。

○平中参事官補佐 検討会の立上げの頃から、大変いろいろと貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。まさにこれからというときに離れないといけないのは、大変申し訳なくもあり、残念でもございます。ただ、本省の方にもいろいろと懸案事項がございますので、戻って頑張らせていただきます。
 また、皆様にお願いすることもございますかとも思います。どうぞその際にはよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

○青山座長 どうもありがとうございました。御苦労様でございました。

 それでは次回は今申しましたように7月14日の月曜日でございますが、今日言い足りなかったこととか、こういうことを付け加えろということがありましたら、事務局の方に適宜御連絡いただければ最大限の配慮をさせていただきます。いつまでということはありませんが、あまりぎりぎりなっても困りますので、今週いっぱい、金曜日くらいまでにこの点足りないということがあれば、メールなり何なりで御連絡いただけばと思います。
 それでは、皆様、本日は大変お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございました。本日の検討会はこれにて終了させていただきます。