○青山座長 それでは、時間になりましたので、ただいまから、第34回「ADR検討会」を開会いたします。
本日は、推進本部事務局から提出されました、裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策と題する資料につきまして、各委員から御意見を承りたいというふうに思います。
お手元のこの資料は、推進本部事務局が、今後、次の国会への提出に向けて、裁判外の紛争解決手続を整備するための法案を策定していくに当たり、どのような方向性をもって立法作業を進めていくかという点を中心に、これまでの検討会の議論を踏まえまして、適宜、関係方面との調整を行いながら、いわゆるADRの拡充・活性化を図るための諸方策をとりまとめたものという位置づけ、そういう性格のものでございます。
したがいまして、この資料は、推進本部事務局が今の通常国会への法案の提出を断念して検討を継続し、過去2年以上にわたる本検討会における議論、更には、今、申しました関係方面との調整を経て提示したものというものでございますので、委員の皆様方にはそういう経過があるということを受け止めていただきたいというふうに思います。
この文章につきまして、更に注文を付ける必要があるかどうか。どういう点が注意すべきことであるかというような観点から、今日の検討会と、日にちが大変近くで申し訳ないのですが、次回6月14日の残されたこの2回の検討会で議論を進めてまいりたいという段階に来ているということを、まず御了承いただきたいというふうに思います。
そこで、資料34-1につきまして、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○小林参事官 それでは、資料34-1について御説明をしたいと思います。
まず、この紙の性格でございますが、今、座長の方からお話がありましたように、推進本部事務局といたしまして、今後、制度面、運用面にわたりまして、どのようなことを講じていくのかということについての考えをまとめたものでございます。その旨、最初の3行に「ADR検討会におけるこれまでの議論を十分踏まえながら、今後、制度面及び運用面の両面にわたり、以下の諸方策を講じていく」という形で表現をいたしております。
全体の構成でございますけれども、Ⅰが、法案の関係、いわゆるADR法案と呼んでおりましたものの内容についての御説明でございます。
若干飛びますけれども、5ページになりますが、Ⅱで「その他の課題」ということで、2点挙げてございます。こちらは1が行政機関が行う、いわゆる行政型ADRについての扱いということでございまして、これらにつきましては、各手続に関わる政策目的に沿って、今、議論していただいておりますような「時効中断効等の法的効果の付与の必要性を個別的に検討し、必要に応じて、所要の措置を講じるよう努める」ということにいたしております。
もう一つの問題が、ADRの拡充・活性化のもう一つの大きな柱でございます、関係機関間の連携の促進についてでございますが、これにつきましては、関係府省等は、いわゆる関係省庁等連絡会議というのを設置し、アクションプランなどをつくって活動を進めているわけでございますが、これまでの取り組みを更に発展させるとともに、紛争解決事業者、いわゆる民間の事業者の方も含め、関係機関の連携の促進に積極的に取り組むということで、この2点を整理させていただいております。
なお、この部分につきましては、これまでこの検討会におきましても、いわゆるADR士というような考え方、あるいは第三者機関の活用といったようなことにつきまして、幾つか御指摘をいただいております。そういったような、言わば、どちらかと言いますと中長期的課題についての検討というのが重要であるということは、私どもも認識いたしておりますけれども、これまでの議論の中で、必ずしも十分時間をとって議論をしてきているわけではないという事情もございますので、これらの課題につきましては、別途機会を設けまして、そういった課題についての整理が可能であれば、整理をしていきたいというふうに考えております。
それらについては、若干お時間いただくことになるかもしれませんけれども、そのような前提でこの「その他の課題」というのが2点挙げてあるわけでございます。
1ページに戻っていただきまして、Ⅰの裁判外の紛争解決の促進等に関する法案、これはあくまでも現段階では仮称でございますが、この策定という中身でございます。まず、仮称ではございますが、こういった文言を用いたことにつきましては、まずADRをどのように日本語として表現するのかということにつきましては、これは国民になじみやすいものをということで、いろいろ御指摘はいただいたわけでございますが、多種多様なADRを、法案でございますので、過不足なく表現をする必要があるわけですけれども、そういう多種多様な対象について、皆さんが持っておられるイメージを過不足なく表現する言葉となりますと、やはりどうしてもやや機械的な表現になってしまいまして、なかなかそういう意味でアピールする点に欠けるかもしれませんけれども、「裁判外の紛争解決」という表現をとらさせていただいております。
これまでの立法例につきましては、「裁判外の紛争処理」という言葉がおそらく2例ほどあったかと思いますが、この処理という言葉につきましては、若干イメージの問題として適切ではないのではないかという御指摘もこれまで受けてきたところでございまして、今回は「裁判外の紛争解決」ということで整理をしてはどうかというふうに考えております。
この法案の目的でございますけれども、第1パラグラフにございますように、ADRは紛争解決方法に対する多様で広範な国民の需要に応える上で重要な意義を有するものであることにかんがみ、国民が多様な紛争解決方法の中から適切な紛争解決手続を選択できる機会を拡充し、国民がより利用しやすい紛争解決制度の実現に資することを目的といたしておりまして、裁判外の紛争解決手続、ADRに関する制度基盤を整備する法案というふうに位置づけております。
具体的な内容につきましては、次のパラグラフでございますが、1つが、国民が安心して質の高いADRを利用できる環境の整備に関し、基本となる事項を定めるということでございます。併せて、民間の行う紛争解決手続の利用者の利便の向上等を図るための認証制度の創設ということで、言わば2本立てということで整理をいたしております。
これらにつきまして、具体的な内容は以下のとおりではありますが、法制的な検討も含め関係方面と引き続き調整を行いながら、1から3までに掲げる方向性を踏まえて立案作業を進めていきたいというふうに考えております。
若干、先走った話になるのかもしれませんけれども、この方向性で仮に立案を進めていくということになった場合におきましても、当然のことながら、これだけの議論があった問題でございますので、説明会などを開催し、幅広い御意見を伺いながら進めてまいりたいというふうに考えておりますし、その進捗状況については検討会にもお諮りをしていきたいというふうに思っております。
1の「基本的考え方等」でございますけれども、枠がこいの中にありますように、ADRが裁判と並ぶ紛争解決の選択肢として健全に発展する基盤を整備する際の基本的考え方を明らかにするということでございます。
以下の内容につきましては、前回の検討会におきまして、口頭でお話を申し上げておりますが、それを紙に整理をいたしております。以下のような考え方が重要であることを十分に踏まえながら、具体的な立案作業を進めていきたいというふうに考えております。
1つは、ADRは紛争解決方法に対する多様で広範な国民の需要に応える上で重要な意義を有するものであるということ。
2つ目が、多様なADRが裁判と並ぶ紛争解決の選択肢となるよう、それぞれの特性を生かしつつ、その適正かつ実効的な実施が確保される必要があること。
3番目として、基盤の整備は、国、地方公共団体あるいは民間のADR事業者、その他の関係者の連携と協力の下に推進されなければならないこと。
4番目といたしまして、以上申し上げたことは行政型なども含めた全体についてでございますけども、特に民間のADRの基盤の整備に当たっては、紛争解決事業者その他の関係者の自主性、自立性が十分配慮されなければならないことということでございます。
2ページ目にまいりまして「国の責務等」でございますが、この点につきましても、前回の議論で口頭でお話をした点につきまして、紙に整理をいたしております。国の責務といたしましては、国民の理解の増進、手続実施者等の担い手の確保、育成、関係者間の連携や協力の促進ということでございます。また、地方公共団体につきましても、国に準じADRの健全な発展の基盤の整備に努めるべき責務があるのではないかということでございます。
2にまいりまして、民間のADR業務についての認証制度でございます。
まず(1)で「認証の対象業務」でありますが、これは前回の議論を踏まえまして、仲裁については認証の対象としないということにいたしております。仲裁については、既に仲裁法が整備されておりますし、法的効果についてもほとんどのものが整備をされているということを踏まえた措置でございます。
また、併せて、本文の方におきましては、国または地方公共団体が指定する者が個別法の規定に基づいて行う業務等も認証の対象から外しておりますが、これは具体的には国または地方公共団体に、言わば、成り代わってADRを実施するというような機関のケースでございますので、これについては行政型ADRに準ずるものとして対象から除いているということでございます。
(2)の「認証の手続」でありますが、まずアでありますけれども、これは認証は任意だということを表現したものでございます。「認証を得ることを紛争解決事業者がその事業を行うことの要件とはしない」ということでございます。
イも、ある意味では当然のことではございますけれども、「主務大臣は、認証の申請が一定の要件を満たすと認めるときは、認証しなければならないものとする」ということで、主務大臣が勝手に認証したり、あるいは認証しなかったりということはできないということを明確にしたものでございます。
ウといたしまして、認証の要件の総論でございますけれども、認証制度につきましては、広く国民に紛争解決方法の選択の目安を提供するなど、そういった制度導入の趣旨を踏まえ、まず公正・適確に業務が行われることが確保されるということが必要になるわけでございますが、他方、幅広い紛争解決事業者が認証を受けられるような設定となるよう留意するということでございます。また、政省令等を通じて、それぞれのより詳細な審査基準を示すということでございます。
具体的な認証の基準につきましては、1から4までは、これはこれまで御説明をしてきた内容を踏まえたものとなっております。Aでは、暴力団員等の排除という不適格事由でございますし、Bでは、公正・適確な業務遂行能力。Cとしまして、手続準則を定めていること。手続準則につきましては、すべて法律で決めるということにはならないかもしれませんけれども、具体的な内容としては、注で掲げているようなものを念頭に置いております。
Dとしまして、兼業している場合、それが公正な実施に支障を及ぼすおそれはないことということでございます。
今回、Eというものを加えておりますが、これは弁護士以外の専門家の方の活用に関する規定でございます。「適切な手続実施者が選任され、かつ、公正・適確な手続の進行が確保されるための適当な措置が講じられるものと見込まれること」というふうにいたしております。この問題につきましては、一方ではADRの特性でございます、多様な専門家に活躍していただきたいという一つの大きな要請と、やはりADRであっても公正・適確な業務内容が確保されなければならないという、2つの要請をいかに調和させていくのかという問題であろうかと思いますが、この点については以下のような措置というのが必要ではないかというふうに考えております。
注のところにございますように、1つは「手続実施者のうち少なくとも一名は弁護士とすること」ということでございます。
他方、それでは手続実施者のうちに弁護士が全く含まれないケースについてはどう考えるのかということでございますが、これについては手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けることができること等、必要な体制が整備されているということが確認できれば、この認証の対象とし弁護士以外のものが業務を行うということを認めてもよいのではないかということでございます。
先ほど申しましたような要請を総合的に勘案してこのような形。非常に端的に申し上げれば、いざという場合には弁護士のバックアップが適切に受けられるということを確保するということでございます。
(3)が「認証事業者の義務」でありますけれども、手続実施者等は認証業務の実施に関し、その公正性・適確性の確保のため、一定の義務を負うということにいたしておりまして、具体的な内容はAからFまででございますけれども、その内容につきましては、従来、御説明をしているものを踏襲いたしております。ディスクロージャーの問題、利用しようとする者に対する重要事項の説明、手続準則の遵守、暴力団員等の補助者などとしての使用の禁止、守秘義務、それから、利用者などから苦情があった場合に適切に対応するといったものについて、義務として提示をいたしております。
4ページにまいりまして「認証事業者の監督」の問題でございますが、これにつきましては、やはり認証制度の実効性あるいは認証業務の適正性を確保するために必要な範囲で、ある程度の監督の規定は必要ではないかということでございます。具体的には、これまで御説明をしてきたものを整理いたしておりますが、帳簿書類の作成保存、事業報告書の作成あるいは報告徴収、業務の改善命令、認証の取り消しといったようなスキームを考えております。
(5)で、認証されたADR業務に関する法的効果の付与の問題でございますが、枠内にございますように、名称の独占、認証を受けているという旨が表示できるということ。これは裏を返しますと、認証を受けていない方がそのような表示をするということは許されないということになります。また、先ほど申しました、弁護士でないものが手続を実施するということに関する規定を設ける。ほかに下にございます、AからCの内容を考えております。
Aは「時効の中断」でございますし、Bは「訴訟手続の中止」、Cとしては「調停前置の特例」ということでございます。このほかに執行力の付与ということが、これまで議論されてきたわけでございますが、御承知のようになかなか賛否が分かれているという状況でございますので、本日の時点では後刻、御議論いただくということで、この段階ではPという形で表現をいたしております。
5ページにまいりますが「その他」ということで、(1)で「主務大臣」についての言及をいたしております。この問題につきましては、かなりこの検討会でも御質問をいただきましたし、その限りの中でお話もさせていただきましたけれども、本来であれば法案の内容はかなり固まってきた段階で具体的に関係省庁との間で調整をし、適切な機関を選定していくということになろうかと思いますが、そういう意味で言うと若干フライング気味の感がないわけではありませんけれども、やはりこの点についてある程度明確にならないと、制度全体に対するイメージがわかないという、強い御要請もございましたので、若干整理をさせていただいております。
