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ADR検討会(第3回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時 平成14年4月15日(月)14:00−17:00

2 場所 司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、高木佳子、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(説明者)
田中圭子(全国消費者団体連絡会司法制度改革研究グループADRワーキンググループ
田島恵一(日本労働組合総連合会(全国一般労働組合中央執行委員長))
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議題
(1)民間ADRに対するアンケート調査の結果について
(2)ユーザーからのヒアリング
  • 経済団体連合会
  • 全国消費者団体連絡会
  • 日本労働組合総連合会
(3)討議

5 配布資料
資料3−1 民間ADRに対するアンケート調査の結果
資料3−2 御議論用メモ(参考)
資料3−3 経済団体連合会関係資料
資料3−4 全国消費者団体連絡会関係資料
資料3−5 日本労働組合総連合会関係資料

6 議事

〔開会〕
○青山座長 それでは、第3回「ADR検討会」を開催いたします。
 議事に先立ちまして、4月1日付で就任されました古口事務局次長を御紹介いたします。

○古口次長 古口と申します。4月1日付で事務局次長ということで就任いたしました。
 まだ不慣れですし、今までの資料等を一生懸命読んで勉強しているという段階です。早く皆さんのレベルに追い付いて、一緒に議論に加わっていきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○青山座長 どうもありがとうございました。

〔民間ADRに対するアンケート調査の結果について〕
○青山座長 それでは本日の議事に入ります。お手元に議事次第がございますが、本日は3つの議題で進めさせていただきたいと思います。
 まず、1番目に民間ADRに対するアンケート調査の結果につきまして、これは事務局から御説明していただきます。2番目にユーザーサイドからのヒアリングといたしまして、経済団体連合会、全国消費者団体連絡会、日本労働組合総連合会より、それぞれ御説明をいただくことにいたします。これらの説明者の方々の御紹介は、その場になりまして後に御紹介させていただきたいと思います。3番目でございますが、これまでのヒアリング等を踏まえまして、委員の皆様方にADRの現状や課題などについて御自由に御討論いただく時間を設けたいと思っております。
 このように本日は3本立てでございまして、大変盛りだくさんな内容となっておりますので、前回御連絡したときには2時間程度と御連絡してあるかと思いますが、若干時間を延ばさせていただきまして、午後5時までよろしくお願いしたいと思います
 なお、お二人のヒアリングが終わった段階で休憩を挟むという予定にしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最初の議題でございますが、ADR機関に対しまして実施いたしましたアンケート調査結果につきまして、これは事務局から御説明をお願いしたいと思います。

○小林参事官 それでは、ただいまからアンケート調査結果につきまして、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 お手元の資料の3−1でございます。まず4ページをお開けいただきたいのですけれども、ここに今回のアンケートの調査の対象となりました機関を列挙いたしております。公益法人、NPO、任意団体、それぞれここに掲げた機関に対しまして、アンケートを実施いたしております。
 これらの機関につきましては、ADRの関係の業務を行っていると思われるところ、これは私どもで関係省庁の御協力も得てピックアップいたしまして、その対象機関に対しましてアンケートを送付して、御回答をいただいたということでございます。
 ざっと御覧いただきますとわかりますように、かなりたくさん色々な性格の機関が入っておりますし、これを幾つかのグループにグルーピングするというのは可能だと思いますが、そのグルーピングしたグループ間のバランスというのは余り考えずに、できるだけ多くの機関から御回答をいただこうということで、お配りをしております。
 したがって、アンケート結果につきましても、全般的な傾向ということは、ある程度分かるのではないかと思いますけれども、そういった点ではアンケート調査としての限界があるということは最初に申し上げておいた方がよろしいかと思います。
 2ページ中ほどに、今申し上げた81機関に対しまして、アンケート調査を実施したわけでございますが、回収の状況は同ページ「3.回収状況」にございますように、63機関ということで、8割弱の機関から御回答をいただいております。その内訳は中ほどにあるとおりでございます。
 それでは早速、内容の方に入らせていただきます。15ページをお開けください。ADR機関におきます紛争処理の主宰者についてのアンケートでございますが、御覧いただきますように、仲裁、調停などにつきましては、「弁護士」、「大学教授」、「元裁判官」が多いという結果が出ております。それから、「消費生活相談員・アドバイザー」となっております。「その他の専門家」として注1にありますとおり、仲裁や調停におきましては建築士、不動産鑑定士、医師等が主宰者となっているということが分かるかと思います。
 また、一番右側「その他」として、あっせんや相談・苦情処理につきましては、事務局職員等が補助者として使用されているということが分かるかと思います。
 16ページ「標準的な紛争処理期間の分布」でございますが、仲裁、調停、あっせんと比べてみますと、仲裁や調停ではおおむね2〜3か月から半年程度までというところが中心になっておりまして、仲裁ではそれよりも長い期間掛かるケースがかなりありますし、調停ではそれより短い期間で終わることもあるということでございます。
 あっせんにつきましては、それよりは短くなっているという状況が御覧いただけるかと思います。
 17ページ「標準的な出頭回数の分布」でございますが、これは先ほどの期間より更に形態別に差が出ておりまして、仲裁ですと3〜5回程度、それから調停ですと2〜3回程度、あっせんですと1回以下がかなりの多くの比重を占めているということでございまして、仲裁、調停、あっせんの順に出頭回数は減っているということが御覧いただけるかと思います。
 18ページ「主宰者・代理人の選任手続の状況」でございます。まず、主宰者の標準的な選任方法でございますが、グラフの中ほど色の濃いところが「機関の用意したリストから当事者が選任」するというスタイルでございまして、これは仲裁も含めて非常にパーセンテージが低いということでございます。その下のやや色の薄い「機関が適任者を選任」するというケースが、いずれのケースでもかなりの比重を占めているということでございます。次に代理人の選任の可否でございますが、この表の下から2番目、「制限なく代理人に選任可」というケースは24%ということでございまして、逆に申し上げますと、代理人に特定の資格を要求したり、あるいは機関の許可が必要であったり、そもそも代理人の選任不可という回答が3割ございまして、代理人につきましては余り使われないスタイルになっているということが御覧いただけるかと思います。
 19ページにまいります。これは色々な規範、ルールの制定状況でございますが、左側は「主宰者の行為規範の制定状況」でございます。こういった規範を制定していないというところが40%近くを占めておりまして、行為規範をどのようにとらえるかということにもよるかと思いますけれども、この辺りはまだ検討の余地があるのかという感じがいたします。右側は「紛争処理手続規範の制定状況」でございまして、こちらは、9割近くが制定されているということでございます。
 20ページ左側「組織運営規範の制定状況」でございます。こちらは9割を超す機関で制定されておりますが、こういったものもないという機関も現に8%存在するという状況でございます。右側は「外部評価の実施状況」ということでございまして、実施しているというのが22%ございますが、この数字の中には利用者側からの評価というものも含んでおりますので、いわゆる第三者機関による評価というものが占めている比率というのはそれほど高くないのではないかと推測されます。
 21ページにまいります。ADRの財政基盤の状況でございますが、表の一番上にございます「主に当事者から徴収する手数料」によって賄われているという機関は23%でございまして、なかなか手数料だけで運営していくというのは難しい状況にあるということが御覧いただけるかと思います。その他、「主に設立の母体となった団体等からの拠出金」、「その他」として母体組織の事業と一体運営するといった形態で運営されているということがございます。
 22ページ「ADRの拡充・活性化のために必要と考える施策」でありますが、これはあくまでもADR機関側の認識でございますが、「知名度の向上」というのが71.4%で、非常に高い比率を占めております。その他「法制面の整備」というのが4割くらいでございます。これはあくまでもADR機関側の認識でございますので、知名度が上がったから利用されるかどうかということは議論のあるところであると思いますが、ADR側の認識としては、このような状況であるということでございます。
 23ページ「関係ADR機関等との定期的連絡協議の開催状況」でございますが、これは「設けている」ところが、「設ける予定」も合わせまして、4分の3位を占めているということでございます。具体的な形態としては、注に書いてございますように、行政機関、関係団体と事例研究会を開いたり、あるいは弁護士会との意見交換会などがあるようでございます。
 24ページ「連絡協議の体制整備等に関する意見」でございます。本ページ以降、自由意見は同じような体裁にして紹介してございますが、大体ずらっと並んでいるうちの前段が、前向き、積極的、肯定的な意見でございまして、後段の方に比較的に、後向き、消極的、否定的な意見が掲げられております。連絡協議の体制整備等に関して、このような連絡協議体制の整備等が大事だという意見が多くございますが、消極的な意見を若干紹介しますと、後段にございますように、形式的な会議では意味がないし、実質的な議論ができるかというと、設立母体や組織の制約から中々フランクな協議は難しいという意見や、同ページ一番最後にございますが、「行政主導の会議ではなく、より柔軟な場の設定が必要」という御意見もいただいております。
 25ページ「ADRへのアクセスルート」にまいります。これは利用者がどのような方法でADRの存在を知ったかということですが、これもADR機関側の認識でございますが、これを見ますと、「機関の広報」、「行政機関からの紹介」がかなり多数を占めておりまして、「他ADR機関からの紹介」は、5割程度という数字となっております。
 26ページ「ADR機関間の相互紹介体制の整備状況」でございますが、「共通窓口の設置」や「パンフレット配備」は余り多くなく、「事案による紹介」、すなわち個別事案ごとの相互紹介が多数を占めております。具体的に円滑な紹介が行われるように、注に書いてございますとおり、相談窓口に連絡先リストを備え置いたり、あるいはインターネット上で他のADR機関とのリンクを貼る等々様々な工夫を凝らしているとの結果が得られております。
 それでは、27ページ「ADRに対するアクセスの充実等に関する意見」でございますが、概ね総合的な相談窓口の整備等は重要であるという御意見をいただいております。特に、同ページの後段にございますとおり、裁判所なり行政機関に対する期待が非常に高いことがお分かりになるかと思います。29ページ「情報通信技術を活用した相談受付等に関する意見」として、前段の方には前向きの意見もかなりございますけれども、若干問題点としては、ADR機関側の処理体制の整備、あるいはプライバシー等の機密保護の問題、匿名性からくる弊害にどのように対応するか、高齢者が情報通信技術を利用できるか、あるいは通信環境が十分整備されていないのではないかいう御意見もいただいております。勿論、相談受付等について全てオンラインで行うということではありませんので、これらの問題点を考慮しながら解決を図っていくということになろうかと思います。
 30ページ「法律扶助の対象化に関する意見」でございます。ADRを法律扶助の対象にしてほしいという御意見が多かったわけでございますが、中には法律扶助の必要性を感じない、あるいは法律扶助の対象化によって民間の自主規制機関としての活動に制約がかかるのではないかを懸念されている御意見も一部ございました。
 31ページ「主宰者の名簿公開の状況」でございますが、主宰者につきましては、18ページで利用者の方で主宰者を選任しにくい結果が得られておりますが、それでは主宰者についての名簿の公開の状況はどうかということでございます。グラフを見ていただきますと、白抜きのところが「原則として非公開」ということでございますが、仲裁、調停、あっせんといくにしたがって、かなりの比率で非公開というケースがございます。
 また、名簿公開の内容につきましても、「氏名のみの公開」がかなりの比重を占めておりまして、この辺はこれから議論の余地があるのではないかという感じがいたします。
 32ページ実際に紛争が解決された場合の「紛争解決事例の公開の状況」でございますが4割近くが非公表ということになっております。他方、公表された事例について「当事者の同意不要」としているものがかなり多くの比重を占めております。一方では、全く「非公表」という回答が多く、また、当事者の同意を得ないまま公表しているという回答が多いことで、この辺りは工夫の余地があるかも分かりません。それから、紛争解決事例の公開の方法ですが、共同で公表している例はございませんで、基本的には独自の事例集やHPを刊行という回答でございました。
 こういった情報の開示や共有の促進に関する意見として、33ページ「情報開示・共有の促進等に関する意見」でございます。総論としては、基本的にこういったものは進めていくべきだという御意見がございましたが、中にはどれ位意味があるのか分からないとか、あるいは情報共有化に関する業務を義務化することは反対だという御意見もいただいております。
 また、プライバシー保護については、これを十分尊重すべきだという御意見が多かったですし、こういった情報の開示・共有につきましても、やはり裁判所、行政機関に対する期待が高いという結果でございました。
 34ページ「主宰者としての知識・技能の確保・向上に関する取組の現状」でございます。登用時と登用後に分けて聞いております。登用時とは一定の研修修了を主宰者登用の要件としているかどうかということで、登用後とは主宰者登用後の研修実施の有無ということでございます。これを御覧いただきますと分かりますように、それぞれ左側「登用時」に研修修了等の要件を課しているという回答は非常に少ない比率でございます。「登用後」も研修を実施しているというのが出てまいりますけれども、それほど多くはないという状況であろうかと思います。具体的にどのような研修を実施しているかということにつきましては注2を御覧いただければと思います。
 35ページ「担い手の人材育成等に関する意見」でございますが、全般的意見といたしましては、こういった人材は非常に重要なので、育成に力を入れていくべきだという御意見ではありますが、特に人材の交流につきましては、機関の性格上難しいとか、あるいはプライバシー保護に注意する必要があるとか、あるいは体制の面からして、そういった交流を図っていくのは難しいとかということで、人材の交流については難しいとする意見がかなりございました。36ページ「主に裁判所・行政機関等への期待等に関する意見」としてここでも裁判所、行政機関に対する期待がかなり寄せられております。また「主宰者として必要と考えられる知識・技能に関する意見」では、単なる法律知識や専門知識だけではなくて、両当事者の言い分を冷静・公平に聞いて問題点を絞ることができる資質が必要とか、人柄、経験、説得力も必要とか、カウンセラー的な手法を会得していることが必要という御意見をいただいておりますが、仮にこういったことであるとすると、先ほど申し上げた研修等の数字は、少し議論の余地があるのかという感じがいたします。
 37ページ「専門家(法曹資格者以外)を主宰者・代理人として活用することへの姿勢」でございます。これは法曹資格者以外の専門家の活用を、今後どれだけしていくかということについての調査でございますけれども、左側が主宰者、右側が代理人で、それぞれ3割ないし2割の機関は更に拡大を図っていきたいという意向でありました。ただ、ここでも主宰者に比べて代理人の方が少し比重が下がっておりまして、ADRの場合、代理人の位置づけは少し違うのかなという感じがいたします。
 38ページ「制度基盤の整備が最も必要と考える事項」でございます。「執行力」が一番という結果になっております。執行力は中々強い効力でございますので、これを与えるというからには、ADR機関側に対するハードルが高くなるということも予想されるわけですが、他方、こういった執行力があるかないかということが裁判と比べて見た場合に、ADR機関側が少し見劣りするという感じがあるのかもしれません。執行力を挙げる回答が62.5%と非常に高い数字になっております。また裁判との連携は3割程度という数字でございます。
 39ページのそれぞれ項目についての自由意見でございますが、まず、基本理念等を法令上明確化することの是非に関する意見でございますが、基本的にADRの基本理念をきちんと法令上位置づけるということについては賛成の意見が多かったわけですけれども、例えばADRの責務までまいりますとガイドラインを示すことは意義があるけれども、法令化することについては慎重であるべきだとか、あるいは民間型のADRと行政型のADRとを統一的な理念の下に定めることには疑問があるという御意見をいただいております。
 39ページ後段、具体的に基本理念等に何を盛り込んでいくのかということでございますが、必要以上に規制的なものにならないよう、あるいはそれぞれのADR機関が柔軟に対応できるようなものにすべきという御意見をいただいております。
 40ページ「時効中断効の付与に関する意見」でございますが、時効中断効は、基本的に与えられた方が望ましいという御意見が多かったわけでございますが、中には柔軟な解決手法というADRの特性を損ないかねないとの御意見もございました。
 41ページ「執行力の付与に関する意見」でございますが、先ほど申しましたように、執行力については非常に希望は高かったわけですが、他方、「当事者間の力の格差が是正されないまま執行力を付与すると、消費者にとっては危険である」という御意見や、「法的な権利関係の効力まで認めることはADR機関の要件を縛ることになり、柔軟な解決というADRの特性を損ないかねない」という懸念もございました。
 42ページは「執行力を確保するための工夫」でございまして、これは、今申し上げた執行力につきまして、現実にどういう形で解決を図っていくかということでございます。これにつきましては、仲裁手続に移行したり、あるいは即決和解を利用したり、執行証書を作成するということで、実際にはこういう色々な便法と申しますか、もう一つ手続を余計にかけて執行力を確保している例は現実にあるということが分かりました。
 43ページ「裁判手続との連携等に関する意見」でございますが、これにつきましても、基本的には連携を図っていくべきだという御意見はいただいているわけですが、総論で申し上げましても、全般に関する意見の後段の方ですが、連携を図る必要性は余り感じないとか、ADRは裁判とは一線を画して活動することが望ましいとか、裁判との連携ということを考えると、ADR機関側としても、相当程度の負担が生じるという御意見もいただいております。
 もう少し裁判との連携を分けて見てみますと、まずADRの結果を裁判に引き継ぐことについてでありますが、これにつきましても、そういう仕組みができれば、ADR側としても、便利であるという御意見もたくさんいただいておりますが、他方、43ページの一番最後のところ、「非公開であり、また、解決のために譲歩していることも多いADRの過程で出された資料を裁判に引き継ぐことについては、当事者の承諾を条件とするなど、当事者の意向を確認する必要がある」とか、44ページにまいりまして、主張整理や証拠提出が十分でないこともあり得る、先ほど申しましたように、ADRの場合は代理人に弁護士を依頼していないケースが多いわけですので、そういったケースはADRでの主張整理や証拠調べの結果が訴訟でも、仮に拘束力を持つとすると、被害者の権利保障に欠けるのではないかという懸念がある、こういった御意見もあります。
 裁判所に申し立てられた事案をADRに回すということについての意見ですけれども、これもそういうことが実現すると望ましいとの意見もありますが、44ページの下の方ですけれども、「ADRが裁判所の下請化することのないよう、両者の役割分担に関する規定を明確化すべき」という御意見をいただいております。
 45ページは、事件のADRへの回付というのを2つに分けまして、いわば事件を丸ごとADRに投げることについての意見が、上の方ですけれども、これにつきましても「事件の回付を安易に、あるいは職権で行うことには反対。当事者の合意を条件とする必要」があるとか、「国民の裁判を受ける権利を制限することにつながらないかを懸念」するという意見をいただいております。
 また、事件丸ごとではなくて、争点整理あるいは証拠整理にADRを活用すべきではないかという御意見につきましても、そういった裁判手続の一部を担う場合に、柔軟な解決というADRの利点が損なわれることはないかという懸念も一部出ております。
 それから、調停前置の場合に、調停に代えてADRを活用するということにつきましても、賛成の意見と体制上中々難しい御意見と両方いただいています。
 以上、非常に駆け足になりましたがアンケート調査結果の報告は以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの小林参事官の御説明につきまして、20分ほどの質疑の時間を設けております。どういう内容でも結構でございますので、御質問のある方はよろしくお願いしたいと思います。
 原委員、どうぞ。

