〔開会〕
○青山座長 それでは、時間になりましたので、第32回ADR検討会を開会いたします。本日は民間の紛争解決機関、あるいは利用者としての消費者団体、仲裁人としての実務経験者の方々、合わせて5名をお迎えしまして、民間紛争解決業務の認証制度の導入等に関する検討につきまして、それぞれのお立場から御意見を頂戴したいと思っております。
進め方でございますけれども、便宜上、2つのグループに分けまして、お一人につき15分程度を目途に御意見をいただくとともに、グループごとに若干の質疑応答の時間を設けさせていただきたいと思っております。
それでは、早速でございますが、最初のグループの皆様から御意見をいただきたいと思います。初めに私の方から御紹介申し上げます。社団法人日本商事仲裁協会ADR推進部長の小林正浩さんでいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。次に、消費生活用製品PLセンター事務局長の黒川秀一さんでいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。次に、大阪弁護士会民事紛争処理センター運営委員会前副委員長でいらっしゃいます小原正敏さんでいらっしゃいます。
本日は、お三方には大変御多忙の中、わざわざこの検討会までお越しいただきまして、大変ありがとうございます。それでは、早速順番に従いまして、小林さんの方から御意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〔「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)の導入等に関するヒアリング 〕
〔社団法人 日本商事仲裁協会〕
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)御紹介にあずかりました社団法人日本商事仲裁協会の小林でございます。
お手元の配布資料32-1に私どものコメントが書かれております。今回このような場で私どもの意見の表明をする機会を与えられましたことを、まず感謝いたしたいと思います。 非常に時間が限られておりますので、ポイントだけを書こうと考えまして、非常に箇条書き、それから紋切り型という表現になってしまったことを御容赦いただきたいと思います。では、資料に沿いまして、御説明申し上げます。
1番目の「認証のメリット・デメリットについて」でございますが、これは多少標題としてどうかなと思ったのでございますが、ここはADR機関の自主性ということについて意見を述べたつもりでございます。
最初の点でございますが、今回議論されております認証制度というものが採用されるのであれば、それを受けるか受けないかということは、各ADR機関の任意の選択に委ねられるべきであるというのが望ましいと考えております。
それから、認証を受けないという選択をしましたADR機関に対しても、現状活動しております内容に何か制約であるとか、不利益とかが生じないということを是非はっきりさせていただきたいと考えております。
御案内のごとく、ADR機関には非常に多様性がございまして、それぞれの機関の拠って立つ歴史と申しますか、基盤、それから、やっております内容、扱っておる紛争の当事者等について、様々なバリエーションがあるわけでございます。そういったADR機関、言わば本来自主的に運営されるべきものであるADRに対して、画一的な認証制度というものを適用するいうことは、これはやはりADR機関の規制ということにつながりやすいのではないかという点を危惧しておるわけでございます。
したがいまして、まず第一に、この認証制度を受ける受けないということを各機関の選択に委ねるということにしていただければと存じます。
それから、選択によって認証を受けない場合でございますが、現在でもADR機関は、私どもも含めましてADR手続等の活動をやっておりますけれども、その活動に制約があるとか、あるいは極端な話、認証を受けなければADR機関としての行動はできないということでありますと、本来の目的・趣旨に反するものではないかということで、たとえ認証制度を受けないという機関が出た場合でも、現状行っている活動に支障が出ないようにしていただきたいと考えております。
2番目の点でございますが、これは仮に機関の選択によって認証制度を申請して認証を受けるという場合のことでございますが、この場合には、是非、弁護士法の制約というものがないということを明確にしていただきたいと考えております。
たとえ認証制度を受けても、これから議論いただく内容であると存じておりますが、なお弁護士の先生方の助言とか共同的な運用であるということが条件とされているのでは、現在あるADR機関にとって、コストの点も含めまして、認証制度というのはあまり魅力がない。そういうことでございますので、弁護士法の特例を是非盛り込んでおいていただきたい。
その場合、何らかの形で弁護士の先生方の関与ということが出てくるかと存じますが、その場合、どういう関与をするべきかということについても、これまたやはり各ADR機関の必要性の判断を重点に考えておいていただければと考えております。
簡単になってしまいますが、2番目「国際仲裁にかかわる特殊性について」でございます。
少なくとも私どもの存知上げる限り、国際仲裁においてその仲裁を管理する機関、ADR機関に対してその国の行政機関が事前審査であるとか、事後の報告であるとかいった形で関与をしてくるということは、存知上げる限り、類がない。せっかく、この3月に施行されました新仲裁法によって、日本の仲裁の国際標準化が非常に進んだという現状にかんがみましても、行政が、国際仲裁を行っているADR機関に対して関与するということは、流れに逆行するのではないか。
これは特に外国企業の目から見た場合に、定期的、あるいは随時の報告によって、その機関に係属しました事案の何らかの情報が外部に出る。外部というのはADR機関の外という意味でございまして、政府機関も含めまして、外部に出る。それが終局的には公になるのではないかという点で、非常にその点を懸念する可能性が極めて大きいものでございます。
もし、さような疑問を持つADR機関であるとすれば、最初から、御案内のとおり、国際仲裁におきましては、契約で仲裁条項というものが入っておるのが通常でございますが、そのドラフティングの段階から、日本で国際仲裁はできないというようなことになってしまって、結果的に国際仲裁の活性化にマイナスに作用してしまうのではないかということでございます。
現在、議論されております法的効果にしましても、少なくとも仲裁につきましては、強制力も、いわゆるニューヨーク条約という制度ができておりますし、他方、国内の仲裁でもこの3月の新法で手当ができておりますので、できることでありましたら、国際仲裁につきまして、このADR基本法における認証というものの対象の外に置いていただければと希望しております。
それから「3.認証制度の具体的な運用について」でございますが、まず1番目でございますが、先ほど申し上げたように、多様なADR機関が存在しております。あるいはまたこれから存在することが予想されます。その中で、私どものように既に公益法人として50年以上ADR活動を行っており、トラブルもないというところ、ADR活動を適正に行っている機関について、これをその他のそうではないADR機関と同じに扱われるのは、私どもとしては納得がすぐにはいかない。公益法人でございますので、所管大臣というものがおられますので、できましたら、その所管大臣の認可というものをもって、ここで論じられている認証とみなしていただくことや、あるいはその認証の基準、それから事後の報告の内容の面で御配慮をいただければ大変幸いでございます。
公益法人としての活動で所管の大臣に御報告をし、かつ主務大臣が今回の場合はまだ定かではないと理解しておりますけれども、ほかの大臣になった場合に、二重の報告をしなくてはならない。あるいは違った内容をしなくてはならないということになりますと、現在人員的にもぎりぎりのところで運営されておりますADR機関が、私どもも含めて多いと存じますが、そういったところに本来行うべきADR手続の主宰、あるいは啓蒙・普及活動、こういうものに対して過重な負担を強いるものになってしまっては、逆にADR機関の自主的な活動を阻害する要因になる。
御案内のとおり、政府に対する報告となりますと、その準備につきましては、内部で非常な時間と手間をかけて用意しているものでございます。そういったことにかんがみますと、公益法人につきましては、何らの配慮をいただければと考えております。
それから最後の点でございますか、ADRの取り扱う対象は非常に取引によって非常に様々であることは御案内のとおりであります。消費者が絡む場合、企業が絡む場合、いろいろある。そこで私どもが行っておりますADRは、現在、いわゆるBtoB、企業対企業という紛争に限って力を注いでおるところでございます。
そうしますと、商取引でございますので、当然ながら損得勘定といったものを背景にして交渉なりが行われ、あるいはトラブル等が出るというところで、それを私どもがADR機関として紛争を取り上げて解決を図ろうとしているわけでございますが、この場合は、不特定多数の消費者を相手とする取引と比べまして、非常に違いがあるのではないかと考えております。やはり一般消費者の方々にとっては、新仲裁法に特則が入った例でも明らかなように、ADRということに対する認識等々がまだまだこれから考えていただく、理解していただくという段階にあるように思います。
そういう段階でのいわゆるCtoB、BtoCの消費者が当事者となっているADRと、あくまでもビジネス取引に基づいて発生したトラブルの処理について、一般消費者を含めたADRと同じような取扱い等を求めるということは、やはり対象によって報告義務の内容なりを、さじかげんと言いますか、柔軟にお考えいただければと思っております。
1つの例でございますが、BtoBに限って申しますと、非公開性といったことが非常なメリットと考えております。これはいわゆる機密性、そこに書きましたADR手続の重要な利点である機密保持ということでございますが、現在我々の持っております国際仲裁に関する規則、それから国内の商事調停規則、いずれも守秘義務を明定しております。
我々ADRの普及活動をするときに、決まり文句のように申し上げる点がいくつかありまして、専門性であるとか迅速性であるとか、低廉性であるとかいうふうに述べるのですが、その中に必ずと言っていいほど非公開性というものが入っております。これはやはり企業にとりまして、紛争を抱えていること自体、それから紛争の内容等について、これは非公開で機密が保たれるという場で解決を図るということで利用をしていただいている。特に調停の場合、これが調停と言えるかどうかわかりませんが、企業の経営判断に関するような事項については、これは企業が最終的にはイエス・ノーを言える権利を確保したいという場合ですと、調停が現在では一番フィットしている手続になるわけです。
これは経営判断になればなるほど機密性というのは高くなりますので、そういったことも含めて、最後に書きましたように、個別案件に立ち入るような報告なり監査なりを受けるということは、私どもといたしまして、せっかく企業にこれからADRを売り込んでいく際に、最初から重荷を背負ってしまうということになる可能性がございますので、その点について配慮をいただきたいということでございます。
