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ADR検討会(第34回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年6月10日(木)13:30~16:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦(敬称略)
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官、内堀宏達企画官

4 議 題
裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策について

5 配布資料
資料34-1 裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策(案)
資料34-2 認証業務に係る手続で成立した和解の執行力(論点メモ)

6 議 事

事務局が、今後、次の国会への提出に向けて、裁判外の紛争解決手続を整備するための法案を策定していくに当たり、どのような方向性で立案作業を進めていくかという点を中心に、検討会の議論を踏まえ、関係方面との調整を行いながら、ADRの拡充・活性化を図るための諸方策を取りまとめた資料34-1に沿って、事務局より説明が行われた後、まずは、執行力以外の部分について議論を行った。(◎:座長、○:委員、●:事務局)

○ 検討会もあと一回を残すのみとなり、できる限り法案をまとめる方向で意見を述べていきたいと思う。論点は沢山あるわけであり、さらにはADRは難しいという問題もあって、その辺は承知している。今回、40年ぶりの司法改革の中で良かったなと考えるところは、法律は国民のためにあることを再確認したことと法律はそのためのツールであるということが全体として示されたように思うところである。法律を作るときに常に100%望ましいものというものは有り得ないのであって、真ん中70%の平均値でも構わないというように考えていきたい。弁護士関与の在り方について認証要件として採り入れるということが示されているが、個人的には、弁護士法72条が本来個別の案件について弁護士が関与して国民の権利義務を守ることを目指すものであるとすれば、このように認証要件という形で取り込んだ場合、体制の整備が適正に行われるかどうかに近いような形となってしまい、本当に弁護士が関与すべきような末端の紛争処理機関について不安がないわけではない。したがって、可能であれば(3)の「認証事業者の義務」のところに弁護士関与の在り方についての規定を盛り込 んでほしいと考えていたが、前回のヒアリングの時に説明者に対して弁護士関与についてお伺いしたところ、必ずしも明確なものではないものの、弁護士が必要と考えると思うとの回答があり、また、誠実にきちんと職務を行っているようであった。それは、言葉で表現すると5)ii)の「手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けること」に尽きるのではないかと考える。また、確かに、前回ヒアリングを行った機関はADRの世界では優良機関に属するものであり、今後、ADR法ができることによって多種多様なADR機関が誕生し、違法なことを躊躇なく行うような機関が誕生した場合、これで対応できるかどうかが問題となるのであろう。常に100%の制度というものは有り得ない。だからこそ、認証制度を導入することに意味があるのだろう。認証制度についてすべての人が賛成しているわけではないが、これ以外に弊害を防止する方法がないとすれば、認証制度の導入もやむを得ないと考える。弁護士関与の要件については、認証制度に基づく主務官庁の監督の下でうまく機能させるためにも、認証要件に入れた方が良い。

 また、時効中断効の付与についてであるが、昨年、「訴えを提起されたときは訴申立ての時に訴えが提起されたものとみなし」という文言の「訴えの提起」の中に仲裁の申し立てが含まれるのかとの質問がある委員からあったが、その時に、事務局は「当然含まれる」との回答であったと記憶している。しかし、その時の議論の前提は事前確認制度の下での時効中断効の付与というものではなかったので、今回、個別労働タイプとして時効中断効が入ったときに「仲裁は含まれない」という考え方もあり得るのではないか。

● 時効中断効については、仲裁についても同様の効果が期待されてしかるべきであると考えているが、法文上、明記する必要があるかどうかということについては、議論はあり得るとは思う。いずれにせよ、実質上、懸念されるには当たらないと考えている。

○ 72条について、4ページ(5)アに「弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設ける」とあるが、これは「72条の適用を排除する」との規定を設けないとの趣旨なのか。また、そのような規定を設けるか否かにかかわらず、認証制度を設けても72条が適用されうるということは、実務に及ぼす影響が非常に大きいので、明確にしていただきたい。

