[開会]
○青山座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第22回ADR検討会を開会いたします。本日は、綿引委員が所用のため欠席でございますが、それ以外は全員出席していただいております。
それでは、本日の議事に入ります。本日は、お手元に議事次第をお配りしてあると思いますが、この議事次第のとおり、隣接法律専門職種の方々を含めまして、8つの団体の方々に御出席をいただいております。そして、その方々に総合的なADRの制度基盤の整備について御意見をいただきたいと思います。
それでは、ヒアリングに入ります。ヒアリングは御説明いただく方々を便宜上3つのグループに分け、それぞれ御説明をいただいてから15分程度の質疑を行うという形でお願いしたいと思います。
御出席いただく方々の御紹介は、グループごとにさせていただきますので、よろしくお願いします。なお、大変恐縮でございますが御説明いただく方々に初めにお願いを申し上げたいと思います。本日は、今、申しましたように、たくさんの方々にお越しいただいておりますので、あらかじめこちらからお願いし、お知らせしております時間内で御説明を終わらせていただきますようお願いいたします。
私の経験で申しますと、初めの方はきちんと時間を守っていただけるのですが、だんだん後の方になってきますと、5分延び7分延びということがままあるようでございますので、初めにお断わりをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最初に御説明いただく方々を御紹介申し上げます。日本行政書士会連合会理事の畑光様でいらっしゃいます。日本司法書士会連合会会長の中村邦夫様でいらっしゃいます。日本土地家屋調査士会連合会副会長の松岡直武様でいらっしゃいます。日本税理士会連合会専務理事の坂田純一様でいらっしゃいます。
お四方には、大変お忙しい中、今日はわざわざ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、初めに日本行政書士会連合会の畑さんにお願いいたします。
〔総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング②〕
〔日本行政書士会連合会〕
○説明者(日本行政書士会連合会 畑光理事)それでは、私は日本行政書士会連合会の理事をしております畑光と申します。本日は、お呼びいただきまして誠にありがとうございます。
このADRの問題につきましては、既にこの検討会で21回にわたって、いろいろ御議論なさっているということをオブザーバーとして参加させていただきまして、よく承知しておりますので、それを前提にして申し上げたいと思います。
まず、御議論のありました中で、基本的事項につきましては本日配布しております資料にもありますとおり、私どもはこの方向性について賛意を表するものであり、ADRの基本的理念や健全な発展のために、ますます御協力をお願い申し上げたいと思います。
まず、我々としては日本におけるADRの多様で発展的な成長を期待するということを原則といたしまして、ADR基本法がいわゆる規制法というか、いろいろ制限がある法律にならないように、ひとつお願い申し上げたいと思います。
この点では論点の6のところにありますように、私的自治の原則から紛争関係の解決についても、手続・内容の両面にわたる当事者間の合意を基礎とした自主的解決を中心に考え、これをADRに関する施策の基本理念として、国からの関与や規制について緩やかにすることが、ADRの自主的発展につながると考えております。
ただし、徒に当事者の不利益を招来することのないように、主宰者の人的担保の整備に努める必要があると思います。これは、我々の業界もそうですが、徒に参加するだけが能ではなくて、担い手になるためにもいろいろな研修をしたりしなければならぬと思っています。
また、国民に対するADRの制度の広報を十二分に行うことによって、当事者が自己責任で利用の選択が可能となるような方向づけをされるということが望ましいと考えております。
元々このADRの我々の認識としましては、廉価、迅速、簡易といった3つのキーワードの下に、国民の利便性のある手続として制度化しようと、こういうことを前提としておりますので、我々としては、例えば行政処分に関わる分野等につきましては、行政書士の我々が、いろんな許認可申請に携わっておりますので、行政訴訟や行政不服審査法等の絡みもありますけれども、ADRによって解決できるような方法がないかということを痛感しておる次第であります。
なお、相談手続は是非ADRの入口になる手続として重要な問題であると考えております。この相談手続の窓口として、是非ADRが受け皿になるような制度にしていただきたいと思っております。
次に、一般的事項につきましては、基本的にはやはりADR検討会の議論の方向性に賛意を表するものでありますが、ADRの機関並びに主宰者に関して次のようなことを申し上げておきたいと思います。主宰者の人的担保の整備という観点から、公的資格者の参画を前提とすること。ADRの機関、主宰者の一定の義務違反に対しては資格剥奪も可能とするような制度が望ましい。これはどういうことを言っているかと言いますと、公的資格者というのは、単に法律隣接専門職ではなくて、例えば医療過誤だとか、建築紛争等がありますので、医師や歯科医師や建築士、その他公的な資格者、こういう人を参加させるということで、多様な国民からの期待に応えられるというふうに考えております。そこで、「資格剥奪も可能な」という意味は、例えばやくざが出てくるとか、そういうことではなくて、こういうことに違反した人は、自らの持っている公的資格を剥奪されるといったような意味も兼ねまして、公的資格者の参画を前提とすることが望ましいというふうに考えております。この点は、論点12で言っておりますADRの信頼確保からも質の高いADRの担い手の確保という意味で申し述べたところであります。
次に、特例的事項の問題についてでありますが、時効の中断と執行力の付与が議論されておりますけれども、我々は原則的には付与を認めるべきであるという立場に立っております。
ただし、無差別にといいますか、そういうことで認めると問題があるということもよくわかっておりますので、原則認めるべきであるが、状況によって、何らかの制限を加えるということは、やぶさかではないと思っております。
特に、なぜ加えたいかというのは、ここで例えば調停なり和解の契約ができたとしても、執行力やその他法的な効力がないと、結局これがまた紛争に移っていくとか、別の執行力付与のための手続が必要といったようなことで、ADRの和解や調停が形骸化しないかということを憂えているからであります。
次に、調停前置主義というのが議論されておりましたけれども、調停前置主義は不適用でいった方がいいのではないかというふうに思っております。
それから訴訟手続の中止も、訴訟の手続が進んでいる間に当事者双方の合意があるとすれば、中止決定を裁判所の自由裁量に委ねてADRに持ってくるというふうに、ADRの弾力的な運用に関わるような方法が望ましいのではないかと思っております。
次に、専門家、先ほど公的資格と申しましたけれども、一応、隣接法律専門職という立場から申し上げますと、弁護士法の72条の問題がありますが、弁護士しかできないということであれば、私は先般、鹿児島、札幌、新潟、富山、山口やそこらで各県の行政書士会を回ってまいりましたけれども、やはり弁護士がいらっしゃらない、非常に少ないところでこの問題を痛切に感じておるということを見聞してまいりました。
したがいまして、弁護士のみというのではなくて、やはり隣接専門職の知見を利用する制度を構築していただいて、場合によっては弁護士さんと協調するとか、そういったこともあろうかと思いますが、常に弁護士があって一緒に隣接専門職がくっつくとか、あるいは弁護士のみというような制度で弁護士中心の制度は何とか避けて、隣接専門職の活用をお願い申し上げたいと思っております。併せて主宰者のみならず、代理人としての専門家の活用についても同じようなことで、是非専門家の活用をお願い申し上げたいと思います。
最後にADR適格性の公的事前確認制度につきましては、やはりADRが事前にいろいろな規制で、冒頭申し上げましたように、立ち上げようとするADRがいろんなところで公的な事前承認制度といったような制度でふるいにかけられるということになれば、ADRの中に差別が生じたり、いろいろいたしますので、是非これは自主的なADRで届出にするか、いろいろあると思いますけれども、実質を損わないようなADRの制度にしていただきたいと思います。
いろいろ申し上げましたけれども、細かいことは本日のペーパーの最後のページのところにずっと専門職の資格者等の名前も列挙しておきましたので、ご覧いただきまして、是非このADRが国民に使い勝手のいい制度になりますようにお願い申し上げて、意見の陳述としたいと思います。
ありがとうございました。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、日本司法書士会連合会会長の中村さん、お願いいたします。
〔日本司法書士会連合会〕
○説明者(日本司法書士会連合会 中村邦夫会長)本日は、私ども日本司法書士会連合会がADR検討会の委員の皆様方に対して、制度基盤整備についての意見を申し上げる機会を得ましたことに感謝申し上げます。
また、裁判手続と並ぶ紛争解決手段としてのADR手続の基盤整備について、熱心に御検討を重ねられ、いよいよ法制化が目前となってまいりましたことに対し、委員の皆様方に深甚の敬意を表します。
現在、私ども司法書士は、全国に約一万七千六百名の会員を有し、その分布は、地方、市町村にまで万遍なく存在しております。また、本年4月1日に施行されました改正司法書士法によって、能力担保研修及び考査を経て認定を受けた司法書士に簡易裁判所の事物管轄を限度とした訴訟代理権が付与されることとなり、去る7月28日に第1回特別研修の考査結果が公表されました。この第1回特別研修により認定を受けた司法書士会員は、全国で2,989 名でありますが、まさに司法過疎を実質的に解消する第一歩として、離島や僻地と言われる交通不便な場所に認定司法書士が誕生いたしました。参考として、司法書士会別会員数等を資料としてお配りしております。現在、第2回特別研修の実施に向けて鋭意準備中であります。これからも司法過疎の実質的解消と、国民に身近な法律家の供給を使命として、司法制度の充実に取り組んでまいる所存でございます。
さて、日本司法書士会連合会のADRに対する取り組みの現状を御説明申し上げます。既に、連合会内に、司法制度対策部を設置し、全国津々浦々に存在し、国民の最も身近にあるという司法書士の特性を活用したADRセンターを設置する方向で検討しております。
そして、1つの紛争を複数の司法書士会が関与して、遠隔地間の関係当事者が紛争の解決の機会を得られるよう、全国50会の司法書士会をネットワーク化して利用することも考えております。具体化の第一歩として、全国を八つのブロックに分けて、各ブロック内に最低1か所のモデル会を指定した上で、早期に司法書士ADRセンターを開設する予定であり、既に6地区のモデル会指定にまで至っております。
当連合会が検討する司法書士ADRの対象は、暮らしに関わるあらゆる紛争の総合窓口と考えておりますが、当面は、司法書士業務と深く関連する分野での専門的知見の活用という視点から、相続に関連する遺産分割等の紛争、成年後見に伴う扶養義務請求等の家事紛争などを想定しております。
また、各司法書士会においても、独自のADRセンターを開設しようとする動きがあり、当連合会も財政的支援、集積したノウハウの提供、関係機関との連絡調整、更には主宰者等の人材育成にも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
なお、先に申し上げました簡易裁判所訴訟代理権を行使できる認定司法書士は、現行司法書士法の下において、一定範囲の法律事務を取り扱うことができますので、現段階で司法書士ADRセンターを運営することが可能な環境が整っていると認識しており、今後の制度面での環境整備を大いに期待するところでございます。
既に申し上げましたとおり、当連合会では国民の日常生活に一番身近な場面に生じる紛争解決のため、司法書士の職務範囲にあり、かつその経験が生かされるADRセンターを自らが開設し、運営することを検討しております。
そして、司法書士会及び司法書士がADR制度に積極的に関与する場面につき、当検討会におかれましては、専門家の活用という視点から検討していただいておりますが、その点に関しまして、一定の法的効果の付与及び弁護士法第72条の適用に関する特例、特にこの2点について法整備の必要性を感じております。
まず、自主性、多様性が尊重されることにより、様々な形態と沿革を持つADR機関の開設が想像されます。それは一定の適格性を有することが前提になると考えておりますが、多様性の一つとして、一定の法的効果を発生させる機能を有するADR機関と、これを持たない機関が並行して存することは、利用者である国民の選択肢が増えることであり、ADRが利用しやすい制度となるためには必要であると考えます。
先のパブリックコメント募集において、特例的事項として掲げられた論点のうち、時効の中断効、執行力の付与の2つについては、一定の適格性を有するADRという区分けをした上で、その整備を積極的に期待するものであります。
その理由としましては、この2つの法的効果を必要とする事態が、ADR機関において頻繁に発生するものではないと考えておりますが、ただ、時効中断効については、その効果が与えられないことにより、時効完成を目前にした当事者は、多様な手続選択の可能性が阻害され、あるいは合意に向けて進行中であるにもかかわらず、時効完成を目前にしてADR手続を終了して、訴訟の提起をせざるを得ない事態もあり得ます。また、権利行使をした者は保護されるべきであるという時効制度の考え方からしましても、ADRを利用した場合に、取下げや不調によるADR終了まで、時効中断の効果が与えられる等の特例を設けるべきであると考えるところであります。
そして、この特例が適用されるADR機関は、適正な運用が求められることは当然として、当事者による予測可能性が保護されるためにも、一定の適格性を有するADR機関であるべきと考えます。
また、執行力の付与については、例えば成年後見に伴う扶養義務の履行を求めたADRにおいて、扶養費の継続的給付合意をした和解文書などが、より実効性のあるものとなるためには、扶養費の支払い遅滞の場合、直ちに強制執行に着手できなければADR機関利用という選択肢は採られないものと想像されます。したがって、執行力の付与は必要ですが、時効中断効の付与の要件より更に限定的かつ厳格に適用が検討されるべきであると考えます。また、ADR和解文書に対する執行力の付与は、和解が金銭債務に限られない場合を考慮しますと、執行開始に当たっては、執行裁判所による執行決定を要するなどの手続要件を設けるなどの仕組みが望ましいと考えております。
次に、弁護士法第72条の適用に関する特例について、法整備を求める事項を申し上げます。私ども司法書士については、弁護士法第72条の適用除外を求めるか否かという問題について、冒頭述べました認定司法書士と、そうではない司法書士の大きく2つに分けて考えなければならないという特殊性が存在いたします。すなわち、認定司法書士が簡易裁判所事物管轄の範囲内で、ADR業務を行う場合は、現行法の下においても弁護士法第72条の適用は除外されておると考えます。更に、司法書士ADRを開設し運営していこうとする場合でありますが、ADR業務というものを認定司法書士に限定して実施することは、ADRの設置の趣旨から見てもあり得ないと考えられ、したがって、すべての司法書士が関与するに当たっての障害となる部分は極力排除されるべきであろうと考えるところであります。
なお、専門的知見の活用とは、代理という形式でしか実現できないものではなく、ときとして鑑定、補佐、あるいは参考人などとしての活用が適切と言える場合もあり得ます。
すなわち、専門的知見の活用という議論においては、専門家ごとの実績と経験からその役割分担を明確に区別して検討されるべきであると考えます。
ところで、認定司法書士は、一定の要件の下に法律事務を取り扱うことが可能とされています。このことから、ADR機関において法的知識の不十分さを補完する目的のために、弁護士の関与・助言を例示しておりますが、ADRの地域性や、提供するサービス内容も考慮に入れて、ADR業務に対する法的関与・助言の担い手を弁護士のみに限定することなく、認定司法書士の活用も視野に入れていただいて、「弁護士・司法書士」との規定方法などを御検討していただきたく、委員各位に格段の御配慮をお願い申し上げます。
さて、既に申し上げてまいりましたが、すべてのADR機関に対して、無制限にすべての法的効果等を付与すべきであるとは考えておりません。ADRに関する基本理念が、主体性の尊重、多様性の重視、信頼性の確保の3点を旨とすべきであるとして、検討が進められていることから、ADR機関に一定の法的効果などを付与するに当たっては、信頼性の確保の観点において、一定の適格性が求められるべきだと考えます。
そして、一定の適格性の確認方法の一つとして、事前確認方式を採用することについても、利用者である国民にとって明確な選択の基準となり得ることから、これを認めるべきであると考えております。
