○青山座長 それでは、ただいまから第25回ADR検討会を開会いたします。
本日は、平山委員が所用のため御欠席でございますけれども、それ以外の方は、全員出席でございます。
本日は、前回予告申し上げましたとおり、事務局から、これまでの検討会の議論のほか、意見募集の結果、更に法制的な側面からの要請、こういうものを勘案しましたADRに関する基本的な法制のイメージが提示されております。これが、25-1の資料でございます。 本日及び次回の12月1日、及び次々回の12月8日の都合3回の年内の検討会では、このイメージを素材に、ADRに関する基本的な法制についての体系的な検討を行いまして、これまでの議論の整理をしたいというふうに思っております。
そこで、このイメージの位置づけ等も含めまして、事務局から資料の説明をお願いいたします。
小林参事官、よろしくお願いいたします。
○小林参事官 それでは、資料25-1に基づきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
まず、この資料の位置づけでございますが、今、座長の方からも御紹介がありましたように、これからの議論の収斂を図っていくための素材として、これまでの検討会におきます議論、あるいはこの夏に実施しましたパブリック・コメントの結果などを総合的に勘案して、考えられるイメージというものをお示ししたものでございます。
そういう意味で、あくまでも検討の素材でございますし、次回、あるいは次々回の議論を踏まえながら、更に内容的には拡充を図っていきたいというふうに考えております。
特に、法制的な面、あるいは実務上の改善を図っていくような点につきましては、ここでは簡単に触れておりますが、これらについても進捗に応じて適宜内容の充実を図っていきたいというふうに考えております。
一部報道で、法案の素案というような表現ぶりもございましたけれども、位置づけとしては、今、申し上げたような位置づけというふうに考えております。
それから、このペーパーの基本的なスタンス、認識でございますが、資料の2つ目の※にございます。
これも、これまで何回か御紹介させていただいておりますけれども、我が国におけるADRは一部のものを除き歴史も浅く、また、これまでADRを巡る議論の蓄積も必ずしも十分ではなかったのではないかというふうに考えております。
また、このADRに対する評価というものにつきましても、将来性に着目し、できる限りその自主性、多様性を生かすべきという考え方がある一方で、仮に不適切に利用された場合には、弊害も多いのではないかという懐疑的な考え方も決して少ないわけではございません。
その限りにおいては、現時点で、国民の間に必ずしも明確なコンセンサスがないとも言える状況にあるわけでございます。
さはさりながら、そうした状況の中で、今回総合的なADRの制度基盤の整備に向けて、まずは第一歩を踏み出すとすれば、どういった考え方があるのかということが次の①と②でございます。
1つは、これまで御議論いただきましたように、ADRの健全な発展を図るために必要と考えられる特別な法的効果の付与、あるいは規制の緩和について積極的に検討するとともに、これらに伴う最低限の適格性の要件を確保するためのものを除き、これらはこうした法的効果の付与や規制の緩和を適切に行うためには必要と考えられるわけでありますけれども、こういったものを除き、新たな規制的な措置の導入については慎重に考えてはどうかというのが、まず第1点でございます。
第2点目でございますが、他方、現時点で国民の間に導入について不安感がある措置、あるいは現行制度との整合性が図り難い措置、かなり大胆に踏み出す必要があるような措置の導入については慎重を期し、場合によっては将来の検討課題とした上で、当面法的措置以外の改善策を積極的に検討することとしてはどうかというのが2点目でございます。
これらは、いずれもこのイメージをとりまとめる際に、前提と置いたスタンスでございますが、当然、ここについてもいろいろな考え方があろうかと思います。それはまた御議論をいただければというふうに考えております。
3番目の※でございますけれども、本イメージで想定しております法的措置につきましては、これもこれまで御議論いただいたように、民法を始めとした現行法制との整合性が確保されなければならないものも含まれております。
これらにつきましては、これまでも検討してきたわけでございますが、今後ともこうした観点から十分な検討が行われる必要がございますし、その結果によっては所要の変更が必要になるということもあり得るというふうに考えております。
以上が、このペーパーの性格でございますので、こういったことから、本イメージは、現時点で他の選択肢を完全に否定するものではない。これは当然のことでございますが、これから御議論いただきたいということでございます。
まず、「I.立法目的(基本的な法制の枠組み)」のところでございますが、イメージといたしましては、「民事上の紛争の解決方法を選択する機会の拡充を図ることを目的」とするということにいたしております。
当然、どの選択肢を選択するかということは、利用者の選択に委ねられているわけでございますので、この枠組みにおいて何か特定の方向性を目指すということではなく、あくまでも選択する機会の拡充を図るということを主眼と考えております。
そのために必要となるADRに関する基本理念、あるいは国等の責務を定めるとともに、ADRの利便性・実効性を確保するための各種特例措置を講ずるということを大きな目的といたしております。
なお、(注)のところでございますが、相談の扱いについてでございます。相談については、ADRの拡充・活性化を図る上で非常に重要だということは、これまでも御議論をいただいたわけでございますが、パブリック・コメントでもいろいろ御指摘を受けたように、相談につきましては、ADR以上に非常に多種多様の形態があるということで、具体的な措置の対象として一律に扱うのは適当ではないのではないかという御議論があったところでございますので、それを踏まえて具体的措置の対象とはしないという考え方を示しております。
1枚めくっていただきまして「II.総則(基本的事項/一般的事項)」のところでございますが、「基本理念」につきましては、先ほど申し上げましたとおり、裁判と並びまして、多様かつ広範な国民の要請に応えて民事上の紛争の解決方法を選択する機会の拡充を図る上で重要な役割を果たすということが期待されておりますので、国、地方公共団体、ADRの提供者その他関係者が連携をして、利便性、実効性、信頼性の確保が図られなければならないという旨の基本理念規定を置いてはどうかということでございます。
なお、先ほどの相談に関連しまして、具体的な措置の対象とすることは避けるといたしましても、ADRと密接な関連を有する相談の重要性については、何らかの形で言及するということも必要ではないかということで更に検討したいというふうに考えております。
2番目の「国の責務等」でございますが、まず、国、地方公共団体の責務につきましては、先ほど申し上げましたような基本理念にのっとりまして、ADRの健全な発展に関する施策を策定実施する責務を有し、また、国民の理解を深めるための施策を講ずべきということを記述いたしております。
また、地方公共団体についても、それに準じた一定の責務を有するということを考えたいというふうに思っております。
(2)の「ADR提供者等の責務」でありますけれども、これにつきましては、パブリック・コメントの段階でここにございますような公正な手続運営の確保、それから利用者への情報提供、質の高いADRの担い手の確保ということをお示ししたわけでございますけれども、基本的には大きな異論はなかったということで、この3つについて規定を置くことを考えていきたいというふうに考えております。
(3)の「国民の役割」でございますが、これにつきましては、自分たちの紛争は自分たちで解決を図っていくということの重要性を謳うというような内容でございました。これにつきましては、賛否もございましたけれども、ADRを巡る状況が、先ほど申し上げたようなことも考えますと、ここで敢えて国民の役割ということを打ち出すのはいかがかということで規定の整備は見送ったらいかがかということでございます。
(4)の関係者の協力につきましては、先ほどの基本理念を踏まえまして、国、地方公共団体、ADR提供者その他の関係者の連携、協力の責務規定を置いてはいかがかということでございます。
3.の「ADR提供者等の義務」でございますけれども、これはパブリック・コメントの段階では、単なる努力義務ではなくて、もう少し強い法律上の義務として3点ほど考えてはどうかということで提示をしたわけでございますけれども、まず、相談についてこういったものを適用することについて、かなり反対があったことにつきましては、先ほど相談を具体的措置の対象から外しましたので、併せてここでも対象から外したいというふうに考えております。
その他のADRに関してでございますが、これも多種多様なADRに対して、一律にこういった義務を課すのはいかがかという議論がかなりございましたので、そういうことも踏まえまして、守秘義務を除きまして、今回規定の整備の対象から外してはどうかという考え方を示しております。
ただ、重要事項の説明義務については、非常に重要だという御意見もございましたので、責務規定、先ほど申しましたような努力義務の規定の中に含めることも更に検討したいというふうに考えております。
以上が総則でございます。
3ページ以降、「III .民法等の特例(特例的事項)」ということでございます。
まず、1番目の「時効の中断(仲裁は対象外)」につきましては、これは必要性が非常に高いということで、基本的に導入をするということでは、この検討会の議論も一致をいたしていたと思いますけれども、具体的な方法については、前回も御議論いただきましたように、まだ収斂が図られておりませんので、本日、再度御議論をいただくということで検討中というふうにしております。
それから、2番目の「執行力の付与(仲裁は対象外)」でございますが、これも大きなテーマとして取り上げられてきたわけでございますが、前回も議論いたしましたように、あるいはパブリック・コメントにも表われておりますように、かなりこの導入については不安感があるという問題がございます。
また、制度的な面、あるいは理論的な面での解明も必ずしも十分に、現時点では行われていないということもございます。
したがいまして、これにつきましては、その必要性を完全に否定するわけではございませんけれども、やはり現時点での導入というのは、なかなか難しいのではないかということで、将来の検討課題として位置づけてはいかがかということでございます。
当面は、関係者間の連携・協力を進めていく一環としまして、既存制度、これは事実上代替的に使われている制度がいくつかございますので、この利用者の利便に資する方策を検討してはいかがかということでございます。
具体的な方策につきましては、更に検討した上で拡充を図っていきたいというふうに思っております。
それから、3番目、4番目、5番目が、裁判との連携の問題でございます。
まず、3番目の「調停前置主義の不適用(仲裁は対象外)」につきましては、こちらにございますように、「ADRにおける和解交渉によって和解が調う見込みがないとされたものについて訴訟が提起された場合」につきましては、そのADRが公正かつ適確に手続が進められたものと認められるときは、裁判所の裁量的判断によって、事件を調停に付さないことができることを法律上も明確にしてはいかがかということでございます。裁量的によって行うということでございますが、対象となる事件につきましては、離婚、離縁事件も含めてというふうに考えております。
4番目が「訴訟手続の中止(仲裁は対象外)」でございますが、これにつきましても、裁量的判断によって、勿論、両当事者からの申立てがあった場合でございますけれども、一定期間訴訟手続を中止することができる旨の規定を置いてはいかがかということでございます。
5番目の「裁判所によるADRの利用の勧奨」の問題でございますが、これも当検討会においても、あるいはパブリック・コメントにおいてもかなり賛否が分かれた問題でございますけれども、現実の問題といたしましては、仮に両当事者がADRによって話を進めていくということであれば、上の訴訟手続の中止を利用することによって、それは今回可能になるわけでございますので、そういった状況も踏まえれば、今回、正面から制度として導入するということについては、若干慎重を期すべきではないかというふうに考えております。
勿論、先ほどの執行力の付与もそうでございますが、関係者間の連携・協力を進めていく一環として、裁判所、ADR提供者間の連携について更に検討していくということも考えております。
6番目の「ADRに係る法律扶助制度の見直し」でございますが、これはこの検討会でも御議論あるいは御説明をさせていただいたように、現行制度でも裁判を前提とした場合につきましては、この法律扶助制度の対象となっているわけでございます。
更にこれを超えて、ADRを直接の目的とするケースについてまで、この制度の対象としていくということにつきましては、勿論、現在の法律扶助制度を巡る非常に厳しい状況ということを仮に別に置くといたしましても、やはりいろいろ難しい問題があるのではないかというふうに考えております。
これは、勿論、制度自身の目的との関係もございますし、仮にADRを対象にしていくということになれば、その対象となるADRをどのように選別していくのか、あるいは選別すること自身が適当なのかどうかという問題が、またほかの項目と同じように議論になり得るわけでございまして、そういう意味では将来の検討課題ということで位置づけてはどうかということでございます。
4ページでございますが、専門家の活用ということで議論をいたしたテーマでございます。
「7.非弁護士によるADR関係の法律事務の取り扱い(仲裁を含む。)」ということでございます。
これも御議論いただきましたように、主宰と代理の2つの側面がございます。
まず、「(1)主宰」につきましては、いくつか提案をさせていただいたわけでございますが、弁護士と共同し、または弁護士の助言を得て、ADR主宰に係る法律事務を行う場合には、弁護士法72条を適用しない旨の規定を考えてはどうかということでございます。
こういった条件を付せば、弁護士法72条で問題としているような不適切な事態というのは回避できるのではないかという考え方、そういった前提でむしろ積極的に専門家を活用していくべきではないかという考え方でございます。
なお、これが基本的な考え方ではございますけれども、更に前回も御議論いただきましたように、(注)の①で、仲裁について、これはここに書いてあるような事情もございますので、もう少し別の扱いが考えられるのではないか、あるいは、b)のところにございますように、和解あっせんについても、必ずしも全過程ということではなくて、非常に重要になるポイントに弁護士の関与を限定するという考え方も議論されておりますので、これらについては更に検討することとしてはどうかということでございます。
(注)の②のところでございますが、これも前回御議論いただきましたように、一定の不適格者については排除するということが検討されておりますので、これについては更に検討するということでございます。
この主宰についての最後のなお書きの部分と、それから(2)の代理の部分は、むしろ一定の高度の法律知識を有すると考えられるような資格保有者、例えば隣接法律専門職種のような方々でございますが、これらの方々についての措置ということについては、個別に検討するということを考えてはということでございます。
代理につきましては、これも何度か御議論させていただいたように、元々ADRにおける代理の必要性のニーズというのは、かなり限定されているのではないか。あるいは代理につきましては、主宰と異なりまして、直接当事者の権利義務関係を左右するということで、主宰以上に法律的な知識というのが重要になるのではないかというような問題意識を踏まえたものでございます。
最後に「IV.調停手続法(調停手続法的事項)」の部分でございます。
これは具体的には、調停で提出した資料など、一定の事実などを裁判では提出できないというふうにする、あるいは調停人と仲裁人を同一人物が行うことができないというようなルールを導入すること。あるいは、それらを含めた調停手続についての一般的なルールを設定するかどうかという問題でございますが、これらにつきましては、国際的なハーモナイゼーションの動きもあるわけでございまして、当然これを完全に否定するという趣旨では全くございませんけれども、現在の実務の状況なども踏まえますと、パブリック・コメントの意見などにもありましたように、今、これを導入するというのは、時期尚早ではないかと、将来の検討課題としてはいかがかということでございます。
以上、非常に簡単でございますが、ペーパーの方の御説明でございます。
○青山座長 ありがとうございました。この25-1の資料は、IからIVまで4つの部分に分かれております。
「I.立法目的(基本的な法制の枠組み)」「II.総則(基本的事項/一般的事項)」「III .民法等の特例(特例的事項)」「IV.調停手続法(調停手続法的事項)」と、この4つに分かれておりますが、本日の議論の進め方について、こういうふうにさせていただきたいというふうに思います。
このうちのIII .の1の時効の中断については、先ほどもちょっと御説明がありましたように、後ほど、今日の最後ところで別途御議論をお願いしますので、それ以外の25-1の資料全体につきまして、各委員会から、この法制のイメージに対する御意見をまず、ずっとお伺いするということにしてはどうかと。
そして、御意見を一通りお伺いした上で、更に必要に応じて個別的な論点を議論するというような形で進めさせていただくということでどうだろうかというふうに思っておりますけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。
その最初の議論は、50分から1時間程度というふうに考えております。よろしゅうございますか。
それでは、各委員から御意見を承ってまいりたいと思います。
この席の順で龍井委員の方からお願いできればと思っておりますが、要するに、この法制のイメージ、IからIVまでありますけれども、そのうちですべてについて御意見をいただいても構いませんけれども、特に異論がない部分は省略していただいても結構でございますけれども、一巡大体50分から1時間ぐらいの予定としておりますので、どうぞ思いのたけをお話しいただければというふうに思っております。
どうぞ、お願いいたします。
○龍井委員 まだ、まとまっていないのですけれども、先陣を切らせていただく意味で、問題提起だけさせていただこうと思います。
この間の議論をずっと振り返ってまいりまして、やはり目的あるいは趣旨のところで、この検討会として、当然アウトプット、法制化というのが大きな宿題となっておりますから、それが1つの答えになるのだろうなと。
ただ、ここではADRの一番最初の議論のときに、ADRそのものが活性化をしていく、ないしはどんどん活用されていく、そしてそれによって社会的信用が増す、そうすると必ずしも、勿論裁判自体も変わってほしいわけですけれども、そこにすべていかなくても、自主的に解決がどんどん促進してくるというイメージとして考えていった場合に、法律でできること、しなければいけないことと、もう一つ、やはりいろんな社会的気運、あるいは環境整備といったようなことも、この検討会に一面、託されているのかなと。
そういう意味では、今日の議論という意味ではなくて、そうした役割として、人材、担い手が集まり、やってやろうという人がどんどん出てくると、あるいはそういう人たちが更に、今まで思ってもいなかった人がこういうことをきっかけにして、そういう役回りをするようになる、あるいはそういうことを将来目指すような人も出てくる。そして、ここからは外れますけれども、相談という入口のところもどんどん振り分けも含めて、選択肢の1つとして出てくると、そういうふうに今回の検討の結果を考えた場合に、やはり法的措置だけではできない部分について、ADRの私の提起も含めて将来どう整理するかというのは残っているだろうなと。
法制化というふうに考えた場合でも、当然これは今回こういうことがありましたので、基本法と名の付くのもいくつか拝見したのですが、やはり極めて基本計画を作って、きっちりとフォローアップする基本法もあれば、かなり精神条項的なものもあったり、つまり法律を作る以上は、当然法的効果が求められるのでしょうけれども、この法律の場合には、今申し上げたような社会的条件整備という、ある種メッセージ性といいますか、そういう役回りも求められているのかなという気がしています。
