[開会]
○青山座長 それでは、定刻も過ぎましたので、ただいまから第21回ADR検討会を開会いたします。
議事に入ります前に、本検討会の新しい委員を紹介させていただきます。
横尾委員が海外に赴任されましたことは御存じのとおりでございますが、本日の会合から東京ガス株式会社総務部法務室主席でいらっしゃいます、佐成実委員にこの会合にお加わりいただきます。
佐成委員には、これまでの企業法務における御経験等を踏まえまして、どうぞ積極的に御意見をいただきたいというふうに存じております。
佐成委員から、どうぞ一言御挨拶いただけますでしょうか。
○佐成委員 ただいま御紹介いただきました、東京ガス法務室で企業内弁護士として勤務しております佐成実と申します。これから経団連の横尾委員の後任ということで議論に参加させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○青山座長 本日は綿引委員と龍井委員のお二人がやむを得ない所用で御欠席でございます。それ以外は、皆様御出席いただいております。
本日は、先ほど申しましたように第21回ということでございます。夏休み1か月間、それぞれリフレッシュしていただいたと思います。これから来年の通常国会へ向けて、この秋、それから来年1月、2月という頃まで、この会議を実りあるものに進めていきたいというふうに思っておりますので、引き続いてよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事でございますけれども、本日はお手元の議事次第のとおり、4つのADR機関の方々に御出席いただきまして、総合的なADRの制度基盤の整備につき、この夏に意見募集を行いましたこれまでの検討状況を踏まえた論点整理をベースに、御意見をいただいてまいりたいというふうに思います。
また、この4つの機関から御意見をいただきました後の残りの時間でございますが、夏休みの間、各委員の皆様には多分、周囲の方々といろいろな形で意見交換をする機会もおありではなかったかというふうに思います。あるいは、御自身でじっくりお考えいただいているのではないかというふうに思いますので、ヒアリングの後の残りの時間については、自由討議という形で進めさせていただきたいというふうに思います。午後5時前後に終了する予定でございます。
それでは、ヒアリングに入りたいと思います。ヒアリングの進め方は2つの機関ずつ、2つのグループに分けまして、それぞれの機関から20分程度の御説明をいただいた後、一括してそれぞれのグループにつき20分程度の質疑を行うということにさせていただきたいというふうに思っております。御出席いただく方々の御紹介はグループごとにさせていただきます。
最初のグループは、社団法人日本商事仲裁協会国際仲裁部長の中村達也さんと、日本知的財産仲裁センター前運営委員長で、現在運営委員の菊池武さんであります。
お二方には、お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
先ほど言いましたように、中村さんから20分、それからまもなく御到着になります菊池さんから20分お話を伺った後、一括して20分の質疑応答をさせていただきたいというふうに思っています。そこで、一旦、グループを入れ替えるというスケジュールで進めてまいります。
それでは恐れ入りますが、中村さんの方からどうぞ自由にお話いただけますでしょうか。
〔総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング〕
〔社団法人 日本商事仲裁協会〕
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)社団法人日本商事仲裁協会の中村と申します。
それでは簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
事前にADR検討会の事務局から頂戴しております、御説明いただきたい事項の例に沿った形で作成したものが本日配布されております。また、社団法人日本商事仲裁協会、以下単に協会と呼ばせていただきますが、協会が提出した回答書もございます。
本日、配布させていただいております「ADR検討会ヒアリング」というペーパーは、その回答書の内容と実質的に異ならないということでございます。
事務局作成の、総合的なADRの制度基盤の整備についてというものは非常に大部なものでございまして、内容も十分に理解できていないところもあるかと思います。それで、意見書の中で的外れなことを申し上げたかもしれません。
また、理論的な内容には踏み込むことはできず、実務の立場からの感想めいたことしか申し上げられなかったということでございますが、その点はお許しいただきたく存じ上げます。
それでは、各事項に沿って御説明を申し上げたいと思います。配布資料に沿った形で補足説明という形を取らせていただきたいと思います。
まず、「1.当協会における紛争解決手続の現状」でございます。協会は主に国際商事紛争の解決のための仲裁手続の管理を行っております。また、本年1月からは新規事業といたしまして、国内商事調停規則というものを制定いたしまして、それに基づく調停手続の管理も始めております。前者の国際仲裁につきましては、年間十数件の申立てがございます。他方、後者の国内調停につきましては今年1月から始めたばかりでございますが、現在まで十数件の申立てがございますし、その中には既に解決した事件も3件ございます。
もっとも民事調停と、後から申し上げますが、競合する紛争を扱っておりますので、人件費等を度外視したプロボノベースで開始をしているというのが今の現状でございます。
続きまして、「2.ADRが必ずしも十分に機能していないとの指摘に対する当協会の認識」という点でございます。まず実態としては、これは誰も否めない事実であろうかと考えております。もっとも、国際仲裁においては法整備がこれまでされてこなかったという点、それから弁護士法72条、これも後ほど触れさせていただきますが、弁護士法72条との関係で仲裁人、仲裁代理人の制約があることがその障害になっているとも思われます。
一方、国内ADRについては民事調停を除いて、我が国で一般にADRが広く知られていないことが機能が十分に発揮されていないという要因であることは、言うに及ばないというふうに私どもは考えております。現実に、十分に機能しているADR機関というものはほとんどないというのが、現状ではなかろうかというふうに認識しております。
その次の「3.総合的なADRの制度基盤の整備に対する意見」、これが本題でございます。「(1)ADRの健全な発展を図っていく上での法整備の果たす役割への期待」という点でございますが、ADRは紛争当事者が裁判に代えて、あるいは裁判と併せて、第三者に紛争の解決を委ねる合意に基礎を置く自主的な紛争解決手続である。
したがいまして、手続保障といった手続の基本原則は法により規制されるべきであると思いますが、それ以外の部分については、当事者自治を広く認められるべきであるという考え方を、この法整備を取るに当たっては考えられなければいけないというふうに思っております。
つまり、民事訴訟とADRとは本質的に違う手続であります。したがって、強行規定によって最小限度必要な手当というのは当然必要でございますが、それ以外はあくまでも、原則は自由な紛争解決制度というものを志向すべきであるというふうに考えております。
我が国においてADRの拡充・活性化という話が出ますと、必ず司法型ADR、行政型ADR、民間型ADRという3つに区分がなされ、かつ、ADR機関の存在を前提とした議論がされておりますが、ADRの基本はアドホックのADRであるというふうに私どもは考えております。したがって、ADRの制度基盤を整備する本来の対象というのは、アドホックADRであろうというふうに考えられます。
ADRというのは、先ほど申し上げましたように紛争当事者と紛争解決を任された、いわゆる手続主宰者との手続でありまして、ADR機関はいわばそのお手伝いをするという役割に過ぎないといっても過言ではないかと思っております。したがって、ADRの拡充をする目的は、これを援助する機関であるADR機関を規制するものであってはならないというふうに考えております。
また、その現状においてADR機関を規制すべき必要もない。仮に、将来、そのような必要が生じたとしても利用者・ユーザーである当事者の自由な選択、また自己責任に任せられるべきであろうと考えてます。
もっとも、消費者保護といった特別な観点からの要請で、仲裁法のように特別なルールを設けるといった一定の配慮を行うことはあろうかとは存じますが、一般的なルールとしては今、申し上げたようなことだと思います。最近では特に、電子商取引をめぐるBtoC、いわゆる事業者と消費者の紛争解決をADRに委ねるというための制度設計について、国際的にも議論がされております。
御案内のとおり、EU、あるいは米国を中心に議論がされておりますが、これもいわば消費者、あるいは個人を対象とする紛争解決制度の在り方についての議論でありまして、事業者対事業者の紛争というものでは必ずしもないというところは注目すべき点だろうと思います。
また、ADRの制度基盤の整理を図るに当たっては諸外国の現状、または動向を踏まえた国際的にも支持され得るものを策定する必要があろうかと思います。これに対して、そういった必要はないということはないと思いますが、もし、必要はないということであれば国際、国内というものを区別した検討というものをされるべきであろうかと考えております。したがって、国際的動向に沿わない制度基盤というものは、国際的に支持が得られないばかりか、国際競争に我が国が負けてしまうということになってしまうだろうと考えております。
次に「3.総合的なADRの制度基盤の整備について」の論点に対する意見でございます。まず基本的事項について申し上げます。ADRは、私人間の紛争を私人である第三者の解決に委ねる紛争解決手続でございますが、我が国では世界的に見ても極めて特殊な司法型ADR、行政型ADRが存在していると認識しております。そういった司法型ADR、行政型ADRに対する社会的要請が存在するということも認識しておりますが、これら公的なADRとその他のADRが扱う紛争が共通していることは否定はできません。
したがって、公的ADRの民営化といった問題について検討がされるべきであろうかと考えておりますが、そういった必要はないという前提であれば、紛争当事者である利用者が自由に選択して、民間型ADRを利用することができるような、例えば手続費用面において公的ADRがその障害とならないような配慮がなされるべきであろうと考えております。
この時期において、このような民事調停の問題について取り上げることが適当であるかどうかについては、必ずしもそうとは言い切れないかとは思いますが、民事司法制度の改革を検討するには、やはりこの問題を避けて通れないのではなかろうかというふうに考えております。したがって、現状を踏まえますと、必ずしも望ましいことではございませんが、財政面での公的ADRとの不均衡を是正するために、民間型ADRに対して利用者の手続費用を負担するといった間接的な方法であったにせよ、国家の財政的支援が必要であると考えております。これは、国家政策実現を担う民間型ADRの拡充・活性化を図るためのやむを得ない措置であろうかと考えております。
ただ、このような措置が民間型ADRの独立性を損なうものであっては決してならないということには、誰しも反対しないところだと思います。
ADRの発展のためには、競争的市場原理に委ねるべきであるという意見もございますが、これは今、申し上げました公的ADRが存在する我が国においては無条件に妥当するとは必ずしも言えないというふうに思います。
次に、一般的事項、調停手続事項について、併せて意見を述べさせていただきたいと思います。この事項につきましては、このADR全般について言えますが、我が国は実務、理論の蓄積というのは諸外国に比べて低いということでございます。
したがって、その一般的なルールを策定するに当たっては国際標準といっても過言でもない、UNCITRALの国際商事調停モデルといったものに準拠して検討がされるべきだろうというふうに考えております。
それから、特例的事項の問題でございますが、まずADRに対する時効中断効とか、あるいは執行力の付与といった措置が盛り込まれておりますが、そういった措置を講ずることは非常に望ましいことであると考えております。
ただし、そのためにADRの適格性を要件とすることは、アドホックADRも視野に入れた場合、そういったもののルール作りは困難であり、そしてまた、このような制度に加えて、特に行政機関がその審査を行うという制度はほかの国に類はなく、ADRの健全な発展を阻害するおそれもあり、国際的視野に立った慎重な検討がされるべきであろうかと思っております。
時効中断効、執行力は、ADRの利用者にとってはあるに越したことはないのですが、このようなADRの適格性についての確認方法を採用するのであれば、むしろこれらはなくてもよいのではないか、という議論もあろうかと思います。また、なくても利用者の利便性を欠きますが、実務に障害が生じているものでもなく、民間型ADRの選択という面で、それが実質的な障害になるとも思われないというふうに考えております。
次に、ADRの主宰者と代理人の資格についてでございますが、弁護士法72条との関係はありますが、国際的に見て法的資格を課すものはごく一部でございまして、その自由化を促進すべきであろうかと思っております。特に我が国における国際仲裁においては、外国の裁判所の元裁判官、あるいは学者、弁護士といった法律家が仲裁人として活躍しております。
この点に関しましては1996年だったと思いますが、外弁法の改正によって国際仲裁代理が一定の要件の下に認められることになりましたが、本検討会においてはそれ以上に広く門戸を開放すべきであるということで検討していただきたいと思っております。
今般、UNCITRAL国際商事仲裁モデル法に準拠して成立した仲裁法によって、仲裁法制の国際標準化がようやく図られたという現状でございます。そういった現状にもかかわらず、仮に、それに逆行するような措置が採られるとするならば、我が国における国際仲裁の活性化の妨げとなり、それによる実害は計り知れないことになると思います。このADR主宰者、あるいは代理人の資格について、数年前に法務省と日弁連による国際仲裁代理研究会が行われたかと思いますが、その調査結果の資料を見ても、仲裁代理に制約を置いている国はほとんどないのが現状でございます。
したがって、仲裁代理についての制約もないのであれば、ADRの主宰者についても当然自由に行えるような形に持っていくべきであろうと思います。
現実の問題としましては、国際仲裁事件において、例えばアメリカのロースクールの教授が仲裁人を務めていることもあります。そういう人を弁護士法72条違反で処罰の対象とすることになるということは、これは国際的には大きな批判を浴びることになろうと思いますし、ひいては我が国のADRの国際社会からの孤立ということになってしまうだろうと思います。
以上簡単でございますが、私の説明でございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。
では続きまして、日本知的財産仲裁センターの運営委員、前運営委員長の菊池武さんでいらっしゃいます。20分ほどお話をいただきまして、その後、中村さんと菊池さんのお話を一括して質疑応答をさせていただくという予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
〔日本知的財産仲裁センター〕
○説明者(日本知的財産仲裁センター 菊池武運営委員)ADRの制度基盤の整備に関するヒアリングにつきまして、9月1日付で回答書を提出しております。20分ということでございますので、特に問題を絞ってお話をさせていただきたいと思います。
ペーパーをお出ししてございますが、特に論点6と論点35に関連しましてセンターとしての意見を申し述べたいと思います。
まず、私どものセンターの現状について御説明申し上げますと、センターは平成10年に発足しておりまして、その取扱いの事件一覧は平成15年8月29日現在、後に付けてある一覧表のとおりでございます。
最初の「日本知的財産仲裁センター 調停・仲裁申立事件一覧」という欄を御覧になりますと、1998年は途中から始まっておりますので2件しかございませんが、1999年にまいりまして、どういうふうな経緯で事件が進行したかということも含めまして記載しておりますが、大体多くの場合が和解が成立しているということでありますが、不成立も2件ございます。それから、第2号事件につきましては仲裁判断をいたしております。2000年に入りまして、これはかなり成績がよくないのですが、取下げが2件、あとは不成立ということで実績が非常に芳しくございません。2001年に入りまして、相手方不応諾と和解成立、それから、2件目は関西支部に移管されております。
なお、当センターは東京の本部のほか、関西、名古屋に支部がございます。
