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ADR検討会(第31回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成16年5月17日(月) 13:00 ~15:50

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会 日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官、内堀宏達企画官

4 議題

「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)の導入等に関する検討

5 配布資料

資料31-1 第30回ADR検討会で提起された制度設計の基本に関する論点
資料31-2 検討の方向性に関するメモ
(以下は再配付)
資料30-1 「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)に関する主要な論点
資料30-2 基本理念及び国等の責務について

6 議事

〔開会〕

○青山座長 それでは、時間になりましたので、ただいまから第31回「ADR検討会」を開会いたします。本日は前回、先週に引き続きまして、民間紛争解決業務の認証制度の導入等に関する検討を行うことといたします。各委員から制度の具体的内容について御意見をいただいてまいりたいと思います。
 まず、前回の検討会で制度設計の基本に関わってくる問題定期がいくつかなされましたので、それにつきまして、現時点での事務局の考え方を説明願いたいと思います。その考え方を踏まえまして、事務局としてどのような方向性の下に各論の議論を進めていくことが望ましいと認識しているかということについて、併せて説明をお願いしたいと思います。
 小林参事官お願いします。

〔民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)の導入等に関する検討〕

○小林参事官 お手元に資料31-1と31-2がお配りしてあるかと思いますが、それにつきまして、御説明をしたいと思います。
 まず31-1でございますが、これは前回の検討会でいろいろいただきました御議論につきまして、項目ごとに整理をしたものでございます。これらにつきましては、御議論もいただきましたけれどけも、必ずしもすべてについて現時点での私どもの考え方を御説明する機会は前回ございませんでしたので、今回、それにつきまして、少しお話をしたいと考えております。
 それから、31-2でございますが、今申し上げたような論点についての私どもの考え方を踏まえた上で、現時点で考えられます検討の方向性の一つの姿というものをお示しするということで、メモとしてまとめさせていただいております。併せて御説明をしていきたいと思います。
 まず、31-1の前回の議論の整理でございますけれども、まず「1.法案の基本的な枠組み」につきましては、大きく3点あったかと思います。
 1つは「基本理念や国等の責務に関し、国等が個別法の規定に基づいて行う紛争解決業務について、どのように考えるか」ということでございます。この点につきまして、前回も少しお話をしましたように、今回のこの法制において考えられている法的措置につきましては、基本的に民間を対象としていること、あるいは、法律全体としてのバランスという法制的な制約があることは事実でございますけれども、いずれにしましても、裁判と並ぶ紛争解決手段としてのADRの意義、重要性を明らかにし、司法型、行政型を含めまして、ADRが公正・適確に実施されていく道筋をつけていくということは、私どもの重要な任務だと考えておりますので、そういう観点に立って、幅広く検討をしていきたいと考えております。
 そうした考え方を踏まえまして、31-2におきましては、この問題につきまして、IIの1の注のなお書きでございますけれども、「裁判所又は行政機関等が行う裁判外の紛争解決手続の位置付けについては、すでにそれぞれの政策目的を踏まえ個別法が整備されていること等にも留意しつつ、適切な方策を検討」ということで、法制的な措置、あるいはそれ以外の措置も含めまして、幅広く検討していきたいと思っております。
 それから「認証事業者以外も含む紛争解決事業者全体に係る責務規定について、どのように考えるか」という議論もございました。この点につきましては、前回具体的に、例えば情報開示の問題でありますとか、あるいは担い手の育成確保というものが具体例として出たわけでございますが、これにつきましては、引き続き検討をしたいと考えております。また、この場でも御議論をいただきたいと思っております。
 それを踏まえまして、31-2では、この点について、同じく注でございますけれども、認証事業者以外も対象とした責務規定を設けることについては、引き続き検討ということにしております。
 3番目でございますけれども、「認証を受けない紛争解決事業者が排除されるのではないかなど、認証制度の導入に関する様々な懸念をどのように払拭するか」ということでございまして、これにつきましては、前回お出ししたペーパーに関しまして、さまざまな御議論がされたところでございます。
 そのうちのいくつかのものについて、私どもの考え方なり現時点での補足的な御説明をしたいと思いますが、まず、ここにございますように、認証を受けない紛争解決事業者が排除されてしまうのではないか、ひいてはそういうような事態になれば事実上認証を受けることが強制されることになるのではないかという懸念につきまして、当然のことですけれども、この制度は任意ということでございますし、この法律に基づいて与えられる法的効果以外の面につきましては、認証ADRでありましても、非認証ADRでありましても、全く同じ扱いと考えております。
 一例を挙げますと、前回こういったパンフレットをお配りしたかと思います。ここには現時点で私どもで把握しておりますADR機関につきまして、連絡先などをお示ししているわけでございますけれども、こういったものにつきましても、認証制が導入されたからと言って、認証機関だけがこういったもので紹介されていくということは、任意の制度であるということを前提にして考えれば、考えにくいわけでございまして、やはり、引き続き適切なものについては御紹介をしていくということになろうかと思います。
 ついでながら、このパンフレットにおきましては、そういった差別化するのではないかという御懸念も配慮いたしまして、ここに掲げてあるADRがすべてのADRではないという旨も明記いたしておりますし、併せてADRのポータルサイトを御紹介することによって、それ以外ADRについてもアクセスする機会の確保に配慮をいたしているところでございます。このような配慮は引き続きしていく必要があるのではないかと考えております。それから、具体的な認証基準、あるいは監督の面につきましても、過剰な介入になるのではないか。あるいは過剰な規律になるのではないかという懸念が前回の議論の中でいくつか出てきたかと記憶いたしております。いくつか御紹介をしていきたいと思いますけれども、例えば前回の資料30-1を今回再配付いたしておりますけれども、その2ページになりますが、認証の要件のところで、(2)でいろんな審査事項を挙げているわけでございます。例えば②の「施設」という文言があるけれども、これはハコモノを想定しているのか、そういったハコモノがきちんとしたところでないと認証されないのではないかというお話があったかと思いますけれども、これについては、ここにございますように、あくまでも業務を公正かつ適確に行える施設であれば十分であると考えております。
 当然のことながら、オンラインによって業務を行うという形態も想定されるわけでございますので、決してハコモノをもって審査事項にしているというわけではないと思います。あるいは、④の「収支計画又は財産的基礎」ということにつきましても、やはりこれがかなり重い基準になるのではないかというお話があったかと思いますけれども、これにつきましても、継続して業務が行うことができるということがポイントでございます。認証を受けて、認証を受けた旨を表示しているにもかかわらず、すぐ業務が継続できないような状態に、経済的な面からなってしまうということは避けるべきだということで挙げさせていただいているわけでございまして、何も厳密な収支計算をしようということではございません。
 また、(3)の兼業との問題につきましても、運用によっては非常に厳しいものになってしまうのではないかということでございますけれども、これにつきましても、あくまでも他の業務を行っているということが、このADR業務の公正な実施に影響を及ぼすことを排除するということでございますので、当然のことながら一切の兼業がいけないというわけでもございませんし、少なくとも現時点のADRの現状からいたしますと、兼業しているという事態は当然想定して、この辺りも考えていかなければいけないということかと思います。
 また、個別の監督につきましては、そういった監督措置がどのようにして発動されるのかというお話もあったかと思います。これにつきましては、前回少しお話をしましたけれども、勿論、事業報告書の提出等は行っていただくわけでございますけれども、これは基本的に定期的に業務概況などを出していただくということでございますので、これが直ちに端緒となるというよりも、むしろ利用者からの声なども含めて、そういったものが認証主体の方に伝わりまして、そこから手順を踏んで確認をしていくということを考えているわけでございます。
 したがいまして、何か恒常的に業務の具体的な内容について、特に個別案件について恒常的にモニターをしていくというような制度を考えているわけではないということでございます。
 そのほかいろいろあろうかと思いますけれども、これは後ほど議論をしていただければと思います。
 いくつか例を挙げて認証制度に伴う問題点についての考え方をお話しいたしました。
 2番目が認証制度そのものについての問題でございますが、1つは、認証事業者を認証する制度とすべきか、手続実施者を認証する制度とすべきかということでございます。
 この問題につきましては、勿論、いろいろな考え方はあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、この前回の30-1の資料の1ページで申し上げれば、やはり1.の(2)①から③について、これについては判断をしていく必要があるのではないかと考えております。その具体的な仕組みとして、手続実施者を認証するという制度も、制度設計によっては可能なのかもしれませんけれども、しかし、この3つを見ていくということを考えるのであれば、機関、事業者を認証していくという方がよろしいのではないかと考えております。
 それから、2番目の「紛争解決事業者を認証する場合、紛争解決事業者を法人等の団体に限定するか否か」ということでございます。勿論、法人などの団体の場合と、個人の場合におきましては、個人が死亡したようなケースにつきましては、引き継ぎ、継続性が期待できるかどうかという点について、差がないわけではありませんけれども、しかしながら、この認証基準を満たして、公正適確な紛争解決業務を実施できるということを確保できる限りにおきましては、必ずしも法人等の団体に限定するということだけが方策ではないと考えております。
 したがいまして、この紛争解決事業者が個人であるケースまで含めるかどうかということについては、検討を続けていきたいと考えております。
 それから、3番目に「第三者機関を関与させる場合、どのような関与のあり方があり得るか」ということでございますが、これにつきましても、前回少しお話をいたしましたけれども、やはり法的効果を付与すること、あるいは認証するということから考えますと、主務大臣の最終的な責任において行う必要があろうかと思いますけれども、透明性、あるいは専門性を確保するという観点から、主務大臣が認証する場合、あるいは認証を取り消す場合につきまして、第三者機関の意見を聞くというスキームを採ることは十分考えられるのではないかということで、これは引き続き検討したいと考えております。
 それから、3番目に「認証事業者の義務・認証の効果等」でございますけれども、まず1つは、認証制度を前提として法的効果を付与することに関する懸念について、どのように考えるか」ということでございます。これもいくつかの御議論があったかと記憶をいたしております。
 まず法的効果を付与するかどうかということにつきましては、やはり意見書にもこういったものの重要性は指摘されているところでございますし、その法的効果の付与ということも視野に入れて議論を進めていく必要があろうかと思っております。
 また、その際に認証制度を必ずしも前提としなくてもいいのではいなかという御議論もございましたけれども、この点につきまして、昨年末以来、私どもとしましては、必ずしも認証制度を前提とせずに、こうした法的効果が付与できないかどうかということにつきましては、かなり時間をかけていろいろな案を出して御検討いただいたわけでございますが、必ずしもそれが実現できなかったということを踏まえて考えますと、やはり認証制度を前提として考えていく必要があるのではないかと思っております。
 なお、細かい点として、例えば時効制度などにつきましては、認証制度を前提とすると、認証の取消しという制度があり得るのだとすれば、時効中断が与えられるかどうかについて、不安定になってしまうという問題点が指摘されたわけでございますが、この点につきましては、前回の30-1の7ページ、(3)の①の注のところにございますように、勿論、これから精査をしなければいけないわけでございますけれども、例えば、認証事業者の認証が取り消された場合であっても、当該事件についての時効は中断するという手当を講ずれば解決できるのではないかと考えております。
 それから、2番目の「弁護士以外の者が手続実施者となる場合の扱いについて、どのように考えるか」ということでございます。この点につきましては、前回の御議論では、Bのa案、あるいはc案という意見がそれぞれ複数出されたかと思います。この点につきましては、引き続き御議論をいただければと考えております。
 それから、最後の「執行力の付与について、その対象となる当事者の範囲等を限定することも含め、どのように考えるか。また、交渉人を関与させる方法について、どのように考えるか」という問題がございます。
 執行力の付与につきましては、前回消極的な考え方と、場合によっては当事者の範囲を限定する、BtoCなどは除外していくという考え方も考えられるのではないかということで、御議論をいただきましたので、今回も引き続き御議論をいただければと思っております。
 現時点で31-2をご覧いただきますと、最後の注のところでございますが、執行力の付与につきましては、その是非も含め、現時点では引き続き検討というのが私どもの考え方でございます。
 なお、最後のところで、「公証人を関与させる方法」につきましては、前回はこういったことも考えられるのではないかということで、御紹介するにとどめたわけでございますけれども、1つのイメージを提供させていただければ、前回の資料30-1の8ページが執行力の部分になるわけでございますが、この6.の(2)で①が「和解成立に関する要件」として、a~dまで挙げているわけでございますが、この和解の成立に関する要件につきましては、認証ADR機関で確認をするということ、そして、その後、履行の問題が生じた場合に、公証人のところに行きまして、その和解につきまして、例えば違法ではないこと。それから執行可能なものであることを確認して、執行できるようにしていく制度が考えられるのではないかということでございます。
 この点に関しましては、前回必ずしも具体的なイメージをお示しておりませんので、今回そういったイメージも含めまして、御議論いただければと考えております。
 以上が31-1でございます。
 そういった前回の議論を踏まえまして、現時点で1つの私どもの考えている方向性を整理いたしますと、31-2のような内容と考えております。「I.制度整備の目的」につきましては、「国民が安心して質の高い紛争解決手続を利用できる環境を整備し、もって、民間の紛争解決手続が裁判と並ぶ選択肢として健全に発展する基盤を整備する」ということでございます。
 「II. 考えられる内容」としましては、1.で前回御議論いただいたように「基本理念や国等の責務などを規定することについて検討」しているということでございます。注につきましては、先ほどお話をしたとおりでございます。
 2.としまして、認証につきましては、主務大臣が不適格事由の存在する者でないこと、そこにございます①から③のような一定の基準を満たすことを認証するという制度を考えてはどうかということでございます。
 3.でございますが「認証事業者につきましては、事業の実施に関する事項の公表等、一定の義務が課され、認証業務につき報告等主務大臣の監督が及ぶ一方」、②にございますように、名称独占権、弁護士法72条の例外、時効中断効、訴訟手続の中止等の効果が付与されるということを考えております。
 執行力につきましては、先ほど申しましたように注で引き続き検討させていただきたいということでございます。
 以上、簡単でございますが、31-1と31-2の御説明でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。今日の資料について、私の方から若干補足させていただきますが、資料31-2のメモでございますけれども、これは現段階で認証制度の導入に結論を出すとか、方向性を固めるという趣旨のものではございません。事務局の説明もそうであったと思いますが、あくまでも制度の概要につきまして、一定の結論を得るための議論を進めていく上で、議論があまり拡散しないように、各論の議論を進めていく上での1つのイメージを示しておくというのが事務局がこの31-2を用意してくたれ趣旨でございますので、そのようにお受け取りいただきたいと思います。
 そういう御理解、御認識の下で、これから各論の議論に入っていきたいと思いますが、こういう進め方自体について、御意見等があれば、お伺いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○廣田委員 事務局がこうまとめられたというのは、これで承りましたけれども、前回の議論の中で、議論が煮詰まっていないところが随分あると思うのです。お互いに平行線になっているわけです。私は相当いろいろな問題提起をしたつもりなのですが、それについてほとんど意見が出ていないという部分もたくさんあるのですね。それでは議論が煮詰まらない。同じようなことを何度やっても、私も先に進まないと思うし結論もいい結果が出ないと思いますが、できれば前回の煮詰まっていないところからきちんと煮詰めていただきたいと思うのです。
 例えて言えば、これは順序が変わりますけれども、今日のペーパーの31-1の一番最後の方に出てくる「法的効果を付与する」ということなのですが、この時効中断効について、私は前回意見を言いましたけれども、これについてはほとんど他の方の意見が出ていないですね。そこら辺りを煮詰めていただきたいと思うのです。私は本来これはあまり議論する必要はないと思っていたのですが、議論しようではないかということになってやってきた以上は、やはりきちんとそこら辺は議論しないといけないのではないかと思うのです。
 ですから、前回の中で特に議論がかみ合っていないところだとか、煮詰まっていないところを重点的に議論するという方向で進めていただきたいと思います。

