○青山座長 それでは、ただいまから第29回「ADR検討会」を開会いたします。
本日は、1月末、1月29日でしたか、その検討会におきまして、その段階では意見の集約を見送りまして、もう少し選択肢を広げて議論を継続することとして以来、今日が初めての検討会、言わば二度目のフレッシュ・スタートでございます。
事務局では、この間、本検討会におけるこれまでの検討結果を十分精査した上で、裁判外の紛争解決手続の制度基盤の整備につきまして、できるだけ早期に法案提出に向けて鋭意検討を進めていきたいということを改めて考えていると伺っております。
この検討会といたしましても、そのような事務局の意向を踏まえまして、事務局の立法作業を的確にサポートするということを念頭に置いて、着実に議論を進めていきたいというふうに思います。皆様にもどうぞよろしくお願いしたいと思います。
まず、古口事務局次長からご挨拶をお願いいたします。
○古口事務局次長 新年度に入りまして、改めて御検討をお願いするに際しまして、推進本部事務局を代表しまして、一言ご挨拶申し上げます。推進本部事務局では、1月末の検討会におきまして、裁判外の紛争解決手続の制度基盤の整備に関して、選択肢を広げ、もう少し時間をかけて検討を継続するということの御了解をいただきまして、それ以来、これまでいろいろ検討を進めてまいりましたが、これまでの皆様の御苦労がきちんと実るような形で成案を得ることができるよう、関係方面とも調整をしながら、後ほど参事官より説明申し上げますとおり、改めて法制整備の方向性を検討してまいりました。
推進本部事務局といたしましては、当面6月までの検討会において、法案作成の基礎となる御議論をお願いした上で、その結果を踏まえ、できる限り早期に法案を提出できますよう、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
青山座長をはじめ、委員の皆様方には、極めて長期間にわたって御議論をお願いすることになり、誠に申し訳なく存じますが、引き続き法案策定に向けて御助力いただきますようお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
○青山座長 どうもありがとうございました。検討会の再開に当たりまして、私としても若干の考え方を述べさせていただきたいと思います。
これまでの検討会で、ADRを日本において拡充・活性化すべきであるということ。そのためにADRに関する何らかの法律を制定すべきであるということ。その法律には、基本理念だけではなく、でき得れば、時効の中断等の法的効果を盛り込むべきであるということについては大方の一致があったというふうに認識しております。
問題は、そのような法的効果を盛り込むための要件の定め方であったと思っております。全体を10合目の山に登るとすれば、私は9合目までは全員の一致があったと。ところが、最後の1割、最後のところが非常に重要な点であるので、なお意見が分かれていたということではないかというふうに思います。
私としても、そういう問題の重要性にかんがみまして、あえて多数決で決するということは今まで致しませんで、もう少し時間をかけて検討したいというふうに考えてきたわけでございます。
しかし、今、古口事務局次長からお話がありましたように、残された時間はあとわずかでございます。審議を再開するに当たって、私としては、次の3つのことを基本に考えたいというふうに思っております。
1つは、ADRというものに関する法律ができた場合に、関係のいろいろな方面に影響を及ぼすわけでございます。例えば、政府、地方公共団体とか、ADR機関とか、裁判所とか、利用者等いろいろな方面に影響を及ぼす効果を受けるわけでございますが、その中では何を一番大切にすべきかと言えば、言うまでもなく、これはADRを利用する利用者の利便性をまず中心に考えなければいけないのではないかというふうに思っております。第2点といたしまして、この検討会の審議の進め方でございますけれども、これまでの議論の蓄積を勿論生かせるところは十分に生かしたい、それは当然でございますが、この残された期間の中では、過度にそれに拘束されているということではなく、新たな視点も盛り込みながら、効率的な議論を進めたいというふうに思っております。
第3番目に、従いまして、各委員の皆様方におかれましても、それぞれの局面でいろいろな御意見はいただいてまいりました。そういう重みは十分私も感じておりますが、それはそれとして、現在の時点でベストとお考えになる考えを忌憚なく述べていただきたいというふうに思います。それが議論をより建設的にする所以であろうというふうに思います。
そして、意見の集約が図れない場合にはどうするかということでございますが、これはやはり最後は民主主義の原則にのっとって、意見の集約を図る以外にはないだろうというふうに考えております。
これが今日からフレッシュ・スタートするということについての私自身の考え方でございます。
それでは、私の今の意見について御意見も勿論あると思いますが、それは後からいろいろな御議論の中でお話しいただければと思います。
それでは、議事を進めてまいりたいと思います。
まず、裁判外の紛争解決に関する検討の方向性をどのように見定めるかという、もう一度基本に立ち返ったらどうかという点でございます。
この点に関しましては、最初に事務局から裁判外の紛争解決手続の現状や課題をどのように認識し、その課題に対処するためにどのような法制整備の選択肢があると認識しているかという点につきまして、これは資料の29-1と29-2に沿って説明をお願いしたいと思います。
また、それについていずれの考えを採るにしましても、具体的な法制整備の中身を議論しないことには判断が難しいという面があると思いますので、仮に29-2のようなイメージの下で法制整備を議論していくとした場合に、どのような論点があるのかということにつきまして、事務局の方は資料を用意していただいております。これが資料の29-3でございまして、主要な論点が整理されております。これについても説明を受けたいと思います。
それでは、小林参事官から、資料29-1、29-2、29-3について続けて御説明をお願いしたいと思います。
○小林参事官 それでは、御説明に入ります前に、前回の検討会から今回まで、かなり期間が空きましたことを改めましてお詫びを申し上げたいと思います。
振り返ってみますと、昨年秋以来の議論でございますけれども、先ほどお話が少しありましたように、幅広い形でADRに法的効果を付与すると、そういう方法がないかどうかということをいろいろ模索したわけでございます。
勿論、必要なプロセスであったというふうに考えておりますけれども、他方、他の制度との整合性の問題、あるいは弊害のおそれが否定し切れるかという問題も指摘がございました。
そういった問題点を回避しようとして、逆の面で言えば、いろいろ案を出しましたけれども、逆に幅広い形での規制というのが必要になったり、あるいは先ほどもお話にありましたが、利用者の目から見てかえって法的効果について使い勝手が悪いというようなことも出てきたわけでございます。
そういう意味で、もう少し選択肢を広げて議論を継続したいということで、今回、ここに至ったわけでございます。
言わば、ある委員の言葉を借りれば、袋小路に陥ったようなところがあったものですから、決してゼロまで戻るわけではございませんけれども、もう少し見晴らしのいい地点まで少し戻ってみて、改めて全体を考えていくということに取り組んだわけでございます。
そういう意味で、資料の29-1でございますけれども、もう一度、私どものADRというものが現在置かれている現状につきまして、もう一度足元を見直してみたいということでございます。
資料29-1でございますけれども、大きく国内における取り組みの例と、それから次のページにございますように、海外における取り組み例というふうに分けてございます。
まず、国内における取り組み例でございますが、(1)で「民間団体等の取組み」でございます。
これにつきましては、まず1つは、何よりも弁護士会の仲裁センター、あるいは専門職種団体によるADR機関、あるいは業界団体によるPLセンターなど、多くの民間のADR機関の設立がなされてきたということが1つ申し上げられるかと思います。
また、そうした民間団体等の間におきましては、2番目にございますような、例えば金融トラブル連絡調整協議会による自主ルールの制定など、民間ADR自身が機能充実、あるいはルールの制定ということに積極的に取り組んでいるということが言えるかと思います。
また、3番目にございますように、ADRは人が非常に重要なポイントを占めているわけでございますが、そういったADRの主宰者の養成につきましても、仲裁人の研修講座、あるいはプログラムといった諸々の活動が行われているということでございます。
また、ADRそのものに対する国民の理解の増進や、あるいは実際に利用者が利用したいというときのアクセスの拡充についても、4番目の○にございますような、例えば模擬調停が開催されたり、あるいはポータル・サイトが開設されるということによりまして、いろいろな活動が行われているということでございます。
(2)にまいりまして、これに言わば呼応する形とも言えますけれども、ADRの中でも司法型のADRにおきまして、民事・家事調停官制度の創設など、裁判所によるADRの機能充実に向けたいろいろな取り組みがなされております。
また、行政型のADRにおきましても、2つ目の○にございますように、時効中断効の付与されるようなものも含めまして、そういったADRの創設、あるいは機能充実が図られているわけでございます。
また、そういった司法型、あるいは行政型ADRのみならず、民間のADRも含めて連携活動などについての取り組みがなされておりまして、これは3番目の○として、この検討会でも何回か御紹介させていただいておりますが、関係省庁等の連絡会議によりまして、アクション・プランが昨年策定されまして、それに基づいてADRへのアクセスの拡充、あるいは機能の充実に向けたいろいろな取り組みがなされているところでございます。
例として、最初にADR関係者のための研修会の開催というのを挙げてございますが、これは3月の下旬に全国都道府県の相談窓口の担当者、あるいは関心を持つADR機関の方に150 名程度集まっていただきまして、8機関のADRからそれぞれ行われている業務についての説明をしてもらい、質疑応答などを踏まえた研修会を実施いたしております。これにつきましては、第1回目ということで、引き続き実施をしていきたいというふうに思っております。
また、2番目のADR機関紹介リーフレットの作成作業というふうになっておりますが、これは、今、こういった形で各ADR機関の連絡先などを分野別に整理したリーフレットを作成中でございまして、間もなく全国の関係の機関などにお配りができるのではないかというふうに考えております。
また、よくこの検討会でも話題になりました教育の問題につきましても、法務省において研究会が開催されておりますので、そこで議論をしていきたいというふうに考えております。
以上が、3番目の○の関係でございますが、更にADRを含みます司法的な紛争解決についてアクセスを拡充していくというより広い観点からのアクセスの拡充につきましては、日本司法支援センターの設立などを内容といたします総合法律支援法案が今国会に提出され、審議をいただいているというところでございます。
また、1枚めくっていただきまして、このADRの問題につきましては、いろいろな観点から政府部内においてもその意義が認められておりまして、いくつか例を挙げてございますが、例えば消費者行政、あるいは規制改革の観点、あるいはITの推進というような観点から、それぞれの計画などにおいてもADRが取り込まれているということでございます。
以上、国内の取り組み例をいくつか御紹介いたしましたけれども、内容的には、勿論、これで十分というわけではないと思いますし、どちらかというと試行錯誤的なものもかなり含まれているかと思いますけれども、ADRの拡充・活性化に向けた法制制度以外の面におきましても、現在、かなりいろいろな動きがなされているのではないかと。こういったものをどう支援していくのかということが1つ課題になるのではないかというふうに考えられます。
2ページ目の途中から「2.国外における取組み例」になってございます。これも国際機関、国際団体における取組みと、各国政府の取組みに分けて整理をいたしております。まず「(1)国際機関・国際団体の取組み」でございますが、こちらの方は、ご覧いただくとわかりますように、勿論、分野でありますとか、あるいはそれぞれの性格が異なるわけでございますが、やはりいろいろなルール化が盛んに取り組まれているという状況と言えるのではないかと思います。
最初のUNCITRALの国際商事調停モデル法につきましては、この検討会においても三木委員から御紹介いただいたところでございますが、それ以外にも電子商取引におけるガイドラインなどもいくつか策定、あるいは公表されております。
また、最後の○にありますように、ISOにおきましても、ADRシステムの国際規格化の検討が着手されておりまして、まだ、しばらく時間がかかるようでございますが、既に議論が始まっているということでございます。
関係の委員の方も、この中におられますので、また後ほど御紹介いただければというふうに思っております。
それから、2番目の「各国政府の取組み」でございますが、これもこの検討会で折に触れ御紹介をさせていただいたところでございますけれども、それぞれの政府におきまして、調停前置、あるいは時効中断効、執行力の付与などを含めまして、ADRに対する法的効果の付与についての国内法の制定が行われたり、あるいは検討が進められているということでございます。
勿論、それぞれ各国の司法制度を巡る状況はかなり異なるわけでございます。これらの国のいくつかにおいては、やはり裁判制度がかなり厳しい状況に置かれているということが背景になっておりますので、それをそのまま我が国に適用するという必要も、あるいは合理性もないわけではございますけれども、やはりADRを一つの大きな柱として育てていこうということで、法的効果の付与についての取り組みがなされているという状況にございます。