時間でございますので、以上、説明させていただきました。
○青山座長 ありがとうございました。
それでは、続いて黒川さん、よろしくお願いいたします。
〔消費生活用製品PLセンター〕
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)消費生活用製品PLセンターの黒川と申します。お手元の資料32-2「ADR認証制度の導入に対する意見」、まず1番としまして、「PLセンターの特色」ということで、皆様方に御理解願いたいと思います。
まず、PLセンターは製品関連事故、特にPL法に関わります裁判外紛争処理機関としまして、製品分野ごとに設立されております。現在、経済産業省所管で9団体ございます。 以下のような特色がございます。
まず、相談により処理される案件が多い。別紙2枚目の方に当センターの実績がございます。平成7年度から平成15年度、ほぼ年間1,000 件くらい上げられます。その内訳としまして、製品事故、品質クレーム、一般相談、問合わせと、ほとんどが一般相談が多くを占めています。
そのうち申出者の希望によりPLセンターが対応を図ったもののうち、人身事故、または拡大被害を生じた案件、これが製品事故として区分しています。
また、品質だけの紛争の場合は、品質クレームとして区分しております。このように相談により処理される案件が多くなっております。
なお、消費者と企業との間の相対交渉による解決が困難となった場合は、調停に移ります。調停の場合は、括弧の数字で示している数字が調停の件数でございます。
調停の場合は、当センターでは、事務局から独立した判定会(弁護士を議長として技術専門家及び消費者関係専門家等により構成)が事実とルールに基づいた裁断的判断を行うもので、いわゆる「裁定」として運用している。
次に、個別の紛争処理において、原因究明を行いまして、欠陥の存否という判断が必要となります。
このために通常外部機関へ原因究明のための試験の依頼、また、欠陥判断のための原因調査、審査に関わる人件費等の費用負担がかなり大きいということです。
原因究明としましては、第三者の公的試験機関、そういったところに製品を持ち込みして、分析や必要な試験を行います。通常その試験だけでも1か月はかかっております。そのための試験費用もかなりの負担となることがございます。
こういったPL関係の関連事故は、このような費用負担が大きいということで関係業界を取り巻く経営環境の状況や、消費者に原則費用負担を求めていないということから、財政面での構造的な脆弱性を抱えております。
次に「認証制度の導入について」ということで、まず序文の方に、先ほどの日本商事仲裁協会さんと同じ意見となりますが、まず、ADR機関への認証制度の導入により、現行PLセンターの活動が困難にならないこと。これが前提としてございます。現在、PLセンターが実施しています相談・あっせん業務についても、非弁護士により問題なく運用されているということから見ましても、仮にその認証を受けなくても、これらの業務を引き続き実施できるということが必要かと考えられます。
また、先ほど調停の御説明をさせていただきました。現行の弁護士を含めた調停についても、新たに認証を受けなくても引き続きこれを実施することの確保は必要かと考えられます。
次は法的付与につきましての意見でございます。
まず、時効の中断につきまして、特にPL法での時効は3年間でございますけれども、通常当センターでは通常、相談事項は長くても1、2か月、調停に入りましても3か月以内ということで、ほとんどの事項はそれほどの長期になることはないのですけれども、これに関しましては、時効の中断というものは、ないよりも認められた方が望ましいのではないかと考えられます。
ただ、時効の中断の場合は、通常、先ほど説明しましたように、相談から調停に入るということで、どの時点で時効の中断をカウントするのかというようなことが問題になるのかもしれないということが危惧されます。
次に和解の執行力の付与につきましてですが、これにつきまして、特に手段、解決基準等の多様性を阻害するおそれがある。特に強制力を持たせますと、ADRの特色でございます、同意を得た上で紛争解決を図るということから見まして、強制力を持たせますと、こういった同意を得られにくくするのではないかということが懸念されます。強制力につきましては、当センターの業務に関しては、特に必要ないのではと考えております。
次に弁護士法第72条の適用除外につきましても、上述しましたように、現在の業務を引き続き行うということができるのであれば、特にその必要はないと考えられますけれども、将来的に弁護士の関与につきましては、あくまで各ADR機関の自主的な判断に委ねるということが適当ではないかとは考えておりますが、もし認証制度を導入されるのであれば、この弁護士法72条の適用除外ということが認められるということが望ましいのではないかと考えております。
最後なのですけれども、PLセンターというものの一番の根幹としまして、財政面での脆弱性ということがございます。認証の要件に当たりましては、こういった財産的な基礎に関しまして、配慮が必要であり、特に認証制度の導入に当たりまして、規模の小さなPLセンターではなかなかそういった専属の弁護士や体制整備といったものがなかなかできずらいという現実がございますので、こういった新たに弁護士の関与が認証制度により義務づけられるといった、追加的な負担が生じるということは避けていただきたいと考えております。
以上で終わらせていただきます。
○青山座長 ありがとうございました。引き続きまして、小原さん、お願いできますでしょうか。
〔大阪弁護士会民事紛争処理センター〕
○説明者(大阪弁護士会民事紛争処理センター 小原正敏運営委員会前副委員長)大阪弁護士会からまいりました弁護士の小原正敏でございます。本日は、このようなヒアリングにおいて意見を表明させていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
では、私も事前に提出しております資料に基づいて、大阪弁護士会の仲裁センターの経験に基づきまして、意見を申し述べたいと存じます。
まず最初に、簡単に大阪弁護士会の民事紛争処理センターの概要について御説明したいと思います。
当センターは、平成4年3月1日に、少額事件の簡易・迅速な紛争解決を目的として設立されました、「大阪弁護士会仲裁センター」を前身とするものでございまして、平成9年2月に紛争額の制限を撤廃するとともに、従前から行っていた示談斡旋手続も行う総合的なADR機関であるということを明確にするため、現在の名称としたものでございます。
その間、手続につきましても、申立手数料、あるいは期日に出頭しなかった場合のその返金、そういった手続につきましても、より利用者にとってわかりやすく、利用しやすいものにするため、手続規則等の改定を重ねてまいりました。
平成15年度の申立件数は、合計126 件でございます。主として、その類型は、日常生活、あるいは職場における様々な紛争、契約不履行、あるいは損害賠償、不法行為といったものを取り扱ってきております。
なお、当センターに備え置いております「示談斡旋人・仲裁人候補者名簿」には、現在、合計220 名の名前が登録されておりまして、そのうち16名が医療過誤、26名が知的財産権、8名が消費者問題を専門とする弁護士でございまして、弁護士以外の専門職としては、税理士5名、公認会計士5名、不動産鑑定士5名、建築士4名が候補者となっております。 当センターにおきます、この利用の活性化の取り組みについて、続いてお話ししたいと思います。
当センターにおきましては、まず利用者に広く当センターについて知ってもらうための広報を努めてまいりました。具体的には、ラジオ、新聞、それから自治体相談にリーフレットの配布ということをしてきております。
また、会員の弁護士がこのセンターの存在を認知し利用してもらうために、当センターの手続についてわかりやすく説明いたしました「ガイドブック」、それから「仲裁人・示談斡旋人用マニュアル」の配布、弁護士会の「月報」、「会員向ホームページ」での掲載や事例報告集を刊行して、情報提供活動を積極的に行ってきております。
さらに、先ほど述べましたように、運営の経験を踏まえた手続を利用者にとってより使いやすくするための改正等を重ねてきております。
また、やはりADRの命は手続の柔軟性と解決内容の質の向上ということでございますので、示談斡旋人等を対象とした研修会を実施してきております。
また、昨年の新たな取り組みといたしましては、総合法律相談センターの法律相談とは別に当センターの申立てのためのみの相談窓口を設け、当センターの運営委員会の委員が月曜日から金曜日の午後、毎日待機をして、当センターへの申立の相談・助力をするという体制を取ってまいりました。
これらの取り組みの結果、先ほど申しましたように、平成15年の当センターへの申立て件数は126 件に上ったわけでございます。この数字をどう評価するかということなのですが、実は大阪弁護士会の総合法律相談センターの年間の相談件数は、約八万件ございます。
それから、裁判所の民事調停の申立件数に比較いたしましても、この数字はむしろ少ないのではないかと。利用者の潜在的ニーズに十分に応え切れていないのではないかというふうに思われる点があるわけでございます。
このように、センターの利用の増加が十分に図れていない理由として、先ほど申しました、申立相談窓口における相談者の声等からいたしますと、以下の点があるように思われます。
まず、第1点は、当センターについての利用者への情報の提供が十分でない。そのため、ADRとしての特色とか、それから当センターが存在しているということ、それからADRを利用することのメリットということが、利用者にまだ十分に浸透していないのではないか。
第2点目は、ADRの利用というのは、あくまで利用者が紛争解決手段として選択するということが前提になりますが、裁判所の民事調停のように、表現はちょっと適切ではないかもしれませんが、裁判所という権威を背後に持たない民間のADRは、その手続や解決内容の質を通じて利用者の信頼を得るということが一番大切になるわけでございますが、それを浸透させることが非常に困難であると。特に、上述のように、情報提供の不足と相まちまして、利用者からするとその信頼性についての判断が困難であるという点があるのではないかと思われます。
第3点目でございますけれども、ADRによる紛争解決には、時効の中断効、あるいは調停前置の例外の扱い、それから執行力等の効力が付与されていないという点で、裁判所の民事調停に比べると、紛争解決の実効性において劣っているとの認識が利用者にあるのではないか。ですから、すべての利用者がその効力を求めるわけではございませんが、そのような法的効果を望んでいる利用者にとってそのニーズに応えられないということがあるのではないかと思われます。
また、ADRの利用の活性化を考える場合、私は申立件数の増加ということを申してまいりましたが、ほとんどの場合は仲裁のように紛争解決条項が契約の中に設けられているものではなくて、実際には申し立てられて、相手方が応諾するかという、応諾率という問題がございます。現実に、大阪弁護士、それから他の弁護士会の実績を見てみましても、やはり不応諾が30%ぐらいあるわけです。ですから、この利用を活性化するためには、応諾率を向上させるということが大切になると思われます。