事前確認方式に対する御批判や、反対の御意見にも耳を傾けるべき重要な視点が多々存在していることを理解しておりますが、国民の立場で新たなADR制度を利用しようとする場合を考えますと、何よりも安心して利用できることは、一つの重要な要素であると思われます。
ところで、パブリックコメントにおいて、国の責務をいかに考えるべきかとの論点が示されておりました。ここでは、国が一部のADR機関、手続、手法や解決基準のみに対し、財政上の措置等の形で直接的支援を行うことについて、これを基本的施策とすることには、消極的であることが述べられておりました。この点について、若干、再度の御検討を賜わりたいと考えております。ADRを司法制度の一翼を担う紛争解決手段として定着させていくためには、継続的に一定規模の予算措置は欠かせないものと考えております。
個別のADR機関の運営費などは、当然開設者の責任において負担すべき性格のものと考えますが、ADR主宰者の教育訓練を目的としたソフトウエアの制作や、ADRの適切な手続運営に関する研修実施等、各ADR機関に共通して必要な最小限度の制度整備に関しては、一定範囲で補助金などの交付が検討されるべきであると考える次第です。
最後に、ADRの制度確立と利用促進のため、司法書士が果たすべき役割は非常に大きいものと私どもは考えております。また、アクションプランに示されているように、司法書士が独自にADRセンターを運営するのではなく、隣接法律専門職能と連携することによる、ワンストップサービスの提供についても研究し、実現に向けて努力してまいります。
委員の皆様方には、私どもの力を結集できるための仕組みを是非とも構築していただきたく、限られた時間の中で御苦労はいかばかりかとは想像いたしますが、どうかよろしくお願いいたします。
本日は、このような機会を与えていただき、本当にありがとうございました。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは続きまして、日本土地家屋調査士会連合会副会長の松岡さんからお願いいたします。
〔日本土地家屋調査士会連合会〕
○説明者(日本土地家屋調査士会連合会 松岡直武副会長)日本土地家屋調査士連合会副会長の松岡直武でございます。本日は、検討会におきまして意見を申し上げる機会を頂戴いたしましたことを厚く御礼申し上げます。
私は、昨年9月30日の第7回ADR検討会におけるヒアリングにおきまして、土地家屋調査士の専門性を活用したADRとして、土地の境界に関する紛争の解決に特化したADRを連合会及び各単位会の組織として設立することを長年研究してきたこと、また近く全国のいくつかの単位会で地域の弁護士会とタイアップして試行する予定であることを報告させていただきました。
その後、昨年10月に愛知県土地家屋調査士会が、名古屋弁護士会の御協力を得て、「あいち境界問題相談センター」を設立、本年3月には大阪土地家屋調査士会が大阪弁護士会の御協力を得て「境界問題相談センターおおさか」を、更に6月末には東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の御協力をいただきまして「東京土地家屋調査士会境界紛争解決センター」をそれぞれ設立し、運営を始めております。
本日は、せっかくの機会でありますので、民間型、私どもは職能型というふうに呼んでおりますが、そのADRとして試行運営を始めました境界問題相談センターを通じて感じておりますいくつかの点に絞って若干の意見を申し上げたいというふうに思います。
お手元に提出しております、本日のヒアリング用のペーパーはいくつか出させていただいておりますが、9月24日付267号となっている分をお手元にお願いしたいと思います。
2ページ目に土地家屋調査士会の設立したADRの概要を記してございます。
3ページ目、4ページ目が、現在運営しております愛知、大阪、東京の各センターの取り扱い状況でございます。
ちょっと修正いただきたいのですが、4ページの大阪会の表の中で不成立の件数の合計が0となっておりますが、合計の方は1件でございます。また、東京会の設立日が6月26日ですので、御修正をお願いしたいと思います。
さて、取り扱う紛争ですが、つい4日前の北海道十勝沖地震では、土地が84センチ水平移動したという観測結果が発表されております。阪神淡路大震災でも地殻変動によりまして、1メートルから、ところによりましては、5メートル以上も地表面が動いたということが報告されております。このように、不動であるはずの土地や、その境界も人為的、あるいは自然の営みや、時間の経過、土地利用の変遷によって、現地のどこが本来の正しい位置なのかわからなくなることがあります。
境界紛争の原因にはいろんな類型がございまして、中には地番境はそこではないことをよく知っていながら積極的に他人地を奪い取りに行ったという例もありましょうが、その多くは、もともと明治初期に創設されたと言われております。あるいはその後の分筆登記などによって創設され、登記された土地と土地の地番境が現地のどの位置なのかが不明だったということに端を発するというのが多いかと思います。
私どものADRでは、取り扱う紛争の対象分野を、先ほど申し上げましたいくつかある境界紛争の類型の中で、土地境界が不明だったことを原因とする紛争のみに限定して取り扱うこととして、境界は明々白々だけれども、構築物が越境しているのみとか、あるいは所有権の帰属のみを対象とする事案は扱わないというようにしています。これらは弁護士会の紛争処理センター等に回付してございます。
次に、相談手続の重視とADR基本法制における位置づけについて申し上げたいと思います。私どものADRを考えてみますと、境界紛争は多くの場合は、当事者本人においてさえ、紛争性の有無というのが不明の場合も多くて、第1次相談とも言うべき受付相談によって、担当者による疑問点の整理とか、思い違い、あるいは誤解の可能性などが指摘されて、疑問を解消することによって、本格的な紛争に至ることなく解決となることも多いことを、私ども日常業務を通じまして、経験則的に確信しております。
なるべくなら大声で争いたくない相隣者間の紛争であるという境界紛争の特殊性から、このように紛争の未然防止機能、あるいは予防司法的機能を果たし得るということもADRの重要な役割であるというように考え、本格的な調停に入る前の相談業務に力を入れており、調停を申し立てる前にまず、一方当事者、あるいは両当事者の相談として受け付けております。
先ほどの3ページ、4ページの表の中で、運営を始めて11か月の愛知センターでは、62件の受付のうち、実に55件が相談段階で解決しております。大阪センターは、設立以来7か月しか経過しておりませんが、既に93件の受付のうち、69件は相談段階で解決し、調停に回付されたものは24件というふうになっております。
ここでの相談というのは、単なる軽い意味の相談というより、当事者はいずれも何年も夜も眠れないほど深刻に思い悩んだ挙句の相談ですが、私どものセンターでは、聞き取りだけではなく、場合によっては資料や現地の調査も行いますが、その段階での解決率の高さというのは、手前みそではありますが、私どもの日ごろからの境界の立ち会いとか、確認の作業で培ってきたノウハウが生かされているものというように考えております。
ADR基本法制の整備に当たっては、是非相談手続の重要性を御斟酌賜わりまして、適用対象としていただきますようお願いを申し上げる次第でございます。
ところで、例えば、大阪の場合、調停の申立てを受け付けた20件のうち、実に9件が不調というようになっておりますが、すべて相手方が調停の呼び出しに応じないという事例です。ADRに関する基本法制が整備されていないという現状では、その利便性や、実効性あるいは信頼性などについての社会的な合意がいまだ不完全であると言えるかと思いますが、また利用しようとするものにとっても、利用する意義などが周知されていないと、こういったことが原因の一つではないかと考えています。
次に、他の専門資格者、あるいは資格者団体との連携に関しまして申し上げます。
土地家屋調査士会の試行するADRは、各地域の弁護士会に御協力をお願いしまして、土地家屋調査士と弁護士でチームを組んで運営、あるいは調停に当たっております。
現在のところ、この協働体制、共働きの協働ですが、この体制につきましては、土地家屋調査士の持つ紛争分野における専門能力及び争点整理のための事実関係の調査、あるいは鑑定能力と、また弁護士の紛争解決に必要な法的知識、あるいは説得能力が相乗効果をもたらして、解決に要する時間の短縮、あるいは専門的な知見の活用による適切な解決が図られ、相談者におかれましても、弁護士と土地家屋調査士の両資格者が担当しているADRであるということの安心感、また、組織同士の連携による協働体制を採っているということから、担当する弁護士、土地家屋調査士双方とも、ある種の特別の使命感のようなものを持って対応しているということが感じられます。課題も当然ございますが、それにつきましては、以後申し上げます。
まず、トレーニングの継続等についてでございますが、私どもは専門資格者として、あるいは職能として専門分野における知見については、日常業務をとおして十分であり、争点整理に必要な事実の把握、あるいは境界鑑定等についても特別な研修を長年実施してきたところですが、ただいまでは紛争解決に必要な周辺法律知識、あるいは法的な思考センス、また調停能力等についても各会とも精力的、かつ計画的に研修を行っております。
国等におきましては、ADRの充実、発展の基盤である担い手を養成するための研修に必要な経費の一部、あるいは全部を援助いただくような施策、また紛争解決に必要な一般的事項についてのトレーニングセンターのような施設の設置を希望するところです。
その他の論点についての意見を申し上げます。論点の29から34に関係することですが、専門家の活用について申し上げます。紛争解決のためには、それを求める国民が結果として二次被害を被ることのないよう、第一義的には法律各般にわたる専門教育を受け、紛争解決手法に関する十分な訓練と経験を経た弁護士、また先ほどお話がありました司法書士も入ってくるかもしれませんが、それが関与することが望ましいというように考えます。
さっきも述べましたように、土地家屋調査士会の主宰するADR機関である境界問題相談センターにおきましては、弁護士との協働、共働きを否定するものではなくて、むしろ積極的に地域の弁護士会に協力を要請し、それぞれの専門性を相互補完することによる国民への利便性の確保と迅速な解決を目指して図っております。
しかし、すべての場合に弁護士の関与が必要としますと、弁護士の会員数の少ない地域では、弁護士に過度な負担を強いることになることから、事実上、ADRを設置することができないということになりまして、結果として国民の利便性が損なわれることになるかと考えます。そこで、一定の適格性を有すると認められるADR機関にありましては、弁護士の関与を義務づけるということから開放することによって、弁護士にとっても業務の過度な負担を軽減することにつなげることができるかと考えます。
したがって、主宰業務、相談業務、代理業務ともに一定の範囲内の紛争、それぞれの専門職能の専門分野である一定の範囲内の紛争につきましては、隣接法律専門職種の公的資格者のように専門分野についての専門的知識を備えており、資格法あるいは会則等によって品位の保持、また公正な業務の取り扱いなどが義務づけられ、研修等についてもその担保措置が講じられているものが、当該専門分野に関することを内容とするADRの主宰業務、相談業務、代理業務を行うことができることについて、個別法令上に規定を設けてその道を開いていただきたいというように考える次第です。
国の責務、あるいは地方公共団体の責務、これは論点の6、7に該当するところですが、それについて申し上げます。ADRの分野によりましては、当事者の申立ての争点を整理するために一定の調査や、あるいは鑑定を必要としたり、行政機関からの事情聴取等が必要な場合も考えられますが、そういった場合に、国の機関及び地方公共団体などの公的機関が積極的に協力するようなADR制度への理解、それから対応の統一とともに、官公署が対応するのに必要な予算面の措置を要望したいというように考えます。
また、論点27に関してでございますが、特に境界紛争解決のためには、隣接地の所有者や、公共用地の道路等の管理者に現地での立ち会い確認を求めるなどが必要な場合が多くございます。
ADRによる解決の実効性を確保する視点から、ADRによる審理のための証拠調べ等への裁判所の関与、または協力についての制度を創設していただくことについては、これを強く要望するところです。また、調整型手続の過程で得られた情報の利用につきましては、両当事者が応諾した場合、これは当然でございましょうが、また、調停の過程で争点整理の必要などのために、専門家に委託して得た事実等に関する調査や鑑定の結果については、後続の裁断型による解決の迅速性、それから費用負担の軽減を図ると、こういった視点からもできるだけ活用されることが望ましいというふうに考えます。
最後に、個別の資格法と関連法令への位置づけについて申し上げます。国家資格者等の資格法では、業として行う事務の内容、あるいは会の設立目的、または事業の内容、予算の使途等について明確に規定されておりまして、資格法上個別に明記されていない事業や業務については、資格者個人として、または資格者団体として行うことに疑義が生じるというようなおそれもあるかと思います。
ADRの充実のためには、制度基盤がしっかりしており、組織として、または資格者として専門分野の能力担保、あるいは業務取り扱いの指針として、公正さや透明性が確保されている国家資格者及びその団体を活用することは不可欠であると、こういうように考えるときに、各資格法が持つ制約の面からも、これらの資格者団体がADR機関を設置することができること、一定の範囲において資格者はADRを主宰すること、代理人となること、相談手続を行うことができることについて明確にする必要があるというふうに考えます。
以上、短い時間の中で意を尽くすことができませんでしたが、私どもの試行するADRが抱えております課題等の一端を申し上げました。今後の検討会での御検討の中での参考にしていただくことができますれば幸いでございます。
どうもありがとうございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは続きまして、日本税理士会連合会の坂田さんにお願いいたします。
〔日本税理士会連合会〕
○説明者(日本税理士会連合会 坂田純一専務理事)本日は、総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリングに、日本税理士会連合会に意見を述べる機会を与えていただきまして心より感謝申し上げます。また、これまでの先生方の御活動に敬意を表します。
初めに、整備に関する基本的考え方について述べさせていただきたいと思います。当会は、平成14年3月19日に閣議決定されました「司法制度改革推進計画」の「国民の期待に応える司法制度の構築」における「ADRの拡充・活性化」に記載されております趣旨を踏まえ、国民にとって利用しやすいADRの基盤整備の一環として、税理士がその専門的知見を生かしつつ、ADR主宰業務の一翼を担うことは、職業専門家たる税理士に課せられた社会的役割の一つであると認識しているところであります。
したがいまして、税理士の本来業務として関わる官対民の間の紛争、例えば、租税行政処分に関する紛争等に限らず、民対民の間における紛争の解決に当たっても、国民の利便性のために税理士の職能を生かしていただけるとするならば、総合的なADRの制度基盤整備において、所要の立法措置を講じていただきますように、ADR検討会において格段の御配慮をお願いしたいと思っております。
総合的なADR制度基盤の整備の方向性について述べさせていただきたいと思います。
一般的にADRは、裁判手続によらないで行う紛争解決システムとも言われておりまして、民事調停、家事調停、訴訟上の和解、仲裁、行政機関、民間機関による和解のあっせん等を指すものと言われております。
当会は、今般の整備がADRのすべての分野を対象とするのか、または限定的な分野を対象とするのか等が明確にされ、より具体的な方向が示された段階で税理士がどのように関わっていくべきかについては、更に前向きに検討していきたいと考えておるところであります。
例えば、税理士が納税者の代理人として関わる租税に関する紛争は、主として納税者が租税行政処分を受けたことにより生ずる紛争ですが、既にこの分野おけるADRとしては、行政型ADRとして位置づけられる国税不服審判所が機能しており、法制度としても定着しているところであります。したがって、このような法制度として定着している既存のADRを、仮にその在り方等について所要の改善を講じる必要があるとしても、今般の総合的なADRの制度基盤の整備の一環として制度改変を行うということであれば、なお十分な検討が必要であると思っております。
税理士がADRに関する場合の基本的な考え方を、具体的に述べさせていただきたいと思います。税理士は本来業務であります税務・会計はもとより、経営全般に関わる相談業務等を日常的に行っており、こうした業務を通じて、依頼者である中小会社経営者や個人事業者等との信頼関係も強く、様々な紛争の実態については理解し得ることが可能な職業専門家であると言えます。