○原委員 大変興味深い結果で、ADR機関とおぼしきところが全部入っているので、最初お話があったように、総体としては分かるけれども、もっと個別に見ると違う面も見えてくるのかなと思うんですけれども、全体的なところで幾つか気になって、もう少し詳しい状況が聞ければと思ってお願いいたします。
 行為規範と手続規範と運営のところがございましたね。19ページに「紛争処理に関する規範の制定状況」ということで、行為規範と処理手続規範と組織運営規範というところで、これは制定していないケースというのは考えられないような感じがしているのですけれども、何か特徴があって、ここの制定していないというのは、こういうところですというのがあるのでしょうか。それなしに運営しているというのは考えられないという感じがいたします。
 それから、紛争解決事例の公開の状況というところで、これもすごくアバウトな感じがして、非公表というところは、確かに4割くらいあるのだろうという感じがしているのですが、公開していらっしゃるところで、当事者の同意不要というのが23件もあります。これも同意不要として公開しているということも余り考えられずに、23件もあるとかなり大きな数字なので、何か特徴的にここにかたまって出ているのですという状況で言える話なのかどうかというところを御説明をいただきたいと思います。
 それから、執行力を求める声が大変高かったのですが、これもどういうふうに取ったらいいのかという感じがして、私たちがここで議論をしようとしているのは、結果について、それの拘束性みたいな、判断を出したことについての拘束性というところで、この執行力という言葉を使ってここでも議論しようというふうにしていますけれども、アンケートを回答した当事者の方には、資料を提出してもらうときにも、もうちょっと権限があって資料を提出してもらいたいとか、何かいろんな意味での権限を含めてこの言葉で回答していらっしゃるのかなというふうに思って、もう少し低いかなと思っていたのですが、異常に高い。ここももう少し分析ができているようでしたら、内容的なものを聞きたいと思います。
 以上の3点です。

○小林参事官 私の方から簡単にお答えをして、もし間違っていたら、オリジナルの資料で悪戦苦闘した事務局に補足してもらうことにします。
 まず第1点の、各種規範の制定状況なのですが、これは説明の際に申し上げましたが、ここで私どもから聞いたものがどの程度のレベルのものなのかということについて、受け手側がどう受け取ったのかというところが、そんな大層なものはつくってないということで、ある意味では謙遜されたのかもしれませんが、もう一つ考えられることは、比較的ボランティアの方が集まって運営しているようなやわらかい形の組織でありますと、通常財団なり公益法人で考えられるようなものはつくっていないということではないか、これは推測ですけれども、考えます。
 それから、紛争解決事例の公開状況の方なのですが、恐らく当事者の同意不要とされているところは、それだけ当事者の同意を必要としない程度に加工された上で出されているのかなと。少なくとも名前などはそのまま出すことはないと思うんで、その辺りは工夫した上でお出しになっているのではないかなという感じがいたします。
 最後の執行力の問題につきましては、勿論、受け手の側の問題ですから、断言はできませんけれども、一応執行力というのは何かということについての理解は得た上で、このお答えではないかと思っております。

○青山座長 悪戦苦闘した事務局、どうぞ。

○事務局(平中主査)事務局から若干補足させていただきます。
 1つ目の、行為規範などにつきましては、参事官が申し上げたようなこともございますし、団体として、主たる業務がほかにあって、それに付随する業務のような形で相談業務などをやっているという場合に、その部分については行為規範は定めていないというものや、試行的に相談業務などを手掛けているところだということで、まだ、規範を定めるところまでいっていないという回答もございました。
 執行力につきましては、基本的には御理解いただいているのじゃないかと思うんですが、若干の団体からは、強制的な手続のイメージで何らかの執行力があれば望ましいという意見があったところもございます。

○原委員 6割だから、ちょっと高いかなと思ったのです。ですから、その場合は、そこの機関が執行力を持っていることもあるでしょうし、そこからもう少し執行力を持っているところに移管をしたり、移送したいということも含めてかもしれないというふうに理解してもよろしいのでしょうか。

○小林参事官 今の説明だと、その可能性はあるということです。

○青山座長 ほかに質問、御意見いかがでしょうか。81機関にアンケートをして、そのうちの63機関、75%を超える機関から回答をいただいたということは、これからの審議に大変参考になる資料ではないかと思いますが、どうぞ御自由に御発言ください。どうぞ、横尾委員。

○横尾委員 アンケートの調査対象の機関は広範にまたがっていると思うんですが、専門性を重んじるような機関の場合、この中でどれがとは言えないのですけれども、先ほどもお話があったように公開を躊躇するところがあるのかもしれません。逆に消費者サイドのところが、むしろ公開してくれということかもしれませんので、回答している側がどういう機関なのかというところがわからないと、傾向というのは中々つかめないのではないでしょうか。つまり機関の性格ごとに傾向を見ないといけないのではないかというふうに思いました。ですから、そのように整理していただければと思います。

○原委員 私も同意見です。テーマを絞って、ある程度機関をもう一回ピックアップして、それを整理してみるような作業を、これからも繰り返してやって、ここの場で生かしていくことができたらと思います。
 これだけではすごくもったいないというふうに思いますので、同じような意見です。

○小林参事官 その点につきましては、これはアンケート結果の初回と言いますか、一応標準タイプとして公表用にまとめたものですから、これから各論の議論に入っていくかと思いますので、その段階では更に、余り特定されてしまうと、これはアンケートを取ったときのお約束と違うということになりますので、そこは工夫するとして、幾つか更に細かい分析をしていきたいと思っております。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 このアンケートにつきましては、今、小林参事官が言われましたように、この会議の進行状況に応じて、また個別的にこれを更に分析するなり、あるいは新しいアンケートを取るなりして、これを更に活用していただく方策を考えてくださいということで、今日はこの資料につきましては、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

○青山座長 では、そういうふうにさせていただきまして、これが今日の第1の議題でございます。

〔ユーザーからのヒアリング〕
○青山座長 第2番目の議題でございますが、ADRのユーザーの方からのヒアリングに入りたいと思います。今日、説明していただく方は、先ほど申しました3つの機関からでございますが、説明していただく方は、どうぞ席の方にお着きいただけますでしょうか。
 冒頭に申しましたように、今日は3つの機関からヒアリングをお願いしたいと思っております。繰り返しになりますが、経済団体連合会、全国消費者団体連絡会、日本労働組合総連合会でございます。
 まず、経済団体連合会からは、当検討会の委員でいらっしゃいます、横尾委員から御説明をいただくことになっております。
 2番目の、全国消費者団体連絡会からは、司法制度改革研究グループADRワーキンググループというのがあるそうでございまして、その田中圭子さんから、今日は御説明をいただくことになっております。
 最後でございますけれども、日本労働組合総連合会からは、全国一般労働組合の中央執行委員長でいらっしゃいます、田島恵一さんから御説明をお願いすることになっております。
 説明していただく方には、お忙しい中をわざわざ御出席いただきまして、どうもありがとうございました。
 ヒアリングの進め方でございますが、今、御紹介いたしました、横尾委員、田中さん、田島さんの順序で、それぞれ15分から、幾ら長くても20分までで御説明をいただきまして、3人の御説明が済んだ段階で、一括して質疑応答ということにさせていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず横尾委員からお願いしてよろしゅうございますか。横尾委員の資料は、あらかじめ提出していただいておりますが、資料の3−3に従って御説明をしてくださるということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