また、その中には、この例で申しますと、ドイツでは州政府が認可したADR機関に対して特別な法的効果を付与していると。あるいは、これは国会審議中ということで、これまで御紹介したことはございませんでしたけれども、イタリアの例でございますと、司法大臣の登録を受けた民間調停機関に対しまして、時効中断効・執行力の付与、あるいは付ADRということも盛り込まれているようでございますが、こういう政府が関与した形での法的効果の付与ということも実現し、あるいは検討されているという例もございます。以上、国際的な例を申し上げましたが、やはり共通のルール化の問題、あるいは法的効果の付与ということについては、かなりいろいろな動きが国際的にも出ているということが言えるかと思います。
それでは、今のようなADRを巡る国内外の状況を踏まえまして、今後どういったことが課題になっていくのか、このADR法制の中で考えていく必要があるのかということについて話を進めさせていただきたいと思います。
資料の29-2でございますが、ここで1つの絵姿を描いてございます。「民間による紛争解決の機能充実」というところの左のところに現状の整理が行われております。
その上に、裁判所のADRと、それから行政機関のADRについて欄がございますが、これにつきましては、先ほど申しましたように、近年、それぞれ機能の充実・強化が図られているところでございます。
民間によるADRでございますけれども、現状のところの一番左側でございますが、先ほど申しましたように、本当に草の根レベルも含めていろいろな取り組みが行われてきている。これはまさしく今申し上げたとおりでございますし、それがいろいろ成果を上げてきているというのも事実であろうかと思います。
ただ、総体的に見ますと、やはり意見書で指摘されているような、一部の機関を除いてなかなか利用が進んでいないという状況は依然としてあるのではないかというふうに考えられます。
それでは、具体的に何が問題なのかということにつきまして、もう一度改めて考え直してみますと、以下に掲げてございます3つの点があるのではないかということでございます。
1つは、国民の間に民間ADRの存在や意義についての認識、理解が必ずしも十分ではないのではないかということでございます。
2つ目が、個々のADR機関につきまして、情報が不足しているのではないかということがございます。こういった情報不足が、ひいては利用に当たって何となく不安があるという不安感につながっているのではないかというのが2番目でございます。
3番目でございますが、これはこれまでも御議論をいただいてきたところでございますが、1つは、本来ADRの大きな特徴でございます専門家の活用というのに、現在の我が国では一定の制約があるのではないかという問題が1つございます。
2つ目に、ADRは、本来裁判と並ぶ紛争解決手段の大きな選択肢というふうに言われているわけではありますけれども、現状を見ますと、そういう割には使い勝手が悪かったり、あるいはその実効性において見劣りするような部分があるのではないかと。こういった点において、利用に当たってのメリットが乏しいのではないかというのが3番目の問題でございます。
これだけではないと思いますけれども、こういった事情が絡み合って、現実におきましては、残念ながら利用がなかなか進まない。利用がなかなか進まないから、なかなか国民に定着しないという、やや悪循環的な事態になっているのではないかということが1つ考えられるわけでございます。
それでは、そういった事態に対しまして、法制の面でどういったことが考えられるのかというのが中ほどのところでございます。
1つは、国民の間での民間ADRについての意義について理解をしていただくという意味におきましては、ADRの基本理念などを明らかにしていくということが1つ重要ではないかというふうに考えられます。
また、2つ目の問題、あるいは3つ目の問題につきましては、1つの手段としては、国民に選択の目安を何らかの形で提供していくということが考えられるのではないかということ。あるいは、専門家を主宰者として活用していくということが考えられるのではないかということ。3番目に、先ほど申しましたような、いろいろ使い勝手の悪い、あるいは見劣りのする部分につきましては、そういった部分を補完して、手続の実効性を確保していく、そういった法的効果の付与ということを考えてもいいのではないかということでございます。
こういった国民に選択の目安を提供する、あるいは法的効果を付与していくということを考えていくのであれば、1つの方策として、任意の認証制度の導入ということも視野に入れてもいいのではないかということでございます。
その下にございます隣接法律専門職種を代理人として活用していくという問題は、これは後ほど触れたいと思いますが、やはり専門家を活用していく一環として考えられるのではないかということでございます。
こういった法制整備を通じまして、1つは国民の理解の向上を図るということがございます。
また、もう一つは、安心して質の高いADRを利用できる環境というのが整備できるのではないかということでございます。
先ほど任意の認証制というふうに申し上げましたけれども、この認証制度につきましては、あくまでもADRとしての最低限の基準を満たしているかどうかということを確認させていただくものというふうに考えておりますので、それを超える部分につきましては、むしろ、それぞれのADR機関において創意工夫をしていただく。よく山本委員がおっしゃる言葉で言えば、それぞれのADR機関が売りを競っていくというようなこと、こういうようなことによりまして、右にございますような多様な民間ADRがいろいろな形で発展していくというのが1つの形として考えられるのではないかということでございます。
その横でございますけれども、先ほど申しました司法型、行政型と併せて、民間によるADRが多様な形で発展するということになりますと、広い意味での司法の紛争解決機能が充実するのではないかということ。
併せまして、司法ネットのようなアクセスの拡充。その中での小さいネットとして申し上げれば、先ほど私どものいろいろ取り組んでいるような連携の強化というのも入ると思いますけれども、そういう広い意味での司法へのアクセス拡充と、それぞれの個々のADR機能の充実が相合わさりますと、最後の欄にございますように、国民が多様な紛争解決手段の中から自らのニーズに合った手段を自由に選択できる社会が実現できるのではないかということでございます。
これは、あくまでも理念型でございますので、美し過ぎる姿かもしれませんけれども、こういった大きな視点の中で、ADRの拡充・活性化ということを考えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
最後に、そういった1つの姿が考えられるわけでございますが、当然、その実現に当たっては、解決しなければならない、あるいは答えを出していかなければならない問題がございますので、それについて資料の29-3の方で整理をいたしております。
まず、1.でございますけれども、これは、そもそもどういう形での法制を考えていくのかということでございます。
ADR法制の骨格ということで、(1)では法制整備に至らない可能性が大であるとしても、基本理念規定のみで十分とする考え方というのを示しております。
これは、先ほどの図で行きますと、中ほどのADRの基本理念等という部分で法制はとどめるという考え方でございます。
ここに「法制整備に至らない可能性が大であるとしても」というふうに書いておりますのは、少なくとも政府提案ということを考えますと、なかなかこういう基本理念だけの法律というのは難しいという事情に触れたものでございます。
2番目は、法制整備の意義は、認証制度の導入も視野に、利用者利便の向上を図るための法的措置を規定することにあるとする考え方ということで、先ほどの図で行けば、2つめの枠まで考えて議論していくべきではないかという考え方でございます。
次に、仮に認証制度の導入を考えた場合の認証制度の必要性をどう考えるかというのが2.でございます。
先ほどの御説明で申し上げましたように、この認証制度につきましては、2つの視点があろうかと思います。
1つは、一般国民に民間ADRを選択する目安を提供するということでございます。
2つ目が、ADRに対しまして、実効性を確保するために、法的効果等の付与を考える際の基礎として位置づけるということでございます。こういった認証を受けたADR機関に対しては、法的効果を付与していくという考え方でございます。
先ほど私の御説明は、この2つを併せて御説明をしたわけでございますが、勿論、考え方としては、それ以外の考え方もあろうかと思います。この(1)と(2)を分けた上で、とりあえず(1)だけを考えるという考え方もあるでしょうし、(1)と(2)を分けた上で、それぞれの目的に合った認証基準というのを考えていくという考え方もあろうかと思います。この辺りは後ほど御議論をいただければというふうに考えております。
3番目が認証制度の性格でございます。この部分につきましては、先ほど私も任意というふうに申し上げましたし、議論の中で認証制度について(2)のように、この認証を受けなければADRの業務を行うことができないような仕組みということを考えるということはあまりないのではないかというふうに思いますが、確認の意味で認証を受けなくても従来どおりの業務を行うことは可能な仕組みという意味では、この認証制度は任意だということが1つの論点としてあろうかと思います。
次の29-4に図を付けて、今のものを全部盛り込んだイメージを付けてありますが、それを見ていただきますと、任意の選択ということで左側と右側に分かれておりますが、それぞれ左の方は法律上の効果が付与されますが、右の方は従前どおりの効果ということで特段の不利益なしという形になっておりますが、そういう形でございます。
それから、4番目が、それでは公正・適確なADRであるということをどこに着目して判断していくのかという問題でございます。
(1)の方は、主宰者の能力のみで判断すればよいとする考え方でございます。勿論、ADRは最終的には個人で行うわけでございますし、そういう意味で、こういった考え方というのも出ていいのではないかということでございます。
また、この考え方は、突き詰めていけば、これもこれまでの検討会で、どちらかと言うと中長期的な課題ではないかというふうな形で議論されましたADR士のようなものに通じていく考え方ではないかというふうに考えられます。
ただ、先ほど少し現状のところで申し上げましたが、こういったADR主宰者の育成の面については、まだまだ着手された段階と、少なくとも我が国においてはそういう状況にございますし、それから利用者の方からすれば、なかなか個人に対して、あの人だからADRを頼むというような状況に至っているかどうかということもあろうかと思います。
そういった面からすると、もう一つの考え方としては、主宰者の能力のみならず、ADRとしての手続面、あるいは組織面についての公正・適確性も併せて判断する必要があるのではないかという考え方もあり得るのではないかということで、(2)で整理をいたしております。
それから、5.で、そういった公正・適確なADRであることを制度的にどう担保していくのかという問題でございます。
これも29-4の図で、いくつかの局面を整理いたしておりますが、大きく3つの局面があるのではないかというふうに考えております。
1つは、認証の要件として認証審査の段階で担保するという局面でございます。詳しくは、後ほど御説明いたします。
それから、2つ目が認証を受けたADR、あるいは認証を受けた者の義務として業務遂行の段階で何らかの義務を課したり、あるいは行為の規制を行うという考え方でございます。
3番目が、今申し上げたような認証の要件が引き続き満たされているかどうか、あるいは認証を受けた者の義務が適切に果たされているかどうかという点について、継続的な監督をしていくということがございます。
それで、認証基準を満たさなくなった場合、あるいは義務が適正に果たされていないような場合については、最終的には認証の取り消しに至るような、そういった監督ということが3番目の局面として考えられるのではないかということでございます。
それでは、個々にもう少し見ていきますと、6.で「認証の要件として考えられる事項」であります。
これは、1つは不適格事由が存在しないことということで、これまでも何回か議論になりましたが、例えば暴力団関係者がきちんと排除されているかどうかというような問題が、1つの例として考えられると思います。
2番目は、若干このレベルでは少し抽象的ではありますけれども、公正・適確にADR業務を行う能力、あるいは経理的な基礎があるかどうかということが必要になるということが考えられるのではないかということでございます。
3番目に、公正・適確なADR業務の実施に必要な手続面での、先ほど手続ということに触れましたけれども、手続面での準則、規則があることが必要ではないかということでございます。
その他、何らかの要件が考えられるかどうかということでございます。
1枚めくっていただきまして、7.で先ほど申しました2つ目の局面でございますが、「認証を受けた者の義務として考えられる事項」でございます。これは、これまでいろいろ議論されたものを整理したものでございます。
1つは、ADR業務の実施に関する事項の公表、情報開示、ディスクロージャーの問題でございます。
2つ目が、個々の具体的な利用者、利用しようとする者に対しまして、ADR手続の内容をきちんと説明するという部分が2つ目でございます。
3番目に、先ほど認証要件のところで手続準則が定められていることということを申し上げましたが、単に定められただけでは意味がないわけでございますので、その手続準則がきちんと守られているかどうかということがございます。
4番目でございますが、これも認証基準と絡むわけでございますが、例えば役員などについては、認証基準のところできちんと排除できるかもしれませんが、具体的な業務遂行に当たっても、暴力団員等の使用は禁止するということが考えられる点でございます。
5番目が、いわゆる守秘義務、業務上の秘密の保持でございます。
6番目が、これもこの検討会でよく話題になりましたけれども、ADRの利用者からの苦情の適切な処理ということが1つの項目として考えられるのではないかということでございます。
その他、何らかのものが考えられるかどうかということでございます。
8.が3番目の局面でございますが、認証後の監督ということでございます。
これもいろいろな内容が考えられますので、ここにあるのは1つの考え方でありますけれども、1つは、認証を受けた者による帳簿書類の作成保存、あるいは事業報告書を出していただくというようなこと。