主務大臣につきましては、法的効果の内容等にかんがみ、基本的には法務大臣とする方向で立案作業を進めるわけではございますが、これもこれまでの検討でお話しを申し上げてきましたとおり、申請者が公益法人であるようなケースあるいは申請者の取り扱う事案の内容が特定の行政分野に特化しているようなケースなども含めまして、更に検討をするということでございます。
それから、イといたしまして、第三者機関への諮問ということでございます。これも厳密に申し上げれば、国の機関の新設あるいは権限の拡大ということになりますので、所要の調整を経た上でのことということになるわけではございますが、この点についても検討会の中ではかなり強い御要請があったというふうに認識いたしておりますので、このような形でお示しをいたしております。認証等に関わる主務大臣の処分は原則として、第三者機関への諮問を経て行うものとする方向で立案作業を進めるというふうにいたしております。
具体的な内容としては、認証する場合、しない場合、認証を取り消すような場合というようなことが考えられるかと思いますが、具体的な機関あるいは今、申し上げた諮問を行うべき事項の範囲につきましては、更に検討させていただきたいというふう考えております。
(2)といたしまして「罰則」につきましては、内容に応じて所要の罰則規定を整備するということになろうかと思いますが、現時点で特段、他の制度と特に異なる扱いと申しますか、特にほかのものより厳しくするとか、あるいはほかのものより緩いものにするというようなことを想定しているわけではございません。
2の「その他の課題」については、冒頭触れたとおりでございます。
ちょっと駆け足になりましたが、以上が資料の御説明でございます。
○青山座長 ありがとうございました。
それでは、資料の内容について、御意見を伺っていきたいと思いますが、1の「裁判外の紛争解決の促進等に関する法案の策定」という部分について、まず御意見をいただきたいと思います。この部分は、繰り返しになりますけれども、今後、事務局が関係方面や法制局等とこの法案をつくっていく際の骨格として、こういう方向でこれから動いてよいかということについて、御意見をいただきたいということでございますので、そういうものとして議論をしていただければと思います。
このうち、執行力につきましては、今、御説明にありましたように、本日もう少し議論を詰めた方がよいと、そして、方向性を見た方がよいというのが事務局の考え方でございます。したがいまして、これは後ほど、別途時間をとることにいたしまして、まず執行力以外の部分ですね。この1の部分のうちの執行力を除いた部分を、つまり5ページの真ん中辺までの部分のうち執行力の部分を除いたものについて御意見をいただきたいというふうに思います。議論もここまでまいりますと、各委員におかれては、それぞれ御自分が今まで発言をしてきた御意見の重みということもありますでしょうし、いろいろな思い入れもあると思います。そのことは私も十分にわかっておりますけれども、本日の検討の目的が、先ほどから繰り返して申しているようなことでございますので、できるだけポイントを絞った形で御発言いただきたいというふうに思っております。
本日、安藤委員と綿引委員は、この会議を急遽入れたものですから、所用のために出席できないということでございますが、それぞれ事務局の方では事前に説明を申し上げた上で御意見もいただいているということでございますので、その箇所で簡単に御紹介をしていただくということにさせていただきたい。
では、お願いします。
○小林参事官 御意見をいただく前に恐縮ではございますが、コメントをお預かりいたしておりますので、御紹介をしたいと思います。
まず、安藤委員でございますが、全体につきましては「『相談』はADRを支える重要な役割を果たすものである。これまでの検討を踏まえると、『ADRの拡充・活性化を図るための諸方策』の一つとして、何らかの形で、その趣旨または文言が表れるよう工夫してほしい」。
2つ目の点といたしまして、「ADRが健全に発展していくためには、ADR機関が一つの連絡協議会の下に集まり、統一的な手続実施者資格の付与を含め人材育成等の面で連携・協力していくことが重要であり、国も、運用上の課題として、積極的に取り組んでいく必要がある」ということ。この2点が全体についてのコメントでございます。
認証制度につきましては「認証制度を設けることについては、認証制度そのものが、利用者にとってADR機関の選択に際し目安になるだろう、という点で反対するものではない。但し、認証制度導入により、ADR機関の自由な活動が阻害される、また、認証レベルのハードルが引き上げられることは避けるべきであり、十分な配慮が必要である」。
認証制度についての2点目でございますが「弁護士の関与のあり方については、必要な場面で、弁護士が状況に応じて関与する事は、実体に照らして考えると、常識的には、当然であろうと考える」というコメントでございます。
若干このコメントに対するコメントと言いますか、それをお話させていただきますと、まず相談につきましては、御指摘のように、これまでも相談の重要性につきましては、るる御指摘をいただいてきているところでございます。ただ、一方で相談というのはADR以上に非常に多種多様な性格のものがあるということで、一律に法律の規制と言いますか、規律の対象にするというのは適当ではないという御意見もかなり前々からいただいてきているところでございます。
したがいまして、この安藤委員のコメント、相談について何らかの形で表れるようにという点につきましては、現時点で私どもとしましては、5ページの「その他の課題」のところの「関係機関間の連携の促進」のところに、ADR事業者も含めというふうに書いてあるわけでございますが、ここに相談機関も含めという形で取り入れさせていただければというふうに考えております。しばしば御紹介しております、ADRについて私どもがつくりましたパンフレットの右側半分は、実は相談機関でございますので、そういった実態も踏まえまして、今後とも、相談機関も含めて関係機関の連携を図っていきたいというふうに思っております。
綿引委員の方からは、読み上げ用のメモという形ではいただいてございませんが、幾つかコメントをいただいておりますので、併せて御紹介をしたいと思います。
まず、認証制度の採用につきましては、「一方でその弊害を生ずることがなく、他方でそのADRの自主性が損なわれることがないように配慮しつつ、認証制度を採用する方向でADR促進法の立法を検討することにつきましては、これまでの検討の経緯に照らして賛成」ということでございます。
また、認証要件については、事務局案に基本的に賛成ということであります。
他方、具体的な法的効果につきまして、調停前置につきましては、認証ADRについて調停前置の原則を適用しないというとを、要するに、原則と例外を引っくり返すということを何らの留保もなく置くということには懸念を表明されておりまして、何らかの例外というのが考えられてよいのではないかという御指摘でございます。この点につきましては、先ほどの御説明では言及いたしませんでしたけれども、私どもとしても、そういう例外を置く必要があるかどうかということについては、今後も検討していきたいというふうに考えております。
それぞれ、お二人からは執行力についてのコメントもいただいておりますが、この部分については執行力を議論していただく際に御紹介をしたいと思います。
以上です。
○青山座長 それでは、今の欠席された方の意見の紹介を口切りにいたしまして、後は皆様の御意見を自由にお聞きしたいというふうに思います。
範囲は先ほど言いましたように、1の部分のうちの執行力を除いた部分というところでございますので、どうぞ御自由にどこからでも。
髙木委員、どうぞ。
○髙木委員 検討会も、あと1回を残すだけになりましたので、座長が言われたようにできる限り法案をまとめる方向で意見を述べたいと思っています。どんな問題でも論点を議論し始めれば何年も掛かったりすることは普通ですし、論点は1つではなくてたくさんあるわけですから、更にADR問題は難しいということもあって、そろそろ収束すべきものと承知しております。
今回、40年ぶりと言われる司法改革の中でとてもよかったなと思っているのは、要するに、法律は国民のためにあるのだということを再確認したところと、法律がそのためのツールであるという認識が全体として示されているように思われることです。ですから、法律をつくるときに常に100 %の望ましいものというのはあり得ないので、以前、平山先生がおっしゃったように、上下15%を取って、真ん中70%の平均値でというような考え方で、私も考えることにしたいし、もし、法成立後運用で問題が起こればその時改めればよいと考えようと思っています。
コメントとしては3点ですが、執行力は後でというふうに言われましたので、2つだけ申し上げます。
弁護士関与の在り方について、認証要件として取り入れるということが示されております。私も個人的には別個の考え方をしておりましたし、72条というのがもともと個別の案件について、弁護士が関与することによって国民の権利義務を守ろうということを目指していたものだとすると、これを認証要件という形で取り込むと、どちらかと言うと、具体的要件において適正にそれが行われるかどうかというより、体制の整備をするような形になってしまいますから、末端の紛争処理の、本当に適切に弁護士が関与すべきところで関与しているかどうかということについて不安がないわけではないのです。ですから、できれば、この(3)の「認証事業者の義務」というところで入れてほしいというふうに考えていたわけですが、前回ヒアリングのときに、日本商事仲裁協会とPLセンターの方に、どういう場合に弁護士が関与しておられるかということを御質問したときに、それぞれ悩みながら弁護士が必要と思われると考えられる場所で、明確には回答はなかったとは思うのですけれども、非常に善意できちんと処理をされているように思われました。それは言葉に表現すると、おそらくここにあるよう
な「手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けること」ということに尽きるのかなというふうに思います。
前回お出になった2つの機関というのは、どちらかと言うと、今の社会においては優良なADR、いわゆる優等生ですから、今後、法律ができることによって多種多様なADR機関ができたときに違法なことも躊躇なく行うような機関がでてきたときに、これで対応できるかどうかということが問題になるのだろうとは思うのです。ただ、もう常に100 %の制度はあり得ないということと、そのために認証制度を入れたのではないかということを考えると、認証制度について全ての人がもろ手を挙げて賛成しているわけではないけれども、これ以外に弊害を防止する方法がないとすれば、これはやむを得ないと考えました。認証制度によって主務官庁が監督をし、その監督をうまく機能させるためには、その認証要件に入れた方が後の運用においては、より適切な監督ができるということは言えるとは思います。ですから、そういう意味でこういう考え方をして認証要件とするというのはわからないではないというふうに思いました。
もう一つ、時効中断のところなのですが、これは質問というより、ちょっと確認をしたいと思っておりまして、昨年だったと思うのですが、この合意が成立しない場合に、一定期間に訴えを提起されたときは、申立てのときに訴えを提起されたものとみなすというときの、「訴えの提起」の中に「仲裁の申立て」が入るのかということを、三木先生が御質問なさったと思います。そのときに、事務局の回答としては、当然入るというような前提であったような記憶があるのですが、そのとき議論したのが、事前確認の下での時効中断効ではなかったと思うので、今回、個別労働タイプということでこの時効中断効が入ったときに、仲裁は含まないという考え方もあり得ないではないのかなと思うのです。そういう趣旨だと困るなと思って質問させていただいたのですが、ここはもしそうだとすると、そうでないような形で明瞭に入れていただきたいというふうに思いました。
その2点です。
○青山座長 今の仲裁の時効中断の点は、確か三木さんがおっしゃったと思います。今、何かお答えすることがあったら。
○三木委員 ほとんど記憶がなく、そのとき、どう申し上げたかはよく覚えておりません。
○青山座長 それでは、今の御意見を踏まえて、事務局の方で仲裁についてはそういうことにならないようにすることも考えられるのかもしれません。
○髙木委員 これは仲裁を除くという趣旨で書かれているのかどうかという点だけ確認させてください。
○小林参事官 その点につきましては、今お話があったとおり、仲裁の場合にも同様の効果が期待されてしかるべきだと思っております。ただ、法文上、それを明記する必要があるかどうかということは議論があり得るようでございますが、実質は御心配の点はないと思います。
○青山座長 廣田委員、原委員ですね。
では、廣田委員。
○廣田委員 今、72条の問題が出たから、それに関連して一部を申し上げますけれども、これはむしろ確認したいことなのですが、4ページの真ん中辺に(5)のアというところに「弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設ける」ということなのですが、72条適用を排除するという規定は設けないという趣旨ですね。設けようと設けまいと72条の適用は認証制度で排除できませんね。これは前々回、髙木委員の発言もありましたし、三木委員もだからこそ、これが問題だから議論しようではないかという発言があったのですが、この表現はこの点が非常にあいまいです。ですから、認証制度を設けても72条の適用はあり得るということは、これはこの際はっきりしておいていただきたいのです。これにより、その後の実務上の制度設計がまるっきり変わってきます。
私は仮に、72条の適用を排除すると言っても、脱法行為その他のことがあるから、結局この認証制度は72条は適用は排除できないということは、書こうと書くまいと適用はあり得ると前々回聞いておりましたけれども、それはそういうことでよろしいですね。それは今日はっきりしていただきたいと思います。
○青山座長 その点、どうぞ。
○小林参事官 ちょっと御質問の趣旨がよくわからない面もあるのですが。
○廣田委員 私の質問は簡単なのです。この法律の中に72条適用を排除すると書くのか書かないのか。仮に書いても書かなくても適用は完全には排除できないだろう。その2点です。それだけは、書くか書かないかは質問ですけれども、後半の部分は私の意見もあるけれども、適用は排除しない、できないはずですね。それは前々回、髙木委員の意見もありましたし、三木委員の意見もあったわけです。そういうことだけは、はっきりしておいてほしいと思います。4ページの表現は非常にあいまいです。
○小林参事官 まず、前段の御質問については、今おっしゃったような表現をとる必要があるのかどうか。これは他の立法例との横並びなどもございますので、それを踏まえて法制的に今後、検討したいというふうに考えております。
○廣田委員 今後、検討するのではなくて、それでは困るのですよ。次回までしかないですから。適用を排除するという文言を書き込まないのですね。そういう前提でこの提案は出ているのですね。
○小林参事官 それが第2の質問に関連するかと思いますが、いずれにしても、弁護士でない者による手続の実施ができるような規定を置くということでございます。
○廣田委員 それでは、答えになりませんよ。つまり、認証があっても72条の適用は完全には排除できないのですねということを言っているのです。