〔経済団体連合会〕
○横尾委員 それでは、資料の3−3を御覧いただきたいと思います。
 ただいま御紹介いただきました経団連は、ユーザーというのが果たして適切かどうかというところがあるのですけれども、今日は私どもがADRにつきまして特にどういったことに取り組んできたのか、あるいはどのような意見を持っているかということを御説明し、将来的にADRが整備されていくことが期待される、潜在的な分野などにつきましても、どう考えているかということを御紹介したいと思います。
 レジュメを御覧いただくと前に、先に結論を申し上げたいと思います。経団連から色々な意見書が出ているわけでございますけれども、その中でADRについて言及しているものが、割合最近増えております。
 それはどういうことかと考えますと、何かADRというものを言及することによって、やっかいな問題を解決するというか、どうもこの辺が問題がありそうだというときに、ADRというものが何でもやってくれるのじゃないかという、ある種のマジックワードのような扱い方がされているような気がしております。
 確かに、そういった機能というのは必要だと思っておりますけれども、具体的にどういったことかということを、まず総括的に申し上げますと、1つは新しい産業分野というようなことだろうと思います。例えば、知的財産権、これは従来からそうですが、これからさらに注目されてくる分野だと思います。あるいは、ITの関係、そういったところでは特に専門性というふうなことが非常に期待されているところだろうと思います。
 もう一つ忘れてはならないのは、やはり消費者との対応、こういったところについて非常に期待が高いということで、もう既にさまざまなADR機関がございますし、実績も積んでいると思います。PL法であるとか、あるいは消費者契約法、金融商品販売法、こういったところでかなり期待をされているということではなかろうかと思います。
 さらに、将来的に検討を進めていく上で重要なところとして、国際的な動向に注目をしていただきたいということがあります。
 あるいは、B2B、まだこの分野については充分整備されていないと思いますけれども、知財であるとか、ITもそうでありましょうけれども、B2Bの関係を、是非御検討いただきたいと思います。
 もう一点付け加えるとしますと、今、申し上げたところは、それぞれADRの特性というものに注目して、これらの分野で利用可能ではないかということなのですけれども、1つ言えますのは、裁判の制度が拡充されてきますと、ADRが本当に必要かどうか、あるいは裁判制度ですべてが解決するのではないかという意見もあるかと思います。しかし、それとは別に私的自治ということで、ADRというものをもうちょっと別の観点から見直したらどうかということも、検討しなければいけないのではないでしょうか。つまり経済界と言いますか、経団連の意見というものをつきつめていきますと、どうしても目先のことに関心が集まります。したがいまして、司法制度改革の中で考える場合、あまり近視眼的な目になってしまってはいけないと思います。経団連の関係の21世紀政策研究所が、「市民コート」というものを提案しておりまして、これは私的自治の観点から、新しい制度として確立されればというようなことを言っております。こういったことを、もしやるのであれば、第1回目の会合でも申し上げたように現状のADRだけを見るのではなくて、こういった新しい斬新な形のものを検討することも必要ではないかと思います。
 それではレジュメに沿って詳細を御説明させていただきます。
 経団連が、ADRに取り組み始めたのは10年ぐらい前からのことです。日米関係の中で取り組んできた経緯がございます。これは、アメリカに進出している企業が多くございまして、アメリカの裁判制度というものがかなり日本とは違った形であったということが背景にございます。
 例えば、ディスカバリーであるとか、陪審制度というようなことで、そのために訴訟の準備だとか、時間がかかったり、あるいは費用がかかるというようなことから、ADRというものが有効ではないかという議論が起こってきたわけです。
 また、日米間の通商摩擦がありました。これは、ある意味でシングルカンパニーイシュー、本来であれば個々の企業間の問題でありながら、政府間の問題に持ち上げられてしまったようなこともございまして、そこまで上げなくても個別企業ごとにADRのようなもので解決できるのではないかということで研究してきたこともございました。
 そのころは、国内でこういったものが使えるのかどうかということまでは、まだ議論がなかったわけでございますけれども、そういった意味で日米経済関係に関与してきたものとしましては、ADRというのは非常になじみの深い言葉であったということであります。
 そういった形でやってきたわけでございますけれども、司法制度改革審議会が始まりまして、経済界代表ということでお2人メンバーに入っていたわけですが、そのお一人の山本委員のご発言は、経団連の公式の見解だけでなく、個人のご意見もありましたが、ADR制度の拡充につきましては、賛成であるというお立場でございました。
 審議会が始まった当初、論点の整理というものがございましたけれども、そこで山本委員からお話いただきましたのは、1つは司法型のADRということで、民事調停制度の一層の充実であるとか、あるいは専門性の高い分野のADRの構築、更にはADRというものが、先ほど申し上げた日米関係者は非常に関心があったわけでございますが、一般にはそれほど知られてないということで、活用を呼び掛けたらどうかというようなご提案がございました。
 更に議論を進めまして、2年前の平成12年5月16日、民事司法制度の見直しということで、山本委員から御発言をいただいております。そこでは、論点の議論を更に進めまして、例えば紛争処理方法に関する情報提供の中で、ADRというものも含めたメニューというものを用意したらどうだろうか。それから、民事法律扶助の対象にしたらどうかというお話もございました。
 そのときのメリットとしまして、経済界の認識としましては、1つは裁判に比べまして廉価、あるいは迅速であるということが指摘されたわけでございます。
 それから高度な専門性、更には柔軟かつ機動的に対応できるのだと、利用者のニーズに合わせてできるのだということでございまして、そういったことを追及していく上で、裁判との連携を進めるとか、人材面で裁判官のOBであるとか、あるいは弁理士、司法書士、社会保険労務士、税理士、行政書士、公認会計士、土地家屋調査士等々、隣接法律専門職種というものを活用したらどうかというふうなことを提言したわけでございます。
 こういったものが、去年の6月12日に出た最終意見書に、かなり盛り込まれておりますので、経団連イコール経済界ではございませんが、かなりの問題意識というのは、経済界も共有するところであるということが言えると思います。
 ちなみに、経済同友会でも同じようなことで、99年に意見書を出しておりまして、紛争処理機構の複線化とか専門家の観点からADRは重要であるというようなことをまとめておられます。
 あるいは、日本商工会議所でも、これは『ジュリスト』の2000年の1月1日・15日の合併号に出ておる意見では、既存のADRがコスト・迅速性・納得性の点で、特性が十分生かし切れてないということで、これを見直したらどうかと言及しています。更には、中小企業が抱えている法律問題全般を扱うようなADRの設置というものを考えたらどうかというようなことを提案しておりまして、経済界は非常に関心があるということがあったわけでございます。
 経団連には、別動隊と言いますか、実は経団連そのものではないのですが、先ほども申し上げた21世紀政策研究所というものがございます。田中直毅先生が理事長をされておられまして、97年の4月から活動しているわけでございますけれども、98年の12月に、市民コートというような新しい考え方を打ち出しております。これは、裁判機能の不十分なことを前提にしている点では、裁判との代替ということになるわけでございますけれども、ここでの一番の主眼は、私的な紛争は私的自治の領域で解決するといった理念の構築だというふうに言っております。紛争の両当事者が、その解決に向けまして、自律的に進める中で、その交渉過程に応じまして、弁護士であるとか専門家の見識とか経験でサポートする体制というものをつくったらどうかということを提案しております。
 これは、非常に新しいことでございまして、時間があればこれについても検討したらどうかということで、随分と立派な意見書が出されたわけで、当時は非常に注目されたのですが、現在これについての意見は聞かされておりませんけれども、更にもし時間があれば、この場でも御検討いただきたいというふうに考えております。
 経団連の意見書というものに移りたいと思います。今日、お手元の資料に幾つか御紹介しております。
 1つは、消費者契約法の在り方というものについて、2ページ目の1番で紹介しておりまして、この中でも裁判外紛争処理機関の整備というようなことを掲げておりますし、そのほか知財、IT関係でもADRというものを注目しているわけでございます。
 まず、消費者契約法についてちょっと申し上げたいのですが、消費者契約法については、それぞれの色々なお考えがあって、この法律自体については当事は企業の中で余り賛成する意見はなかったわけですけれども、経団連はこれをやったらどうかと、これからの時代は規制緩和の時代でもあり、とにかく作ろうじゃないかということで賛成をしたわけでございまして、そうした経緯より、昨年の4月1日の施行前に、アンケート調査を実施したわけでございます。151 社、 30 団体を対象にいたしまして、65社、13団体の回答があったわけです。
 その中で御紹介したいのは、まず取引問題ですが、これについては消費者センターであるとか、国民生活センター、弁護士会仲裁センター、訪問販売協会等、こういったものを企業は利用していますという話でございました。
 品質問題につきましては、PLセンター等々を活用しているということでございまして、こういったものの利用のメリットは何かということを質問しましたところ、1つは裁判に比べて少額で、早期に解決できるということ。あるいは、消費生活センターを活用しますと、メーカーとの相対交渉では納得が得られない場合であっても、第三者が入ったということで消費者に納得が得られやすいのだというような指摘があったわけでございます。
 さらに、PLセンターの活用のメリットとしましては、技術的・法律的専門性が挙げられております。
 デメリットにつきましては、企業側が柔軟な対応を取っても、消費者の合意が得られなければ最終的な解決には至らない、強制力がないというようなことがあります。あるいは、担当者のレベルに非常にばらつきがあるというようなことが指摘されております。
 2つ目でございますが、知的財産権、IT分野での活用という点につきましては、1つは国際競争力の観点から迅速性と専門性が求められているという議論を部内でしておりました。特に迅速で安価に紛争解決をするというニーズが高まっておりまして、中立的な専門家が関与して非公開、この非公開というのが重要なのですが、非公開に解決を図るという点で、秘密保護を行う必要がある知的財産などの紛争に適している面があるということでございました。
 ITにつきましても、迅速性、専門性の観点から評価している声もございます。
 そのようなことで、消費者対応、それから専門性のあるところということだと思います。
 「2.検討する上での視点」について、取り急ぎ御説明したいと思います。1つは、国際的な動向への気配りというのが必要ではないかというふうに考えております。これはISO、国際標準化機構、ここでは消費者政策委員会というところが、昨年の5月にADRの国際規格としての策定を理事会の方に勧告しております。こういった動きのほかにも、欧州委員会でも2001年4月に消費者紛争の合意による解決に関与する法廷外機関に関する委員会提案を公表しているわけでございますが、こういった動きは緩やかなのですけれども、規格化等が行われますと、従来のISOへの対応を見ると分かりますように、企業はそれを急速にこれを採用し始めると思います。国境を越えた紛争解決には有効であると考えられますけれども、ここで一生懸命つくったものが変更を余儀なくされるというようなこともございますので、そういったものを是非視野に入れて御議論いただきたいというふうに考えております。
 B2Bについては、先ほど申し上げたようなことでございますが、幾つか追加して申し上げますと、1つは顧客と供給者という企業間同士の関係の中で、訴訟に持ち込みたくないというケースもございます。
 経済のグローバル化、契約、権利意識の高まりの中で、今後、ビジネス上の紛争の増加も予想されます。そうなりますと、経営者としましては、株主への説明責任の観点から、より合理的に紛争を解決するということで、訴訟よりもこのADRを選ぶというインセンティブがあるのじゃないかと思います。ただ責任の所在というものをはっきりさせるために、厳格な手続というものが要求されるようなことも考えられると思います。
 B2Cにつきましては、PLセンターについて特に中立性を問題視するような意見もございますけれども、この点について若干申し上げたいのは、言わば消費者側から見ると、主観的な中立性ということがあるのではないかと思います。御自身の立場から中立性がないということは、むしろ納得性がないということではないかと思いますが、逆に中立性を追及しますと、結果として客観的な中立性というものが追及されることで、かえって納得性を失うような結論が出てくることもあろうかと思います。この点に留意する必要があると考えております。
 色々なケースがございますけれども、我々が聞いている限りでは、企業側に片面的な義務を負わせる、結論を尊重しなければならないというようなこと。あるいは、消費生活センターから回ってくるようなものもございます。更には、利用者などのアンケートを取りますと、あるPLセンターでは7割以上が納得したというアンケート結果もございまして、一概にPLセンターの中立性が欠けているというわけではないのではないかというように思います。
 その他の問題としましては、特にPLセンターというものは、業界団体がつくっていることが多いわけでございますけれども、最近はアウトサイダーというものが増えておりまして、資金面で苦しくなったり、あるいは片面的な義務を課すという点が受け入れられないという問題になってくるのではないかということがございます。
 先ほど、小林参事官からもお話がございましたが、裁判との連携については、それを導入したがゆえに、ADRの段階で一方の当事者の責任が明確でないような場合であっても、責任をあらかじめ認めてしまうことで、うまく解決するようなことが、かえって損なわれるようなこともあるわけです。その辺については是非基本法を制定するにあたっては、配慮が必要ではないかというふうに考えております。
 最後の点でございます「3.私的自治か裁判代替か?」ということは、一番最初に申し上げたのですが、現状を前提に制度のあり様を追及していきますと、裁判制度が強化されることによりまして、ADRの活用する範囲というものが随分と限定されてしまう可能性もあろうかと思うんですが、やはり私的自治というようなことで、理念から構築していくような、一つの新しい制度というものも考えてはどうかということでございます。
 最後の点は、むしろ経済界というより、私の個人の意見でございます。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、先ほど申しましたように、引き続きまして、全国消費者団体連絡会から田中さんにお願いしたいと思います。
 田中さんからは、資料の3−4が提出されておりますので、それに基づいて御説明をお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

