〔開会〕
○青山座長 それでは、ただいまから第27回「ADR検討会」を開会いたします。
本日は、年の瀬も押し詰まり、昔の言葉で言うと、御用納めの時期でございますのに、御出席いただきましてありがとうございます。本日は、全員御出席でございます。
本日の議事でございますけれども、本日はこれまでの議論でも依然として、この検討会の中で意見の開きがある時効中断効の問題と、それから弁護士法72条の問題を中心として御議論いただきまして、その上で意見の集約、ないしは大まかな議論の整理が可能かどうかということを見極めたいというふうに考えております。
具体的には2つありまして、まず、時効の中断に関しましては、事前確認制を採らずに、かつ実務的にも配慮するとした場合に考えられる新たな制度案というものを資料としてお出ししております。事前確認制度をこの段階で落とせという議論が、前回ありましたけれども、それを落としているわけではないのですが、とりあえず事前確認制を採らずに、かつ、実務にも配慮した案として、こんなことが考えられるかということで、新たな制度案を資料として出しております。
第2は、弁護士法72条の適用除外に関しましては、同じく、事前確認制を採らずに、かつ、ADRの公正・適確性をどういうふうに確保するかということを配慮した場合に考えられる制度的担保というものについて、この新しい資料では情報開示義務というものを入れ込んだ資料をお出ししております。
資料はお読みいただいてきていると思いますけれども、これを参考に御議論いただきたいというふうに考えている次第でございます。
まず、事務局の方から、今、申しました提出されております資料について御説明をお願いしたいと思います。
小林参事官お願いいたします。
○小林参事官 おはようございます。それでは、資料27-1と資料27-2を続けて御説明させていただきたいと思います。
まず、資料27-1でございますが、これは今、座長からもお話がありましたように、時効中断効の付与に関しまして、前回の議論を踏まえて、新たな御提案をするものでございます。
具体的には、この表の中で言えば、一番右側のB´案ということになるわけでございますが、若干おさらいも兼ねて、A案、B案、それぞれの特色を御説明した上で、更にB´案でどのように修正を施したかということをお話をしたいと思っております。
まず「A案(個別労働型)」でございますが、これは事前確認制を前提とした制度設計でございます。この欄の⑫のところにございますように、ADRの適格性について公的機関による認定をすると。これは、具体的には実効性のある紛争解決機能を有しているかどうかということで、その基準についてはいくつか議論がございますが、例えば、主宰者、手続、あるいは事務処理基準について確認をするということを前提にいたしております。
その上で、制度の仕組み方としましては、②にございますように、ADR申立てのときを訴え提起の時とみなすといいますか、時効中断効を付与するということでございます。 したがって、⑧にございますますように、ADRの合意というものは特段必要にはなりません。
また、④にありますように、勿論、途中でADR手続が打ち切られれば別でございますが、そうでない限りにおいては、時効中断効が認められる期間には特段の制限がないという制度の仕組み方になっております。
これが、個別労働型というものでございます。
これに対しまして、B案というのは、先ほど申しましたような事前確認制を採らないという前提の下、今の民法との整合性を図りながら、どのような制度が考えられるのかということで提案をしたものでございまして、基本的には、今の民法にもございます催告制度について、これは期間6か月になっているものでございますけれども、④にございますように、仮置きではございますが、最長1年ぐらいまで延ばすことにしてはどうかという考え方でございます。
この場合、勿論催告でございますから、請求があるということが前提になるわけでございますが、もう一つの要件としては、⑧にございますように、ADRを実施することについて合意がある、また⑨にございますように、ADR機関との間でも合意があるということが前提になっているわけでございます。
考え方としては、ADRを進めることについて、当事者間で合意がされている間に訴訟を提起するというのは、なかなか期待し難いということで、その間については、特段の延長を認めてもいいのではないかというのが基本的な考え方になっているわけでございます。 したがいまして、期間制限は1年ということでございますし、単なる申立てでは足りず、ADR合意が必要ということであるわけでございます。
このB案につきまして、前回の議論でいくつかの御指摘を受けております。
1つは、④にございますような1年という期間制限があることについて、これでは使い勝手が悪いのではないかという御指摘でございますが、ただ、この点につきましては、やはり催告の特例という考え方で進めるのであれば、あまり極端に長い期間というのは取れないのではないかと。絶対に1年でなければならないということはないかもしれませんが、あまりこれと懸け離れた期間設定というのは難しいのではないかということで、この点については、B´案においても1年というのを維持いたしております。
それから、合意を取ること、合意を書面で取ること、あるいは合意を請求の時から取ることについては、現実的ではないのではないかという御指摘を受けたところでございます。
この点については、合意自体を不必要にするということは、これは催告の特例として制度を設計した趣旨から考えて、これは言わば味噌といいますか、一番重要な点になりますので、この合意自体が不要ということは、案としては取り得ないということであろうかと思いますが、その他の点については、実務にも配慮して何か工夫ができないかということで、今回B´案では若干の修正をいたしております。
まず、書面性につきましては⑪でございますが、ここでは、書面性自体は不要ということにしてはどうかということにいたしております。
勿論、合意があったこと自体は立証する必要があるわけですから、多くの場合には、当事者が手続に従って出頭してきたというようなことを書面のような記録で立証していただくということが通常ではないかというふうに考えられますけれども、ADRを実施すること自体についての合意を書面で取るということまでは要求する必要はないのではないかという点が一点でございます。
もう一点は、ADRの合意をするタイミングでありますけれども、これはADRの請求をした時点で合意を取り付けるというのは、なかなか難しいだろうという御指摘に配慮いたしまして、それではどこまで後ろへ倒せるかということを考えてみた場合、もともとの催告の期限であります6か月、この6か月が経過する時点までに合意を取り付けられればいいのではないか。いわばその6か月を超えた後が特例の世界に入るわけですから、その特例の世界に入る前までにADRの合意を取り付けられればいいのではないかということで、⑧と⑨において、そのような修正を加えております。
以上が実務の面からの指摘に対して、それを踏まえてのB´案における対応でございます。
それから、もう一つ御指摘をいただいたのは、B案においては第三者は誰でもいいのかと、そういった特に限定をせずに、こういった効力を付与していいのかという問題でございます。
これにつきましては、事前確認制を採らないという前提でこの案を作ってございますので、第三者を限定するという方法は、それほど選択肢があるわけではございませんけれども、ここでは⑫にありますように、主宰者を弁護士、あるいは弁護士と共同するケースに限定してはどうかということでございます。
勿論、現在は弁護士法72条がございますし、仮に今回72条を緩和したとしても、今、想定している案においては、有償・業の場合には弁護士の関与が必要になるわけでございますが、無償、あるいは業でないケースについても時効中断効を付与するということであれば、やはりその点についても弁護士、あるいは弁護士と共同するようなケースに限定するというのが一つの考え方ではないかということでございます。
前述のように制度設計が、かなり複雑にもなりますので、きちんとそれだけの法的知識のある者が実施したようなケースに限定するというのは、一つの考え方ではないかと思います。仮に、いろいろな方がこれを実施いたしますと、ある意味では二次的な紛争がいろいろ生じてきてしまうということもございますので、限定をするとすれば、弁護士、あるいは弁護士と共同という形で限定するというのが考えられるのではないかということでございます。
以上、申し上げましたとおり、B´案につきましては、基本的にはB案の考え方を維持しつつ、ADR合意の書面性、それからADR合意を調達するタイミング、それから第三者の限定という3点においてB案を修正したものでございます。
勿論、これにはいろいろバリエーションがあり得るかと思います。それぞれ今、申し上げたような修正を取るか、取らないかということで、いろいろバリエーションはあるかと思いますけれども、B案を基礎として考える限りにおいては、動かせるのはその辺りになるのではないかということでございますので、御議論をいただければというふうに考えております。
引き続きまして、資料27-2に入りたいと思います。
こちらは、弁護士法72条の例外を設けることに関するものでございます。
現在までのところ、弁護士法72条の適用除外の要件といたしましては、この箱の中の上の方の白い四角でございますけれども、一つは、暴力団等を始めとした不適格者を排除するということと、それから個々の法律事務につきましては、弁護士の関与を必要とすること、仲裁は別途検討をする必要があろうかと思いますが、この2つを大きな要件とした上で、弁護士以外の方が、こういったADRに関する主宰の業務を行うことを認めてはどうかという議論を進めてきたわけでございます。
これにつきましては、1つは、事前確認制を採らないまま、こういった72条の緩和を、これだけの要件だけで進めていいのかどうかという御指摘、あるいはこのような仕組みですと、関与する弁護士にかなり負担がかかると申しますか、それだけで果たして健全性が確保し切れるのかどうかという御指摘を前回いただいたところでございます。
また、弁護士法72条の問題に限らず、大きくADRの育成、振興を図っていくとすれば、もう少し健全性という問題についても議論をする必要があるのではないかという御指摘も、これは前回に限らず、度々いただいているところでございます。
したがいまして、そういった点も含めて、もう少し全体像を考えてみて、新たなものがお示しできないかということで考えたものが、この下の枠の中でございます。
基本的な考え方としましては、これまでADRにつきましては、一番左の枠で行きますと、基本的には参入時のルールで、健全性、公正・適格性を確保してきたということが言えるかと思います。言わば、不適格なADRが、あるいは不適格の可能のあるADRが、もともと参入できないような仕組みを採ることによって、この公正・適格性を確保していくということを図ってきたわけでございます。
これは、これで一つの考え方であろうかと思いますが、他方、これから、今、意見書で述べられているような多様性のあるADRの実効性、あるいは利便性、信頼性を考えながら発展させていくということを考える際に、この参入時のルールだけで健全性を確保していくということは、なかなか難しいのではないかというふうに考えられるわけでございます。
したがいまして、ここでの考え方は、参入時のルールにつきましては、先ほど申しましたような要件を加えた上で、一定の緩和を図るとしても、その後の参入後のルールと併せて、全体として一番右にございますように、相互に補完して、ADRの公正・適確性の確保を図っていくという考え方を、むしろ採っていくべきではないかということでございます。
その際の具体的な方法でございますけれども、これまでの議論で、この二重四角の中の上段の部分、つまり、すべての主宰者、あるいはADR提供者の義務について考えるということについては、なかなか現実的にはあまり厳格な義務をかけるというのは難しいのではないかという議論がございまして、相当程度の部分は努力義務ということで構成したわけでございますけれども、もともとADRにおける弊害が一番心配されておりますような有償で業務として行われるようなケースにつきましては、別途のことを考えてもいいのではないかということでございます。
具体的には、網かけの部分でございますけれども、1つは業務方法規程の作成をするということ。
2つ目は、そういった業務方法規程そのもの、あるいはそれに関連します、規程には馴染まないけれども、やはり利用者にはきちんと知らせるべきというような一定の業務内容情報について、公表する義務を課すということ。