○青山座長 こういうことなのですね。これは立法例の中では「72条にかかわらず」という書き方と、こういう「72条にかかわらず」ということではなくて、実際上に「72条にかかわらず」という消極的な形ではなくて、これこれのものができる、という形で書くのと両方あると思います。これは原案としては、弁護士でない者による手続実施ができるということの規定を書こうということなのですね。それで、その効果でございますけれども、それは公序良俗違反とか、そういうことになれば、それは勿論72条が被ってくるのは当たり前で、そのことは当然のことです。しかし、通常の場合、72条をこういうふうに規定を書くことによって多様な弁護士以外の専門家が安心して手続に関与できるような、そういうことになるという理解です。
原委員、どうぞ。
○原委員 多分、書き方というか、ポジティブに書くのかネガティブに書くのか何か、そういうことかなと思います。
○廣田委員 今の質問ちょっと途中なのですが、要するに、今、小林参事官の答えは72条適用排除と書くのか書かないのかという私の質問については、お答えはないのですよね。この文章には、それを書かないというふうに聞いていいですね。
○小林参事官 これから検討すると申し上げているので、そのとおりに受け取っていただきたいと思います。
○廣田委員 これから検討するでは、困るのではないですか。
○小林参事官 実質的な効果については申し上げているので、それで御判断をいただきたいと思います。
○廣田委員 それでは判断できませんよ。これから検討するのでは。だって、それはここで議論して、こうなると言うから、それでイエス、ノーの答えが出る。
○小林参事官 ですから、こうなると申し上げているのです。
○廣田委員 これから検討するでは、わからないではないですか。
○小林参事官 だから、効果についてはこうなると申し上げているのです。
○青山座長 法文上の書き方はいろいろあると思うのですが、その効果は同じだというふうに、私は考えています。
○廣田委員 効果は要するにというか、今、座長が言われたように、普通だったらいいけれども、そうでない場合は適用される場合があるという言い方ですよね。簡単に言えばそうですね。
○青山座長 それは、もう違法行為になるようなものですね。
廣田委員の心配している点は、私も全く同じなのですよ。それで多数多様な専門家が安心してADRの機関に関与するということは、司法制度改革意見書もまさにそれをねらっているわけですから、それを実現したい。実現するための書きぶりというのは、72条を排除するというふうにストレートに書く書き方もあるだろうし、それをもっとポジティブな、こういう人たちが関係するというふうに書くこともできる。そうすれば、その効果として、私がさっき公序良俗というちょっと変な、私は民事法なものですから、民法のあれを出したものですから、ちょっと誤解があったかもしれませんけれども、その刑事的なことでは「72条にかかわらず」というふうに書いた場合でも、これこれの人間がその紛争解決機関として関与できるというふうに書くならば、それがその認証を受けた効果として、そのとおりの効果が生ずることになると御理解していただきたいと思います。ちょっと私が、公序良俗と言ったものだから、わかりにくくなったかもしれません。
○廣田委員 私の申し上げたいことを言いますと、要するに、既成のADR機関はその72条の今の扱いによって認証を受けるかどうかを考えなければいけないのです。それから、これから新設するADR機関は今の扱いによって制度設計が変わってくるのです。だから、これは非常に重要な問題です。
私は、認証という匙加減でこの72条の効果が変わるようでは困るということを言いたいのです。ですから、何度も言うように、私は認証制度は問題がある、反対であるというのは、それを言っているのです。それも一つの重大な理由です。一応、私の意見はそこでとどめて、後でまた追加して申し上げます。
○青山座長 認証制度の匙加減ということを言われましたが、匙加減一つでというわけではなくて、やはり適確・公正なADRの手続が行われるかどうかということを判断して認証を与えるかどうかということを決めるわけですから、決して匙加減というようなものではない。
○廣田委員 認証を与えるかどうかの後でも検査があったり報告徴収とかいろいろなことがあるわけです。行政というのはそういうものですからね。だから、行政機関が介入していいかどうかというのは、そこにかかる問題なのです。私が言いたいと思っていることは、入口だけではないのです。
○青山座長 いいですか。
では、原委員、どうぞ。
○原委員 意見と質問なのですけれども、33回も検討を重ねて、私も発言したことが入ったり出たり、入ったり出たりというふうにしていて、だから、また重ねての発言のようにはなりますけれども、意見ということでお願いしたいのですが、基本的考え方の部分なのですけれども、ほかのところは全部認証に関わるというところになってきますので、ここのところが認証を受けないADRの人たちにとっては大変よりどころになるし、消費者とか利用者から見ても、ADRというものが、こういう基本的な考え方にのっとってやっているのだという、やはりそういう意味では非常に重要な柱だというふうに思っております。
その意味からすると、今の書きぶりでは、やはりちょっと不足というようなことを感じております。1つはこのDのところに、「紛争解決事業者その他の関係者の自主性・自立性が」というふうに書かれているのですけれども、その紛争解決事業者の自主性、自立性というのは当然なのですけれども、もともとこのADRの議論をしているときに、紛争を抱える当事者同士が主体的に解決をするものであって、それをサポートするというか、その手助けをするというのがADRの役割ではないかという話をしていました。その当事者同士が主体的に解決をするようなニュアンスがちょっと読み取れない。ただ、選択をするという意味のところでは、多様なものがあって、それぞれ魅力的なもので選択をしたらよいというふうにはなっているのですが、選択は勿論なのですけれども、それにとどまるのではなくて自分たち同士で解決をしていこうという、それをサポートするというようなニュアンスが欠けていると思われますので、加えていただきたいというのが1つです。
安藤委員の方から、相談の話が出ているということだったのですけれども、先ほど、関係機関間の連携のところに、その相談機関の話も入れるというお話だったのですが、私はやはり基本的考え方の中にこういった紛争の一番根っこにあるのが相談というところだと思いますので、やはりそういったものの重視が入っていた方がよいという感じがいたします。そこが手厚くないと紛争解決のところに来たときも非常に困難なような気がいたしまして、やはりその相談のところも丁寧に書き込んでおいていただきたいと思います。それが2つ目です。
3つ目が、調停とかあっせんとかという言葉の定義なのですが、これは認証のところでは調停とあっせんという言葉が出てくるので、ここではその定義の規定が置かれるのだと思いますけれども、やはり基本的な考え方の方でも少し、この言葉を使うのかどうかは別ですけれども、言葉の定義のようなことへの配慮規定と言うのでしょうか、そのようなものは必要ではないかというふうに思います。
もう一点なのですが、前回も申し上げたのですけれども、事業者対消費者とか事業者対労働者といった弱者への配慮規定が要るのではないかということを発言したのですが、確かあのときのお答えでは、一般的な条文の中で読み取れるとかというような御回答が事務局からあったような気がするのですけれども、やはり基本的考え方の中にもそれぞれの紛争を、当事者が置かれている状況といったところを配慮するのだというような規定が入るべきではないかと思っていて、基本的考え方のところをもう少し充実しておかないと、認証を受けないADRのところは何か認証を受けているところと随分差があるように見えてしまうのではないかというような感じがしております。そこが大きな意見の1点目です。
2つ目なのですが、2ページからの認証の話が入ってくるのですけれども、こういった紛争解決だけを担うADRとして立ち上がっているところだけではなくて、中には苦情相談業務も抱えている中で、その紛争解決というような業務を抱えているというようなときに、いろいろと立てられている認証の要件がどこまでを見るのかなということを疑問に思っています。その紛争解決のところだけを見て、その要件に当てはまっているかどうかを見るのか、それともやはり相談を兼務でやっているようなところは、その相談の部分まで見ていくのかどうかというところが、どこまでを対象にするのかというのがわからない。これは質問です。
大変たくさん申して申し訳ないのですが、3ページ目なのですが、「認証事業者の義務」のところですが、これも何度も申し上げているように、利用者・消費者からすると、そのADRがどういった紛争を扱い、どれぐらいの件数があり、どういった結果を出しているのかを見ないとよくわからない。それは個人情報とかプライバシーとかは勿論配慮していただいてよいのですけれども、やはり扱った案件の概要が見えないと、消費者としては選択ができないと思っておりまして、こういった手続に入るときの一定の事項とか内容の説明とかいうのは、勿論これは当然なのですけれども、ここに扱った案件の概要の開示義務ですね、これを是非設けていただきたいと考えております。特に事業者対消費者とか事業者対労働者のようなところでなされている結果のようなものを、やはり選択のためには見たいというふうに思いますので、御検討していただければと思います。
今のところ、以上です。
○青山座長 わかりました。それについて事務局から。
○小林参事官 たくさんいただきましたけれども、答弁の関係上、若干順不同でお答えしますので、もし抜けがあったら教えていただきたいと思います。
まず、最後の点のディスクロージャーの点でございますが、これにつきましては、もう少し詳細な論点を提示したときには、公表の内容としまして、「紛争解決の実績の概要」というのを入れてございまして、今回は等の中に入っているので、そのような御指摘だと思いますが、特に他意はございませんので、重要だということであれば、復活と言いますか、明示をさせていただきたいと思います。
次に、相談も一緒にやっている場合、どこまで見ていくのかということですが、これは相談に限らず他の業務を行っていく場合でも同様かと思いますけれども、要するに、紛争解決業務を行っている関連の事項を中心にみていくということで、一律にどこを見てどこを見ないというわけには申し上げられませんけれども、ほかの業務を行っているからと言って特段特別な扱いになるということではない。認証基準のところで他の業務をやっていることが、本業務の公正性に支障を生ずることはないかというようなところは勿論、見るわけですけれども、基本的にはADR業務を行っていることに関するところを見ていくということになろうかと思います。
最初に第1番目ということでいろいろ御指摘をいただきましたが、先ほど、冒頭の説明で2本柱だということで申し上げましたし、私どもとしてもできる限りこの部分は充実させていきたいというふうに思っておりますが、法律ということでもございますので、精神規定的なものはなかなか入れにくいという事情にはあろうかと思います。総論として、その部分がないと認証ADRと非認証ADRですごく落差があるというような感じを受けられるということではありましたが、そこは本来そういうようなものではないのではないかというふうに感じております。
すみません。これは逆に質問になるのですが、3番目におっしゃった言葉の定義への配慮というのはどういう御趣旨ですか。
○原委員 大変たくさんの言葉が使われましたね。調停とかあっせん、相談とか苦情は別になりますけれども、この認証の要件のところで定義をするというのではなくて、基本的考え方のところで定義規定を置いてもらえないかということです。
○小林参事官 定義規定をどこに置くかはともかくとして、定義自体はおそらく全体にかかるように勿論、措置をするつもりであります。また、ここのADRの中には先ほど触れなかったかもしれませんが、調停以外のものも含めて考えております。
社会的弱者に対する配慮という、先ほどの一般的な考え方の整理の中で特に力の格差がある場合、あるいはいわゆる社会的弱者に対する扱いの問題につきましては、おそらくは理念として、あるいは何らかの表現として残すということというよりも、むしろ実質的にそれをどう担保していくのかということが重要になるのではないかというふうに思いますので、その点につきましては認証の具体的な基準でありますとか、あるいはまた、先ほどおっしゃった情報開示のところで、ある程度どういう組織であるということがわかれば、それはその利用者にとって、その機関を利用した方がよいのかどうかということもわかりますし、更にはまた監督のところでそういう違法な調停などによって社会的弱者が不測の損害を受けるようなことのないように考えていくというような、具体的な制度設計の中でやはり考えていくことにしたいというふうに思っております。
○青山座長 どうぞ。
○龍井委員 今、原委員が指摘された問題と若干ダブりますので、先に発言させていただきたいのですが、まず1ページ目の一番最後のDの自主性、自立性の問題があります。確かにこれは、この間というよりは、この検討会が始まって以来のキーワードでずっと議論してきたことですので、どこか、なお書き的に入るというより、前も申し上げましたけれども、一種のメッセージ性としての発信ということで言えば、何らかの形で総記的なところに浮上させほしいと思います。後ほどの論点にも重なりますので、それが1点目です。
2点目は、2ページ目の一番下のウのところで、私はこの審査基準というのは何かこれを明確にすることがハードルを深くするということはイメージとして持っていなくて、むしろそうならない、誤解を与えないようなものにきちんとすべきだということを考えており、そういった意味では、やはりこれは政省令マターというよりはもっとここの基準の在り方について国民的な議論と言いますか、納得がいくようなものに、つまりオープンな議論をすべきだと思いますし、できる限り、これは法律事項に入れられないかというのが2点目です。
3点目は、3ページから4ページにかけてなのですけれども、相談と並んで苦情処理という問題が結構位置づけとして議論されてきましたけれども、これは一般的な相談と併せたような苦情処理という問題と、ここではむしろ認定の付与から4ページの監督ないし認定の取消しに至るスキームの中でその苦情処理をどう位置づけていくかということを、もう少し明確にしていただきたいなと思っています。つまり事後的なチェックという場合に、例えば、どこまで何を求めるかという議論があるところですが、報告徴収を求めるという場合に、では、どういう発信があって所管庁はそれ対応して動くのかというときに、果たしてそれは一つひとつ本省に連絡があるとは限らないわけなので、やはりまさにそこはハードルが低いところで、そうした苦情処理が受け入られ、そして、その中身自体に行政が介入することはあり得ないわけですけれども、そういうトラブルが多いところについて改善命令ないしは甚だしい場合は取消しに至るということになるのであれば、そのトラブルがそういうふうに、本当はそれ専用のADRでもできれば一番よいのかもしれませんけれども、現状ではそういう発信が受け止め
られるようなスキームを是非考えていただきたいというのが3点目。
