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ADR検討会(第31回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年5月17日(月) 13:00~16:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第一会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官、内堀宏達企画官

4 議 題
「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)の導入等に関する検討

5 配布資料
資料31-1 第30回ADR検討会で提起された制度設計の基本に関する論点
資料31-2 検討の方向性に関するメモ
(以下は再配布)
資料30-1 「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)に関する主要な論点
資料30-2 基本理念及び国等の責務について

6 議 事

まずはじめに、座長より以下のような発言があった。

・ 前回の検討会で、制度設計の基本に関わってくる問題提起がいくつかなされたので、本日の検討会では、それについて現時点での事務局の考え方を説明願うとともに、その考え方を踏まえて、事務局として、どのような方向性で各論の議論を進めていくのが望ましいと認識しているのかについて、資料の説明をお願いしたい。

 これを受けて、「第30回ADR検討会で提起された制度設計の基本に関する論点」と検討の方向性に関するメモについて、事務局より資料31-1、31-2に基づく説明があり、これらを踏まえた議論が行われた。主なものは以下のとおりである(◎:座長、○:委員、●:事務局)。

○ 前回の議論で煮詰まっていないところや議論が平行線のままだったところもある。できれば、例えば前回私が問題点を指摘した時効中断効などについて、他の委員からの意見が出ていないので、できればそういった前回の検討会で議論が煮詰まらなかったところを煮詰めていくような形で議論を行っていただきたい。

◎ 煮詰まっていない部分が多々あることについては承知している。資料の30-1や30-2を再度配布しているのもそのような趣旨によるものである。しかし、議論が噛み合わないところについて、決を採らなければ先へは進めないということにすれば検討会の雰囲気もギクシャクしたものになってしまうことは御理解いただきたい。また相互に問題となる問題も多いので、御意見は承ったうえで議論したい。

○ 前回後半に議論した法的効果の部分の議論は時間が足りなくなり十分な議論がなされなかったことを踏まえ、今回は法的効果から議論を進めていってはいかがか。

◎ 今回は前回の議論の延長という位置づけなので、基本理念から議論していきたい。

(法案の基本的な枠組みについて)


○ 今回の資料31-1において主要な論点はある程度ピックアップされていると思う。法案の基本的な枠組みをどのようにするのかについては正解があるわけではないが、色々な方にきいてもイメージがわかれており、もっと議論が必要ではないか。責務規定のところについては、前回申し上げた透明性や人材の育成の観点に加え、場所的や費用的な面でのアクセスの容易性という観点も加えてほしい。
 認証を受けない紛争解決事業者が排除される懸念があるのではないかということについては同感であり、既存のADR機関の中でもPR不足などの理由により認知されていないところもあるが、認証制度の導入により、認証されないとPRされなくなるのではないかという懸念があり、そうならないようにするための工夫が必要である。また、認証制度には認証を受けたことにより優良機関であるようなイメージを与えたりする側面がある。条文として書けるかどうかはわからないが、認証制度はそのようなものではないということを打ち出していかなければならないのではないか。

○ 「国等が個別法の規定に基づいて行う紛争解決業務」とは行政型をイメージしたものなのか。

◎ 司法型も含むものである。

○ 行政型についても、今回のADR法案に盛り込むべき部分もあれば、個別法の規定でも足りる部分もある。区分の仕方が大まかすぎるのではないか。また、認証を受けない紛争解決事業者が排除されるのではないかという部分についてであるが、排除されることだけが問題なのではなく、より本質的な問題は、認証を受けた紛争解決事業者については、事案の秘密が行政に伝わるかも知れない点において自主性との関係が懸念されるということである。そのことによって認証を受けた民間型ADR機関がダメになってしまい、民間型ADR機関同士の連携を分断してしまうのではないか。

◎ この資料における「排除されるのではないか」という文言は、今いただいた御意見をも踏まえて書いたものである。

○ 基本理念等については行政型や司法型を含むべきなのではないかと考えている。議論を始めた当初はADRの基本法を作るつもりであったのに、今では色々あって民間型に特化したものとなっており、無念の思いであるが、これは現在の状況を考えればやむを得ないかなという感じがする。
 しかし、例えば時効中断効などについて、現在、品確法に基づく住宅紛争処理審査会が行うADRには時効中断効は認められておらず、民間型ADRに時効中断効を認められるとすると、大臣指定機関とそうでない認証ADR機関との間で「逆転現象」が生じてしまうことは問題である。せめて、民間型ADRの時効中断効付与のスタート時点と同じ段階でそれらの大臣指定のADRにも時効中断効が付与されるようにはできないか。