これらについては、不作成の場合、あるいは不公表の場合、あるいは虚偽公表の場合、こういったものについて罰則も考えていいのではないかということでございます。
もう一つは、これも議論の過程の中では何回か御指摘をいただいたところでありますけれども、ADR自体に対する利用者からの苦情についての処理について、迅速適切な処理に努めると、これは事柄の性格上、罰則というよりは、むしろ努力義務になろうかと思いますが、そういった義務を課すということを考えてもいいのではないかということでございます。
勿論、この業務方法規程の内容、あるいは併せて公表すべき業務内容につきましては、これはこれからの議論ではございますが、とりあえず考えられる例としては、手続関係の申立て受理手続、あるいは記録の作成保存手続関係、あるいは業務内容情報に関して言えば、主宰者候補者の経歴、職業の概要といったもの、あるいは関与する弁護士候補者の氏名というものが考えられるのではないかということでございます。
ここの点での基本的な考え方は、この業務方法規程の内容、あるいは業務内容の情報自体の適否の判断ということは、これは利用者に委ねられるわけでありますけれども、利用者にそういった手段を与えること自体については、きちんと担保するという考え方でございます。
よくこれまでの議論の中では、国が関与するとしても、内容にどこまで踏み込むのかということが議論されたわけでありますけれども、ここでは内容までには踏み込まず、勿論、項目は決める必要があると思いますが、内容までは踏み込まず、そういったディスクロージャーをきちんと行ったか否かという点については担保するという考え方でございます。
こちらも、いわば新しい考え方の提示になりますし、それからADRの振興をどうやって図っていくかという方法論自体にも関係する問題でございますので、また、御議論をいただければというふうに考えております。
少し長くなりましたが、資料の説明は以上のとおりでございます。
○青山座長 ありがとうございました。今、御説明のように、時効の中断効に関しましては、B´案という新しい制度設計案を御提示いたしました。
それから72条との関係では、参入時のルールだけではなくて、参入後のルールというものを加えることによって、ADRの公正・適確性を確保することができるのではないかという資料でございます。
本日は、時間の制限もありますので、まず、時効の中断に関する制度案につきまして御意見を賜わり、大体40分ぐらいを予定しておりますが、あとは72条の関係については30分ぐらいの御議論を賜わりたいというふうに思っております。
早速、時効の中断に関する制度案につきまして、御意見をいただきたいと思いますが、どなたらかでもどうぞ御自由にお願いいたします。
○小林参事官 ちょっと済みません。説明を落としたところがございましたので、少しだけ補足させていただきます。
本日、廣田委員から意見が提出されております。これは、これまで提出されたものを更に修正を加えたものというふうに伺っております。修正の点につきましては、先生の方から御紹介があるかもしれません。
それと、今回お出ししたA、B、B´案との関係でございますが、これは私どもの理解しているところでは、廣田先生のお考えにおきましては、特にADR機関は限定することはしないということにおいては、A案ではなくて、むしろB案、B´案に近いということではないかと思います。
ただ、ここに各号、一号から八号まであるように、いろいろな条件を付けて解除されるケースは勿論いくつか挙げておられるわけでございますが、基本的には期間制限はしておられないということにおいて、この表で言えば、③に当たる部分でございますが、期間制限をしておられないという点、それからADR合意は特段求められておられない点において、B´案、あるいはB案とは異なるのではないかというふうに思っております。
ただ、これも何回も繰り返しになって恐縮でございますが、先ほど申し上げたように、B´案においても合意についての実務面での問題については、先ほど申し上げたように2点、配慮したつもりでございますので、その結果、かなり近いものにはなっているのではないかと、これは事務局としての勝手な片思いかもしれませんけれども、そのように考えております。
若干補足しました。
○青山座長 意見ですか、どうぞ。
○廣田委員 いや、意見というよりも、A、B、B´案の内容の全貌がよくわからないところがありますので、内容がわからないと議論が進まないので、ちょっと質問をしたいのですけれども、いいですか。
○青山座長 はい。
○廣田委員 A案について、アドホックについても事前確認を必要とするのかということですが、例えば、私がアドホックでやる場合に、私個人として事前確認を受けなければいけないのかどうか、それが1点です。
それから、外国人がやはりアドホックで調停をやる場合にも事前確認が必要なのかどうか。それが2点目です。3点目が、行政型ADR機関も事前確認が必要なのかどうか。それがA案についての質問です。
それからB案について、問題は④の最長1年なのですけれども、仮に1年にした場合に、1年1か月後に時効完成する事案だったら、この④をせっかく最長1年までもっていったとしても実効性はないということになりますね。利益は受けられないということになると思うのです。それでいいのか、そういうことなのかということです。
2点目は、11か月後に時効完成する事案だったら1か月しか延びないということになるのですね。それはそれでいいのかということです。
もう一つ、時効間際に申立てをした事件は1年になる、催告から6か月というのが1年になるということになるのですけれども、その場合に、1年に延ばす必要があるのかどうか。
すぐ取り下げたといった場合にも、時効完成しないで1年延びてしまうということになるのではないかと思うのですけれども、それはそれでいいのかということです。それから、B案とB´案に、⑩のところで、合意解除権の要否ということなのですが、これは合意解除権があるということだと思うのですが、一旦、時効が延長していると思っていながら解除されたら時効になっていたという事態が生ずるのですが、そういうことでよろしいのかどうか、そういうことを想定しているのかどうかということです。
それから、B´案の12番目にあるところの、主宰者を限定する必要性、必然性があるのかどうか、当事者が、主宰者が弁護士であるかどうか申立ての時点ではわからなかったり何かすると思うのです。どういう形で弁護士が共同しているかどうかということは、はっきりわからない場合もあると思うのですが、つまり当事者にとってわかりにくいと思うのですが、その必然性が、果たして⑫のB´案にあるのかどうかということを伺いたいです。
もう一つ、全体を通じてなのですが、これはA案もB案もB´案も法律の条文にどのようにして書くのだろうか、これは書けるのかどうかということが、私は一番懸念しているのです。仮にこうすると決まった場合にも、そういう条件を全部クリアーした上で、法律の条文に書かなければいけないと思うのですが、条文の形に書いていないと是非の判断が我々はなかなかできないのですね。
ですから、それが実際にどういう形で構想を持っていらっしゃるのか、質問が多くなりましたけれども、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
○青山座長 そうしましたら、まず、事務局からお願いします。
○小林参事官 ちょっと答弁漏れがあるかもしれませんが、その場合は御指摘をいただきたいと思います。
まず、A案についてでございますけれども、先生おっしゃったアドホックというのは、個人という意味でしょうか、それとも一回限りという。
○廣田委員 いや、一回限りではなくて、何回もありますね。私が仮にアドホックで繰り返しやるという場合でも、私個人として事前認定を受けなければいけないのかどうかということです。
○小林参事官 個人の扱いについては、別途考えるということは、勿論選択肢としてはあり得ると思いますけれども、基本的には、やはり同じような考え方が適用されるべきではないか、個人であるからいいということには、この考え方に立てば、ならないのではないかということではないかと思います。
同じ問題は、2番目の外国人の場合でも同様でございまして、外国人に適用することから起こり得る、いろいろな影響というのは、勿論考える必要があるのかもしれませんけれども、制度設計の考え方としては、特に外国人だから別に扱うということは考えているわけではございません。
3番目の行政型の問題でございますが、これはいくつかの考え方があろうかと思いますけれども、1つは行政型であっても同じような事前確認制度の対象にするという考え方もございますし、既に例がございますように、個別の法律において、そのようなものとして設計されているのであれば、むしろその事実をもって、特に事前確認をせず、個別の法律で手当をするという考え方もあり得るのではないかと思います。
以上、3点でございます。
それから、申し訳ございません、B案のところはちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったところもあるのですけれども、基本的には最長1年というのは、ADR合意が継続しているということを前提としているわけであります。
他方、またADRで議論が終了してしまえば、それから1か月以内、③にございますように、終了してしまえば、それから1か月以内に訴訟を提起しなければならないということになっているわけでございます。
いくつか例を挙げられたものにすべて答えているかわかりませんけれども、その限りにおいては、やはり1年を超えてしまったケースについては、制度の性格上、1年がいいかどうかは別として、その期間を超えてしまった場合には救済がされないということになりますし、他方、その前に、ADRの方がまとまる、あるいはまとまらない可能性が高いということで打ち切られた場合については、それから1か月以内に訴訟を提起していただく必要があると思います。
それから、解除権の問題でございますが、これはむしろ債務者側の利益保護に配慮したものでございまして、そういう意味からすると、自動的に1年延長されるのではなくて、先ほど申しましたように、合意が前提となっているわけでございますので、解除された場合については、そこで時効延長の効果はなくなるといいますか、それから先はなくなるということになるわけでございます。
それから、弁護士に限定する必然性でございますが、これは論理的な必然性というよりは、むしろこの制度を設計し、適格性を確保していくための要件として、いろんなものを考えていくと、一つの案としては、弁護士の、あるいは弁護士と共同するというケースに限定するというのも考えられるのではないかということであります。
そこは、確かにおっしゃるように、論理必然であるわけではないというふうに思っております。
○廣田委員 法文にどう書くかという点については。
○小林参事官 法文の書き方でございますが、勿論、これはすべての論点に共通でございますが、必ず書き切れるということを立証することは難しいわけでありますけれども、少なくともA案からB´案であれば、それは巧拙はあろうかと思いますけれども、書き切ることは可能ではないかというふうに考えております。
○髙木委員 今の解除権の説明に関連してよろしいですか。
○青山座長 はい。
○髙木委員 今、解除されたときは、それから先はなくなるとおっしゃったことの意味がわからなくなったのですけれども、解除されたときは、最初から合意がなかったものとして、全く延長する効果はなくなる、即ち、最初からなかったというふうにも考えたのですけれども、今、それから先がなくなるという意味は、解除された場合はADR終了と同じように扱って、そこから1か月以内に何かやればいいのかというふうに聞こえたので。
○小林参事官 その聞こえた方が正しいと思います。
○青山座長 それから先がなくなるというのは、1か月内はいいと。
○髙木委員 そうですか、債務者保護でいつでも離脱できるのだというふうにもおっしゃっていたので、離脱したときは最初から「ない」というふうに考えて、全く与えられないのかというふうに思っていたのですが、違うのですね。
○小林参事官 いや、そこから先伸びないというだけでも債務者保護だと思いますので。
○青山座長 ほかに何かありますか。
○三木委員 その点だけ、説明の問題かもしれませんが、解除権と書いてあるのは、今まで打ち切りといって説明されてきた問題ですね。法律的には、解除権という説明は、私はミスリーディングだと思います。
というのは、民法の話をする気はありませんが、解除の理屈としては、直接効果説などを採れば、遡及的になくなるということになって、ここはADRの合意するときは、合意の中身として、あるいはADR合意は無名契約ですから、その無名契約の中身として、双方当事者がいつでも打ち切れるということが合意内容に含まれているということであって、これは民法にいう解除権とは違うということだろうと思います。