もとより、社会において発生するあらゆる紛争、例えば債権及び債務の履行を巡る紛争、遺産分割における相続人間の紛争、離婚に伴う財産分与を巡る紛争、企業内における役員間・労使間の紛争、土地・建物の賃借上の紛争、損害賠償に伴う紛争等については、紛争解決の段階において所得税法・法人税法・相続税法・消費税法等に基づき租税を負担しなければならない場合も多く見られるところであります。
したがって、このような紛争解決に当たって、税理士の専門的知識や経験を生かすことは、国民の権利保護と利便性に適うものであると考えます。ただし、本会は、税理士が税務に関する専門家としての専門的知見及び日常的に行っている業務を通じた経験は有しているものの、必ずしも紛争解決に関する法律全般の知識、技術に習熟しているとは言えないことから考えまして、単独でADR主宰者になること及びADR代理業務を行うことは適切ではないのではないかとも考えているところでございます。これらのことに鑑み、総合的なADR制度基盤の法整備に当たりましては、税理士が弁護士と共同してADR主宰者等になることができるよう措置すべきではないかと思っております。
弁護士法第72条との関係について申し述べたいと思います。ADR主宰業務に関する事項については、弁護士ではない者が安定的に報酬を得る目的でADR主宰業務を行うためには、ADRに関する基本法上に弁護士法第72条の適用に関する特例規定が設けられなければならないと考えております。この場合、弁護士法第72条の趣旨目的を損なわない範囲で、ADR主宰者の専門的知見を活用すべきであるという要請から、一定範囲の専門的知見を有する者に対して、弁護士の関与・助言を前提としたADR主宰業務を認める制度として構築すべきではないかと思います。
こうした措置が図られることによりまして、税理士が弁護士と共同してADR主宰者となり、様々な紛争の解決に当たって、より専門的知見を生かすことが可能となり、国民の利便性に資することになるのではないかと思っております。
したがって、民対民の間の紛争を対象として弁護士の関与・助言を得ることなく、ADR主宰業務を税理士業務として単独で行うようにできるよう、例えば税理士法上に個別の規定を設けようとする考え方につきましては、私ども税理士の使命、税理士法第1条の「税理士は税務に関する専門家として独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に沿って、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」という規定と整合しないと考えられることから採用すべきではないと考えております。
相談業務に関しては、一定範囲の専門的知見を有する者に対してADR主宰業務を認める場合には、併せて一定範囲の相談業務を行うことができるように当然すべきであり、この場合も、先ほどのように、弁護士法第72条の適用に関する特例規定を設けるべきであると考えます。
ADRの代理業務に関しては、代理は主宰とは異なり、直接当事者の権利義務を作用するものでありますことから、主宰者よりも更に高度な法律分野の専門能力が必要とされると考えます。
基本的な考え方において申し述べましたように、税理士につきましては、税務に関する専門家としての専門的知見及び日常的に行っている業務を通じた経験は有しておりますものの、必ずしも紛争解決に関する法律分野の知識、技術に習熟しているとは言えないことから、ADR代理業務を行うことは適当でないということでございます。
また、ADR主宰業務と同様に、ADR代理業務を税理士業務として行うことができるよう税理士法上に、仮に個別の規定を設けようとする考え方は税理士の使命規定と整合しないので採用すべきではないと考えます。
最後に、税理士会における業務遂行過程での税理士会会員の紛争解決方法について申し述べさせていただきます。
全国15の税理士会は、去る平成14年4月1日に施行されました改正税理士法を受けまして、税理士会が会員の業務に関する紛議について、紛議調停規則及び紛議調停細則等を制定し、会員または当事者、その他の関係人の請求に基づき、紛議調停委員会において調停をすることとなりました。
なお、調停請求等に要する費用は、特段の定めに該当する場合を除き、原則として無料となっております。この紛議の調停に基づき成立した当事者間の合意は、民法上の和解としての効力を有するものとされているほか、調停手続等の記録は、規則等によりまして秘密保持のため非公開とされております。
このように、税理士会内部の機関における業務遂行過程での紛争解決方法は、調停を目的とした民間型ADRと言えるものだと思っております。創設され、間もない制度でありますが、取り扱い件数も増加しておりまして、更に国民納税者からの期待と信頼を高めるためにも、税理士会は、その健全な運営に努めていくこととしております。
本会は、仮に和解文書等について、民事執行制度に関する特例が設けられました場合、実施機関でございます15の税理士会と協議し、実施可能と判断できれば、適格性を有するための要件等が満たされるように、運営規則等を見直すことを検討したいと考えております。
以上、本日のヒアリングにおきまして、日本税理士会連合会としての意見を述べさせていただきました。
ありがとうございました。
〔質疑〕
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいま4つの団体の方々から御説明をいただきましたので、これに対しまして委員の方から何か御質問があれば、ちょうだいしたいと思います。
質疑は、今から20分ぐらい予定しておりますので、その間、どうぞ活発な質疑をお願いしたいと思います。どなたからでも結構でございます。
それでは、髙木委員どうぞ。
○髙木委員 税理士会連合会さんなのですけれども、法的効果の付与に対する問題全般に述べられてはおりませんで、72条の特例だけなのですが、事前確認についてのお考えをちょっと伺いたいと思います。72条の関係でも事前確認は不要ということでしょうか。
○説明者(日本税理士会連合会 坂田専務理事)事前確認制度もADR基本法の方で特例として何らかの形で措置されればと思っています。
○髙木委員 大体弁護士法72条の特例については、弁護士の関与・助言を得ることなく、単独で行えるようにできるシステムは、税理士法と合致しないから採用すべきではないとおっしゃっているのですけれども、一方で72条の例外を認めておられ、一定の例外を認めた場合、パブリックコメントで指摘されている事前確認の手続を経てという案に関する御意見がないように思ったので。
○説明者(日本税理士会連合会 坂田専務理事)私どもは、税理士法に個別の規定を設けるべきではないのではないかと思っております。ですから、ADR基本法等において弁護士法第72条の特例措置を設けた場合には、それはそれで弁護士と共同ということが基本ですが、それを適用していただければと思っております。
○髙木委員 ちょっとよくわかりません。
○青山座長 どちらの法律に規定するかということは技術的な問題ですので、そうではなくて、72条の適用の除外についてどういうふうにお考えになっているかという、そちらのところをお答えいただければありがたいのですが。
○説明者(日本税理士会連合会 坂田専務理事)当会では、事前確認についての検討はこれから深めていく段階ですので、私見を述べさせていただきますが、税理士は資格付与の段階で既に専門家としての認定は受けておりますので、ADR主宰者または相談者としての適格性認定のための事前確認は不要であると考えております。また、税理士が関わるべきADRの範囲の認定について事前確認が必要であるとしても、必ずしも行政機関による事前確認でなくてもよいのではないか、例えば、日本税理士会連合会が認定するという方法も考えられるのではないかと思います。
○青山座長 詳しいことは、また個別的にお問い合わせするということもあり得ると思いますので、時間の関係もありますので、他の方でもしよかったらどうぞ。
廣田委員どうぞ。
○廣田委員 日本司法書士会連合会に2点と、それから日本税理士会連合会に1点質問があります。まず、日本司法書士連合会の方に質問したいのですけれども、1点は一定の適格性と言われましたが、それは具体的にどういうような一定の適格性を想定されているのかでしょうか。適格性の内容です。それが1点です。
もう一つ、先ほど認定司法書士に限定するという趣旨の御意見でしたけれども、そういうことをずっとおっしゃっていましたね。その認定というのは、簡易裁判所における訴訟手続ができるということを中心にできている制度だと思いますが、それとADRで要請される能力とは別のものではないかと思うのですけれども、それをなぜ認定して司法書士というものにウェートを置いてお考えになるのかということです。その2点です。
それから日本税理士会連合会の方にお伺いしますけれども、例えば、代理業務が要らないというか、ADRに関して代理業務というのは適当でないというふうにお考えになっていらっしゃいますけれども、私の知る限りでは、遺産分割の際なんかに、遺産分割の協議書の作成についてアドバイスをしたり、原案を作っている税理士の先生はいらっしゃると思うのです。また、ほとんど税務上のことが決め手になるようなことがあって、税理士さえ、ちょっと付いて来てくだされば話がつきそうだというときに、クライアントからちょっと付いて来てくださいというようなニーズもあると思うのです。そういうことを想定した場合でも、ADRに関する代理業務は必要ではないというふうにお考えになるのかどうか、その1点です。
○青山座長 それでは、司法書士会連合会の中村さん、日本土地家屋調査士会連合会の松岡さん、日本税理士会連合会の坂田さんの順にお願いいたします。
○説明者(日本司法書士会連合会 中村邦夫会長)それでは、最初の一定の適格性といったことについて、具体的にという御質問の趣旨だと理解しました。具体的にどこまでどうこうということは、今、申し上げるまでも行きませんけれども、ただ組織とか、人材、能力の質、提供の安定性、情報公開、あるいは財務状態と申しましょうか、そういったものがADR機関の一定の適格性を判断する基準になると今は考えております。
それと認定司法書士の問題について御質問がございました。確かに御指摘のとおり、認定司法書士というのは、簡易裁判所における訴訟代理権が行使できるということでございますが、それ以外にも、例えば裁判外の和解の交渉権であるとか、あるいは法律に関する相談を受けること、勿論、これは簡裁の事物管轄の限度内という制限がございますけれども、そういう権限がございます。私は先ほど認定司法書士については、その範囲内においては相談を受けることなどもあるので、それはそのまま使うことができるのではないかという趣旨で申し上げたわけでございます。ですから、その範囲を超える部分につきましては、これは認定司法書士でない司法書士と全く同じような問題に帰着してくるだろうというふうには考えております。
○説明者(日本税理士会連合会 坂田純一専務理事)代理業務のお話をさせていただきましたのは、前提としてADRの法整備の範囲を言っており、紛争解決の手段ということで考えるならば、これは弁護士と共同して行うべきであると考えています。当然に、日常的な業務の中で、例えば今の事例のように、相続事案における遺産分割協議については、紛争ということではなくて、私どもの税理士業務の一環として指導、または助言をするという本来的業務のうちの一つのサービスであると考えておりますので、紛争解決の段階に至った場合は、それは弁護士と共同して行なうべきであると思います。
○青山座長 廣田委員よろしゅうございますか。
○廣田委員 はい。
○青山座長 それでは、原委員どうぞ。
○原委員 それぞれ抱えていらっしゃる案件がそれぞれに違うので、ちょっとどのように質問したらいいかというふうに思うのですが、まず、1つの点について、日本行政書士会連合会と日本司法書士会連合会にお願いしたいのですが、執行力の付与については、両方とも執行力の付与が必要であるという御見解を出されていますけれども、それぞれ御自分たちがADR機関を主宰なさるということであれば、1つの選択肢としてそういうものがあってもいいのではないかというふうにお考えになるかと思いますが、例えば基本法の中に盛り込むとなると、及ぼす範囲が大変広がってくるというふうに思っていて、BtoCのような力の格差があるものが当事者同士になる場合、少し慎重に考えるべきではないかというのが、この検討会でも随分意見としては出されたのですけれども、その辺りについての議論はそれぞれの団体の中でどのようになされたのかというのがあります。
また、日本司法書士会連合会にお尋ねしたいのですが、今、廣田委員から出ました一定の適格性の話は、私も質問しようと思っていましたら、質問も出て御回答があったところですが、その中で、要件ということはわかったのですが、その要件そのものについて、こちらのパブリックコメントを募集したときに、事前確認方式まで一緒に提示していたわけですけれども、そのこと自体については、要件を満たす方式について、事前確認方式を採るべきなのか、それともまた違うことを考えるべきなのかということについて、どうお考えになっているかということをお聞きしたいというふうに思います。
それから、もう一つ、日本行政書士会連合会と日本税理士会連合会にお聞きしたいのですが、パブリックコメントでは特に求めてはいなかったのですが、日本土地家屋調査士会連合会さんからもご説明にありましたが、当事者が調停のテーブルに着かない、当事者同士がテーブルに着かないから話がスタートしないというようなことはPLセンターなんかでもよく聞かれることなのですけれども、執行力の付与にしても時効中断にしても、ともかく議論がスタートしなければ、話合いがスタートしなければ、最後のところをいろいろ言っていても仕様がないのですが、呼出しに応じないとか、テーブルに着かないということについては、3団体ではどのような状況にあるのか参考のために聞かせていただけたらというふうに思います。
○青山座長 それでは、日本行政書士会連合会に対する質問が1つ、それから日本司法書士会連合会に対する質問が2つあります。それから、3団体にそれぞれ1つずつありますので、その順序でお願いいたします。
○説明者(日本行政書士会連合会 畑光専務理事)それでは申し上げます。執行力の付与につきましては、私どもの検討の中では、単にADRに出された中で、債権執行みたいなことであれば、執行力がなくても、公証役場に飛び込んで、公正証書にするという方法はあるのですが、実は、私どもの仕事の中で、外国人との婚姻とか、離婚とか、入管絡みの話があって、離婚するといった話がありますが、例えば相手方が所在不明であれば家庭裁判所でやりませんので、いきなり裁判所で離婚訴訟を起こさなければなりませんが、その手前で解決してほしいという相談が随分あります。
そのときに、例えば、子ども、要するに親権を実行するために、今の場合は両方いる場合ですが、例えばフィリピンの女性が日本の男性と離婚したい、ただし、子どもは自分で育てたいといったような家事審判事件に関わる問題について、債権の場合は今言ったような公証役場に持っていって執行力を取ることはできますけれども、そういう家事審判、親の権利はどうなのですか、子どもをどうやって引き取るかといったようなことで揉めるのですね。その時に、私は冒頭申し上げたように、お金があればいくら訴訟で親の権利を取り合うとか、どっちが扶養するか、子どもをどう引き取るかという権利、これはなかなかお金がない事件がいっぱいまいりまして、タイの女性と日本男性とか、フィリピンの女性と日本男性とか、いろいろコンビネーションは違う場合もありますけれども、そういう場合に、何とか裁判外紛争のところで両方呼んで話をつけてあげる。そのときに、執行力というか、こういう権利がないと妻が引き取ります、だけど日本人の男性は妻から扶養料を逆に、自分が取るから妻が働いて俺に持って来いとか、いろいろ無理難題を言うケースもあったりして、これをどうやって解決してあげるかという話が随分多いわけです。
今、ほかの団体でもいろいろありましたが、例えば、この間私は鹿児島に行って奄美大島に行きまして奄美には弁護士が1人もおりません。そういうところで、いろいろこういう紛争が起きる。それから、債権の問題もそうですけれども必ず弁護士とタイアップしてというと、結局は鹿児島に行くしか方法はないわけで、しかも金額が何百万というなら別ですけれども、50万とか、40万ぐらいの債権の取り立てとか、いろいろあるのですけれども、そういう事件について裁判所は一々やらない、事前で読んで撥ねつけるといったようなうんと小額な話、でも日常の紛争で非常に深刻な紛争を起こしています。
札幌へ行ってきましたが、そういう問題がありますので、何としてもこういう問題が決着付いた時に、それは何らかの制限が必要かもしれませんけれども、一応、執行力みたいなのを付けてあげないと、単にお金の取り立てだけではない事件等につきましても、是非必要ではないかという議論を我々はしたところです。
○青山座長 それでは中村先生どうぞ。
○説明者(日本司法書士会連合会 中村邦夫会長)2つ御質問をいただきましたが、1つは執行力の付与についてということでございました。
確かに、私どもは執行力を付与する場合は、非常に限定的かつ厳格に適用が検討されるべきだというふうに思っております。
ADRといったものが、いわゆる裁断型、あるいは調整型にしろ、いずれにしてもADRという機関に一定の執行力を与えるということになりますと、相当厳しくそれを扱うべきだというふうに思っておるところであります。
