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ADR検討会(第33回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年5月31日(月)13:30~16:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、髙木佳子、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官、内堀宏達企画官

4 議 題
「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)の導入等に関する検討

5 配布資料
資料30-1 「民間紛争解決業務の認証制度」(仮称)に関する主要な論点
資料30-2 基本理念及び国等の責務について

6 議 事

資料30-1、30-2に沿って、認証の要件、認証事業者の義務、法的効果といった論点を中心に、事務局より検討状況や関係方面との調整状況の説明を受けながら、議論を行った。(◎:座長、○:委員、●:事務局)

【基本理念等について】

○ 法制化するにあたり、共通の定義は置かないのか。定義の共通化を図ることが必要ではないか。また、ADRの性格上難しい面もあるとは思うが、コスト面や場所的な面でのアクセスの容易性に配慮することが重要だと考えるので、何らかの形でアクセスの容易性にも触れて欲しい。あと、BtoCのような力の格差がある者同士のトラブルに対する配慮規定も盛り込んでいただきたい。

● 定義については、法案上最低限必要なものは当然に規定することとなる。アクセスの容易性については、この部分で「国民の理解の増進」という以上の配慮を盛り込めるかどうかは更に検討したい。BtoCの問題について御趣旨は理解できるが、紛争当事者には様々なタイプがあり、「適正かつ実効的な実施が確保される」「それぞれの特性を活かしつつ」といった形で総論的に触れる以上のことは難しいかもしれない。

○ 今まで政省令やガイドラインがつくられるのかどうかわからずに細かいところまで指摘してきたが、基本法という形になった場合であっても、政省令やガイドラインはできるのか。

● これまでの議論では、認証制度について賛否両論があったため、政省令のレベルになるような事項も含め、詳しく議論してきた。ここで議論しているもののうち、いくつかは政省令レベルになってくると思う。

【認証の対象について】

○ 仲裁を認証制度の対象から除外することに賛成である。仲裁において問題になる法的効果は名称独占と弁護士法72条のみであり、時効中断効や執行力などについては仲裁法で規定され尽くされている。名称独占はいわゆる「お墨付き」の問題であって、主にBtoCにおいて一般の人が安心してADRを利用することができるということが中心となるが、仲裁法ではBtoCはその活用の在り方が将来の検討課題となっており、現段階で仲裁に「お墨付き」を与える必然性はないと考えられる。
 72条については、仲裁にも適用する考え方は十分にあり得るが、前回のヒアリングでも国際仲裁の局面を中心に認証機関にのみ72条の特例を認めることに批判が多かったところであり、認証ADR機関以外の機関が行う仲裁には72条の特例が認められないのかという反対解釈を招く可能性もあるという指摘があったことを踏まえると、敢えて仲裁に適用する必要性はない。仲裁、とりわけ国際仲裁は認証制度の対象から除外し、正当業務行為論でカバーすれば良い。

○ 仲裁のみを認証制度の対象から外すとした場合、調停と仲裁とは移行関係があり、調停と仲裁とは切り離せないので、実務が動かなくなるのではないか。また、表示権限の面で、調停のみの認証を受けている機関であることをはっきりさせなければ、仲裁についても認証を受けているように見えるので、混乱を招くのではないか。

○ 第二点目については今の意見と同じ意見。法律上の認証の対象は調停・あっせんだけである以上、誤解を招くようなものは認められないだろう。第一点目の指摘に関して、調停やあっせんを行いながら仲裁に至る場合も日本では多いことはそのとおりである。しかし、時効中断効については調停のそれを仲裁に引き継ぐことは現行制度上訴訟の申立により引き継がれるのと同様になるのだろうと考えられ、法的効果の面では問題ないのではないか。手続の連続性について、仲裁に移行した後は仲裁法で規律されることになるので、あくまでもADR法制の枠外の問題になるのではないか。