そういうふうに考えていくと、ちょっと今回、事務局がまとめて、大分御苦労されていることはよくわかるのですけれども、ちょっと後退気味かなという印象を受けざるを得なかったのは、では、今お示しをされているものができて、では具体的に何が変わるのだろうかと、今、そういうことをやっている機関、あるいは利用者、あるいはまた立ち上げようとする人たちにとって、今回これができることによって、何が、決定的という言葉は使わなくてもいいのかもしれませんけれども、何が変わるのかなと考えた場合に、ちょっとイメージが湧きにくいのですね。
ここも実は、悩ましいところがありまして、法的枠組みというふうに考えていけば、多分後ほど焦点になります法的執行力や時効中断効が当然一番重要な課題になってくる。
ただ、例えば、私ども利用者というふうに考えた場合に、今回一部は見送られておりますけれども、仮にそれが法的に整備される、あるいは法律に盛り込まれる、それによって、前段に申し上げたADRが活性化するかというと、ちょっとそこもイメージが湧きにくいわけですね。私ども自分の人生で考えた場合に、いろんなトラブルを抱えても、多分時効中断効を活用するケースというのは、何件のうちにあるかなと。
そういうふうに考えていくと、やはりメッセージ性という方から言うと、法的枠組みでは必要なのかもしれないけれども、あまりそこだけのところで全体のイメージを考えると、かえってマイナスになるかと思います。
と申し上げますのは、さっき一律に否定するものではないというふうに説明されましたように、私も全く同じで、何かの基準を作るときに、それが全部のものに一律に係るということは、多分この検討会の議論ではあまりイメージが湧いていなくて、こういう条件、こういう要件を整備するのだとしたら、こういう規制がかかりますねという一連の議論だったと思うのです。そういう意味では、前回だか、前々回だか、山本委員が御指摘されたように、選択肢という場合に、質が違うものが、レベルが違うものが併存していて、それも含めて選択肢としていいのではないかと、私もそういうイメージで考えています。
そういうふうに考えると、例えば法的執行力を求めるところが仮にあったとすると、これも私はそんなにむちゃくちゃ数があると思っていないのです。それが求めるところであれば、当然これだけの、ここの言葉で言うと義務が伴いますねと。私は、それ自体は何か全体に対して規制がかかるというイメージよりは、むしろ逆に言うと例外的なものであるというふうに作り方、あるいは実態も多分そうだろうというふうに考えると、そこの議論で何か全体の法的枠組みが議論されるのはちょっと残念かなという気持ちが、私自身はしております。
そういうふうに考えた場合に、どういう活性化のイメージが法律でできるかなと考えたときに、これはまだ私自身が固っていないのですけれども、ある種、マル適マーク的なレベルが1つ作られて、つまりそれすら必要ないと、これは現に今でも十分にやっておられるところは、それも必要なければ放って置けばいいわけで、基本法ができようができまいが、自前でやっていればいいわけで、ただ、やはりこういう情報開示の問題とか、言ってみれば、NPOと一緒にする気はございませんけれども、ある種そういう社会的認知、あるいは社会的お墨付きが得られるということが、少しでも活性化につながるのであれば、例えばそういうものが用意されて、これも議論があると思います。
では、どこがマル適マークを押すのと。これは当然、ある種トラブルが多発しないためには、ある程度の権威が必要でしょうし、一番の場合は国ですね。そうではなくて、ある程度成熟した社会であれば、ある分野に特定の分野の専門家たち、あるいは専門の機関があるわけですから、そこのNPOがやってもいいし、そこはケースごとに幅があると思いますので、一律には考えておりません。
ただ、どこかでそういう社会的認知のためのお墨付きがあるとすれば、そのためにはこういう努力義務がありますよと、せいぜい努力義務ですね。当然マル適マークですから、余程まずいことがあった、あるいは社会的な通念に反することがあった。あるいは適格者の要件のところで、まずいところもわかったという場合には、そのマル適マークの適用除外といいますか、取消しはあってもいいだろうと。ただ、それはそんなに厳密なものではなくて、いつも審査をしているというよりは何かトラブルがあったときに、どこかの機関でフィルターがかかって、マル適マークが落ちるぐらいの程度であって、私はそのレベルが、その段階も必要ないと言えば、基本法自体も必要なくなってしまうのかなというぐらいに思っていまして、何かそういう活性化のためのものがあって、しかもそれにプラスアルファで後の議論になる法的執行力を求めるところがあれば、更にそれにプラスアルファの要件がかかると。
それは、先ほども繰り返し申し上げますように、極めて限定されたものであるというようなところで、少しこの会の一番最初の議論の、何のために基本法なり法的枠組みを作り、しかもそれがどう活性化をするイメージを皆さんお持ちなのかということは、是非お伺いしたいと思っていまして、もし、私が今、申し上げたような問題が皆さん方のところと、もし論点が交わるのであれば、もう少し具体的に考えたいと思っております。
○青山座長 では、山本委員お願いできますか。
○山本委員 今、龍井委員からの御提案というか、御提示は大変興味深い御提案だったというふうに思っています。現在、国際的にもADRのスタンダードを作ろうという、ISO等でそういう動きが開始されておりますので、そういうような一定のスタンダードを定めて、それに基づいて、一種の自主規制的な形で、良いADRを伸ばしていこうという試みは大変将来的には将来性のある方向ではないかと思います。
一応、このペーパーに沿って意見を述べよというお話ですので、これに沿った形で私自身の思うところを若干お話をさせていただきます。
まず、第1に最初の前提のところですけれども、これは何というのでしょうか、※の2つ目のところに書かれてあることなのですけれども、評価について、二様の評価があるということ、これ自体はそう否定するところではないのですが、書きぶりの問題なのかもしれませんけれども、基本的にはこの検討全体の考え方としては、司法制度改革審議会の意見書、つまりADRの充実・活性化というものが、今後の日本社会において必要であるという部分については、おそらくコンセンサスがあったのではないかというのが、私の認識です。
この書きぶりは、その評価についても飛ばして読むと「懐疑的な考え方も少なくなく」ということは、つまりADRの評価について懐疑的な考え方というのは、これはADRというものが望ましくないのだというような意見があったかのような印象を与えるとすれば、私はそれは誤解であろうというふうに思っておりまして、御意見としては、勿論、司法制度改革審議会の意見書も不適切なADRを充実・活性化するというようなことはおよそ考えておられなくて、勿論、それは健全なADRを充実・活性化していくということだろうと思いますが、その健全性を確保するような仕組みというものが、うまく設けられるのかどうかと。そして、健全性を見分けるような仕組みというのができるのかどうかということについて、いろんな御意見があった。それは、自主性、多様性を生かしていく中で、市場によって淘汰されていくという考え方もあったし、それではやはり不十分であって、不適切なADRというものを排除していく。そうでない限りは、なかなか法的効力等を付与するということには慎重であるべきだという御意見はあったかと思うのですが、それはあくまでもやはり健全なADRを発展させていくということは、日本において必要なのだという前提の下でのお話だったのではなかろうかということですので、私はここはできれば表現ぶりを、そういうような私の認識しているような議論に合わせたような形にしていただきたいというふうに思っております。
それから、個別の内容ですが、ここのペーパーでは2ページになりますが、まず、総則的な部分で、ここはあまり異論はないのですが、特に国民の役割については、規定の整備を見送るというのは、私は賛成でありまして、やはり今の段階で国民に対して、ADRの利用を検討するようなことを責務としてであれ、付けるということは時期尚早であって、それはむしろそういう環境を整えていく、そのためにこういう法律を作るということがあるわけですし、そのほか教育とか、いろんな活動、そしてこういうADR提供者等が努力していく中で、そういうふうに国民が自発的に利用していくということであるべきだろうというふうに思っております。
それから、3.の「ADR提供者等の義務」につきましては、これは私自身繰り返し強調してきましたように、私には重要事項の説明義務、情報開示と、そしてそれによるADR機関の透明性の確保というものが非常に重要なことである。基本的にはADRの多様性というものを重視しながら、不適切なADRというものが市場において淘汰されていくというスキームで物事を考えるのであるとすれば、この説明義務というものは非常に重要なものであるというふうに考えております。
したがって、私個人としては、なお法的な義務としてこのようなものを設けるべきだということを考えておりますけれども、なお、どうしても反対が強いということであれば、責務規定ということでも、何らかの形でこの法律の中で、そういうADR機関が十分な情報を利用者に対して重要な事項について説明すると、ある意味で私は当たり前のことだと思いますが、それは当然ADR提供者に求められているのだということを法律の中で明らかにするということが必要だろうというふうに思っております。
具体的な法的効力の特例の点でありますけれども、時効についてはまた後で御意見を申し上げる機会があるのだと思いますが、執行力に関しましては、私自身も、今、龍井委員が言われたように、そしてこれまでも繰り返し申し上げておりますように、執行力の付与というものは必要だし、そういう方向で検討をすべきであるというふうに依然として考えております。
先ほど、龍井委員がメッセージ性というふうに言われました。私自身もまさに、この執行力を付与するかどうかというのは、このADR法の実際上の効力としては、決定的におそらく大きな点だろうというふうに思っておりまして、一部報道などによると、この執行力の付与が設けられないことは、改革審意見書に対する大きな後退であるという評価がなされているようでありますが、おそらく一般国民のとらえ方は、そういうことにならざるを得ないだろうというふうに、もし執行力が落ちるとすれば、そういうことにならざるを得ないだろうというふうに思っております。
具体的な理由については、繰り返し述べましたので、時間の関係であれですが、濫用を懸念する御意見は十分にわかるわけですけれども、そこはまさに龍井委員が言われたように、私自身もこのような執行力が認められるADRというのは、こういう制度ができたとしても、それは非常に限定されたものにとどまらざるを得ないというふうに思っているところでありまして、濫用の懸念というのには当たらないのではないかというのが、私の認識です。
その項目の5.でありますけれども「裁判所によるADR利用の勧奨」ということについても、これもまた繰り返し申し上げてきたとおりでありますけれども、この点は諸外国においてもADRに関する法規定を持つところは、多くこのような規定を設けて、まさにADR振興の中核として位置づけられているところでありまして、また改革審意見書で述べられたADRと裁判所の間の相互の連携というものについて言えば、これは中核的なものというふうに私は認識をしております。
そういう意味では、やはりこの点についても何らかの規定を設けるべきであるというのは、依然として私自身はそういう意見を持っておるところでございます。
6.の「ADRに係る法律扶助制度の見直し」というのは、今、事務局の方から御説明になったことは理解はできるわけですけれども、ただ、私自身は、この点は、方法論といいますか、議論の方法の仕方といたしまして、一応、この点はパブリック・コメントで一般の意見を求めたわけであります。検討会としては、そういう意見を求めようという意思を示したわけでありまして、そして寄せられた意見は、私が見た限り大半は賛成だったわけであります。
そうだとすれば、それをほとんど検討会で、その後、実質的な議論を全くしないままに大半が賛成だった意見に反対の結論を取るということは、私は方法論としてはいかがなものだろうかと。そんなことであれば、そもそも意見は聞かなければよかったのではないかと思うわけであります。
やはり、パブリック・コメントを見て、十分にお考えになって意見をお寄せいただいた国民の方が多くおられたわけでありまして、そこで賛成だということを言われているのに、ほとんど何の議論もなく、突然これは将来の検討課題であるという結論になるのは、私自身は、議論の進め方としていかがなものであったかと。勿論、私自身も検討会のメンバーとして責任を負うべき立場にあることはあるわけでありますけれども、ここはやや問題であったのではなかろうかと。
そして、個人的には、やはり依然としてADRについても法律扶助の対象とするということを考えるべきであるという意見を持っているということを、申し述べさせていただきたいと思います。
あとは、最後の「調停手続法(調停手続法的事項)」のところですが、これもまた何度も申し上げた意見ですので、結論だけを申し上げさせていただきますと、調停から仲裁等に移行する場合の情報の利用制限の問題につきましては、これはUNCITRALのモデル法において規定があり、また諸外国の制度でもそのような規定を持っているところが多いわけでありますので、そして私が御意見を伺った限り、必ずしもそれに反対する意見として現状がそうだからという御意見はたしかあったかと思うのですけれども、そうあるべきでないというような御意見は、どうも私は伺っていなかったと、パブリック・コメントを含めても伺っていなかったというふうに認識しておりますので、この点については、依然として私は規定を設けるべきであるというふうに考えております。
最後に、私の意見は意見といたしまして、もしいろんな事項がこのペーパーに書かれているように、将来の検討課題として、もし残るということであれば、多くの事項が残るということであれば、これは検討会としても将来の検討というものをどういう形で行っていくのかということを、やはりきっちりと提案していくべきではなかろうかと、それが我々の責任ではなかろうかというふうに思っております。単に、これは将来の検討ですね、はい終わりということでは、我々の任務を全うしたことにはならないのではないか。どこにどういう問題があって、そしてどういう状況を将来見極めて、どういう形でこれらの問題を検討していくべきかということを我々として提言していく必要がある、そういうフォローアップをきっちりとしていくスキームを考えていくべきではないかというのが私の意見であります。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、原委員お願いできますか。
○原委員 全体的なこれまでの議論を通しての感想と、それから私の意見ということで述べさせていただきたいというふうに思います。
今朝、私は新聞を見て驚いたのですが、「裁判所調停、民間で代替」というふうに書かれていて、今日のADR検討会で提案されていたことが紹介されていたのですが、見出しも、こういうタイトルで世の中には出るのかというふうな寂しい感じがします。それから内容的には、「執行力の付与が入らなかったということで、魅力的な選択肢というところから、大きく後退した」というふうに書かれているのですが、私は執行力の付与だけがADRの魅力を増すものというふうには考えておりませんので、ADRそのものの存在ですとか、それが自主的な紛争解決の手段として皆に認知されて使われていくというところが魅力なのであって、執行力の付与だけという点では、こういった記事とは少し見解を異にいたします。
午前中も大きな雑誌社の人から全然別なことでインタビューを受けていたのですけれども、何十万部と出ている雑誌社の記者の人でさえもADRという言葉を知らなかったのです。ここで1年半以上かけて議論してきたので、世の中で議論というのが深まっていなかったというところは、自分自身も含めて、反省しております。
それから、感想的な話ですけれども、ここに座って随分法律の勉強をさせていただいたというふうには思っているのですが、あまりにも手続法的なところに偏った議論をしてこなかったかと。時効中断効にしても、それから執行力の付与にしても、これを集中的にかなり精力を割いて議論してきましたけれども、先ほど龍井委員がおっしゃったように、消費者とか利用者によって、どれだけニーズがある話だったのかという、その執行力の付与とか時効中断とか、それを是非付けてほしいというふうな消費者側の声を、この1年半の議論の中で、特には聞いてこなかったのです。
でも、それに随分力を割いてしまって、私としては基本理念と、それからこういった法的効果の付与の間に、もっともっと議論すべきことがあったのではないかというふうに思っております。
3点目の感想なのですけれども、全体にBtoBとか、CtoC、対等な関係の当事者同士を置いた形で法律を作られようとしていて、弱者配慮に欠けているところはないか。そこの部分の検討がまだ不十分であるというふうに感想的には思っております。
あと、このペーパーに沿っての意見に移りたいというふうに思います。
1ページ目の2つ目の※のところなのですが、ここについて、私も山本委員と同じような感想を持ちました。将来性に着目しということと、弊害も多いということは並立で書かれるということではなくて、私自身は、多くの紛争が自主的に解決されるこういったADRでの解決方法というのを望んでいるというふうに思っておりまして、この並立的な書き方は改めていただきたいというふうに思っております。
将来的には、非常に魅力的な解決手法になっていくということで整理をしていただきたいというふうに思っています。
この①と②のところは、積極的と慎重という言葉が両方ともに入っているのですけれども、積極性と慎重性というのは、ある程度やむを得ないかなというふうには思いますけれども、ADRを積極的に活用していくというようなスタンスで整理をさせていただけたらというふうに思っております。
それから「I.立法目的(基本的な法制の枠組み)」のところなのですが、4行目のところに「利便性・実効性を確保するための各種特例」というふうに書かれていて、なぜ信頼性が落ちているのかというふうに思って、私どもとしては、まず信頼性があって、その次に利便性とか、実効性だというふうに思っておりますので、立法目的のところに必ず明記をしていただきたいと思います。
2ページ目からの総則の話なのですが、ここに書かれている、2.の「国の責務等」の(2)の「ADR提供者等の責務」と、3.にあります「ADR提供者等の義務」ですが、ここはもう少し整理をしていただきたいというふうに思っておりまして、ここが私ども消費者とか利用者からすれば、大変重要なポイントになるところだと思っております。
「ADR提供者等の責務」という(2)のところなのですが、これは努力義務で置かれるということではあるのですけれども、具体的にどこまでの書きぶりということを考えていらっしゃるのかというところになりますが、ここは充実した内容に是非していただきたいと思っています。
3.の「ADR提供者等の義務」のところで、論点13~15の部分なのですが、「守秘義務を除き、今回は規定の整備を見送る」という御説明だったのですが、私としては、重要事項の説明義務と、それから主宰者の一定事実の開示義務は、是非義務規定で入れていただきたいというふうに考えます。
それで、重要事項の説明義務は、特に私、金融関係の消費者問題に携わっておりますけれども、金融商品販売法でも重要事項の説明義務というのが入っていて、損害賠償請求ができるというふうな形になっていて、私どもとしては、やはりADRの主宰者、提供者等の契約関係に入るというふうに思っていますので、是非、義務規定で設けて頂きたいと考えています。
3ページ目の「III .民法等の特例(特例的事項)」の整理の仕方は、特にこの通りでというふうに思っておりますが、最後にありました6番の「ADRに係る法律扶助制度の見直しというところですが、私もできる限り、これは将来ではなくて入れていただきたいというふうに思っております。
ADRは公正さの話だけでなく、消費者、利用者からすると、利便性とか、アクセスのしやすさというところも魅力というふうに考えておりますので、その部分は、コストの話はなかなかここではできませんでしたけれども、こういった法律扶助制度のなかで是非盛り込んでいただきたいというふうに考えております。