次のページの2002年でありますが、これは提起された事件が5件でありますが、そのうち1件が不応諾で、あと不成立が2件、取下げが1件、係属中が1件ということで、これも余り活発とは言えません。
本年になりましてのケースが、これはいずれも不応諾でありまして、1件だけ係属中、それから、不成立と取下げということで、余り実績がございません。
このほかに、当センターではドメインネーム、JPドメインの紛争処理裁定ケースを扱っております。これは仲裁とは違いまして、当センターが裁定をした後10日以内に、裁判所に出訴できることになっているわけですが、それと同時に裁定はインターネットで公表、公開いたします。
そういうケースですが、8月29日現在では24件が事件になりまして、そのうち取消しが2件、取消し裁定は14番と21番ですが、そのほかの裁定は移転裁定であります。
それで、そのまま確定したケースも多いのですが、東京地裁に出訴されて、そこで当センターの裁定が取り消された件が1件あります。MP3のケース、これは8番目のケースですが、これは裁定結果を否定されておりますが、それ以外は当センターの裁定どおりということであります。それから、当センターの紛争処理手続が発足する前に既に事件になっていたケースとしてJACCSのケース、これは19番目にございます。
それから、J-PHONEのケースは16番目。これは最高裁まで行って確定した上で、更にセンターに戻ってきた事件です。これはなぜかと言いますと、不正競争防止法では移転の判決ができないから、最高裁に行きましても移転を受けることができないので、最高裁の判決が確定した後に当センターに回付されたものであります。今後はこういうケースはなくなるということであります。
大体、以上が現在の状況でございますが、当センターは日本弁護士連合会及び日本弁理士会より年各800 万円の財政支援を受けまして事業を進めておりますけれども、残念ながら独立の団体として自立するに至っていない状況であります。そこで、その原因についてどういうことがあるかということを述べたいと思います。
まず、国の財政上の措置による直接的な支援は問題があるか、というのが論点6の関係でございますが、ADR機関のうちで国の機関である裁判所が行っております民事調停法による民事調停は、潤沢な国家予算が投入されておりまして、東京地方裁判所の例でも同地裁知財部は多くのコンピュータ関連の事件等の知財関連事件を調停部に回し、選任された知財関係弁護士及び弁理士による調停事件として紛争を処理解決に導いております。
御参考までに、アメリカでは、アメリカ仲裁協会が裁判所からの知財関係移送事件を処理しておりますが、日本の民事調停法のように国家機関である裁判所がADRを行う仕組みはアメリカにはございません。
そこで、財政支援は国には厚く、民間ADRには薄い現状では国と民間との適切な競争を著しく阻害しているということは明らかであります。むしろ、アメリカのように、またシンガポールのように、調停前置を義務づけるなどの方法によって、相互の連携を図るインフラ整備があってこそ、当センターの活性化が可能になるといっても過言ではないと存じます。
勿論、財政支援を直接的に行うことはADR機関の独立性を損なうとの強い意見があることは十分承知しております。しかし、財政支援は申立人に対する申立費用、代理人に対する資金援助など法律扶助の範囲を拡大する形でも可能なはずでありまして、直接支援ということにこだわる必要はないかと思います。ADR機関であるセンターに直接資金投入をしなくても済む話でもございます。
要は仮に現状を前提とするならば、裁判所が知財部から調停部に事件を移送しないでセンターに回付するというアメリカ版の日本への導入を考えない限り、当センターの活性化はとても望めないのではないか、というように考えるわけであります。ADR基本法が成立いたしましても、現状を是認したままではADRは発展しないことは明らかでございます。同じように、専門ADRとしては日本海運集会所の例が挙げられますけれども、これは契約において既に仲裁合意がなされておることが前提であります。それでも海運集会所に上がってくる事件は約3分の1で、あとの3分の1は私的な解決が図られているというふうにお伺いしております。
センターとしてもPR、あるいはシンポジウムなどあらゆる機会をとらえて普及に努力はしておりますけれども、それだけでは決して十分な活性化が得られないと思うのであります。
また、他のADR機関では、保険業界は交通事故に関して紛争処理機関をバックアップして運営が軌道に乗っている事例もございますが、当センターも適当な方式で、そのような方式を採ることができれば、それは大変望ましいことでありますが、交通事件ほど普遍性がございませんので、とても同列には論ぜられないと思います。
そして、海運事件のように契約ベースで物事を考えることはできないのでありまして、主として契約外の関係で紛争が起きるということの方が圧倒的に多いという現状では、契約でセンターをADR機関として合意することができたとしても、そこから上がってくるケースの数は少ないと思われ、余り期待が持てないということになろうかと思います。
それから、次に論点35でございますが、これは適格性の問題ですけれども、各種ADR機関による調停等に執行力が認められるか、あるいは時効中断効が認められるかという問題について、適格性が付与されるためにADR機関から適格性のある団体として認定される必要があるのではないかという事前確認の問題がございます。
私は9月1日付の回答書におきまして「極めて難しい問題と思うが、必要上やむを得まい」と記入したのですけれども、よく考えてみますと、当センターに関しては必ずしもこの回答は妥当ではないのではないかというふうに思い直したわけであります。
なぜならば、当センターは弁理士法によりまして知財関係を処理する団体として、弁理士が弁護士と共同代理することが承認されておりまして、言わば公認されたADR機関でございます。
このような団体の場合には、これに加えまして更に事前承認を必要としないのではないかと解されるのであります。すなわち、当センターに関しては事前承認が必要という一般論は当てはまらないと考えるのであります。
意見書としての説明はこれら2点に限りましたけれども、若干補足をいたしますと、パブコメでも問題になりました相談手続でございますけれども、相談がADRの窓口になるということは非常に多いと思います。これは相談からスタートしてADRに進む例が多いという意味でございますが、相談を一般的にADR法に取り込む必要はなく、従来どおり他の諸法制に一任すればよろしいのではないかというように考えるのであります。
それから、先ほどの論点6に関連しまして、昨年から問題になりました一つのケースを御紹介いたしますと、現在、特許庁が行っている判定を当センターに移管すべきかどうかということが問題になりまして、特許庁と協議をいたしました。
それで、今の制度はだんだん安くなりまして、申立人が現在5万円の申立手数料を納付するだけで行われております。判定作業を行う審判官に対しては、当然給与の支払い、特許庁の事務経費がかかりますが、これは国の予算によって賄われているからそれが可能なわけであります。
ADRの一種である判定業務を当センターに移管したいという申し入れがあり、話を伺ったところ、一切予算は出さない、5万円だけでやってくれということで、それでは採算ベースに全く合わないということでお断りしたわけであります。と申しますのも、5万円であれば、当センターの専門家に依頼して判定業務を行い、また事務経費もかかりまして、これは自前で負担しなければならないのです。赤字を背負ってこの判定業務を引き受けるわけにはいかないので、そういうことを全く考えていないのですが、特許庁の方は意外な顔をされたのですけれども、やはり国の意識と我々とは違うのだなということを痛感した次第でございます。
国の行政機関が行っているADRは、国家予算の枠組みの恩恵の下に行政サービスとして行っているわけでありまして、民間ADR機関はそういう基盤は全く持っていません。したがって、民間ADR機関である日本知的財産仲裁センターもそのような財政基盤を有していないことを十分御認識していただかないと、ADRの基盤整備やインフラ整備はできないのではないかと考えるのであります。
地方公共団体についても同様でございますが、論点7に出てくるのですが、ADR関係についての財政支援は交付金などの形でしない限り、発展は望めないということでございます。
総じて、国側に財務についての配慮が全く欠けておりまして、これでは活性化が図られず、ADRの発展は望めないのではないかというように考えるわけであります。
あとは、いろいろ一般的なことになってまいりますが、調停手続の一般のルールにつきましては、UNCITRAL国際商事調停モデル法の採択という新しい状況がございますが、この場合もADR基本法はどのようなスタンスで制定されるかということが問題でございまして、これとの関係を抜きにして十分な意見を申し上げることは困難であります。
それから、専門家の活用のための弁護士法72条の特例を設けるかどうかということが問題にされております。一般的にADRのために特例を設けるということは賛成はできないのでありまして、72条は主として三百代言と言われる非法律屋のために、国民が正しいサービスを受けることが阻害されてはならない、という配慮からなされたものでありますので、これには個々に対応していけばいいのではないか。何も弁護士の業務独占を主張する必要はございませんが、個々の対応で十分足りるのではないかというように考えております。
そのほかのことは長くなりますので、この辺で終わりにさせていただきます。
〔質疑〕
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま中村さんと菊池さんのお二人から御意見を頂戴いたしましたけれども、このお二人の説明につきまして質疑を20分ぐらい予定いたしております。
御質問のある方はどうぞお願いいたします。
○原委員 知財仲裁センターの方に2点なのですけれども、最近になって相手方不応諾の率が大変高くなっていますが、どういうルートでここに持ってこられるのか、また、不応諾の理由がもう少しわかるといい、というのが1つです。
それから、もう一つは裁定結果を公開をしているということで、ドメイン名についてのトラブルは公開していらっしゃるようなのですが、また、特許や何かも扱っていらっしゃるということですが、ADRの魅力の一つとして非公開性の話がよく挙げられるのですけれども、特許も絡むとかなり公開をしないということのガードは固いと思うのですが、一方で、消費者とか市民とかADRを利用する側からいうと、ある程度、そこでどういう解決が図られているかというのは公開されないと、ADRの選択ができないということがあります。非公開性と公開性の関係をどのように整理していらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。
○青山座長 それでは菊池さん、今の2点をお願いいたします。
○説明者(日本知的財産仲裁センター 菊池武運営委員)第1点目は、個々の事件に直接関与していないので、なぜ不応諾が多いのかということは的確にはわかっておりませんが、ただ、信頼性が十分ないのではないかと思います。と申しますのは、不応諾になった後、裁判の方に持っていくケースが多いようなのです。ちょっと試みて、止めて、今度は裁判の方に行ってしまうというケースが多いと聞いております。調停委員あるいは事務局も引き留めは一生懸命やっているのですがなかなかこれが上手くいっておりません。
それから2番目の公開の問題なのですが、昨年になりまして、2つの出版社から調停仲裁事例集の発行を持ちかけられまして、それもきっかけとなりまして、各関係当事者からケースの内容を要約したものを代理人を通して作りました。調停仲裁はあくまで当事者が合意しないと公開できませんので、秘密保持の原則から了解を取って先例がどうなっているかという、少なくとも出版とは無関係にあろうというふうに最近の運営委員会で決めまして、作業を進行中でございます。
これは、確かにおっしゃるとおり、事例がないとはっきりしない。日本商事仲裁協会などでも国際商事仲裁の事例集は発行されておりますが、そういったもので、実は出版社2社とも出版方針が違うのです。それらにも振り回されてしまったのですけれども、それとは別個に一応、出版とは無関係に事例集をとにかくセンター独自で作って、それを出版の方にも応用していくというふうな方針に切り替えました。
○原委員 ありがとうございました。
○青山座長 よろしいですか。ほかにございますでしょうか。それでは髙木委員、どうぞ。
○髙木委員 日本商事仲裁協会の中村さんにお尋ねしたいのですが、ADR機関に対する規制はすべきではなくて、活性化するためには自由にしろということはいいのですけれども、そうするとADR法のイメージとしてはどういうものをお考えになっていらっしゃいますか。今度作るべきADR法というのは、いかなる法律として作るべきというお考えなのでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)今の髙木委員の指摘の内容について検討したわけではございませんが、ADR一般で言われることはいろんな面がありますけれども、手続ルールを策定するということであれば、その中で実務の要請として執行力を付与するであるとか、あるいは時効中断効を働かせるとか、そういった点はここで手当てしない限りはできないわけですので、そういったものを利用者は望んでいるのであろうと思っております。
基本的には、極論すれば、ADRについて国は余計な口出しをしないというスタンスがよろしいというふうに考えております。
○髙木委員 よろしいですか。それは、主張としては特例的なところを除けば、法律はなくてもいいという感じにつながるわけでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)基本理念については、ごもっともなことが書かれてありますので、それを掲げること自体については反対いたしておりませんし、よろしいかと思います。ただ、それ以外の規制的な部分については、これは再検討していただきたいというふうに考えております。
○髙木委員 それから、先ほどおっしゃいましたように、時効中断効とか執行力はあってもいいというふうな御意見だったようですけれども、その入れ方に関しては国際的視野に立った慎重な検討が求められるということ、つまり、事前規制なしにして、というご主張ですか。その前に入れる方法としてどういうことをお考えになっておられるでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)それも基本的な考え方といたしましては、先ほど申し上げましたようにADRというのはアドホックのADRが基本だと思いますので、したがって、定義いかんにもよりますが、ADR機関云々ということをまず置いて、そのADR自体に時効中断効、あるいは和解契約に執行力を付与させるということであれば、どういった要件でもってそれを与えるかということを議論すべきであって、ADR機関があって、それの適格性を判断した上で、そこで実施しているADRに時効中断効を与えるとか、それとか和解契約が成立した場合に執行力を付与するという議論は、私はどうも適当ではないというふうに考えております。
○髙木委員 場合によっては、事後的な確認でもいいという御主張にもつながるのでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)事後的であれ事前であれ、私はそういう適格性について判断することは必要ないのではなかろうかと思っております。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、廣田委員。
○廣田委員 今の中村さんに対する質問に関連して、特約的事項のところで最初の1行目に「ADRに対する時効中断効、執行力の付与などの措置は、望ましいことであるが」と書いてあります。そうすると「望ましい部分はあるけれども、適格性の判断は必要でない。」こういうことになるわけですね。
ですから、御趣旨としては適格性の判断はまだしないということで、それでなおかつ、そういう望ましいような適格性がもし設計できるのなら、それはそれで考えてもいいという考え方になるのでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)はい、おっしゃるとおりです。
○廣田委員 それと、もう一点、その場合にアドホックADRも視野に入れた場合ということなのですが、その場合にも例えば、時効中断効を与えるのならばアドホックADRも時効中断効を与えるようにしなければならない。そういう意見になるわけでしょうか。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)はい、さようでございます。
若干、付言させていただきますと、ADR自体は我が国でさほど使われていないというのが現状だと思いますけれども、やはりADRが使われるという場合には、ADR機関がなくても、例えば紛争当事者が町内会の会長に紛争の解決を委ねるというようなことは当然あるわけでして、そういったADRとその他の機関ADRとを区別することは、理論的にも私はあり得ないのではないかというように思っております。