〔全国消費者団体連絡会〕
○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏)全国消費者団体連絡会 司法制度改革研究グループ ADRワーキンググループの田中でございます。本日は、このようなお席で御意見を聞いていただけるということで、利用者の一部であります消費者の意見が反映されるように、是非御検討いただきたいと思います。
 本来、私はこの全国消費者団体連絡会の構成団体であります、社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 消費生活研究所というところに所属しております。
 では、私ども消費者団体連絡会が、この司法制度改革、またADRについてどのように取り組んできたかということをお話した上で、それ以降はレジュメに沿って私ども消費者からのADRに対する、具体的な要望や、色々な意見をお話させていただきたいと思います。
 私ども、全国消費者団体連絡会は、2000年2月から2001年7月まで、司法制度改革研究グループというのを設けまして、その中で司法改革に関しますことを検討、または意見書などを発表してまいりました。
 所属団体は30団体で、メンバーは約55名でした。
 中間報告までの提言・意見書等は、お手元のオレンジの資料にまとめてありますので、そちらを御覧になってください。
 また、話が前後いたしまして申し訳ございませんが、全国消費者団体連絡会に関しましては、こちらのお手元の資料に書いてございますので、そちらを御覧になってください。
 司法制度改革審議会の最終意見書が出された後は、昨年11月15日に消費者大会というものを開き、その中でも司法制度分科会を設け、ADRを取り上げてまいりました。
 また、2002年1月からは、市民のための司法制度改革推進チームというものを立ち上げました。その中で、今後検討されていきます司法制度改革について、色々意見などを集約して、今後も意見などを発表していきたいと思っております。
 特にその中で、団体訴権とADRに関しましては、別途ワーキンググループを設け、個別に研究を始めております。
 それでは、実際の消費者からADRというのがどのようにとらえられているのか、そして今後私たちはどういったものを求めているのかということを、レジュメに沿ってお話させていただきたいと思います。
 まず、私たちがADRというものを考える場合、ADRって何なのだろうという話から始まりました。と申しますのは、ADRのそもそもの英語は、「Alternative Dispute Resolution」です。それが、なぜか日本語では、「裁判外紛争処理」という「処理」という言葉が付いたままで、ずっと一人歩きをしてしまったという経緯があります。
 しかし、英語の「Resolution」の中には、「処理」という言葉は全く入っていないわけで、その「処理」というのはあくまでもADR機関側が使う言葉なのではないかということからの問題意識から始まりました。
 そこで、私どもはADRということを日本語で言うときには、まだはっきりした日本語はありませんが、せめて「処理」という言葉を使うのではなく、「解決」という言葉を使いましょうということを、みんなのコンセンサスとして取ったことから始めました。
 それでは、消費者を巡るADRの背景というものを考えていきたいと思います。背景として、世の中が国際化または多様化、考え方が多角化してきた中で、消費者に自己責任が求められてきたということが挙げられると思います。
 しかし、この消費者の自己責任というのは、契約前や契約そのものに自己責任というものを原則として求めているものが中心でありまして、消費者から見れば、自己責任の下で契約したのであれば、その後のトラブルも自分の責任を持って、主体的に解決したいと思い始めたのが、ADRの論争に火を着けたのだと思います。
 現状のADR、先ほどもお話が出ましたように、PL法施行後はPLセンターなど、現状の民間型のADR等もございますけれども、後ほど御説明させていただきますが、そういったADRへの不満も爆発してきたというのも現状です。
 また、逆に今回、司法制度改革審議会の中でも話が出てまいりましたが、司法への不満、具体的に言いますと裁判官への不満といったものが、逆にADRへ流れてきたというのも否定できないと思います。
 こういった自己責任が求められている中で、消費者問題自体も拡大してきたといっていいと思います。というのは、何が消費者問題なのかということを整理することが難しくなってきたというのが実情だと思います。
 そういった中で、現存のADR、特に国民生活センターには年間相談件数として、これは昨年の実績ですけれども8,137 件。また、全国の消費生活センターには、52万件以上の相談が寄せられているわけです。
 しかし、こういったPLセンターや国民生活センターなどといったところも、現状としましては相談業務が中心になっているわけです。というのは、これは、具体的な理由として話が出てくると思いますが、弁護士法72条等もございますので、具体的な紛争解決を費用を取ってできないということも、資金源からでは問題となってきており、相談として、限界が生じているのではないかと思います。
 また、業界型のADR、PLセンターなどへの不満といたしまして、現実問題としてPLセンターは首都圏に集中しておりますので、アクセスという面からでもADRに行きにくいということと、あと、先ほど来お話が出ておりますけれども、中立性という問題では、業界型ADRの運営または手続が可視的でなくて、透明性がないというところが、逆に中立性への疑問へとつながっているのではないかと思います。
 では、次に私たちが求めるADRの基本的特性というものについてお話したいと思います。
 今回、私たちがADRの基本的特性としていちばん求めているのは、主体的に当事者が、合意によって解決をしたいというものです。
 背景の中でも申し上げましたように、消費者問題も拡大しており、意見も多角化している中で、ある一定の画一的な意見を押し付けられて解決するのでは、消費者が主体的に解決しているとは言い難いといった実情なのではないでしょうか。
 従来のADRでは、ある程度判例などの法的基準や画一的な意見を押し付けられて、説得させられてしまうといった実情があるかと思います。私たちが今後求めるADRの基本的特性と言いますのは、押し付けや説得または互譲というのではなく、当事者が納得する解決というものだと思います。
 次に、選択性の問題です。先ほどのアンケート結果でも出ておりましたように、第三者を選択できるだけの前提条件も整っていないのが現状です。第三者を選択するためには、選択するだけの情報が開示されており、その中から選択したいというのが、主体的解決に結び付くものだと思います。また、そうでなければ、逆に選んだ第三者を忌避できる権利が行使されるべきではないでしょうか。
 第三者の選択性とともに、解決方法も選択したいということがあると思います。今回、司法制度改革審議会の最終意見書の中でも、ADRは裁判と並ぶ選択肢であるということになるかと思いますが、そのADRの中でも色々な方法の中から、当事者が主体的に選ぶべきではないでしょうか。
 次に、第三者の資質は何かという点に触れたいと思います。お手元の資料の、アヒルの絵が付いている「話し合いによる解決って何ですか?」という資料なのですけれども、こちらは先ほどお話しました、昨年の11月15日の消費者大会の司法制度分科会で、ADRを取り上げたときのチラシでございます。この消費者大会では、アメリカの調停委員として活躍されて、現在九州大学の法学部の助教授でいらっしゃいます、レビン小林久子さんにいらっしゃっていただきまして、調停、特に同席で当事者が話し合う調停というものを講義していただき、その講義の後、ある程度トレーニング的な要素を含めて講演していただいたときのチラシです。
 こちらのチラシを御覧になっていただいても分かりますように、トラブルというのは見方によって、人によっては全くとらえ方が違うわけです。それを当事者が満足して解決しようとしたときの第三者の役割というのは、お互いにテンションが上がった当事者のコミュニケーションを上手にとっていきながら、お互いの満足を導き出していくというところにあるのではないでしょうか。
 そういった意味で、私どもが求める第三者の一番の資質というのは、コミュニケーション能力、そしてお互いのテンションが上がった当事者を満足させるコミュニケーションを導き出していくという能力だと思います。
 従来のADRで、専門性や法的専門性ということが叫ばれてまいりましたけれども、これはADRが迅速で安く解決していく上では、なくてはならないものなのかもしれませんが、その前提条件としてコミュニケーション能力というのはつながるべきものなのではないかと考えています。
 そもそも消費者が同席で話し合うことに納得がいくのかどうかということも、委員の皆さんからは御質問が出るかと思いますけれども、昨年私が調査いたしました、消費者を対象にいたしましたアンケートでは、紛争を解決したい場合に、第三者を入れて同席で話し合いたいと答えた消費者が、全体の74%おりました。つまり、消費者はある程度の前提条件がそろっていれば、同席で自分の言葉でトラブルを解決したい、話し合いたいという姿勢はできているのだと思います。
 次に、手続のルールについてお話したいと思います。こちらの手続のルールというのは、あくまでもADRについてのコンセンサスが取れてからのお話だと思います。と言いますのは、お手元の資料の2ページ目の図を御覧になっていただきたいと思います。僣越ではございますけれども、私なりに紛争解決方法の相関図をまとめてみました。こういう図をまとめてみますと、一つひとつの言葉が見方によって定義がはっきりしていないということが分かります。特に苦情処理や調停、あっせんといった言葉は、中々コンセンサスが取られていないのが実情だと思います。このコンセンサスが取られていない中で、ルールを前提条件で決めるというのは、ある意味で縛りを付けてしまうのではないかということで、危惧を感じざるを得ません。
 例えが悪くて申し訳ないかもしれませんけれども、ADRというものを、動物のゾウに例えるとしますと、ゾウが鼻が長いのか、首が長いのか、しっぽが長いのかというのがわからないまま、その檻をつくろうとしているように感じざるを得ないということです。その檻をつくってしまったところで、ゾウが鼻が長かったのを知らず、首が長かった動物の法律をつくってしまっても、全く意味がないと言ってもいいのではないでしょうか。
 その前には、まず定義づけということをはっきり定めていただきたいと思います。そういった上で、法律扶助や時効中断ということは、消費者としては求めるべきものであり、また執行力付与については、こういった定義づけが付けられない点では、どこから執行力が付くのか、またはどの解決方法で執行力が付くのかということで、時期尚早と感じざるを得ないと思います。
 最後になりましたが、先ほどの消費者大会の資料に、私どもが考えるADRの4つのポイントというのを書かせていただきました。この4つのポイントの中で、特に主張させていただきたいのは、選択性という問題と第三者のトレーニングを前提条件といたしまして、自分の抱えている紛争は、自分で相手に伝えて、話し合いで解決したいというのが消費者の意見だということで終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、3時を過ぎましたので、ここで次の連合からのヒアリングに入る前に、10分ほど休憩をしたいと思います。3時20分から再開するということで休憩をいたします。

(休 憩)

○青山座長 それでは、休憩前に引き続きまして、ヒアリングを行いたいと思います。
 連合の田島さん、よろしくお願いいたします。田島さんから、資料3−5に沿って御説明をいただきます。

〔日本労働組合総連合会〕
○説明者(日本労働組合総連合会 田島氏)本日はお呼びいただき、ありがとうございます。全国一般労働組合の田島と言います。労働組合でも、日本労働組合総連合会、連合の中に70以上の構成組織があって、そのうちの1つですけれども、中小企業、あるいは個人加盟の労働相談をしていて、労働委員会とか、各地方の労政事務所などとも連携をしながら、労使問題に当たっているということで、連合を代表してお呼びいただきました。
 資料については、レジュメだけで本当に申し訳ありません。実は、連合そのものが、今日もお持ちしているのですけれども、労働委員会制度とか、あるいは個人紛争処理について、さまざまな見解を発表しています。これは後ほど事務局の方にお渡ししていきたいと思いますけれども、労使紛争を円満に解決していくために、連合としてのスタンスを常に意見を出しながら、物事の改善に当たっていくということを前提にお話させていただきたいと思います。
 今、経団連さん、あるいは消費者団体さんからお話ありましたけれども、労働問題については、いわゆるADRと言いましても、行政型と民間型、公益法人とか業界団体とかNPO団体などありますけれども、実は労使紛争についてはほとんどが行政型です。これは、経営者団体がそういう機関を設けても解決しないし、あるいは連合そのものも労働相談ダイヤルなど、たくさんの相談対応をしていて、その相談の中で解決しているのもありますけれども、それも一つのADRだという形があるかもしれませんけれども、やはり労働者の立場に立って、いかに解決をするかというスタンスを堅持している限り、解決型のADRではないと思います。そういう意味では労働問題について行政型について意見を述べていくことが必要だろうと思いまして、このレジュメにありますように、1つ目には、行政型では労働委員会制度、労働委員会があります。
 2つ目が、昨年の10月1日、いわゆる個別の労使紛争処理についての促進法ができまして、全国で200 か所以上の労働局で対応して相談活動しておりますので、その取組みの課題について。
 3つ目が、各都道府県とか、あるいはいわゆる地方の都市レベル、労政事務所などで取り組まれている労働相談活動。
 この3点について、意見を述べさせていただきたいと思います。
 2番目に、ADRの現在と活用と有用性の問題点なのですけれども、1つにはADRで共通しているのが、裁判所にかけるよりも、やはり簡易で迅速で廉価だということの特徴が出発点としてありますし、労働委員会もそういう位置づけをしています。
 しかし、実際にこの簡易なり迅速なり廉価が、労働委員会制度の中で維持されているのかというと、今日的には非常に疑問になってきています。最近のデータを見てみますと、初審について13年度の半年間の平均日数を見ますと、地方労働委員会で命令を出されるまでに、1,040 日掛かっているというのが、現実的な命令段階の日数になっています。
 労働委員会制度そのものが、データ的に申しますと、申立てそのものは181 件であるけれども、解決をしている、あるいは命令が出されているというのは、そのうちの3分の1で、したがって3分の2ぐらいが取り下げなり和解で解決しているのです。
 例えば、調整事件としてではなくて、いわゆる不当労働行為事件として申し立てたとしても、3分の2が和解で解決をしている。和解の場合には、日数がもっと早くて、645 日になっているわけですけれども、和解そのものでも非常に長いのが労働委員会の一つの問題点としてあるのではないかと思っています。ここら辺は、もっと迅速性を確保していかないと、労働委員会制度そのものが形骸化してしまうんではないかと思っています。
 審決の事件で、202 件を見てみますと、そのうちの和解そのものが3分の2、あとその命令が出されたときに、実は命令が出されたうちの不服ということで、中央労働委員会へ再審査の申立てをされるのが、8割以上、81%がそこに持ち出されています。
 したがって、地方労働委員会の不当労働行為だという形で、たとえ命令を出されたとしても、長期にわたるというのが現実で、その間に労働組合そのものが機能を失ってしまうという実態もあります。これをいかに実効確保に持っていくのかというのが、非常に重要な課題としてあるだろうと思います。
 もう一点、ADRを考えた場合に、民間の場合は純粋な民間の自主的な運営ですけれども、労働委員会そのものは労調法という法律の下で、そして公労使という三者で委員が構成されているということを考えた場合に、紛争解決については非常に有効な手段であるはずなわけです。
 ところが、結局経営者なり当事者そのものが不服とすれば、地方労働委員会、中央労働委員会、その後に地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所という形で、五審制が取られているのが現実です。いつまでこれが解決のためにかかるのかという問題で、迅速性をいかに担保していくのかというのが、非常に重要になっているというふうに思っています。
 このときにADRそのものが、裁判にかけるよりも、そういう労働委員会とか紛争処理で解決を図ろうという、先ほどの申立事件でもあっせん事件でも、実は和解での解決というのが非常に多いわけですけれども、そのためには当事者が解決の姿勢を示さなければいけないのですけれども、当事者そのものがADRを否定するようなときには、全く無力化してしまうという問題点があり、結局は裁判所にいかざるを得ないという事態となっています。至近な課題で大変恐縮なのですけれども、3月29日に、皆さん御案内のとおり、いわゆる労働組合のプロ野球選手会が不当労働行為の救済を都労働委員会申し立てました。そうしたら、その次の日に巨人軍の渡辺オーナーが、こういうコメントを新聞紙上で発表しているのです。労働委員会の判断が選手会寄りなら、裁判に持ち込めばいいということを言っているわけです。今回のプロ野球選手会そのものは、運営について選手会ときちんと協議をしてくださいと、その協議について申し立てているわけですけれども、選手会は高給なのだから言うことを聞けというようなことですね。こういう姿勢だったらば、ADRというのは本当に全く意味をなくしてしまうという現実があるわけです。
 そういう意味では、ADRそのものが労使がともに誠意を持って解決に向けての姿勢が担保されない限り、有用性や有効性が発揮できないという問題点があります。これはつい新聞紙上で出たから渡辺オーナーのことを話しましたけれども、いわゆる大手企業とか中堅企業よりは、中小企業のオーナー企業の場合に、非常にそういうこじれる問題が多いというのが現実的にあります。
 労働委員会をもっと実効あるものにするためには、こうやって法律で制定されている、あるいは公労使三者で構成されている場合には、公取委と同じように、東京地裁を飛ばして、高裁、最高裁ということで、四審制なども考えて、もう少し労働委員会に対する権限を付与することが、今後の解決に向けては必要ではないかと考えているところです。
 2点目の個別紛争処理については、昨年の10月に全国の労働局205 か所で相談活動をして、もう3か月間で2万件の相談が寄せられているというのが、厚生労働省から発表されています。また、各都道府県で労働相談の取組みについて触れたいと思います。私たちが身近に感じている東京都の労政事務所の例では、4万8,000 件の労働相談を年間受けていると報告されています。
 しかし、この4万8,000 件についても、実は電話相談とか、そういうものまで含めた相談なので、具体的な数字については、あっせんにかけたのがどれぐらいあるのかというと、1,367 件で、そのうちの解決率が66.3%だということなのです。これについて、労働委員会の解決と、労政事務所の労働相談の解決は、非常に対照的な例となっている例があります。実はあっせんのためにどれだけの日数が掛かっているのかというと、労政事務所の場合には平均すると24日で解決となっています。10日未満が43.4%、2週間以内が60%というようなことで、労働委員会にかける場合には集団的な労使紛争、あるいはこじれた紛争の場合が多いのですけれども、労働局の個別相談なり労政事務所などは、労働組合のないところが、何とかしてほしいという相談の中で頼っていくために、第三者機関が入ることによって解決が早いのかなという感じがしています。
 こういう解決のときに、非常に問題点なのが、私は労働委員会もそうだというふうに思うんですけれども、単に互譲的、互酬的な解決方法が良いのか、本当の解決になるのかと言ったらそういうことではないと思っています。かつて中央労働委員会の発文書で、労働委員会規則の38条で、和解を勧告することができることを規定したときに、中労委の会長がこういう文章を出しているのです。「和解に関しては、実情に沿うよう、弾力的に規定が改められたが、準司法機関たる本旨に反するがごとき和解の乱用とならぬよう、重ねて厳に留意せられるべきこと。」いわゆる和解に当たっては、単に足して2で割るような形ではなくて、労働委員会制度そのものが準司法機関なのだから、不当労働行為性があるのかないのか、不当労働行為になるのだったら、そのことを正した形での解決が必要だということを言っているわけです。これは現在でも生きている発文書ですけれども、そういう発文書が昭和26年5月21日中労委文発391 号で出されています。やはり労使紛争については、単に互譲的、互酬的な和解案ではなくて、労働者がやむにやまれず、あちこちに労働相談に行って助けを求める場合には、その救済、あるいは名誉を回復するということが必要ではないかと考えています。
 これについては、単に金銭的な側面だけではないのです。私たち労働組合が労働相談に当たっていると、もう会社から解雇されたときに、労働者の不当性とか、あるいは非があるから解雇されたのだというようなことで、本人の名誉のために、名誉を救われれば、もう金銭はどうでもいいのだよと、あるいは現職復帰はどうでもいいのだよという思いで駆け込んで来る人も非常に多いわけです。そういう意味では、あちこちたくさんの窓口をつくりながら、労働相談対応をすると、相談者にとって名誉回復をするような形での解決というのも考えられるわけですし、ADR問題については、労働、行政型をもっと充実していくということが必要ではないかと考えています。
 先ほどのアンケートで、裁判所の連携が出されておりましたけれども、この解決を図っていくための幾つかの問題点で、やはり労働委員会、あるいは労政事務所、労働局を見ますと、どうしても弁護士さんとか行政の人たちのOB、社会保険労務士さんという形で対応していますけれども、ある自治体では全国一般で長年オルグをやっていた者が、市の労働相談員になって解決を図っていますし、もっと労働組合で活動してきた人を、行政型の労働相談にも登用を考えることが必要ではないかと思っています。労働委員会においても公労使という三者構成をが効力を発揮していることによって解決促進になっています。
 非常にこじれたときに、労働組合が経営者を説得するよりは、使用者側委員が説得する方が有効という事例も沢山ありますし、あるいは労働組合については労働者側委員が説得する方が有効というのが、現実問題としてあるわけです。そういう意味では、労働問題に関するADRについては、そういう形で労働組合のOBの方を、これは単に大手労組の役職をやった方を登用するということではなくて、現場のことを本当に知っている人たちをいかに登用していくかということが必要ではないかと思っています。
 また、アンケートを興味深く見させていただきましたけれども、単に知識があれば問題解決するのじゃない、ということが意見として出されていたと思いますけれども、私たちも労使紛争をしていて、そういう専門性というのは単に情報を知っているか知っていないかだけではなくて、やはり解決に向けての、汗を本気になってかける人なのかどうなのかということが必要だと思います。
 労働問題でのADRはほとんどが今日行政型ですから、事務局が重要な位置を占めています。その担当者が、各地方労働委員会でもそうなのですけれども、役所の一般職を順ぐりにやるのが、労働委員会事務局に何年かいて、また移ってしまうということでいいのかなと思います。もう少し事務局を専門化して、あっせんなどについてもきちんとアドバイス、意見を言えるような事務局体制を育てていくことが必要ではないかと思っています。
 あと、労働相談を行っている労政事務所から逆に、これはもうあっせんはほとんど無理だから、労働組合をつくって解決するしかないということで全国一般へも話が来ます。労政事務所と労働組合との連携なども深めていくことが現実的な解決に向けて必要だと思っています。もう一つには裁判所との関係で、これは私自身経験した事例なのですけれども、外資系で企業名は言いませんけれども、ゴールデンタイムにコマーシャルをどんどん流す、シンシナティに本社がある多国籍企業の事例ですが、ここの工場閉鎖で争議をしたときに、中労委で不当労働行為で命令を取って、それで津の地方裁判所で和解を進めていました。このときに、津市の裁判長は非常に立派だなと、見事だなと思ったのは、中労委命令をてこにしながら、和解について会社側に対しては、労働者が勝ちますよということを言いながら、労働組合には津の裁判所では労働組合が勝てるかもしれないけれども、高裁に言ったらその命令が維持できるかどうか今は微妙ですよという形で、両者そこで和解をしてきた経過があります。
 そういう意味では、労働委員会制度というのは、法に基づいた三者構成の制度ですから、初審ぐらいの扱いをしながら、次は高裁にいくぐらいの扱いが必要だろうと思います。労働委員会で色々な疎明した資料は、裁判所でも是非生かしていただきたいと思っています。
 あと裁判所との関係では、各地方自治体で労使紛争の労働相談をやっていますけれども、今日事例としてお持ちしたのが、実は豊中市の事例です。豊中市の場合には、労働紛争処理について、労働相談をほかの市と同じようにやっていて、ところがこのときに労働者が申し立てて、しかし裁判をやりたいと、裁判をやりたいけれどもお金がないといった場合に、50万までは無利子で融資を行うという制度を設けています。ただこれも裁判をやるために融資をするということではなくて、その当事者の企業に対しては、労働者はこう言っているけれどもどうなのですかと、相談員が労働者にどうしても利があるなという場合だけ、その当事者にも通知をしながらお金を融資するというんです。
 したがって、相談活動で実効を上げていくための背景に裁判所で解決する局面との連携があると思います。どれだけ融資されているかどうか、豊中市の方にお伺いしていませんけれども、そういう制度がある中で、結局あっせんなども労使が出て合意しなければ解決しないわけですけれども、こういう形で出てこなければ融資をして裁判になってしまいますよということも、解決を促進するという意味では非常に有効ですし、各地方自治体でこういう融資制度を拡充してもらうと、かなり労働者が救済される側面が多いのではないかと思います。この資料は事務局担当者の方にお渡ししておきたいというふうに思います。
 最近は集団的な労使紛争が減って、個別紛争が増えている、これを裏返すと労働組合をもっとしっかりしろという意味合いもあると思いますし、連合そのものも組織運動には非常に力を入れています。けれども今日の働く者の価値観も多様化する中では、さまざまな紛争が出てくる時代背景にあると思います。紛争解決に向けてADRをもっと活用する時代がこれから来るだろうというふうに思いますので、そのことだけ申し述べて、私の方からの意見に代えさせていただきたいと思います。
 御清聴どうもありがとうございました。