○青山座長 今の廣田委員のお考えでございますけれども、議論が煮詰まっていないところが多々あることはおっしゃるとおりでございます。今日、前回の資料30-1及び30-2を再度お配りいただいているのもそういう趣旨でございます。ただ、そうは言いましても、これまでに随分議論をしておりまして、同じ議論が同じ方から出ているという場合が多々あるわけですけれども、それについては特に決を取って、それについてどうするかということでないと先に進まないということですと、議論がぎくしゃくするということにもなるので、全体の雰囲気を議長として、事務局として確めつつ議論を進めてまいってきたつもりでございますので、一つ一つの論点について、これがどういう方向、これがどういう方向ということを今までも決めを打たないで進めてきたところがございます。
 また、全体的に考えていかなくてはいけないところを、個々の点を決めてしまうと、全体が動きが取れなくなるということもありまして、少しぼかしていることは間違いありません。廣田委員の御意見は御意見として承って、今日は議論を進めていきたいと思っておりますので、御了承いただきたいと思います。
 ほかに何か御意見ございますでしょうか。

○廣田委員 前回は頭から始めたために、段々終わりの方になって時効中断効とか執行力がほとんど時間切れになっていると思うのです。今回は逆に議論するというのがいかがでしょうか。時効中断効から逆に議論しないと時間切れになってしまい、結局煮詰まらないですね。

○青山座長 前回、基本理念の方から始めましたのは、その前に回に、基本理念は後回しにしまして、認証のところ、あるいは法的効果のところを先に議論をしたために、廣田委員のお考えもあって、前回はむしろ基本理念の方から話を始めた。今回も前回の延長ということもありますので、基本理念の方からお話をいただければと思っています。時間の配分はこちらで注意いたしますけれども、議事進行はそういう順序でそういうことでお願いできればと思っています。
 ほかによろしゅうございますか。良ければ、31-1の1と2、具体的な資料に基づいて御意見を伺いたいと思っております。基本理念や国の責務等、これは前回の資料、30-1及び30-2にありますが、30-2の基本理念と国等の責務、これにつきまして、まず前回に引き続き御議論をいただきたいと思っております。
 先ほども申しましたように、今回、この方向性で固めてしまうというものではないということも、言うまでもありません。
 各論の議論を経て、認証制度導入の是非を判断したいという考えを表明をしておられる方もおられますが、基本理念、国等の責務について、なお御意見のある方もいらっしゃると思います。そこで関連する項目の中で御意見をいただいていくのか、それともその枠内に収まらない御意見があれば、別途、例えば来週その機会を設けるということもあると思いますので、基本理念等について、まず御意見を伺うということでよろしいですね。

○原委員 その流れで発言してもよろしいですか。廣田委員がおっしゃられたことは、この間の議論で結論が出ていないものもたくさん残されていると思っているのですが、資料31-1の方で、ある程度ピックアップしていただいているように思いますので、まず私としては、資料31-1の法案の基本的な枠組みのところで意見を出しておきたいと思います。
 正解があるわけではないのですけれども、私自身は一番最初の

○の「国が個別法の規定に基づいて行う紛争解決業務について」、これについては、いろんな方からどうなるのかということをたくさん聞かれておりまして、少しディスカッションをした方がいいのかなと思うのです。何らかの条文になるのか、違う形になるのもわかりませんけれども、考え方を示した方がいいように思います。
 2つ目の○のところでは、私も思い出したところで発言をしたようなところがありまして、当事者同士の主体的な解決とか透明性の話、人材育成の話、格差の話をお話ししましたけれども、もう一つ付け加えて、多分発言していなかったと思いますが、アクセスの容易性というか、これは場所的なアクセスもありますし、費用ということについても、あまり費用が高くてというのは、自由ではあるのですけれども、法外なということもありますので、アクセスの容易性というような文言も付け加えておいていただきたいと思っております。
 それから、認証を受けない紛争解決事業者のことなのですが、これは私も大変気にしているところで、2つの論拠があるのだろうと思っております。既存のADRもPR不足から認知をされていない。世の中に広く知られていないというところがあります。そういったところから漏れてしまうのではないか。
 例えば、前回リーフレットをお配りになりましたけれども、いろいろ配慮はなされていますけれども、そこにADRと書かれないADRというのがあって、そういう意味ではPR、連携というか、その場から落ちるのではないかと思って、ここの工夫ですね。ひょっとすると、ADRのポータルサイトを紹介するというくらいに、国の関与はとどめるべきだったのかもしれないと思います。
 もう一つの論拠は、やはり認証という言葉から受けるのは、ほかの仕組みでも認証制度というのは設けられていて、優良とまではいきませんけれども、ある程度のレベル以上とか、ほかの仕組みでも認証というのは使われていますので、認証を受けることで優良イメージを持ってしまう。そういう意識から排除されるのではないかという懸念があると思います。
 後者の方の懸念も私はもっとものように思って、ここもどういう方法で条文の中にうまく入るのかというのはわからないですけれども、そういうことではないのだということを強く打ち出していくということが法体系の中でも必要ではないかというふうに思っております。
 今のところはそこまでです。

○青山座長 どうもありがとうございました。先ほどの私言い方がちょっとはっきりしなかった点もあります。今まさに原委員がおっしゃったようなことをここで議論していただきたいと思いますが、議論の対象は資料に即して言いますと、31-1の「1.法案の基本的な枠組み」に○が3つあります。その○の3つと、31-2の方で言いますと、「II. 考えられる内容」がそれに該当するところでございます。前回の資料で言いますと、30-2の「基本理念」と「国等の責務」が関係するということをきちんとメンションしなかったものですから、そこについて御意見をいただきたい、原委員からそういうことで今御意見をいただきました。

○廣田委員 今の1のところの「国等が個別法の規定に基づいて行う紛争解決業務」というのはわかりにくいのですが、これは行政型ADRのことを言っているのですね。

○青山座長 司法も入ります。

○廣田委員 司法は司法なりの問題があるのですけれども、行政型ADRを一般的な法の中に入れる必要性がある部分と、行政型ADRだったら個別的な行政目的というのがあると思うのです。そこら辺をきちんと読み込んでいないと、この問いの設定自体がおおまか過ぎるのではないか。その中のどこをどう考えるかということをテーマにしないと、ちょっと先が見えないという気がします。
 もう一つ、3番目の○なのですが、「紛争解決事業者が排除されるのではないか」、私が言ったのは、ここも議論の対象なのですが、排除されるだけが問題ではなくて、例えば今、原委員がおっしゃったPRとかポータルサイトに書けばいいとか、そういう形式的なレベルの問題も勿論ありますけれども、そのこと自体は私から見ると大した問題ではないのです。一番本質的な問題は、認証を受けたところは自主性が懸念される。つまり、認証主体から監督だとか指導を受けると。場合によっては事件の秘密が行政の方に伝わるという可能性がある。
 一方では、それが無いということであれば、法的効果は無いというふうに設計されて、この案が提案されていますけれども、そのこと自体が民間型ADRの連携とか、そのことを駄目にしてしまって、ADRそのものを分断するのではないかという、もっと本質的なことを言っているので、排除が問題にされるよりも、むしろそちらの方が大きな問題なので、そうすると、ADR全体の設計がぎくしゃくするのではないかということを言っているのです。それは前回言いましたし、そこの点の私の意見に対するほかの方の意見は聞いていません。平行線ですから。必要であればそこのところを十分議論しておく必要があると思います。

○青山座長 ほかに御意見があれば承ります。今の第1点は、かなり前からADR全体についての規定を置くとすれば、国等が個別法に規定を置いているADR全体に係る規定もあるだろうし、おのずから絞られる規定もあるだろうということは、議論済みのことでありまして、ここではどう考えるかという、そういう議論を踏まえて提案しているので、細かなことを今更ここで書く必要はないということで、こういう簡単な提案をしていると御理解をいただきたいと思います。
 それから、排除されるというのは、廣田委員のおっしゃっていることは、我々誤解しているわけでも無視しているわけでもありませんが、その言葉の中にそういうことも含めたつもりでおりますので、言葉尻でこの表現が悪いから、この文言はおかしいという、その気持ちはわかりますけれども、だからといって、これで議論をしないということではないので、そういう、直しながら議論をしていただければと思います。

○髙木委員 一番上の○ですけれども、これは前回山本先生が最後におっしゃった、要するに行政・司法も含んでスタートしたはずなのに民間に限られているということが、私も山本先生と思いは同じで、ADR基本法をつくるつもりでみんな集ったのに、現在では民間ADR推進支援法になってしまっているわけです。そこはやや無念の思いというのはあるのですけれども、ここまで来てなかなか難しいなと思います。結局検討対象範囲を広げ過ぎたことから集約不能に陥った反省や、行政はたくさんいろんなものがあって、統一的にとらえることができない部分もあるので、今の結果はやむを得ないかというふうに思っているのですが、基本理念、つまり法律事項の部分はともかくとして、総論的な部分の理念的規定の中には、できる限りのものを入れてほしい。司法・行政に関するADRを統一的に考え、何らか次の基本法につながるような形、あるいは民事調停法とか、そういった法改正につながるような措置をできる限り入れてほしいと思っています。
 総論的なことは前回山本先生がおっしゃったので、あれなのですけれども、弁護士会がタッチしている住宅紛争審査会という、品確法に基づく機関があります。そこでは実務上のアンバランスが現場で起きてしまう。つまり、民間ADRは時効中断効が得られるかもしれない。弁護士会仲裁センターというところだと時効中断効が得られるかもしれないけれども、品確法に基づく住宅紛争審査会では得られないと。同じところがやっているにもかかわらず、違う結果が出る。その違う結果、逆だとそんなに問題ないのですけれども、普通は大臣指定の機関のADRも時効中断効かなくて、民間の方にあるというのは、普通の予測とは逆になってしまう。その辺がやや問題であるので、個別法で措置すればいいということなのかもしれないけれども、今のスピードで言うと、少なくともスタートの時点で同じようにできるかどうかということすら保証はないので、できる限りのことをしてほしいというお願いをします。