○青山座長 どうぞ、原委員。
○原委員 では、2点なのですけれども、1つは今のに関連して新たになのですけれども、執行力の付与と時効中断は望ましいという御意見で、ただ適格性という話からアプローチするのはよくないという御判断だということなのですけれども、執行力を付与するということについては、検討会でもかなり慎重論が出ていて、一方では国際的にも見劣りがしないように制度設計をしていただきたいということが書かれているので、国際的な情勢にも大変お詳しいというふうに思っての質問なのですけれども、国際的に見て、この執行力の付与ということについてはどのように検討されて扱われていて、もしこれを認めるとすれば、どのような仕組みを考えているのか、教えていただきたいというのが1つです。
それから、もう一つは少し消費者相談とかトラブルの分野に特化した質問であったので、先ほど控えさせていただいたのですが、公的ADRというところをそれほど力を入れるということではなくて、やはり民間のADRを助成していただきたいというふうな論で書かれていましたけれども、この場合におっしゃっている公的ADRとしてはどのようなものをイメージなさったのかというのがありまして、消費者トラブルの場面ではかなり相談とか、それから紛争解決の場面でも公的なものが出てきていると言うのはおかしいですけれども、公的な消費者センターの上に苦情処理委員会なんかを設けてやっているようなケースというのがあります。
それはなぜかというと、事業者と消費者という力の格差があるということとか、裁判に行った場合の費用の負担が大きいというようなことがあって、そういった存在というのはかなり大きくなっていて、拮抗力として存在しているというふうには思うのですが、これの是非論はまた別途、検討ということになるかと思いますけれども、イメージなさった公的ADRというのが一体何かということと、こういった力の格差があるような場合、民間型ADRであれば、どのようなことを配慮すればいいというふうにお考えなのかということの2点をお聞きしたいと思います。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)まず、1点目の執行力の付与がされている法制が諸外国に見られるかどうかという点でございますが、その点について今日、準備したわけではございませんし、記憶も定かではございませんが、例えば、アメリカの州法の中にはコンシリエーション・アクト(conciliation act)というようなことと称して、いわゆるアドホック、それから機関ADRを区別せずに、調停の手続の結果得られた成果物である和解に執行力を付与するという法制を採っている州法は幾つかあるように記憶しております。
ただ、その中では今の規制的なものは全くない。勿論、公序に反するとかそういった内容、手続的保障のチェックは勿論行いますが、それ以外の機関ADRの場合にのみ執行力を付与するとか、そういった法制を採っている国とか、地域、州というのはないというふうに記憶しております。
それから、公的ADRは何を対象として述べていますかという御質問だったかと思いますが、まず最も活躍、かつ実際に活用されている民事調停法に基づく民事調停というものが公的ADRの対象として考えておりますし、行政型としましては、建設工事紛争審査会といったものも当然視野に入っております。
行政型にしましても、いわゆる国家の財政的な基盤に基づいて運営がされておりまして、人的・物的施設は相当な部分、国家の財政で賄われている。片や他方、民間型ADRについてはそういったものは全くない。そうすると、同じ紛争を扱うに当たって、おのずと当事者が消費者であろうが事業者であろうが、同じように使われるとすれば入り口の段階で平等ではないわけです。
したがって、民間型ADRを活性化せよということを幾ら語ったとしても、そういった面でハンディキャップを背負っているわけです。そういったものを取り除かないと、真のADRの拡充・活性化というものは実現できないだろうというように考えております。
それから、消費者の問題については、これはやはり特別な規則を考えるべきだろうと思いますし、法律でそういったものができるのかどうかというのは、まさしくここでの検討の課題の一つになるだろうと思いますが、他方、いわゆる自主規制、あるいはガイドラインという点においては民間型ADRの方としてもできる限り、そういった消費者ADRについて、消費者が使いやすい公正な、かつ、又、費用の面でも利用できるような仕組みを作っていくということを考えなければいけないと思っております。
殊にアメリカ仲裁協会の場合には、仲裁であれば消費者仲裁の特則を設けております。費用は一定の額を消費者が納めれば、後は事業者がすべて負担するということで、トータルな費用は変わりませんが、消費者が負担する額については一定の限度に収めているという自主的なルールを作っておりますので、そういった形で工夫はしていきます。
ただし、トータルの費用として考えた場合、例えば仮に100 万円かかったとすれば公的ADRではそれが10万円で済む。それに対して、民間型は100 万円すべて負担しなければいけない。
そうすると、受益者負担というのは消費者でなくても事業者が負担しなければいけないというところに不均衡があるということを申し上げた次第でございます。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
○山本委員 よろしいでしょうか。
○青山座長 どうぞ、山本委員。
○山本委員 中村さんと菊池さんに1点ずつ御質問ですが、中村さんには代理人の弁護士法72条との関係について、外弁法の規律以上に広く門戸を開放すべきであるという御意見があったわけですが、もし可能であれば、具体的なイメージといいますか、そもそもADRの主宰者の点についてということであれば、これは規律は特に必要はないというふうにお考えなのか、あるいは何らかの一定の規律は必要だというふうにお考えなのか。その場合にはどういうような形の規律が必要なのかということ。
いろんな主宰者といいましても、先ほど町内会長という例をお挙げになりましたが、勿論、ほかに整理屋とか、かなり望ましくないような類型の主宰者というのもあり得るのだろうと思いますが、先ほどの適格性の話とも関係するかもしれませんが、もしその辺り、具体的なイメージがあればお教えいただきたいというのが中村部長に対する御質問です。
○青山座長 それでは一つずつ聞いていいですか。それでは72条の問題をお願いします。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)72条は非常に重要な問題でございますが、今、山本委員御指摘の点につきまして、協会の立場といたしましてはADR主宰者に対しては全く資格要件が必要ないというのが、私どもの意見でございます。
その確たる理屈というものは今は用意しておりませんが、ただこれはデファクトといいますか、国際的に見てADR主宰者に法的資格、資格要件を課している国はまずないと思うのです。
したがって、この代理の問題を先ほど先生の御指摘にありましたが、代理ですら自由化が図られているところでありまして、この検討会のまとめたペーパーでもいわゆる代理の問題についてはそれなりに慎重であるべきだ。だけれども、主宰者についてはある程度、自由化を図っていってもいいというようなスタンスで意見が書かれてあったかと思うのですが、主宰者については現実問題として法的資格を要求している国というのはないと思うのです。ごく稀な例はあるかもしれませんが、私どもが存じ上げている次第ではアラブの国といったら失礼ですが、それらの諸国では、イスラム教徒でなければ仲裁人になれないという国がございます。
そういった特殊な国を除いて、弁護士でなければならないとかそういった法的資格を置いている国はないということが、これが国際的な現状でございますので、したがって、ADR主宰者についてはそういう現状を踏まえますと、理屈はどうあれ、資格要件を課すことは全くこれは論外であるというように考えております。
○山本委員 よろしいでしょうか。それでは、続いて菊池さんに対する御質問ですが、先ほどのお話の中で、論点6の国の責務との関係のお話で、裁判所から現在、調停分に対して事件を移送しているけれども、むしろ民間といいますか、ADR機関の方に回付するということをもっと考えるべきだというお話とか、あるいは利用者に対して財政支援ということを考えてもいいのではないかというような御意見があったかと思うのですが、この検討会の事務局がパブリックコメントを求めたペーパーの中でも、裁判所によるADRを利用した和解交渉の干渉といいますか、裁判所の方で一定のADR機関の手続の利用を進めることができるということを明確化してはどうかというような提案でありますとか、あるいはADRにおける代理人の費用等を民事法律扶助の対象として一定の援助をしてもいいのではないかというような提案が、個別的に特例事項の方でされていると思うのです。そういたしますと、これらの提案については基本的に賛成というお立場であるとお伺いしてよろしいでしょうか。
○説明者(日本知的財産仲裁センター 菊池武運営委員)はい。
○山本委員 わかりました。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
それでは私の方から、お二人のペーパーに共通する点として、財政的な支援ということが出ていました。財政的な支援は個別ADRに対する個別的な支援ではなくて、法律扶助というような間接的支援で十分だという御指摘であったかと思います。2つの機関の運営に当たっての財務分析といいますか、利用者からどれくらいのお金が入ってきて、それがどういうふうに2つの機関それぞれの運営の資金になっているかという割合については、どうでしょうか。菊池さんの方はそれぞれからの年800 万円ずつで経営しているということなのですが、それに利用者から申立手数料とかいうことはあるのでしょうけれど、現状ではどのような財政基盤で運営を賄っているのか、ごく簡単に御説明いただければ大変ありがたいのですが。
○説明者(日本知的財産仲裁センター 菊池武運営委員)私も、数字を完全につかんでいるわけではないのですけれども、現在のシステムでは申立の手数料というのは5万円です。前には調査手数料という名目で、特許技術の資料を調べるため20万円という金額も別途支払を求めていたのですが、これもやめまして5万円だけでいこうということにしたのですが、ちっとも事件は増えないわけなのです。
特にドメインネームを始めたことによって、コンピューターを1台購入いたしまして、インターネットにホームページを開きましたため、維持費がまた余計にかかってしまいまして、ドメインの方は1件18万円、それで当事者が希望して仲裁に調停人を3名にする場合、その倍の36万円という手数料を納めていただくということになっているのですが、それでも収支のバランスがとれておりません。
しかし、恥ずかしながら、現状では人件費と場所代等によって、ほとんど800 万円の2倍の1,600 万円の支援をいただいていながらほとんど8割方は、人件費等に費やされているというのが実情でございます。
だから、仮にちょっと事件が増えたくらいではとても賄えないというのが現状です。
○青山座長 どうもありがとうございました。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)私も今日は数字を用意しておりませんので、数字の面については具体的に申し上げることはできませんが、財務状況についてはすべて公表しておりますので、私どものホームページ、ウェブサイトにアクセスしていただければと思います。カテゴリーとしてはいわゆる紛争解決の手数料収入と、協会全体としましてはそれ以外の事業収入、それから、社団法人でございますので、社員である会員からの収入ということが収入でございます。
ただ、事件の数も先ほども申し上げましたように十数件ございます。それで、手数料はどういうふうになっているかと申し上げますと、国際仲裁の場合には紛争金額に応じて相当の幅がございます。
それで、確か請求金額が2,000 万以下の場合には、ちょっと今、うろ覚えで間違っているかもわかりませんが、数十万円というのが当事者の負担する手数料でございます。それで、50億を超えた場合には1,400 万というのが手数料でございます。
したがって、事件の中には数百億、あるいは100 億といった事件も年に1、2件ある場合もございます。したがって、そういった場合にはその事件だけをとらえれば、その1,400 万の中ですべての費用を賄うということは可能だと思いますが、ただ事件の中には数百万、あるいは数千万、数億といったものもございますので、そういったものをトータルして収入として費用に割り当てていくと、やはりこれは賄い切れていないというのが現状だと思います。
それから、あと国内調停というのは今年1月始めたものでございますが、先ほどプロボノで開始したと申し上げましたが、これは利用者が負担する費用は500 万以下の場合には5万円。それから、1,000 万以下の場合には7万円。それだけの額に絞っております。
これに対し、民事調停の場合、例えば500 万であれば申立手数料が約2万円なのです。そういったものと競争していくためには、やはり赤字覚悟でやらないと新規参入者としては利用者から全く使われないという状況ですので、赤字で運営しているという状況です。それが100 件、200 件あったからといって、今の収入で賄えるかというと人件費等々でそういったものは賄い切れないであろうということです。
これは明らかに国のやっている民事調停についても国の負担がなければ運営はできないのであって、皆様方でも明らかにわかりますように、民事調停の手続に国の費用がもしなくなれば、これは運営ができないということでございますので、そういう視点から考えていただければ、民間型ADRについて現状、財政的な面での支援がなければ動いていかないというのがおわかりいただけるかと思います。
○青山座長 どうもありがとうございました。
○安藤委員 済みません、ちょっと一つだけ。
○青山座長 それでは、安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 仲裁協会の方なのですが、ちょっと国内がどういう形で動いているかというのはわかりませんけれども、国際商事紛争の場合に非常にレベルが高いものだけではないかなという印象が強くあるのです。
と言いますのは、私どもの会社の場合にしましても、ほとんど契約書を交わす場合に争いがあったときには仲裁協会という名前を出したって受け付けられないという状態になりまして、ほとんどが海外の裁判所に持ち込むというような形になってしまっているわけです。
そうすると、我々が争う会社にいろいろな国際的な弁護士を抱えているような大きな問題しか取り扱えないような状況になってしまっているのではないかなという危惧はありますので、もしこういったもので、そのままADRという形をやるのであれば相当、PRといいますか、小さいものでも手掛けますよというような普及活動を強くやっていかなければいけない。そういう状況になっているので、そこまで踏み込むつもりがあるのかないのか、その辺をちょっと伺いたいなと思っているわけです。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 中村達也国際仲裁部長)勿論、私どもが取り扱う紛争については、今、御指摘のような、いわゆる主体となる紛争対象者が大手企業であるということは全く考えておりませんで、個人あるいは中小の企業も当然ユーザーとして、我々を使っていただきたいというように考えております。
また、実際の例を見ますと、大企業であっても数百万円の紛争を私どもの仲裁として持ち込まれているケースもあります。逆に、100 人程度の会社でも数億、数十億の紛争を私どもに仲裁を持ち込むケースもございます。したがって、企業の規模は、私は紛争の規模と連動していないというふうに思います。
そして、国際契約一般から申し上げますと、国際契約の中で裁判管轄を合意するということはまずなくて、いわゆる中立的なフォーラムを当事者間で指定するということ、つまり仲裁条項を入れることというのは、これは一般的に行われていることでございまして、我々のPRの不足はしているかもしれませんが、国際契約書の中で紛争解決条項として仲裁以外のものが規定されていることは逆に少なくて、ほとんどの国際契約の中で紛争解決条項が規定されているときは、仲裁です。
ただし、私どもの協会が指定されている場合がどのくらいあるのかという問題は勿論ございますが、他の仲裁機関を指定している場合もあるでしょうし、そういった面はありますが、仲裁が当事者間で合意されているという場合が圧倒的に多いというように認識しております。
額についても、先日も、数百万の紛争が仲裁に持ち込まれております。
したがって、紛争金額について、我々はそういう差異を設けてターゲットを分けているというようなものは全くございません。
○安藤委員 済みません、もう一つよろしいですか。