● 他の立法例との横並びなどもあるのでそれらも踏まえつつ、今後検討していきたい。いずれにせよ、弁護士でない者による手続の実施ができるような規定を置きたいと考えている。 

◎ 立法例の中では「72条の規定にかかわらず」という消極的な書きぶりと「○○の者ができるという」積極的な書きぶりの両方があると考えるが、(5)アの書きぶりは後者に該当するものである。効果については、通常は、多様な弁護士以外の専門家が安心して手続に関与できるようになるということであると理解している。

○ 既成のADR機関は今、現在の72条の扱いによって認証を受けるかどうかを考えなければならず、これから新設するADR機関は、今の扱いによって制度設計が変わってくるので、これは極めて重要な問題である。認証制度という匙加減で72条の効果が変わるような状況では困る。

◎ あくまでも、的確・公正なADR手続きが行われるかどうかで認証機関にあたるかどうかを決めるわけであり、決して匙加減というようなことはない。

○ 「基本的考え方」については、ほかの部分が皆、認証制度について規定されることになるため、認証を受けないADRにとっての拠り所になるし、消費者や利用者にとってもADRに関する基本的な考え方を理解する上での重要な柱になると考える。そのような観点から考えれば、この資料の書きぶりは少し不足しているとの感がある。ひとつは、4)に「紛争解決事業者その他の関係者の自主性・自立性」とあるが、それは当然のこととして、紛争を抱える当事者同士が主体的に解決することが前提で、それをサポートするのがADRの役割ではないかという議論があったと考えるのだが、「当事者同士が主体的に解決する」というニュアンスがここからは読みとれない。多様な選択肢があることは書かれているが、それに留まらず、当事者同士で解決していくというニュアンスが欠けているので、加えていただきたい。また、Ⅱ2.「関係機関間の連携の促進」に相談機関の話も入れるというコメントが事務局からあったが、やはり、相談は紛争の根本にあるものなのだから、相談についても丁寧に基本的考え方の中に盛り込むことが適当なのではないか。さらに、調停・あっせんなどの言葉の定義について、認証の部分では調停・あっせんなどの言葉が出てくるため、この部分に定義規定が置かれることは理解できるが、基本的考え方の方にも言葉の定義に対する配慮規定のようなものが必要なのではないか。また、事業者対消費者・労働者などの弱者に対する配慮規定が必要なのではないか。一般的な条文の中で読みとれるとの回答であったが、基本的考え方の中にもそれぞれの紛争当事者が置かれている状況への配慮規定を盛り込むべきではないか。もうひとつ、2ページ以降の認証の話について、紛争解決だけを行うADR機関のみならず、苦情相談業務も抱えている場合、要件は紛争解決だけで見るのか、相談部分も含めて見るのか。さらに、3ページの「認証事業者の義務」について利用者、消費者からすればどのADR機関がどのような紛争を扱い、どれだけの件数を抱え、どんな結果を出しているのか、扱った案件の概要がわからなければ選択できないのではないかと考えるので、認証事業者の義務の中に「扱った案件の開示義務」を盛り込んでいただきたい。

● まず、最後のディスクロージャーについて、先般、もう少し詳細な論点をお示しした時には「紛争解決の実績の概要」としていたと思うが、今回は「等」の中に入っていると御理解いただきたい。特に他意はないので、紛れがあるというのであれば明示させていただきたい。また、相談も一緒に行っている場合どこを見ていくかということであるが、相談に限らず他の業務を行っている場合も同様であるが、紛争解決業務を行っている関連の事項を主体としてみていくということになろう。いずれにせよ、他の業務を行っているからといって特別の扱いを受けるということは考えていない。「基本的考え方」については、事務局としても規定を充実させていきたいと考えているが、法律ということもあり、精神規定的なものはなかなか盛り込みにくいとの事情は御理解いただきたい。