○小林参事官 おっしゃるとおりだと思います。ちょっと勉強不足でした。
○青山座長 ほかに何かございますでしょうか。
○山本委員 中身に入ってよろしいですか。
○青山座長 どうぞ中身に入ってください。
○山本委員 私自身は、前回、前々回を通じて、B案については反対であるということを申し上げてきたわけですが、その理由としては2点のことを申し上げていました。
1つは、書面によって当初に合意を求めるということでは、実質的に機能する場面は極めて限られるだろうと。そうであるとすれば、仮にA案とB案を代替的にとらえるのだとすれば、A案の代替的な選択肢にはならないのではなかろうかと、こういうことを申し上げました。
その点については、先ほど御説明がありましたように、書面については不要であって、かつ、必ずしも手続の当初に合意がある必要はないという話だったので、これであれば、実際に実務をやられている方の御意見をお伺いしなければわかりませんが、私から見た限りでは、それであれば十分プラクティカルなものになり得るのではないかというふうに思います。
第2点としては、第三者を全く無限定にして民法上の催告の期間を延長するということは、理論的な正当性を説明するのは困難ではなかろうかと。当事者間で真摯に話合いを合意したとしても、民法はそれによって特別の期間延長を認めていないわけでありますから、第三者が加わって特別の期間延長がそれに加わることができるのだとすれば、やはりそれは第三者が十分実効的な紛争解決に向けた努力をなし得る人であるからこそ、そこで期間の延長が特別に認められるのだろうというふうに考えるわけであります。
そこで、その点についても先ほど御説明のように、主宰者を限定すると、弁護士または弁護士と共同する場合に限定するということでありますので、それであれば、私自身の理論的な疑問というのは、相当程度解消されるということになると思います。
ただ、やはり弁護士に限定するということの当否ということについては、廣田委員が先ほど御指摘になられたように、これが果たして相当なものかどうかと。事前確認を採らないという前提に立てば、それは外形的な明確性を確保するためには、やはり何らかの資格を前提にせざるを得ないと。
そして、龍井委員、あるいは三木委員が言われているADR士というものが将来的にできるかもしれないけれども、現時点では無理だということであれば、弁護士、弁護士だけかどうかわかりませんが、そういう形で資格で限定せざるを得ないというのは、やむを得ないというふうに思います。
しかし、この第三者を限定する趣旨が、先ほどのような実効的な話合いを追行し得る人である、あるいはその他、記録の管理、保存等がしっかりできるというようなことで、第三者を限定するという趣旨であれば、弁護士なら大丈夫なのかという、必ずしも話合いの仲介の専門的な能力を常に弁護士が持っているとは限らないというのは、この検討会のコンセンサスであったというふうに思いますので、そうであれば弁護士ならいいのかということは当然疑問になるわけですし、逆に勿論、弁護士以外ならどうして駄目なのだろうと、そういうような能力を持っている人であればいいのではなかろうかと。
そうすると、結局、より実質的に踏み込まらざるを得ないとすれば、私自身は、事前確認ということにならざるを得ないというふうに思っておりまして、依然として、私自身は第一次的にはA案が望ましい、弁護士以外の人に開いて、多様なADRを促進するという観点からもA案の方が望ましいというふうに個人的には思っております。
しかし、事前確認に対する反対が強いという、この検討会内部、あるいは外部でも強いということは十分承知しておりますので、もし検討会の大勢がA案では無理だということであれば、このB´案というのは、先ほど述べましたように、私自身は十分に支持できる案であるというふうに思っております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかの委員のお考えをお聞きしたいと思います。
髙木委員どうぞ。
○髙木委員 中身の議論から元に戻って申し訳ないのですが、B´案とB案の違いが、今一つちゃんと理解できないところがありまして、正確に言うと、B案がわかっていなかったということなのかもしれないのでお尋ねします。特別催告といっている場合に、一般の催告との関係はどうなるのかというのがここの図表からはわからない。④のところで、②から提訴までの期間制限として、最長1年と書いてありまして、②には、ADR手続上の請求の時と書いてあるので、ここから1年であるとしても、これには前提として、その前にある一般的な催告がある場合のことがここに触れていないように思われるのです。つまり、B´案の方には、一般的な催告とADR上の請求を合わせて1年ということが明示されていると思うのですけれども、Bのところには、ADR手続上の請求の前に、通常の催告があった場合はどういうふうに考えられているのかというのが、ちょっとわからないのです。
単に、B案の書面の合意を不要にして、合意の調達時期を最初の6か月の満了時までにしたというふうに、単なるその違いだけだというふうに考えていたのですけれども、ここの書き方としては、中断効の発生時点が、B案では手続上の請求時と書いてあって、B´案では請求(催告時)と書いてあるので、そこの説明をしていただけないかなと思っております。
○青山座長 では、山上企画官お願いします。
○山上企画官 まず、B案にいたしましても、B´案にいたしましても、あるいは極論すれば、A案にいたしましても、民法153 条の催告による時効中断の規定の適用を排除するというものではなく、重畳的に適用されるという前提に立っております。
B案の場合は、髙木委員の御指摘のとおり、民法153 条に規定される催告とB案でいうADR手続上の請求が別個のものとして行われる状態は、当然に想定されるところでございますが、ここの表で示しておりますのは、後者の方のADR手続上の請求だけを取り出して記したものであります。最初に申し上げましたとおり、ADR手続上の請求より前、あるいはそれより後に、いずれにしても当然その時期は本来の時効期間満了前である必要がございますが、通常の催告がなされたという場合には、民法153 条の適用も当然にあるという前提でございます。
それから、B案とB´案の相違という点につきましては、B案につきましての請求というのは、ADR合意、あるいはADR実施合意、ここでいうところの⑧⑨の合意に接着してなされたような、そういう請求というものに対して、特別の請求としての効力を持たせるというものであります。B´案につきましては、請求の時点では民法153 条でいうところの単なる催告であったといたしましても、民法153 条適用後の時効期間満了の時点において、⑧⑨でいうところの合意が調達されているということであれば、その時点において、なお紛争解決の見込みがあるものということができるので、敢えてその段階で訴訟提起をせざるを得ないような状態にしなくともよいのではないかという考え方に立って、提訴猶予期間を更に半年間延長するというものです。
○髙木委員 今の最後の場合、半年間延長してもいいのではないかというのは、どこから延長するのですか。
○山上企画官 1年間の期間の計算の始期については、当初の催告の時点からでございます。
○髙木委員 そうすると、Bでも全く同じですか。
○山上企画官 Bも同じです。
○髙木委員 最長1年というのは、最初の一般的な催告によって、本来完成するであろう時効の完成時期があったとしたら、それまでの間にADR合意があって、なおかつADR手続上の請求があったと。そうすると、延長されるのは、本来の完成するところからプラス6か月。
○山上企画官 説明の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、時系列で申しまして、まず、B案で直接相手方に対して催告がなされた。それから、その次にADR手続上の請求がなされたという場合には。
○髙木委員 それは関係がなくなるわけですね。
○山上企画官 B案の場合には、それぞれ別個独立のものとして考えて、当初の相対で行われた催告については民法153 条を適用して催告から6か月。それから、後になされたADR手続上の請求についての時効中断効という意味では、ADR手続上の請求から最長1年となります。
○髙木委員 わかりました。済みません。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 先ほどの山本委員のお話は、⑫の中のB´案で「(=弁護士又は弁護士と共同)」と書いてあるのは、先ほどの話を前提とすれば、弁護士自身が調停人になるか、弁護士が調停人のパネルに入っていなければいけないということを前提とした話だと思うのです。
しかし、現実問題として、そうではないADRはたくさんありまして、例を挙げるまでもありませんが、海運集会所なんかもそうですね。それから、もしそういうことであれば、国際的にはまず通用しない議論だと思うのです。
ですからそういう意味で、私はこの括弧をこのまま⑫という案を前提にして言うことであればこれには賛成し難いということです。
それから、④の最長1年ということも、今の話にも出ましたけれども、なかなか計算がしにくいというか、いつもADR機関は、いつ時効が来るかというのを計算しながら仕事をしなければいけないということがありまして、これはもう現場が非常に混乱します。
その混乱する割には、先ほど私が質問したように、実際に実効性が非常に乏しい。時効完成が1か月前に来れば、あと1か月しか延びない、あるいは、それは全然役に立たないということもありますので、実効性が乏しいと思うのです。
ですから、実効性が乏しいのに現場が混乱するという意味では、非常にデメリットが多いということで、最長1年というではなく、やはり私は時効中断を認める必要があると思います。しかし、おかしなものがあれば、それは一定の要件のもとで時効中断効を失効させるという案の方が、私は端的で現場が動きやすいという意味です。したがって、④という限りでは、私は賛成し難いと思っているわけです。
○青山座長 ほかに、どうぞ。
○髙木委員 私は、ちょっと意見を申し上げなかったのですけれども、結論的には、山本委員がおっしゃったこととほとんど同じでございまして、AとBとB´を見比べると、A案が一番シンプルでわかりやすいのですね。法律要件とか、効果という点だけを考えれば、A案が一番ベストだなというふうに思っています。
事前確認の問題が、一番大きな点としてあるから、こういうふうになっているのかと思うのですけれども、まだ今の説明で確認できたところもあるのですが、B案は要件と効果はそれなりにシンプルになっていると思うのですね。ADR主宰者の側は提訴の時に、少なくとも時効が完成していないかどうかということだけを確認すれば、それで受け付けられるというか、審理に入っていいということも考えられるし、そこから最長1年だけを見ればいいとすれば、管理もしやすいのですけれども、B´案というのはいろいろ難点を克服された案ではあるのですが、最初の催告が何時であったかということから常に考えていなければならず管理も難しいし、当事者から時効中断の有無を聞かれたときに、最初の催告書をいちいち確認して行うとすると、とてもわかりにくいのではないのかなと思いまして、このB´案は使いづらいかなというふうに思いました。
それから、適格性の確認について、弁護士であれば相当なのかということについても、私は全く山本委員と個人的には同じ意見で、弁護士が何となく独任制の官庁になったみたいな印象を受けるところもあって、あまり賛成できないところではあります。
不相当だと、弁護士は駄目だとは言いませんけれども、それほど検討会内部で支持を受けていなかったのに、こんなところに使われるなんてというふうに思っています。
○青山座長 どうぞ。
○綿引委員 髙木委員が今言われたところ、先程の山上企画官の説明も含めてなのですが、このB´案は、ADRに対する申立てではない催告がその前にあったからといって、そこから1年と言っているわけではないですね。
○山上企画官 例えば、時効完成直前になって、相手方に対して催告をし、その後で、いろいろと話合いといいますか、当事者間で交渉している過程で、ADRという解決手段を使って、第三者に入ってもらって紛争解決を試みようという合意ができたというような場合においても、適用がされ得るようにという判断の下にB´案を構成しています。
○綿引委員 そうすると、時効完成前にまず普通の催告をした上で、時効完成前にADRに申立てをしたというときは、どこから1年なのですか。私はADRの申立てからの1年だと思ったのですけれども、違うのですか。