4点目は、原委員が今、御指摘になった点に関わるのですが、私ども、前回欠席して、もう少し早く提起すればよかった問題かもしれないのですが、実はBtoCないしは力関係が明白である場合の紛争の扱いについて、どう取り上げるべきかという問題があります。3回ほど前に問題だけ提起をさせていただいて、特にこの検討会では個別の紛争分野とか個別の紛争タイプについて議論をするという場面がございませんでしたので、今まで議論を控えてまいりましたけれども、ちょっとお時間をいただいて問題提起させていただきたいのは、実はやはり労働紛争というのが極めて特殊だなということを最近痛切に感じておりまして、最近できました都道府県の個別論争紛争解決の機関の中でも、実は使用者側の訴えというのが非常に増えています。これは必ずしも裁判に訴えるようなものにいかないのだけれども、例えば、本当に軽い損害賠償とか教育訓練の損害賠償あるいは退職の要求に伴って損害賠償をぶつけてくるとか、実は本音でやっているのではなくて極めてだめもとでやっているというような、かなり乱暴なケースが増えてきて、そういったものが我々が都道府県地方連合会でやっている労働相
談でも増えてきています。
したがいまして、今、起きている問題というのは言ってみれば、今のスキームでは情報の開示をなるべく多くし、そして、利害関係についても情報の開示をし、それが自由な選択によって、それが嫌であれば乗らない、断るということが前提になっているわけですけれども、今の労使関係の、特に個別紛争の実態を見ておりますと、とてもそういう関係にないというのがまさに力関係の絶対的差、つまり、紛争解決能力について対称性がない分野、これはほかにサラ金などもそれに入るかもしれないのですが、その実態を私は詳しく知りませんので労働分野に限定して言いますと、やはりそれは労働相談などに携わっている担当者から言えば、今のスキームは労働者側からすると、そうした紛争はほとんど都道府県の労政事務所ないしは行政型ADR、労働委員会等々にまずは行くわけですが、今、申し上げた使用者側からのというふうになってまいりますと、これはまさに、例えば、就労規則の中にそうしたADRの活用をした紛争解決というものを前提にすべきである、あるいは、それを優先させるべきであるという規定が置かれた場合に、その指定のADR機関のところでそうした解決に、あるいは事
情聴取に応じざるを得ないということになり、言ってみれば、冒頭に申し上げました自主性、自立性の前提となっている、つまり自主的解決の前提は双方が交渉能力が対等であるという前提であったものとは、最近起きているトラブルはかなり様相を異にするとなります。そういう意味では、むしろこれはそういう私どもが望まない、むしろ本当にトラブルが深刻化するよりは多発するといったような懸念がかなり想定されるという意味では、労働相談の当事者、現場で具体的な相談や問題解決に当たっている担当者から、むしろこれは今回のものから除外してほしいという声が私たちの方に来ているという実態を踏まえますと、そのいろいろな多様なADRがあって、そこが途中の事後的なチェックなり、あるいは市場によって淘汰されていくということは望ましいという意見はわかりますけれども、やはり今の現場の実態からすると、再三申し上げていますように、それをやっていくには余りにも犠牲が大きすぎると思われるのです。仲裁の場合でもそういう検討が実はされていたわけですけれども、それと同様だと申し上げるつもりはさらさらございませんけれども、そうした除外の取扱いも含めて、格
段の、今、原委員が言われましたような配慮というものを、スキームの中で、あるいは全体の中でどう位置づけるかという議論を、もう一度是非、残り少ない時間でまとめの段階だということは承知しておりますけれども、是非格段の御努力をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。 以上です。
○青山座長 何か今の段階で、今の御発言について。
○小林参事官 これも若干順不同になりますけれども、まず認証の要件についてできる限り法律で、あるいは仮に政省令ということであっても、それはオープンな議論にしてほしいということでございましたが、法律に規定するかどうかというのは法制的な検討もございますので、ここで明確なことは申し上げられませんが、仮に政省令ということになりましても、それについてはこれまでの検討会もそうだったと思いますけれども、実質的に認証を受けられる方、あるいは利用者にとっての影響は大きいわけでございますので、そういう実質についての御議論はしていっていただきたいと言いますか、御意見は承っていきたいというふうに考えております。
多分3番目になるのでしょうか、苦情処理。これはおそらく、おっしゃっていたのはADRの処理に対する苦情の処理ということだと思いますが、これについては3ページにお示ししてありますように、まずは一義的には、そのADRを実施した者自身にもきちんと対応していただきたいということではございますけれども、前々からお話しをしていますように、それは主務大臣のところでもそういった声というのは聞いていく必要があるというふうに考えておりますし、それが埋もれないてしまわないように、よりスムーズにそういうものを取り込んでいけるというスキームについては、これは運用の問題になってくるのかもしれませんが、考えていく必要があるのではないかと思います。どの省庁においても相談窓口というのは通常開かれておりますし、勿論、直接担当課にお電話いただくこともしばしばあることでございますので、その点は制度的にはオープンになっているわけですけれども、更に工夫はができるかどうかということは当然、考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。
4番目に、いろいろ実情も踏まえてお話のあった点でございますが、先ほど、原委員の御質問にも少しお答えをしたところと関連してくるわけでありますけれども、このADRについての基盤整備というのは、できる限り幅広いADRについて適用ができる、そういう制度設計を念頭に置いて、いろいろ議論をさせていただいてきたわけでありますけれども、それは決して個別の紛争分野の特性でありますとか、あるいは紛争当事者の立場の違いを全く考慮に入れず制度をつくっていくということを考えているわけではなくて、具体的な制度設計に当たりましては、あるいはその運用においては紛争分野の特性なり、あるいは紛争当事者の関係ということにも、やはり配慮が必要ではないかというふうに考えております。
お話の中で情報開示だけでは足りないのだというお話がありましたけれども、これもこれまでの長い検討の中では情報開示というのを最後のよりどころにして発展を図っていくべきではないかという議論も一時したことがあったかと思いますけれども、なかなかそれだけでは難しいのではないかということは、この検討会でも議論をいただいたところでございまして、そういうことも踏まえて今回、最小限の基準を満たしているということが考えられるものについては認証制度というものを設けていったらどうかということでございます。当然その審査基準なり、あるいは監督についてはそういった公正、適正さが確保される最低限の要件というものについて考えていくということでございますので、決して情報開示による利用者の選択だけにすべてゆだねているというわけではないと思います。いずれにしましても、その審査基準なり、あるいは監督の仕方も含めて、これから具体的な制度設計に入っていけば、個別の分野の事情というのも十分斟酌して考えていかなければならないのではないかというふうに考えております。
○青山座長 では、佐成委員から、お願いします。
○佐成委員 3点。まず要件のところで、3ページでございますが、これはもう何回も出ているところでありますが、一応確認ということで、要件のBで「経理的基礎を有する」という文言が入っておりますが、この「及び経理的基礎」というのは、かなり見ることは見るけれども、余りそんなには自主的に見ないのだというのが御説明だったと思うのですけれども、やはりどうしてもこれは残しておきたいということでしょうか。要するに、その前段だけで、継続して公正、適確に行うことができる能力を有するとの能力の中に経理的基礎が入っているという理解で、この部分を明示的にしなくてもよいということを、今の段階で明らかにできないのかどうかというのをもう一回確認したい。
2点目ですが、認証要件として5番まで入ったわけですけれども、これは申請時にこれを判断するというのはありますが、申請時以外に認証を受けた後に当然、変動が予想されるわけですけれども、そういった場合に変動があれば当然、認証要件ですから、もう一度変更申請なりをして処分を受けるというようなことになろうかと思うのですが、そうなりますと場合によっては業務が一時ストップしてしまうといった事態も考えられますので、その処分のスピードと言いますか、最初の認証の段階では割と慎重にやられるのかもしれませんけれども、その後、適宜結構広い範囲で、例えば、弁護士が適宜にとか、いろいろと書いてありますけれども、こういったところがちゃんとできているのかというのをもう一回変更申請をした場合に、すぐに判断がくだせればよいのですけれども、その審査期間がが1か月にも2か月にもなってしまうと、認証は受けているのだけれども、変更できないとか事実上違法な状態で行われるとか、そういうことが起こらないのかという懸念があるというのが2点目でごさいます。
3点目が、これは認証制度そのもの自体については、まだ私は懐疑的な立場でございまして、仮に入れるとしても時限立法とまでは申しませんけれども、ある程度、将来の見直しということを今の段階から考慮に入れていただけないかということでございまして、これを具体的に申しますと、5ページのところの「3.その他」の部分に(1)、(2)罰則のところに、(3)として認証制度の将来への何年か後の見直しと言いますか、仮に導入するとしても何かそういったものを入れていただけないかという、そういった3点でございます。
○小林参事官 まず1点目の経理的基礎につきましては、これは繰り返しで恐縮ですけれども、具体的に特にこの点について、それほど重きを置いておくことはできないのではないかというふうには考えておりますが、全くこういう要素として言及しなくてよいのかどうかということにつきましては、正直申し上げて、この時点で落とすだけの自信がないということで、引き続き残させていただいているという趣旨でございますので、場合によってはそういうような事態というのも否定しているわけではないということでございます。 2番目の問題については、これは認証をどういう場合に取り直していただくかという問題とも絡んでくるかと思いますが、そこはいずれにしても、どういうケースで認証を取り直しにしなくてはいけなくなるかということも含めて、実務に過大な負担が生じないように工夫をしていきたいというふうに思っております。
3番目の見直しの問題は、おっしゃる御趣旨は非常によくわかりますし、今それを言下に否定するというような性格のものではないというふうに考えておりますが、一生懸命これから制度設計をしていくというときに見直しについて具体的な言及ができるかとなりますと、ちょっと難しい面はあるのではないかと。ただ、御指摘の趣旨はわかりますし、そのことは書く書かないにかかわらず、十分認識しているということはお答えできると思います。
○青山座長 廣田委員が先ですね。どうぞ。
○廣田委員 今日のペーパーは「拡充・活性化を図るための諸方策」という表題になっていますけれども、私はどう見ても、これで拡充・活性化が図られるというようなイメージは湧いてこないのです。認証制度については、ヒアリングでは慎重論や反対論が多かったわけです。この懸念や慎重論や反対論を押し切ってまで認証制度を導入する必要があるのかどうか。私は基本的なところで説得力がないと思っています。
しかし、以前、送られてきましたADR認証制度に関する要望事項。これを見まして認証制度を導入することによって新規参入を図るという要請があるようだというような。
○青山座長 今の資料は、委員限りということでお配りしてある。
○廣田委員 でもね、これは立案を検討してくださいと書いてありますよ。
○青山座長 わかりました。その文書の出所はそういうことですので、その内容をおっしゃることは構いませんけれども。
○廣田委員 これはしかしね、制度設計にも深刻な問題がありますよ。ここで誤解があったり今、立法作業をしているのに制度設計を間違えてやると大きな錯誤になりますから。ですから、これはむしろ委員限りというよりもオープンにしたらどうですか。
○青山座長 しかし、そういうことでお送りしてあるはずですから、やはりそのルールは守ってもらわないと困ります。
○廣田委員 そうですか。私はちょっとそれを見落としているのかもわかりませんので、ある法律専門職種から意見が出たということにしましょう。しかし、書いてあることはこの中で検討しなければいけないことなのです。実際、検討してくださいと書いてありますから、検討しないで我々が黙っているというのも、これは誠意あることではないと思います。それを踏まえて言いますと、新規参入を図るという要請はあるかもわかりませんね。これはなるほど、そういう動きがあるのかという気がいたします。それを出されたある法律専門職種以外の行政書士だとか社会保険労務士、あるいは不動産鑑定士ですね。それは同様の動きというのはあると思います。
一方、認証制度の導入を待つまでもなくて、土地家屋調査士会が既にADRを立ち上げています。これは私は、ペーパーは出ましたけれども、本来は制度設計をどうするかという問題であって法律でどうこうするような問題ではない。むしろ制度設計が先行する問題だと思います。可能な限り法的効果を望まれるということが書いてありますので、やはりある法律専門職種が可能な限りということですから、もし執行力があるというようなことになると、これはまたそれなりの、後で議論される執行力の問題に関わってくると思うのです。
ただ、可能な限り法的効果があるようにと書かれていますけれども、これは再三、三木委員から指摘されていますように、法的効果というのは大した問題ではない。問題は、要は、72条の緩和をどうするかという問題だと思うのです。それで、日弁連のペーパーを見ますと、認証を賛成するということによって、これは引用すると長くなりますから言いませんが、弁護士がリーダーシップをとることを考えているようですし、また弁護士以外の法律専門職種は72条の支配には及ばないというようなところに期待しているのではないかというニュアンスが読み取れます。それは当然、書いてあるとは言いませんけれども、容易に想像ができることですね。
そうすると、今ここで議論していることは結局その内容がわからないままですから、これはまさに同床異夢ですよ。日弁連は今の認証によって適用除外になるかどうかの問題ですけれども、日弁連の見解になれば、多分これも私の想像で結構ですけれども、72条が認証しても適用はあると言うでしょうし、もし適用がないとすれば、むしろその認証制度の中に弁護士を必要とする要件にしてくれと言うのでしょう。弁護士のハードルを高くする、要件を重くするという考え方になると思うのですね。一方では、そうでないところは72条適用は排除されるだろうと思われる。しかし、現在のままでしたら正当業務行為としてADRでは問題にされたことがないですね。ADR機関が72条違反に問われたことはないです。私は判例を調べました。それはなかったです。
