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ADR検討会(第23回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成15年10月6日(月)13:30~17:05

2 場 所:永田町合同庁舎第4共用会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(説明者)
吉村典晃(法務省大臣官房司法法制部参事官)
鈴木 誠(日本弁護士連合会ADRセンター委員長)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議題

(1)総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング③
 ○法務省大臣官房司法法制部参事官 吉村典晃氏
 ○日本弁護士連合会ADRセンター委員長 鈴木 誠氏
(2)総合的なADRの制度基盤の整備に関する意見募集の結果
(3)その他

5 配布資料

資料23-1 法務省説明資料
資料23-2 日本弁護士連合会説明資料
資料23-3 意見募集に寄せられた意見の概要
資料23-4 意見募集に寄せられた意見
資料23-5 ADR主宰者等に関する主要国の資格制度等の比較(概要)
資料23-6 今後のADR検討会の開催予定

6 議事

[開会]

○青山座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第23回ADR検討会を開会いたします。
 それでは、本日の議事に入ります。本日はお手元の議事次第があると思いますが、議事次第のとおり、まず第1に法務省及び日本弁護士連合会から、総合的なADRの制度基盤の整備について、御意見をいただきたいと思います。2番目に、休憩を挟みまして、夏に実施いたしました意見募集の結果について事務局から、その概要を御説明願いたいと思います。3番目に、次回以降の検討会の議論の進め方について、皆様にお諮りしたいというふうに考えております。そういうスケジュールで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず第1の議題でございますがヒアリングに入りたいと思います。
 はじめに法務省から御説明いただきたいと思います。本日は大臣官房司法法制部の吉村典晃参事官に御出席いただいております。それでは早速で申し訳ございませんけれども、吉村参事官どうぞよろしくお願いいたします。時間は30分ほど予定しております。

〔総合的なADRの制度基盤の整備に関するヒアリング③〕

〔法務省〕

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)法務省大臣官房司法法制部参事官をしております吉村と申します。よろしくお願いいたします。座ってお話しさせていただきたいと思います。
 本日は、司法制度改革推進本部において意見募集を実施されました「総合的なADRの制度基盤の整備について」における各論点に対しまして、関係機関として意見を述べる機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 これから若干のお時間をいただき、必ずしも網羅的ではございませんが、各論点のうち、法務省の所管事項に関係するものを中心に、現段階における意見を述べさせていただきます。
 なお、法務省内の関係各部局の意見をとりまとめて述べさせていただくという関係で、詳細につきましては、後の質疑応答に委ねさせていただく部分もございますことをあらかじめ申し上げさせていただきます。
 お手元の資料のうち、法務省の説明資料23-1に基づいて、それでは個別の論点につきまして、ほぼ論点の順に沿って意見を申し述べさせていただきます。
 まず論点1の注に掲げられた論点でございますが、これにつきましては、行政処分に係る紛争について、ADRの対象とすることに関するものについて申し上げます。
 ここでは行政処分に係る紛争がADRによって解決することができる紛争であるかどうかという点が問題になろうと思われます。行政処分を前提とした私人間の紛争まで、いわゆる行政処分に係る紛争であるととらえるならば、そうした紛争が当事者の合意により解決可能であるということができますが、例えば抗告訴訟において、行政庁に対して行政処分の取消しを義務づけるような合意、このような合意をすることはあり得ないと考えられますのでADRによる解決には限界があると言わざるを得ないと思われます。
 また、行政処分に係る紛争の解決を民間ADR機関があっせんすることなどができるのかという点の検討についても、更に必要な検討を要すると思われます。
 更に行政訴訟においては行政処分をした行政庁を被告とすることとなりますが、民間型ADRにおける合意の主体を考えますとこれとは異なり、行政庁ではなく法人格を有するところの国または地方公共団体になる、こういう差が生じることにも注意を払う必要があろうと思います。こうした点を踏まえつつ、検討が進められるべきものと考えております。
 なお、このレジュメには掲げておりませんが、論点1の本文につきましても、これはADRの定義を試みるものでございましょうが、ADRに関する基本的な法制の対象を定める重要な論点であると認識しているところでございます。
 ADRの定義につきましては、その明確性が確保されるとともに、この基本的な法制の整備が適切なものとなるようにすることが相当であろうと思われます。
 意見募集の資料、5ページの本文におきましては、「裁判によらないで民事に関する紛争の解決を図るための手続であって、裁判上の和解を除くもののうち、3つの要素を満たすものであること」が要求されておりますが、今申し上げたような観点からパブリックコメントの結果等を踏まえて、更に検討を進めるべきであろうと考えております。
 続きまして、論点としては一番最後に掲げられているものでございますが、関連するものとして、ここで論点41、これは一番最後のところにございますが、論点41の意見募集における各事項の適用範囲についてもこの段階で申し述べさせていただきます。
 ADRに関する基本的な法制を整備するに当たり、意見募集資料ではADRに関する基本的な枠組みについて、基本的事項、一般的事項、特例的事項及び調停手続法的事項の4つに分類されております。
 これらが司法型、行政型と呼ばれるADRにも適用されることになるのかという問題提起が、今の論点に関するものでございます。
 ここで法務省として特に関心がございますのは、既に司法型、行政型ADRにつきましては、その手続や法的効果についての規律が存在していることから、ADRに関する基本的な法制の整備が、そうした既に存在する手続や法的効果の在り方にも及ぶものであるのかどうかという点が中心的なものになろうかと考えております。
 意見募集資料の88ページ以下では、一般的事項及び調停手続法的事項につきましては、基本的にADRに係るサービス提供者と利用者との間、または利用当事者間における合意を補完するものであるという性格を有するものと考えられるということ、特例的事項につきましては、民法、民事訴訟法、民事執行法等の基本法に対する特例を個別の立法趣旨に従って検討するものであるとの性格を有するものであると考えられることなどからいたしますと、いずれの事項につきましても民間型ADRを対象とするものとすることが適当であると考えられると述べられています。
 法務省といたしましても、民事・家事調停や行政型ADRにつきましては、その手続、効果について、民事調停法、家事審判法、各行政型ADRの個別の根拠法律で規律されているということにかんがみますと、基本的事項を除いて、ADRの手続、効果に関する規律につきましては、民事・家事調停あるいは行政型ADRには適用されないのではないかと、このように考えているところでございます。
 次の論点に行かせていただきたいと思います。
 論点16。基本的事項及び一般的事項として掲げられている論点につきましては、検討に当たって留意していただきたい点として、特にこの場で申し上げる事柄は特段にございませんので、調停手続法的事項に移らせていただきたいということでございまして、そこでこの論点16の調整型手続で得られた情報の裁断型手続及び訴訟手続における利用を制限することの可否について、このような論点について申し上げたいと思います。
 この論点16におきましては、意見募集資料32ページの脚注32に述べられておりますように、国際連合国際商取引法委員会いわゆるUNCITRALでございますが、この委員会において採択されました、国際商事調停模範法第10条第1項と同様の規律を導入するべきかどうかという問題が問われているものと理解しております。
 すなわち、これは調整型手続において和解が調わず、訴訟手続を含む裁断型手続に移行しても調整型手続において和解を調えるために開示した自己に不利益な情報が、自分の意思に反して後続する裁断型手続において、相手方によって利用されることがないようにすることによって、こういうことによって調整型手続における和解による紛争解決を促進するという趣旨のものであろうと理解しております。
 このように、調整型手続の過程で開示された一定の情報等の利用を制限することの、法的性質につきましては、これは意見募集資料32ページ以下では「(法律上の効果)」、このようにして述べられておりますが、そこで述べられているように、調整型手続における一定の情報等を証拠として利用しない旨の当事者間の合意に基づくものと、このように理解することができるのではないかと考えております。
 当省といたしましては、この点につきましてパブリックコメントの結果や、我が国における調停を利用する当事者の意識等を踏まえて、現時点でこのルールを採用する必要性の有無についての検討がされるべきではなかろうかと考えております。
 なお、論点16の②における別案として掲げられております、サービス提供に関する重要事項の説明義務の内容に、調整型手続情報の取扱いに関する事項を含めることにつきましては、これは仮にこの②の本案の考え方を採用した場合においても、別案の方の採用が検討されるべきではないかと、このように思われます。
 次に、論点17について申し上げます。これは調整型手続の主宰者を仲裁人に選任することを制限するかどうかということについての論点でございますが、これにつきましても論点16と同様の問題意識に基づいて、国際商事調停模範法第12条と同趣旨の規律を導入すべきかどうかという問題であろうと理解することができます。
 この論点につきましても、採否が問われておりますルールの趣旨、すなわち裁断型手続、訴訟手続、こういった手続に対して調整型手続における当事者の自由な交渉を確保すべきであるとの趣旨に照らしまして、パブリックコメントの結果などを踏まえて、現時点でこのルールを採用する必要性の有無についての検討がきちんとされるべきであろうと考えられます。
 なお、論点17の②において、ルールを採用するとの考え方を採用した場合におきましても、別案として掲げられておりますようなサービス提供に関する重要事項の説明義務の内容に含めることの採用についても検討すべきものと考えられます。
 次に、論点18について申し上げます。論点18は、意見募集資料の36ページに挙げられているように、手続の開始時期、終了時期、主宰者の数及び選任の在り方、手続の進行方法の決定、主宰者と当事者との間の個別面接の可否を含む連絡の在り方、主宰者が当事者の一方から受領した情報の開示など、これも国際商事調停模範法において採用されたルールを参考として、調整型手続に関する一般的な手続ルールを体系的に法制化するべきではないかという問題でございますが、これは裁判所における民事調停、家事調停といった手続とは異なり、当事者間における調整型手続によって和解を行うという合意及び当事者とADRに係るサービスの提供者との間におけるADRの利用に関する合意によって進められる調整型手続についての基本ルールを定めることの要否について問うものであると理解しておりますが、この点につきましては、当事者間の合意により進められる調整型手続におきまして、合意が得られない場合における原則的な取扱いを定める必要があるという趣旨についてのコンセンサスが得られるかどうかということを見極めつつ、検討を進めていく必要があるものと思われるところであり、論点としても述べられているとおり、これは今後の課題であると考えているところでございます。
 続きまして、特例的事項について申し上げたいと思います。特例的事項のうち、まず論点19、20、36のADRの申立てにつきまして、いわゆる個別労使紛争解決促進法タイプの仕組みで、時効中断効に関する特例を設けるかどうかという問題についてでございます。
 この、いわゆる個別労使紛争解決促進法タイプでは、申立てには時効中断の効力を認められないものの、後に訴えが提起されると申立てのときに訴えが提起されたとみなすということになっております。
 したがいまして、実質的に見ますとADR手続進行中は時効が停止しているのとほぼ同様の効果となるわけでございます。このような効果は、紛争解決に役立つ手続が進行しているからこそ、特に認めることが許されるものと、このように考えられますので、このような効果が付与されるADRは手続主宰者の紛争解決能力も含む、一定の適格性を具備していることが必要であろうと考えます。
 そして、一方では当事者の時効中断に関する予測可能性を確保するという観点も必要でございますので、このような観点からは、そのような時効中断効が付与されるADRか否かは、ADRへの申立て時点においても当事者に明確になっている必要があると言えるのではないかと思われます。
 後の裁判において、当事者がADRに係る適格性が備わっていることを立証しなければならないというような方式をとりますと、この予測可能性というのが確保されないということになろうかと思います。
 また、当事者に適正、適格性などの評価を含む事実を裁判で立証させるということは、当事者に過度の負担を負わせることとなりましょうし、この点に関する紛争が原因で、かえって訴訟遅延につながりかねないという問題もございます。
 したがって、先ほど申しました適格性というものの確認方法につきましては、事前確認方法によるべきではなかろうかと、このように考えます。
 以上の点から、いわゆる個別労使紛争解決促進法タイプの仕組み、こういう仕組みを使って時効中断に関する特例を設けることにつきましては、手続主宰者の紛争解決能力も含む一定の適格性を要件として、その確認方法については、事前確認方式を採用する必要があるのではないかと考えております。
 次に、「ADRにおける和解に対する執行力の付与を認めるか」という論点21、37について申し上げます。この論点21につきましては、国家機関が関与することにより執行力を認められている現行法制の下で、単なる私法上の和解に執行力を付与することができるとするその理論的根拠について、これをまずもって、きちんと検討されるべきではなかろうかと思われます。すなわち、ADRにおける和解というのは、あくまでも民法上の和解でございますので、その効力としては民法696 条の規定により、争点についての合意自体を、後に争えなくなるということになるわけですが、争点についての合意の前提について、何らかの瑕疵があるということになりますと、その効果を争う余地は出てくると、このように理解できると思われます。
 このようにADRにおける和解が確定判決と同一の効力を有するものでもない点で、仲裁とは全く異なるものであるということに照らしますと、どんな形であれ、まずADRにおける和解に執行力を付与するということの理論的根拠、あるいは法的な仕組みの在り方が問題になるのではないかと考えます。
 また、意見募集資料50ページの脚注49に指摘されていますように、ADRに既判力が認められないことから生ずる論点につきましても、検討が進められるべきであると考えております。
 なお、仮に執行力の付与を認めることができるとした場合でも、対象となるADRにつきましては、一定の適格性を有するものであることを要件とすることが必要となると考えております。
 次に、ADRを利用することによりまして、調停前置主義の例外を認めるべきかという論点22、23、38について申し上げます。現在、地代借賃増減請求事件、あるいは一般の家庭に関する事件、これらの事件につきましては、民事調停法あるいは家事審判法におきまして、いわゆる調停前置主義が採用されているわけですが、この調停前置主義の趣旨、すなわち民事に関する紛争のうち継続的な関係である借地借家関係の紛争とか、あるいは身分関係の紛争というものなどにつきましては、訴訟によらずに当事者間の合意により紛争を解決することが望ましいと、だからこそ、まずは調停を試みるべきであるということでございますので、やはり原則としては調停を経てから訴えを提起するとされるべきであると考えております。
 その意味では、意見募集資料52ページの趣旨の部分におきまして、一定の事件について調停前置主義を採用する現行制度の整合性、これを確保することが必要であるとされていることには賛成する次第でございます。
 そして、基本的な考えについての論点22に示された論点として取り上げる趣旨も踏まえますと、論点23の提案の内容については現行の調停前置主義の実質を確保した上で、ADRが利用された場合には、その結果等も踏まえて裁判所が事件を調停に付さないことができるということを、明確にしようとする趣旨であると理解される②の考え方によって整理することも可能であろうと思われます。
 したがいまして、今後、具体的にどのような規定を設ける方向で検討がされるのかということを見据えつつ、法務省としても更に検討を続けてまいりたいと考えております。
 なお、仮に論点23の①の考え方を採用することによりまして、調停前置主義の例外を認めることとする場合には、同様に、ADRが一定の適格性を有するものであることを要件とすることが必要であろうとこのように考えております。
 次に訴訟の当事者がADRを利用している間に、訴訟手続の中止を認めるかどうかという点についての論点24、25、39について申し上げます。
 民事訴訟におきましては、訴訟手続の進行については裁判長の職権によることとされております。したがいまして、当事者の意見も聞きつつ、訴訟指揮権あるいは口頭弁論期日等の指定権の範囲内におきまして、必要な場合には実質的に訴訟手続の中止がされるのと同様の取扱いを実現すること、これは実務上も可能となっていると認識しておりますので、このような実務の運用によらずに訴訟手続の中止を法制度として認めるといった必要性については、更に十分に検討を進めていただきたいと考えております。
 仮に、訴訟手続の中止を法制度として認めるとする場合には、以前、検討会においても御指摘がありましたように、司法制度改革における裁判の迅速化の要請に照らして、たとえ当事者間にADRで和解を試みる等の合意がある場合でありましても、当事者が和解を行おうとするADRが、迅速を旨とする訴訟手続を一旦中止してまでも、裁判所以外の場で和解を進めることが相当であると言えるような一定の適格性を有するものであることが要件とされることが必要になるのではないかと考えられます。
 次に、裁判所がADRを利用した和解交渉を当事者に対して勧奨することなどについて、制度化すべきであるかという論点26について申し上げます。この論点につきましては、裁判所外のADRの利用が紛争解決に当たって有効な場合があると考えられることから、ADRの利用促進のために法制化を行う必要があるのではないかと、こういう問題意識に基づくものであると理解しておりますが、ADRについての情報が広く一般に提供されるようになってまいりますと、特に制度化を図るまでの必要性が認められるのかという点に疑問もあるところでございまして、なお検討をする必要があるのではないかと考えております。
 次に、ADRと訴訟手続の連携のその他の方策をとるべきかという論点27について申し上げます。この論点につきましては、仲裁を除く当事者間の合意により解決を図るADRの性質に照らしますと、論点に挙げられておりますとおり、そこまでの方策をとる必要性の有無について、慎重な検討が必要ではないかと考えております。
 なお、先の通常国会において成立いたしました民事訴訟法等の一部を改正する法律によりまして、訴え提起前の証拠収集の処分等の制度や、争点整理等の手続において裁判所と当事者とが直接専門的な知見を有する者である専門委員から説明を受けることができるといった制度が設けられました。
 この論点の問題となる場面につきましても、このような制度を活用することによる対応も可能であろうと思われます。
 その次の論点の、ADRにおける代理人費用、これを民事法律扶助の対象にすることにについての論点28につきましては、本日、特に申し上げることはございません。
 次に「7.専門家の活用」についてでございまして、論点29~34に関する部分でございます。
 意見募集資料の65ぺージに示されております、「弁護士でない専門家が、その有する専門的知見を最大限に活用しつつ、安心してADR主宰業務を行うことができるよう」、少し飛ばさせていただきますが、「・・・弁護士法72条の適用について特例を設ける」と、こういった方向性、これ自体については基本的に望ましいことと考えます。
 ただし、弁護士法を所管する当省の立場としては、次の点に留意して今後の検討を進めていただきたいと考えております。まず、総論的なお話でございますが、弁護士法72条とその特例との関係について申し上げますと、まず第一に、弁護士法72条、これは昭和46年に最高裁大法廷判決がございますが、この72条は当事者その他関係者の利益を保護し、また法律生活の公正円滑な営み、ひいては法律秩序を維持するためには、法律事件に関する法律事務は、原則として弁護士という法律に関する専門的能力を有し、かつ高度の倫理的規律に服するものがこれを行うことが必要であるという趣旨の規定であると理解しておりますので、この趣旨、目的というのは現在においても合理性、妥当性を有すると考えております。
 したがいまして、この72条の特例を設けるという場合には、この趣旨を損なうことがないように、すなわち当事者や関係者の利益、法律生活の公正円滑な営み、法律秩序の維持、こういったことが担保されるように明文で要件を設定していただく必要があると考えております。
 また、御承知のように弁護士法72条は罰則の構成要件となっておりますので、同条の特例はこの構成要件を一部変更すると、こういう側面を有するものですから、その規定内容は明確なものにしていただく必要があると考えております。
 それで、こういう総論を踏まえまして、まず論点29~31、これがADR主宰業務についての論点でございますが、この主宰業務についての論点について申し上げます。
 弁護士法72条は、仲裁あるいは和解を法律事務であるとしており、ADRの主宰行為もそれが法律上の効果の発生、あるいは変更に向けられたものであるならば、同条の構成要件に該当すると、このように解するところでございます。
 ただし、他方、一般論として申し上げれば、弁護士以外の者が行うADRの主宰業務であっても、法令上、弁護士以外の者が行うことができるとされているような場合は、当該法令は弁護士法72条の例外であるということになろうかと思われます。
 また、それ以外の場合であっても、弁護士以外の者が行うADRの主宰業務には、当該ADRの態様、ADRを主宰する機関の組織体制、主宰者の法的能力、倫理の担保、報酬額の多寡、実績、社会的評価等、さまざまな事情が考慮されて、正当な業務による行為として違法性が阻却される場合もあり得るところと考えております。
 さて、ADR主宰業務について、この72条の特例を設けるとするならば、この同条の趣旨を維持するという見地から、少なくともこれを行う者の法的能力や倫理を確保、あるいは補完するための要件が必要であろうと考えています。その要件は今後、具体的に検討されるべきものと考えますが、意見募集資料のようにADR機関に弁護士の関与、助言を確保するために公正適確にADRを行うことのできる組織的基盤を有することを求めること、これは論点30の①の1のところに書いてございます、また、一定の不適格者を排除する、これは論点31に書いてありますが、このような方法も一つの方法であろうと思われます。
 しかしながら、論点35以降に触れられているような事前確認の制度を採らずに、法文に要件を列挙するということのみによって、規定内容が明確で、かつ、ADR主宰業務を行おうとする者や利用者の予測可能性を確保できるような特例規定を設けること、こういう特例規定を設けることは難しさがあろうと考えております。
 この点で事前確認の制度は明確性を確保するためには有効であり、また現実的な方法であると評価してあります。
 勿論、特例の対象を極めて限定的なもの、例えば個々の事件について弁護士と共同するということ、あるいは弁護士から書面による助言を受けるということ、こういったことを要件とすれば、それ自体明確な規定とすることは可能であろうとも思われますが、それがこの趣旨、すなわちADRの健全な発展のために弁護士でない専門家の有する専門的知見を更に活用するという趣旨にかなうものになるのかどうかという問題があり、内外からADRの実態や社会のニーズに対応していない、過剰な規制であるという批判を受けることにもなろうかと考えられます。
 もう一つの特例の在り方としては、やはり意見募集資料にありますように、隣接法律専門職種等の専門資格者について、個別的に当該資格者の専門分野、専門的能力に着目し、必要があれば能力、倫理の担保の措置を講じた上で、特定の種類のADRの主宰業務を当該資格者の業務に追加するというアプローチも考えられるところです。
 この場合、これまで司法書士等の隣接法律専門職種の権限の拡大の際、いろいろ御議論いただきましたのと同様に、弁護士法第72条の趣旨を維持することができるかという観点から、資格類型ごと、ADRの種類ごとに個別的に要件を検討していただきたいと考えております。
 なお、論点32には相談業務について同様に弁護士法72条の特例を設けるという考え方が示されておりますが、この相談業務というのはどのようなものかという定義づけの問題もいろいろあろうかと思いますが、ADR主宰業務と相談業務には性質上相違点もありますし、相談は本来、極めて広い概念であり、そのすべてがADRに結び付くものではないことに留意して、これは慎重に検討を進めていただきたいと考えております。
 また、ADR代理業務、これは論点33のところでございます。この代理業務に関する弁護士法72条の特例についての論点について申し上げますが、弁護士法72条は代理をも法律事務であるとしており、ADR代理業務もそれが法律上の効果の発生、変更、そういった効果をもたらすものであれば、同条の構成要件に該当すると解されます。
 したがって、弁護士以外のものにADR代理業務を行うことを認めるためには、同条の特例を明文で設けなければならないこと、また、その規定内容が明確である必要があること、これはADR主宰業務と同様であろうと思います。
 そして、特例を設けるに当たっては、個別的に当該資格者の専門分野、専門的能力に着目し、必要があれば能力、倫理の担保措置を講じた上で、特定の種類のADRの当該業務を当該資格者の業務に追加するというアプローチが妥当であろうと考えます。
 この場合、司法書士等の隣接法律専門職種の権限の拡大の際の議論と同様に、弁護士法72条の趣旨を維持することができるかという観点から、資格類型ごと、ADRの種類ごとに個別的に要件を検討していく必要があろうと考えております。
 なお、論点34はADR代理業務の遂行に必要な範囲で、相対交渉における和解についての代理権も認めることについて問題提起がされておりますが、この点、ADR代理業務と同様に、各専門資格者の業法において、当該権限を規定していくというアプローチに問題はないと考えますが、主宰者の関与、監視の期待できるADRの代理業務と、そのような事情のない相対交渉における和解の代理権とでは、当該専門資格者に要求される能力、倫理の担保措置も格段に異なり得るのではないかと、このように考えております。
 少し時間が超過いたしましたが、以上で法務省の意見とさせていただきます。