知的財産仲裁センターさん、現状では知的財産について、国際の場合には、JETROが動いていたりですとか、いろいろな機関が盛んに動いているわけです。それらとの連携というような形を取られる考えはあるのでしょうか。
○説明者(日本知的財産仲裁センター 菊池武運営委員)勿論、連携できるに越したことはないと思います。JETROさんと連携するということは具体的に考えられていいことだと思います。
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、時間でございますので、今日は中村さん、菊池さん、お忙しいところわざわざ御出席いただきまして、本当にどうもありがとうございました。
(社団法人日本商事仲裁協会、日本知的財産仲裁センター説明者退席)
○青山座長 それでは後半のグループのお二方に御発言をいただきたいと思います。
まず、御紹介させていただきます。日本証券業協会証券あっせん・相談センター所長でいらっしゃいます小西幸雄さんです。どうぞよろしくお願いいたします。もうお一方、社団法人全国消費生活相談員協会理事長でいらっしゃいます藤井教子さんです。藤井さんは昨年9月の本検討会にもお越しいただいたかと思います。
今日はお忙しい中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。それでは小西さんから20分、藤井さんから20分、御意見を頂戴いたしまして、2人の意見の陳述が終わった後で一括して、また私どもの方から20分ほどの質疑応答の時間を設けさせていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、はじめに証券あっせん・相談センターの所長でいらっしゃいます小西さんお願いいたします。
〔日本証券業協会証券あっせん・相談センター〕
○説明者(日本証券業協会証券あっせん・相談センター 小西幸雄所長)それでは、日本証券業協会の証券あっせん・相談センターの方から、資料に基づいて御説明させていただきます。
最初の2枚につきましては、今回の「総合的なADRの制度基盤の整備に対する意見について」というペーパーでございますが、これは後ほどご説明させていただきたいと思います。それで、紺色の私どもの機関の全体のパンフレットが付いてございます。表紙をめくっていただきますと、右側に概要と書いてございまして、一番上に「組織」という表記がございます。これを読まさせていただきますと、「本協会は、証券取引法第68条第2項の規定により、内閣総理大臣の認可を受けた我が国唯一の団体で、全証券会社及び登録金融機関を構成員(協会員)として組織されている法人です。」と書いてございます。まず、日本証券業協会という組織はこういう位置づけの法人であるという形でございます。
1枚おめくりをいただきますと、ここに私どもの協会の主要業務について簡単に書いたものがございます。
左のページに、自主規制業務ということが書いてございます。この自主規制というのは、私どもの機関のメインの業務でございますけれども、今回の苦情相談とかあっせんにつきましては、この自主規制のところの一番下、5番というところがございます。「証券取引の苦情・相談、あっせん」という形に書いてございます。
全国に9地区ございまして、「各地区協会に証券あっせん・相談センターの支部を設け、顧客からの協会員の業務に関する苦情・相談に応じているほか、顧客と協会員との間の証券取引に関する紛争の解決を図るため、証券取引法に規定されている『あっせん』を行っています」というふうに表記されてございます。
更に1枚おめくりをいただきますと、私どもの組織図が左側のページに書いてございます。今回、関連がございますあっせん委員につきましては、一番上の日本証券業協会のところから「あっせん委員」という表記がつながってございます。私どもの定款上の位置づけとして、あっせん委員は、お一人お一人でございますけれども、付属機関という区分に位置づけております。以上が私どもの機関と、調停・あっせん業務の概要でございます。
このパンフレットを終わりまして、次に「証券あっせん・相談センターのご案内」という資料を配布してございます。先ほどと重複いたしますけれども、このペーパーでご覧いただきたいのは、一番下の方に「証券あっせん・相談センターの受付窓口」と書いてありますところでございます。受付窓口は全国9支部ございまして、サービス拠点としては更に新潟と熊本が増えて、11か所が窓口として設置してあるという形でございます。
更に、1枚おめくりいただきますと、あっせん制度が図示されてございます。これは、苦情相談の業務とあっせんを一体に簡単に書いたものでございますけれども、真ん中に「あっせん委員」というところがございますけれども、このあっせん委員の事情聴取等によってあっせんが合意すれば和解、あっせん成立の方に行きまして、あっせんが不成立の場合、それから当事者の主張に隔たりがある場合のあっせんの不成立といった枝分かれをいたしますけれども、概要はこういった形であっせん業務が行われているという形でございます。ここで見にくいのですが、欄外の(注)1をご覧いただきたいのですが、「和解成立事案については、裁判上の和解、判決及び民事調停の成立と同様、証券事故の確認は不要」と書いてございます。
当協会のあっせん制度によって、あっせん委員によるあっせんによって、和解成立した場合という形でお読みいただきたいのですが、損失補てんの禁止というのは証取法で規定されている関係がございまして、通例は事故確認申請を証券会社が行って、当局から承認を得た上で初めて金銭的な支払いをするというルールでございますが、そのルールの適用除外になっているのが判決であるとか、裁判上の和解、民事調停の成立というふうなものにプラスいたしまして、私ども協会のあっせん委員によるあっせんによる和解によっても、適用除外によって申請手続を経ずに金銭の支払いを行うことができると規定されてございます。1枚おめくりいただきますと、次に最近5か年のあっせん苦情相談等の処理状況の統計資料をお出ししてございます。
先ほど他の御説明者のところにもございましたけれども、民間ADRがなかなか機能していないという形でございますが、ADRという形でございますので、苦情相談よりもあっせんのところをご覧いただきたいのですが、あっせんの小計というところがございます。
平成10年度が6件、これは受付件数でございますけれども、平成11年度が32件、平成12年度が100 件、平成13年度が128 件、平成14年度が153 件と順調にあっせん申立件数というのが増えている、順調に推移しているという状況であろうかと思います。
ここで5か年間の数字をお示しいたしましたのは、私どもの先ほどの欄外(注)1にございました、私どものあっせん委員によるあっせんによる和解で事故確認申請の適用除外になりましたのが、平成10年12月1日の金融システム改革法という証取法の改正によってでございますので、平成10年度の期中、最後の方から証取法の規定に基づくあっせん制度というのがスタートしているという意味でございます。
それでは、次のページをご覧いただきたいのですが、非常に縮小してございますけれども、これは私どものあっせん制度によって和解が成立した事案で、私ども協会のホームページの方で公表している事案でございます。直近のものをお付けいたしました。
このような形で、支部名、あっせん申立年月日、申立者、個人か法人、年齢、被申立人、証券会社と書いてありますけれども、これが登録金融機関も、私どもの特別会員というステータスで協会員になっておりますので、ここに登録金融機関が登場する場合もございます。
それから申立ての紛争の概要、申立人の請求金額、紛争解決の状況という形で、現在のところ、3か月年4回、まとめてホームページの情報を更新しているというところでございます。
それでは「総合的なADRの制度基盤の整備に対する意見について」に戻らせていただきたいと思います。まず、一番上でございますけれども「○ 法整備への期待」と書いてございます。ADRに関する基本理念あるいはADRの健全な発展のための各主体が担うべき役割といったADRに関する施策の基本を明らかにする法制の整備が検討されているということについては、誠に意義深いことと考えております。
今まで全くその基本的な枠組みと目標とすべきことということも、法制上明確には位置づけられていない形であったわけですので、非常に意義深いことであると考えております。
今回のパブリックコメント募集の件でございますけれども、一般的事項、民間ADRを想定された規制的な項目だというふうな整理になっておりますが、ここの中の「『4.サービス提供に関する重要事項の説明義務』について」という箇所がございます。論点13であったかと思いますけれども、論点13の①に「ADRに係るサービス提供者は、利用希望者からの利用申込みがあったときは、その者に対し、一定のADRに係るサービスの利用条件に関する重要事項を説明しなければならないものとすること」についてでございますが、私ども協会の規則に定めております、あっせん申立書の様式の中に「このあっせんをお願いするについては、『あっせんに関する注意事項』に従い、信義を重んじ、誠実に紛争の解決に努力いたします」旨を記載しております。「『あっせんに関する注意事項』に従い」と書いてございますので、あっせんの申立者に対しては、事前に「あっせんの申し立てをなさる方へ(あっせんに関する注意事項)」と規則全文を交付してございます。
そうでないと、あっせん申立書に、無理に「あっせんに関する注意事項」に従えと書かせることになりますので、規則全文を渡して十分に説明しておりますので、この意見募集の資料の中の【論点13】①「ADRに係るサービス提供者は、利用希望者からの利用申込みがあったときは、その者に対し、一定のADRに係るサービスの利用条件に関する重要事項を説明しなければならないものとすること」という部分につきましては、基本的にクリアーしていると考えております。
1行空けまして、「しかし」と書いてございます。同じく意見募集の資料の中の【論点13】の②の「相談手続に係るサービス提供者についても、①に準じた義務を負うものとすること」の方でございますけれども、相談手続に係るサービス提供者についても、前述の①に準じた義務を負うものとするということにつきましては、実務上問題があると考えております。
私ども証券業協会の証券あっせん・相談センターの業務といたしまして、2つ箇条書きしてございますが、証券取引制度等に関する顧客からの相談に応じ、その疑義を解明すること、もう一つは、協会員の業務に対する顧客からの苦情を相手方協会員に取り次ぎ、その解決を図ること、の2つを柱にしております。まず、顧客からの申入れの方法としては、電話による場合が非常に多い。面談、手紙という場合もございますけれども、かなりの部分が電話による場合が多いという形でございます。
実務上、相談と苦情というのは一体に取り扱われているのが実情でございまして、相談員は、まず顧客からの申立てを聴取した上で、申立内容が相手方協会員に取り次ぐ必要があり、かつ、顧客の方が希望する場合、初めて当該顧客から個人情報等を聴取することにしております。お客さんの氏名、住所、電話番号、お取引をしている証券会社名、支店名、担当者名等でございますけれども、取り次ぐために必要な要素というのは相談内容、申立内容を聞いてからにしてございます。
したがいまして、顧客からの申立内容を聴取する前に、サービス提供の利用条件の明示義務を課すというのは、実務上混乱を招くと考えております。お客様は、自分の相談を聞いてくれる相談場所なのかどうなのかということから始まりますので、まずお話をいただかないと私どもが取り扱える内容かもわかりませんし、まず当センターのサービスできる内容と限界はこうですというのを事前に明示する義務を課さねばならないという形で、というのは実務上難しいというふうに考えてございます。
1枚おめくりをいただきまして、2ページ目でございますけれども、同じ一般的事項の「5.主宰者の有する一定の事実の開示義務」、それから「6.秘密の保持義務」についてでございます。この2項目につきましては、私ども証券業協会のあっせん制度の場合、証取法によりまして、法的整備が図られておりますので、既にクリアーしていると考えております。まず、「5.主宰者の有する一定の事実の開示義務」でございますが、証取法、それから証取法に基づきます内閣府令におきまして、あっせん委員の特別利害関係者になる場合の除外規定が既に詳細に規定されております。
したがいまして、私どものあっせん制度の場合、あっせん委員が取扱い事案の期中に特別利害関係人になった場合、交代をしていただくしかないという形でございます。そうでなければ、証取法違反になるという構成になってございます。
それから秘密の保持義務でございますけれども、私ども日本証券業協会の役員、職員につきましても、守秘義務がかかってございます。証取法上でございますが「1年以下の懲役、50万円以下の罰金」という形になっております。
更に、あっせん制度が証取法に入りました平成12年12月1日施行の改正証取法におきまして、あっせん委員につきましても直接、証取法で同じ守秘義務、それへの罰則規定が課せられてございます。したがいまして、この部分につきましては既にクリアーしていると考えるところでございます。
次に「特例的事項について」でございます。まとめて、8番のところに掲げてございます。「『8.特例的事項の適用におけるADRの適格性の確認方法』について」と書いてございます。
民間型ADRは、人的にも経済的にも私的自治により運営されております。その自主性・多様性については十分に配慮されなければならないと考えているところでございます。今回提案されております、事前確認方式の導入に伴う労力あるいはコストは多大になるということが予想されます。また、確認後に何らかの公的機関が継続的に管理あるいはチェックをするということが想定されますので、そういった意味において、現状よりは自主性が損なわれる可能性が危惧されるというふうに思うところでございます。
一方、付与されますメリットとして、ADRを利用した紛争解決における時効中断が取り上げておりますけれども、私ども協会のあっせん制度では、性質上あっせんを行うに適当でないと認められる紛争として、紛争が生じた日から3年を経過した紛争に係るものであるとき、あっせんを行わないという形で規則上明記してございます。
したがいまして、私どものあっせんを行わないものにつきましては、裁判を行うあるいは民事調停を行うかという御案内になるわけでございますので、時効が迫った事案についてはほとんど私どものところに来ることもございませんし、また、この紛争が生じた日から3年を経過した紛争ということでございますけれども、証券取引の紛争の現状を見ますと、やはりお客様の方、それから証券会社側の担当者というのが付いてございますけれども、その双方の記憶に基づく主張、証言、あるいは反論といったものがあるわけでございまして、法定されている記録書類だけでは紛争の肝心の点というのは詰め切れないという形でございまして、私どもの紛争処理制度は昭和39年の合議制の調停委員会から、こういった制度をやってございますけれども、そういった経験則で3年を経過した紛争というものについてはあっせんを行わないという、対象外にしているというところでございます。
したがって、メリットとしては非常に薄いという形でございます。
次に付与されるメリットといたしまして、ADRにおける和解に対する執行力の付与が取り上げておりますけれども、私ども証券業協会のあっせん制度の対象になります証券会社、それから金融機関の中でも登録金融機関という形でございますが、証取法上の登録を受けたものでございます。
これまでも和解契約書の和解条項が履行されなかったという事例はございません。また、和解契約書を結んだ際に、それが履行されないという事例がたとえありましても、裁判に訴えて民事執行を行うという道も残されているわけでございますので、この民間ADRに執行権の付与というものを付けなくても弊害はないのではないのか。したがって、こういった意味でメリットとしての魅力は感じないというところでございます。
最後にこの事前確認制度方式の導入によりまして、既存の民間型ADRの格付化、あるいは階層化が行われることになると思います。全民間型ADRがこれで認められるというふうなことは想定されません。そうしますと付与されるメリットよりもデメリットが多くなる可能性の方が危惧されるというところでございます。
また、苦情相談業務のみを行っている民間機関というのは非常に多いと思います。ADRという裁判外の紛争解決手続の方まで踏み込まずに、苦情相談業務はやっておりますという民間機関が非常に多いのだろうと思いますけれども、その民間機関がADRに新規参入した方がよろしいと、そういったことが望まれると思われるわけですけれども、あらかじめこういった事前確認方式というような高いバーを示した場合に、むしろその新規参入を躊躇する要因となる可能性も考えられるのではないかと、老婆心ながら危惧するところでございます。
私どもからの意見は、以上でございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、社団法人全国消費生活相談員協会の藤井さん、よろしくお願いいたします。