○ 仲裁を外すことに賛成である。残りの検討時間も少なくなってきたので、議論を整理する必要がある。仲裁を認証制度の対象から外すという点については、殆どの委員にも異論がないようなので、外すということで議論を固め、調停に絞って議論していくことが賢明ではないか。
 ただし、弁護士法72条の関係で調停と仲裁の関係性をどう整理するのかの問題が出てくるが、実際に72条問題については具体的な法制との絡みで議論していかなければならないと考えている。

○ 仲裁を認証スキームから外すことについて異論はない。仲裁について何も規定しないこととなると、かえって72条について反対解釈がなされるおそれがあるので、慎重な配慮が必要である。そのことについては72条との関係でしっかり議論すればよい。

● 今いただいた御意見の大勢を踏まえつつ、立案作業を行っていきたい。 

【認証要件、義務、監督、認証主体について】

○ 経団連の会員に諮ったところ、認証要件に関して意見が出されたので申し述べたい。
 まず、資料30-1の2.(3)の兼業規制については、事業者団体が行うADRの場合、厳格に運用しすぎるとADRの利便性を損なうので、配慮されたい。業界団体のADRであれば、他の業務をやっているのは通常あって、申立者もそのことを了解の上で手続に参加しているはずであり、要員の兼務といった部分を厳格に運用するとADRとしてやりにくいとの意見があった。
 2.(4)②の「手続実施者の選任に関する事項」については、要員の専任化を強く求められると困る、手続実施者の情報に関して、例えば経歴などの細かなところについてまで開示することにはプライバシーにも配慮して欲しいとの意見があった。同④の「手続の終了に関する事項」については、ADRが不調でも紛争は解決することも多いので、当事者がいつでも離脱できるようにADR手続からの離脱の自由を確保した形の運用基準を設けてもらった方がありがたいとの意見があった。同⑤の「手続の記録の作成及び保存に関する事項」について、これが報告徴収の対象となるとすると、紛争の存在自体を秘密にしたい場合もあり、ADRの本質でもある紛争の秘密が確保できなくなってくる懸念があるとの意見が強かった。よって、要件から外して欲しいという意見もあったが、仮に要件化するとしても、記録の作成・保存の目的を明確にし、当該目的外の開示は要求されないようにして欲しいという意見があった。

● 兼業規定については、他の例を見ても、業界団体であるというだけで直ちに抵触することにはならないと考えられる。補完的にディスクロージャーにより、利用者の判断に委ねることも考えられるのではないか。
 手続実施者については、経歴の公表でプライバシーに配慮すべきといった御意見は一般論としてはおっしゃるとおりであり、実態などを踏まえながらこれから更に検討していきたい。
 手続の終了に関する御意見については、具体的項目例の中に「当事者による和解等の手続による紛争解決を欲しないときの任意の手続終了」というのがあるとおり、当方としてもADR機関によって終了させることだけを想定しているわけではない。御指摘の箇所の趣旨は、むしろいたずらに紛争を長引かせないということである。
 手続の記録の作成及び保存に関する事項についての御意見については、個別の手続の内容を全く調べることなく制度が成り立つかどうかは疑問であり、個別の事案を調べる可能性を否定することは難しいと考えている。

○ 2.(2)②の「施設」については、ADRにとって施設の有無は本質的な問題ではないとの意見が強く、これがなければ適正なADR機関を選定することができないわけでもないので、外した方が良い。2.(4)⑤の「手続の記録の作成及び保存に関する事項」は最もセンシティブな要件であり、いくら認証を受けたいと自ら申し出ている機関に対してであっても、手続内容の秘密性のみならず、ADRに事件を付託したということそのものの秘密性もあるので、このような要件を設けることとADRの目的がそぐうのか慎重に検討すべきである。仮にこのような要件を置くとしても、「期日ごとの手続の概要」は踏み込みすぎではないか。

● 「施設」については、オンラインで行うADRもあることも承知しており、「財産的基礎」と同じような「軽い」ものだと考えている。
 「手続の記録の作成及び保存に関する事項」の細目については、御意見の御趣旨を踏まえてもう少し検討してみたいと思う。