○山上企画官 一般的にいずれも催告であることには変わりないといいますか、ADR機関の申立てが相手方に到達したという前提で考えれば、いずれも催告であることには変わりはないわけです。一般的に催告については、繰り返して行った場合については、本来の時効完成時期に最も近接したものについて有効であるというふうに承知をいたしておりますので、その催告からという意味です。
○綿引委員 時効完成前にADRに申立てをすれば、そこを始期として1年間延ばそうというのが、この案というのでよろしいのですねという質問です。
○髙木委員 B´案がですか。それは違うのではないですか。
○綿引委員 多分、先ほど山上企画官はそういう説明をしたと思うのです。私はどっちでもいいのですけれども、みんなの理解が違うまま議論してはいけないから、その確認をしているのです。
○古口事務局次長 よろしいですか。まず催告をします。その後、時効の本来の完成時期が過ぎて、その後にADRに申し立てたと。その場合に、B案では救われないのです。だけどB´案なら救われる。催告をしたと、その後にADRに申立てをしたと、その後に本来の時効期間が来たと、その場合はADRの申立て時が催告とみなされて、それから1年と、そういうことです。
○綿引委員 そうですね。それを前提に議論しましょう。
○髙木委員 そうだけれども、本来の最初の催告時から、最初の催告による時効期間が満了するまでの間に合意を調達しろと言っているのですね。
○古口事務局次長 いや、B´案は6か月以内に調達しろと言っているのですね。
○髙木委員 申立てからですか。
○古口事務局次長 催告からです。
○高木委員 だから、催告がどっちも催告となって。
○綿引委員 こういうふうに言葉を整理してください。時効完成前のADRの申立ては、それは催告だという前提で、そのときはそこから1年なのですよね。当初の催告なら時効完成前だったけれども、ADRへの申立ては、時効完成後だったというときには、当初の催告を基準に、この1年を考えていこうというのがB´案だということで整理して議論しませんか。
多分山上さんはそう説明されたと思うのですけれども、今、髙木先生は違う理解で発言されたと思ったので、そこのところはちゃんと整理してやらないと、ごちゃごちゃになると思います。
○髙木委員 B案は別個独自のものだとおっしゃったのですけれども、B´案は接ぎ木型で説明されたのではなかったでしょうか。
○綿引委員 接ぎ木もできる。だけど時効完成前にADRへ申立てがあったら、それ自体に時効中断効が認められる。それが催告としての効力を持てば、時効中断効が認められるという、事務局が出しておられるのは、そういうお考えだと思います。ただ、B´案は接ぎ木も可能なようにしようということです。
○髙木委員 接ぎ木がプラスされたという理解でいいわけですか。
○綿引委員 プラスされた、それで括弧で催告を入れておられるのだと思います。
○青山座長 そういう理解で私も考えておりますので、そうだとすると、そんなに起算時が難しいことではないのではないかと思っていますけれども。
どうぞ、三木委員。
○三木委員 私は、B案、B´案、もともとベースが同じですから、基本的には広い意味のB案に賛成です。
ただ、いずれもどちらを採るにしても、部分的に賛成できないところがありまして、B案については⑪に書面要件が必要と書いていますが、これは論理必然ではないと思いますので、B案を採るのであれば、これから書面要件は外した方がいいと思います。B´案を採るのであれば、一番下の⑫の適格性というところ、これは私の意見としては外すべきだと思います。
先ほど山本委員が、適格性はなければ駄目だとおっしゃいましたが、私は全然そうは思いませんで、通常の催告が一方的な行為であるのに対して、この場合は両当事者が話合いをしましょうという、それがADR合意と呼ぶかどうかは別として、話合いをしましょうという姿勢になっており、かつ、それに第三者も加わっているというところで、十分に通常の催告より期間を延長する根拠はあろうかと思います。
先ほど、山本委員も髙木委員もおっしゃったように、弁護士であっても、主宰者として適格不十分であることがあり得るし、逆にそうではなくても十分であることがあり得るというのであれば、それは事前認定を取ったって、事前認定のときに、個別の事件の主宰者を一律に認定するわけではありませんから、認定を取ったって不適格なものが主宰者になることもあれば、そうではないこともあるわけで、これは単に不適当なことが行われる場合であっても目をつぶるというだけのシステムに過ぎないので、何も解決にはなっていないと思います。
それよりも何よりも、先ほど言いましたように、ADRというのが行われるのであればいいのであって、その主宰者がどういう資格を持っているかとか、どういう地位にあるかということは関係ない。そのなされたものがADRと呼べないものであれば、それはだめだというだけのことであって、どういう場合にADRと呼べないものであるかというのは、私はなかなか想定し難いですが、抽象論で言えば、ADRと呼べないものであれば駄目だと。しかし、ADRと呼べるものがなされたのであれば、それは時効中断効を付与していいということだろうと考えております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、関係してですか。
○山本委員 はい。
○青山座長 では、山本委員どうぞ。
○山本委員 今、三木委員が言われたのは、両当事者で真摯の合意があって、かつ、それに第三者が加わっているから民法上の催告よりは延長できるというふうに言われたわけですが、私が先ほど申し上げた趣旨は、両当事者の合意、両当事者の話合いということだけでは民法は全く催告期間を延長する事情としては考慮していないわけですから、それをここでの催告期間延長の理由とすることはできないと。
ここで根拠としているのは、あくまでも第三者が入るという点にポイントがあるのだというのが、私がずっとこれまで申し上げてきた認識でありまして、そうすると、第三者が誰でもいいのかという話になるということです。その点だけをちょっと述べさせていただきました。
○青山座長 どうぞ。
○三木委員 まず、第三者が入るというのが民法を乗り越える理由だという前提を取るにしても、その第三者は誰でもいい、つまり民法はもともと契約の当事者がどういう資格を持つかということは、いかなる契約であっても、基本的には限定していないわけで、二者契約と三者契約が違うのは、明らかに自明であるというのは第1点です。
第2点としては、もともと民法の特則を設けようというのですから、今の民法が二者合意だけでは延長しないと仮に言っているとしても、そこは基本的には障害にはならないと私は考えます。
○青山座長 今の議論に関係しますか。
○綿引委員 いえ、私は意見を申し上げようと思ったので。
○青山座長 よろしいですか、では綿引委員、意見をどうぞ。
○綿引委員 先ほど整理させていただいたようなB´案で考えますと、まず、時効中断の発生時点が請求の時というのは、おそらく民法の規定と合ってこないだろうと思います。ADRへの申立て自体が催告だとして、そこから1年ということを考えるとすると、やはり催告である以上、到達が必要になってくるので、その辺をもう少し考えないといけないだろうと思います。ここのところは民法の解釈との関係です。
それから、先ほどから議論になっている第三者に一定の適格性が必要かという議論なのですが、山本委員が言われることはよくわかるし、ただ言われているように、何でここでいきなり主宰者、弁護士というのが出てくるのかというのは、非常に私にも違和感があります。
もし、そういう形で何か主宰者を限定しなければいけないのであれば、むしろ私は次にある有償業務を行うADR提供者の義務というような形でお書きになっている業務方法、規程などが作成されているADRというような形での限定をすべきではないかと思います。
そういうような業務規程があるのであれば、業務規程に従ってきちんと話合いをしようという体制を整えているところであれば、内容的にも一定の信頼性を置けるというような推定が働くだろうというふうに考えられることと、そういうような業務規程が策定されておれば、みんなが出頭したことの確認ですとか、手続が打ち切られたことの確認ですとか、催告が到達したことの確認ですとか、そういう時効中断制度を運用していく上での要件の確認にも資すると思うからです。
ですから、B´案のような時効中断効を認めようというのなら、むしろ主宰者が弁護士だというようなことで、第三者を限定するのではなく、業務作成規程がきちんと作られている、どういう業務方法規程というふうな中身については、もう少し考えなければいけないと思いますが、そういう手続的な、きちんとしたものが確保されている主宰者というような限定の仕方の方がふさわしいだろうというふうに考えております。
以上です。
○青山座長 では、原委員どうぞ。
○原委員 綿引委員に先に発言していただいてよかったというふうに思っております。私も同様に⑫については考えておりましたので、A案とB案とB´案を並べたときに、やはりA案はすごくすっきりしているのですけれども、最後の公的機関による認定のところが、私としてはあまり、これでどうかというふうに、今、考えていたので、どちらかというと、B案、B´案というところを前回までも発言をしておりました。
ただ、B案にしても、では⑫のところがまるで何もなしかというと、やはりここも少し不安感というのでしょうか、不安定感というのを感じていましたので、御苦労なさってB´案のところに書かれた裁判所による確認ということで、主宰者限定を書かれたかと思うのですが、やはり弁護士限定というところはどうなのかなというふうに思っていて、私も綿引委員がおっしゃられるように、その機関で適正に仕組みが作られて、ADRが進行していったということがわかれば、そちらの要件の方が妥当ではないかというふうに考えております。
もう一つなのですが、B´案になったときに、書面性の要否のところが不要というふうになっているのですけれども、ここが消費者からすると、どこかの段階で、契約ですから、書面性というのは要求したいというふうに思っておりまして、この書き方は、⑧⑨を見ると、請求時には不要というふうになっていますけれども、その後、満了時までにおいては、この合意を取ることが必要というふうに書かれていて、ここの必要という段階では書面性は要求されるというふうに思ってよろしいのでしょうか。何か最後まで書面性がないということは、非常に不安定だというふうに感じております。
以上です。
○青山座長 最後の質問をちょっと。
○小林参事官 最後の点につきましては、合意の調達のタイミングが後ろに倒れるということでございまして、合意の形自体については、先ほどの御説明がそのまま当てはまりますので、B´案では不要というふうに考えています。
ただ、それでは何もないのかということについて言えば、これは合意の存在は証明しなければいけないので、現実的には、出てきたこと、あるいはそれが書面に記録されていることというようなことが方法としては使われるのだとは思いますけれども、ただ、合意の書面をもって証明しなければいけないということまでは要求しなくていいのではないかという考え方です。
○原委員 そうすると、やはり条文の書き方でどのようにされるかというところにもなるのかなというふうにも思うのですけれども、最初の催告の請求のときの利用だけであれば、何とかなるのですけれども、最後まで不要というところでは、私はもう一つ工夫をしていただきたいというふうに考えております。
○青山座長 ほかに、どうぞ。
○廣田委員 私の案とどれぐらい似てきたかということが一つあると思うのですが、私が直した案についてはくどくど説明しませんが、私は、やはり最長1年という催告期間の延長というのが実務としては非常にやりにくいという感じがあるのです。いつもそれを計算しなければいけないという状況で、それが引っ掛ってくると大変動きにくいということです。これは私だけの意見ではなくて、実は、いろいろ私の周りにいる、実務をやっている我々の仲間たちに相談してきたのです。そういう意味で、これは大変やりにくいという意見を聞いてきております。
そうだとすれば、綿引委員がおっしゃったように、いろんな要件だとか、そういったことも考え、一応中断を認めて、一定の要件があったら、もうこれは駄目だといって、中断効そのものを消してしまうという方が端的でいいと思っています。綿引委員がおっしゃったような趣旨で、もし規程とか、そういうものを作ったとしても、これもまた非常に見えにくいので、これらを含めて、相手方がこれは駄目だ、これは自分は乗らないというとき、もうそれで時効を消してしまうということで2号というのを入れたのです。