○青山座長 ありがとうございました。ちょうど30分の御説明をいただきました。
 それでは、ただいまの法務省の御説明につきまして、委員の方から何か御質問があれば、頂戴したいと思います。質疑は一応30分ほど予定しておりますので、どなたからでも結構でございます。どの点からでも結構でございます。どうぞよろしくお願いします。
 廣田委員、どうぞ。

○廣田委員 法務省の御意見は承りましたけれども、例えば、時効についてはパブリックコメントに対して法務省の今の御意見とは違うような、いろいろな意見も出ていますね。それは御存じのとおりだと思います。
 また、事前確認方式を前提とした御意見だけれども、これに対しても多くの反対意見が寄せられています。
 そこで、全般にわたることですが、今の御意見の枠内で検討せよというのでは、まさかないと思いますね。もし、枠内で検討せよというのであれば、最初からそういうことを言っていただいて、その上で諮問をされればいいのですけれども、この検討会は御存じのとおり、ADR基本法をつくるかどうかも明らかでないところからスタートして、白紙の状態で自由に議論することを前提にしているわけです。そうでなければ、この検討会で協議する必要もないし、パブリックコメントを出して一般から意見を募る必要もないということになるわけです。
 したがって、法務省の御意見は1つの意見として、この検討会は最初の前提のとおりに、ヒアリングの結果とか、一般からの意見を参考にしつつ協議をする。そして、何らかの結論を出すということで当然よいというふうに考えてよろしいでしょうか。
 それともう一つ、その結論が、例えば、今の御意見と違うようなことがあっても、当然、法務省としては、それを尊重して更に御検討いただくというふうに考えてよろしいですか。

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)この事前確認制度につきまして、法務省として、これが唯一の方法であるということで積極的に導入すべきであるという立場をとっているわけではございませんで、先ほども御説明させていただきましたが、例えば、弁護士法72条の刑罰法規としての明確性、あるいはその他の手続につきましても、利用する当事者にとって明確となっているかどうかという観点が重要であろうと。これを解決する一つの手段としては、事前確認の制度というものがあるという趣旨で申し上げさせていただきました。
 また、この検討会での御意見はいろいろと、こちら側でもよく検討させていただきまして、法制的に可能かどうかということも、十分検討させていただきたいと思います。

○廣田委員 ですから、もう一つ確認ですが、1つの御意見としては承って、我々は参考にするということでよろしいですね。

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)これはむしろ、検討会の趣旨と申しますか、あくまでも検討会の中で法務省は意見を言わせていただく機会がございますので、法務省として、今、考えているところを申し上げさせていただいたということでございます。

○青山座長 今の吉村参事官の言われた最後の点がそのとおりで、私どもの諮問は、司法制度改革推進本部というところから諮問されておりまして、その際に、関係省庁、その他からヒアリングをしなくてはいけないと。特に、民事手続の基本法制を所管しているのは法務省でございますので、その法務省の意見も、この際、きちんと聞いておこうという、それだけの趣旨でございますので、どうぞそういう前提で御議論いただきたいと思います。
 ほか、どうぞ。

○山本委員 2点お伺いしたいのですが、御説明資料の2ページの7の執行力の付与に関する御説明で、「単なる私法上の和解に執行力を付与することはできないとするその理論的根拠について、検討がされるべきである」という御意見と承っているわけですが、私も理論的な十分な検討をしているわけではないので、この趣旨について、もう少しお伺いしたいのですが、勿論、現行法上も一方では執行証書というものがあって、それは私人間の合意について公証人が公証行為を行うことによって執行力が付与される制度であるというふうに理解しておりますし、他方では民事調停という制度がありまして、これは当事者間の和解、それは司法上のものか訴訟行為としての性格を持つかということは議論がある得るところだろうと思いますが、その一定の和解に執行力が付与するという制度があるというふうに承知しております。
 勿論、それは公証人あるいは調停機関という国家機関が関与するものであるということはそのとおりだろうと思いますが、この論点に掲げられている制度も、事後的には勿論、裁判所が執行決定という形で関与をするわけでありまして、その意味では国家機関が関与すること、執行力を付与するための要件としては国家機関が関与しているということ、その関与の仕方が異なるわけでありますが、それではやはり不十分であると、国家機関が関与することにはならないという御趣旨かと承ったわけでありますが、そうすればそこをもう少し御説明をいただければというのが1点です。
 それから、第2点は、論点9の訴訟手続の中止についての御説明の中で、訴訟指揮権、あるいは期日指定権の範囲内で、実質的には訴訟手続の中止がされるのと同様の取扱いを実務上も実現することが可能であるというお話で、そうすれば法的、法律上、このようなものを規定する必要はないのではないかという方向での御意見かと承ったわけでありますけれども、その点は恐らくこの検討会でもそういう御議論があって、議論がなされたかと思うのですが、そのときに出てきた意見といたしましては、これは参事官も強調されたように、昨今、民事訴訟の迅速化というのは訴訟迅速化法とか、あるいは民事訴訟法の今般の改正による計画審理等によって、非常にその迅速性というのは求められていると。そういう中で法的な根拠もなく、裁判所の訴訟指揮権の範囲内で、民間のADRに事件を付託して、訴訟手続を事実上休止するような扱いをとることは、だんだん困難になってくるのではないかと。そうだとすれば、やはり法的に何らかの根拠を付与しないと、実質的には、そのような形で民間のADRを利用することはできなくなるのではないか、という懸念が述べられたかというふうに承知しておるわけでありますが、その点についての法務省の御見解、そういう規定がなくても十分に裁判所は、今後もこういうような実務上の取扱いというのはできるというふうにお考えなのかという点について、御意見を承ればと思います。

○青山座長 よろしくお願いします。

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)民事局の担当者の方から説明させます。

○青山座長 そうですか。それでは、民事局の原さんから。

○説明者(法務省民事局 原司局付)恐れ入ります。法務省民事局の局付の原でございます。
 ただいま御質問がございました項目につきましては、法務省では民事局が所管しておりますので、私の方からお答えをさせていただきます。
 御質問がありました後者の訴訟手続の中止の問題でございますけれども、これにつきましては、先ほど吉村参事官から申し上げたとおり、訴訟手続の中止の制度を法制的に必要とするのかどうかという点について御検討をいただければというのが、私どもの立場でございますので、ただいま山本委員が御発言になりましたような趣旨で、この制度が必要であるということで更に検討が進むということであれば、それを前提として私どもも制度を考えていくということになろうかと思っております。
 ただ、その際に、先ほどの裁判の迅速化の要請からいたしますと、裁判を止めてでもADRを利用すべきだというときのADRというのは、やはりそれなりの適格性が必要になるのではないか、こういう形の議論になっていくのではないかというふうに思われますので、その点についても更に御検討いただければというふうに思っております。
 次に、前者の執行力の付与についての理論的な根拠の問題でございますけれど、これは先ほど、山本委員が御指摘になられましたように、現在、執行証書でありますとか、あるいは調停調書など、私人間の合意を前提として作成される債務名義というものは、確かに存在しております。
 また、その中で国家機関がどのような形で関与するかということがございますけれども、先ほどの民間のADRにおける和解について執行力を付与するための制度として、現在、提案されておりますのが、事後の裁判所による執行決定の制度であると、このようになっているのでございますけれども、恐らく、これは新しい仲裁法における執行決定の制度を参考にしたものだというふうに伺っておりますけれども、そういたしますと、この制度は、事後に双方の当事者が立ち会う形で、双方審尋の形で決定を行う。かなり訴訟手続に近いようなものを念頭に置かれているのだろうと思っておりますが、そういたしますと、最終的に裁判の形式として、これは決定手続になるわけでございますので、決定によりまして、ADR和解と内容に瑕疵がないこと、ADRの合意の内容について、例えば、既判力が生ずるというようなことは、理論的にはなかなか難しいのではないかと思われますので、仮に執行決定を入手したといたしましても、権利者の側が強制執行を申し立てた後に、義務者の側がまた請求異議の訴えを提起することによりまして、執行決定以前の事由でございますADR和解における合意の瑕疵というものを、再び争えるというような形にもなりかねないということで、ほかの執行決定ですとか、ほかに先ほど挙がりませんでしたが、仮執行宣言付支払督促のような、一方的な手続あるいは裁判によらないで執行のための債務名義を作成する手続に比べますと、かえって手続が重くなっていくことにもなるのだといった理論的あるいは技術的な観点からも、こういった制度を導入することが相当かどうかということは、更に検討していただければという趣旨で申し上げているわけでございまして、理論的に全く認める道がないというようなことを申し上げている趣旨ではございません。
 現在、認められている債務名義と同じような形で、仮に認めるというようなことがうまくできるのかどうか。そういった点を含めて考えていただきたい。こういう趣旨で申し上げたわけです。
 以上でございます。