4ページの弁護士法の第72条関係ですけれども、私もこの整理でいいかというふうに思います。個別的に検討するというふうに書かれているところ、個別法の検討というところもありますけれども、実際にここのメンバーに、弁護士の先生方は何人かいらっしゃるのですけれども、当事者に当たる方々がこのメンバーの中にいないということもありまして、是非個別的にまた別の場で検討を進めていっていただきたいというふうに考えております。
あと、ここの中に盛り込まれていないということで、先ほどの弱者配慮のところで、いくつかお話をしたいというふうに思っているのですが、1つは、先ほど重要事項の説明義務の話をいたしましたけれども、やはり消費者、利用者からすると、適正な契約手続であることという部分がどうもよく見えにくい、選択のところは情報開示をするというようなことになるのだと思うのですけれども、実際に適正な契約になっているか、手続になっているかということが何がもっと条文上見えることが必要ではないかと思っております。
それから、ADRの利便性の1つとして、非公開性の話がよく挙げられるのですけれども、この非公開性と、それから選択のための情報開示の話との整理がまだ十分されていないというふうに感じております。3つ目が、悪質ADRの排除の部分です。これはBtoCの議論の中では、大変重要なところです。
仲裁法の中では、消費者側の解除権というようなことを考えました。
それから、今、龍井委員の方から、マル適マークの話が出ておりました。それは行政がやるというものではなく、自主的なものという提案だというふうに思いますけれども、そういった考え方ですとか、それから2、3回前の検討会で私が申し上げたことですけれども、ADRについての苦情や何かですね、そういったものがあった場合、それはどういう扱いになるのか。それを裁判所に持っていくというようなことになるのだと、最終的にはそうだと思いますけれども、そういったBtoCの議論というところが全体的にまだ不十分かというふうに思っておりまして、それがないと公正さの確保というところまでつながらないというふうに考えております。
私ども大変懸念しておりますのは、例えば電子商取引などでは、もう国際的な場面で、こういった民間型のADRというのが出てきておりまして、私としては、やはり早急に国内でも公正なADRが立ち上がって、それからADR基本法が示されるということを是非お願いしたいというふうに思っております。
ちょっと長くなりまして、済みません。
○青山座長 それでは、佐成委員お願いいたします。
○佐成委員 このペーパーに沿って意見を申し上げます。
イメージ全体については、この方向性は、基本的に私としては支持したいと考えております。
ただ、ADRの活性化とか、拡充といった、そういった方向性に本当に資するような基本法になり得るかという点については、まだ勿論議論があると思うのですけれども、現実論として、基本的な法制を整備するとなると、時間的な面を考えたりすると、この辺りがいっぱいなのかなというような印象を持っております。これが全体的なところです。それで、基本的なところとしては、このペーパーに書かれているところを支持したいと思っておりますが、3ページの「執行力の付与(仲裁は対象外)」について、少し意見を述べたいと思います。
ここに書かれてある「既存制度の利用者の利便に資する方策を検討する」ということについては、大いに期待したいと思っております。このADR基本法の中でなくとも、既存制度のさらなる利便性の拡充を進めていただくということは、側面から、ADRを直接というわけではございませんけれども、間接的には活性化する方向に働くのではないかということで非常に期待しているところです。
ただ、具体的に何というふうには書かれていないので、ここを更に事務局の方で詰めていただけれると非常にありがたいなというふうに考えております。
執行力の付与自体についてですけれども、これについては、この検討会の議論の中では、事前確認方式ということが前提になるように感じておりますし、それはやむを得ないのではないかというふうにも思われるのですけれども、仮にADRの自主性とか、多様性というものを可能な限り尊重するというスタンスを取るとしますと、そのようなスタンスからは事前確認というような考え方自体が自然にストレートには出てこない点、導き出しにくいという点が一つ気になるところで、ADRと事前確認という、そういった2つの考え方を接合させたADR基本法というものを立法するということに理念的な面で違和感を感じています。これはイメージ的な面でございますけれども、それとこの点がグローバル化の流れの中で、新たな日本レジェンドといいますか、そういったような方向に働かないかという、その辺を懸念しております。
それから、事前確認を導入するということによって、ADRの自主性、多様性が損われるのではないか、むしろ選別化が進んでしまうのではないかと懸念しております。認定を受けた機関は当然その点をPRするだろうけれども、そうとすると、どう見ても認定を受ける必要のない機関までも無理に認定を受けるようにならないか、それを悪影響というふうに言い切る気持ちはございませんけれども、逆にそれが望ましい影響であるというふうにも現段階では言いにくいというふうに考えております。
あるべきADRの姿というものを、この検討会の中で示せれば、それに越したことはないと思うのですけれども、そこら辺の議論といいますか、十分な理解やコンセンサスといったところが、まだ委員の中でも確実に一体化しているというわけでもないようでございまし、国民の間でも、あるべきADRというのは、一体どういうものなのかということについて、現段階ではまだコンセンサスのようなものがないように感じておりますので、一定の方向付けを与えるということが本当に妥当なのかということが懸念としてあります。
それから、一定の法的効果を付与するために事前確認が必要だという議論自体は、これは非常によくわかる考え方で、私も十分理解しているつもりなのですけれども、ただ、事前確認制度を設営するに当たっては、認定する側と認定される側を含めて、国民経済の上に新しいコストとか、負担というものがそれなりに加わるだろうと思います。
ドキュメンテーションのほかに、形式審査ではなくて、ある程度は実質審査というものが加わりますので、どの程度になるのかわかりませんけれども、新しいコストとか、負担が出てくるだろうと。そうしたコストや負担を加えることによって、どれだけ望ましい法効果が得られるかというと、時効中断効とか、あるいは執行力といった面でも、現状では絶対必要だという意見が、それほど強いのかなというところが率直なところでございます。
特に執行力については、現状では、むしろ消極的な意見の方が強いと思います。それもあまりコストをかけずにそうした効果が得られるならばという条件付きのような意見が多いようで、それでは事前確認とセットでというふうに執行力の話を持っていきますと、それだったら要らないという意見の方が、少なくとも私の周辺では非常に多く聞かれます。法効果の付与ということ自体はあくまで手段でございますから、それ自体は目的ではございませんので、ニーズが限定的ということであれば、敢えてそこにコストをかけてまでやるというのは少し本末転倒にならないかと、そういった疑問も感じているということで、執行力の付与については、やや消極的な意見を述べさせていただきたいと思っております。
そのほかの点については、ここに書かれてあるところに基本的には賛同したいと思っております。
以上でございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、髙木委員お願いできますか。
○髙木委員 申し上げたいことはいっぱいありますけれども、大分いろんな方がいろいろおっしゃったので、なるべく重複を避けて意見を申し上げます。
最初に感想的なことを申し上げますと、これを見せていただいたときに、とにかく何というか、最大公約数でもなければ、最小公倍数でもない、しかも最小公倍数というのは、普通整数の1なのだけれども、1にも満たない、「0.いくつ」という感じの印象を抱きました。
ですから、現状追認法以下であるというのが私の印象です。これからは何も生まれないのではないかということを思いました。更に言うと、こんな法律は要らないかなというのが心情的な気持ちです。
形式から申し上げますと、前回、綿引委員から条文イメージがわかるものがほしいと言われたと思うのですけれども、条文イメージがこれでは出てきませんね。特に条文イメージが必要だと思われる72条の部分に全く書かれていなかったので、ちょっとそこまでは検討できないところもありますが、とりあえず申し上げます。まず理念というよりも前文ですか、それに対する意見は全く山本委員と同じです。意見書から後退していると思いました。
意見書においては、ADRを評価すべきものというふうにしておりますけれども、ここでは現状は評価すべきADRはあまり存在しないという前提に立っておられて、今後健全な発展を図ることによって評価すべきものになるという姿勢が色濃く出ている前文だと思いました。ですから、ここでこういう認識があったのかなという疑念を私も思いました。
それから、理念と各論が乖離していると思います。利便性・実効性を確保する各種特例措置を講ずると立法目的の方に書いてあるのですけれども、各種というのは、少なくとも複数なければいけないと思うのですけれども、ちょっと複数はないのではないかと。
それから、そのまま法文と読める基本理念のところの文章なのですけれども、最後のところに「利便性、実効性及び信頼性確保を図らなければならない旨の基本理念を置く」とあって、これ自体を何か将来の責務にしてしまっているのではないかということと、冒頭の「健全な発展が図られることによって」と書いてあるのですけれども、ここもこれから健全な発展が図られるというイメージで書いてあるようにも読めまして、そうでありながら、一般的義務がすべて落とされている。結論と各論の関係が非常に中途半端で、このままでは不健全なADRを育成する特例になる72条の緩和があるだけのイメージ案でしかないという印象を抱きました。ここでも理念と各論が乖離しているというふうに思いました。
結局、一番最初の立法目的・趣旨は何だったかというと、民間のADRの拡充活性化にあったはずだと思うのですけれども、それが全くここでは考えられていないと思いますし、更にこのADRが司法制度の中で検討されているという意味が全く意識されていないイメージ案になっていると思いました。
次に行きます。
「(2)ADR提供者の責務」と「3.ADR提供者等の義務」、2つ併せて申し上げますけれども、最初の責務のところは、パブコメで異論がなかったから入れたと、後の方は、ちょっとはっきりおっしゃらなかったと思うのですけれども、パブコメに反対があったことと、相談と併せて外したというような説明だったと思うのですけれども、それでなおかつ13から15の間のうち、守秘義務を残し、重要事項説明義務は責務に含めるとし、利害関係情報の開示義務を責務にも含めないというのはどういう理由なのか、その差異がちょっとわからないというふうに思いました。
重要事項説明義務が責務に入るのならば、利害関係情報開示義務も責務に入れるべきだと思います。
もう一つ、私は利害関係情報開示義務については前の議論では反対しているのですけれども、反対の理由というのは、要するにADR利用者と機関との関係を契約ととらえて、契約の補充規定として義務を入れるのだという説明・姿勢が出ていたので、そこはちょっと実態と違いますよということで反対したのであって、法定の義務にするなら何ら構わないというふうに意見を申し上げたと思うのです。
それで仲裁とそれ以外のADRとでは違うかもしれませんけれども、仲裁法の規定を読んでいて、こういうやり方があるのではないかなと思っていたのですが、仲裁法25条の1項と2項に仲裁手続において、当事者は平等に取り扱われなければならないというのと、2項に仲裁手続において当事者は事案について説明する十分な機会が与えられなければならないとしてあって、当事者の権利として規定されている。こういう当事者の地位、立場の規定という形であれば入れることは可能ではないかというふうに思いました。
もう一つ、理念のところからですけれども、多様性の考え方というのが全く落ちているというふうに思います。特に執行力の確保のところに、それが表れているのかなというふうに思うのですけれども、執行力の確保についても、多様なADRの中で考えるべきことであって、事前確認を経た、しっかりしたADRにおいて執行力が持つことというのは、許されていいはずだというふうに思っております。
事前確認のADR機関、そうでないADR機関と、さまざまある中で、ユーザーが自分のニーズに応じて選択できるというのが、本来の立法目的ではなかったのかなというふうに思っております。
場合によっては、民事調停と代わり得る民間のADRがあってこそ、本来の司法制度の機能発揮も考えられるというふうに私は考えておりまして、司法制度の中で議論されていることは、そういうところに意味があるのだろうというふうに思います。
だから、事前確認の点で、皆さんが、ここの検討会でおっしゃっている意見として、自主性を阻害するという議論があるわけですけれども、それは前に山本先生がおっしゃったと思いますけれども、当該機関の判断であるはずで、そこは全く機関の任意的選択の問題で、ユーザーから見ると多様性の問題だと思っています。
事前確認が規制につながるから避けるべきだという御意見が多いわけですけれども、それは大きな流れの中で考えるべきなのだろうと思っています。今、官にしかできないことを民に許すという大きな規制緩和を行うという以上、多少の規制はやむを得ない、それは当たり前のことだと思っているわけで、そういう意味では、事前確認は、大きな規制緩和に向かって積極的に考えるべきだろうと思います。
ここで、事前確認を怖がったり、アレルギーを感じたりして導入しないと、それでは官にできることを民に移すということが全くできなくなってしまうので、このままで基本法を作ったら民間のADRは活性化しないで、行政ADRのみ活性化することになり、逆の方向に行く結果になるというふうに私は思っています。
それから、特例的措置の中で、山本先生がおっしゃったADRの勧奨、それから扶助制度の見直しは全く同じです。
ADRの勧奨なのですけれども、例えば、今、ちょっと余計なことを言うようですけれども、東京地裁22部で建築調停がとても多くて、毎月50件の申立てがあって、未済案件700 件を常に抱えておられて、6~7人の裁判官で苦労しておられる。そういうものも、例えば弁護士会が品確法に基づいて、弁護士と建築士という調停員の人的インフラを備えて、ここの部分だけ取ったら同じ制度を備えているわけですけれども、ですから、その中でお手伝いできる機会があったらやれていいではないかということは、とても強く感じるのですね。勿論、当事者の同意は要りますけれども、そういうところを事件を回して、同じ法曹として責任をもって紛争を一緒に解決していくというようなことも今後できるようになる仕組みは、芽としては出しておくべきだというふうに思っています。
72条の扱いですけれども、これは条文がちょっとわかりにくいので、何とも申し上げられないのですけれども、②の一定の不適格者について書かれているという御説明ですが、これは72条との関係ではどういうふうになるというお考えなのかが、なかなかわかりにくいと思いました。72条を外したところに一定の不適格者を入れるということ、それを要件として入れるということだと思いますが、そのこと自体は、例えば暴力団であるとか、いろいろな犯罪の経歴のある人というのを書くことになると思うのですけれども、それはどうやって確認するのでしょうか。一般の人が見てわかるということではあり得ないので、事後的にそれがわかったときに、それは元に戻って72条で刑罰法規にかけるとか、そういうことをお考えになっているのか、もし違反した場合の私法上の効力が無効というのならば、そこもわからないのですけれども、そういうことまで入れないと意味がないというふうに思いました。
それから、前回、ちょっと仲裁について、私は仲裁を外してもいいのではないかというふうにここで申し上げたかと思うのですけれども、日弁連に帰って、いろいろ議論しましたところ、国際的慣行のことはわかるけれども、国際仲裁と国内仲裁は区別できないことと、国内仲裁について問題が残るのではないかという指摘を受けましたので、前回の発言は、ここで修正させていただきいと思います。
それから、調停手続法的事項についてですけれども、ここは何となくこういう感じの議論でずっと進んできたのですが、私が考えていることは、やはり日本のADRというのは、民事調停を一番最初の原則的な形態としてスタートしてきているわけですから、なかなか、今、国際的な慣行としてある調停モデル法などをそのまま入れるわけにはいかないところがあると思っています。
それは、日本の実務は、要するにADR合意があって始めてスタートする手続になっていないので、それを前提とするルールをそのまま入れるわけにはいかないというところがあって、やはり、そうは言っても手続はやはりきちんとしていくことが信頼性確保につながることですから、まずは民事調停法を直していただきたいと、そういった形で直していただく中で、それを民間のADRも見習っていけるような、それができさえすれば、ある意味でモデルになるとも言えるわけで、そういった形で解決していただくのが一番いいのではないかと思っています。
以上です。
○青山座長 では、三木委員。
○三木委員 全体的なことですが、この検討素材によりますと、法的な効果が発生する部分や、手続的な部分というのは、比較的少なくなって、基本法的な部分がかなり中心になるというふうにイメージしております。
そのことは、私はマイナスもありますが、必ずしもすべて否定的にとらえる必要はないと考えております。
当然、法的効果や手続的規定が重要であることは、私もこの検討会で再三申し上げておりますように、言うまでもありませんが、他方で基本法的な規定というのも非常に大事だろうと思います。
これまでADRの分野においては、勿論そういうものがなかったわけで、基本法的な規定を置くことによって、一定の認知をするということ自体は、それは改革審が示した最も基本的なポイントであっただろうと思います。
また、私が数は少ないですが、参加している、いろいろな審議会や委員会においても、個別具体的な法制度を議論する際に、基本法がこう言っているではないかと、基本法があるではないかという議論は常に出てきますので、基本法というものの持つ意味というのは、長い将来にわたってじわじわと効いてくるというふうに思います。
ただ、その際に心がけておくべきことは、これも言うまでもありませんが、将来、この検討会が解散した後に、引き続いてどういう検討が行われていくかということにかかっているのだろうと思います。
基本法は基本法だけでは機能しませんから、この検討会は、時間も、また取り扱える領域も限られておりますけれども、先ほど山本委員も少し違った文脈でおっしゃいましたが、この検討会が解散した後でも、将来基本法に基づいてどういう検討が行われていくべきなのかという将来の課題とか、基盤整備というようなものについても、時間の許す限りで今後議論していくべきだろうというふうに考えます。
あと個別論点につきましては、ペーパーの順番に従って申し上げたいと思います。
まず、第1ページの2つ目の※の点につきましては、既に多くの委員が指摘されましたように、私も少し書きぶりを変えた方がいいのではないかという意見を持っております。
揚げ足を取るようなことを申し上げるつもりはありませんが、例えば不適切に利用された場合には弊害が多いと、これは当たり前でありまして、どんな制度でも不適切に利用されれば弊害が生じるのであって、そういう言わずもがなのことを書くことによって、現在のADRがあたかも健全に発展していないかのごときイメージを国民に多少なりとも与える可能性があるとすれば、それは避けるべきではないかというふうに思っております。
私自身の見るところでは、「日本のADRは低調だ、低調だ」と言われておりますが、しかし、それでも関係者の努力によって、私は大局的には健全に発展していると見ております。実際にADRに基づく弊害というものが大きく表に出たこともありませんし、そのADRが持つプラスの面というものに温かい目を向けた全体のトーンにしていただきたいというふうに思います。
次に、第2ページですが、3.の部分の「ADR提供者等の義務」というところにつきましては、これも私より以前の委員の方々の何人かが御発言されたところに共感を持っております。
具体的には、重要事項の説明義務につきましては、できれば、責務規定ではなく、民事上の義務規定として置くべきではないかというふうに思います。