○ 消費者側の観点に立って3点ほど申し上げたい。第1にADRには秘密の保持の要請は確かにあるが、適切なADRを正しく選択するための情報開示は必要と考える。選択に資するレベルの開示はお願いしたい。第2にADRでは、テーブルにつくことも手続から離脱することも、当事者の主体性に委ねられているが、実際は、テーブルにつくことも少なく、テーブルについたとしてもすぐに手続から離脱してしまうのが実情である。離脱の容易性の要請はあるとしても、他方でADRの尊重も必要なのではないか。第3に、記録の作成・保存については最も重要なポイントであり、ADRの機密性というメリットを享受したい人がいることは理解できるが、他方で、不適当なADRの退出のルールとして、個別事案の内容が必要な情報となるのではないか。また、裁判であれば判例という形で記録が積み重なっていくが、ADRにおいては個別の事件ごとに両当事者がお互いに納得すればよく、機密性を高めるとどういう結果が出たのかが明らかにされず、消費者全体からすれば、その結果で良かったのか解らなくなってしまう。当事者が納得したのだからよいのかもしれないが、よく似た事案であっても結果にバラツキが生じてしまう。消費者のADR利用率を高めるためにもどのような類型の事案がどのような結果になったのか程度の情報を開示することは必要なのではないか。

● 第1の情報開示については、秘密の保持の要請と消費者などADR利用者からの情報開示の要請の両方のバランスが必要である。一般的な情報開示と個別の利用者への説明があることを考えると、一般的な情報開示については一定の限界を設ける方がバランスがよいのではないか。
 第2の御意見については、ケースによっては御趣旨を理解できる場合も考えられるが、一般的なルールづくりを行うにあたっては、制度のフレキシブルさを考えると、任意に離脱できることが最終的なよりどころになるので、それと逆のベクトルのことを検討するのは難しい。第3の御意見について、退出のルールについては、不適当な者は認証から外すというルールは必要であると考えており、6ページの注書きにあるように、違法であると考えられるような合意が頻繁に出るような場合には認証を取り消すというような措置をとれるようにしておくことが必要であると考えている。

○ 情報開示の要請と秘密の保護の要請は要請されるポイントが微妙に違う。むしろ、個別案件を見るか見ないのかが重要なのであって、全くチェックしないことは有り得ないことを前提として、ADR機関がそれでも構わないのかということが問題だと考える。公序良俗に反するかどうかがわからない段階で、制度として個別案件をチェックする可能性があるということを明確に打ち出してもらいたい。

● そのように問われれば、個別案件をチェックすることもあり得るということになるが、それは恒常的な状態ではない。

○ 業界型ADRの中にはADRの尊重の要請が必要となるものもあるが、一般的な制度の枠組みとして定めるのは難しい。そういったものは、業界型ADRのモデルを作る中でスタンダードとしてつくっていくことが大切なのではないか。 
 また、手続記録の作成及び保管は必要であると考えるが、裁判所の調停事件記録でも「期日ごとの手続の概要」までは求められていないことを踏まえると、手続の頻度がわかる程度の記録があれば十分なのではないか。

○ 確かに裁判所の手続の調書も、いつどこに誰がきて、誰が立ち会ったという程度で、手続の概要と言っている。

○ そもそも「期日ごとの手続の概要」といっても、期日というのは裁判上の概念であり、ADRに馴染む概念であるかどうかも疑問である。また、誰々と誰々が何時出頭したということすら知られたくない人すらいることにも配慮してもらいたい。

● これらの具体的な項目については、運用段階も含め改善、配慮すべき事項として検討してまいりたい。 

○ 個別案件の具体的な内容を開示される可能性があるという前提で発言すると、偏頗な判断ばかりをするようなADR機関は、監督の対象になるのか。例えば、ある利益団体が設立した認証ADR機関が、偏った判断ばかりしているような場合は、「公正ではない」として監督の対象となるのか。