それから、前々から三木委員からおっしゃっていたように、当事者に和解を試みる意思も何もないのにいいのかという問題がありますから、それを1号に入れて、ないときには失効させるということにして、1号と2号を従来の意見を踏まえて加えたのです。それで、そうした方が端的でわかりいいし、条文も書きやすいということがあって、こういう案を書いたので、かなり似てきたと思うのですけれども、その辺りが最長1年でなく、中断にしてもう一つ吹っ切って、すっきりした形にしたいというのが私の考えです。
○青山座長 どうもありがとうございました。
では、龍井委員どうぞ。
○龍井委員 もともとA案というのは、個別労働紛争型から来ていることからもわかりますように、都道府県労働局というか、更に敢えてお墨付きを与える必要のないところがやることについての特例ということだったので、A案を採るとすれば、当然の帰結として何らかのお墨付きが要るということになると思うのです。
皆さん方御指摘のように、では実務上どういう認定基準で、あるいは一度認定したものをどういうふうに管理していくかというのは、とても大変な問題で、この辺はまだ課題は大きいと私も思います。
ただ、問題はB案、B´案でいったときに、当初から申し上げていますように、法律ができることによって、どういうふうに活性化していくかというイメージを持った場合に、法律のスキームそのものの整合性も去ることながら、それが与える法的効果といいますか、何か起きるかということを考えると、ここで議論されているように、性善説に立っているうちはいいのかもしれませんが、むしろ、私どもが一番懸念していますのは、最近のいろんなトラブルの増発を見るにつけ、いわゆる示談屋、あるいは事件屋というタイプの人とか、つまりここであらかじめ排除が、暴力団関係ということだけではなくて、今、そういうものがかなり具体的に弁護士法72条との関係なんかでも取り沙汰されていますように、やはりそれが雨後のタケノコのように非常に増えてくることを含めて活性化というふうに見るのかどうなのかということが、実は一番懸念しています。
そういう意味でいうと、やはり今日の段階で、もしもこのスキームでやるとすれば、やはりB´案の最後の⑫にも関わってくるのですが、何がしかの要件設定をするということの合意がない限りは、つまり手続論だけでいった場合に、いくら合意とはいえ、そういう形を取りながらもトラブルというのはいっぱい多発しているわけなので、多重債務者の問題なんかもそうだと思います。その辺の懸念は、残念ながら払拭されていないと思います。 そういう意味では、今日の段階がどう位置づけられるかによるのですけれども、今日の皆さん方の御議論を伺った限りでは、やはりこれを今回の基本法に盛り込むこと自身がちょっと難しいかなというのが率直な感想でございます。
ですから、基本法のイメージ、当初から申し上げているように、法制化のイメージを基本法で見るのか、促進法で見るのかということがあるのですが、このスキームでやることについては、ちょっと難しいのではないかというのが率直な感想でございます。
○青山座長 このスキームというのは。
○龍井委員 B案、B´案を含めてです。
○青山座長 わかりました。ほかに御意見はいかがでしょうか。
どうぞ、佐成委員。
○佐成委員 結論だけ一言。私は、B´案が良いと思います。ただ、三木委員と同意見で、できれば⑫の裁判所による確認というのは外していただきたいのですが、法制的に持たないということであれば、受入れは可能かなと思います。
以上です。
○青山座長 わかりました。どうぞ三木委員。
○三木委員 先ほどの意見を前提として、今の御意見と近いですけれども、⑫の点について、完全に⑫の問題をすべて外してしまって、法制的に持たないということであれば、先ほど綿引委員がおっしゃったようなスキームでも、私は導入する意義はあると思います。
更にそれで駄目ということは、私個人的には思いませんけれども、それでも駄目ということであれば、更に弁護士と共同という言い方、または「(=弁護士又は弁護士と共同)」というのがいいかどうかは別として、何かそういった資格者との連携というものを望みはしませんけれども、それでも導入する方に賛成です。
それから、記録の関係だけですから、拘ることもないかと思いますが、先程龍井委員がおっしゃったことについては、トラブルが発生しているというのは、ADRとの関係で発生しているという実態があるという趣旨なのかどうか。それから、どの案を導入しても問題が起きるというのは、時効中断との関係で起きるという趣旨なのか、時効中断というのは、新たな権利を付与するわけではなくて、単に権利の行使期間が延びるだけですから、どういう意味でおっしゃっているのか。
つまり、ADRについて、私自身は、そんなに悪い実態は今まで歴史的にないと思っておりますのに、否定的なイメージを植え付けられるようなことがあっては困るという意識がありますので、ちょっと確認しておきたいと思います。
○龍井委員 全く同感です。ですから、ここの法的効果で申し上げたように、そういういくつかのトラブルが現状で起きていることが、今回のこれを含めて、全体のADR基本法というところで、結局そこでどういうものがはばたいてくるだろうかというイメージをしたときに、むしろ我々が望まないものが増えてくることが想定されるのではないかと。そのときにこの要件も問題も密接に関係があるのではないかという懸念です。ですから、そうなるということを断定しているのではありません。
○青山座長 どうぞ。
○山本委員 今、三木委員がおっしゃられて、私も綿引委員の先ほどの御提案は非常に魅力的な提案だというふうに思いました。
ただ、私自身が事前確認ということを前から申し上げているのは、それで裁判所は非常に大変、つまり、業務規程でこういう規程を作成すべきだと、それで作成していると、それが全然守られなかったら、それはやはり作成していることにはならないような気もするのですね。終了手続はこうしますと書いてあると、しかし、その機関の実態としては、全然そんなことは守られていないと、それでいいのですかといったときに、やはりそれでは駄目だということに私はなるような気がして、そうすると、ある程度その機関の運営の実態とか、それを裁判所が当事者間で争われた時効中断があったかどうかとか争われて、いや、規程には書いているけれども、そんなことはされていませんなんていう主張が出てきたときに、事実認定をせざるを得なくなるのではなかろうかと。
それで、果たして裁判所の方が持つのかなというのが、それであれば事前に認定した方が権利関係も安定するし、円滑に進むのではないかというのが、私の見込みだったのですが、ちょっとそこの辺り、もし綿引委員の方でお答えいただければ。
○綿引委員 私の解釈としては、ちゃんと到達が証明されなければいけない、呼び出しの送達が証明されなければいけない、それから終わったときも証明されなければいけない、それから出頭してきたことが証明されなければADR合意ができたとも言えない。
ということになると、その要件が立証できなくなると思うのです。業務規程どおりにやっていないとすると、その要件が立証できなくなる。要するに、要件がきちんと立証できるようなADRでやってくださいと言っているのと、表裏になるのではないかなというのが、私の基本的な発想なのです。
そういう業務規程を作って、現にそういうふうにきちんとやっていてくれれば要件も立証できるし、主宰者としての安定性も確保されるのではないかということで、ここでB´案で考えている要件との関係でもそういう業務規程を作っているということが、要件を立証できるADRですよということと表裏になるので、いいのではないかなという基本発想なのです。
それなら裁判所もあまり困らないのではないかと。要は書面もないところで出頭してきたかどうかを審理しろとか言われると非常に困るのですけれども、それは御心配どおりなのです。それで、私が申し上げた適格性要件は、できるだけそういう立証手段がきちんと確保されているようなADRと、ある意味ではそういうことを言っていることになるということで、先程申し上げたつもりです。すべてがうまくいくかどうかはわかりませんが。
○青山座長 まだ、御意見をいただいていない方がいらっしゃいますけれども、もしあればどうぞ。
○安藤委員 私は一応、基本的にはB´案でいいかなと思っているのです。
ただ、その中で実を言いますと、②のところですか、中断効の発生時点、申立て受理をしたときという形で考えていたのですが、そうすると受理をするというのはたった1回で終わってしまうわけなのです。だったら、請求のとき、催告のとき、これを使った方がいいかなと思っております。
それから④の最長1年というのは、ちょっと疑問を持っております。これはA案の「なし」という方がいいのではないかなと。何で1年という期限を切るのかなというところに疑問がありますし、1年ですとか、6か月という形で切るということは、問題を放置するから期限内にやりなさいよということであって、ADRで一生懸命解決しようよという行動があるにもかかわらず、ここで1年というような切り方をするのは、「もたもたするな、早くやれよ」というような、ある意味では杜撰な行動を起こしなさいというような意味合いもあるのかなというような感じがしますので、これはA案の「なし」という方へ賛成いたします。
それから、⑧⑨の問題につきましては、時効の満了時において必要という、この「必要」の内容がもうちょっとはっきりわかると。先ほど、綿引委員が言われたように、外部からはっきりわかるようなものを揃えておけばよろしいと、こういうような形でもって、両者の合意をしっかり取りなさいだとか、そういうような形で必要というのであれば、ちょっと考えなければいけないなと思っております。
それから、⑫で主宰者を限定までは認めますが、括弧以下はちょっと認められない。あくまでも、弁護士または弁護士と共同とは言いながら、弁護士より優れた資格を持たれている方というのはいっぱいいるはずなのです。
ですから、これは裁判所による確認で主宰者を限定としてあるのであって、この括弧書きは不要かなと思っております。
○青山座長 ほかによろしゅうございますか。
どうぞ、平山委員。
○平山委員 細かなことは、難しくてわからないのですけれども、全体のお話を聞いていてですね、ある一つの方向が出てきているのではないのかなと、その中で私はA案がいいのかなというような気がいたします。
これは、前から3月ぐらいには基本法をつくりたいという大きな前提があったと思います。
今日のお話を聞いていても、いつもそうなのですけれども、かなり細かなところで、この話がこじれるということはないのですけれども議論がある。もうこれは2年もやっていますので、そろそろ結論が出るのではないかなと。
それで私たちは、例えば、大きな実験なんかやっていますと、100 個ぐらい数値が出てくるわけですけれども、その中で上と下の15%ぐらいカットしてですね、真ん中の70%ぐらいで平均値を出そうなんてことは工学的にはよくやる手法なのです。
もうこういったような段階に来て、それぞれ大きな間違いはないのであって、細かな事が議論されていますので、できればそろそろ座長が大きな方向でも出されて、それに対してまとめていったらいいのではないのかなというような気がいたします。
以上でございます。
○青山座長 どうもありがとうございます。そういう御注文をいただきました。時間の関係もありますので、それでは次の72条の関係、資料27-2の方に入らせていただきたいと思います。
この資料のような義務を設けて、参入段階でのADR機関に72条の例外を設けることの代償といいますか、担保措置と併せて参入後の担保措置を考える、この考え方について御意見を賜わりたいと思います。30分ぐらいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○山本委員 質問させていただいてよろしいですか。
○青山座長 どうぞ。
○山本委員 先ほどちょっと、私が申し上げたこととも関係するのですが、業務方法規程の作成義務については、先ほどのお話でいいますと、中身、内容には踏み込まないで、項目だけを定めるというお話だったわけですけれども、一応作っているのだけれども、全然やっていないというのでもいいのでしょうか。つまり、実施あるいは運用についても全く審査しないという前提でよろしいのかということをお伺いしたいと思います。
○小林参事官 基本的な考え方としては、中身は見ない、現実的にも見られないだろうという考え方であります。ただ甚だしい場合は虚偽公表ということはあり得るかもしれません。事実関係などについては、事実と違っていれば、それは虚偽公表になりますけれども。
○山本委員 要するに、この虚偽公表というのは、作成した業務規程と公表したものが違うという意味ではないのですか。
○小林参事官 そうです。