○青山座長 三木委員、どうぞ。

○三木委員 お話の中に何点か、一定の適格性という言葉が出てまいりました。一定の適格性につきましては、大きく2つの問題がありまして、これをどういう方法で確認するのかという問題と、その適格性というものの内容をどう考えるかという問題であります。
 私がお伺いしたいのは後者の方でありまして、ここで法務省が言っておられる一定の適格性というものの内容として、どういうものを想定しておられるのか。多少なりとも、そのイメージが湧くような具体的な話を伺えればということでございます。
 もう少し敷衍して申しますと、例えばですが、法務省のペーパーによりますと、2ページ目の8になりますけれども、調停前置主義の例外を認めるかという論点がございます。ここでも、一定の適格性を要件とすることが必要であるという記述がございますが、調停であるということのほかに、更に適格性が必要という趣旨なのかと。
 調停前置主義というのは、家事の場合と民事の場合とで違うかもしれませんが、例えば、家事に関して言いますと、最初に話合いをしてから、裁断的な手続に移りなさいという趣旨と理解しております。
 そうすると、それは民間であっても調停がなされればいいのであろうと私は理解しておりまして、調停であるということのほかに何か付加する要件が必要なのかという趣旨なのか。そうだとすれば、その内容は何なのか。また、この適格性というのは、誰にどういう形で備わらなければならないのかという点についての御意見を伺いたいと思います。

○青山座長 これはどなたからお答えいただけますか。

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)一般論として申し上げますと、適格性について、それぞれ幾つかの項目がございまして、必ず常に同じかどうかということについては、何とも直ちに同じであるとも同じでないとも言い難いところがあろうかと思います。
 むしろ、その適格性をどのように定めていくかというのが、例えば、先ほど御説明いたしました事前確認とは別に法文上の要件として書き込むということになりますと、どういう形で書き込めばいいのかというのが我々としても非常に問題意識として持っているところでございまして、非常に難しい面があると、このように思っております。
 個々の項目についてどのような適格性を考えていくかというのは、それぞれ民事局なりがお考えのところがあれば、御説明いただきたいと思います。

○青山座長 それではお願いいたします。

○説明者(法務省民事局 原司局付)先ほど、三木委員から具体的に御指摘があった調停前置主義の問題ですけれども、調停を経るという三木委員が言われた内容自体は一つ問題ではあるのですけれども、調停の手続を当事者双方が利用したということだけで足りるのかどうかということなのだろうと思います。
 現在の家庭に関する事件についての調停前置主義の趣旨といたしましては、既にそれなりの話合いの実質というものが伴っているということが、当然、含意されているのだろうと思っておりますので、当事者双方がきちんと話し合いの場に着いている、その中で話合いを進める、合意に向けてのきちんとした取組みがされている。そのために主宰者が努力している。恐らく、そういうところまで突き詰めていくと適格性の中に入ってしまうだろうというふうにも思っております。
 そうしますと、どの段階で誰がその判断をするかということになりますと、当然のことながら、そのADRを利用する段階で、調停前置主義の趣旨を満たすようなADRが行われているかどうかということが、当事者にわからなければならないということにもなってしまうわけですけれども、そのような形で制度を仕組む方がよろしいかどうかということで、勿論、こちらで御検討になると思っておりますが、ただ、三木委員の御質問に対してはそのようなお答えになろうかなと思います。

○三木委員 今、法務省の原さんがおっしゃった、しっかり当事者間で話合いが行われているかということは、それは調停がしっかり行われたかということそのものであって、私が質問したのは、調停が行われたかどうかということ以外に、調停以外に何か付加的要件が必要であるかという趣旨です。

○説明者(法務省民事局 原司局付)私が申し上げたのは、そういうつもりではあったのですけれども、恐らく、調停という言葉でどこまで含意させるかという、その考え方の違いだったと思うのですが、私が申し上げたのは、今、三木委員がおっしゃるような意味であれば、調停ということ以外に付け加えるものはないのかもしれません。
 ただ、その調停としてイメージするものは若干違うのかということになろうと思います。

○青山座長 何か、ほかにございますでしょうか。
 廣田委員、どうぞ。

○廣田委員 今のことに関連してなのですが、その適格性の要件というのを、今のお話ですと一つひとつ当該の事件の中身のお話になると思うのです。ですから、それは裁判官に聞いてみなければわからないところがあると思います。
 今の適格性の要件は、機関というのはADR機関を想定しているのか、その機関で実際にやっている仕事を想定しているのか。仕事を想定しているというようなお答えに、私は今、聞こえたのですが、そうだとすれば、適格性の要件というのをあらかじめ何か書いて、個々の事件に当ててみなければわかりませんから、あらかじめ書いて、そういう要件を審査できるものなのかどうか。その性格上に問題があるのですが、その辺はどういうお考えですか。

○青山座長 では、原局付どうぞ。

○説明者(法務省民事局 原司局付)廣田委員の御指摘のとおり、私が先ほど申し上げた内容というのは二様ございまして、最終的には個別の事件において適格なADRを経由してきたということが、例えば、調停前置主義の場合であれば、それが調停前置の趣旨を踏まえたものであるという形で、個別具体的な内容になるのはそのとおりでございます。
 それと別に、利用する当事者の側から見て、どういったADR機関でADRを利用すればいいのかというような、調停前置主義の例外になるようなADRを利用したことになるのかどうかという観点も必要だろうということを申し上げたわけでございます。
 そのときに、これが事前確認という形でどこまで求めるかというのは、更に検討が必要だろうと思いますけれども、とりあえず一般論としては、最終的に裁判所の判断として調停前置を満たしていると言えるADRかどうかということと、最初に当事者がADRを利用する段階で、このADR機関であれば大丈夫だといえるという観点と両方あり得るのかと思っています。

○青山座長 原委員、どうぞ。

○原委員 重ねて適格性のところの質問で大変で恐縮なのですが、2点ありまして、1つはこの適格性と事前確認の話で、もう一点はちょっと違うところになるのですが、私も同様の質問を重ねてしようと思っていたところに三木委員から発言が出たのですけれども、やはり内容を何を想定しているのかと。どういう仮定の仕方というのが、やはり、相変わらずお答えを聞いていても、ちょっとつかめないというところがありまして、今、手元にGBDeというインターネット取引をしている事業者64社で構成しているところと、コンシューマー・インターナショナル、CI、国際消費者機構でADRのガイドラインを作られて、この11月から発効するという形になっているのですが、この中を見ますと、やはり適格性という言葉は全然出てこないのですね。何が書かれているかというと、ADRサービス・プロバイダーへの勧告のところで、例えば、公平性ですとか迅速性、消費者にとっての廉価性。それから、ポイントは透明性なのだと思うのですが、透明性で何の情報を開示すべきかということがかなり細かく列挙されていて、こういったところを判断に消費者は適格性のようなものを考えるということになるのだろうというふうに思うのですけれども、一括りの言葉で適格性と言われてしまうと、やはりその言葉だけで、例えば法案をつくるとか、必ずしもそういうことにはならないのではないかなというふうに考えています。
 ですから、やはり適格性という意味でつかみにくいということと、事前確認なのですが、これはパブリックコメントでも、かなり反対というのでしょうか、その意見が多いということと、私はそんなに国際的な話は知らないのですけれども、前々回の座長のお話にも、やはり事前確認方式というのは各国でもそんなにとっているところはないということがあって、これからADRが国際的な取引の場でも活用されるということになると、やはりこれは馴染まないのではないかなというふうに思っていて、そういうBtoCのレベルとか国際的な視野を入れたときには、話の組立て方が時効中断があるとしてどうとか、執行力付与があるとしてどうとかいうことで回答を作られているという感じがして、ADRはどうあるべきかだと、もうちょっと違う回答の書き方があるのではないかなというふうに思って拝見をしたので、もう少しその辺りを詰めていただければと。今、用意なさっていらっしゃる回答が今の御回答の中ということでありましたら、聞きましたというところでとどめたいと思います。
 もう一点なのですが、2番目に書かれている裁判所と行政機関が行うADRを対象とするかという論点41に関わるところですけれども、ここで書かれているのは、やはり民間型ADRを主にして、司法型ADR、調停ですとか、行政型ADRは適用されないと考えるという断定的な言い方になっているのですが、基本的事項はかぶるという認識であるかと思いますけれども、私としては、やはり行政型ADRですとか司法型ADRですとか、こういった紛争とかトラブルの解決のための仕組みとして、双方がよりよいものになっていくような工夫というのは是非していただきたいというふうに思っていて、全く適用されないということではなくて、適用していく条文によっては適用していく場合もあるというふうな御検討というのはお願いしたいというふうに思っております。
 ちょっと三木委員と同じときに手を挙げて重なってしまったので、恐縮ですが。

○青山座長 よろしいですか。事前確認と適用対象の問題ですけれども。

○説明者(法務省大臣官房司法法制部 吉村典晃参事官)事前確認の問題につきましては、先ほど最初に御説明しましたように、これが唯一の方法であるとか、これがベストの方法であるというように考えているわけではございませんで、勿論、当事者への明確性あるいは刑罰を受けるに当たって明確性という観点から、あらかじめこのADRというのは法的に許容されたものであるということがわかるという観点から、一つの方法として考えられると。勿論、法文に具体的にこういうものが適格性を持っているということを書き込むという方法が一つ考えられるわけですが、その書き込み方が非常に難しいという側面があろうという趣旨で申し上げているだけでございまして、勿論、事前確認というのが必ずしも望ましいものではないという意見があるということも承知しております。

○説明者(法務省民事局 原司局付)行政型ADRそのものを私どもは所管しているわけではないので、特に我々が何か申し上げるわけでも全くありませんけれども、とりあえず個別の法律で必要な制度の内容を書き切ってあるという前提に立つのであれば、今回の基本法は適用にならないという結論が出てくるのだろうと思います。
 ですから、私ども法務省民事局としては、このように考えておりますけれども、その個別の行政型ADRを立案する際に、当然このADR基本法というものとの関係を考えて規律をしていくことは当然あり得るだろうというふうには思っております。
 民事・家事調停に関して申し上げれば、これは恐らく民事調停法、家事審判法で賄えるのではないかなというふうに考えておりますが、行政型ADRについてまで、私どもがこういう方向でなければ行かぬということを申し上げるつもりではございません。

○青山座長 ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、大体、予定していた時間でございますので、法務省からのヒアリングと質疑応答はこれだけにしたいと思います。今日は、吉村参事官どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、大変恐縮でございますけれども、日本弁護士連合会から御説明をいただきたいと思います。本日は、日本弁護士連合会の鈴木誠ADRセンター委員長に御出席いただいております。前回、前々回と同様に鈴木委員長にお越しいただきました。どうぞ本日もよろしくお願いいたします。御説明は30分くらいを予定しておりまして、その後、また法務省と同じように30分くらい質疑応答をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

