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ADR検討会(第22回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年9月29日(月) 13:30~17:00

2 場 所
永田町合同庁舎共用第一会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦(敬称略)
(説明者)畑光(日本行政書士会連合会理事)、中村邦夫(日本司法書士会連合会会長)、松岡直武(日本土地家屋調査士会連合会副会長)、坂田純一(日本税理士会連合会専務理事)、大槻哲也(全国社会保険労務士会連合会会長)、村山信義(日本弁理士会ADR推進機構副委員長)、清水文雄((社)日本不動産鑑定協会副会長)、ロバート・グロンディン(在日米国商工会議所特別顧問兼理事=在日米国商工会議所、外国法事務弁護士協会、国際紛争解決財団推薦者)(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング②
(2)その他

5 配布資料
資料22-1 日本行政書士会連合会
資料22-2 日本司法書士会連合会
資料22-3 日本土地家屋調査士会連合会
資料22-4 日本税理士会連合会
資料22-5 全国社会保険労務士会連合会
資料22-6 日本弁理士会
資料22-7 (社)日本不動産鑑定協会
資料22-8 ロバート・グロンディン氏

6 議 事

(1)総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング②

 日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会、社団法人日本不動産鑑定協会及び在日米国商工会議所等ほか2団体推薦者(グロンディン在日米国商工会議所特別顧問兼理事)より、総合的なADRの制度基盤の整備に関して、ヒアリングを行った。

 各説明者からは、配付資料に沿って、次のような説明が行われた。

(日本行政書士会連合会)

  • 総論として、①国からの関与や規制については緩やかなものとすること、②当事者にいたずらな不利益が生じないよう、主宰者の人的担保を整備すること、③十分な情報提供の下で当事者の自己責任によるADRの選択が可能となるようにすることに留意しながら、検討が進められるべきである。
  • 時効の中断、執行力、調停前置主義の不適用、訴訟手続の中止に関しては、それぞれ制度の整備が図られることが望ましい。
  • ADR主宰者については、その人的担保の整備という観点から、資格制度上の懲戒等が可能な公的資格保有者(隣接法律専門職種等)の参画を前提とすべきであり、そのような前提の下で弁護士法72条の特例を設けるに当たっては、弁護士の関与を必須の要件とすべきではない。また、ADR手続の代理人についても、主宰者と同様の観点から、公的資格保有者の参画を前提とすべきである。その上で、各公的資格に関する個別法上に特例規定を設けるだけではなく、隣接法律専門職種を主宰者、代理人として活用する旨の規定をADR法上にも置くべきである。
  • 特例的事項に関する事前確認方式の採用は、ADRの自主性を阻害するおそれがあるので、他の方法を検討すべきである。

(日本司法書士会連合会)

  • 司法書士会としては、身近に生ずる紛争の解決を図るADRを実施していきたいと考えているが、その際、時効中断効及び執行力の付与、弁護士法72条の適用に関する特例の整備が必要であると考えている。その際には、一定の適格性を有するADR機関のみが対象とされるべきである。利用者にとっては、法的効果を享受できるADRを利用するか、そのような法的効果を求めないADRを利用するかという点で選択肢が増えるメリットがあると考える。
  • ADR主宰業務に関する弁護士法72条の特例を設ける際に、要件として弁護士の関与・助言を求めるのであれば、簡裁代理権を有するいわゆる認定司法書士は、弁護士と同様の位置付けで、関与・助言が可能となるような取扱いがされるべきである。
  • 時効中断効の付与等に当たっての事前確認方式の採用は、利用者に選択の基準を与え、「安心」をもたらすものであって、適当であると考える。また、執行力は必要だとは思うが、限定的に考えられるべきである。
  • 国の責務に関し、ADRの運営費用の調達は各ADR機関の開設者の責任において行われるべきものであろうが、主宰者の教育訓練や研修の実施については、財政上の措置が講じられるべきである。

(日本土地家屋調査士会連合会)

  • 土地家屋調査士会は、弁護士会の協力を得て、土地の境界紛争解決に特化したADRを試行しているが、相手方の不応諾のために不調に終わることも少なくない。ADRの利便性や実効性・信頼性などに関する認知度が低いことを感じる。また、相談によって紛争の解決が図られ、あるいは、紛争発生の未然防止が図られることが多いことにも留意する必要がある。
  • 国の責務に関しては、担い手の研修に関する経費の援助を希望する。
  • ADRと訴訟手続の連携については、境界紛争に関しては、ADRでの解決の実効性を確保するための裁判所による証拠調べの協力やADRの過程で得られた調査・鑑定結果を後続する訴訟手続等で活用を図れるようにすることが望ましいと考える。
  • 弁護士法72条に関しては、資格者団体がADRを設置できること、国家資格保有者はADRの主宰業務、代理業務等ができることを明確化する必要がある。また、ADRの主宰者は、利用者が二次被害を被ることがないよう、法的な専門教育を受け、紛争解決手法に関する十分な訓練と経験を経ている者が関与することが望ましいが、全てに弁護士の関与を必要となれば、弁護士の少ない地域ではADRを設置できないことになりかねないので、一定の適格性を有するADR機関であれば、弁護士の関与を要しないこととしてもよいのではないかと考える。