 言葉の定義への配慮とはどのような御趣旨なのか御教示いただきたい。

○ 認証の要件で定義するのではなく、基本的考え方のところで定義規定を置いてもらえないかということである。

● 定義規定をどこに置くのかについてはともかくとして、定義自体は全体に係るように措置していくつもりである。また、基本的考え方のADRの中には調停以外も含むとの理解である。社会的弱者に対する配慮については、理念として何らかの表現として残すということではなく実質的にどのように担保していくのかが重要と考えており、認証基準の具体的基準や情報開示の規定など、具体的な制度設計の中でどのような組織であるのかがわかるようにしていきたいと考える。

○ 1.(1)4)の「自主性・自立性」については、一種のメッセージ性を考えれば、なお書きとしてではなく、何らかの形で総記的なところに記載されたい。また、2.(2)ウについては、「審査基準」は誤解を与えないようなものにすべきであるから、政省令レベルではなく、基準の在り方について国民的な議論にすべきであると考えるので、できる限り法律事項としていただきたい。苦情処理については、認定の付与から監督、認定の取消に至るスキームの中でその苦情処理をどのように位置づけていくのかをもう少し明確にしていただきたいと考えている。事後的なチェックにおいて、例えば、報告徴収を求めるような場合、どのような発信があって主務官庁が動くのかということを考えれば、個別の事案について本省に連絡があるとは限らないので、ハードルが低いところで苦情処理を受けられるようにし、トラブルが多いところについて改善命令や取消に至るというような仕組みを考えていただきたい。また、BtoCや力関係が明白である場合の紛争の取扱いについて、この検討会では個別の紛争分野や個別の紛争タイプについて議論してこなかったので、今回、問題提起したいのであるが 労働紛争は極めて特殊であり、最近できた都道府県の個別労働紛争解決の機関の中でも使用者側からの訴えが増えてきているとの状況にある。必ずしも裁判などには移行しないのであるが、軽い損害賠償や退職の要求に伴う損害賠償など、ダメ元で訴えを起こすようなケースが増えてきた。したがって、現在、情報開示をなるべく多くし、利害関係についても情報開示を行い、自由な選択によってそれが嫌であれば断るというスキームを前提に議論しているが、現在の労使関係、特に個別労働全体を見れば、そのような関係にはない。最近、頻発している使用者側からの訴えについて言えば、例えば就労規則の中にそうしたADRを活用すべきであるとの規定が置かれた場合、被使用者は事情徴収に応じざるを得ないといった事態も考えられ、自主性・自立性を前提とした当事者双方の交渉能力が対等であることが前提の議論とはかなり異なっていると考える。そのような意味においては、現在、議論の前提となっているスキームは、ある意味で、トラブルを後押しする結果も招きかねないものである。労働関係については今回の法律からは除外してほしいとの担当者からの声もあるとの実態を踏まえれば、ADRには多様なものがあり、それらは市場主義の原則によって淘汰されていくことが望ましいという意見は理解できるが、現状ではそれを行うと、あまりにも犠牲が大きすぎるような場合もあるのではないか。仲裁と同じであると申し上げるつもりまではないが、新仲裁法の時も同様の検討を行ったことがあり、やはり、ある分野のADRについての格段の配慮規定をスキームの中にどのように位置づけるのかという議論は行っていただきたい。                    

● 認証の要件についてできる限り法律で規定すべき、政省令であってもオープンな議論を行うべきとの意見について、法律に規定するかどうかについては法制的な検討もあるので現段階で明確なことは申し上げられないが、仮に政省令レベルということになっても、実質的に認証を受ける機関や利用者にとっても影響は大きいわけであるから、そのような実質についての御意見は今後とも承っていきたい。 

 ADR機関の処理に対する苦情処理については、3ページにも示したとおり、まずは、ADRを実施した者にきちんと対応していただきたいと考えているが、主務大臣の監督によってもきちんと担保していく必要があると考えている。どの省庁にあっても相談窓口は通常は開かれていると考えており、直接、担当課に御連絡いただく場合もあると思うので、制度的にオープンにはなっているが、更なる工夫の余地があるかどうかについて、今後とも検討していきたいと考えている。