〔日本弁護士連合会〕

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)日弁連の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、今日までに日弁連でこの検討会に対して、この意見を述べさせていただく機会は3回目になると思いますけれども、一番最初が平成14年の7月22日に、このADRに対する全体的な日弁連としての取組み、これについて、書面に基づいて御意見を申し上げました。
 これは主に、この裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるように、あるいはこれの拡充・活性化のために日弁連として積極的にこれに関与していきたい。また、弁護士としても、これに積極的な役割を果たしたいということを中心とした意見を申し上げました。
 第2回目に与えられました機会は今年の4月7日でございました。このときは主として、ADRの手続主宰者について、日弁連がどう考えておるかという点について、簡単な書面に基づいて意見を述べる機会を与えていただきました。
 このときには、手続主宰者には法的知識というものが非常に重要であると。これを中心に考えていただきたいということを申し上げまして、弁護士以外のものが手続主宰者として活躍するということは基本的に賛成でありますけれども、その場合につきましては、弁護士の一定の関与、共存または助言というような関与が必要ではないかという御意見を申し上げたわけでございます。
 本日は、3回目ということになるわけでございますけれども、本日、意見を申し上げます中心といたしましては、本日、お配りしていただいております資料23-2というものに基づいて、御意見を申し上げたいと思います。
 まず、これには9月20日付で回答をいたしました総合的なADRの制度基盤の整備についての意見募集について、回答書というのがございます。これは大分詳しい回答書になっておりまして、全部で28ページございますけれども、日弁連の基本的な考え方はここに示されておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
 本日、時間の制限等ございますので、このすべてを申し上げることができませんので、これを要約いたしましたものを用意いたしました。
 これは最初に付いておると思いますけれども、5ぺージにわたります本日お話し申し上げるレジュメのようなものでございますけれども、ここに書いていないことは9月20日付の書面に書いてあるというふうに御理解をいただきまして、これを全体的に見まして、日弁連の今日における意見であるというふうにお考えをいただきたいと思います。
 それでは、それに基づきまして、ページ数が5ページの短い方に基づきまして、ただいまから時間の範囲内で意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、全般的な点についてでございますけれども、特に民間ADRの拡充・活性化につながるような法制、あるいはこの制度基盤というものを基本的に触れさせていただきたいというふうに考えております。
 民間ADRの利用がそれほどなされていないということは様々な理由があると思いますけれども、これはやはり潜在的なニーズはたくさんあるのではなかろうかというふうに我々は考えておりまして、現在の、特にこの民間ADRというものが非常に財政的な基盤、人的な資源の面におきましても、あるいはまた、国民一般から評価される信頼性というものから見ましても、まだまだ駆け出しの域を出ないというような感じを受けておりまして、これに対して大きくバックアップをしていただくような法制を考えていただきたい、そういう制度基盤を考えていただきたいというふうに考えておるところでございます。
 2番目に、これは当然のことでございますけれども、ADRにおきましては、広い意味での法の支配の原理というものが貫かれるべきであるというふうに考えております。これは内容的にもあるいは手続的にも適正な解決がなされるというような、信頼性のあるADRの普及というものを目指していくということが必要であろうかと思います。
 3番目に、弁護士会の仲裁センターを始めといたしまして、現に活動している民間ADRというのはいくつかございますけれども、その実態をよく把握をしていただきまして、その現実に見合った制度というものを考えていただきたいと思います。これに対する具体的な例といたしましては、またこの後に申し上げる機会があるかと思います。
 この次に、具体的な問題といたしまして、法的効果の付与に関する問題、それから、事前確認制度に対する問題、弁護士法72条の問題、これらを中心に、これらか個別的に少し意見を申し上げたいと思います。
 まず、法的効果の付与の問題でございますけれども、特に執行力の問題でございますけれども、ADRへの時効中断効の付与、あるいは執行力付与というものにつきましては、司法制度改革審議会意見書以来、ADR拡充・活性化のいわば目玉ということで検討されてきたと思います。
 弁護士会仲裁センターなどADRの現場からは今日の法制化でこれらの法的効果を付与してほしいと、それによって裁判や裁判所の調停との間のハンディキャップというものを少しでも埋めることができればいいなというような声が大変強かったと思います。
 この2つの効力の中でも、時効中断効につきましては、ほとんど問題がないといいましょうか、積極的に検討をしていただきたいと思います。
 後に述べる事前確認制度と関わってくる問題があろうかと思いますけれども、時効中断につきましては積極的に与えることによって、ADRの拡充・活性化につなげていただきたいと、このように思っております。
 次に、重要な問題が執行力についてでございます。これは先ほど、法務省からもいろいろな御意見がございましたけれども、結論から申し上げますと、絶対反対ということではありませんけれども、非常に慎重に考えていただきたいというふうに思うわけでございます。
 特に、我々の内部でいろいろ検討をしたところによりますと、悪質な業者が事前のADRを設置して、そこで市民や消費者に不利な和解を成立させるというような事態が現実に起こるのではないかという心配が、我々弁護士の間でこういうものを担当している者、そういう者から、あるいは弁護士会にいろいろ実情を訴えてくる者、そういう者からこういう可能性があるのではないかという指摘が大変強くございました。
 したがって、執行力を認めるということにしましても、一定の適格性を有する機関で成立した和解というものに限定をいたしまして、かつ厳格な要件と裁判所の審査の下にのみ与えるという仕組みが絶対に必要であろうというふうに思うわけであります。
 このパブリックコメントに付されたとりまとめの論点21に記された要件を更に吟味していただきたいと思います。
 執行力付与の適格性に関しましては、法的専門知識を有する弁護士などの関与は不可欠であるというふうに考えております。執行決定を求められた裁判所の審査事項につきましても、とりまとめ記載の事項のほかに、合意形成過程の妥当性の審査や、合意内容の違法性の審査も含めるべきであるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、執行力を与える制度を安易な形で導入するということではなくて、また各方面からの反対が強いとして、簡単にこれの制度化を諦めるというようなことではなくて厳格な要件の下に執行力を付与する、という適切な法制が可能かどうかを検討していただきたいというふうに思うわけであります。
 これをちょっと整理をいたしますと、執行力を認めるということにもしなるのであれば、まず第一に、ADR機関の適格性を厳格に認定をするということが、まず第一に必要だと思います。
 2番目に、その和解の成立に弁護士が関与しておるということは必要であろうかと思います。
 3番目に、その和解には執行の認諾をするという当事者の明示的な合意、同意が必要であろうかと思います。
 当然ながら、4番目に、裁判所の適切なチェック、これが必要であろうというふうに考えるわけであります。
 また、ここにもちょっと触れましたように、特にADR係属中の裁判手続の中止とか、あるいは裁判所外のADRの利用勧奨の制度が設けられるというようなことになった場合には、やはりADRの「出口」とも言うべき執行力について、これが全くないということでは、利用者の満足のいく手当てがなされないということになろうかと思いますから、ただいま申し上げたような厳重な要件の下に、これを可能にするというような手だても必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
 次に、事前確認制度について、申し上げたいと思います。
 事前確認制度につきましては、所管する行政庁がどこになるのかという現時点ではわからないというようなことがありまして、制度のイメージが湧いてこないというところがありますけれども、会内では反対が相当に強く出ておりました。
 例えば、規制緩和に逆行するのではないか、あるいはADRの選別になる、格付けにつながるというようなことにはならないか。ADRの規制につながって、多様性を阻害するのではないかというような意見がありまして、手続自体が非常に重たくなりADR機関の現場が大変である、それから、制度全体としても非効率であるというような反対意見が寄せられておりました。
 他方、法的効果、特に執行力を付与するのであれば、この信頼性確保と利用者への予測可能性確保のためには、一定の事前確認はやむを得ないのではなかろうかというような意見もありまして、双方の意見が拮抗しておったというようなところでございました。
 この事前確認制度の是非というものは、一つにはどのような法的効果を与えるかということの相関で決まってくる面があるのではないかと思います。あまり小さな法的効果のために、事前確認制度を導入して、これをカチカチの制度にしてしまうというようなことでも、またバランスを失ってしまうのではないかというふうに思います。
 また、上記の反対論に鑑みまして、仮に導入するといたしましても、ADRの多様性を害しないように、また制度自体をあまり重たくし過ぎないよう格段の配慮が望まれるところでございます。
 更に、法的効果付与のために一定の適格性要件が必要だということになりましても、それを担保する制度として、とりまとめに記されているような事前確認制度しかないのかどうか、更にこれを鋭意御検討いただければありがたいというふうに思っているわけでございます。
 次に、弁護士法72条の問題について、当連合会の意見を申し上げたいと思います。
 それはいくつかに分かれますけれども、まず第一に手続主宰者の問題、手続代理の問題、相談の問題、この3つに分けて申し上げたいと思います。
 手続主宰者の問題につきましては、先ほどちょっと触れましたように、本年の7月7日に書面をもちまして、これに対する日弁連の意見を申し上げておるところでございます。 そこで申し上げましたことと当然ながら同様でございますけれども、弁護士以外の多様な専門性、あるいは能力を持った方に手続主宰者として活躍していただくということは、大変重要なことであろうと思います。
 この法律事件について報酬を得る目的で業として行う和解・仲裁、これは弁護士でなければできないということが現在の弁護士法72条に記されておるわけでございますけれども、これを一定の条件で緩和をいたしまして、弁護士の一定の関与を条件として一般的に緩和するという法制をこの4月に提案をいたしました。
 今回の回答書でも同旨の意見を述べておりますけれども、すなわち倫理的な面も含めた広い意味での法的専門知識がADRにおいても基本となる手続主宰者の資質・能力であることを踏まえた上で、手続主宰者の供給源を大幅に拡大すべく弁護士法72条を和解仲裁に限って緩和するということでございます。専門家の専門能力の活用という要請は、現に弁護士会仲裁センターなどで行われておりますように、鑑定人や助言者として活躍していただくことが現実的な方法でありますし、更に申し上げましたとおり、弁護士の関与の下に手続主宰者として活躍していただくという道も開かれているということになりますと、本来、それで十分ではないかというふうに考えられるところでございます。単にその分野の専門家だからということだけで、無条件に業として手続主宰を認めることは適切ではないというふうに考えているわけでございます。
 とりまとめ論点30に記載されております、隣接法律専門職等に職種ごとに弁護士の関与なく手続主宰者となることを認める法制につきましては、司法制度改革審議会意見書の趣旨にのっとりまして、まず第1に、各職種の内容、専門性、実情。第2に、その固有の職務と法律事務の関連性。第3に、各職種の専門性を活用する必要性を踏まえて、個別に検討すべきであります。
 ここでも単に一定の法律分野の専門性を有するというだけでは足りませんで、法的専門知識が相当程度あることのほかに、その職種が紛争解決手続に携わることを予定しているかどうかといった紛争解決への関与の側面及び倫理的な担保があるかどうかという点についても、検討すべきであるというふうに思うわけであります。
 その上で、弁護士の関与なく手続主宰者として関与できる紛争の範囲、またはADR機関を職種ごとに能力担保措置として併せて、ADR検討会で基本的な考え方、基準や条件について、議論をしておくべきではないかと思います。
 次に、手続代理について申し上げたいと思います。
 ADR手続代理につきましては、ADR法で対処するのが適当ではないというふうに、私どもは考えております。現行法制の枠組みと趣旨を踏まえて、個別に検討していくべきであるというふうに考えます。
 ADRは紛争の解決手続であり、当事者及び第三者の法的権利義務の処分と確認を伴うものであります。救済を求める当事者の代理人には、万一にも当事者の弱みにつけ込むことのないよう高度の職業倫理が要求されております。
 弁護士法72条の立法趣旨は、歴史的にもまさに代理の局面で最も問題とされてきたところであります。したがって、ADRだからといって無原則に弁護士法72条を緩和してよいということにはなりません。司法制度改革審議会意見書の趣旨にのっとりまして、第1に各職種の内容、専門性、実情。第2に、その固有の職務と法律事務の間連性、第3に各職種の専門性を活用する必要性を踏まえて、個別に検討すべきものであります。
 特に、現行法制上、法的紛争解決手続ないし紛争解決一般にどの程度関わることを予定されているか、能力・適性、これは倫理的な面も含めまして、これを担保するためにどのようなことが行われているかを考慮した上で、各専門職種ごとに検討すべきものであります。
 このような検討を経た上で、ADRで代理できる紛争の範囲ないしADR機関を適切に限定すること。適切な能力担保措置の要否についても検討することを条件に、弁護士法72条の代理の部分についての緩和を考えるべきであるというふうに考えます。
 これまでも弁理士法の改正などで同様の方式で緩和が行われてきております。ここでも、その分野の専門家だからということだけではなくて、代理業務が認められるわけではないわけであります。
 次に、相談について申し上げたいと思います。
 この相談というのは、非常に広い概念であろうかと思いますけれども、相談というものがADRにつながる入り口であるということは、すぐ理解できるわけですけれども、ADR拡充・活性化のために重要なものであるということは理解しているわけですが、相談に関して、この手続主宰者と同様の考え方で現行弁護士法72条を緩和しようとしているように見える論点32については、いささか賛成できないものがございます。
 相談というものは、ADRよりはるかに広がりがある、広い概念でありまして、相談一般をADR法の適用下に置くということには賛成できないということになります。
 ADRの入り口について、この相談ということが行われることは十分理解していますけれども、相談から、それではどこへ出ていくのかということの出口の面で考えますと、ADRに出ていくというのはほんの一部ではなかろうかと。多くのものがADR以外のものに出ていくというふうに我々は考えておるわけです。
 したがって、相談業務一般についてADR法というようなものができて、規制あるいはそれを対象にするということになりますと、ADRと直接関係のないような相談がその範囲の中に入ってきて、非常にややこしいものになってしまうのではないだろうかというふうに考えておりまして、この相談というものについてADR法の適用下に置くことには反対であるということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、一般的な事項、調停手続的事項について申し上げたいと思います。
 利用者への情報開示、ADRへの信頼性の確保、国際的な潮流を踏まえて、これらの点について活発に議論がなされることは望ましいことでありまして、弁護士会ADRの実務も、これらの議論を十分参考にさせていただきたいと思っております。
 しかし、法制化に当たっては、現場のADRの実態を踏まえた議論をしていただきたいと思います。いまだ揺籃期にある民間ADRの現場に不必要な重荷を背負わせるようなことは慎重であっていただきたいと思います。二、三、申し上げたいと思いますが、重要事項説明義務や手続主宰者の利害関係情報開示義務、とりまとめ論点13、14については、考え方は理解できますけれども、これをすべての民間ADRに一律に法的義務というように重ねますと、現場の混乱と萎縮が懸念されるということになると思います。
 重要説明義務につきましては、利用者が利用するかどうかを決める段階で説明しなければならないということになりますと、多くの場合、ADR機関の事務局がこれを行うことになろうかと思いますけれども、事務局レベルで手続や手続主宰者選任といった法的事項について、わかりやすく説明することが現実的に可能かというような問題が出てくると思います。
 利害関係情報開示につきましても、公正性または独立性に疑いを生じさせる恐れのある事実。こういうことがどこまでの情報を含むのか不明確でありますし、またその解釈運用の基準も現在はできていないということが言えると思います。
 これらは、努力義務として規定するということであれば結構だと思いますけれども、法的義務ということになりますと、これはやはり、この現場、あるいは現実の状況を見ながら将来の課題とするのがよろしいのではなかろうかというふうに感じるわけでございます。 調整型ADRで得られた情報の利用制限、これは論点16でございます。
 調停人と仲裁人の兼任制限、とりまとめ論点16、17。これにつきましても、考え方というものはある程度、理解できますけれども、現実に即していかなるものであろうかというような感じを持っております。
 現場のADRでの意識は、むしろとりまとめで提示したところとは逆であるのではないかと。すなわち、ADRで交換された情報の訴訟などでの利用は、当事者間で別段の合意がない限り、基本的に自由という意識があるのではないかと思います。
 我々が日ごろ、弁護士として経験しているところでも、この調停におきまして、いろいろな証拠、いろいろな主張、その他の資料が出ますけれども、それが調停不調で裁判になった場合に、では使っていけないかというと、現実はそうではなくて、それが自由に使われておるというのが実情ではないかと思います。
 特にそれに弊害があるというようなことも感じられませんし、その内容の判断とか、そういうものにつきましては裁判官が行うわけですから、特にそのような制限をADR機関の中で設けるということには、これは慎重でなければならないのではなかろうかと。原則自由でいいのではないかというふうに我々は思うわけでございます。
 次に、弁護士会仲裁センターの手続におきまして、調停から仲裁に移行するという場合には、調停人がそのまま仲裁人になるというのが通常でございます。これは当事者の双方、または一方が反対した場合には、別の仲裁人を選任するというようにしている手続規定を持った仲裁センターもありますけれども、運用としては恐らく、そういうふうになろうかとは思いますが、問題はそれを法律で決めておく必要があるかというような点が問題になろうかと思います。
 我々この日弁連の各単位会におきまして、今、17ばかりの仲裁センターがございますけれども、そこではほとんど調停に関与した者が仲裁人になっておるというのが実情でございます。それに対して、ほとんど問題らしいものは出ていないという報告を受けておりますので、調停人がそのまま仲裁人になって全く差し支えないのではなかろうかと。当事者が特にそれを問題にするということであれば、それはそのときに考えればいいということではなかろうかと思います。
 これは各機関あるいは各手続の自主性、当事者の合意に任せておけばよくて、法律で何か原則的なものを作るということには慎重であるべきではないかと思います。
 本日、提出させていただいております、我々の資料の中にこの仲裁センターの統計などがございますけれども、そこでもやはり、こういうような実務の中でそういう統計が出ておるというところでございます。
 以上、私どもの考え方に対して、大変断片的ではございましたが、詳しくは先ほど申し上げた9月20日付の回答書に書かれておるわけですけれども、その半分も述べられなかったのではないかと思いますので、この後は御質問によってまた、お答えできるかと思います。どうもありがとうございました。

○青山座長 鈴木委員長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、各委員の方から御質問があれば承りたいと思います。質疑が30分ほど予定しております。

○原委員 3点お聞きしたいと思います。
 1点目は、執行力の付与についてなのですが、この中でもちょっといくつか質問があるのですが、冒頭の発言では執行力の付与について絶対に反対ではないが、慎重に検討してほしい。弊害の可能性があるというふうにおっしゃられたのですが、2ページの文章の第2段落目を見ると時効中断効については積極的に検討いただきたいというふうになっていて、御発言と書かれていることが違っていて、ずっと後段にいくと厳格な要件の下に執行力を付与する適切な法制が可能かどうか、可能性を追及していただきたいというふうになっているので、ここが趣旨なのかなというふうに思うのですが、ちょっと発言と書かれていることが違っていたので、もう少し御見解をというのが1つです。
 それから、具体的に要件を4点挙げられたのですが、一定の適格性、弁護士の関与、執行の許諾の当事者の明示的合意と判所のチェックというふうに挙げられたのですが、この一定の適格性については先ほど、法務省の方にも御質問がちょっと集中しておりましたけれども、具体的に何をお考えになられているのかということ。当事者の明示的合意というのは、どの段階でということをお考えになっているのかということ。
 裁判所のチェックのところなのですが、その前に厳格な要件と裁判所のチェックというふうになるのですが、裁判所のチェックについては、合意形成過程の妥当性の審査と合意内容の違法性の審査というふうに書かれているのですが、その前にあります厳格な要件というのは、具体的には何を考えていらっしゃるのかということが、ちょっと執行力の付与のところでお聞きしたいと思います。
 2点目ですが、弁護士法72条の問題で、手続主宰者について書かれているところなのですが。

○青山座長 途中ですみませんけれども、ちょっと長くなるようですので、先に今の点だけ、執行力の点をお答えしていただいてよろしいでしょうか。

○原委員 そうですか。あとはそんなに長くはないですが。

○青山座長 そうですか。その執行力と事前認定と関係しますね。

○原委員 いいえ、あとは関係なくて、ちょっと簡単な質問が2つだけですので。

○青山座長 わかりました。

○原委員 手続主宰者のところなのですが、無条件に認めることは適切ではないと。それは検討会でもそのとおりなのですが、下から7行目8行目あたりに、個別の検討すべきであるということと一定の法律分野の専門性を有するという言葉が書かれているのですが、この個別に検討ということは、ここでの検討ではなくて、個別法という意味なのかどうかということと、必ずしも法律分野に限定しない紛争もあるかというふうに思うのですが、そこについて、どうお考えかという点をお聞きしたいと思います。
 3点目は、5ページに書かれていることなのですが、現場を重視してほしいということではあったのですが、上から2行目に書かれている重要事項説明義務や手続主宰者の情報開示義務ですね。これを法的義務として課せられると、現場の混乱と萎縮が懸念されると書いてあるのですが、やはりちょっとここは考え直していただけたらというふうに思っておりまして、BtoCでは、ここの重要事項説明義務と、プラス透明性の確保ということで、そこでどういう案件がどういう解決の仕方をしたのかの情報開示というのが一番のポイントだというふうに考えておりますので、やはり現場から出発をしても、これからのADRを考えると、ここはしっかり考えていただけたらというふうに思っております。
 以上の3点です。

○青山座長 わかりました。
 よろしくお願いします。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)それでは、まず執行力の点ですけれども、これは文章の中に多少揺れているところがあるのではないかという御指摘でございますけれども、何分、大勢の人間で検討しておりますので、多少そういうところがあるかもしれませんけれども、結論といたしましては、この執行力の付与というものに対して絶対反対ではないわけです。執行力の付与というのものは場合によっては必要であろうと。ただ、執行力を付与する場合について、先ほど申し上げましたような、非常に厳格な要件というものが必要であろうということを申し上げておるわけでございます。
 やはり、私どもが念頭にありますのは、仮にも消費者とかあるいは金融関係、労働関係、そういうものにおいて、強い者と弱い者というような関係がもしあるとすれば、その中で強い者に有利なADRというものが和解という形で成立して、強い者に沿ったような執行力がどんどん付いていく、あるいは事務的に付いていく。そういうものに対して大変危惧を持っているということの表われでございまして、そういうことがないような手立てを十分、具体的にすべきである。
 その具体的なすべきの中に、先ほど申し上げた4つの条件を入れて、これを厳格にというところでございます。

○青山座長 執行受諾文言を入れる時期というのは質問されたのですか。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)執行受諾文言を入れる時期ですか。

○原委員 はい。当事者の明示的合意が必要だという執行の受諾の当事者の明示的合意は、それはどの段階とか。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)和解が成立したときに。

○原委員 成立した後なのですね。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)その和解の内容について、私どもは弁護士のチェックが必要であるというふうに考えておりますので、その弁護士のチェックの段階までに、少なくても当事者に執行というものの説明をして、その意味を理解したADR当事者が執行の認諾について、文章で合意をする、同意をするということが必要であるというふうに思います。