○山本委員 だから、今、私の申し上げことは、作成はしているのだけれども、全然それと違ったことばかりやっているという場合は、しかし作成はしているわけですから、公表しているので、虚偽公表には当たらないような気がするのですが。
○小林参事官 ただ、事実の方については、事実と違うことを公表すれば虚偽公表になるわけです。
○山本委員 この公表すべきというのは。
○小林参事官 いや、両方入っております。ただ、その限りでございますから、先生がおっしゃっているようなことについては、見られないだろうということであります。
○山本委員 わかりました。
○廣田委員 私も質問なのですけれども。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 これはやはりアドホックも同じなのでしょうね。アドホックでも、例えば弁護士ですけれども、アドホックをやる仕事は絶えずあるわけです。その場合でも一々作らなければいけないのか。また、外国人がアドホックをやる場合でも、これを一々要求するのかどうかということが一つです。つまり、私は何を言いたいかというと、全般的に先程の時効のことでも、今回の場合でもそうですが、アドホックというのが非常に念頭から落ちていると思うのです。それが1つです。
それから、今、山本委員の質問と同じようなことなのですが、この罰則の構成要件がわからないのです。中身を審議しない、虚偽かどうかも罰則の対象とならないとなれば、一種の行政罰みたいなものなのですかね。その辺の罰則の意味が、私はちょっと理解できないのです。そこのところを一つ明らかにしてほしいと思うのです。
○小林参事官 アドホックという意味が、いつも混乱してしまうのですが、業でないケース、これは考えておりません。
ただ、個人で行うケースについては、やはりこの考え方でいけば必要ではないかというふうに考えています。
ただ、弁護士さんをどう扱うかというのは、もともとこの発想は72条との関係でありますので、それはいろいろな考え方があり得るのではないかというふうに考えております。
他方、外国人につきましては、特段扱いを異にする理由はないのではないかというふうに考えております。
それから、中身に踏み込まないという段階でどこまで罰則がかけられるかということになりますと、基本的な考え方としては、むしろその程度のものとしての扱いというか、行政罰的なものに近いかもしれないというふうに考えております。
○青山座長 それでは、佐成委員から先に。
○佐成委員 この「有償で業務を行う」という適用範囲なのですけれども、これは当然利用者から対価を取得するというような趣旨だろうと思うのですが、両方からもらうという場合と、一方からもらう場合、あるいは形の上ではもらっていないように見えるけれども、実際上は何らかの償いを受けているというような場合も含めて、この「有償で業務を行う」という範囲になるのか、それとも両当事者から利用料という形で定められた利用料をもらっているものだけを対象にしているという趣旨なのか、ちょっとそこら辺を確認したいと思います。
○小林参事官 通常、両当事者から利用料といいますか、対価をもらっているケースを想定しています。
それ以外のケースにどこまで広げるかということについては、今、特に現時点で定見があるわけではございません。ただ、発想としては、72条で懸念しているような好ましからざる事態が生じる危険が高いものについて、その限りにおいて義務化していったらどうかという基本的な考え方をしているので、その具体的な範囲は、先ほど弁護士さんの問題を挙げましたけれども、そこはまだいろいろ余地があると思っております。
○青山座長 どうぞ三木委員。
○三木委員 細かいというか、技術的なところですけれども、公表というのはどういうことをすれば公表ということになるとお考えなのでしょうか。
○小林参事官 これもいろんな考え方があると思いますが、1つの例として申し上げれば、事業所、事務所を設けている場合には、店頭といいますか、そこに公衆にわかるように示すと。あるいはインターネットを使って業務を行っているケースについては、そういったものが自動送信されるというようなこと。こういったことを基本に考えております。
○三木委員 例えば、ホームページに書いて、見に来た人はわかるけれども、ADRの側から誰かに送るわけではなくて、ADRのホームページに掲げる、それは公表といってよろしいのでしょうか。
○小林参事官 それでは不十分かもしれません。先ほど申し上げたように、アクセスすれば自動的にいくような形になっていないとだめかもしれません。
○三木委員 アクセスすれば、勿論見られます。
○小林参事官 ただ、ホームページというのが、業務と関係なくホームページを作っていても、そもそもその存在がわからないわけですね。
○三木委員 それは駄目なわけですか。ホームページを作って、そこに載せているというのでは駄目だというような理解でよろしいのでしょうか。
○小林参事官 駄目だと今断言しているわけではなくて、それでは足りないことがあるかもしれないということです。
○三木委員 その場合、付加的に何をすればよろしいのでしょうか。
○小林参事官 例えば、業者のところにアクセスをしてきたときに、それが自動的に送り返されるというようなこと。
○三木委員 アクセスすれば送り返されると思いますけれども、送り返されるというか、送らなくても見られるわけですから、アクセスしてきた段階で、もう既に目的は達していると思いますけれども、アクセスしてくるかどうかは、その人がしてこなければわからないという状態の場合に、公表といっていいのですかという単純な質問です。
○青山座長 アクセスというのは、ホームページにアクセスという意味ではなくてではないですか。
○小林参事官 ええ、それを申し上げたかったのですけれども。
○三木委員 ホームページ以外で、電話でもアクセスしてくれば、そのホームページありますと答えるでしょうから、それは何かしてくれば、それがホームページであろうが電話であろうが口頭であろうが、それは何か見られる状態が作れると思いますけれども。
しかし、そうしてくるまではホームページ上にあるという状態はどうなのでしょうかという単純な質問です。
○髙木委員 すべての人がホームページを見るわけではないからということなのでしょうか。
○三木委員 それもありますけれども、そもそも見ようと思わないというか、見ようというための情報がないです。
○小林参事官 今、○×を申し上げる定見はないですけれども。
○三木委員 つまりは、この例に伺っているのは、この公表義務というのが、どの程度重い義務になるのかがよくわからないので、伺っているということです。
○小林参事官 イメージで言えば、先ほど申し上げたようなことなので、何か非常に過大なものを想定しているわけではないです。
○三木委員 そうすると、今、直接お答えがなかったけれども、大体ホームページに公表ぐらいすればいいというようなイメージなのでしょうか。
○小林参事官 そう言われるとそれだけでは足りないかもしれませんが、ただ、それとそんなにかけ離れていることを考えているわけではないということです。
○三木委員 ちょっと意味がわからないのですけれども。
○小林参事官 官報に公表しなければいけないとか、そういうようなことまで考えているわけではないということです。
○青山座長 どうぞ。髙木委員の方が先でしたね。
○髙木委員 質問ですが、上の箱と下の箱がリンクしているかどうかということを、ちょっとお尋ねしたいと思います。具体的な質問としては、下に書いてある「有償で業務を行うADR提供者の義務」として、①②③があって、それに違反したときはADR法による罰則と、こう書いてあるのですけれども、例えば、この罰則を受けた人は上の箱でいう不適格者に該当するのかどうかということです。
2つ目の質問は、下の箱のADR法による罰則なのですが、これが先ほど出ている個人で行う場合は、直ちに個人が罰則ということになるのですけれども、ADR機関のときには、機関の中には法人と法人でない人といると思うのですけれども、誰が罰則を受けるのか、両罰規定みたいなこともあるのかなということをちょっと知りたいと思います。
そこの問題ですが、例えば弁護士会などというのは会長がいますけれども、実際にADRをやっているのは仲裁センターという中にある組織ですけれども、一応それなりの組織ですけれども、そういうものを念頭に置いたときには、誰がこの義務違反に問われるのかなということをお尋ねしたい。
○小林参事官 まず、上と下のリンクの問題でありますけれども、基本的には参入時のルールと参入後のルールは切り離して考えております。大きな目的は同じでございますが、ツールとしてはかなり考え方の違うものとして位置づけをしております。
ただ、今、お話にありましたように、下の方で罰則を受けた者が上の方から排除されるということは、可能性としては否定しているわけではありません。ただ、それに主眼があるというわけではないということでございます。
誰が罰則を受けるかという問題は、これもいろいろ考え方はあると思いますが、法人で両罰規定をかけるということもあり得るでしょうし、法人でないケースも含めて代表者に科料などを科すということも考えられるのではないかというふうに思っております。
○青山座長 原委員、すみません、お待たせいたしました。
○原委員 ADRの健全性確保ということでいろいろと考えていただいて、加えていただいたというところは評価をしたいというふうに思っております。ただ、やはりいくつか確認をしたいというか、今まで出てきている話なのですけれども、私自身はちょっと実際の場面から見てというところがあるのですが、1つは佐成委員から出ました有償という部分なのですが、例えばこれは今、言った金融機関の事業体が設けているものの中とか、PLセンターでは有償ではない、例えば消費者のところを無料にしているというようなADRも存在をしておりまして、そういった業界型のADRなのですけれども、消費者側は無料みたいなものですね。こういう辺りがどのように整理されてくるのかという、当然範囲に入れていただきたいと思っていますので、工夫をしていただけたらと思います。
「公表」という言葉なのですが、「公表」は消費者とか利用者から見ると、一番簡単な開示方法というのでしょうか、一番軽い開示の仕方というふうに思っておりまして、例えば、個人情報保護法の検討をするときにも、「公表」でいいというところがかなり問題になって、実際には店頭に掲げられているとか、ホームページにアクセスするとホームページ上に書いているというところでいいということが公表の中身だということなので、利用者からするとそれだけでいいのかなというようなことは大変思っております。
金融商品販売法の中でも簡易報酬の策定・公表ということが条文として入っているのですが、この公表も店頭掲示とホームぺージ上での情報提供でいいということなので、この辺りもそれでいいのかということはかなり問題にされてきている言葉なので、もう少し吟味をしていただけたらと思います。
罰則の部分なのですが、先ほど山本委員がおっしゃられたように、実際にどういうふうにやっているのかどうかというのが、どうやって見るのかというような話があって、確かにそういうことを考えると、そこまできちんと見ようと思うと、事前確認と同じようなところになっていくような感じもするのですが、実際には例えば、金融関係のADRなんかも、実際に使ってみると言っていることと違うではないかというような話は、これは山本委員も御一緒に今の金融庁の中で金融トラブル連絡調整協議会の中でも、そういった案件と言うのでしょうか、具体的な指摘ができるようなものもありまして、使ってみると違うではないかというような場面が出てくるという、それを丹念に拾い上げていくようなことができればというふうな感じはしております。そうすると罰則のところにも結び付くのではないかと。
今、内閣府で公益通報保護法制定の議論をしておりまして、公益通報の対象要件を罰則を持つ、罰を掲げている法律に絞るというところに目的がなりそうなのですね。そうすると、ここに行政罰という形であれ、入っていれば、こういった公益通報のところでも一応、網は少しかけられてくるのかなというふうな感じは思っております。もう少し言葉の吟味と、実際を近づけていく努力をお願いしたいとというふうに思っております。
以上です。
○青山座長 事務局の方から何か答えなくてよろしいですか。
○小林参事官 有償の中身は、先ほど申し上げたようにいろいろなケースがあり得ると思います。利用者から取っていなくても内部的に補てんしている場合はどうするかというような問題もあるので、それは今後というふうに思っております。
公表の点については、少なくとも利用者が利用する前には、きちんとその内容がわかるというのが最低条件であって、後はそれにどれだけプラスアルファしていくのかということだと思うので、そこはまだ工夫の余地があると思います。