 特段の配慮規定の位置づけについて、今回のADRの基盤整備はできる限り幅広いADRについて適用できるような制度設計を念頭に置いて議論しているところであるが、決して、個別の紛争分野の特性や紛争当事者の立場の違いを全く考慮に入れずに制度設計を行っているわけではなく、具体的な制度設計や運用に当たっては、紛争分野ごとの特性や紛争当事者の背景などにも配慮が必要なのではないかと考えている。 

 情報開示だけでは足りないとの話があったが、情報開示だけでは難しいところがあることもこの検討会でも議論されたところであり、このような議論も踏まえて、今回、最小限の基準を満たしていると考えられるものについては認証制度を設けていってはどうかということになった。当然、審査基準や監督については、そのような公正・適正さが確保される最低限の要件については考えていくつもりであり、決して、情報開示によって利用者の選択だけにすべてを委ねているわけではない。いずれにせよ、今後、具体的な制度設計の段階に入っていけば、個別の分野の事情についても十分に斟酌して考えていきたいと考えている。

○ 2.(2)ウの2)に「経理的基礎」という文言が入っているが、経理的基礎は見ることは見るけれども実質的に見ないとの説明があったと思うが、そのようなものなのであれば、その前の「能力」の中に「経理的基礎」を含め、「経理的基礎」の文言は明示的にしなくともよいのではないか。今の段階では無理なのか。どうしても残しておく必要があるのか。

 また、認証要件として1)~5)の要件を判断することは当然であり、申請後、変動があった場合であっても、当然に変更申請を行い、認証を受けることになろうが、そのような場合、業務が一時ストップしてしまう事態も考えられる。変更があった場合の認証についてはスムーズに行われるのか。

 さらに、私は認証制度そのものに未だ懐疑的な立場なのであるが、仮に認証制度を盛り込むとしても、時限立法にせよとまでは言わないが、将来の見直しということを今の段階から考慮に入れていただけないか。具体的には、(2)罰則の下に(3)として「将来の見直し」のような事項を盛り込めないか。

● 経理的基礎については、これまでも繰り返し申し上げたとおり、それほど重きを置いているわけではないが、全くこのような要素を要求しなくてもよいのか現段階では自信がないため残しているとの趣旨であり、場合によっては、仰るとおりとなるような場合も有り得なくはないと考えている。2点目については、どのようなケースで認証を取り直すことになるのか等も含めて、実務に過大な負担が生じないように工夫していきたいと考えている。3点目については、趣旨についてはよく理解できるが、これから制度設計を行うこのタイミングで見直しについて具体的に言及することは困難なのではないかと考えている。

○ 今回の資料のタイトルは「拡充・活性化を図るための方策」とあるが、どうみてもそれがADRの拡充・活性化に繋がるとは思われない。認証制度については、ヒアリングでは慎重論や反対論が多かったが、それを押し切ってまで認証制度を導入する必要があるのか。隣接団体から提出された要望書を見ても、新規参入を図りたいとの要請がある。土地家屋調査士会などは認証制度の導入を待つことなく既にADR機関を立ち上げている状況にあり、本来は制度設計をどうするかという問題が法律をどうするかという問題に先行する問題である。

 私は法的効果の付与よりも72条の緩和が最も重要な問題であると考えているが、日弁連などは私見であるが、認証を受けても72条は適用されるものと考えており、他方、その他の隣接法律専門職種は、認証を受ければ72条の適用は排除されるものと考えており、同床異夢の状況なのではないか。また、ADR機関の業務が72条違反に問われたことは判例を見ても存在しないが、いずれにしても、認証を受ければ72条は適用されるのかどうかすら判然としないような状況で議論し、認証制度を導入しても良いのか。このような状況を放置して、認証制度の導入を強引に進めれば、ADR全体の混乱を招くのではないかと考える。