○佐成委員 対象に司法型、あるいは行政型も含めてやるというのは、法案の性格と言いますか、そこら辺にかかっておりまして、ADR基本法という方向づけをするのであれば、理念面では包括的に行政型、司法型も含めた形でやられた方がよいと考えます。
 逆に、民間型に限るということになりますと、私は認証制度そのものに懐疑的な立場を今も取っておりますけれども、そういうことであれば、緊急措置法的な性格、今民間型があまり活性化されてないので、あまりいい方法ではないけれども、認証制度を入れるというニュアンスが出てこようかなという気がしまして、ADRの基本的な理念を整理するという方向については大賛成ですので、その意味からも、法制面では制約があろうかと思いますけれども、できるだけ全てを含めるように配慮されるのが望ましいと考えております。

○綿引委員 先ほど事務局の言われたように、司法型、行政型の活性化についての方策については、今後の法制的な措置も含めて検討する。検討するという方向性だけは何とか残しておくことは絶対必要なのだろうと思っています。今の段階で法制的な措置を採るということがうまく行くかというのは、1つの問題なのかもしれません。ただ、今、佐成委員も言われたように、民間型のADRを活性化するというのを、ADR制度全体の活性化の一方策として位置づけて、法案の提案の方向に持っていくというのが必要なのではないか。これだけがすべてではなくて、あくまでも民間型ADR活性化というのは、ADR体制の活性化の一方策なのだという基本的なスタンスだけは、この検討会で確認できればなと思います。

○青山座長 私も個人的には全く、今何人かの御意見を伺ったとおりだと思っております。そういう方向で勿論努力をさせていただきますが、この検討会の中だけで決められる問題でも、どうもなさそうでございますが、その点も頭の隅に置いておいていただきたいと思います。

○廣田委員 私はさっき個別法的なものをにらんで検討すべきだと言ったのですが、そういう意味では個別にあるものも共通のものもあれば違うものもあって、それはちゃんと認識した上で決めるべきだと言ったのですが。私は認証制度を採らないで、なおかつ全部やるのが本当で、特にADRについて基本理念を規定するのは、私は本来の意見書の答えであると思っているのです。
 ですから、今のいろんな意見が出た中で、基本法制だけの法律で本当にいいのかどうかということは議論しておく必要はあるのではないでしょうか。とりあえず民間型だけ、将来があるぞという法律にするのが綿引委員の御意見だと思うのですが、私はそれはあまり賛成ではないです。それで果たしていいのか。

○綿引委員 そういう法律にすべきだというのではなくて、全部を今回の法律に盛り込めなかったときに、決してこれですべてが終わりではないということを皆さんの共通の認識にしておいてはいかがでしょうかというふうに申し上げたつもりです。
 おっしゃるようなすべてを包み込んだ法案の提案ができるところまで持っていければいいのですけれども、なかなかいろんな隘路があって、うまく進まなくなっている中で、何とか一つの形をつくろうとしている。ただ、これで全部終わりだよと言ってしまったら終わりなので、そうではないという認識の中で今回できるところはどこなのかという考え方で進めてはいかがでしょうかということを申し上げたつもりです。

○青山座長 そういうつもりで私も承っておりますが、どうぞ御了承いただきたいと思います。

○原委員 そういう意味では、全体的な方向性の中での法案の位置づけをきちんというのは一つあると思います。
 私が大変気にしていますのは、先ほど廣田委員がおっしゃられた配慮というところに絡めて、自主性が損なわれることにつながらないかという懸念ですね。それはPRとか優良なイメージということだけではなくて、そここそ本質だとおっしゃられたのはそのとおりだと思っておりまして、ここでの検討というのがある程度方向性を持ったものということと、自主性を損ねるものではないという、それもきちんと明記というか、ここの姿勢として打ち出される形での法案を目指していただきたいと思っております。

○龍井委員 今の論点は私も全く同感ですので、できましたら、31-2のところのIIの「考えられる内容」のところで、そういう論点がかいま見えるような項目を、いきなり認証制度だけではなくて、それが一つの手段であって、こういうこともあるという工夫をしていただければと思っております。
 2点目は、強いて言えば基本理念に関わることですので、具体的な中身は後で補足させていただこうと思っていますけれども、キーワードがいくつか出てまいります。安心して質の高い、あるいは前回のペーパーですと、公正・適確、もう一つは、前回山本委員も御指摘になった、いわゆるBtoCの扱いのことなのですけれども、それが果たして執行力付与だけなのか。私は今、その問題を全体にかぶせようということを申し上げているのではなくて、論点として途中までのペーパーでありました公平性、あるいはこれは前回どなたかおっしゃられたと思うのですけれども、検討会の文書からは中立性という言葉は消えて、その経過もよく理解しています。その手続としての公正さだけではなくて、スタンスとしての公平性をどうやって担保していくかということは、どういう手続が必要かというのは後ほど各論のところで問題になると思うのですけれども、これから総論から各論に行く場合には、そういうことが理念の中で精神条項的に書かれた上で、どういう担保措置が可能なのかというのが1つの論点としてはあると思いますので、その辺も御配慮いただければと思います。

○山本委員 最初の○については私前回御意見を申し上げましたし、今の皆さんの御意見、それから座長のとりまとめのような形でお進めをいただければと思います。
 第2点については、私は原委員の御意見に全面的に賛成であります。紛争解決に携わるというと、紛争解決それ自体、一定の公益性を持った事柄であろうと思われますので、どのような形であれ、それに関わる者については一定の責務というものが想定されていいのではないかと思います。
 中身についても、原委員の言われることは誠にもっともだと思います。情報の開示というものは、これはずっと申し上げているとおり、基本的にはADR機関間の競争によって良いADRが残っていくというような方向になっていくのが望ましいとすれば、情報の開示というのは基本的なことだと思いますし、ADRというものが人による部分というのが非常に大きいとすれば、その人材の育成というのも非常に大きな問題だと思われますので、そういう大きい問題のところに絞って、一定の責務に係る規定を置いていただくということは私も望ましいのではないかと思っております。
 第3の○については、これは原委員も、あるいは廣田委員も言われた懸念というのは誠にもっともなことでありますので、この認証制度の導入というものが紛争解決事業者の自主性を損なうものであってはならないということは、この検討会において基本的なコンセンサスがあるのではないかと思われますので、それをどのような形で表すのかということは問題だろうと思いますけれども、何らかの形でこの検討会としてのコンセンサスを表すような方策というのを、是非事務局にお考えいただければと思います。

○廣田委員 議論をかみ合わせたいと思うのですが、責務規定について、認証事業者以外にも責務規定を設けるということは、これは内容にもよりけりだと思うのですが、あり得る話だと私も思うのです。そこで認証には無関係だということになるわけです。認証に関係ないということですね。そういうことであれば、ほかの部分も認証が必ずしも必要でないということはいっぱいあるわけですから、ここでそういうことを禁止するくらいだったら、ほかのところも全部認証を外していもいいというのが私の意見です。これは意見が分かれるところだと思うのです。
 もう一つ、3つ目の○の、どうも議論がかみ合わないのは、要するに自主性が損なうことがあってはならないということは、皆一致しているのです。どこが違うかというと、認証制度そのものが、それを導入すれば自動的に自主性を損なうということを私が言っているのです。それは懸念というよりも、事実そうなるだろうと見ているのですけれども、皆さんは認証しても自主性を損なわない方法があるという認識に基づいて話をされているのですが、そこの違いがあるのです。果たしてそういうことが、認証したのに自主性は維持できるということはあり得るのかどうか。そこの違いは議論しておく必要はあると思うのです。

○青山座長 その点は、既に議論済みだと私は考えております。というのは、前回、それからその前の回に、これは廣田委員からかなり長い御発言をいただきまして、議論をし、これは結局オプションであるということが何度も強調されているのは、これを入れれば自動的にそうなるという意見は意見としてあることは認めながら、オプションとしてやる以上は、そういう御懸念を排除できる方策があるのではないだろうかと、そのためにどういう努力をするかということで今議論を進めてきている。だから、今、認証制度を入れれば自動的に自主性がなくなるという考え方が正しいかどうかということについて議論をしても、それは前向きな議論にならないと思うのです。

○廣田委員 それを言っているのではないのです。つまり、場合によっては認証制度が私の言っているとおりに自主性を損なうようになりそうだということであれば、認証制度には賛成できない方向もあると聞いておいていいわけですね。そこは括弧に入ったままの議論だと認識していていいですね。

○青山座長 取り入れるとも、取り入れないとも、まだ決断はしていないというのはこの検討会の大勢です。
 ほかに御意見があれば承りたいと思いますが、なければ先に進ませていただきたいと思います。

○原委員 1点だけ、今の話に絡めて、ここは一番の議論になると思うので、私も追加的な意見なのですが、廣田委員の懸念は、私としては、どういう項目を設定するのかというと、ハードルの高さというのが1つです。
 もう一つが、何かあったときに、監督という言葉を使っていますから、乗り出すということですけれども、何かあったときというところを何をもって何かあったとするのか。この2つだと思うのです。
 ハードルの高さとか項目というのは、ある程度明示をされつつあるということはあるのですが、これはもう少し具体的なところが欲しい。私自身は、NPO法がありますね、NPO法に基づく法人格の取得というのがありますけれども、NPO法に基づく法人格の取得くらいの組織体ではあってほしいと思っていて、項目の数とかハードルの高さというのは、あのレベルくらいであれば、認証という言葉を使っても、そこくらいまでは利用者としてはしておいていただきたいという感じはするということで、それ以上にどこまで付け加えるのかということはあると思いますけれども、あとは何かあったときに乗り出すというところがもう少し明確にならないと、廣田委員が懸念なさっていらっしゃるのは行政が乗り出してきての自主性というところになるのだろうと思います。

○青山座長 わかりました。ほかにどうぞ。

○髙木委員 認証という言葉のイメージが弁護士会の中でも、原委員とか、龍井委員がおっしゃる意見が出るのですけれども、認証という定義がどこかにありますでしょうか、認証というのは基準認証というのと同じ意味で使うのでしょうか。

○青山座長 これは法制局マターですので、事務局からどうぞ。

○内堀企画官 ここは認証という言葉を使って、最終的に決定したわけでは勿論ございません。基本的考え方としては、一定の法令で定める要件の基準を設定して、その適合性をクリアーしていれば認証が受けられる。クリアーしていなければ認証が受けられないという基準の適合性の判断は、法律的に、それがクリアーしているかしていないかの確認的判断をするということです。

○髙木委員 基準認証という言葉があるように思ったのですけれども。

○廣田委員 それに関連して、認証というのは行政処分ですね。だから、行政処分だから認証を申請して、認証されなければ行政訴訟が起こり得るということははっきりしておいていいですね。
 ですから、私はそんな緩い基準はあり得ないだろうというところから議論をしているのです。

○青山座長 今のことで今後、個別的に事務局が検討しなければならない、具体的な項目を御指摘いただきましたので、検討させていただきます。
 それでは、次に進ませていただきまして、基本理念等については、今、御意見をいただいたということでございますので、次は31-1の資料で言いますと、「2.認証制度」のところに入りたいと思います。
 それでは、31-1では、「2.認証制度」に○が3つありますが、これと、31-2の方の資料ですと、「考えられる内容」の2と、3の○の一つ目、この辺のところを御議論いただければと思います。
 これは前回の資料で申しますと、30-1の資料で言いますと、1ページから4ページにかけて、前回の資料で必ずしも法律レベルでは書くとは限っていないと。しかし、具体的なイメージを抱いていただくために細かく書くとこうなるということで、1ページから4ページにかけて御説明したところです、これについて御議論いただければと思います。

○髙木委員 2.の認証制度の真ん中の「紛争解決事業者を認証する場合に、紛争解決事業者を法人等の団体に限定するか否か」という点についてだけ一言。団体に限定しないで考えていただきたいと思っています。法人に限定しないことはもとより、「事業を営む個人」も、最近いろいろな法律の中で法人と同じような扱いをされておられますので、それと同じような形にしてほしい。
 例えば、弁護士が何とかADR事務所と1人で適宜使用人を使ってやったりする場合なども指しますが、個人でやる場合、公的な信用力はありませんから、認証があった方がいいと考える人たちもいると思うので、そういう人たちもできるようにしてほしいということです。