(日本税理士会連合会)

  • 租税行政分野については、国税不服審判所が機能し、制度としても定着しているので、ADRに関する基本的な法制におけるADRに含める必要はない。
  • 民・民紛争であっても、紛争解決段階において租税負担が発生するものに関しては、税理士の有する専門的知識・経験を生かすことができると考えており、ADR主宰業務に関与することが可能となるよう立法措置が講じられるべきと考える。
  • ただし、税理士は、税理士法上、独立した公正な立場において納税義務の適正な実現を図る使命を有しており、民・民紛争に関して、弁護士と共同することなく、単独でADR主宰業務を行ったり、あるいは、ADR代理業務を行うことは適当ではないと考える。また、税理士は、必ずしも紛争解決に関する法律全般の知識等に習熟しているわけではないことからも、主宰業務よりも高度な法的知識を要するADR代理業務を行うことは適当ではない。

(社会保険労務士会)

  • 社会保険労務士が個別労働紛争の解決のためにADRを担うことは、職務上の使命であると考えており、社会保険労務士がADRの担い手となり得ることをADR法で明確に位置付けてもらいたい。
  • また、代理業務に関しても、法律分野につき高度の専門能力を有するものと評価できる専門職種として、個別労働紛争についての代理業務を行うことができるよう社会保険労務士法の規定の整備を図ってもらいたい。その際、ADR代理受任契約の締結前であっても相対交渉の代理ができるようにすべきものと考える。
  • 個別労働紛争については、消滅時効の期間が短く、特に時効中断効の付与が必要となるので、特例規定の整備が図られるべきである。

(日本弁理士会)

  • 知的財産権とその紛争解決の要請に対して、弁理士は、その紛争分野における専門的知見を十分に有しており、弁理士のADRへの積極的な関与が要請されるという具体的状況も存在する。
  • ADR主宰業務に関する弁護士法72条の特例については、弁護士法に違反しないで専門家が行うことのできるADR主宰業務の範囲をあらかじめ明確にしておくことが望ましく、また、隣接法律専門職種等に関しては、弁護士の関与・助言を受けることなく主宰業務を行うことができるよう個別法を整備することに賛成する。一定の不適格者は主宰業務を行うことができないような仕組みを設けることにも賛成する。
  • また、代理業務に関しても、法律分野につき高度の専門能力を有するものと評価できる専門職種を対象に、個別法令上に弁護士法72条の特例規定を設けることに賛成する。なお、知的財産権関係の紛争については、ADRにおける代理のニーズも十分あるものと認識している。その際、ADR代理を受任していなくとも、相対交渉における代理権を認めるべきと考える。

((社)日本不動産鑑定協会)

  • 不動産鑑定士は、特に宅地建物事件において、その専門性を発揮して、多くの紛争解決に寄与してきている。宅地建物事件には調停前置事件である地代家賃増減額に係る紛争も含まれるので、調停前置主義の不適用について特例を整備することについては特に関心を有している。また、借地借家、地代家賃等に関しては、履行がなされなければADRの信用にも関わると考えており、執行力の付与についても、事務局のパブコメ案のような仕組みの下で特例が設けられるべきものと考える。
  • このほか、時効中断、訴訟手続の中止、専門家の活用に関しても、事務局のパブコメ案のような仕組みの特例を設けることが適当であり、その際、特例の内容に応じて事前確認方式の採用することも適当であると考える。なお、ADR代理に関する弁護士法72条の特例については、ADR代理を受任していなくとも、相対交渉における代理権を認めるべきと考える。

(在日米国商工会議所 グロンディン特別顧問兼理事)