 また、前回までの検討会でも議論されたことがある論点に関連する事項であるが、この隣接団体からの要望書には「連合会傘下の都道府県にある単位会については、連合会が認証を受ければ他は認証を受けないようにしていただきたい。」とあるが、それでは、結局、単位会は認証を受けなくても良いということと殆ど同義となってしまう。今回の資料にはこの論点が全く触れられていないが、うやむやになってしまっているのではないか。また、全国に展開している個別事務所は機関として認証を受けることができるのか。これが認められれば極めてアド・ホックに近いような形態になるとは思うが、これらの論点についても、検討会の場で議論すべきと考える。

 このようなことについての理解に万一、誤解があればADR法ができた途端にADRそのものが混乱を招くだろう。そのような大切な事項が曖昧なままでよいのか。

● 縷々、御指摘をいただいたが、当然のことながら検討は段階的に行われていくべきものなので、現段階では、手順を踏んで今日の資料のような大きな論点を御議論いただいているとの理解である。現時点で今、御指摘いただいたような事項について明確に回答できるような段階にはない。ただ、72条については、先程から効果についてはきちんと申し上げているので、それを斟酌の上、御判断いただきたいと考えている。

○ 中心となる全国機関が認証を受ければ各支部は認証を受けなくても良いのかということと、個別事務所についても認証を受けることができるのかということの2点については、制度設計に非常に大きく関係すると同時に、ADR法の善し悪しに大きく影響する問題なので、この問題については、事務局が後で検討するものではなく、次回も含めてこの検討会で議論すべきなのではないか。 

◎ 本日、どこまで議論を行うのかという問題もあるので、この問題については引き取らせていただきたい。次回の検討会では今回の議論を踏まえて資料を修正し、提出させていただきたい。その上で、それで良いのかどうかについてさらに議論を行いたい。

○ 3ページの5)ii)の読み方について「手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けることができること」は例示であり、要件が「公正かつ適確な手続の実施のために必要な体制が整備されていること」であるとの理解でよいのか。 

 また、4ページの(4)について、前回の資料までに盛り込まれていた「検査」が書かれていないが、これは落ちたとの趣旨で理解してよいのか。

● 第一点目については、御指摘のとおり例示であるとの理解である。第二点目については、文言上の解釈としては「検査」については「等」に含まれうるが、ココロとしては「検査」が適当なのか、その他の方法が考えられるのかもう少し検討していきたいと考えている。

○ 後のコメントとの関係であるが、個別事件との関係については、ヒアリングでも検討会でも疑問が提起されたと理解しているので、この点については何らかの対処がなされるだろうと考えている。「検査」を監督方法として定めないことも懸念に応えるひとつの方法になるかとは思うが、これは、全体のスキームや他の制度とのバランスの関係もあると思うので、私自身にも確たる見解があるわけではない。少なくとも、ここで行われる監督が個別事件に介入するようなものであってはならないということを何らかの形で明らかにしておくことが必要ではないかとは思う。法律上、どのような文言になるのかはわからないが、少なくとも検討会のとりまとめとしては、議論もあったところなので、何らかの形では明らかにしていただきたい。

 また、実際に認証制度が動き出した後、どのような者が認証を求めてくるのか、認証の運用が具体的にどのようになるのかについては、わからないという意見には賛成である。したがって、そのことを前提にして、どのような要件や効果を定めるかということを議論しており、そのような意味においては不確定な情報をもとに議論せざるを得ないという状況であるので、効果も含めた認証制度全体については、将来、見直すべき時期が到来すれば当然に見直すべきであろうと考える。ADR法にどのように書くのかということは法制的な問題も色々とあるであろうから、それはともかくとして、少なくとも検討会としてはそのような認識を持っておくべきであると考える。 