当センターにおきましては、応諾率を向上させるために、選任された示談斡旋人が相手方に直接電話をしたり、あるいは手紙を出したりということで、この手続の内容を十分に説明し理解を得るという努力を払ってきております。
しかし、この申立書をお送りして返していただいております回答書によりますと、話を聞いた上で手続に応じるかどうかを決めますという欄にマークをしてくる回答がかなりございます。
このことからも、先ほどの情報の提供と、それから利用者からした信頼性の判断基準ということを与えるということが、応諾率の向上の上でも非常に重要ではないかというふうに考えている次第でございます。
ADR基本法の制定によって、ADRの活性化を図るために、これら現在のADRが抱えている問題の解消にも配慮していただきたいと考えているわけでございます。
そこで、認証制度の導入についてでございます。私は、現時点における現実的な一つの選択肢として、ADR基本法において認証制度を導入することに賛成でございます。ただし、これまで説明者がおっしゃっておりますように、ADRの自主性、多様性、あるいは柔軟性を確保するため、この認証制というのは任意の選択性とするとともに、認証の要件もADRの基本価値である、これらの点を損なうことのないようにすべきであると考えております。
また、その場合の認証の対象者は、個々の手続実施者ではなくADRと事業者とすべきであると考えております。我が国においてADRを活性化するためには、各ADR事業者による手続、及び紛争解決の質、及び利便性の向上のための取り組み、その広報と情報の提供といった不断の努力によって獲得されるべきことは言うまでもございません。
しかし、それに加えて利用者の視点というのを加える必要があるのではないでしょうか。ADRが利用者にとって利用しやすいものであることも必要であると考えます。
この点からいたしますと、認証制を導入することにより、国民一般にADRを選択する目安を提供することは有益なもので、その制度は活性化のための1つの選択肢として評価できるものではないかというふうに考えます。
また、ADRを活性化される上で、上述の現行の民間ADRに法的効力がないという限界を解消し、ADRに時効中断効、調停前置の例外、訴訟手続の任意的中止、執行力の付与等の一定の法的効力を認められることが望ましいと考えられます。しかし、他方でそれを認めることによる利用者の権利を保護するためには、手続の適確性、公正性を確保することが不可欠と考えております。この見地からも、認証制を導入することは必要ではないかというふうに考えております。
次に、認証制の要件について意見を申し述べます。認証制の要件につきましては、先ほど申しましたようにADRの自主性、多様性、柔軟性を損ない、ADRを委縮させるものであっては絶対にならないと考えます。また、今日では国際商業会議所、全米仲裁協会、WIPO等の外国のADR機関にあっても調停手続を備えておりますし、またインターネットによるADRの手続が存在することもございます。
したがいまして、認証制を導入することによって、それらの機関の利用や業務が阻害されることがあってはならないと考えます。
これらの点からいたしますと、個々の事件の処理手続や解決内容に関与するような要件は絶対に認められないというふうに考えます。また、組織、手続規則に関しましても、ADRの自主性・多様性を制約するような条件を求めるべきではないと考えます。
更に、恒久的な物的施設や財産的基礎を厳格に求めることもすべきではないと考えております。
この立場からいたしますと、考えられる要件としては、まず第1に不適格事由のないこと。これが一番大きいのではないかと考えます。
2つ目には、公正かつ適確な業務を行う体制が備わっていること。
3つ目には、適正な手続規則が備わっていること。
4つ目には、業務実施に関する事項についての情報の開示がなされていることをもって足りると考えます。
なお、2の要件につきましては、専門知識を要する多様な紛争を解決するために、弁護士以外専門職が手続実施者となることを許容すべきであると考えますが、その場合も後に述べますように認証制の導入により、認証ADR機関に一定の法的効力を認めることを考えますと、弁護士の一定の関与が必要とすべきではないかと考えます。
次に、認証後のことでございますけれども、ADRの基本的価値を確保し、ADRの業務実施者に過度な負担をかけることを避けるため、ADRの業務実施機関が事件の記録等を作成して保存することを求めることは適切だと考えますが、定期的な報告義務は課すべきではないと考えております。
また、認証要件の適合性や義務の遵守状況につきましても、利用者の苦情申立を端緒として、報告の徴収等で足りるものとし、第三者機関により認証の取消しができるようにすれば足りると考えております。ただし、この場合も個々の事件についての記録、情報については開示義務がないことを明確にすべきであると考えます。
認証制と法的効力の関係でございますけれども、認証制度は利用者の権利を保護しつつ、一定の法的効果を付与する上で必要なものと考える立場でございますけれども、認証の要件を適確性、公正性が確保できる最低限のものにするという私の立場からいたしますと、付与される公的効力は限定的とならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
すなわち、時効の中断効、訴訟手続の任意的中止、調停前置の例外については、弁護士の一定関与を認証の要件とすることを前提といたしまして、すべての認証をADR機関に認めてよいというふうに考えます。
しかし、執行力につきましては、利用者の権利に与える影響も重大でございますので、上述の認証要件のみでは不十分であり、弁護士が手続の実施者になっていること、裁判所の執行決定を経ること等の厳格な要件を定めたものについてのみ認めるのが相当ではないかと考えております。
第6番目に「非認証ADRの取扱い」についてでございますが、ADRが先ほど申しましたように、自主性・多様性・柔軟性を基本的価値とするものであることからいたしますと、認証を受けないADR機関が存在する道を残すべきであり、認証制は任意の選択性にすべきであると考えます。
しかもADR機関が認証を開けていないことを理由として、不当な扱いを受けることがあってはならないと考えております。
例えば、国民にその認証制度の趣旨を周知するとともに、例えば政府のADRアクションプランの下での情報提供や、相互利用の紹介の体制をする上においても、認証の有無のみでその判断をすることは適切ではないというふうに考えます。
それから、非認証ADR機関であっても、適切なものについては総合法律支援法案第7条にございます、裁判外における法による紛争の解決を行う者として、連携の確保及び強化の対象となり得るようにしていただきたいというふうに考えます。
また、こういった非認証ADR機関につきましても、それらを積極的に紹介するなどの施策を講じていただきたいというふうに思います。
以上でございます。
〔質疑〕
○青山座長 ありがとうございました。お三人の方から、ちょうど1人15分ずつ御意見を頂戴いたしました。ここで、お三人の方からいただいた意見に関しまして、委員の方から御質問をさせていただく時間を設けたいと思います。
お三人の方、もうちょっと着席のままお待ちいただきたいと思います。御説明者の都合もありまして、質疑の時間は大変短くて恐縮ですけれども、20分程度というふうにさせていただきますので、御質問をお持ちの委員の方も、御説明いただいた中で不明な点を中心として、ポイントを割合大きく絞っていただいて御質問を承り、更に意見を頂戴したいという形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、今のお三人の方の御意見につきまして、御質問がございます方。原委員、佐成委員、廣田委員の順番でお願いいたします。それでは、原委員、お願いします。
○原委員 2点なのですが、1点は日本商事仲裁協会にお尋ねしたいのですけれども、2のところで国際仲裁について、特にBtoB、それから3のところも関わってなのですけれども、国際仲裁は除外してほしい、それから、3のところでBtoBもできれば開示をかけないで非公開でというふうになっているのですが、私がちょっと気になっているのは、BtoCで国際的な取引のところでBtoCがかかる電子商取引のような場合の調停、これについてはどのようにお考えになるのか、それは除外というふうには私は考えられないように思っていて、この中に入れてくるとすると、非公開では困る、少し開示は必要だと思っているので、特に電子商取引を念頭に事業者対消費者の場合についての対応をお聞きしたいと思います。
もう一点は、大阪弁護士会の方になのですけれども、3ページ目のところで、認証の要件の話があって、私もできるだけ要件はシンプルにして、ハードルは低くというような、仮に認証制度を導入するとしての話なのですけれども、思っているのですが、退出のルールというのをどのように定めるのか。ADRという市場から退出する、それをどういうふうに考えるかということは、非常に苦労をして考えておりまして、これを見ると実際にはそれは利用者の苦情の申し出によるというふうに任されていて、ただ内容的なところには触れてほしくないというような書き方になっています。この利用者の申し出というのは、どこで受け付けるもの。例えば、主務大臣というところなのか、第三者機関というところを念頭に置かれているのかということと。
それから、絶対に開示義務、個々の事件についての記録、情報について開示義務はないということを明確にするというふうになっているのですが、実際に調べたいと思ったときに、全くなしでどうだろうかというふうに思うので、その2点です。お二方にそれぞれ1件ずつ。
○青山座長 それでは、小林さんからお願いいたします。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)ただいまの御質問にありました、電子商取引、特に国際的なBtoCの場合ですが、私どもまだそういったケースを扱った経験もございませんし、非常に難しい点があるものであることは認識しております。特に、国際調停になりますと、先ほどの応諾の点から始まって任意でございますので、どういった扱いができるかという点でございますが、少なくとも現在ベースにございますのはBtoBでございますので、BtoC、不特定多数のCというものについて、我々がそれを扱うべき係争であるのかどうかということも含めて、今後の課題であるというふうに認識しております。
○青山座長 それでは、小原さん、お願いいたします。
○説明者(大阪弁護士会民事紛争処理センター 小原正敏運営委員会前副委員長)原委員の御質問について、補足的に説明させていただきます。