● 前提として、行政庁が検査内容を開示することは想定していないし、公務員には守秘義務がある。一般的に言えば、業務改善命令・認証取消しは認証基準や認証事業者の業務遂行上の義務に反することを是正するために想定されているものであり、単に判断が偏っているということだけでは対象にはなりにくいのではないかと考える。

○ ある利益団体が関与したADR機関が、その利益団体の傾向を反映しているような判断ばかりする場合は、どうか。

● 利用者からの苦情・不満がこのようなスキームの端緒になるだろうが、そのような苦情が寄せられれば直ちに発動するのではなく、その内容を精査してから判断することになろう。

○ 苦情の内容を見て判断すると言っても、実際は難しいのではないか。「この機関は中立の立場であるとされているが、本当なのか」などという不満が潜在的にあっても、よほど悪質なものでない限りは監督の対象とはならないだろう。ADR機関の質については、少し違った角度から消費者もチェックしていかなければならないと思う。

○ クレームがでたら、認証主体が個別案件を調べることがあり得るということが問題である。また、存在が知られていない事件について、第三者が「この判断は偏っているのではないか」とクレームをつけ、ADR機関がそのクレームに何らかの回答を行うことにより、その事件の存在が外部的に明るみに出てしまうという弊害がある 

◎ 和解にはその後に司法救済もあるので、認証主体への不服申立てにより、認証主体が個別の事案について一々調べあげるような運営は考え難く、そのような制度設計はあり得ないだろう。 

● 認証事業者は、業務遂行上の責務として誠実・迅速に苦情に対応すべきということになり、ADR機関の中にそのような窓口を設けることになると考えられる。認証主体に苦情が提出された場合には、苦情の内容を見て、類似の苦情が出されているかなども含め判断することになると考えられる。認証制度の趣旨がその機関が信頼するに足りる機関かについて最低限の基準をクリアしているかどうかに主眼を置かれていることを考えると、認証の取消しに至るようなものは違法な場合が中心となると考えられ、よほど悪質な場合以外は、個別事案を調べ上げたりすることはないであろう。 

○ 原則として個別事案の結果の当不当によって認証を取り消されることはないということは、当不当に関する苦情については、累積があっても検査の対象にはならないということでよいか。違法性のレベルでしか検査は行わないということか。

● 認証基準や認証事業者の業務遂行上の義務に反する場合には、取り消されることになるのではないか。

◎ 認証主体は、認証の範囲でしか責任がないはず。認証基準以上に監督するというのものではない。

○ そのような曖昧な判断では、実際にADRを行っている機関は困る。苦情は通常は認証要件に引っかけて出てくるので、結局は個別案件を調べてみなければ判らないということになるのであろう。とすると、個別案件を一切調べることはないと言うのはいかがなものか。一切調べることがないのであればその前提で議論するが、そうでないのであれば調べることがあり得ることを前提に議論しなければ違うことを議論することになる。

◎ 通常は、個別事件に端を発して、その機関を調査することはあるだろうが、その個別案件の手続内容を調べるのではないのではないか。苦情の内容を見れば、通常は、個別案件を調べなければならないかどうかは判るだろう。

○ 通常は個別案件を調べることはないというのはそのとおりだろうが、万に一つでも個別案件を調べることがあるということだったので、私は個別案件を調べる場合があるということを前提に議論してきた。公序良俗の可能性がある場合には、ひとつひとつの事件の存在や内容を調べるのではないか。

● 繰り返しになるが、個別事件について完全に全く見ないとは言えない。しかしながら、それは、認証基準に引っかけてクレームがあった場合であっても、外形的な判断で違反しているかどうかが判る事項については、たとえ、その苦情が正当なものであったとしても、個別事案の内容を見る必要はない。また、クレームがあれば自動的に認証取消しに至るルートに乗るわけではなく、まずはそのクレームの内容について評価、判断することになるということを前提としている。その上で、最終的に認証を維持すべきかどうかを判断しなければならないときに、個別案件を見ることが絶対にあり得ないということは言えないと申し上げているのである。