具体的にどういう方法があるかということですが、これはこの場面に該当するかどうか、ちょっと判断がつかないところはありますけれども、例えば、執行開始に当たっては、執行裁判所によって、執行決定を必ず要するというような手続を前もって入れることも内部では考えておりました。
2つ目の質問でございますが、事前確認方式についてどうかと、こういう御質問だったと思います。先ほど1点、適格性の内容として、いくつかの基準といったものを申し上げさせていただきました。私は、事前確認方式をそのような基準を前提にしながら採用すべきだというふうに思っております。
なぜかと申しますと、利用者である国民の側から見まして、明確な選択の基準となることを考えますと、やはり事前確認方式を採用すべきだというふうに考えております。
○青山座長 最後の質問はどこの団体から聞けばよろしいですか。
○原委員 3団体ですね、土地家屋調査士会以外の方から。
○青山座長 それではお願いします。
○説明者(日本行政書士会連合会 畑光理事)行政書士会から申しますと、呼びかけても来ないというのは、自主的な合意がないわけですから、ADRに馴染まないと思っておりまして、これは裁判なり何なり別の方式でADR外で解決するしかないのではないかと。
○原委員 それは結構多いですか。
○説明者(日本行政書士会連合会 畑光理事)今のところはケースはそんなにないと思います。
○説明者(日本司法書士会連合会 中村邦夫会長)すみません。3つ目の質問をもう一度お願いします。
○原委員 呼びかけても当事者同士がテーブルに着かないということが、どれぐらい起きていますかというか、土地家屋調査士の方は、調停の呼び出しに応じないというところ、テーブルに着かないというところが一番大変ですというふうにおっしゃられたので。
○説明者(日本司法書士会連合会 中村邦夫会長)わかりました。どうもありがとうございました。任意的な団体でADRをやっているところでどういう結果が出ているかということになるかと思いますけれども、ただ細かい数字は申し訳ございませんが、今ここでは把握しておりません。
○説明者(日本税理士会連合会 坂田純一専務理事)私どもの場合、紛議の調停になりますが、始まったばかりで1年半を経過したところです。
私どもは納税者からの訴え、国民からの訴えを重視しておりますので、テーブルに着かないというのは税理士側の理由になるわけです。
したがいまして、テーブルに着かない税理士については、会則上の処分をするという規定になっておりますので、テーブルに着かないということはありません。それから、税理士が納税者を仮に訴えるというようなことは想定はされますが、これまでのところ事案はございません。税理士対税理士の場合は、出てこなければやはり会則上の処分がありますので、今のところテーブルに着かないという事例はないということになります。
○青山座長 どうもありがとうございました。まだ、質問をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますけれども、時間でございますので、この辺りで質疑は終了させていただきたいと思います。
今日は4人の方に、大変お忙しいところ御出席いただきまして、どうもありがとうございました。
(日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会説明者退席)
○青山座長 それでは、引き続きヒアリングを行わせていただきます。次に御説明いただく3団体の皆様を御紹介申し上げます。まず、全国社会保険労務士会連合会の会長の大槻哲也さんでいらっしゃいます。次に、日本弁理士会ADR推進機構副委員長の村山信義さんでいらっしゃいます。社団法人日本不動産鑑定協会副会長の清水文雄さんでいらっしゃいます。お三方には、今日は大変お忙しい中をわざわざ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、先ほども申しましたけれども、お一人の御説明は15分ということで、その範囲内でどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最初に全国社会保険労務士会連合会の大槻さんからお願いいたします。
〔全国社会保険労務士会連合会〕
○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻哲也会長)私は、全国社会保険労務士会連合会会長の大槻でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。このたび、第22回ADR検討会のヒアリングにおいて意見を述べる機会を与えていただきましたことに心から感謝を申し上げます。また、当検討会の中間的とりまとめに対しまして敬意を表し、基本的に賛同いたします。
本日資料といたしまして、A4版の横長のものと縦長のものとがございますが、詳しくは縦長の別紙に記載させていただいております。説明は横長のものをもって説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
さて、私ども全国社会保険労務士会連合会は、これまでにも個別労働紛争の解決のための和解や代理権を社会保険労務士に付与されること、それによって個別労働紛争に係る分野において、ADRの主宰者または代理者になることを強く要望してきたところであります。
これに関しましては、昨年の社会保険労務士法の改正で、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく紛争調整委員会における、あっせん代理の業務が社会保険労務士の業務に加えられ、ADR業務の一部を行うこととなりました。連合会ではこれがADR業務への参入の一歩であると考えているところです。
それでは中間的とりまとめで指摘されている論点を念頭に置いて意見を申し上げます。まず初めに司法制度改革審議会意見書についてですが、この意見書では社会に生起する様々な紛争について、簡易、迅速、廉価な解決を図る上で、非法曹の隣接法律専門職種等の専門家の知見を活用したADRの拡充・活性化について明言されているところです。個別労働紛争の解決のためのADRを担うことは、正しく社会保険労務士が日常の業務を通して職域上の使命とその役割を果たす立場にあると考えております。
そこで社会保険労務士が個別労働紛争関係のADRの担い手になり得ることを、ADR基本法で明確に位置付けていただきたいのです。
次にADRの担い手としての実績と能力について申し上げます。
前回、つまり昨年9月の当検討会におけるヒアリングでも申し上げておりますが、社会保険労務士は、人事労務管理等の豊富な知識と実務経験を有し、労働問題全般にわたり、とりわけ中小零細企業の労使関係等については、日常の業務を通じて紛争が生じた場合でも、相談、指導によって解決に努めているところです。
守秘義務との関係で、具体的な事案の実態や実績の数字を表わすことはなかなか難しいですが、例えば、一家の大黒柱が病で倒れ、長期療養のため休業した。その間、健康保険法から傷病手当金、概ね月額賃金の6割の給付を受けることになった。これではローンの返済もままならない。したがって、会社、つまり事業主が差額の4割を支払うことを約束したが、結果的には傷病手当金が6割引く4割、イコール2割の支給となるため、会社は差額の支払いをやめることにしたためトラブルとなった。
結論としては、労使共に円満な解決に至らしているといった事例を多く扱っております。
次にADRにおける代理業務について申し上げます。これについては、論点33で指摘されているところですが、法律分野について高度の専門能力を有する者と評価できる専門職種を対象に個別的な検討を行った上で、ADR代理業務を各職種の業務として行うことができるよう、個別法令上に規定を設けて整理することが述べられています。
そこで、個別労働紛争の解決に関しては、労働基準法といった労働法や人事労務管理の知識、経験が豊富であり、代理人のニーズも多くある社会保険労務士を明示するなど法整備をし、社会保険労務士が代理人としての業務を行うように明確に定めていただきたいのです。
また、論点34で述べられているところのADR代理を受任した事件について、ADR代理業務に付随したADR外での相対交渉が行えるようにすることを法整備し、具体的な受任契約の締結前であっても、依頼者の相談に応じて相対交渉が行えるようにしていただきたいのです。
次に、全国的なサービス提供の可能性については、全国47都道府県に約二万七千人の社会保険労務士がおります。現時点において人を雇用する事業所があるところには、大体、社会保険労務士が所在しております。
また、サービスの一環として、都道府県社会保険労務士会に総合労働相談所を設置し、すべての都道府県で個別労働紛争について無料で相談に応じるサービスを展開していますが、都市部に限らず、全国的に相談件数も多く、この1年間で約千五百件となってきています。
社会保険労務士は、これまでも広くADRの実績を積んできているところですが、論点5で指摘されている相談手続については、今後、ADR基本法によって、相談手続の基本理念が明らかにされれば、その理念に沿った総合労働相談所として相談を行っていきたいと考えています。
次に専門的能力の向上について申し上げます。論点12で指摘されているとおり、ADRの担い手が紛争解決に係る専門的能力の修得に努めなければならないのは当然のことであり、ADRの担い手の横断的な研修は必要であろうし、このことをADR基本法に定めることも考えていただきたいと思います。
なお、連合会ではADRに関しては、司法制度改革審議会の意見書で隣接法律専門職種の専門的知見を生かしたADR導入という方向が示されたことを契機に、ADRに関する基本的に必要な研修を既に各都道府県会で実施しているところです。
また、連合会としては司法研修として基本的知識を修得するための研修を全国的に行い、約五千人の社会保険労務士が受講いたしました。更にこれら受講した五千人を対象にADRの実践面で必要とする実務的な研修を行うことを平成15年度の事業計画に組み込み、予算措置を講じておるところでございます。
次に、弁護士法第72条の特例等について意見を申し上げます。まず、特例的事項の7に専門家の活用が、また弁護士法72条の特例に関しては、論点29に述べられているところですが、ADR基本法が制定される際には、専門家の専門的知見を活用して、ADRの健全な発展を図っていく上で、その基本的方向を明示して、弁護士法第72条の特例を定める必要があると思います。
そこで、労働及び労働社会保険諸法令に係る分野でのADRを担う専門家として、社会保険労務士を明示するなど法整備をしていただきたいのです。
なお、社会保険労務士が担うADR関係の業務の具体的な内容、すなわち社会保険労務士が個別労働紛争に関する和解、代理を行うことができる旨は、個別法令いわゆる社会保険労務士法に規定を設ける必要があると考えております。
また、論点30に述べられている弁護士の関与・助言については、社会保険労務士の場合、既に日常業務において高度な法律問題については、弁護士さんの助言を求めていることも多く、一方で労務管理や医療保険、公的年金、雇用・労災保険などに関して、弁護士さんに知識や情報を提供していることも少なくないのです。
したがって、ADR業務を行う場合、必要に応じて弁護士の関与・助言を求めることがあるのは当然のことだと思います。
他方で、社会保険労務士は、労使関係団体との連携の下で、助言、指導を仰ぐ業務も数々あることを申し添えておきます。
最後に、時効の中断についてですが、時効の中断に関しては特例規定を設けるべきであると考えています。個別労働紛争には、賃金や解雇等を巡る紛争が多く、例えば賃金債権の時効は2年と短く、特に時効の中断が必要であると思います。
また、個々の社会保険労務士が和解を行う場合に、時効の中断を認める必要はありませんが、社会保険労務士に和解の権限が認められ、その権限を基に、例えば、総合労働相談所が改組され、個別労働紛争調整センターといったADR機関が設置されて、ADR基本法により明確な手続が定められ、適格性を認められたような場合には、時効の中断を認めるべきであると考えます。
時効の中断の方法は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第16条と同じ方法でよいと考えているところです。
繰り返すようですが、社会保険労務士は自らの法律に規定されている業務の範囲においてADRに参入し、具体的には事業主、従業員等労働者、その家族の人たちのために役立っていくことを、ここに声高らかに宣言して法整備の御検討を要望して終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、日本弁理士会の村山さんお願いします。
〔日本弁理士会〕
○説明者(日本弁理士会ADR推進機構 村山信義副委員長)日本弁理士会のADR推進機構の村山と申します。
本日はこのヒアリングにおきまして、日本弁理士会として意見を申し出る機会を与えてくださいましてありがとうございます。日本弁理士会では、私が所属しておりますADR推進機構を設置いたしまして、ADRの拡充・活性化を目指しているところであります。
また、日弁連と協働で、日本知的財産仲裁センターを設置し、また国際商事仲裁協会におきましては、代理人としても関与しております。
しかしながら、代理人及び知財仲裁センターへの関与の年数が比較的少ないために、馴染みが薄いこともありまして、取り扱い件数は多いとは言えません。しかしながら、ADRの法制度が十分に整備されていないことが、その問題の一つとしても考えております。
ところで、本来、知的財産の紛争はADRになじみやすい分野であると考えております。これは企業同士の紛争が多いこと、予めある程度紛争内容が予想されていること。それからそもそも権利を取得する段階で、紛争、すなわち権利行使を予定しているような分野であること。この点は、一般的な財産権とはかなり異なる側面があるものと考えております。
したがって、当事者の合意を基礎とするADRには、本来、知的財産紛争は馴染みやすいと考えております。
一方、民事訴訟法や特許法等の近時の改正によって、知的財産権に関する訴訟も様々な点で改善が進められておるものと考えております。したがって、知的財産のADRに関しても、より一層使いやすい制度へと変わることを望みます。
本検討会におきましては、ADRの拡充・活性化の積極的な推進がなされることを望みます。本日、弁理士会としては、ここでは特にとりまとめの論点29から論点34に関して述べさせていただきたいと思います。
十分に機能しているとは言えないADRの現状と、今後のADRの拡充・活性化を照らし合わせると、今後のADR業務においては、弁護士法第72条によって担保される法的知識もさることながら、紛争分野に関する専門的知見、それから調整能力や調停技術等の紛争解決に関する専門的知見の活用をより一層重視するべきではないかと考えております。
論点29から論点34につきましては、ADR主宰業務、代理業務など、ADRに関する活動に関して、主に弁護士法第72条の適用についての特例規定を設けるか否かに関する事項でありますけれども、これらについては、まず弁護士法第72条の特例規定を設けることに賛成いたします。
弁理士会の基本的な考え方としましては、知的財産基本法や政府の知的財産推進計画に見られるように、今後の我が国の産業、経済の再生と活性化のためには、知的財産権をより一層重視すべきと考えております。
末尾の表も併せて御参考にしていただきたいと思いますけれども、本来、知的財産制度は、知的財産権の創造、技術開発、これに基づく知的財産の創出、それから保護、権利取得の過程、それから権利活用、ライセンス収入や、あるいは権利行使という各フェーズを循環的に繰り返すことによって、新たな知的財産を生み出す原動力をもたらす知的創造サイクルによって支えられるべきであります。
従来、この知的創造サイクルのうち、我が国においては、保護、権利取得の面のみが偏って重要視されてきたと言っても過言ではありませんが、今後我が国では、特に権利活用から創造、新たな技術開発、知的財産の創出へと結び付ける知的財産戦略が特に必要になるものと思われます。
したがって、知的財産権に関する紛争解決システムは、この知的創造サイクルの仕組みの中において理解する必要もあるものと考えます。
知的財産権に関する紛争解決は、この知的創造サイクルの仕組みの中において、取得された権利から生み出される原資を基に、さらなる技術開発を行い、新たな知的財産を創出するための手段の一つとしても考えられます。
よって、知的財産権に関する紛争解決システムについても、知的財産権の創造、保護、活用の循環の中における技術開発のための原資を生み出すために有効であるか、また更に有用であるかというような手段として機能するかという観点からも検討されるべきものと考えます。
ところで、近年の情報化の進展は、知的な情報が化体した知的創造物に係る商品等のライフサイクルを著しく短くする傾向にあります。したがって、ADRに限らず、知的財産権に関する紛争の迅速な解決が要請されております。
一方で、知的財産権分野においては、極めて高度、複雑な法的知識と、技術的専門性など当該紛争分野における高度な専門的知見も必要とされております。
したがって、これらの専門知識・知見における十分な理解なしには、妥当な紛争解決は勿論、迅速な紛争解決も望み難いものと思われます。