2番目に必要があれば、報告徴収や検査ということも考えられるでしょうし、最終的には、必要があれば業務改善命令、あるいはそれに従わない場合などについては、最終的には認証の取り消しということも制度としては用意しておく必要があるのではないかということでございます。
この監督についてもいろんな御意見があろうかと思いますが、やはりきちんとした利用者にとって問題のないADRということを認証していくということになるのであれば、こういった監督についても一定程度の内容が必要ではないかというふうにも考えられるところでございます。
9.にまいりまして、いわゆる法律上の効果の問題でございます。
1つは、認証を受けている旨の表示をできるということでございます。逆に申し上げれば、認証を受けていない機関については、こういう表示はできないということでございますので、そういった表示をした場合について制裁措置は必要になろうかと思います。
2番目が弁護士以外の者によるADR手続の主宰の問題でございます。弁護士法72条との関係を整理する必要があるわけでございますが、基本的には、これまでも御議論いただいたように、弁護士以外の者によるADR手続の主宰の道を開いていくべきであろうというふうに考えられるわけでございます。
ただ、その場合に、公正・適確な業務遂行を確保するために、何らかの措置が必要かどうかということが次の問題になるわけでございますが、これまでの議論におきましては、必ずしも認証制を前提にしないということで議論をしてきたわけでございますけれども、その過程においては、一定の場合には弁護士の関与が必要ではないかという議論が、この検討会でもされてきたわけでございます。
これを認証制に引き直しますと、アにございますような、認証の要件や認証を受けた者の義務という中で、一定の措置を講ずるという考え方が1つあるのではないかというふうに思います。
他方、認証制を前提とした議論ということになるのであれば、これまでとは違って、そういったものはあえて必要ではないのではないかという議論もあり得ると思いますので、イでその他の考え方というふうにお示しをいたしております。
(3)以下は、訴訟手続との連携ということでございますけれども、具体的な項目については、既に仲裁では手当をされている。あるいは事柄の性格上、仲裁の場合は論ずる必要がないという問題でございますので、仲裁を除いております。
アが「手続の申立てによる時効の中断」という時効中断効の問題でございます。この問題につきましても、従来の議論におきましては、必ずしもこういった認証制度を前提にしないということで、議論を進めてまいりましたので、それこそいろいろなアイデアが出され、議論がされたわけでございます。
ただ、もし、仮に認証制を前提とするということであれば、これまでの議論でも明らかになったように、利用者の立場から見ても、ADR機関側から見ても、一番使い勝手がよくて、実効性があると思われる個別労働紛争解決促進法タイプ、これは訴訟提起が条件になるわけではございますが、申立ての段階で時効の中断効が与えられるというものでございますが、これが1つの有力な考え方ではないかということでございます。その他の考え方があるかどうかということであります。
2番目がイで「訴訟手続の中止」であります。これは、これまでの議論におきましては、必ずしも認証制を前提とせずとも、当事者間の合意と、それから裁判所の裁量的判断によって認めてもいいのではないかという考え方がかなりあったわけでございますが、これを認証制を導入する場合でも維持していいのではないかというのが(ア)の考え方でございます。
その他の考え方があるかどうかというのが(イ)ということになります。
3番目ウが調停前置の関係でございます。この調停前置につきましても、これまでは必ずしも認証制を前提とせずに、裁判所の裁量的判断によって認めてもいいのではないかという考え方がかなりあったわけでございますけれども、それを(ア)としてお示しいたしております。
ただ、今回仮に認証制を導入するのであれば、もう一歩進んで調停前置の原則を適用しないという考え方、つまり認証ADRを経てきた場合には、改めて家事調停なり民事調停に付す必要はないという考え方をきちんと規定するということもあり得るのではないかということで、(イ)としてその考え方も併せてお示しいたしております。
1ページめくっていただきまして、10.でございます。認証業務に係るADRで成立した和解の執行力の問題でございます。
この執行力につきましては、随分いろいろな議論がございまして、この問題については、認証制を取る、取らずにかかわらず、やはりいろいろ悪用のおそれがあるなどの問題から、少なくとも将来にわたっての検討課題とすべきではないかという議論がかなりあったのは事実でございます。
それを踏まえまして、(1)で要件・手続のいかんにかかわらず、執行力を付与すべきでないとする考え方をお示しいたしております。
ただ、先ほど申しましたように、今回改めて全体を見直して、新しい姿を考えていくという場合、特に裁判なり、あるいは司法型、行政型と並ぶ1つの大きな紛争解決手段の柱として民間ADRを育てていくということを考えた場合には、また、もう一度新しい目で見ることも考えられるのではないかということで、(2)で認証を受けたADRの手続で和解が成立したものであることのほか、付加的・加重的な要件・手続を設定した上で、執行力を付与すべきとする考え方もあり得るのではないかということで(2)でお示しいたしております。
勿論、認証のいかんにかかわらず、こういった執行力を付与することにつきましては、やはり相当厳格な要件を考えていく必要があるだろうということは、恐らく、皆さんの意見は一致しているかと思いますが、それにつきまして、今回認証制度においてストレートに要件に反映していくということになりますと、恐らくは非常に限られたADRだけが認証されるということになろうかと思います。
そうなりますと、少なくとも国民に対して選択の目安を提供するという目的からすると、あまり望ましい状態ではないのではないかということが考えられるわけでございまして、そういうこともありまして、仮にこのADRについて執行力を付与するということを考えるとしましても、その要件につきましては、一般のADRの認証の要件とは切り離してと申しますか、それに加えて付加的・加重的な要件手続を設定して認めるべきではないかという考え方で(2)は整理をいたしております。
先ほどの29-4の図を見ていただきますと、左側の方の最後のところで「認証による法律上の効果」の中ほどに点線がございまして、それの下に付加的な要件・手続の下での成立した和解の執行力というふうにお示ししているのは、そういう考え方を表わしたものでございます。
11.が「認証の主体」でございます。これにつきましても、これまでいろいろな議論があったわけでございますが、まず、大きくは認証主体が国の行政機関であるのか、あるいはそれ以外の第三者機関であるのかという問題があろうかと思います。
この問題につきましては、いろいろな御意見はあろうかと思いますけれども、少なくとも法的効果、特にここで想定しているような法的効果というものを考えていくのであれば、やはり最終的には、この認証の責任というのは、行政機関が負わざるを得ないのではないかというのが基本的な考え方でございます。
では、具体的にどういうところが考えられるのかということでございますが、ここはいくつかの要素を挙げてございます。
1つは認証の要件との関係でございます。この認証の要件ということになりますと、1つは紛争解決が公正・適確に行える能力を見るわけでございますけれども、その能力をきちんと判断できるのはだれかという問題が出てこようかと思います。
2番目に認証の効果等というところでございますが、これは具体的に、先ほど来話題になっているような時効中断効、あるいは72条との関係を考えていくと、だれが判断するのが適当かという問題が出てこようかと思います。法務大臣というのが1つ考えられるわけでございます。
それから、ウで認証を受ける者に対する他の制度の下での監督との関係というのは、ADRを行う機関は、現在のものにもいくつかそういったものがございますが、公益法人のスタイルを採っているものがございます。こういった公益法人につきましては、既に所管の大臣というのがいるわけでございます。
また、ADRの中には特定の分野だけの紛争を扱うという機関もあるわけでございますが、そういった機関につきましては、当該分野を所管している行政庁、あるいは所管分野の行政とかなり密接な関係があるということがございます。そういった観点から、いわゆる業所管の大臣が関与するということは考えられないかどうかということで掲げてございます。
ここでは、いくつかの要素は挙げておりますが、そういったものを踏まえて、また利用者あるいはADR機関側の負担の問題も考えて、適切な主務大臣を考えていくということが必要になろうかと思います。
(2)でございますが、先ほど法的効果を考えるのであれば、最終的には行政庁がということを申し上げましたが、他方、これはいろいろな考え方があるとは思いますが、専門性の問題、あるいは公平性の問題、あるいは透明性の問題、こういったことから、やはり第三者機関が関与した方がいいということであれば、その行政庁の認証の過程、あるいは認証の取消の過程で第三者機関が関与するということも考えられるのではないかということで、(2)で掲げてございます。
最後に「(注)」という形で、以上の御説明は基本的には認証制度に関するものを中心にお話をしたわけでございますが、法律の内容としては、先ほど中ほどの説明でもございましたように、基本理念、あるいはその基本理念を現実化するための国の責務といったものも考えていく必要がございますので、その点について最後に触れております。
ちょっと説明が長くなりましたが、以上が資料の御説明です。
○青山座長 どうもありがとうございました。資料29-1から29-3までまとめて御説明をいただきました。司法制度改革における裁判外の紛争解決制度の拡充・活性化というものの意義を一体どういうふうにとらえるのか。その健全な発展のために何が必要かという点が、今後の法制整備の検討の方向性を見定めていく場合に重要なポイントになるということから、特に資料の29-1、資料の29-2というようなものを整理して出していただいたわけでございます。
先ほど御説明がありました資料の29-2の一枚紙の一番左側にある現状や課題というものの下で、今度は一番右側にある、国民が、多様な紛争解決手段の中から、自分のニーズに合った手続を自由に選択できるような社会を実現していくという、現在の現実と、それから望み得る社会と対比して、ちょうど中間のところで、どういう手段をとるのかということが問題だということが、この1枚紙の資料でおわかりいただけると思います。これについて委員の方々は、様々な御意見をお持ちではないかというふうに思っております。
そこで本日は、また自由なディスカッションを伺いまして、次回以降の検討の方向性を見定めたいというふうに思っておりますので、基本的な点も含め、つまり裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化の意義というような基本的な点も含め、それからここに論点として示したさまざまな点をも含めて意見をいただきたいというふうに思います。
特に、この資料29-3は、具体的な論点として、これは従来、事前確認というふうに言っておりました時期もありますが、認証制度の具体的なイメージがはっきりしないために、どうも議論が進まないという点もあったかと思います。
そこで、考えられるものとして、これは勿論一つのイメージでありますけれども、それを出してほしいということから、かなり丁寧なといいますか、詳しい資料が出てきたわけでございます。まだ足りない点もあるかもしれませんし、踏み込み過ぎた点もあるかもしれません。そこで、そういうことも含めて御議論をいただきたいと思います。
勿論、今日の議論は、これで終わるわけではありませんで、次回以降の検討も続けていくということでございますので、御自由に御議論いただきまして、それから足りないところは事務局の方もまた補足的な御説明をさせていただくという形で議論を進めたいと思います。
時間としては、3時40分ぐらいまで、つまり1時間20分ぐらいの時間をフリーなディスカッションのために使いたいというふうに思っております。どなたからでも結構でございますので、どうぞ。
○廣田委員 結論を先に言いますと、今日のぺーパーの29-3、主要な論点の「1.ADR法制の骨格」の(1)の法制整備に至らない可能性が大であるとしても、基本理念規定のみで十分とする考え方を論議して、(2)以下は論議すべきではない。すなわち、今後この検討会の議題から外すべきであるということを申し上げたいと思います。
ただし、(1)は、甚だ表現が適切ではございません。これでは(2)の方に誘導されるように表現されております。これを「基本理念規定を中心とし、法制整備の可能性を探るべきである」というふうにすべきだと私は考えております。
これが、前回1月29日の検討会のおおよその結論だったはずであります。(2)以下は、前回のみならず、これまでの検討会から大きく踏み外しております。選択肢を広げるということも、こんなに踏み外していいというものではない。そういうふうに私は考えております。
先ほど座長が9合目まで行ったということなのですが、(2)以下になると、これは麓に戻ったと考えていいと思います。
(2)以下を議論していますと、それが駄目なときには、(1)に戻ってももう時間がなくなります。それで十分に基本理念規定を中心とする法制整備を討議することができなくなります。ですから、私は議題から外すということを提案いたします。
以下に理由を申し上げます。
第1に、時効中断効や執行力を付与したとしても、それだけでADRが拡充・活性化することはありません。ADRが拡充・活性化しない原因は、今日のぺーパーの29-2の左側に書いてありますけれども、はっきり言えば、こういうような単純なものではないのです。まして時効中断効や執行力がないなどという小手先のことで、こういうものが解決するわけではないのです。もっとずっと根深いものがあります。
例えば、裁判所における調停制度が大きいこと。弁護士が一般にADRを理解していないことなどなど、複雑なものがあります。多様です。ですから、ここに書いてあるようなこんな単純なことを考えていたのでは、方針がすべて間違えてしまいます。
この原因を詳しく述べる時間がないので、これ以上言いませんけれども、時効中断効や執行力を付与したからといって拡充・活性化が図れると思っていればそれは幻想です。利用者の使い勝手がよくなるだろうといっても、利用者はそんなことは問題にしません。それにもかかわらず、事前認証制度を導入するというのは、この幻想を利用して事前認証制度を導入しようとする意図すら感じられます。私にはそう感じられます。