それで、私はもともと72条の開放論者ですけれども、この問題がどちらかわからないというような状況で認証制度をこういう形で議論して導入してよいのかどうかということが大きな問題だと思うのです。私は72条の問題はそれ自体として解決しなければいけない。ですから、これは三木委員が前回までにさんざん言われたように、認証を導入して新規参入を図ろうとしても、あに図らんやそうはならないということになってくると大変混乱するということになりますし、既成のADR機関ではそのために認証を受けないとか、あるいは受けても72条の問題が出てくるということになれば、これは非常に問題が出てきます。ですから、私はそういう誤解があるままで認証の無理な導入というのは、ADRの全体、特に今回は民間型ADRですけれども、民間型ADRがおかしくなるとADR全体がおかしくなりますね。ですから、そういうことになりかねない。この問題のイメージが全然つかないのです。
それから、その検討してほしいということの中に、前回、三木委員が指摘されましたように、連合会参加の都道府県にある単位会を連合会が認証を受ければ、ほかは認証を受けなくてよいようにしてほしい、とあります。全国展開をして50の都道府県にある単位会、そこは認証を受けないでもよい、ただ連合会が認証を受ければよいというようなことを言っていますけれども、そういうことになれば、結局、認証を受けないのと同じですね。ほとんど受けないのと同じになる。果たして本当にこの問題は今日のペーパーのどこにも触れていませんけれども、前回までの間にこれはまだうやむやになっていたと、私は認識しているのです。特に労働関係などで、何かある業界団体が中心のところだけ認証を受ければ、ほかの認証を受けなくてよいというような格好になると、事実上、受けないと同じようなことになる。もう一つ、全国に展開している個別事務所が機関として認証を受けることが可能かという確認事項で、問い合わせがありますので、確認を求められている以上はこれもこの検討会で議論をした上でどうだということを図るのが、やはり誠意の問題です。固有名詞を出すか出さないかはともかく
として、これは要するに弁護士以外の法律専門職種が持っている地方にある個別事務所が認証を受ければ、和解、調停ができるようにできるかどうかということに確認を求められているのです。もし、そうだとすれば、言ってみればアドホックに非常に近い。アドホックに近いものができる。それでよいのかどうかというのは大議論で、私はよいとか悪いとか言いませんけれども、これも一つのやり方だと思いますが、そういうようなことをイメージに置いて制度設計をしようという、ある一つの法律専門職種がある。ここに大きな誤解があれば、この法律をつくった途端にがたがたしますね。そういうことであってよいのかどうか。私はそれを伺いたいのです。そんなあいまいなそういうイメージがつかめないような今日のペーパーでよいのかどうか。これでいろいろ根回しをして法案をつくるように持って行くといっても、私はまるで今後のADRの展望が開けない。新規参入する人も困る、制度設計もできないということになるのではないかと思うのです。この点は是非大事なポイントですから、皆さんの意見も聞いて少し煮詰めていただきたいと思います。
○小林参事官 るる御指摘をいただきましたけれども、当然のことながら、検討というのは段階的に行われていくものでございますので、したがって手順を踏んで、まずこういう大きなところを御議論いただいているということでございますので、現時点でお話のありましたようなことについて、今ここではっきり申し上げるというような状況ではないと思います。
ただ、72条の問題について申し上げますと、先ほどから効果についてはきちんと申し上げているので、その上で御判断をいただきたいというふうに思います。あいまいなところはないと思います。
○廣田委員 ですから、では、私が言いましたように、今の2点。これは段階とする。事務局が検討するというよりも、ここで議論しておく必要があると思うのですよ。そのためにこの検討会をやっているわけでしょう。
ですから、問題は1点は、つまり中心になる全国機関が1つ認証を受ければ全国の各支部は受けなくてよいのかどうか。認証を受ければですよ。これは三木委員がおっしゃったものですね。それが1点。
個別事務所について認証を受けることができるかどうか。この2点は、制度設計に非常に大きく関係しています。と同時に、この法律がよいか悪いかも大きな関係はありますから、これは後で検討するというのはないと思うのです。もう次回しかないですから。
○青山座長 今日どこまでお話し申し上げるかというこということもありますので、今の問題はちょっと引き取らせていただきたいというふうに思います。
その認証制度について、今までたくさん議論があって、その認証制度をとるかとらないかについて意見を述べたいというふうに言われた時期もありまして、認証制度をもう外してしまえということを廣田委員から言われたこともあり、そのために認証というものの中身に全然議論が入らなかったという時期があると思うのですが、やはり認証制度というのはきちんとどういうものであるかということを議論しないと判断できない。特に認証はその法的効果と関係しますから、法的効果が何もないと。また、認証もなくてよいということであれば、果たして法律が成立するかどうかということも法律として出せるかどうかということもありますので、認証制度という全体のこのスキームの中の1つだけを取り上げて、認証制度の是非という形で議論をするのはどうも適当でないのではないかということから、私も全体のスキームを出して、もし認証制度についておかしな点があれば、それはだんだん直していくということで、それでなお、その認証制度を取り入れたこういうスキームがどうか、ということについて検討していただいてるわけですね。今日の御意見はいろいろとありましたので、時間の関係もご
ざいますので、更に次回にこれを直せるものは直すという形で、もう一度ペーパーを出し直すことは勿論、次回もう一度いたします。それで更にこれでよいのかということについて御意見を伺うという形にさせていただきまして、執行力の問題に入りたいと思います。
○廣田委員 ちょっといいですか。今の関連で。
資料を配付していないというか、公表しないということなのですが、委員限りということなのですが、5月8日の日弁連から出た意見も委員限りですか。
○小林参事官 資料は、それぞれお出しいただいた方の御希望に沿った形でお出ししています。
○青山座長 公表される資料もあるし、これは委員限りにしてくださいという資料もあるわけですね。その資料の提出者によってそういうことをしていますので、委員限りというふうに言われたのをここの場で公表されるのは、提出者にとって非常に失礼なことではないかというような。
○廣田委員 それは送っていただいたペーパーに書いてありましたかね。
○山上企画官 明確に書いてございます。
○廣田委員 では、ちょっとそれを読み落としていまして、失礼しました。
では、ほかの人からも出ていますけれども、その意見のペーパーも来ましたけれども、それも委員限りですか。公表していないのですか。
○小林参事官 私どもが公表していることはありません。その提出者の方が自発的に公表されることはあるかもしれませんが、そこは私どもとしては把握していません。
○廣田委員 では、委員限りかどうかというのをいちいち聞いているのですか。
○小林参事官 どういう御趣旨で送られてきているのかということは伺えるところは伺っています。
○廣田委員 だけど、みんなに、例えば、インターネットで公表してくださいという形で来ているのか来ていないのかを、いちいち聞いているのですか。
○小林参事官 可能な限り聞いていると思います。
○山上企画官 原則として、これを是非検討会委員に配ってくれというような明確な形であれば、それがその推進本部事務局として、その本来的な任務であるかどうかは別として、できる限りその御意向に沿った形でお配りをしていると。
○廣田委員 配るのはわかるのです。公表しているかどうかです。
○山上企画官 では、それをどういう形で公表するのかというのは、その文書を提出された作成された方の御判断ということで、別に我々として、受け取ったものをすべて公表するという話ではないと思うんです。
○廣田委員 私が聞いているのは、こういうことです。
要するに、これは公表しますか、公表しませんかということを、事務局が文書を提出した人に公表するかどうか確かめているのですか。
○山上企画官 いちいちそれを確認していますと、極めてどれだけの推進本部全体としての文書量から考えますと、それは事実上困難でありますから、明確にこれは検討会の委員にお配りくださいと、あるいは検討会の場で資料として配付をしてくださいというところです。
○廣田委員 私の質問は違います。そうではなくて、委員に配れと言っている質問ではないのです。聞いておいてください。いいですか。
委員限りではなくて、インターネットに載せるとか何とかということ、公表してくれということを聞いているのかどうかですよ。
○小林参事官 ちょっと誤解があると思いますが、提出されたものについて私どもがインターネットで公表することは基本的にはありません。
○廣田委員 では、委員限りというのも、こちらから積極的に聞くのではなくて、相手から言われてから初めてとか、そういうことですね。
○小林参事官 委員限りかどうかというのは、ここの場におられる方はほかにもおられますので、そういう方との関係もあるので、どういうふうに扱いますかということを聞いているということです。公表するかしないかということはそもそも我々として公表するような任務もないと思いますし、公表は現にしておりませんので、そこは誤解があると思います。
○廣田委員 だけど、では、そこまで確かめていないわけだから、いいですね。これは手続の公正さを聞いているのですよ。いいですか。今日のある固有名詞を申し上げませんけれども、検討してくださいとまでは書いてあります。委員の間で検討してくださいとまで書いてあります。これは文章そのものを引用すると、そういうふうに書いてあるのです。それなのに我々が引用して議論もできないのですか。委員で配ったのに。それはおかしいではないですか。手続は貴本部における議論について、見解を示されることを期待するものであると書いてありますよ。ということはね、委員限りではなくて、むしろここで議論のテーマに挙げてくれということを言っているのでしょう。それなのに積極的に言われないと配らないとか、そういうふうなのは手続としておかしいと思うのです。もう少し議論としてオープンにすべきだと思います。賛成意見があるのか反対意見があるのか、我々はこれで出てきたものを紹介もできないではないですか。
○青山座長 ちょっとよろしゅうございますか。今まで、いろいろな団体から意見はそれぞれいただいています。そして、提出者の御意向に従って本部だけでとどめておいて、事務局だけでとどめておく文章もございますし、委員限りで配付するというのもあります。どういうふうにするかは、私どもは委員限りというふうに言われれば、委員限りで配布して、なるべくそういう資料があるということを前提として議論を進めております。
ただ、いろいろな意見が出てくるのを事務局は勿論検討した上で今日のような資料をつくっているわけですけれども、その委員限りというふうに言われた資料をある人が名前まで挙げて、こういうことを言っているのはおかしいとか、いいとか、そういう形の議論は建設的でないと思うのですね。これはもう初めからルールとして、そういうふうにしていたつもりでいますけれども、その点は廣田委員が、あるいは誤解があるのかもしれません。
○廣田委員 では、私は意見として申し上げますけれども、寄せられた意見につて配られるのだったら、それは当然寄せられる以上は自分がその意見をある意味ではこちらに伝えたいとか議論してほしいという意思で伝えるはずでしょうから、やはりそれはできる限るオープンにして引用できる形でないとフェアでないと思うのです。私はそう思っていますから、一応それはそういう意見でとどめますので、時間がないからそういうことにしたいと思います。
○青山座長 わかりました。広く意見を出していただいて、それを俎上に乗せて検討するというのは当たり前のことで、私どもはそれをしているつもりでいます。
どうぞ。
○山本委員 時間がなくなってまいりましたが、執行力に行く前にちょっと細かい点で甚だ恐縮なのですが、コメントの前提として2点御質問させていただきたいのですが、3ページのEの手続実施者にかかる事項ですが、その注に記載されているところのⅱの趣旨を御確認したいのですが「手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けることができること等公正かつ適確な手続の実施のために必要な体制が整備されていること」ということになっていますが、これは私の理解では、手続実施者が重要な手続段階で弁護士の助言を受けることができることというのは例示であって、要件は公正かつ適確な手続の実施のために必要な体制が整備されていることであるというふうに認識しているわけですが、それでよろしいかというのが第1点です。
第2点は、4ページの(4)の監督のところですが、Bで「報告徴収等」、Cで「業務の改善命令、認証の取消し等」という記載がありますが、前回まではそこに検査ということが明確に書かれていたと思うのですが、この検査ということはここには書かれていませんが、それは落ちたという趣旨で理解してよいのかどうかという、以上、2点をまず御確認したいです。
○小林参事官 まず、第1点目でございますが、これは先生が御指摘になったとおりでございます。例示ということであります。
2点目でございますが、これは確かにこれまで検査という形で並べていたかと思いますが、文言上の解釈だけで申し上げると、検査については「等」の中に含まれ得るということでございます。ただ、心としてはいろいろ御議論もございますので、検査という方法が適当なのか、あるいはその他の方法が考えられるのか、その辺りはもう少し検討させていただきたいということでございます。
○山本委員 それで、コメント2点ですが、1点は今の後の方にお答えになった点との関係ですが、その個別事件との関係ということについては、ヒアリングあるいはこの検討会でも、かなり御懸念が述べられたというふうに理解していますので、いわゆるその点については何らかの対処が必要であろうというふうに思っています。その検査をあるいは監督方法として定めないというのは、その懸念に応える1つの方法になるかなというふうに思います。ただ、これはその全体のスキーム、あるいはほかの制度とのバランス等との関係もあるというふうに思いますので、私自身も確たる見解は持っておりません。少なくとも、ここで行われる監督というものが、その個別事件に介入するようなものであってはならないというようなことを何らかの趣旨で、何らかの形で明らかにしておくということが必要なのではないかというふうに思っております。それは法律上、どのような文言になるか、あるいは法律事項になるのかどうかということもわかりませんが、少なくとも検討会のとりまとめとしては、これだけ御議論があったところですので、何らかの形でそういう事項を明らかにしていただいた方がよいので
はないかということが1点です。