【法的効果等について】

1.執行力について

○ いかなる条件を付しても執行力は導入すべきではない。紛争当事者によって区別する案が出たが、BtoBで執行力のニーズがあるのか。少なくとも国際的な事件についてはそのようなニーズはない。必要であれば仲裁に切り替えたりしている。
 仲裁法では消費者関係、労働関係を別扱いにしているが、それは、消費者は予見可能性のための十分な知見を有していないことから事前合意について特別な処理をしているのであって、和解での局面では次元が違うのではないか。仮に執行力を導入するとした場合、執行決定によることが有力だが、仲裁では裁判所がどういう手続で行ったかを審査することが前提になっているのであって、仲裁に執行力が認められているからと言って手続に定めのないADRについても認めることとするのは安易ではないか。調停手続法を定めることを前提としていたUNCITRALでも認められなかったという経緯もある。

○ 執行力は付与すべきであるし、付与することは可能であると考える。第1にどれくらいの需要があるのかはわからないが、前回のヒアリングでもパブコメでも導入を求める意見はあった。第2に、調停・あっせんについては、手続的な規制がないため、最終的な合意があってもそれに執行力を認めることが相当かどうか疑問がある場合が出てくることから、消費者関係については、事後的な仲裁合意に基づく仲裁判断に執行力が認められるとしても、ADR合意には当然に認められるということにはならないのではないか。また、事後の仲裁合意に基づく仲裁判断に執行力が認められたのは、旧仲裁法以来認められていたことから認めざるを得なかったのであって、ADRの執行力は従来認められていなかったのであるから、これらについては当面認めないことし、すべて将来の検討に委ねるのが相当なのではないか。第3に、執行決定の要件が明確ではないとの懸念については、仲裁判断の執行力の源泉は仲裁合意とともに仲裁合意後の手続の適法性に支えられることになろうが、ADR合意の執行力の源泉は、当事者の合意ということになり、合意に至る手続は原則としては問題にならないのではないかと思われるし、これらについて裁判所が審査できないとは思えない。

○ 執行力については付与すべきではない。仮に執行力を付与することとすると、最終的に執行決定、公正証書により判断する場合、和解の有効、無効をどのように判断するのか。よほど手続を慎重に考えなければ、執行決定があれば大丈夫という体制にはならないと思う。公正証書による場合でも同様である。また、現段階ではどのようなADR機関がどのようなものになるのか判らないので、金銭債権に止め、慎重にスタートすべきであると考える。

○ 個人的には執行力は与えてほしいと従来から考えているが、日弁連では慎重意見が多いところである。
 執行力のニーズとしては、和解成立の可能性を高めることにつながるのではないかと思う。例えば、巨額の金銭を取り扱う事件などにおいて、一度に払えないとしても、執行力があれば分割払いでの和解が成立することが多いのではないか。分野別や当事者別とすることは、当事者の限定の方法が難しいし、分野別に限定して解除するとしても、消費者問題に関する契約、労働問題に関する契約とした場合、その有効・無効に響いてくるのではないかと懸念している。限定するのであれば、執行力を認めるのであれば金銭債権に限るのが一番わかりやすいと思う。現在ニーズとしてあるのは、金銭債権と明渡くらいであろうが、明渡については何らかの引替給付があることが多いので、裁判所に持っていった方が便利なのではないかとは思う。

○ 調停は手続きを見るのは難しいので和解の内容を見るという意見があったが、和解内容で判断するのであれば、調停を経ていない和解と区別するのはおかしいのではないか。

○ 認証制度との関係で執行力を付与することには反対である。実務上ニーズがないわけではないが、仲裁法38条などで対応することが可能な程度のものであり、無理して執行力を付与する必要はないのではないか。むしろ、執行力を付与するために認証制度を導入するということになると、ADR制度が重たくなってしまうので、執行力の付与には反対である。

○ 内部で議論した中では、利用者の立場として企業側には、BtoBでのニーズはほとんどなかったので、今回は導入すべきではないと考える。仮に導入するとした場合でも金銭債権に限定するのがせいぜいであろう。