第一、今回、民間型ADRに限って事前認証制度を導入しようということが提案されていますけれども、このことはこれまで一度も議論されておりません。議論の対象になっていません。今、こんな土壇場の段階で、こういうことを持ち出すことは、私は甚だ遺憾だと思っています。ADRの基本法制を作るというときに、なぜ民間型ADRに限るというように矮小化するのか。そんなことは司法制度改革審議会の意見書のどこにも書いていません。それは意見書の内容にも精神にも反します。これは、もはやADRの拡充・活性化には程遠く、民間型ADR規制法です。これまで討議されていなかったこと、パブコメにも出ていないこと、したがって、一般に意見を求めていなかったことを、土壇場の今になって持ち出すのは、初めから民間型ADRの規制法を作る意図があったのかという疑いを持たれても仕方がないと思います。これはまた、司法制度改革審議会意見書の矮小化にはとどまらず、すり替えです。少なくとも私は民間型ADR規制法を作るために、ここに参加しているつもりはありません。
理由の第2です。本日のペーパーには、認証制度の弊害が書かれていません。これまでパブコメには認証制度の弊害や反対意見が数多く出ていましたし、私も再三述べました。私のみならず、ほかの委員やヒアリングでも反対意見や疑念が少なからずありました。これらを無視して、またここに出てきたというのは一体どういうことなのか。その反対意見の中核にある考えは、ADRは元々私的自治に立脚するものですから、行政が認証するなどということは私的自治に反するということでありました。これが主要な意見でした。
このことについては、私も述べて、またパブコメにもいろんな意見が出ていましたので、これ以上申し上げませんが、ただ1つだけ付け加えたいと思います。
私的自治に反するだけでなく、ADR、特に民間型ADRのような私的自治に立脚した制度に事前認証制度を導入するということは、行政が私的自治の分野に介入することを認める悪い先例になります。これはまさに時代錯誤です。時代に逆行することであります。これが第2の理由です。
第3の理由を申し上げます。
これはADRの実情を踏まえておりません。ADRを拡充・活性化することは、このペーパーにあるようなことをしても、これでADRが拡充・活性化することはない。裁判と並ぶ魅力ある選択肢にするということとは程遠いやり方です。事前認証制度の導入すれば、労力と費用がかかってADR機関の負担が増大します。民間型ADRは、みんな基本的にはボランティアで行われていますが、そこにお上が認定・監督すれば、ボランティアでやっている人々が嫌気がして、ADRに対する熱意を失います。
これは私の予測ですが、こんな法律を作れば、(2)以下ですよ。ADRは間違いなく衰退します。現在、民間型ADR、特に弁護士会仲裁センターは、創立時のメンバーか、それに近い世代の人々が実際に動いていて、若い世代のスタッフというのは、それほど多くありません。多くないというよりも、ほとんどいないと言っていいと思います。そこに行政の介入を許せば、若い世代が自主的に運営するエネルギーが削がれることになりまして、拡充・活性化どころか老衰に向かうということが私の予測であります。
第4に、このペーパーは民間型ADRに対する現状認識に乏しくて、端的に言えば机上の空論です。平成14年度の民間型ADRの年間受理件数を拾ってみましょう。一番多いのが、交通事故紛争処理センターで、これは約6,500 件。次が日弁連交通事故相談センターで約1,500件。この2つで約8,000 件です。しかし、この2つは、いずれも交通事故の案件で、保険会社が当事者に絡んでおりますので、時効中断については、以前に私が言いましたように、被害者が時効中断申請書を保険会社に提出して、保険会社が承認するという方法でクリアーされております。改めて時効中断効を認める必要はないということです。執行力についても、一旦話が決まれば履行されます。執行力を認めても何もありがたくはありません。したがって、交通事故の約8,000 件は何のメリットもなく、事前認証制度が導入されれば、その煩わしさ、デメリットを被るだけということになります。
次に、弁護士会仲裁センターは全国に20足らずありますけれども、全部で合わせて1,000 件をわずかに超える程度です。そのうち、時効中断効が必要な事件は滅多にありません。今まで問題になったことはありません。執行力については、大抵のセンターでは仲裁もやっていますから、仲裁法を使えば執行力を付けることができます。たったそれだけのことに主務大臣の質問、検査、改善命令などを受ける、簡単に言えば、行政のコントロールを受ける、これは弁護士自治を唱える弁護士会がすることではありません。ここに弁護士がたくさん座っておられるから、よく聞いておいてください。こんなことで簡単に弁護士自治を売り渡すのか、これが私が言いたいことです。
第二東京弁護士会が15年前にADRを作りました。弁護士会仲裁センターを作りました。全国に52ある弁護士会で仲裁センターがあるのが15年経って20足らずです。弁護士は手が足らないで、ほとんどADRに使っている時間はありません。みんなボランティアでやって、片手間にやっております。ですから、弁護士会にそれほど期待するのは、私は無理だと思っております。
その他の民間型ADRは、12、13あるPLセンターで調停、審査などの名称で行われるADRの仕事は、全部合わせてもせいぜい年間50件、それよりはるかに少ないのではないかと思っております。私は全部拾っておりませんが、かなり主力なものを拾っても数件です。それからあるとすれば、日本海運集会所と日本商事仲裁協会、それはそれぞれ年間10件前後ですが、この2つは、ほとんど仲裁事件です。日本商事仲裁協会は国内調停も始めましたが、これも年間20件行けばいいところだと思います。
そのほかに、日本知的財産仲裁センターが、これは年間数件です。ほかにADRがあるとしても、私は数字を全部拾ったわけではありませんが、PLセンター以下ですが、弁護士会とか交通事故処理センターを除けば、全部合わせても100 件ぐらいではないかと思います。この100 件の中で時効中断効や執行力が切実に必要とされるのは、ほとんどないといっていいと思います。
以上のような現状を踏まえますと、民間型ADRに事前認証を導入したとしても、どれだけの御利益があるでしょうか。時効中断効などの法的効果は何のプラスにもならない。それはただ事前認証制度を導入するだけの話だという意味しかありません。これが机上の空論だと言っている理由であります。
それでも事前認証制度を導入するというのであれば、それは法的効果を与えることに目的があるのではなくて、民間型ADRを規制するために導入するのだということになります。これはもう断言していいでしょう。こんなことでADRの拡充・活性化には全然つながらない。これはもう火を見るよりも明らかであります。
なお、弁護士法72条の規制緩和につながると反論する人がいるかもしれませんが、これについて一言申し上げます。
事前認証制度の中に弁護士が参加する要件を作れば、それを規制を中に取り込むだけのことであって、72条の規制緩和にはなりません。72条の規制緩和は事前認証制度に絡めるのではなくて、それ自体の問題として解決すべきであります。これがこれまでのADR検討会の大きな流れであって、事前認証制度に72条を絡めることは、これまでほとんど議論がなされていないと私は認識しております。
理由の第5を申し上げます。以上によって、本日のペーパーの主要な論点、1.の(2)以下は、ただ民間型ADRに事前認証制度を導入するだけのことであって、そんなことをすれば、民間型ADR規制法を作るだけであります。それはADRの拡充・活性化、つまりADRの全般を裁判と並ぶ魅力ある選択肢にするという意見書の付託に応えることにはなりません。全く正反対です。
例えば、時効中断効は建設工事紛争審査会などの行政型ADRや、判例はあるけれども法律の規定がない裁判所における民事・家事調停を入れて統一的に規定することによってはじめて魅力的な選択肢となるのであって、認定を受けた民間型ADRだけに認めても何の意味もない。その区別が利用者にとってわからないし、第一、こういうことをする理論的な根拠がありません。時効制度にどこにマッチしているのか、これを私は聞きたいと思います。こんなことを協議するために、国の予算を使って時間を費やすこと自体許されないことだと考えます。
したがって、今日、主要な論点の1.の(2)以下は、もう無いようにして、1月29日の検討会の協議の結果に戻して、この検討会を進めるべきであります。
なお、付け加えますが、事前認証制度を設けた場合のことが、今日のペーパーにも書いてあります。29-3、29-4に書いてあって、今、説明を受けました。いろいろ書いてあります。事前認証制度を導入して、これだけのことをすればそれなりの予算がかかるはずです。しかし、これは事前認証制度を導入するだけであって、ほとんど御利益がないということは、私は今述べたことでおわかりだと思います。御利益がないばかりか、民間型ADRの自主的な意欲を削ぎ、嫌気を起こさせるなどの多くの弊害がやってきます。百害あって一利なしです。そんなことに国の予算を使うべきではありません。役人のポストを作るだけだと批判されても、私は反論することはできません。
したがって、私は絶対に賛成しません。税金の無駄遣いに荷担するようなことは、私はいたしません。それでも私の反対意見を押し切って、この事前認証制度を導入するのであれば、私はそんなことに責任は持ちません。これだけははっきり申し上げておきたいと思います。
以上です。
○青山座長 ただいまの廣田委員のお考えは、前から指摘していたところでございますけれども、今の意見で。
○廣田委員 前から言っていないことも付け加えて言っております。そこをちゃんと聞いておいてほしいと思います。
○青山座長 はい。今の意見で内容に入った部分と、議事進行の部分と2つございます。議事進行の部分については、最初にお答えしておきたいというふうに思います。
廣田委員の今のお考えでは、1.の(1)だけを議論しろと、(2)以下の議論には入るべきではないというのが結論だったというふうに思います。
しかし、(2)以下について反対をなさるというのは、議論の内容についての御意見ですから、それはまたこれから議論していただきますけれども、1.の(1)だけ議論をするという考え方には、座長としては与しない。なぜかと言いますと、全く振り出しに戻って認証制度を取り上げるというわけではありませんで、今までにも認証制度と事前確認制度というのは我々の視野の中に入って議論をしてきたところでございます。廣田委員は、前にも一度認証制度というものは外して議論を進めろということを御主張されましたけれども、そのときも私は、いやこれは視野の中に入れておくということで最後まで来ているわけでありまして、決して認証制度が突如浮上したという流れではないということを御理解いただきたいというふうに思います。
勿論、認証制度の導入について。
○廣田委員 議事進行のことについての話ですから、これは先行してほしいのです。私が言っていることは動議だと思ってください。
ですから、議事進行について座長の意見はわかりましたけれども、皆さんの意見を聞いていただきたいと思います。
○青山座長 ちょっと待ってください。議事進行ですから、まず私が提案をしているわけです。それで諮りたいと思います。
認証制度の導入の是非については議論もありますし、認証制度の良い点もあるし、悪い点もある。これは十分これから議論をしていけばいいので、はじめから認証制度を外して議論を進めるということについては、私は座長としては責任を持ち兼ねる。
そこで、皆さんにお伺いしたいのですが、廣田委員のお考えのように、1.だけに議論を絞って議論をすべきだというふうに考えるのか、1.の(2)以下も含めて議論をした方がいいのか、この点について最終的には、私がもう一度総括いたしますけれども、ほかの方の意見を一応お聞きしたいと思います。
どうぞ。
○安藤委員 今までの流れのうちから言いましても、基本理念のみでいいだろうかという疑問があって、もう一回やってみようよという形になったと思うので、1.だけというのでは私はちょっと法律自体にならないのではないかなという意見に与します。
○青山座長 ほかの方は、どうぞ。
○山本委員 私も全く同じ意見です。
○綿引委員 異議ございません。
○髙木委員 私も異議ございません。
○青山座長 ほかによろしゅうございますか。特に廣田委員のお考えにセカンドされる方があったら。
○廣田委員 もう一つ私の意見を言いますが、皆さんそういう意見だったら、ともかくこれを議論するとして、私が申し上げたいのは、これはやはり駄目だということで、もし1.に戻ったときに時間の余裕があるかどうか、それを念頭に置いて議事を進めていただきたいと思います。
○青山座長 それは当然考えております。
それでは、大方の御意見が1.の(1)の基本理念だけで十分であるとする考え方ではなくて、1.の(2)以下の認証制度の導入も視野に入れて考えるという方向で議論をするということについては御賛同いただけたというふうに思いますので、それについて御議論をいただきたいと思います。
廣田委員が、既に最初に問題提起を非常にクリアーな形でしていただきましたので、これについて賛成の意見、反対の意見をそれぞれお述べいただければ、今日の議論は実りあるものになるのではないかというふうに思っております。勿論、独自のお考えでも構いません。
どうぞ原委員。
○原委員 廣田委員に賛成とか反対とかという形で述べるのは大変難しいのですが、私自身も廣田委員がおっしゃるように、法的効果の付与をしたから、非常に御利益があって、既存のADRが活性化するかというと、必ずしもそうではないというふうに思っております。もっともっといろんなことを考えなければいけないというところでは私も同意見です。
今日は初回ということなので、大きく4点ほど疑問というのでしょうか、検討していただきたいと思っている点を申し上げたいと思っております。