もう一点は、佐成委員が最後に言われたこととの関係ですが、私自身も佐成委員が最後に言われたことに基本的には賛成です。この検討会で認証制度というのを入れて、参事官が言われたように、我々としては精一杯の議論をして最善と思われる制度について合意するわけですが、ただ、この検討会での議論でも明らかに、あるいはヒアリングでも明らかになったように、実際にその認証が動き出した後、どういうようなADR事業者は認証を求めてくるのかとか、その認証の運用が具体的にどうなるのかということは、これは新しい制度をつくるときは当たり前と言えば当たり前ですが、やはりそれぞれ考えておられることも違うでしょうし、予測の域をいずれにしても出ないことであります。したがって、それを前提にして、どういう要件、あるいはどういう効果を定めるかということを議論しているわけで、そういう意味では不確定な情報を基に議論している。そうせざるを得ないということですので、そういう意味では認証制度全体、その効果も含めて、将来当然、しかるべき時期が来れば、私は見直すべきであろうというふうに思っております。勿論、それは附則に書くとか何とかいうのは、また
法制的な問題があるところだろうと思います。少なくとも検討会としては、やはりそういう認識であるべきではないかというのが、私の意見です。
以上です。
○青山座長 わかりました。事務局の方で何かそれについて、特に第1点についてございますか。
○小林参事官 第1点につきましては、これも何回か中で議論の御指摘なり私どもからのお答えをさせていただいておりますけれども、報告徴収なども含めまして、これは基本的には認証の要件の不適合なり、あるいは法令違反の疑いのある場合に実施をするということでございまして、個々の事案の当否を問うということを目的としたものではないということは申し上げられると思います。
また、当然、自主性を阻害するようなものであってはならないということについては、御指摘のとおりだというふうに思っています。
○青山座長 事務局は、その点は次回までに更に御検討していただきたいと思います。今言ったような方向での、文書に出せるものは出すということで、第1点については佐成委員に対する事務局の回答と同じだと思います。
三木委員、どうぞ。
○三木委員 3点ほどありますが、その前に1点質問をさせていただきたいと思います。
原委員の御質問に対する事務局のお答えとの関係での確認ですが、定義に関する規定を置くというような趣旨のことをおっしゃいましたが、そこでおっしゃったのは、今回の認証の対象に挙げられている調停、あっせんの定義を置くという御趣旨だったのか、それとも前半部分の基本ではもっと広いことが言われていますので、それ以外のタイプのADRについても定義を置くという御趣旨だったのか、ちょっとだけ確認したいと思います。
○青山座長 まず、それをお願いします。
○内堀企画官 まだ、具体的にどの概念について、どのような定義を置くかは、ちょっとまだ具体的な法律全体の内容とも関わりますので、今のところはあれなのですが、ここで調停、あっせんというのは一般的に見ての調停、あっせんという意味で用いてはいますが、具体的にどの概念規定が入るかは、まだこれからの検討だと思います。
○三木委員 では、そのことを踏まえて、意見として、それを1点。あと残り2点、意見を申し上げたいと思います。
まず、その定義に関してですけれども、例えば、仲裁の定義をここに置くというのは、それはおかしいのだろうと思います。それは仲裁法が別にありますので、そういうことではないという意味で言いますと、仮に置くとすれば、調停、あっせんの定義ということなのだろうと思います。更に申しますと、細かい話で申し訳ないですけれども、先ほど、事務局が置くとしたら、その総論部分に置くというようなことも考えるというようなことをおっしゃったと思いますが、私は調停、あっせんの定義を置くにしても、この認証との関係のところで置くとしたら置くのだろうというふうに思います。と言いますのは、一般的に調停、あっせんの定義を認証と離れて置くというのは、それは相当に検討を重ねないとなかなかできない話で、ハイブリッド型、調停とほかの手続をしたものをどう考えるかというハイブリッド型の問題もあれば、段階的移行型のADRというのもありまして、そうそう軽々に定義というものを一般的な形で置けるものではないと。ただ、認証制度を置くのであれば、これは調停、あっせんの認証ですが、その限りで定義を置くというのはよくわかりますので、その限りでとどめるべき
だろうというのが1点目の意見であります。
2点目ですが、4ページの弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設けるという点について、廣田委員の御質問に端を発して72条という言葉を使って、若干やりとりがなされまして、そのやりとりの中で出てきた、個々の発言を言葉どおりにとらえますと、私はちょっと座視できないような御意見が出た部分があるのですけれども、それはおそらく私は言葉のあやであろうと思いまして、それを細かくこの場でどうこう申し上げるつもりはありません。ただ、そうであるとすれば、そのことは重要な問題ですので、きちんと記録の上で残しておきたいと思いますので、事務局の方に確認をいたしますけれども、ここで書いておられるように、弁護士でないものによる手続の実施に関する規定を設けるという趣旨で方向で検討を進めるということを事務局はお考えであって、それ以上でも以下でもないという御趣旨だということでよろしいでしょうか。
○小林参事官 そういう趣旨で申し上げましたし、今、言及されたのは私なのかもしれませんが、それ以上のことは申し上げないように意を用いたつもりでありますが。
○三木委員 したがって、仮に、事務局の御発言だけが気にかかったわけではなくて、座長の御発言も含めて若干、言葉じりだけとらえると気にかかる趣旨の発言がありましたが、事務局にお答えいただいたように、弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設ける方向で検討するということ以上のことは言っていなくて、仮に言ったように見える発言があったとすれば、それは必ずしもそういう趣旨ではないというふうにお聞きしてよろしいですか。重ねて伺いたいと思います。
○小林参事官 以上というのがどういうケースを想定されているのかですけれども、まさにここに書いてあるとおりのことを繰り返し申し上げているということです。
○三木委員 したがって、72条云々ということの効果に関して、特定の方向を示唆するような御発言があったとすれば、必ずしもそういう趣旨ではないということでよろしいでしょうか。
○小林参事官 私自身は、今日に関して言えば、72条という言葉を使った記憶はないのですけれども。
○三木委員 もし、あるとすれば、それはそういう趣旨ではないというふうに伺ってよろしいですか。
○小林参事官 はい。
○三木委員 わかりました。
3点目ですが、これはちょっと重ねてになるので簡単に終えますけれども、私も佐成委員と山本委員がおっしゃった、この認証制度が仮に置かれるとしても、その位置づけという点については重ねて賛意を表しておきたいと思います。
仮にこれが導入されるにしても、かなりの議論があったことは御承知のとおりですし、賛成の御意見を言われている方でも懸念を留保されながらおっしゃっている方が少なくないわけで、この制度が「見直し」という言葉を入れるかどうかはわかりませんし、「時限」というような言葉が入るかどうかは別としまして、やはりそうした将来の再検討というものを予定したものであるということを何らかの形で確認していただきたいという希望を持っております。
特に今日、冒頭に将来の中長期的な検討課題として、例えばですが、ADRを行うものに個人についての資格認証のようなものも、将来、検討する可能性があるということであれば、仮にそういう制度が入れば、そちらの方がより望ましいのであって、この制度がなおそういう際にも必要かどうかというようなこともありますので、そうしたことも踏まえて、この認証という制度をとらえるという点に、私もこの場で賛意を表しておきたいと思います。
○青山座長 どうぞ。
○廣田委員 今の4ページの中ほどの、「弁護士でない者による手続の実施に関する規定を設ける」というのは、これ以上の意味でも以下でもないという話なのですが、これはそれ以上でも以下でもなくても、内容が伴うことなのであって、先ほど言ったような1つの中心になる連合会が認証を受ければ、ほかは認証を受けなくてもよいということになるのか、あるいは個人事務所も認証は受けるのかどうかということは全部、72条の弁護士でない者の手続の実施に関する規定の中に絡んできますから、今日はあずかりとおっしゃったから、あずかりでも結構なのですけれども、これは次回までに、実は72条に関するこの部分の内容はこうだというのが示されるのでしょうか。示されないのでしょうか。それだけ伺っておきたいのです。
○小林参事官 今の部分につきましては、弁護士以外の者により手続実施が行われるということを申し上げているので、それがお答えになると思いますが。
○青山座長 やはり、今、言われたのは、さっきの中央のところで1つ認証を受ければ全部よいのかということについて。
○小林参事官 そちらの方の話について言えば、どういう形態を想定されているのかということにもよりますので、今この時点でお答えをすることは難しいと思います。それは今後の検討ということで。
○廣田委員 私は、今この時点と言っているのではないのです。次回にそれを。
○小林参事官 次回を含めて難しいと思います。
○廣田委員 だけど、それだったら、ここで協議しておく必要があるのではないですか。みんなの意見を聞いておく必要があるのではないですか。突然、事務局で結論を出されるのですか。協議をしないままに。それでよいのですか。
○小林参事官 御指摘になった点以外も含めて、いろいろな課題があるわけでして、それは冒頭申し上げたように具体的な立案を進めていく際に、各方面の意見を伺いながら進めていくというふうに申し上げているので、私としては、今、委員が御指摘になったような点は、その中で議論していくべきものではないかと。この段階でこの場所で決めなければいけないという問題ではないというふうには思っております。
○廣田委員 要するに、そこはこの議論のテーマにもしない。後は事務局の方に白紙委任しろという趣旨ですね。
○原委員 参考のために、ISO14001 がやはり認証で、環境管理監査でやっているのですが、同じようなケースがありますので、参考のためですけれど、連合会というか親元のところだけ取って、ほかに全国展開事業所があるのですけれども、そこが全然取らないかというと、一応その親元のところが取って、ほかの事業所は報告聴取というのが今回入っていますけれども、3年間でほぼ全事業所と見られるようにシステムを組んでやったりしているのですね。
単独でも取れますかということですけれども、単独でも取れるというふうなことをしているので、参考になる方法は幾つかあるようには感じます。
○青山座長 こういうなのですよ。この検討会でどこまで決めなくてはいけないかということだろうと思うのですね。これは法制審議会などと違いまして、あそこでは多分、字句の一つひとつについてまで審議会の意見を聞いて、それを要綱につくって法案をつくるというようなことができている。それは割合、関係機関が法務省プラスαというようなことなので可能なのですけれども、このADRはとにかく初めての制度をつくろうというわけですので、関係省庁との折衝というのは非常に大変なのですね。そこのところは十分御理解いただきたいと思います。
今、廣田委員が御指摘になった点や、原委員がこういう例があるというようことは、事務局として知らないわけでは勿論ないので、それについて御意見はいだたいてるわけですから、紙で出されたものであっても十分検討して最もよい方法でつくろうという、そこのところを認めていただき、この細かなところでここはだめであそこはだめだとの意見は十分わかりますけれども、そういうスタンスであるということを御理解いただきたいと思います。
○廣田委員 それは決して細かいことではないのですよ。我々、実務をやっていると、まさにそのこと自体が問題になって、明日から問題になることですからね。ですから、決して細かいことではないのです。
どの程度まで煮詰めるかという問題は、むしろ検討会が設けられて延々とやっている以上は、むしろ煮詰まるところまで煮詰めて、みんなの意見を聞いておくというのが、本当の姿であってですね、これは仲裁法と比較してみればわかりますように、仲裁法はほとんど法律案に近いものが出ましたね。私から見ますと、それと比較すれば、余りにも煮詰まっているところは少ないです。だから、白紙委任という言葉を使いましたけれども、肝心のところはほとんど煮詰まっていない。イメージがつかめないです。ADR機関を運営している側から見ればですね。新規参入する方もこれでは困ると思うのです。
ですから、検討会が終わった後、果たしてどうなるかということは、まるで読めない。これで結論を出してよいのかどうかを私が問題にしているということを御認識いただきたいと思うのです。ですから、決して細かいことでもないし、煮詰めようと思ったら、もっとできるかもわからないところが煮詰まっていないと。その段階であるということを私は申し上げたいと思います。
○青山座長 仲裁は非常にハッピーに結果になったのは、私自身が仲裁検討会の座長ですから、十分よく知っているのですけれども、すべての検討会で同じようにやろうと言っても、それはもともと事柄の性質上、無理だと思うのですね。事務局に検討会が11できまして、それぞれのまとめ方というのも、例えば、裁判員制度の導入などについては相当の部分も、関係省庁や、あるいは国会、政治とのやりとりで決めていくということにならざるを得なかった。ここは政治という絡みはないかもしれないけれども、各関係省庁の監督をしているADR機関というのはたくさんありまして、検討会事務局だけで理想的な案をどんどんつくってよいということであれば、非常に我々はいろいろな選択肢があるかと思いますけれども、そうはならない。また、実際に事務局で法律をつくっても場合によっては、それは国会に通らないというようなことになっても、やはりこれは最初の制度をつくる以上は、望ましいことではない。だから、先ほどから、その見直しということが言われていますけれども、私もそれは全く賛成で、それを規定に置くかどうかはともかくとして、我々がつくろうとしている制度というもの
は、まず第一歩を踏み出すということで、それから後どうするかというのは、また5年なり10年なりしたら、当然見直さなくてはいけない部分はたくさん出てくるのではないか。そういうつもりで、私はずっと関与しておりましたので、決して議論をネグろうとか、そういうことでは全くありません。
○小林参事官 すみません。若干、売り言葉に買い言葉になったことは反省をいたしますが、申し上げたかった趣旨は、まさにこれまでの議論でもおわかりのとおり、かなり基本的なところでもいろいろな意見の相違がある中で、どうやってその収斂を図っていくのかということになりますと、おのずと項目についても選択と言いますか、徐々に固めていくということになるのではないかということでございます。これは決して関係省庁がたくさんあるからとか、その他関係方面等といろいろな調整があるからということだけではなくて、やはりこの検討会の中の議論でも、やはりそういうところがあるわけですから、それは踏まえて徐々に作業を進めていくということになるのではないかと思います。勿論、事務局の不手際は多々あったというふうには思いますけれども、基本的にはそういうことではないかと思います。
先ほどの1か所取ればほかのところはどうかということについては、三木委員から前にも御質問を受けましたし、そのときに結論は出せなかったわけですけれども、なかなか今の時点でのお話をするというのは次回も含めて難しいのではないかということを申し上げております。