○青山座長 72条について、どうぞ。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)72条の専門性の個別検討ということですけれども、これは個別法で、その法律において検討するときに検討すべき問題であるというふうに思います。
 3つ目は、説明義務の問題でありましたでしょうか。

○青山座長 そうです。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)考え方を改めてということは、そういうことをもっと厳重にというか、厳しくADR機関の義務責任として考えるべきであるということでございますか。
 これをあまり厳しくやりますと、現実のADRにおきまして、果たしてきちんと対応できていくのかどうか。それからまた、ランク付けにつながったり、あるいは事前確認制度を始めとする過度な規制になったり、自由なADRの拡充・活性化に悪い影響が出てくるのではないかという議論がございまして、その結果、そういう説明義務とか、そういうものに対して、あまり厳格に扱わない方がいいのではないかというふうに我々は考えたわけでございますけれども。

○青山座長 龍井委員、どうぞ。

○龍井委員 2点伺います。
 1つは、3ぺージでお示しになっている事前確認制度の問題について、このコメントでは、事前確認制度しかないのかの検討が必要だという御提起をされているのですが、他にと言いますか、どういうような道があり得るという議論をされているのがもしあれば、御紹介いただきたいということ。
 2点目は、特に我々のような労働問題を扱っている担当者とこの問題についていろいろ議論をしている中で、これは適格性の問題なのですが、御指摘のように専門的な紛争分野に関する専門的な知識だけでは問題ありということは私どもも同感なのですが、逆に言うと、パブコメには書いていないのですが、議論の中の論点として、果たして弁護士であれば十分なのかという、実はこれは論点でございまして、これは別にそういう提案を積極的にするつもりは元々ないのですけれども、この件は非常に複雑化しあるいは個別化している労使紛争などでは、例えばの話ですけれども、解雇問題を巡って職場復帰をめぐって争うというときに、これはもう個別労使関係の問題になりまして、いわゆるこれまでの判例ですとか法律だけでは如何とも対処し難い問題が多発しているという状況の中で、今の個別紛争の中でも非常に当事者が紛争調停者の人も含めて頭を悩ませている。
 恐らく白黒決着型の問題ではなくて、つまり法違反の問題ではなくて、ADRに持ち込まれてくる問題というのは、そういうものがこれからもっともっと続発してくるだろうとなると、やはりそういうことに弁護士の方も含めて、そういう紛争処理そのものに関わる能力アップというのが、そこにも求められるのかなという議論をしてまいりましたので、もしその辺で何かそういうことに触れるお考えがあればお聞きしたいと思います。

○青山座長 どうぞ。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)それでは、この事前確認制度の問題について出井の方からお答えしたいと思います。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 出井直樹事務局委員)ADRセンターの出井です。
 私の方から、若干お答えいたしたいと思います。龍井委員からの御質問の第1点目、事前確認制以外の方法として、どのようなものが考えられるかということを議論をしているかということですけれども、これは難しい問題で、いくつかの法的効果について、これだけ議論して事務局の方でまとめられてきたのが、このとりまとめに出ている事前確認制度ということなので、それ以外の制度というのは、なかなか難しいかもしれません。
 考えられるとすれば、1つは、この事前確認の中でもいろいろ幅があると思うのですね。できるだけ重たくない、現場に規制をかけない制度にしていただきたいというのが1点です。そのような前提で、では事前確認以外にどのような方法があるかということをアイデアとして申し上げます。
 1つは、そもそも適格性要件を要求しないというやり方があると思います。これはすべての法的効果について要求しないということはあり得ないと思いますが、法的効果によっては適格性を要求しないという考え方はあり得るかと思います。そうすれば、その部分については事前確認ということは問題にならないわけです。
 第二に、適格性を要求するとしても、事後的に受訴裁判所、受訴裁判所というのは、例えば、時効中断の場合に最終的に裁判所に持ってこられた場合の裁判所、あるいは執行裁判所ですね。これは執行力を付与する場合に、今の仕組みですと執行決定を求められる裁判所。そういう裁判所の事後的な要件の認定によるということにする。今、申し上げたやり方は、今度は予測可能性という点では、いろいろ問題が出てくるというわけです。
 3番目は、この検討会でも一部の法的効果の執行力についてでしたか、廣田委員でしたかがおっしゃっていたように、事前確認ということではなくて、その機関あるいは手続を法律に書き込んでしまう。必ずしも、ADR法でなくてもいいかもしれませんが、そういう機関、手続を法律に書き込んでしまえば、それは事前確認というのは要らなくなるわけです。今、3つぐらい、事前確認以外の法制というものを申し上げましたが、ただ、これは各法的効果に要求される適格性の要件によっては、そもそも事後的な裁判所の認定によることには馴染まないものも出てくると思いますし、そこはやはり個別に検討していくほかはないと思います。
 今、出ている案はいくつかの法的効果について、すべて事前確認、その事前確認はそれぞれ異なった事前確認になるという想定ですけれども、それがそういうふうなやり方しかないのかどうか、もう少し検討をする余地はあるのではないかということです。
 趣旨としては、事前確認という制度については、かなりこれは会内でも反対が強かったものですから、事前確認の対象とする法的効果の範囲は非常に限定したものにしていただきたいということと、事前確認制度を導入するに当たっても、そういう反対論を考慮して、できるだけ現場に規制をかけないような方法を考えていただきたい。これは非常に難しい注文かもしれませんが、この検討会でその問題は鋭意御検討いただきたいということです。 それが1点目でした。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)では、2点目は私の方からまいりましょうか。
 これは、労働関係のADRについて、弁護士の一定の関与という場合に、弁護士であれば誰でもいいのかというような御質問でございましたか。これは、私どもが今やっております、仲裁などにつきましても、弁護士であれば誰でもかというとそうではなくて、やはり一定の経験と一定の能力、これは研修等も含めて、そういったものを対象に選任をしております。
 したがって、弁護士がADRに積極的に関与するというような場合の、共同または助言というような対象になる弁護士は、恐らく弁護士経験1年とか2年とか、そういう者が担当することはあり得ないと思います。5年とか10年とかいう期間経験した者の中から、更に一定の資格・能力、こういうものを備えた者を推薦をするというような形で出てくるのではないかと思います。
 我々、簡易裁判所の調停員とか家庭裁判所の調停員などについて、弁護士会に対して推薦依頼等がございますけれども、これもやはり、例えば、10年の経験とかあるいは問題があるといいましょうか、懲戒歴のあるような人を推薦するとか、そんなことは絶対にありませんで、端的に言うと、ちゃんとした人を推薦をしてやっているということでございますので、弁護士であれば誰でもいいというようなことはございません。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。三木委員、どうぞ。

○三木委員 各論的な論点について、いくつかお伺いしたいと思います。
 1つは、利害関係情報の開示義務についてですが、どこまでの情報を含むか不明確であるし、解釈運用の基準を弁護士会として現在はできていないという御説明でありました。 しかし、この利害情報の開示義務というのは、今般、成立した仲裁法では既に入っておりまして、解釈運用の基準を検討していないでは済まされない問題にもうなっていると思います。
 したがいまして、むしろ検討をきちんと行って、仲裁以外のADRにも同様の基準を当てはめる方向で対処するということがあるべき姿ではないかと思いますが、いかがでしょうか、というのが第1点目であります。
 第2点目としまして、ADRで交換された情報の訴訟における利用制限の問題ですが、これについては私の聞き方が間違っていたのかもしれませんが、若干誤解があるのではないかという印象を受けました。
 御説明の中で、主張や証拠を自由に今出しているし、またはそうしたいという現場の意識があるということでしたけれども、提案している趣旨は、ADRにおいて提出した主張や証拠が出せなくなるという趣旨ではなくて、ADRにおいてADRであるということを理由として、当事者が提示した情報であるとか事後に不利な態度などが、相手方から不当に訴訟で利用されないようにということでありますので、若干御説明とは趣旨が違うのではないかと思います。
 御説明にもペーパーにも自由ということが書かれて述べられておりますけれども、むしろ、この訴訟における情報の利用制限というのは、ADRにおいて当事者が自由に交渉するという、さらに自由性を確保するための制度として設けてはどうかといっているのであって、御主張になっておられる自由というのが一体誰の何の自由を守るために、この利用制限はすべきではないとおっしゃっているのか、そこがよくわかりませんでした。
 以上の2点について、お答えいただければと思います。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 出井直樹事務局委員)では、今の点も出井の方から。ちょっとどこまでお答えできるかわかりませんが、コメントいたします。
 最初の利害関係情報開示義務ですが、これはとりまとめの論点14になります。三木委員から御指摘のとおり、全く同じ書きぶりの義務が、今回成立した仲裁法には入っております。弁護士会の仲裁センターの手続というのは、先ほど鈴木の方からも説明があったかもしれませんが、和解あっせんも行うし仲裁も行うということになります。それで、和解あっせんから更に仲裁に移行するということもあります。
 したがって、仲裁手続を行う場合、和解あっせんから仲裁に移行する場合は、当然、新しい仲裁法の利害関係情報開示義務というのがかかってくることになりますので、まさに三木委員が御指摘のとおり、これは検討していないでは済まされない問題であるというふうに認識しております。
 これは会内で議論したときにも、仲裁法にも当然入っているものであるし、ある意味では当然のことなので、法的義務としてもよいではないかという意見もありました。
 しかし、ここで私どもが問題にしているのは、弁護士会仲裁センターはどうなるのかという問題とは別に、日本に存在する、あるいはこれからたくさん作られるであろう特に民間のADR機関について、この利害関係情報の開示というものを、法的義務としてきっちり規定していくことが果たして妥当なのかどうかということです。
 私ども弁護士会としては、確かに今の時点で何かかっちりした基準を作っているわけではありませんが、今後というか、まさに今、三木委員の御指摘のように仲裁であれ、和解あっせんも同じだと思います、何らかの基準をつくるように努力していかなければならない。ただし、それを一律に法律で要求することはどうかという問題提起であります。
 2点目ですけれども、三木委員の御質問の趣旨は、ここで言っている論点16になりますね。とりまとめの論点16、調停型手続の過程で和解を調えるために開示した情報が、自分の意思に反して裁断型手続、これは訴訟あるいは仲裁でしょうが、こういうもので利用されないということについて、法でルールを設けることはどうかということですが、これも実際の手続では、調停、これは裁判所の民事家事調停もそうですし、弁護士会での和解あっせんもそうですが、調停、和解あっせんが不幸にして不調に終わった後で裁判に持っていかれる場合に、裁判所の方から従前の交渉経緯はどうでしたかということが聞かれることがあります。そのときに、これは人によってやり方が違うのでしょうが、実は裁判所に来る前に調停あるいは弁護士会の仲裁センターで、これこれこういう話をしましたと、そのときに、相手方はここまでだったら譲歩すると言いましたということを、私どもの感覚では割とフリーに裁判官に言っているという認識があります。
 それが適切ではないのではないかと。そういうことをしていると結局、ADR、調停、和解あっせんで自由なことが言えなくなるではないかというのは、まさにそのとおりかもしれませんが、実際には、そこはフリーに言っていることの方が多いです。
 私自身は国際関係の事件が多いものですから、いわゆるウィズアウト・プレジュディスですね。和解の過程で話されたものは訴訟手続等で出してはいけないということに慣れておりますが、なかなかそういう考え方をとる法律実務家は少ないし、持ってこられた裁判官の方も特にそれに対して違和感を示されることはありません。
 したがって、何がデフォルト・ルールかということを法律に決めてしまうのはいかがなものかということを申し上げていたわけですが、答えになっていますでしょうか。

○青山座長 よろしゅうございますか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 3点、御質問したいのですが、1点は今の三木委員の御質問と全く同じでありますけれども、ちょっと今のお答えは私としては必ずしもよくわからなかったのですが、今のお答えはそうすると必ずしも適切ではないかもしれないけれども、弁護士や裁判官の多くは現状、そういう認識をしているので、現段階ではデフォルト・ルールとして規定することは望ましくないと、事実を叙述なさったというふうにお伺いしていいのかどうかと。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 出井直樹事務局委員)そういうことです。

○山本委員 わかりました。
 それでは、質問が2点になったわけですが、第1点は、弁護士法72条との関係、それから執行力との関係で、基本的には弁護士の関与というものが必要であると。72条との関係では、本日は必ずしも明確に御発言がなかったかもしれませんが、弁護士会の提出された意見書を拝見いたしますと、全件について弁護士が現実に関与することが原則と考えるべきであるという御意見で、先ほど、龍井委員の御質問に対しては、弁護士であれば誰でもいいというわけでは必ずしもない、むしろ経験が5年とか10年あるいは一定領域についての専門的知識があるということが必要になるのではないかというような御発言もあったかと思うのですが、もしそうだといたしますと、私の疑問は、果たして全国津々浦々に現在存する、あるいは将来生じるであろうADRのすべてについて、しかも、かつ全件についてと言われるのであるとすれば、その全件について確実に弁護士がそういう形で関与するような体制を、日本弁護士連合会としては担保できるのかどうかという疑問であります。 前回の隣接法律専門職種の方々の御発言の中にも、地方においては、やはり弁護士の関与というのを求められるのは現実的ではないという御発言があったかと思います。
 もし、それが担保できないのであるとすれば、それは都会あるいは弁護士が多い地域と、そうではない地域のADRに対する国民のアクセスに格差が生じるという懸念があるわけであります。それは究極的には法へのアクセスについても格差が生じるという恐れがあるわけでありまして、その点は私は、やや懸念するところなのですが、これは日弁連としてどのようにお考えかということを。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木誠委員長)その点につきましては現時点において、約二万人の弁護士がおりますけれども、これに対して完全に100 %対応できるのかというふうに言われれば、現時点においては少し難しいかもしれないということにはなりますけれども、これから新しいADRに関する法律ができて、新しいADRがどんどん立ち上がってくるのではないかと思いますけれども、それにもある程度、時間がかかるのではないかと思うのですね。
 それで、この弁護士の数ということにつきましては、御案内のように、これからロースクールにおいて大量に合格者が出てくるということにもなりますし、3,000 人合格というようなことになれば、5年10年後には数万人の弁護士が日本全国津々浦々に分布されるというふうに今、日弁連の方でもアクセスの悪い地域に対して、どのようにしたらアクセスがよくなるかということを十分検討しておりますので、時間の経過とともにADRの発展に比例するような形で対応できていくのではなかろうかというふうに思います。

○山本委員 そういう幸運な比例関係が成立すれば、大変結構なことだと私も思います。 もう一点は、重要事項説明義務について、これは原委員の御質問と重なるところもあるのですが、これは必ずしも現段階で求めるということは現場の混乱と萎縮が懸念されると。先ほどの出井弁護士の御説明によれば、必ずしもこれは弁護士会仲裁センターだけを念頭に置いたものではなくて、一般的な民間ADR機関の全体を見たものだというお話かもしれませんが、ただ、ここで説明が求められている事項、例えば、手続の問題でありますとか手続の主宰者がどういう人がいるかというような、重要事項ですから当然のことなのですが、非常に基本的なサービスの内容に関わるものでありまして、そういう手続をしてくれというふうに言ってきているのに対して、どういう手続を提供できますというサービス内容を説明するというのは、私から見れば非常に当然のことではないかという気もいたしまして、特に先ほど、原委員が問題にされたBtoCのような場合に、消費者に対してそういう説明をするというのは、消費者契約法の趣旨からしても当然求められるということなのかなという気がいたしまして、消費者契約法等に対する弁護士会のこれまでのいろいろな御発言等にかんがみて、やや意外な感も受けたのですが、ちょっとその辺りについて御説明をいただければと思いますが。