○ ADR基本法とするのであれば行政型・司法型に対象を拡げた方がよいが、仮に民間型に限るのであれば、民間型ADRを活性化するための制度として緊急措置法的な性格の法律とするといった法制的な配慮が望ましいのではないか。

○ ADR全体の活性化のための司法型、行政型ADRの活性化については、検討するという方向性は検討会の考え方に残しておくべきである。民間型ADRの活性化は、そのADR全体の活性化の中の一方策として位置づけて考えることはできないか。

◎ 個人的には今の意見に同感であるが、この問題は、必ずしも検討会の中だけで片づくような問題ではないことをよろしく御了解いただきたい。

○ 認証制度を採らずに基本理念を書くことが、審議会意見書に答えることではなかったのか。また、民間型ADRの活性化というADR全体から見れば一方策に過ぎないことについてのみを法律としても良いのかどうかは、更に議論を重ねていく必要があるのではないか。

○ 先程の意見の趣旨は、今回、全部盛り込めなかったとしてもこれで全てが終わったわけではないということを言ったつもりである。

○ ADR機関の自主性が損なわれることに対しては懸念している。この検討会での議論は、あるべきADRの姿についての方向性を示すことを目的としているのみならず、ADRの自主性を損なうようなものではないということを何らかの形で示してほしい。

○ この法律が一方策である旨がにじみ出るような表現にすることはできないだろうか。また、BtoCでは、「安全で質の高い」や「公正かつ適確な」などのADR手続の公平性のみならず、スタンスの公平さについてどう考えるかも問題になってくると思う。

○ 紛争解決業務には一定の公平性が求められ、当該業務に関わる者には一定の責務が課せられることが想定される。情報の開示については、ADR機関がお互いに競争することによって良いADRが残っていくということにかんがみれば大切な事項である。また、人材の育成を図ることも大切だと思う。このような大きな問題に的を絞って責務規定を考えていくことが必要なのではないか。

○ ADRの自主性を損なわないようにしなければならないとの見解は他の委員とも一致しているが、私は認証制度そのものがADRの自主性を損なうものであると考えている。認証制度を導入して果たして自主性を損なわないようにすることができるのかどうかをまずは考えていくべきなのではないか。

◎ 認証制度を導入すれば自ずからADRの自主性が損なわれるということを議論の前提とすれば、前向きな議論ができなくなってしまう。しかし、御意見は御意見として承りたい。

○ 認証制度の要件のハードルの高さについては、NPOの法人格取得程度の緩やかな基準であってほしい。また、行政がADR機関に乗り出して報告徴収や検査、業務改善命令・認証取消しを行うことになるのだろうが、何を端緒として乗り出すのか、もう少し明確になるようにはできないか。

○ 「認証」という用語のイメージについてであるが、「認証」とはいわゆる「基準認証」と同じようなイメージで用いているのか。

● 「認証」という用語をそのままADR法に用いるかどうかについては確定しているわけではない。基準の適合性の判断という意味合いで用いているとお考えいただきたい。

○ 認証とは行政処分なので、例えば、あるADR機関が認証を受けることができなかった場合に行政訴訟が起こりうるということである。そのようなものに緩やかな基準を採るなどということがあり得るのか。

(認証制度について)


○ 紛争解決事業者については、法人等の団体に限定しないで考えていただきたい。個人事業者についても法人と同じような扱い方をすることとされている法律も多々あるので、ADR法もそのようなスキームにしていただきたい。個人事務所の弁護士がADRを行うような場合、信用力補完のため認証を利用できるようにしてほしい。