まず、第1点のADRの退場のルールをどう考えるべきかということでございますけれども、今、御質問の趣旨が認証制度の取消しという意味でございましたら、先ほど申しましたように、苦情の受付窓口というものを設けるのがよかろうと。その場合の苦情の窓口というのは、基本的には第三者機関でもいいのではないかというふうに考えております。 ただ、ADRの業務そのものをできなくしてしまうということを退場の中に入れてしまうとすれば、これは制度として設けるべきではないかと考えております。これはむしろ利用者なり情報開示の中で、そういうADR機関というのは利用されなくなる、そのための情報開示は十分にする必要があるのではないかというふうに考えております。
もう一つの個別事件の開示というのは、私が先ほど申し述べました認証の要件としては、個々の解決内容の当否、あるいはその解決に不満があるということを理由にして苦情を受け付けるということは考えておりません。ですから、そういう意味でADR手続、あるいは結論が不当であったかどうかということをチェックするために、個々の記録を見るということはあってはならないことではないかというふうに考えております。
ただ、例えば、ちょっと開示の問題といたしますと、おそらく利用者からすると、このADR機関は大体およそ何か月ぐらいで紛争を解決しているのかとか、どのような類型の紛争を扱っているのかとか、そういったことは知りたいことになろうかと思いますので、そういう類型ごとのデータとか、そういったものは個別事件ではございませんけれども、開示することは必要ではなかろうかと思います。
○青山座長 よろしゅうございますか。それでは、佐成委員、どうぞ。
○佐成委員 認証制度のメリット・デメリットという観点からちょっとお伺いしたいのですが、小原さんは、メリットについて御指摘いただいたので、そちらの組織では認証に前向きというふうに承ったのですが、お二方、小林さんと黒川さんのところは、要するに、仮に認証を申請しなくても、デメリットを受けないようにというところを中心に御意見を賜ったと思うのですが、認証を受けるメリットの方をどのようにお感じになっているかというところをお伺いしたいのですが、それぞれに。
○青山座長 それでは、小林さん、黒川さんの順でお願いいたします。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)現在のところ認証制度、その基準であるとか、報告義務の内容であるといったことがまだはっきりしておりませんので、我々といたしましては結論がある程度見えてきた段階で、我々としてそれを受けるメリットの方があるのかどうかというところを判断したいと考えております。
したがいまして、現状であえて言えばニュートラルと言いますか、その基準、でき上がったものについて、これは我々のADR機関としての自主性を阻害する方が、オーバーオールで大きいということであれば、認証制度はいかがなものかというふうに結論的にはなりますでしょう。そうでないものであれば、これは前向きに考えていく価値はあるというふうに考えております。
○青山座長 黒川さん、お願いいたします。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)認証制度につきまして、メリットというのは多分、法的効果ではないかと思われるのですけれども、この資料に書きましたように、執行力の付与につきましては、現在はPL関係では特に必須とするものではないと考えております。
あと認証制度の申請につきましては、現在こちらもニュートラルな状態なのですけれども、やはり認証制度の体制整備などで、かなりの負担や費用がかかる場合は、またそれを考慮する必要があると考えております。
○青山座長 それでは、廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 いろいろあるのですけれども、三者皆さんにお伺いしたいのですが、資料30-1というのはご覧になった上で臨んでらっしゃると思いますけれども、ここに認証の要件というのが書かれていますが、この認証の要件程度のことは、3つのADR機関ともやってらっしゃるのではないかと思いますが、それはどうでしょうかということが1点です。 それから、日本商事仲裁協会と大阪弁護士会の2つにお伺いしたいのですが、個別案件について秘密が守れないということを懸念されてますね。しかし、クレームというのはまず私の見たところ、個別案件にクレームが来ます。個別案件についてのクレームが出ると、それでそれについて報告徴収とか検査が行われるということになって、それを懸念されていると思うのです。
それがあるべきではないというのが、両方の御意見ですけれども、仮にその個別案件まで調べるということであれば、認証制度について反対なさるのかどうか、それが2つ目です。
それから、日本商事仲裁協会にお伺いしたいのですが、国際調停というのが今後はかなり多くなると予想されていると思うのですが、この国際調停の場合でも認証は支持を受けないという懸念があるのではないかと思われますが、その点はどう思うかということが1点です。
もう一つ、商工会議所法に国内調停、国内仲裁が定められています。全国500 以上の商工会議所があります。その中の半分以上は、日本商事仲裁協会に委託契約をなさっていますから、それはそこでやることになると思うのですが、そうではないところで、もし認証制度が設けられたら、商工会議所はみんな認証を受けなければいけないのか、あるいは認証を受けるところと受けるところが出てきて混乱が生ずると思うのですが、その点はどう思いますかということです。
あと個別的に伺いたいことは、PLセンターにお伺いしたいのは、時効中断効は法的効果としては場合によってはあった方がいいというお話でしたが、時効中断効になりますと、調停になってからの話だと思うのです。これは資料を伺いしますと、年平均3件ぐらいですね。それともう一つ、相手方が企業になりますが、仮に短期消滅時効だとしても、PLセンターでは時効を援用することはまず少ないのではないかと思うのですけれども、そういう意味では大したメリットがないのではないかと私は思っていますが、その辺はいかがでしょうかということです。
それから、大阪弁護士会にですが、弁護士自治と大臣が認証するというのは私は矛盾すると思っているのですが、その点はどういうふうにお考えですかということです。
それから、もう一つ法的効果が賛成の意見の中心になると思いますが、1つは。
○青山座長 その御質問は、どなたに。
○廣田委員 小原さんです。その点は、調停前置とか中止は認証がなくても、黙って大体できることだと思うのです。
それから、執行力については、仲裁法がありますから、弁護士会としては大体仲裁法の38条を使えばできます。そうすると、法的効果としては時効中断効ということになると思うのですが、これは認証に絡めないでそういう制度が設けられれば、それはそれでいいというお考えかどうかです。
最後の質問は、やはり大阪弁護士会なのですが、法的効果が伴うと、先ほどの応諾率のことなのですが、相手方がかえって法的効果が及ぶことをおそれて応諾しないのではないか、逆に応諾率が下がるのではないかということも懸念されますが、その点についてはどうお考えか。たくさんありますけれども、一応そんなところです。
○青山座長 たくさんの質問がありますが、第1点からずっとやるのではなくて、お一人ずつやっていただきたいと思います。
第1点は、3人の方へ。第2点は、お2人の方。第3点は、小林さん。第4点は、PLセンター。第5点は、大阪弁護士会。そういうふうになっていたと思いますが、自分に向けられた質問は全部まとめてお答えいただくという形にさせていただきさせていただきたいと思います。
それでは、小林さんの方から、よろしくお願いいたします。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)まず、最初の御質問の資料31の点でございますが、ここで掲げられております項目がポイントになるということはそのとおりで考えておりますが、最後につきましてどうなるかというのを、我々としては慎重に見ていきたいというふうに考えております。
また、これ以上の項目について、認証の条件であるとか、報告義務であるとかいうところは、もう出ないものというふうに、この中でこれを全部認めるか、どういうふうに認めるか、認めないかという議論になるものだというふうに理解しております。
○廣田委員 質問の趣旨は、今でもこの程度の要件のことはやっていらっしゃるのではないかという質問なのです。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)これはやっております。ただ、そのための報告用の書類とか、そういったものの作成というのは、必ずしもそこまでいってないものもあるかもしれませんが。
次の御質問で、個別案件までもし踏み込んで調べるとしたら、認証制度を受けるかどうかという点だったと思うのですが、これは非常に難しい問題でございまして、特に国際関係の絡んだ件にも関わってくるということになりますと、この場で私がにわかに答えられるべきものではございませんので、慎重に検討しなくてはいけないと。
この国際関係でございますが、調停についても今後増えるのではないかという点ですが、少なくとも国際案件である以上、調停についてもやはり海外から見ますと、仲裁と同じような懸念というのは防げないのではないかと考えております。
それから、商工会議所の点でございますが、確かに先生おっしゃりますとおりの実態でございます。ただ、現状を申しますと、各地の商工会議所、五百数十あるわけですが、その財政的、人員的な制約もありまして、商工会議所法に定めております、斡旋、調停、仲裁業務を必ずしもやっていない会議所もあるわけでございます。ただ、これからやっていこうという会議所につきましては、これは私どもが商工会議所と連携してADRを実施するという基本的な枠組みを考えておりますので、私どもがもし認証を受けるのであれば、それで足りるのではないかと。各地の会議所が個別に認証を受ける必要まではないのではないかというふうに考えております。
ほかに何か。
○青山座長 それでは、黒川さん、お願いします。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)まずはじめの質問の資料31の要件につきまして、じっくり検討はしていないので、あまり明確には回答できないのですけれども、かなり努力すればその要件を満たせるのではないかと思われます。
あと、時効の中断に関しましては、先生おっしゃるように当センターの方で迅速な処理を行うことで、そういった両者の不利益を回避できるというふうに考えております。
○青山座長 それでは、次、お願いします。
○小原運営委員会前副委員長 まず、現行の確立した仲裁機関では、この程度のことをやっているのではないかという点については。
○廣田委員 私の質問は、大阪弁護士会でやっているかということです。
○説明者(大阪弁護士会民事紛争処理センター 小原正敏運営委員会前副委員長)やっております。ただ、私が申し上げたかったことは、この認証の要件としては、これまでどおり普通にやっておれば認証を受けられるというようなものを認証の要件にすべきであるということを申し上げたかったということでございます。
それから、苦情申立では個別案件が当然問題になってくるのではないかというお尋ねでございますが、私が先ほど申しました認証の要件からすると、個別案件に対する不服は、これは私が申しました苦情申立の対象にはならないと考えるべきだと思います。
ただ、個別案件について審査をするということが要件になれば、私は認証制度に反対でございます。