1つは、やはり廣田委員がおっしゃられたように、私自身が、資料29-4を見たときに、一応、認証を採る、それから認証の申請をせずという2つに分かれると。これで廣田委員がおっしゃられたように、全部に規制の網をかぶせるということではなくて、一応はそれぞれのADR機関の選択というところに委ねられたというところは賢明であっただろうというふうに思いますけれども、認証の申請をせずというところをずっと見ていくと、従前以上の義務なしというような形で書かれてはいますけれども、全体的なトーンが、これまでのADRをそのままでいいのだというふうに全体的なトーンが読み取れて、私としては、やはりそうではなくて、先ほど廣田委員がおっしゃられたように、基本理念のところをもう少し充実した議論が必要ではないかというふうにおっしゃられた部分は、やはりここにも係ってくるというふうに思っておりまして、よくおっしゃっていらっしゃる、人の育成の問題ですとか、それから手続がきちんと丁寧に利用者側に開示されているかとか、情報開示の規定だとかというのは、特に認証の申請をしないような既存のADRにしても健全性の観点とか、それからADRの魅力を高めるためには必要な議論ではないかと。勿論、それは義務規定でかけるものではなくて、一応努力規定で私はいいと思いますけれども、全く蚊帳の外に置くのでは、やはり今のADRが活性化していないというところをかなり残してしまうのではないかということを一つ思っております。ですから、従前のところについても基本的な理念を生かせるような手法を考えてみてはいかがかというふうに思っています。それが1点目です。
それから2点目なのですが、実際に蓋を開けたときに、認証の申請をするところと、しないところがどのように判断されるかというところが、ちょっと読めないところがありまして、ほとんどのところは認証申請しないのか、それともほとんどのところが認証を申請してくるのかというのは、読めないようなところがあるのですけれども、仮に例えば認証をするというようなところに流れていくというのも、私は少し違うかなというふうに思っておりまして、やはり民間のADRの多様性を生かした形というのは生かしたいと。そうすると、消費者とか利用者が市場で選択ができるということが非常に重要だというふうに思っていまして、それはやはり行政が監督するということよりは、余程そちらの方が重要だと考えています。
そうなると、例えば今日のペーパーの資料の29-3で、ずっと書かれている2ページ目に7.として「認証を受けた者の義務として考えられる事項」というのがずっと並んでいるわけですけれども、やはりこの中に、勿論、(5)の業務上の秘密の保持というのはあるかもしれませんけれども、消費者とか利用者が選択できるための情報の開示ということが項目として入るべきではないかと思います。
(1)は、実施に関する事項の公表なので、これは私としては手続とか、仕組みの公表のように思っておりまして、そうではなくて、例えばどういう紛争が入ってきていて、どういう解決が図られているのか。勿論プライバシーですとか、そういったものの保持はあるかというふうに思いますけれども、利用者とか、消費者が選択をするための情報開示ということが、もっと考えられて利用者の選択に委ねられる方向というのを目指すべきであると思っております。それが2つ目です。
それから、3点目なのですが、やはり行政が出てきて重い仕組みになるというところは、私もちょっとどうかと考えます。8.に「認証後の監督の内容」と書かれているのですけれども、ちょっと全体的に重いのかなというふうにも思ったりしまして、先ほど第三者機関の話が出てきておりましたけれども、ですから11.の「認証主体」のところとも関わるのですけれども、この辺りはもう少し丁寧に検討してみる必要があるのではないかなと。あまり重くせずに何か効率的に第三者機関のようなところを絡ませる形での方向が図れないかということが3点目です。
それから、4点目は、前回とか前々回とかに申し上げたように思っているのですけれども、実際にADRの基本理念にしても、これまでの手続にしても、当事者同士が対等というような形を一応念頭に基本的なベースを考えてきておりますけれども、一方の当事者が消費者であるとか、それから消費者対事業者ですとか、労働者と雇用者というような関係のとき、力に格差があるような場合、そういったところへの配慮規定というようなものが必要ではないかと思っております。
それから、ADR機関そのものに対する苦情のようなものの扱いですね。それは先ほどの3番目に申し上げたところの第三者機関を絡ませての取消の話というようなところがありますけれども、そこと絡めてとなりますけれども、もう少し消費者側、利用者側の保護だとか、配慮だとかというような規定が要るのではないかと全体的に大きく4つぐらいの感想を持っております。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 今日のペーパーの中に罰則のことが書いていないのですが、罰則は設けるつもりですか。前はそういうのが書いてありましたね。
○小林参事官 今のは事務局に対する御質問ですか。
○廣田委員 そうです。
○小林参事官 罰則については、それぞれの内容についての検討と併せて、必要な場合には罰則ということも考えられるということだと思います。
○青山座長 髙木委員どうぞ。
○髙木委員 私も弁護士ですけれども、廣田先生とはやや意見を異にします。
廣田先生の御意見については、ちょっと考え方の基本が違うので、コメントをすることはいたしません。今日、事務局から示された資料29-1、具体的には29-2、29-3ですね。特に29-2で示された枠組みは賛成です。今、ADRが国民に定着していないというふうに認められているものを定着させて利用されるようにするためには、何らかのことをしなければならない。現状のままでは不十分だというところからスタートしているわけですから、基本理念だけを定める法律では、現状とほとんど変わらないし、進展がないだろうと思います。
前回、座長が、制度が定着するためには認識を深めるだけではなくて、共鳴、共感から利用されて参加につながるという4段階の過程を1つの例として挙げられましたけれども、何らかのことをしなければ、そこまで成長していかないだろうと思います。
定着しない理由の1つとして、もう一つ座長が前回言われたことなのですけれども、労働者側も消費者側もADRに対して期待と夢を抱きながら不安感、警戒感が拭い去れないとおっしゃった点ですが、そういうまとめも正しい部分が大いにあると思います。不安感を打破するための環境整備は最低限必要なことだろうと思いますし、それがここの29-2の中で示された国民が安心して利用できるための選択の目安を提供すると、そういったものにつながることだろうと思いますし、更には実効的な紛争解決が可能になるような一定の法的効果も与えるべきというところにつながることだと思っています。
ですから、認証は、そういう意味で取り入れるべきだと思います。
従来、認証制度を反対される方の中には、自主性、多様性を重んじるという観点での意見が多かったわけですけれども、その自主性を言うときに、ADR機関の自主性に偏っていた向きがあるというふうに思います。それも重要なことですけれども、利用者の視点がやはり重要で、まず、不安感の解消からやっていかなければいけないのではないかというふうに思っています。
29-3のペーパーについて言いますと、1.2.は今ので意見を述べたと思いますけれども、3.は当然認証は任意であるべきですし、それは自立的な機関、自主的に行うことを望む人たちは従来どおりの活動をすればよろしいわけですし、その活動の余地は当然残すべきだからです。
先程原委員が言われた認証しない場合の情報開示であるとか、健全性とか、利用者である国民が選択できるような仕組みというのは、29-3のペーパーの最後の(注)に書かれた認証制度と合わせて基本理念や国等の責務を規定することを検討するとあるわけですから、国等の責務の中にADR機関の責務として入れれば、それで済む話だし、それにより解消されるのではないかというふうに思っています。
論点4ですが、ここは主宰者のみの能力か、あるいは主宰者プラスADR機関を考えるかということですけれども、いずれも考え方としてはあり得ますし、最終的には確かに主宰者個人というところに集約されるのだろうと思いますが、やはりここも利用者の視点というのがあり得ると思います。利用者が何を見て利用してくるかというと、やはり機関の信用性、組織の性格、そういったものを判断しているというふうに思われますので、(2)も含めて両方併せて考えるべきではないかというふうに思っています。
論点5ですが「公正・適確なADRであることを制度的に担保する方法」と、ここが先ほどの説明のとおり認証の要件、認証を受けた者の義務(行為規制)などですが、すべて組み合わせで成り立つものだろうと思いますから、ただ中身はこれからの検討なので、規制はできる限り少なくして、時代にマッチしたものにするという配慮は必要かと思います。
論点6ですが、一番大きな問題は、「(1)不適格事由が存在しないこと」。従来の不適格事由を横に置いて考えると、暴力団であるとか、そういったことになるのだと思いますが、これも必要ではないかと思います。
それから、(2)の能力及び経理的基礎。能力は72条の関係で特に問題になるとは思いますが、こちらに先ほど29-4で説明された上の「認証の要件」の方で見るか、あるいは下の「認証を受けた機関の義務」の方と合わせて見るか、そこはまだ決まった考え方はございませんが、例えば、上の認証の要件で見るときには、要件の書き方としては複雑で難しくなる可能性があるのかなと思っています。下の「義務」の方で書いていった方が、つまり、認証を受けた者の義務、ないしは行為規制として考えていった方が、どちらかというと書きやすいというふうに思いますが、弁護士会でもまだまとまっていません。
それから経理的基礎のことなのですが、これがどの程度のことを言っているのか、やや不明なために弁護士会の仲裁センターなどでは心配している向きもあります。株式会社が1,000 万、有限会社が500 万ということだとすれば、その程度で済むのか、あるいは結局、経理的基礎が問題になる理由というのは、利用者に迷惑をかけないということだとすれば、例えば損害賠償保険が付保されているというようなこともって足りるとか、なるべく軽くしてほしいというふうに思います。
それから、6.の(3)の手続準則は当然のことだろうと思います。
7.は、事務局説明で説明されたこと以外に特段のことはございません。72条の論点は、また後で議論されることかと思います。
8.9.ですけれども、8.はもうちょっと詳細になってから意見があるかと思います。ただ、通常認証制度を設けた場合に必要になる事項であるということは認識しています。報告徴収や検査が定期的に行われるとか、随時なのかとか、そういったところはやや機関の方では気になるところではあります。
9.の部分も特にここに書いてある、先ほどの事務局説明で言われたことに特段付け加えることはございません。72条は同じように後で問題になるのだろうと思っております。11.の認証主体の問題ですけれども、これも第三者の関与というのが、やや問題になるかなというふうには思っています。第三者の関与はあった方がいいというふうに思う反面、逐一最初から全部第三者の関与をさせるということになると、とても手続が重くなって重装備になってしまいますから、例えば認証が認められなかった場合の不服申立手続にかませるというようなことがあり得るのではないかなというふうには思っています。弁護士会の方も、まだちゃんと検討されていませんので、追加的に意見を述べることがあるかもしれません。全体としてこういった仕組みを作って法律上の効果を与えていくことは、審議会意見書が裁判との選択肢として、それに大きな期待をしているところにつながることだと思いますし、審議会意見書自体については、解釈はいろいろあったかもしれませんけれども、この検討会の中で大きな反対はなかったというふうに認識しています。
だから、裁判との車の両輪として育っていくということを期待し、それを図っていかなければならないというふうに思いますし、今、現状だけ考えていたら、確かにこのままでもいいのかなという感じの意見にもなりがちなのですけれども、やはり21世紀の民事司法を考えて、その制度基盤を整えていくというのが検討会の役割だと思いますから、そういう意味では積極的に考えるべきだろうというふうに思っています。
司法ADRは、今までは通常事件を中心にADRをきちんとおやりになっていたわけですけれども、最近では専門訴訟、医療とか、建築に関する専門的な訴訟のADRもかなり盛んになってきています。恐らく、一定のノウハウが確立すれば、それは必ずしも裁判所で行う必要がないものも出てくるだろうというふうに思います。
今後、裁判所が活躍すれば、活躍するだけ事件というのはどんどん増えてきますし、そうなったときに今の体制でやれるかどうかというと、やはり対応の問題もあるわけですから、裁判所と同程度の仕事ができるようなところを育てて、弁護士会ADRなど実務処理が可能なところに回付する。回付はここでは取り上げられませんでしたから、中止と申立てを組み合わせるということになるわけですけれども、こういうことがあっていいと思うし、その受け皿として、裁判の受け皿になり得るようなものを制度基盤として用意するというのが、ここでの役割だというふうに思います。
ですから、そういうふうに受け皿になったときに、出口の処理というのが、やはり問題になると思うので、過重要件として執行力を与えるということに賛成します。
以上です。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ龍井委員。
○龍井委員 座長が冒頭に視点として利用者の利便性ということを強調されましたが、私はその視点が一番基本だと思うのです。
そのときに、今日のお示しになった提案を規制法と見るのか、活性化法あるいは促進法と見るのかというのは、一に中身にかかっているわけで、私はそれは促進法、活性化法にしたいということです。
そのときに、何が活性化かというと。このペーパーで現状を克服ということに多分なると思うのですが、とにかく機関であれ個人であれ、ADRというものが、まず社会的に認知されて、利用件数が増えて、しかもそれが実績として積み重ねられて、それで信頼が高まっていくと。それが結果的に自己解決力の向上だけではなくて、次代の担い手を育っていくと、そういう両縦貫を描くことだと思います。
逆に言えば、現状より悪くなるというのが想定されるのが、前回も申し上げましたように、訳のわからない暴力団関係者だけではなくて、事件屋さんなるものが跋扈して、まさにトラブルが増えて、結局裁判ざたに元も子もなくなると。それで結局、むしろそういう信頼、つまり元々求めていた自分たちの自己解決力というのが活性化するチャンスが失われてしまうと、これは絶対に避けなければいけないと。
