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ADR検討会(第23回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年10月6日(月) 13:30~17:05

2 場 所
永田町合同庁舎共用第四会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(説明者)吉村典晃(法務省大臣官房司法法制部参事官)、鈴木誠(日本弁護士連合会ADRセンター委員長)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング③
(2)総合的なADRの制度基盤の整備に関する意見募集の結果
(3)その他

5 配布資料
資料23-1 法務省説明資料
資料23-2 日本弁護士連合会説明資料
資料23-3 意見募集に寄せられた意見の概要
資料23-4 意見募集に寄せられた意見
資料23-5 ADR主宰者等に関する主要国の資格制度等の比較(概要)
資料23-6 今後のADR検討会の開催予定

6 議 事

(1)総合的な制度基盤の整備に関するヒアリング③

法務省及び日本弁護士連合会より、総合的なADRの制度基盤の整備に関してヒアリングを行った。各説明者からは、資料23-1、23-2に沿って、次のような説明が行われた。

(法務省)

  • ADR法制を整備する場合、基本的事項、一般的事項、特例的事項、調停手続的事項の各事項の適用範囲として、行政型ADRと司法型ADRを対象とするかどうかについては、行政型ADRと司法型ADRについては、その手続や効果が既に個別法に規律されていることから、基本的事項を除けば、ADRの手続や効果に関する規律は、それらのADRには適用されないこととすべきである。
  • 調整型手続で得られた情報の裁断型手続や訴訟手続における利用制限については、パブリックコメントの結果や我が国における調停を利用する当事者の意識等を踏まえた検討がなされるべきである。また、仮に利用を制限するルールを設けることとした場合でも、サービス提供に関する重要事項の説明義務の内容に調整型手続情報の取扱いに関する条項を含めることも検討されるべきである。
  • 個別労働関係紛争解決促進法タイプによる時効中断効、執行力の付与、調停前置主義の例外や訴訟手続の中止を認めるかについては、一定の適格性を要件とすることが必要と考えられる。
  • ADR主宰業務・代理業務について弁護士法第72条の特例を設けるべきかどうかについては、その内容が同条の趣旨を損なわないものであり、なおかつ、明文で要件を規定する限りにおいては、異論ないものと考える。

(日本弁護士連合会)

  • 時効中断効については積極的に検討すべきである。
  • 執行力の付与については絶対に反対するわけではないが、慎重に考えるべきである。仮に、認めるとしても①ADR機関の適格性を認定すること、②一定の適格性を有するADR機関で成立した和解に弁護士が関与すること、③紛争当事者が明示的に合意していること、④裁判所が審査を行うことの4つの要件をクリアしている場合のみ認めるという仕組みにしていただきたい。
  • 事前確認制度については、どのような法的効果を与えるかということとの相関によって決まってくる面があり、小さな法的効果のために事前確認制度を導入することは、制度としてのバランスを失することとなる。
  • 弁護士法第72条については、手続主宰者について、弁護士の一定の関与を条件として和解・仲裁に限って緩和することが適当と考える。単に専門家であるというだけで無条件に業として手続主宰を認めることは適切でない。
  • 相談業務については、ADRより遙かに広がりがあり多様であるから、ADR法の適用下に置くことには反対する。

 上記の説明に対して質疑応答がなされた。主なものは以下のとおりである(○:委員、●:説明者)。

(法務省に対する質疑)

○ 事前確認制度の導入には反対意見が多い。もし仮に、検討会の議論によって導き出された結論が法務省の意見と異なっていたとしても、それはそれで法務省はその結論を尊重するのか。

● 法務省は、ADR制度が利用者にとって明確でわかりやすい制度になるか否かを判断基準としており、そのような観点から事前確認制度を設けることが適当と考えている。これは、あくまでも関係機関としての法務省の意見である。

○ 「単なる私法上の和解に執行力を付与することができるとする理論的根拠について、検討がなされるべき」との意見であるが、「理論的根拠」とは具体的には何か。

● 私人間の合意に執行力を認めることについては、国家機関の関与が必要と考えるが、仲裁の場合と異なり、事後的に裁判所から執行決定がなされても既判力が認められない以上、和解の合意に瑕疵があったことを理由に再び争うことができることになってしまうのではないかということである。