○原委員 ちょっとばらばらして申し訳ありませんが、資料31-1では、今、髙木委員がおっしゃったように法人等の団体に限定するか否かというところでは、特に限定する必要はないのではないかというふうに思っております。
 それから、第三者機関を関与させる場合というのは、関与させたいというふうに思うのですが、具体的にこの第三者機関というものを、どういうところに想定をしていらっしゃるのかというのがわからないのですが、私としては、国民生活審議会のようなところかとも思うのですけれども、主務大臣というのを採ると、そうではなくて、それぞれの各省庁の中に何か設けるのかと、それとも法務省とかと考えたりするのですが、もう少しそれこそいろいろとイメージが食い違っているように思いますので、お話を聞かせていただきたいと思います。
 それから、前回の資料の30-1についてなのですが、先ほど事務局からの御説明で2ページ目のところに、考えられる認証の要件として、「(2)業務の内容」で、施設等と財産的基礎について、前回質問があったので答えますということで、施設については了解したのですが、財産的基礎のところで、継続して業務を行うことができる意味ですというふうにおっしゃられたのですが、それは具体的にはどのようなことを指されるのかというのがちょっとわかりにくかったのでお願いしたいと思います。
 それから、5ページに(6)と(7)があって、利用者とかの苦情の適切な処理ということがあって、その利用者からも苦情を受けるようにというのがあるのですが、私は是非入れていただきたいとは思うのですが、ただ、この項目が入っただけでは実効性はほとんとないだろうと思っていて、クレームがあるADRに文句があるとわざわざ言いに行くかというと、あまり言いに行かないと思うのです。そうすると、言いに行くインセンティブみたいなものがないといけないと思っていて、それは利用者からどういう苦情が来たのかということの開示だと思うのです。こういう苦情が来ているのだということが外に向かって見えるという形にならない限り、項目として書かれていても、ほとんど機能しないのではないかということを、ここについしては透明性ということで思っております。
 (7)の「適切な手続実施者の選任等」なのですが、前回、それぞれ委員が発言をなさって、私はこう思うとかとおっしゃっていたのですが、私自身が何も言っていないということは、この間事務局から言われまして、私が何を考えていたのかと言われたのですが、私自身は(b)辺りを考えていました。そうすると、山本委員の方から(b)と(c)はほとんど同じではないかと言われたので、発言をする機会を逸してしまったというところがあって、(c)であっても、内実的には(b)でなければ(c)はやれないだろうなというところが私の判断です。
 ばらばらしましたけれども、とりあえず以上です。

○青山座長 今の御質問にわたる部分で事務局でお答えできる部分はありますか。

○小林参事官 第三者機関につきましては、先ほどの御説明から更に出るものではありませんけれども、もう一度お話をしますと、認証主体、主務大臣が認証をする場合、あるいは認証を取り消す場合、その他の場合もあるかもしれませんが、基本的にはその2つのような場合につきましては、第三者機関の意見を聞くというような仕組みがつくれないかどうか検討していきたいということでございます。
 それでは、どこに置かれるのかということについては、まさに主務大臣をどこにするのかという問題に関係してまいりますので、今の時点でどこということを申し上げることはできませんが、仕組みとしては、それぞれの主務大臣の下に置かれる委員会、そのようなもので考えていくということになろうかと思います。
 それから、財産的基礎のところにつきましては、これも先ほどの御説明を繰り返すことになるかもしれませんけれども、基本的には紛争解決業務を継続して行うことができる基礎があるかどうかということでございますので、具体的に最低限これだけのお金がなければいけないとか、これだけの財産がなければいけないということを設定することは基本的には考えておりません。勿論、ボランティアにかなり負うという団体もあるでしょうし、そうではない団体もあるでしょうから、一律に基準を組むことは難しいと思いますが、いずれにしても、業務の遂行が可能かどうかを中心に考えているということでございます。

○佐成委員 第三者機関のところで確認なのですけれども、第三者機関が一定の判断を示した場合、それは主務大臣に対してどういった効果をもたらすものか。要するに、それを拘束するものなのか、尊重するものなのか、参考にするものなのか、どういうイメージで事務局としていらっしゃるのか、その辺ちょっと確認させていただけますでしょうか。

○小林参事官 法律上どう構成するかというのを、今申し上げるのは難しいと思いますが、意見を聞くからには、聞く意味のある位置づけにする必要はあろうかと思います。拘束力を持たせるかどうかは、今の時点では答えが難しいと思います。当然聞くからには、その結果を踏まえていくことにはなるのだろうと思います。

○佐成委員 聞くことを必要的にするのか、裁量的にするのか、その辺もまだ現段階では詰めていないということですか。

○小林参事官 正確に申し上げれば、今この時点ではっきりしたことは申し上げられませんけれども、制度の趣旨から言えば、外すケースはあまり考えにくいのではないかと思います。

○佐成委員 その第三者機関に対して、事業者側が不服を申し立てる場合とか、主務大臣に普通は申し立てるのが筋なのでしょうけれども、第三者機関を通して申し立てるとか、そういったこともあり得るのかなと。第三者機関の関与の仕方というか、通常は行政処分だとすれば、主務大臣の処分ということで、そちらに対して異議申し立てなどをするのでしょうけれども、第三者機関が透明性を高めるとか、そういうことであると、むしろそちらの方を通して公明正大にやってもらった方が、認定事業者の側が非常に有利なのかという、そんな感じを抱いたので、その辺の関与の仕方についてどのように考えられているかどうかをお教えください。

○小林参事官 現時点ではっきりとしたお答えは難しいとは思いますけれども、先ほど来申し上げているように認証するケース、あるいは認証を取り消すケースに意見を聞くということでありますので、直接その機関に何か手続を取るということは、今の時点で特に考えているわけではありません。

○廣田委員 そうすると、行政不服審査とは違う流れの法律をつくろうという感じになるのですか。普通だったら認証をしないという処分をしたら、異議の申立てをその官庁にするわけでしょう。それからスタートするのではなくて、別ルートをつくるということですか。

○青山座長 主務大臣が行政庁になって、それに対する不服申立て、異議申立てという手続だということで、独立の行政委員会みたいなものではないということです。

○廣田委員 不服審査の過程で何かをはめ込むという格好ですね。

○小林参事官 先ほど来申し上げているのは、むしろ認証するケース、あるいは認証を取り消そうという行政処分をする前の段階で意見を聞くということでございますので、不服審査とは直接の関係はないと思っております。

○三木委員 第三者機関の話ですが、ペーパーには関与させる場合と書いているので、させない場合もあるという含みなのか、つまり、選択肢として第三者機関を関与させないということがあり得るのか、その場合には、誰がどのような仕組みで認証するのかということを伺いたい。

○青山座長 先ほど来、認証する場合と、取り消す場合は、これは必ず関与させないとまずいのではないでしょうか。

○三木委員 させる場合と書いていますので、させない可能性があるという前提かという質問です。

○青山座長 それはまずいのではないですか。だから、そういう制度はつくらないで。

○小林参事官 関与させる場合というのは、慎重を期した書き方でございまして、先ほど申しましたように、そういうことを検討していきたいということでございます。ただ、ここで確約しろと言われても。

○三木委員 させない可能性があるのであれば、そのときにはどういう仕組みかというのを聞いておかないと、比較ができないですから。

○小林参事官 関与させない場合は、通常の。

○三木委員 主務大臣としてまさか法務大臣が自ら認定するわけではないでしょうから、どういう方が認定するのですかということです。組織ですけれども、例えば法務省であれば、どういう部局のどういう役人が認定するのかという、そのイメージがわからないと、第三者機関を置く必要が高いか低いかが話ができないということです。

○小林参事官 今の三木委員の問題意識にできる限りお答えするという前提でお話をさせていただきたいと思いますが、その限りで申しますと、仮に法務省だとすれば、法務省の普通の職員と言うとあれですが、事務職員が議論を重ねて判断をしていくということです。

○三木委員 それを聞いているのは、専門性の話がありますから、法務省には法曹資格を持った職員の方もいらっしゃれば、一般事務職員の方もいらっしゃいますね。
 要するに、どのくらいの専門知識を持った人が第三者機関を関与させない場合には認証されるという、仮定で勿論結構ですが、イメージなのか。そのときに、青山座長がおっしゃったように、そういう仕組みであれば第三者機関を置くという可能性が高くなるでしょうかとか、そういう議論に結び付けられるので、伺っているということです。

○青山座長 役所内部のことですから、私が責任を持って言える立場ではないのですが、仮に法務省なら法務省ということを考えると、あそこには司法法制部という組織があります。そこが受けて立つということになるのではないでしょうか。これは全く責任を持った発言ではありませんので、イメージとしてそういうことを考える。法務省以外のところが主務大臣になるという場合も、わかりませんけれども、しかるべく組織の中で専門的な知識を持った人を集めるような部局というか部署の人たちがこの事務を担当するということだろうと思います。

○廣田委員 その主務大臣というのが、これは法務大臣だと思っていいのですか。そうではない場合もある。ここら辺でもいろいろ議論は変わってくると思うのです。

○小林参事官 その点も何度か御説明をさせていただいたかと思いますけれども、法的効果、あるいは認証基準の内容からすると、法務大臣の関与は必要ではないかというふうに考えております。ただ、例えば公益法人がこういった業務を実施しているようなケースについては、公益法人の所管大臣との関係もございますし、特定の分野の紛争を扱うということであれば、その分野の所管行政庁との関係もございますので、その辺りはこれからどう調整していくのかということを検討する必要があるのではないかと思っております。

○髙木委員 あえて言うこともないかなと思うのですが、第三者機関を関与させるというのは、ある意味で、非常に透明で公正な判断ができるというようなことにつながって、いいところもあるのですけれども、手続がえらく重くなりますね。認証とか認証取消しのすべてに、第三者機関を関与されるとしたら。
 もう一つは、どのくらいの規模を考えるかですが、仮に委員会みたいなものにすると、多分役所の人を選んだのでは意味がないでしょうか。民間から選ぶということになるわけですね。何人くらいの構成にするかはわかりませんけれども、この検討会だって日にちを設定して集まるのが難しいのに、例えば認証が出たときに、年間どういう時間的間隔で、どういうふうに申請が出てくるかはともかくとして、随時、人を集めて何をやらなればならないとなると、とても重くなるしスピーディーに行かないと思うのです。
 何でこんなことを言うかというと、サービサー法で、あれは法務大臣の許可ですけれども、日弁連に対する求意見というのがあって、それが日弁連に随時来るのです。日弁連の中で対応する組織は決まっていますけれども、やはり意見を出すのにえらく遅れがちになって、いつも怒られてしまうのです。標準処理期間が2か月以内ですから、日弁連の持ち時間は1か月以内に出さなくてはいけないのですけれども、そういうことを考えていると、実務的に回るのだろうかというのがやや不安です。回れば何ら問題ないのですけれども。
 もう一つの考え方としては、私は不服審査が出たときに、不服審査について第三者機関を関与させる。とりあえずは行政庁なのだから、そんな間違った判断はしないだろうという信頼の推定が成り立つとすれば、不服審査のところに第三者機関を絡ませるというのもあるのではないかと思っています。

○廣田委員 話が私の前の質問に戻るのですが、今の小林参事官のお答えですと、主務大臣か複数になることがあるのかどうかです。
 もう一つは、仮に複数ではないとしても、例えばPLセンターにはおのおのの監督官庁がありますね。それから、日本商事仲裁協会なら経産省とか、それぞれ民間型ADRと言われるものでも監督官庁があるのです。それと、そうでない主務大臣が認証をするということは、どういう関係を持つのか。この辺りもイメージが湧かないと、今との第三者機関はそれとの関係で統一した第三者機関なのか、別々なのかという問題も出てくるので、行政全体の重みというものと、効率性との兼ね合いで我々判断するということになると思うので、そのイメージをはっきりしていただきたいと思います。

○青山座長 おっしゃることは非常によくわかりまして、第三者機関の詰めが進んでいないのは間違いないところなのです。ただ、あまり早くこれをやりますと、認証を前提として事務局が勝手に動いているのかという御批判も当然あるわけでございまして、こちらはタイミングという問題もありますし、もう少し議論が煮詰まるのをお待ちいただきたい。それと並行しながら模索していきたいと思っておりますので、御勘弁いただきたいと思います。

○龍井委員 適格性全体に関わってくる論点だと思うのですけれども、先ほどちょっと触れましたように、何らかの不適格なものを、あらかじめ排除という言葉が適切かどうかは別にして、可能があればあらかじめ打ち消しをしておく。今までの議論では、それは暴力団関係者であったり、そうではなくても、事件屋、示談屋と言われているようなトラブルメーカー。
 もう一つが、今まで総論の中ではあまり具体的な論点になってはいなかったのですけれども、先ほど触れた、明らかに一方当事者に偏ったものが、言わば第三者的な立場でADRとして出てくるというのは、私はあらかじめ避けた方が望ましいのではないか。
 これは繰り返しますけれども、そのことが理念的なもので、どこまで書き込むということはありますが、ここは1つの例で申し上げますと、最近、例えば不動産関係で住み替えをしたり、賃貸契約の後で不当に請求されるというトラブルが多発しているわけですが、そのときに、明らかに私は不動産業界そのものが悪と全然思っていなくて、ただ、そういう紛争になった場合の立場としては、当然利害団体になってくる。そのときに、おそらくこの人が直接ADRを主宰するということは、1つのフィルターが兼業についてのものがあります。
 もう一つは、ここが先ほどの論点と絡んでくるのですが、自らやらなくても、いわゆる間接的な法人資格を取って、つまり業務を営みながら同じ事務所に、まあ同じ事務所でなくてもいいのですけれども、もう一つ看板を掲げて、何とか不動産、何とか相談センターという看板を掲げる。その場合には、例えば明確な紛争があって、こちらの代理として弁護士さんが、例えば出頭を願うという場合は、どちらの代理かということで明確なわけです。呼び出される側もそういう立場になる。
 ところが、二枚看板的な意味での、何とか相談センターとなれば、これが排除したくないのだけれども、当然ここでお墨付きを得る。そこが実質上は一方当事者の利害に偏ってはいるのだけれども、客観的には中立的なものとして出頭を命じられるというケースが起きてくる。
 私はこれはどこまでチェックできるかどうかは別にして、理念的には排除したいと思っているのです。ただ、そういうことをあらかじめどこまでチェックできるかですね。排除という言葉が不適格であれば、事前にどこまでチェックをして、もっとトラブルをこじらせないように、あらかじめしておくべきでないか。
 だから、今日どうすればいいというのが、私は答えを持っていないので、むしろこれは引き続き御検討いただく中で教えていただきたいと思っているのですが、その場合に、総論から各論にと申し上げましたように、次回ヒアリングをされるということですけれども、これが個別の紛争分野で規定していくのか。
 あるいはBtoCという枠組みでいくのか、そこはまだ検討の余地があると思いますので、少しそういう実態のヒアリングをされるような機会も持っていただく、時間がないのはわかっていますけれども、少し各論のイメージを持つためには、そういう検討も必要かなと思っていますので、今日は問題提起ですけれども、以上です。