○青山座長 どうぞお願いします。

○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 出井直樹事務局委員)出井の方から説明いたします。
 原委員、山本委員の御指摘の点ですが、誠にごもっともなことだと思います。同じようなことは弁護士会の中でもこの回答をとりまとめる際に議論いたしました。
 今の点は、とりまとめの論点13になります。どういう事項を説明しなさいと言っているかというと、提供されるサービスの内容、サービス提供を受けるために利用者が支払うべき費用、契約締結によって利用者に適用される手続進行、主宰者選任等に関する手続の内容ということが書いてありまして、今、山本委員のこれはそんなに難しいことではないのではないかという御指摘ですが必ずしもそうではないと思います。
 例えば、3番目の、手続進行、主宰者選任等に関する手続の内容。この辺りになりますと、例えば、両当事者が各自、自分であっせん人を選任して、選任した2人のあっせん人の合意で更に第三のあっせん人を選任するとか、その辺りのことになりますと、先ほどちょっと出てきましたが、調停から仲裁に移行する場合に同じ人が担当することになるのか。それとも、当事者の一方あるいは双方からの申し出で別の仲裁人に変わることができるのか、その辺りになりますと、手続の入り口の段階、ここで今、論点でとりまとめられているのは、利用者からの利用申し込みがあった時ということになりますと、現実には恐らく事務局が対応することになると思うのですね。事務局の方がこういう事項について、わかりやすく、かつ、法的に誤解のないように説明をするということは、私はそんなに簡単なことではないと思います。これも先ほどと同じように、弁護士会仲裁センターだけではなく、今後、設立されるであろう多くの民間のADR機関について、こういう義務を一律に課していくのかどうかという問題としてとらえております。
 消費者契約法との関係ですが、ADR手続を消費に対して消費者契約法が適用されるのかどうかという問題が一つあると思います。
 最近、京都の簡易裁判所で弁護士会仲裁センターが利用者から小額訴訟を消費者契約法に基づいて起こされたというものがありますが、その裁判では弁護士会仲裁センターの手続の利用、これは消費者契約であるという前提で裁判が行われております。その裁判が正しいかどうかは別としまして、弁護士会仲裁センターとしては消費者契約法は当然、適用あるであろうという前提で、特に一般消費者の方々、利用者の方には説明に努めていくつもりであります。
 これはADR法でどう規定されるかということとは別なのですね。消費者契約法が適用されるとすれば、ADR法でどう規定しようが、それは適用されるわけですから、そこはADR法の問題とは別ではないかというふうに思います。
 最後に、BtoCのことを問題にされておりますが、民間の和解あっせん機関、ADR機関に持ってこられるものは必ずしもBtoCだけではなく、BtoBも当然あるわけですね。BtoC、BtoBを含むすべてについて、重要事項説明義務というものを課すのはどうなのかということを申し上げているわけです。
 すみません。最後にもう一点。これは回答書の中に書きましたけれども、もう一つお考えいただきたいのは、義務を課すことはいいとしても、果たして実効性のある義務が課せるのかどうかということです。回答書の中にも書きましたが、例えば、こういう義務が入ると不動産取引の重要事項説明書のような形でADR機関が定型書式を用意しておいて、それを当事者に渡して、確認のサインをもらうと、それだけで済まされてしまうようなことになれば、それは逆に実効性のある説明にはならない。ここを徹底しようとすれば、今回、仲裁法が成立しましたけれども、その仲裁法の中に消費者の事前仲裁合意については、消費者と事業者の間の事前仲裁合意に基づいて、事業者が仲裁を申し立てた場合には、仲裁廷で口頭で消費者に説明をした上で、解除権を放棄するかどうかを聞くと、そこまで徹底しないと実効性のある制度にはならないと思います。
 それら、いろんな観点を総合して、日弁連としては一律の法的義務とするについては、慎重に考えていただきたいという趣旨でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 ほかに質問があるかもしれませんけれども、一応、予定していた時間ですので、日弁連からのヒアリングは以上にさせていただきたいと思います。
 鈴木委員長、いつもどうもありがとうございます。同センターの出井直樹さん、どうもありがとうございました。
 それでは、ここで若干休憩をとりたいと思います。時間は15分ほど休憩しまして、3時50分から再開させていただきますので、よろしくお願いいたします。

(休 憩)


(法務省、日本弁護士連合会説明者退室)


〔総合的なADRの制度基盤の整備に関する意見募集の結果〕


○青山座長 それでは、時間になりましたので、議事を再開いたします。
 まず、夏に事務局で行いました意見募集、いわゆるパブリックコメントにつきまして、その結果等を事務局から御説明お願いしたいと思います。
 なお、前半のヒアリングでも論点となっておりました弁護士法72条に関しまして、本日、諸外国の制度との比較表も提出されております。資料23-5でございますので、これも併せて説明をお願いしたいと思います。
 小林参事官、どうぞお願いいたします。

○小林参事官 それでは、まず意見募集に寄せられた意見の概要の御紹介をしたいと思います。お手元の資料23-3、やや薄い方でございますが、こちらの1ページ目をご覧いただきますと、9月再開後の第1回の検討会で口頭で申し上げましたが、意見の総数は9月22日現在ということで164 件でごさいました。
 属性別内訳ということで、個人及び団体の内訳を御紹介いたしております。たくさんの御意見をお寄せいただきましたことに対しまして、改めて御礼申し上げたいと思います。
 意見をお寄せいただいた方の思いあるいは声というのは、基本的には原文をお読みいただくのが一番かと思いますが、そちらの方は別途、資料23-4として項目別に、若干分断するような形ではありますが、まとめてございますので、そちらを御参考にいただければというふうに考えております。
 今日の御説明は23-3の基づいて行いたいと思います。表紙の方に注書きとして、本資料の性格について述べております。この資料は、今後のADRに関する基本的な法制の検討に資するため、意見募集に対して寄せられた意見について、大きく3つのポイントがございますが、1つ目として「いずれの項目に関心が高かったか」、2つ目として「賛否の状況はどのようであったか」、3つ目として「賛否の理由としてどのようなものが挙げられていたか等」について、意見に関する大まかな傾向を把握することを主眼として、事務局の責任において作成したものということでございます。
 このうち、特にパブリックコメントをする趣旨からして、賛否の理由というところが一番重要ではないかというふうに考えております。単純な多数決で決するような性格のものでもございませんし、統計的な意味があるかどうかという問題もございます。
 ただ、さはさりながら、件数的なものについても大まかなイメージがわかるような程度の記述はいたしております。
 内容に入りたいと思います。2ページでございますが、まず「検討に当たっての基本的考え方」。最初の○のところでございますが「検討に当たっての基本的考え方として、法規制という形での国による関与はできる限り排除すべき、ADRの公正性・信頼性の確保は利用者等の評価による淘汰を通じて維持されるべきことを基本として検討を進めるべきという意見があった一方で、ADRの健全性確保はADRの発展の重要な柱であるにもかかわらず、これまでの公正性・信頼性確保に関する検討は不十分であるという意見もあった」ということで、この辺りは引き続き大きな2つの考え方として、今回の意見募集でも表れてきたところでございます。
 3ページをご覧いただきたいと思います。
 論点2についてでございますが「相談手続、とりわけ相談手続一般をADRに関する基本的な法制に適用することについては、賛成意見も相当数寄せられたが、寄せられた意見の中では、相対的には反対意見が多かった。賛成意見の理由としては、相談手続と紛争手続は一体的に捉えるべきとするものが多かった。他方、反対意見の理由としては、相談手続がADRの入口に位置し、ADRを幅広く支えるものと捉えることには同意しつつも、極めて多岐にわたり、外延も不明確な相談手続を画一的に対象とすることは不適当である、すべての相談手続がADRに付随するわけではなく、ADR法に取り込む必然性はないのではないか、相談手続を一般的事項の対象とすると実務に混乱をきたす等があった」ということでござまいす。
 続きまして、その下でございますが「ADRに関する基本理念」のところでございますけれども、最初の○で「論点の記述を概ね支持する意見が相当数あった」ということでございますが、なお、論点3について、これは「紛争解決機能の基礎的な役割を担う」という記述でござましたが、この点について「裁判を受ける権利が軽視されるのではないか、そこまでADRを評価するのは行き過ぎではないかという意見等があった」ということでございます。
 1ページめくっていただきまして、4ページ。
 「2.国の責務等」のところでございます。論点6ですが、最初の○にございますように「論点の記述に対する意見としては、財政上の措置等の国による支援を望むものが相当数あった」ということでございます。
 「5.国民の役割【論点9】」、一番下でございますが「国民の役割を法律上規定することについては、その趣旨に賛意を示す意見は相当数あったが、賛意を示す一方で、あえて法律に規定することには疑問を呈する意見や国民の裁判を受ける権利への配慮が必要とする意見があった。他方、国民の裁判を受ける権利との関係で誤解を招くおそれがあることを懸念し、明確にすることについて反対する意見や紛争の発生過程における力関係の格差等をそのままに、紛争解決の場面でのみ私的自治を強調することは不適当ではないかという意見もあった」ということでございます。
 5ページ、「第三 一般的事項」の総論でございますが「一般的事項の各論点に対する意見とは別に、論点全般に対する意見も相当数寄せられたが、その多くは、行為規範を示すことの有効性はともかくとして、法令上の規律と位置付けることによって、ADRの自主性・多様性が阻害されることを懸念する意見であり、一部には、ガイドラインという形で示すべきではないかという意見もあった」ということであります。
 その次の、論点10、論点11、6ページの論点12につきましては、賛成する意見が相当数あったということであります。
 6ページ゛「4.サービス提供に関する重要事項の説明義務」。これは先ほど来、議論がございましたが、最初の○にございますように「賛否それぞれの立場からの意見が相当数寄せられた。賛成意見の理由としては、重要事項を説明すべきことは当然のことである、消費者等が主体的にADR機関を選択できるようにするためには必要である等があった。他方、反対意見の理由としては、私法上の義務と位置付けるのであれば既存法令の範囲で対処可能である等があったほか、実務上の対応の困難性等を掲げ、努力義務とするならば理解できるというものもあった」。
 ちょっと飛んでいただきまして、次の○ですが「また、特に相談手続への適用に限った意見も多く、電話等で行う相談においても重要事項の説明義務を課することは実務上の混乱を招くといった理由から、これに反対する意見が相当数あった」でございます。
 次の、論点14でございますが、最初の○にありますように「ADRの公平性、信頼性の確保のためには必要な義務であるとして賛成する意見も相当数あったが、実務上の対応が困難であること、手続からの離脱が自由な手続について仲裁と同様の厳格な義務を課することはかえってADRの発展を阻害するおそれがあること、主宰者が回避すれば足りること等を理由に反対する意見や努力義務とすべき意見もあった」ということであります。
 その下、「秘密の保持義務【論点15】」でございますが「守秘義務を負うことは当然のことである等の理由から賛成する意見が相当数あった」ということであります。
 7ページで、上から2つ目の○のところですが「また、相談手続への適用については、反対意見があったものの、論点11~13ほどにはなかった」、11~13というのは、先ほどの重要事項の説明義務等でごさいます。それほどにはなかったということであります。
 「第四 調停手続法的事項」につきましては、まず、情報の利用制限、論点16でありますが、これは最初の○にありますように「賛否それぞれの立場からの意見が相当数寄せられた。賛成意見の理由としては、情報利用の制限は理念上当然のことである、わが国における仲裁と調停を混同する傾向への歯止めとなる、UNCITRAL国際商事調停モデル法に示された国際水準に合わせるべきである等があった。他方、反対意見の理由としては、情報の利用を制限すれば調停において率直な話合いが行われると捉えるのはあまりにも理念的に過ぎる、仲裁と調停の混同は批判的に捉えられるべきではなく、むしろ、積極的に評価されるべきである、実務における意識からすると実情にそぐわない面があり、むしろ現場に無用の混乱をもたらす懸念がある等があった」ということであります。
 次の、論点17、調停人と仲裁人の関係でございますが、○にございますように「論点16と同様、賛否それぞれの立場からの意見が相当数寄せられた。また、賛成意見、反対意見のそれぞれの理由についても、論点16と同様、賛成意見が理念上の問題等を理由とするのに対し、反対意見は実務上の問題等を理由とするものが多かった」ということであります。 論点18、一般手続ルールでありますが「調停の利用促進を図る観点から一般ルールを別途検討すべきであり、また、デフォルト・ルールとするならば、ADRの多様性を阻害することにならないとする意見もあったが、ADRの自主性・多様性を阻害するおそれがあるので一般ルールは制定すべきでない、別途検討することも不要であるといった意見が相当数あった」ということであります。
 「第五 特例的事項」に入ります。
 時効の中断の関係、論点19でありますが「基本的な考え方」。最初の○ですが「現行の催告に認められる暫定的な時効中断効で対応可能である、時効中断が必要であれば訴訟を提起すればよい、国民の信頼・評価が定まっているとは言い難いADRに対して民事調停にも匹敵する効果を付与することは不適当である、事業者・消費者間紛争において消費者にとって不利益が生ずる恐れがある等の理由から、時効中断効を付与することに反対する意見も相当数あったが、寄せられた意見のなかでは、相対的には、手続の選択機会を確保する等のためには時効中断効が認められるべきとして、賛成する意見が多くを占めた」ということでございます。
 その場合のスキームでございますが、論点20です。「時効中断効を付与する場合の考え方については、ADRに後続して訴訟提起がされた場合にADR申立て時に遡及して時効中断を認めるという考え方」、これはパブリックコメントでは本案となっておりますが、「(本案)を支持する意見が相当数あったが、別案のように、民事調停の申立てと同様の効力を認める考え方、あるいは、ADRの継続中は時効の停止を認める等の他の考え方を支持する意見もあった。
 また、時効の中断を一定の適格性を有するADRに限定して認めることについては、現行制度との整合性、濫用防止、予測可能性の確保等の観点から、一定の適格性を備えたADRのみを対象とすべき、あるいは、対象とせざるを得ないとする意見が相当数あったが、他方で、ADRの多様性の確保を重視する立場や適格性の審査を好ましくないと捉える立場から、適格性を備えたADRに限定することに反対する意見も相当数あった。なお、一定の適格性を備えていることを要件とすることを支持する意見の中には、適格性は、弁護士が手続主宰者として関与することをもって足りるといった意見、公正・中立な手続運営を備えていることも必要であるとする意見もあった」ということでございます。
 9ページにまいりまして、執行力の付与でありますが、最初の○にございますように「非常に多くの意見が寄せられた」。
 次に「紛争解決の選択肢としての魅力を向上させるためには必要である、裁判手続と代替的に捉える当事者にとっては必要性が高い等の理由から、論点に記載された要件の下で執行力を付与することに賛成する意見も相当数あったが、寄せられた意見のなかでは、相対的には、反対意見が多くを占めた。反対意見の理由としては、ADR和解に執行力を付与する理論的根拠が不明確である、いわゆる債務名義作成会社が出現して深刻な被害を招く危険性を否定できない、論点に記載された要件の下では、適正な解決が確保されるという担保がない、私的自治の下での自主的解決を掲げながら履行を国家権力に頼ることはADRの本質に反するものである、厳格な適格性が求められるゆえにADRの自主性を阻害する原因となりかねない等があった」。
 また、「なお、今回の意見募集に寄せられた意見においては、執行力の付与への反対のみに言及するものが相当数あった」ということでございます。
 次が、調停前置主義の不適用でございます。
 最初の○で「当事者の負担軽減等の観点から、調停前置主義の不適用に関する特例を設けることに賛成する意見が相当数あった」。
 次の○ですが「調停前置主義の不適用に関する特例を認める場合の方法としては、一定の適格性を有するADRを経ていれば一律に調停前置の例外を認めるべきとの考え方を支持する意見と、調停前置主義の原則は維持しつつ、裁判所の個別判断により例外的に不適用を認めるべきとの考え方を支持する意見とに二分された。また、後者の考え方を支持する意見の中でも、一定の適格性の必要に関しては、さらに意見が分かれた」ということでございます。
 次が、訴訟手続の中止でございますが、9ページの最後の○ですが「論点22、23と同様、当事者の負担軽減等の観点から、訴訟手続の中止に関する特例を設けることに賛成する意見が相当数あった」。
 10ページに行きまして、次の○ですが「一定の適格性の必要性に関しては、中止の必要性は個別性が強いこと等を理由として、一定の適格性を要求せず、すべて裁判所の個別判断に委ねるべきとの考え方を支持する意見が相当数あった」ということであります。
 次が、和解交渉の勧奨等でありますが「裁判所がADRの利用を勧奨することについては、賛成意見、反対意見ともに相当数あった。賛成意見の理由としては、訴訟手続との連携を促進する観点から望ましい等があった。他方、反対意見の理由としては、裁判所がADRをを十分に把握できていない現状では実効性に欠ける、運用上の対応で十分である、裁判を求めている当事者に他の解決方法を勧めること自体に問題がある等があった」ということでございます。
 次に「裁判所による証拠調べ等」でありますが、「裁判所による証拠調べについては、そのような制度を設ける必要性に乏しいこと、当事者間の合意を基礎とし、簡易・迅速な解決を目指すというADRの本来の目的に反すること等の理由から、制度の整備に反対する意見が相当数あった。
 ADRにおける争点・証拠整理等の訴訟手続における活用についても、制度の整備に反対又は現時点では不要とする意見が相当数あった」ということであります。
 次に「民事法律扶助の対象化等【論点28】」であります。最初の○ですが、「司法へのアクセスの拡充に資するためには扶助の対象を民事裁判等に先立つ手続に限定しなくともよいのではないか、事業者・消費者間紛争等では代理人を依頼する必要性も高いのではないか等の理由から、ADRにおける代理人費用を民事法律扶助の対象とすべきとする意見が相当数あった」ということであります。
 1ページめくっていただきまして、11ページ。
 「7.専門家の活用」でございます。主宰業務の関連です。
 最初の○ですが「非常に多くの意見が寄せられた」。
 次の○ですが「ADR主宰業務は弁護士でなければできない、立法技術的に困難といった理由から特例規定を設けることそのものに反対する意見もあったが、寄せられた意見のなかで相対的にみると、意見の多くは、専門家について特例を設けることに賛成する意見であった。特例を設けることに賛成する理由としては、隣接法律専門職種等の有する専門家が有する専門的知見を活用すべきである、現に高い紛争解決能力を持つ専門家も多く存在し、また、例えば、国際商事紛争の分野においては弁護士以外にも紛争分野の専門家や大学教授等の学識経験者が多数活躍している、国民は主宰者が弁護士でなければならないという意識を有していないはずである、UNCITRAL国際商事調停モデル法でも主宰者の資格を制限する規定は設けられていない、現在の弁護士の数の下で主宰者を弁護士に限ることはADRの発展の制約要因となる等があった」。
 次の○ですが「さらに、ADRの主宰者には制限を設けないことが諸外国の潮流である、弁護士法第72条は多様性を目指すADRの立ち上げの阻害要因になっているといった理由から、そもそも弁護士法第72条をADR主宰業務に適用することが不適当であるとする立場から、専門家という限定を付する必要もないという意見も相当数あった」ということであります。
 次に、その場合の要件でございますが、最初の○「特例を設ける場合の要件として、弁護士の関与・助言の確保等を求めることについては、必要とする意見、不要とする意見ともに相当数あったが、寄せられた意見のなかで相対的にみると、不要であるとする意見が多くを占めた」。
 次の○ですが「弁護士の関与等の適格性を必要とする意見は、基本的に、紛争は、法の支配の原理の下に、広い意味での法を主要な準則とし、広い意味での適正な手続により解決されるべきであるから、紛争分野や紛争解決に関する専門的知見の有用性は十分認められるが、ADRの主宰者であっても、やはり、高度の法的知識を有することが重視されるべきこと等を理由とするものであった。これに対し、不要とする意見の理由としては、実効的に適格性を満たしていることを確認する方法があるのかが疑問である、どのような者を信頼して主宰を委ねるかは、適確な情報開示の下で当事者の自治と自己責任に委ねるべきである、弁護士の関与を求めることはADRの利用コストを上昇させることになる、不公正な主宰者が跋扈するといったおそれについては一般的な刑事法制の適用によって解決されるべきである等があった。さらに、不要であるとする意見の中には、ADR主宰業務を弁護士の独占業務である法律事務と位置付けること自体がグローバル・スタンダードから外れている、日本だけがそのような要件を設けると、外国のADR機関が日本でADRを行うことを阻害することになるという理由を挙げるものもあった」。
 次の○に行きますが「また、一定の公的資格者に限って弁護士の関与を不要とする考え方については、適格性は各士業の責任において担保されている、弁護士の数には限界がある、弁護士は日常的な事件に関して知識はないといった理由から、これを支持する意見が相当数あった」ということであります。
 次に「一定の不適格者の除外」の問題については、最初の○でございますが、「広くADR主宰業務を行えるようにすべきである、規制が増えるのは好ましくない等の理由から、不適格者の排除に関する規定を置くことに反対する意見も相当数あったが、寄せられた意見の中で相対的にみれば、一定の不適格者がADR主宰業務を行えないこととすることは当然であるとして、一定の不適格者はADR主宰業務を行うことができないものとする仕組みを設けることに賛成する意見が多くを占めた」ということであります。
 次に、相談業務に関してでありますが、12ページ最後の○のところですが「相談業務に関する特例を設けることについては、論点2」、先ほどの相談の扱いのところでございますが「論点2とも関連し、相談業務に関する規定をADR法の対象とすべきではないとの立場等から、これに反対する意見が相当数あったが、寄せられた意見のなかで相対的にみると、ADR主宰業務に準じて、弁護士法第72条の特例を設けることに賛成する意見が多くを占めた」ということであります。
 13ページにまいります。代理業務でありますが、最初の○でございます。
 「弁護士以外の者にADR業務を認めることについては、慎重な検討を要するという意見、あるいは、少なくとも、必要性、範囲・条件を個別の職種ごとに十分検討した上で、個別に認めるか否かを判断すべきという意見が相当数あった。また、個別に検討する場合には、その基準に留意する必要があり、専門的な法律知識のみならず、紛争解決手続に関する知識と経験、公平性・倫理観が必要である、研修等による知識の研鑚も条件とすべき、法律知識、技術には習熟しているが、必ずしも紛争解決に関する法律全般の知識、技術に習熟しているとは言えない者がADR代理業務を行うことは適当ではないといった意見があった」。
 次の○ですが「他方、専門家の活用等の観点から、個別の検討については言及することなく、ADR代理業務を行えるようにすべきとの意見も相当数あった」ということであります。
 次が「相対交渉代理業務」でございますが「ADR代理業務を認める場合に、相対交渉における和解についての代理権をADR代理受任事件に限定すべきか否かについては、限定すべきとする意見、限定は不要であるとする意見ともに相当数あった。必ずしもADR受任事件に限定する必要はないという意見の理由としては、ADRにおける和解とADR外の相対交渉は一体であり、ADR代理業務の遂行に必要な範囲で相対交渉における和解についての代理権も認めるべき等があった。これに対し、限定する必要があるという意見の理由としては、ADRにおける手続代理とADR外での相対交渉の代理とでは問題の質、量が異なり、弁護士以外に認めるべきではない等があった」ということでございます。
 次が、適格性の確認方法についてでございます。
 最初の○でございますが「法的効果等を付与する際に必要とされるADRの適格性を満たしていることを確認する方法として事前確認方式を採用することについて、採用の是非に関する総論に対して寄せられた意見をみると、他の方法がない以上はやむを得ない、慎重な検討を要するといった意見も含め、事前確認方式を支持する意見も相当数あったが、相対的には、そもそも適格性を要件とする必要がないといった意見も含め、事前確認方式に反対する意見が多く占めた」ということであります。
 次の○ですが「他方、個別の法的効果ごとに事前確認方式を採用することに対して寄せられた意見をみると、調停前置事件の不適用、訴訟手続の中止及びADR主宰業務に関する弁護士法第72条の適用除外については、事前確認制度の採用を支持する意見は少数にとどまり、反対する意見が相当数あった。これに対し、時効中断及び執行力の付与については、支持する意見、反対する意見ともに相当数あった」ということでございます。
 すべてについて御紹介ができませんでしたけれども、概要は以上のとおりでございます。 それから、資料として、各国の資格制度の比較の表をお配りしてございますが、これは前々回の検討会で宿題としていただきまして、その後、関係方面とも協力をし、いろいろな文献等も参考にしてまとめたわけでございますが、特に解釈の面につきましては、明確なものというのは、なかなかなかったという面もございます。
 ただ、日本法の解釈につきましては、先ほど、法務省の方から御説明があったものが日本法の解釈ということとして考えられるわけでございまして、これはこの表の中に入れてございます。
 その他は、基本的にここに書いてあるとおりということで御理解いただきたいと思います。
 以上です。

