第2回配布資料一覧

資料2−5

2002.03.18

製品分野別裁判外紛争処理機関(PLセンター)について




1.製品分野別裁判外紛争処理機関(PLセンター)とは

 PLセンターとは、PL法施行に際して、PL関連紛争の中立・公正かつ簡易・迅速な解決のため、紛争解決手段の多様化の観点から、ニーズに応じて各製品分野ごとに設立されたADR機関である。
 PL関連紛争では製造物にかかる科学的・技術的な事項が争点になることが多く、利用促進の観点から低廉、迅速、簡易等の要請に応えることに加え、科学的・技術的争点の解明のための専門的知見を活用できることが重要である。
 経済産業省では商務流通審議官通達(平成6年10月)を発出し、製品分野ごとの専門的な知見を活用した体制を中立性・公正性の確保を図りつつ整備するためのガイドラインを示しており、各産業界ではこの通達に則ってPLセンターを設立した。
 経済産業省所掌では6機関が設立され、平成12年度には6機関の合計で約9700件の相談等を受け付け、PL関連事故の紛争解決等に大きな役割を果たしている。


2.PL関連紛争及びPLセンターの特徴及び現状

(1)原因調査の実施及び「欠陥」判断の重要性

 PL関連紛争の特性は、事故原因等の科学的・技術的な事項の評価並びに欠陥の存否の判断等が争点になることが多いことである。
 このうち、原因調査等を通じて事故の発生機序を明確にすることは、紛争解決の促進に極めて重要であることから、合理的な範囲で原因調査を実施する必要がある。その際、外部の原因究明機関等への依頼が必要となるケースもある。
 原因調査に要する費用は高額となることが多く、消費者と企業との間の紛争処理では処理費用の低廉性が要請されることもあり、原因調査のためのコスト負担が問題となることがある。
 このため、実際的には企業側による原因調査等を活用するケースも多く、その結果についての中立・公正な評価体制を確保することが重要である。
 次に、このような原因調査等の結果を踏まえて欠陥の存否について判断する必要があるが、原因調査等の結果だけをもって必ずしも個々の事案の欠陥判断等の評価が確定されるわけではない。事故の発生機序が必ずしも明確にならない場合も多く、また、事故の発生機序が明確となったとしても「通常有すべき安全性を欠いていること」という欠陥の定義の性質上、両当事者間でその評価について全く異なる主張となる場合も多い。

(2)適切な紛争処理体制(欠陥判断等の評価体制)の確保

 上記のようなPL関連紛争の特性から、両当事者間での交渉により解決困難となった場合には、調整的な解決が困難となりがちである。
 このような科学的・技術的な事項が争点となる紛争を中立・公正かつ簡易・迅速に解決するためには、当該製品分野の科学的・技術的な専門的知見を有する者が紛争処理に大きな役割を果たすことが必要であり、これに加えて法律的な専門的知見を有する者や消費者問題有識者等を加えた評価体制(パネル)を確保することが重要である。
 PLセンター事務局については、このような評価体制(パネル)による審査が簡易・迅速かつ適正になされるように、判断に際して必要となる原因調査や現地調査等を含めた情報の提供が求められる。
 さらに、PL関連紛争の多くが消費者と企業との間の紛争であることから、PLセンター事務局には、消費者への相談対応において、相対交渉の促進の観点から争点の整理、両当事者間の交渉が適正に行われるような助言・情報提供、原因調査等への援助等を行うことも求められる。
 なお、PLセンターにおける紛争処理は、消費者と企業との間の紛争処理であることから申立費用等による運営は困難であるため、紛争処理体制の中立性に配慮しつつ、関係業界・機関等からの拠出等により運営されている。しかしながら、中小企業が多い製品分野等では関係業界・機関等を取り巻く環境が厳しくなっている昨今の状況から、体制の維持並びに充実・強化のための財源の確保等の工夫が求められている。