○小林参事官 今の問題はある意味では悩ましいところがございまして、実態的に申し上げれば、専門性は非常にある人だけれども、少なくとも、外見的な中立性・公正性から見ると疑問があるとうケースがあるということ。こういう実態を踏まえると、どこでそれをバランスを取るのかという実態的な問題もありますし、それをどうやってチェックしていくのかということになりますと、先ほど廣田委員からお話がありましたように、自主性を潰さないということを考えると、それをどうやってチェックしていくのかという問題と両方あるということで、ある意味では悩ましい問題ではありますけれども、そこは理念のみならず、制度的に何か担保ができないかということで、例えば今、考えている項目の中で言えば、役員構成及び手続実施者、候補者のところで、ここでは総合勘案して判断するとなっておりますが、そこは1つの手掛かりになるということがございます。
 あるいは、そこを直接の規律ではなくて、少なくとも認証機関については、手続実施者についての情報開示や、あるいは利用者に対しては利害関係情報の開示というのもございますので、そういった間接的、あるいはソフトな形で担保していくということもあり得ると思いますから、そこはいろいろな要素を総合的に勘案しながら、方策については考えていきたいと思っております。

○廣田委員 今の龍井委員のお話に関連して申し上げますと、おっしゃる趣旨はよくわかります。これは一番大事なポイントだと思うのです。物事というのは盾の両面があって、これ自体が難しい問題なのです。
 1つは、偏るなと言っても、偏らなければいけないADRがあるのです。消費者を保護するためのADRがあって、そのために手続自体が片面的なものになっているものがあるのです。交通事故紛争処理センターは、保険会社の方はノーと言えないとなっている手続があるので、この辺もその実態はというと大変難しい問題があるということが1つ。
 もう一つ、私は認証の良いところが出るか、悪いところが出るかということで、悪いところばかり申し上げますと、要するに、行政訴訟がありますから、認証しなければ認証しろということが言えますね。訴訟になるくらいなら認証してしまうということがあるので、おっしゃるような心配なADRはかえって認証を取って、お墨付き持ってやり始めるという危険性もあるのではないか。それを私は懸念をしているので、どっちみちそれをチェックしたり、それをやらせないということだったら、事後審査、司法審査が必要ですから、それで確実にそういうことをやらせないようにするということの方が良いので、認証がかえってマイナスになる面も出てくるのではないかという両面がありますので、そこが難しいところだと思います。

○龍井委員 今、廣田委員が前段で指摘されたことは私もそう思います。だとしたら、それは一般的な中立性を装うよりは、むしろ立場を鮮明にしてほしいと思うのです。我々だったら労働相談でADRを取るかどうかわかりませんけれども、それはそういうものとしてやりますということが妙な中立というよりは、はっきりそういう立場があれば関わりが鮮明になっていくとい方が、もっと活性化するイメージなのです。

○廣田委員 私は今のことをもう少し手当てするのだったら、前回から三木委員が盛んにおっしゃっている手続が実際にやる人、調停人なら調停人に着目して、今おっしゃったように、手続の公正性だけでは足りないのだということであれば、両方から利害関係をよく聞けとか、それから、そういうものをちゃんと調停しろとか、合意を取り付けろということを、むしろ調停人の義務、責務として書いた方が私は確実ではないかと思います。それに違反して、あまり極端なことをやれば、その本人をつかまえて司法審査にかけるという方が強いし、実効性があるという気持を持っているのです。

○青山座長 私の方から確認したいことがあります。
 今日、認証制度の3つの○のうちの、最初の○が前回三木委員が言われた点ですけれども、事業者を認定するのか、手続実施者を認証する制度にするかということですけれども、これは三木委員は手続実施者、個人認証がいいと言われましたけれども、この議論の大勢は、個人認証ではなくて、事業者認定でいいのではないかというのが大勢であったように思います。それについて勿論、三木委員は違うというふうに現状認識されているかもしれませんけれども、別の観点からこれを補充させていただきます。
 この場合に、事業者を認証する制度にした場合に、その事業者と紛争解決事業というのには、仲裁もあるし、調停もあると思います。ひょっとすると、仲裁も調停も合わせて考えておられるのか。それとも仲裁は別で、調停だけで考えておられるのか、その辺の認識が違うという気がしておりまして、その点はどういうふうにお考えかということについて確かめておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○三木委員 この問題は先生おっしゃるように大事な問題だと思いますが、3のところで議論があって、その議論を前提にしないと、つまりそこでどういう前提を取るかによって、今の御質問に対する答えの仕方が変わってくるということがありますので、つまり、平場で論じられないところがありまして、そういう意味で3の議論の後に申し上げます。

○廣田委員 今、座長のおっしゃったことに関連して、調停と仲裁の関係で言えば、私はこれは認証制度に反対する理由が1つそこにもあるのですが、仲裁法は団体を認証するという事態も出てきていない。それから、アドホックもきちんと入っている前提です。団体的な考え方はないということが1つあるのです。
 その同じ仲裁をやっている機関に、今度は調停をやり、ここは認証だということになると、そのアンバランスがあまりにもひどいのではないかと私は思っているのです。そこも引っ掛かっていると思うのです。

○髙木委員 私は調停を前提にして話をしている、仲裁を含まない前提で考えています。

○青山座長 これは仲裁も含めて、しかも個人認証だということになると、これは世界に全く独自な制度を取り入れるようなことになるのかもしれないと思っていますし、調停だけだと考えると、調停には時効中断の規定もないし、執行力もない。仲裁の方は時効中断もあるし、執行力もある制度が元々あるわけですし、72条については明文の規定はないですけれども、弁護士以外の人が仲裁をやって72条違反だということはないでしょうから、そうすると、法的効果の関係から仲裁について認証というのは考えなくていいのだとすれば、議論は相当集約されてくるような気がします。
 前回、三木委員が個人認証ということを言われているのも、仲裁を念頭に置かれて言われているのではないだろうか。そういうことを皆さん思っておられるのかという懸念が私にはありましたので、確かめてみたいのですが。

○廣田委員 調停と仲裁の関係で、調停に限定する場合に起こってくる問題なのです。同じ1つの仲裁機関で、そこでやっている1人の調停人、あるいは仲裁人が調停から仲裁に移行したり、仲裁から調停に移行したりしますね。そのときに、何か調べると言ったときに、その1つの機関で、調停は認証を受けたとしますね。そのどの部分を調べてどこがいけないと言われるのか、ということが問題になってくると思うのです。そこが非常に複雑な関係になるのではないか。
 つまり、仲裁にも影響を及ぼすだろうということです。調停だけ認証したつもりなのが、1つの機関でやっているし、1人の人がやっている場合が多いわけですから、そうすると、調停を認証したということは、仲裁人は関係ないと言いながら、これは影響が及ばざるを得ない。そこのところが非常に複雑になって、法律全体、ADRシステム全体が非常にわかりにくいものになるというのが私の反対の理由の1つなのです。

○青山座長 そういう考え方からすると、仲裁も調停も1つの紛争解決事業の中のやり方だというふうにすれば、それを全体を対象にする。
 ただ、そうなっても、いきなり仲裁の申立てが来れば、それは時効の中断などはそちらで解決する。ただ、最初に調停が来た場合にはこれが働くとか、調停で終わって、和解が成立して執行力を与えるかどうか。勿論、調停だけの世界の場合にはこれが働いてくる。それをどう仕分けるかということですね。

○三木委員 3の中にも踏み込みますけれども、今、座長がおっしゃることと全く関連する話ですので、少し喋ってもよろしいでしょうか。

○青山座長 どうぞ

○三木委員 先ほど青山座長がおっしゃった仲裁に関するいろんな懸念とか御意見というのは、私は全くそのとおりだと思っております。
 それから、廣田委員がおっしゃった調停と仲裁というのが事件によっては簡単に切り分けられないというのもそのとおりだと思っております。
 そういうことも踏まえて、前回言った、個人を認証したらいいというのは1つの問題提起の意味もあって、その制度に特に固執する、そういう制度は1つあり得るとは思いますれども、固執するという意味ではなくて、問題をわかりやすく切り出すためにも申したというところがございます。
 前回申しましたし、いろいろ考えてみますと、法的効果と一口に言っても、72条を例外にするという法的効果と、それ以外の時効中断効を付与するとか、調停前置主義の件でどうするという、法的効果というのは同列に論じられない。つまり、分けて論じた方がいい部分というのが当然あると思います。
 私自身が意見として持っておりますのは、仮に今、御提案されているようなスキームでの認証制度というのを導入するのだとした場合には、それは時効中断効等の法的効果を付与する認証制度という点では、これも賛否両論ありますけれども、その賛成する方の御意見もわからないわけではない。しかし、これで72条の適用を免除してしまうという効果を付与するという方はおかしいのではないか。論理的にも矛盾していると思いますし、現実の被害、弊害もあると考えます。
 前回1つの例としてアドホック仲裁は、このスキームでは直接ではカバーされないということを申しました。そのときに山本委員もおっしゃいましたし、おそらく事務局も前提にしておられるのは、それによってアドホック仲裁が今より不利になるわけではない。つまり、突然この制度か動き始めると、今まて適法であったのか突然処罰されるようになるわけではないという話の前提は、きちんと言うか、おかしなことをやらずに普通に考えられる仲裁業務をやっていれば、それは正当業務行為として違法を訴却されるということが前提にあるのだろうと思います。
 もう一つ、この制度はオプションの制度である。つまり認証を選択しなければ不利を被る制度ではなくて、選択したいものはすればいい。行政の介入が嫌で、法的効果は要らないという立派なADR機関は取らなければいい。それによって何も不利にならないという議論の前提は、これも現在ある、あるいは将来生まれてくるADRできちんと業務をしているものについては、それは正当業務行為なり何なりで適法として扱っていかれるのだというのが前提だと思います。
 そうだとすると、きちんとやっているものが適法だと言うのであれば、認証を取った機関といえども、認証制度効果として72条を排除してあげる必要はなくて、きちんとやっているのであれば、ほかの認証を受けないADR機関、アドホックの調停人、仲裁人と同じく同じスキームで正当業務行為として適法であればいいと。
 反対に、認証制度に72条免除という効果をかけますと、例えば認証を受けた機関のADRを実施する調停人なら調停人の中にお医者さんとか建築士さんがいらっしゃると。それは全然構わないわけですね。そういう専門業務を生かしてADRをしてくださいと。そういう機関はほかに問題がなければ認証を受けられると思うのです。実際に業務が始まって、建築士の方とかお医者さんの方が、医療についてアドバイスされるのは結構ですし、社会人として市民の良識としてアドバイスされるのは結構だと思うのです。しかし、いくらお医者さんであっても、知りもしない法律のことをあたかも知っているようにアドバイスすれば、それは認証を受けた機関の名簿に乗っているお医者さんであっても、それは72条で処罰されるべきであるのです。
 ところが、この仕組みですと、認証を受ければ、その後、認証が取り消されない限り、極論を申し上げますと、どんな無茶をしても、他の刑罰法規に引っかかるおそれは別として、72条にはかからない。これはおかしなことで。利用者である一般国民から見てもかえって危ないわけです。
 繰り返しますけれども、72条で保護されなくても、認証をあえて受けないADR機関と同じく正当業務行為でちゃんとやっているところは保護されるのであれば、72条の効果を外しても問題ないわけです。
 つまり、72条というのは、何故そういう問題が起きるかと言えば、これは前回も申しましたし、委員の皆様には御案内のところですけれども、時効中断効とか何とかという問題も、私自身は機関というよりは、調停人、個人と結び付けようと思っていますけれども、しかし、考え方としては、機関が認証されて、その効果として各機関の個人がやる調停について時効が生じるという問題もあるでしょう。しかし、72条を徹頭徹尾調停を行う個人の問題であって、勿論、法律もそういう構造になっているわけです。
 ですから、機関か認証を受けたから、時効中断効があるのはいいと仮にしても、それでは72条が何をやっても免除されるのはもともと論理的にはおかしい話なのだと思うのです。 これも非常に極論ですけれども、認証を受けたときの名簿には立派な人の名前がリストに載っていた。その翌日に調停人が全員暴力団員に変わるとしても、これは認証が取り消さなければ、その人たちがやっていることは72条を全く恐れる必要はないわけです。そういう制度が必要なのか、望ましいのかということで、元々この認証制度というのは、おそらく議論されるときには、時効中断効等の法的効果のことを念頭に置いてされてきていることが多いと思うのです。それに72条の例外というのが、言わば言葉は悪いですけれども、こっそりと潜り込んでいるという気が私はいたします。
 これを切り出して、本気で72条等の関係を議論すると、今は時間の関係があってそろそろ打ち切りますけれども、様々な問題があって、私が気が付いただけでもいっぱいあります。ですから、72条を外すべきではないかと。
 最後に座長がおっしゃった仲裁というものをどう考えるのというの、確かに大事な問題であることは間違いない。この72条と認証制度の関係でいくと、仲裁というのは誠にこの認証制度の関係ではいびつになっていまして、先ほどお話に出ましたように、仲裁には時効中断効も要らないと、調停前置主義の問題もあり得ないし、手続の停止の問題も基本的にはないと。仲裁との関係ではまさに72条だけが法的効果としてある認証制度だと、それはおかしいのだろうと。
 しかし、仲裁だけがおかしいかというと、72条を効果にしたこと自体がおかしいのだとすると、調停も外せばいいではないかという話にもなる。取りあえずここで打ち切らせていただきます。