また、利害関係情報の開示義務という問題につきましても、私もこれは守秘義務と同程度に重要な義務であろうと思います。
したがって、せめて重要事項について書かれているのと同じように、責務規定、できれば守秘義務と同じく義務規定にするのが望ましいのではないかという意見を依然として持っております。
次に、3ページですが、これもまた以前の委員の方々がおっしゃったことの繰り返しになりますが、5.の「裁判所によるADRの利用の勧奨」という点は、諸外国の立法例を見ましても、この点は一つのADRに関する近年の各国の国内法の中心的なテーマになっておりまして、我が国とそうした諸外国では、現状が違うところがありますが、せめて法的な義務ではない裁量的な要素を入れた勧奨の規定というものが依然として検討されるべきではないかと考えます。
4ページですが、7.の弁護士法72条の問題ですが、私自身は、これまでも申し上げましたように、「弁護士と共同し、又は弁護士の助言を得て」というような仕組みが望ましいのか、また、仮にこういう仕組みしか現時点で適切な制度がないとしても、それをあらゆるタイプのADRにかぶせていくことが望ましいのかについては強い疑問を持っております。
その意味では、(注)というところで書かれておりますが、①のa)の仲裁の取り扱い、あるいはb)の和解、あっせんについても手続の全過程について、果たしてこうした記述が必要なのかという点は、今後議論していく必要があろうというふうに思います。
やはり、特に気になるのは、国際性のある事件でありまして、それは仲裁に多いことは言うまでもありませんが、近年では調停、あっせんにおいても、そうしたスキームというものが整いつつありますので、国際性やグローバルスタンダードというようなものに、やはり相当程度の配慮を置く必要があるのではないかと思います。
特に個別なことを申せば、準拠法が外国法の事件においても、日本の弁護士と共同し、または助言を得る必要があるということになるのか、あるいはそういう場合には、ここでいう弁護士というのは、外国弁護士でもよいのかというような点も気になるところであります。
最後に書かれております調停手続法的な事項の点でありますが、先ほど龍井委員の方からマル適マークのようなものが考えられないかというようなお話がありました。あるいは、山本委員の方からADRというもののスタンダードというものが現在、国内でも国際的にも議論されているというお話もありました。
私自身は調停手続法的な事項を置くべきだと、しかも任意規定を中心としてということを申し上げてきましたが、その趣旨は、まさにADRの適切なスタンダードを考えるという意味で、そういうのが必要ではないかという趣旨でありました。
仮に遠い将来、あるいは近い将来の課題として、マル適マークのようなものを考えるとしましても、そこではどういう手続がスタンダードになるのかという議論は欠かせないだろうと思います。
仮に、今回のこの検討会では、一般的な調停手続の議論は、もう時間的には難しいとした場合にはこれも先ほど山本委員がお触れになったかと思いますが、和解、あっせんなどの合意型のADRで出された自己に不利な情報が訴訟等で利用できないようにするという利用制限の問題、これは簡単な言葉では、証拠能力の制限という言い方で議論されたりしますが、こうした点については、これはやはり私は個別的な問題としても、今回導入を検討すべきではないかと、依然として考えております。
モデル法におきましても、諸外国の立法例におきましても、この点について異論が出されたということはほとんど聞いたことがありません。
我が国の議論にしましても、この証拠能力の制限という言葉自体の理解について誤解があって反対しているという議論が依然として少なくないように感じておりまして、きちんとした説明をして、それでも駄目だという議論はあまりないように感じております。
最後ですが、これまでこの検討会では、一般的な議論を中心として行ってまいりました。私も行政の縦割りというようなことも考えて、あまり行政型のADRについては議論をしてきませんでした。
ただ、振り返ってみますと、やはりこの検討会だけの課題かどうかは別としまして、我が国の今後のADRを考える場合には、司法型のADRにおけるいろんな問題点の改善、それから民間型ADRの一層の発展と並んで、行政型のADRというものを拡充していくということも考えなければいけない。その点は非常に大きい問題だろうと私は思っております。
特に、我が国では行政の力が強いにもかかわらず、行政型ADRが発達しているかというと、必ずしも十分に発達していない面があろうかと思います。
具体的には、消費者保護を性根に据えた行政型のADR、あるいは中小企業保護型のADR、労働者保護型のADR、こうしたものは、一定の行政目的の実現という政策のための手段としてのADRという側面を持っておりますが、そうした政策型ADRといったものが充実していくことも必要だろうと思います。
こうした一定の政策に特化したADRというのは、市場原理だけではなかなか発達することが不可能ですし、また一般的な事件を一般的に扱うことしかできない司法型のADR、あるいは訴訟でも十分に実現できない問題であり、勿論、こうした問題を扱う時間というのは十分にありませんが、今後将来課題というものを議論する時間があるとしたら、その中で抽象的にでも議論しておく必要があろうかと考えております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、安藤委員お願いいたします。
○安藤委員 相対的には、これだけ散々議論した上で、この辺に落ち着くのかなというような形で、相対的にはこれに従うというつもりでおります。
ただ、全体の文章を見た上で、ADR基本法という形でパンと出すのでしょうか。何か日本語に変えた場合に、またイメージがすごい変わってしまうのではないかなという気がしますので、日本語のタイトルというのですか、これをもうそろそろ詰めていく必要があるのではないかなと、そんな感じがします。
例えば、裁判外における紛争処理制度基本法と、こういうふうにやってみますと、中の文章とは随分はみ出した感じがするなと、そういうふうに取られますので、ちょっとタイトル自体を詰めると、また改めて違う感覚が出てくるのかなというような気がしますので、大枠においては、これに賛同いたします。
個別に参ります。
個別の方では、1ページ目の下の相談という部分で、2ページの「1.基本理念」の(注)に「ADRと密接な関連を有する相談の重要性について言及することについても更に検討する」とありますが、これをしっかり入れていただきたいことと、国の責務、地方公共団体の責務の中にも相談に応ずるというような文言をきちんと入れていただけないかなと、そういうふうに思っております。
同じく2ページ目の3番のところ、これは「ADR提供者等の義務」という形になっておりますが、当然、守秘義務ですとか、重要事項とか、そういうところは別にいたしますけれども、利用者の要求する事項、この中には、4ページの方の代理の問題というのは、必ず出てくるような気がするのです。ですから、4ページの代理は検討するという形になっておりますが、逆に言いますと、2ページの提供者の義務、この中に代理というのを入れていただけないかなというふうに考えます。
それから、3ページの6番の法律扶助制度、これはちょっと実態からいって全く実効性がないので、何も触れない方がいいのかなと、むしろ抹消しておいた方がいいのではないかなと、そういうような印象を受けます。
そして、今度は4ページ目になりますが、72条の問題で、②の下の方「なお、高度な法律知識を有すると認められる資格保有者がADR主宰を行う場合に」とありますが、これはむしろ高度の専門知識を有すると認められる資格保有者、いわゆる私が考えている士業になりますが、それがADR主宰を行う場合は、思い切って上の方へ持っていって、弁護士の助言を得て主宰することができると、こういう形で考えていただいた方が、むしろすんなりいくのではないかなというふうに考えております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、廣田委員、お願いいたします。
○廣田委員 皆さんがおっしゃったことで、それに私も賛成の部分もあり、反対の部分がありますけれども、それは触れないことにしまして、私が特に言いたいことを4点だけ短く言わせていただきます。
まず、2ページの「1.基本理念」なのですが、ここの2行目に「民事上の紛争の解決方法を選択する機会の拡充を図る」というふうにありますが、これまでは、裁判と並ぶ魅力的な選択肢という言葉が使われていたと思うのです。これは同じことなのか、違うことなのかちょっとわからないのですが、印象としては、かなりトーンダウンしているという印象がありますので、この辺については皆さんもおっしゃいましたけれども、もう少し積極的な面を出していただきたいと思います。
第2点の法律扶助なのですが、これは確かに書きにくいところだと思うのですね。非常に表現が難しいところだと思うのですが、しかし、拡充・活性化という意味では大事なポイントだと思いますので、抽象的な文言でもいいから、何とか基本法に書いておけないだろうかということが1つあります。
第3点は、4ページの弁護士法72条関係の主宰のところです。ここにある弁護士と共同し、助言を得てという言葉なのですが、これは後の方に(注)が出ていますけれども、要するにあまり重くなりますと、ADRが使いにくくなりますので、重くしないようにしていただきいと考えております。
第4点目は(2)の代理なのですが、これについては、私はここに書いてあるのと別のことをかねがね何度も言っているのですけれども、ここで言う「相当性を踏まえて個別法で措置する」ということが、イメージとして明確につかめないのです。ですから、イメージとしてこういう措置をするということをはっきり打ち出していただきたい。その4点です。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、最後になりましたけれども、綿引委員お願いいたします。
○綿引委員 率直なところ、非常に骨だけのイメージになったなと、本当にこれでADRの拡充・活性化につながるのかなと、そういう意味では、若干寂しい法律案になりそうだなという感じは持ったのですけれども、ただ少なくとも日本のADRは歴史が浅く、そして国民にも認知されていないADRのスタンダードというのがどういうものだとか、どういうADRには是非執行力を付与しなければいけないとかという、そういうイメージがない中で、とりあえず立法しなければいけないとすれば、この程度にとどまるのもやむを得ないところかなと思います。
特に三木委員が言われたように、基本法的な規定を置くことで、ADR基本法的なものができることで、これから裁判外紛争処理制度というのが日本において認知され、これから自分たちがやっていこうという動きの出発点になるというぐらいの意味で、とりあえずスタートするのでもやむを得ないのかなというような感想を全体としては持っております。 基本理念の部分については、特に異論はございません。
国民の役割について、今回、法整備を見送るという部分については、私も山本委員と同様、これは賛成しております。国民が自主的な解決を図らなければいけないという責務規定を置くのはいかがかというふうに思っております。
それから、時効の中断は追って検討ということのようですので、この点については後に述べることにしまして、執行力の付与に関しましては、私は従前から執行力の付与については反対の意見を述べてまいりました。執行力を付与するのではあれば、余程厳格な要件の下での事前確認制度というものを考えざるを得ないだろうし、一体どういうADRなら執行力を付与していいのだというようなコンセンサスが得られない段階では、もうこの段階では見送るべきだということで、これは見送りという方向になりましたことは、大変結構だというふうに思っております。
その他の部分についても、特段反対はございません。
ただ、6.の部分、法律扶助について意見照会をしながら無責任ではないかという山本委員のおっしゃることはごもっともだと思うのですが、私は意見照会の段階で、財政ということを抜きに、ただ法律扶助の対象にした方がいいですか、悪いですかというような意見照会の仕方は無責任ではないかというふうに意見を申し上げた記憶がございます。
今の財政状況の中で、少なくとも裁判についての法律扶助さえ破産状態というような中で、ADRを法律扶助の対象とするようなことをこの法律で書くのは時期尚早と考えますので、方法論としてまずかったことは、山本委員が言われるとおりだと思いますが、ここはやむを得ないところではないかと思います。
それから、「7.非弁護士によるADR関係の法律事務の取扱い(仲裁を含む。)」。この部分については、前回、もう少しイメージができるようなものをというふうに申し上げたと思います。弁護士の関与なく行うことができる行為の範囲というのが、今一つこの素案でもはっきりしていないと思いますし、不適格者の排除というものについても、いまだイメージは明瞭になっていないように思います。
この点については、もう少しイメージが明瞭になってから意見を述べさせていただければというふうに考えております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。
それでは、一通り意見を伺いましたところで、事務局から何か御発言があれば、釈明でも結構です。そうでなくても結構ですけれども。
○小林参事官 釈明するというには、あまりにもたくさんの御指摘をいただいたので、個々の論点につきましては、後ほど時間を取って議論をしていただくということでございますので、ちょっと総論的なことで若干お話をしたいと思っております。
書きぶりが未熟な点、それから一部検討会といいますか、議論の進め方自体に問題があった点の御指摘につきましては、きちんと受け止めさせていただきたいと思っております。
特に、書きぶりについては、まさにこれから御議論していただいて、修正するものは修正いたしますし、それから更に拡充すべきものは、拡充していくというふうに考えております。
ただ、若干その関係で申し上げますと、まず、1つは龍井委員の方からありました。仮にこのイメージでいった場合に、どういう拡充・活性化についての効果があるのかという問題については、やはりお話をしておいた方がよろしいかと思いますので、若干触れさせていただきたいと思いますが、パブリック・コメントの段階でも、ADRの拡充・活性化を図っていくために、3つテーマということで議論したわけでございまして、そのうちの1つが基本的事項ということで、ADRの位置づけなり国の責務というものを明らかにしていこうと。それによって、ADRに対する認知を高めていこうということでございます。
この部分につきましては、今回も基本的には、その考え方を維持しておりますので、何人かの委員の方から御指摘がありましたように、その部分については、直接、間接にADRの拡充・活性化につながっていくのではないかというふうに考えております。
それから、2番目の問題が、ADRに対する信頼を確保していくということについてどうしたらいいのかということで、何らかの共通的なルールの設定が必要ではないかということでいくつか御提案をしたわけでございますが、それらについては、確かにパブリック・コメントの段階で、一律の措置をするのはいかがかという御意見もかなりありましたので、その部分は、今、お示ししたものでは、かなりスリムになっております。
しかし、その限りにおいてではありますけれども、ADRのあるべき姿というものを示すという意味においては、一つの効果があるのではないかというふうに考えております。
それから、3番目がADRの使い勝手が悪い部分、あるいは効果について見劣りがする部分、こういった部分については、それらを補完するような措置を講ずべきではないかというのが3番目のテーマでございまして、これが特例的事項ということになるわけでございますが、これについては、ここでは見送るという形にしているものもございますので、ある程度スリムになったということかもしれませんが、しかし、利用者の利便に資する、ひいてはADR機関の活動が更に拡充されるということではないかと思っております。
ニーズ論は、確かに一般の利用者の方から見ると、そんなにあるのかという御意見もあると思いますが、他方、そういった利用者の声を踏まえて、ADR機関側が要望している事項でもございますので、それはやはり拡充・活性化につながっていくものではないかというふうに考えております。
以上が、このイメージでいった場合の効果ということになろうかと思います。
2番目の点が、特にいろいろ御指摘のいただきました前文の2つ目の※のところでございます。
確かに、この書きぶりは、やや配慮に欠けるところがございますし、ADRの拡充・活性化についての重要性自体を否定しているように取られたのだとすれば、これは全く申し訳ない話であると思っておりますが、ただ、ここで申し上げたかったことは、先ほどどなたかの委員もおっしゃったように、ADRのまさに拡充・活性化を図っていく具体的な法的措置を講じていく、それについての基本的な考え方について、かなり大きな考え方の違いがあるのではないかということでございます。できるだけ自主性、多様性を生かしていくべきだという考え方と、それに本当に委ねていいのかどうかという御議論は、これまでも繰り返されたところでございますし、それはパブリックコメントにも表われていたのではないかと思っております。
そういう意味で、①と②の考え方というのは、非常に消極的ではないか、ない方がいいではないかという厳しい御意見をいただいておりますのは、非常に申し訳ないことではないかと思っておりますが、ただ、その中で第一歩を踏み出すとすれば、ここに書いてあるような考え方というのが、1つの考え方としてはあり得るのではないかということでございます。
御指摘をいただいたように、マル適マークのレベルとか、あるいはある強力な効果を付与する代わりに、それについての審査は厳格にするというような考え方、これは十分あり得る考え方だと思いますし、これまでの議論で、個々の法的効果について、ここにもあるように、適格性の要件を確保するということは、一般的に基準を導入するのとは別ではないかという御議論はしばしばさせていただいたところではございます。それ自体は、特に私どもとして否定しているわけではありませんし、ここにもその旨は書いてあるわけですが、そういった考え方についてすら、一部の委員から御指摘があったように、やはりADRの差別化、選別につながるのではないかという御意見もあったところでございます。 もう一つは、今回の検討は、ADR全般についての議論をするということでございます。
勿論、個々の政策分野においては、それぞれの事情に応じて、もっといろいろな取り組みが行われる必要があることを全く否定するわけではございませんが、ADR全般について議論をしていく際に、どこまで統一的な措置が講じられているのかということについて言えば、ある程度限界があるのではないかというのも事実ではないかと思います。
個々にいろいろ御指摘いただいた点について、個々の分野について行うことを今回否定したわけではなくて、あくまでもADR全般として考えた場合の最低限の措置としては、どんなものが考えられるのかというものとして御理解いただければというふうに思っております。
○青山座長 それでは、一通り御意見をいただき、事務局からも若干の御説明がありましたので、ここで休憩をいたしまして、3時半まで休憩いたしまして、3時半からは、今、出てきた中での個別的な論点について若干意見交換をし、最後に時効中断についてまとめて御議論いただくということで進めさせていただきたいと思いますので、では、15分だけ休憩させていただきます。
(休 憩)
○青山座長 それでは、検討会の審議を再開させていただきます。
先ほどイメージに基づきまして、各委員からひと当たりの御意見を頂戴し、それにつきまして、事務局から若干の補充的な御説明がありましたけれども、座長としての私にも何か言わないかという委員からの御発言が休憩時間にありまして、それではということで、私も感想だけ述べさせていただきたいと思います。
多くの委員から、このイメージにつきまして、これの評価はかなり分かれたと思います。これでは本来考えていたものから見ると、全く不十分であるという御意見から、現状ではこんなところではないだろうかという肯定的という御意見と分かれたと思います。
文書の作り方等につきまして、厳しい御批判もありまして、先ほど事務局から釈明がございましたけれども、これは事務局だけが責任を負うべきものではなくて、座長としての私もともに責任を負うべきものであるというふうに感じております。その点は私からも若干不十分な点があったとすれば、皆様にお詫び申し上げたいと思います。