〔質疑〕

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、最初に申しましたように、今日3人の方から御意見を御紹介いただきましたので、質疑応答に入りたいと思います。ADRの現状や課題については、次の課題ということになりますので、これからは今日ヒアリングをいたしました3者の御報告につきまして、御質問あるいは御意見を頂戴し、質疑応答の核としたいと思います。
 時間としては、30分以内というふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 高木委員、どうぞ。

○高木委員 横尾さんへの質問で、ADRのメリットとして、迅速・廉価・専門性とあるのですが、この廉価という部分は、何を念頭に置いて言っておられるのでしょうかということをお伺いしたいと思います。

○青山座長 それでは、横尾委員、よろしいですか。

○横尾委員 明確ではないのですけれども、恐らく弁護士費用のことだと思います。

○原委員 関連の質問なので、お願いしたいと思いますが、私もここに書かれた廉価の意味は、よく消費者側が簡易・迅速ということでADRについて議論するときは、やはり手数料当たりが訴訟に比べると安いというところにメリットを感じて書くんですが、業界側が廉価と書かれるときには、ちょっとどうかなという感じがして、この言葉が出てくるのには総体のコストは一体どれだけかかるのかという話から、この廉価という言葉が出てくるかこないかということになると思って、その総体のコストというものをどうやって把握してらっしゃるかというふうに思ったのです。これは、きっと弁護士費用のことだと思ったのですがその点はどうでしょうか。
 それから、例えば家電のPLセンターとか、これも実際の実務という運営は、業界団体が資金を出してやっていらして、私たちは安い手数料、あるいは無料ということで利用させていただいているのですが、業界としてやはりそこはコストはかかるはずなのです。ただ、家電のPLセンターなのかは、たった年間予算5,000 万円しかありませんから、日本の家電業界の大きさを考えると非常に少ないというふうに思っていて、もっとここはコストを掛けるべきだというふうに思っていますので、そこが膨らんでくると必ずしも業界にとっての廉価ということになるかどうかは、中々難しい側面もあるのではないかと思っておりまして、私もこの言葉を使われた意味を、高木さんとは違うのかもしれませんが、消費者側としてもお聞きしたいというふうに思っています。

○横尾委員 原委員の御質問は非常に難しくて、PLセンターに絞っての話だと思うんです。ですから、そこは調べないと分かりませんけれども、一般に廉価という場合は、それは弁護士費用のことだと思います。ですから、弁護士の先生にお願いすれば、ADRも費用が掛かってくるというふうに理解しております。
 原委員の御質問に、直接のお答えになるかどうか分かりませんが、かなりの部分業界が出している費用は小さいというお話もありましたけれども、それぞれのケースよって違うとは思うんですが、仮に色々な原因の追及などで、検査をしたりとかいう場合であっても、それを利用者に払ってくださいというようなことは余りやってないだろうと思います。その辺は、そのPLセンターが支払っている場合もございますし、我々が色々聞いてみますと、むしろ個別の専門家の方の人脈で苦労されているところもあるというふうに聞いていますが、一般的にはそういうことではないかと思います。原委員の御質問は、もうちょっと調べてみないと、何とも言えないと思います。

○青山座長 原委員の廉価という意味は、ちょっと違う意味ですね。業界として紛争解決にどれだけお金を出すかということですね。

○原委員 はい。

○青山座長 高木委員の廉価というのは、普通の意味ですね。

○高木委員 そのADRの費用をだれが負担するのかというのも、いずれ議論になることだと思ったので、今日は控えました。

○青山座長 どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 今の意見に関してなのですが、私も仮に廉価というと素直に受けとめたことは、やはり中小企業の場合ですとPLの事例というのが、次の製品をつくるための貴重な資料なのです。ですから、先ほどの事例の公開という面も、60%といったときに、私は逆に少ないなと思ったのです。PLに関しましては、もうこういった事例があるという、1年間のデータを全部発表してもらっているのです。それに対してこういう事故があった場合、私はカバン屋ですから、カバンのナスカンと言いまして金具がありますね。これがコンピュータを入れ替えるときにぱちんと外れて、メガネが壊れた、顔に傷付けたとか、そういう事例がある場合には、ナスカンの重量をどういうふうにしたらいいかというのは、業界全体ですぐ検査をやりますので、そういった面で個別にやって事故が起きてからの問題から比べたら、確かにこういうものがどんどん出ていた方が、廉価という意味では非常にいいかなという受け方を私はしています。

○原委員 もっと広い意味での社会的コストということを考えての廉価ということですね。

○青山座長 ほかに、三木委員。

○三木委員 ここはADRの検討会なので、いろんなタイプのADRを一括して御報告いただいたのは、仕方がないかと思いますが、しかしADRの中でもあっせん・調停型と仲裁型は、かなり質が違うと思いますので、その点に関しまして、まず1つは全国消費者団体連絡会の方に御質問ですが、アヒルの絵が付いているペーパーを見ますと、話し合いによる解決と裁判を対比しておられるので、主として念頭に置いておられるADRは、あっせん・調停型かなと思いますが、そういうふうに理解してよろしいのでしょうか。更に消費者サイドでは仲裁型のADRには、余り関心を払っておられずに、専らあっせん・調停型のADRの拡充を訴えておられるというふうに理解していいのかというのが、全国消費者団体連絡会に対する御質問です。
 併せて経団連の方に、同じ趣旨ですが、商取引の世界では言うまでもなく、特に国際商取引においては、仲裁が一般的に使われているのですけれども、その点は別として、このペーパーに挙げておられる消費者契約とADRの関係とか、知的財産権とITという、ここに挙げておられる場合のADR、これはあっせん・調停型なのか仲裁型なのか、それぞれの関係をどう考えておられるのか。併せて伺いたいと思います。

○青山座長 では、まず田中さん。その後、横尾委員、お願いいたします。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) 仲裁と調停、あっせんに関しましては、実情といたしまして、まだ言葉の定義がはっきりしていないというところで、消費者団体としてもそれほど煮詰まっていないというのが実情ではないかと思います。
 ここである程度私の主観も含めてお答えさせていただきたいと思っていますが、まず現実問題として、消費者問題で最初から仲裁合意が結ばれて、本来の仲裁という意味で行われている仲裁というのは、余りないのではないかと思います。そういった意味で消費者団体がADRを考える場合は、どうしても調停、あっせんが中心になってしまうと、現実としてそういうことがあるのかと思います。
 また、現実といたしまして、例えば弁護士会の仲裁センターなどに消費者問題で持ち込んだ場合にでも、初めから仲裁というのではなくて、あっせん、調停を経て、最後に仲裁になることが多いと私も認識しておりますので、仲裁一本で絞るというのは、これからの検討課題になるかと思います。
 今回、商品販売法など、金融トラブル連絡調整協議会などで、色々片面的な仲裁などについても検討されたと思いますけれども、そういった意味で消費者問題を考える場合、仲裁というのはどちらかというと業界団体を中心としたADRの中で、仲裁ということが比較的検討されやすい問題だと思いますけれども、消費者問題全般の、行政型ADRも含めたすべての面で仲裁というのを検討するのは、まだこれからの課題かと思っています。

○横尾委員 消費者契約法によるPLセンター等は、これは仲裁ではなくて、裁定という言い方をするところが多いと思いますけれども、これは今お話があったように、片面的な形になっておりまして、むしろ企業としてはその結論を尊重しますけれども、消費者側はそれを受け入れない自由があるという形で運用されているのだろうというふうに、一般的には認識しております。
 それから、知財、ITについては、これからこういうものをしていただきたいということで、必ずしも具体的なイメージがあるわけではないのですが、仲裁については非常に選択肢が狭まるというようなことで、もうちょっと緩和して、例えば二審制にするとか、そういうようなことをおっしゃっているような企業もございまして、そこのところは更に検討しないといけないと思っております。もうちょっと聞いてからお答えしたいと思いますが、仲裁については、それがいいという意見は余りないと思います。