2点目の個人事務所ということについても、特定の形態のものがどうかということは、なかなか今、申し上げられませんけれども、これについては個人で行う場合についても排除する必要はないのではないかと。少なくとも頭から排除する必要はないのではないかということで申し上げているので、今の段階でお答えをするとすれば、それがお答えになると思います。
○青山座長 それでは、時間の関係もありますので、議事進行上、執行力について、若干御議論いただきたいと思います。
まず、事務局から34-2という資料ですね。それを御説明いただけますか。
○小林参事官 それでは、34-2について御説明をしたいと思います。
これまで執行力については何回か御議論いただいたわけでございますけれども、なかなかいろいろ難しい問題があるということで、今回の紙においても依然としてPという形でお示しをしているわけでございますが、もう一度、全体像について論点を整理させていただいたものでございます。
まず、執行力の付与についてのそもそもの是非論でございますが、これまでの議論はこの辺りのものがかなり多かったのではないかというふうに思っております。
まず、論点の1番目として、そもそも調停における和解の履行の在り方というのをどういうふうに考えるのかということがあろうかと思います。
1つの考え方としましては、お互い相談しながらで和解に至ったわけだから、それについて履行されないということになっても、それはそれで1つしようがないのではないかという考え方も全くないわけではないと思います。ただ、それは調停という契機であろうと合意はしたわけでございますから、それがもし履行されなかった場合に、それを実現する手段というものが用意できるのであれば、それはそれで意味があることではないかという考え方も他方ではあり得るのではないかということでございます。
ニーズ論というのが(2)のところにございますように、これもしばしば議論されたところでございます。執行力については、特段それだけのニーズはないのではないかという議論もこれまでかなり出されたわけでございますけれども、他方、一つの事情といたしましては仲裁に移行したり、あるいは公正証書という形で、言わば見方によっては便法という形で執行力は付与されてきたということはおそらく間違いなくあったのではないかと思います。
これは勿論、評価の問題ですが、便法があるのであるから、それ以上のものは必要ないのではないかという考え方もあろうかと思いますが、他方、便法が利用されているということであるのであれば、やはり潜在的なニーズはあるので、正面から認めてもよいのではないかという考えもあり得るのではないかというふうに思っております。
3番目としまして、これは三木委員などからしばしば御指摘を受けているというふうに記憶いたしておりますが、仮に認証ADRのものにつきまして、執行力を付与するということになりますと、それでは認証ADR以外の場で成立した和解について執行力を与えなくてよいのか、その2つを区別する合理性はあるのかという御指摘があろうかと思います。
これも非常に理論的にはよく理解できるところではございますけれども、1つの考え方としては、認証ADRというのは認証を得ているということで、内容的にも適正なものであるという蓋然性が高いという見方もある得るところではないかと思われますし、もう一つの考え方としては、政策論として裁判と並ぶ紛争解決手段を大きく育てていこうということであれば、この最後のよりどころである執行力についても認証機関についてであれば、付与してもよいのではないかという考え方もあり得るのではないかと思われます。
4番目の「弊害発生の懸念への対応」ということでございますが、これはやはり執行力というのは非常に強い効力でございますので、この弊害発生の懸念というのが実質的には一番大きな反対理由であったのではないかというふうに思いますが、この点については勿論、私どもとしても意識をしているわけでございまして、案として提示させていただいたものの中でもかなりの条件を付加いたしております。
1つは、アのAでございますが、先ほどもいろいろ議論になりましたけれども、まず、この点についてはおそらく手続実施者を弁護士に限定する、場合によっては弁護士の中で更に限定するということも考えられるのではないかということでございます。
Bといたしまして、和解の内容についてはきちんと当事者に読み聞かせをして、これでよいかどうかという確認を取るということも、当然必要になってくるのではないかと思います。
また更に加えて、いざ履行されなかった場合には執行されるということがあり得るという執行受託文言というものがきちんと付される必要があるのではないかということでございまして、私どもなりに、もし仮に付与するとすれば、これぐらいの条件は必要ではないかということで、かなり限定的にしたものでございます。
また更に、対象の請求権の範囲の限定につきましても、ニーズとしては幅広いものがあり得るのかもしれませんけれども、懸念への対応という意味では、Aにございますように金銭に限定する、あるいは更に額を一定のものに限定するということも考えられるわけでございますし、また、Bにございますように、山本委員からは対象となる当事者について、懸念があるのであれば消費者・事業者間を除外するということを考えてもよいのではないかという御提案も受けたところでございます。
また、ウにございますように、もともとこの制度につきましてはADR機関の下での手続上の担保のみならず、乱暴に言えばダブルチェックと申しますか、公的な確認手続というものも必要ではないかということで、具体的には裁判所の執行決定を得る方法と、それから執行証書の場合に準じて公証人の執行承認を得る方法ということも考えられるのではないかということで議論をしてまいったわけでございます。
そういう意味で言いますと、限定ということについて、考えられ得るものについてはかなりいろいろ提示がされているのではないかというふうに考えておりますが、こういったものでもやはり不十分だと考えるのか、あるいは十分、不十分の問題以前として、やはり多種多様なADRということを考えて、しかも、今、いろいろな議論がある認証制度を導入するという中で、今回ここまで法的効果に取り込むのは得策でない、あるいは時期尚早ではないかという御議論なのか、その辺りも含めて、もう一度執行力についての御議論を承った上で、次回にそれを踏まえてどう収斂を図っていくのかということを考えていきたいというふうに思っております。
以上です。
○青山座長 今、事務局から御説明のとおりでございますけれども、執行力についてはこれまでにもかなり議論を重ねてきたわけでございます。しかし、どちらかというと、消極論は入口論でとどまっていて内容に立ち入らない。積極論は、かなり個別的な論点まで立ち入っているけれども、それについての十分な議論、かみ合いというのがなされないままに来たのではないかというふうに思っております。
そこで、次回に事務局としての原案をお示しする際に、もう一度、この執行力について御議論をいただいた方がよいのではないだろうかという気がします。
それでは、この34-2のペーパーのどこをやるのかということですけれども、「2.執行力を付与する場合の公的な確認手続」というのはかなり技術的な問題ですから、ここまでは入らなくて、「1.執行力の付与の是非について」というところを中心として御議論をいただければ、それで十分ではないかというふうに思っておりますので、残された時間、余りありませんけれども、御意見を賜りたいというふうに思います。
どなたからでもどうぞ。今まで発言された方でも構いませんから、どうぞ。
○原委員 途中退席になるかもしれませんので、欠席委員の方のコメントがまだ出されていないところなのですけれども、やはり懸念を持っております。
消費者団体側にも、この執行力の付与の話は去年からも出ているテーマでしたからずっと話をしていて、とりあえずは、一応、切り離されたような議論で進んでいるというように話していましたので、今回、ちょっと再浮上のように出てきたというところがあって、来週月曜日までということであれば、検討する時間もない。事前にも御説明をいただいたのですけれども、判断を指し示すのがちょっと難しいかなと考えております。
それで、2つほど懸念を持っております。1つは、少し要件を厳しくしていくということにはなっているのですけれども、やはり全体的に認証要件のハードルが高くなるのではないかという懸念。
もう一つが、先ほど龍井委員から出たような消費者対事業者とか、労働者対事業者の部分のところで、サラ金というか、今、不当請求とか、いろいろな金銭支払請求を消費者側が受けたりをしているのですけれども、何か逆さまになって、執行力の付与が欲しいためにADRを立ち上げて認証を受けるというような、何か逆さまのような現象も出てこないかなというところは、懸念をするところがあります。
それで、ずっと執行力の付与が必要とおっしゃっていた山本委員が見直し規定を入れろとおっしゃったので、私としてはせめて将来の検討課題というところに持っていっていただけたらと考えております。
○青山座長 欠席委員の紹介をちょっとしていただけますか。
○小林参事官 まず、綿引委員からは、ADR和解に執行力を付与することについては、理論上の問題もさることながらーおそらくあるということだと思いますがー「ADR和解が悪質な取立業務等に利用されることになる可能性に対する懸念が払拭できないというのが、私がADR和解に執行力を付与することに賛成できない最大の理由である」というコメントをいただいております。
それから、法的効果、総論も含めての御紹介になりますが、他方、安藤委員からは、「自分の持論は、ADRは裁判の前段階にあるものと位置づけ、その発展のためには、ADRでのプロセスや結果が尊重される形で、事件が適切に裁判に引き継がれていく仕組みが整えられるべきというものである。
そのような観点からすると、利用当事者が法的効果の存在により萎縮せず、積極的にADRを活用してもらうという点で、時効中断効のみを付与することが妥当ではないかと考える。
また、ADRでの合意結果が守られない場合には、ADRの結果に沿って、裁判所がその履行を補助または担保する仕組みが必要である。
資料34-2に即して言えば、裁判所の執行決定を経て執行力が付与される仕組みがあってもよいのではないか。また、認証制度という仕組みを所与とするならば、請求権の範囲等を限定するといった制約は設けない方がよい」ということで、ちょっと途中、時効中断のみと言及はされていますが、執行力については、むしろ裁判につなぐという形で認める仕組みがあってもよいのではないかという御意見でございました。
以上です。
○青山座長 ほかに御発言をどうぞ。
髙木委員どうぞ。
○髙木委員 なかなか皆さんの執行力認容のハードルが高いというふうに思っているのですけれども、要するに、3年も検討会をやっていると新鮮な気持ちが薄れてしまったり、いろいろな意見が出てくると見失ってしまったりするところが実はあるのですけれども、一番最初に司法制度改革審議会意見書が出て、ADRの部分を拝見したときに、弁護士会のADR関係者というのは一様に期待したし、喜んだのです。それはやはり、執行力と時効中断のところにありました。
平成2年に二弁の仲裁センターというのがスタートしているのですけれども、スタート直後から、成立した和解をどうやって履行させるのかというところが一番の問題であったし、研究会を毎週とか、毎月とか定期的にやっていますけれども、常にそこをどうやって工夫するかというのが最大の論点だったと思うのです。
だから、仲裁合意を取って仲裁判断に持っていくということとか、即決和解に持っていくとか、あるいは公正証書をつくるとか、そういったことをずっと工夫しながら仲裁センターの信用を維持し、ここまで続けてきたという実態があるわけで、今、皆さんに配られたさまざまな意見の中に、仲裁センターの関係者の中から執行力がなくてもよいという意見があったと思うのですけれども、なくてもよいと言っている理由は、要するに新仲裁法の38条決定でやればよいからというのが主な理由なわけです。
そのことは、さっき小林参事官がおっしゃったとおり、便法なのですけれども、それだけニーズがあるということなので、やはりそこを考えてほしいのです。
原委員が、前回か前々回か、ADRをやる運営側のニーズであって、利用者のニーズではないというようなことを、ちょっとおっしゃったかと思うのですけれども、運営側が全く利用者を離れてニーズがあるということはあり得なくて、それはやはり利用者のニーズであるということを認識していただきたいというふうに思うのです。
もう一つは、便法を使うということが法律の使い方としては決して正しい使い方ではないと思うのです。ねじれ現象を正面からやりますから結構ですというのが、やや法律家として、なかなか表に出しにくいという感じはありますので、ここはやはり正面から認めるべきではないかというふうに考えてます。
ですから、一番の問題は(4)の弊害の懸念の部分なのですけれども、先ほど紹介された綿引委員の意見もそうなのですが、ADR和解に執行力を認めることの弊害というよりは、執行力の弊害を言われていると思うのです。
それから、原委員がおっしゃった不正請求とか、架空請求のことは、そういうことをやることが執行力の弊害みたいな形で言われるのでは、本来無関係ですから、ちょっとかわいそうだし、心外だと思います。今の公正証書だって、決してきちんと行われているかというと、やや不安があったりする上に、加えてこういうものを設けたらどうかというのが今の問題なのかなというふうには思います。
原委員の意見について申し上げると、「ア 認証要件以外の付加的な条件設定」、これは認証要件のハードルを高くするという理解ではないはずですから、そこは誤解のないようにしていただきたいと思うのですけれども、認証要件にプラスして、オプションとして要件を加えることによって執行力を認めようという制度をつくろうとしているわけですから、これがあるゆえに認証要件のハードルが高くなるというものではないわけです。公正証書などと比べると、仮にAの部分の手続実施者に関する条件で、手続実施者が弁護士であることというのを、例えば手続の最初から最後まで全部弁護士が関与したというようなことにするならば、公正証書よりは、厳格に意思確認ができるはずです。公正証書の場合は委任状を持っていって、その場で1回で成立させるという形式でほとんどできるわけですね。それで結局、当事者の意思確認というのは、公証人は代理人によって1回でやるだけに終わってしまう、それよりは、当事者の意思決定過程をADRは手続実施者が面前で最初から最後まで、おそらく1回で成立するというのはめったにないことだろうと思うのですけれども、直接確認できているだけ公正
証書よりはるかによいと思うのです。それでも不安があるというのならば、イのAで対象となる請求権の範囲を一定の金銭に限ったように、ここに限定するとすれば、範囲としてはまさに公正証書と同じになってしまうわけですね。
公正証書との比較で言うと、弊害というのは、はるかに少ないものになるというふうに私は思えるのです。日弁連は慎重にというふうに言っていますが、この2つの要件ぐらいを入れ、そういう限定をするのであれば、慎重に行ったと理解できるのではないかというふうに実は思っていまして、できれば、今回の検討会のように、ここまでADRについてきちんとした議論ができる機会というのはめったにないことなので、できれば考えてほしいというふうに思っています。
○青山座長 三木委員が先でしたね、どうぞ。
○三木委員 今、髙木委員のおっしゃったことについて申し上げたいと思います。