  • ADRは訴訟以外の手段による紛争解決を望む当事者のニーズに柔軟に対応して自由な発展を遂げてきたものであり、これに対して規制を加えようとすることは、まさに自然の法則に逆らうことにもなる。少なくとも、BtoB紛争に関するADRは当事者間の契約によって任意に行われるものである。
  • そのような意味で、BtoB紛争に関するADRとBtoC紛争に関するADRを区分することなく、一括りに体系付けようとすると、解決が困難となる。後者は、性格上、規制するという選択もあり得るからである。
  • ADRの主宰者については、弁護士資格の有無を問わないというのが、自然発生的に確立されたグローバル・スタンダードである。米国では、そもそもADRの主宰は弁護士の独占業務とされる法律事務ではないとされている。このようなADR主宰行為について事前確認制度の下で制限を設けると、国際的なADRを日本で行うことはなくなり、日本は競争力を失うこととなろう。
  • ADRにおいては、多種多様な情報さえ用意すれば、あとは利用者が自ら選択する。できるだけ柔 軟な仕組みを用意しておくことが大切である。
  • 執行力の付与という論点もあるが、ADR和解に執行力を付与することは国際的にみても稀であ る。ADRにおいては、ほとんどの人間が和解をし、そして、自ら約束を守るのが通常である。執行力を必要とする1%の事案のために、執行力付与のためのシステムを設けることによって、ADR全体にゆがみが出るのであれば、かえって逆効果ではないか。時効についても同様である。

 上記のような説明に対して質疑応答がなされた。主なものは以下のとおりである(○:委員、●:説明者)。

(隣接法律専門職種等の専門家に対する質疑)

○ 司法書士会は、時効中断効等の特例を適用する上で、ADRにはどのような適格性が求められると考えているのか。

● ADR機関の組織運営、主宰者の人材、情報公開、財政基盤等に関して適格性が求められるものと考える。

○ 遺産分割協議等に当たって税務に関する助言を行っている税理士も多いと承知しているが、ADR代理業務を行うことが適当でないと考えるのはなぜか。

● 紛争性を有する前の段階で税務相談を行うことと、紛争に至った段階で関与することとは、事情が異なるものと考えている。

○ 社会保険労務士は開業者であっても使用者側から受任して報酬を得ている者が多く、労使紛争における中立性に問題があるのではないか。

● 都道府県社労士会で設置している総合労働相談所における実績等をみても、労働者側からの相談も多く、中立性に疑問が呈せられているとは考えていない。

○ 時効中断効及び執行力の付与に対する弁理士会の意見はどうか。

● 意見募集の論点の本案で示された適格性を有するADRにつき、事前確認方式を採用して認めるものとしてよいのではないかと考えている。

○ 執行力の付与に関しては、BtoC紛争等においては弊害の発生も指摘されているが、利用者によってはデメリットともなり得るという観点からの検討は行ったのか。

● 弁理士会としては、知的財産権紛争に関する限りはBtoB紛争が大多数であるという前提の下に、検討を行った。

○ 専門的紛争に特化したADRを検討している団体が多いという印象を持ったが、利用者の立場からは、いわゆるよろず相談窓口へのニーズも高い。この点について、例えば、社会保険労務士会はどう考えているか。

● 行政機関や商工会等とも協力しながら、様々な隣接法律専門職種で協同した相談を実施している実績もある。

(グロンディン在日米国商工会議所特別顧問兼理事に対する質疑)

○ BtoC紛争に関してもADRの自由度が重要であると考えるか。

● 消費者保護の観点からの規制が必要になる場合はあると考える。

○ 事前確認方式にはどのような問題があると考えるか。

● 確認を受けるため、あるいは確認を受けた後に要求される要件等の程度にもよるが、意見募集で論点として示された事前確認のスキームの下では、メリット・デメリットをトータルとしてみてもプラスになるとは思えない。また、国際的にも、あまり成功した事例が見られない。ADRの萌芽期にはそぐわないのではないか。

○ 主宰者の資格制限を設けず、すべてを当事者の選任に委ねた場合に弊害が生ずるという考え方をどう評価するか。

● そのような懸念を有する当事者は信頼できるADR機関を利用するということになるのではないか。アド・ホックADRで紛争解決を図る場合には、当事者の自己責任である。ただ、いずれにせよ、実態として問題事例をあまり聞かない。なお、BtoC紛争では、例えば、業界型ADR機関で主宰者の選定が問題となりうるが、米国では、行政機関のチェック等を通じて対処されている。

○ ADRが不成立に終わった事件で時効の問題を考慮する必要はないのか。

● 時効の完成が懸念されるケースでは、まず訴訟を提起して時効中断の措置を講じたうえで、訴訟手続を中止するという形をとるのが一般的である。

○ 事前確認方式を採用しないとしても、時効中断効は不要であるという考え方なのか。

● 事前確認方式が前提となるなら必要ないという趣旨である。

(2)その他

 次回は、10月6日(月)午後1時半から、法務省及び日本弁護士連合会から総合的なADRの制度基盤の整備についてのヒアリングを実施するとともに、夏に実施した意見募集の結果について事務局から説明を行うこととされた。

(以上)