○ 法人等の団体に限定しない考え方に与する。また、第三者機関を関与させたいと考えているのだが、具体的にはどのような機関を想定しているのか。国民生活審議会のようなものなのか。ADR機関それぞれの主務大臣の下に第三者機関を設けるのか。それとも、法務省に第三者機関を作ることになるのか。
 また、前回の資料30-1の2ページの(2)④「財産的基礎」とは、具体的にどのようなものか。
 同資料の5ページの「(6)利用者からの苦情の適切な処理」は、是非ADR法に盛り込んでいただきたいが、項目だけ盛り込まれていても実効性がない。利用者が苦情を言うインセンティブが働くように、利用者から寄せられた苦情を開示することとしなければ機能しないのではないか。。
 同資料の5ページの(7)については、前回は発言しなかったがb(b)案的なものを私は考えていた。また、c案を採るとしても中味はb(b)案的なものにしなければならないとは思う。

● 第三者機関は、主務大臣がADR機関を認証する時、認証を取り消す時などに関与することを考えている。仕組みとしては、主務大臣にもよるが、主務大臣の下に置かれる委員会のようなものになるのではないかと考えている。
 財産的基礎とは、当該ADR機関が紛争解決業務を継続して行うことができる基礎という意味合いで考えており、金銭や財産について一律の基準を設定しようとするものではない。業務遂行が可能かどうかを判断するということである。

○ 第三者機関の判断は主務大臣を拘束するのか。

● 拘束するのか否かについてまでは現時点では定かではないが、意見をきくこととする以上は、それが意味があることとなるようになるだろう。

○ 第三者機関の関与の仕方を教えてほしい。必要な場合にだけ意見をきくのか。ADR機関による紛争解決に対する異議申立てをすることはできるのか。

● 現時点でお答えするのは難しいが、認証する時、認証を取り消す時に関与させることを考えている。

○ 行政不服審査とは仕組みが異なるのか。

● 第三者機関の意見は行政処分が行われる前にきくことになるので、行政不服審査とは異なる。

◎ 私見ではあるが、認証する時と認証を取り消す時には、必ず第三者機関を関与させなければまずいとは思う。

○ 資料31-1を読むと第三者機関を関与させない場合があるように読めるが、第三者機関を関与させない場合があるのか。そのような場合には、どの程度の専門的な知見を持った者が判断することになるのか。

◎ 私見だが、イメージとしては、専門的な知見を持った人がこの事務を担当すると考えることが適当かと思う。

○ 主務大臣は法務大臣になるのか。

● 法的効果と認証基準を考えれば法務大臣は必須になるとは思うが、それ以外にもそれぞれのADR機関を所管する大臣との関係も考えなければならない。いずれにしても、この問題は、これから関係省庁とも調整していきたい。

○ 第三者機関を関与させることは手続が公正かつ透明となり良いところもあるが、認証制度が重くなりすぎる懸念がある。第三者機関の構成員を民間から選ぶとして、何人くらいで構成するのかわからないが、認証申請があれば随時開催するということになれば、重くなりすぎるし手続がスピーディーではない。サービサー法でも同じような事態が起こっている。果たして事務的に回るのだろうかとの懸念がある。例えば、不服審査のときだけ第三者機関を関与させるというのも一案なのではないか。

○ 主務大臣が複数になるケースもあるのか。民間型ADR機関にもそれぞれ所管する省庁があるが、その所管大臣との関係はどうなるのか。このようなところについてイメージできなければ議論が進まない。

◎ 主務大臣、第三者機関の具体的なところについて議論が進んでいないことは確かであるが、この部分を早く議論すると認証制度を導入することを前提にしているようなイメージになりかねない。本件については、もう少し議論が煮詰まった後に議論することとしてはどうか。

○ 不適格者についてであるが、明らかに一方当事者に偏った解決ばかりを行う事業者は排除されるべきではないか。例えば、ある業界に属する者が認証を受けて二枚看板的な意味合いで「相談センター」の名称を掲げた場合について、どこまでチェックできるかはわからないが、理念的に排除することはできないか。
 このような問題もあるので、次回のヒアリングの際には、少し実際に則したヒアリングを行いたい。

● 実態としては、専門性はあるが公正性に疑問がある場合もある。しかし、そうした専門家を皆、排除するというのも現実的ではない。専門性の要請と公正性の要請とのバランスをどのように考えるのかという問題や、公正性のチェックをどのように行うのかなどを検討する必要がある。役員構成や手続実施者の要件は、その懸念を軽減するための担保となるのではないか。
 手続実施者についての情報の開示や利害関係情報の開示など、ソフトな方法を含め、総合的に検討していきたい。