〔社団法人全国消費生活相談員協会〕
○説明者(社団法人全国消費生活相談員協会 藤井教子理事長)私ども全国消費生活相談員協会は、法人化いたしまして、昨年で15年でまだ歴史が浅うございますけれども、今回の機会を与えていただきましたことは大変ありがたいと思っております。しかし、相当、内容が難しゅうございまして、すべてについてなどは到底、意見は述べられませんので、理解ができた範囲内で話をさせていただきたいと思っております。
当協会の関連での相談といいますのは、資料の最後の方に付いておりますけれども、2002年度の週末電話相談の集計表とそれから当協会が毎年最近出すようになりました相談前年度分に基づいて、特に顕著で消費者の方に役立つようなものをコンパクトな資料にいたしまして、無料配布ということをやっておりますので、これの最新版を付けさせていただいております。
最後の裏表紙のところに掲載していますが、相談は電話で受けておりまして、大阪と東京2か所ありますが、その分をここに紹介をさせていただいております。
その結果なのでございますが、平成14年度分の週末相談の集計表がやっと今回に間に合うように出たというようなことで、雑駁なもので恐縮なのでございますが、大阪、東京2か所で、大阪は日曜日だけやっておりますし、それから、東京の方は土曜・日曜に開設をいたしておりまして、多くのセンターが平日は業務をやっておられますが土曜・日曜はほとんど閉じているという中で社団法人として何か多くの消費者の方のお役に立つようなことをやろうということで、平成10年度から始めた事業でございます。どんどん利用者が増えて、現状ではこのままのシステムをどのようにやっていったらいいかというふうに考えざるを得ないようになっておりますが、受付件数は1,971 件になっております。
その中で、国民生活センター関連のパイオネットシステムのことは先生方も御存じだと思いますが、いわゆる苦情相談がパイオネットシステムの中の件数を構成しておりますけれども、私どもの場合は問い合わせに当たるのも、要望に当たるのも、一応、相談の電話がかかってきたのを受けて、それが1,971 件でございまして、その中のこの年度は91%が苦情相談に当たるものでございました。
それから昨年の事業の関係でいいますと、もう一つ、消費者月間にずっと任意団体のときからやっております、電話相談110 番という事業がございます。今年は5月の2日間にやっておりまして、これは情報通信トラブル110 番ということで、電話や携帯電話やインターネットなどについての関連相談を2日間、全国の7か所で相談を電話で受けるという形でやりました。相談は471 件、95.2%が苦情でございまして、あと別途問い合わせに当たるものなどが21件ございました。
私どもは、多くの場合、来所ということはまずなくて、電話で消費者の方からの御相談を受けるという形でございますけれども、この場合に電話でまず消費者の方のお話をよく聞き取りをいたしまして、その内容によりまして関連の情報を提供させていただいて、その方が自主的に解決が図られるようであれば、例えばクーリング・オフができるというようなことをきっちりと根拠を明らかにしてお話をいたしまして、その手続の方法などを具体的に御指導をするというようなところまでやりますというような形での助言がほとんどでございます。
中には、どうしても助言もできないような消費者関連の相談から外れたもの、それからまずは御自分でやるからというようなことで、どこか的確な機関を紹介してほしいというケースもございますので、そういった他機関紹介に当たるようなものもございます。
今回のADRに関連しまして、あっせんとか調停とかというようなところとどう関わっているかといいますと、現状では私どもは関わってはおりません。しかし、案件によりましてはどうしてもあっせんをしてあげないといけないと思われるケースも稀にございますので、この場合は国民生活センターと話し合いをいたしまして、地方のセンターと同じ立場で移送相談という形でやっていただくということをお願いして、既に何件かはそういうケースも出てきているという現状でございます。
相談を聞き取りましたら今度、一般の地方のセンターでの相談も国民生活センターの場合もそうですが、私どもの会員の多くが2つのそういった関連の消費生活センターで業務をやっておりますので、当協会の場合にも同じような形のカードにその内容を記載をいたしまして、それを集計、分析して報告書を毎年作成する。そして、その上で多くの人のために役立つような相談を選んでこういうような啓発誌を作成して、配布しております。
それが私どもの手続というような内容でございますけれども、私どもの事業に関係いたしましては、どんどん年間の利用者数というのは増えておりますし、夜になりまして事務所で仕事をしておりますと、インターネット上で相談をしていることを知ったからとか、あるいは週末の、特に金曜の夕方になりますと、各地のセンターがパンク状態の様子でございまして、そこではもう相談ができない、それから中途半端でどうしたらいいのか、結局わからないから相談するとか、どんどん電話が深夜にまでかかってくるようなこともありますし、昼休みに休みたいセンターがどういうわけか、私どものところの電話番号を紹介するような形になっているところもあるようでして、私どものところには平日の昼間にも電話が相当かかってくるような現状になっております。それが私どもの現状でございます。
ですから、ADR的に紛争を解決するまでは至っておりませんけれども、相談をして重荷がある程度解決していくのに有効な情報提供をするというような点では、当協会のこの業務もかなり皆様方のお役に立っているというふうに考えておりますが、ADRというふうに考えた場合、いろいろな資料を見ましても、司法の場での調停などはかなり有用な機能をしていると思いますし、件数もまた毎年増えていっている状況が現状の数字で見られますけれども、その他のものについては、なかなかやはり問題があって、十分に機能していないというのは確かに御指摘どおりであろうというふうに思います。
「総合的なADRの制度基盤の整備」に対する意見ということですが、私、十分に練れていないものを出していまして申し訳ありません。
それで、ここでADRの健全な発展を図っていく上での法整備の果たす役割への期待ということなのですが、これは私ども全部のところで私が書いておりますように、今回こういうふうに基本的な法制整備の必要となる検討をなさいまして、そして今後の論点をきっちりと示していただきまして、多くの人にパブリックコメントができるような機会を与えていただいたということは、ADRの健全な発展を願う一人といたしまして、また協会の立場でもADRを主宰する側、そしてまた会員としてはそれを手助けするような担い手になっておりますし、利用する消費者の実態を知っている者からいたしましても、非常に意義深い、いい機会を与えていただいたというふうに考えております。
今も申し上げましたように、当協会としてはここに書きました意見というのは会全体で協議をした結果というものでは勿論ありませんので、個人個人の会員が自分なりの意見を提出をさせていただいておるかと思いますので、その辺が整合性がない部分というのもあろうということを一つ懸念いたしております。協会の立場ということで私が書かせていただいておりますのは、先ほど言いました自主事業で相談をやっている、民間型の相談をやっているという立場と、もう一つは会員の大半が地方自治体などの消費生活センターで雇用されまして、消費生活相談の業務を担当して日夜厳しい状況で業務をこなしている、そういう担い手の立場にあるということとを多少兼ねての意見というふうに、一応お聞き取りいただけるとありがたいというふうに思いますが、会員全体の意思をトータルをしたものには勿論なっておりません。
まず、論点1ですが、「ADRの外延について」というところでございますけれども、これは提供主体とか手続などの種類など、ADRのいろんな資料もこれまでよく見てまいりましたけれども、そういった様々な多様なものがあるということを認識した上で、今回の基本的な法制の基本事項を適用対象とする範囲を画そうとしていらっしゃるということについては異論はございません。
ただし、注書きのところにありましたように、「主宰者」という言葉で一応仮に総称していらっしゃるのですが、どう考えても、私は何か主宰者という言葉が感覚的にぴったりととらえられないような気がいたしますので、何か更に御検討をしていただきます折に、もう少しぴったりするような、一般の者にもぴったりするような文言をお探しいただけるとありがたいというふうに思います。
次、論点2でございますけれども、ADRに関する基本的な法制に関して、相談手続というものまでその中に入れて位置付けようとしてくださっているという点でございますけれども、地方自治体などの消費生活相談の相談内容から見ますと、今は消費者苦情が発生している相談を苦情相談とし、そして、それがパイオネットの数字からもおわかりのように、昨年度は90万件に近いような相談が寄せられているというようなことで、それも対前年比20%以上の伸びになっているというような実態を踏まえて考えていきますと、相当大変な利用の件数にはなっているのは確かなのですけれども、苦情相談の相談処理の結果を見てみますときに、あっせん解決とか不調の場合もありますけれども、そういうあっせんに関わるものと先ほども申しました助言に当たるものと、他の機関の方もこれは多いという数字が確か皆様方の方には届いていると思いますが、他の方でございますが、他機関の紹介に当たるもの、そして、処理不能、処理が要らないというようなもの、そういうふうに分類されていきまして、今処理結果であっせんに該当するのは、ついこの間の国民生活審議会で、確か国民生活センターの有馬会長が御発言になりましたが、全体的には約8%しかないという実情なのでございます。
それで、このような消費生活センターの統計データから見ますと、この論点1の要素の③に示す①も②も満たさないけれどもという、この相談手続に該当する部分がいわゆる消費生活センターでやっている業務のほとんどに近い、そういうものが現状では大半を占めているというようなことでございます。
けれども、これが非常に重要な役割を果たしているというふうに考えていただきますからこそ、これを位置づけようとしていただいているのですが、これを実証するというようなことで一つ調査結果をこちらに上げました。
時間の関係で詳細は申し上げませんけれども、昨年度、私どもが東京都消費生活総合センターの関連のアンケート調査や実態調査や様々な調査に関与をさせていただきました。その結果で、特に利用者のアンケートというのは実はないのです。
ごく古いものが一つありますけれども、実態上、本当にセンターの利用者がどのように評価をしているかというようなものはこれまでにあまりなくて、最近のものというのは、これは本当にある意味では素晴らしいデータになるのではないかというように思うのですが、利用者の77%以上の人が、センターの処理が非常に役立ったというふうに回答をしてくれておりますので、これも今回の相談手続を位置付けていただく一つの実証データになるのではないかと思います。
その次の内閣府の調査は、ここでは内容を御紹介させていただくにとどめたいと思います。
「論点2の『相談手続は紛争処理手続といい難いが、必要に応じて、基本的法制を適用することについてどう考えるか』」ということなのですけれども、少数であるが、あっせんに踏み込むということも一つの相談の窓口でありながら、先ほど来、御報告者の中にもありましたけれども、相談手続にも該当するけれども、中には聞いていくことによってあっせんをしないといけない、踏み込んでいかないといけないということがあって、実際に踏み込んでいる件数は少ないけれども、あっせんすることがある。そういう相談手続が主流の業務に対して、今回、ADRの法制のどういった内容を適用していくかということについては、やはりもう一度、慎重に御検討をお願いしたいというふうに思います。
論点5については、健全な発展を図る上で重要な意義を有すると思いますので、基本理念については賛同をいたします。
それから、国の責務に関しましても①~⑤の例に異論はないのですが、特に⑤については、消費者被害の現状というのを考えますときに、更に強化・充実するということを望みたいと思います。
論点7は地方公共団体の責務なのでございますけれども、特に消費生活センターで地方のセンターというのは住民利用の利便に配慮をしていただきまして、更に強化・充実するという必要があると思いますし、まだまだ市町村段階では整備がなされていませんので、そのことも問題があるということとして、この検討会の先生方にも今後の御検討のときにお考えをいただきたいというふうにお願いをしたいと思います。
論点8でございますが、ADRに関するサービスの提供者等の役割というところでございますけれども、これも明確にするということについては望ましいと考えております。
論点11からは、ADRに関する一般情報の提供義務ということなのですけれども、これを利用しようとする者が適切・円滑にADRを選択できるように、一定の情報を提供するような努力義務を課すということについては賛同をいたします。
一方、ADRの提供体制とかサービス内容の公正性・信頼性の向上につながるものでもございますので賛同はしたいのですけれども、考えられる情報の例というのが示されている中に過去の利用状況というのがございますけれども、これは具体的に検討会委員の先生方のお考えの中ではどういうものを想定していらっしゃるのであろうかというふうに思いました。
利用者の立場からいたしますと、重要な選択肢となるような必要な事項でございますので、個人情報保護法とか守秘義務とか、いろいろなことを盾にしながら、極度の制約を設けてしまいますと、実際には消費者の立場からは有用な情報というふうにはならないと思いますので、その点をよくお考えをいただきたいということ、それから②の相談業務について、①に準じた努力義務を、ということについては異論はございません。
論点12ですが、質の高いADRの担い手の確保に関する義務ということなのですけれども、専門的な能力の習得について紛争解決に関わるもので注記19の例示がありますけれども、これ以外に私どもとしては、私どものような仕事をしているものも公的な資格というようなことで有資格者が仕事をするというふうに、だんだん変わってまいっております。
③の相談機関、相談員についても、①、②に準じた努力義務を課していただきたいというふうに思っております。
それから、サービス提供者に関する重要事項の説明義務なのですけれども、これまでの御発表の中にもありましたけれども、私どもとしては考えられる説明事項の内容というものについては賛同いたしますけれども、更に望ましいのは、重要事項を記載した書面交付を義務付けるということであろうというふうに思います。
②の相談手続に係るサービス提供者に対して、このADRサービス提供者に準じた説明義務を課すということなのですけれども、これはもう何といっても望ましいと思うのですけれども、消費生活センターの相談現場の実情に立って考えましたときに、現状は来所で来られた方に面接をする場合は稀でございまして、圧倒的には電話1本だけで相談のやりとりをしてしまうというような電話相談になりますので、その短時間の応答でその日のうちに終了するものが大半を占めてしまうというような状態になっております。
こういったことから考えますときに、説明義務まで課してしまいますと、円滑に業務が進められるかどうかという懸念がありますので、できるだけ義務といっても努力義務に留めておいていただきたいというように思います。
論点15の秘密の保持に関しましては、これは私ども相談員は消費生活相談の場合は課されておりますので、賛同をいたします。
論点19、20、21のADRを利用した紛争解決における時効の中断とか、それから執行力の付与というような点なのですけれども、これはADR機関の利用促進とか信頼性の向上を図るということから考えましたときに、これらの点は非常に意義はあるというふうには考えられます。
しかし、弱い立場の消費者との付き合いを日常やっております相談の立場から考えましたら、消費者問題に関連する紛争がこんなに多発している現状から、定型化された契約書にADRの条項が挿入されることも考えられますし、それから、公正でない、問題の多い業者が自らADRの主宰者になったり、あるいは関係するADR機関を設けたりして、それを利用するというようなこと、様々、悪くなった場合を考えていきますと、非常に心配があるということです。この報告書の中にも不適切に利用された場合には極めて危険性が高いこと等から、強い消極的意見もあるというふうに書いておりますとおり、非常に私どもはその辺、特に執行力の付与などについても、要件をもっと厳格にどうするかという点で御検討をいただきたいというふうに思います。
論点29のADRの主宰業務に関する弁護士法第72条の特例に関しても、同じように更に検討を加えていただくことをお願いしたいというふうに思います。