○青山座長 ありがとうこざいました。
 それでは、ただいまの御説明のうちで、意見募集の結果につきまして何か御質問があれば、承りたいと思いますが、いかがでしょうか。質疑20分ぐらい予定しております。
 どうぞ。

○綿引委員 今の表現のニュアンスをちょっと教えていただきたいのですが、Aも相当数あったがBも相当数あったというのは、ほぼ拮抗しているというふうに理解したらよろしいのでしょうか。

○小林参事官 すみません。説明の際に申し上げるべきでございました。失礼いたしました。

○綿引委員 全体について説明していただいた方がいいと思います。

○小林参事官 まず、単に「あった」というものについては少なかったといいますか、個別意見に近いということでございます。
 「相当数あった」というものについては、ある程度まとまった数の意見があったということでございます。
 それらについて比較をして、「相対的にはどちらが多数を占めた」というものについては、かなり、誰が見ても差があるというような状況の場合に使っております。
 したがいまして、今、御質問があった、「両方とも相当数あった」という場合については、単純に比較するのはちょっと適当ではないという程度の差だということで御理解いただければと思います。

○綿引委員 二分されたというのは。

○小林参事官 二分されたというのは、明らかに拮抗していたということでございます。

○青山座長 よろしゅうございますか。どうぞ。

○原委員 1点なのですけれども、意見を寄せられたところが個人と団体と不明とで、ここには件数も出ているわけですけれども、例えば、学者はやはりこういう意見が中心だったとか、そういう所属によるばらつきとか差とかいうのはありましたか。
 というのは、大体、団体はわかるのですけれども、学者とかその辺りの方々、その他個人辺りがどのようがどのような御意見出されたのかなというふうに思うのですが。この厚い方を見れば出てくるのだと思うのですけれども。

○小林参事官 非常に難しい御質問でございまして、個人的な印象はいくつかないわけではありませんが、これは多分、恐らく読む人によっても違うと思います。本来であれば、そこまで突っ込んだ分析も必要な場面もあるかもしれないのですが、ちょっと今、この時点で御紹介できるようなものはないと思います。

○原委員 強烈なイメージみたいなものは、特にはないということでよろしいわけですね。○小林参事官 属性と意見との関係でございますか。
 いくつかないわけではないと思いますけれども、ちょっとこの場で申し上げるのは適当かどうかという問題もありますので。

○原委員 ヒアリングでお呼びするところが私は限られてしまうので、そうではないところがどうだったかなと思ったものですから。いいです。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 今の原委員の御質問ですけれども、意見募集の結果は202 ページありまして、全部読んでほしいのですけれども、全部読むと3日ぐらいかかると思います。非常に示唆に富む御意見を、特に、数として、164 件という数は、私どもが考えていたよりも、はるかにたくさんの団体及び個人からお寄せいただいたのだと思います。
 先ほどの学者とか研究者とか、そういう属性を少し書いて、個人名は私どもはわかりませんけれども、書いてありますので、それも気にしながら読むと、かなりこれは深読みができる資料かなというふうに思います。
 これからの検討会には、これを存分に活用させていただきたいというふうに私は考えておりますので、大変恐縮ですが、全部読んでいただきたいというふうに思っております。

○小林参事官 その意味で、先ほど、論点ごとに記載されているというふうに申し上げたのですが、同一者には同じ通し番号を振ってありますので、その通し番号を見ていけば、名前は特定されませんが、論点相互の意見の相関はある程度わかると思います。

○青山座長 今日、小林参事官が説明していただいた、これでも非常に意見の出具合といいますか、非常に大まかな、それこそ概要でございますけれども、寄せられた意見の全体像といいますか、そういうものは非常によくつかめたのではないかというふうに思っております。
 質問がございませんでしたら、次の議題に進ませていただいてよろしいですか。スケジュールの件をお諮りしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 三木委員、どうぞ。

○三木委員 質問してよろしいですか。各国制度の比較のところで確認だけですが、資料23-5の2枚目のADR主宰というのでまとめておられるところは、これは仲裁を含むADRという趣旨なのか仲裁を除く趣旨なのか。仲裁の資格制限というのがその前のページにありますけれども、ちょっと関係がよくわからなかったのでというのが第1点で、これは確認です。2点目は、これは調べることがどのくらい可能なのかわかりませんが、一番最初の業務独占に関する法律事務という概念ですけれども、先ほどの意見募集にもありましたけれども、国とかあるいは解釈によってはそもそも仲裁人や調停人が法律事務に当たらないという理解をする場合もあるようですので、挙げている国の中で、この業務独占に関する規定との関係で、そもそも適用対象になっているのかなっていないのかという点がわかれば、教えていただきたいという、その2点です。

○青山座長 それでは、山上企画官、お願いします。

○山上企画官 まず、第1点目の2枚目のADRという言葉に仲裁が入っているかどうかという点でございますが、これは仲裁、調停全体をひっくるめた言葉として使って、入っているということでございます。
 1枚目で仲裁法制上のというふうに限定いたしましたのは、調停法というのがそれほど各国に一般にあるわけではないということで、ここでは統一的にいわゆる仲裁法制に限った、2枚目の方は、全体ということでございます。
 2番目の御質問の法律事務、1ぺージ目の1枚目の最初の各国の法制に記してある法律事務という言葉の範囲については、特にADRの主宰あるいはADRの代理に限って見た場合に、それが法律事務に含まれるかどうかという点は、なかなか情報が乏しい状況でございまして、その中で特に断片的ではございますが、手元に入手できたものとして、主に2枚目のところにそれを記したという状況でございます。
 例えば、アメリカでございますと、1枚目のところでは法律事務の取り扱いは弁護士法独占業務とされていると。それは裁判外の事務においても同じであるというのが、いわゆる弁護士のといいますか、いわゆる業法上の規定ぶりでございますが、しからば、ADR主宰や代理について、その法律事務という言葉の中にそれが含まれるのかという点については、2枚目に行きまして、アメリカで言えば全体に関する統一的な見解はないのですが、注をご覧いただきますと、主宰者としての役務提供については法律事務には該当しないという判例や見解も多く示されているといったようなことを示しております。
 ちょっと本日までに調べる範囲としては、ここら辺が限界であったということで御理解をいただければと思います。

○廣田委員 今のに関連して、判例法の国とちょっと違うところがあると思うのですけれども、弁護士法72条のような成文法があるのですか。もしあるのだったら、成文法としてこういうのがあると教えていただきたいのですが。

○山上企画官 ちょっと、もう一度繰り返しのようになりますが、1枚目の一番上のパラに、いわゆる業法上の資格制限というのが、いわゆる我が国で言うところの弁護士法72条に相当する規定を各国ごとに並べたという趣旨でございます。
 イギリスについては、成文法が裁判上の事務についてはございませんが、ほかのアメリカ、ドイツ、フランスにつきましては一部、裁判所規則という位置づけのものもございますが、基本的には法令が存在をするということでございます。