○ ADR機関の中には、一方当事者に立場を偏らせなければならないものもある。例えば、交通事故紛争処理センターなどについては、保険会社はNOとは言えない仕組みになっている。悪質なADR機関ほどお墨付きをもらって業務を行うといった懸念があるのではないか。

○ 一方当事者に寄りかかったADR機関は、自らが拠って立つ立場を予め鮮明にしてもらいたい。

○ そのようなことは、調停人の責務などに盛り込んだ方が確実であり、実効性があるのではないか。

◎ 資料31-1の2.のひとつ目の○は、個人認証か機関認証かということを言っているのだが、この検討会での大勢は機関認証を是とする立場であったと認識している。この問題を別の観点から考えると、紛争解決業務には調停もあれば仲裁もあるのだが、仲裁を含めて考えるのか、それとも、仲裁は別と考えるのかによっても大きく結論が変わってくると思う。それについて、委員のお考えを伺いたい。

○ 認証制度に反対している理由の一つとして、仲裁については仲裁法で認証制度などというものも出てこないし、そもそもアドホックを重視しているが、調停の場合は認証制度を必要とすると、それとのアンバランスが生じるということが挙げられる。

◎ 仲裁を認証制度の対象とすると、我が国の仲裁は世界的にも特異な制度となってしまう。法的効果との関係から、ADR法の対象から仲裁を抜いても良いということであれば、議論も随分と収れんされるのではないか。

○ それでも、ひとりの調停人が仲裁から調停、調停から仲裁へと移行する場合、調停での影響が仲裁に及ばざるを得ないのではないか。

○ たとえ、ADR法の対象から仲裁を外したとしても、仲裁と調停とは切り分けることができない。私は、個人認証制度に固執しているのではなく、内在する問題点をわかりやすく浮き彫りにする意味もあって述べている。
 一括りで法的効果と呼んではいるが、72条の特例という効果とその他の時効中断効などの効果とは同列に論じるべき問題ではなく、わけて論じるべきではないか。時効中断効などについては機関認証制度を採ることもわからなくはないが、72条に関して言えば論理的に矛盾を来しているし、現実問題として弊害もある。
 このことについては、前回、アドホック仲裁の例を挙げて説明したが、機関認証を採ってもアドホック仲裁が不利になるわけではないという考えは、きちんとした業務を行っていれば正当業務行為として違法性が阻却されるということを前提としているのであろう。また、任意の認証制度を採るということの前提にも、現在、または将来、きちんとした仕事をするADR機関の業務は正当業務行為として72条の違法性が阻却されるということがある。そうであれば、認証の効果として、わざわざ72条を適用除外とする必要はなく、正当業務行為として認めれば足りるのではないか。例えば、認証機関の手続実施者である医者であっても、専門外の知りもしない法律について勝手な解釈をすれば72条違反で処罰されるべきであるにもかかわらず、その機関が認証を受けているというだけで72条が適用除外となるのは、明らかにおかしなことなのではないか。また、一度機関認証を受ければ、その手続き実施者が全員不適格者に入れ替わっても、認証を取り消されるまでは何でもできることになるが、そのような制度が本当に必要なのか疑問である。
 御承知のとおり、仲裁では、時効中断効も執行力も関係なく、仲裁を認証の対象とすると、72条の適用除外だけがADR法により付与される法的効果ということになるが、72条は個人に関する規定にもかかわらず、機関の認証を前提とするのはおかしいではないか。

○ 仲裁とそれ以外の調停などでは法的効果が違ってくることは確かであり、法的効果の部分は執行力も含めて仲裁に関しては適用されない。そのような意味においては、調停に係る認証と仲裁に係る認証は別に考える余地がある。また、これまでの議論においても、仲裁と調停を分けて考えることも有力であったはずである。

○ 前回、個人認証制には制度的に無理があると申し上げたが、検討会が終わってからアドホック仲裁について生じる問題は重大だと感じた。だから、私も認証制度から仲裁を外してはどうかと考える。