また、近年の、例えばドメインネーム、ビジネスモデル特許、遺伝子特許のように、従来の法的な枠組みの中では迅速に解決することの難しい先端的な領域における紛争の解決には、インターネット技術など専門分野における知見がなお一層必要とされるものと思われます。
このような知的財産権とその紛争解決の要請に対して、弁理士はその分野における法的知識を持つとともに、紛争分野における専門的知見を十分に有しているものと思われます。
また、これに加えて弁理士は、知的財産の創造、保護、活用という知的創造サイクル全体に関与し、特に生み出された知的創造物について、権利取得を図る、権利の生成過程とも言うべき過程に直接的に関与する唯一の専門家であります。
これは、具体的に申し上げると、例えば依頼人から具体的な製品に関する発明を持ち込まれたときには、そこから更に上位概念の発明、あるいは関連する製造方法の発明や、取り扱いを行うための発明等、発明を広く深くとらえて、具体的に発明の外延を確定して、それを更に技術的な意義において裏付けをして、そして初めて保護されるべき発明の範囲が特許の審査手続と協働して確定することになります。このような点でも一般的な財産権とは異なる側面があるのではないかと考えます。更に、そのような出願のうちのほぼ9割程度が弁理士によって代理されている事実があります。
このため、知的財産権に関しては、弁理士は依頼人、それから権利そのものに極めて密な関係を有するため、弁理士はADRについても積極的に関与することを要望されるような具体的状況が多々存在するものと思われます。具体的な論点については、以下のように考えます。
まず、論点29については、弁護士法第72条の適用について特例規定を設けるとの意見に賛成いたします。現状のADRを前提として考えると、今後のADR主宰業務においては、弁護士法第72条によって担保される法的知識よりも、紛争分野における専門的知見、それから紛争解決における専門的知見の活用をより一層重視していくべきであると考えます。したがって、専門家が弁護士法72条に違反しないで行うことのできる主宰業務の範囲をあらかじめ明確にしておくことが望ましいのではないかと考えます。
論点30については、法律分野について高度の専門能力を有するものと評価できる一定の隣接法律専門職種等の公的資格制度のある職種等については、弁護士の関与・助言を得ることなく、ADR主宰業務を業務として行うことができるように、個別法令上に規定を設けることを前提とする、との意見に賛成いたします。
先ほど述べたような一定の隣接法律専門職種等につきましては、場合によっては具体的状況によって、弁護士の関与・助言を得ることなく、ADRを主宰できるものとするべき具体的状況があるのではないかと考えます。
例えば、弁理士に関して言えば、特許権の有効性判断等についてであります。
論点31につきましては、一定の不適格者は、ADR主宰業務を行うことができないような仕組みを設ける、との意見に賛成いたします。
反社会性が認めれるものの介入を排除すべきようなルールは設けられるべきであると考えています。
論点32につきましては、相談業務に関しても、弁護士法第72条の特例を設けるとの意見に賛成いたします。ADR主宰業務に付随して行われる可能性の高い相談業務においても、専門的知見を活用すべきであると考えます。ADR主宰業務に付随して相談業務を行う必要があるにもかかわらず、相談業務について特例が認められない場合であれば、ADR主宰業務の円滑な手続の遂行が妨げられる場合があるのではないかと危惧しております。
論点33については、法律分野についての高度な専門能力を有するものと評価できる専門職種を対象に、ADRの代理業務についても個別法令上に弁護士法第72条の特例規定を設けることを前提とする、との意見に賛成いたします。
先ほど述べましたように、特に知的財産権に関しては、特殊な事情がございます。とりまとめの中には、論点33に関しましては、具体的なニーズを探るべきというような下りがあったと思いますけれども、殊に知的財産権に関しては、このニーズは十分にあるものと考えております。
論点34につきましては、一定の専門職種については、ADR代理業務を行うことを認める場合には、更にADR代理を受任していなくても、必要な範囲で相対交渉における和解についての代理権も認めるとの意見に賛成します。ADR代理の具体的な受任契約に先立ち、相対交渉を行う必要が生ずることも考えられます。ADR代理を受任していなくても、相対交渉における和解の代理権も認めていただきたいと考えております。
以上、具体的な論点について、このように述べさせていただきましたけれども、知的財産に関しては、特に法的知識とそれから専門的知見等の比較に加えまして、権利の生成過程、権利取得過程についての関与度という視点も加えていただきたいと思います。
弁理士が関わるような知的財産権の分野については、具体的にはこのような事情がございますが、今後の検討会におきましてはこのような事情等も参考の上、更に検討を進めていただきますように希望しております。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、社団法人日本不動産鑑定協会の清水さん、どうぞお願いいたします。
〔社団法人日本不動産鑑定協会副会長〕
○説明者(社団法人日本不動産鑑定協会 清水文雄副会長)社団法人日本不動産鑑定協会の副会長の清水でございます。本日は、貴本部から、第22回ADR検討会のヒアリングに専門家団体としてお招きいただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。
当協会といたしましては、要望したい事項を述べさせていただきますが、その前に我々当協会は資格者団体としては、遅れてこの会に参加させていただきましたので、改めて資格者としての不動産鑑定士の専門性、役割の一部を若干御説明申し上げたいと思います。
不動産鑑定士は、不動産鑑定評価に関する法律により、土地もしくは建物、または所有権以外の権利の経済価値を判定することを職業とする資格者であります。不動産は、多岐にわたる法規の規制を受けることが多く、不動産鑑定士は、業務上、民法や不動産関係の法規に精通しております。それゆえ、全国の各裁判所の調停委員に多数任じられており、特に宅地建物事件では、その専門性を発揮して多くの紛争解決に寄与してまいりました。
それらの事件を例示しますと、まず地代家賃増減額及び更新料に係る紛争や、あるいは借地権譲渡に係る譲渡承諾料を含む紛争、または借地借家明け渡しを巡る紛争、不動産を含む遺産分割に係る紛争、その他、不動産の価値や利用に係る紛争等々にそれぞれの問題解決に協力をいたしてまいりました。また、借地非訟事件の鑑定委員といたしましても、多数の不動産鑑定士が活躍をさせていただいております。
鑑定委員は、通常弁護士、不動産鑑定士、調停委員の3人で構成されまして、不動産鑑定士が主体的に価格等の意見書のとりまとめを行っているのが現状でございます。
以上から当協会といたしましては、不動産の価値とりわけ、借地借家、地代家賃に係るADRセンターの設立を検討しておりますが、また隣接法律専門職種との協働により、専門分野の紛争予防と紛争解決のためにワンストップサービスを目指しておるところでございます。
そして、借地借家、地代家賃、立退料、その他の価値の判定は、我々不動産鑑定士の専門分野であり、長年培ってきた経験や知識の集積があるわけでございますが、もしADRでの和解が成立いたしましても、それが実行できる裏付けがございませんとADR自体の信用に関わることとなります。ですから、執行力の付与がどうしても必要となります。 また、これらの紛争事件はいずれも調停前置制度になっておりますので、ADR機関での調整が不調で終了した場合、是非調停前置制度不適用をお願いしなければならないと思うわけであります。それでは、ADR制度基盤の整備についての論点に対する考え方を鑑定協会として若干お話をさせていただきます。
第一の検討の対象とするADRの範囲及び第二の基本的事項につきましては、国民のいろんな紛争の解決のため、多様な選択を与えることにより、当協会としては賛成いたします。
第三の一般的事項といたしましては、論点15のADRに係るサービス提供者の秘密の保持義務についてでありますが、これについては、利用者が安心して紛争解決を図ることが期待できますので賛成いたします。しかし、民事調停においては、民事調停の事例が開示できないために埋もれてしまっている現状を見ますと、判例の活用と類似した考えを取り入れていただいて、一定の条件を付してADR事例が開示できる制度の検討が必要ではないかと思っております。
第四の調停手続法的事項につきましては、論点16で調停型手続から裁断型手続への移行に関する手続ルールということでございますが、これについては、情報遮断が原則としてあるべきではないかと思います。一方当事者が後続する裁断型手続に持ち出した場合に相手方に不利に働くおそれがあるからだろうと思います。
第五の特例的事項におきましては、論点24の訴訟係属事件について、ADRの申立てがあったとき、ADRの手続開始による訴訟手続の中止に関して、民事訴訟制度の特例を設ける扱いは、ADRが魅力ある紛争解決手段となるために、是非必要ではないかと思うわけでございます。
論点26につきましては、裁判所によるADRを利用した和解交渉の勧奨ということでございますが、これは是非明確化する制度が必要であり、裁判所とADRの手続的連携によるADRの利用促進を図るものとしては、とても妥当ではないかと思います。
論点27のADR審理のための裁判所による証拠調べの制度の整備については、ADRの手続進行を確保するためにも妥当と思います。ただし、ADRによる争点、証拠整理等の結果の訴訟手続における活用については、民事訴訟手続の一般原則等との整合性の観点からは適当ではないのではないかと思います。
論点28の民事法律扶助制度の対象にすることについては、国の政策上相当の役割を担うものと位置づけ、当該制度の対象にする扱いは是非必要と考えます。
論点29のADR主宰業務に関する弁護士法第72条の適用の特例規定を設けることは、ADRが裁判と並ぶ魅力ある紛争解決手段となるためには是非必要と考えております。主宰者となる専門家が有する専門的知見という文章になっておりますけれども、これは是非不動産鑑定士という資格者の名称を是非具体的に入れていただければと思うわけでございます。
論点30の専門的知見を有するものと認められる者を①・②に区分する扱い、あるいは論点31の一定の専門職種についてADR主宰業務に関する弁護士法第72条の特例を認めるに当たり、一定の不適格者をADR主宰者から排除する扱い、あるいは論点32の相談手続に一定の専門職種が関与することが可能なように、ADR主宰業務に準じて、弁護士法第72条の特例を設ける扱い。そして、論点33のADR代理業務を法律分野に高度の専門能力を有する専門職種に関し行うことができる旨を個別法令上に規定を設ける扱い等は、ADRの健全な発展のためには必要と考えております。
論点34の事前確認団体として認められた資格者はということでございますが、これは事前確認団体として認める行政といたしましては、国が適当ではないかと思っているわけでございます。
論点37の執行力の付与に関する特例を設ける場合には、事前確認方式を採用し、確認を受けたADRの下で作成された和解文書に限って、特例の対象とする扱い。あるいは、論点38の調停前置主義の不適用に関する特例を設ける場合には、事前確認方式を採用した上で、論点23の①の方法とする扱い。あるいは論点39のADRの開始による訴訟手続の中止に関する特例等については、事前確認方式を採用する必要はないとする扱い。あるいは、論点40の非弁護士によるADR主宰業務・相談業務につき弁護士法第72条に関する特例を設ける場合には、事前確認方式を採用し、確認を受けたADRの主宰業務等を特例の対象とする扱いが妥当と思います。
以上でありますが、民間のADRの健全な発展のために、また国民が安心して利用されるためにも、是非隣接法律専門職種のADR機関には、時効の中断や、ADR和解交渉中の訴訟手続中止、ADRの結果としての執行力の付与、調停前置制度の不適用、裁判所がADRの利用を勧めることができること及びADR代理権付与の特例を定めていただきたいと存じます。
以上でございます。
〔質疑〕
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、また先ほどのように、約二十分質疑の時間を取りたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。
どうぞ、龍井委員。
○龍井委員 大槻さんに3点ほど伺いたいと思うのですが、1つは、社会保険労務士といった場合、いわゆる開業で専門的にやられている人、それから実は我が職場にも社会保険労務士の資格を取っている者がいるわけなのですが、その辺を範囲として、多分いろんな段階があるのでしょうけれども、どこら辺を想定されているのかという非常に素朴な質問です。
2点目は、対象の範囲の問題ですが、御説明の中では、労働関係全般という言葉が出てまいりました。恐らく、いろいろ研修等で御努力はされているのでしょうけれども、資格というふうに考えていった場合には、文字どおりの社会保険実務から始まって、後は賃金関係でしょうか、いくつか専門的には、まさに得意分野として展開されているところと、労働関係全般、これはいくつか今日のヒアリングでも出てまいりましたように、紛争処理に関わるところも大分幅があると思うのですが、その辺をどう考えたらよいか。
3点目は、ここが一番眼目だと思うのですが、個別紛争の代理者という場合に、特に業務として、つまり開業として社労士をやられる方は、私が知っている限りでは、大体経営者の方のやる一部の任務について契約をされるという方が大多数だということでいうと、労使紛争ということになれば、これは当然契約上からいっても経営者の側からサポートされるというのが、むしろ自然の姿だろうと私は思っていまして、その辺の代理ということについて、もしお考えがあればお伺いしたいと思います。
○青山座長 どうぞ。
○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻哲也会長)それでは、お答えさせていただきます。
まず1つ目は、開業社会保険労務士とそれから勤務等社会保険労務士を合わせて全国2万7,000 人おります。社会保険労務士となるためには、まず国家試験に合格します。併せて実務経験2年以上という要件を満たした上で、初めて登録入会でき、社会保険労務士を名乗ることができます。
更に、開業する場合には、事務所の所在地、名称等を登録するということになっております。
業務の内容としましては、開業社会保険労務士は自分で開業するわけですから、社会保険労務士法第2条に掲げる業務のすべてを行うこと。勤務等の社会保険労務士は、勤務先におけるその事業所の社会保険関係、あるいは労働問題関係を扱うこと、このように区分けされております。
今回、個別労働紛争のいわゆる代理権の対象としているのは、基本的には開業社会保険労務士、つまり約一万七千人ということでございます。
第2点目、労働全般と言っているけれども、法律上そんな範囲まで入っていないじゃないかという御指摘ではなかろうかと思いますが、社会保険労務士法第2条2項第1号の業務、あるいは2号の業務につきましては、書類の作成、提出代行、事務代理及びあっせん代理、あるいは諸帳簿の作成等でございます。
第3号には、労務管理、その他労働に関するという業務が入っております。労務管理という業務が資格の中にあるのは社会保険労務士のみであろうかと思います。この労務管理の定義の中には、労使関係もすべて含まれたものであるということでございまして、先ほど御指摘があった賃金管理の問題、あるいは人事管理、そういったことを含めて個別労働紛争の予防、あるいは紛争が起きた場合には、それの解決、そういったことも業務として含まれているということでございますので、言葉としてはいささかオーバーになったかもしれませんけれども、そういう意味で労働全般という表現をさせていただいたということでございます。
3点目が、社会保険労務士が個別労働紛争といっても、どちらかというと経営者側から報酬を得たり、あるいは契約当事者となっているじゃないか。したがって、労使公平にといっても、そこは使用者寄りというようなことが出てくるのではないかという御指摘であろうかと存じます。しかし、実際に私どもが、先ほど説明させていただきました、例えば総合労働相談所はサービスの一環としてやっておりますが、東京においては、労働者の方からの相談の持ち込み、これが7割、使用者側からの方は3割というようなことでございます。
また、東京労働局の実態を見ましても、個別労働紛争というのは、労働者の方から約60%、それから使用者の方から約34%。そして、弁護士さんとか、社会保険労務士が持ち込んでくるものが6%というのが現状でございます。
したがいまして、社会保険労務士が仮に労使間で紛争が起きた場合、使用者に一方的に方寄った判断をしますと、そこの労使関係はうまくいかない、うまくいかないということは事業の健全な発達にはつながらないということになりますので、当然のことながら私どもの体験からしますと、法律論だけではなく、プラス人間関係論を併せて対応していくことになります。使用者が労基法等の法律に間違って対処している、あるいは世間相場、そういったこともよく御理解なさっていないというような場合には、そのようなことも含めて解決に当たっているということでございますので、必ずしも使用者側の顧問であるから、使用者に偏るというようなことではございません。