○ 調停前置主義のところの「一定の適格性」には調停であるということのほかに何か別の要件が必要と考えているのか。紛争当事者間で話合いが行われていることがまさに「調停」なのではないか。

● 紛争当事者間で紛争の解決に向けた話合いが実質的に行われていることを指して「調停」を経たと言うのであれば、他に特段の要件はないと考える。

○「一定の適格性」の内容としてどのようなものを想定しているのか。

● 一般論として「一定の適格性」の要件は項目ごとに異なるものであり、一概にこういうものであると言うことはできないが、適格性の定め方としては、法文上に要件として明示する方法が適当と考える。 また、適格性については、個別の事案ごとに適切なADR手続を経てきていること、なおかつ、適切なADR機関が行ったADRであるかどうかの双方が必要と考える。

○ 一括りに「適格性」と言っても、内容が抽象的すぎてそれで法文は作れないのではないか。また、事前確認については、パブコメにおいても反対意見が多い。BtoCや国際的な立場で考えてみると、馴染まないのではないか。また、今回の法制整備によって、民間型ADRのみならず、行政型や司法型のADRも良くなっていくような仕組みにしていきたいと考えている。一律に行政型、司法型ADRへの適用を排除するのではなく、ケース・バイ・ケースで適用されるというようには考えられないか。

● 事前確認制に係る考え方については、当方の考え方が必ずしもベストであるとは考えていないが、これをとらずに具体的に法文として規定するのは難しいのではないかという考えから、また要件の明確性を確保する観点から申し上げた。当方としては、行政型ADRや司法型ADRについては、当方において行政型ADRを所管しているわけではないが、既に個別の法律で規定され尽くしているだろうというところが前提にあって、このような考え方になっている。

(日本弁護士連合会に対する質疑)

○ 執行力の付与について、レジュメの表現ぶりが二転三転しているような気がするのだが、どうか。

● 日弁連として、多数の人間の意見をまとめているところがあるので、このような書きぶりになったのかも知れない。日弁連の結論としては、執行力に絶対反対というわけではないが、執行力を付与する場合には、厳格な要件が必要と考えている。強者に有利なADRにならないようにすることが大切であり、そのようなことがないように対策を講じる必要がある。そのための要件が先に挙げた4つの要件である。

○ 4つの要件の中に「紛争当事者が明示的に合意していること」を挙げられているが、いつの時点で合意していることが要件になると考えているのか。   

● 当該和解の内容について、弁護士がチェックする前までに弁護士が当事者に説明を行い文書で合意するものである。

○ 弁護士法第72条について、隣接法律専門職種等に職種ごとに手続主宰者となることを認める法制については個別に検討するとの考えであるが、これは個別法ごとに検討するという意味か。

● 個別法ごとに検討するという意味である。

○ 重要事項説明義務や手続主宰者の利害関係情報開示義務について、これを法的義務とすれば現場が混乱するとの説明があったが、特にBtoCでは、利用者に対してサービスの内容を説明することは当然であり、透明性の確保が求められていることについて、どのように考えているのか。

● 重要事項説明義務等については、あまり厳しく義務化すると実際のADRでは対応できなくなるし、ADR機関の格付けなどに繋がってくるおそれがあると考える。重要事項には、例えば、提供されるサービスの内容、利用者が支払うべき費用、それに手続の内容があるが、とりわけ、最後の手続の内容については、わかりやすく誤解がないように説明することは難しい。多くの民間型ADR機関に対して、一律にこの説明義務を課すのは現実的には困難だと思う。

○ 事前確認制度について、導入しないとなればそれ以外にいかなる方法があると考えているのか。

● 事前確認制度に代わる制度の導入は難しい。考えられるとすれば、①法的効果によってはそもそも適格性要件を要求しないこと、②適格性を要求するとしても、事後的に受訴裁判所が要件を認定することとすること、③機関や手続をあらかじめ法律に規定してしまうことがある。しかしながら、予測可能性の面で問題があるし、適格性の要件によっては事後的な裁判所の認定に馴染まない場合もある。事前確認制度の導入には反対意見も多いが、一定の事前確認はやむを得ないと考えている。ただし、現場に過度な規制をかけないようにお願いしたい。