私はこのイメージについてどういうふうに思っているかということでございますけれども、この文章を見まして、当初、この検討会が始まったころの我々の期待から見ると、それは非常にトーンダウンしているということは拭い難い印象だと思います。
当初の考え方は、司法制度改革審議会に盛り込まれたことについては、全部答えを出そう。どういう結論であれ、検討して答えを出そうということで、あれがそのまま実現すれば100 %のものになるわけなのですが、元々そういうことは難しいというふうに考えていた方も多いと思います。
もう一つは、ADRの基本法ができれば、何ができるかということでございますけれども、これは事務局からも先ほど発言があったことですけれども、この検討会が始まって数回経ったところで、私、インタビューを受けて、そこで申したことですが、その質問は、ADR基本法ができれば、日本のADRは大いに活性化しますかという質問がありまして、私は、多分そういうものではないだろう。基本法ができれば一挙に活性化するということではなくて、その基本法を地道に支えていく活動とか、相互の連絡とか、予算措置とか、そういうものが合わさってはじめて活性化するものであって、基本法というものは、そういう全体的なことを背後からプッシュするだけの役目ではないか。先ほど三木委員が非常にいいことをおっしゃったと思います。基本法はじわじわと後から効いてくると言われたのですが、私も基本的には基本法というものは、日本におけるADRを認知する第一歩の役割か果たせれば、基本法としては、現在の日本のADRの実情に比べたらやむを得ないのではないか。むしろ大事なことは、これから基本法に基づいてどういうふうに、次なる一歩を踏み出すかということではないか。
その意味では、山本委員の最初の御発言にありましたように、次なる検討をする。言いっぱなしではなくて、次の検討をどういう形でするかということまでちゃんと見通したことまでやれと。それが責任だと言われたのは、私は全く同感で、そういうことまでやらなければ責任を果たしたことにはならないと思っております。
では、なぜ100 %のものができなかったかということですけれども、これは皆さん御存じのとおり、この検討会の中の意見を十分に参照しなけれはいけないということが1つあります。
第2番目に、パブリック・コメントも十分に参照しなければいけない。
そのほかに、法制全体の中でできること、できないことというのは考えていかなければいけない。それは他の省庁なり、法制局なりとの現実的な折衝という細い針の穴に糸を通すような作業をだんだん回を追うごとにしてきたというふうに私は考えています。
事務局のペーパーの作り方がけしからぬというお叱りもありますけれども、私もそれはお詫びしますけれども、そういうペーパーしか現状ではできないということも是非御理解賜りたいと思っております。それ以上のことを言うと弁解になりますので、それしか言いませんし、個別的な論点は、ここであまり言うべきことではないと思いますので、全体的な感想だけにとどめさせていただきたいと思います。
それが私の感想ですけれども、これからの時間を使いまして、今、出てきたこのイメージについての個別的な論点について、どこがということは申しませんけれども、更に第1巡目の発言で足りなかった点もあるでしょうし、それから、後半の安藤委員以下は、大変時間を気にしていただいて、短い発言でとどまられたということもわかりますので、もし、言い足りないところがありましたら、更に議論を進めさせていただきたいと思います。論点を特に絞りませんけれども、自由な発言をしていただければと思います。
そうは言いましても、時効の中断という問題がありますので、それは4時5分くらい回ったところで、時効の中断の問題に入りまして、それはたっぷり時間を費して議論をしたい。時効中断以外の点で、更に個別的な論点で言い足りなかった点を補充していただくという形で、4時5分くらいまで議論を続けさせていただきたいと思いますが、どなたからでも結構でございますので、どうぞ御発言をいただきたいと思います。
○龍井委員 せっかく座長が御感想を述べられたので、一言だけ言わせていただきたいと思いますのは、私も最初から振り返ったときに、こういう方向を目指そうよということの土俵の共通性があって、確かに論点が違うところはいっぱいございました。まとまらないから、今回ここまで来たのだというふうに考えるのと、そもそも基本法というのはその程度のものであって、法律だけではなくて、いろんな措置を加え、あるいは司法制度改革全体の中の議論でこういうふうに位置づけるのだというふうに議論するのと私は違うと思うのです。
今おっしゃったことは、もっと最初から提起をされていれば、それなりの構え方もあったかもしれないし、あるいは議論の参加もあったかもしれないけれども、実はそこは見えなかったのです。基本法の位置づけ、基本法ではなくて法整備であると。その中には基本法だけではなくて、こういうものも加わりますということをイメージするのか。今ある基本法だって、種々ございますね。そのコンセンサスが不十分で、土俵をある程度共有した上で、意見の違いで、今回は時間切れだから、まさに第一歩ですねというのだったら、すとんと来るのですけれども、それ自身が明確ではなかったのではないかと私は思っているのです。さっき原委員が手続にこだわったという、私も若干同じ感想を持っているのです。
○青山座長 司法制度改革推進本部の中に置かれているというのはおっしゃるとおりなのですが、これが他の省庁の、日本の法制全体のいろいろな壁を突破し得るだけの、例えば時効の中断にしても、執行力にしても、こちらが決めればほかは全部従うという体制になっているかというと、そうではないと思うのです。この期間はわずか3年という存置期間の中でやるべきことをやれということで、いろいろ検討会はありますけれども、それぞれの位置づけはおそらく違うと思いますけれども、ADRの検討会は民事法制の中にあって、民事訴訟法とか、仲裁とかいろいろな中で、他と整合性を取りながらまとめていくという場合にはどうなるのかということで提示されていると私は初めから思っていたわけで、ここだけが突出して強力な措置を次から次へ打ち出せるものとは考えていなかったということでございます。
○龍井委員 ただ、そのときはあれですけれども、基本法の枠組みがそういう前提ですよということの議論の整理の中で、それ以外のところは今回ではなく次回ですし、あるいは法律以外の措置でやる可能性もあるし、さっきおっしゃったように予算もこれによって取れるかもしれないしという、トータルのイメージの中での細部に行く段取りがもうちょっとあればよかったなという感想です。
○青山座長 わかりました。
○小林参事官 今の点若干補足させていただきますが、確かにまさにゼロからのスタートだったわけで、土俵自体をまず設定しなければいけないということで、かなり時間をかけて御議論いただいたつもりではあったのですが、その結果として具体的にはこの夏におまとめいただきました、パブリック・コメントで示したような3つのテーマが浮かび上がってきたわけでございます。座長から事務局をかばっていただいて、いろいろな制約があるというお話があったと思いますけれども、それを否定するつもりはありませんが、最初からそういう制約があって、議論の土俵が狭かったということではなくて、最初からまさにゼロから議論を整理していって、勿論いろんな考え方がありましたけれども、おおむねこういう3つのテーマが考えられるのではないかと、その3つのテーマの中では時効なり執行力なりそれぞれの議論があって、それぞれについてはしかし具体的にどういうやり方をやるかということになると、先ほど申し上げたようないろんな考え方の違いがあって、それぞれ選択肢が示されたということでございますので、土俵自体の設定はむしろ広く議論をさせていただいたと思っております。
結果的に、それがなかなか実現できなかったということについては、これは勿論意見がいろいろ分かれているということもありますし、私どもの能力不足もあると思いますが、土俵の設定自体は決して最初から限定するつもりもなかったし、広く議論していただいたと思っております。
○青山座長 ほかに何かございますでしょうか。それではどうぞ。
○原委員 先ほど廣田委員が冒頭におっしゃられた理念のところで、「民事上の紛争の解決方法を選択できる」というのではトーンが弱いとおっしゃられて、私もそのとおりだと思っておりまして、元々この議論を最初にスタートするときに、私も当事者同士が主体的に、自主的に解決できる紛争システムとして構築をしたいというのがありましたので、単なる代替手段的に選択をできるというところにはなかったように思うので、是非この理念のところの書きぶりを、全体的にここでもいろいろと意見が出ておりましたけれども、考えていただきたいと思います。
その上で、仲裁法のときにも消費者側からいろいろ意見を申し上げましたけれども、当事者同士がBtoCになる場合、先ほど仲裁法25条の御紹介がありましたけれども、やはりそういった観点から照らし合わせて、再度BtoCの部分についての見直しというか、点検をお願いしたいというふうに思っております。
先ほど言いっ放したことがどのように扱われるかというのがよくわからなかったので、お願いしたいと思います。
○青山座長 廣田委員にちょっと質問よろしいですか。ADRですから、両当事者が和解はできる、そういう紛争でなければいけないと思います。和解ができないと、そういう和解をしても効力がないというのでは仕方がないと。だから、和解をできる紛争ということになると、それは民事上の紛争というかどうかはともかく、ある程度絞られてこざるを得ないのではないかと。だから、刑事上とか、そういうものは全然問題になりませんし、かつてここで問題になった租税の不服申立措置とか、そういうことも和解ということにはおそらく馴染まないと。そうすると外れていくと。外れていくのをどういう言葉でそれを表現したらいいかということだけで、民事上の紛争というとやや狭いということなのでしょうか。
○廣田委員 原委員のと今の御質問とを併せてお答えしますと、先ほどからずっと聞いていて、消費者の問題に配慮するということは大事なポイントだと思っているのです。それと和解とか民事上とかということも大事なのですが、やはりもう少しおおらかにとらえれば、公正性とかそういう言葉でとらえられますし、それ以外の問題があれば、私は民法もあれば消費者契約法もあるし、他に消費者を保護する法律もあります。また無効なことをやれば公序良俗違反でもありますから、ほかのことはほかの法律に委ねていいと思うのです。この限度の基本法で言われることはこれでいいという頭で私は考えております。
ですから、私は敢えて時間を短くしたわけでもないのですが、基本的な枠組みと、時効の問題については後ほど申し上げたいと思いますけれども、今、議論したところのイメージは、綿引委員と全く同じで、いろいろ議論したけれども、今できることはこんなところかなという感じなのです。
ただ、さっき4点申し上げましたけれども、そこら辺は枠組みを変えなくて内容を充実させることでクリアーできます。マル適マークというのもありますし、それは規制がどうかかってくるかという問題が絡んできますので、こういう問題は後々ADR制度が発展してから、自主的にみんなが考えることでいいのではないかというような印象を持っていて、そこは今回は触れなくてもいいのではないかと思います。
そのほかいろいろな意見もありますけれども、大まかな枠組みとしては、時間の関係などと言ってはいけないのですけれども、そこら辺の今日出たこれ以外の問題を議論するのだったら、いずれもあと1年や2年たっぷり時間がかかるのではないかと思うのです。ですから、とりあえずここまでやってみるということで、基本的には私は綿引委員の御意見に賛成はしているわけです。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○髙木委員 条文イメージとして、今、ADRの基本理念のところに何を書くかというのが問題になっているのですけれども、定義規定のようなものはどこに設けられるのでしょうか。それはないのでしょうか。ADRをどう定義するかということによっては、全然話が違ってきてしまうと思うのですが、第三者が関与するというところまでしか今までのところはなくて、それが単なる情報の取り継ぎは除くとか、ネガティブな形でしか言われてないわけですね。
当然、機関ADRだけではなくて、アドホックも含むという趣旨でお考えになっていると思うのですけれども、そこをやはり書いていただく必要があるのだろうと思います。
○小林参事官 ADRの定義につきましては、ほかの項目もそうですが、特に言及がなければパブリック・コメントのときの議論を基本的には踏襲することを考えております。
勿論、法律上の条文としてそれがそのまま採用できるかどうかは別としまして、ADRの定義については今おっしゃったようなことを念頭に置いております。
それから、原委員の先ほどのお話で、もし誤解があれば御説明をしておきたいと思うのですが、ここで民事上の紛争の解決方法を選択する機会の拡充というふうに申し上げているのは、当然裁判と並んで紛争解決の解決方法として選択されるということを前提としておりますので、何か裁判に劣るものとか、そういうことを申し上げているつもりは全くありません。裁判と並ぶということを選択肢となるということで置き換えているだけでございまして、もしそこに誤解があるのであれば、廣田委員の先ほどの御発言もそうですが、御説明をしておきたいと思います。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
「立法目的」という1のところなどは、随分議論があったところだと思うのです。今、小林参事官が言われた、裁判と並ぶ魅力的な選択肢という言葉を巡ってかなり議論があって、本来裁判よりこちらのADRの方が紛争解決としてあるべき姿だという議論もありましたし、それから紛争がどんどん増えてくれば、裁判所はどうせパンクするから、その受け皿だとか、裁判との関係はいろいろな議論があったと思うのです。そういう議論を出すと、またいろいろな問題があるので、ここでは非常に簡単に、あっさり書いてあるというところが、不満と言えば不満ですけれども、立法目的としてはこの裁判以外のこういうものの選択肢を広げるということだけ、そこが共通しているという最大公約数的なものを取り込むと、そうすると散々議論をした、あれはどうなった、これはどうなったということがたくさんあって、それが落ちてしまったという御不満もあるかと思いますけれども、ここでは紛争の解決方法を選択する機会を拡充するという、そこだけをとらえて立法目的に書いたということもあるわけです。
そうなると、では国民の役割というのも結局国民の役割は先ほども議論がありましたように、本来自分たちの私的紛争は自分たちで解決するべきだというようなこともここに当初はあって、そういう御議論もあったと思いますけれども、そこの国民の役割のところに入れると、では立法の目的のところはどうするかというような考えもありまして、結局事務局としては今まで出てきた議論の中の最大公約数で、ここのところはまあまあ何とかなるかなというところだけ取り込みますから、スケルトンのような中身がないのではないかという御批判が先ほどから展開されております。
私は、そういう見方もわかりますけれども、これが第一歩なのではないかという気持ちでおります。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○龍井委員 先ほどの発言で冒頭に申し上げたことなのですが、この検討会のアウトプットとして、法案要綱的なものと残された課題、各委員御指摘になった今後の進め方、あるいは進める検討の場、あるいはこれに伴う法律ではないけれども、支援措置、あるいはなにがしかの、それこそこちらから提言できるようなことというのは、最終的なアウトプットには入るのですか。
○青山座長 私の印象はまた別に言いますので、まず事務局からお願いします。
○小林参事官 アウトプットをどういう形でまとめるかというのは、これからの御議論であろうかと思いますが、私どもが持っているイメージはそういった実務的な問題についても触れるということを考えております。今回のペーパーもそうであったように、内容的に十分かどうかは別として、それは含めて考えています。
○青山座長 これは事務局と打ち合わせたわけではありませんので、私個人の考え方として言わせていただきますと、ADRを活性化するために、この検討会ではしてこなかったのですが、事務局としては今までもADR機関に呼びかけて連携を図って、その会合も何回かやってきているわけです。それは時々、報告されましたけれども、我々が関与しないのは、事務局がそういうことをやってこられた。それはADRを活性して情報を共通化して、問題意識を共通するという、非常に大きな仕事だったと思うのです。
そのほかに、我々が与えられているのは、このADRの基本法というものの法律を作るための何か素案のようなものを作らなければいけないと。法律的に言うと、ここで司法制度改革推進本部から法律を出すわけですから、司法制度改革推進本部として法律案要綱というものを確定するのだと思うのです。これは事務局長がおられますから、後から間違えていたら訂正していただきたいのですが、我々が法律案要綱の1つ前の要綱案みたいなものを作ればいいのかなと、あとはその要綱案ができれば、それに従って今度は事務局自身でそれを具体化して、法律の形にしていくと。その場合には、多分他の省庁とか法制局とすり合わせをして、全体としての法律の調整というか、体系性を崩さない形の条文化を図ると。これはもう事務局に任せる以外にないと思います。
それでは、我々はそういう法律要綱案の原案のようなものを作って、それでおしまいかというと、我々に残されている仕事はそうではないと思うのです。先ほどから御意見がありましたけれども、多分私どもはその要綱案のほかに何かこの検討会の報告書みたいなものをまとめる仕事が残されているのではないか。それが多分法律とは別にこれからのADRの活性化のための、そういう言葉が一人歩きしては困るのですが、ガイドラインのような、これからの努力目標とか、そういうものを示すと、そのことと、この法律案の原案のようなものを作るということと、それから事務局が今までやってきた現実に日本にあるADR機関の活性化のための連携というような、そういうものが合わさって日本のADRの活性がこの司法制度改革推進本部がある3年の間にできることか、それから後はこの組織の後を、どの組織がこういう問題を引き受けるかによって、そこでどういうことをしてくださるか、それはもう後の人に任せる以外にないというふうに、私個人は考えております。
間違っていたらどうぞ御指摘ください。
○山崎事務局長 ちょっと発言させていただきますけれども、事務局に検討会が11ありまして、どういうまとめ方をするかというのは、それぞれ検討会によって違います。かなり大きなところで整理をするところもありますし、前にやりました仲裁のように、ほぼ法律に近いような要綱をまとめるとか、成熟度によってかなり違ってきているということでございます。
ですから、最終的にこの検討会もどのような形になるかというのは、もうちょっと詰めてみないとわかりませんけれども、何らかの大きな方針はきちっと御了承を得るということはやらざるを得ないと思っております。
この件を来年の通常国会に法律案にして出すということになりますと、年内に方向が固まらない限りは、まず難しいということは御理解をいただきたい。それ以後に経る手続がかなりたくさんございまして、それ間に合わないという状況になりますが、これは避けたいということであります。今までずっと検討をお願いしてきたわけでございますけれども、項目を分けていただきたいと思います。通常国会に法律案を提出するための議論に集中をしていただければと思います。それはそれとして仕上げて、あと残された課題をどうするかという問題、先ほどからも御意見が出ていると思いますけれども、そういうものについてどうするか、将来にどうつなげるかということはまた別途分けて御議論をいただければということであります。これは十分に我々に余力があって時間があるならばこのままずっと続けるということになるのですけれども、11の検討会で15ぐらいの検討事項を抱えておりますので、事務局全体としてはそれはとても無理でございます。他の検討会でも、かなり議論が広がってしまって、それで最終的に来年の国会に出すためにはどうするかということで、今、絞り込みをやっているところもございます。残された問題は残された問題で、また別途議論をするという形でやらせていただきたいと思っております。今、青山座長が言われたことと、そんなに違わないと思いますけれども、御理解をいただければありがたいということでございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。今、御説明のように、今後のことはまた改めて協議をして、どういうふうに締めをするかというのは、事務局の意見と委員会の委員の方々の意見を聞いて、今後のことは定めると。当分は、ADR基本法を国会に出すと、ADRという言葉は使わないにしても、そのことに絞ってあと年内に2回ありますから、議論の集約を図る方向に行っていただきたいということでございますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