● 第一点目については、何回か議論をしてきた論点であるが、報告徴収等も含め、基本的には認証要件の不適合や法令違反の疑いがある場合に実施するものであり、個々の事案の当否を問うことを目的としたものではない。また、当然、自主性を阻害するようなものであってはならないということは御指摘のとおりである。第二点目については、先程の同様の御指摘に対する回答と同じである。       

○ 定義に関する規定について、今回、認証対象に挙げられている調停、あっせんの定義を置くという趣旨なのか、それ以外のタイプのADRについても定義を置くという趣旨なのか。

● どのような概念についてどのような定義を置くのかについては、まだ具体的な法律全体の内容が定まっていないので未定であるが、ここでいう調停、あっせんについては、一般的な調停、あっせんという意味合いで用いているものである。

○ 定義について、この法律に仲裁の定義を置くことは、仲裁については仲裁法が別にあるので考えられないとは思う。仮に定義を置くとすれば、調停、あっせんについてになるとは思う。先程、事務局から「仮に定義規定を置くとすれば総論部分に置く」との発言があったと記憶しているが、調停、あっせんの定義を置くとしても、一般的に調停やあっせんを認証部分と離れて置くことは、相当に検討を重ねなければ困難であるから、認証との関係の部分で置くべきと考える。

 また、4ページ(5)の「弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設ける」とは、その方向性で検討を進めるということを事務局は考えているという趣旨であって、それ以上でもそれ以下でもないということでよろしいか。  

● そのような理解で申し上げたつもりである。

○ 72条の効果に関して特定の方向を示唆するような御発言があったとすれば、必ずしもそうではないということでよろしいか。

● 本日、72条という言葉を用いた記憶はないが、そのような理解で御了解いただきたい。

○ この認証制度が将来の再確認を予定したものであるということを何らかの形で確認していただきたい。特に、中長期的な検討課題として例えば、ADRを行う個人についての資格認証についても検討する可能性があるということであれば、仮に、その制 度が導入されれば、その方がより望ましいのであって、この制度がそれでもなお必要 なのかということもあるので、そのようなことも踏まえつつ、この認証制度を捉えるということに賛意を表しておきたい。

○ 先程座長が引き取るとおっしゃった2つの論点については次回の検討会までに何らかの方針が示されるのか。

◎ この検討会でどこまで決めなければならないかという問題であると思うが、ADRについては、はじめての制度を作ろうとするものであり、関係省庁との折衝も非常に大変であり、法制審のような、一つ一つ細かな論点まで審議会で議論し、それを要綱にまとめて法案を作るものではないと思うので、その旨よろしく御理解いただきたい。

● これまでの議論でも御承知のとおり、ADRについては基本的なところでもかなりの意見の相違があり、どのようにして収斂を図っていくのかということになれば、自ずと項目についても選択しなければならないということになってしまう。関係省庁との折衝が大変だということだけが理由ではなく、この検討会の議論においても調整が大変だというところがあり、今後とも、このような事情を踏まえつつ、うまく作業を進めていきたいと考えている。

 引き続き、資料34-2に沿って事務局より説明が行われ、執行力について議論が行われた。

○ やはり執行力については懸念している。また、消費者団体側にも執行力の付与については話はしてきており、とりあえずは切り離されたような議論で進んでいると伝えてきたので、今回、このようなタイミングで再補強のような感じで検討を求められても、検討する時間もない。2点ほど懸念があり、一つは加重に少し要件を厳しくするということであるが、やはり全体的に認証要件のハードルが高くなるのではないか。もうひとつは、消費者対事業者、労働者対事業者などの局面において、不当請求やサービサーのあたりで消費者が色々な請求を受けているのだが、執行力の付与を獲得するために認証を得るというような本末が逆さまになったような機関が出てこないだろうか。このような懸念もあるので、私としては、将来の検討課題としてほしい。