そう考えたときに、今のスキームで、スキームの方がいいと思いますので、29-4の方で言うと、私はこの社会的な認知というものを認証というのか、私は途中で丸適マークというちょっと法律に馴染まない抽象的なことを申し上げたかもしれませんけれども、私はそれは、まず丸適マーク的なことからスタートして、結局、わけのわからないものが跋扈するときに、そうじゃないのだよという、少なくとも今もおっしゃられた安心感が与えられるというのは、初期動作としてあってもいいのではないか。したがって、全部がクリアーされるのではなくて、まさにこのチャートにありますように、そういうことを求めていくということが、結果的にまさに丸適的な信頼度が深まっていき広がっていくと、まずそういう初期動作が必要なのかなと。
前回のまとめのときに、これも座長も第一段階ということを強調されておりましたように、私はそこから次の姿というのは、またその次の段階で考えればいいかなというふうに実は考えています。つまり、そういう実績を見ながら考えた方が良い。
したがって、確かに法律の案としては、最後の法的執行力の付与まで含めた認知ということを法律のスキーム上、やるということは考えられないわけではありませんし、またそれはレベル2で、レベル1とはまた違う要件を課して、更にそれを求める者については高いハードルを設けるということはないわけではありませんけれども、私はそこであまり無理をして作るよりは、第一段階はそこでよいのかなというのが率直な思いです。
それが、いやそうじゃないのだと、例外的にそういうのもあっていいし、法律上もそういうのが規制法のイメージを与えない範囲でできるのだという知恵があれば、それは私は否定はしません。ただ、全体の法律のイメージ、促進法というイメージがどういうふうに社会に受け取られるか。冒頭に御指摘になった利便性の所に、法律が先にありきではなくて、利便性がちょっと進んでいく、信頼が深まっていくというメッセージになるかというところで、私は最終的に判断をしたいと思っていますので、その範囲であれば、一々コメントはできなくて申し訳ありませんけれども、廣田委員の御指摘もそういうメッセージが全面に出れば、私はゼロとは言いませんけれども、少しはいい方向に向かっていくのではないかと思っております。
以上です。
○青山座長 三木委員どうぞ。
○三木委員 今、龍井委員がおっしゃったことに総論的には賛成する部分がございます。この新しい制度を設ける場合に、今、行われていることが萎縮するようなものであっては困ると。今、行われていることが、今のとおりおかしなものでなければ、生き生きと思われて、かつ更にそれ以外に新しいADRが参入してきたりとか、利用が増えたりという活性の姿が出てくると。
そういう意味では、今のお言葉に従いますと、規制法的な色彩を帯びては元も子もないというので、促進的な色彩を帯びる姿でなければ困るというふうに思います。
したがって、抽象的に申しますと、認証制度の導入にどこまで賛成するか、反対するかというのは、やはりそこの内容に関わってくるのだろうというふうに思います。
そういう観点からは、この認証制度の必要性という29-3の2のところで書かれている2つのことで、2つとも一般論としては目的になり得るかもしれませんが、これについては、先ほど廣田委員もおっしゃり、あるいは原委員も賛成されたように、恐らくは、今、考えられているような法的効果が付与されたからといって、それによって目覚ましい促進の効果があると考える人はあまりいないのだろうと思います。
その意味では、こういう制度を何らかの形で導入するとすれば、(1)にある国民の選択の目安とか基準が示されるという方を中心に考えて、その目的がよりよく達成できるような仕組みを考えていくべきではないかと思います。
その中身については、いろいろ御意見があるかと思いますが、私がよくわからないといいますか、場合によっては、このあと議論の対象にしていただきたいのは、このペーパーを見ますと、基本的にはADR機関について認証を行うという仕組みを前提にしておられますけれども、どうしてこれがADR機関の認証が前提になっておって、実際にADRを行う調停人の方の認証の姿が基本になっていないのかというところが、よくわからないところであります。
これは、今までの検討会でもいろいろ出てきましたし、皆さんも十分御承知のように、ADR機関というのは、ADRを自ら行うわけではなくて、それは例えばそこのリストに挙がっている調停人のどなたかが事件を扱う。ADR機関は、その調停の内容について指揮・命令権限もありませんし、内容の報告も行われていないと思いますし、また、行うこと自体が望ましいかどうかということもあると思います。
そういう意味では、ADRが適正かどうか、それによって利用者が被害を受けるか、あるいは満足するかというのは、機関ではなくて実際にADRを行う調停人にかかっているのだろうと思います。
したがいまして、仮に機関が立派であるから認証したといっても、具体的な事件で任命される調停人がいつもおかしな人であれば、それはおかしなことになるでしょうし、反対もまた不信だろうと思います。
そういう意味でこのペーパーを見ますと、いくつか議論の混乱とか、あるいはミスリーディングなところもあるように思います。
例えば、すべて挙げることはいたしませんが、例えば29-3の6.の(2)で「公正・適確にADR業務を行う能力」というのは、これは調停人のことを言っているのだろうと思いますし、経理的基礎というのは、機関の方を言っているのだろうと。これを単純に並列しております。
あるいは、7.の方でも、例えば(3)の「手続準則の遵守」というのは、これは基本的には調停人が手続準則を遵守しているかどうかということになるのだと思いますし、更により典型的には、(5)の「業務上の秘密の保持」というのは、これは普通の場合には、調停人が秘密を知るのであって、機関が秘密を知るということは皆無とは申しませんけれども、あまり想定できないことが多いだろうと思いますので、これも調停人のことだろうと思います。そういう面では、調停人の方をやはり押さえなければいけないことの方が多いのではないかと思います。
先ほど、原委員がおっしゃった中で、私も共感を覚えますのは、ペーパーの中で、他にもあると思いますが、気になるのが8.の「認証後の監督の内容」というところで、これが制度を非常に重く暗い感じにしているところであり、かつ、これをやったからといって、ADRの質とどれだけ関係があるのかなという気がいたします。
というのは、例えば(1)についても、帳簿といっても機関が作成する帳簿というのはADRの中身とは関係のない、受付をどうしたかという程度ですし、事業報告というのも、機関としての報告書の中身というのはあまり意味のあるものはないのだろうと思います。
それから(2)の報告徴収、検査にしても、これはちょっと何を意味しているのかよくわかりませんけれども、ADR機関がADRの個別の事件の検査というのはできないだろうと思いますし、どういう意味がわかりませんけれども、ややピントがずれているような気がいたします。
いずれにしましても、実際に事件を担当する調停人のところで、認証というのを考えるということとの関係がどうなっているのかということであります。
更に申しますと、おそらく今後の議論で重要な意味を持ってくるのは、弁護士法72条との関係だろうと思いますが、弁護士法72条というのは実際に調停なりを行う人との関係で規律がされているのであって、機関との関係で72条違反という話では直接にはないはずですから、その関係でもストレートに調停人を押さえる方がいいのではないかという気がいたします。
冒頭に参事官の方から、どうして機関の方の認定をするのかということに関して若干の御説明がありました。それは4.の判断要素との関係での説明でした。
1つは、現在の段階では、まだ研修制度のようなものが整っていないからだと。ただ、これは要はどういう基準で認証するかという基準の問題如何なのだろうと思います。
例えばですが、現在、問題なく行っているADR機関の調停人として活躍されている方、あるいはリストに載っている方は、とりあえずデフォルトとして認証するというのであれば、さほど研修がどうということは問題にならないところです。それが唯一の方法であるとは勿論申しませんけれども、要は基準の問題であろうと思います。
もう一つおっしゃったのは、利用者である国民は、調停人ではなくて機関の方を見るんではないかと。それはそうかもしれませんが、それもここで言う認証の対象をどうするかという問題とはまた別の問題で、それは広報をどうするかとか、あるいは一般人に対する認証の結果の告知方法をどうするかという問題だろうと思います。
すなわち、例えばうちの機関は認証を受けた調停人ばかり揃えておりますというふうにいうのと、うちには一人もいませんというのでは違うし、要は認証の対象の問題と直ちにリンクするものではないだろうと思います。
いずれの姿を採るにしましても、先ほど来、廣田委員、原委員、あるいは龍井委員もおっしゃった、全員に共通していることは、これによって行政による規制色のようなものが強いイメージは困るということであれば、おそらく対象が機関であれ、調停人であれ、認証の内容というのは抑圧的でないものを基準に考えていくという御意見が多くなると思います。したがって、そことの関係でも対象が機関の方がいいのか、個人の方がいいのかということは考えていかなければいけないというふうに思います。
とりあえず以上です。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
山本委員どうぞ。
○山本委員 私も今まで多くの委員の方が発言されたように、全体の法律のイメージとして規制法的な色彩を帯びるべきではないと、促進法的なものであるべきであるというのは、全くそのとおりだろうというふうに思っております。
最初の廣田委員の御発言との関係では、私自身は1.の骨格の問題として、基本理念の規定のみでは、必ずしも十分ではないのではなかろうかということであります。これについては、繰り返し申し上げてきたところでもありますし、確かに法的な効果を付与したから、それによって、今、三木委員が言われたように目覚ましい促進の効果が出るということはないだろうということは、おっしゃるとおりだろうと思います。
しかし、それは短期的にはそういう効果は出ないだろうというふうに思うわけでありますけれども、やはり中長期的な視野に立てば、ADRにそういう意味での裁判等とのイコール・フッティングを与えるということは、徐々にボディーブローのように少しずつADRの拡充・活性化への方向の助けになるだろうというふうには思っています。
そして、おそらく今までの御議論の中でも、この検討会でも時効中断効を認めるべきであるということについてはおそらく異論がなくて、そしてそれについてどういうスキームで認めるかということを非常に真剣に議論してきたというのは、恐らく委員の方々の間で、それが意味があるというふうに思っておられたからなのではないかというふうに私は認識しておりまして、そういう意味では、やはり法的効果の付与というのが可能であれば、それを目指すべきであると。これは審議会の意見書においてもそうですが、やはりここの検討会においてもそういうことだったのではなかろうかというふうに思っている次第であります。
勿論、認証制度を採ることについての問題点というのは検討会でも、それからパブリック・コメントに対する意見の中でも様々な理由を付して、そういう意見が述べられているわけです。
私自身のそれについての見解を、今までまとめて述べる機会がなかったものですから、少し私の意見を言わせていただきますと、一つの理由、廣田委員が言われた理由もそれだと思いますけれども、私的自治あるいは国が介入することによってADRの本質が変容するのではないかという御懸念でありますが、これは確かにもっともなところがある御懸念であろうというふうに思うわけですが、これは事務局が言われているとおり、これは認証を得なければADRの業務ができないということでは、おおよそないわけでありまして、まさにADR機関が任意に選択するわけでありまして、そういう国の規制を望まないADR機関は認証を受けずに、御自分の努力といいますか、様々な積極的な情報開示とか、あるいは紛争解決の実効性を上げていくということで、クライアントを誘引すればよいわけでありまして、そういう認証というような形で顧客を誘引するか、それ以外のマーケティングの方法によるかというのは、ADR機関のまさに自由、業務上の判断、ビジネス・ジャッジメントに委ねられているわけであります。
そういう意味で、これはあくまでも選択肢を増やす手段に過ぎないというのは、私もこの検討会で何度も申し上げたかと思いますが、そういうものに過ぎないのであろうというふうに私は思っております。
ただ、勿論、それによってADR機関が事実上差別化されるのではないか、一流ADRとか、二流ADRというようなものができるのではないかというような御懸念もパブコメの中であったところでございますけれども、これはやはりそういう誤解が生じないように、これはパブコメの中でもそういう一般の注意を喚起する必要があるという御意見があったわけでありますが、そのとおりだろうというふうに思います。
実際問題としても、果たして、先ほど原委員が言われたように、どの程度のADR機関がそういう認証を求めてくるかというのは、ちょっと予測しがたいところがあるわけでありまして、必ずしもそういうものを求めなくても十分であると、自分のところは既に国際的に、あるいは国内的に十分な実績があって、特にそういう法的効果も必要としていないというようなことであれば、そのまま認証を受けない非常に素晴らしいADR機関というものが出てくる可能性も十分にあるのだろうと思うわけです。
私は、この制度は、むしろ逆にと言いますか、従来必ずしも十分な実績はないけれども、ADRを立ち上げたいと、そして利用者の信頼を得てやっていきたいという新規参入組と言いますか、そういうところにとっては非常に有用性が大きいのかなと思っているわけでありまして、従来、あまり実績がないということになると、なかなか依頼者の信頼を直ちに得るということは難しいわけでありまして、言い方は悪いかもしれませんが、何らかの突っかえ棒みたいなものが必要になってくると。
そういうようなところが、円滑にADRのサービス市場に参入してくるということを考えれば、むしろこの制度というのは、ADRの多様性に資するものであるというふうに思っているわけであります。