それから、弁護士自治との関係でございますが、この点につきましては、ADRセンターの認証の基準として、私申しましたような情報開示、あるいは不適格者の排除といったものを要件にするということと、弁護士自治の問題には何ら抵触はしないのではないかというふうに考えております。
法的効果との関係でございますけれども、私は先ほどADRの拡充・活性化のために3点申し上げましたが、委員がおっしゃいますように、この法的効果が最も大切であるという意味ではございません。やはり私はこの利用を向上させるためには、利用者の視点というものをしっかり持っていただく必要があるのではないかということを申し上げたかったわけでございます。
御指摘のように、個々に指摘されております法定効果につきましては、他の方策によってそれを賄うということは可能なことは私も承知しております。ただ、手続の説明の過程で、これは法的効果はございませんというようなことを、事前説明の中で言うことが果たして利用者にって、プラスに働くかマイナスに働くかというかを考えると、私はやはり法的効果というものは認められた方がよいのではないかというふうに考えております。
ただ、最後の御質問にございましたように、ではこの手続に強制執行はされるかもしれませんよ。あるいは、あなた時効にもう少しかかるかもしれないのに、時効が中断してしまいますよと、そんなことを言ったら応諾率が下がってしまうのではないかという御懸念だったと思うのですけれども、私は、ただそれも総合的に考えればいいと思っております。 と申しますのは、ADRが申立てられるような紛争というのは、ここで解決できなければ裁判に行くわけであります。ですから、ADRで解決することのメリット、例えば柔軟な解決、あるいは判決では得られないような解決があるのだということを、手続実施者が意を尽くして説明することによって、その応諾率というのは、仮に時効中断効が認められたとしても、致命的な応諾率の低下を招くことはないのではなかろうかというふうに考えております。
○青山座長 それでは、引き続きまして、髙木委員、お願いします。
○髙木委員 商事仲裁協会とPLセンターにお尋ねいたします。いずれも既に社団法人、財団法人であり、監督官庁の監督を受けておられるという立場ですから、現在どうなさっているかということをお尋ねしたいと思います。先ほど商事仲裁協会では報告にかなり時間と手間をかけているとおっしゃいましたけれども、事業報告として、個々の紛争事案について何らかの情報を開示するような報告が今あるのでしょうかということが1つです。
それは、PLセンターの黒川さんの方も同じです。
もう一つ、公益法人として監督を受けているということが、実際の紛争解決について何らかの影響があると、実質的な解決を阻害するような影響があるということがありますでしょうかということが2つ目です。
もう一つは、弁護士法72条の問題です。
○青山座長 それは、誰に対してですか。
○髙木委員 両方の方です。お二方とも弁護士の関与のあり方については、各ADR機関の判断に委ねられるべきであるという御意見だったと思いますけれども、もしそれぞれの機関において、ADR機関の判断に委ねられた場合には、弁護士の関与についてどういう実務運営をなさるおつもりなのか、どういう場合に弁護士を関与させるとか、こういう場合には弁護士は関与させないということを、具体的に教えていただきたいと思います。
○青山座長 今度は黒川さんの方からお願いいたします。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)まず始めの、何らのこちらの相談事項の報告、現在、行っている報告としましては、お手元の資料に参考までにグリーンのペーパー、「PLセンターダイジェスト」ということで、これは各都道府県の消費生活センター及び調停に関わります委員の方々、関係官庁、関係団体等に報告をさせていただいております。
○髙木委員 主務官庁に対する報告もこういうものなのでしょうか。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)はい。また、公益法人としての認証制度は何らか阻害するかということですけれども、例えば、その反対の認証のメリットが少ないということと、PLセンターは財政基盤が脆弱だということから、やはりこういった体制整備などにかなり費用、負担がかかるのではないかと考えております。
あと、どういう場合に弁護士が関与するかということですけれども、調停は勿論関与しておるのですけれども、そのほかに相談等で必要に応じて顧問弁護士に相談するということで対応しております。
○髙木委員 2番目のお答えは質問と違うと思ったのですけれども、監督官庁があることによって紛争解決のあり方が変わりますかという質問です。現場の担当者が監督官庁があることでやり方が違うとか、結果に影響するということがありますかと。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)それはございません。
○髙木委員 それから、3番目は「必要に応じて」とおっしゃったところを、もうちょっと教えていただけるとありがたかったのですけれども。どういう必要があるときに弁護士の関与をさせるのか。
○説明者(消費生活用製品PLセンター 黒川秀一事務局長)相談等で法定解釈が必要なときに弁護士に相談しています。
○青山座長 それでは、小林さん、お願いいたします。
○説明者(社団法人日本商事仲裁協会 小林正浩ADR推進部長)まず第1点でございますが、公益法人の報告として監督官庁への報告として、個別案件に対する情報は一切現在も出しておりません。あくまでも統計的に処理されたデータとして、例えば、国際仲裁であれば、どこの国から当事者があったとか、取引の形態、ライセンスであるとか、代理店であるとかいったもの。それから、件数が何件あって、どういう結果に終わったかという、あくまでもそういう具体性を払拭したような形の数字としては、御報告申し上げております。
それから、第2点の監督官庁が存在することによって、ADRの中身と言いますか手続が、担当レベルで違ってくるかどうかということですが、これはそういうことはないと考えております。私ども機関としては、あくまでも中立的な立場で、公正にADRが遂行されることを文字通り見守ると言いますか、そこを確保するところでございますので、監督官庁がどこであるとか、ないとか、そのことを念頭に置いて手続における相談であるとか、そういうものに対応したことはございませんし、これからもそういったことは一切ないというふうに確信しております。
最後の点でございますが、これが一番難しい御質問で、弁護士の関与というところで、現在申し上げられますのは、必要に応じてというような言葉になってしまうのですが、案件の中でもある特定の法律の解釈が焦点になって、その解釈がすべてを決するというような案件がもし出てきた場合で、かつ主宰者に弁護士が一人もいないというようなことであれば、これは場合によってはそういった必要性のある具体例になるかなと。
先ほど申し上げましたように、企業対企業というのは、権利・義務の世界と同時に、やはり損得勘定でございますので、そこは権利は権利、義務は義務として、オーバーオールで、考えるとこういう解決がいいのではないかといった、そういった業界と言いますか、企業人の判断ということは私たちもなるべく尊重していくことがADRの活性につながるのではないかと考えております。
○青山座長 ありがとうございました。時間の関係もございますので、質疑はここで終了させていただきたいと思います。御出席いただきました3名のお方は、本当にお忙しい中を貴重な時間を割いて御出席いただきましてありがとうございました。委員を代表いたしまして、心から御礼申し上げます。
それでは、後半で引き続きましてお二方から御意見を賜りたいと思っております。ちょっと席の整理がありますので、ちょっとお待ちいただきたいと思います。
(説明者移動)
○青山座長 それでは、次のグループの皆様から御意見を頂戴したいと思います。初めに私から御紹介申し上げます。
全国消費者団体連絡会事務局の有田芳子さんでいらっしゃいます。
英国仲裁人協会東アジア支部日本分科会委員長・外国法事務弁護士のリチャードA.イーストマンさんでいらっしゃいます。
本日は、お二方には御多忙の中を御出席いただきまてし、大変ありがとうございます。それでは、早速有田さんの方が御意見をいただきたいと思います。15分ぐらいでお願いいたします。
〔全国消費者団体連絡会〕
○説明者(全国消費者団体連絡会事務局 有田芳子氏)どうぞよろしくお願いいたします。私は、簡単な資料を資料31-4ということで提出させていただいておりますけれども、まずこの間、消費者の立場として司法制度改革審議会や検討会に意見を出してきましたので、その観点から先にお話しをさせていただきたいと思います。
司法制度改革審議会の裁判外紛争処理手段に関する意見の中間報告における指摘事項についてという中で、消費者、利用者の意見をまとめたものがありますので、それをちょっと読み上げます。
例えば、紛争解決手続については、多種多様なものが存在する方が、当事者の選択に役立ちますし、今後の実践と研究を通じて、新たな手続が考案されることも考えられます。手続に関するルールの検討に当たっては、上述した意味で共通定義の確立と多様性への配慮という2つの観点が必要と考えます。
というような形で出しておりますし、それから、まずADRを法律扶助の対象としてほしいということとか、時効中断効、または時効停止効を付与することについては、基本的には賛成するけれども、今のような状況の中ではまだ時期尚早ではないかというようなことなどを意見として出しています。消費者、市民の資力の状況によってはADRの利用についても扶助が必要となる場合があるということを言っています。
こういうような意見を出してきました。今回、認証制度というお話が出てきたということなのですが、消費者団体連絡会の中で消費者のADRというか、今の専門家の皆様の相談や、ADRを受けた方々のヒアリングなども行いながら、自分たちが利用者としてどういうふうにしていったらいいかという検討をしていった中で、専門家の方たちに非常に不信感と言うか、説明の仕方や第三者の在り方に対して不満の声が上がったというのが事実です。
今日、私が資料として出している2番目のところなのですが、公正とか適確というような意味において、例えば、どういう資格を持っていれば、それが公正や適確というふうに信頼されるのかと言えば、例えば、弁護士の資格を持っているからとか、そういうことではないという自分たちの研究会でいろいろ話を聞いていて思いました。
そういうことと、あと、実はこの話が司法制度改革審議会で話されるに至った前提に、規制緩和というようなことがあったと思うのです。私たちはそれも見据えて、すべての規制緩和がいいとは思わない。公的事業の中では規制緩和は必要だと思うし、また環境などの視点については規制は必要だと思ってきたのですが、ADRについては規制緩和の中身だというふうにとらえていろいろ話をして、利用をする側がいいというふうに思えるようなADR、それから裁判と並ぶようなものだろうというふうに議論してきました。今回、規制緩和という視点が外された。一言申し上げますと、認証制度は消費者が信頼に値することの一つなのかなというふうに考えるとともに、ではこれは新たな規制ではないのだけれども、国が規制緩和の流れとは逆行しているのではないかというような、イメージを持ちました。