○青山座長 田中さん、どうぞ。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) あと消費者問題で仲裁ということで一番問題になってしまうのは、もっと議論が先の問題になってしまうかと思いますが、契約書の中に紛争が生じた場合の管轄機関として仲裁機関が入れられてしまった場合に、欧米などでは問題になっていますが、それが裁判への権利を剥奪するものになってはいけないということが、消費者問題で仲裁ということについてこれから一番に考えなくてはいけない問題だと思います。

○青山座長 原委員、どうぞ。

○原委員 補足的に、田中さんの発言で、大体意は尽くされていると思いますけれども、消費者問題は最初からこれを仲裁でという形で入るのが、中々難しい問題が多いという感じがしています。
 だから、あっせんとかをやっている途中で、ステップアップしていく段階で、では仲裁という選択が出てくるかなというふうに、消費者問題の特色としては思っています。
 ただ、金融トラブル連絡調整協議会では、金融という専門性というところもあるものですから、片面的仲裁の話なのかも当初出ておりましたが、ただ片面的仲裁になると、裁判、訴える権利というようなところにも絡んでくるので、その次に何がやれるかと考えると、今度は業界団体に加盟して、業界団体がADRをつくるとすると、業界団体に加盟するということの条件が、そこのADRにも加盟することになって、ADRの結果に従うという、そういう形も考えられると。二重の網を掛けていくというようなことも考えられます。その次は、ちょっとそこまでは難しいということで、最終的には尊重するという形で、それが正当な理由なく拒否するのだったら公表するという、何か3つぐらいステップがあって、その3つ目の選択肢をどうするかというところで、結果的に仲裁に似た形は、色々と工夫はできるかなと思っていますが、入口のところからそれで入りますかというのが、非常に難しいというふうに感じています。

○三木委員 一点だけ付言したいのですけれども、ADRに期待するとか、ADR拡充を求めるという場合に、裁断型の紛争解決である部分を嫌って、話し合い型を求めるというのであれば、これは仲裁は裁判の方のグループに入ってしまうわけですね。
 他方、簡易・迅速とか、あるいは国家の機関に拠らない私的自治の紛争解決という基準を置くのであれば、仲裁は調停・あっせんの方に入るのですね。
 ですから、各団体がADRの拡充とおっしゃる場合に、どちらに比重があるか、両方に比重があっても結構なのですけれども、そこはちょっと明らかにしていただければという趣旨で質問いたしました。

○青山座長 これはどなたに。

○原委員 ほかの議論に入ってしまいますね。

○三木委員 趣旨を言っただけで、別にお答えはあってもなくても結構です。

○青山座長 要するに、今、原委員がお答えになったのは、消費者問題の特性として仲裁は難しいということですか。

○原委員 一番最初の入口から、仲裁を明示されることが難しいと。

○青山座長 そこのところを御説明いただければいいのではないかと思います。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) 原さんの御意見と、言葉尻をとらえてしまえば違う点もあるかと思いますけれども、例えば選択できるだけの情報があらかじめきっちり与えられていて、当事者が初めから結果に強制力を付けたいという選択であれば、それは初めから仲裁ということも選べるわけですけれども、現状問題といたしまして、そういった状況では今ないわけですから、今の状況では初めから仲裁というのを選ぶのは、中々難しいということです。
 そういう段階では、今はあっせんや調停というのに、消費者問題がどうしても視点を置かざるを得ないというのが実情だと思います。
 概して言いますと、先ほどの話し合いの解決というのは、当事者の力関係がある程度同じときに、一番効力を発揮するものだと思います。そのためには、消費者側には支援的な役割として、国民生活センターや消費生活センター、あるいはPLセンターなどの商品テストなどのような情報が与えられて、初めてその効力が最大限に発揮できるものだと思いますので、そういったものを総合的に含めた上で、調停やあっせん、強いて言えば仲裁というのも考えていくべきなのではないかと思います。

○青山座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 横尾委員に1点、それから田中さんに2点御質問したいのですが、まず横尾委員に対しては、先ほどお話の中で、今後株主への説明責任が重要になれば、合理的な紛争解決を選択する必要が強まってくると。ただ、その場合には企業なりである程度厳格な手続が必要になるのではないかという御趣旨だと理解したのですが、私も企業の方のお話を伺うときに、ADRを選択するときの問題点として、訴訟を選択すれば、ある程度訴訟で敗訴しても、それはしようがないということになるのに対して、ADRを選択して結果が余りうまくないと、企業内部で何でADRを選んだんだと、どうして裁判を選ばなかったのだというような形で、個人的にということかもしれませんが、批判を受ける可能性があるのではないか、そういうことがADRの利用を阻害する側面があるのではないかというお話をちょっと伺ったことがあります。
 そこで横尾委員に、そういうようなことが企業内部であるのかどうか、あるいはあるとした場合に、それがADRの利用を阻害しているとすれば、それはどういうふうに経済団体としては改善していくことが適当とお考えかどうかということを、1点お伺いしたいと思います。
 田中さんには、2点御質問したいのですが、1つは消費者問題が拡大する中で、ADRの現在の利用が必ずしも十分でない一つの原因として、相談業務等が弁護士法72条の関係で、費用を取ってすることができないという問題がある点を御指摘いただきました。
 特に調停、あっせんとの関係だと思いますが、専門性以外のコミュニケーション能力が重要だという御指摘がありました。
 そういう点を総合して考えると、消費者団体としては少なくとも調停、あっせんについて言えば、弁護士あるいは法曹有資格者が担当者として業務を独占するということは、必ずしも適当ではないというふうにお考えなのかなというふうに推察したのですが、そういうことでよろしいかどうかということを1点御確認したいと思います。
 もう1点は、最後の手続ルールについてのお話で、ゾウと檻のお話は大変面白かったのですが、そこでADRについて定義づけをする必要があるという御指摘があって、その定義づけが必ずしも重要でないときに、執行力の付与という強力な効果を認めるのは、時期尚早ではないかというお話だったかと思うんですが、もしよろしければその定義づけということで、どういうようなことをイメージしておられるのか、ADRを定義づける際にここは重要であるというふうにお考えのポイントが、消費者団体としてあればお教えいただきたいと、以上の2点をお願いいたします。

○青山座長 どうもありがとうございました。では、横尾委員に対する御質問からお願いいたします。

○横尾委員 単純に私は理解しておりまして、まさに今の裁判制度について予測可能性の低い中で、むしろADRを選択した方がお互いに合意が得られそうな中で、そちらを選ぶということが増えてくるのではなかろうかと。ですから裁判制度自体が、これから改革を進めていく上では、そういったこともわかってくることだろうというふうに理解しております。

○青山座長 では、田中さん。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏)第1点の第三者の資質の問題に関するお尋ねですけれども、まさしくおっしゃいますように、ADRにおける第三者といたしましては、法曹有資格者に限ったものではないというのが消費者団体の意見でございます。
 今回の司法制度改革審議会の中で、隣接業界まで広げていらっしゃいますけれども、それが消費者から見まして、隣接業界まで広げたところで、果たして今までの有資格者、法律関係者とどう変わるのか。また、その隣接業界という言葉が使われるのが、逆に弁護士法72条のバリアーとして、司法書士や弁理士が使われているのではないかという点も一点、私の主観も含めまして危惧があります。
 次にADRの定義づけのポイントでございますけれども、これは難しいお話でございますけれども、私の考えでもよろしいですか。
 まず、第三者の関与の仕方ということが挙げられると思います。次にプロセスの問題だと思い、例えば同じ調停というものを取りましても、今の現状の調停というのは調停委員会で調停案をつくって、それを両者に意見を示すことで、それに納得するか、納得しないかという点で調停というのもありますし、今回消費者大会でやりましたように、お互いが同席で話し合って、それも調停と言われていると思います。そういったプロセスを細かく分けることで定義づけをしていかないと、同じ言葉で違った意味でとられてしまっては、全く意味がないというふうに感じています。

○青山座長 どうぞ。

○綿引委員 山本委員の御質問とかなり近いのですけれども、今のお答えで今一つはっきりしなかったので、消費者団体が考えておられるADRは、主宰者は法曹有資格者でない方がいいというニュアンスを持ってお話になっているのでしょうか。というのは、ちょっと強烈な言い方で恐縮なのですけれども、解決の方法として判例とか法的基準というものを前提とした説得ではなくて、専門性はさほど重要ではないというようにも聞こえる御説明があったものですから。そんな形で、本当に紛争が本当に解決できるのだろうかというのが私の率直な感想でして、法曹有資格者の専門的な知見は全く入らないような形でのADRの方が、消費者団体としてはむしろ望ましい姿だと思っておられるのかどうかということをお聞きしたいのです。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) お答えさせていただきます。それはそうではなくて、私の言葉が足りなくて申し訳なかったのですけれども、法的知識が必要というトラブルも数多く実際問題あると思います。ただ、それはあくまでも選択であるべきだということを申し上げたいと思います。
 というのは、トラブルの解決内容といたしましては、先ほどお金の問題ではなかったというような話もありましたように、法的な論点を論じているのではなくて、いわゆるコミュニケーションの問題で、将来も関係を持ちたいという問題も、消費者問題として実際あるわけです。そういった中では、判例を用いたり、法的な知識が論点でない場合がありますので、あくまでも法資格者であれ、法的知識であれ、それは当事者が選択すべき問題と考えるわけです。例えば法的知識などが第三者の調停の場に行くのに必要なのであれば、その前段階として当事者が身に付けるべきものとも考えられ、それはあくまでも当事者の選択ではないかと思います。
 多くADRの中では、法的知識を持って、これは法律的にはいけないのでこうしなさいといったADRも必要だとは思いますけれども、それは選択肢の中の一つであってほしいというのが、私どもの願いです。

○綿引委員 選択肢の一つとして、第三者が入ったお互いの話し合いの場を設けるような機関というものがつくられていってもいいという御提言だと伺っておけばよろしいですか。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) はい。

○綿引委員 ありがとうございました。

○説明者(日本労働組合総連合会 田島氏) 今のあっせん、調停、仲裁で、一言だけ補足なのですけれども、実は申立事件で、結局は和解での解決が6割という報告を先ほどしましたけれども、そうすると申立事件であっせんの場合には、両者が応じないとあっせん作業に入らないわけです。結局、労働者側が申し立てて経営者がノーと言った場合に、実態としてそれ以上事務方として努力がされていないのです。それについては、もう少し解決に向けての努力をするということを、是非してほしいと思っています。そうしないと、紛争そのものが長引いてしまうし、あるいはADRそのものの存在意義が問われるのではないかと考えています。あっせんから命令までの範囲がありますけれども、労働者が申し立てた場合に、事務局そのものが、それを作業として進める努力を是非お願いしたいと思います。それがADRの存在意義を高めていくことになるだろうと思います。
 今、見ていますと、片方がノーと言った場合には、もうそこであきらめてしまう事例が非常に多いので、最後に一言触れておきたと思います。

○綿引委員 率直なことを申し上げて、労働委員会というのは、最も歴史が古いADRで、かつ三者構成ということで、構成的にも人的な主宰者の確保もされているADRの典型例だと思うんです。
 ところが、おっしゃったように、まさに簡易・迅速・廉価、すべてが今、失われているといってもよい現状なのではないかというのは、私どもも裁判所に上がってくる労働委員会の事件を見て感じているところです。
 先ほど当事者がもう少し考え直す必要があるという御提言があったかと思うのですが、制度としてどこかをいじらなければいけないというようなご指摘はおありですか、どう労働委員会の制度を動かせば、ADRとしてもっと機能していくんだと。勿論当事者がもっとちゃんと互譲の精神を守って、紛争解決に取り組んでくれることが一番望ましいのでしょうけれども。

○説明者(日本労働組合総連合会 田島氏) 命令を見ると千何日で長いのですけれども、和解とかは解決率が高いのです。したがって、労使紛争において、労働委員会の命令等に従わない態度を強く示すような場合、つまり、労働委員会から命令が出ても、地裁があるよとか、最高裁があるよという形で構えられたら、本当に無力化してしまうな思います。それをどう実効確保を担保していくかというのが、非常に重要だと思うのです。
 そういう意味では、法で規定されている公労使の関わっている労働委員会は、もう少し強制力と言いますか、それを担保できる手法が必要だろうというふうに思います。
 あと委員の方と言いますか、労働側の委員も含めて、余りにも名誉職的な人も多いので、これについては改善していかないといけないと思っています。

○青山座長 ほかに何か、安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 田中さんと田島さんの両方に伺いたいのですが、相談件数として、非常にたくさんの件数を挙げられていましたけれども、そこに至る前の段階、当事者の無視ですとか、聞きかじりでもって突拍子もない相談事、そういうような件数はどれぐらいの比率なのでしょうか。
 と言いますのは、私はもう完全に私的自治、市民コート、こっちの方がADRであるべきだと思いますので。
 ただし、そうなるためには、底辺の知的レベルを少し上げないといけないなと思っていますので、その辺で無知の比率というのはどれぐらいあるのかなと、それを伺いたいと思います。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) それは、数字では何も出ていないものだと思います。でも、正直に申し上げまして、消費生活センターや、国民生活センターに寄せられている相談というのは、氷山の一角でございまして、その何十倍とも何百倍とも取れる苦情や不満というのをそれぞれに持っていて、それぞれがダイレクトにお店なり、メーカーなりに苦情を言っていると思います。
 そこで解決できなかった場合に、消費生活センターや国民生活センターに言ったり、ほかの機関に言ったりするところも多いと思いますが、そこにいくまでに泣き寝入りするケースも数では表せませんけれども、たくさんあると思っております。