○ 執行力については各委員のハードルが高いと思っている。最初に審議会意見書が出てADRの部分を見たとき弁護士会のADR関係者は一様に期待し、喜んだ。その理由は執行力と時効中断効の部分にあった。平成2年の弁護士会仲裁センターのスタート時から成立した和解をどのようにして履行させるのかが一番の問題だったし、研究会を継続して開催しているが、常に、その「どのようにして履行するのか」が最大の論点であったはずである。仲裁合意をとって仲裁判断に持っていったり、即決和解に持っていったり、公正証書を作ったりしながら、仲裁センターの信用を維持しここまで遣り繰りしてきた。現在、皆に配られている様々な意見の中には、仲裁センターの関係者からの「執行力は必要ない」という意見があったと思うが、「なくてもいい」と言っている理由は、便法なのであるが、新仲裁法38条決定で行えばいいからというのが最大の理由である。執行力についてはそれだけニーズがあるということなので、そこを考えてほしい。執行力はADR運営側のニーズであって、利用者側のニーズではないとの意見もあったが、運営側が利用者を離れてニーズがあるとすることは有 り得ない。また、便法を使うということは、法律の使い方としては決して正しい使い方ではないのではないか。以上のような理由から、ここは、やはり執行力を正面から認めるべきなのではないか。執行力に反対する人は「ADR和解に執行力を認めることの弊害」というよりはむしろ、執行力そのものの弊害を論じているのではないかと考える。アの認証要件以外の付加的な条件設定も、認証要件のハードルを高くするというわけではなく、認証要件にプラスしてオプションとして要件を加えることによって執行力を認めようとするものである。仮に1)の手続実施者に関する条件で「手続実施者の最初から最後まで全部弁護士が関与すること」とするならば、委任状によりその場で1回で成立させることができ、当事者の意思確認も代理人によって1回で済まされてしまうような公正証書の場合と較べても、ADRは、当事者の意思決定過程を直接確認できるだけ、遙かに良いと思う。それでも不安があるならば、イ1)で請求権を金銭に限ってしまえば、範囲は公正証書とイコールになり、弊害についても、先程述べた理由により公正証書よりも遙かに少ないものとなると考える。

 日弁連は「慎重に」と言っているが、この2つの要件が満たされれば、慎重に行ったと言えるのではないか。 

○ 執行力については従来から反対である。仲裁に移行させて執行力を付与するという実務もある、そして、それは便法だから望ましくないのではないかとの趣旨であるが、そういうことではないと考える。仲裁合意をとって仲裁に移行させた瞬間に、仲裁法の適用を受けるわけであって、例えば、仲裁人に贈収賄の規定が適用されるようになったり、執行決定の審査手続きでは仲裁に従った手続規律が審査されることとなり、しっかりした手続を踏まえていなければ、当然、執行決定が降りない可能性がある。

 調停による和解に執行力を付与することによって生じる問題点は、肝心の手続規定が何も作られていない状態で執行力を付与することは、仲裁とは事情が全く異なるということであり、手続の議論を尽くした上で手続を踏まえて執行力を付与すべきであるというUNCITRALの議論とは似て非なるものである。

 結局、このような状況では、裁判所の執行決定であれ、公証人の執行承認であれ、手続審査が一切行われないこととなるから、和解合意が成立したことのみをチェックすることとなり、何を審査するのかわからないこととなってしまう。

 現在、提案されていることは、結局、和解に執行力を付与せよということのみであるから、調停の振興には繋がらないため、ADRの活性化に繋がるものとも思われない。手続実施者が弁護士であれば良いのではないかという意見も、手続そのものに着目したものではなく、資格者に着目しただけのものであり、奇妙な理屈である。また、世界的にも強いて言えば、ドイツにおける弁護士和解の制度が近いと思われるが、それ以外には類を見ない制度である。ドイツの弁護士和解の制度も御承知のとおり成功しなかった。その辺りの評価も行わなければならないのではないか。そもそも、実施者が弁護士であることに拘ろうとしていることそのものがADRの振興と相反する態度ではないかと思う。いささか誇張であるとは思うが、「弁護士が関与するとまとまる和解もまとまらなくなる」とは現場の方々からはよく聴かれる話である。法律家が関与することが望ましい紛争もあれば、そうではない紛争もある。何でも弁護士が関与すればよいということが前提となっていることがそもそもおかしいのではないか。