2番目に戻りますけれども、自主性・多様性が尊重されるべきADRのどの部分が公正で適確でなければならないか。自主性ということで言えば、ADRを受ける利用者の自主性もあるでしょうし、ADRを行う供給者というか、主宰者の方もやはり自主性ということが必要だと思います。多様性について言えば、ADRの主宰者の多様性が尊重されるべきだろうというふうに思います。公正・適確という事を認証を前提に考えますとその認証で公正・適確が保障されるのかどうかということは、幾ら考えても疑問です。というのは、NPO法人の認証制度でNPO法人取得団体が、信頼に値するかどうかというのは、また別のことからです。
ただし、3番になりますけれども、公正・適確で、ADRとして信頼できるようにするには、例えば認証制度を導入したとして、一番チェックしていただきたいのは、反社会的行動をおこす人などが構成メンバーにいないかなどです。どういうふうに調べるかというのは別ですけれども、そういう危ない人たちが入っていないかとか、やはり利用する側としては知りたい。けれども、そういう情報というのは、どこで調べて確認するのか。個人情報にもかかってくるのではないかと思いますと別の観点から言えば不安は不安です。
4番目として、公のバックアップとして必要なことは何かと考えたとき、、私が利用者とすれば、いろいろな機関というか、ADRを渡り歩くということではないですけれども、まず相談してみて、ここが信頼できるなと思ったときに、相談の費用についてはすぐにどれぐらいかわからないわけですから、そのときに利用する立場として扶助があればいいなというふうには思います。
1、2、3、4というふうに話してきましたけれども、実は認証制度が前提として議論されているというふうに考えてここに臨んでいますので、認証制度がいいか、悪いかというよりも、認証制度がもしこの検討会の中で進められるという話であれば、どういうものであれば利用者としてはいいかというふうにお話をさせていただきたいと思います。
ちょっと前に戻りますけれども、ADRというのは、、認証制度にはそぐわないという話も聞いています。認証制度の要件としては考えられることということでお話ししますと、一応最低限の条件で、こういうところが機関としてあるというようなわかるものであればいいというふうに思うのです。
よく全国消団連にも相談などが入りますけれども、どこを紹介してくださいといったときに、例えば、PLセンターでも非常に信頼できるPLセンターだというふうに思っているところは、まずはそこに相談してみたらどうですかとか、一般的に消費者生活センターを御紹介することが多いです。ですけれども、それが相談であって、それから先どうするかというのは、また別だと思いますので、認証制度の要件として考えられることとすると、やはり先ほど言った変な人がいないというか、あそこはそんなに変な人たちがやっていませんよということが紹介できるところ、例えば、消団連に聞いてきたときに、相談センターという意味ではなくてADRの機関として、あそこは大丈夫ではないでしょうかと。そういう情報。
それから、それ以上のことは、それぞれのADRの機関が努力すればいいことではないかと。情報としてはですね。ですから、私たち消費者団体、よく情報開示、情報開示と言うのですけれども、情報開示という点においては、その中でやはり個人情報に触れない事が必要です。どうしても全部の消費者に関わる問題だと言うとき、もう一方で団体訴権が検討されていると思いますが、、そういうものに関わるものではないかということについては、情報がオープンにされる事は必要だと思うのです。けれども、相談者のそれぞれの情報は出ないという形で行なわれる事は当然です。、ですからADRの情報として私たちが欲しいと思うのは、どういう人たちがやっているかとか、本当に最低限でいいと思います。
それで、例えば、どういう相談を受けて、どういうトレーニングをしている人たちなのだろうとか、知りたいと思う情報はそんなものかなというふうに思うのです。認証を受けた者の義務として考えられることは、今、申し上げたようなことが、1年に1度どこかで情報としてちゃんと出されるというようなことかなというふうに思います。
いろいろ考えて、専門家が信頼できないとか、様々なことが出てきても、実際問題消費者から出てくるのが、認証制度がいいか悪いかというよりも、やはり信頼できるところをどう保証してくれるのですかというようなことでしょう。実は先ほどヒアリング対応をされていた方たちと同じように、何とも言いようがないところがあるというのが事実です。けれど一般的にこれから利用しようという人たちは、認証制度を信頼の証として見るという声が出てくる可能性もあるというのは、否定はできないと思います。
「認証後は監査・監督はどこが行えば信頼に値するか」ということなのですけれども、これも私たちもいつもコミュニケーションを取っている省庁とか、そういうところは非常に信頼するのですけれども、何か事が起こるとすぐに行政だからといって必ずしも信用してないところがあるのですね。ですから、行政が監督していますとか、監査していますといっても、それがイコール信頼に値するかどうかというのは、何とも言えないのです。ただ先ほどから申し上げているように、ADR機関でいろんなものが出てきたときに、自分たちがだまされるのではないかというような声が出てくるとしたら、一定最低限のラインというか、それで縛りをかけない認証が必要ということになるのかなと思います。
それから「その他」ですが、検討会でいろいろ認証制度を議論されているということを伺いまして、もしそうであれば、どういう認証制度であれば自分たちが受けたくなるか、既にADR機関を動かしている人達で構成した、ワーキンググループで、検討していただければと思います。
そして、弁護士法72条の関係で言えば、私が実際会員となっているある医療関係のADRでは、法的な資格は持っていませんけれども、相談とかそういう第三者となり得るトレーニングは積みながらも、何かのときのために弁護士さんはそのグループの中にいて、相談というか、バックアップができるような体制を取っているところもあります。必ずしもADRの第三者になる方が、法律的な資格を持っている必要はないというふうに思ってはいます。認証制度ということで考えれば、多分、事務局の方はお困りかなと思うのですけれども、私も実際に多くの方に聞いたわけではないので、何とも言えません。けれども、多分このヒアリングの後パブリック・コメントなどを求めれば、認証制度がいいという多くの声が出てくるかなとは思うのです。
今までの流れの中で感じていることで申し上げました。
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、続いて、イーストマンさんに、よろしくお願いいたします。
〔リチャードA.イーストマン氏〕
○説明者(英国仲裁人協会東アジア支部日本分科会委員長・外国法事務弁護士 リチャードA.イーストマン氏)本日、御招待いただきましたイーストマンですけれども、やはり招待いただいて、検討会の皆さんの前で自分の意見を述べさせていただいて、本当に光栄です。しかし、日本語で話しますから不自由なところがあったり、わかりにくくなるところがありますので、御了承願います。
まず、時間が限られていると認識していますけれども、私の経歴を簡単に説明すれば、私の立場をもう少しよく御理解いただけると思いますけれども、私は38年前からカリフォルニア州の弁護士になりまして、その38年の弁護士生活の中で、7割か8割ぐらいを占めた仕事の国際取引案件では、日本の企業が主な依頼者で、今日でも同じ状況です。
それで、裁判所外の紛争解決の経験と言いますと、代理人の経験もありますし、仲裁人の経験もあります。その経験の中で、例えば、日本商事仲裁協会の仲裁事件の代理の役割を果たしたり、仲裁人の役割も果たしたことがあります。東京では、ICCの仲裁事件の仲裁人の経験もあるし、それからアド・ホック仲裁の仲裁人の経験も東京でやったことがあります。アド・ホックとは、皆さん御存知かと思いますけれども、管理機関などは無く、仲裁人が主に管理している仲裁手続です。
なぜ、それを説明しますかというと、まず、私は自分が日本に対して、または日本のビジネスや、日本の企業に対して、非常に友好的な立場から話したいと思います。または、特に、国際仲裁の分野に対しては、ある程度経験者だということはわかっていただきたいと思います。
今日は、3つの重要な点を述べさせていただきたいと思います。
その第1は、認証制度に対することです。認証制度、私がわかっている限り、このADR検討会は、これから、ADRの裁判外紛争解決の案件を管理している機関の方に、認証制度を導入しようという案を今、御検討なさっていると聞いております。まず最初の重要な点は、それはやめてくださいということです。
なぜかといいますと、2つの理由を説明したいと思います。 まずは、必要がないのです。アメリカ、欧州、その他の諸国では、盛んに仲裁、その他の調停などの紛争解決方式が盛んに使われているのに、こういう認証制度は、中国を除けば、世界中には無いと思います。特に、ADRが盛んに使われているアメリカには、そういう認証制度はございません。
第2の理由は、こういう認証制度を導入すると、これからの日本でのADRの発展が妨害されることになる。なぜかと言いますと、私は経済学者ではないのですけれども、是非このADR検討会は、この案は経済学者からの評価を聞けばいいと思うのですけれども、まず認証申請などは、時間やお金がかかるのです。
そして一度だけではなくて、引き続き、毎年の手続があったり、それは認証申請を出す機関に対して、お金がかかり、そのお金を利用者に費用として請求しなければならなくなるのです。また、こういうADR業務の分野に入るのが難しくなります。ですから、そのためにも非効率的な制度になると思います。それが、最初の、一番重要な点です。
第2は、ADR基本法の一番望ましい性格というと、まず、ADR業務の基準、例えば、主宰者の倫理、エティックスの基準、それから利用者の保護、例えば、手続で得られた情報の秘密性などの条項は必要になると思います。
それで一番重要なのは、先ほどの説明者も述べていましたけれども、弁護士法第72条。または、海外からの例を述べさせていただきますと、私が知っている限りスペインは例外みたいですけれども、スペインを除いて主宰者は現地の弁護士資格は必要だという法律の国は、今のところは全然ないです。だから、第72条のADRの主宰者は弁護士でない者はできないという解釈は、もしかすると日本でのADRの発展を一番妨げる問題ではないかと私は思います。
第3点は、それに入る前に、やはりADRそれぞれあるのです。利用者はBtoB、つまり企業間の紛争、それから企業と消費者の紛争、それから国内紛争と国際紛争、それぞれあるのです。だから、消費者問題を特別扱いする必要はあるかもしれませんけれども、国内BtoBと国際紛争解決について、自由な制度は必要だと思います。だから、検討会の皆さんはやはり、日本国内でどうしても認証制度を導入すべきだという結論になるとすれば、少なくとも、国際分野、つまり外国の企業と日本の企業間の紛争解決、仲裁、調停など、除外するように是非お願いします。