○青山座長 さっきの私の確認の方なのですがどうでしょうか。山本委員が仲裁も含まれて議論をしておられたのか、仲裁は別だとお考えになっているのか、前回確かめるべきところを確かめないでいたものですから、こんなときになって申し訳ないのですが。

○山本委員 なかなか難しい問題ですが、仲裁とそれ以外のものが違ってくるということは確かなことなのではないかという気はします。今、三木委員が最後に言われたように、法的効果の部分は仲裁については執行力も含めてすべて適用にならないというか、問題にはならないわけで、認証の要件の中には、前回参事官の御説明もあったように、例えば記録の保管等の問題については時効の中断の効果を付与することと密接に結び付いている等々、個々の効果との関係で一定の手続準則等が必要であるという場面があるとすれば、論理的に言えば、同じである必然性はないということだろうと思います。
 弁護士法72条との関係でも、この検討会での議論の中で、最終的にとりまとめには至らなかったので、検討会としての意見だったわけではないですけれども、仲裁は少し別ではないかという意見がかなり有力に、私もそのような意見を述べた記憶がありますが、そういうような意見があったように記憶しているところです。
 そういう意味からすれば、仲裁を別に考える、私自身は今まで意見を述べる上で必ずしもそこは十分に思い致していなかったわけでありますけれども、論理的に考えれば、それは別に考える余地はあるのだろうと。今、座長の御指摘を受けてそういうふうには思いました。
 ただ、この点については十分に考えた訳ではありませんので、完全な定見というわけではありません。

○青山座長 今日結論が出る問題ではなくて、次回また引き続いて御意見承りたいと思います。

○綿引委員 同じ点について。先ほど座長が指摘された点ですが、前回、私は、個人の認証などというのはできないだろうと。実際上無理であろうと。やるとすれば、事業主体の認証しかあり得ないということは申し上げたのですが、三木委員が言われた中で、特にアドホック仲裁について、今まで弁護士法違反にならなかったものが、別に反対解釈でこれが弁護士法違反になるわけではないけれども、事実上の反対解釈を生む余地がないのかという問題をどう考えるのかというところは、非常に重要な問題だなと、私も思っておりました。
 認証の関係で仲裁を外すという枠組みができるのかどうかは、検討していただいてはどうかというのは今日発言しようかと思って考えていたところです。ただ、それが法制的にできるのかというところに疑問がないわけではないのです。

○青山座長 仲裁という事業と、それ以外の調停という事業がきちっと別だと言えるのならば、事業ごとにということだと思うのですが、先ほど廣田委員が言われましたように、調停から始まって、仲裁に行くこともあるし、仲裁から調停に行くことだって、それは仲裁なのかもしれませんけれども、その両者の行き来を考えると、そう上手く区切りができるかどうかという問題は確かにありますので、少し検討していただきたい。私も考えたいと思います。

○廣田委員 ただいまの三木委員の意見について、私なりに意見を申し上げたいのですが、先ほどの御発言の中の法的効果、特に時効中断についても、私は認証と結び付けることは徹頭徹尾あり得ないと思っていますので、そこはちょっと意見が違うところだと思うのです。三木委員のお説は両説あり得るだろうということで聞きましたが。
 先ほどの意見を聞いてみると、結局、72条の違反の問題については、事後の司法審査に持っていけということで理解してよろしいですね。私もそういうふうに理解しました。それで私は前から言っているようにそれに賛成でして、72条は個人の責任を問うもので、今、三木委員がおっしゃったように、団体の方は認証しておいて、個人の責任をどうやって問うのかという、そこのギャップがどうしても説明できないです。ですから、これはどっちにしても事後の司法審査に持っていかざるを得ない。そこへ持っていくのだったら、認証は何の意味もないということになりますから、認証と72条の問題は本来切り離して考えないといけない問題だということで私は賛成します。

○青山座長 一応、認証制度のところは御意見を承ったと思いますので、ここで10分休憩いたしまして、3時から再開いたしまして、最後の「認証事業者の義務・認証の効果等」という点について御議論いただきたいと思います。

(休  憩)

○青山座長 それでは、議事を再開いたします。
 「3.」にあります「認証事業者の義務・認証の効果等」についてでございます。資料30-1では4ページから8ページとなります。前回の議論では適切な手続実施者の選任等に関する弁護士の関与の部分の議論。それから法的効果のうちの執行力の部分の議論が主な議論であったように思います。そこで他の部分については、冒頭に廣田委員が御指摘になったところですが、他の部分については十分に皆様の意見を伺っていないというのが私の印象でもございます。
 そこで本日は前回議論が薄かった点も含めまして、御検討いただきたいと思っております。どうぞ御自由に御意見を開陳していただければと思います。

○廣田委員 時効中断効について、これは認証と結び付けるべきではないということで、前回3つ理由を言ったのです。それは繰り返しませんが、簡単に言えば、認証というのを、時効中断効を認証主体にかかわしめるものではないということです。それが1つ。
 つまり、利用者から見れば、自分の権利を行使する。時効中断効をしようと思ったときに、たまたまそこは認証を受けていない。しかし、ここの機関の中のこの調停人に調停をしてもらいたいと思っているけれども、そこは受けていないからそうではない認証を受けたところで申し立てるということになりかねない。それ以外にもいろいろな問題が出てくると思いますので、そういうのに認証が関わっていていいのかどうかということが1つ問題だと思うのです。
 もう一つは、やはりこの時効中断効と、認証した民間型ADRだけに時効中断効を認めるというのは、私もいろいろ考えてみたのですが、いかなる時効理論にも合わない。
 つまり、いろんな説がありますけれども、どれを持ってきても、整合性がないと私は思うのです。こういう点で整合性があるというのだったら、逆に教えてほしいと思っているのです。ですから、理論的にこれは元々駄目であると私は思っております。
 第3点は、民間型ADRというのは、地域によってたくさんあるところとないところがありますね。だから、同じ時効中断するというのも、同じ債権について中断しようと思うのに、東京ではチャンスはいっぱいあるけれども、青森・秋田・岩手にはない。そういうことであっていいのかということです。法律制度として、地域格差がこんなにはっきり出ていいのかということはありますので、この辺の説明が付かない。
 この3点によって、認証制度と結び付ける考え方というのはあり得ないと思っているのですが、むしろ皆様の意見を聞いて教えてほしいと思っているのです。

○青山座長 何か時効中断効について御意見ありますでしょうか。私の個人的な感想で申しますと、第1点で時効中断が認められる機関と、認められない機関というのは出てくる。それは国民にとって、そこに行けば時効中断ができるということで安心して手続を進められるというメリットの反射効だと思うのです。それをつくってはいけないということになりますと、ADR機関では、どこへ行っても時効が中断できないという現状を全然改善できないということになる。それでもいいのかということが第1点に対する私の考え方です。 それから、第2番目の、理論的にどうかということですけれども、理論的には時効中断がどういうスキームでするかというと、これは個別紛争解決システムのあれでいこうというわけですから、それならそれに準じて考えようということで、ストレートにそれが時効中断になるということではなくて、後から訴えを提起することを追いかけると、遡って時効の中断効果が及ぶというシステムにする場合に、どんなADR機関でもいいかというと、やはりそうではないだろうということから出てきているので、これは理論的に説明できないということではないと思っています。
 むしろ法制局等との検討では、そういうことなら行けるかも知れないという感触だけは得ているわけで、理論的に成り立たないと断定することはできないのではないか。
 それから、地域格差という問題はおっしゃるとおりだと思います。それでもやる方がいいのか悪いのかというのは政策問題だというのが私の認識です。ほかの方の御意見、この点について特に御意見があればどうぞ。

○三木委員 先ほど申し上げたこととの関係ですが、3の2つ目の○、前回も議論があったと思いますけれども、この問題だけではなくて、それ以外の認証制度の要件のところでは、先ほど言いましたように、72条免除の効果を取り込むのか取り込まないのかによって、これは違ってくるだろうと思います。
 特に認証を受けても弁護士の関与が要るかどうかという問題は、72条を取り込む場合には議論になり得ると思いますけれども、取り込まなければ、おそらく議論にならないとは言いませんけれども、なる余地が減ってくるだろうと思いますし、それ以外の効果のところも、これは皆さん全員の認識として、仮にこの認証制度を入れるにしても、それが抑圧的なものであったり、萎縮効果をもたらすものであっては困るということに、1つは認証要件がどのくらい厳しいか。それから、認証後にどのくらい事後のチェックが厳しいか。
 いずれにしても、72条を取り込まない場合の要件、チェックというのは想像ですが、相対的に軽くなるのだろうと思います。したがって、抑圧的にならないということで、そこは先ほどの問題とリンクする話であろうということを申し上げておきます。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。

○髙木委員 三木先生がおっしゃったご意見「72条の問題を認証と絡めるのはおかしい。認証を得れば適法で、認証を得なければ違法になる。」という点ですが、そこは確かにそうなのだと思うのです。72条の趣旨から考えたら、認証を得ているか得ていないかにかかわらず、国民が法律事務の適正な処理を受け得る地位というのは、認証の有無にかかわらず保証されなければならないというふうに思うので、確かにそうなのですが、前の紙で言うと、30-1で法律上の効果の中に6ページから7ページにかけて、その場合でも、弁護士法72条の適用除外と書いてありますけれども、適用を除外するという規定自体を書かない場合を仮に、考えてみます。
 その場合でも、5ページ、ある手続実施者選任等のところで、手続実施者がどういうふうに関与するかについて、認証事業者の義務として、弁護士の関与をどの程度厚くするか、薄くするかア、イのC.まで段階はあるわけですけれども、これをもし、法律に規定すれば、既に弁護士法72条が改正され「他の法律で」が例外とされていますから、認証の法的効果ではないけれども、現行弁護士法72条の結果として、法的効果を与えたのと同じような結果にならざるを得ないのですけれども、そのことについては三木先生はどうですか。

○三木委員 それは結構です。

○廣田委員 時効中断の方から72条の方に議論が移ってしまいましたが、座長の意見はわかりましたけれども、ほかの委員の意見はどういう御意見なのか。私それを聞いてみたいのが1つあるのです。
 もう一つ、座長の意見が仮にそうだとしても、話はそれで止まるわけではなくて、例えば認証を受けていない、ある当事者が時効中断できなかった。それは不合理であるということで争ったときに、準用を認めるかどうかということでまた裁判上の争いになりますね。民事調停の場合、実際にそういう争いになって最高裁まで行って結論が出たのですから。そういうのがいくつか出てきたときに、それ自体が問題であるということはあり得る話だと思うのです。ですから、そのことを踏まえて整合性があるかどうかはきちんと議論しておかなければいけないので、先ほどの座長の意見では率直に言って私はクリアーできていないと思っているのです。ほかの委員の方の意見を聞いてみてほしいです。ここに法律家はいっぱいいらっしゃるわけですから。

○青山座長 特に御意見があればどうぞ。

○山本委員 私は座長の意見に賛成です。理論的な根拠については、この検討会でも、東京大学の森田教授にヒアリングをしたかと思いますが、森田教授は、あの当時は確認制度と言われていたかもしれませんが、それを前提に時効中断効を認めるということは、民法理論と不整合であるというふうに言われたとは私は聞いておりません。それは十分整合的な理論的な説明はできるということであったかと思います。私は民法の専門家ではありませんが、森田教授の言われたことは十分理解できることだと思いました。
 地域によって差が出てくるというのは、これも座長が言われたように、おっしゃるとおりだろうと思いますけれども、それは日本の司法制度、法曹制度全般に現在もある問題でありまして、弁護士の地域的遍在という問題も勿論あるわけです。その他、さまざまな法的リソース、あるいは法律だけに限らないかもしれません。日本の中央集権システムそれ自体の問題かもしれませんが、そこは様々な形でその地方の方々にもリーガルサービスが提供されるように今般の国会に提出されているような法律もあり、日本司法支援センターの中でADR等についても取組みがなされるのではないかというふうに期待しておりますが、それはそういう問題であろうかと思いまして、それだからと言って、時効中断効をADR機関の手続に認めないという理由にならないというのが私の認識です。