○ ADRは白黒で決着がつくような問題ばかりを扱うものではない。弁護士であれば、誰であっても十分と考えているのか。

● 現在でも、弁護士会が行う仲裁については、一定の経験や能力(研修を含む。)があることを選任に当たっての要件としている。5年~10年程度の弁護士業務の経験があり、なおかつ、一定の素養がある者しか関与しておらず、弁護士であれば誰でもよいとは考えていない。

○ 利害関係情報の開示義務は新仲裁法には規定されているところである。きちんと検討して、仲裁のみならずADRにも適用することがスジであると思うが、どうか。

● 日弁連としては、ADRにも利害関係情報の開示義務を適用していこうと考えているが、この義務をこれから設立されるだろう多数の民間ADR機関に対し、一律に適用することが妥当かどうかは疑問である。     

○ 論点16の情報の利用制限についての考え方に誤解があるのではないか。調停で提出した情報を仲裁に出せなくなるとの趣旨ではなく、調停の過程だからこそ提出した情報を相手方に利用されないようにするとの趣旨である。

● 実務上においては、裁判所の民事・家事調停、弁護士会の和解調停も含め、裁判に持っていった場合、裁判官にこれまでの交渉経緯を説明することが多々ある。そのような場合においても、当事者は、割とフリーなスタンスで裁判官に交渉経緯を話している場合が多い。 

○ 弁護士法第72条問題について、手続主宰を行うに当たっては誰でも良いというわけではなく、弁護士の関与が不可欠との考え方であるが、そうであるとすれば、全国津々浦々で生じるADR全件について、確実に弁護士が関与できる体制を確保できるのか。そのような体制が担保できなければ、弁護士が多いエリアと少ないエリアとの間で格差が生じる懸念があるが、どう考えるか。 

● 現在、全国に約2万人の弁護士がいる。(2万人では)現時点では難しいが、新しいADR機関も立ち上がるまでに一定の時間がかかる。今後は、ロースクールなどから大量の弁護士が誕生することになるので、5~10年後には全国津々浦々に数万人の弁護士が誕生すると思われる。 

(2) 総合的なADRの制度基盤の整備に関する意見募集の結果

 事務局から、資料23-3ないし資料23-5に沿って夏に実施した意見募集の結果についての説明を行った。事務局の説明に対し、質疑応答がなされた。主なものは以下のとおりである(◎:座長、○:委員、●:事務局)。

○ 資料23-3の表現ぶりについては、どのような考え方に基づくものなのか。

● 単に「あった」という表現を用いているものは、少ないながらも意見があったということ。「相当数あった」はある程度まとまった意見があった場合に用いた。賛成意見も反対意見も「相当数あった」と書かれているのは、比較するのには適当ではない程度の差しかなかった場合に用いた。「二分されていた」などは、意見数がほとんど拮抗していた場合に用いた。

○ 学者・研究者や○○団体など、属性による提出意見の傾向などはわかるのか。

● 時間の関係でそこまで手が回っていない。ただし、同一人又は団体の意見については同一の通し番号を付けているので、それを御覧になれば論点ごとの意見の関連性はわかる。

◎ 意見全体で202ページもある。各委員におかれては、ぜひ、始めから終わりまで目を通してもらいたい。164件という予想以上の意見が寄せられ、その中には大変示唆に富むものもあった。属性は書いているので、それに留意しながら読めば、かなりの深読みができる。この意見募集結果については、これからの検討会でも存分に活用させていただこうと思う。