○説明者(日本労働組合総連合会 田島氏) 相談も非常に多いし、これは無知云々ということではなくて、実は特徴的なのは連合という労働組合が失業者の労働相談を職安の前でやったときに、まず自分が失業した不安を聞いてくれる人がいるということでほっとするという問題が、非常に労働問題では多いのです。
 実は、あちこちの労働組合が労働相談をやると、今は活況を呈している実情です。先ほど報告しましたように、例えば東京都の労政事務所は年間4万8,000 件ですけれども、実際にあっせんに掛けたのは1,300 件です。そのほかは、そういう実情を聞いて、解決のためのアドバイスをするということで処理をしているというふうに理解しています。
 そういう意味では、単に無知ということではなくて、いろんな不満が、今の孤立化社会の中で、仲間内に中々言えないと、そうするとそういうところに、まず労働相談で声を掛けてというところが多いのではないかと思います。
 だから、これは無知云々の問題ではなくて、自分たちの相談場所を求めていると思います。ですから、これからのADRの役割というのは重要になるといえます。
 すべて裁判所でやるということではなくて、様々なADRという機関で解決を図っていくことが必要だろうと思っております。

○青山座長 ほかに何か御質問ございますか。では、高木さん。

○高木委員 田中さんに対しての質問です。先ほどからの説明を聞いていると、選択性というのが結構重要な意味を持っているのかなと思ったのですけれども、差し支えなかったら、後で補充のものを出してもらっても構わないとは思うんですけれども、「選択性」の中に「解決方法の選択」があって、これは、個々のプロセスの問題だと思います。「第三者の選択」というのは、紛争処理する人をどう選ぶかみたいなことだと思うんですが、Cの「選択可能なための情報開示」は、どの程度のことをおっしゃっているのか。紛争を解決する人の開示だけなのか、もっと幅広い情報開示をさしているような御発言だったものですから、もしそこをはっきりできるのであったらしていただきたいと思います。

○青山座長 重要なポイントですから、もしできたらお願いします。

○説明者(全国消費者団体連絡会 田中氏) 大きな意味での情報開示です。というのは、これはすべての選択権に関わってくる問題だと思いますので、勿論第三者のプロフィール的な情報開示もありますし、または解決方法で、こちらのADR基本法で、はっきりとしたり定義を決められれば、そういった意味は必要なくなる可能性はありますけれども、各機関ごとで使われている解決方法は、どういったものなのかという情報開示。
 もしくは、先ほどのアンケートの中でも、事例の公開などについてもございましたけれども、ある程度この機関ではどういった解決方法が行われているのかということが、選択できるだけの情報というのを開示していただきたいというのが消費者の方の本音なのではないかと思います。

○青山座長 高木委員、よろしゅうございますか。

○高木委員 はい。

○青山座長 ほかに何か御質問はありますでしょうか。なければ、時間の都合もございますので、ヒアリングはこれで終了させていただきたいと思います。
 横尾委員、田中さん、田島さんには、お忙しいところを本日は御出席いただきまして、どうもありがとうございました。

[討議]

○青山座長 続きまして、今日は3番目の議題に入らせていただきたいと思います。
 前回、今回とADRの機関や、ユーザーサイドからのヒアリングを実施させていただきました。また、今日は第1の議題として、事務局の方からADRの各機関に対するアンケート調査結果の説明を受けたわけでございます。
 そこで、それほど十分な時間があるわけではございませんけれども、これからの時間はそれを踏まえまして、ADRの現状や課題等につきまして、各委員から御意見を賜わり、討議をしたいというふうに思います。
 これは、要するに、ADRのこれからの我々の作業の総論的な議題ということになるわけでございます。
 御存知のように、ADR検討会の最初のときに、各委員から一言ずつ自己紹介を兼ねた抱負のようなものを言っていただきましたけれども、とにかく時間が非常に短くて、思いの丈を話すことはできなかったと思います。今日は、十分ではございませんけれども、先ほど5時までは時間をいただきましたので、総論的な議題について御議論いただきたいと思います。
 総論的な問題は、今日だけでは尽きませんので、次回の前半にもそういうことをやりたいと思いますけれども、とりあえずADRの現状や課題というものにつきまして御意見を賜わりたいと思います。
 これに関連しまして、資料の中に1枚紙でADR検討会資料3−2で、「御議論用メモ(参考)」というのがいっていると思います。「論点1」と「論点2」というふうに分かれております。しかも、これは事前皆様方にお届けしてあると思いますけれども、必ずしもこれに限るわけではございません。それから、一人一人がこれを全部言っていただきますと大変なことになりますので、どの点からでも結構でございますが、御議論を賜わりたいと思います。
 では、原委員どうぞ。

○原委員 少し順不同になるかとも思いますけれども、大きな論点のところだけで意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、司法制度改革の中で、ADRの議論というのは、裁判と並ぶ魅力的な選択肢という言葉でくくられていて、私はすごくこの言葉がいいなと思っていて、並ぶという言葉と、魅力的ということをどういうふうに実現していくことができるかということが大きな課題だと思っています。
 最終的には、ADR基本法の制定も視野に入れての検討ということで始まっているのですけれども、全然別なのですが、私は個人情報保護法の策定にずっと関わっていて、非常に残念なことに、今、大変な議論になってきているのですが、最初の法律のつくり方の議論が十分でなかったというところが、今いろんな問題点が噴出してきている要因になっているというところがありまして、先ほど田中さんの方からも定義をはっきりして形をつくっていってほしいというお話があったのですが、やはり法的な構成を、基本理念的なものと、定義と手続面で構成をしていくのか、それともガイドライン的なものにしていくのか、何か少しイメージを持ちながら話を進めていかないと、少し混乱をしてくるのではないかなということが前段としてあります。
 中身なのですけれども、ADRといっても、設置されているのから見ると、司法、行政、民間型とあって、先ほど手続的に見ると、あっせん、調停、仲裁とどこを中心に考えていらっしゃるのですかという御質問もありましたけれども、今のところ非常に多様です。アンケート結果でもその多様性が伺えるのですが、その多様性というものを全部包含する形の姿にしていくのか、それとも何かすごくシンボリックなものをつくって、本当に基本線だけを出したようなものにしていくのかという辺りも、ちょっと念頭に置いた方がいいのではないかなと思います。
 ADRの議論を出されるときに、よく簡易・迅速・低廉という言葉が出てくるのですが、私はこの簡易・迅速・低廉は全体の中の一つに過ぎないと思っておりまして、実際には、裁判と並ぶ魅力的というところまでいこうとすれば、いろんな選択肢があって、いろんな解決手法の選択ができるということ。
 田中さんの方から話されたように、当事者がもっと積極的に、主体的に参画ができるということです。納得のいく結論が出てくるという3つがあって、それが簡易・迅速・低廉に実現できればいいということになるのではないかと考えておりますので、ただ単純に簡易・迅速・低廉のみの議論でとどめていただきたくはないというふうに思っております。
 ですから、先ほど申し上げたように、選択性をどう確保していくのか、主体的な参加をどうしていくのか、そうしたところの議論も詰めていただきたいというふうに思います。
 消費者問題からすると、情報力と交渉力の格差は圧倒的にありますので、経団連の方で市民コートの提唱がありますけれども、勿論、私的自治というところは異論はないのですが、やはり情報力、交渉力の格差を埋めていく分野もあると思いますので、そこも議論になるかと思います。
 それから、もう一つが、裁判との連携の部分なのですが、例えば交通事故紛争処理センターのヒアリングで、ミニ裁判のような、ほとんど判例に基づいてやっているというでした。私は、こういうADRもあっていいだろうというふうに思いますけれども、必ずしもそれだけではないというふうに思っているので、これも単なる裁判の露払いという形ではないADRの可能性も探っていただきたいというふうに思います。
 大変長くなって恐縮なのですが、今度は中身的なところで4点なのですが、1つが信頼度です。認知度を上げたいというのがありますが、認知度は信頼度が上がれば上がってくると私は思っていて、信頼度をどう上げていくかということは、やはり理念と仕組みが確立して、それが外から見えるということが信頼度を高めるということになると思いますので、その理念の確立と、仕組みの確立と、その透明性を図るということをお願いしたいと思います。
 質の確保のところで、今も後半で少し議論になったところなのですけれども、弁護士法72条のこととか、法曹関係者が関わるのか、関わらないのかという話がありましたけれども、それと並んで、アンケート結果にもありましたように、担当者のトレーニングの圧倒的不足があります。ここが現状で非常にお粗末な部分で、ここの拡充というのを図っていかないと、最初の相談とか、苦情とかに立ち上がられたところで、振い落としみたいなところがありますので、質の確保というのをどう考えていくのかということも論点だと思います。
 執行力の問題なのですが、アンケート結果ですとか、今の労働組合のお話なのかを聞くと、かなり執行力がある方がいいと。その方が力としては発揮できるという意見があって、でも消費者側は、それほど仲裁を望んでいないのではないかという御意見もあったのですが、先ほど田中さんが言ったように、仲裁でもいいよと言えるほどの情報がないから、そこの判断ができないということであって、情報があれば仲裁ということも消費者問題の中ではあり得ますので、消費者側によければ本当は仲裁でという感じもしますから、執行力というところも、私としては議論をしておく必要があるかなと思います。
 もう一つ、執行力について言えば、議論はするのだけれども、でもあくまでも選択の問題でもあるので、執行力のある機関を選ぶのか、そうではないADR機関を選ぶのかという選択はできるので、きちんとする必要はあるけれども、一つの回答ということではないのではないかと思いますが、その辺りが議論になると考えております。
 あと、またいろんな点で、消費者側からの意見ということで提出したいと思います。雑駁になって済みません。

○青山座長 非常に広範囲な問題点を指摘していただいてありがとうございました。
 ほかにどうぞ。それでは、山本委員。

○山本委員 原委員の大変包括的な細部にわたる御意見の後で、少し話しにくいのですが、まだ私は抽象的なことしか考えていなくて、具体的なイメージが中々わかないところですが、第1回のときに申し上げたものから、それほど考えが進んでいるわけではありませんけれども、若干申し上げたいと思います。
 このメモの「[論点1]ADRの拡充・活性化に何を期待するか」という点については、原委員も御指摘のとおりで、私も基本的にはやはり改革審の意見書で提示された、裁判と並ぶ魅力的な選択肢ということで、ADRを充実させることで、日本における紛争解決全体の質及び量の改善を図るということであろうと思っております。
 より具体的に申し上げれば、個々の当事者の具体的なニーズに適合した紛争解決、あるいは権利救済の道を開くことであろうということであります。
 恐らく、紛争解決の在り方すべての面にわたって裁判を凌駕するようなADRというものは存在すべくもないだろうというふうに思っておりまして、個々のサービス内容において裁判を上回るようなもの、例えば、迅速性を何よりも重視する当事者に対しては、内容は裁判に劣るかもしれないけれども、迅速性においては裁判に勝るというような紛争解決の道を提示すること。あるいは、専門的な紛争内容に適合した紛争解決を求める当事者に対しては、費用はかかるかもしれない、あるいは時間は裁判よりもかかるかもしれないけれども、その内容において裁判よりも専門性の高いサービスが提供できるというような道を提示すること。
 そういうような形で、個々のサービス内容について、裁判といわば競争できるようなADRが発展していく。それによって当事者のニーズにより適合したような紛争解決サービスが、日本において提供されるということが重要なのかなと思います。
 そのためには、ADRにおいて与えられる紛争解決の内容について十分な情報が提示されて、先ほど田中さんもお話になりましたが、それに基づいて当事者が自分の需要に適合したサービスを提供する機関を選択できるというのが理想型だろうと思います。
 そういう観点からすると、何を期待するかというのは、国がADRに対して何を期待するかということよりも、国民の間にある需要ないしは期待というものがあるとすれば、それに対してリスポンシブルな形で応じられるような紛争解決のサービスというものが国民の需要に応じて適切に出てこれるような、そういう枠組みというか、スキームを整備していくということが重要なのではないか、そのために何をすべきかということを考えるべきではないかというのが私の抽象的な印象であります。
 そういう観点から、現状の問題点というものを考えてみますと、これは既に第1回の検討会や、あるいはその他の場面においても各委員が御指摘があったところでありますけれども、認知度が低いということ。一般的な意味での信頼性が低いということ。その辺りが非常に重要ではないかと。そもそも現状においては裁判に対して、個々のサービス内容において競争していく基盤に欠けている部分があるのではないか。それを改善していくということが重要なのではないかと思っております。
 認知度の観点から言えば、これは原則としては、各機関で努力する、あるいは各機関が連携して、ポータル・サイトを作るというような議論もありますけれども、努力していくべきことであろうと思いますけれども、ただ、やはり裁判というのは、まさに国家の制度として存在するわけでありまして、アプリオリに十分な認知度を有しているわけで、それに対してADRが対抗していこうとすれば、少なくとも法律でADRについて認知し、国としてADRに対してどういうような姿勢で臨むのかということを明らかにするということが長期的に見るときに認知度を上げていくことになるのではないかということが期待されるように思います。
 原委員が御指摘のとおり、確かに信頼性というものが非常に重要で、これを上げれば認知度も上がっていく面は、確かにあるだろうと思います。
 信頼性をどういうふうに確保するかという点を非常に一般的に申し上げれば、私は個々の機関の信頼性を国が許認可という形で担保するというような仕組み、国が信頼性を具体的に担保するというような仕組みは相当ではないだろう。これは、今の日本の国の在り方という観点から見ても、あるいはADRというものが本来、その機関の個々の自主性に基づいた制度であるという観点から見ても相当ではないだろうと思います。
 そういう意味では、第1回にも申し上げましたように、原則的には、最低限の規律を定めながら、しかし最終的には情報開示によって、むしろ市場の淘汰に期待する。問題があるADR機関が出てきた場合でも、最終的にそういう形で淘汰されていくということが望ましいのではないかと思っております。
 ただ、先ほど来申し上げていますように、裁判と競争するようなサービスの提供という観点から見ると、今のさまざまな制度的な制約と言いますか、あるいはそもそも制度がないという点がしがらみになっている場面があるのだろうと思います。
 この検討会で今後議論されていく時効中断の問題とか、執行力の問題、法律扶助の問題、さまざまな問題があると思いますが、そこで一点申し上げたいのは、各ADR機関の目指すものによって、どの点が障害になるかというのは、異なってくるのではないかということであります。前回のヒアリングの結果でも、あるいはアンケート調査の結果でもやはりそういうことが出ているのではないか。
 私が思いますのは、先ほど申し上げたように、あるADR機関にとっては、例えば時効中断は非常に重要であると。しかし、ほかのADR機関は、我々のところは余り関係ありませんよということは、それぞれのADR機関が目指すサービスの内容、言わばこれが売りだということによって違ってくるのではないかということです。
 そうだとすれば、例えばアンケート調査で、すべての機関がその制度を求めていなくても、ある程度の機関がそれを求めている。つまり、一定の需要があるのであれば、可及的にそれに応えていくということが検討の姿勢としては望ましいのではないかという認識を持っております。
 そういう認識に基づいて、今後さまざまな論点を検討していく必要があるのではないかということであります。
 以上、抽象的な話で恐縮でしたが、私の意見であります。