○廣田委員 伺いたいのは、どういう文章になっているかです。

○山上企画官 原文ですか。

○廣田委員 原文というか、どちらかというと、訳されていれば訳されている方がありがたいのですけれど。

○山上企画官 それは、手元には資料としてございます。

○廣田委員 あることはあるのですね。

○山上企画官 はい。

〔その他〕

○青山座長 それはお出しできるかどうか、ちょっとこちらで検討させていただきます。 ほかに何か、今の資料23-5の比較表につきまして、御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 これはまだ未定稿というふうになっておりますので、あるいはもう少し改定していただく可能性もあるかもしれません。ちょっと今日、事務局と打ち合わせをしておりませんので、確定的なことを私から申し上げることはできませんけれども。
 それでは、残された時間、30分ほどありますので、今後、この検討会でどういうふうに議論を進めていくかということについて、お諮りをしたいというふうに思っております。 振り返ってみますと、この検討会は昨年の2月に第1回の検討会をいたしまして、今日で23回になるわけでございますけれども、7月までのところ、約1年半かけまして、「総合的なADRの制度基盤の整備について」という中間的なとりまとめを行いまして、これを広くパブリックコメントにかけて意見募集をし、今日まとまってきたわけでございます。
 その間9月に2回、それから、今日を含めて3回で、内外のADRの関係者あるいは弁護士会、隣接法律専門職種等の専門家の方、基本法制を担当している法務省、日弁連という方々から御意見をいただいたわけでございます。
 それで、意見募集に寄せられた様々な意見についても今日、事務局の方から概要を御説明いただいてまいりました。
 そういたしますと、ADRに関する法制を整備する場合に、検討すべき論点と意見は現在までのところ、ほぼ、出尽くした状態、出そろった状況にあるというふうに私は判断いたします。
 1年半という期間を費やして検討して、更にそれに基づいて意見を聞き、ヒアリングを行ったということですので、今までの検討で手段はすべて尽くしたように、私は思っております。
 これからの目標ということを考えますと、司法制度改革推進計画、これは昨年の3月にできた閣議決定でございますけれども、その司法制度改革推進計画では総合的なADRの制度基盤の整備に関して必要な方策を検討し、来年の3月、平成16年の通常国会ということでしょうけれども、平成16年の3月までに所要の措置を講ずるということが謳われております。
 そうしますと、それまでに法律案要綱みたいなものを固めて法案を提出するということを目指すことになります。お手元に資料23-6という資料、今後の開催予定という1枚紙が入っておりますが、これをご覧いただきますと、実は予備日として指定してありますものも含めて、年内にあと4回、10月1回、11月1回、12月に2回という4回の間に検討会として議論の収斂を図っていくということが私どもにとっての課題ということになろうかと存じます。
 勿論、来年1月、2月、3月もあるではないかということかもしれませんけれども、その時期になりますと要綱案に基づく条文化という作業に入りますので、私どもに与えられている時間というのは、ひょっとして1月にはもう一回ぐらい使えるかもしれませんけれども、基本的には年内に法律案の要綱案をみたいなものをつくらなければならないのではないかというふうに思われます。
 そうなりますと、今後の検討会の進め方がここで問題になるわけでございますが、とにかくいずれかのタイミングで、これまでの検討会の議論や意見募集の結果を踏まえながら、現行制度の整合性といった法制的な側面からの要請をも勘案して、これは事務局にまた御苦労をお願いすることになりますが、事務局において法制的な措置を体系的に整理してもらいまして、それを議論の素材となるたたき台として提出していただいたらどうだろうかというふうに考えております。
 この考えに至る前には、私としては、この11人のメンバーの中のどなたかに小委員会のような形で御苦労をお願いして、そういうとりまとめをということもちらっと考えましたけとれども、そういう特定の方に御負担をお願いするよりも、ここまで来た以上は事務局に叩き台、あくまでもこれは叩き台でございますけれども、叩き台として収斂のための議論の素材を提出していただいたらどうだろうかというふうに思っております。
 ただ、そうは言いましても、今日の意見の集約、今日のパブリックコメントから返ってきた意見を見ましても、論点の中にまだ、これで事務局で叩き台を作れと言ってもできない無理なものがいくつかあります。ここの中でも意見が分かれ、ヒアリングでも意見が分かれ、パブリックコメントでも意見が拮抗しているというようなものについて事務局でたたき台でどちらかを原案につくれと言われても、これは中立的な立場の事務局はそれは難しいと思います。
 そこで、この検討会の中で委員間で認識に大きな違いがあるものがいくつかあります。その1つは、時効中断の問題。時効の中断効を付与するとした場合の具体的なスキームの問題について、その問題が一つ、まだ意見が大きく分かれているのではないかと思います。 弁護士法72条の特例の内容についても、まだ意見がはっきりしていない。かなり意見の差があるだろうと思います。
 これは例えばということで2つありましたけれども、事務局としては、これについてはやはり、もうちょっと議論をしてもらわないと、叩き台さえも出せないのではないかというのは私の懸念でございます。
 そういたしますと、次回は10月27日、あと20日でございますので、10月27日の前に出せというわけにはいかないので、11月17日にたたき台のようなものを出していただくことになろうかと思います。
 そして、次回は10月27日の第24回検討会では、今ちょっと例として挙げました、時効中断効の問題、それから、弁護士法72条の特例という特定の論点について、集中的に御議論をいただいて収斂する方向に持っていきたいというふうに私は考えております。
 これまでの議論はどちらかというと、論点を落とさないように、なるべく論点の漏れのないように拡大し、増加する方向でずっと来たわけでございますけれども、これからの数回は論点を絞っていく、あるいはそれを更に掘り下げていくという議論になるだろうと思います。
 そういう議論を事務局には、次回、そういう議論が出やすいような、詰めるべき論点を整理した、何といいますか、ペーパーみたいなものを事務局に準備してもらって、そしてそれに従って議論をし、そして、それをだんだん収斂していきたいというふうに考えております。
 これは私の座長としての考え方を申しましたけれども、こういう議論の詰め方でいいかどうか。ほかにもっとこういう方法があるのではないかとか、あるいはこういう論点が必要なのではないかとか、そういう御示唆はあると思いますので、そういう御意見をいただきたいと思います。
 今日は、この点が非常に大事な論点になっていると思いますので、忌憚のない御意見をいただければというふうに思います。
 原委員の方がちょっと先だったですか。どうぞ。

○原委員 クイズ番組出たら早いかもしれないですね。済みません。
 進め方というところで2点なのですが、ちょっと確認なのですけれども、今、座長の方で次回、時効中断と72条の話をなさったのですけれども、執行力の付与とか事前確認の話はしないということになるのかというのが1つ。
 もう一点は、私自身は例えば、今、国民生活審議会で消費者保護基本法の改正とか公益通報者保護制度の導入とかの議論をしているのですが、年明けは、やはり通常国会にかけるのですね。だから、審議会と並行して進めているのが国生審ですから、内閣法制局との詰めをかなりやっていて、議員との方との詰めもかなりやっているのですけれども、私たちはここだけで議論していますけれども、そういう周辺の進行状況というとおかしいですけれども、それはどのように進められているのかというのと、2点、ちょっと確認させてください。

○青山座長 執行力の件は、私がさっき論点として挙げたのは例えばということで挙げたので、執行力も取り上げた方がいいということであれば、当然、それは取り上げますし、事前確認の件は、当然入ってくると思います。時効中断にしても執行力にせよ、当然入ってきますので、それは議論させていただきたいと思います。
 後の問題は、これは小林参事官からお願いします。

○小林参事官 周辺という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、この場以外の検討についてでございますが、当然、進行状況に応じて、私どもの方で御相談はいろいろさせていただいております。
 その結果を踏まえながら、この検討会での議論の素材も提供しているということでございまして、先ほど、廣田委員から枠がかかるか、かからないかという議論がありましたが、私どもとしては、この場での検討ができるだけ生かせるような周辺との調整というのは、十分やらさせていただきたいというふうに思っておりますし、現に進捗に応じてでありますけれども、それは行っているということであります。

○青山座長 その件はよろしゅうございますか。

○原委員 国生審の場合は、何かものすごく厳しい山を越えているというか、そういう感じがするので、本命は法制局との調整というのでしょうか。ちょっと内輪の話ですが、最後になって大変厳しいとかというようなことにならなければということをちょっと懸念しているということです。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 廣田委員、どうぞ。

○廣田委員 年内に4回という形ですけれども、座長のおっしゃった時効中断と72条からということになりますと、やはり事前確認方式を採用するかどうかで、そこは分かれてくると思います。
 やはり、一番問題になっているのは事前確認方式で、ヒアリングでも意見がいろいろ出ていますので、これを採用すべきかどうかで、その後の検討内容が変わってくると思うのです。
 ですから、私はまず先に事前確認方式の採否を検討するというのが最初で、ただ、それだけを独立して扱いますと議論が抽象的な議論になりますので、それと一番関連のある執行力の問題、それを抱き合わせにするというか、執行力を睨みながらというか、まず、事前確認方式と執行力の問題を先に結論を出したらどうかと思うのです。
 そうすると、その採否でその後の設計の仕方がわかりやすくなりますので、その後、時効中断効だとか、おっしゃった72条だとか、意見が分かれているところを検討するというのが一番効率的ではないかと思いますし、議論が煮詰まるのではないかと思うので、進行方向をそういうふうにしていただいた方がわかりいいのではないかと思います。

○青山座長 同じ日にやろうと思うのですよ。もう一回議論をさせていただきまして、次回に今の論点を、それを順序を逆にするということはあり得ますけとれども、同じ日にやると。

○廣田委員 私はむしろ、その方法で、設計が全然違ってきますので、それはどちらにしても早く結論を出さないと、それによってぐるぐる行ったり来たりするという格好になってくると思いますので、もし同じ日にやるとすれば、先に事前確認と執行力をやるという形にしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○青山座長 事前確認方式をとるかどうかということよりも、時効中断や執行力という効力との相関だと思うのです、さっき弁護士会の御意見もあったように、大きな効力を与えるならば事前確認方式というようなことが必要になるし、小さな効果ならそれは要らなくなるということだと思うのです。
 時効中断が小さいかどうかわかりませんけれども、それのにらみですので、まず効果とは関係なしに事前確認方式をとるかどうかという議論ではなくて、効果との関係でやりたいというふうに思っています。
 それはよろしゅうございますか。

○廣田委員 それはわかるのですが、だから事前確認と、むしろ執行力を抱き合わせにして、先にするという形にした方が見えやすいのではないかと思います。
 やはり、その問題はADRの今後に対して非常に重要な問題ですから、ここは一番議論を煮詰めておかないといけないところだと思います。

○青山座長 その順序はそれでいいですか。

○小林参事官 執行力とだけ事前確認の問題をリンクさせて議論をするというのは、全体の体系を考えると、いささかいかがかと思います。
 少なくとも、時効中断効、72条、執行力、この3つとの関連ということであれば、よろしいかと思いますが、私どもは決して何が何でも事前確認制を導入したいと、そのためのシナリオをつくっているわけではありませんので、あくまでも効果との関係ということでありますし、効果との関係ということからすると、少なくとも時効中断効、72条、執行力、この3つとの関係は是非、関連させて議論していただくと、私としてはありがたいと思っております。

○廣田委員 勿論、事前確認制方式が採用されるかどうかということは当然、効果に議論が及ぶと思いますので、今挙げたのは執行力の付与ということを挙げましたけれども、その議論の過程で当然、時効中断が出てきてもいいし、72条が出てくると思いますけれども、これを採用するかしないかによってがらりと違ってくるのですね、今後。ですから、そこのところに行ったり来たりしない方が、私はいいと思います。
 これは私の意見ですから、ほかの皆さんの御意見はいかがでしょうか。

○青山座長 多分、仮に時効中断については事前確認は要らない、執行力については要るというような議論になったり、その逆はないと思いますけれども、そういう議論にどうせなると思いますので、ですから、効果を中心に、この効果ならばどうかという常に事前確認というのを背後に睨みながら、議論をするということでよろしゅうございますか。事前確認方式をとるかどうかという議論になって、では、採ると決めたらずっととるのか、採らないと決めたら採らないのかということでもないと思います。時効中断とか執行力とか72条の問題だとか、あるいは基本法制としてどう考えるかとか、いろんな中に、では事前確認というのは要るのか要らないのか、要るとしたら、どの範囲で要るのかという議論になろうかと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

○安藤委員 すみません。私は事前確認については、もうちょっと段階的に考えているのですけれどね。ですから、そういった広い段階的な部分もちょっと議論はしていただきたいと思うのです。

○青山座長 段階的というのはどういう。

○安藤委員 相談から入っていくぞという形で考えないといけないかなと。

○青山座長 相談の場合には、事前確認というのは要るとか要らないとかいう議論でしょうか。

○安藤委員 ということは、一番問題は守秘義務になってくると思いますけれどもね。
 ですから、段階によって、ここだったらここまで、ここだったらここまでというようなところもちょっと議論の対象にならないかなと考えておるのですけれどね。

○青山座長 相談といったら、恐らくどなたも事前確認を考えていませんし、今までの議論でもなかったわけですので、段階というよりも効果ですね。どういう効果を持つのかということとの関連で考えさせていただくということでよろしいでしょうか。

○安藤委員 というと、調停あたりから考えるということですか。

○青山座長 仲裁については、事前確認というは誰も考えていないわけですね。ですから、仲裁を除いた、あっせんと調停という、このADR基本法が中心的に考えている手続が始まったときに、どういう効果を認めるか。そういうところでまとまった和解にどういう効力を認めるか。そういうことから今の議論はなされているわけなので、その効果ごとに考えていくということだと思いますが。

○安藤委員 わかりました。

○青山座長 それでよろしいですね。

○安藤委員 単純なことを言うと、17日に叩き台を出すために詰めておく部分を27日にやると。

○青山座長 そうです。おっしゃるとおりです。

○安藤委員 そうすると、27日にやる場合は意見が分かれたにしても、簡単に言えば○×でやるか、多数決でやるか、ジャンケンでやるか。どっちかに偏らない限りは、17日に提案できないわけですね。

○青山座長 どちらも採れませんけれども、一応、事務局が今のここでいただいた御議論を十分踏まえて、ヒアリングとパブリックコメントを勘案したぺーパーを出してもらいます。それによって議論をしていって、多数決を取るというわけにはいかないと思いますけれども、11人の大方の御議論をいただいて、この辺かなというところの一致点を探っていくことになろうかと思います。
 それに従って、次の11月17日に叩き台のような、これもあくまでも叩き台ですから、そこでまた御議論をいただいて、細部を詰めたり修正したりする。そういうふうに詰めていきたいというふうに思っておりますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
 綿引委員、どうぞ。

○綿引委員 そうしますと、10月27日に取り上げる論点がどこになるのかというのを早目に、一度、我々の意見も聞いていただいたらどうかと思います。
 ここは是非、落とさないでほしいというような御意見のある方もおられるかと思いますので、特に27日に一応、収斂させようと思っておられる論点、できるだけ早目に送っていただいて、FAXなりメールなりでもいいと思いますので、それで叩き台を作っていただいたらどうでしょうか。

○青山座長 全員にそういうことを出しましょうか。少なくとも今出ているのは時効中断というもの、それから72条、執行力、それらの背後として、事前確認というようなものについて議論をいただくと。
 前の方にある基本的な事項とかいうことについては、意見の対立もあるけれども、それは小差でございますので、そういうものも組み込んだような形で全体像を考えたいと思います。
 基本的事項と一般的事項というようなことは、今までの議論で大体尽きているのではないだろうかというふうな認識を私は持っておりますので、あとは叩き台の後の御議論でそういうところは済ませられるのではないだろうかと思いますが、ただ、そう言いましても、一応、メールなりFAXなりで御意見を聞いて、ここの点を詰めろというふうに、もっと掘り下げろというようなことがあれば、おっしゃっていただければ取り上げるにやぶさかではありません。まだ二十日以上ありますから、その間にできますね。

○小林参事官 はい。

○綿引委員 今のは、調停前置だったりは、大体ここでのコンセンサスができているという御認識でおられるということでよろしいのですかね。
 その辺りがどうかなのか、私はいいのかなとは思ってはいるのですけれども、それとか調停手続、裁断手続への資料の引継ぎの問題と、まだいくつか残っているところはあると思うのですが、その辺はとりあえず法文化してしまった後で、要するに17日の段階でもう一度ということになるのか、どうなのかなと思ってちょっと伺っただけなのですが、今、最初、座長は例えば、というふうにおっしゃったように思って。

○小林参事官 先ほど、座長からもお話がありましたように、17日にお出しするのは、全体を見渡したたたき台でございますので、27日に議論をされなかったところについては、言わばそこがスタートになりますので、そこでまた必要な御議論をいただくものと考えております。
 ただ、先ほどの話とも関連しますが、調停前置なりの議論をする際にも、やはりどうしても事前確認の話というのは絡んできてしまうものですから、やはり事前確認と、比較的大きい効果との関係を1回議論した上で御提示した方がいいのではないかと考えております。
 おっしゃったような論点を単独に取り上げるというのは全体のバランスから言うと、限られた時間を考えると27日では敢えて必要はない、あるいは必要はあるのですが時間が足りないということではないかなと思います。

○綿引委員 そうすると、10月27日のコンセプトとしては、基本的には事前確認の制度を入れるかどうかということとの絡みで、各法的効果をどうして行こうかという辺りをできるだけ収れんをさせようという発想だというふうに理解すればよろしいですか。

○青山座長 そんなことで考えておりますが、よろしゅうございますでしょうか。

○綿引委員 そういうことであれば、私はそれで結構かと思うのですが。

○青山座長 よろしゅうございますか。
 それでは、確認いたしますと、事務局から出す叩き台は、次々回の第25回検討会、11月17日に出してもらうということにいたします。
 そして、次回の10月27日は今、申しました時効中断、弁護士法72条、執行力というような特例的な効果と、当然、その事前確認方式の是非という問題を集中的に御議論いただくということにさせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。 そういうふうにさせていただきまして、それでは事務局に今、とりまとめました論点について、詰めるべき論点を整理したペーパーのようなものを準備していただきたいというふうに思います。
 そうすると、では、今、御了解いただきましたスケジュールで進めさせていただきますので、最後に次回の日程をもう一度確認させていただきます。
 ここに書面が出ておりますように、次回、第24回ADR検討会は10月27日月曜日午後1時半から開催いたしまして、今、述べました、なお議論を深めるべき論点について、それに絞った集中的な討議を行いたいというふうに思います。
 ぺーパーは事前にお送りしていただくことになりますか。また、いつもと同じように事前にペーパーをお届けいたしますので、当日は十分に議論していただきたいというふうに思います。

○綿引委員 すみません。12月の予備日は使われる予定でしょうか。というのは、私は大体1か月前に予定が入ってしまうものですから、前回のような直前になっての予備日の使用ということですと、とても対応できないもので。

○青山座長 事務局の感じはどうですか。

○小林参事官 お願いしたいと思っております。

○綿引委員 12月8日の日はどうですか。

○青山座長 使います。

○綿引委員 使う予定ということですね。

○青山座長 使いますのでお願いいたします。
では本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 これにて、本日の検討会を終了いたします。