どうぞ。
○髙木委員 今、11の検討会で15の法案を抱えていると解釈してもよいと思うのですけれども、それで絞り込みをかけている最中だというふうにおっしゃいましたけれども、ということは全部が通常国会に出ない可能性があるということを意味することになるのでしょうか。
○山崎事務局長 具体的な内容については、今この段階で申し上げられませんけれども、少なくとも、この本部の設置期限は来年の11月30日であり、法案として提出するというものについては、来年の通常国会に出すということで全部計画が立てられておりますので、それは全部出すということを前提に考えておるわけでございます。
○髙木委員 絞り込みとおっしゃったので。
○山崎事務局長 絞り込みというのは、そこの中の検討事項を絞っているということでございます。
○髙木委員 そうですか。出さないという前提があるとすれば、通常国会ではなくて、その後の年度内の臨時国会とかいうのがあるとすれば、そういう時間もあり得るのかなというふうに思ったので。
○山崎事務局長 そこのところは考えておりません。必要な法案は次期通常国会に提出するという前提で、それぞれの検討の中で議論が足りないもの、将来に向けてもう少し議論しければいけないものもありますが、それと今回出せるものの仕分けをしており、そういう絞り込みをやっているということです。
○髙木委員 そうすると、検討会はあと年内3回しかないという前提で、前回に条文のイメージがわかるものを出してほしいというお願いをして、出てきていないのですけれども、要綱を出せとは申しませんけれども、要綱の案の案のようなもの、少なくとも72条の部分などは、もうちょっと書いていただかないと難しいのではないかと思っておりまして、それが出てから検討するので、年内間に合わないような感じもちょっと抱いているのですけれども。これで判断しろというのなら、もう本当にこれ以上作らない方がいいのではないかという意見を簡単に、そういう結論を出さなければならないのではないかと思っているぐらいなものですから。ちょっと時間をかけて丁寧に書き切れるのかどうかというのが心配しているところもありますから、本当に書いていただいた上で判断したいというふうに思っているのです。
○青山座長 希望は勿論希望として承っておきますけれども、今ここで法案らしい、条文らしい形で次回にお示しできるかというと、私がそれを出せというふうに事務局に命令する立場でもありませんので、なるべく判断しやすい形の資料を提示できるようにしたいということだけはしたいと思います。
○髙木委員 例えば、法律の専門家の方々がいらっしゃるので、その中で小委員会のような感じで条文を詰めるというような、別に役所がやるのでなければ配慮することも特段ないと思うので、そういった形での検討というのはないのでしょうか。本当にあとわずか1か月ちょっとしかないのですけれども、事務局におんぶするだけではなくて、それをやるだけやってみた上でということはあり得るのではないかと思います。
例えば、正副座長プラス法務省民事局などにもお手伝いしていただいた上で詰めていく方法も考えられるのではないかと思います。
○青山座長 今はちょっとお答えできませんが、これが終わってからちょっと検討させていただきます。もしその結果、そういうようなことを作らせていただくということがあれば、勿論御連絡してお願いすることにいたします。
ほかに何かございますでしょうか。
なければ、個別論点は今日は大分御意見をいただきましたので、むしろ時効の中断について時間をかけて検討させていただきたいと思いますけれども、それでよろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○青山座長 それでは、まず事務局から御説明をいただきましょう。資料の25-2「時効中断効の付与に関するこれまでの議論の整理」という資料について、事務局から御説明をお願いします。
○小林参事官 資料25-2でございますが、前回も御議論のありました、時効中断効についての考え方の整理をいたしております。
大きく2つの考え方をお示しいたしております。1つは、最初の「なお議論を深めるべき論点」の①にございますように、個別労働紛争解決促進法タイプの時効中断効の付与ということでございますが、これはこれまで継続的に御議論をいただいたわけでございますので、詳細は省略させていただきたいと思いますが、基本的には事前確認を前提といたしまして、一定の要件を満たすADRにつきましては、申立ての時点に遡って時効中断効を付与するということでございます。具体的な要件の内容については、前回御議論いたしましたように、1ページの①から③のような内容を考えております。
更に具体的な事前確認の場合の要件につきましては、4ページにお示しをいたしております。確認基準につきましては、まだまだ抽象的なものになっておりますが、こちらの方を採用するということになりますと、更に具体的な内容を考えていく必要があるということになります。
また、その下に考えられる確認手続ということでお示しをいたしておりますが、かなりいろいろな監督のための規定と申しますか、措置が必要になってくるということでございます。
以上が従来から御議論いただいていました、個別労働紛争解決促進法タイプでございます。
もう一つは、前回の検討会におきまして、三木委員の方から御提案のありました意見について、私どもなりに整理をさせていただいたものでございます。資料では3ページ以降になりますが、基本的な考え方といたしましては、こちらはむしろ現在の民法153 条、これは催告をすれば、それから6か月以内に訴えを提起することを条件に、催告に時効中断効が付与されるわけでございますが、むしろこれに寄せて特例的な規定を設けられないかということでございます。
具体的には、5ページをご覧いただきたいのですが、この一番下の線表になります、ADR手続上の請求ということで、三者間のADR合意があった時点から一定期間、ここではわかりやすくとりあえず1年ということにいたしておりますが、その1年以内に訴訟を提起すれば、時効中断効が生じるということでございます。
ただ、いくつか要件がございまして、1つはADRがその期間内に終了すれば、それから1か月以内ということでございます。
また、ADRの終了につきましては、ADRの主宰者、あるいは両当事者に終了させる、離脱をすることが認められているということが前提になるわけでございます。この催告タイプにつきましては、現在ある催告に比べて、ここで仮に1年とすれば実質6か月の延長が認められるわけですが、それはこのADRの合意があるということで、真摯な話し合いが終われることが期待されるということ、勿論債務者の方からすればこの時点でこのADR合意をしないことも可能でございます。
また、ADRが開始されてからも、いつでも離脱ができるということが確保されているわけでございます。
また、こうやってADRが継続することによって、訴えを提起できる時間が延びるとしても、それはこの例で申し上げれば1年に限定されるということでございます。
こういったような補完的な措置が確保されているのであれば、ADRの内容について特定の要件を設ける必要はないのではないか。逆に申しますと、この案の意図しているところは、そういった事前の確認というものを要せずして、一定程度時効中断効についての要請に応えていくということであろうかと思います。
上の「個別労働紛争解決促進法タイプ」は、申立てだけで時効中断効が生ずるわけでございますし、それからADRが継続している限りにおいては、特に期間制限がなく時効中断の効力が及ぶわけでございますが、下の「催告タイプ」につきましては、それに比べると少し効力が弱いということでございます。
その反面として、ADRの内容について厳格な要件というものは特に要求しないということでございまして、いずれのタイプがより総合的に見た場合に望ましいかという御議論になろうかと思います。
以上が前回三木委員から御提案のありました意見を踏まえて、新たにこちらで提示をいたしましたスキームでございます。
御説明の方は以上でございます。
○青山座長 わかりました。この資料25-2は、従来の議論と前回の三木委員の御提言を踏まえて、2つの案を提示してみたわけでございますけれども、まず別案の方について議論をしていくということでよろしいでしょうか。別案というのは、これは個別労働紛争解決促進法タイプの場合には、こういうことが必要だということで別紙がくっ付いているのですが、この別紙と対照させながら催告タイプの両者を比較するという形で議論を進めていくのが能率的かと思います。
三木委員、少し説明もかねて口火を切っていただけますでしょうか。この2つの案の比較というようなことから。
○三木委員 事務局の方で前回私がしゃべったよりも、よりわかりやすく適切におまとめいただいたのだろうと思います。催告タイプというふうに整理しておられて、それ自体別に反対とか違うという意識はありません。一種の催告タイプと言ってもよかろうと思います。
ただ、従来の案を個別労働紛争解決促進法タイプと呼んで、今回の案を催告タイプと呼ぶと、全く違う案が出てきたように見えるかもしれませんが、私自身はさほど大きく変わった案だとは思っておりません。
個別労働紛争解決促進法も見方によっては、一種の催告の延長タイプだろうと思いますし、また逆に現在、催告タイプと呼ばれているものも、見方によっては一種の個別労働紛争解決促進法タイプの延長線上にあるのだろうと思っております。
決定的に違う点があるとすれば、事前確認方式というものがあるかないかという点で、仮に事前確認方式と個別労働紛争解決促進法タイプというのは、不可分で結び付くのだというのであれば、この2つは決定的に違うわけですけれども、仮に個別労働紛争解決促進法の考え方の延長線上に制度を構築する場合に、事前確認というものが不可分ではないとすれば、両者の違いは見方ほど大きくないという認識であります。
具体的な中身につきましても、私は見掛けほどは差がないと思っております。差の第1点は、催告タイプでは6か月プラス6か月という、トータルで1年という期間の上限があるということであります。これに対して個別労働紛争解決促進法タイプではそのような上限はない。
しかし、考えてみますとADR、この場合主として想定されているのは、調停でありますが、調停にどのぐらい時間をかけるかという問題ですが、現在では裁判といえどもいわゆる2年法があって、2年以内に解決すべきだといわれている時代です。
ADRは早くかつ簡易だというところが売り物であるとすれば、1年というのはADRにとっては、事件においては十分な期間だろうと思いますので、上限ない個別労働紛争解決促進法タイプにおいても、事件はそれぐらいの期間以内に収まるものがほとんどであろうと考えます。
もう一つ、大きな違いとしましては、いつ時効中断効か事実上発生するかという点であります。個別労働紛争解決促進法タイプでは、一定のADR機関に対して申立てがなされた時点で中断効が生じると。それに対して催告タイプでは、両当事者及びADR主宰者、この場合機関ということもあるでしょうし、個人ということもあるでしょうけれども、三者合意がなされれば中断効が発生するということで、開始時点が違うわけですが、多くの場合にはこの両時点というのは、そう大き崩れることはないだろうと思います。
もう一つ違いがあるのは、催告タイプでは当事者の一方が手続から離脱した段階で、この効果の周期が訪れて、それから1か月以内でなければならないということであります。 当然離脱の自由というのが、手続的に保証されていなければならない。ただ、言うまでもないことですが、調停あっせん型の手続においては、当事者間に離脱しないという特約でもない限りは、離脱の自由というのは保証されております。
他方で、個別労働紛争解決促進法タイプにおきましても、一方当事者が一方の意思で離脱する自由があり、それによって基本的な手続が終了するでありましょうから、その点も実際にはほとんど違いがないだろうと思います。
そういったことで、両者の差を私の理解で突き詰めていくと、差は事前確認を取るか取らないかという点に集約されるのではないかというふうに考えておりますが、なお違った見方があり得るかもしませんので、御議論をいただければと思います。
○青山座長 どうもありがとうございました。
どうぞ、廣田委員。
○廣田委員 私は、いくつかのADRの設立だとか運営に携わりまして、現在4つのADR機関の調停人、仲裁人になっていますから、ADRの日本の現状は大体知っている方ではないかと思います。したがって、ADRの現場から、すなわち実務の観点から今日は意見を述べたいと思って来たわけです。
ただ今の議論は個別労働紛争解決促進法タイプと催告タイプの2つだけ挙がっていますが、私が従来から言っていた案が消えています。だから、私はこれを最初に問題にしたかったのです。ただ、議論が今、三木委員が言われたことから始まりましたから、それに触れながら言いますけれども、若干私の案が消えたということの意味を申し上げたいと思うのです。これは非常に重大なことなのです。
今、ADR基本法を作ろうという話をしているのは、ADRを動かすソフトを作ろうということを議論しているわけです。しかも、ADRの拡充、活性化を図るためのソフトを作るという話です。したがって、動かないソフトを作ったり、現在動いているADRを混乱させるようなソフトを作っても意味がない。ですから、そういうソフトならかえって作らない方がいいということです。
よく整合性という言葉が使われていますけれども、それは法の整合性という意味で使われていると私は理解しております。今まではですね。
私も、法の整合性を無視しているわけではなくて、法の整合性を念頭に置いて発言していますけれども、それと同時にまず大事なことは、ADRというソフトが動いて、しかもADRが拡充・活性化するものでなければならないということです。だから、実務との整合性というのは、私から見れば絶対的な条件です。これまで実務との整合性が軽視されていると思われますので、そのことは是非頭に入れておいていただきたいと思います。
ここから先は、実は個別労働紛争解決促進法タイプがいかによくないかということを申し上げたいと思うのですが、これは後で議論されるでしょうから、三木委員の方に行きたいと思うのですが、その前に先ほど私が言ったことを申し上げますが、先に三木委員のことを言うことは、個別労働紛争解決促進法タイプがいいから、そこに誘導しようという趣旨ではないということを留保した上で申し上げたいと思います。
私は私の案を既に述べまして、何度もそれについては発言しております。私の案ならば、実務に支障を来すことはない。つまりソフトとしては十分に機能するということで案を提案しているわけです。
私の案は、ADRで期日管理をすることが中心になりますけれども、現実のADRに期日管理をやってないところはありません。それに期日管理程度のことは可能なわけです。私の案に対して本日のペーパーでは、触れられておりませんし、この1ページの(注)に書かれているだけで、抹消されたと同様の扱いをされております。
しかし、私の案に対するパブリック・コメントに出てきた意見を見てみましょう。時効中断制度を導入するときに、そのものに反対する意見は少数で、この際これはこの議論に関係ないからそれは除外することにしましょう。
パブリック・コメントに対する意見を実は昨日拾ってみました。次のようになっています。別案、これはつまり私の案ですが、それをあげて別案に賛成という人、あるいは実質的に同じ意見が12です。
事前確認制度に疑問ないし反対したものが8。
特に条件や要件を書いてなくて、時効中断制度に賛成したのが8。
弁護士が主宰者となるADRという要件が必要としたものが2。
すべてのADRに認めることには反対としたものが3。
一定の適格性等を満たすことを条件とするものが11。
慎重論だが、仮に置くなら実質的要件が必要とするものが1。
いろいろな意見があったとするのが1。
以上のとおりですから、私の意見は相対的には多数を占めております。これは勿論以前いただいた資料から集計したもので、全文を読んだわけではないので、この集計が絶対のものとは言いませんけれども、しかし今日のペーパーで抹消されてしまわれるような性格のものではないと思っております。
前回の議事録案の28ページには、はっきり書いてありますけれども、座長発言として「今日の廣田委員が出された、あるいは、三木委員が出された要件論について、更にそこを突っ込んだ議論がなかったわけでございますので、次回は更にそれも含めて考えていきたいと思っています」、そういうふうに書いてあります。すなわち、今日議論することになっているのに、ペーパーでは抹消された扱いになっている。議論は前回からの約束ごとによって進めるべきであって、今日のペーパーは私は率直に言わせていただけば、甚だ遺憾であります。
当然、私は前回の座長発言に則って、私の案がまだ生きているという前提でこれから話をしたいと思っております。
あと、個別労働紛争解決促進法タイプについては意見がありますけれども、これは横に置いて、ただいまの三木委員の意見について申し上げます。
時効は援用してはじめて効力を得るものですから、裁判所も時効を援用しますかという釈明は求めませんね、してはいけませんね。つまり、当事者に委ねているのが基本です。ADRでも時効が問題になったときに、時効が近いからこの案の要件で合意書を作ろうなどというふうに、調停人がもし言えば、一方に肩を持つことになります。さりとて、こういう法律ができて、放っておけば逆の一方に肩を持つことになる。
したがって、調停人はいずれにしても公平でないということになって、信頼に基づいて調停を進めるという基本を失うことになります。これが、今の三木委員の意見に反対する基本です。
相手方が合意をすればどうなるか、つまり合意をすれば時効中断されてしまいますから、相手方はADR手続を開始して紛争解決を試みる旨の書面による合意なんかしませんね。それはしませんよ。この制度を設けること自体無意味です。そればかりか、まともに紛争解決を試みることさえしなくなる。これでは、本末転倒になると思います。
つまり、普通は書面は取れません。さりとて、書面にしなかったと調停人に責任を問われても、これは困るのです。こういう法律ができたら。
例えば、建築紛争ではどんなことが起こるか。請負契約における仕事の目的の引渡しの有無、これが時効の起算点になります。これを争われる人は多いです。これは例外ではありません。非常に多い争いです。申立人が引き渡しをしたから、請負代金を請求したとして、調停の申立てをしたとしましょう。そうしたら、相手方は不具合がたくさんあるから引き渡しを受けてないというふうに主張したとします。調停人も申立人も、相手方は時効の起算点はまだだと考えていると思って調停は進めます。
しかし、不調になって裁判になったとき、相手方が引渡しを受けたから時効が完成しているといったらどういうふうになりますか。また、相手方がそのような作戦を立てているのだったら、書面による合意なんていうのはまずしません。
そして、調停人は後でそのようなことがあるといけないから、書面による合意をしようと迫る。そこで相手方と攻防をして、本来の争点がすっ飛んでしまいます。調停はそれどころではなくなってしまう。それで、相手方は調停人に作戦を見破られたなと思えばまず調停に乗ってきませんね。そんなようなエネルギーを費やすことは問題です。しかし、調停進行中は時効中断がなされるというのなら、初めから時効中断ができているのなら、そんなことをしなくても安心して調停をすることができるわけです。けれども、そうではなくて、書面による合意を「さあ、しなさい」と言ったら、もう本来の争いはどこかに行ってしまう。
もっと一般的に言えば、相手方は、調停の席に着くときには、まず調停をやるのをとても嫌がります。行ってみて、様子を見て、調停人がよければ話をしようというのが多いのです。これは、特に大会社とか銀行などには多いです。ですから、調停の席に着くまでになかなか決済が下りない。そのために何か月もかかります。それは私が現にやっています。そういう事件を今、現にやっています。それでようやく始まる。そういう相手方に、とりあえず出てきてくださいと言いながら、出てきた途端に紛争解決に試みる合意をさあしてくださいと言ったら、話が違うではないかということになります。そこですっ飛んでしまう。