その除外する意味の中に、第72条の解釈を明確にして、主宰者は日本の弁護士でなくてもいいようにできることは明確にしていただきたいと思います。
認証制度は、任意的にするか義務的にするかについて検討中であると、私は理解しているのですけれども、やはり、72条の問題はそのまま残ると、任意的としても、疑いがあるのです。例えば、ICCの仲裁手続は東京で行うと、そして、有名な欧州の学者であっても、仲裁人の役割を果たせば日本国内で犯罪になるという疑いがあるのです。そういう状態になると、ますます、日本での国際仲裁案件は減ってしまうのです。それは日本の企業、日本の弁護士、日本の社会のために良くない結果です。
その手続は、世界のどこでも行われるのに、日本では行われなくなる。私含めて、それは非常に困った結果ということになりますから、是非御検討をお願いしたいと思います。
簡単ですけれども、以上のとおりです。
〔質疑〕
○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、お二方の御意見を承りましたので、またここで各委員の方から御質問があればお願いしたいと思います。これも大変時間が切迫していて恐縮でございますが、質疑の時間は20分程度にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○説明者(英国仲裁人協会東アジア支部日本分科会委員長・外国法事務弁護士 リチャードA.イーストマン氏)言い忘れたのですけれども、今日の指摘した内容は文章化されてないのですけれども、もし頼まれれば喜んでまとめてお送りさせていただきます。
○青山座長 ありがとうございます。
原委員、どうぞ。
○原委員 考えが足らない質問をいつも最初にしておりますけれども、イーストマンさんに2つお聞きしたいと思います。
1つは、認証制度の導入に反対ということですね。ここのADR検討会でも、最初の議論のうちは認証制の話をしていなかったですね。特に学者の方々を中心に認証制度は要らないと言うか、そういう話を全然してきていなかったというところがあって、国際的な議論の中では非常に馴染まない制度だということは十分認識をしております。それは、ここにいるメンバーもほとんどそういう意見の人たちが多かったというふうな感じがしております。ただ、議論の後半になってきて、今おっしゃられた、特に弁護士法72条の問題が大きいと思うのですけれども、事前認証制の話が登場してきたということがあって、皆さん積極的に認証制ということでの議論をしているわけではないというふうに私は思っております。
そこで2つの質問なのですが、1つは、消費者問題については特別にBtoCですね。事業者対消費者の問題については、特別に考えていいのではないかというお話があったのですけれども、これはアメリカなりヨーロッパなり海外でも、特別に考えてそういうADRの仕組みをうまくつくっているような例があれば御紹介いただきたいというのが1つ目の質問です。
それから、もう一つの質問は、国内と国際とを分けて考えてみたらどうかと、国際取引の場合は除外してほしいという御意見があったのですが、消費者対事業者のトラブルの中でも電子商取引、これはBtoCであっても国際取引が多いのですが、これについてはどういうふうな手段、方法がいい、紛争解決の方法がいいというふうにお考えになっていらっしゃるかという、その2つをお聞きしたいと思います。
○青山座長 どうぞお願いします。
○説明者(英国仲裁人協会東アジア支部日本分科会委員長・外国法事務弁護士 リチャードA.イーストマン氏)海外の消費者が関わっている紛争解決方式はどうなっているのかと、例があるかないかということですね。
勉強不足もあり、まとまった答えはできませんが、アメリカでは、数年前から、特に仲裁の場合はですね、例えば、フロリダ州に本社がある会社は、そこから遠いワシントン州に住んでいる消費者に物を売って約款の中に仲裁項目が入っているとしましょう。それは、裁判所ではやはり実施できないという判決も出始めているのです。
だから、消費者または雇用者に対する仲裁項目の効力性は、今、灰色のグレー・エリアに入っているのです。それは、消費者または雇用者の保護のために、不合理な結果になると裁判官たちは嫌っているからです。でも、まとまった制度には、今のところなっていないと思うのです。州ごとにいろいろ違いますが、問題としてはアメリカでも認められています。
第2の質問は、電子商取引の場合、BtoC取引などで、例えば、日本にいる消費者が欧州から物を買ってとか。私は、この問題に対して、在日アメリカ商工会議所の方針とかよくわかっていませんけれども、個人としてはそういう、まず本当にそのケースはこれから増えるでしょうけれども、今のところはあまり問題ないのではないですか、金額も少ないのではないかと、現実的にどこまで問題になっているかというと疑問ですけれども、私の個人的な意見としては、例えば、ニューヨーク条約に従いまして、そういう仲裁項目は、日本のパブリック・ポリシー違反ですから、仲裁判断も執行力はないということにすればいいのではないかと私は思います。
○説明者(全国消費者団体連絡会事務局 有田芳子氏)原さんは、私への質問ではなかったのですが、イギリスの状況を調べてきたものですから、発言させてください。イギリスがADRに認証制度を始めたということだったので、その状況がどういうものになっているかということを、今年の春調査した方に伺いました。それを聞きまして、認証制度について、ますます悩んでしまいました。イギリスのクオリティーマークとか、そういう認証制度が始まったことによって、多くのコミュニティー型認証制度センターが回らなくなったり、いろんな状況があるそうです。詳しいところまでは聞いてないのですけれども、要するに、取得するのは自由という政府の考え方だったらしいですけれども、結果的に多くの実質的な機関をつぶしているのが現状だというふうに伺いました。
そういうことですので、現状イギリスはそうだということらしいです。
○青山座長 ほかに何か御質問ございますでしょうか。
廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 有田さんに1点伺いますが、先ほど変な人がいないということですね。これは確かに重要な要素だと思うのですが、仮に認証があってもなくても、例えば、変な人がいて、監禁をして、それで強引に脅迫的な調停をすれば、今の法律でも、例えば、法律違反、あるいは公序良俗違反になります。今の法律でも民事的、あるいは刑事的な責任は問われるわけですね。それは問われなければいけないと思うのです。今の司法審査、裁判所で審査できるという前提です。それはあり得る話なのです。私はそれで十分で、そちらの方が効果があるので、認証制度で仮に認証を取り消したって、それは痛くもかゆくもないことで、かえって有効性がないと思っているので、有田さんのお話はそういうことを前提にしないでお話なさったと思って聞いていましたけれども、もし司法審査できちんとできれば認証制度が必要かどうか、その点の御意見を伺いたいのです。
○説明者(全国消費者団体連絡会事務局 有田芳子氏)もしそういうことであれば、一方で認証制度は必要ないかなという考えも出てくると思います。ただ、普通に利用する方がどんなふうに見るかというと、認証が本当に信頼できるかどうかというのを別にして、認証制度が信頼の証であるという事で見てしまうところはあると思います。
今おっしゃったようなことも、一般の消費者は知らないですし、ですからそういうことがもっと知られることによって、実は不安は払拭されるところもあるかもしれないですけれども、そういうところがあまり伝わってないということが、信頼するということに対して何かマル適マークとか、そういうことをすぐ考えてしまうというのはあるかなと思います。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
○説明者(全国消費者団体連絡会事務局 有田芳子氏)最後に認証制度が前提として今後検討されるのであれば、是非お金に関しては、本当に利用する側に何とか回るような形は考えていただきたい。それから最終的に認証制度が、良い、悪いの議論は別にして、ADR認証のあるべき姿として、何度も言うようですが、最低ラインの要件で、議論して頂きたいと思います。ただ、イギリスの例も聞くように、本当にそれが実質的で、活発で多様性のあるADRを推進することに当たるのかなというふうなものを感じて、悩んでいる状況です。
○青山座長 ほかに何か御質問ございますでしょうか。それでは、特に御質問もないようですので、質疑はこれで打ち切らせていただきたいと思います。御出席賜りましたお二人の方には、貴重な時間を頂戴して、貴重な意見をお述べいただきました。本当にどうもありがとうございました。委員を代表して御礼申し上げます。
(説明者退室)
○青山座長 それでは、まだもう少し時間ありますので、よろしくお願いいたします。
本日は、今お聞きいただきましたように、民間の紛争解決機関、それから利用者としての消費者団体の方とか、仲裁人としての実務経験者の方々から、紛争解決業務についての認証制度の導入等に関しまして、幅広く御意見を賜り、質疑応答をさせていただきました。終了の予定時間が迫っておりますけれども、もうちょっとお時間をいただきたいと思います。前回までに、まだいただいていない御意見がございましたら、検討会の残りの回数も限られてまいりますので、本日若干の時間を利用して意見を賜りたいと思います。前回までに特に御発言、この点はということをいただいていない意見がありましたら、その点について御意見を賜りたいと思っております。
どうぞ。
○三木委員 これだけ2年間やってきたので、全く触れていないということは考えにくいので、そこを強調しては言ってないというところでよければ申します。
○青山座長 時間の関係もありますので、ごく簡単に言っていただけますか。そういうことであれば、どうぞ。
○三木委員 前回も少し関連したことは申しましたけれども、認証を前提に議論していく場合に、今日のヒアリングでもそうでしたし、これまでの議論でもそう感じることが多かったのですが、時効中断効等の法的効果の付与の問題、認証をくっ付けるのが望ましいかというのと、弁護士法72条の免除の効果をくっ付けるのが望ましいのかというのは、やはり分けて議論をした方がいいと。つまり認証を認めるか認めないかという両者をごっちゃにして議論をするというのは、おそらく議論を誤らせるのではないかという意見を持っています。
少しだけ、1、2分だけ確認になりますけれども申しますと、私の記憶ではそもそも認証制度がメリットがあるという議論をされる方も、これまでほとんどの場合時効中断効等の法的効果を例に出して、念頭に置いて議論されてきたと思うのです。ペーパー等を見ましても、以前に出た日弁連のペーパー、それから今日、大阪弁護士会からも出ていますけれども、どちらも時効中断効との関係で認証を支持する面があるということは述べておられますけれども、72条にはどちらも触れておられないです。特に弁護士会の意見には一切触れておられないと。
したがって、72条との関係でもそこを支持するか。あるいは、認証制度に72条免除の効果を入れるかという点は、今まで御意見を聞いた方とか団体でも、ちゃんと意見を伺ってないことが少なくもないと思います。