○ 消費者の側では、執行力の導入には反対、時期尚早であるという意見でほぼ一致している。ADR機関側で執行力を要望しているところもあったが、そのニーズを精査した方がよいのではないか。BtoCを除外するという考え方も出されたが、現在でも事業者か消費者かという線引きがトラブルの中でセンシティブになっている問題もあるので、難しいのではないか。

2.執行力以外

○ 表示権限について、認証対象が調停のみになるのであれば、その旨を明らかにすべきである。さらに、実際に行われる調停についての利用者の満足度の高さや調停そのものの善し悪しについて審査対象とはしていないのだから、「優良」と掲げることを認めるべきではなく、限定的な形でしか表示できないようにしてもらいたい。
また、調停前置の特例についてであるが、今回、わざわざ認証制度を導入してまで法的効果を付与させるのだから、原則として調停前置の原則が適用されないこととするb案がよいと思う。

○ 調停前置については、最終的には裁判所の裁量的な判断に委ねられるものであるからa案でもb案でも実質的には変わりはないのかもしれないが、認証基準のハードルの低さを考えれば、裁判所の調停と同質のものまで担保されているのかどうか疑問であり、b案をとることには疑問である。もし、原則調停前置を適用しないとする場合には、その目的が達成されていない場合には調停に付することができるといった手当は注意的に置いてもらいたい。

○ 時効中断効以外の法的効果は必要ないと考える。両当事者が同じテーブルにつくに当たって、一方当事者だけが不利益を被ることになるのは時効中断効だけであるからである。それよりも、第三者機関に関して、なるべく速やかに連絡協議会のような機関をつくり討議していくようにしなければ、ありとあらゆるADR機関が乱立して滅茶苦茶になってしまうのではないか。

○ 表示権限の機能をある程度の限定をしなければADRの差別化に繋がってしまうので、「認証」というものの意味合いを限定する形で表示すべきである。

○ 認証制度が導入される場合、ADRにおける認証制度は、本来のマル適マークとは意味合いが異なり、本来のADR業務に適しているのかを見るものではないので、認証を受けた機関は立派であり、認証を受けていない機関は立派でないというようなことになってはならない。

【その他】 

○ 主務大臣、第三者機関のところの仕組みがよく理解できない。主務大臣は法務大臣単独になるのか、それとも他の大臣との共管になるのか。第三者機関は法務省の中に設けられる予定なのか、第三者機関が審査するのは、認証を受けるときと認証を取り消すときだけなのか。 

● イメージを持っていただけるようにやや踏み込んだ説明をすると、認証基準や法的効果の内容から言えば法務大臣の関与は必要になると思うが、他方、公益法人等において業務を行う場合や、特定分野でのADRでは所管行政の問題も絡んでくるので、それらの主務大臣も何らかの形で関与する可能性があると考えられる。ただし、これは国の権限をどのように配分するのかという問題になるので、現在はこれ以上は申し上げられない。
 第三者機関については、各行政機関に置かれた審議会や委員会のようなものを想定している。関与する範囲としては、認証や認証の取消しの段階に加えて、不服審査について関与させたらどうかという意見が前回の検討会で出たので、そういったものも含めて検討してまいりたい。これらの他に御意見や御要望があれば承りたい。

○ 今ある審議会のうち、どれと似たような感じになるのか。

● 特に他の制度と較べて変わったようなことは考えていない。

◎ このような制度を参考にしたらどうかという御意見があれば承りたい。

○ 検討会の議論全体の印象であるが、認証制度を導入することを前提として議論が行われているが、そのような議論が全てということになれば、認証制度の導入が既成事実となってしまう。認証制度の導入への反対論や慎重論もあることを踏まえながら、全体として議論していただきたい。

◎ 入口で議論がとどまっていたので、前回・今回は内容まで議論していただいたということである。

 次回の検討会は、6月10日(木)午後1時30分から開催されることとなった。

(以上)