論点41については、お配りした資料にはちょっと書いておりませんのですけれども、この中で見ますと、基本的な事項以外につきましては、行政型のADRについて外すというように、大体基本的にお考えになっているようなのでございますけれども、この辺についてそうしますと、これだけかなりの消費者から利用されて現状認められているような、この業務に関して個別の法令でどうなっているかといいましたら、消費者保護基本法の中で苦情処理というのが位置付けられていますけれども、これだけでやれるかどうかといいましたら、今は消費者保護基本法の改正の方向に物事が進んでおりますので、そこへまた要望する事項であろうかというふうに思いますけれども、ここのところで、この基本的な事項以外はすべて対象から外す、行政型のADRについて外してしまうということについてもそれでいいのかどうかという点で私自身はちょっと結論は出しかねるような思いをしているということでございます。
また、全国で件数は、東京都の場合が一番多くて、26年間やってこられて、東京都の消費者被害救済委員会の実績から見ますと、26年間の間に22件の付託された事項があって、他方、内容に関しては消費者相談をやっている現場から見ますと、とても素晴らしい内容の結果を出してくださっているわけでございますけれども、これにまだ、更に例えば執行力が付与されたらどうなるかとか、そのようなことを考えるとこういうものとの絡みにおいても、論点41についてもう少し幅広い御検討がいただけるのであればというように考えております。
私の考えは、幅広くはございませんので、筋違いのことを申し上げている可能性も大いにあろうかと思いますけれども、以上でございます。
〔質疑〕
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのお二方の御説明につきまして、約二十分間、質疑をしたいと思います。
御質問がある方は、どうぞ、おっしゃっていただけますか。
それでは、原委員どうぞ。
○原委員 いつも、トップバッターで済みません。日本証券業協会の小西さんに3点なのですが、1つは資料の説明のところで確認なのですが、債務不存在確認で訴訟に行くケースがあるわけですけれども、このケースは全体の中のどれぐらいの割合になるのか。債務不存在で訴訟に証券会社の方が持っていきますね。このことはよく聞くのですけれども、全体の中でどれぐらいの割合がその裁判の方に行かれるかというのをお聞きしたいのと、ホームページであっせんについて、こういった事案の解決をしていますというのを公開していらっしゃるということなのですが、解決の中身を見ると、先方の申立金額だけではなく金額まで明示されていますが、この金額の明示というのはなかなか難しいような感じがするのです。つまり、双方が合意の下で開示をしていいよ、ということで金額が出されているのかどうかということです。資料の中では確認をしたいと思います。
それから、質問が2点なのですけれども、1つが公的機関が事前確認を採ると、それを1つの影響として公的機関が継続的に管理をするというところも自分たちとしては反対であるというふうにおっしゃられて、後半のところではそれぞれのADRの格付につながるからという理由も述べられてはいるのですが、こういった、一方では執行力の付与とは別に、ADRの健全性の話というのがあって、その健全性の話のところに公が絡むべきなのか、絡まなくても済むシステムを組むべきかというのは、私としては後半論点で申し上げたいというふうに思っているのですが、どういう形であれば健全性の確保、だから公的機関は全く入ってくることを排除するということなのか、違う理由であれば少しその管理ということで入ってくるということも想定されるのかというのが質問の1つです。
それから、もう一つなのですが、時効中断については証券業協会の場合はトラブルは紛争になって3年というふうに期限を区切ってやっているので、特段、必要がないというふうに書かれていたのですが、この紛争が生じたときというのは証券会社といろいろ話をしていてもうまくいかなかったという、その日のことを指しているのか、それともトラブルが生じた原因となった、例えばこういう契約をしてそれがトラブルの基だったという、その契約をした、変な契約をしたというのでしょうか、そこを起点にしての紛争が生じたというのか、どちらかがはっきりしなくて、もしも後者であるとすれば、やはり時効中断は一つの選択肢としてあるのではないかなというふうにも考えるのですけれども、それはどちらを指すのかということをもう少し明確にしていただけたらということです。
○青山座長 資料の確認が2点と、質問が2点ですけれども、よろしゅうございますか。それでは、お願いいたします。
○説明者(日本証券業協会証券あっせん・相談センター 小西幸雄所長)債務不存在についてでございますけれども、これについては今までの実例はございますけれども、件数として今までは公表する形になっていないです。
各年度で何件か不調がありましたということはあるのですが、うち債務不存在で訴訟をしたものが何件というものは公表はしてございません。あるということを申し上げておきますけれども、これはあっせん委員のあっせんが提示され、顧客の方がそれを受託し、協会側の方がそれを飲まなかった、受託しなかった場合という形でございまして、その場合はあっせん案の中で提示されていたあっせん金額の分を私ども協会の方に供託をしていただいて、訴訟をしていただいて第1回の口頭弁論終了、そこまで確認して、これは間違いなく単に訴えましたというだけでは早かろうと思います。時期として、口頭弁論終了を協会の方から報告していただきまして、初めて供託金を返還するという手続にしてございます。したがいまして、あっせん委員のあっせんが提示され、顧客が受託し、協会が受託しなかった場合はすべてこの方式で実行がなされております。
2つ目のご質問の「ホームページ上で和解になった金額まで記載しているけれども、当事者の同意を取っているか」という点ですけれども、全体に言えることなのですけれども、当事者が特定されない、御当人たちがここに掲載されている何番目の事案が私どものものですと言わない限り事案が特定されないという形でございますので、正式に当事者から合意を取っているものではございません。
3番目のご質問でございますけれども、今回のパブリックコメント募集になっている事前確認方式で公的機関の関与の問題で健全性について公的機関が絡むことに対する意見という形なのですが、先ほど来、御説明しているとおり、証券取引法に基づいて内閣総理大臣の認可を受けている法人という形でございまして、したがいまして私どもが行うべき業務、必要最低限行うべき業務というのは定款に記載事項と書いてございますけれども、この業務が特定されております。
それから、定款につきまして、店頭市場という市場を管理しておりますけれども、この部分の規則については改正についても認可が必要でございます。
それ以外の規則については、理由を示して改正・廃止を命ずることができるという形になってございますので、常々管理されていると思っております。
それで、さらなる別の機関の、ADR基本法の方で更に管理が必要なのであろうか否かいわゆる現在、監督は金融庁でございますけれども、かなり管理されておりまして、自主規制機関という形で会費、源泉は民間のお金だけでやっております。
目的と業務内容は、公的目的。自主規制機関という馴染みのない用語のものを、戦後間もなくからスタートしている。幾多の変遷はございますけれども、その基本フレームは証取法上、変わっていないのだろうと思うのです。
したがって、それ以上管理されておりますので、ただ、他の機関なり、また違うところでさらなる管理が必要なのかどうなのかということと、それから、私どもと同じような立場の民間ADR、今回ヒアリングであまり呼ばれていないということもあって、私どもはある意味、管理にはなれているのですが、同業者団体的な機関でADRまで踏み込んでやっていらっしゃるところがあると思うのですが、そこは全く法律の規定もなく、自治規則そのものだけで、やっていらっしゃる会員を納得させ、それから、予算も付けてやっていらっしゃるところ辺りの御意見を多少代弁しないといけないかなということもございまして、記載した次第でございます。
それから、時効中断でございますけれども、「紛争が生じた日から3年を経過した紛争に係るものであるとき」と資料の方にも書いてございますが、「紛争が生じた日から」でございますので、契約日あるいは取引日から3年ではございません。したがいまして、通例、顧客側が申立てをしますので、証券会社といいますか、証券会社の場合、担当者というのが大体一般的には付くのですけれども、そういう担当者という個人間、お客と担当者の間という形ではなくて、会社側、いわゆるその会社の支店の管理部門というのがございますので、そこに申立てをした日から3年を経過した日という形でございますので、取引日あるいは契約日から3年ではありませんで、紛争ですから必ず当事者が認識して初めて、つまり紛争という形での認識が始まってから3年という形でございます。だから、ここでの反対的な意見というのは、時効中断としてもかなりメリットとして確実に生かせますという形ではなくて、確実に、かなり当たらないという意味でメリットがないというのが実情だと思います。
以上でございます。
○青山座長 ほかにございますでしょうか。佐成委員どうぞ。
○佐成委員 日本証券業協会の小西さんに2点だけお伺いしたいのですけれども、今の「3年」というところなのですけれども、これは何か他の時効制度か何かを意識されてのことなのでしょうか。
この理由なのですけれども、3年と設定された理由をちょっとお伺いしたいというのが1点。それから、顧客からの申し出の方法としては電話による場合が多くとなっているのですが、数値的にいいますとどれぐらいの割合なのかという2点をちょっとお伺いしたいと思います。
○説明者(日本証券業協会証券あっせん・相談センター 小西幸雄所長)まず、1点目なのですが、例えば不法行為の消滅時効の3年ですが、これを意識してはおりません。というのは、不法行為を裁くところではございませんので。
先ほどお話いたしましたけれども、法定されている帳票というのがございます。しかし、それだけでは、「こういう管理があったとか、こういう約束をした」という取引実態は残りません。そういったものは、法定されている帳票ではないと思いますので。肝心の紛争のコアの部分が、お互いの記憶による証言に基づくものであるというところが多い。そうすると、あまり古いことで、「記憶が正しい、正しくない」、「そう認識した、そうではありません」という主張だけになるので、そういう紛争解決をやってみた経験則から導き出した年数であるという形でございます。
調停・あっせんのレベルでございますので、裁判所と違いまして証人調べができるわけでもございませんし、偽証罪が付くわけでもございません。いい加減というわけではないのですが。更に、領収書にサインをしましたという場合、署名の筆跡鑑定をするところでもありませんし、また録音テープがありますといったときに、その声について声紋鑑定をしてくださいということも、私はいつもあっせんの制度で話し合いで和解の道を導くということでは限界を超えるという判断で、そういったことも一方当事者から出ましても現実にはやっておりません。繰り返しになりますが、裁くというところではないという認識であります。
それから2番目の申立て方法なのですが、これはADRとしてのあっせんということであれば、ちゃんと申立書という書面を出していただきます。ごく簡単なものでありましても、一定の要素は埋めていただくということはしていただきますのですが、相談まで広げるというところでのお答えとして申し上げたわけなのですが、もう9割に近いのではないか。あとは、手紙とか面談というような印象でございます。
以上でございます。
○青山座長 ほかにございますか。どうぞ、廣田委員。
○廣田委員 日本証券業協会の小西さんにお伺いします。あっせん委員は弁護士だけですか。もし、弁護士以外の職業の人がもしいるとすれば、どういう人、どういう経歴の方が選ばれているのでしょうか。また、その割合がどれぐらいでしょうか。
もう一つは、あっせんのときの人数で、あっせんは1人で行うのでしょうか、あるいは3人で行うのでしょうか。また、合議体の場合、あるいは1人で行う場合、必ず弁護士がいなければいけないこととしているのかどうか、その辺りの実務をお伺いしたいのですが。
○説明者(日本証券業協会証券あっせん・相談センター 小西幸雄所長)あっせん委員でございますけれども、証取法に書いてございますのは「学識経験を有する者であって」というふうになっていると思います。
お配りしております証取法の抜粋の2枚目にございます第七十九条の十六の二第2項では、「協会は、前項の規定による申立てを受けたときは、学識経験を有する者であつて」、「特別の利害関係のない者をあっせん委員として選任し」云々と書いてございます。このように証取法上は弁護士に特定してございません。ただ、私どもの規則でその規定について更にブレイクダウンをいたしまして、規則の第7条で「法律専門家等の学識経験者のうちから」、あっせん委員を選定するというふうに書いてございます。現在9支部に35名のあっせん委員を選任しておりまして、全員が弁護士であるわけですけれども、裁判所を定年で退官された後、弁護士登録をしていないというケースや、弁護士資格は有しておりますけれども事務所を定めていないということで大学の法学部の教授をされているといったケースも今までございました。
これが1つ目の御質問に対するお答えだと思います。つまり、弁護士に限ってはいない、主体は弁護士ですけれども弁護士に限ってはいないという、少し幅がありますというところでございます。
2つ目のあっせん委員の数でございますが、実際の事案ごとにお一人で担当していただいております。これについても、特別利害関係人で証取法の抜粋のところに書いてございますが、抜粋の2枚目が「あっせん委員の欠格事由」ですが、もう一つ、3枚目をめくっていただきますと「あっせん委員の特別の利害関係」という形で、証券業協会の外務員登録事務等に関する内閣府令第5条がございます。ここに一番厳しい規定として、あっせん委員「本人が当事者から役務の提供により収入を受けているとき、又は受けないこととなった日から3年を経過しないとき」としております。これは例えば、現在法律事務所を独立されておりましても、前に所属していた法律事務所で給料などの収入を得ていたという若手の弁護士がいらっしゃるとして、その後独立されてから3年を経過しないときは、前の顧問先の事案を取り扱えないという形でございます。したがいまして、例えば東京とか大阪等でありますと、かなりの人数のあっせん委員を備えていませんと、どこかに当たってしまうという可能性もあります。
それから、あっせんは1回で終わらず、平均でも3回ほどはかかります。先ほど統計数字でお示しした受付件数と年度、各年中の処理件数は違うのですけれども、かなりの回数のあっせんは実施してございます。
以上です。
○青山座長 どうぞ、三木委員。
○三木委員 お二方にお伺いしたいと思います。まず、証券業協会小西さんの方ですが、今、あっせん委員の特別な利害関係ということで内閣府令の5条を御説明いただいたのですが、これは特定の事件等の利害関係についての規定だと思います。ですから、あっせん委員の方を委嘱する際に、その方が例えば協会の会員の証券会社の顧問弁護士でないこととか、証券業界あるいは証券会社との関わりがないことということを、委嘱する際に御考慮されるのかどうかという点が第1点です。
それから、2点目ですが、協会又はこの証券あっせん・相談センターとあっせん委員との関係についてですけれども、協会あるいはセンターはある事件について、あっせん委員にお願いするとそれ以後はもう任せきりということで全く関与しないのか、あるいは事件の経過中にあっせん委員に何らかの報告を求めるとか、あるいは事件が和解又は不調で終わった場合に事後的報告を求めるとか、その他どのような場合でも結構ですけれども、センターとあっせん委員の間で事件について、何かセンターの方から関与があるのかどうかという点をお伺いしたいと思います。
○説明者(日本証券業協会証券あっせん・相談センター 小西幸雄所長)まず、1点目のあっせん委員を証券会社の顧問弁護士であるということを考慮するかしないのかという点ですけれども、この点につきましては、「選ばない、選んではならない」ということはございません。各地域で評判というのもあるのだろうと思うのですけれども、地区協会は9か所に分かれておりますが、それぞれにその地区協会のトップという形で地区会長が、制度上は地区会長が私ども協会全体の会長の方に推薦をして会長が選任するということになっておりますが、証券会社の顧問弁護士であるか否かということは必ずしも判断材料になってはいないのではないかなと推測されます。
いわゆる証券業務に精通している弁護士の方も必要ですし、また裁判官御出身の方も、私どもの業務を運営していく以上、やはり必要だというふうに考えております。証取法と内閣府令を満たす以外に、やはり、事案に適合するあっせん委員を担当にしたいというのは気持ちとしてございますので、「内閣府令に違反しないから、この方でいいでしょう」という形ではなく、私どもの東京支部で10名のあっせん委員がおりますので、ある意味適合するあっせん委員を選べるという環境にあるというのが一つあるのですけれども、そういった形でやっております。