実効性の問題でありますけれども、これは基本的にはやはり、ここに示しましたように参入時のルールと参入後のルールが相互補完して、全体として、健全性を図りながら多様性を活かしていくということなものですから、それぞれ一方だけで完璧を期せということになると、これはもう72条の参入の規制の方もがちがちになってしまいますし、あるいは参入後のルールの方ががちがちになってしまうということなので、ここでは一つのバランスを取る考え方として、両方で補完していくという考え方はどうかと。中身についてまで見ていくということになれば、これは事前確認になってしまうので、事前確認にならないという範囲内で考えていくとすれば、少なくとも「情報開示をして、市場による選択に委ねる」というのが単なる観念論ではなくて、先ほど原委員がおっしゃったような、現実味のあるツールとして使えるものとなるよう、それに足るだけの情報をきちんと提供することだけはルールとしてきちんと決めるということを考えてつくったものでありますので、そういうふうに御理解いただければと思います。
○青山座長 廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 私は基本的にADRというのは、規制だとか罰則に馴染まないと思うのです。こういうものをいくら規制してもいくら罰則を設けても実効性がないですね。そういうものは気休めみたいなものなので、問題は中身を良くしなければいけないということなので、何かそういう罰則を持ったり規制を持ったりすれば、ADRがよくなると思えば、私はそうはならないというふうに見ております。
ですから、そういう観点からすると、この上の方の四角は弁護士法72条の適用除外という点では、規制緩和になるように見えますけれども、逆にあまり弁護士を頼りにしますと、弁護士の物理的限界がADRの限界を決めてしまいますので、現在より規制が厳しいというようなことになります。私はそれを避けたいと思っておるわけです。
下の方は、私はちょっとよくわからないところがあるのですが、どういう形のものになるかわかりませんけれども、要するに今、原委員の話をずっと聞いていますと、やはり個別的な事件について、いいとか悪いとかを一つずつ判断する。あるいはもうちょっと大きくしても、ADR機関がいいとか悪いとかいう問題を論じるという格好になりますけれども、これは個々のADR機関なり、事件の問題であって、今、議論しているのはADR基本法の基本的な姿勢を決めているわけです。当然、紛争解決というのは不満な人も満足な人もいるわけですので、紛争解決に罰則を用いるというのは、あたかも裁判官のやっていることが気に入らなければ罰則を設けるとか、そんな話になるので、それでは裁判と並ぶ魅力的な選択肢にしようというADRの基本的な、この検討会の姿勢に反してくるのではないかと私は思っております。私はやはり、この議論は、「角を矯めて牛を殺す」というようなことにならないようにしたいと思っていますので、私は罰則というのはあっても、こんなものは役に立たないと思っています。これは消したいと思っております。
○原委員 ちょっとよろしいですか、誤解があるようなので。私が申し上げたのは、先ほどは個々の事例の紛争の案件ではなくて、例えば、金融のADRで一つの問題になっているのは、事業者がテーブルに着くといふうな規定を設けているのに、テーブルに着かないということが今、問題になっているということを具体的には考えて発言をしたということなので、個々の案件ということではありません。
○廣田委員 ちょっと待って。ですから、今の例でいくと、それを罰則を設けたからテーブルに着くというものでもないと思うのです。それで着いたからといって、きちんとした話ができるというものではないので。
それは個々のADR機関の制度設計の問題とか、長い時間をかけて信頼を獲得していかなければいけない問題で、それを規制とか罰則で解決しようとすると、それは本末転倒になるということを、私は言いたいのですよ。
○青山座長 山本委員、どうぞ。
○山本委員 私自身は、前に申し上げたかと思いますが、基本的には上の段に書かれている括弧の、弁護士法72条の適用除外をするには十分ではなかろうかというふうに思っていました。
ただ、その下の段の括弧の中に書かれている、ADR提供者の義務、それ自体については、私は中身自体は相当なものだというふうに思っておりまして、前々から申し上げているとおり、その多様なADRが発展していくためには、基本的には市場、あるいは利用者による淘汰ということはなされる必要がある。それためには適格な情報が利用者に提供される必要があるし、問題があるADRがある場合には、その苦情に対して的確な対応がなされる必要があるということは、全くそのとおりだというふうに思っておりますので、ここに書かれてあること自体が、ある意味私は当然のことのような感じがしておりまして、そのこと自体はそんなに問題がないのかなと。
だから、この下の段の括弧を加えるということ自体について、私は特に問題があるというふうな感じは持っていません。ただ、先ほど、廣田委員がおっしゃられたように、罰則をもって担保するということにすれば、それは過料程度にとどまるのかもしれませんが、しかし、そういうことにならざるを得ないだろうというふうに思っておりまして、私自身はADR法全体のバランスといいますか、そういう観点から見ると、結局こういう形であれすると、非常に何か厳しい規制をする部分だけがクローズアップされていくのではなかろうかと。私自身の意見は勿論、非常に俗な言い方をすれば、「アメとムチ」があるとすれば、それはこういう形で適正なADRを確保するための手段というのも必要ですし、ちゃんとやっているADR機関については、それなりの法的効果を与えて、それを促進していくという形で全体のバランスが取れた法制になるのではないかというふうに考えておりまして、執行力なども認めるべきではなかろうかという意見をずっと申し上げてきたわけです。
そういう観点からすると、こういう形で罰則が入ると、何と言いましょうか、ムチの部分だけが強調されて、アメの部分は時効は結局、それはよくわかりませんが、催告程度にとどまり、執行力はないという話で全体の法制のバランスが取れているのだろうかという部分は、個人的にはややどうかなと思っておりますが、ここに書かれている内容自体は、しかし私は賛成できるものというふうに思っています。
○青山座長 今日の資料の参入後のルールを取り込むことの要否ということを中心に、ちょっとお話をいただきたいと思います。
龍井委員、どうぞ。
○龍井委員 今のお話、参入後というスキームになっているのですが、この中身を見る限り、本当にこれはつまり事後のとこなのかなと。つまり、一番下の色塗ってあるところの、つまり作成義務の中身ですね。先ほどから話題になっていますように、運用上、どうなっているかということであるとすれば、それは事後。だけど、作成ということであれば、これは本当に厳密な意味での事後チェックの話になるのかというと、ちょっとそのイメージが湧かないのですが、その辺を教えていただきたいのです。
もう一つは、義務と努力義務のところで、これも、もしも72条の特例扱いにするということの例外措置であるとすれば、このスキームかどうかは別にして、それに反すれば、それの特例事項は解除をやめますと。戻すと言いますか、そういうこと以上に、先程科料の話も出ましたけれども、あるいは今後そういうことがされないようにするというようなことも含めて、罰則のイメージをお持ちなのか。ちょっとそこをお伺いしたいです。
○小林参事官 事後かどうかということの御質問の方については、これは参入自体を禁止しているわけではないので、そういう意味では参入がされるが、ただ、参入した後はこういうルールに従ってくださいということですので、その限りにおいて事後ではないかというふうに思っております。
後の質問はそれと関連するのだと思うのですが、そういう意味で言うと、下の義務を果たしたから72条を解除するという構成にはしていないということであります。これもいろいろ御意見はあると思いますが、72条の例外にする要件としては、不適格者の排除と個々の法律事務への弁護士への関与ということを考えております。勿論、これは厳し過ぎるという意見もありますし、緩やか過ぎるという意見もあるでしょうけれども、適用除外の要件については、そう考えた上で、さらに事後的に何かなくてもいいのかということについて言えば、こういうルールを設定すべきではないかという考え方であります。
ただ、可能性としては、ここで罰則がかかれば、その者について、結果的に上の方で不適格者として排除されるということを否定しているわけではありません。ただ、基本的な考え方としては、参入後のルールだということです。
○龍井委員 その参入前と後の、私が理解できていないのかもしれませんけれども、ここに書かれていることは既に立上げの時点、あるいは既にこういうことを例外的な措置が得られるという、そこにわたる時点での情報開示ですね。
つまり、これは動いているものではなくて、スタティックな情報の開示ですよね。それはほとんど事前も事後も、私はあまり変わらないような気がしているのですけれども、そういう理解ではありませんか。
○小林参事官 事前、事後というのが言葉として適切ではないのかもしれませんが、要するにADRを行うことができるかできないかということ自体についての規制が参入時のルールになるわけです。その限りにおいては、これをやらないからと言ってADRができませんということを言っているわけではないという意味において、参入時のルールとは違うのではないかということです。
勿論、実際に事業を始めるときに、これを用意しているかどうかというのは別問題ですし、おそらくは、きちんと用意した上で事業が開始されるということが通例だと思いますが、理論的にはそれが用意されていないからといって事業を始められないわけではないという意味では事後ということです。
○青山座長 どうぞ。
○綿引委員 おそらく有償で業務としてADRをやるためには、業務報告規程を作っておかなければいけないし、公表していなければいけないという意味で、有償で業務でADRを行うという形で参入するための要件になっているのでありませんかということを、龍井委員は、多分先程から質問しておられるのだろうと思うのです。そういう趣旨ですよね。言っておられるのは。
○龍井委員 そうです。
○小林参事官 勿論そういうことを期待して、こういう制度を作っていますが、法律的に見て、それがないとそもそも業務を行っていけないか、端的に言うと72条の違反になりますかということになると、それはそういう設計にはなっていませんということを申し上げているわけです。
○綿引委員 72条との関係ではという意味でということですね。
○小林参事官 勿論、当然、そういうことをやっていただけるだろうということを期待しておりますし、そのための制度設計でもあります。
○青山座長 ほかに何か。
佐成委員、どうぞ。
○佐成委員 参入後のルールの採否という面に関してですが、先ほど、ちょっと質問したので意見を述べさせていただきます。この罰則が行政罰的なものだということを前提にしますと、非常に良好に機能されている善良なADR機関に対しては、多分、余分な規制強化の面が出てきて、逆に、悪質業者といいますか、新たに出てくる可能性がある、先ほど龍井委員がお話になったような懸念の材料ですけれども、それに対しては抑止効果はほとんどないのではないかと。
ですから、そういうようなものであれば、やはりこのような罰則による規制というのは入れない方が望ましいのではないかというのが、私の現時点での意見でございます。
○青山座長 三木委員、どうぞ。
○三木委員 今の佐成委員の意見に基本的に賛成です。先ほど、山本委員がおっしゃったように、一般的に情報が広く適切な範囲で開示されるべきだということ自体は、誰も争わない。ただ、それを罰則付きで入れるということ。それがしかも72条との関係で罰則を伴って、新たな制度として入るということが望ましいかどうかということになると、それは先ほど佐成委員もおっしゃいましたし、廣田委員もおっしゃったように、害はあって益はないという、害のある者にとっては生ぬるく、善良な者にとっては余計な足かせになるということになるのではないかと思います。
そもそも、こういうADR機関に一定の情報というか、一定のルールを作成する義務と情報を開示する義務を課し、それを罰則で担保しているという外国の立法例があるのかどうかを教えていただきたいと思います。
と言いますのは、上の四角に書かれていること。すなわち、これまで議論をされてきたことだけを取り出してみても、私が接触のあるアメリカ、ヨーロッパ、オセアニアの方々からは、これが弁護士法72条の緩和とは誰も思っていなくて、むしろ日本は弁護士法の規制を強化しようとしていると受け取っている人がほとんどです。