これでは、ADRの拡充・活性化はとても図れません。特にそういうことで相手方を逃してしまえば、消費者被害なんかは救済される可能性は非常に少なくなってきます。
また、これは時効が迫っているから必要な事件ですね。時効に必要がないのに、こんな書面は要らないということになるのですが、さっき言った建築紛争に必要でないと思ったら取ってなかった、さあ大変だということになってしまう。つまり、そういう無駄なこともする必要が出てきたり、あるいはそれに対する余計な攻防が行われる。ですから最初はどうせ要らないと思ってスタートします。
しかし、後から取ろうと思っても話が違うと言われます。それは書きません、話が違うではないですかと言われるから、提案さえできない。つまり、後からしようと思ったら、これは時効中断の目的とした書面ですから、不利益を被りますから乗ってきませんね。だから、これはとても実務に乗らない。つまりソフトが動かないのです。ですから、これは駄目ですね。私は、そういう理由で反対します。これでは現場がやっていけません。それが私の三木委員の意見に対しての意見です。
○青山座長 事務局からまた後で発言してもらいますけれども、何かほかに御意見ございますでしょうか。
どうぞ。
○山本委員 私自身は、この1のタイプと2のタイプというのが、オルターナティブであるというふうには必ずしも理解しておりません。両立可能な、それぞれメリットもあるし、それぞれメリット・デメリットが案だというふうに了解しております。
ですから、この2つを同時に導入するということは、何ら法制的にもおかしくないというふうに思っております。
ただ勿論、それぞれのデメリットが大きいということで、一方だけが入るということもあるでしょうし、両方とも落ちるということもあり得ることだろうというふうに、私自身は思っております。という前提で意見を述べさせていただきます。
この催告タイプの要件効果について、三木委員の御提案を受けた事務局の御検討は、私自身は大変高く評価しておりまして、一つの十分検討すべき案になったのではないかというふうに思います。
民法上の催告の期間をこのような形で延長できる理論的な根拠があるかどうかということを考えてみましたが、そもそも民法上の催告は6か月間猶予を訴え提起までに与えているというのは、勿論一つは訴訟を準備するための準備期間で、6か月間の一種の提訴の猶予を与えるという側面があるのと同時に、やはり一定の交渉の期間を付与して、6か月間に交渉が成り立てば、もう訴えを提起しなくてもよくなるという意味での、時効が迫ったぎりぎりのところでの交渉の機会を、もう一回与えるという側面もあったのではないかと思われます。
その側面を拡張していけば、催告はあくまでも権利者の一方的な意思表示に基づくものであるのに対して、ここで考えられている要件を前提にすれば、相手方が同意しかつ第三者が紛争解決に助力するということを同意しているわけでありますから、そうであればその解決への可能性がそれだけ高まるとすれば、この6か月という期間を一定程度延長するというのは、私は理論的に十分に成立し得る考え方であろうというふうに思っておるところであります。
なお考えるべき点があるのではないかということで、2点だけ申し上げさせていただきますと、第1点は今、廣田委員の御趣旨を誤解していなければ廣田委員が言われたことと近いのではないかと思う点でありますけれども、この考えられる要件の(1)のまさに明示の積極的な合意が必要であるという点でありまして、この紛争解決を試みるという積極的な合意を調達するのは、非常にADR機関としては困難であるというのは、今の廣田委員からの御発言もありましたし、これまでの検討会の実務の御経験の先生方から、随所でそういうお話を承ってきたところであります。
勿論、この要件における書面というのが必然的な要件であるかどうかということについては、更になお検討の余地はあるのではないかというふうに思っておりまして、催告にしても、あるいは証人にしても、必ずしも民法は書面を要求していないわけですので、ここで書面を要求しないという選択肢もあり得る。勿論それは裁判所に証明の負担をおかけするということになるわけですけれども、理論的にはそれはあり得なくはない。
しかし、それでもなお積極的な合意を調達するのは困難であると。先ほど三木委員が、この1の個別労働の場合とそれほど変わらないとおっしゃいましたが、個別労働の方は、一応、申立てで現在のスキームだと時効が中断として、相手方が離脱すれば時効中断の効果がなくなるといいますか、そこから何か月かで訴えを提起しなければいけないということですが、要するに積極的な合意をするか、離脱という形で離脱しないという消極的な合意をするかという、この合意調達の積極性・消極性が違うわけでありまして、そこは今までのお話を伺っている限り実務的には、まさに非常に大きな違いがあり得る点だろうと思います。その点は要するに実効性の問題です。
ですから、仮にこの催告タイプというものができるとしても、なお1のタイプがあり得るし、また実際上の効果という点からすれば、この2で解決される範囲というのは、廣田委員のお話等を伺う限りは、やはりかなり狭いというふうに考えざるを得ないのではないかというのが、私の認識です。
第2点ですが、理論的な問題点としては、やはり第三者、つまり当事者間の単なる交渉の合意だけでは駄目で、②の第三者の合意があるということが決定的に期間を延長する要素であると考えられる点ですが、これがどうしてそうなのかという点でありまして、この第三者については今のあれでは何の要件も付されていないわけですので、どんな第三者でもいいということになるわけですが、第三者が入る場合になぜ延長できるかと言えば、第三者が入ることによって紛争解決の可能性が相対交渉の場合よりも高まるということが、やはり言えるから延ばせるのだろうというふうに思うわけですが、これが果たして本当に言えるのかどうかということで、先ほど廣田委員が言われた1ページの注に書かれている、「第三者の介在があることのみで、実効性ある紛争解決機能を有するものと捉えることは、現行の時効制度の考え方の下では、理論的な根拠が十分とはいえないものと考えられる」というのは、第三者は誰でもいいというふうに言われているわけですから、この催告タイプにも跳ね返ってくることではなかろうか。
そこを何とかクリアーする方法というものを、この提案を生かすには考えていかなければいけないだろうというふうに思っています。それは一定の不適格、明らかに不適格と認められる第三者のようなものを何とか排除できないかとか、あるいは当事者と第三者の間の合意というものが前提になるわけですが、その合意において第三者を一定縛るような、何か要件のようなものがあり得ないかとか、いくつかの考えられることがあるのではないかと思うわけでありますけれども、おそらくこれは今後更に事務局にも、あるいは我々自身もこれを考えていかなければいけない点だろうというふうに思っております。
ただ、結論的には、先ほども申し上げましたように、何とかこの提案が通るのであれば、理論的な根拠は十分にあると思いますので、その方向で努力していくべきだろうと思っております。
以上です。
○青山座長 ほかに、いかがですか。どうぞ、綿引委員。
○綿引委員 前回の三木委員の御発言で、こういう催告タイプというふうな形になったのは、ちょっとびっくりはしたのですけれども、これを催告タイプの延長に位置づけ得るという山本委員の御説明には私も全く同感であります。
ただの催告の場合は、言いっ放しだけれども、何か請求すれば話が始まるだろうというのが、時効期間を6か月間延ばす根拠の一つにあると。
それに比べると、第三者を入れて話をしようと両方が言っている状態というのは、ただ催告したよりも、それに期待してもいい度合いが高まる、だから催告延長タイプでこれを考えようというのは、なかなかのアイデアだと思いました。
ただ、廣田委員が言われたように、三者合意を書面で作れと、これはなかなか厳しい。それは実際にはもう時効中断はこんなのでは認められなくなりますよと言っているに等しいのではないかと、実際にはそういうことにならないかという危惧を持ちます。もう少し違う言い方ができないか。要するに、第三者を介在させて、和解交渉が開始されたことが書面によって立証されたときというようなことであれば、両当事者が出頭して来て、次の期日が指定されましたというようなことがきちっと立証されたならば、それは積極的な合意の調達をしろというような、それについてのデメリットは廣田先生言われたとおりだと思いますので、そういうこととは違うのではないかと考えています。
そういうことが書面によって立証できるという態勢の整ったような第三者が介在したのだったら、まあ1年程度時効期間を延ばすのなら、それほど民法との齟齬もないのではないかという感触です。個別労働紛争解決促進法タイプのように打ち切りになるまでずっと時効中断が続いてしまいますよと、幾らでも時効中断が延びますよというのだと、相当にそこでの紛争解決のための話し合いに実効性が確保されたような第三者でなければいけないというような重い要件が被さってくるのではないかというふうに思っておりましたけれども、とりあえず6か月が1年になる程度であれば、第三者を介在させて和解交渉を行うことが書面によって立証されるというような要件程度でもいいのかなというような感触を持っております。
そういうような要件の立て方であれば、山本先生が御心配いただいたような、裁判所の負担も比較的軽くなるのかなという感じを持っています。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 ちょっと議論が狭い穴に入っているような感じがしますので、申し上げますけれども、ADRの拡充・活性化を図るために、こうして集まっているのに、時効中断効ぐらいどうしてすっきりと認めないのですか。時効中断効ぐらいの効力ならば、難しい条件を付けずに、すっきりと付与すべきだと思うのです。そういうようにしなければ、はっきり言えば、ADRの拡充・活性化なんか図れませんよ。裁判と並ぶ魅力的な選択肢にするというのなら、時効中断効程度のものをどうして裁判と同じようなレベルに持っていかないのですか。一向におかしくないではないですか。なぜ裁判より下位に置こうとしたり、こういうような厳格な条件を付けようとするのですか、私はこれがとても理解できない。それこそ意見書の趣旨と本当に反しているというふうに私は思っております。
実質的な中身を見ても、簡易裁判所は、司法試験に合格していない人がやっていますね。それで一向に問題も起こっておりません。それもあるし、裁判所も間違えることもあれば、誤審もありますよ。なぜ裁判所が間違えないで、ADRが間違えるという前提で話をするのか、私は実務を見ていただきたいと思っているのです。まず、話のスタートが私は間違っていると思っております。
○青山座長 どうぞ、髙木委員。
○髙木委員 1つだけ申し上げておきます。催告タイプは、ADR合意、三者間の合意を前提とする限りで、先ほどから意見が出ているように、実務では全く使えないと思います。ADR合意があって、ADRがスタートするということはほとんどありません。
仲裁合意の前に、まず調停をやってから仲裁にしましょうという段階的な調停合意はありますけれども、純粋にADR合意だけのものはないと思いますので、これはほとんど使えないと思っています。
あと、理論的な問題は、もう学者の先生の方々がおっしゃったので、特段私が申し上げることはないと思うのですが、本当にこれで通るのだろうかと思いました。
結局、催告の6か月を延ばしているのは、三者の合意があるという理由でしかないわけです。そこで、いろいろおっしゃったように、では三者はどんな三者でもいいのかということになると、やはりそこはいろいろ問題があると思うし、ADRの定義がはっきりしないままで、本当に最後、3人が合意すれば、当事者だけで自由に延ばせるというのは、「1年程度なら」というのはあったかもしれませんが、それは1年であろうと、1か月であろうと、法律の要件を延ばすことには違いないので、しかも時効という公益的制度において延ばせるというのは、これが通るのかなというふうに思いました。ADRの中は何でもありなのですけれども、法制で何でもありみたいな法律ができるような気がして、ちょっと私は違和感を持ちました。個別労働タイプでやった方がすっきりします。
それから、個別労働タイプでは、時間がどれぐらい延びるかわからないということが、綿引さんの方から出ましたけれども、個労法はあっせんしかありませんから、元々長い間やりませんで、ほとんど可能性がないと1回、2回ですぐ打ち切ってしまう、そういう実務の扱いのように私は見受けましたので、そんな心配はないのだと思います。
このタイプでいろいろほかへ普及していくと、そういうことを考えていかなければならないのかもしれませんけれども、それもおそらく機関の適格性が前提としてあり、どういう機関でもということではないと思いますので、そこの心配はしなくてもいいと思っています。
以上です。
○青山座長 ほかに御発言があると思いますけれども、廣田委員から、資料の作り方について御批判がありました。これは事務局に答えてもらうというのは、ちょっと酷でございますので、私が代わってこういう趣旨ではないかということをお答えいたします。
時効の中断については、廣田委員から、これは第16回のADR検討会のときに、2つの案をいただきまして、これはパブリック・コメントをする際にも、ここに必ず入れてくれということで、私が注文いたしまして、この中にもちゃんと収められているわけです。
事務局は、これは十分承知しております。しかし、こういう形で時効が中断できるとすれば、それは何の問題もないと。しかし、これが法制局等々を通るかというと、やはり時効の中断という制度は、裁判所に訴えを提起するということが基本的で、そのバリエーションがいろいろある。それをあっせん、調停、仲裁の申立てをすれば、時効の中断効が生ずると言いっ放しで、本当に民法との整合性があるかというと、先ほど廣田委員が、パブリック・コメントの回答で相対的に多数の方が賛成をされたということをおっしゃいましたが、私もそれは拝見していますから、十分にわかるのですけれども、しかし、この検討会の中で、では廣田委員のこの案をセカンドした人がどれだけいるかというと、それはもう全くの少数説だというのが私の認識です。では、このアイデアをどうするかというので、私は三木委員に廣田委員の考え方を、もう一つの個別労働紛争解決タイプで、しかも事前確認ということに結び付いた案ではなくて、それとは別の廣田委員のアイデアを生かした案を考えてほしいということで、前回、三木委員が提出されたわけです。
では、私は三木委員のこの考え方に全面的に賛成かというと、やはり今おっしゃったように、三者合意というもののハードルが高過ぎるというふうに私個人的に思っております。
書面による三者合意というのが非常に難しい、それは最初に作れといっても、それはできないだろうと。しかし、廣田委員の考えと、それからこれなら法制局は大丈夫だと、これを駄目だという人はだれもいないと思うのです。だから、その中でどういう次の考え方を持っていくかというのは、これからの課題だと思うのですね。
事務局に案を作ってくれということを言いまして、先ほどの議事録の発言にあるようなことを私は申しました。それを廣田委員のアイデアを生かしながら、三木委員が前回に出されたものよりも、もう少しこちらは催告タイプということにはっきり位置づけて、元々催告であれば、ADR機関であれ、個人であれ、請求を出して、それが相手方に通じさえすれば、それは催告になるわけですから、書面であろうと、何であろうと。それで、6か月は当然延びると。
そこにプラスアルファとして延ばす、先ほど三木委員が言われましたように、1年もあれば十分だと、だらだらやるよりも、むしろデッドラインが決まっていた方がいいのだという考え方はあると思うのです。それで、私もあと6か月では短いかもしれないけれども、プラスアルファとして6か月延ばすには、ただ請求したというだけではないけれども、機関なら機関がそれを受けて、相手方に通知をして、では出てきてくださいよと言って、出てきて、それで山本委員も書面は要らないというふうに言われましたけれども、書面は証拠としてはいいかもしれないけれども、出てきて交渉が始まれば、それで時効が中断するというような法制を考えていけば、これは廣田委員の考え方と、三木委員の考え方はそんなに違うわけではないと、綿引委員がくしくもおっしゃったように、そういうふうに思っておりますので、個別労働紛争解決タイプで、プラス事前確認ということに結び付くよりも、催告タイプで何とか合意が取り付けられるかどうかということを私は考えておりまして、決して廣田委員の元々のアイデアを、案が消えてしまったと、さっきおっしゃいましたけれども、消えたわけではなくて、そのアイデアを生かしながら、どういう次のいい案を考えるかということで事務局が工夫したのだというふうに解釈していただければ、私は大変ありがたいのですが、そうは行かないかもしれませんが。
○廣田委員 趣旨は、わかりましたけれども、よろしいですか。
○青山座長 はい。
○廣田委員 この話で、私は、この案を、この通りだったら駄目だと言っている訳で、それから先に何があるかというのは、また次の話だと思うのですが、ただこれを三木委員の案が駄目だということになれば、今度は事前確認制度がいいということになると、私としてはもっと困るのですね。ですから、私はそのことについて申し上げて、今、言われたような趣旨で、こういう道筋で考えるべきではないかというなことを考えておりますので、ちょっと申し上げたいと思います。いいですか。
○青山座長 はい。
○廣田委員 事前確認制度を導入して、この4ページのような考えられる確認基準、これは先ほどのソフトという考え方でいっているわけですよ、これで実務が動くのだろうか、実務に支障がないのかどうかという観点で言いますと、この確認基準のようなことをしますと、まず、日本のADRというのは実務は動かなくなりますね。間違いなく日本のADRは壊滅状態になりますよ、これは間違いないです。
その理由を言うと、これだけ言うだけで何時間もかかりますから、全部は言いませんけれども、1つだけ具体的な例を言えば、例えばADRは非公開が原則です。ADRで調停が行われているということ自体、この調停を行われていること自体を秘密にするということもあります。私もやりました。それほど秘密にするということは、その秘密を嗅ぎつけて、知りたい人がいるということですよ、逆に言えばね。
ということですから、もし考えられる確認手続の3のように、質問検査、是正命令を受けるということになれば、これを使って秘密を他人が知ろうという可能性が出てくる。 ですから、逆に言えば、秘密を持っている人が他人に知られる可能性が出てくるので、それを恐れてADRが利用されなくなりますね。これはまさしくADRの拡充・活性化に逆行することです。ADR基本法を作ったために、ADRが衰退するというような愚かなことは冒してはならないというふうに私は思っているわけです。
ですから、事前確認制度を導入することに対しては、パブリック・コメントの際に反対意見が多くて、この検討会でも反対意見は多数を占めていると私は認識しております。私もこれは絶対に反対です。
今日のペーパーの2ページの3の(1)に「事後確認方式の下での制度導入は困難と結論せざるを得ないのではないか」というふうにありますけれども、決してそんなことはありません。
また、その下の方に「事前確認方式の下であれば、当事者保護に欠けることなく、予測可能性及び立証可能性を確保することは可能と考えられる」というふうに書いてありますけれども、これも間違いで、当事者保護に欠けるどころか、そもそもADRを利用しなくなるということになってしまうと思います。
ですから、このソフトは動かないばかりか、実務に悪影響を及ぼしますので、私は、この事前確認制度は、もうこの際、論外にしたいのです。それで、これについてこれ以上時間を使いたくないという気持ちです。
それで、ではどうするかということです。この話はソフトを作る話ですね。そうすると、法律の条文を念頭に置いて条文を作ることを議論していくというわけです、我々は。
したがって、調停が成立しないで訴訟になり、時効中断をしたかどうかが争いになって、最後に訴訟で白黒をつけるというわけですから、訴訟における論理の組み立てに従って条文を作ればいいということになると思うのです。