○原委員 私は法律の専門家でも何でもなくて、一般の人たちの意見ということになると思うのですけれども、ここで議論したことをその日のうちにもまとめて、25人くらいお送りして、意見を求めたりしております。
 この問題については、感じとしては半々です。廣田委員がおっしゃるように、差別というか、差を設けるということにつながるのではないか。ADRの差につながるのではないかということ。
 もう一方は、多様性ということを考えると、時効中断効を持つところもあるし、持たないところもあるというところで括れるのではないかという御意見も寄せていらっしゃる方もあって、それで半々なので、あとは合意がどういうところで取れるのかという感じではないかなと思います。

○廣田委員 今の山本委員の意見なのですが、森田教授の意見と私の意見は勿論違うのですけれども、私が今、ここで問題にしているのは、森田教授のときには、事前認定制度というのは民間型ADRだけに限った意見ではなかったですね。今出てきたのは民間型ADRについて、認証制度をもうけ、そこだけに時効中断効を設けるということが当面の問題になっているので、もう一つ問題が出てきているわけです。それについて私が3点問題を言っているわけなので、そのことについてどうお考えなのかということです。
 もう一つ言えば、いわゆる時効理論のどこに合うのですか、その制度は。それを私は聞きたいのです。時効制度との議論というのは延々と歴史がありますね。そのどこに合っているのですか。それを聞きたいのです。それが合っていなければ、たとえ今の法制局の人がいいと言っても、後々問題が出てきますよ。法律というのはそういうものではないと思うのです。
 ですから、さっき座長が言われたように、それでも認めた方がいいのかどうかという以前の問題として、私はそこでクリアーできなかったら、時効制度は諦めるべきであると考えているのです。あるかなしかの問題だと思います。もうここの段階になると、法律の原則、峻別の論理という原則のところで、分けられる問題だと思います。法律をつくる以上はそういう曖昧なものではないと思います。それが私の意見です。

○綿引委員 おそらく理論的に説明しようとすれば、調停と裁判上の和解の類似性を論じた最高裁の判例も裁判所の関与の下に紛争を解決し、その権利を確定することを目的とするというような言い方をしたと思うのですが、認証ADRに対する申立てというものは、一定の公的認証を得た機関において紛争を解決するための明確な意思表示だから、それには時効中断効の効力を与えてもよいというように説明できるのではないかと思います。廣田先生が前に言っておられた民法で言う和解にまでいくかどうかは疑問としても、認証ADRに対する申立てを和解に準ずるものだという立法をしても、それは私は理論的にはおかしいということではないだろうと思っています。前にどこのADRに対する申立てでも和解に準ずるものとして時効中断効を認めればいいではないかとおっしゃっていたのが以前の廣田先生の御意見だったと思います。
 多分、廣田先生が今問題にしておられるのは、行政型や司法型が外れて認証された民間型だけに時効中断効を与えることになるのがどうなのかということなのだろうと思います。
 今日の一番最初のところで議論になったと思うのですが、この法律では行政型や司法型が外れてしまうとすると、今後の行政型ADRの立法に際して、この法律との整合性を視野に置いていかなければいけないという方針をどこかできちっとさせてたいと事務局も言っていたと思います。
 そういうことによって、今後、個別の行政ADRが立法されるときに、それが、少なくとも民間認証ADRよりも、きちっとした紛争処理機関であるという前提であるとすれば、時効中断効について、個別労働紛争の解決の促進に関する法律と同じような形の条文が入ってくるのではないかと思います。
 今まで、個別労働紛争の解決の促進に関する法律にだけ時効中断効が入っているのは立法的に全くおかしいかというと、誰もそんなことは言っていなかったと思います。
 また、調停についても、調停そのものの申立てに時効中断効は認められていないのですけれども、こういうADR法ができた場合に、そこについての改正の手当てが今後必要かどうかというのをこれに合わせて議論されればよいのであって、全体の法体系の整合性というのはそういう形で図られていってもやむを得ないことだと思います。
 この立法をしたことによって、すべての法体系が整合したものとしてできなければいけないということではないのではないかというのが私の意見です。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○山本委員 2点ですが、1点は前回の資料の30-1の5ページで、先ほど原委員がちょっとお触れになった点ですが「利用者等からの苦情の適切な処理」、これ自体は私は相当な義務なのではないかと思うのですが、より一般的に言えば、ADR機関の紛争解決システム全体について、それを維持し、改善していくようなメカニズムをビルトインしておくというような義務を考えてもよいのではないかという点です。
 こういう紛争解決システム維持・改善というのは、今、議論されているISOなどの国際標準の観点では非常に重視されているところです。1回それを立てればいいということではなくて、それを状況の変化に合わせて維持し、改善していくということが非常に重要視されているということ。
 それから、そういったシステムを改善していくについて、この検討会でもずっと議論になっているように、行政が介入して、国の力で改善させていくというのは、本来的には適当ではいことなので、内部で何か問題があればそれを改善するようなメカニズムというようなものがあった方がいいのではないかということです。
 そういう意味で苦情への対応というのは、その改善の1つのメカニズムになっていくのだろうと思われますが、ほかにも内部の監査システムの構築でありますとか、外部からの評価といったことが考えられるのだろうと思います。それを細かく義務づけていくというのは適切ではないのだろうと思いますが、一般的な形でそういうような義務というものを想定していもいいのではないかというのが1つです。
 もう一点は、法的効果の点ですが、前回の30-1だと7ページの③にある「調停前置の特例」という項目ですが、これについてはa、bと2つの考え方が提示されているわけですけれども、私自身としては、bの考え方に賛成であります。認証という制度をつくるわけでありますから、そこにおいては制度的には話合いによって実効的な紛争解決が可能であるという前提を取っているのだろうと思います。調停前置主義の趣旨というのは、話合いによって実効的な解決の可能な紛争については、できるだけそのような解決の機会を付与すべきであるという趣旨であるとすれば、制度としてはそういう認証機関が実効性のある紛争解決を提供できると国が認定しているわけですから、そういう紛争解決の手続を経たとすれば、実効的な話し合いがされた旨の推定が働いてもいいのではないかということであるとすれば、原則として調停前置を適用しないということでいいのではないか。勿論、個々的な事件においては、それにもかかわらず裁判所はもう一度話合いの機会を付与することが適当であるというふうに考える場合はあるのだろうと思いますが、それは民事調停法の枠内でも常に裁判所は個別事件について調停に付することができるわけですから、十分な話合いが尽くされていないと判断されれば、調停に付せばいいわけでありまして、私自身はこのbの考え方を基本に、この問題について考えていくべきであると思っております。
 以上です。

○三木委員 全体の要件について伺いたいのですけれども、どれを取ってどれを外すかというのはまだ決まっていませんが、かなりの要件が挙がっているわけです。これのかなりの部分を仮に取ったとした場合に、これはすべてを満たしていなければ、つまり1個でも落とすとだめということなのか。
 例えば今、山本委員がたまたま例に出された紛争解決システムは整っていないけれども、それ以外は全部満たしているという場合はどうなるのか。これも要件はどういう組合わせを考えておられるのか。1個でも落としたら駄目というような基本的なイメージなのかということを伺いたいということです。

○小林参事官 今おっしゃったのは要件のところではなくて、多分義務のところに入っていたので、御趣旨はたぶん要件の方だと思いますので、要件の方でお答えをしたいと思います。
 基本的な考え方は要件でございますので、すべて満たしていただくということが前提だと思います。では、仮に申請の段階で軽微なものについて、不十分なものがあったときに、それをどういうふうに扱うのかというのは、それはいろいろな方法があると思いますので、それをもって認証せず、おしまいということになるかどうかは別ですけれども、理論的な問題としては、これは必要条件でございますので、すべて満たしていただくということを前提として考えております。

○三木委員 先ほど細かい問題で、さほど重要かどうかもわからないのですが、施設というのが物的な施設ではないということをおっしゃいましたね。そうすると、よくあるケースで、アメリカのAAAとかフランスに本部のあるICCとか、その他国際的な組織が提供する調停、または仲裁が日本が行われるということは割とよくあるのです。そのときに、日本では勿論、物的施設はないですし、事務局のような組織もないわけです。そういう場合は、この施設要件というのはどういうところで考えればいいかちょっと教えていただきたいと思います。

○小林参事官 オンラインも同じような問題があるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、必ずしもハコモノにこだわっているわけではないということです。ただ、それが施設かどうかは別として、いろいろな申請もしていただくわけですし、その後の監督ということもあるわけですから、何らかの連絡が取れないとかいうことではまずいと思います。それは、ここの施設の問題とは別の問題だと思います。
 繰り返しになりますが、必ずしも物的な施設を日本国内に要求しているということにはおそらくならないと思います。

○三木委員 日本国内とおっしゃいましたけれども、その施設は海外でもよろしいのでしょうか。主権の問題とはあまりこの法律は関係ないような気もするので伺うのですが。

○山上企画官 基本的に今、この認証制度というものを議論していただいているかという目的のところで、国民がいざという時に利用しやすい民間のADRというのが直ちに見つけ難いという実態がある。そういうときに1つの選択の目安を提供するというところに目的の第一義的なものがあるわけで、それとの勘案で、全く日本国内には事務所というか、受付窓口みたいなものが存しないというような状態の下で、それがそういう目的を達し得るのかどうかという観点から、検討をしていくべき問題ではないか。物理的にこれだけの施設が日本国内になければいけないとか、認証基準の中で審査基準として定まってくるというよりは、今、目的として申し上げたこととの兼ね合いでこれから認証基準を検討する中で議論していくべき問題ではないかと思います。

○三木委員 そうすると、可能性としてはこれは海外のものも含み得るということですか。

○山上企画官 申し上げたかったのは、日本国内に営業拠点が全くないという場合において、それらを認証の対象とすべきかどうかという判断の問題として、目的との兼ね合いでそれが果たして妥当かどうかということをよく吟味しなければいけないのではないかということです。

○三木委員 今おっしゃった拠点というのは何を意味しておられるのですか。御存じだと思いますけれども、日本企業も広い意味の国民というか、保護すべき対象だと思いますけれども、そういう海外のADR機関を国内で利用することは結構よくあるのです。勿論、信頼しているのです。利用者がその機関を危ないものと思っていなくて、実際に過去に事故も何も起きていないわけですね。そういうときに拠点が日本になければいけないという意味ですけれども、私もあまりよく知らないので、間違っていたら教えていただきたいのですけれども、物的拠点は勿論のこと、特に連絡員が日本にいるとか、何かあるわけではないと思うのです。しかし、特に今の国際性の時代で、通信も国内・国外関係なくできるわけですから、あまり心配せずに利用されていると思うのです。ですから、拠点というのか何を意味しているのか。
 同じことが資産と言いますか、財政的基礎ですか、これも国内の財産がなければいけないのかどうかということも同じような、ちょっと次元が違うのですけれども、問題としてはあり得るということですので、そういうところが認証を取りたいと思うかどうか私は知りませんけれども、しかし、スキームがどうかというのはわかっていないといけないということですね。

○青山座長 わかりました。認証制度というのを採用するということになれば、それは当然どういうところが認証を受けられるのかということは当然詰めていかなけれはいけない問題ですから、検討すべき事項として考えます。

○原委員 2点ですが、話を別にして申し訳ありません。先ほど山本委員がおっしゃられた利用者からの苦情の適切な処理の位置づけなのですが、やはり山本委員がおっしゃられたように、ADRをよくしていくための仕組みとしてビルトインするのだという明確化が必要だと思います。
 ISOではPDCA、プラン・ドゥー・チェック・アクションですけれども、このサイクルで組織というを維持・継続・発展させていくということがありますので、是非それをお願いしたいと思います。
 もう一点なのですが、これは山本委員と意見が異なるところなのですが、執行力の付与の部分です。これについては、消費者側からは反対ということです。2つ理由がありまして、1つは、山本委員の発言をお聞きしていると、執行力も付与してビシバシやったらどうかとよく言われるのですが、実際に執行力の付与というものがあると、ADR自体は、両者が門へ入ってくるということが前提になるわけですけれども、先にそういうものが見えると、まず門に入ってこないのではないかという懸念もあって、注書きで書かれているように、即決和解とか、今でも利用できるものがありますので、ここら辺りに委ねておいていただきたい。
 それから、2つ目の理由としては、いろんなADRが立ち上がって来た時に、例えば仮に認証ということになって要件を整えて参入してくるところでも、龍井委員がおっしゃったような懸念、事業者寄りのところが出てくるかもわからないという中では、単なる債権とかお金の取り立て機関に化するというようなおそれも抱いておりまして、少なくとも同時出発ということはあり得ないと思っております。