2点目のセンターとあっせん委員との関係でございますけれども、その担当あっせん委員を決めたら任せきりなのかどうかということなのですが、規則の方にも書いてあるのですけれども、あっせん委員に対する私どものセンターの職員の役割としては、あっせん委員によるあっせん業務を補佐する、あっせん委員の事務を処理するという形で裁判所の事務官的な役割をするものです。あくまで、あっせん委員によるあっせん業務を補佐するという立場でございます。
私どもの規則はすべて、あっせん委員はこうしなければならない、あっせん委員はこうするという形で、先ほど定款上の付属機関という位置づけだというふうな話をしましたけれども、あっせん委員がパブリックコメントの報告書でいう「主宰者」と一致するような権限を持って運営してございます。したがって、その補佐をする、それから事務を処理するという形ですので、常にあっせん室には私ども職員が同席しております。そして、同席していますので、とりたてて中間的な報告を求める必要もございませんし、そういうことをすべて見て、監視しているわけではございませんけれども、見ているという形でございますが、判断とか規則上に基づく手続の決定はあっせん委員しかできないようになってございます。
○青山座長 時間がだいぶ押しておりますので、あとの御質問をお願いします。
○三木委員 2点いいですか。
○青山座長 どうぞ、よろしくお願いします。
○三木委員 全国消費生活相談員協会の藤井さんにご質問なのですけれども、会員の大半の方が消費生活センター等の業務を同時に兼ねておられるということですが、個人的なベースとは別に協会そのものと、例えば調停とかあっせんをやっている他のADR機関との間に連携を図ろうという議論がおありになるのかどうかということと、もし、そのような議論がないとしたらそれはどうしてでしょうかという御質問ですが。
○説明者(社団法人全国消費生活相談員協会 藤井教子理事長)これからなのですけれども、ここで検討していただいている内容が実現するような世の中に向いていくのがやはり望ましいというふうに思われます。私どもとしてもそういう他の機関との連携というのは大いに考えていかないといけないと思っておりますが、私自身は相談員をやる1年前から調停委員としての仕事も昭和40年代後半の最高裁任命のときからやっております関係もありまして、消費生活相談を担当してから、その民事調停とか家事調停にしましても調停委員というのは割と数が少なかったのが現状だと思っておりましたが、最近、特定調停の関係もございますと思いますが、相当優秀な現場の相談員の中で調停をやってくれる人を推薦してほしいというような形のお話もあちこちからございます。仲間もかなりその方面で仕事をするようにもなっておりますし、仲間の中でのそういった経験者との交流は勿論、今後は容易にやっていけると思いますが、それだけではなくて、他の方面の方々との交流も大いに考えていかないといけないと思っております。
○青山座長 あるいは、ほかに質問があるかもしれませんけれども、時間の関係上終わりにさせていただきたいと思います。
本日は、証券あっせん・相談センターの小西さんと、全国消費生活相談員協会の藤井さんには、お忙しいところを御出席いただきまして、どうもありがとうございました。
(日本証券業協会証券あっせん・相談センター、社団法人全国消費生活相談員協会説明者退席)
○青山座長 ここで10分間休憩して、午後4時20分から再開させていただきたいというふうに思います。
(休 憩)
〔その他〕
○青山座長 それでは、議事を再開いたします。
先ほど冒頭に申しましたけれども、自由討議をしていただくことになっておりますけれども、その前にお手元に配布されております資料21-5でございます。これは今後のADRの検討スケジュールでございます。まず事務局から御説明をお願いしたいと思います。
また、併せまして9月1日付で締切りをいたしました意見募集に対する意見の提出の状況等につきましても、本日までの範囲内で結構でございますので御紹介をお願いしたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いします。
○小林参事官 それでは、まず資料21-5に基づきまして、今後の検討会の検討スケジュールについて御説明をしたいと思います。
まず、今日の21回の検討会は4機関からヒアリングを実施いたしました。これら4機関につきましては、BtoBの関係の2機関、それからBtoCの関係の2機関ということで、範囲などもなるだけダブりがないような形で、バランスを考えてお願いをしたわけでございます。
次回でございますが、予備日として予定いたしておりました9月29日につき開催をお願いしたく考えております。内容としては隣接法律専門職種等の方からのヒアリングということを予定させていただいております。
後ほど御紹介いたしますが、パブリックコメントの中には、オリジナルが英文というものもかなりございます。また、この検討会の議論におきましても諸外国の状況などについての御紹介もございましたので、そういう方面から御意見を出された方にも、可能であれば、9月29日に御出席をいただきたいというふうに考えております。
それから、10月6日の第23回につきましては、それ以外の関係機関の方からのヒアリングを予定いたしております。具体的な機関につきましては、今後御相談をさせていただきたいと思っております。
また、このタイミングで意見募集の結果につきましても、かなりまとめた形で御紹介をしたいというふうに考えております。その上でここには書いてございませんけれども、その後の検討会の運びについて皆様に御相談をしたいというふうに考えております。
それで、その後の検討会でございますが、予備としていただいております12月8日を併せましてこのスケジュールでいきますと、合計4回ということになっております。
年内には法制の大まかな方向性について御議論いただきたいというふうに考えております。他方、これまでの検討で議論がかなり重ねられているということもございますので、このやり方につきましては、パブリックコメントの状況なども踏まえつつ、第23回の際に御相談をさせていただきたいというふうに考えております。
以上が、今後のスケジュールでございます。
それから、もう一点は、本日は資料を御用意いたしておりませんが、パブリックコメントの状況につきまして、簡単に現時点での状況を御報告したいというふうに考えております。パブリックコメントは7月29日からスタートいたしました。なかなか内容が難しいという御指摘もございましたので、8月中、東京、福岡、大阪で説明会を開催いたしました。
東京につきましては200 名を超え、大阪でも100 名を超える説明会となりました。福岡はちょうど当日、台風が九州地方を直撃した日で、私も帰りの飛行機が飛ばなかったという状況でございましたが、それにもかかわらず50名を超える方々にお集まりいただきました。それ以外にも、出前という形で幾つか御説明をさせていただいております。
結果でございますけれども、郵送とメールを合わせまして、重複を省きますと157 件の御意見をいただいております。
元々パブリックコメントの際に論点が非常に多岐にわたっていますので御関心のある項目だけでも結構ですと申し上げていたのですが、すべての論点について御意見をいただいたものもかなりございます。私どもの非力もございまして、決して読みやすいものではなかったと思っておりましたが、皆様の御協力をいただきましてたくさんの御意見をいただいたというふうに思っております。
それで、いただいた方の御職業等でございますが、順不同になりますけれども、弁護士・弁護士団体の方が31件、隣接法律専門職種の個人なり団体の方が47件、ADR機関職員の方が11件、消費生活相談員の方あるいは消費者団体の方が16件、学者の方が14件というような内訳でございます。
内容的には、今の段階であまりまとまっておらない形で申し上げるのは適当ではないと思いますけれども、先ほど申しましたように各論点を通して御意見はいただいておりますが、比較的意見が多かった項目としては、1つ目は執行力の付与についての問題、2つ目は弁護士法72条の問題、3つ目は事前確認制度についてでございます。
それぞれの論点について、いろんな意見をいただいておりますが、原案が両論併記になっているところもあるのと同じような状況がパブリックコメントにも窺えるわけでございますが、大きく申し上げれば、今日の御議論にもございましたようにADR機関の主体性・自主性・多様性をできる限り尊重すべきだという考え方と、ADRに対する懐疑論の2つがパブリックコメントの中でも大きく出ているのではないかという、これは私の個人的な印象でございます。
いずれにしましても、10月5日の第23回の場で、内容をかなり詳細に、そして、わかりやすくまとめた上で御報告したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、この場をお借りいたしまして、パブリックコメントに御意見を寄せていただいた方々に御礼を申し上げたいと思います。
以上です。
○青山座長 それでは、ただいま事務局から御説明がありました今後の検討スケジュールでございますけれども、何か御質問ございますでしょうか。
○三木委員 ちょっと若干意見に当たるのですがよろしいでしょうか。
○青山座長 はい。検討スケジュールの方ですね。
○三木委員 スケジュールに関するものです。
次回かと思いますが、国際的な観点からの関係者の方もお呼びすることを考えているということをおっしゃったと思います。是非、お願いしたいという趣旨のことで、ちょっと重ねたことになるかもしれませんが、これまでこの検討会では、かなり多数の方々からヒアリングをしたと思いますが、国際的な観点からお話しになる方がほとんどいらっしゃらなかったと記憶しております。全て国内の観点からお話をいただいておりました。ただ、弁護士法72条を中心としまして、国際的な波及性のある問題も幾つかありますので、例えばですけれども、我が国で既に何年、何十年と仲裁人として活躍されている外国人の方であるとか、あるいは日本人の方であっても国際的な活動をされている方、世界的なADR機関に関与をされておられたり、造詣の深い方などがいらっしゃると思いますので、そういった立場の方々から御意見を伺う機会というのを、是非設けていただければというのが個人的な希望です。
○青山座長 わかりました。それは十分考慮させていただきます。
スケジュールはこういうことで確定させていただきたいと思いますが、そうなりますと10月の第23回検討会の辺りから、短期間に論点を絞り込んだ議論が必要になろうかというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、次はフリーディスカッションに入りたいと思います。
冒頭に申しましたように、前回の検討会から約二か月経つわけでございますけれども、その間、各委員におかれましては関係する団体の方々あるいは周りの方々と、いろいろ意見交換する機会もあったのではないかというふうに思います。また、論点整理について、更に見直して考えられたこともあるのではないかということもございます。
本日、あと残された30分程度の時間でございますけれども、論点整理以降の状況について、お考えのところを自由に御披露していただければというふうに思います。特に、論点を絞ることなく、御自由に発言をしていただきたいと思います。
全員ということでなくても結構でございます。気が付いたことについて、御発言いただきたいということがあればお願いしたいと思います。
それで、佐成委員には今回、初めて参加されたお立場でございますので、もし可能ならば、これまでの検討状況を見ておられた立場からの御意見を御発言いただければというふうに思っております。
どなたからでも結構ですので、どうぞ御発言いただけますでしょうか。
原委員、どうぞ。
○原委員 消費者、一般市民という立場から、発言させていただきたいと思います。全国消費者団体連絡会へ事務局の方々に来ていただいて、今年の7月末でしたか、学習会というか報告会的にお話をしていただいて、各団体、個人も含めて意見が出されたということになるかと思います。ただ、内容が大変難しいということがありまして、書き方が両論併記になっているのはよかったのですが、それぞれについて、何かもうちょっと理由というか、判断材料となるような理由が書かれていると、もう少しわかりやすかったのではないかということが挙げられています。
課題として、先ほど3点挙げられましたけれども、これらについてはそれぞれ、やはり執行力の付与には反対という意見が強く、それから事前確認も慎重にというような意見が強い形で出ているのではないかというふうに思います。
その結果については、またパブリックコメントがまとめられたときに改めて、共通の論点だと思いますので議論したいと思いますが、それ以外というのでしょうか、重なりますけれども、3点思うところがあります。
1つ目は、ADR機関を利用するということであれば契約ということになるわけです。そうしますと、契約という立場から見ると、もう少し重要事項の説明義務のところがもっと丁寧に項目が立てられて、誰が説明するのか。それから、先ほど相談員協会の方から書面の交付義務にしていただきたいというのも書かれていましたけれども、消費者契約というのでしょうか、その視点からもう一つ再検討していただきたいというのが1つです。
2つ目は、先ほど私もヒアリングの中で質問を出しましたけれども、透明性と非公開性の話です。選択のためには透明性が確保されて、外から見て選択ができるように、ある程度情報も提供していただきたいと考えるのですが、ADRの魅力というのでしょうか、1つとして非公開性ということのメリットが挙げられる事例も大変多いわけですけれども、そういうときの透明性と非公開性の整理ももう少ししておく必要があるというふうに考えております。これは、ADR機関の健全性の話にもつながるかというふうに思います。
3つ目ですが、これも健全性の話になってしまうわけですけれども、既存のADRでも、消費者からするとちょっとこれはどうかなというふうに思うようなADR機関が既にあったりして、それが排除できていないわけです。執行力の付与をどうするかというところで、事前確認の話が出てきて、それに対して、事前確認の導入は慎重にというような意見がかなり多数だというふうに感じているのですが、事前が駄目であれば、例えばADR機関に対して、あのADR機関はどうなのだろうかという苦情とか相談がある場合、何か受け皿のような事後のフォローというのでしょうか、公的な機関が絡むのがいいのかどうかというのはまた別の問題で、透明性を確保することでそれを確保しようという道筋もあるかとは思いますけれども、方法論は様々かと思いますけれども、少し事後のフォローということについての検討も必要ではないかなというふうに考えております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。どうぞ。
○佐成委員 それでは。
○青山座長 それでは、佐成委員、どうぞ。
○佐成委員 横尾委員から引き継いで、まだ十分勉強していないので、個々の論点について申し上げるということは今は差し控えたいと思っておりますので、今回印象的なところだけ申し上げます。裁判やADRなどいろんな紛争解決手段がある中で、利用者の側がそれらを最適に利用者にとって一番適切に、あるいは紛争にとって一番最適な選択がどういう場合に可能なのか、あるいは、そういったところをパターナリスティックに制度化していく必要性があるのかとか、その辺が非常に気になっているところです。単に情報を開示して、後は利用者に任せるということだけで、利用者は果たして最適選択とまではいきませんけれども、合理的な選択が可能なのかというところ、特に消費者関係などでやや気になるところです。事業者の側はどちらかというと、その辺のところは日々ビジネスをやってますから、できるのですけれども、ちょっとその辺が気になるかなというところです。
印象的なところで申し訳ございませんけれども、こんなところでございます。
○青山座長 どうもありがとうございます。ちょっと間をつなぐような発言をさせていただきます。先ほど三木委員の発言とちょっと関係するのですが、9月1日から9月5日にかけて、東京のホテルニューオータニで、「ローエイシア東京大会」という会合が開催され、その模様はテレビでも放映されましたのですが、27のセッションのうちの1つに「ADRの未来」というセッションを入れてもらったのです。
私が、そのプログラム委員長をさせていただいたのですが、かなり大きな枠で入れてもらいました。そこでの議論、質疑応答や場外での発言中にアジア諸国あるいはアメリカやカナダも含めて、日本のADRの立法に対して、非常に強い関心を持っているということが非常によくわかりました。
先ほどの紹介の中に、意見照会に対する回答が英文で来ているものも何通かあるというふうに言われましたけれども、私もそういうふうに思いました。私が聞いた限りでは、やはり事前確認制度は非常に評判が悪いといいますか、それによってADRの一番良いところを失わせてしまうのではないかという批判が強かったように思います。