これは、ニュージーランドにおいてもそのようなことが実態としてございます。ニュージーランドでは、解雇された者が訴える、その場合に弁護士さんかコンサルタント、どちらかに頼むそうです。そうして解決をしたら、その費用は依頼をした解雇された労働者ではなくて、会社に対してあなたのところにいた者の解決を行うのであるから、費用はその会社が払えと、こういう仕組みになっております。私もニュージーランドでそういう説明を受けてきました。我々の場合もそれに類似しており、類似というよりも同じようなことですので、御指摘の点は全く問題ないと思います。
以上です。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、山本委員。
○山本委員 日本弁理士会にお尋ねをしたいのですが、本日の御説明では、ADR主宰業務、代理業務との関連について中心的にお話があったかと思うのですが、その他の問題点、特にいわゆる特例的な規定について、時効中断とか、あるいは執行力の問題についてもパブリックコメントの対象になっておるわけですが、もしそのような辺りに何か弁理士会としての御意見があれば、お伺いしたいと思うのですが。
○青山座長 どうぞ、お願いします。
○説明者(日本弁理士会ADR推進機構 村山信義副委員長)先に提出しました意見書の中には、その2点についてもコメントしてありまして、本日は割愛させていただきましたが、時効中断についても執行力の付与についても積極的に認めてほしい旨を述べております。
○山本委員 その場合の適格性の要件等についても。
○説明者(日本弁理士会ADR推進機構 村山信義副委員長)適格性の要件については、一定の適格性ということで、中間とりまとめに書いていただいた程度で具体的なところまで検討していないのですが、確認方式については、弁理士会としては、事前確認方式もやむを得ないのではないかというふうに一応考えております。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。原委員どうぞ。
○原委員 先ほどのグループと同じ質問になるので恐縮なのですけれども、時効中断とか、執行力の付与、こういった法的効果の付与については、今日ヒアリングの対象になっているところは、かなりのところが認めてほしいというような御意見で出されているのです。
それで、すべての今回のヒアリングの対象のところが、何らかの形でADR機関を設立したい、設けたいというふうなことを念頭にお話しになっていらっしゃるからだというふうに思うのですけれども、一方で利用者の立場からすると、執行力の付与というのは両論でありまして、やはりそういうものがあった方が、例えば消費者側、利用者側にとってメリットになる場面と、逆にデメリットになる場面と両方あるというふうに考えておりまして、デメリットになる部分もあるのではないかということについての議論をなさったのかどうだったのかということがよくわからなくて、それを前回のグループの方にも御質問したんですが、そのことについての御回答は特になくて、また改めて恐縮なのですけれども、実際にそういうADR機関を設けようというふうになさって議論をなさるときに、メリット、デメリットについて、特にデメリットについてはどのような議論をなされたのか、御見解があれば3団体にお聞きしたいというふうに思います。
○青山座長 よろしゅうございますが、それでは執行力を与えることについての御議論を多分なさったと思いますが、その場合にデメリットについてどの程度の御配慮、あるいは審議があったのかという点につきまして、では3団体の大槻さん、村山さん、清水さんの順序でお願いします。
○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻哲也会長)私ども社会保険労務士が対象としている方々は、どちらかといいますと、企業の中でも99.3%を占めている中小企業です。とりわけ、そのうちの73%を占めている規模20人以下のいわゆる小零細規模事業所でございます。大企業の場合は独自の労務部門とか、あるいは法務部門を持ち労働問題の解決が行われております。中小零細企業で取り扱っているのは、例えば先ほど事例で申し上げましたが、傷病手当金の6割に対して、4割は会社が負担しますといって、4割負担しても法律上は差し引きされてしまうのでそれでは意味がないから、約束していたけれどもやめましょうとなります。労働者側から約束じゃないかと言っても、法律上は10割になりません。
普段労使共に高い保険料を払っているのに、給付を受けるときに会社が賃金を補填したら差し引かれる、そんな制度おかしいじゃないかとなります。では他に良い方法があるのではないかということで、知恵を出して解決をする。言うなれば、その対象物というのが、金額的にも賃金1か月分程度の問題とか、退職金でも中小零細企業では中小企業退職金共済制度によって対応する部分が多く、問題になるような対象物は、金額的には非常に低いのが現状です。
したがって、労使間で、お互いが良く話し合い、それこそ和解をすれば、それが実行可能である案件が圧倒的に多く、一旦決まったものが後で実行されないというようなことは少ないのです。しかし、少ないからといっても1つでも2つでもあったら、どうするのかというと、そういう意味では執行力の付与ということは必要であるというふうに思います。むしろADRの特徴として、裁判で争うのではなくして、その前に紛争を解決しましょうというADRの基本精神から考えれば、執行力等を十分確保しながらやるべきか否かについては、それは、むしろADR検討会の方で御検討いただいたものを我々が受けていく、こういう方がいいという考え方でおります。
○青山座長 質問の趣旨は、そういうことではなくて、デメリットのことについては御議論いただいているかということなのですけれども。
○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻哲也会長)したがいまして、デメリットについては議論しておりません。
○青山座長 どうぞ、村山さん。
○説明者(日本弁理士会ADR推進機構 村山信義副委員長)先ほども申し上げたのですけれども、知的財産権の分野において、割と企業同士が争うことが多いと思うのです。今も現に裁判手続の中で紛争の当事者が争うということは行っていると思いますので、それをADRにそのまま、例えば極端なことを言えば、仕組みだけはADRに移して、「早く、安く」というような形に変われば、執行力はむしろ認められてほしいというふうに思っているのではないかというふうに、大半の企業は考えているのではないかと思います。
ですから、他の分野については一律にそういうことを認めるのがどうかというような話はしたのですけれども、知的財産の分野においては、さほど抵抗感なく受け入れられるのではないかなと思いますし、新しく制度が始まれば、そういった仕組みになったのだということを周知すれば問題はないのではないかと、この分野では考えております。
○原委員 知財の分野についてはということですね。
○説明者(日本弁理士会ADR推進機構 村山信義副委員長)そうです。
○青山座長 どうぞ。
○説明者(日本不動産鑑定協会 清水文雄副会長)鑑定協会といたしましては、ほとんど調停をやっている方がたくさんいらっしゃいまして、宅地建物調停でやはり実行を伴わないと、せっかく和解が成立いたしましても、実行を伴わない場合は絵に描いた餅になるのが、特に不動産の場合はあらゆる面で具体的にあるものですから、ADRを検討している委員の人たちからは、当然の如く執行力の付与という形が出てまいりました。
ですから、デメリットということは余り考えないで、まず執行力ありというような考え方での議論をしてまいりました。
○青山座長 よろしいですね。
○原委員 はい、それも不動産取引に限ってですね。
○青山座長 若干時間がありますので、もし、お一方ありましたら、どうぞ安藤委員。
○安藤委員 パブコメの中からこういった争点が出てきたので、ちょっとその見解から外れるかもしれませんけれども、いわゆる国民への普及という面から考えますとどうしても普及という観点からいいますと、地方自治体、それから消費者センター、経団連、商工会議所、こういった面が相談窓口として考えられるわけですけれども、前半の4連合会の方、後半の3連合会の方、これがよろず相談という意味での相談窓口ですね。これに対して、どういう考えを持たれているのでしょうか。
今までのお話ですと、自分の専門のエリアだけで相談業務、相談業務と言われているのですが、実際に国民の普及という形から考えますと、それらの方たちがよろず相談という形で受けていただいて、そして相談、代理、それから主宰者になってくる場合もありますし、それから紹介業務、こういったものも一番の必要ではないかなという形で考えているので、その辺では企業の社員の一番接点がある大槻会長辺りからその辺のお考えを。
○青山座長 よろしいですか、今の御質問はわかりましたですか。
○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻哲也会長)まず1つは私ども社会保険労務士会としましては、これは地方自治体、商工会議所、商工会等、あるいは都道府県の労働相談センター、そういったところへ相談員等を派遣し、そして身近にいろんな無料相談に応じるというようなことをやっております。
それから、先ほど申し上げましたように、総合労働相談所というものを持っておりまして、これは47都道府県すべてございます。そこで、常にPR、例えば新聞、あるいはチラシ等の手法を用いましてPRをして、身近に御相談に応じますというのが一つございます。
それから、後でまたお話があろうかと思いますけれども、各士業、弁護士さんから司法書士さん、税理士さん、土地家屋調査士さん、社会保険労務士など、いわゆる士業が一緒になって行っている総合相談などにも参画しております。
先ほど、恐らくワンストップサービスの意味をおっしゃったと思いますが、私どもはこれからこういうものが認められることによって、もっと幅広く受付窓口となって、そして各士業との連携を深めながら国民のニーズに応えること。一つ一つのところに訪ねるのではなくて、1人のところに行けば、このことについてはこちらで、このことについてはあちらへというような仕組みは当然必要だと思いますし、是非ともそういうことの実現を図っていただきいと思います。
○青山座長 よろしゅうございますか。
○安藤委員 はい。
○青山座長 ちょうど予定している20分の質疑が終わりましたので、ここで質疑は終了させていただきたいと思います。
今日は、お忙しい中をお三方、わざわざ出席していただきまして、貴重な御意見をいただきまして、本当にどうもありがとうございました。
ここで、若干休憩の時間をとりたいと思います。20分休憩をとりまして、4時に再開させていただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
(休 憩)
○青山座長 それでは、時間になりましたので、審議を再開させていただきます。休憩前に引き続きまして、ヒアリングを行います。御説明いただく方を御紹介いたします。
在日米国商工会議所ほか2団体から推薦された方で、現在、在日米国商工会議所特別顧問兼理事、また、ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所のパートナーでもいらっしゃいます、ロバート・グロンディンさんでいらっしゃいます。
グロンディンさんには、本日は大変お忙しい中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。グロンディンさんは、今もおっしゃいましたが、大変日本語が流暢でいらっしゃいますので、日本語でよろしくお願いいたします。
説明時間は30分でお願いしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○ロバート・グロンディン氏 質疑応答の時間はどれくらいでしょうか。
○青山座長 まず説明を30分、それから20分ほど質疑応答を予定しております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○ロバート・グロンディン氏 ただいま御紹介に預かりましたグロンディンと申します。現在、在日米国商工会議所の特別顧問兼理事をしています。2000年と2001年には会頭を務めまして、その翌年2002年は代表を務めていました。弁護士であり、また、今申し上げましたとおり、ビジネスの団体の代表にもなったことがあります。これまでにも、あちらこちらで皆様とお会いしたことがあるかもしれません。まず、今日はこういう機会を設けていただきましたことに感謝の意を申し上げたいと思います。
本日の会議にも取り上げられております課題は国際的にも非常に関心が高いもので、再度、改めて我々のメンバーの中でこの課題の重要性を感じていたところです。
まず今日私が申し上げる立場について弁護士らしく説明申し上げたいと思います。我々は在日米国商工会議所の意見書を6団体共同で提出させていただきました。パブリックコメント期間中は、様々な団体と話をいたしまして、意見調整を経て、意見書をまとめました。
ただ、あれだけいろんな人を相手に調整して、しかも、それが8月だったものですから、各項目別に対するコメントをまとめることは不可能でした。従いまして、いろんなところから別途意見またはコメントが出てくる可能性もありますが、一応の基本的なスタンスと考え方は提出した共同意見書のとおりです。
在日米国商工会議所は先ほど言ったようにいろいろな団体の代表が務めています。先ほど申しました6団体の中には私と私の後ろにいる2人に対して、直接に代理を頼まれていない3つの団体もございます。それらの団体を個人的に代理するものではないため、今日、私たちに代理を頼んでいない団体からは別途お願いが上がってくる可能性があるということを前置きしたいという次第でございます。
また、資料としてABAの手紙の訳文を提出いたしましたが、これはあくまでも非公式な「仮訳」であるということを申し上げておきます。それは、我々が東京で作りましたものであり、ABAが内容を確認したものではありません。あくまでも御参考として資料として提出しております。正式な訳文ではありませんので、そういう形で取り扱っていただきたいと思います。
では、現在の国際的な状況がどういうものかということから説明をスタートしたいと思います。こういった各所で、弁護士として講義や話をさせていただくことがございます。ここ4、5年間でADRが盛んになり、一つのものとして取り上げられることが多くなっているのですが、いつも「ADRについて本当に理解されているのか」と非常に心配しているのです。
場所によって、特に、アメリカはADRの発信地として、だからといって一番進んでいるかどうかは別ですが、ADRという場合、普通は仲裁が入っていないものを考えるのです。他の国ではADRと言うと、どちらかと言うと仲裁が念頭に置かれているのです。しかし、そうなると対話そのものがすれ違ってしまう危険性が非常に高くなるのです。特に、現在の日本では新仲裁法が立法化されたばかりですが、それについて今度はADRとして包括的に取り仕切るとなると大きな混乱が生じるのではないかというふうな懸念を持っているのです。国際的な目から見た場合に持たれる一番大きな懸念なのです。
なぜかというと、世界的に仲裁そのものが訴訟の代わりに非常に定着した手段として取り扱われていまして、日本企業また国際的取引では何万件以上もの契約の中に仲裁条項が盛り込まれています。さらに、それらは今までの国際的な仲裁を念頭にして契約条項になっているものですから、急にこれが変わってしまうと、混乱が生じやすくなる危険性が非常にあるのではないかと我々は心配しております。
また、全般的な話としてADRを考えるに当たっては、商事仲裁と消費者関係、BtoBとBtoCとに分けて考えなければいけないのではないかと思うのです。報告書の中でも区別されているように、また先ほどの委員のお話の中にもあったように、BtoBとBtoCとでは取扱いが非常に違うのではないかという気がするのです。つまり、BtoBですと、割と皆さんいろいろな経験を持っていて、また、いろいろな専門家を雇うだけの資金もあったり、比較的知識が蓄積されているため、あまり問題とされないような気がするのです。一方で、BtoCの場合は、当然のようにどこの国でも業界側が非常に強くて消費者側が弱いという懸念があるため、その取扱いについてはそれぞれの国でいろいろと仕組みがなされているのです。それはアメリカでも勿論そうなのです。そして、完全に業界団体が取り仕切っているような契約が有効か無効かについては執行段階で裁判官等が無効にする場合もあります。このようにBtoBとBtoCとでは取扱いが非常に違うということを、まず念頭に置いていただいて、今回のお出ししいたしました資料などをご覧いただきたいと思います。
また、我々は商工会議所ですから、どちらかと言うとビジネスサイドに非常にウェートを置いているのですけれども、やはり全体的な考え方・構造・仕組みを構築するに当たって、そういった基本的な違いを認めた上で制度の仕組み方を考えていただきたいと思います。