それから事前規制、これも事前の認定になるわけですから、事前規制になって、事前規制は避けるべきであるというのが、今の日本社会の全体の潮流ではないかと、それに反しているのではないかというような御意見もあったかと思います。
しかし、これも最初の問題と関係しますが、確かに参入規制を伴うような事前規制というのは避けるべきなのだろうと思いますけれども、この場合は、参入は完全に自由なわけでありまして、そういう意味での事前規制とは質が違うということは間違いないだろうと思います。
それから、この点で注意しなければいけないのは、そもそも紛争解決サービス市場というのは、完全な自由市場の下に置かれていないということでありまして、既に裁判所という機関があるわけです。あるいは司法型、行政型のADRの機関というのもあるわけでありまして、そこは様々な形で国が関与することによって、一定のサービスの質を担保しているわけであります。
それで民間型ADRの充実・活性化ということを考える場合には、先ほども述べましたように、そういうところとのイコール・フッティングというのを考える必要がある。そして、なるべく民間の創意工夫を生かして、民間の活力を紛争解決サービスの面でも活用していこうということが望ましい方向なのであるとすれば、認証に基づいて一定の法的効果を付与して、イコール・フッティングを図るというのは、むしろ私自身は規制改革の趣旨にかなっているものであるというふうに認識しております。
それから、こういうような制度は世界的に見ても異例ではないかと、国際的に通用しないのではないかという御議論もあったかと思います。確かに、そのとき国際的という場合にどこの国を見ているかというのは、よくわかりませんが、アメリカ合衆国が念頭に置かれていることが多いようにも思われますけれども、私はアメリカ合衆国の事情はよく存じ上げませんけれども、アメリカ合衆国に仮にそういう制度がないとしても、それは日本とADRの置かれている状況というのが全く違うということは認識しなければいけないのではないかと思います。様々な事情でアメリカでは民間ADRが自立的に発展しているということは、周知の事実だろうと思うわけでありまして、日本と前提となっている裁判制度、あるいは司法型ADRや、行政型ADRの実態というものは全く違うのだろうと思うわけで、アメリカでないから日本でもなくてよいと、あるいは日本であってはいけないということにはならないのだろうと思います。
そして、アメリカ以外の国に目を転じてみると、世界的に見て果たして全然そういうのがないのだろうかということも疑問でありまして、今日の事務局のペーパーにもいくつかの例が挙がっておりました。
私が承知している限りでも、例えばフランスなどは、法律の規定上は裁判所が一定のADR機関を選んで、そこに事件を送るという形になっておりますが、事実上は事前に事件を送付するADR機関というものを裁判所、認定ということではありませんけれども、事実上裁判所とADR機関との間で一定の協議といいますか、そういうものがあるというふうに承知しておりますし、あるいはイギリスやオーストラリアなどでは、限られた分野かもしれませんが、金融関係のADRについて、一定の行政機関が認定したADR機関に加入していないと、金融機関に対する免許が付与されないというような形で認定制度というものが存在しているというふうに承知しておりまして、そういう意味で、こういう制度を設けたからといって、世界的に非常に奇異であるというほどのものではないのではなかろうかというのが私の認識であります。
以上が認証制度についての今まで挙げられてきた批判の理由に対する私の印象といいますか、意見であります。
あと、各委員からの御意見について若干のコメントを申し上げたいと思いますが、まず、龍井委員のお話で、まずレベル1といいますか、選択の目安としてのADRと認証制度というもので立ち上げたらどうかというのは、大変理解できる御議論であるというふうに思います。そういう政策判断は、一つ十分あり得るものだろうと思います。
ただ、これは法的効果を付与する際の認定のレベルをどの程度のレベルを求めるかということとも関係すると思うのですが、私の認識では、効果の9.の(3)に挙がっているような時効の中断とか、訴訟手続の中止、あるいは調停前置の関係での求められる認証のレベルというのは、それほど高いものではないのではないかなというふうに思っておりまして、もしそうであるとすれば、むしろ龍井委員の言われるレベル1と事実上ワンセットにできるものではなかろうかというふうに思っている次第です。
全く、正に選択する目安ということだと、法的効果としては、おそらく名称の使用制限だけということになるのかなというふうに思うわけですが、現実にADRに対する認定の制度というのは、日本でも既に存在するわけでありまして、私の知っている限りで一番新しいものとしては、個人情報保護法に基づく認定個人情報保護団体という制度があります。
これは、まさに任意の認証、認定の制度でありまして、主務大臣が認定するわけで、その要件についても欠格事由とか、あるいは経理基礎とか、業務の実施方法とか、そういうものが定められていますし、主務大臣の報告徴収権や改善命令権、それから認定の取消等も定められております。個人情報保護法の37条以下に規定があるところでありますが、それでそういう制度が既にあるわけですが、その制度は効果としては名称の使用制限しか定めておりません、個人情報保護法の44条です。
私が若干仄聞している限りでは、それで果たして認定を受ける団体の方で、どういうメリットがあるんだろうということがかなり言われているというふうに承知しております。つまり、認定を受けるだけのメリットがコストとの見合いであるのかどうかということであろうかと思うわけです。確かに選択する目安になるということは、利用者から見て目安になるということは間違いないわけですが、これがどの程度の意味を持つかということは、なかなかやってみないとわからないところもありまして、私としては、立ち上げの段階だから低く抑えるというのは、一つの議論として大変よくわかるわけですが、私は立ち上げの段階だからこそ、もう少し目に見えるような効果をプラスして付けた方が制度として立ち上がりが円滑になるのではないかというふうに考えているという次第です。
それから、レベル2の執行力については、これはいろんな御議論があるところで、私自身は法律の規定上、少なくとも執行力についても規定した方がいいのではないかという髙木委員と同じ考えを持っておりますけれども、これはまた今後の議論ということだと思います。
それから、三木委員がおっしゃられた主宰者の能力でむしろそのADRを認証すべきであるという御議論も、これも私は非常によくわかります。これについては、前に私は意見を述べたところだと思いますし、中長期的にはそういうADR士というような資格が設けられるということは望ましいことだというふうに思っております。
しかし、現段階での議論としては、やはり私自身は人だけを認証するというのは、なかなか難しいのではないかという、結論的にはそういうふうに思っておりまして、現段階で、確かに三木委員は基準の問題でそれはクリアーできるというふうにおっしゃったわけですが、それもわからないことはないのですが、現段階で果たしてすべての領域のADRの主宰者にどういう能力が必要とされるかということについて十分なコンセンサスがあるかというと、私自身はややそこは疑問を持っております。どういう程度のコミュニケーション能力があればいいのかとか、どの程度の法的な判断能力が必要かというところについて、必ずしも多くの人が一致したような基準、レベルというものを設定していくということは、なかなか難しいのではなかろうかなというふうに思っておりまして、現段階では人の要素というものを非常に重視すべきだということは、そのとおりだと思いますが、それを手続あるいはそれを補佐する組織といったようなものと総合して評価して、ADR機関として評価していくという方式が穏当なのではなかろうかというふうに思っております。
先ほど御紹介した個人情報保護法における認定個人情報保護団体も、言うまでもなく、これは団体を認定の対象としているわけであります。
それから、最後に原委員がおっしゃられた認証主体の問題として、認定手続等に第三者機関を関与させるということは、これは私は是非お考えを、事務局にもいろいろ御工夫をいただきたいというふうに思っております。事務局から言われたように、そういう独立性とか、専門性とか、透明性というような観点から、その点を考えまして、それから国の直接的な関与という色彩をなるべく薄くするという観点からもそういう工夫は必要なのではなかろうかと思っております。
例えば、これは全く思い付きですが、今、国会に出ている法案で、先ほど御紹介があったように、日本司法支援センターというものが設けられて、そのセンターの活動内容の一つとしては、ADR機関等への事件の振り分け等の業務も行うというふうに承知しておりますので、その過程では当然センターには、いろいろなADR機関についての情報が集まってくるということになるのだろうと思うわけでありまして、そういったような情報もその認証のために活用していくというようなことも工夫の一つとして考えられるのではなかろうかというようなことも思っている次第です。いずれにしろ、この辺りは具体的な制度の議論の段階の話だろうと思います。
とりあえず以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかに、まだ発言をされていない方を優先してお願いしたいのですが、佐成委員どうぞ。
○佐成委員 冒頭廣田委員の方から御発言がありましたが、私も従来から事前確認というものについては反対しておりまして、その点では変わっておりません。ただ、議論をこの段階で打ち切ってしまうということについては、まだ躊躇を覚えます。認定制度の導入も視野に入れつつ、幅広く議論していくということが大事かなというふうに考えております。
そういう意味で、現段階では認定制度を承認するかどうかについては、意見を留保しております。
議論の過程で出来上がっていく認証制度というものが一体どういうものになるのかというところによって、最終的な判断をしたいというふうに考えております。
あまり細かい論点に触れると、ちょっと時間の関係もありますので、簡単に申し上げておきます。まず、現に優良に活動している、三木委員も先ほどおっしゃっておりましたけれども、ADR機関が今回の立法によって規制されてしまうという点です。その点ほかの委員もおっしゃっておられましたけれども、とりわけ現に優良に活動されている機関が、受けようと思えば、受けられるという程度の認証制度である必要があるのではないかと考えます。スクリーニングをかけられてしまって、受けたくても受けられないとか、の状態になってしまうのではあれば、要するに認証制度の利用者が非常に少なくなります。利用する人が少ないかどうか、先ほど予測できないだろうというふうな御発言もございましたけれども、利用が少ないような制度にあまりコストをかけてやってもあまり意味がないなという気もいたします。やはり多くのADR機関が幅広く認定されるような形にしたい。勿論、弊害とか、効果等の面は考えなければいけないと思うのですが、やはり、現状で優良にやられているものは、ほぼ全て幅広く取り入れられるようなレベルに落ち着く必要があるなという点が1つ。
それから、やはり国民経済上のコストですね。ADR機関のみならず、利用者に最終的には振りかかるような国の制度として作るわけですから、あまり重厚なものになってしまいますと、コスト的に問題があるなという点がちょっと気になっているというのが1つです。
それから、あとは72条の問題についてですが、29-3でいきますと、9.の(2)ですが、この点については、今までは私も事前確認制を採らないという前提で、ある程度の弁護士の関与というのを発言しておりますけれども、仮に何らかの認証ということになりますと、アではなくてイという方向ですね、むしろそういった弁護士の関与というのをなしにやらないと、あまり意味がないのではないかなというふうに今の段階では感じております。それから、認証制度そのものが将来どうなっていくかという点も気になります。永続的にずっと続いていくのかどうか。将来ずっと永続的になっていくような制度として本当に望ましいのかなという疑問です。それは元々議論ですけれども。ですから、時限立法とか、何かそういったようなイメージもあり得るのかなという気がしております。
あともう一言だけ申し上げておくと、一言というか、二言ぐらいですが、29-2という図のところで、国民の間に理解不足というところがありますが、これについては、とりわけ法曹関係者といいますか、企業法務なんかも含めてですけれども、そういったところに対する教育といいますか、周知ということも非常に大事になってくるという点です。ですから、ロースクール、あるいは学部教育を含めた法曹教育の段階での周知とか、PRとか、そういった活動も必要になってくるだろうと思います。これはまた理念の話でしたいなと思っております。
それから、やはり29-2の図のところで、最後に自由に選択できる社会となっているわけですけれども、自由な選択が利用者にとって最適な選択とは必ずしも言えないかもしれないので、そこはやはり配慮していかなければいけないと考えます。特に、消費者という立場についてです。企業は割とその点は合理的な選択が可能かもしれないですけれども、消費者の立場を十分考えた上でなければ、自己責任というのは必ずしも望ましいものではないと感じております。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかに、安藤委員どうぞ。
○安藤委員 今までずっと伺っていましたけれども、何となくまた1年かかりそうな気がしたので、この29-3には1.から11.まであると思うのですが、1.の(1)が既に80%の問題ではないかと思うのですよ。1.の(2)以下の問題というのは、そのうちの20%。
それから、3番の「認証制度の性格」という中で、(1)(2)のどちらかを選ぶとして(1)を選んだとすれば、それ以外の問題というのは、本当に2~3%の問題であると。何か基本をしっかり決めてしまえば、それに伴ってレベルがずっと決まってくるような気がするので、その点でもう少し討議をされたらどうなのかなというふうに考えます。