○青山座長 どうもありがとうございました。非常に包括的な御意見を賜わりました。
 ほかにどうぞ、自由に御発言いただけますでしょうか。廣田委員、どうぞお願いいたします。

○廣田委員 先ほど、田中さんのコンセンサスを先にという御意見がありましたけれども、これは、卵が先かニワトリが先かということでありまして、私は仮定的にでも何かにアタックしてみて、具体的な問題を考えみないと、先に進まないのではないかという感じを持っております。
 この問題は、仮にADR基本法をつくることを仮定して、そういうものをつくろうとすれば、私は3つ山があるのではないかと思います。
 1つの山は、5つの峠みたいなものがある連峰のような山で、意見書の中にADRに関する総合的な制度基盤の整備とありますが、第1回で出された論点メモの中の時効中断効の付与、執行力の付与、法律扶助の対象化、裁判所との手続連携の促進、専門家(隣接法律専門職種等)の活用。論点メモに書かれている、この5つが連峰になっているような1つの山がある。
 これは私から見ると、かなり険しいというか、険阻な山で、これを登り詰めないと展望が開けないのではないかという気持ちが1つあります。
 この山をクリアしたいというもう一つの理由は、これをクリアするとADR基本法に芯が通ってくると思うのです。その連峰が第1の山です。
 もう1つの山は、山本委員が第1回検討会で、「国がADRの適切な発展に対して一定の関与をしているのだということを正面から認める」ということをおっしゃっています。そういうような、言わば国の責務、あるいはADR機関の役割、当事者の利用検討の義務、そのような基本事項、あるいはその元になる基本的理念というものを定める。
 第1回検討会に出された論点メモによると、基本的な枠組みの構築ということが書かれておりますが、それに当たると思うのです。それが1つの山であって、ADR基本法をつくるとすれば、例えばADRの必要性だとか、利点だとかいうことを、場合によっては前文を置いて法律にするというようなことも考えてもよいのかなと思います。
 2番目の山は、多分見晴らしもいいし、結構景色のいい山ではないかと思っておりますけれども、ここをしっかり固めるかどうかで、結局国民にとって魅力的な選択肢となるかどうかが決まります。したがって、第2の山が1つの決め手になると思うのです。
 問題は、第1の山と第2の山のどっちを先に登った方がいいのかということですが、私の感覚では、第1の山をとりあえずアタックしてみる。まず、アタックしてみて、それで見えて登り切ったら次の展望が、今、両委員の意見がありましたけれども、包摂したようなものが見えてくるのではないかという感じを持っています。これが2つの山です。
 もう1つの山は、これは実は変わった山で、このもう1つの山を登らなければADR基本法ができないというものではないと思います。しかし、やはり登った方がいいと思うのは、ADRという言葉の問題です。したがって第3の山もクリアしたい。第1回検討会で「私は、ADRに代わるよい名称はないものだろうか」と発言しまして、そのことをある新聞のコラムに書きました。何か名案はないだろうかと書きましたら、案外反響が多くて、実は自分もそう考えていたという声を色々聞いたのです。
 また、推進本部で、確か第2回の顧問会議でも、「ADRという呼称は国民に分かりやすくないのではないか」という発言があったそうです。
 これがなければ基本法ができないかというと、そうではないと思うのですが、この山をを越えて、もし日本語でいいものがズバリと出てくれば、大変いいのではないかと思います。例えば、ベースボールを野球と訳したのは、たしか正岡子規だという話でした。これで普及度が違ったのか、違わないのかわからないのですが、これがずっとベースボールのままだったら、多分戦争時代には野球はなくなっていたかも知れないというような感じがするのです。
 そうしますと、私の個人的な考えですが、ADRの代わる名称を公募してみたらどうかと思います。公募をすると手数や費用がかかるでしょうけれども、認知度を高める点では、元は取れるでしょう。
 私も実は腹案みたいのがあるのですが、応募したいと思いますので、ここで言うのは控えたいと思いますけれども、そういうことで、これを公募すれば案外名案が出てくると思います。
 そうすると、先ほどから魅力ある選択肢と言われていますけれども、このADR基本法をつくる過程、プロセスそのものを一つの魅力あるものにすることができます。全く個人的な意見ですけれども、そうやって3つの山をだんだんクリアして、そして全体を仕上げていくのがよいのではないかと、私はそう思っております。いかがでしょうか。

○青山座長 廣田委員からは、非常に戦略的な話を伺いました。最後の提案自身は、もう少し事務局でも考えさせていただくということで、今日はとりあえずその点については、何とも私どもの方ではお答えはできません。
 何かほかにどうぞ。

○安藤委員 私も第1回のときに、路地から高速道路というお話をしましたのですが、今日で3回出てきますと、ちょうどサンダルに風呂敷でふらっと出てきたら、とんでもない、登山靴とリュックサックを持っていないとここに座れないなというような形にだんだんなってきたのではないかなと。
 そうすると、いわゆる庶民のレベルからまた上がってしまっているような感じになっていますし、現在の議論から言いますと、今のADRに少し色を付ければそれで収まってしまうような感じになるのではないかと。もっとレベルをいかに広げるかという議論が、もう少しあってもいいのではないのかというような感じがするのです。
 特に、私が意外に思ったのは、最初は、ADRと裁判というものが同じ位置にあるというのを全く考えていなかったのです。あくまでもADRで解決できない問題であったら裁判に上げればいいのではないかと。そうすることによって、今、裁判が非常に時間が掛かり、複雑化しているということを、もっと解決が簡単に済むんではないかと。
 そうすると、裁判所自体の決定、審判にしても正しいと言いますか、論議が十分なされた状態で出るものであるから、そこでみんなが納得する判決といったものがあって、その前の段階がADRではないか。だから、ADRの中には、何段階もあったっていいじゃないかというふうに考えていたのですが、ADRというのは、裁判と同レベルみたいな議論になってしまったら少しずれるのではないかなという気がするのです。
 ですから、ADRはADR、あくまでも私的という形で、みんなで一緒に考えようというやり方をどういうふうにつくっていくか。そういう形でありますから、余り仲裁だ何だかんだというレベルと、当然それもADRの中に入っていていいわけですけれども、それが上部のADR。ただし、下部のADRについてもう少し論議がされてもいいのではないかなと、そんな気がします。

○青山座長 どうぞ。

○原委員 司法制度改革の言葉で、裁判と並ぶ魅力的な選択肢が使われているので、この「並ぶ」というところに、私たちもかなり期待をしているのですが、必ずしも裁判があって、いつも横にADRということではなくて、ADRのポジションは色々あるのだろうと思っていて、勿論、裁判にいくと費用もかかるし、時間もかかるから、法廷に行ったって同じ結論が出るのだったら、ここでいいよというようなADRもあるのだろうと思っています。もっと、色々なものがあると、必ずしもいつも横にという位置づけではないと。

○安藤委員 どっちを選ぶかと。

○原委員 それから、やはり既存のADRの手直しだけでは、私としてはとても議論として残念なので、もう少し進めたところでの議論が必要かなと思っていて、やはり既存のADRの信頼度とか、認知度が低いというのは、ADR自身が非常に苦しいのだと思うんです。自分たちの理念というものを単純に簡易・迅速・低廉みたいなところでスタートしたけれども、やはりとてもそれだけではないものを考えなければいけないのだということは思っていらっしゃるのですけれども、中々その理念が確立できてきていないところに、今のADRとしての困難性も感じていらっしゃるのではないかなと思って、そういうところの議論もお手伝いができるといいのではないかなと思っております。

○安藤委員 今ので、確かに私が見ても縦割過ぎるのです。もう少し包括的にうまくできないかなということ。
 もう一つ考えなければいけないというのは、先ほど田中さんが72条の関係で、どうにもならないと言っていましたけれども、逆の例もあるのです。弁護士さんが無料でやってあげたのです。そうしましたら、税務署が認めないです。それはあんたが勝手にタダでやったのじゃないかと、これは弁護士さんとしてやる以上は、認定報酬という形で課税しますという問題が出て、結局弁護士さんが負けているのです。
 だから、そういうような、色々な部分がありますので、何か素直に、お金が出てもすっと通るというようなやり方も、他の方から色々なケース・バイ・ケースで、もう少し調べてからやっていかなければいけないのかなという気がします。

○青山座長 ほかの方どうぞ、御自由に御発言いただけますか。
 こちらから指名して申し訳ないのですが、綿引委員は、先ほどの裁判と並ぶ魅力的な選択肢という言葉と、いやそうではなくて、もっとADRはそういうものとは違うという御意見を二通り聞かれて、どういうふうに御感想をお持ちになったでしょうか。

○綿引委員 裁判と並ぶ選択肢ということと、最終的な解決がADRでできない場合は幾らでもあって、最後は裁判所に来ざるを得ないということとは、全く矛盾しないのだろうと思っています。
 おそらく、法治国家である以上最後は、法の適用による、紛争の解決が担保されているということになるのでしょうけれども、そうではない紛争解決の方法もあってしかるべきだと思いますし、先ほどは田中さんが御指摘になったように、話し合いで解決するようなものを、何でも裁判所に持って来いというつもりもありません。
 ですから、法的判断だけではない紛争の解決の方法として、ADRという制度が日本の国に根付いていけば、それはそれでよいことだと思っていますし、それを根付かせていくために、どういう制度的手当が必要なのかという観点から、この委員会での検討がされたらいいのではないかなというような感じを持っております。
 ただ、制度的整理がないまま、いろんな法的効力だけをADRに与えようというようなところに簡単に議論が行ってしまうことは非常に怖いことだと思っております。その点は、慎重に御議論をいただいければと思います。

○青山座長 平山委員は、建設工事紛争審査会の審査員のベテランでいらっしゃいますが、そういう観点から、もし何かありましたら。

○平山委員 全くベテランではなくて、私は、まさに廣田委員がADRという言葉の定義というお話になりましたけれども、今日皆さんのお話を聞いているうちの半分ぐらいは、やはり言葉がわからなくて、是非通訳していただきたいなと思うぐらいで、建築紛争に関わったのはまだ1年ぐらいです。
 今までの経験を申し上げますと、実は裁判所に鑑定人とか証人として呼ばれて、大変ひどい目に遭いましたので、建築学会が建築紛争なのかに関わったらダメだという立場で来たのですけれども、最高裁判所の方から強く協力を求められたわけです。
 そこで、建築学会の中に、司法支援建築会議というのをつくりました。最高裁判所の中には、建築訴訟委員会というのをつくりまして、どういうわけか私は両方に加わったのですけれども、その中で、最高裁判所で現在建築の専門的な裁判に関して非常に困っているのだと。そこで専門家の関与をどうしてもお願いしたいということで、今のような会をつくったわけです。
 結果として、現在裁判所に鑑定人とか、調停人を置くという大きな仕事をやっております。
 その代償として、建築学会でただそこに鑑定人とか、調停人を置くだけではなくて、やはり学会にそれが何かの形でフィードバックされなければいけないということで、2つの大きな目的の下にそういったものをつくって、現在裁判所に協力しているというような形でございます。
 実は、まだこれができて1年ぐらいですけれども、そういった調停人、鑑定人の候補者を、約200人ぐらい集めました。集めたというのは、実は建築学会という立場で、学会が裁判に協力するというのは、厳正中立でなければいけない。その中で、既に裁判においては、建築の裁判ですと、原告と被告にそれぞれに私的鑑定人というのがあるわけですけれども、厳正中立というのは、建築学会でそういった形で選ばれた人は両者に付かない。裁判所に頼まれたときだけに調停人とか、鑑定人という形で協力しております。
 先ほど申し上げましたが、現在それに約200人が関係しているわけですけれども、大きな成果というのは、まず裁判が非常に短期間で終了している。今まだ大体約300日ぐらい掛かっていたのが、1年ぐらいの間に、現時点で約200日ぐらいで解決している。
 正確な数字は忘れましたけれども、裁判が成立したというか、調停ができたというか、そういった形で目的を達成したのが、約70%ぐらいである。
 これは、今までの成果に比べて、余り詳しい話にはなりませんけれども、かなり大変な進歩であったという形で、だんだんこれに引きずり込まれて、ついにここまでになってしまったのですけれども、先生がおっしゃるように、全く専門家ではありませんし、こういった形で紛争に関係するようになって、まさにまだ1年ぐらいでございますので、中々言葉を理解するのも大変だという形で、現在一生懸命勉強させてもらっています。

○青山座長 また、どうぞ建設工事紛争審査会の方のお話も聞かせていただければというふうに思っております。
 まだお話伺いたいのですが、そろそろ時間がございますので、こういうふうにさせていただきたいと思います。今日の討議はこれで打ち切りまして、次回の会議の冒頭でも時間を設けまして、引き続き討議をしたいと思っております。これは、廣田委員の3つの山の各論からやるのか、総論をまずアタックした方がいいという御意見もありましたけれども、次回の冒頭では今日の続きのお話、ですから広い意味での総論の問題を少し議論をして、もう少し共通な認識を高めたいというのが次回の前半でございます。
 それに引き続きまして、後半の方では意見書で指摘されております、さっきの廣田委員の5つの連峰があるといううちの、時効の中断の問題が割合取っ付きやすい問題ではないかと思いますので、そこの問題を後半で議論をさせていただきたいと思っております。
 そういたしますと、次回の日程でございますけれども、次回は5月13日、月曜日の午後2時から2時間から3時間ぐらいの時間を予定しております。なお、次回の以降の日程につきましては、
 第5回目は、6月10日、月曜日、午後3時半から2時間。
 第6回目は、7月22日、月曜日、午後2時から2時間ないし3時間程度ということでございます。
 これは各委員の方々の御意見を承った上で、事務局で調整させていただきました日程でございます。
 それでは、本日の検討会はこれにて終了させていただきます。なお、本日の検討会の議論に関しましても、前回同様私の方から記者レクの要望があればするつもりでおります。よろしくお願いいたします。
 また、これに引き続きまして、今日アンケート調査の結果が出ましたけれども、これについても事務局から記者レクを予定しておりますので、これも御承知おきいただきたいと思います。
 それでは、本日は皆様長時間にわたりまして、ありがとうございました。