3番目に、世界的に見られる傾向の話としてよく出てくるのは、コストの関係上、ICCなどの仲裁機関を使うか、それともアドホックでするかという問題があります。UNCITRALは、機関を使わず当事者同士が簡易に安く紛争を解決できるような方法を規定していますが、このようなことは非常に会社にとって魅力を感じることなのです。
また実際上、アドホックが世界でかなり動いているのを認めざるを得ないと思うのです。当事者同士がより適切な紛争解決手段を作ったり、模擬裁判のようなものを作ったり、いろんな形の面白いものがたくさん仕組まれていて、無論、それらが成功する場合もあれば、結局訴訟になってしまう場合もあるでしょう。しかし、非常に自由な環境の中で、様々な形態のものが発展的に実験的に行われる中でADR業界と言いましょうか、そのようなものが育って、良い成果をもたらしているのです。そのようなことを非常に大切にする必要があるのではないかと思うのです。
BtoBの場合はどちらかというと契約関係ですから、それを有効と認めて自由にするというのがほとんどの国です。したがって、先ほどの弁護士法第72条については、事前確認、資格問題等々ということではなくて、紛争解決を自由にできる、紛争解決手段として自由に設計できる、当事者同士が話し合って作るものを尊重することとして取り扱うというふうになっていると思います。
弁護士法の問題についてもいろいろ議論していますけれども、その中のいろいろな分野でグローバル・スタンダードとは何かというような、一般的にはグローバル・スタンダードのようなものはないとお答えするのですけれども、強いて考えるとグローバル・スタンダードが自然発生しているのはここなのです。つまり、どこの国でもほとんどの場合、紛争解決手段は自由に設計して、特にBtoBの場合などは、制限もありますけれども、当事者になることも主宰者になる者についても、または代理することも自由で、弁護士でなければいけないというものはほとんどないのです。ただ、時々は資格制限を設けている例も出てくるのですけれども、これは例として覚えておいた方がいいと思うのですが、シンガポールで何年前かにそういった「弁護士でなければいけない」という判決が出されました。非常に大騒ぎして、結局それに対応して、幾多の段階を経て、シンガポールは自国を仲裁地として育成するために、弁護士であるという条件をなくしたと言います。結局、そういった条件を付けたことによって、シンガポールが仲裁の場所として選ばれなくなったためです。
アメリカのカリフォルニアでもありましたし、ある時期、日本に対しても同じ批判があって、せっかく1995年の国際仲裁検討会において自由化されたにもかかわらず、このADRの報告書を見ている人の中には、日本が時代に逆行するのではないかと非常に心配する人がいますので、はっきりさせなければいけないと思います。ADRを一つのものとして包括的に取り上げるとそういう問題が生ずるということをメッセージの一つにしたいと思います。
こういった世界的にADRが育成されている中で、特にアメリカのことを申し上げます。アメリカのADRは政府が作ったものではありません。訴訟費用が高く、かかる期間も長く、審理過程が公開されるため、他の代わりの手段として仲裁を選んで、そして仲裁も場合によってはそんなに安くて早いということでもないですから、その代わりに開発されたのがADRなのです。これがADRが辿ってきた今までの道のりなのです。特に仲裁以外のADRはここ15年から20年間で新しい紛争解決の手段として発展してきたのです。
仲裁の代わりの手段として自由に設計できるような形のものが考えられ、BtoBの紛争を取り扱うADRですから、任意な手続による紛争解決の手続きです。先ほどどなたかの発言中、ADRの基本的性質とは何かということがありましたが、それはどちらかと言うと、任意の手続というところにあるのです。ですから、任意の手続を何か強制的な手続にすることは、言わば自然の法則に反することになってしまうのです。
ADRはある意味、広く日本の司法制度と絡むところがあるから、ADRをもって100 %解決しようではないかという主張もわかるのですけれども、これで100 %解決できる紛争は絶対に無いのです。結局、無理をしようとすると、歪んでしまうところも出てくると、ADRそのものの発展・育成が止まってしまう可能性があることに気を付けなければいけないのではないかというのが懸念しているところなのです。
特に我々が調べた中に、世界的にADRの和解契約また仲裁判決そのものに執行力を付与している例は探しても出てこないのです。我々の見方からすれば、それは絶対に必要ないように思っているのです。執行力が付与されていれば便利だということはわかるのですけれども、先ほど、どなたかがが言っていたように、任意な手続を経ていったん和解して合意するとそれがそのまま実行されることになるのに、執行力という一部分の話のために全体のシステムを歪めてしまったというのでは非常に逆効果になるということを我々が懸念しているのです。と言いますのは、執行力を付与しようとすると、事前確認が必要となるのではないかという問題や、資格、適格性の問題など様々な問題が生じてくるのです。しかし、それではADRの育成にとって逆効果ではないかと思います。あまり知らない者同士が「話し合って解決しようではないか」と言っているときに、一つ抜けていた情報があったというために結局合意が不成立になり、履行されなくて、紛争状態に戻ってしまうというようなこともあるのではないでしょうか。ですから、最初の合意を履行させようというと、どうしても無理が出てくる場合もありますから、そこまで完璧なシステムを作り上げるということを要求したら、ADR全体が麻痺状態に陥ってしまう可能性があるというふうに我々は見ています。時効に関しても同じで、先ほど言ったように現状を見ていますと、グローバル・スタンダードと言えるのは、弁護士資格が必要とされていないところではないかと思います。
しかし、そう言いながらも紛争を抱えた人たちの大半は弁護士のところに行ってしまうのが現実です。なぜかと言うと、BtoBの場合もそうなのですが、BtoCではやはり消費者は弱いですから、社会全体について知識を非常に多く蓄積している弁護士のところに行くのです。特に、インターネット時代になり、紛争解決に関する情報の流通が早くなってはいるのですが、やはり難しい紛争になると弁護士のところに行くのが実際です。もう一つ申し上げますと、ADRの和解の合意書について執行力が直接ない場合、実際は、弁護士に相談に行くことになるのですが、その弁護士に相談に行く段階で、ADRで不当な関与があったとか、利益相反があったなどの事実が判明した場合、和解そのものを覆すことができますから、それらが問題となっている場合、ちゃんとした対応が確保されることになるのです。ですから、ある意味では執行力がないことが、消費者のためのチェック機能の役割を果たしているという形になるのではないかというふうに私は思います。
一つ戻りまして、BtoCについては触れたくないということではないのですけれども、ここ5、6年間の日本におけるADRに関する議論を見ていますと、旧通商産業省時代に開催されました企業法制研究会に私も委員として参加させていただいたのですけれども、やはり政府側からは、ADRの必要性として、ADRは司法制度そのものに対する解決策の一つであるということがあって、特に通産省側からは、国際的に見ると日本の企業が海外に流れ、海外で紛争解決を図っている状況は日本の将来のために良くないと、日本でも同じように紛争解決できるような仕組みを作らないと、結局は日本企業にとってマイナスになるというふうな説明がありました。
そして先般の司法制度改革審議会でADRの発展を図ろうではないかということがあって、その流れの中でBtoBも大切にする必要がありますし、これについてはできるだけ早く改善を図ってほしいと思います。そのようなときに、他の問題やBtoCと絡めてしまい、また、執行力等いろいろそういった問題を一括して解決しようとすると、全体が遅れてしまうことになるのではないかと思うのです。
世界的に今までに見られた中で、やはりシンガポールなどそういったところでは、経験上、ADRに様々な制限を付けてしまったために、発展が止まってしまうということがあったと思います。特に、BtoBの場合は、紛争解決のために世界的にどこにでも自由に行けるのです。ところが、日本がADRに様々な制限を付けてしまうと、出来るだけ早く紛争を解決したいと思う者は、結局、パリのICCに行ったり、ストックホルムやロンドンなりへ行ってしまうのです。そうなってくると日本にとって何の為にもならないのです。ある意味で競争相手として、日本のADR機関がパリやロンドンの紛争解決機関と同等に競い合っていかないと、結局、企業が海外へ行ってしまうのです。繰り返しになりますが、向こうでは資格の問題もありませんし、向こうの方がやりやすくて、そういったものを全然気にしなくてもできますので、日本ではやらないことになってしまうのです。我々は日本でビジネスをしている以上は、そのビジネスから生じる紛争の解決は日本でやりたいのです。我々の商工会議所のメンバーはよくそういう声を上げております。訴訟だけではやはり大変ですから、むしろそういった柔軟性のあるADRがあってほしいということで、商工会議所として長くそういう活動をさせていただいています。
先ほどの話の中に一つポイントとして挙がっていたと思うのですけれども、弁護士法第72条との絡みなのですが、特に主宰者の場合は、ABAの説明にもあるように、これは法律業務ではないとされていて、世界的にも大体そういうふうに見られているのです。主宰は弁護士として自分のお客さんを代理するものではないですから、そういった関係にない以上、それは法律職務としての行動ではありませんから、主宰者になるには、世界的には弁護士法第72条は抵触しないのです。また、代理業務に関しても、ADRはビジネス上の合意の下の任意の手続ですから触れないということもあるのですがともかく一旦ADRの手続を踏まえて紛争を解決しようと思えば、それは当然に和解交渉を兼ねてくるのです。無論、中には兼ねないということもあるのでしょうけれど。ですから、弁護士法第72条の特例が設けられても和解交渉や和解契約をしてはいけないということになるとするとそれはナンセンスなのです。実務上両者を分けて考えることはできないのです。
先ほど非常に興味深かったのは、日本では境界紛争に関して、ADRが育っていないといっても、いろんなものが情報として出て来ている中、大半が和解で終わっているということがありました。結局、ADRをやりたいというのは話合いによって合意できる余地があるからであり、手続を経れば合意ができるのではないかという期待があるのが実情ですから、十分な形で和解できるような体制でなければ制度としては上手にまとまらないのではないかという懸念を持っております。
そして、先ほどの弁護士法第72条に特例を設けるということの利点として縄張り争いがなくなるということです。各種の専門家が縄張り争いをすることは非常に問題であり、消費者又はビジネスマンの側では、どの事件にどの人間が適切かという情報があれば、それらの選択肢の中から選べますし、ある事件に対してチーム作りをする場合によくあることですが、弁護士が全部まかなうことができない場合、社会保険労務士、税理士、弁理士などの方とチーム作りをする場合もあります。またそれ以外にも、エンジニアなどがフルに活用されないと本当に問題が解決されない場合も結構あります。ですから、できるだけ柔軟性のある制度を作り上げてほしいということが私たちからの一番大きなメッセージです。
最後になりましたが、先ほども言ったように、こういう問題を抱えている場合、特にBtoBの場合、税理士が適切な場合とはどのような場合かとか、会計士が適切な場合とはどのような場合かとか、弁護士が適切な場合とはどのような場合かとか、エンジニアが適切な場合とはどのような場合かというようなことを、会社内部で相談したり顧問弁護士と相談したりして決めればいいのです。経験豊富な主宰者として名前が通っているとか、または、主宰者としてはあまり経験はないのだけれども業界に精通しているとか、こういったものはよく相談を受けていますから、あまり心配されなくても結構ではないかというようなことを相談して決めればよいと思うのです。ただ、中小企業の場合はどうするのかというのはあるのでしょうけれども、中小企業の場合のほとんどは社会保険労務士とお付き合いもあるでしょうし、その他にも会計士、税理士としょっちゅうお付き合いがありますから、そういう情報源を持っているのではないかと思うのです。BtoCの場合、話の中に出てきたように特別の機関を作ったり、情報源になるようなものを何なりと大切に育てなければいけないのは確かなので、BtoBと混ぜてしまうと全体が混乱してしまい、かえって両方が育たないおそれがあるということを最後の言葉にしたいと思います。
今日の一番の目的は皆様と対話をすることにあります。私は質疑応答が一番楽しいので、皆様からいろいろな質問を出していただけたらと思います。
〔質疑〕
○青山座長 グロンディンさん、どうも大変示唆に富む話をしていただきまして、ありがとうございました。非常に参考になったと思います。皆うずうずしていると思いますので、これから質問をさせていただきます。どうぞ、廣田委員。
○廣田委員 3点あるのですが、仲裁と調停を分けるというお話ですけれども、国際的なBtoBの事件で、調停の重要性というのはどういうふうに見られているかというのが第1点です。
第2点は、BtoCについて、消費者保護という観点から何らかの手当をするというようなお考えではないかと思うのですけれども、例えば、調停を考えた場合には、BtoCの場合でも、ADRの基本的な性格というのは、やはり自由とか任意について、重要性というか、基本的な理念として持っておくべきものであるというお考えに立っているのかどうかということです。
3番目は、ADRを麻痺させないようにということなのですが、事前確認方式がADRを麻痺させるのではないかというようなお話につながっているのではないかと思うのですけれども、だとすれば具体的にどういう麻痺現象が起こるのか、それについて説明していただきたいと思うのです。
○青山座長 よろしゅうございますか。
○ロバート・グロンディン氏 まず、仲裁と調停の違いですが、十何年前の話ですが、テキサスでPL紛争の対応を頼まれました。当時、アメリカの同僚といろいろ相談しながら調停をやったことがありました。調停をするということになったとき、最初はなぜ任意的で拘束力のない調停という紛争解決方法を選ぶのかということが非常に疑問で、それこそ無駄なことではないかという考えていました。そのときは、結局いろんな事情があって、調停を進めることになったのですけれども、意外に拘束力がなくても話がまとまるものなのです。トップレベルの責任者を交えて、初めて会う相手の議論を短期間でよく整理して進める手続になるほどなと思いました。意外に、拘束力のない任意の手続でも紛争解決につながるのです。ですから、当事者同士が今回はこういうふうにしようというような自由に設計できるような、そういったできるだけ柔軟性のある手続が非常に役に立つのです。それ以外にも紛争が解決する確率が高いことが世界的に評価されていることによって発展につながっているのです。
しかも、仲裁が長引くよりはこうした方がいいということで、非常に最近盛んになり是非日本にも持って来たいと思っています。
仲裁ですと先ほども言ったように機関を通してやるか又はアドホックでやるかということは国際的にも議論としてあるのですが、これについては意見が分かれます。私が見ている中では、機関を通した方が成功率が高いと思っているのですが、というよりも実際に高いのです。ですから、ビジネスの見方によっては、そういったUNCITRALみたいな機関を通さずにやった方がベターであるという見方も多いのです。ただ、そういったものをわざわざ締め出しては得にならないのではないかというふうに思うのです。第1点目についてはそういう考え方です。
第2点目については、BtoCにおいてはフリー、フレキシブルという性質を持った方がいいのです。結局、BtoCの場合、消費者はどうしても弱いのです。今まで日本でのPL法に関する紛争の10年間の実績を見ていますと、やはり、企業サイドが強くて、研究機関、本来紛争を解決する機関が消費者側に立っているはずですけれど、結果としてあまり和解が成立していないのです。やはり消費者が納得するかしないかの問題ということがあるのです。そんなところに手続上このようなことを経なければいけないということを押し付けると大変な問題が生ずるのです。
例えば、アメリカでは証券業界でブローカー契約に絡んで紛争が生じた場合、調停をやらなければいけないとされています。ただ、場合によっては抱えている問題が調停に向いていない、どうしても訴訟に持っていかなければいけない場合もあります。その場合、アメリカの裁判所は、この場合においては契約条件が無効であるとか、業界団体が押し付けたものでフェアに作用していない、情報開示が十分ではない、などといったいろんな要素が消費者サイドに不利、不当に働くとして、裁判所がそういった業界で決めた契約というかそういった条件を無効にする、場合によっては、消費者サイド、雇われた側にそういった保護が必要なのです。最近のカリフォルニアでの判決ですけれども、雇用契約の中に仲裁条項が入っていて、大きな会社が下のレベルの従業員にまで全部押し付けているということに対してカリフォルニアの裁判所はこのような条項は無効であるという判決を2,3回出したことがあります。商工会議所はこの前の仲裁法が労務関係につき一切、仲裁法が対処してはいけないというのが非常に不満なのです。下の方は別として、中堅レベルから上の方の者なら、やはり雇用契約の中に仲裁で解決するという条項が設けられていることが適切ではないかという見方もあります。そういった、中身を見ながら区別しなければいけないのです。仲裁が適しているという場合、調停が適しているという場合がありますから、そのような条項は完全に全部無効であるという、包括的なとらえ方はやはり柔軟性がなくて、あまり良くないのではないかというふうに思います。