今の形であらゆるものが同じ重さでもって議論されるということであれば、これは裁判とどこが違うのかというような状況になってしまうと思いますので、もう少しADR、この1.の(1)ですね、それの理念がしっかりできたぞと、そして、それ以外の人にどうやった認証制度を必要とするのか、機関が必要とする、利用者が要求するもの、この辺を考えていったら、もっともっと非常にレベルの低いものにしなかったら、そんな高い要求を取られるのであれば裁判に行ってしまうと、こういう問題も出てくるのではないかなと思います。その辺の大枠をもう少しはめられませんか。
○青山座長 どうぞ綿引委員。
○綿引委員 今日の議論で、議論の大枠は出来てきているのではないかと思うのです。廣田委員が反対の立場をとっておられるのは十分承知の上で、取り敢えず認証制度とセットにした法的効果の付与について一応考えてみようということ、ただそれがADRに対する規制につながらないように、促進活性化の方向に行くようにという基本的な大枠は多くの方が一致しているお考えなのだろうと思うのです。
ただ、先ほども山本委員が、ここまでの法的効果だったら認定基準のレベルはそんなに高くならないし、執行力を付与するとなるとちょっと違ってくるだろうというような言われ方をされましたし、佐成委員が72条関係についても認証制度とかみ合わせた場合には、また違ったことになるのではないかと言われました。これらの点は、認証制度の仕組みの方の中で、組織の在り方とか何かが基準になってくれば、認証機関で行われる調停であれば、弁護士法72条が外れるというような考えにもつながると、いくつかのヒントは今日の議論の中で出てきていると思います。ただ、認証制度がどんなものとして組み立てられていくのかというのが具体化してこないと、今後の議論というのはしにくいと思います。
それと、やはり法的効果がどこまで付与されるのかということとの関連も常にあると思いますので、今日は大枠の、ある意味方向性が出ていると思いますので、それを前提に、まず少しそこを具体化するような議論をやってみてはどうかなというのが私の意見です。
あと、もう一点、三木委員が言われた仲裁人に対する認定であるべきだという点ですが、本来、最終的にはそこに行くべきなのだろうと思うのですけれども、事務局も説明されたように、まず、消費者が、また利用者がADRを選ぶといったときに、A仲裁人にやってもらいたいというよりは、この組織を選ぶか、この団体を選ぶかどうかというところに認証制度がかかわってくるのではないかと思うので、まず、その団体の認証という観点から、この段階では基本的な枠組みを考えてみてはどうかなというふうに思っております。
ですから、そういう意味では、ある程度今まで議論してきた上での今日の議論で、一定の方向性は出てきているように思いますので、多分1年はかからず、6月までにと期待しております。
○青山座長 まだ御発言いただいていない方、平山委員何か御意見はございますか。
○平山委員 最初、廣田先生のお話を聞いて、これは大変なことになってしまったなと思ったのですけれども、まず、最初の検討会で国民に理解される基本法と、それからそれがいろんな面で利便性とか、何かを当然考慮しなければいけないと。そうすると、基本理念だけでは、やはり足りないのであって、それである程度の法律的な裏づけ、それは今皆さんがお話のように、そんなにハードルの高くないもので決めていけば、必ず理解されるようなものができるのではないのかなというような気がいたします。
そこで、今までの皆さんのお話のように、1.の(1)については十分議論されて、それに、今、私がお話したようなことを少しずつ付加していって、国民が理解するというのでしょうか、取っ付きやすくなるというのでしょうか、そのような形になるのではないのかなというような気がしますので、そんな形でお進めいただいたらいいのではないかという気がいたします。
○青山座長 どうぞ廣田委員。
○廣田委員 皆さんの意見に対していろいろあるのですけれども、これを言い出すと切りがないので、大まかなことしか申し上げませんけれども、まず、龍井委員だとか、三木委員がおっしゃった、選択の目安とかそういった問題は、基本法制を作ることの中で、殆どクリアーできる問題だと思っているのです。
ですから、私が申し上げたいのは、そういった皆さんがおっしゃった促進をするために、こうしたらいい、ああしたらいいと言われたことは、ほとんどそこでできると思っているのです。
ということは、逆に言えば、事前認証制度に結び付けなくてもできることだと思います。それを結び付けて考えるから話がおかしくなる。基本法制をつくることについて私は賛成します。そういうふうにあるべきだと思っているわけです。
それから、皆さんは、やはり規制法というものには反対だとおっしゃる方と、そういう色彩を出さないようにというふうに言われる方がいますが、要するにこれは促進法にしようということでは、ほぼ一致していると思うのです。
ですから、そういう意味では安藤委員がおっしゃったように、基本法制の中で促進的にできることについて、どうやるかということを中心的な議題としたいということです。先ほど申し上げたのは、その趣旨だったのです。
もう一つ、私も実は研修プログラムだとか、いろんな制度設計や何かにかなり関わっています。やってみてわかることなのですが、これは事実がものをいって、法制度として何かやればどうにかなるという段階では今のところはないと言っていいと思うのです。やはり基本的におおらかな、ADRはいいぞと、皆さん利用しようじゃないかと、皆さんも使ってみてくださいと、国民にこういうことはいいですよということを言って、そのことをやって事実で固めていくということが必要です。龍井委員の言葉で言えば、それから第2段階という格好になると思うのです。そこで初めていろんな問題を議論していく。第一議論が足りないですよ。この議論をするためのデータが非常に足りない。ましてや、この問題については、ADR機関の意見もまだ聞いていないのです。そういう意味では、私は安藤委員がおっしゃるように、まともにやれば1年かかりますよ。誠実にやれば1年かかると思っているのです。
それと丸適マークのことも、1つの方法だと思うのですが、これもやはり事実の問題で、何しろ法律制度、法律とか事前認証制度にリンクしなくたってできるし、むしろ自主的に協議をしながら、これが望ましいというものが生み出されてくればいいのです。これも私はある程度、これに関連したことは参与していますけれども、なかなかそれは時間がかかりますよ。ですから、法律によってこういうものをやるというのは問題で、慌てて法律を作ることはないというのが私の意見です。
それから最後に言いますが、私が一番心配しているのは、規制法を作るのではないぞと言いながら、促進法と言いながら事前認証を上手くやれば促進法になると思ったら、私はそうはならないと言っているのです。そこは皆さんと意見が違うのです。事前認証制度を導入するということと、促進するということとはジレンマに立っていますから、それはそうはならない。促進法を作るつもりで認証制度を導入してあれこれ議論して、この程度ならいいだろうと思ったら、それは規制法になりますから、私はそれをおそれているのです。だから、そこのところを実際に議論してみればわかると思います。実際に出てきたペーパーは、これも事務局はできるだけ規制色を少なくしようと思って出されたペーパーだと私は認識していますけれども、私は規制法になると思っていますから、その辺を念頭に置いて議論していただきたい。何かそこに希望的な感覚を持っていれば、間違えてしまいます。そこまで議論することは時間がかかる問題だと私は思っています。
以上です。
○青山座長 それでは、時間も大分迫ってまいりましたし、一応、委員全員の御発言も承りましたので、今日の問題を次回にまた引き続いて御議論いただきたいと思います。
この際に、最後に綿引委員が整理されたように、ある程度の一致点と方向性が出てきましたので、その流れを妨げないような方向で次回に議論させていただきたいというふうに思っております。
次回の議論と関連して、専門家の活用に関する検討の進め方につきまして、もう一つ今日は資料を出していただいています。それは29-5という資料でございますが、これについて簡単に御説明いただけますか。
○小林参事官 それでは、29-5について御説明をしたいと思います。
ADRの問題につきましては、勿論、ADRの共通的な制度基盤をつくるというのが1つの大きな目的であるわけでございますが、併せて専門家の活用を図っていくということがもう一つのテーマといいますか、サブテーマ的なものとして意見書では取り上げられているわけでございます。
これについての検討は、ADR全体についての検討と非常に密接に関連しているわけでございますが、これまでも何度か御紹介させていただいたように局面によってややその関係というのが異なるのではないかというふうに考えられます。
1つは、この資料で申しますと、1.の主宰者の部分でございますが、この主宰者として専門家の方を幅広く活用を図っていこうということにつきましては、これは対象となる専門家の方は非常に広範囲の方が考えられますし、また、この主宰者を誰がやるのかというのは、先ほど来議論になっておりますように、まさにADRの制度基盤をつくる際の大きな論点の1つということでございますので、この問題については1.の今後の進め方のところにあるように、今日の議論も含めまして、ADR法全体の議論の中で検討を進めさせていただきたいというふうに考えております。
もう一つの局面は代理人として活用をしていくということでございます。これについても、何度か議論させていただいたわけでございますけれども、まず、主宰と異なりまして、代理につきましては、直接に当事者の権利義務を処分するということでございますので、相当高度な法律的な知識、経験が必要でございますし、ある意味では責任なり倫理の問題も要求されるということになるわけでございます。
また、実態的に見ましても、主宰の場合と異なりまして、元々ADRというのは、やはり裁判とは異なりまして、紛争当事者がある意味では主役になるということでございますので、代理人を必要とするケースというのは、ある程度限られてくるのではないかというふうに考えられるわけでございます。
したがって、こういったことを踏まえまして、代理人の議論につきましては、むしろ社会的なニーズの存在、あるいはそこで考えられている代理人候補者の専門的能力あるいは法律的能力についての議論というのを紛争分野や、あるいは職種ごとに個別的に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
具体的な検討の進め方でございますが、仮にADR法と呼んでおきますけれども、そのADR法についての議論のスケジュールが非常にタイトであるということもございますし、検討の内容が先ほど申しましたように、かなり個別的な専門的な内容にわたるということもございますので、この場で言わばゼロから議論するということではなくて、ある程度私どもの方で関係方面と調整なり、あるいは検討を進めさせていただいた上で、時期を見て検討会の方に御報告、検討をお願いするというようなスタイルで、とりあえず進めさせていただきたいというふうに考えております。
以上、2点について進め方として、そのような形でいかがかということでございます。
○青山座長 今の御説明のように、主宰者としての面は、このADR法とも言うべき法律でどうするかということを一般的にここで御議論をいただくと。
代理の点につきましては、ここでゼロから議論をするのではなくて、事務局の方で用意していただいたものを、いずれここに御報告いただき、あるいはその場でまた意見を言える機会があるかもしれませんけれども、そういう形で分けて進めたいということでございますが、この進め方につきまして、何か御意見はございますでしょうか。
よろしゅうございますでしょうか。
(「はい」と声あり)
○青山座長 それでは、そういうふうにさせていただきたいと思います。
○三木委員 言葉の問題なので、どのタイミングで言うか、ちょっと躊躇しておりまして、瑣末と言えば瑣末な問題ですので、主宰者と先ほど言葉が出て、私はさっきから調停人と言っているのは、主宰者という言葉があまり好きではないからそう言っているのですが、これはほかの委員の御意見も伺わなければいけないと思うのですが、法律になる段階で、主宰者という言葉を使うという前提なのか、あるいは法律になるときには、調停人とか、あるいは調停人または仲裁人という言葉になるのかということにもよるのですが、もしこれが法律用語になるという前提で議論されているのでしたら、この言葉が本当にいいのかどうかは一度お諮りいただきたい。
と申しますのは、言うまでもないことですが、ADRの認識にもよりますけれども、あくまで紛争当事者が主役であって、別に調停人は主宰しているわけではないのだと。事件によっては、むしろ望ましい姿は当事者が活発に議論をやって、調停人は中を取り持つだけが一番望ましい姿だという議論もありますし、原委員がずっとおっしゃっている、利用者が主体的なというイメージ、言葉というのは瑣末と言えば瑣末ですけれども、イメージとしては大きいものですから、法律用語になるのかならないのか、なるのであればこの言葉でいいのかというのは、一度どこかで議論をしておいた方がいいと思います。
○青山座長 ADRという言葉も含めて、いろいろな言葉を考えていかなければいけないことはおっしゃるとおりだと思います。
それでは時間でございますので、これで終了させていただきたいと思いますけれども、事務局には、次回は連休明けでございますので、本日の議論を踏まえまして、それぞれの論点について、我々が更に次回の検討で深められるような資料を準備していただきたいと思います。
次回の日程でございますが、次回は5月10日月曜日、午後1時半から検討会を開催し、論点に沿った議論を行うということにしたいと思います。
なお、事務局から今後5月の各週月曜日のうち、24日は予備日ということでございますが、5月の各週の月曜日と、6月14日という計5日間について候補日として日程の確保を個別的にお願いしているというふうに聞いております。まだ検討すべき事項がありますものですから、結局ほとんど毎週月曜日には集中的な議論をしていただくということで、大変お忙しい方々ばかりで大変強縮でございますが、是非この日程に御協力いただきたいと思います。
5月10日以降につきましては、先ほどヒアリングという話もありましたけれども、議論の進捗も見ながら、ADRの機関等からの御意見をいただく機会も設けながら、しかし、限られた時間の中で充実した議論を行っていきたいというふうに考えております。どうぞ御協力をお願いしたいと思います。
それでは、本日の検討会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。