結論としては、私は、執行力付与には従来から申し上げているとおり反対です。仲裁に移行させて執行力を付与するという実務もあると、それは便法だから望ましくないのではないかという趣旨をおっしゃったのですが、そういうことではないと思います。
仲裁合意を取って、仲裁に移行させた瞬間に仲裁法の規律がかかるようになるわけで、例えば、仲裁人に贈収賄の規定が適用されるようになるとか、あるいは将来執行を裁判所に求める場合に、執行決定の審査手続では仲裁法に従った手続規律が審査されるわけで、しっかりした手続が踏まれていなければ、当然執行決定が下りない可能性がある。
ところが、何度も申し上げておりますように、調停による和解に執行力を付与したいと現時点でおっしゃっているところの問題点は、肝心の手続規定が何もつくられていない状態で執行力を付与するというのは、話が全然違うということです。
これはUNCITRALの議論とも似て非なるもので、UNCITRALでは手続の議論をちゃんとした上で、その手続を踏まえて執行力の付与ということが議論されたわけですけれども、そうした問題が全く前提として置かれていない。
結局、これで執行力を付与するとしても、裁判所がそれを確認するにせよ、公証人が確認するにせよ、手続審査というのが一切行われないわけですから、要するに和解合意が成立したというところだけを見るわけです。
綿引委員もおっしゃっておられましたし、私も言っていますように、一体何を審査するのかと、最後の確認というのは、形は整えるだけになってしまうと、そちらの方がよほどまやかしではないかと思います。
結局、今、提案されているのは、調停をどのように経てきたかというところには全く目が行かずに、要するに和解に執行力を付与しようということですから、結局、調停の進行ということにつながらない可能性がある、あるいは、つながるという論理的な保証がない形で議論をなされているというところが問題で、時効中断効の付与にしても、執行力の付与にしても、そのものが問題というよりも、それによって調停あるいはADRを活性化しようというところに最終目的があるわけですけれども、手続を全く見ない執行力の付与ですから、そこにつながっていかない。まして、今、提案されている手続実施者が弁護士であればよいではないかというのは、手続を着目したのではなくて資格者に着目しただけです。
これは勿論、世界的に見ても類を見ない奇妙な制度のような印象を受けますけれども、強いて、今、提案されている制度と何が一番近いかというと、これはドイツにおける弁護士和解の制度に近い。もしそうであれば、弁護士和解の制度というのはいろいろと問題点や検討すべき点がある制度ですから、その辺の議論はきちんとしないといけない。勿論、御承知のようにドイツでは、あの制度は成功しなかったわけです。その辺の評価もしなければいけない。
何より、今日は時間がなかったので認証要件のところでも申しませんでしたけれども、実施者が弁護士であるというところにこだわろうとしているところ自体が、ADRの振興と全く相反する態度ではないかと思います。
よくADRの世界で言われる、半ば誇張した言い方ではありますけれども、弁護士が関与すると、まとまる和解もまとまらなくなるという批判は、現場の方からしょっちゅう聞く声で、しかもこれは日本だけではなくて海外のADRの議論でもよく出てくる議論で、結局、法律家が関与するのに望ましい紛争もあれば、法律家が関与すると望ましくないというか、議論がこじれたり、あるいは当事者が法律的な処理を望んでいないがゆえにADRに行っているのに、それが満たされないというようなこともあるわけで、何でもかんでも弁護士が絡めばよくてというような前提の議論ということ自体が、ADRの本質との関係ではおかしい議論だというふうには思っております。
以上です。
○青山座長 廣田委員どうぞ。
○廣田委員 三木委員が大部分おっしゃったので、短く言います。
先ほど髙木委員が、弁護士は当初は執行力を望んでいたと言いましたけれども、それは決してそうではないですから、正確に言えば、それは賛否両論がありました。
それで現在は、認証に関わるということであれば、執行力は反対だという意見の方がずっと多いですね。ほとんど大多数がそういう意見だと言ってよいと思います。
それからもう一つ、便法云々なのですが、これについては、やはり現在の事件数程度だったら、特に民間型ADRに限って言えば、便法で十分です。むしろ、便法で、今、三木委員が言われたように手続的なものが見れるということであれば、それはそれでよいということになると思います。
髙木委員が言われたことは、ハードルが高いのか低いのかちょっとよくわかりませんけれども、要は低いということであれば、尚更のことなのですが、行政機関の認証によって、果たして執行力というのは認めてよいのかという問題があると思うのです。そういうものをやはり法律によらないで、国家の最終的な強制力の行使を、そういう程度のことで認めてよいのかという大問題があります。私はこれは認めてはいけない、こういう案であれば認めてはいけない。もし、認められるなら、法律でどうしてもここだけは執行力を付けたいというところを認めればよいわけなので、現在の段階で、これがあたかも認証はいいぞというような、法的効果はいろいろとあるぞというようなものに使われるものであったら、弊害の方がはるかに大きいと言った方がよいと思います。
○青山座長 ほかにどうぞ。
平山委員どうぞ。
○平山委員 今日34回で、あと残すは1回というような段階になったわけですね。皆さんのお話を聞いていると、まさに議論が尽きないというお話の方がかなり強いわけですけれども、やはりこういったことは、ある時間を限ってその中で決めるということが大事なことではないかと思います。
多くの議論に関して、事務局がかなり大部分を取り入れた方向を示されているわけですから、できればそういったような形で方向をまとめるような形で、これから進めていただきたいと思います。
私は、この中でせっかく法律をつくるのですから、当然認証制度も必要だろうと思うし、和解に至るまでには、それぞれの立場で十分に話されて和解に至るわけですから、至ったものについては、やはりそれを履行してもらうというような形で、当然その執行力というのはあってもよいのではないかと、非常に単純な考え方なのですけれども、そういったふうに思います。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
龍井委員どうぞ。
○龍井委員 可能性は全く否定しないというよりは、むしろ時期尚早という感じに近いのですが、今、実績を持っているADR機関もあれば、先ほどから御懸念があるように、私も繰り返し申し上げているようなものが立ち上がってきたときに、その可能性がまだ見えないわけですね。
ですから、私どもとしては、そういうスキームとして、今、御指摘のように、そういうものが信頼性を持たせていくということは必要だと思いますけれども、やはりそこは今のADRにどういうふうに可能性が開けていけるかというのが見えない段階では、むしろ懸念の方が多いというのが率直な思いです。
繰り返しますが、先ほどBtoCの問題も、これが項目として消えるとなれば、それはどこかのところで明示が必要と、あるいは排除することも含めて必要ということについて議論をつなげていきたいというのが今の思いでございます。
○青山座長 どちらが先ですか、では、佐成委員、先にお願いします。
○佐成委員 私は、前からも言っておりますけれども、執行力には反対であると重ねて申し上げたいと思います。
それから、便法の存在自体が、こういった一般的に執行力を付与する制度を入れるということを合理化するのかは、ちょっと疑問です。個別案件は、その具体的事情に応じて多分そういう便法を選択されたのだと思われますので、便法があるからといってニーズがあるというふうに速断されるのは、ちょっとどうかなと思います。実際、利用者の立場からしますと、そういった声は余り聞かないものですから、あえて申し上げました。
以上です。
○青山座長 山本委員どうぞ。
○山本委員 私は、繰り返し述べていますように、執行力を導入すべきだというふうに思っています。その理由については余り繰り返し申し上げません。先ほど、髙木委員がおっしゃったことに基本的には賛成です。
時期が尚早だという御議論も大変よくわかりますが、私自身はやはりこのADRの今回の充実、活性化というものを成功するために、小さく始めるのがよいのか、大きく始めるのがよいのかという議論があると思うのんですが、私自身はやはり大きく始めないと、なかなか日本のADRの現状を打開することは困難ではないかという認識をもっているということです。
せっかくこういう認証制度を導入するという、かなり大かがりな制度を国を挙げてつくろうということですので、その効果がこの執行力がないものにとどまるとすると、ややバランスを欠くのではないか、その結果として、このつくられる認証制度がうまくいくのだろうかということについて、疑問を禁じえないということです。
ただ、原委員や龍井委員がたびたび言われているような御懸念は、十分私もわかります。私なりにその対象事件を限定するとか、いろいろな御提案を申し上げたわけですが、なかなか十分な御理解は現状では得られていないということは、私自身認識しております。
三木委員が言われたことは、誠にもっともだというふうに思うわけですが、これは理論的な話で、余りこの検討会で言ってもしょうがないのかもしれませんが、私自身はこの場合の執行力の根源というのは、やはり当事者の合意にあるのではないかと、その最終的になされた意思表示にあるのではないかというふうに思っておりまして、仲裁手続の場合には、最終的にはその仲裁判断というのが、勿論その仲裁合意という合意が前提になるわけでありますけとれども、解決結果については仲裁人に預けるわけですので、そこに至る手続というもの、あるいはその仲裁人の資格というものが併せて執行力の根源になるということは当然であろうというふうに思われるわけですが、ここでは最終的に解決内容まで合意しているわけですから、私自身は、その解決合意の申請というもの、意思表示の申請というものが担保されれば、執行力を付与することは十分できるのではないかと。そういう意味では決してその手続を定めないで執行力を付与するということは、理論的にはまやかしではないというのが私自身の認識であります。
その近い制度としては、三木委員はドイツの弁護士和解を挙げられましたが、私自身はフランスのADRに対する執行力の付与が、より近いのではないかと前から思っております。これは裁判所の執行決定によって当事者の意思表示の申請を担保して執行力を付与するスキームでありまして、基本的にはここで論じられているものと近いので、それが決定的に破綻しているという話は聞きませんので、確かに三木委員が言われるように、詳細な調査というようなものは必要なのかなとは思いますけれども、私自身の認識している限りでは失敗しているというふうには思えないという点を指摘させていただきたいというふうに思います。
以上です。
○青山座長 議論は、まだ尽きないかとは思いますけれども、時間の関係で一応ここで締めたいと思います。
今日の資料では、この部分は(P)、ペンディングングという形で出しましたように、今日の御意見を分布は、皆さんが、今、お聞きになったとおりでございますので、次回までにこの表現をどうするかということは事務局で検討していただきまして、最後の次回の資料に今日の議論が十分反映されるような形でお諮りしたいというふうに思っております。
その他の問題というところが今日の資料に残っているわけでございますけれども、これについても、既に今までの御意見で、大分その他の問題に触れる部分も出できておりますけれども、なお言い残した点があれば、お伺いしたいと思います。
よろしゅうございますでしょうか。
それでは、今日はこの辺りで議事を終了いたしまして、最後に次回の日程を確認しておきたいと思います。
次回は、6月14日月曜日の午後1時半から開催いたしまして、事務局で、今日の御議論を十分踏まえた上で再検討した資料をお出しいたします。それをベースにして検討会としては御議論いただき、とにかくそれで一区切りしたいというふうに思っております。
事務局では、今日の議論を踏まえまして、関係方面との調整もあるかもしれませんが、資料を修正すべき点は修正した上で、次回の検討会にお出しください。それまでに事前に配付するということはできませんね、もう来週ですから。できますか。
○小林参事官 ちょっと難しいかもしれません。
○青山座長 来週月曜日ですから、今回のように事前にお出しするというのは、ちょっと難しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
来週の月曜日に一区切りをするわけでございますが、その後のことはどうするかというのを、勿論、来週にも申しますけれども、今日、それから後、どうするかということを御懸念の方もいらっしゃる思いますので、ちょっと事務局の見通しだけでもお話いただけますか。
○小林参事官 それでは、若干先走りの感もありますけれども、お話をさせていただきたいと思います。
おそらく今後の検討会のテーマとしては、3つほどあるのではないかというふうに考えております。
1つは、言わば、この検討会を再開する際に申し上げましたけれども、隣接法律専門職種の方の代理権の問題がございますので、これは適当なタイミングで御意見を伺うという機会を設けさせていただきたいというふうに思っております。
2つ目のテーマが、これは冒頭の説明の際にも少し申し上げましたが、最後に御紹介をしました、「その他の課題」の部分でございまして、この部分につきましては中長期課題として位置づけられるものも含めまして、まだ必ずしもまとまった形で議論をしていただいておりませんので、そういう機会を設けまして、この部分についても整理ができるものについては整理をしていきたいというふうに考えております。
3つ目のテーマでございますが、これが今回の法案についての関係でございまして、先ほど、これもちょっと冒頭に申し上げましたが、可能であれば来週の月曜日以降、具体的な立案作業に入らせていただきたいというふうに考えておりますが、その過程におきましては説明会などを開催して、引き続き広く国民の方の御理解も得ていきたいというふうに考えておりますし、御意見も賜りたいというふうに考えております。
先ほど来、御議論にありましたように、一方では余りADR機関等に加重な負担にならないようにという趣旨も十分わかりますし、他方、この法律によりまして、社会的に弱い立場にある方、例として挙がったものとしては労働関係とか、あるいは消費者の関係ということで何か不測の問題が生ずるという事態もやはり避けなければならないという意識は、私どもも十分共有しているところでございますので、そういう点については立案なり運用で、少しでもそういった懸念が払拭できないかということについては、引き続き努力をしていきたいというふうに考えております。
その関係で、その立案作業の進捗に応じまして、やはりこの検討会に御説明をし、御意見も賜りたいというふうに考えております。
ということで、テーマとしては3つございますけれども、具体的にはできるだけ効率よく設定をさせていただいて、なるたけ委員の方には、これまでも十分御負担をおかけしておりますので、余り御負担にならないようにというふうに考えていきたいと思っております。
以上です。
○青山座長 そういう形で今後は進めさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日はどうも長時間にわたりまして、ありがとうございました。