最後の3番目については、私も細かいところまで理解していないのですけれども、事前確認とは具体的にどういう手続になるかによって、当然、問題の拡大につながってくるのです。包括的に言えば、事前確認は要らないような気がするのですけれども、非常に簡単なものであればいいのではないかという場合もあるでしょう。ただ、どう区別できるかは先ほどの話を聞いている中で、資格の問題とつながるのか、それともこういう研修を受ければできるかなどといった、どこまでいろいろな細かい議論にまで入り込まなければいけないのかにもよります。そういった細かいことが要求されてしまうと、やはりまた発展が遅れてしまうのではないかと思います。細かいことを要求して結果としてプラスになるのだったらいいのかもしれないのですけれども、プラスになるような効果はあまり見られないのではないでしょうか。
あれだけ作業して、あれだけいろいろ難しくして、また事前確認をするために、それこそ政府の機関なり何なりを作らなければいけないとなり、さらにまた、それを監視するとすればそれは誰なのかという二重の監視の仕組みを作ったりと、いろいろと制度の複雑さが出てきますから、制度全体にとってプラスになるということはあまりないのではないでしょうか。世界でもそういったことで成功したシステムはあまり見かけないのです。さらに、わざわざ新しいシステムを設計・導入して、今度はそれを2~3年後に評価して変えたりするとなるとそれこそ無駄な作業なのです。ですから今は、利益相反など、基本的な条件だけを整えて、資格問題とか事前確認等々、そういった問題はどちらかというと後にして、まずは制度の発展・育成の状況を見ながら、将来何か問題があった場合に措置すればいいというふうに思うのです。
最初から様々そういう制限を付けてしまうと、ADRがあまり育たないことにもつながり、3、4年後、またこのような検討会を開いて検討して、それからまた3、4年間ぐらいかかって手当をするということになったら、全体としてどんどん遅れてしまうのです。ですから、そういった方向ではなくて、むしろ、もう既に育ってきている、世界的に見てもいいものがかなり発展しているというような自信を持ちながら、どんどん育てていき、その効果を社会に還元した方がプラスになるのではないかと思うのです。
○青山座長 どうもありがとうございました。では原委員どうぞ。
○原委員 3点質問があります。
○ロバート・グロンディン氏 今日は、3点が多いですね。
○原委員 日本人はやはり3が好きなのかな。
○ロバート・グロンディン氏 いえいえ、どうぞ。
○原委員 1つは、利用者側がきちんと選択ができ、そしてアクセスしやすいというところからの質問なのですけれども、選択ができるという意味では、情報が開示されること、特にそこでどういう解決がされたかということの結果ですけれども、これが開示されることが必要だと思うのですが、よくADRの1つの柱として、非公開性、公開をしなくて解決をするというのがあるのですけれども、これを選択のためには公開をした方がいいというふうに考えているので、そこら辺りの整理がどのようにされているかということ。
それから、コスト、費用の話ですけれども、これは当事者同士がお互いに折半をするというのが原則なのかもしれませんけれども、やはり消費者側と事業者側というときにコスト負担もかなり大きなものがあるというふうに思っていて、この辺りがBtoCではどのように配慮されているのかというのがありましたら、お聞きしたい。それが1つです。
2つ目は、事前確認制は、どれほどの効果というのでしょうか、いい点があるかということを考えると、労多くして益が少ないのではないかという御意見であったと、そのように感じているのですけれども、ではこのADR機関はどうも余りよくないなというのがあって、ADR機関についてのクレーム、苦情というようなものが出てきたときに、これをただ市場の競争だけで淘汰するということだけに任せていいのかどうかとなると、やはりちょっと気になります。
先ほど、カリフォルニアで裁判にかかっている事例が2~3件ありますというお話があったのですが、そういうふうにADR機関を訴えるということが、時々と言うのでしょうか、やられているのかどうかということと、それからADR機関についての苦情を何か受け付けているようなところがあるのかどうか、というのが2つ目の質問です。
だから、事前規制ではなくて、事後チェックの仕組みで何かあるでしょうかというのが2つ目です。
3つ目なのですが。
○ロバート・グロンディン氏 最後のが3つ目ではなかったのですか。
○原委員 1番目の質問は2つに分けたのです。余りたくさん質問すると。
○ロバート・グロンディン氏 弁護士がよく使う方法ですね。
○原委員 3つ目なのですが、国内の中でのトラブルではなくて、日本とアメリカ、だから日本が消費者でアメリカが事業者とか、その逆の場合もあると思うのですけれども、そういうような場面で、インターネットでの取引でのトラブルをこれからどういうふうに解決していくのかというのは、大変大きな問題だというふうに思っているのですが、このネット取引について、先進的な取組み、良い取組みをしていらっしゃるADRがあって、何か工夫があれば、あまりここでの議論では、海外取引とかネット取引についての議論が少し不十分だったかなというふうにも感じていますので、教えていただけたらと思います。
以上です。
○青山座長 グロンディンさんへの質問はまだ他の人から出るかもしれませんから、この質問は是非短く。実質上4つありますから。
○ロバート・グロンディン氏 最初の2つはもう忘れてしまいそうです。
まず、BtoCの場合のアクセスと情報源に関してなのですけれども、最近はインターネットが非常に役に立つ手段であるということが一つあります。アメリカで一番話題になるのが、例えば、証券取引のブローカー契約には仲裁・調停の条項などが結構あるのですが、業界でよくある問題を解決するために一つの機関と言うべきかどうかは別にして、できるだけそのような機関を経由したいということがあります。その中で、大体こういった問題があって、こういう解決をするのがトレンドである、こういう解決方法が一番採られているということが明らかになるのです。それは関わった弁護士が論文を書いたり、公表したりということを通して確かにいろいろ情報が出てくるのです。
また、業界が仲裁条項などを悪用しないために司法省やFTCが調べたりするなど、いろいろと監督的な立場にある行政機関は豊富にありますから、それらが事後チェックを行うということがあります。アメリカでは結構そういった情報が出回ってますから、ほとんどの場合はそれほど問題にならないのですけれども、業界全体が押し付けている、非常に圧力をかけているということになってくると、今申しましたとおり、司法省やFTCが出てきたり、いろんな行政機関が消費者を守るために調査しますし、先ほど言ったように、カリフォルニアなどはプロボノでやっているものを裁判所に持っていくとか、そういうこともあります。そこで情報も公開されますし、どこの業界がどのような悪いことをやっているかという情報は結構出てきてこれらを隠せない時代になって来ていると思うのです。そちらの方はアメリカではあまり心配されてはいないのです。
2番目のコストの問題ですが、消費者の場合は負担が大変ですから、一般の国際的な仲裁等ではやはり主宰者がコストを配分するケースが多いです。ただ消費者に対してはあまり配分されないということになるのではないでしょうか。特に、業界で生じた問題を解決をするために、業界側がコストを負担しなければいけないということもありますが、それが悪用されないよう、つまり主宰者が圧倒されないための保護も必要なのですけれど、しかしだからといって消費者がそういうコストを負担できるかというような問題は残ります。
アメリカではいろんな法律がありますが、原則としては、両方が自分の費用を負担しなければいけないのであり、訴訟なりに負けた方が全体の費用を負担するという制度はないのですが、特別な法律によってはそういう制度もありますし、弁護士費用の2倍、3倍を要求できるということが仕組みもあります。ですから、アメリカの制度全体の中で、業界が悪いことをやっていることを明らかにするために、そういったプロボノでやってもらうなどのいろんな手段があるのですが、消費者がコストを負担しないでできる仕組みとしてはいろんな考え方があるのではないかと思います。
事後の監視や保護を誰がやるかというと、どちらかというと、FTCや司法省、州政府が、結構そういうことを頻繁にやります。証券業界に関して大活躍している方もいますし、いろんな州がやり過ぎともいえるくらいにやりたがるのでアメリカではあまり心配してはいないのですけれども、日本の方は県レベルなどに対して、必要に応じてそういった権限を与えることも一つ考えられるかもしれません。FTCなどは特に業界団体が圧力をかけることによって、消費者を不利にさせることを独禁法違反に問うという持って行き方をすることが十分あり得るのではないかと思うのです。
最後に、クロス・ボーダーの場合を問題として出していただいたことに大変感謝します。確かに、インターネット取引に関してだけではなくて、一般的に、ビデオカンファレンスなどいろいろな技術の発展によって、クロス・ボーダーであっても、ここに座っている人がアメリカの調停または仲裁に直接参加することができるというように時代が随分変わってきてはいます。本格的な検討はまだ不十分だと思いますが、今までのような訴訟に対する観念でアメリカ大使館で宣誓を行うなど、堅苦しいやり方もあったのですけれども、そういった時代はもう終わりです。特にインターネット関係の取引を行っている場合、気軽に利用できる良い紛争解決手段が発達していなければいけないと思うのです。先ほど弁理士会の方からドメイン・ネームとかそういったことについての御説明がありましたが、非常に優れた制度が既に出来上がってきています。手軽に、非常に迅速な判断や決定がなされるような仕組みができている分野もありますから、それらを一つの例として、取引そのものに関して何かできるのではないかというふうなことが次の段階だと思うのですが、次の段階へステップして行けばよいと思うのです。
イーベイなどといったインターネット取引などがいろいろ始まっています。是非、次の段階としてそういったものに絡む問題を世界的に検討しなければいけないと思います。国内でも世界でもその両方の場合はもっと大変なのですが、アメリカは西海岸の人が東海岸の人から物を買ったというだけでも大変なことで、それは日本とアメリカの間の取引をするのとほとんど同じなのです。ですから、そのような状況に対応した紛争解決手段が必要になってくると思います。
○青山座長 御質問はよろしいですか、それではもうお一方、3つの質問ではなくて、1つの質問でお願いします。
では、三木委員どうぞ。
○三木委員 私も3つ用意していたのですけれども、時間がないので1つだけにします。
ほとんどの国で仲裁人とか、調停人に弁護士資格は要求していないという話、私もそういうふうに伺っているのですが、我が国ではそういう議論をすると、紛争当事者がおかしな仲裁人とか、調停人に食い物にされるのではないかと、被害を受けるのではないかという議論が常にあるのです。
諸外国で弁護士資格を仲裁人や調停人に要求していない場合に、そういう議論はないのかというのと、もしないとすれば、どういう形で弊害というのが防がれているのかというのをお伺いしたいと思います。
○ロバート・グロンディン氏 その問題を心配なさっている人たちは機関を通して紛争解決を頼むことが多いでしょうね。先ほど申し上げたICCとかは、そういった手続中、ある特定の人について主宰者になることに反対するとか、フル・ディスクロージャーをやらなければいけないとか、そういった手段をもって対応しているのです。
アドホックの場合は、主宰者をする人は結構慣れていると思うのです。誰か主宰者をするかについては両当事者が主宰者と合意しなければいけないですから、そこはいろいろ諤々検討するので、不適当な人が出てくるということはそんなにないですし、実際上もあまり聞かないです。これは大切な問題ですから、主宰者を選ぶ際は非常に気を張って、慎重に選択しているのではないかと思うのです。
むしろ問題なのはBtoCの場合、つまり業界がセットアップするような仲裁、調停機関では誰が主宰者になるかということが問題になり得るのではないかと思うのです。いつも業界寄りの判断を行ったりとか、中立ではないのではないかという心配があるのですけれども、これに対してはFTCとか行政管理機能を持っている政府機関がチェックをして、それらの機関に対するクレームが出てきたらそういう人を外したりするなどいろいろやります。それが弁護士である場合は倫理違反が問題となる場合もあるでしょうし、主宰者の交代を請求することもあるでしょうけれど、実際にはそのようなことが起こったという話はあまり聞きません。
○青山座長 では、佐成委員どうぞ。
○佐成委員 BtoBのADRに関して、執行力については任意履行されるのでほとんど問題ないという御説明だったのですけれども、ADRが成立した場合に任意履行ということでしょうけれども、不成立の場合に、時効の問題でお困りになったということは御経験上あるかどうか、それだけちょっと確認したいのですけれども。
○ロバート・グロンディン氏 あまりそういう問題に触れたことはありません。大きな国際的な案件をやっている中にはADRをやりながら時効が近づいてきた場合、ADRに決着をつけて合意できるかできないかを考えて、ADRで決着できないのだったら、どこかで訴訟を起こして時効の問題を回避するというのが普通の考え方でしょう。あずかっている案件の中には、やはり和解交渉とか調停をやるからといって、裁判官から猶予期間を与えていただけるというのが普通の考えですから、国際的な場合、普通は訴訟を起こして時効に対する手当をするのです。時効期間はものによっては非常に長いものもありますし、先ほどの御説明の中で2年間の時効期間についてありましたように非常に短いものもあるのですけれども、2、3年もかかる調停は普通はないですからそれによって時効になってしまったということはあまり聞いたことはありません。
○青山座長 グロンディンさん。佐成さんの質問に関連して1つ聞かせていただきます。
時効の中断のことなのですが、先ほど時効の中断も要らないとおっしゃいましたね。執行力の付与も要らないと。その時効の中断が要らないという結論はわかりますけれども、それは時効の中断を規定すると、事前確認制に結び付くから要らないのか、それとも事前確認に結び付かないで時効の中断を付与するような制度が工夫できるのであれば、時効の中断はあった方がいいのか、どちらのお考えかということをお聞きしたいと思います。
○ロバート・グロンディン氏 厄介な問題につながるものは要らないのではないかと、単にそういうことなのです。ADRとして手続を行っている場合は、その期間は時効期間に加算しないという一つの簡単な仕組みができるのであれば非常に良いのですけれども、ただ、例えば、和解交渉をしているなどのように、正式な手続ではない場合はどうするのかという質問が出てくるのでしょうけれども、正式な手続ではない場合はどうするのかということ質問はあるのでしょうのが、主宰者を立てて何かを行っている場合はその期間中は時効期間に加算しないというのであれば別に構わないと思うのです。それはむしろ、ADRの育成につながって良いことなのではないかという印象を個人的に持っています。
○青山座長 どうもありがとうございました。多分、他の人もこういう面白い話を聞いた後では、質問したいと思う方もおられると思いますけれども、時間でございますのでこれで打ち切らせていただきたいと思います。
グロンディンさんには、本当に貴重な御意見を賜わりまして、ありがとうございました。
○ロバート・グロンディン氏 この問題は我々として非常に関心の高い問題です。ありがとうございました。
〔その他〕
○青山座長 どうもありがとうございました。今日の議論はこれで終了させていただきますが、次回の日程を確認させていただきます。次回は、第23回ですけれども、10月6日、来週の月曜日の午後1時半から開催いたします。その際、法務省及び日本弁護士連合会から、本日と同様に、総合的なADRの制度基盤の整備についてのヒアリングを実施いたします。もう一つは、夏に意見募集をいたしまして、9月13日に締め切りました。それを今、集計中でございますので、その集計した結果を御説明させていただきます。
もう一つは、今後どういうふうにこの検討会をするかということについて、そろそろ考え方を決めていかなければいけないと思いますので、それも話題に提供したいというふうに思います。次回も大変盛りだくさんでございますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、本日の検討会は、これにて終了いたします。どうも御苦労様でございました。