本来、72条の緩和という趣旨で始まったのが、次々といろんな要件が議論されてきて、結局、上の四角だけでも、私が知らないだけかもしれませんけれども、諸外国には例のないような、かなり規制色の強いスキームになっている。
そもそも、ADRは法律事務であるかどうか自体、議論があるところで、我が国の有力な法律学者の中にも法律事務ではないという人もいて、諸外国ではそういう議論も勿論、有力にあるところですから、そういった点も十分に議論されないままに規制的なスキームが次々と付加されていくということには国内、国外、双方の反応や実務を考えても懸念が多く、あまり賛成はできません。
○青山座長 ということは、下の方は要らないということですか。それとも、罰則は要らないという意味ですか。
○三木委員 罰則は要らないというか、罰則を外すと結局は下の枠の上に書いてある、従来議論された、一般的な情報提供の努力義務等に吸収されるのだろうと思います。
○青山座長 龍井委員、どうぞ。
○龍井委員 申し訳ありません、簡単に済ませます。今、御指摘のとおりで、私も先ほど懸念したようなことが、これでは排除されない。下の枠組みですね。これではそういうことが排除されないだろうという、お二人の委員の御意見と一緒で、私はむしろ、ここは今後の検討会でということになってしまうのですが、従前から申し上げていますように、マル適マーク的なものにどういうふうに吸収していくかということでは、もともと検討しておりましたけれども、ここでこれを付加することで何か実効性があるとは思えません。
ただし、何でもかんでもオープンにした上での淘汰ということにも、私は割と否定的でして、やはりそこでの犠牲はかなり大きいだろうと。それをなるべく少なくするという意味での、先ほど申し上げたスキームを今後検討していただきたいと思っておりますので、せめて今回は外した方が望ましいと思っています。
○青山座長 原委員、どうぞ。
○原委員 私も先ほど、こういうふうにしたら実効性が上がるということで、実際に実務を見ていくと見える部分があるので、審査ではなくて、そういうものでできるのではないかとか、公益通報保護法というツールを使うこともあるというふうな話をしたということで、この罰則を設けるかどうかについては、皆さんがおっしゃられているような感触というのは、やはり持っていて、それで置くべきかどうかというのは、今回突然出てきたので、その部分については持ち帰って検討をさせていただきたいというところにさせていただきたいと思います。
○青山座長 高木委員、どうぞ。
○髙木委員 この下の参入後のルール、これを取り入れることの適否についてだけなのですけれども、前回、全く何もなしで弁護士だけにADRの適格性の担保責任を押し付けていいのかと、こういうことを私は申し上げましたので、そういうこともあって取り入れられているのかなというふうに思います。
基本的にこれが最善だとは思いませんけれども、この検討会の中で市場の選択に任せるという方が多かったわけで、それに基づいてADR基本法をつくるとすれば、これは利用者が選択するために最低限必要なことで、当然の義務だと思います。
ただ、廣田先生のように構成要件的に問題があるところというのは結構あると思いますし、公表がどういう意味かということも含めて、検討しなければならないと思いますし、虚偽公表も山本先生から言われたように、何が虚偽公表に当たるのかというのも問題になるだろうし、すべてのことについて事実と違うと虚偽公表と言うのでは、善良なところも浮かばれないので、そこら辺も構成要件を決めるときには、例えば、重要な事項とか、そうすると何が重要な事項かという問題になるのかもしれませんけれども、そういう個々の検討をする必要があるとは思います。大きな方向としては、おおむね妥当と思っております。
○青山座長 ほかにいかがでしょう。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 私も、この参入時のルール、これは全く要らないものだなと思っているのです。参入後については、皆さん、もう一回スタートからちょっと考え直していただきたいのですが、啓蒙・普及、相談、紹介、これを全く外してしまって、これが検討されているわけなのですね。あくまでも、依頼者においてはADRの選択の自由があるわけですし、解除の自由もあるわけなのですよ。
ですから、それをあまりこういう形でやるというのは、どうかなというような気がしますので、できるだけ、これに関しては参入時のルールなんていうのは全廃してしまう。参入後のルールについても上の部分だけで十分ではないかなと。それこそ法的効果などを与えなければならないものは、士法の規定、規則等による個別法の方へ落とし込んで済ませるべきで、ADRの基本法としては、もっとおおらかな基本法ができていいのかなというふうに考えております。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
それでは、時間が限られておりますので、ここで今日の議論、あるいは更にこれまでの二十何回にわたる議論を少し振り返って、私なりの感想を述べさせていただきたいと思っております。
大きく分けて2つありますが、1つは、今日の御議論で時効中断効と弁護士法72条との関係について御議論いただきましたが、いずれについても一定程度議論が整理されてきたという感じは勿論、持っております。持っておりますが、まだ、法制的な面を始めとして、関係方面との調整が残っておりまして、その際にいろいろな問題が出てくると、まだ詰めなければならない問題が残っているというふうに思っております。
時効中断、弁護士法72条はそうですが、それ以外の点につきまして、これまでの議論を振り返ってみますと、まず事前確認制度というものの採用の是非等を巡って、あれだけの議論の対立といいますか、拡散があるわけでございまして、そういうことを見ますとADR基本法というようなものをつくる場合に、一番基本となるコンセプトといいますか、どのような手段でどのような姿を目指して、ADRの拡充、活性化を図っていくかという、法制の姿のその下にある基本的な考え方については、この中でもいろいろな意見がありますし、意見募集の結果についても様々な意見が開陳されているわけですね。それらを完全に集約するということは勿論できないと思っておりますし、そこまでは考えておりませんけれども、もう少しADRというものはこういう基本的な考え方でできたのだというところまでは是非、議論をしていきたいと。そこのところは、ちょっと非常に意見の対立が際立っております、時効の中断と72条との関係に議論がシフトしておりますので、もう少し根本的な議論をすべき時間というのが若干欲しいというのが、私の感じでございます。 そういう2つの感想を持っておりまして、したがって、平山委員の先ほどの御発言も勿論ありますし、私自身も常、今まで二十何回議論をやってきて、そろそろ集約しなくてはいけないというのは前から考えておりますけれども、今日までの議論で検討会として意見を整理してしまうということは、若干躊躇するところがあります。他の検討会では、例えば座長試案というようなものを出しているというところもありますけれども、それは意見が対立を極めて、そういうことでもしなければ打開ができないという状況であると、私自身は憶測しております。間違っているかもしれませんけれども。
しかし、ここでの議論は、私はいくつかの対立というのがありますけれども、意見を集約すれば集約できる、もう一歩のところまで来ていると思っておりますので、平山委員が先ほど言われました、座長が何か案を出して、上の15%、下の15%を切って、70%の中から大きな伏線を出せとおっしゃる気持ちもわからないわけではないのですが、それはもう少し待っていただきたいというのが私の感想でございます。
では、これからどうするかということでございますけれども、既に事務局の方から、1月のスケジュールをお伺いしていると思います。とりあえず、1月の下旬、具体的には29日の午前中の日程を聞いておりまして、1月29日の午前中であれば、これは可能であるということを事務局から報告を受けておりますが、私としては1月29日より前に、やはりこれだけの議論が集約しつつありますし、通常国会の時期も迫っておりますので、もし可能ならば、1月中旬ぐらいにもう一日入れられないだろうかと。それはこちらの方の準備も勿論あります。こちらの方でその間に関係方面との調整ということもありまして、もし出すとすれば、こういうことならばどういうふうになりそうであるというような見通しも含めて、次回の案を提出したいと思いますので、こちらの準備もありますけれども、それよりも何よりも、委員の各位は忙しいと思うのですね。29日というのもやっと調整して何とかなりそうだという御報告を受けているのに、その前の中旬はどうかというふうに私が言っても、なかなか日程が合わないかもしれません。これは事務局にお願いしまして、個別的に日程を調整していただいて、可能ならば中旬に開かせていただきたいというふうに思っておりますが、この点はいかがでしょうか。これはお諮りしたいと思います。29日はよろしいのでしょうね。
○小林参事官 いただいた日にちの中では、29日の午前中ならば可能ではないかと。勿論、無理をしていただいた方もおられるのですけれども、現時点では可能ということであります。
それ以外につきましても、座長からの御指示でありますので、個別に調整をさせていただければと思っております。
○青山座長 ここまできたところですから、何人かの方がやはり無理だということになれば、それはちょっとできないと思うのですね。例えば、お一人かお二人の都合が悪いということであれば、勘弁していただいて開催するということがあっても、3人、4人というようなことになると、これだけの人数の会議で3人、4人というのは非常に大きな数でございますので、ちょっとできないかなというふうに、私自身は個人的に思っておりますので、そんなことでちょっと調整を図らせていただきますが、どうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。
○廣田委員 ちょっといいですか。いつ頃、それが決まりそうですか。ちょっと日程がタイトなので、この日は無いというのを決めていただければありがたいのです。それも決まらないですか。
○小林参事官 ちょっと、こちらのスケジュールの関係もございますので、今、この時点では。
○廣田委員 いつ頃決まりそうですか。
○小林参事官 あるいは、この日はどうしても駄目だということを教えていただければ。
○廣田委員 それは一応、既に届け出ているので。
○小林参事官 バツにはなっているけれども、調整可能のところと、どうあっても無理だというところがあろうと思いますので、それは教えていただければと思います。
○廣田委員 それは結構です。いつ頃決まるのでしょうか。だいぶたくさん押さえているものですから、ほかのことも日程が入れられないので。
○小林参事官 御迷惑をおかけして恐縮でございますが、確定自体は年明けになると思います。
○廣田委員 年明けですね。わかりました。
○青山座長 申し訳ございません。こういう時期でございますので、どうぞ御勘弁いただきたいというふうに思います。
それでは、次回の日程でございますけれども、今、お話がありましたように、事務局から個別的に御都合をお伺いさせていただく。それまでには、こちらの方もさまざまな準備をしなければいけないというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。どうぞ。
○龍井委員 済みません、1点だけ。この間のお話では、法案提出の関係で、ある程度、日程がデッドラインがあるように伺っていたのですが、まとめることは勿論、是非やっていただきたいと思うのですが、いつまでということが逆にあれば、今のうちにお伺いしておいた方がいいと思うのですけれども。
○古口事務局次長 スケジュールですが、やはり1月中旬ぐらいを目処に基本的な方向についてはっきり合意して立案の方向が定まらないとなかなか難しいだろうと。そのこともありまして、29日になると、ちょっと遅いので、できれば1月中旬を目処に、日程設定もお願いできないかという趣旨を含んでおります。
○龍井委員 次回か29日がデッドラインだという認識でいいわけですね。
○古口事務局次長 はい。
○青山座長 よろしゅうございますでしょうか。
それでは、本日は年末で大変お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございました。大変御迷惑をかけておりますが、どうぞお許しいただきたいと思います。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。