(3)利用者のアクセスの確保

 各PLセンターでは、利用者のアクセスの確保の観点から、フリーダイヤルの設置、各地の消費生活センター等との連携等を実施しており、更なる利用者のアクセスの確保・向上を図る観点からインターネットによる情報提供等が望まれる。

(4)独立性(中立性・公正性)の確保

 中立性・公正性に関する対外的な信頼の醸成・確保を図る観点からは、PLセンターの体制の独立性を確保することが重要であり、このため、多くのPLセンターは組織形態、人的配置、事業の内容等を考慮しつつ、母体機関内の独立性の高い組織として設置されている。


3.PLセンターにおける紛争処理(消費生活用製品PLセンター)

 消費生活用製品PLセンターは財団法人製品安全協会内の独立の組織として設置され、消費生活用製品(乳幼児用品、家具・家庭・厨房用品、スポーツ・レジャー用品、高齢者用品、自転車、喫煙具等)を対象として製品に関連する事故・苦情に関する相談や消費者と企業との間に生じた紛争処理を行っている。

(1)相談(相対交渉の促進)

 紛争当事者とりわけ一般消費者たる被害者や消費生活センター等からの相談に対応して、争点の整理を行ったり、紛争解決に向けた助言や情報提供を行っている。この手続きにおいては、両当事者間の技術的知識、法的知識、交渉力等に大きな格差があるため、対等に近い交渉が可能となって実質的に公正な解決に至るように、申出内容等に応じて消費者側に必要な助言や情報提供等を行っている。
 また、消費者側の要請に応じて、紛争事案の対応に際して、両当事者の協力を得て争点整理、必要となる助言や情報提供等を行うとともに、必要に応じて原因調査等への協力・援助等を行うことを通じて、両当事者間の相対交渉を促進することにより実質的な紛争解決を行っており、このような紛争解決を実施している事案を当センターでは「製品事故」及び「品質クレーム」として区分している(この段階において、必要に応じて弁護士の助言等を得つつ対応している。)。
 なお、このような手続きにより解決困難となった事案は、調整的な手続きでの解決が困難なものであり、調停手続きに移行することが多い。

(2)調停(裁定)

 相談対応等による紛争解決が困難となった場合に、両当事者の同意を得た上で実施する紛争処理手続きで、事務局から独立したパネル(弁護士を議長として消費者問題有識者、技術専門家等により構成)が事実とルールに基づいた裁断的判断を行うもので、いわゆる「裁定」として運営している。
 パネルの審査に際しては、争点に係る判断・評価に必要となる各分野の専門家(法律専門家、消費者問題有識者、技術専門家等)が協力して迅速な運営を行っており、審査期間が平均で3.5か月と短期ではあるものの、両当事者の主張・立証に加えて、必要となる現地調査、原因調査、医療調査等を実施して、欠陥、損害、欠陥と損害との間の因果関係等の判断を行い、詳細な理由を記載した審査結果を文書により両当事者に報告している。
 この調停手続きによる審査結果は両当事者を拘束するものではなく、当事者が審査結果を受け入れないことにより最終的な解決にいたっていない事案は存在するものの、欠陥等が存在しないとして賠償責任がないと判断された事案を含む多くの事案において、審査結果についての両当事者の理解を得て解決にいたっている。
 また、一般消費者たる被害者側が弁護士等の関与なしに申立書の作成や適切な証拠書類等の収集を行うことは困難であり、調停申立てに際し、事務局は被害者側からの要請に応じて調停申立て手続きの援助等を行っている。
消費生活用製品PLセンターの相談等受付状況
     製品事故 品質クレーム一般相談/問い合わせ 計 
平成7年度28151,2201,263
平成8年度16229621,000
平成9年度15
( 3)
908931
平成10年度18
( 1)
874897
平成11年度18
( 3)
897924
平成12年度20
( 4)
11854885
平成13年度
(平成14年2月末現在)
36
( 4)
12 9741,022
  計 151
(15)
826,6896,922

注:製品事故欄の( )内の件数は調停申立受理件数を示す。