◎ 仲裁と調停とを別事業として、きちんと区分けできれば良いのだが、うまく区切ることができるかという問題は残る。

○ 72条違反の問題は、司法により事後的に審査されるべき事柄であるし、認証されるのは機関であるが、72条違反で罰せられるのは個人であるというアンバランスから考えても、認証制度と72条の問題とは切り離して考えるべきではないか。

(認証事業者の義務・認証の効果等について)


○ 時効中断効を認証制度と結びつけて考えるべきではない。利用者にとって見れば、認証を受けている機関とそうではない機関とで時効中断効を受けることができたりできなかったりすることになり、良くない。また、時効中断効を行政の判断により民間の認証機関に付与するというスキームはいかなる時効理論にも合わない。さらに、民間ADR機関の地域格差の問題もある。同じ問題を東京のADR機関に持っていったら時効中断効が付与されるが、地方ではADR機関もなく時効中断を受けられないなどということはあってはならない。

◎ 私見になるが、ひとつ目の懸念については、国民に対して安心して利用できる選択の目安を与えるということの反射効とも言うべき事柄であり問題はない。今までまったく認められていなかったことが認められることになるという意味もあるのではないか。二つ目の懸念については、認証を受けた機関のみに対して個別労働紛争解決促進法と同様のスキームで時効中断効を与えようとするものであるので、理論的に説明できないというものでもないのではないか。三つ目の懸念については、この問題は、ADR機関の地域格差があっても実施するかどうかということは政策判断の問題ではないか。

○ 72条の適用除外をADR法に盛り込むか否かによって、認証制度の要件も変わってくるだろう。72条の適用除外の要件を盛り込まなければ、弁護士の関与などの要件はより軽いものになるのではないか。

○ 72条の趣旨から言えば、認証制度の有無に関わらず考えた方がよいということは、そのとおりである。資料30-1の7ページでは「(2)弁護士法第72条の適用除外」とは書かれているものの、実際のADR法でそうは書かないのだろう。実際は、5ページ(7)の「適切な手続実施者の選任等」のところで弁護士の関与をどのようにするのかを法律に規定することになるのではないか。

○ ADR機関で扱っているADR事案で、時効中断効が認められなかったために争いになるようなケースはほとんどない。他の委員の御意見をお伺いしたい。

○ 本件の時効中断効の理論的根拠については、森田教授にヒアリングした際に、同教授も民法理論と整合的ではないとは言っていなかったと記憶している。地域格差の問題については座長の仰るとおりであり、これは本件に限らず、日本の法曹制度全般に関わる問題であって、地方格差をもって時効中断に反対する理由とはならないのではないか。

○ 25人程度の関係者に意見をきいたが、賛成が半分、反対が半分というところであった。ADR機関の差別化に繋がるのではないかという意見とADRの多様性に資するものであるから良いという意見が半々であった。

○ 森田教授にヒアリングしたときには、認証制度の対象を民間型ADRに限定していなかったので、もうひとつ問題が増えたということだ。本件については、これが既存の時効制度と整合しているのかそうでないのかという問題に尽きるものであり、もし、整合性がないのであれば時効中断効は諦めた方が良い。

○ 調停と裁判上の和解との類似性を判じた最高裁の判決もあるので、認証制度をクリアした機関が行うADRについては裁判上の和解に準ずるものとして取り扱っても問題はないのではないか。また、行政型、司法型を外して民間型のみに時効中断を認めるということについては、今後、行政型ADRについても時効中断効を付与していけば足りることであり、必ずしも、このADR法によって全てのADRに関する法体系が整合的なものとならなければならないというものではないだろう。現在も、個別労働紛争解決促進法に時効中断効が認められていることについて、異論も出ていないではないか。

○ これはISOでも重視している理屈であるが、ADR機関における紛争解決システムを維持、改善するシステムをADR法の規定にビルト・インした方が良いのではないか。紛争解決システムを改善するに当たって国の力によって解決を図ることは適当ではなく、ADR機関内部で問題を解決するようなメカニズムを構築することが求められる。例えば、内部監査システム、外部評価の構築などについて、細かく義務付けるのは難しいとしても、一般的な義務規定の形で設けても良いのではないか。
 また、資料30-17ページの調停前置の特例についてであるが、b案に与する。認証制度を設けるということは、制度的には、ADRについては話し合いによる実効的な解決が可能との前提に立つのであろう。調停前置の趣旨も同じであるとすれば、bで良いのではないか。仮に、十分な話し合いがなされなかったと判断されれば、裁判所の裁量で調停に付すこととすればよいのではないか。