○ 弁護士が当初は執行力を望んでいたという意見があったが、それは正確ではなく、賛否の両論があったものと認識している。そして、現在は認証制度に係らしめられるということであれば、執行力に反対であるとの意見の方が遙かに多い状況にある。便法であるとの意見があったが、現在の事件数程度であれば便法で十分であり、便法で手続的なところをチェックできるのであれば、それはそれで良いと考える。また、行政機関による認証によって執行力を認めても良いのか。執行力を認めるのであれば、この類型については執行力を与えたいと考えるもののみについて、法律によって付与することとすればよいのではないか。 

○ 議論は尽きないが、このようなことは時間を限ってその中で議論していくべきではないか。多くの議論に関しては事務局がかなり方向性を示しているが、できれば、その方向性でまとめるような形で案を出していただきたい。また、せっかく、法律を作るわけであるから認証制度は必要と考えるし、和解に至るまでには当事者同士が十分に話し合って和解するわけだから、和解に至ったものについては、それを履行するという形で執行力を付与してもよいのではないか。

○ 可能性を全く否定するわけではないが、執行力の付与については時期尚早であると考える。確かに、現在、実績を持っているADR機関は存在するが、他方、事件屋のようなADR機関も立ち上がってくるかも知れない。スキームとしてADRに信頼性を持たせていくことは必要であるとは思うが、ADRがどのような形で可能性を広げていくのかが予測できない現状では懸念の方が多いのではないかと思う。 

○ 執行力の付与については反対である。また、便法の存在自体が一般的な執行力の付与の制度を合理化する理由にはならないのではないか。便法が存在するからといって、ニーズありとするのはいかがなものか。実際、利用者の立場からもそのような声はあまり聴いたことがない。

○ 執行力を導入すべきであるとの意見である。基本的には高木委員の御意見に賛成である。時期尚早であるとの意見については大変よく理解できるものの、ADRの拡充・活性化を成功させるためにはやはり、最初から「大きく始める」のが良いのではないかと考えている。折角、今般、国を挙げて認証制度というかなり大がかりな制度を導入するわけであるから、その効果が執行力のないものに留まった場合、ややバランスを欠くのではないか。そして、そのような認証制度が巧く機能するのだろうかとの疑問を禁じ得ない。原委員や龍井委員の御懸念も理解できるところであり、対象事件を限定するなどの提案をさせていただいたが、十分な御理解が得られていないことについては認識している。

 執行力の根源は最終的になされた意思表示である当事者の合意にあるものと考えている。仲裁手続の場合は、最終的には仲裁合意が前提となるのであるが、解決結果については仲裁人に預けるわけであるから、そこに至る手続や仲裁人の資格が合わせて執行力の根源になることは当然であると考える。一方、本件の執行力の場合は、最終的な解決内容まで合意しているわけであるから、意思表示の真正が担保されれば執行力を付与することは十分に可能なのではないかと考えるので、手続を定めないで執行力を付与したとしても理論的にはおかしくないと思う。ドイツの弁護士和解よりもフランスのADRに対する執行力の付与により近いのではないか。この制度は、裁判所の執行決定により当事者の意思表示の真正を担保して執行力を付与するスキームであり、基本的には、ここで論じられている制度に近いのではないか。そして、このスキームが破綻したという話は聴いていない。

 次回のADR検討会は、6月14日(月)午後1時30分から開催し、事務局での再検討を踏まえた資料をベースに議論することとなった。

(以上)