すなわち、要件事実、抗弁、再抗弁、再々抗弁の順序に従って、それぞれの要件を考えればいいということになると思います。
まず、時効の援用というのは抗弁になる、そして時効中断は再抗弁になる。したがって、時効中断が生じないような再々抗弁に相当する、これは再抗弁に持っていってもいいのですけれども、立証責任の分担の問題としては、再抗弁に持っていってもいいと思うのですけれども、そういうような再々抗弁に相当する要件を設けることが問題になるというふうに理解すればいいと思うのです。その再々抗弁で、相手方が6か月以内に出頭しないとき、それから6か月間連続して期日が開かれないときという2つを挙げて、私はそれで十分だと言ったわけです。
それで、もし十分でないというのだったら、再々抗弁に相当する要件をいくつか付ければいいということになると思うのです。それをちょっと前回綿引委員がおっしゃった、要件にいいのがあればという趣旨は、私はそういうふうに理解しました。
それで、ここのところを検討して、これから先の議論をする。2つだけでは足りないというのだったら、それ以外に何か考える。
大事なことは、要件というのは、後にいくほど争われる頻度が少なくなりますね。つまり、時効の問題というのは大抵、時効中断の再抗弁のところまでで、ほとんどのケースはけりが着くと思われます。だから、そこまでの要件を簡潔で、実行が容易で、立証が容易で客観的なものがいいと思うのです。再抗弁を重くしようとするから実行が難しく、立証が困難で、しかも主観的なために評価的にならざるを得ない。これでは不透明になって、裁判所の負担や当事者の負担が多くなると考えているわけです。
先ほどの三木委員の意見は、再抗弁のところの要件を過重に重くしたということなので、私は反対しているわけなのです。何か私の要件だけでは足りないというのだったら、これから先、私は、ではこれはどうですかというのは申し上げない。というのは、私はこれで十分だと思っていますから、何かいい知恵を集めて、ここにはめ込めばソフトとして動くかもわからないということだと思うのです。そういう問題だと思うのです。そういう議論をしたいというふうに私は思っております。
○青山座長 三木委員どうぞ。
○三木委員 ADRに時効中断効を付与できないかという議論は、UNCITRALを始めとして、諸外国でも近年議論されているテーマです。
そこで言うADRに時効中断効を付与できないかというのは、ADR手続に時効中断効を付与できないかという議論ですね。
ADRというのは、わかりにくいですから、以下調停と言いますと、調停の手続が行われる場合に、その手続に中断効を付与できないかと。おそらく司法制度改革審議会の意見書で時効中断効に言及されているのは、一時的な意味はADR手続に中断効を付与できないかという議論だと思うのです。
そうだとすると、ADR手続がなければ中断効は付与できないというのは当然の帰結で、ではADR手続はどういう場合にあるかというと、両当事者がADRしましょうと、調停をしましょうという意思を持って、かつ第三者がいなければADRになりませんから、調停人も、では私が調停人になりましょうと、これを称して三者合意と呼んでいるわけですね。
これが要件として、どうしても私は不可欠だろうと思うので、三者合意ということを要件にしたわけですね。
ただし、先ほど山本委員や、あるいは綿引委員もおっしゃったかもしれませんが、それに書面を要求するというのは、そこの論理としては必然ではないわけで、私はなるべくかたいスキームから始めた方が、皆さんの御理解を得られやすいと思って、書面ということを申しましたけれども、勿論書面がなくてもいいという議論が大勢になれば、それに反対する意思は毛頭ない、その方がスキームとしてより柔軟というか、わかりやすい、使いやすいに違いない。
先ほどの髙木委員とかの議論を伺って、若干解せないのは、三者合意を実務では取れないと、取れないという意味にもよるのですが、書面による合意は取りにくいだろうと思いますけれども、書面によらない合意、しかもそれは黙示の合意でもいいとしたら、取れなかったらそれはもう調停ではないのではないかと思うのです。それは何に時効中断効を付与するのかといったら、調停をしますか、しませんかという交渉に中断効を付与するという話になってしまう、そういう理屈になるわけですね。それは私は、何で時効中断効が発生するのか全く納得できないわけですね。したがって、三者合意の点というのは、要件としては必要だろうと。
しかし、繰り返しますが、書面という点についてはもし必要ないという方向で皆さんの御理解を得られ、かつ、法制的な御理解も得られるのであれば、それはそれに越したことはないというふうに思います。
もう一点、山本委員がおっしゃった点で、第三者が介在すればそれは誰でもいいのかと。誰でもいいのかという言い方にもよりますが、勿論不適切な人が介在して望ましいとは思っておりませんけれども、このスキームでは、そこを基本的にはチェックする仕組みにはなっていないと、勿論ひどいケースでは恐らくそれは調停とは呼べないというようなことでチェックできるのだろうと思いますけれども、通常の場合はチェックにはなっていないと。
しかし、事前確認方式がそのチェックをできているかというと、事前確認はある機関を確認しただけで、その機関が後にどんな人をどういう手続で調停にお願いしたか、お願いされた人は何をしたかは全くブラックボックスで、先ほどの龍井委員の言葉によれば、ブラックボックスにマル適マークを張ったようなもので、中身は全く見えない。しかも手続は非公開ですから、後からチェックもできないと。
だから、その点はそれを言えば、事前確認方式でもそうはチェックできていないのではないのですかと言わざるを得ないというのがとりあえずの意見です。
○青山座長 どうぞ、山本委員。
○山本委員 話が事前確認の方に移っていますので、ちょっと私もその点で一言言われせていただきたいと思いますけれども、私自身は、依然として事前確認方式の下で、この個別労働紛争解決促進法タイプの時効中断効を認めるべきであるという意見を維持しております。
ただ、先ほど申し上げましたように、私は催告を採るということと二者択一であるというふうには理解しておりませんので、その点はそうなのですが、事前確認について、もう何回も、何十回かもしれませんが、申し上げているので、更に申し上げるべきことはないのですが、基本的にはその選別につながるとか、そういうような御批判があるということは十分承知しておりますけれども、私自身は、繰り返し申し上げているように、そういう批判は当たらないというふうに思っているというだけです。
今、三木委員から言われた点でありますけれども、これはやはりブラックボックスということではなくて、ここの事務局の提案にある確認手続というものも、当然事後的なフォローというものは、定期的な業務報告書の提出でありますとか、あるいは必要な限度で主務大臣の報告徴求権、あるいは是正命令権というものが存在するわけですので、勿論、不適当なADRがそこで行われているということになりますれば、これは先ほどADR機関に対する苦情というのを原委員からも出ましたけれども、そういうようなことになって、この確認というものが取り消されるということが当然の前提になっているというふうに思います。そういう意味では、決してブラックボックスではないと。やはり第三者が誰でもいいのかという問題には、このスキームは答えているというのが私の認識です。
それから、廣田委員から秘密の話が出ましたけれども、勿論、主務大臣が報告徴求権を有しておるわけでありますけれども、これは勿論大臣自身がやるわけではないと思いますが、当然、その大臣及びその下にある公務員がその権限を担っておるわけでありまして、大臣及び国家公務員は、当然その業務について知り得た事項を守秘する守秘義務が刑罰をもって担保されておるわけであります。
したがって、どこまで具体的な事件との関係で、こういうような権限が行使されるかというと、実際にはそんなことはあまりないというのが私の認識ですけれども、もし仮にそういうことがあったとしても、それが第三者に漏れてADR機関の業務が困難になるということは、法制上あり得ないというふうに思います。
以上です。
○青山座長 髙木委員どうぞ。
○髙木委員 三木先生からADR合意があるか、ないかということについて、私の意見について御発言がありましたので。
○青山座長 もうちょっと大きな声で発言していただけますか。
○髙木委員 失礼しました。三者間の合意がないということを申し上げたのは、書面では存在しないということを申し上げたのです。ただ、それが口頭で存在するかどうかということを考えると、口頭でもあるとは言えないというふうに思っています。当事者というのは、非常に都合がよくできていると言ったら怒られてしまいますけれども、ADRの機関に呼び出しを受けたときに、出てきても、そこで解決しようと、きちんと自分で判断している人というのは、ほとんどいないのですね、やはり機関を見て、相手を見て、調停人を見て、どういう人がどのようにやっているかというのをずっと見ているのですね。
まとまったときに、初めてADRで解決しようとする意思が表われたというような感じで、その合意をしますけれども、そうではない限りは、いつでも離脱しようというような態度でしか、相手方というのは出てきていないのが普通だと思うのです。
それを期日を何回か重ねているからADR合意があるというふうに見るのは、ちょっと意思解釈としても妥当ではないのではないかなというふうに思いまして、そういうふうに申し上げました。
結局は、私は個人的に言えば、相対交渉中は全部時効中断すると認めてしまえばいいと思うのですが、そこまでいかないとすると、どうしても三者の合意というのが必要になるということになって、では三者が誰でもいいかというと、やはり誰でもいいという結論にはならないだろうと思うし、それこそ問題ある人が入って、割合と強引な人が3人で合意を取り付けてしまって動かすというようなことが弊害として容易に考えられるのだと思うのですけれども、そうすると、やはり主宰者というか第三者を見ていかないといけないということになるのではないか。そこの部分に関して言うと、事前確認とほとんど変わらないようなことになる。
以上です。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 書面が取れないときは、口頭でいいというのですが、それは誰がどういうふうに立証するのですかね。それは非常に裁判所は困ると思うのです。
それともう一つは、三者合意があったか、ないかというのは争いがあって、これは時効を中断したか、しないかの争いだから、もし争いになったら熾烈な争いになりますよ。だから、片方が三者合意があったと言い、片方がないと言いますよ、必ず争いになれば。
そのときに、第三者である調停人がその争いに巻き込まれるわけでしょう。その巻き込まれることを予想しながら、その前に行われる調停というのは、落ち着いてできますか。そんなことはできませんよ。だからはっきり言えば、この案は駄目です。だから、この案はもうオシャカにして、ほかにいい要件はないかという議論をしたらどうですか。こんなことは私に言わせれば、もうはっきりしています。それは立証もできませんし、そんな争いに巻き込まれるような調停はしたくない。そんなことをしたらADRは何もできませんよ。これはADRをちょっとでも経験すればすぐわかることです。
○青山座長 よろしいですか、私もそのADRをいくつか経験していますけれども、ここに書面による三者合意というのは、非常に厳しい表現ですね。先ほど三木委員が言われたように、はっきりさせるために、非常に厳しく案を作られたということだろうと思うのです。
実際には、ADRの機関なり間に立つ第三者に申し立てるということを言いますと、その機関が相手方を呼び出すと、そして呼び出すには、とにかくこういう人からこういう請求が来ているのだけれども、一度来てくれませんかといって、そして来ると思うのです。
そのときに、この手続でしばらく紛争の解決に付き合いますかということを聞いて、そして何回か手続が始まると思うのです。最初に来た段階で、私は嫌ですと言えば、その話は終わりと、しかし、ではまた次回話を聞きましょうということになれば、最初のときに、それが書面はないけれども、ADRの手続を利用するという合意が少なくとも申立人と機関、機関と相手方というふうにあると思うのです。両方の当事者で書面で利用しますなんていう書面を取れないことは初めからわかっていますから、この案で言っている書面による三者合意というのは、その辺まで緩められるのではないかと、私は個人的に思っていまして、そうであれば、非常に高いハードルのようなのですけれども、決してそういうことでもなくて、それが法制上通るかどうかというのは、また別途検討してもらいますけれども、これは十分考えられる案で、今、オシャカにするのはもったいないと私は思っています。
○廣田委員 それは、座長が言われるような趣旨のことをどう表現するかどうかは別として、私が出頭という言葉を使っているのは、それを言っているのです。出頭したかどうかを問題にしようというのは、それを言っているわけで、もしおっしゃる趣旨だったら出頭だけで押さえられるはずなので、だとすればその方が物理的にはっきりするだろうというのが私の意見なのです。だから、そこの議論をしたらどうかと思うのです。
○青山座長 来たと言ってもやめたというでは駄目なのでしょう。来て話し合いをしなければ。
○廣田委員 やめれば、私の案では別の要件で終了したときになりますから、だからやめたといって終了したときで、それも時効中断効が遮断できるようになっていますから。
○青山座長 廣田案は、申立てをすれば時効が中断すると、それで出頭しなければ遡ってなくなるという案ですね。
○廣田委員 そういうことです。
○青山座長 それは、日本の法制上は非常に耐え難いと、申立てをしたら。
○廣田委員 だから、そこのところはADRを活性化するのだったら、それぐらい踏み切ればいいではないかと私が言っているのです。魅力ある選択肢にするというのだったら、それぐらいのものは踏み切らないと、魅力ある選択肢にならないと言っているところなので、そこはちょっと意見が、法制上耐え難いかどうかは私と意見が違いますけれども、しかし、ADRを活性化するのだったら、それぐらいのことは耐えてほしいというのが私の意見ですね。簡単に言えば。
○青山座長 御意見は十分わかっていて、廣田委員のアイデアをどうやって生かすかということを腐心していると、少なくとも事務局は腐心していると。
一方には、それでは時効制度は公益的なものだから、そういういい加減なものでは駄目だと。だから、事前確認でやれという非常に大きな対立があるわけですね。だから、決して廣田委員の案を消したわけでもないし、そのアイデアを生かしながら、三木委員ここまで案を作り、そして事務局が更にそれを催告タイプとして新たに提案したわけですから、これを基礎にして、更にいい要件が考えられるかどうかということを、少しみんなで頭をひねって考えていただくということではいかがでしょうか。
今日はちょっと時間を延長していますけれども、更に時効の中断について、どうぞ。
○原委員 いろいろな論点が出てきていて、大変興味深くお聞きしていて、消費者側としても、最初に言葉を見たときに、この三者合意という言葉だけではなかなか難しいかなというふうな印象があって、でもいろいろ内容的なところもわかってきたのですけれども、先ほど綿引委員がおっしゃられた第三者が介在したことが書面によって明らかになっているということで、それで立証できるというような要件の立て方だったらいいのではないかというようなお話があったのですけれども、これはやはり可能ということでよろしいのですね。
○綿引委員 とにかく積極的な三者合意を書面で取りなさいと言ったら、それは髙木先生、廣田先生が言われるように全く難しくて、ハードルが高過ぎるのではないかというふうに思いました。
ただ、第三者が介在して、和解交渉が行われたことが書面によって立証されたというぐらいのあれであれば、何で書面でなければいけないのかと、またここは説明をしなければいけないのですが、そうなれば、次回期日が決まって、次も来ましたと、そこで3回、4回と期日が重ねられましたというような事実がきちんと立証されるということであれば、そこに時効中断効、ただの催告より少し長い時効中断効を認めてもいいのではないかなというふうに考えたということです。
○青山座長 どうぞ。
○山本委員 おそらく、この合意自体について、もし書面を要求しないという選択肢を取るのであれば、まさに合意の内容はADRの手続を開始して、紛争解決を試みるという内容の合意ですから、綿引委員が言われていることは、一種の間接事実として合意があったことを推認させるわけですし、廣田委員が言われている出頭というのもそういうことなのだろうと思いますので、そこはそんなに、あと法制的に合意という言葉をなくして耐えられるのかとか、そういうふうな問題があるのだろうと思いますが、事柄の内実として、ここで意識されていることは、そんなには違わないのではないかというふうに思いますけれども。
○綿引委員 わかりました。
○青山座長 三木委員、その後に安藤委員どうぞ。
○三木委員 私も綿引委員、ないし山本委員がおっしゃったように、事柄の内実はそれでいいのではないかと思います。一方が調停を申し立てて、他方が出てくるなり私はやりませんと言って帰った場合は別ですが、しばらくちょっと話し合いしましょうといって、次回もやるというような事実が後で立証された場合に、それは事実として書面が仮になくても、合意という言葉を使うかどうかは別として、調停合意がなされて調停が行われたと見て、それはだれも怪しまないと思います。
ですから、そういった形での立証というのは、現実の実務的には別に難しい話ではないような気がいたしております。
○青山座長 安藤委員どうぞ。
○安藤委員 何か最初の私が考えていたのと全然話がそっぽに行ってしまったので、この場合の時効中断効というのは、主宰者のために必要だと思うのです。同じ土俵に上がってもらうためには、時効中断効を主宰者が必要とするということなので、主宰者がこういうことをやりますと裁判所へ出すだけでオーケーではないかなと、初めからそういうふうには思っていたのですが、話がすごいずれてしまったので、何かよくわからなくなってしまったのですけれども。
○綿引委員 書面のことですか。
○安藤委員 だから、主宰者が出せばいいということなのですよ。
○綿引委員 安藤委員は最初から、ADRの受理があったというようなときに、それを主宰者が裁判所に届け出るというようなことをお考えになって、今、それをおっしゃっているのですよね。
○青山座長 ほかに何かございますでしょうか。
時間が超過しましたけれども、時効の中断については、表面上は意見が随分対立しているように思いますけれども、内実は、先ほど三木委員が言われましたように、そんなに違っていないところに、だんだん収斂してきているのではないかというのが私の楽観的な印象でございます。
今日の議論は、これで終わりにさせていただきますけれども、次回はどういうことをするかと申しますと、事務局にお願いいたしまして、今日の議論を踏まえまして、次回の検討会、12月1日、もう間もなくでございますけれども、次回の検討会では、法制のイメージの第2稿を出していただくようにいたします。
その際に、法制的なイメージという御注文が綿引委員からも、髙木委員からもありましたけれども、どれだけそれが出せるかわかりませんけれども、そういう努力をしてもらうつもりでいます。
それで、先ほど小委員会みたいなものを急遽作ったらどうかという御提言もありましたので、それはちょっと検討いたしますけれども、今日は11月17日ですから、12月1日までの間に、事前の準備も含めて1週間ぐらいの間にやらなければいけないと。それに御協力いただくことができるかどうかということもありますので、ちょっとこれは白紙で、これから事務局と検討させていただくことにいたします。
今日の議論は、これで終わりまして、次回の日程を確認させていただきますけれども、よろしゅうございますか、そういうことにさせていただきます。
では、次回の日程は、12月1日月曜日、午後1時半から開催いたします。本日に引き続きまして、法制イメージを素材といたしまして、ADRに関する基本的な法制についての体系的な議論をしていただくということにいたします。
本日は、大変白熱した議論を展開していただきまして、非常に腹ふくるるわざの方もおられると思いますけれども、私は、結構収斂していくのかなという感じがしておりますので、あと年内に2回、どうぞ引き続いてよろしくお願いしたいと思います。
今日は、大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本日の検討会は、これにて終了いたします。