○ 認証基準の要件については、ひとつでも適合しないところがあればダメということなのか。

● 基本的にはそれぞれが必要要件であり、全ての要件を満たしてもらうことが前提になるが、申請段階で不十分な事項があったとして、それをどのように扱うのかについては別の問題である。

○ 国際的な機関が提供するADRを利用する場合もあるが、そのような国際的機関の施設要件とはどのようなものになるのか。

● オンライン関係のADRにも同じようなことが言えるとは思うが、必ずしも箱ものに拘っているわけではない。しかし、何らかの形で連絡が取れる体制でなければ適当でないのではないかと思う。ADR法の目的のところで、国民が利用しやすいADRということを掲げているが、それとの関連で、例えば、国内に窓口があるか否かなどのメルクマールで検討していくことが考えられるのではないか。いずれにしても一義的に基準があるものではないと考えている。

○ 海外のADR機関を日本国内で利用することはあり得る。そのような場合に、日本国内に拠点があることを条件とするのか。そもそも、拠点とはどのように解釈すれば良いのか。財産的基礎にしても、国内に財産がなければダメなのか。もちろん、そのような機関が認証を受けたいと考えるかどうかはわからないが、このような事柄についてもスキームとして検討する必要があるのではないか。

○ 利用者からの適切な苦情の処理の位置づけはISOで検討しているPDCAのサイクルが参考になるのではないか。
 また、執行力の付与についてであるが、消費者からは軒並み反対の声が挙がっているところである。既存の即決和解の制度を利用すれば良いではないか。どういった機関が認定を受けるかわからないので、執行力付与が認証制度と同時出発ということはあり得ないのではないか。

○ 前回も申し上げたが、消費者関係や労働関係については暫定的に執行力を認めないこととしてはどうか。消費者関係や個別労働関係紛争については、仲裁法でも附則で特例が設けられ、別途検討することが予定されており、ADRについてもそこで議論することとすればよいのではないか。また、BtoBなどでは執行力がほしいという要望もあるのではないか。

○ BtoBを行っているADR機関の意見は把握しているのか。

○ 執行力があると消費者側としてADRに入ってこなくなるのではないかという意見があるのもわかるが、他方で執行力がないとADRを使えないと考えている弁護士も多い。スムーズに和解できればよいのだが、揉めたときに執行力があった方がよい。執行できないような合意は弁護士にとっては欠陥商品のようなものである。また、執行力を前提とした合意により、相手方のスムーズな履行を促すとの側面もある。
 「利用者からの苦情の適切な処理」については、弁護士会全体で利用者からの苦情の適切な処理ができる体制が整備されている現在の弁護士会仲裁センター程度であれば足りる程度としてもらいたい。

○ 執行力について、加重する要件の内容を具体的にお示しいただかなければ議論できない。

○ 認証を受けた機関が全国に支店を作った場合、その支店も認証制度の効果を享受できるのか。また、認証を受けた機関が分裂した場合、それぞれの機関も認証制度の効果を享受できるのか。

◎ そのような細かな論点については事務局で検討したい。検討会の役目は、ある程度の方向性と重要な問題を詰めることであって、あとの細かな論点の詰めは事務当局にお任せするしかない。

○ 執行力について、公証人の公証を制度として盛り込むことには懸念する。執行力は今後の検討課題とした方が良いのではないか。

○ 全体的な問題提起としてひとつ。資料30-1の2(3)の中身として、「きちんとした相談を行うことが紛争解決業務の前には必要である」という意向を盛り込むことはできないか。

○ もう少しはっきりとした条文のような形になっているものを叩き台として議論すべきではないか。そうでなければきちんとした議論ができない。私も自分の考え方について私案を用意しているので、次回の検討会の場でしかるべく配布いただきたい。

 次回の検討会は5月24日13時30分から開催し、各委員から示された御意見や事務局から提示された検討の方向性を踏まえ、ADR機関等から、認証制度を導入することとした場合の留意点や考えられる影響等についてヒアリングを行うこととなった。

(以上)