○山本委員 私が前回申し上げた趣旨は、今のような原委員の御批判、龍井委員、廣田委員も繰り返し言われているような御懸念があるということを前提として、消費者が、より厳密に言えば個人かもしれませんが、一方当事者となっているようなもの。
 それから、労働契約に基づく労働者と使用者の間の和解については、現在、我々が検討しているものの中では執行力というものは認めないと。ただ、BtoBの純粋に企業間の紛争で合意がなされた場合に、その不履行があった場合に執行力が欲しいという要望があるのではないかと思いまして、その要望に応える必要はあるのではないかと考えましたので、そこでそういう個人の問題、消費者の問題、労働者の問題については、仲裁法の附則で、仲裁法の中では最終的な規定は設けずに、暫定的な規律にとどめて、しかるべき機関で消費者、あるいは労働者の依頼を十分に検討できるしかるべき機関で別途検討して最終的な結論を得ていただくということになっておりますので、この問題についても、基本的には結局、消費者、労働者の紛争について、裁判所以外の、どのようなスキームで執行力を与えるかという問題においては、仲裁合意をどの範囲で認めるかという問題と共通していると思いますので、そういうところで最終的な判断をしていただくと。ここでは暫定的にはそういったものは消費者、労働者が一方当事者になるようなものについては執行力を認めないという形で整理すればどうかというのが前回の私の提案の趣旨だったのです。

○原委員 山本先生のお考えはそれであって、では、BtoBをやっていらっしゃるADRの意見は把握していらっしゃるのですか。

○山本委員 いいえ。

○髙木委員 今、原さんがおっしゃったことについて2つコメントがあります。
 執行力の問題ですけれどけも、消費者側は執行力があると、ADRにそもそも入らないという人たちがいらっしゃって、そういう声があるのもわかるのですけれども、逆もあるということを理解してほしいのです。執行力がないと使えないという弁護士さんもたくさんいるのです。それはBtoBであろうが、どちらであろうが、それは結構多数あると思います。
 私たち弁護士は代理人になって仕事をして、一定の話をまとめて合意書を作ると。そのときに、そこで履行まで終わってしまえば問題は残りませんけれども、履行が後に残るとようなときに、違反したらどうするかと必ずクライアントから尋ねられます。違反したときに執行するかしないかと別として、執行もできないような成果物(合意書)を代理人としてつくったときには、まるで欠陥商品のごとく言われるのです。実際に、執行するかしないかということではなく、執行力があることによって、相手に履行を促すという効果はちゃんと評価していただきたいと思います。
 もう一つ、苦情の部分なのですが、入れることに決して反対をするわけではないのですが、義務の程度を、ここには認証事業者の業務遂行上の義務と書いてあって、苦情の適切な処理としか書いていないので、どの程度のことを入れるべきかを考えていただきたいと思います。苦情の適切な処理ができる体制を整備すること程度であれば、特段問題はないと思うのですが、それにしても、その義務違反がとらえにくい部分もある。そこを、何が義務違反になるかを、考えてほしいなと思います。
 ちなみに弁護士会などは、ADRについて専門の苦情処理システムがあるわけではないのですけれども、仲裁センターも含めた形でいろいろな苦情を受け付ける窓口を整備しておりますけれども、それでも足りる程度にしていただきたいと思います。

○廣田委員 執行力については前回言ったように、私は本来法律で決めるものであって、認証機関が決めるような性格の問題ではないと思っています。
 それから、現状は、それを必要とする事件はそれほど多くないので、仲裁判断とか公正証書とか即決和解で今のところは賄えるだろうというのが私の認識で、これは入れるべきではないと思うのですが、ここで問題になっていることは、加重する要件どういうふうに加重するのかというのが見えていないですね。私はもともと反対なのだけれども、その要件によって、全体に影響を及ぼすと思うので、それを示していただかないと、一般的に良いとか悪いとか言ってもあまり意味がないのではないかと思っております。

○三木委員 執行力以外の問題でもよろしいでしょうか。

○青山座長 はい。

○三木委員 いろいろ細かく考えていると疑問があるので、1、2点疑問を例示してお答えいただきたいのですけれども、認証の効果というのが、いったん認証を受けた後にその後どうなるかという関係なのですが、これは機関認証を前提としていますので、いろんなケースが考えられるのですけれども、例えば認証を受けた機関が、その後、支店と言った言葉がいいのかどうか知りませんけれども、支店のようなものを全国各地に開設したとした場合に、その支店も認証の効果が享受できるのかどうか。
 あるいは認証を受けた機関が、例えば5つに分裂をしたと。その5つの機関がそれぞれ認証の効果を引き継げるのかどうか。とりあえずそれをお答えいただければと思います。

○小林参事官 支店にかかわらず、認証したときの条件が維持されているかどうかということについては、引き続き確保していく必要があるということになると思いますので、必要なものについては、報告をしていただくということになりますし、その上で監督を行っていくということを考えております。

○三木委員 支店を開くときに報告義務があるのですか。どこにも書かれていないのですが。

○山上企画官 通常のこういうケースでかんがみれば、当初、申請段階において認証の基準に深く関わるような事項を、こうだと書いてあったものが、それが変更されるという事態になれば、一般的にはそれの変更があった際には変更を届け出るというのが一般的だと思います。

○三木委員 報告をする道義的な義務があるかどうかを伺っているのではなくて、しなかった場合に、今までの御説明では取り消されるまでは法的効果というのは必ず付与されるのだと言っていたので、報告義務かあるならあるでも結構ですけれども、あっても報告しないと。しかし、認証の取消しというのはすぐには行われないと思うのです。ですから、それまでの間はその支店は法的効果を持つのかどうかということを伺っているのです。

○綿引委員 事務局は、支店の件は今まで検討しておられますか。認証主体がもし支店とかを持つという事態を十分検討しておられるのであれば、今お答えいただければいいし、もし、そこを十分検討しておられないのだったら、三木委員からそういう御指摘があったが、まだそこは十分検討していないと言っていただいた方がいいように思います。

○三木委員 純粋に疑問だから聞いているだけです。

○綿引委員 多分、今までの議論で出てきていなかったので、十分には検討しておられないだろうと思うので、検討しておられないところでお答えにならなくても、検討していないのが悪いとおっしゃっているつもりではないと思いますから。

○三木委員 私の知っている限りで、支店と呼ぶのかどうか知りませんけれども、そういうのを持っているADR機関は実際ありますし、地方のニーズに応じて、例えば開いてくれというときに、開くということはあり得ると思うのです。さっき言ったように、人の集まりですから、分裂することもあるし、法人格も別に要らないことになるとすれば、何をもって分裂と言うかというのもよくわからないところもあるのですけれども、いろんなケースがあると思うのです。
 法人格がないとすると、その法人を引き継いだ存続法人がわからないですから、どうなるのかという話です。勿論、合併もあります。

○青山座長 そういう細かな問題はいろいろ事務局でこれから検討させていただきます。ほかにどうぞ。

○廣田委員 取消しをするときに、なお検討するということなのですが、そこから先も問題があると思うのです。例えば、取消しのあるところで業務停止命令みたいなものが出させるかとか、あるいは違反したら、それに反して何かやったときに法律効果はどうか。違反したときには、民事・刑事の、あるいは罰則上の定めは何かということを実に細かいことを決めておかないと、取消し1つもできない。そのところがまず見えていないですね。それによって認証が軽いか重いかなどということに全部関係してくるわけですから。

○青山座長 おっしゃることは非常によくわかりますけれども、この検討会はそういう細かなところまできちんと詰めた上でないと結論が出せないかというと、ある程度の方向づけと、それから重要な問題については、ここは外してはいけないということさえ詰めれば、後は具体的な立法当局に任せざるを得ないと思うのです。そういう問題もあるということはどうぞ御認識いただきたい。今の具体的なものがそれになるかどうかともかくとして、どこで限界を引くかはありますけれども、そういう問題があるということは御認識いただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。

○綿引委員 執行力の付与についてなのですけれども、前回出ました公証人の公証を入れるという制度については、山本委員の方から前回理論的な指摘があったのは全くそのとおりだなという感じがしますのと、執行力について、この段階で入れなくてはいけないのかということについては、私はやはり懸念の方が大きいのかなという感じを持っていますので、執行力については、今後の検討課題という形で残しておいた方が穏当なのかなと思います。認証ADRというのが、廣田先生が言われるように悪用されるようなものになっていってしまうのか。もしかして、それがきちっと紛争解決のために大いに活躍するようになっていくのか、それを見極めてからでも遅くはないかなという感じを持っています。

○原委員 全体的なところで、これは紛争解決のところだけに焦点を当てていますけれども、例えば消費者のトラブルを考えると、その前に苦情相談という相談の部分がありまして、そういうものの位置づけがどこかに要るという感じがしておりまして、資料30-1の2ページの「(3)他の業務を行っている場合には、他の業務を行うことによって紛争解決業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないこと」だけしか書いていないのですが、この注の中を読んでいくと、認証事業者の業務遂行上の義務として所要の規定を置く形で対処することも含め、なお検討が必要」ということになっていて、私としては問題が起こらないような形にしていただきたいという書きぶりもありますけれども、紛争解決にきちんと移行できるような形できちんとした苦情相談が行われるということの規定という形になるのかどうかわからないですけれども、何らかの言及は要るのではないかなと考えております。

○廣田委員 私は先ほどの時効中断効などは、随分おかしな意見だなと聞いているのです。なぜかというと、どこが違うかというと、どうもこの議論はあらゆるところにそうなのですが、ズームインをして物を見ているから、おかしな議論なのか、そうではない議論なのか見えていないところがあると思うのです。ですから、方法論としてはずっと引いてみて、ズームアウトして見てみなければいけないのではないかという印象を持っています。議論の過程全体についてそう思っています。
 また、原委員もちょっとおっしゃったのですけれども、法律の条文の形になっていないと、これはわからないです。今、座長が方向づけをするとおっしゃっておられましたけれども、その方向づけ自体もある程度の、こういう条文になりそうだということがないとわからない。ですから、いろんな意見を述べるなら、それをにらみながら、ここは賛成、反対というふうに言わないと煮詰まってこないと思っているのです。
 私もいろいろ意見を言って、反対意見ばかり言っていると思っていらっしゃるかもしれないけれども、私は私なりの法律をつくるならこういう構想で作るべきだという私案を用意していますので、今日帰りに事務局に預けて帰りますから、次回必ず配布していただきたいのです。
 私の意見は、まとめて言えばこういう法案を考えているというのを出してみたいと思います。認証を導入するのだったら、それに対比するような形でぶつけてみていただかないと、わからないと思っています。もう少し具体化した議論をしていただきたいと思っています。

○青山座長 ここに寄せられる意見は、委員の意見に限らず、すべてお配りしておりますから、廣田委員の試案をいただくとすれば、必ずお配りして検討していただくことにいたします。
 ほかに何かございますでしょうか。今日は時間を超過しましたが、ほかに御意見がなければ、今日のところはこの辺りで議論を終了したいと思います。
 最後に次回の日程を確認しておきたいと思いますが、次回は大変恐縮でございますが、来週、5月24日月曜日の午後1時半から開催いたします。今日までにいただいた御意見や事務局から提案された検討の方向を踏まえまして、ヒアリングを行わせていただきたいと思います。ヒアリングは具体的には、どういうところからヒアリングを行うかというのは事務局で依頼をしていて、出てきていただけると思っておりますが、日本商事仲裁協会、これは仲裁も調停もやっている。それから、消費生活用製品PLセンター、消費者団体としては、全国消費者団体連絡会にお引き受けいただくことがほぼ決まっているという状況のようでございます。
 今後の議論との関係ですけれども、紛争解決機関、それから仲裁人の実務者というサービスを提供する側からヒアリングを行いたい。同時に、消費者団体というサービスの提供を受ける、利用する側からも、どちらからも認証制度を導入するとすれば、どうなのか。その場合の留意点や考えられる影響というようなことを含めまして、広く意見を聞かしていただきたい。それを通じて更に議論を進めたいというのが次回の狙いでございます。
 先ほど具体的に3つの団体のことを言いましたけれども、なお事務局はほかの団体から話を伺うことができるかどうか、今、ぎりぎり練っているところでございますので、あるいはさっきの3つの団体以外の方からも御意見を聞くことがあり得るということで御了承いただきたいと思います。私どもとしては、できる限り広い範囲から御意見を聞きたいというスタンスは前から採っておりますので、御了解いただきたいと思います。
 次回はヒアリングのほかに本日、事務局から説明を受けた検討の方向性の枠内に収まらない議論というのをいくつかいただきましたので、次回もそういう形でいろいろな御意見を聞いて、議論を更に詰めていきたいと思っております。
 次回は本当は予備日ということでありましたけれども、予備日が本番に繰り上がりまして、大変恐縮でございますが、最後の段階ですので、是非引き続き御協力をお願いしたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。