論点整理では恐らくこれ以上新しいものは出てくることはなくて、100すべてのものを取り込んでおり、この中からどれだけ絞り込むか、90にするか、80にするか、あるいは70まで絞り込むかというところが、今後の数か月に私どもがやるべきことかなと思いながら、そういう議論を聞いたということで、先ほど三木委員が国際的なADRの方々の意見も聞いたらどうかというふうにおっしゃった点については、私も全くそのとおりだというふうに思います。
どうぞ、廣田委員。
○廣田委員 今の事前確認制度に関連してということもあるのですけれども、原委員がおっしゃった健全性という意味が飲み込めないのです。誰が健全性を判断するのか。また、この機関の健全性を仮に判断しようとしても、結局、先ほどの中村さんのヒアリングにも出てきましたように、やっている仕事は個々の人がやっている、あるいはアドホックもあるというので、コアの部分はあっせんなり調停なり仲裁なりをやっている人たちです。
したがって、健全性を追求するということは、要するに段々追求しているうちにその人たちの仕事がいいとか悪いとかを追求することになってきます。今の事前確認制度の評判の悪い理由というのはいろいろあるかもしれませんが、そういう個々の紛争に立ち入っていいとか悪いとかということを言い出することになるからです。健全性という言葉だけを取れば確かに健全性がなければいけません。言葉だけの問題では。しかし、ひょっとすれば、事前確認制度とつながるおそれも出てくる可能性があるので、その辺を私が懸念しているのです。
その辺は、どういう健全性と言われているのかということです。
○原委員 健全性の話は、今、廣田委員がおっしゃったように、まず、その執行力付与の話から入ってきて、執行力を付与するのだと、やはり要件を適格に厳しくしなければというので、事前確認の話が出てきたわけです。だけれども、その事前確認というもののもう一方の面としてはある程度公的なものが管理をして健全性の確保を図るという、もう一つ違う仕事もやれる面を持ち合わせているということになります。
そうすると、事前確認というものを全く排除するのかどうなのかというところになると非常に難しくなってきていて、ただ、おっしゃるように事前確認そのものは、非常に管理が厳しいので私個人的にはやはり好ましくないというふうに思っているのです。
ただ、そこでちょっと私の中に芽生えてきた問題意識として、ADRが適正に運営されていくというところは何かで見なければいけないというふうに考えていて、それは情報の開示、透明性を図るということでやれるのかもしれないし、もう少し強い仕組み、ADRについてのトラブルがあったときに、それの受け皿みたいなものを設けるということで、ある程度カバーができる面もあるかもしれないということで、方法については様々に考えているのです。
それで、先ほど相談員協会の藤井さんの方から提示された資料の中にも、約款とか契約書の中に、このADR機関を利用しますというふうに既に書かれていて、そのADR機関でやるということが消費者側がよくわからないままに合意をして乗っかって、そこで出された結果に同意をしないのであれば、先ほどのヒアリングの中でもありましたけれども、同意をしないというような形の選択はできはするのですけれども、それも果たしてどこまで消費者側とか利用者側が判断してできるかなというふうになると、ちょっとそこも懸念があって、個々の紛争の良し悪しを判断するということではなくて、そこを統括しているADR機関、個々のADR機関をどういうふうに淘汰をしていくのかというような議論が残っているというふうに感じているということです。上手く説明ができていますかどうか。
一つの言葉で言ってしまうと、誤解も生むような感じがいたしますけれども、私が思っているのはそういうようなところです。
意味はわかっていただけますか。個々の紛争の解決結果の良し悪しを判断するというのではなくてADR機関というところです。だから市場の競争だけに委ねていて済む話かどうかなというところです。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、安藤委員。
○安藤委員 今の話につながってしまうようなことなのですけれども、利用者である国民、消費者が安心して相談できるかどうかというのを示すための告知という形になってくると思うのです。
ですから、私が心配していたパブリックコメントはおっしゃるとおり、スペシャリストのコメントというか、テクノクラートのコメントというか、ちょっと大衆というのがすっぽり抜けてしまったような気がするのです。あくまでも、利用する人に知識を普及しなければいかない、その人たちが使いやすくするにはどうしたらいいかということであり、先ほどもお話を聞いていましたら相談という認識についてものすごいずれがあるのです。本当はちょっと質問したかったのだけれども、証券業の相談というのは、我々の意識から言うとあっせんのところまで行ってしまっている状況なのです。
ですから、ADR自体があそこが乗って、そんなメリットあるものなのだろうか。むしろ、ADRから逃げるような組織ではないかなというような印象を受けたものですから、もうちょっとそういった、何と言うのでしょうか。レベルを1段階を落としたところで考え直しをしないとまずいのかな、そうしないと基本法にならないのではないのかというような懸念が少しあります。
○青山座長 ほかにいかかでしょうか。髙木委員はいかかでしょうか。
○髙木委員 時間があるから、何か喋らないといけないのかもしれない。この検討会が始まって、1年半位経ったのでしょうか。私の印象的なことを申し上げますと、結局、また振り出しに戻っちゃったという感じがしています。私の考えはそもそもADRは法制化には馴染まないというところからスタートしているのです。
ADRを活性化するといっても、やはり自主的に、当事者の自己決定をベースにおいて、民間が自由にやるというのがADRの良さであって、それを何らかの形で、活性化のためとはいえ、法制化して取り込むということ自体がそもそも規制だと思っているところがありまして、それを何らかの形で基本法に取り込んで、かつ、法律を作るというのが至上命題のようにもなっているわけですから、そこの矛盾点に帰着してくるのだと思っているのです。
それで、国の法律の中でADRもそれなりの価値がありますよ、社会的な存在として有益ですよ、ということを取り込む以上は国が認知するわけですから、その責任は国としてあると思うのです。
どういう責任、あるいはどういう法的な責任を負うか、という話はともかくとして、やはりそこでトラブルが起こったら、国として何らかの責任は負わなければいけないし、そういった責任は一体誰が負うのかというのが結局はっきりしないまま、ここに来ていると思うのです。
だから、信頼性の確保とか、一方では自由な選択に任せていいと言われていますけれども、やはりある程度、国の法律として取り込んで認知する以上は最低限の信頼性はどうしても必要になっていくのだろうと思っているのですけれども、それがADR本来の在り方とは異なるというのは、そのとおりわかるのですけれども、やはり取り込む以上は仕様がないという考えが一方にあって、しかも、まだADRが十分に成長していない段階で、皆もよくADRが何だかわかっていないような状況では、やはり過渡的な形としてはある程度の公的な規制とか、事前の確認とか、それは勿論、法的効果によるわけですけれども、必要があるのかなと思っています。
それともう一つの問題は、やはりADRの目的が一体何なのかということが問題になってくるのですけれども、司法制度改革審議会意見書の中で取り上げられ、なおかつ、司法制度改革推進本部というところで検討されているのは司法制度のバイパスとしての機能があるからです。バイパスというのは、どういうふうに作るかによって、あまりバイパスを広く大きくしてしまうとみんなそっちを通ってしまって、本流が狭くなってしまい、どちらが本流なのかがわからなくなってしまうという危険もあるものだと思うのです。意見書は、司法制度の中核を拡充していくことに加えて、ADRの拡充・活性化について言われていたわけですけれども、そこを作り間違うと、司法制度もおかしくなってしまうというところも実はあるわけです。
それは特に、弁護士法72条のところでADRが相対取引や契約交渉とほとんど同じかそれらに準ずるものと考えれば弁護士法72条を厳格に言うことはないかもしれないという考えもある。けれども、交渉レベルを超え紛争が絡んでくると、そこには争いもあるわけだし、その結果について法的な権利義務関係が築かれるような、紛争解決がなされるのだということだとすると、弁護士法72条が全く必要ないという前提で考えるならばいいのですけれども、弁護士法72条には一定の価値があるという前提で物事を考えると、そう簡単に緩和できないところがあるだろうと思うし、意見書が目指している法の支配に照らしても緩和の度合にも限度があるのだろうなというふうに思っています。
○青山座長 どうも、非常に包括的なお話をいただきました。山本委員、いかがでしょうか。
○山本委員 私は、今の段階では特にはございません。
○青山座長 わかりました。三木委員、いかかですか。
○三木委員 各論でしか申し上げられませんので、一般的なことはございません。
1点だけ、お忙しい事務局にこれ以上仕事を増やすようなことはしたくないのですが、事務局に対してちょっと資料のお願いなのですが、今日の中村さんの御発言中に外国のことについて御言及がありました。これは主として国際商事仲裁の世界の人達は各国の法制の状況というものに大変センシティブなのだろうと思うのです。仲裁人の資格として弁護士資格を要求している国はほとんどないというようなことは巷間言われているし、若干古いものでそういうことを書いたものもあるのですけれども、やはり立法の際にデータとして各国の立法例といいますか、つまり仲裁人とか調停人、この検討会で言えば仮称ですけれども、主宰者の資格について法曹資格を要求している国がどのくらいあり、又は要求していない国がどのくらいあるのかという客観的なデータが必要になると思います。
併せて、仲裁代理、あるいは調停代理について、法曹資格を要求している国がどのぐらいあるのかということも、お忙しい事務局にお願いするのはどうかという気もいたしますけれども、資料として揃えていただけるのであれば、事実を踏まえた上での議論がしやすいかなと思います。
○小林参事官 努力をさせていただきます。
○青山座長 弁護士会にはその点の資料はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
○髙木委員 その前提で弁護士法72条と同様の規定があるかどうかということも、やはり見なければいけないわけですよね。
○三木委員 この問題はUNCITRALでも関心が持たれておりまして、仲裁部会の第1回会議で議論されました。世界的にどうなっているのかという、国名を例示的に挙げた議論もされまして、日本がどんな立法をするにせよ、諸外国ないしUNCITRALが関心を持つことは間違いありませんので、事実がどうなっているかということは踏まえた上で議論をした方がいいということです。
○青山座長 廣田委員、何かありますか。
○廣田委員 今、髙木委員から72条のことが言われて、これについてもちょっと意見を言いたいところなのですが、データが出てからの議論する方がいいのかもわからないので、72条については後回しにしたいと思います。大体これまで20回の議論をやってきたのですが、議論を噛み合わせながら議論をやっていくということをあまりやっていなかったと思います。
それで今後のスケジュールを見ますと、議論をする機会がどれぐらいあるかというと、非常に時間が足りないという感じを私は持っているのです。これから大事なところですから、議論を噛み合わせながら深く入っていかないと結論が出てこないと思います。
そういう意味では、髙木委員が言われたことに対して、今日ここで感想めいたようなことを、将来の議論を噛み合わせるという意味で申し上げたいと思うのですが、ADRについてお互いに違う意見を言いっ放して議論が平行線になっているというような状態がずっと続いていると思うのです。そのような形では健全な方向では結論が出ないと思いますので、申し上げたいと思うのです。
先ほど髙木委員がADRは法制化に馴染まないのではないかということがありましたが、私もそうだろうと思います。それから先のことなのですが、国がここで認知するという認識についてですが、この際に改めて認知されるということではなく、ADRというものは立派にこの日本という社会の中に存在しているわけです。その辺の基本的な認識は私とはちょっと違うのかなと思います。
ですから、そこから先は最低限の規制が必要なのか必要でないのかという議論になるわけですが、現在でも規制があります。もし何かトラブルが生じていれば裁判所が扱うわけですから、その点についての対応がまるっきりないわけではないということが一つ言えると思います。ですから、ちょっとその辺のところから認識を少しすり合わせながら議論をしなければ、議論が進まないということがあります。
それからもう一つは、これも意見がたくさんあるところでしょうけれども、ADRは訴訟のバイパスであるかという点の認識についてですが、私は決してそう思っていなくて、それらは紛争解決の両輪だと思っていまして、これは私から見ると、近代からスタートした紛争解決システムが、一方では司法から、一方では自主的な私的自治に基づく相対交渉を始めとする解決からで、そして、後者の流れとしてADRが存在するという認識です。
勿論、ここは意見が分かれるところだと思うので、そういうようなところの議論を噛み合わせながら今後進めていきたい。それによって、制度設計の仕方も違ってくるのではないかと思います。また、仮に意見が違ったとしていても、議論が噛み合っていれば、ではどうしようかという結論が出ると思いますので、そういうような方向にしていただきたいと考えております。
○青山座長 今の廣田委員の発言について、髙木委員はそんなに異論があるというわけではないのではないでしょうか。私からしますと、そんなにお二人の発言が違っているとは思わなかったのですけれども。
○髙木委員 そうですね、両輪とバイパスとどう違うのかなとか、ちょっと思っちゃいましたけれども。
○廣田委員 それは、随分違うのですけれどもね。
○青山座長 日本ではADRは実際上行われており、法律によって新しく作るわけではないということは、もう当然のことで、それを認知と言うかどうかという、言葉が問題になると思います。バイパスというか両輪というかどうかも、意見書では民事裁判について一層努力を傾注しなければならないが、それと並ぶ、国民にとって魅力的な選択肢としてADRがもっと活性化されるようにということであって、そのこと自身に異論があるわけではないだろうというふうに思っております。
今後、細かな点については勿論のこと、基本的な考え方に対立があるかもしれませんけれども、それはその時に段々と詰めていきたいというふうに思います。
事務局の先ほどのスケジュールで結構なのですが、意見募集の結果については、現在とりまとめ中だと思いますが、いつごろ我々に意見募集の結果だという形で示してもらえるのかということが一つ、それから、意見をくださった方に対するフォローアップといいますか、こういう意見が出ましたということをフィードバックするというか、そういうことについてはどういうことになるのでしょうか。
○小林参事官 後者の方から申し上げますと、意見をいただいた方、あるいは意見募集の結果を注視されている方々に対する情報提供という意味で、先ほど申し上げましたように、10月6日に開催されます第23回検討会で、かなり詳細で、かつ、全体が見やすく整理した形の資料で御説明をいたしますし、資料としてインターネット上に公表するということを考えております。
ただ、今後のタイトなスケジュールを考えますと、委員の皆様方にとってそれではとてもタイミング的にも間に合わないし、これから議論を詰める際には、是非それを見たいということもあろうかと思いますので、事務局の方で簡単なリストを作成いたしておりますので、それは委員の方にはお渡しできます。
したがって、そのリストを見ていただいて、御関心のあるものについては私どもの方でとりまとめてお渡しできるようにしたいというふうに考えております。そういう意味では、今でも可能でございます。
○青山座長 わかりました。私どもはその意見を全部拝見するつもりですけれども、委員の皆様もそれをご覧いただいて、また議論を詰めさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、予定の時間がまいりましたので、本日の議論はこの辺りで終了したいと思います。
最後に、次回の日程をもう一度確認させていただきます。次回、第22回の検討会は、先程の資料21-5にもありますとおり、予備日の9月29日月曜日午後1時半から開催いたします。そこで、専門家の方々から本日同様、総合的なADRの制度基盤の整理についてのヒアリングを実施することを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の検討会は、これにて終了いたします。御苦労様でございました。