それから、この検討会の委員の方々の御発言でも、時効等の関係で認証がいいという御意見は私も何度も伺っていまして、両論ありますけれども、72条との関係でいいという御意見を積極的におっしゃった方はいないように私は記憶しております。72条と時効中断効はベクトルの方向は逆なのだと私は思うのです。
と申しますのは、認証制度というのはある意味ではかなり荒っぽい制度で、荒っぽいという意味は、認証を受けてしまえば、その後手続がどう行われようと、あるいは人がどう代わろうと、取り消されるまではいろんな効果が一律に付与されると。その点を時効中断効の場合には、一種のそれはメリットであるという御発言はあったと思いますが、山本委員なのかもおっしゃったと思いますけれども、当事者は時効中断効があるということを信頼して、その機関を利用するのだから、後で手続がおかしくなっても中断効というのは付与されるべきだと。
つまり、認証によって一律に画してしまうことで、利用者である国民を守るという効果はあるという議論が正しいかどうかは別にして、そういう議論は1つあるのは確かですね。 これに対して72条の方は、これはもともと72条というのは、その規定自体が国民を守るためにある規定ですね。72条を外すというのですから、もともと国民をその意味では守らない方がベクトルが働くわけですね。認証を受けてしまえば、その後実際に調停を実施する者が何をやっても、72条の処罰はかからないと。本当は実質的に見れば、72条違反行為を行っていても72条違反にはならないと、しかもそれは機関が認証を受けている。その機関は個人の行為をコントロールできない、個別事件には立ち入れないと、それでもなってしまうと、これは結局一律に法的効果を72条との関係で付与することによって、国民をむしろ害する効果があると。
要するに、ADR機関にとってはプラスがあるかもしれないけれども、国民にとってはマイナスになると。つまり国民の利益と利益機関の利益は、こっちの方が相反する要素があるということで、こちらの問題は、結論をどうしろとまでこの場では言いませんけれども、72条問題と時効中断効等の問題が一律に同列に議論できるものではないということは明らかではないかと思います。
○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
○廣田委員 確かに、私も同列に議論するのはおかしいと思っているのです。おっしゃった趣旨はベクトルも理論的に言えば逆に働くということなのですけれども、御発言の中で72条の規制を緩和することには、プラスの面もあるということは当然、後の議論という含みでよろしいですね。
○三木委員 私が今、申し上げたのは、だから72条をきつく運用してという意味では勿論なくて、72条問題というのは結局、これは私の意見ですが、認証としてかけるのではなくて、72条固有の問題として議論しないとどうしようもない面がありますという趣旨です。だから、72条はやるなら正面から議論しないわけにはいかなくなってくる。認証に引っかけて時効とセットで一緒にこっそり忍び込ませましょうというわけにはいかないのではないかという意味です。決して72条を強化しろという趣旨ではありません。
○青山座長 どうぞ。
○髙木委員 三木先生と違うのですけれども、似たようなことを実は考えているのですが、三木先生がおっしゃっているのは、要するに認証を受けてしまえば72条を全部外してしまうということに自動的になるかどうかというところが、やや私としては同じではなくて、例えば認証の中に認証を受けた人の義務を組み込んだときに、その義務も取り込んだ形で72条の適用除外をするのか。あるいは、その前段階のところで、認証を受けたというところで72条を外すのかというのは、法律のつくり方としては2つあるのではないかと思うのです。
弁護士72条を改正したときに、例外として、「他の法律」の定めがあるときを入れましたけれども、その趣旨というのは、他の法律に規定さえすればいかなる場合でも適用除外になるという趣旨で入れられたものではないと思うのです。弁護士法72条が国民の権利保護のための公益的規定であるとすれば、例外となるべき「他の法律」の中には72条の制度趣旨を入れた形で何らかの規定が入れられることが前提となるべきです。あるいは、全く入れられないとすれば、それを入れないことについての合理的な説明があるとか、そういった形で「他の法律」の審議はされるべきだと思うのです。
ですから、認証制と72条の例外を直接関連させ、要件のところで切って認証要件充足=72条の例外としてしまえば、三木先生のおっしゃるようなことはあるのかなと思いますけれども、認証者の義務を入れて72条の例外を考えれば、実質的に物事が考えられるのではないかと思っています。
○三木委員 髙木先生がおっしゃったことは、私は重要だと思いまして、72条というのはもともと何かある機関とかに資格を付与すれば、それによって一律にのちのち免除されるものではないと思うのです。その関係で言うと、実は我々72条をまだまだちゃんと議論してないと思うのは、これまで例えば行政型ADRだと、これは72条が免除されているという前提、つまり行政のADRを設置するという法律によって免除されているという前提で議論がされていた。あるいは、もう少し言うと司法型のADR、民事調停、これは民事調停法があると、家事審判法がある、だから72条はかからないという前提で議論されていた。しかし、それは判例もないし、学説もないし、この検討会で議論もされてないし、何もないのですね。72条の本来の立法趣旨から言うと、たとえ行政型であっても、その中で個々の事件で調停人が実質的に72条違反行為をすれば、これが72条で処罰されないという根拠はどこにもないし、それを正当化する理論というのはないはずで、つまりそこのところから議論すらされてない、そこのところから議論しないと、72条と認証を組み合わせていいかどうか自体が議論できないはずであると私は思います。
以上です。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 今、三木委員が言われなかったことを言いますと、実は民間型ADRもいっぱいいるのです。弁護士ではない調停人、斡旋人がたくさんいまして、これは我々の実務慣行としては正当業務行為として扱われているのです。これをこの議論に乗せるかどうか、あるいは乗せてそれを追認するかどうかという大きな問題があると思うのです。追認しないで、ほうかぶりしてずっと過ごして、また正当業務行為でずっといくのかどうかということがテーマになることだと思いまして、そういうことから考えれば、一番スタートの地点で認証と絡めないで72条を議論しないといけないのではないかと思います。そのでは、三木委員と私は一致していると思うのです。そう考えていいですね。絡めているからわからなくなってくるです。
○青山座長 ほかに御意見ありますか。72条の問題はありますけれども、ほかにはよろしゅうございますか。
○小林参事官 議論につきましては、今後の議論ということでございますので、特にこちらからコメントする立場ではないと思いますけれども、若干今の意見につきましては、全体の枠組みにも関わりますので、少しコメントさせていただきたいと思いますが、まず法的効果の付与の中と言いますか、それと合わせて72条の検討をしていることにつきましては、これは審議会意見書からの宿題でございますし、それから若干意見にわたりますけれども、確かにベクトルが反対だという意見も、それは一つの考え方としてあるとは思いますが、ADRの一つの大きな特色として、非法曹の専門家が活用されるということはあるわけでございますので、これはADRの利便性を高めていくという観点からは、当然検討の対象になってくるのではないかと考えております。
勿論、一律に扱っていいかどうかということは議論としてあるわけですけれども、これについては他の法的効果についてだってそれぞれの特性に応じて議論をしているわけでありますで、何も72条とその他の法的効果だけを扱いを異にする必要はないのではないかと思っております。
それから、72条に関連したそのような意見はなかったのではないかということにつきましては、今日のヒアリングを含めて、72条の緩和を求める意見はパブリック・コメントも含めて多数提出されているのではないかと思います。
若干意見にわたったかもしれませんが、全体としては今そのような状況になっているのではないかと思います。
○三木委員 1点だけ。私は、72条は議論しろと言っているのです。72条は勿論、緩和すべきだという方向、これはおそらく審議会意見書を正しく見ればそうだと思います。それはうすべきだと思います。その認定という制度と72条を絡めていいかどうかということ、そこはそんなに議論されてないでしょうと。これまで認定というのは、個別労働紛争型がモデルになっていて、それは時効中断の関係で出てきたわけですね。認定と72条がどうなるかという議論を真剣にやったことは、私はないと思っています。また、さっきも言いましたように、それはベクトルの方向は違うと思っております。
これは意見です。
○青山座長 72条問題は、このADR検討会でやるかどうかということを、初期の段階で議論しましたけれども、この検討会は72条問題はやらないと。だから、別の検討会で議論をして、それが十分だったかどうかは評価の分かれるところですけれども、他の法律でという条文が入って72条の弁護士法が改正させたというのは御存じのとおりなのです。
だから、さっきのイーストマンさんの御意見も、72条問題に正面から取り組めという御意見があるのはもう皆さん御存じのとおりですけれども、今この検討会でやれと言われても、それはもう初めから無理な話です。
○三木委員 私は、認証と絡めるならやらないと議論ができないでしょうと言っているので、無条件でやれというわけではありません。
○青山座長 それで、72条問題は72条問題としてあるということを前提としながら、では認証制度を取り入れた場合に72条問題をどういうふうにクリアーすることができるかどうかと、ベクトルが反対だという考え方もありますけれども、弁護士以外の人がADRの主宰者なりに関与してくるということは、結局大きな意味で言うと72条の緩和につながると、小さな目で見ればベクトルが反対だということになりますけれども、別の目で見れば72条を別の意味で緩和するという、そこのところも見ていただかないと、その72条を金科玉条のように言われるとちょっと困るなということです。
○三木委員 座長がおっしゃったようことが本当かどうかを検証する議論をこれからするならしなければいけないと言っているのです。72条と認証を絡めるのだったら、私はいろいろと問題になるケースというのがあると思いますので、それは指摘していくことになると思います。
○青山座長 今日はもう時間もございませんで、このくらいにしたいと思います。
それでは、次回の日程等を確認しておきたいと思います。次回は、来週5月31日の月曜日の午後1時半からの開催を予定しております。次回は、認証の要件、認証事業者の義務、あるいは法的効果等を中心にしてもう少し詰めた御議論をいただきたいと思っております。ほかに何か事務局の方からよろしゅうございますか。
それでは、本日の検討会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。