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ADR検討会(第28回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年1月29日(木) 10:30~11:45

2 場 所
永田町合同庁舎共用第4会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官官

4 議 題
裁判外紛争解決手続(ADR)に関する基本的な法制について

5 配布資料
資料28-1 「総合的なADRの制度基盤の整備」に関する検討状況

6 議 事

 年末に開催された前回の検討会以降の状況について、事務局から配付資料に基づき説明がなされた後、議論が行われた。
 主なものは以下のとおりである(◎:座長、○:委員)。

◎ 事務局からも説明があったが、これまでの検討よりはADR法の枠組みについての選択肢を広げて、もう少し時間をかけて検討してはどうかと考える。当初は、平成15年の暮れまでには検討会としてどうにか考えをまとめられるだろうという希望的な考え方も持ってはいたが、基本的な考え方について検討会内やパブリック・コメントにおいて依然として差異があり、現段階での意見の集約は難しいのではないかと考えるに至った。ある制度が社会に定着するためには、①制度について理解が得られること、②共感されること、③制度の利用がなされること、④制度への参加が行われることの4段階を経るものと考えているが、ADRについては、最初の「制度についての理解」すら未だ十分に得られていないのではないかとも思う。にもかかわらず、検討会で拙速に決めて良いのかという悩みもあるので、もう少し時間をかけて検討していきたいと思う。

○ ADR法の枠組みについての選択肢を広げて、もう少し時間をかけて議論を継続するとの座長の意見を支持するが、むしろ、広げるべき選択肢の内容をどのようなものにするのかが重要である。

○ 検討会を継続することについては異論がないが、ただ漫然と選択肢を広げて議論することには強く反対する。まずは、ADRに法的効果を付与するか否かを議論すべきではないか。法的効果を付与するとした場合、現在までの流れを考えれば、事前確認制度を導入せずに時効中断効付与などの法的効果を付与することは法制的に困難というように受け止めたので、事前確認制度を導入できるのか否かを検討することになるとは思う。仮に、導入が無理なのであれば、基本的な方向性のみを謳った法律にするのか否かを議論することになろう。事務局においては、議論すべき論点を明確にした枠組みのようなものを御提示いただきたい。

○ 冒頭の座長の考え方に賛同する。 委員によってADRについての現状認識が違うので、いつまで経っても議論が平行線のまま収拾がつかない。特に、ADRの健全性の確保と弊害についての考え方が違うことがネックだ。ここは「制度について国民の理解を得ること」だけに目的を絞って検討を行うという選択肢も採用しうるのではないか。法的効果の付与の方法に固執しすぎるといつまで経っても議論がまとまらないのではないか。

○ 法的効果の付与に拘らずに、どの程度ADRを活用できるのかということから検討してはどうか。まずはADRを世間一般に普及することが重要なのではないか。

○ 今回の結論については尊重したい。論点を明確にすることが重要である。消費者や利用者にとっては、法的効果の付与の論点はADRの中ではごく一部の論点に過ぎないので、まずは基本法として充実させるためにはいかにすべきかという議論を行っていくべきではないか。

○ 今後の議論の進め方として、法的効果を付与するのであれば事前確認制度を本当に導入しなければならないのかについては、議論を継続させていくべきなのではないか。また、基本法的な部分のみを検討するという選択肢を否定するつもりはないが、司法制度改革審議会の意見では法的効果を含んだ提案を行っていると思われるため、この点について成案を得るための努力を継続していくべきではないか。また、法的効果のない法律を作ることが法制上可能なのか。国家の基本政策に関わるものについては法律事項のない基本法というスタイルも存在するが、ADRがそれに該当するのかどうかは疑問である。

○ 事前確認制度について、どのようにその制度を組み立てていくのかについての議論がまだなされていないので、一度、その中身を検討していくことが適当なのではないか。想定していたものとは異なる柔軟な制度ができるかも知れない。

○ まずは国民に理解されることを優先し、基本法を作っていこうという方法も一案である。いずれにしても、そろそろ議論を集約させるような方向で検討を行っていくべきではないか。

○ 時効中断効や執行力のような法的効果の付与の問題については、付与されれば必ず活性化するというものでもなく、いわゆるADRが裁判よりも劣ったものではないということを示すシンボルのようなものであり、一種のアナウンスメント効果を狙ったものと考える。現在、世界各国でADRの活性化を議論しているのは、裁判以外の道を模索するか否かという各国の国家的な政策判断に基づくものである。我々は、いかなる国家政策を背景としてADR法を作っていくのかといったことに関する議論が必要ではないか。法的効果を付与するとしても、その効果は大したものではなく、むしろ、ADRそのものが国民に認知されていないことが問題である。

○ ADR法を日本語でどのような名称の法律にするのかによって、各委員の見解の差異も縮まってくるのではないか。

○ 法的効果の付与の議論が事前確認制度の導入の議論に直結してなされることには違和感がある。

○ ADRの必要性については、我が国でも特に主として行政型ADRから発したものであるとしても、例えば、国土交通省の中央建設工事紛争審査会など、制度が立ち上がれば、それに則して裁判によらない紛争解決制度が構築されてきたという経緯からもわかるように、紛争が起こればすぐに事案を裁判所に持っていくということばかりではないのではないか。あまり、これまでの議論をマイナスまで戻すことがないようにすべきである。

 その後、座長より、検討会としては事務局における法案策定作業に資するよう、引き続き検討を行 っていきたい旨発言があり、また、事務局より、座長をはじめ委員の皆様には、約2年間にわたり総合的なADRの制度基盤の整備のために必要な方策について、精力的な御検討をいただいてきていることについて改めて御礼申し上げるとともに、事務局としても、これまでの皆様の御苦労が実るような形で、できるだけ早期に成案が得られるよう尽力していきたい旨発言があった。

 次回のADR検討会の日程については、事務局が検討を行うために一定の時間が必要であることから、追って連絡することとなった。

(以上)