○ ADR主宰者等に関する主要国の資格制度等の比較について、P2の「ADR主宰」でいう「法律事務」は、仲裁を含むのか否か。

● 仲裁、調停全体を含むものである。断片的なものではあるが、入手できた情報を資料に示したものである。

○ 弁護士法第72条のような成文規定が存在する国は、日本以外にもあるのか。

● 資料1枚目の「業法上の資格制限」の欄に記載しているので、御覧いただきたい。各国にも成文規定は存在する。

○ それらの規定は、そのような規定ぶりになっているのか。

◎ 資料そのものは持っているので、提出可能なものであれば、追って提出する。

(3) その他

 その他として、今後の検討会の議論の進め方について、座長より、次のような考え方が述べられた。

  • この検討会においては、これまで1年半にわたる議論を行い、7月には、今後、更に検討を深めるべき論点を詳細に整理し、意見募集を行ったところであり、9月以降は、内外のADR関係者、弁護士会、隣接法律専門職種等の専門家、法務省からの意見をうかがってきたところである。
  • このように考えれば、ADRに関する法制を整備する場合に検討すべき論点はほぼ出揃った状況にあり、来年3月までの法案提出を目指すということになれば、あと4回ある年内の会合の中で、検討会において議論の収斂を図っていくことが必要である。 
  • 今後の検討会の進め方としては、いずれかのタイミングで、これまでの検討会の議論や意見募集の結果を踏まえつつ、現行制度との整合性といった法制的な側面からの要請も勘案し、事務局において法制的措置を体系的に整理した議論のたたき台を提出してもらうこととしたい。
  • ただ、時効中断効を付与する場合の具体的スキームや弁護士法第72条の特例の内容など、依然として委員間に大きな認識の隔たりがある問題もあることから、次回(10月27日)の第24回検討会においては、このような特定の論点について集中的に議論し、次々回(11月17日)の第25回検討会において事務局からたたき台を提出してもらうこととしてはどうか。

このような座長の考え方について、各委員間で意見交換が行われた。主なものは以下のとおりである(◎:座長、○:委員、●:事務局)。

○ 次回の集中的な議論において、執行力や事前確認については、議題としないのか。また、年明けの通常国会への法案提出に向けて、内閣法制局や議員との調整をどのように進めていくのか。

◎ 時効中断効の付与や弁護士法72条については、あくまでも例示として挙げたものであり、執行力を取り上げろと言われれば、取り上げる。事前確認は、これらについて集中的な議論を行う際に、当然に入ってくるべき論点であると考えている。

● 検討会には、内閣法制局などに対する調整の結果を踏まえながら議論の素材を提供していく一方で、この検討会の議論についても、その成果を活かすことができるような形で、内閣法制局などとの調整を行っていきたい。

○ 時効中断効、弁護士法第72条の議論を行うとなれば、その議論の内容は、事前確認制度を採用するか否かによって大きく結論が変わってくる。そのような意味で、事前確認制度を最初に議論することが適当と考えるが、議論が抽象的になってしまうので、執行力と一緒に(時効中断効や弁護士法第72条よりも)先に議論することとしてはどうか。

◎ 執行力、事前確認制度、時効中断効、弁護士法第72条ともに10月27日に一括して議論したい。事前確認制の付与は、それがどの程度の効力をもたらすのか、効果との関係で議論すべきものである。そのような観点で考えれば、時効中断効、弁護士法第72条、執行力と関連させて事前確認制度を議論していただければありがたい。

○ 事前確認制度については、相談からはじめて、もっと段階的に議論していきたい。

◎ 段階というよりも、効果との関係が重要である。例えば、相談について、事前確認制度を導入することについては、誰も考えてはいない。多数決というわけにはいかないが、11人の委員の多数がこの程度だったら妥当かなと考えるような着地点を探っていきたいと考えている。

○ 10月27日に取り上げるべき論点について各委員からの意見をきいていただきたい。

◎ 時効中断効、弁護士法第72条、執行力、事前確認制度が議論の対象になると考えている、基本的事項や一般的事項にも委員間で意見がわかれている部分もあるけど、小差であろう。特に御意見などがあれば、メールやFAXなどで(事務局に)送付いただいてもかまわない。

○ 次回の検討会で議論されなかった事項については、次々回の検討会以降、たたき台をベースとして御議論いただくことをお願いしたい。          

 次回、10月27日(月)13:30より第24回検討会を開催し、時効中断効、弁護士法第72条、執行力、事前確認制度などの論点を集中的に議論することとなった。

(以上)